説明

デジタル速度制御装置、デジタルモータ制御装置、紙搬送装置、デジタル速度制御方法、その方法をコンピュータに実行させるプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、および画像形成装置

【課題】正確な制御が可能なデジタル速度制御装置を提供する。
【解決手段】デジタル速度制御装置10は、搬送ベルト301の変位量を標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得する移動距離検出装置500と、標本化時刻に基づいて搬送ベルト301の目標速度を算出する目標速度算出部101と、搬送ベルト301の現在速度を変位量および標本化時刻の差分で算出する現在速度算出部102と、目標速度が所定値よりも小さいか否かを判定する目標速度判定部105と、目標速度は所定値よりも小さく、かつ、現在速度は標本化周期あたり最小単位の変位量であると算出された場合、現在速度を設定値に置き換える速度補正部106と、置き換えた設定値と目標速度との誤差を算出する速度誤差算出部103と、速度誤差に基づいて駆動モータ200を制御する調節計部104と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル速度制御装置、デジタルモータ制御装置、紙搬送装置、デジタル速度制御方法、その方法をコンピュータに実行させるプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コピー機、プリンタ等の画像形成装置においては、特にインクジェット式の印字機構をもつ画像形成装置においては、紙搬送系を所望の距離分正確に移動および停止させることが、画像品質の面から重要な課題となって来ている。
【0003】
アナログ制御回路の代わりに安価な汎用のCPU(中央演算装置)や、DSP(デジタル信号処理プロセッサ)を用いてソフトウェア処理するデジタル制御によって、回路生成のコストを低減し、制御設計の変更を容易にする技術が開発されてきている。
【0004】
これら画像形成装置において記録紙を搬送する紙搬送ローラ系の移動量の把握には、搬送ローラにロータリエンコーダをとりつけ、ローラの回転角に相当する情報を得ることで、比較的安価に紙搬送ローラ系の移動量を把握することができる。エンコーダは、配設されたエッジによって、パルスを発生する。エンコーダにはアナログ方式およびデジタル方式があるが、デジタル方式はセンサによって安定的に回転角情報を得ることができる。ここで、得られる回転角情報の精度はエンコーダの解像度に依存する。
【0005】
図8は、従来のデジタル速度制御装置による紙搬送系のモータ制御を説明する図である。紙搬送ベルト装置7においては、モータ270からタイミングベルト470で接続された駆動ローラ372が回転することによって、搬送ベルト371が移動する。ロータリエンコーダ571は、駆動ローラ上372に設置されている。
【0006】
センサ572は、ロータリエンコーダ571からの出力を検出する。デジタル速度制御装置17はセンサ572が検出した位置情報に基づいて、モータ270に制御指令値を出力し、モータ270にトルクをかける。制御指令値は、モータドライバによって形式が異なり、電流指令値、電圧指令値などがある。
【0007】
このようなモータ制御の制御アルゴリズムとしては、目標値付近までは速度フィードバック制御を行い、停止位置付近では位置フィードバック制御を行うものがある。位置フィードバック制御では、現在位置の目標位置からの差分に所定のゲインを乗じたものを目標速度として、速度フィードバックを行うことにより、速度と位置の差分を同時にゼロにするように制御を行うものである。
【0008】
インクジェットプリンタなど画像形成装置における高精度の位置ずれ補正についての従来例は、上述のようにそれ程高精度の位置決めの必要がなかった事情から、それ程多くはなかった。そこで、他の技術分野については、例えば、工作機械の送り軸を駆動するサーボ制御方法の技術における位置決め制御技術が考案されている(特許文献1)。この技術によると、工作機械の送り軸を駆動するサーボ制御方法であって、バックラッシュから生じる位置決め誤差を補正するために、位置指令と位置出力の遅れを考慮して象現の切り替わり時期を予測し、積分時定数を切り替えて制御する。
【0009】
【特許文献1】特許第3271440号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の技術においては、工作機械において金属など硬度の高いものを切削するために、巨大なトルクの発生を前提とした技術における同様の課題に対する解決手段であったため、金属切削ほどの大きなトルクが生じない一般的な画像形成装置のような回転軸に対する位置ずれ補正としては、特に停止位置付近での速度変化の挙動を適用させるためには適切なものではなかった。
【0011】
図9は、従来のデジタル速度制御装置による停止位置付近での搬送ベルト速度の一例を示す模式図である。停止位置付近まで制御して搬送ベルトを移動した後に、停止位置付近でホールドを行っている場合、紙搬送ローラ系は非常にゆっくりと動いている。図9に示すように、実際には搬送ベルトはサンプリング周期1つに対して1パルスとして検出できる変位量以下の、例えば8分の1パルス分の変位をサンプリング周期で割った速さで、即ち、(1/8パルス分の位置変位)/(サンプリング周期)で動いている。しかしながら、この動きは実際には、ロータリエンコーダのパルスエッジを切ってエンコーダの値が変化しない限り、コントローラが検知することはできないものである。これは、位置変位の最小単位よりも少なく変位しているからである。
【0012】
このゆっくりした動きによって、ロータリエンコーダのパルスエッジを切ってパルスが目標位置から1パルス分ずれた場合、現サンプリング時刻における位置と、1つ前のサンプリング時刻における位置情報との差分から、サンプリング時間間隔単位の速度として速度を算出すると、(1パルス分の位置変位)/(サンプリング周期)となる。この値は、実際の値、すなわち(1/8パルス分の位置変位)/(サンプリング周期)よりも遙かに大きくなってしまい、実際の速度が小さければ小さいほど即ち微妙な調整段階に入れば入るほど、誤差は大きくなる。
【0013】
即ち、画像形成装置のように搬送ベルトの停止位置付近では、現在のサンプリング時刻における位置情報と、サンプリング周波数が1つ前の位置情報の差分からサンプリング時間間隔単位の速度として求める手法で現在速度を求めると、実際の速度から大きくかけ離れてしまうため、特許文献1の技術のように速度に応じてゲインを切り替えてフィードバックを施す場合であったとしても、停止位置近くのサンプリング周波数1つ分に対応する変位量(位置ずれ量)以下の変位の速度制御に対しては、有効なものではなかった。
【0014】
その結果、位置決め制御領域で検出された速度をこのまま用いて速度フィードバックを行うと、速度誤差の影響で系を不安定にし、発振に至ることもあるという問題があった。
【0015】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、その目的は、移動体の位置決め制御において、停止位置付近で制御対象系の速度誤差を低減し、安定した位置決め制御が可能なデジタル速度制御装置、デジタルモータ制御装置、紙搬送装置、デジタル速度制御方法、その方法をコンピュータに実行させるプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、駆動手段をデジタル制御して移動させる移動体の変位量を検知手段によって検知させ、前記移動体の停止を制御する閉ループ型のデジタル速度制御装置であって、前記検知手段によって検知された前記移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得する変位量検出手段と、標本化時刻の経過に基づいて前記移動体の目標速度を算出する目標速度算出手段と、前記移動体が移動する現在速度を、前記変位量検出手段の検出する変位量および前記変位量を検出する時の標本化時刻の差分で算出する現在速度算出手段と、前記目標速度算出手段によって算出された目標速度が所定値よりも小さいか否かを判定する目標速度判定手段と、前記目標速度判定手段が前記目標速度は前記所定値よりも小さいと判定し、かつ、前記現在速度算出手段が前記現在速度は前記標本化周期あたり前記最小単位の変位量であると算出した場合、前記現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換える速度補正手段と、前記速度補正手段によって置き換えられた設定値と前記目標速度との誤差を算出する速度誤差算出手段と、前記速度誤差算出手段によって算出された速度誤差に基づいて前記駆動手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載のデジタル速度制御装置において、前記速度補正手段は、前記現在速度をゼロに置き換えるものであることを特徴とする。
【0018】
請求項3にかかる発明は、請求項1に記載のデジタル速度制御装置において、前記速度補正手段は、前記現在速度を、前記現在速度算出手段が前記最小単位の変位量であると算出したサンプリング時刻と、それ以前の直近の位置の変位を算出したサンプリング時刻との差分で前記最小単位の変位量を割った値に置き換えるものであることを特徴とする。
【0019】
請求項4にかかる発明は、請求項1に記載のデジタル速度制御装置において、前記速度補正手段は、前記現在速度を過去の複数の変位量から決定される予測値に置き換えるものであることを特徴とする。
【0020】
請求項5にかかる発明は、駆動手段をデジタル制御して移動させる移動体の変位量を検知手段によって検知させ、前記移動体の停止を制御する閉ループ型のデジタル速度制御装置であって、前記検知手段によって検知された前記移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得する変位量検出手段と、標本化時刻の経過に基づいて前記移動体の目標速度を算出する目標速度算出手段と、前記移動体が移動する現在速度を、前記変位量検出手段の検出する変位量および前記変位量を検出する時の標本化時刻の差分で算出する現在速度算出手段と、前記変位量検出手段によって検出された移動体の変位量によって前記移動体が、停止状態にあるか否かを判定する停止状態判定手段と、前記停止状態判定手段が前記移動体は停止状態にあると判定し、かつ、前記現在速度算出手段が前記現在速度は前記標本化周期あたり前記最小単位の変位量であると算出した場合、前記現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換える速度補正手段と、前記速度補正手段によって置き換えられた設定値と前記目標速度との誤差を算出する速度誤差算出手段と、前記速度誤差算出手段によって算出された速度誤差に基づいて前記駆動手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0021】
請求項6にかかる発明は、請求項5に記載のデジタル速度制御装置において、前記速度補正手段は、前記現在速度をゼロに置き換えるものであることを特徴とする。
【0022】
請求項7にかかる発明は、請求項5に記載のデジタル速度制御装置において、前記速度補正手段は、前記現在速度を、前記現在速度算出手段が前記最小単位の変位量であると算出したサンプリング時刻と、それ以前の直近の位置の変位を算出したサンプリング時刻との差分で前記最小単位の変位量を割った値に置き換えるものであることを特徴とする。
【0023】
請求項8にかかる発明は、請求項5に記載のデジタル速度制御装置において、前記速度補正手段は、前記現在速度を過去の複数の変位量から決定される予測値に置き換えるものであることを特徴とする。
【0024】
請求項9にかかる発明は、請求項5〜8のいずれか1つに記載のデジタル速度制御装置において、前記停止状態判定手段は、前記検出された移動体の変位量が、所定の時間、所定の値で継続した場合、前記移動体が、前記停止状態にあると判定するものであることを特徴とする。
