説明

データ処理装置

【課題】実在しない道路に基づく誤った処理が行われてしまうことを防ぐことが可能なナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】ナビゲーション装置は、地図データに登録されている道路以外の領域における経路である非道路領域経路について、自車両による当該経路の走行回数と、当該経路を移動することにより、地図データに登録されている道路を移動する場合に比べて短縮される移動距離と、当該経路の周辺における所定の施設の有無とを特定する。そして、特定した内容に基づき、当該経路が実在する道路であることの確度を判定し、この確度に基づき、当該経路が実在する道路であるか否かを判定する。そして、ナビゲーション装置は、実在する道路であると判定された非道路領域経路に基づき、経路案内処理や地図画像表示処理等を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データに基づき処理を行うデータ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の移動軌跡に基づき、地図データに登録されていない新たな道路を学習するナビゲーション装置が知られている。特許文献1に記載のナビゲーション装置は、自車両が地図データに登録されている道路以外の領域を走行した際の移動軌跡に基づき経路データを生成して記憶することにより、地図データに登録されていない新たな道路を学習する。特許文献1に記載のナビゲーション装置によれば、例えば、地図データに登録されていない道路が新たに建設された場合等であっても、自車両がこの道路を走行することによりこの道路についての学習がなされる。したがって、外部から地図データを更新することなく、新たに建設された道路等を対象とした経路検索等の処理を行うことが可能となる。
【特許文献1】特開平6−88733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のナビゲーション装置は、例えば、自車両が地図データに登録されている道路から駐車場等に進入し、駐車場内を走行している場合であっても、駐車場内の走行軌跡に対応する経路を新たな道路として学習してしまうおそれがある。また、このナビゲーション装置は、測定誤差により、地図データに登録されている道路以外の領域における自車両の走行軌跡が誤って検出されてしまった場合であっても、この移動軌跡に対応する経路を新たな道路として学習してしまうおそれがある。このように、特許文献1に記載のナビゲーション装置は、実在しない道路までも新たな道路として学習してしまうおそれがある。
【0004】
本願発明は上記課題を解決するためになされたものであり、上述したナビゲーション装置のように、地図データに登録されていない新たな道路についての学習機能を有し、学習した新たな道路に基づき種々の処理を行うデータ処理装置に関するものである。本願発明は、実在しない道路に基づく誤った処理が行われてしまうことを防ぐことが可能なデータ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのなされた請求項1に記載のデータ処理装置は、地図データを取得する取得手段と、取得手段により取得された地図データが示す地図における経路を記憶するための経路記憶手段と、取得手段により取得された地図データが示す地図において、自装置の移動軌跡を特定する移動軌跡特定手段とを備える。また、このデータ処理装置は、移動軌跡特定手段により、取得手段により取得された地図データが示す地図における道路以外の領域である非道路領域を自装置が移動する際の移動軌跡を特定し、特定した移動軌跡に対応する経路を非道路領域経路として経路記憶手段に記憶させる経路記憶制御手段と、このデータ処理装置は、移動軌跡特定手段により特定される移動軌跡に基づき、経路記憶手段に記憶されている非道路領域経路について、自装置の移動が行われた頻度を特定する頻度特定手段とを備える。また、このデータ処理装置は、頻度特定手段により特定された非道路領域経路についての頻度に基づき、当該非道路領域経路が、取得手段により取得された地図データに登録されていない新たな道路である新規道路を示す経路であるか否かを判定する新規道路判定手段と、新規道路判定手段により新規道路を示す経路であると判定された非道路領域経路に基づき所定の処理を実行する処理実行手段とを備える。
【0006】
尚、データ処理装置とは、例えば、車載用のナビゲーション装置であっても良いし、ナビゲーション機能を有する携帯電話等といった携帯装置であっても良い。また、取得手段は、例えば、HDDやDVD−ROM等といった記憶媒体から地図データを取得しても良いし、無線通信により公衆回線網にアクセスし、外部に設置されたサーバから公衆通信網を介して地図データを取得しても良い。また、処理実行手段は、例えば、新規道路を示す経路であると判定された非道路領域経路と地図データとに基づき、経路案内処理を行っても良いし、自装置の現在地周辺の地図画像の表示処理等を行っても良い。また、新規道路を示す経路であると判定された非道路領域経路に基づき、取得手段により取得された地図データや、取得手段により取得される地図データを更新しても良い。
