説明

ナビゲーション装置、停止検出方法及び停止検出プログラム

【課題】本発明は、車両100が停止しているときに、車両100が停止していることを確実に検出することができる。
【解決手段】本発明は、GPS信号に基づく位置信号PSからGPS速度を算出し、当該GPS速度から車両100が停止していると認識した際に、車両100に作用する加速度を表す横方向加速度信号SBを検出すると共に、当該横方向加速度信号SBの分散値を車両100の振動を表す横方向加速度分散値DPとして算出し、この横方向加速度分散値DPの平均値を第1の閾値である停止判定閾値SDとして設定することにより、当該横方向加速度分散値DPに基づいて停止判定閾値SDを設定するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナビゲーション装置、停止検出方法及び停止検出プログラムに関し、例えば車両に搭載されるナビゲーション装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置においては、移動する車両等に搭載され、GPS(Global Positioning System)衛星から送信されるGPS信号を基に車両の現在位置、走行速度及び移動距離等を算出するようになされたものが広く普及している。
【0003】
このナビゲーション装置の中には、当該ナビゲーション装置を取り外して他の車両に設置したり、盗難防止のため駐車時に取り外すことができるものがある。このようなナビゲーション装置では、車両の電子回路と直接的に接続することができないため、車両から車速パルスを取得して車両100の走行速度を算出することができない。
【0004】
ここで、一般的な車両では、停止時には車両の振動が小さく、走行時には車両の振動が大きくなるという特性を利用して、車両の振動の大小によって車両が停止しているか走行しているかを判別するようになされたナビゲーション装置が提案されている。
【0005】
このようなナビゲーション装置においては、振動が大きいときには、加速度センサから得られる加速度の分散値(以下、これを加速度分散値と呼ぶ)が大きくなり、振動が小さいときには加速度分散値が小さくなるため、この加速度分散値が所定の停止判定閾値以上であるか否かによって車両が停止しているか否かを判定している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3516126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、車両の振動(すなわち加速度分散値)のレベルは車種などによって異なることが知られている。従って、ナビゲーション装置は、様々な車種に対して同一の停止判定閾値を用いた場合には、車両が走行しているにも拘わらず停止していると誤判定してしまい、当該車両が停止していることを誤検出してしまう場合があるという問題があった。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、移動体が停止しているときに、当該移動体が停止していることを確実に検出するナビゲーション装置、停止検出方法及び停止検出プログラムを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明においては、移動体に生じる加速度を検出し、GPS信号受信装置から入力されたGPS信号に基づいて移動体速度を算出し、移動体速度から移動体が停止していると認識した際に、加速度の分散値に基づいて第1の閾値を設定し、GPS信号が入力されない場合、第1の閾値に基づいて、加速度の分散値から移動体が停止しているか否かを判定することにより、移動体が停止中であることを検出するようにした。
【0009】
これにより、移動体の種類に応じて設定される停止判定閾値を用いて、移動体が停止中であるか否かを判定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、移動体の種類に応じて設定される停止判定閾値を用いて、移動体が停止中であるか否かを判定することができ、かくして移動体が停止しているときに、当該移動体が停止していることを確実に検出するナビゲーション装置、停止検出方法及び停止検出プログラムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0012】
(1)ナビゲーション装置の構成
図1に示すように、ナビゲーション装置1は、移動体としての車両100に搭載されている。このナビゲーション装置1は、車両100の例えばダッシュボードの中央部分に両面テープなどで固定されたクレードル4に対して、表示部3がユーザと対峙するように設置されることにより、車両100に搭載される。
【0013】
図2に示すように、ナビゲーション装置1は、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号を受信するためのGPSアンテナ2と、LCD(Liquid Crystal Display)などでなる表示部3とを有している。またナビゲーション装置1は、クレードル4に対して嵌めこまれることにより、クレードル4に設置される。
【0014】
図3に示すように、ナビゲーション装置1は、ユーザの操作によって当該ナビゲーション装置1がクレードル4に設置されたか否かをクレードル検出部6によって検出する。
【0015】
またナビゲーション装置1は、電源スイッチ7を有しており、ユーザの操作によって電源スイッチ7がONに設定された場合、主電源をONに設定する一方、電源スイッチ7がOFFに設定された場合、主電源をOFFに設定する。
【0016】
ナビゲーション装置1は、ナビゲーション装置1がクレードル4に設置され、かつ主電源がONに設定された状態において、GPS衛星からGPS信号を受信できる場合(以下、これをGPS受信時と呼ぶ)、GPSアンテナ2を介して複数のGPS衛星(図示せず)からのGPS信号を受信し、これをGPS処理部8に供給する。GPS処理部8は、当該GPS信号を基に所定の位置算出処理を行うことにより位置信号PSを生成し、これをナビゲーションユニット9及び演算処理ブロック10へ供給する。
【0017】
この演算処理ブロック10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)構成でなり、図示しないROM(Read Only Memory)から停止検出プログラム等の各種アプリケーションプログラムを読み出して各種処理を実行するようになされている。