【0025】
請求項10にかかる発明は、駆動手段をデジタル制御して移動させる移動体の変位量を検知手段によって検知させ、前記移動体の停止を制御する閉ループ型のデジタル速度制御装置であって、前記検知手段によって検知された前記移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得する変位量検出手段と、標本化時刻の経過に基づいて前記移動体の目標速度を算出する目標速度算出手段と、前記移動体が移動する現在速度を、前記変位量検出手段の検出する変位量および前記変位量を検出する時の標本化時刻の差分で算出する現在速度算出手段と、前記変位量検出手段によって検出された移動体の変位量によって前記移動体が、停止位置近傍にあって停止動作の制御を受ける停止制御状態にあるか否かを判定する停止制御判定手段と、前記停止制御判定手段が前記移動体は停止制御状態にあると判定し、かつ、前記現在速度算出手段が前記現在速度は前記標本化周期あたり前記最小単位の変位量であると算出した場合、前記現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換える速度補正手段と、前記速度補正手段によって置き換えられた設定値と前記目標速度との誤差を算出する速度誤差算出手段と、前記速度誤差算出手段によって算出された速度誤差に基づいて前記駆動手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0026】
請求項11にかかる発明は、請求項10に記載のデジタル速度制御装置において、前記速度補正手段は、前記現在速度をゼロに置き換えるものであることを特徴とする。
【0027】
請求項12にかかる発明は、請求項10に記載のデジタル速度制御装置において、前記速度補正手段は、前記現在速度を、前記現在速度算出手段が前記最小単位の変位量であると算出したサンプリング時刻と、それ以前の直近の位置の変位を算出したサンプリング時刻との差分で前記最小単位の変位量を割った値に置き換えるものであることを特徴とする。
【0028】
請求項13にかかる発明は、請求項10に記載のデジタル速度制御装置において、前記速度補正手段は、前記現在速度を過去の複数の変位量から決定される予測値に置き換えるものであることを特徴とする。
【0029】
請求項14にかかる発明は、請求項10〜13のいずれか1つに記載のデジタル速度制御装置において、前記停止制御判定手段は、前記検出された移動体の変位量が、所定の範囲内にある場合、前記移動体が、前記停止制御状態にあると判定するものであることを特徴とする。
【0030】
請求項15にかかる発明は、請求項10〜14のいずれか1つに記載のデジタル速度制御装置において、前記停止制御判定手段は、前記検出された移動体の変位量が、一定時間、所定の範囲内にある場合、前記移動体が、前記停止制御状態にあると判定するものであることを特徴とする。
【0031】
請求項16にかかる発明は、モータの回転をデジタル制御して回転により移動する移動体の変位量を検知手段によって検知させ、前記移動体の停止を制御するデジタルモータ制御装置であって、前記検知手段によって検知された前記移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得する変位量検出手段と、標本化時刻の経過に基づいて前記移動体の目標速度を算出する目標速度算出手段と、前記移動体が移動する現在速度を、前記変位量検出手段の検出する変位量および前記変位量を検出する時の標本化時刻の差分で算出する現在速度算出手段と、前記目標速度算出手段によって算出された目標速度が所定値よりも小さいか否かを判定する目標速度判定手段と、前記目標速度判定手段が前記目標速度は前記所定値よりも小さいと判定し、かつ、前記現在速度算出手段が前記現在速度は前記標本化周期あたり前記最小単位の変位量であると算出した場合、前記現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換える速度補正手段と、前記速度補正手段によって置き換えられた設定値と前記目標速度との誤差を算出する速度誤差算出手段と、前記速度誤差算出手段によって算出された速度誤差に基づいて前記駆動手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0032】
請求項17にかかる発明は、モータの回転により紙を搬送する紙搬送手段と、前記紙搬送手段のモータの回転をデジタル制御して回転により移動する移動体の変位量を検知手段によって検知させ、前記移動体の停止を制御するデジタルモータ制御装置とを備える紙搬送装置であって、前記デジタルモータ制御装置は、前記検知手段によって検知された前記移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得する変位量検出手段と、標本化時刻の経過に基づいて前記移動体の目標速度を算出する目標速度算出手段と、前記移動体が移動する現在速度を、前記変位量検出手段の検出する変位量および前記変位量を検出する時の標本化時刻の差分で算出する現在速度算出手段と、前記目標速度算出手段によって算出された目標速度が所定値よりも小さいか否かを判定する目標速度判定手段と、前記目標速度判定手段が前記目標速度は前記所定値よりも小さいと判定し、かつ、前記現在速度算出手段が前記現在速度は前記標本化周期あたり前記最小単位の変位量であると算出した場合、前記現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換える速度補正手段と、前記速度補正手段によって置き換えられた設定値と前記目標速度との誤差を算出する速度誤差算出手段と、前記速度誤差算出手段によって算出された速度誤差に基づいて前記モータの回転を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0033】
請求項18にかかる発明は、駆動手段をデジタル制御して移動させる移動体の変位量を検知手段によって検知させ、前記移動体の停止を制御する閉ループ型のデジタル速度制御装置におけるデジタル速度制御方法であって、前記検知手段によって検知された前記移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得する変位量検出工程と、標本化時刻の経過に基づいて前記移動体の目標速度を算出する目標速度算出工程と、前記移動体が移動する現在速度を、前記変位量検出工程で検出する変位量および前記変位量を検出する時の標本化時刻の差分で算出する現在速度算出工程と、前記目標速度算出工程で算出された目標速度が所定値よりも小さいか否かを判定する目標速度判定工程と、前記目標速度判定工程で前記目標速度は前記所定値よりも小さいと判定し、かつ、前記現在速度算出工程で前記現在速度は前記標本化周期あたり前記最小単位の変位量であると算出した場合、前記現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換える速度補正工程と、前記速度補正工程によって置き換えられた設定値と前記目標速度との誤差を算出する速度誤差算出工程と、前記速度誤差算出工程で算出された速度誤差に基づいて前記駆動手段を制御する制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0034】
請求項19にかかる発明は、駆動手段をデジタル制御して移動させる移動体の変位量を検知手段によって検知させ、前記移動体の停止を制御する閉ループ型のデジタル速度制御装置におけるデジタル速度制御方法であって、前記検知手段によって検知された前記移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得する変位量検出工程と、標本化時刻の経過に基づいて前記移動体の目標速度を算出する目標速度算出工程と、前記移動体が移動する現在速度を、前記変位量検出工程で検出する変位量および前記変位量を検出する時の標本化時刻の差分で算出する現在速度算出工程と、前記変位量検出工程で検出された移動体の変位量によって前記移動体が、停止状態にあるか否かを判定する停止状態判定工程と、前記停止状態判定工程が前記移動体は停止状態にあると判定し、かつ、前記現在速度算出工程が前記現在速度は前記標本化周期あたり前記最小単位の変位量であると算出した場合、前記現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換える速度補正工程と、前記速度補正工程で置き換えられた設定値と前記目標速度との誤差を算出する速度誤差算出工程と、前記速度誤差算出工程で算出された速度誤差に基づいて前記駆動手段を制御する制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0035】
請求項20にかかる発明は、駆動手段をデジタル制御して移動させる移動体の変位量を検知手段によって検知させ、前記移動体の停止を制御する閉ループ型のデジタル速度制御装置におけるデジタル速度制御方法であって、前記検知手段によって検知された前記移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得する変位量検出工程と、標本化時刻の経過に基づいて前記移動体の目標速度を算出する目標速度算出工程と、前記移動体が移動する現在速度を、前記変位量検出工程で検出する変位量および前記変位量を検出する時の標本化時刻の差分で算出する現在速度算出工程と、前記変位量検出工程で検出された移動体の変位量によって前記移動体が、停止位置近傍にあって停止動作の制御を受ける停止制御状態にあるか否かを判定する停止制御判定工程と、前記停止制御判定工程で前記移動体は停止制御状態にあると判定し、かつ、前記現在速度算出工程で前記現在速度は前記標本化周期あたり前記最小単位の変位量であると算出した場合、前記現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換える速度補正工程と、前記速度補正工程で置き換えられた設定値と前記目標速度との誤差を算出する速度誤差算出工程と、前記速度誤差算出工程で算出された速度誤差に基づいて前記駆動手段を制御する制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0036】
請求項21にかかる発明は、プログラムであって、請求項18〜20のいずれか1つに記載のデジタル速度制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0037】
請求項22にかかる発明は、記録媒体であって、請求項21に記載のプログラムをコンピュータ読み取り可能に格納したことを特徴とする。
【0038】
請求項23にかかる発明は、駆動手段により移動される移動体によって記録媒体を搬送する搬送装置と、前記記録媒体を搬送する移動体の変位量を検知手段によって検知して前記駆動手段を制御する閉ループ型のデジタル速度制御装置と、前記デジタル速度制御装置によって制御される前記駆動手段によって移動する移動体により搬送される記録媒体上に画像形成して出力する画像出力装置と、を備えた画像形成装置であって、前記デジタル速度制御装置は、前記検知手段によって検知する前記移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得する変位量検出手段と、標本化時刻の経過に基づいて前記移動体の目標速度を算出する目標速度算出手段と、前記移動体が移動する現在速度を、前記変位量検出手段の検出する変位量および前記変位量を検出する時の標本化時刻の差分で算出する現在速度算出手段と、前記目標速度算出手段によって算出された目標速度が所定値よりも小さいか否かを判定する目標速度判定手段と、前記目標速度判定手段が前記目標速度は前記所定値よりも小さいと判定し、かつ、前記現在速度算出手段が前記現在速度は前記標本化周期あたり前記最小単位の変位量であると算出した場合、前記現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換える速度補正手段と、前記速度補正手段によって置き換えられた設定値と前記目標速度との誤差を算出する速度誤差算出手段と、前記速度誤差算出手段によって算出された速度誤差に基づいて前記駆動手段を制御する制御手段と、を有するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