【0007】
上述したように、地図データが示す地図における道路以外の領域である非道路領域を自車両が走行する際の走行軌跡に基づき、地図データに登録されていない新たな道路である新規道路を学習するという機能を有するナビゲーション装置が知られている。このようなナビゲーション装置を用いた場合、例えば自車両が駐車場内を走行している場合や、測定誤差により誤った走行軌跡が検出されてしまった場合等に、実在しない道路を新規道路として学習してしまうおそれがある。このため、学習された道路に基づき適切な処理を行うためには、学習された道路が実在する道路であるか否かを判定する必要がある。
【0008】
ここで、例えば、学習された道路を経路とした自装置の移動が頻繁に行われる場合には、この道路は実在する可能性が高いと考えることができる。
そこで、請求項1に記載のデータ処理装置では、地図データに登録されている道路以外を自装置が移動した際の経路である非道路領域経路について、自装置の移動が行われた頻度が特定され、特定された頻度に基づき、この非道路領域経路が新規道路であるか否の判定がなされる。そして、新規道路であると判定された非道路領域経路に基づき、経路案内処理等といった所定の処理が実行される。こうすることにより、実在しない道路に基づく誤った処理が行われてしまうことを防ぐことが可能となる。
【0009】
また、例えば、学習された道路を移動することにより、地図データに登録されている道路を移動する場合に比べ、所定の地点に到達するまでの距離が短くなる場合、つまり、学習された道路が近道である場合には、この道路は有用性が高い道路であると言える。したがって、この学習された道路は、測定誤差等により偶発的に検出されてしまった移動軌跡に基づく道路ではなく、データ処理装置のユーザが主体的に移動経路として選択した道路である可能性が高いと考えることができる。
【0010】
そこで、請求項2に記載のデータ処理装置は、上述した取得手段,経路記憶手段,移動軌跡特定手段,経路記憶制御手段,処理実行手段に加え、取得手段により取得された地図データに基づき、当該地図データが示す地図における道路において、経路記憶手段に記憶されている非道路領域経路の始点と終点とを結ぶ経路である既存の他の経路を特定する経路特定手段を備える。また、このデータ処理装置は、経路記憶手段に記憶されている非道路領域経路について、当該非道路領域経路の始点から終点までの道なり距離と、経路特定手段により特定された当該非道路領域経路に係る既存の他の経路の始点から終点までの道なり距離とに基づき、当該非道路領域経路が、取得手段により取得された地図データに登録されていない新たな道路である新規道路を示す経路であるか否かを判定する新規道路判定手段を備える。
【0011】
こうすることにより、非道路領域経路を移動する際の移動距離等に基づき、非道路領域経路についての有用性を判定することができる。そして、この非道路領域経路の有用性が高い場合には、この非道路領域経路を新規道路であるとみなし、この非道路領域経路に基づく所定の処理を行うことができる。したがって、実在しない道路に基づく誤った処理が行われてしまうことを防ぐことが可能となる。
【0012】
また、例えば、学習された道路が、ある施設への経路である場合には、この道路は実在する可能性が高いと考えることができる。
そこで、請求項3に記載のデータ処理装置は、上述した取得手段,経路記憶手段,移動軌跡特定手段,経路記憶制御手段,処理実行手段に加え、取得手段により取得された地図データに基づき、経路記憶手段に記憶されている非道路領域経路の周辺における所定の施設の有無を判定する施設判定手段を備えていても良い。また、このデータ処理装置は、施設判定手段による非道路領域経路の周辺における所定の施設の有無についての判定結果に基づき、当該非道路領域経路が、取得手段により取得された地図データに登録されていない新たな道路である新規道路を示す経路であるか否かを判定する新規道路判定手段を備えていても良い。
【0013】
尚、所定の施設とは、商業施設や娯楽施設等であっても良い。
こうすることにより、非道路領域経路の周辺に所定の施設が存在する場合には、この非道路領域経路が所定の施設への経路であるとみなし、この非道路領域経路を新規道路であると判定することができる。そして、新規道路であると判定された非道路領域経路に基づき所定の処理を行うことができる。したがって、実在しない道路に基づく誤った処理が行われてしまうことを防ぐことが可能となる。
【0014】
また、データ処理装置は、次のようにして非道路領域経路が新規道路であるか否かの判定を行っても良い。
すなわち、請求項4に記載されているように、データ処理装置は、上述した取得手段,経路記憶手段,移動軌跡特定手段,経路記憶制御手段,処理実行手段に加え、経路記憶手段に記憶されている非道路領域経路が、取得手段により取得された地図データに登録されていない新たな道路である新規道路を示す経路であるか否かを判定する新規道路判定手段を備えていても良い。そして、このデータ処理装置は、第一の判定情報特定手段,第二の判定情報特定手段,第三の判定情報特定手段のうちのいずれか二つの手段を備えており、新規道路判定手段は、経路記憶手段に記憶されている非道路領域経路について、自装置が備える少なくとも二つの判定情報特定手段により特定された当該非道路領域経路についての判定情報に基づき、当該非道路領域経路が新規道路を示す経路であるか否かの判定を行っても良い。