【0018】
演算処理ブロック10は、所定の入力期間に位置信号PSが供給されると、GPS速度算出部13によって所定時間当たりの車両100の移動量をこの位置信号PSに基づいて算出し、これをGPS速度VGとして不揮発メモリ等でなる記憶部16に記憶すると共に、ナビゲーションユニット9へ供給する。
【0019】
そしてナビゲーションユニット9は、所定の地図データ上に当該車両100の現在位置を示すマーク及び車両100のGPS速度VG等を重畳して表示画面データを生成し、これを表示部3に供給することにより、表示部3に表示画面を表示させ、地図上に表示された当該車両100の現在位置及びGPS速度VG等の情報をユーザに対して視認させるようになされている。
【0020】
ここで、ナビゲーション装置1は、車両100において生成され当該車両100の速度に応じて周期が変化するパルス状の車速パルス信号を利用しないようになされており、当該ナビゲーション装置1を当該車両100に取り付ける際の配線処理を簡略化し得るようになされている。
【0021】
従って、GPS信号が受信できない場合(以下、これをGPS非受信時と呼ぶ)には、ナビゲーション装置1は、外部からの情報を取得しないで自律的に走行速度や現在位置を算出する自律状態へと遷移する。
【0022】
ここで、演算処理ブロック10には、加速度センサ11が接続されている。この加速度センサ11は、車両100の進行方向及び当該進行方向と垂直な横方向に作用する加速度に応じて電位が変動する加速度信号として、進行方向加速度信号SA及び後述する停止検出処理に用いられる横方向加速度信号SBをそれぞれ生成し、これを演算処理ブロック10へ供給する。
【0023】
演算処理ブロック10は、入力期間の間にGPS処理部4から位置信号PSが供給されない場合には、自律速度算出部14によって、加速度センサ11から供給される進行方向加速度信号SAを車両100の進行方向に作用する検出加速度αGに換算する。
【0024】
さらに自律速度算出部14は、当該検出加速度αGに対して算出時間を乗算することにより得られる値を、GPS受信時に最後に測定されたGPS速度VG、又は前回算出された自律速度VEに対して加算することにより現在の自律速度VEを算出すると共に、当該自律速度VEに基づいて推定された車両100の現在位置を表す位置信号PSを生成し、これをナビゲーションユニット9へ送出するようになされている。
【0025】
そしてナビゲーションユニット9は、所定の地図データ上に当該車両100の位置を示すマーク及び車両100の自律速度VE等を重畳して表示画面データを生成し、これを表示部3に供給することにより、表示部3に表示画面を表示させ、地図上に表示された当該車両100の現在位置及び自律速度VE等の情報をユーザに対して視認させるようになされている。
【0026】
本実施の形態では、一般的に車両の振動の大きさが車両100の停止時には小さく、車両100の走行時には大きくなる特性を利用し、GPS非受信時において、停止判定閾値SDに基づいて車両100の振動の大きさから車両100が停止しているか否かを判定するだけでなく、GPS速度VGに基づいて車両100が停止していることを判別可能なGPS受信時において、GPS非受信時に用いられる停止判定閾値SDを設定するようにした。次に、この停止判定閾値SDの設定について説明する。
【0027】
(2)車両が停止していることの検出
(2−1)GPS受信時における停止判定閾値SDの設定
一般的に、車両100の振動の大きさは、車両100の車種や車両100の整備の有無など、車両100の状態に応じて変化することが知られている。
【0028】
従って、ナビゲーション装置は、GPS非受信時において、仮に所定の停止判定閾値SDを用いて車両100が停止しているか否かの判定を実行すると、車両100の状態によっては、車両100が走行しているにも拘らず停止していると誤判定する場合が生ずるため、車両100が停止しているときに、当該車両100が停止していることを確実に検出することができないことが起こり得る。
【0029】
そこで本実施の形態におけるナビゲーション装置1では、GPS受信時にGPS信号に基づいて車両100が停止していると判別されたときの車両100の状態に応じた振動の大きさに基づいて、停止判定閾値SDを設定するようになされている。
【0030】
具体的に、ナビゲーション装置1の演算処理ブロック10は、ナビゲーション装置1がクレードル4に設置され、かつ主電源がONに設定されることにより、ユーザの意思に応じてGPS信号の受信が開始されると、GPS信号を受信したか否かを所定の入力期間毎に確認する。すなわち演算処理ブロック10は、GPS信号に基づいて算出された位置信号PSが入力期間(例えば1秒間)の間にGPS処理部8から供給されると、GPS受信時と認識し、GPS速度算出部13によって当該位置信号PSから車両100の単位時間当たりの移動量をGPS速度VGとして算出する。
【0031】
このとき演算処理ブロック10は、GPS速度VGが所定の速度閾値SV(例えば1.0[m/s])以上である場合には、車両100が走行していると判別し、GPS速度算出部13によって算出されたGPS速度VGをナビゲーションユニット9に送出すると共に、次の入力期間において位置信号PSがGPS処理部8から供給されるのを待ち受ける。
【0032】
これに対して、GPS速度VGが速度閾値SV未満である場合、演算処理ブロック10は、車両100が停止していると判別し、その車両100に適した停止判定閾値SDを設定するようになされている。
【0033】
例えば、図4に示すように、ナビゲーション装置1がクレードル4に設置され、かつ主電源がONに設定されてから車両100が走行と停止を繰り返した場合、期間ST1〜ST6においてGPS速度VGは速度閾値SV未満であるため、このとき演算処理ブロック10は、車両100が停止していると判別し、停止判定閾値SDを設定する。一方、期間RN1〜RN5では、GPS速度VGが速度閾値SV以上であるため、演算処理ブロック10は、車両100が走行していると判別して停止判定閾値SDを設定しない。なお、この図4では1秒ごとに算出されたGPS速度VGがプロットされている。
【0034】
そして演算処理ブロック10は、GPS速度VGが速度閾値SV未満であった場合、閾値設定部20によって停止判定閾値SDを設定する。すなわち閾値設定部20は、車両100の横方向に作用する加速度を表す横方向加速度信号SBを加速度センサ11から所定の取得時間(例えば0.5秒間)に渡って取得すると共に、この取得時間における横方向加速度信号SBの分散値(以下、これを横方向加速度分散値と呼ぶ)DPを算出する。この横方向加速度分散値DPは、車両100に加わる横方向の加速度の分散、すなわち車両100の横方向の振動の大きさを表している。