請求項1にかかる発明によれば、検知手段によって検知された移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得し、標本化時刻の経過に基づいて移動体の目標速度を算出し、移動体が移動する現在速度を、変位量およびその時の標本化時刻の差分で算出し、目標速度が所定値よりも小さいか否かを判定して小さいと判定し、かつ、現在速度は標本化周期あたり最小単位の変位量であると算出した場合、現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換えて目標速度との誤差を算出し、算出された速度誤差に基づいて駆動手段を制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御装置を提供することができる。
【0040】
請求項2にかかる発明によれば、現在速度をゼロに置き換える補正を行って駆動手段を制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御装置を提供することができる。
【0041】
請求項3にかかる発明によれば、現在速度を、最小単位の変位量であると算出したサンプリング時刻と、それ以前の直近の位置の変位を算出したサンプリング時刻との差分で最小単位の変位量を割った値に置き換える補正を行って駆動手段を制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御装置を提供することができる。
【0042】
請求項4にかかる発明によれば、現在速度を過去の複数の変位量から決定される予測値に置き換える補正を行って駆動手段を制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御装置を提供することができる。
【0043】
請求項5にかかる発明によれば、検知手段によって検知された移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得し、標本化時刻の経過に基づいて移動体の目標速度を算出し、移動体が移動する現在速度を、変位量およびその時の標本化時刻の差分で算出し、移動体の変位量によって移動体が、停止状態にあると判定し、かつ、現在速度は標本化周期あたり最小単位の変位量であると算出した場合、現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換えて、置き換えられた設定値と目標速度との誤差を算出し、算出された速度誤差に基づいて駆動手段を制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近の停止状態において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御装置を提供することができる。
【0044】
請求項6にかかる発明によれば、現在速度をゼロに置き換える補正を行って駆動手段を制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近の停止状態において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御装置を提供することができる。
【0045】
請求項7にかかる発明によれば、現在速度を、最小単位の変位量であると算出したサンプリング時刻と、それ以前の直近の位置の変位を算出したサンプリング時刻との差分で最小単位の変位量を割った値に置き換える補正を行って駆動手段を制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近の停止状態において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御装置を提供することができる。
【0046】
請求項8にかかる発明によれば、現在速度を過去の複数の変位量から決定される予測値に置き換える補正を行って駆動手段を制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近の停止状態において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御装置を提供することができる。
【0047】
請求項9にかかる発明によれば、検出された移動体の変位量が、所定の時間、所定の値で継続した場合、移動体が、停止状態にあると判定して駆動手段を制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近の停止状態において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御装置を提供することができる。
【0048】
請求項10にかかる発明によれば、検知手段によって検知された移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得し、標本化時刻の経過に基づいて移動体の目標速度を算出し、移動体が移動する現在速度を、変位量およびその時の標本化時刻の差分で算出し、移動体の変位量によって移動体が、停止位置近傍にあって停止動作の制御を受ける停止制御状態にあるか否かを判定して停止制御状態にあると判定し、かつ、現在速度は標本化周期あたり最小単位の変位量であると算出した場合、現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換えて、置き換えられた設定値と目標速度との誤差を算出し、算出された速度誤差に基づいて駆動手段を制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近の停止制御状態において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御装置を提供することができる。
【0049】
請求項11にかかる発明によれば、現在速度をゼロに置き換える補正を行って駆動手段を制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近の停止制御状態において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御装置を提供することができる。
【0050】
請求項12にかかる発明によれば、現在速度を、最小単位の変位量であると算出したサンプリング時刻と、それ以前の直近の位置の変位を算出したサンプリング時刻との差分で最小単位の変位量を割った値に置き換える補正を行って駆動手段を制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近の停止制御状態において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御装置を提供することができる。
【0051】
請求項13にかかる発明によれば、現在速度を過去の複数の変位量から決定される予測値に置き換える補正を行って駆動手段を制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近の停止制御状態において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御装置を提供することができる。
【0052】
請求項14にかかる発明によれば、検出された移動体の変位量が、所定の範囲内にある場合、移動体が、停止制御状態にあると判定して、駆動手段を制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近の停止制御状態において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御装置を提供することができる。
【0053】
請求項15にかかる発明によれば、検出された移動体の変位量が、一定時間、所定の範囲内にある場合、移動体が、停止制御状態にあると判定して、駆動手段を制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近の停止制御状態において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御装置を提供することができる。
【0054】
請求項16にかかる発明によれば、モータの回転をデジタル制御して回転により移動する移動体の変位量を検知手段によって検知させ、検知手段によって検知された移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得し、標本化時刻の経過に基づいて移動体の目標速度を算出し、移動体が移動する現在速度を、変位量およびその時の標本化時刻の差分で算出し、目標速度が所定値よりも小さいか否かを判定して小さいと判定し、かつ、現現在速度は標本化周期あたり最小単位の変位量であると算出した場合、現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換え、置き換えられた設定値と目標速度との誤差を算出し、算出された速度誤差に基づいて駆動手段を制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタルモータ速度制御装置を提供することができる。
【0055】
請求項17にかかる発明によれば、検知手段によって検知された移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得し、標本化時刻の経過に基づいて移動体の目標速度を算出し、移動体が移動する現在速度を、変位量およびその時の標本化時刻の差分で算出し、算出された目標速度が所定値よりも小さいと判定し、かつ、現在速度は標本化周期あたり最小単位の変位量であると算出した場合、現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換え、置き換えられた設定値と目標速度との誤差を算出し、算出された速度誤差に基づいてモータを制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御装置を有する紙搬送装置を提供することができる。
【0056】
請求項18にかかる発明によれば、検知手段によって検知された移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得し、標本化時刻の経過に基づいて移動体の目標速度を算出し、移動体が移動する現在速度を、変位量およびその時の標本化時刻の差分で算出し、目標速度が所定値よりも小さいか否かを判定して小さいと判定し、かつ、現在速度は標本化周期あたり最小単位の変位量であると算出した場合、現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換えて目標速度との誤差を算出し、算出された速度誤差に基づいて駆動手段を制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御方法を提供することができる。
【0057】
請求項19にかかる発明によれば、検知手段によって検知された移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得し、標本化時刻の経過に基づいて移動体の目標速度を算出し、移動体が移動する現在速度を、変位量およびその時の標本化時刻の差分で算出し、移動体の変位量によって移動体が、停止状態にあると判定し、かつ、現在速度は標本化周期あたり最小単位の変位量であると算出した場合、現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換えて、置き換えられた設定値と目標速度との誤差を算出し、算出された速度誤差に基づいて駆動手段を制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近の停止状態において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御方法を提供することができる。