【0015】
尚、第一の判定情報特定手段は、移動軌跡特定手段により特定される移動軌跡に基づき、経路記憶手段に記憶されている非道路領域経路について自装置の移動が行われた頻度を、当該非道路領域が新規道路を示す経路であるか否かを判定するための情報である第一の判定情報として特定しても良い。また、第二の判定情報特定手段は、取得手段により取得された地図データに基づき、当該地図データが示す地図における道路において、経路記憶手段に記憶されている非道路領域経路の始点と終点とを結ぶ経路である既存の他の経路を特定し、当該非道路領域経路の始点から終点までの道なり距離と、特定した当該非道路領域経路に係る既存の他の経路の始点から終点までの道なり距離とを、当該非道路領域経路が新規道路を示す経路であるか否かを判定するための情報である第二の判定情報として特定しても良い。また、第三の判定情報特定手段は、取得手段により取得された地図データに基づき、経路記憶手段に記憶されている非道路領域経路の周辺における所定の施設の有無を判定し、所定の施設の有無についての判定結果を、当該非道路領域経路が新規道路を示す経路であるか否かを判定するための情報である第三の判定情報として特定しても良い。
【0016】
このように、複数の種類の判定情報に基づき非道路領域経路が新規道路であるか否かの判定を行うことにより、特定の観点に偏ることなく非道路領域経路が新規道路であるかを判定することができ、より適切に、新規道路についての判定を行うことができる。したがって、より確実に、実在しない道路に基づく誤った処理が行われてしまうことを防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。尚、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0018】
[構成の説明]
図1には、本実施形態におけるナビゲーション装置10の構成を示すブロック図が記載されている。ナビゲーション装置10は、操作部11、表示部12、音声出力部13、記憶部14、地図データ入力器15、制御部16、位置検出器17、車内LAN通信部18、及び外部通信機19から構成されている。
【0019】
操作部11は、ユーザからの各種指示を受け付ける部位であり、具体的にはメカニカルなキースイッチや、タッチスイッチ等から構成される。
表示部12は、各種表示を行う部位であり、具体的にはLCDや有機EL等から構成される。
【0020】
音声出力部13は、制御部16から入力された信号に基づき音声を出力する部位である。
記憶部14は、記憶保持動作が不要なデバイス(例えば、HDD)から構成され、各種情報を記憶することができる。
【0021】
地図データ入力器15は、経路案内等を行う際に使用する地図データや、所定の施設を検索する際に用いる施設検索情報等の各種データを入力するための装置である。これらのデータの記憶媒体としては、そのデータ量が膨大であるため、DVD−ROMやHDDを用いるのが一般的である。
【0022】
制御部16は、CPU、ROM、RAM、I/O及びこれらを接続するバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成される。制御部16は、ROMに記憶されているプログラムや、RAMにロードされたプログラムに従いナビゲーション装置10の各部位を制御する。
【0023】
位置検出器17は、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの信号を、図示しないGPSアンテナを介して受信して車両の位置、方位、速度等を検出するGPS受信器17aと、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロスコープ17bと、車両の前後方向の加速度等から走行した距離を検出する距離センサ17cとを備えている。そして、これらは、各々が性質の異なる誤差を有しているため、互いに補完しながら使用するように構成されている。
【0024】
車内LAN通信部18は、図示しない車内LANを介して種々の情報の送受信を行う部位である。
外部通信機19は、路側に設置された光ビーコンや電波ビーコン等を介してVICSの情報センタから交通情報(事故情報や渋滞情報等)を取得する。また、FM多重放送によって送信される交通情報も取得する。
【0025】
[動作の説明]
次に、ナビゲーション装置10の動作について説明する。
