説明

ナビゲーション装置とその誘導方法

【課題】 従来の車載用ナビゲーション装置では、予め避難場所として所定の地点が記録された地図データを保持しておき、緊急災害情報を受信した場合に最寄りの避難場所へ経路誘導を行う技術が用いられていた。しかし、予め避難場所として所定の地点が記録された地図データを保持しないナビゲーション装置では、そのような技術を用いることができない。
本発明の目的は、予め避難場所として所定の地点が記録された地図データを保持しない車載用ナビゲーション装置であっても、竜巻などの発生に対して効果的に避難を行うことができる場所へ経路誘導する技術を提供する。
【解決手段】
本発明の車載用ナビゲーション装置は、周辺のトンネルあるいは高架道路をくぐる道路を検索し、その場所のひとつへ避難するための経路誘導を行う手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載されるナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、現在地から目的地までの経路を探索して案内するナビゲーション装置において、自車の走行する地域で緊急警報が発せられた場合に、予め記憶された避難場所へ経路誘導する技術がある。このことは、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−220196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなナビゲーション装置では、予め避難場所として所定の地点が記録された地図データが必要となり、そのようなデータを保持しないナビゲーション装置では使用できない。
【0005】
また、一般に、竜巻(トルネード)等の災害発生時の緊急避難方法として、トンネルや高架橋などの立体建造物の下に避難する方法が推奨されている。しかし、上記のようなナビゲーション装置では、上記の避難場所としてこのような場所は含まれないことが多く、効果的な避難場所へ経路誘導することができない。
【0006】
本発明の目的は、予め避難場所として所定の地点が記録された地図データを保持しない車載用ナビゲーション装置であっても、効果的な避難場所へ経路誘導する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明の車載用ナビゲーション装置は、緊急避難が必要か否かを判定する緊急避難判定手段と、前記緊急避難判定手段により判定した結果避難が必要であれば緊急避難場所を特定する緊急避難場所特定手段と、前記緊急避難場所特定手段により特定された場所までの経路を誘導する経路誘導手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また例えば、車載用ナビゲーション装置の誘導方法であって、前記車載用ナビゲーション装置は、緊急避難が必要か否かを判定する緊急避難判定ステップと、前記緊急避難判定手段により判定した結果避難が必要であれば緊急避難場所を特定する緊急避難場所特定ステップと、前記緊急避難場所特定手段により特定された場所までの経路を誘導する経路誘導ステップと、を実行することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明が適用された車載用ナビゲーション装置100の概略構成図である。図示するように、車載用ナビゲーション装置100は、演算処理部1と、ディスプレイ2と、記憶装置3と、音声入出力装置4と、入力装置5と、ROM装置6と、車速センサ7と、ジャイロセンサ8と、GPS(Global Positioning System)受信装置9と、放送波受信装置10と、ビーコン受信装置11と、を備えている。
【0011】
演算処理部1は、様々な処理を行う中心的ユニットである。例えば各種センサ7,8やGPS受信装置9、放送波受信装置10、またはビーコン受信装置11から出力される情報を基にして現在地を検出する。また、得られた現在地情報に基づいて、表示に必要な地図データを記憶装置3あるいはROM装置6から読み出す。また、読み出した地図データをグラフィックス展開し、そこに現在地を示すマークを重ねてディスプレイ2へ表示する。また、記憶装置3あるいはROM装置6に記憶されている地図データ等を用いて、ユーザから指示された出発地(現在地)と目的地とを結ぶ最適な経路(推奨経路)を探索する。また、音声入出力装置4やディスプレイ2を用いてユーザを誘導する。
【0012】
ディスプレイ2は、演算処理部1で生成されたグラフィックス情報を表示するユニットである。ディスプレイ2は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどで構成される。
【0013】
記憶装置3は、HDD(Hard Disk Drive)や不揮発性メモリカードといった、少なくとも読み書きが可能な記憶媒体で構成される。
【0014】
この記憶媒体には、通常の経路探索装置に必要な地図データ(地図上の道路を構成するリンクのリンクデータを含む)などのほかに、リンクテーブル500が記憶されている。
【0015】
図2は、リンクテーブル500の構成を示す図である。リンクテーブル500は、地図上の区画された領域であるメッシュの識別コード(メッシュID)501ごとに、そのメッシュ領域に含まれる道路を構成する各リンクのリンクデータ502を含んでいる。
【0016】