【0058】
請求項20にかかる発明によれば、検知手段によって検知された移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得し、標本化時刻の経過に基づいて移動体の目標速度を算出し、移動体が移動する現在速度を、変位量およびその時の標本化時刻の差分で算出し、移動体の変位量によって移動体が、停止位置近傍にあって停止動作の制御を受ける停止制御状態にあるか否かを判定して停止制御状態にあると判定し、かつ、現在速度は標本化周期あたり最小単位の変位量であると算出した場合、現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換えて、置き換えられた設定値と目標速度との誤差を算出し、算出された速度誤差に基づいて駆動手段を制御する。この構成によって、移動体の現在速度の小さい停止位置付近の停止制御状態において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御方法を提供することができる。
【0059】
請求項21にかかる発明によれば、請求項18〜20のいずれか1つに記載のデジタル速度制御方法をコンピュータに実行させることができるプログラムを提供することができる。
【0060】
請求項22にかかる発明によれば、請求項21に記載のプログラムをコンピュータ読み取り可能に格納した記録媒体を提供することができる。
【0061】
請求項23にかかる発明によれば、デジタル速度制御装置の検知手段によって検知された画像形成装置における搬送装置の移動体の変位量を、デジタル速度制御装置の標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得し、標本化時刻の経過に基づいて移動体の目標速度を算出し、移動体が移動する現在速度を、変位量およびその時の標本化時刻の差分で算出し、目標速度が所定値よりも小さいか否かを判定して小さいと判定し、かつ、現在速度は標本化周期あたり最小単位の変位量であると算出した場合、現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換えて目標速度との誤差を算出し、算出された速度誤差に基づいて駆動手段を制御して、画像形成装置は画像出力する。この構成によって、記録媒体を搬送する移動体の現在速度の小さい停止位置付近において、測定された現在速度の誤差による制御対象系の振動を低減し、安定的な閉ループ型のデジタル速度制御が可能な画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
(1.実施の形態1)
添付図面を参照してこの発明にかかるデジタル速度制御装置、デジタルモータ制御装置、紙搬送装置、デジタル速度制御方法、その方法をコンピュータに実行させるプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、および画像形成装置の最良な実施の形態を、実施の形態1〜3、および変形例1〜6に沿って詳細に説明する。
【0063】
(1.1.全体構成)
実施の形態1にかかる紙搬送装置は、インクジェット式の画像形成装置において搬送ベルトを所定の距離分移動させる副走査系の制御装置として適用するものとして説明する。しかしながら本発明は、この適用にのみ限定するものではない。
【0064】
図1は、実施の形態1による紙搬送装置の機能的ブロック図である。実施の形態1による紙搬送装置1は、デジタル速度制御装置10、紙搬送ベルト装置300、および移動距離検出装置500を備える。
【0065】
紙搬送ベルト装置300は、駆動モータ200、搬送ベルト301、駆動ローラ302、従動ローラ303、およびタイミングベルト400を有する。駆動モータ200は駆動ローラ302を駆動し、駆動ローラ302および従動ローラ303によって支持された搬送ベルト301を移動させる。駆動モータ200と駆動ローラ302とがタイミングベルト400で接続される。駆動モータ200としては、直流モータを適用することができる。
【0066】
移動距離検出装置500は、ロータリエンコーダ501、およびセンサ502を有する。移動距離検出装置500は、紙搬送ベルト装置300における搬送ベルト301の現在の移動状態を変位量として検出する。ここでは、デジタル速度制御を行うので、変位量は所定の最小単位の整数倍でのみ得ることができる。
【0067】
搬送ベルト301の移動量検出としては、デジタル式の回転型エンコーダを駆動モータ200に取り付けたもの、ロータリエンコーダ501を駆動ローラ302に取り付けたもの、および、リニアエンコーダを搬送ベルト301の表面に取り付けたものなどを利用することができる。実施の形態では、ロータリエンコーダ501を駆動ローラ302に装着したものについて説明を行うが、この方式に限定されるものではない。ロータリエンコーダ501からは変位量が、エンコーダパルス単位の整数値で出力される。
【0068】
(1.2.デジタル速度制御装置)
デジタル速度制御装置10は、目標速度算出部101、現在速度算出部102、速度誤差算出部103、調節計部104、目標速度判定部105、および速度補正部106を有する。
【0069】
目標速度算出部101は、移動距離検出装置500から移動距離を入力し、後述する目標速度算出アルゴリズムと入力した移動距離情報に基づいて目標速度を算出し、算出した目標速度を調節計部104、および目標速度判定部105に対して出力する。
【0070】
図2は、目標速度算出部101が使用する目標速度算出アルゴリズムの一例を示す模式図である。目標速度算出部101は、制御開始時刻を基準とする時刻、現在の搬送ベルト301のベルト移動量(変位量)、および搬送ベルト301の現時点における現在速度を用いて、各時刻における目標速度を算出する。
【0071】
現在速度算出部102は、移動距離検出装置500から移動距離を入力し、入力した移動距離に基づいて現在速度を算出し、速度補正部106に対して出力する。
【0072】
目標速度判定部105は、目標速度算出部101から目標速度を入力し、入力した目標速度が所定の値よりも小さいかどうかを判定する。ここで、目標速度が所定値より小さい場合は、停止位置近傍にあって、停止動作の制御を受ける位置決め制御区域(図2のp6で示される時点以降の区域)であるとの判定をするためである。ここでの速度は例えば、4パルス〜10パルス分の変位量の速度である。まず、こうして位置決め制御区域まで搬送ベルト301を持ってきて、以降に精細な位置決め制御を行う。目標速度判定部105は、こうして得た判定結果を速度補正部106に対して出力する。
【0073】
速度補正部106は、目標速度判定部105から判定結果を受信し、現在速度算出部102から現在速度を受信して現在速度が1パルス分以下であるか否かを判定する。現在速度が1パルス分である場合は、強制的に0に置き換えて、補正した速度0を、速度誤差算出部103に対して出力する。速度補正部106の動作についてはさらに、後述する。
【0074】
速度誤差算出部103は、目標速度算出部101から目標速度を受信し、速度補正部106から補正された速度を受信し、補正された速度と目標速度との差分である速度誤差を算出し、調節計部104に対して出力する。
【0075】
調節計部104は、速度誤差算出部103が出力する速度誤差を受信し、モータ駆動出力を算出して駆動モータ200に対して出力する。この動作によって、調節計部104は、駆動モータ200の駆動を制御する。
【0076】
なお、当業者には自明であるが、デジタル速度制御装置10は、目標速度判定部105および速度補正部106を除けば、一般的な、閉ループ型の速度制御装置を構成することになる。
【0077】
ここで、デジタル速度制御装置10を構成する各部は、汎用のコンピュータ、あるいは汎用のデジタル信号処理プロセッサ(DSP)に対するプログラミングによって構成することができる。
【0078】
次に、デジタル速度制御装置10の紙搬送動作について説明する。図2に示した目標速度生成アルゴリズムでは、制御開始時刻から所定の時刻thまでの間は、等加速度で加速を行い、所定の速度v2に達した時点で、等速制御に切り替わる。その後、変位量が所定量p3に対応する位置に達した時点から、目標速度が変位量の関数によって表される減速に入る。次に、現在速度がv4に達した時点から、再度等速移動に入る。さらに、変位量が所定量p5に達した時点から、再度目標速度が変位量の関数によって表される減速制御に入る。さらに、変位量がp6に達した時点から、位置決め制御区域になり、調節計部104は、位置制御モードの制御動作を行う。位置制御モードでは、目標位置と現在位置との差分に、所定の利得成分を乗じた値を目標速度と見なし、速度制御を行う。
【0079】
ここで、現在速度算出部102は、移動距離検出器500が出力した隣接するサンプリング時刻間における変位量の差を算出して、その差分によって現在速度を求める。即ち、変位量の差分をΔx、サンプリング時刻差をΔtとすると、
v=Δx/Δt (式1)
を算出することによって現在速度が求められる。サンプリング時刻差は、1パルス分で算出しても良く、複数のパルス分で算出しても良い。対応する変位量の差分を採ればよいからである。
【0080】
目標速度判定部105は、入力された目標速度の絶対値が、所定の閾値以下であることによって位置制御モードであるか否かを判定する。即ち、所定の位置p5を過ぎた後において、停止位置に近づいて搬送ベルト301を細かく位置決め制御する位置決め制御区域に入ったか否かを判定する。ここで、パルス数nに対応する変位量をp(n)で表現する。閾値を1パルス分の移動量であると設定すると、閾値は例えば4パルスであればp(4)と表現できる。
【0081】
従って、目標速度判定部105は、
|v|≦p(4)/|Δt| (式2)
であるか否かを判定し、判定結果を速度補正部106に入力する。
【0082】
速度補正部106は、目標速度判定部105から入力された判定結果が、位置決め制御区域以外である場合、即ち目標速度が所定の閾値よりも小さくない場合は、現在速度算出部102から受信した現在速度をそのまま出力し、一気に位置決め位置近くまで近づける。一方、所定の閾値以下である場合には位置決め制御区域に入っているので、精細な制御を施す。精細に検出し、補正された現在速度を所定の設定値、例えば0に置き換え、速度誤差算出部103に出力する。位置決め制御区域では、精細に制御して正確に速度を検出し、強制的に目標速度を設定値、例えば0に置き換え、発散を抑え安定した制御を得る。
【0083】
図3は、位置決め制御区域における搬送ベルトの変位と時刻の関係を説明する図である。位置決め制御区域においては、搬送ベルト301を図2の位置p6にまで移動させた時間以降の区域である。
【0084】
ここで、時刻がt0になった時点で目標位置を超えるのであるが、1パルス分だけ超えたとして検出されるわけではない。時刻が図3中のt1(t0<t1)になった時点で1パルス分だけ位置の変位が検出される。そのため、従来例のように、t1となって初めて1パルス分の変位を検出することによって、時刻がt1で速度を、t1より1サンプリング周期前のtsとの時間幅、即ち、t1において(1パルス分の変位)/(1サンプリング周期)として算出すると、実際に動作している搬送ベルト301の速度と全く異なった大きな速さを算出してしまうので、収束に近づきながらも、位置決め制御区域に入ってから発散してしまうという問題が解消されていなかった。
【0085】
そこで、実施の形態1によるデジタル速度制御装置10においては、このような場合、速度補正部106は、強制的に速度を所定値、例えば0に置き換えることによって、より実際上の動作に即した正確な収束と、発散の防止を図るものである。
【0086】
速度誤差算出部103は、目標速度算出部101によって算出された目標速度と、速度補正部106から受信した補正後の現在速度との差分を算出して速度誤差を算出し、調節計部104に出力する。ここでは説明の便宜のために、補正後の現在速度という意味は、目標速度判定部105の判定によって所定の閾値以上であって現在速度算出部102によって算出された現在速度をそのまま出力する場合をも含むものとする。