ナビゲーション装置10の制御部16は、自車両の走行中に、定期的なタイミングで位置検出器17により自車両の現在地を特定することにより、自車両の移動軌跡を検出する。また、制御部16は、地図データ入力器15から入力される地図データ(以後、単に地図データとも記載)に登録されている道路以外の領域を自車両が走行する際の移動軌跡を非道路領域移動軌跡として検出し、検出した非道路領域移動軌跡に基づく経路を、非道路領域経路として記憶部14に記憶させる。そして、この非道路領域経路が、地図データに登録されていない新たな道路(以後、新規道路とも記載)を自車両が走行した際の経路であるか否かの判定を行い、肯定判定がなされた場合には非道路領域経路を新規道路として登録する。そして、制御部16は、新規道路として登録された非道路領域経路に基づき、経路案内処理や地図画像表示処理等の種々の処理を行う。ここでは、非道路領域経路について、新規経路であるか否かを判定する際の処理について説明する。
【0026】
(1)非道路領域経路判定リストについて
図2の(a)には、非道路領域経路について、新規道路であるか否かの判定を行うために用いられる非道路領域経路判定リストが記載されている。この非道路領域経路判定リストは、記憶部14に記憶されている。非道路領域経路判定リストは、「経路ID」,「走行回数」,「短縮される距離」,「施設の有無」,「判定ポイント」という項目から構成される。
【0027】
「経路ID」は、記憶部14に記憶されている非道路領域経路を特定するためのIDを示す項目である。
「走行回数」は、対応する非道路領域経路を自車両が走行した回数を示す項目である。
【0028】
「短縮される距離」は、対応する非道路領域経路を自車両が移動することにより、地図データに登録されている道路を自車両が移動する場合に比べて短縮される移動距離を示す項目である。より詳しく説明すると、本項目は、地図データが示す地図における道路を移動する際の経路であって、対応する非道路領域経路の始点と終点とを結ぶ最短経路についての道なり距離から、対応する非道路領域経路の始点から終点までの間の道なり距離を減算した結果を示している。尚、道なり距離とは、所定の経路の始点から終点までの間を、当該経路に沿って移動する場合の距離のことである。
【0029】
「施設の有無」は、対応する非道路領域経路の周辺に、地図データに登録されている所定の施設が存在するか否かを示す項目である。具体的には、本項目は、対応する非道路領域経路から例えば30m以内の距離に所定の施設が存在する場合には“YES”を示し、上記施設が存在しない場合には“NO”を示す。また、所定の施設とは、例えば、商業施設や娯楽施設等であっても良い。
【0030】
「判定ポイント」は、対応する非道路領域経路が新規経路であることの確からしさを示す項目である。詳細については後述するが、本実施形態のナビゲーション装置10では、非道路領域経路について、当該非道路領域経路についての「走行回数」,「短縮される距離」,「施設の有無」に基づき、それぞれ、新規道路であることの確からしさの度合い(以後、確度とも記載)が判定される。「判定ポイント」は、それぞれの項目に対応する確度についての積算結果を示す項目である。尚、「判定ポイント」が10以上である場合、対応する非道路領域経路は新規道路として登録される。
【0031】
(2)確度判定基準リストについて
上述したように、本実施形態のナビゲーション装置10では、非道路領域経路判定リストにおける「走行回数」,「短縮される距離」,「施設の有無」に基づき、非道路領域経路が新規道路を示す経路であることの確度がそれぞれ判定される。ここでは、それぞれの項目についての確度を判定する際の基準を示す確度判定基準リストについて説明する。
【0032】
図2の(b)には、確度判定基準リストが記載されている。この確度判定基準リストは、記憶部14に記憶されている。確度判定基準リストは、「走行回数」,「短縮される距離」,「施設の有無」という三つの項目と、「確度」という項目を有している。
【0033】
「走行回数」は、非道路領域経路を自車両が走行した回数を示す項目である。
また、「短縮される距離」は、非道路領域経路を自車両が移動することにより、地図データに登録されている道路を自車両が移動する場合に比べて短縮される移動距離を示す項目である。より詳しく説明すると、本項目は、地図データが示す地図における道路を移動する際の経路であって、非道路領域経路の始点と終点とを結ぶ最短経路についての道なり距離から、当該非道路領域経路の始点から終点までの間の道なり距離を減算した結果を示している。
【0034】
また、「施設の有無」は、非道路領域経路の周辺に、地図データに登録されている所定の施設が存在するか否かを示す項目である。
また、上述したように、確度とは、非道路領域経路が新規道路であることの確からしさの度合いである。確度判定基準リストにおける「確度」という項目は、「走行回数」,「短縮される距離」,「施設の有無」という三つの項目毎に、各項目の内容に応じた上記度合いを示す項目である。
【0035】
具体的には、確度判定基準リストは、「走行回数」として“51回以上”,“21〜50回”,“11〜20回”,“6〜10回”,“1〜15回”という回数を示しており、これらの回数に対応する「確度」が、それぞれ、“10”,“8”,“6”,“4”,“2”となることを示している。
【0036】