【0035】
図5には、図4に示したGPS速度VGで車両100が走行した場合に算出される横方向加速度分散値DPが示されている。図4と同様に、期間ST1〜ST6において車両100は停止しており、期間RN1〜RN5において車両100は走行している。
【0036】
このグラフから、車両100が停止している期間ST1〜ST6では横方向加速度分散値DPの値が相対的に小さく、車両100が走行している期間RN1〜RN5では横方向加速度分散値DPの値が相対的に大きいことが分かる。
【0037】
ここで、車両100としては、停止中に振動が大きくなり、走行中に振動が小さくなるような特殊な車種(例えばバスなど)が一部存在する。
【0038】
このような特殊な車種においては、振動の大きさに基づいて、車両100が停止しているか否かを判定するのは誤判定を伴うため、この場合、演算処理ブロック10は、停止判定閾値SDを敢えて設定しないようにする。
【0039】
すなわち、閾値設定部20は、横方向加速度分散値DPが所定の設定閾値未満であるか否かを判別し、横方向加速度分散値DPが当該設定閾値以上であった場合には、車両100が上述した特殊な車種である可能性があるため、停止判定閾値SDの設定を実行しない。
【0040】
これに対して、横方向加速度分散値DPが設定閾値未満であった場合、閾値設定部20は、車両100が停止中の振動が走行中の振動よりも小さい一般的な車種であると判断し、停止判定閾値SDを設定する。
【0041】
具体的に、閾値設定部20は、設定閾値未満と判別された横方向加速度分散値DPを記憶部16に登録すると共に、ナビゲーション装置1がクレードル4に設置され、かつ主電源がONに設定されてから、車両100の停止時に設定閾値未満と判別された全ての横方向加速度分散値DPの平均値を算出し、この算出された平均値を停止判定閾値SDとして記憶部16に登録することにより、停止判定閾値SDを設定する。
【0042】
ちなみに、図5ではナビゲーション装置1がクレードル4に設置され、かつ主電源がONに設定されてから経過時間1〜20[s]付近まで停止判定閾値SDが設定されていないが、これはこの期間においてGPS信号が受信されなかったためである。従って、GPS信号が経過時間1[s]から受信されており、そのときに車両100が停止していると判定されていれば、この経過時間1[s]のときの横方向加速度分散値DPが横方向加速度分散値DPの平均値とみなされ、停止判定閾値SDとしてそのまま設定される。
【0043】
そして演算処理ブロック10は、停止判定閾値SDを設定すると、GPS速度算出部13によって算出されたGPS速度VGをナビゲーションユニット9に送出すると共に、次の入力期間における位置信号PSがGPS処理部8から供給されるのを待ち受ける。
【0044】
なお、ナビゲーション装置1の主電源がOFFにされた、若しくはナビゲーション装置1がクレードル4から外された場合、ナビゲーション装置1が搭載される車両100が変わる可能性があるため、この停止判定閾値SDはリセットされる。そして次にナビゲーション装置1がクレードル4に設置され、かつ主電源がONにされた場合、ナビゲーション装置1は、停止判定閾値SDを初めから設定し直すようになされている。
【0045】
これにより、ナビゲーション装置1が搭載される車両100が変わった場合や、整備などにより車両100の状態が大きく変化したような場合でも、そのときの車両100の状態に応じて停止判定閾値SDを設定することが可能となる。
【0046】
ちなみに、図1に示したように、本実施の形態の車両100では、車両100のエンジン100aにおけるクランクシャフトの回転軸が横方向になるように、エンジン100aがいわゆる横置きで配置されている。そして本実施の形態のナビゲーション装置1では、エンジン100aのクランクシャフトの回転軸と同一方向に作用する加速度を表す横方向加速度信号SBを用いて横方向加速度分散値DPを算出するようにしている。
【0047】
ここで、図6に横方向加速度信号SBの信号レベル(濃い線で表す)、及び横方向加速度信号SBの横方向加速度分散値DP(薄い線で表す)を示している。また、図7に車両100の進行方向に作用する加速度に応じて電位が変化する進行方向加速度信号SAの信号レベル(濃い線で表す)、及び当該進行方向加速度信号SAの進行方向加速度分散値DPa(薄い線で表す)を示している。
【0048】
図6及び図7において、横方向加速度信号SB及び進行方向加速度信号SAの値がゼロに近い値を示しているときには、車両100が停止していることを表しており、横方向加速度信号SB及び進行方向加速度信号SAの値が大きく変動しているときには、車両100が走行していることを表している。
【0049】
横方向加速度分散値DP(図6)と進行方向加速度分散値DPa(図7)とを比較すると、車両100の停止時において、横方向加速度分散値DPの方が進行方向加速度分散値DPaよりも低く、かつぶれの小さい値を示している一方、車両100の走行時には横方向加速度分散値DPと進行方向加速度分散値DPaとが同レベルの値を示している。
【0050】
言い換えると、横方向加速度分散値DP(図6)においては、車両100の走行時の値と停止時の値における差が、進行方向加速度分散値DPa(図7)と比較して大きく、さらにこの横方向加速度分散値DPにおいては、車両100の停車時の値が、進行方向加速度分散値DPaと比較してばらつきが小さく安定していると言える。
【0051】
ここで、停止時に車両100に加わる加速度は、主にエンジン100aのクランクシャフトの回転軸運動に起因すると考えられる。車両100においては、エンジン100aが横置きであることから、一定のリズムを有するクランクシャフトの回転軸運動に起因して、車両100の上下方向及び前後方向(進行方向)には、シリンダの往復運動及びクランクシャフトの回転運動による振動が加わることになるため、進行方向加速度信号SAの停止時の振動は大きくかつ不安定となる。一方、車両100の横方向にはいずれの振動も加わらないため、停止時の振動が小さくかつ安定する。
【0052】
従って、車両100において、エンジン100aが横置きで配置された場合には横方向加速度信号SBを用いて横方向加速度分散値DPを算出することが好ましく、一方で、エンジン100aのクランクシャフトの回転軸方向が進行方向になるように、エンジン100aがいわゆる縦置きで配置された場合には、進行方向加速度信号SAを用いて進行方向加速度分散値DPaを算出することが好ましい。