【0087】
調節計部104は、入力した速度誤差に従って所定の調節計演算を用いてモータ出力を算出し、算出したモータ出力によって駆動モータ200の駆動を制御する。調節計部104が行う調節計演算としては、P制御、PI制御、PID制御、および状態フィードバック制御などが挙げられる。中でもPI制御は安定的な制御結果を得ることができるが、この方式に限定されるものではない。
【0088】
(1.3.速度制御手順)
図4は、実施の形態1による速度制御手順を説明するフローチャートである。現在速度算出部102は、搬送ベルト301の移動する現在速度を、センサ502が検出するエンコーダパルスによって算出する(ステップS101)。目標速度算出部101は、図2に示したアルゴリズムによって、経過時間を関数として、搬送ベルト301の目標速度を算出する(ステップS102)。
【0089】
目標速度判定部105は、ステップS102によって算出された目標速度を、閾値より小さいか否かを判定する。ここで、閾値は例えば、(4パルス分の変位)/(サンプリング周期)である。この目標速度を閾値判定することによって、位置決め制御区域であるか否かを判定する(ステップS103)。即ち、本実施の形態では位置決め制御区域を、目標速度が所定値より小さいか否かによって判定する。
【0090】
ここで、目標速度判定部105が、目標速度がこの閾値より小さいと判定した場合(ステップS103のYes)、搬送ベルト301は位置決め制御区域にあるものと判定したことになり、位置決め制御区域においては、搬送ベルト301の動作は収束に向かい、速度はさらに減速されて小さくなる必要がある。
【0091】
ここで、速度補正部106は、準停止状態とも言うべき搬送ベルト301の速度が、1パルス分の速さ以下であるか否かを判定する(ステップS104)。速度補正部106が、搬送ベルト301の速さが1パルス分の速さであると判定した場合(ステップS104のYes)、搬送ベルト301の搬送速度を、強制的に所定の設定値、例えば0に設定して、速度誤差算出部103に出力する(ステップS105)。
【0092】
速度誤差算出部10は、受信した目標速度0と現在速度算出部102による現在速度との速度誤差を算出して調節計部104に出力する(ステップS106)。調節計部104は、受信した速度誤差値に従ってコントローラ処理を施す。これにより、駆動モータ200の回転は制御される。
【0093】
一方、目標速度判定部105が、閾値判定によって位置決め制御区域ではないと判定した場合(ステップS103のNo)、速度誤差算出部103は、目標速度と現在速度の誤差を算出してそのまま、調節計部104に出力し(ステップS108)、調節計部104は受信した速度誤差に従ってコントローラ処理を施す(ステップS107)。
【0094】
また、速度補正部106が、閾値判定によって搬送ベルト301の速さが閾値より大であると判定した場合、即ち、搬送ベルト301の速度がパルス2パルス分の速さ以上であると判定した場合は(ステップS104のNo)、速度誤差算出部103は、目標速度と現在速度の誤差を算出してそのまま、調節計部104に出力し(ステップS108)、調節計部104は受信した速度誤差に従ってコントローラ処理を施す(ステップS107)。
【0095】
(1.4.効果)
以上説明したように、このデジタル速度制御装置10は、位置制御において、停止位置近傍における位置決め制御区域においては、搬送ベルト301の変位量が1パルスに相当する場合、搬送ベルト301の現在速度を強制的に0に置き換える補正を行う。これにより、現在速度の測定誤差を小さくし、停止位置近傍における位置決めの発散を抑え、位置決め制御を安定化させることができる。
【0096】
(1.5.変形例1)
変形例1による紙搬送装置1が、実施の形態1と異なる点は、デジタル速度制御装置10における速度補正部106a(図1の符号106と同じ位置)が異なることである。それ以外についての要素は構成も動作も実施の形態1と同一であるので説明を省略、あるいは簡略なものとし、主に異なる点について説明する。
【0097】
速度補正部106aは、入力された判定結果が、所定の閾値よりも小さい場合には、以下のような速度補正値を算出し、速度誤差算出部103に出力する。ここでは、速度補正部106aはメモリ(不図示)を備え、現在の目標速度と異なる直前の目標速度に変化した時刻を、常に、記憶するものとする。図3の例では、現在の目標速度が位置を表すパルスを検出することによってt1と検出されている場合、その直前の目標速度に変化した時刻はt0である。その後に、現在(時刻t1)においてパルスで測った場合の1パルス分だけ変位した。
【0098】
補正速度を以下のように定める。
p(1)/(t1−t0) (式3)
ここで、p(1)は1パルス分の変位量、即ち、この装置での最小変位量である。
【0099】
速度制御手順に即して差異を説明すると、図4に示したステップS105における速度補正部106aの補正は、速度補正部106aが目標速度を上述の式で示された速度に強制的に置き換えて、速度誤差算出部103に出力するものである。また、ステップS106においては、速度誤差算出部103が、速度補正部106aが出力した上記の式で算出された目標速度と現在速度との速度誤差を算出するものである。
【0100】
以上説明したように、変形例1によるデジタル速度制御装置10は、位置制御において、変位量が1パルス分の変位であった場合、即ち、最小単位の変位量であった場合、現在速度を(1パルス分の変位量)/(t1−t0)と補正するので、測定誤差の少ない現在速度を用いて制御を行う。これにより、現在速度の測定誤差を小さくし、停止位置近傍における発散を抑え、位置決め制御を安定化させることができる。
【0101】
(1.6.変形例2)
変形例2による紙搬送装置1が実施の形態1と異なるのは、デジタル速度制御装置10における速度補正部106が異なることである。変形例2では、速度補正部106bは実施の形態1での速度補正部106の位置に置かれている。それ以外についての要素は構成も動作も実施の形態1によるものと同一であるので説明を省略または簡略なものとし、主に異なった点について説明する。
【0102】
変形例2では速度補正部106bはメモリを備え(不図示)、常に、過去の所定サンプリング数の変位量を格納する。この過去の変位量および現在の変位量から、現在の目標速度を推定する。予測のアルゴリズムとしては、線形予測、あるいは移動平均予測などが考えられる。
【0103】
さらに、速度補正部106bは、目標速度判定部105から入力された判定結果は搬送ベルト301速度がパルスの最小変位量であると判定した場合、速度補正部106bが予測して算出した補正後の目標速度を出力する。
【0104】
速度制御手順についての差異を説明すると、図4に示したステップS105における速度補正部106bの補正は、予測値を算出し、最小単位の速度である場合、強制的に算出された予測値に置き換えて出力するものである。また、ステップS106においては、速度誤差算出部103が、速度補正部106bによって置き換えられた予測値と現在速度との速度誤差を算出するものである。
【0105】
このように、変形例2によるデジタル速度制御装置は、位置制御において、変位量が1パルス相当の変位量の場合、現在速度を予測値を算出して置き換えることによって補正するので、測定誤差の少ない現在速度を用いて速度制御を行う。これにより、現在速度の測定誤差を小さくし、停止位置近傍において発散を抑え、位置決め制御を安定化させることができる。
【0106】
(2.実施の形態2)
図5−1は、実施の形態2による紙搬送装置の機能的ブロック図である。実施の形態2によるデジタル速度制御装置12が実施の形態1と異なる点は、目標速度判定部105の代わりに、停止状態判定部125を備える点である。
【0107】
停止状態判定部125は、移動距離検出装置500の出力であるエンコーダパルス数を変位量として入力し、搬送ベルト301が位置決め制御区域(図2の位置p6以降の区域)にあるか否かを判定し、判定結果を速度補正部106に出力する。ここで、停止状態とは、搬送ベルト301が停止位置近傍に近づいて位置決め制御区域にはいり、いったんは、駆動モータ200を切るものである。駆動モータ200を切ったとしても、なお惰性で変位することがあり、この変位がエンコーダを切った時にはセンサ502によって変位が検知される。この場合、位置決め制御区域としては、例えば停止位置から4〜10パルス分の変位の範囲である。
【0108】
ここで、停止状態判定部125は、搬送ベルト301が所定の時間、所定の変位量状態が継続する場合、搬送ベルト301が位置決め制御区域にあると判定するものとしても良い。停止状態判定部125は、センサ502のエンコーダパルス数による変位量がほぼ位置p6を一定時間、保ち続けた場合、位置決め制御区域であると判定する。図2に示すように、目標速度がほぼ一定値を保つのはth以降位置p3まで、位置p4からp5まで、および位置p6以降の3つの区域である。
【0109】
速度補正部106は、入力された判定結果が位置決め制御区域以外であると判定した場合、現在速度算出部102によって算出された現在速度が最小パルス分である場合は、強制的に設定された補正値、例えば0に補正して、速度誤差算出部103に出力する。最小パルス分でない場合は、そのまま速度誤差算出部103に出力する。
【0110】
図5−2は、実施の形態2による速度制御手順を説明するフローチャートである。ここでは、実施の形態とはステップS203のみがステップS103と異なるので、主にステップS203についてのみ説明を行い、他のステップについては簡略化又は省略したものとする。
【0111】
停止状態判定部125は、移動距離検出装置500によって検出された移動距離により、位置決め制御区域にあるか否かを判定する。ここで、閾値は例えば、4〜1パルス分の変位量とする。この変位量を閾値判定することによって、位置決め制御区域であるか否かを判定する(ステップS203)。即ち、実施の形態2では位置決め制御区域を、変位量が所定値より小さいか否かによって判定する。
【0112】
ここで、停止状態判定部125が、変位量が所定値より小さいと判定した場合、(ステップS203のYes)、搬送ベルト301は位置決め制御区域にあるものと判定したことになり、駆動モータ200を停止状態とする。位置決め制御区域においては、搬送ベルト301の動作は収束に向かい、速度はさらに減速されて小さくなる必要がある。
【0113】
ここで、速度補正部106は、準停止状態とも言うべき搬送ベルト301の速度が、1パルス分の速さ以下であるか否かを判定する(ステップS204)。以下、実施の形態1の場合と同様であるので省略する。また、ステップS203においてNoの場合も実施の形態1の場合と同様であるので省略する。
【0114】
このように、実施の形態2によるデジタル速度制御装置12は、位置決め制御区域であるか否かを、変位量によって判定し、位置決め制御区域である場合は、現在速度を強制的に0に置き換えて出力する。これにより、現在速度の測定誤差を小さくし、位置決め制御を安定化させることができる。
【0115】
また、実施の形態2によるデジタル速度制御装置は、速度が比較的小さい場合、停止状態とし、現在速度を例えば0にする補正を施すことにより、測定誤差の少ない現在速度を用いて制御を行うことができるので、制御を安定化させることができる。
【0116】
(2.1.変形例3)
変形例3による紙搬送装置2が、実施の形態2と異なる点は、デジタル速度制御装置12における速度補正部106a(図5−1の符号106と同じ位置)が異なることである。それ以外についての要素は構成も動作も実施の形態2と同一であるので説明を省略、あるいは簡略なものとし、主に異なる点について説明する。
【0117】