また、確度判定基準リストは、「短縮される距離」として“1000m以上”,“301〜999m”,“101〜300m”,“11〜100m”,“1〜10m”,“0m以下”という距離を示しており、これらの距離に対応する「確度」が、それぞれ、“10”,“8”,“6”,“4”,“2”,“1”となることを示している。
【0037】
また、確度判定基準リストは、「施設の有無」として“YES”,“NO”という内容を示しており、“YES”に対応する「確度」が1、“NO”に対応する「確度」が0.5となることを示している。
【0038】
(3)確度を判定する際の具体例について
ここで、図2の(b)に記載されている確度判定基準リストに基づき、非道路領域経路が新規道路であることの確度について判定する方法について、図2の(a)に記載されている非道路領域経路判定リストにおける「経路ID」が“1”である非道路領域経路を例に挙げて説明する。
【0039】
非道路領域経路判定リストは、この非道路領域経路について、「走行回数」が“20回”、「短縮される距離」が“5m”、「施設の有無」が“YES”となることを示している。したがって、「走行回数」に基づく確度は“6”となり、「短縮される距離」に基づく確度は“2”となり、「施設の有無」に基づく確度は“1”となる。そして、それぞれの確度についての積算結果は12となるため、当該非道路領域経路についての「判定ポイント」には“12”が設定される。
【0040】
(4)新規道路登録処理について
次に、検出した非道路領域経路が新規道路であるか否かを判定し、肯定判定がなされた場合には、検出した非道路領域経路を新規道路として登録する処理である新規道路登録処理について、図3に記載されているフローチャートを用いて説明する。本処理は、自車両が非道路領域の走行を終了した際に実行される。
【0041】
上述したようにナビゲーション装置10の制御部16は、自車両の走行中に、定期的なタイミングで位置検出器17により自車両の現在地を特定することにより、自車両の移動軌跡を検出する。S105では、制御部16は、直前に走行した非道路領域における非道路領域移動軌跡を特定し、特定した非道路領域移動軌跡が、記憶部14に記憶されていない新たな非道路領域経路を走行した際の移動軌跡であるか否かを判定する。自車両が新たな非道路領域経路を走行した場合(S105:Yes)、制御部16は、S110に処理を移行する。自車両が記憶部14に記憶されている非道路領域経路を走行した場合(S105:No)、制御部16は、S120に処理を移行する。
【0042】
S110では、制御部16は、検出した非道路領域移動軌跡を、新たな非道路領域経路として記憶部14に記憶する。具体的には、周知の方法により非道路領域移動軌跡から形状点を抽出すると共に、地図データに登録されている道路のうち、非道路領域移動軌跡の始点と交わる道路のノードIDと終点と交わる道路のノードIDを特定し、抽出した形状点と、特定したノードIDとを記憶部14に記憶させることにより、検出した非道路領域移動軌跡を新たな非道路領域経路として記憶する。そして、制御部16は、S115に処理を移行する。
【0043】
S115では、制御部16は、非道路領域経路判定リストに、新たな非道路領域経路に対応する新たなレコードを追加する。具体的には、新たなレコードにおける「経路ID」として未使用の経路IDを設定すると共に、「走行回数」に1を設定する。また、新たな非道路領域経路の始点から終点までの道なり距離を特定すると共に、地図データに登録されている道路を走行する場合における、新たな非道路領域経路の始点から終点までの最短経路を特定し、特定した最短経路の道なり距離を特定する。そして、この最短経路の道なり距離から、新たな非道路領域経路の道なり距離を減算し、算出した値を「短縮される距離」に設定する。また、地図データに基づき、新たな非道路領域経路から例えば30m以内の領域における所定の施設の有無について判定し、判定結果を「施設の有無」に設定する。そして、さらに、制御部16は、新たなレコードの「走行回数」,「短縮される距離」,「施設の有無」と、確度判定基準リストとに基づき、それぞれの項目毎に、新たな非道路領域経路が新規道路であることの確度について判定し、それぞれの確度についての積算結果を「判定ポイント」に設定する。そして、制御部16は、S125に処理を移行する。
【0044】
自車両が記憶部14に記憶されている非道路領域経路を走行した場合に移行するS120では、制御部16は、記憶部14に記憶されている非道路領域経路判定リストにおける、走行した非道路領域経路に対応するレコードを更新する。具体的には、走行した非道路領域経路について、非道路領域経路判定リストにおける「経路ID」を特定し、特定した「経路ID」に対応する「走行回数」に1を加算する。そして、「走行回数」,「短縮される距離」,「施設の有無」と、確度判定基準リストとに基づき、それぞれの項目毎に、当該非道路領域経路が新規道路であることの確度について判定し、それぞれの確度についての積算結果を「判定ポイント」に設定する。そして、制御部16は、S125に処理を移行する。
【0045】