【0053】
これにより、車両100に搭載されたナビゲーション装置1は、エンジン100aにおけるクランクシャフトの回転軸運動の方向と取得する加速度信号が表す加速度の方向とを同一方向にすることができるため、クランクシャフトの回転軸運動と異なる方向の加速度信号を用いた場合と比較して、低い値を示す加速度信号の分散値に基づいて停止判定閾値SDを設定することができるため、停止判定閾値SDの値を低い値に抑えることができる。この結果、車両100が走行中のときの加速度信号の分散値と、停止判定閾値SDとの差を広げることができ、車両100が走行中にも拘わらず、誤って停止していると判定される可能性を一段と低下させることができる。
【0054】
なお、ナビゲーション装置1は、図示しない操作入力部を介したユーザの操作に応じて、横方向加速度信号SB又は進行方向加速度信号SAのどちらを用いて加速度分散値を算出するかを選択するようにすることができる。これにより、車両100におけるエンジン100aが横置き及び縦置きのいずれであった場合でも、停止判定閾値SDに使用される加速度信号をこのエンジン100aの配置方向に応じて横方向加速度信号SB及び進行方向加速度信号SAから正しく選択することにより、上述した誤判定の可能性を一段と低下させることができる。また、車両100の停止時に自動的に横方向加速度信号SB及び進行方向加速度信号SAの加速度分散値を比較し、小さい方を選択して使用するようにすることもできる。
【0055】
このように、ナビゲーション装置1は、停止していることを確実に認識できるGPS受信時でかつ車両100の停止時に、車両100の振動を表す横方向加速度分散値DPを算出し、この横方向加速度分散値DPに基づいてGPS信号のGPS非受信時に停止の検出に使用される停止判定閾値SDを設定することにより、車両100の状態に応じた適切な停止判定閾値SDを設定することができる。
【0056】
(2−2)GPS非受信時における停止の検出
次に、GPS信号が受信できないGPS非受信時における車両100についての停止判定処理について説明する。なお、この停止判定処理は、上述した閾値設定部20によって停止判定閾値SDが設定された場合にのみ実行される。
【0057】
すなわち、ナビゲーション装置1の演算処理ブロック10は、ナビゲーション装置1がクレードル4に設置され、かつ主電源がONに設定されている状態において、入力期間(例えば1秒間)の間にGPS処理部8から位置信号PSが供給されない場合には、GPS非受信時であると認識し、記憶部16に停止判定閾値SDが設定されているか否かを判別する。
【0058】
停止判定閾値SDが設定されていた場合、演算処理ブロック10は、停止判定部15によって停止判定処理を実行する。
【0059】
すなわち、停止判定部15は、上述したように加速度センサ11から供給される横方向加速度信号SBの分散値を横方向加速度分散値DPとして算出すると共に、この横方向加速度分散値DPが停止判定閾値SD未満であった場合には、車両100が停止していると判定する。
【0060】
このとき演算処理ブロック10は、自律速度算出部14によって算出される自律速度VEの値を0[m/s]に設定し、これを記憶部16に記憶する。そして演算処理ブロック10は、この0[m/s]に設定された自律速度VEをこの後に継続算出される自律速度VEに使用する。
【0061】
これにより、演算処理ブロック10は、車両100の停止時に自律速度VEにおける誤差をゼロにリセットし得ると共に、この誤差がゼロにとなった自律速度VEを用いて自律速度VEを継続算出することができ、誤差を有する自律速度VEに基づいて自律速度VEを継続算出する場合と比較して、継続算出する自律速度VEにおける誤差を小さくすることができる。
【0062】
ここで、ナビゲーション装置1では、上述した停止判定閾値SDを設定する際、平均値を停止判定閾値SDとして設定しているため、横方向加速度分散値DPの上限値を停止判定閾値SDとして設定した場合と比較して、停止判定閾値SDのレベルを低く設定することができ、車両100の走行時に停止していると誤判定される危険性を一段と小さくすることができる。
【0063】
また、ナビゲーション装置1では、上述した停止判定閾値SDを設定する際、平均値を停止判定閾値SDとして設定しているため、車両100が停止している間に、確率論的に2回に1回しか車両100が停止していると判定しないことになる。ここで、車両100が停止するのは、信号待ち若しくは渋滞中のケースが多いと考えられる。すなわち信号待ちの際には、一回の停止時において停止している時間が2秒未満になることは極めて少ないと考えられ、一方で、渋滞の際には、車両100が短い期間に繰り返し停止するため、いずれの場合であっても2回に一度だけ停止と判定できればほぼ確実に車両100が停止していることを検出することができ、自律速度VEにおける誤差を確実にリセットすることができる。
【0064】
そして自律速度算出部14は、この自律速度VEから車両100の現在位置を表す位置信号PSを生成する。
【0065】
これに対して、演算処理ブロック10は、停止判定閾値SDが設定されていない場合には、停止判定処理を実行することなく、自律速度算出部14によって自律速度VEを算出すると共に、当該自律速度VEに基づいて位置信号PSを生成する。
【0066】
これにより、例えば車両100がGPS受信時において一度も停止しておらず、車両100の停止時における横方向加速度分散値DPのレベルが不明な場合には、停止判定処理を実行しないことになる。この結果、車両100の状態に応じていない不適切な停止判定閾値を用いて停止判定処理を行うことがないため、走行時に車両100が停止していると誤判定されてしまうことを未然に防止することができる。
【0067】
また、演算処理ブロック10は、車両100が停止中の振動が大きくなってしまう特殊な車種であるため、停止検出処理によって車両100が停止したことを誤検出する可能性が高い場合にも、停止判定処理を実行しないため、走行時に車両100が停止していると誤判定されてしまうことを防止することができる。
【0068】
この結果、演算処理ブロック10は、誤判定に基づいて自律速度VEをゼロにしてしまうことがなく、自律速度VEにおける誤差がかえって拡大することを確実に防止することができる。
【0069】
そして演算処理ブロック10は、位置信号PS及び自律速度VEをナビゲーションユニット9に送出し、次の入力期間において位置信号PSがGPS処理部8から供給されるのを待ち受ける。