速度補正部106aは、停止状態判定部125によって停止状態であると判定され、かつ、現在速度が最小パルス分であると判定した場合には、以下のような速度補正値を算出し、速度誤差算出部103に出力する。ここでは、速度補正部106aはメモリ(不図示)を備え、現在の目標速度と異なる直前の目標速度に変化した時刻を、常に、記憶するものとする。図3の例では、現在の目標速度が位置を表すパルスを検出することによってt1と検出されている場合、その直前の目標速度に変化した時刻はt0である。その後に、現在(時刻t1)においてパルスで測った場合の1パルス分だけ変位した。補正した速度を以下のように定める。
p(1)/(t1−t0) (式4)
ここで、p(1)は1パルス分の変位可能な最小量である。
【0118】
制御手順に即して差異を説明すると、図5−2に示したステップS205における速度補正部106aの補正は、速度補正部106aが目標速度を上述の式で示された速度に強制的に置き換えて、速度誤差算出部103に出力するものである。また、ステップS206においては、速度誤差算出部103が、速度補正部106aが出力した上記の式で算出された目標速度と現在速度との速度誤差を算出するものである。
【0119】
以上説明したように、変形例3によるデジタル速度制御装置12は、位置制御において、変位量が1パルス分の変位であった場合、即ち、最小単位の変位量であった場合、現在速度を(1パルス分の変位量)/(t1−t0)と補正するので、測定誤差の少ない現在速度を用いて制御を行う。これにより、現在速度の測定誤差を小さくし、停止位置近傍における発散を抑え、位置決め制御を安定化させることができる。
【0120】
(2.2.変形例4)
変形例4による紙搬送装置2が実施の形態2と異なるのは、デジタル速度制御装置12における速度補正部106が異なることである。変形例4では、速度補正部106bは、実施の形態2での速度補正部106の位置に置かれている。それ以外についての要素は構成も動作も実施の形態2によるものと同一であるので説明を省略または簡略なものとし、主に異なった点について説明する。
【0121】
変形例4では速度補正部106bはメモリを備え(不図示)、常に、過去の所定サンプリング数の変位量を格納する。この過去の変位量および現在の変位量から、現在の目標速度を推定する。予測のアルゴリズムとしては、線形予測、あるいは移動平均予測などが考えられる。
【0122】
さらに、速度補正部106bでは、停止状態判定部125から入力された判定結果が搬送ベルト301が停止状態であると判定した場合、速度補正部106bが予測して算出した補正後の目標速度を出力する。
【0123】
速度制御手順についての差異を説明すると、図5−2に示したステップS205における速度補正部106bの補正は、予測値を算出し、強制的に算出された予測値に置き換えて出力するものである。また、ステップS206においては、速度誤差算出部103が、速度補正部106bによって置き換えられた予測値と現在速度との速度誤差を算出するものである。
【0124】
このように、変形例4によるデジタル速度制御装置12は、位置制御において、変位量が1パルス相当の変位量の場合、現在速度を、予測値を算出して補正することにより、測定誤差の少ない現在速度を用いて速度制御を行う。これにより、現在速度の測定誤差を小さくし、停止位置近傍において発散を抑え、位置決め制御を安定化させることができる。
【0125】
(3.実施の形態3)
図6−1は、実施の形態3による紙搬送装置の機能的ブロック図である。実施の形態3によるデジタル速度制御装置13が実施の形態1と異なる点は、停止制御状態判定部135を備える点である。また、速度補正部106の機能も実施の形態1によるものと異なる。
【0126】
停止制御状態判定部135は、移動距離検出装置500の出力であるエンコーダパルス数である変位量を入力し、デジタル速度制御装置13が搬送ベルト301が停止制御状態であるか否かを判定する。ここで、停止制御状態とは、搬送ベルト301が停止位置近傍で、停止位置への制御を受けている状態であって、駆動モータ200を切ることなく制御状態を継続するものである。
【0127】
停止制御状態判定部135は、判定結果を速度補正部106に出力する。停止制御状態判定部135が判定する手法としては、例えば、制御対象の変位量と停止目標変位量との差分が所定の範囲内にあればデジタル速度制御装置13が停止制御状態であると判定する。
【0128】
停止制御状態判定部135は、搬送ベルト301が停止制御状態でないと判定した場合、現在速度をそのまま速度誤差算出部103に出力する。また、停止制御状態判定部135は、停止制御状態であると判定した場合、速度補正部106は、現在速度が最小変位量であるか否かを判定して最小変位量である場合、設定された現在速度、例えば速度0を出力する。
【0129】
図6−2は、実施の形態3による速度制御手順を説明するフローチャートである。ここでは、実施の形態1とはステップS303のみがステップS103と異なるので、主にステップS303についてのみ説明を行い、他のステップについては簡略化又は省略したものとする。
【0130】
停止制御状態判定部135は、移動距離検出装置500によって検出された移動距離により、位置決め制御区域にあるか否かを判定する。ここで、閾値は例えば、4〜10パルス分の変位量であって、その範囲内にあれば位置決め制御区域内であって、かつ、停止制御を受ける状態であると判定する。即ち、実施の形態2と異なる点は、駆動モータ200を切らずに、そのまま停止制御動作を行うことである。この変位量の幅を閾値判定することによって、位置決め制御区域であるか否かを判定する(ステップS303)。即ち、実施の形態3では位置決め制御区域を、変位量が所定の範囲内にあるか否かによって判定する。
【0131】
ここで、停止制御状態判定部135が、変位量が所定の範囲内にあると判定した場合、(ステップS303のYes)、搬送ベルト301は位置決め制御区域にあるものと判定したことになり、駆動モータ200を停止制御を受ける状態とする。位置決め制御区域においては、搬送ベルト301の動作は収束に向かい、速度はさらに減速されて小さくなる必要がある。
【0132】
ここで、速度補正部106は、準停止状態とも言うべき搬送ベルト301の速度が、1パルス分の速さ以下であるか否かを判定する(ステップS304)。以下、実施の形態1の場合と同様であるので省略する。また、ステップS303においてNoの場合も実施の形態1の場合と同様であるので省略する。
【0133】
このように、実施の形態3によるデジタル速度制御装置13は、速度が比較的小さい停止制御状態において、現在速度をあらかじめ決められた設定値、例えば速度0に強制的に置き換える。これにより、現在速度の測定誤差を小さくし、停止位置での位置決め制御を安定化させることができる。
【0134】
(3.1.変形例5)
変形例5による紙搬送装置3が、実施の形態3と異なる点は、デジタル速度制御装置13における速度補正部106a(図6−1の符号106と同じ位置)が異なることである。それ以外についての要素は構成も動作も実施の形態3と同一であるので説明を省略、あるいは簡略なものとし、主に異なる点について説明する。
【0135】
速度補正部106aは、入力された判定結果が、所定範囲内よりも小さい場合には、以下のような速度補正値を算出し、速度誤差算出部103に出力する。ここでは、速度補正部106aはメモリ(不図示)を備え、現在の目標速度と異なる直前の目標速度に変化した時刻を、常に、記憶するものとする。図3の例では、現在の目標速度が位置を表すパルスを検出することによってt1と検出されている場合、その直前の目標速度に変化した時刻はt0である。その後に、現在(時刻t1)においてパルスで測った場合の1パルス分だけ変位した。補正した速度を以下のように定める。
p(1)/(t1−t0) (式5)
ここで、p(1)は1パルス分の変位可能な最小量である。
【0136】
制御手順に即して差異を説明すると、図6−2に示したステップS305における速度補正部106aの補正は、速度補正部106aが目標速度を上述の式で示された速度に強制的に置き換えて、速度誤差算出部103に出力するものである。また、ステップS306においては、速度誤差算出部103が、速度補正部106aが出力した上記の式で算出された目標速度と現在速度との速度誤差を算出するものである。
【0137】
以上説明したように、変形例5によるデジタル速度制御装置13は、位置制御において、変位量が1パルス分の変位であった場合、即ち、最小単位の変位量であった場合、現在速度を(1パルス分の変位量)/(t1−t0)と補正するので、測定誤差の少ない現在速度を用いて制御を行う。これにより、現在速度の測定誤差を小さくし、停止位置近傍における発散を抑え、位置決め制御を安定化させることができる。
【0138】
(3.2.変形例6)
変形例6による紙搬送装置3が実施の形態3と異なるのは、デジタル速度制御装置13における速度補正部106が異なることである。変形例6では、速度補正部106bは、実施の形態3での速度補正部106の位置に置かれている。それ以外についての要素は構成も動作も実施の形態3によるものと同一であるので説明を省略または簡略なものとし、主に異なった点について説明する。
【0139】
変形例6では速度補正部106bはメモリを備え(不図示)、常に、過去の所定サンプリング数の変位量を格納する。この過去の変位量および現在の変位量から、現在の目標速度を推定する。予測のアルゴリズムとしては、線形予測、あるいは移動平均予測などが考えられる。
【0140】
さらに、速度補正部106bでは、停止制御状態判定部135から入力された判定結果が搬送ベルト301が停止制御状態であると判定した場合、速度補正部106bが予測して算出した補正後の目標速度を出力する。
【0141】
速度制御手順についての差異を説明すると、図6−2に示したステップS305における速度補正部106bの補正は、予測値を算出し、強制的に算出された予測値に置き換えて出力するものである。また、ステップS106においては、速度誤差算出部103が、速度補正部106bによって置き換えられた予測値と現在速度との速度誤差を算出するものである。
【0142】
このように、変形例6によるデジタル速度制御装置は、位置制御を受ける状態において、変位量が1パルス相当の変位量の場合、現在速度を予測値を算出して補正することにより、測定誤差の少ない現在速度を用いて速度制御を行う。これにより、現在速度の測定誤差を小さくし、停止位置近傍において発散を抑え、位置決め制御を安定化させることができる。
【0143】
以上説明したように、実施の形態によるデジタル速度制御装置は、速度が比較的小さい停止制御状態において、現在速度を予測を用いて補正することにより、測定誤差の少ない現在速度を用いて制御を行うことができるので、制御を安定化させることができる。
【0144】
(4.ハードウェア構成など)
図7は、かかるインクジェットプリンタのハードウェア構成を示すブロック図である。このインクジェットプリンタは、ファックスやスキャナなどの複合的機能を備える複合機として構成されている。図に示すように、このインクジェットプリンタは、コントローラ1210とエンジン部1260とをPCI(Peripheral Component Interconnect)バスで接続した構成となる。コントローラ1210は、インクジェットプリンタ全体の制御と表示ユニットによる表示処理、制御ユニットによる各種制御、画像形成ユニットによる画像形成など、FCUI/F1230、操作部1220からの入力を制御するコントローラである。エンジン部1260は、PCIバスに接続可能な画像処理エンジンなどであり、例えば取得した画像データに対して誤差拡散やガンマ変換などの画像処理部分が含まれる。
【0145】
コントローラ1210は、CPU1211と、ノースブリッジ(NB)1213と、システムメモリ(MEM−P)1212と、サウスブリッジ(SB)1214と、ローカルメモリ(MEM−C)1217と、ASIC(Application Specific Integrated Cercuit)1216と、ハードディスクドライブ1218とを有し、ノースブリッジ1213とASIC1216との間をAGP(Accelerated Graphics Port)バス1215で接続した構成となる。また、MEM−P1212は、ROM(Read Only Memory)1212aと、RAM(Random Access Memory)1212bとをさらに有する。