S125では、制御部16は、S115において非道路領域経路判定リストに新たに追加したレコードにおける「判定ポイント」、または、S120において更新した非道路領域経路判定リストのレコードにおける「判定ポイント」が10以上であるか否かを判定する。この「判定ポイント」が10以上である場合には、当該レコードにおける「経路ID」により特定される非道路領域経路を新規道路として記憶部14に記憶することにより、当該非道路領域経路を新規道路として登録する(S130)。そして、制御部16は、当該非道路領域経路を新規道路として登録した旨を、表示部12や音声出力部13を介してユーザに報知し(S135)、本処理を終了する。また、「判定ポイント」が10未満である場合には、制御部16は、本処理を終了する。
【0046】
[効果]
本実施形態のナビゲーション装置10により検出された非道路領域経路における自車両の移動が頻繁に行われる場合には、この非道路領域経路は、自車両が実在する道路を移動する際の経路である可能性が高いと考えることができる。そこで、ナビゲーション装置10は、自車両が非道路領域経路を走行した回数を特定し、特定した回数に基づき、当該非道路領域経路が新規道路であることの確度を判定している。したがって、ナビゲーション装置10は、当該非道路領域経路が新規道路であることの確度を、的確に判定することができる。
【0047】
また、非道路領域経路を利用することにより、地図データに登録されている道路を利用する場合に比べ所定の地点までの移動距離が短くなる場合、つまり、非道路領域経路が近道である場合には、この経路は有用性が高いと言える。したがって、この非道路領域経路は、測定誤差等により偶発的に検出されてしまった移動軌跡に基づく道路ではなく、ユーザが主体的に移動経路として選択した道路である可能性が高いと考えることができる。そこで、ナビゲーション装置10は、地図データが示す地図における道路を移動する際の経路であって、非道路領域経路の始点と終点とを結ぶ最短経路についての道なり距離から、当該非道路領域経路の始点から終点までの間の道なり距離を減算し、減算結果に基づき、当該非道路領域経路が新規道路であることの確度を判定している。したがって、ナビゲーション装置10は、当該非道路領域経路が新規道路であることの確度を、的確に判定することができる。
【0048】
また、非道路領域経路が、ある施設への経路である場合には、この道路は実在する可能性が高いと考えることができる。そこで、ナビゲーション装置10は、非道路領域経路の周辺に、地図データに登録されている所定の施設が存在するか否かを判定し、この判定結果に基づき、当該非道路領域経路が新規道路であることの確度を判定している。したがって、ナビゲーション装置10は、当該非道路領域経路が新規道路であることの確度を、的確に判定することができる。
【0049】
そして、ナビゲーション装置10は、異なる三つの方法により得られたそれぞれの確度を積算した結果に基づき、非道路領域経路が新規道路であるか否かを判定している(S125)。そして、ナビゲーション装置10は、地図データと、新規道路であると判定された非道路領域経路とに基づき、経路案内処理や地図画像表示処理等を行う。このようにして非道路領域経路が新規道路であるか否かの判定を行うことにより、ナビゲーション装置10は、特定の観点に偏ることなく非道路領域経路が新規道路であるかを判定することができ、新規道路についての判定を適切に行うことができる。したがって、実在しない道路に基づく誤った経路案内処理等が行われてしまうことを確実に防ぐことが可能となる。
【0050】
[他の実施形態]
(1)本実施形態のナビゲーション装置10は、非道路領域経路判定リストにおける「走行回数」,「短縮される距離」,「施設の有無」という三つの項目の内容に基づき、それぞれ、非道路領域経路が新規道路であることの確度を判定している。そして、判定結果として得られた三つの確度に基づき、非道路領域経路が新規道路であるか否かの判定を行っている。しかし、ナビゲーション装置10は、上記項目のうちのいずれか二つの項目の内容に基づきそれぞれ確度を判定し、判定結果として得られた二つの確度に基づき、非道路領域経路が新規道路であるか否かの判定を行っても良い。また、ナビゲーション装置10は、上記項目のうちのいずれか一つの項目の内容に基づき確度を判定し、判定結果として得られた一つの確度に基づき、非道路領域経路が新規道路であるか否かの判定を行っても良い。このような構成を有する場合であっても、非道路領域経路が新規道路であるか否かについて判定を行うことができる。
【0051】
(2)本実施形態では、検出した非道路領域経路が新規道路であるか否かを判定し、新規道路であると判定された非道路領域経路に基づき処理を行う車載用ナビゲーション装置について説明した。しかし、本願発明は、車載用ナビゲーション装置に対してのみ適用可能なものではなく、例えば、外部サーバから地図データを取得し、取得した地図データに基づくナビゲーション機能を有する携帯電話等の携帯装置が、本実施形態におけるナビゲーション装置10と同様の構成を有していても良い。このような構成を有することにより、上記携帯装置は、検出した非道路領域経路が新規道路であるか否かを適切に判定することができる。そして、新規道路であると判定された非道路領域経路に基づき経路案内処理や地図画像表示処理等を行うことにより、実在しない道路に基づく誤った処理が行われてしまうことを防ぐことが可能となる。