【0070】
このように、ナビゲーション装置1は、GPS信号のGPS受信時において、車両100の状態に応じた振動を表す横方向加速度分散値DPに基づいて設定された停止判定閾値SDを用いて車両100が停止しているか否かを判定することにより、車両100が停止しているときに当該車両100が停止していることを確実に検出することができる。
【0071】
(3)停止検出処理手順
次に、停止検出プログラムに従って実行される停止検出処理手順について、図8のフローチャートを用いて説明する。なお、ナビゲーション装置1は、この停止検出処理手順を例えば1秒ごとに繰り返し実行するようになされている。
【0072】
ナビゲーション装置1は、停止検出処理手順RT1の開始ステップSP1から入ってステップSP2へ移り、入力期間(例えば1秒間)の間にGPS信号を受信したか否かについて判別する。
【0073】
このとき、GPS信号を受信したと判別した場合には、ナビゲーション装置1は、次のステップSP3へ移り、停止判定閾値SDの設定処理を実行する。
【0074】
ステップSP3において、ナビゲーション装置1は、GPS信号に基づいてGPS速度VGを算出し、次のステップSP4へ移る。
【0075】
ステップSP4において、ナビゲーション装置1は、GPS速度VGが速度閾値SV未満であるか否かを判別し、否定結果が得られた場合、このことは期間RN1〜RN5(図4)のように車両100が走行していることを表しており、このときナビゲーション装置1は、次のステップSP10へ移る。
【0076】
これに対してステップSP4において肯定結果が得られた場合、このことは車両100が期間ST1〜ST6(図4)のように停止していることを表しており、このときナビゲーション装置1は次のステップSP5へ移る。
【0077】
ステップSP5において、ナビゲーション装置1は、加速度センサ11(図3)から所定の取得時間(例えば0.5秒間)に相当する横方向加速度信号SBを取得し、次のステップSP6に移る。
【0078】
ステップSP6において、ナビゲーション装置1は、横方向加速度信号SBの分散値である横方向加速度分散値DP(図5)を算出し、次のステップSP7へ移る。
【0079】
ステップSP7において、ナビゲーション装置1は、横方向加速度分散値DPが設定閾値未満であるか否かを判別する。
【0080】
ここで否定結果が得られた場合、このことは車両100が停止判定処理によって誤判定を伴う特殊な車両の可能性があるため、停止判定処理を実行すると車両100の停止を誤検出する危険性があることを表しており、このときナビゲーション装置1は、停止判定閾値SDを設定することなく、次のステップSP10へ移る。
【0081】
これに対して、ステップSP7において肯定結果が得られた場合、このことは車両100が停止判定処理によって精度良く停止の判定が可能な一般的な車両であることを表しており、このときナビゲーション装置1は、次のステップSP9へ移る。
【0082】
ステップSP9において、ナビゲーション装置1は、ステップSP7において設定閾値未満と判別された横方向加速度分散値DPを記憶部16に登録すると共に、ナビゲーション装置1がクレードル4に設置され、かつ主電源がONに設定されてから、車両100の停止時に設定閾値未満と判別された全ての横方向加速度分散値DPの平均値を算出し、この算出された平均値を停止判定閾値SDとして設定すると、次のステップSP10へ移る。
【0083】
ステップSP10において、ナビゲーション装置1は、ステップSP3において算出されたGPS速度VGをナビゲーションユニット9に送出し、次のステップSP21へ移り、処理を終了する。
【0084】
一方、ステップSP2において、GPS信号を受信しなかったと判別した場合、ナビゲーション装置1は、ステップSP12に移る。
【0085】
ステップSP12において、ナビゲーション装置1は、ステップSP3〜ステップSP10において実行される停止判定閾値SDの設定処理によって停止判定閾値SDが設定されているか否かを判別する。
【0086】
ここで肯定結果が得られた場合、このことは停止判定処理によって車両100が停止していることを確実に検出できることを表しており、このときナビゲーション装置1は、次のステップSP13へ移る。
【0087】
ステップSP13において、ナビゲーション装置1は、加速度センサ11(図3)から取得時間(例えば0.5秒間)に相当する横方向加速度信号SBを取得すると、次のステップSP14へ移る。
【0088】
ステップSP14において、ナビゲーション装置1は、取得した横方向加速度信号SBから横方向加速度分散値DPを算出すると、次のステップSP15へ移る。
【0089】
ステップSP15において、ナビゲーション装置1は、横方向加速度分散値DPが停止判定閾値SD未満であるか否かを判別する。
【0090】
ここで肯定結果が得られた場合、このことは車両100が停止していることを表しており、このときナビゲーション装置1は、次のステップSP16へ移る。
【0091】
ステップSP16において、ナビゲーション装置1は、自律速度VEを0[m/s]に設定すると共に、この自律速度VEをナビゲーションユニット9に送出し、次のステップSP21へ移って処理を終了する。
【0092】
これに対してステップSP15において、否定結果が得られた場合、このことは車両100が走行していることを表しており、このときナビゲーション装置1は、次のステップSP18へ移る。
【0093】
他方、ステップSP12において、否定結果が得られた場合、このことは車両100の停止時の振動レベルが不明である、若しくは車両100が停止判定処理によって誤判定を伴う特殊な車両であるなどの理由により、停止判定処理を実行すると車両100の停止を誤検出する危険性があることを表しており、このときナビゲーション装置1は、停止判定処理を実行することなく、次のステップSP18に移る。
【0094】
ステップSP18において、ナビゲーション装置1は、前回の停止検出処理(1秒前)の際にGPS信号を受信していた場合には、このとき算出されたGPS速度VGに基づいて自律速度VEを算出する一方、前回の停止検出処理(1秒前)の際にGPS信号を受信していなかった場合には、このとき算出された自律速度VEに基づいて現在の自律速度VEを算出する。さらにナビゲーション装置1は、現在の自律速度VEをナビゲーションユニット9に送出すると、次のステップSP21へ移り、処理を終了する。そしてナビゲーション装置1は、停止検出処理手順RT1のステップSP1から入って処理を繰り返すようになされている。