リンクデータ502は、リンクの識別子であるリンクID511ごとに、リンクを構成する2つのノード(開始ノード、終了ノード)の座標情報522、リンクを含む道路の種別を示す道路種別523、リンクの長さを示すリンク長524、リンク旅行時間525、リンクを構成する2つのノードにそれぞれ接続するリンクのリンクID(接続リンクID)である開始接続リンク、終了接続リンク526、リンクを含む道路の通称(例えば、「環八通り」等)を示す通称527、リンクを含む道路の路幅528、リンク内の所定の位置からから算出した海抜高度を平均した平均高度529、リンクが備える特徴(例えば、「トンネル」「陸橋」)である道路属性530、などを含んでいる。なお、ここでは、リンクを構成する2つのノードについて開始ノードと終了ノードとを区別することで、同じ道路の上り方向と下り方向とを、それぞれ別のリンクとして管理するようにしている。なお、リンク旅行時間525は、日時、天気などの条件ごとに対応付けられたリンク旅行時間であってもよい。
【0017】
図1に戻って説明する。音声入出力装置4は、音声入力装置としてマイクロフォン41と、音声出力装置としてスピーカ42と、を備える。マイクロフォン41は、使用者やその他の搭乗者が発した声などの車載用ナビゲーション装置100の外部の音声を取得する。
【0018】
スピーカ42は、演算処理部1で生成された使用者へのメッセージを音声信号として出力する。マイクロフォン41とスピーカ42は、車両の所定の部位に、別個に配されている。ただし、一体の筐体に収納されていても良い。車載用ナビゲーション装置100は、マイクロフォン41及びスピーカ42を、それぞれ複数備えることができる。
【0019】
入力装置5は、使用者からの指示を使用者による操作を介して受け付ける装置である。入力装置5は、タッチパネル51と、ダイヤルスイッチ52と、その他のハードスイッチ(図示しない)であるスクロールキー、縮尺変更キーなどで構成される。
【0020】
タッチパネル51は、ディスプレイ2の表示面側に搭載され、表示画面を透視可能である。タッチパネル51は、ディスプレイ2に表示された画像のXY座標と対応したタッチ位置を特定し、タッチ位置を座標に変換して出力する。タッチパネル51は、感圧式または静電式の入力検出素子などにより構成される。
【0021】
ダイヤルスイッチ52は、時計回り及び反時計回りに回転可能に構成され、所定の角度の回転ごとにパルス信号を発生し、演算処理部1に出力する。演算処理部1では、パルス信号の数から、回転角度を求める。
【0022】
ROM装置6は、CD-ROMやDVDなどのROM(Read Only Memory)やIC(Integrated Circuit)カードといった、少なくとも読み取りが可能な記憶媒体で構成されている。この記憶媒体には、例えば、動画データや、音声データなどが記憶されている。
【0023】
車速センサ7,ジャイロセンサ8およびGPS受信装置9は、車載用ナビゲーション装置100において現在地(自車位置)を検出するために使用されるものである。車速センサ7は、加速度センサ等により車両の走行速度を検出し、演算処理部1に送信するものである。ジャイロセンサ8は、光ファイバジャイロや振動ジャイロ等で構成され、移動体が回転した角度を検出し、演算処理部1に送信するものである。GPS受信装置9は、GPS衛星からの信号を受信し移動体とGPS衛星間の距離と距離の変化率を3個以上の衛星に対して測定することで移動体の現在位置、進行速度および進行方位を測定し、演算処理部1に送信するものである。
【0024】
放送波受信装置10およびビーコン受信装置11は、放送波の信号としてVICS(登録商標、Vehicle Information and Communication System)情報などの交通情報を配信する放送局から送られてくる概略現況交通情報、規制情報、SA/PA(サービスエリア/パーキングエリア)情報、駐車場情報、天気情報、災害情報、緊急警報などを受信する。
【0025】
災害情報には、避難すべき対象と、その規模、その位置等の情報が含まれる。
【0026】
なお、放送波受信装置10は、FM多重放送の受信装置であってもよいし、衛星ラジオ放送の受信装置等であってもよい。
【0027】
図3は、演算処理部1の機能ブロック図である。
【0028】
図示するように、演算処理部1は、主制御部101と、緊急避難判定部102と、緊急避難場所特定部103と、経路探索部104と、経路誘導部105と、入力受付部106と、出力処理部107と、を有する。
【0029】
主制御部101は、様々な処理を行う中心的な機能部であり、処理内容に応じて、他の処理部を制御する。また、主制御部101は、車載用ナビゲーション装置100の本来の基本動作であるナビゲーション処理(例えば、交通情報の表示、現在位置の表示、経路探索、経路誘導等)を実施する。さらに、各処理部からの要求に応じて、現在時刻を出力する。
【0030】
緊急避難判定部102は、受信した道路交通情報をもとに、付近に竜巻(トルネード)等のあらかじめ定められた回避すべき対象が存在するか否かを判定し、存在する場合には緊急避難が必要と判定して対象の位置を記憶する。
【0031】
例えば、まず、緊急避難判定部102は、放送波受信装置10またはビーコン受信装置11を介して道路交通情報を受信する。
【0032】
そして、次に、緊急避難判定部102は、受信した道路交通情報に、自車位置から所定の距離内、例えば30km以内等に、竜巻(トルネード)が存在するという情報が含まれるか否かを判定する。