【0052】
(3)本実施形態のナビゲーション装置10は、地図データ入力器15を介してHDD等の記憶媒体に記憶されている地図データを読み出し、この地図データに基づき経路案内処理等を行うが、ナビゲーション装置10は、新規道路であると判定された非道路領域経路に基づきHDD等に記憶されている地図データを更新しても良い。このような構成を有することにより、実在しない道路を示す非道路領域経路に基づきHDD等に記憶されている地図データが更新されてしまうことを防ぐことができ、HDD等に記憶されている地図データを適切に更新することができる。
【0053】
[特許請求の範囲との対応]
上記実施形態の説明で用いた用語と、特許請求の範囲の記載に用いた用語との対応を示す。
【0054】
ナビゲーション装置10がデータ処理装置に相当する。
また、ナビゲーション装置10が備える制御部16が、経路記憶制御手段,頻度特定手段,新規道路判定手段,処理実行手段,経路特定手段,施設判定手段,第一の判定情報特定手段,第二の判定情報特定手段,第三の判定情報特定手段にそれぞれ相当する。また、制御部16及び位置検出器17が、移動軌跡特定手段に相当する。また、記憶部14が経路記憶手段に、地図データ入力器15が取得手段に相当する。
【0055】
また、地図データが示す地図における道路を移動する際の経路であって、非道路領域経路の始点と終点とを結ぶ最短経路が、既存の他の経路に相当する。また、非道路領域経路を自車両が走行した回数が第一の判定情報に相当する。また、地図データが示す地図における道路を移動する際の経路であって、非道路領域経路の始点と終点とを結ぶ最短経路についての道なり距離と、当該非道路領域経路の始点から終点までの間の道なり距離とが第二の判定情報に相当する。また、地図データに登録されている所定の施設が非道路領域経路の周辺に存在するか否かの判定結果が、第三の判定情報に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】非道路領域経路判定リストと、確度判定基準リストとを示す表である。
【図3】新規道路登録処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
10…ナビゲーション装置、11…操作部、12…表示部、13…音声出力部、14…記憶部、15…地図データ入力器、16…制御部、17…位置検出器、17a…GPS受信器、17b…ジャイロスコープ、17c…距離センサ、18…車内LAN通信部、19…外部通信機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記地図データが示す地図における経路を記憶するための経路記憶手段と、
前記取得手段により取得された前記地図データが示す地図において、自装置の移動軌跡を特定する移動軌跡特定手段と、
前記移動軌跡特定手段により、前記取得手段により取得された前記地図データが示す地図における道路以外の領域である非道路領域を自装置が移動する際の前記移動軌跡を特定し、特定した前記移動軌跡に対応する経路を非道路領域経路として前記経路記憶手段に記憶させる経路記憶制御手段と、
前記移動軌跡特定手段により特定される前記移動軌跡に基づき、前記経路記憶手段に記憶されている前記非道路領域経路について、自装置の移動が行われた頻度を特定する頻度特定手段と、
前記頻度特定手段により特定された前記非道路領域経路についての前記頻度に基づき、当該非道路領域経路が、前記取得手段により取得された前記地図データに登録されていない新たな道路である新規道路を示す経路であるか否かを判定する新規道路判定手段と、
前記新規道路判定手段により前記新規道路を示す経路であると判定された前記非道路領域経路に基づき所定の処理を実行する処理実行手段と、
を備えることを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
地図データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記地図データが示す地図における経路を記憶するための経路記憶手段と、
前記取得手段により取得された前記地図データが示す地図において、自装置の移動軌跡を特定する移動軌跡特定手段と、
前記移動軌跡特定手段により、前記取得手段により取得された前記地図データが示す地図における道路以外の領域である非道路領域を自装置が移動する際の前記移動軌跡を特定し、特定した前記移動軌跡に対応する経路を非道路領域経路として前記経路記憶手段に記憶させる経路記憶制御手段と、
前記取得手段により取得された前記地図データに基づき、当該地図データが示す地図における道路において、前記経路記憶手段に記憶されている前記非道路領域経路の始点と終点とを結ぶ経路である既存の他の経路を特定する経路特定手段と、