【0095】
(4)動作及び効果
以上の構成において、車両100に搭載されたナビゲーション装置1は、GPSアンテナ2から入力されたGPS信号に基づく位置信号PSから移動体速度としてのGPS速度VGを算出し、GPS速度VGが速度閾値SV未満であることにより、当該GPS速度VGから車両100が停止していると認識した際に、車両100に作用する加速度を表す横方向加速度信号SBを検出すると共に、当該横方向加速度信号SBの分散値を車両100の振動を表す横方向加速度分散値DPとして算出し、この横方向加速度分散値DPの平均値を第1の閾値である停止判定閾値SDとして設定することにより、当該横方向加速度分散値DPに基づいて停止判定閾値SDを設定する。そしてナビゲーション装置1は、GPS信号が入力されないときに、横方向加速度分散値DPが停止判定閾値SD未満であるか否かによって停止判定閾値SDに基づいて車両100が停止しているか否かを判定することにより、車両100が停止していることを検出するようにした。
【0096】
これにより、GPS信号が入力されないときに、車両100の種類や状態に応じた振動のレベルが反映された停止判定閾値SDを用いて、車両100が停止しているときに、車両100が停止していることを確実に検出できる。
【0097】
また、ナビゲーション装置1は、GPS信号が入力されない自律状態において、車両100の速度として自律速度VEを推定し、停止判定閾値SDに基づいて車両100の振動の大小から車両100が停止していることを検出すると、自律速度VEをゼロに設定するようにした。
【0098】
これにより、車両100が停止する度に、自律速度VEを一旦ゼロ[m/s]にすることができ、この度に自律速度VEが有する誤差を一旦ゼロ[m/s]にリセットすることができる。
【0099】
さらに、ナビゲーション装置1は、ユーザの操作に応じてナビゲーション装置1がクレードル4に設置され、主電源がONの状態にあり、かつGPS速度VGから車両100が停止していると判別されたときに算出された全ての横方向加速度分散値DP、すなわちGPS受信開始から現在までに算出された横方向加速度分散値DPの平均値を停止判定閾値SDとして設定するようにした。
【0100】
これにより、一定数以上横方向加速度分散値DPが算出されてからは、横方向加速度分散値DPが徐々に停止判定閾値SDに反映され、車両100の状態に応じて停止判定閾値SDを学習することができるため、横風などによって一瞬だけ横方向加速度分散値DPが大きくなったような場合であっても、この横方向加速度分散値DPが停止判定閾値SDに与える影響を小さくすることができる。また、1回でもGPS速度VGから車両100が停止していると判別されれば、このときの横方向加速度分散値DPが横方向加速度分散値DPの平均値とみなされ、これを停止判定閾値SDとして設定することができるため、GPS信号が入力されないときの停止判定処理を逸早く実行することができる。
【0101】
また、ナビゲーション装置1は、GPS速度VGから車両100が停止していると判別したにも拘わらず、このときの横方向加速度分散値DPが第2の閾値である設定閾値よりも大きいと判別した場合には、停止判定閾値SDを設定しないようにした。これにより、ナビゲーション装置1は、停止時及び走行時の横方向加速度分散値DPの差が小さく、停止判定処理において誤判定をする危険性がある場合には、停止判定処理を実行しないようにしたため、車両100が停止していることの誤検出を未然に防止することができる。
【0102】
さらに、ナビゲーション装置1は、車両100のエンジン100aが有するクランクシャフトの回転軸と同一の方向である横方向の加速度を表す横方向加速度信号SBから横方向加速度分散値DPを算出するようにしたことにより、車両100の停止時における横方向加速度分散値DPの値を、異なる方向の加速度を表す進行方向加速度分散値DPaよりも低い状態で安定させることができ、車両100の走行時における横方向加速度分散値DPと停止判定閾値SDとの差を拡大させ、車両100の走行時に車両100が停止していると検出されることを一段と確実に防止することができる。
【0103】
さらに、ナビゲーション装置1は、加速度センサ11から車両100が停止したことを確実に検出することができるため、高価なジャイロセンサを搭載しないような安価なタイプのナビゲーション装置1にも本発明を適用することができる。
【0104】
以上の構成によれば、GPS信号から車両100の走行速度を算出できるGPS受信時において、GPS非受信時に車両100が停止していることを検出するために使用される停止判定閾値SDを設定するようにしたことにより、当該停止判定閾値SDに車両100の種類や状態を反映させることができ、かくして車両100が停止しているときに、車両100が停止していることを確実に検出することができるナビゲーション装置、停止検出方法及び停止検出プログラムを実現することができる。
【0105】
(5)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、横方向加速度分散値DPの平均値を停止判定閾値SDとして設定するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、横方向加速度分散値DPの最大値を停止判定閾値SDとして設定するようにしても良い。これにより、GPS非受信時において車両100が停止していることを判定の度に確実に検出することができる。この結果、例え車両100が1秒間だけ停止した場合であっても、このときに車両100が停止したことを確実に検出することができる。
【0106】
また上述の実施の形態においては、ナビゲーション装置1がクレードル4から外される、若しくは主電源がOFFにされたことにより、ユーザの意思に応じてGPS信号の受信が中止されると、停止判定閾値SDがリセットされ、次にナビゲーション装置1がクレードル4に設置されかつ主電源がONにされることにより、ユーザの意思に応じてGPS信号の受信が開始されたときに一から停止判定閾値SDが設定されるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ユーザの意思に応じたGPS信号の受信を開始したか否かに拘わらず、停止判定閾値SDを保持し、GPS受信時かつ車両100の停車時において新たに算出された横方向加速度分散値DPを停止判定閾値SDに徐々に反映させることにより、停止判定閾値SDを長い期間に渡って学習させるようにしても良い。