【0146】
CPU1211は、インクジェットプリンタの全体制御を行うものであり、NB1213、MEM−P1212およびSB1214からなるチップセットを有し、このチップセットを介して他の機器と接続される。
【0147】
NB1213は、CPU1211とMEM−P1212、SB1214、AGP1215とを接続するためのブリッジであり、MEM−P1212に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCIマスタおよびAGPターゲットとを有する。
【0148】
MEM−P1212は、プログラムやデータの格納用メモリ、プログラムやデータの展開用メモリなどとして用いるシステムメモリであり、ROM1212aとRAM1212bとからなる。ROM1212aは、プログラムやデータの格納用メモリとして用いる読み出し専用のメモリであり、RAM1212bは、プログラムやデータの展開用メモリ、画像処理時の画像描画メモリなどとして用いる書き込みおよび読み出し可能なメモリである。
【0149】
SB1214は、NB1213とPCIデバイス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。このSB1214は、PCIバスを介してNB1213と接続されており、このPCIバスには、FCUI/F1230なども接続される。
【0150】
ASIC1216は、マルチメディア情報処理用のハードウェア要素を有するマルチメディア情報処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGP1215、PCIバス、HDD1218およびMEM−C1217をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。
【0151】
このASIC1216は、PCIターゲットおよびAGPマスタと、ASIC1216の中核をなすアービタ(ARB)と、MEM−C1217を制御するメモリコントローラと、ハードウェアロジック等により画像データの回転などを行う複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)と、エンジン部1060との間でPCIバスを介してUSB(Universal Serial Bus)1240、IEEE(the Institute of Electrical and Electronics Engineers)1394インタフェース1250が接続される。
【0152】
MEM−C1217は、送信用画像バッファ、符号バッファとして用いるローカルメモリであり、HDD1218は、画像データの蓄積、プログラムの蓄積、フォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストーレジである。
【0153】
AGP1215は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレータカード用のバスインタフェースであり、MEM−P1212に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィクスアクセラレータカードを高速にするものである。
【0154】
ASIC1216に接続するキーボード1220は、操作者からの操作入力を受け付けて、ASIC1216に受け付けられた操作入力情報を送信する。
【0155】
なお、実施形態のインクジェットプリンタで実行されるデジタル速度制御プログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。
【0156】
実施形態のインクジェットプリンタで実行されるデジタル速度制御プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0157】
さらに、実施形態のインクジェットプリンタで実行されるデジタル速度制御プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、実施形態のインクジェットプリンタで実行されるデジタル速度制御プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0158】
実施の形態のインクジェットプリンタで実行されるデジタル速度制御プログラムは、上述した各部(目標速度算出部101、現在速度算出部102、速度誤差算出部103、調節計部104、目標速度判定部105、および速度補正部106)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記ROMからデジタル速度制御プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、目標速度算出部101、現在速度算出部102、速度誤差算出部103、調節計部104、目標速度判定部105、および速度補正部106が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0159】
以上説明した本発明の実施の形態あるいは変形例は、説明のための一例であって、本発明はここに説明したこれらの具体例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0160】
以上のように、本発明にかかるデジタル速度制御装置、デジタルモータ制御装置、紙搬送装置、デジタル速度制御方法、その方法をコンピュータに実行させるプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、および画像形成装置は、デジタル速度制御技術に有用であり、特に、画像処理技術でのデジタル速度制御技術に適している。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】実施の形態1による紙搬送装置の機能的ブロック図である。
【図2】目標速度算出部101が使用する目標速度算出アルゴリズムの一例を示す模式図である。
【図3】位置決め制御区域における搬送ベルトの変位と時刻の関係を説明する図である。
【図4】実施の形態1による速度制御手順を説明するフローチャートである。
【図5−1】実施の形態2による紙搬送装置の機能的ブロック図である。
【図5−2】実施の形態2による速度制御手順を説明するフローチャートである。
【図6−1】実施の形態3による紙搬送装置の機能的ブロック図である。
【図6−2】実施の形態3による速度制御手順を説明するフローチャートである。
【図7】かかるインクジェットプリンタのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図8】従来のデジタル速度制御装置による紙搬送系のモータ制御を説明する図である。
【図9】従来のデジタル速度制御装置による停止位置付近での搬送ベルト速度の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0162】
1 紙搬送装置
10 デジタル速度制御装置
101 目標速度算出部
102 現在速度算出部
103 速度誤差算出部
104 調節計部
105 目標速度判定部
106 速度補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段をデジタル制御して移動させる移動体の変位量を検知手段によって検知させ、前記移動体の停止を制御する閉ループ型のデジタル速度制御装置であって、
前記検知手段によって検知された前記移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得する変位量検出手段と、
標本化時刻の経過に基づいて前記移動体の目標速度を算出する目標速度算出手段と、
前記移動体が移動する現在速度を、前記変位量検出手段の検出する変位量および前記変位量を検出する時の標本化時刻の差分で算出する現在速度算出手段と、
前記目標速度算出手段によって算出された目標速度が所定値よりも小さいか否かを判定する目標速度判定手段と、
前記目標速度判定手段が前記目標速度は前記所定値よりも小さいと判定し、かつ、前記現在速度算出手段が前記現在速度は前記標本化周期あたり前記最小単位の変位量であると算出した場合、前記現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換える速度補正手段と、
前記速度補正手段によって置き換えられた設定値と前記目標速度との誤差を算出する速度誤差算出手段と、
前記速度誤差算出手段によって算出された速度誤差に基づいて前記駆動手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするデジタル速度制御装置。
【請求項2】
前記速度補正手段は、前記現在速度をゼロに置き換えるものであることを特徴とする請求項1に記載のデジタル速度制御装置。
【請求項3】
前記速度補正手段は、前記現在速度を、
前記現在速度算出手段が前記最小単位の変位量であると算出したサンプリング時刻と、それ以前の直近の位置の変位を算出したサンプリング時刻との差分で前記最小単位の変位量を割った値に置き換えるものであることを特徴とする請求項1に記載のデジタル速度制御装置。
【請求項4】
前記速度補正手段は、前記現在速度を過去の複数の変位量から決定される予測値に置き換えるものであることを特徴とする請求項1に記載のデジタル速度制御装置。
【請求項5】
駆動手段をデジタル制御して移動させる移動体の変位量を検知手段によって検知させ、前記移動体の停止を制御する閉ループ型のデジタル速度制御装置であって、
前記検知手段によって検知された前記移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得する変位量検出手段と、
標本化時刻の経過に基づいて前記移動体の目標速度を算出する目標速度算出手段と、
前記移動体が移動する現在速度を、前記変位量検出手段の検出する変位量および前記変位量を検出する時の標本化時刻の差分で算出する現在速度算出手段と、
前記変位量検出手段によって検出された移動体の変位量によって前記移動体が、停止状態にあるか否かを判定する停止状態判定手段と、
前記停止状態判定手段が前記移動体は停止状態にあると判定し、かつ、前記現在速度算出手段が前記現在速度は前記標本化周期あたり前記最小単位の変位量であると算出した場合、前記現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換える速度補正手段と、
前記速度補正手段によって置き換えられた設定値と前記目標速度との誤差を算出する速度誤差算出手段と、
前記速度誤差算出手段によって算出された速度誤差に基づいて前記駆動手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするデジタル速度制御装置。
【請求項6】
前記速度補正手段は、前記現在速度をゼロに置き換えるものであることを特徴とする請求項5に記載のデジタル速度制御装置。
【請求項7】
前記速度補正手段は、前記現在速度を、前記現在速度算出手段が前記最小単位の変位量であると算出したサンプリング時刻と、それ以前の直近の位置の変位を算出したサンプリング時刻との差分で前記最小単位の変位量を割った値に置き換えるものであることを特徴とする請求項5に記載のデジタル速度制御装置。
【請求項8】
前記速度補正手段は、前記現在速度を過去の複数の変位量から決定される予測値に置き換えるものであることを特徴とする請求項5に記載のデジタル速度制御装置。
【請求項9】
前記停止状態判定手段は、前記検出された移動体の変位量が、所定の時間、所定の値で継続した場合、前記移動体が、前記停止状態にあると判定するものであることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1つに記載のデジタル速度制御装置。
【請求項10】
駆動手段をデジタル制御して移動させる移動体の変位量を検知手段によって検知させ、前記移動体の停止を制御する閉ループ型のデジタル速度制御装置であって、