前記経路記憶手段に記憶されている前記非道路領域経路について、当該非道路領域経路の始点から終点までの道なり距離と、前記経路特定手段により特定された当該非道路領域経路に係る前記既存の他の経路の始点から終点までの道なり距離とに基づき、当該非道路領域経路が、前記取得手段により取得された前記地図データに登録されていない新たな道路である新規道路を示す経路であるか否かを判定する新規道路判定手段と、
前記新規道路判定手段により前記新規道路を示す経路であると判定された前記非道路領域経路に基づき所定の処理を実行する処理実行手段と、
を備えることを特徴とするデータ処理装置。
【請求項3】
地図データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記地図データが示す地図における経路を記憶するための経路記憶手段と、
前記取得手段により取得された前記地図データが示す地図において、自装置の移動軌跡を特定する移動軌跡特定手段と、
前記移動軌跡特定手段により、前記取得手段により取得された前記地図データが示す地図における道路以外の領域である非道路領域を自装置が移動する際の前記移動軌跡を特定し、特定した前記移動軌跡に対応する経路を非道路領域経路として前記経路記憶手段に記憶させる経路記憶制御手段と、
前記取得手段により取得された前記地図データに基づき、前記経路記憶手段に記憶されている前記非道路領域経路の周辺における所定の施設の有無を判定する施設判定手段と、
前記施設判定手段による前記非道路領域経路の周辺における前記所定の施設の有無についての判定結果に基づき、当該非道路領域経路が、前記取得手段により取得された前記地図データに登録されていない新たな道路である新規道路を示す経路であるか否かを判定する新規道路判定手段と、
前記新規道路判定手段により前記新規道路を示す経路であると判定された前記非道路領域経路に基づき所定の処理を実行する処理実行手段と、
を備えることを特徴とするデータ処理装置。
【請求項4】
地図データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記地図データが示す地図における経路を記憶するための経路記憶手段と、
前記取得手段により取得された前記地図データが示す地図において、自装置の移動軌跡を特定する移動軌跡特定手段と、
前記移動軌跡特定手段により、前記取得手段により取得された前記地図データが示す地図における道路以外の領域である非道路領域を自装置が移動する際の前記移動軌跡を特定し、特定した前記移動軌跡に対応する経路を非道路領域経路として前記経路記憶手段に記憶させる経路記憶制御手段と、
前記経路記憶手段に記憶されている前記非道路領域経路が、前記取得手段により取得された前記地図データに登録されていない新たな道路である新規道路を示す経路であるか否かを判定する新規道路判定手段と、
前記新規道路判定手段により前記新規道路を示す経路であると判定された前記非道路領域経路に基づき所定の処理を実行する処理実行手段と、
を備えるデータ処理装置であって、
前記データ処理装置は、
前記移動軌跡特定手段により特定される前記移動軌跡に基づき、前記経路記憶手段に記憶されている前記非道路領域経路について自装置の移動が行われた頻度を、当該非道路領域が前記新規道路を示す経路であるか否かを判定するための情報である第一の判定情報として特定する第一の判定情報特定手段と、
前記取得手段により取得された前記地図データに基づき、当該地図データが示す地図における道路において、前記経路記憶手段に記憶されている前記非道路領域経路の始点と終点とを結ぶ経路である既存の他の経路を特定し、当該非道路領域経路の始点から終点までの道なり距離と、特定した当該非道路領域経路に係る前記既存の他の経路の始点から終点までの道なり距離とを、当該非道路領域経路が前記新規道路を示す経路であるか否かを判定するための情報である第二の判定情報として特定する第二の判定情報特定手段と、
前記取得手段により取得された前記地図データに基づき、前記経路記憶手段に記憶されている前記非道路領域経路の周辺における所定の施設の有無を判定し、前記所定の施設の有無についての判定結果を、当該非道路領域経路が前記新規道路を示す経路であるか否かを判定するための情報である第三の判定情報として特定する第三の判定情報特定手段と、
のうち、少なくとも二つの判定情報特定手段を備え、
前記新規道路判定手段は、前記経路記憶手段に記憶されている前記非道路領域経路について、自装置が備える少なくとも二つの前記判定情報特定手段により特定された当該非道路領域経路についての前記判定情報に基づき、当該非道路領域経路が前記新規道路を示す経路であるか否かの判定を行うこと、
を特徴とするデータ処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−101806(P2010−101806A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274610(P2008−274610)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】