【0107】
また上述の実施の形態においては、クレードル4に設置されかつ主電源がONにされたことによりユーザの意思に応じてGPS信号の受信を開始させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば車両100のエンジン100aの起動に応じて自動的に主電源がONに設定されるようなナビゲーション装置1においては、当該エンジン100aが起動したことにより、ユーザの意思に応じてGPS信号の受信を開始させるようにしても良い。
【0108】
この場合、閾値設定部20は、例えば記憶部16に所定数だけ横方向加速度分散値DPを登録するようにし、当該横方向加速度分散値DPの平均値を停止判定閾値SDとして設定するようにしたり、所定の期間に登録された横方向加速度分散値DPの平均値を停止判定閾値SDとして設定するようにしても良い。
【0109】
車両100は、特に走行を開始した直後にはエンジンの温度が低く、振動が大きいことが一般的に知られている。従って、ナビゲーション装置1は、停止判定閾値SDを上述したように長い期間に渡って学習させることにより、横方向加速度分散値DPの値を徐々に停止判定閾値SDに反映させるため、走行を開始した直後の横方向加速度分散値DPをそのまま停止判定閾値SDとして設定することなく、振動に応じた大きい値を有する横方向加速度分散値DPが停止判定閾値SDとして設定したために生じる誤判定を未然に防止することができる。
【0110】
さらに上述の実施の形態においては、GPS受信時かつ車両100の停止時に最初に算出された横方向加速度分散値DPをそのまま停止判定閾値SDとして設定するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、所定の数だけ横方向加速度分散値DPが算出されるまでは、停止判定閾値SDを設定しないようにしても良い。
【0111】
この場合、閾値設定部20は、横方向加速度分散値DPを記憶部16に登録すると共に、前回までに登録された横方向加速度分散値DPの数を確認し、所定の登録数未満の横方向加速度分散値DPだけしか登録されていなかった場合には、停止判定閾値SDの設定を実行しないようにする。
【0112】
図4に示したように、この横方向加速度分散値DPは比較的ばらつきの大きい値である。従って、閾値設定部20は、横方向加速度分散値DPの平均値が当該平均値として信頼性のある値になるまで停止判定閾値SDとして設定させないようにして、横方向加速度分散値DPのばらつきを停止判定閾値SDに反映させないようにすることができる。
【0113】
さらに上述の実施の形態においては、横方向加速度分散値DPの平均値を停止判定閾値SDとして設定するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばGPS受信時かつ車両100の停止時において、最初に算出された横方向加速度分散値DPを停止判定閾値SDとして設定し、ナビゲーション装置1がクレードル4から外される又は主電源がOFFに設定されるまでの間中この停止判定閾値SDを使用するようにしても良い。
【0114】
さらに上述の実施の形態においては、GPS受信時かつ車両100の停止時において、横方向加速度分散値DPが所定の設定閾値より大きい場合には、停止判定閾値SDを設定しないようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばGPS受信時に車両100の走行時と停止時に算出された横方向加速度分散値DPを比較し、停止時の横方向加速度分散値DPが走行時の横方向加速度分散値DPよりも大きい場合に、停止判定閾値SDを設定しないようにしても良い。
【0115】
さらに上述の実施の形態においては、クランクシャフトの回転軸方向と同一の横方向の加速度である横方向加速度信号SBの分散値を加速度分散値として用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、クランクシャフトの回転軸方向と垂直な進行方向加速度信号SAの分散値を加速度分散値として用いるようにしても良い。これにより、自律速度算出部14による速度の推定に用いられる進行方向加速度信号SAを用いることができ、わざわざ横方向加速度信号SBを検出する必要が無いため、ナビゲーション装置1の構成を簡易にすることができる。
【0116】
さらに上述の実施の形態においては、信頼性判定プログラムをROMに予め格納するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、メモリースティック(ソニー株式会社の登録商標)などの外部記憶媒体からROM又は記憶部19などにインストールするようにしても良い。また、キーワード適正化プログラムなどをUSB(Universal Serial Bus)やEthernet(登録商標)(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/gなどの無線LAN(Local Area Network)を介して外部から取得し、さらには地上ディジタルテレビジョン放送やBSディジタルテレビジョン放送により配信されるようにしても良い。
【0117】
さらに上述した実施の形態においては、GPSアンテナ5により受信したGPS信号を基にGPS処理部4により位置信号PSを生成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば準天頂衛星システム、グローナス(GLONASS:Global Navigation Satellite System)やガリレオ(GALILEO)等の種々の衛星測位システムを利用し、それぞれの測位信号を受信して測位処理を行い位置信号PSを生成するようにしても良い。
【0118】
さらに上述した実施の形態においては、車両100に搭載されるナビゲーション装置1及び20に本発明を適用するようにした場合について述べたが、これに限らず、例えば携帯型のナビゲーション装置や、GPS受信機能を有するPDA、携帯電話機、パーソナルコンピュータ等、車速パルス信号又はこれに類する信号を利用せずにナビゲーション機能を実現する種々の電子機器に本発明を適用するようにしても良い。この場合、当該電子機器は車両100に限らず、船舶や航空機等に搭載されても良く、或いは単独で用いられても良い。
【0119】