前記検知手段によって検知された前記移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得する変位量検出手段と、
標本化時刻の経過に基づいて前記移動体の目標速度を算出する目標速度算出手段と、
前記移動体が移動する現在速度を、前記変位量検出手段の検出する変位量および前記変位量を検出する時の標本化時刻の差分で算出する現在速度算出手段と、
前記変位量検出手段によって検出された移動体の変位量によって前記移動体が、停止位置近傍にあって停止動作の制御を受ける停止制御状態にあるか否かを判定する停止制御判定手段と、
前記停止制御判定手段が前記移動体は停止制御状態にあると判定し、かつ、前記現在速度算出手段が前記現在速度は前記標本化周期あたり前記最小単位の変位量であると算出した場合、前記現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換える速度補正手段と、
前記速度補正手段によって置き換えられた設定値と前記目標速度との誤差を算出する速度誤差算出手段と、
前記速度誤差算出手段によって算出された速度誤差に基づいて前記駆動手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするデジタル速度制御装置。
【請求項11】
前記速度補正手段は、前記現在速度をゼロに置き換えるものであることを特徴とする請求項10に記載のデジタル速度制御装置。
【請求項12】
前記速度補正手段は、前記現在速度を、前記現在速度算出手段が前記最小単位の変位量であると算出したサンプリング時刻と、それ以前の直近の位置の変位を算出したサンプリング時刻との差分で前記最小単位の変位量を割った値に置き換えるものであることを特徴とする請求項10に記載のデジタル速度制御装置。
【請求項13】
前記速度補正手段は、前記現在速度を過去の複数の変位量から決定される予測値に置き換えるものであることを特徴とする請求項10に記載のデジタル速度制御装置。
【請求項14】
前記停止制御判定手段は、前記検出された移動体の変位量が、所定の範囲内にある場合、前記移動体が、前記停止制御状態にあると判定するものであることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1つに記載のデジタル速度制御装置。
【請求項15】
前記停止制御判定手段は、前記検出された移動体の変位量が、一定時間、所定の範囲内にある場合、前記移動体が、前記停止制御状態にあると判定するものであることを特徴とする請求項10〜14のいずれか1つに記載のデジタル速度制御装置。
【請求項16】
モータの回転をデジタル制御して回転により移動する移動体の変位量を検知手段によって検知させ、前記移動体の停止を制御するデジタルモータ制御装置であって、
前記検知手段によって検知された前記移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得する変位量検出手段と、
標本化時刻の経過に基づいて前記移動体の目標速度を算出する目標速度算出手段と、
前記移動体が移動する現在速度を、前記変位量検出手段の検出する変位量および前記変位量を検出する時の標本化時刻の差分で算出する現在速度算出手段と、
前記目標速度算出手段によって算出された目標速度が所定値よりも小さいか否かを判定する目標速度判定手段と、
前記目標速度判定手段が前記目標速度は前記所定値よりも小さいと判定し、かつ、前記現在速度算出手段が前記現在速度は前記標本化周期あたり前記最小単位の変位量であると算出した場合、前記現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換える速度補正手段と、
前記速度補正手段によって置き換えられた設定値と前記目標速度との誤差を算出する速度誤差算出手段と、
前記速度誤差算出手段によって算出された速度誤差に基づいて前記駆動手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするデジタルモータ制御装置。
【請求項17】
モータの回転により紙を搬送する紙搬送手段と、前記紙搬送手段のモータの回転をデジタル制御して回転により移動する移動体の変位量を検知手段によって検知させ、前記移動体の停止を制御するデジタルモータ制御装置とを備える紙搬送装置であって、
前記デジタルモータ制御装置は、
前記検知手段によって検知された前記移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得する変位量検出手段と、
標本化時刻の経過に基づいて前記移動体の目標速度を算出する目標速度算出手段と、
前記移動体が移動する現在速度を、前記変位量検出手段の検出する変位量および前記変位量を検出する時の標本化時刻の差分で算出する現在速度算出手段と、
前記目標速度算出手段によって算出された目標速度が所定値よりも小さいか否かを判定する目標速度判定手段と、
前記目標速度判定手段が前記目標速度は前記所定値よりも小さいと判定し、かつ、前記現在速度算出手段が前記現在速度は前記標本化周期あたり前記最小単位の変位量であると算出した場合、前記現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換える速度補正手段と、
前記速度補正手段によって置き換えられた設定値と前記目標速度との誤差を算出する速度誤差算出手段と、
前記速度誤差算出手段によって算出された速度誤差に基づいて前記モータの回転を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする紙搬送装置。
【請求項18】
駆動手段をデジタル制御して移動させる移動体の変位量を検知手段によって検知させ、前記移動体の停止を制御する閉ループ型のデジタル速度制御装置におけるデジタル速度制御方法であって、
前記検知手段によって検知された前記移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得する変位量検出工程と、
標本化時刻の経過に基づいて前記移動体の目標速度を算出する目標速度算出工程と、
前記移動体が移動する現在速度を、前記変位量検出工程で検出する変位量および前記変位量を検出する時の標本化時刻の差分で算出する現在速度算出工程と、
前記目標速度算出工程で算出された目標速度が所定値よりも小さいか否かを判定する目標速度判定工程と、
前記目標速度判定工程で前記目標速度は前記所定値よりも小さいと判定し、かつ、前記現在速度算出工程で前記現在速度は前記標本化周期あたり前記最小単位の変位量であると算出した場合、前記現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換える速度補正工程と、
前記速度補正工程によって置き換えられた設定値と前記目標速度との誤差を算出する速度誤差算出工程と、
前記速度誤差算出工程で算出された速度誤差に基づいて前記駆動手段を制御する制御工程と、
を含むことを特徴とするデジタル速度制御方法。
【請求項19】
駆動手段をデジタル制御して移動させる移動体の変位量を検知手段によって検知させ、前記移動体の停止を制御する閉ループ型のデジタル速度制御装置におけるデジタル速度制御方法であって、
前記検知手段によって検知された前記移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得する変位量検出工程と、
標本化時刻の経過に基づいて前記移動体の目標速度を算出する目標速度算出工程と、
前記移動体が移動する現在速度を、前記変位量検出工程で検出する変位量および前記変位量を検出する時の標本化時刻の差分で算出する現在速度算出工程と、
前記変位量検出工程で検出された移動体の変位量によって前記移動体が、停止状態にあるか否かを判定する停止状態判定工程と、
前記停止状態判定工程が前記移動体は停止状態にあると判定し、かつ、前記現在速度算出工程が前記現在速度は前記標本化周期あたり前記最小単位の変位量であると算出した場合、前記現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換える速度補正工程と、
前記速度補正工程で置き換えられた設定値と前記目標速度との誤差を算出する速度誤差算出工程と、
前記速度誤差算出工程で算出された速度誤差に基づいて前記駆動手段を制御する制御工程と、
を含むことを特徴とするデジタル速度制御方法。
【請求項20】
駆動手段をデジタル制御して移動させる移動体の変位量を検知手段によって検知させ、前記移動体の停止を制御する閉ループ型のデジタル速度制御装置におけるデジタル速度制御方法であって、
前記検知手段によって検知された前記移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得する変位量検出工程と、
標本化時刻の経過に基づいて前記移動体の目標速度を算出する目標速度算出工程と、
前記移動体が移動する現在速度を、前記変位量検出工程で検出する変位量および前記変位量を検出する時の標本化時刻の差分で算出する現在速度算出工程と、
前記変位量検出工程で検出された移動体の変位量によって前記移動体が、停止位置近傍にあって停止動作の制御を受ける停止制御状態にあるか否かを判定する停止制御判定工程と、
前記停止制御判定工程で前記移動体は停止制御状態にあると判定し、かつ、前記現在速度算出工程で前記現在速度は前記標本化周期あたり前記最小単位の変位量であると算出した場合、前記現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換える速度補正工程と、
前記速度補正工程で置き換えられた設定値と前記目標速度との誤差を算出する速度誤差算出工程と、
前記速度誤差算出工程で算出された速度誤差に基づいて前記駆動手段を制御する制御工程と、
を含むことを特徴とするデジタル速度制御方法。
【請求項21】
請求項18〜20のいずれか1つに記載のデジタル速度制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項22】
請求項21に記載のプログラムをコンピュータ読み取り可能に格納したことを特徴とする記録媒体。
【請求項23】
駆動手段により移動される移動体によって記録媒体を搬送する搬送装置と、
前記記録媒体を搬送する移動体の変位量を検知手段によって検知して前記駆動手段を制御する閉ループ型のデジタル速度制御装置と、
前記デジタル速度制御装置によって制御される前記駆動手段によって移動する移動体により搬送される記録媒体上に画像形成して出力する画像出力装置と、
を備えた画像形成装置であって、
前記デジタル速度制御装置は、
前記検知手段によって検知する前記移動体の変位量を、標本化周期に対応する最小単位の変位量の整数倍によって取得する変位量検出手段と、
標本化時刻の経過に基づいて前記移動体の目標速度を算出する目標速度算出手段と、
前記移動体が移動する現在速度を、前記変位量検出手段の検出する変位量および前記変位量を検出する時の標本化時刻の差分で算出する現在速度算出手段と、
前記目標速度算出手段によって算出された目標速度が所定値よりも小さいか否かを判定する目標速度判定手段と、
前記目標速度判定手段が前記目標速度は前記所定値よりも小さいと判定し、かつ、前記現在速度算出手段が前記現在速度は前記標本化周期あたり前記最小単位の変位量であると算出した場合、前記現在速度をあらかじめ設定されている設定値に置き換える速度補正手段と、
前記速度補正手段によって置き換えられた設定値と前記目標速度との誤差を算出する速度誤差算出手段と、
前記速度誤差算出手段によって算出された速度誤差に基づいて前記駆動手段を制御する制御手段と、
を有するものであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−18257(P2007−18257A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199080(P2005−199080)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】