さらに上述の実施の形態においては、加速度検出部としての加速度センサ11と、速度算出部としてのGPS速度算出部13と、閾値設定部としての閾値設定部20と、停止検出部としての停止判定部15とによって、ナビゲーション装置としてのナビゲーション装置1を構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる加速度検出部と、速度算出部と、閾値設定部と、停止検出部とによって本発明のナビゲーション装置を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明のナビゲーション装置、停止検出方法及び停止検出プログラムは、例えば車載用のナビゲーション装置の他、歩行者用や航空機用などの各種ナビゲーション装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】ナビゲーション装置の搭載を示す略線図である。
【図2】ナビゲーション装置及びクレードルの構成を示す略線図である。
【図3】ナビゲーション装置の回路構成を示す略線図である。
【図4】GPS受信時における停止の判別の説明に供する略線図である。
【図5】停止判定閾値SDの設定の説明に供する略線図である。
【図6】横方向加速度信号による加速度分散値の算出を示す略線図である。
【図7】信号加速度信号による加速度分散値の算出を示す略線図である。
【図8】停止検出処理の手順の説明に供するフローチャートである。
【符号の説明】
【0122】
1……ナビゲーション装置、2……GPSアンテナ、3……表示部、4……クレードル、10……演算処理ブロック、11……加速度センサ、13……GPS速度算出部、14……自律速度算出部、15……停止判定部、16……記憶部、20……閾値設定部、100……車両、SB……横方向加速度信号、DP……加速度分散値、SD……停止判定閾値SD、VG……GPS速度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に生じる加速度を検出する加速度検出部と、
GPS(Global Positioning System)信号受信装置から入力されたGPS信号に基づいて移動体速度を算出する速度算出部と、
上記移動体速度から上記移動体が停止していると認識した際に、上記加速度の分散値に基づいて第1の閾値を設定する閾値設定部と、
上記GPS信号が入力されない場合、上記第1の閾値に基づいて、上記加速度の分散値から上記移動体が停止しているか否かを判定することにより、上記移動体が停止中であることを検出する停止検出部と
を具えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
上記GPS信号が入力されない場合、上記移動体速度に基づいて上記移動体の速度を自律速度として推定すると共に、上記停止判定部によって上記移動体が停止中であると判定された場合には、上記自律速度をゼロに設定し、ゼロに設定された当該自律速度に基づいて、現在の自律速度を推定する速度推定部
を具えることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
上記閾値設定部は、
上記移動体速度から上記移動体が停止していると認識した際に、所定時間ごとに上記加速度の分散値を算出し、上記GPS信号の受信を開始してから現在までにおける当該加速度の分散値を上記第1の閾値に反映させることにより、上記移動体に応じた上記第1の閾値を学習する
ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
上記閾値設定部は、
ユーザの意思に応じて上記GPS信号の受信を開始させてから現在までにおける当該加速度の分散値を上記第1の閾値に反映させることにより、上記移動体に応じた上記第1の閾値を学習する
ことを特徴とする請求項3に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
上記閾値設定部は、
上記移動体速度から上記移動体が停止していると認識した際に、所定時間ごとに上記加速度の分散値を算出し、所定期間における当該加速度の分散値の平均値を上記第1の閾値として設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
上記閾値設定部は、
上記移動体速度から移動体が停止していると認識した際に、上記加速度の分散値が第2の閾値以上であるときには上記第1の閾値を設定せず、
上記停止判定部は、
上記第1の閾値が設定されていない場合には、上記移動体が停止しているか否かの判定を実行しない
ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
上記加速度検出部は、
上記移動体のエンジンにおけるクランクシャフトの回転軸方向と同一方向の加速度に基づいて、上記第1の閾値を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
移動体に生じる加速度を検出する加速度検出ステップと、
GPS(Global Positioning System)信号受信装置から入力されたGPS信号に基づいて移動体速度を算出する速度算出ステップと、
上記移動体速度から上記移動体が停止していると認識した際に、上記加速度の分散値に基づいて第1の閾値を設定する閾値設定ステップと、
上記GPS信号が入力されない場合、上記第1の閾値に基づいて、上記加速度の分散値から上記移動体が停止しているか否かを判定することにより、上記移動体が停止中であることを検出する停止検出ステップと
を具えることを特徴とする停止検出方法。
【請求項9】
移動体に生じる加速度を検出する加速度検出ステップと、
GPS(Global Positioning System)信号受信装置から入力されたGPS信号に基づいて移動体速度を算出する速度算出ステップと、
上記移動体速度から上記移動体が停止していると認識した際に、上記加速度の分散値に基づいて第1の閾値を設定する閾値設定ステップと、
上記GPS信号が入力されない場合、上記第1の閾値に基づいて、上記加速度の分散値から上記移動体が停止しているか否かを判定することにより、上記移動体が停止中であることを検出する停止検出ステップと
を具えることを特徴とする停止検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−58273(P2008−58273A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238949(P2006−238949)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】