【0033】
情報があれば、緊急避難判定部102は、緊急避難が必要であると判定し、図示しない記憶装置3の所定の記憶領域に竜巻の位置を記憶させ、避難開始フラグを立てる。
【0034】
緊急避難場所特定部103は、竜巻から避難する場所の候補を検索し特定する処理を行う。
【0035】
竜巻から避難する場所として、トンネルの中や高架道路と交差する道路の下など、上空に遮蔽物のある場所で最もすばやくたどり着くことのできる場所を特定するというのが、処理の概要である。
【0036】
具体的には、緊急避難場所特定部103は、トンネルが配置された道路であって路幅が広い道路、または陸橋や高速道路(フリーウェイ)などの高架建造物である高架道路の下をくぐって交差する道路であって路幅が広い道路を所定範囲内から検索し、避難場所候補を選定する。
【0037】
なお、その選定の際には、自車が高速道路を走行していない場合には、高速道路に進入する必要がある避難場所については、その場所が現在の推奨経路に含まれる場合以外は、避難場所とはしない。
【0038】
ただし、トンネルの中など避難の効果が高い箇所については、避難箇所の候補とする。
【0039】
そして、緊急避難場所特定部103は、経路探索部104に対して、選定した避難箇所候補のそれぞれについて、現在位置からその箇所へ到達するのに必要な時間を算出するよう指示する。
【0040】
そして、緊急避難場所特定部103は、経路探索部104に算出させた必要な時間が最も短い場所を避難場所として特定する。
【0041】
経路探索部104は、ダイクストラ法等を用いて、指定された2地点(現在位置、目的地または立ち寄り地点)間を結ぶ経路のコスト(例えば、距離や旅行時間)が最少となる経路を探索する。なお、経路とは、道路を示す位置に配置された点である複数のノードと、2つのノード間を結ぶリンクと、を連続的に順に結ぶことで特定される。また、経路探索部104は、その経路に含まれる各ノード、各リンクに予め与えられたコストを合算することで経路全体のコストを求める。そして、経路探索部104は、その経路を通って目的地または立ち寄り地点に到達するまでに必要となる時間を算出し、その経路を特定するための経路情報をRAM22または記憶装置3の所定の領域に記憶させる。
【0042】
なお、経路を探索する際に、記憶装置3の記憶領域に記憶された竜巻の現在位置とその位置を基準とした所定の範囲(例えば周囲10km圏内、また例えば竜巻の暴風圏内)のリンクについてはコストに重みをつけて計算してもよい。
【0043】
そのように計算することで、竜巻による被害を受ける可能性が高い場所を避けて走行することができるようになる。
【0044】
また、経路誘導部105は、経路探索部104により探索した結果得られた経路の経路情報に従って経路を特定し、使用者に対して走行経路を誘導する。
【0045】
例えば、経路情報と、現在位置の情報とを比較し、交差点等を通過する前に直進すべきか、右左折すべきかを音声出入力装置4を用いて音声で使用者に知らせる。
【0046】
また、経路誘導部105は、ディスプレイ2に表示された地図上に進行すべき方向を表示して、使用者に推奨経路を通知する。
【0047】
入力受付部106は、マイクロフォン41、タッチパネル51およびダイヤルスイッチ52を介して、使用者からの指示入力を受け付け、これを各処理部に受け渡す処理部である。
【0048】
出力処理部107は、画面出力をディスプレイ2に表示させる機能部である。ディスプレイ2への表示が要求される領域にある画面データと表示候補を受け取り、指定された描画方式で、道路、その他の地図構成物や、現在地、目的地、推奨経路、メッセージ情報のためのダイアログなどを描画するように画面描画コマンドを生成する。そして、生成したコマンドを、ディスプレイ2に送信する
図4は、演算処理部1のハードウェア構成例を示す図である。
【0049】
図示するように、演算処理部1は、各デバイス間をバス32で接続した構成である。演算処理部1は、数値演算及び各デバイスを制御するといった様々な処理を実行するCPU(Central Processing Unit)21と、記憶装置3から読み出した地図データ、演算データなどを格納するRAM(Random Access Memory)22と、プログラムやデータを格納するROM(Read Only Memory)23と、メモリ間およびメモリと各デバイスとの間のデータ転送を実行するDMA(Direct Memory Access)24と、グラフィックス描画を実行し且つ表示制御を行う描画コントローラ25と、グラフィックスイメージデータを蓄えるVRAM(Video Random Access Memory)26と、イメージデータをRGB信号に変換するカラーパレット27と、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器28と、シリアル信号をバスに同期したパラレル信号に変換するSCI(Serial Communication Interface)29と、パラレル信号をバスに同期させてバス上にのせるPIO(Parallel Input/Output)30と、パルス信号を積分するカウンタ31と、を有する。
【0050】
なお、上記の各構成要素および機能は、CPU21がRAM22やROM23にロードしたプログラムを実行することにより達成される。
【0051】
[動作の説明]次に、上記構成の車載用ナビゲーション装置100の動作について説明する。
【0052】
図5は、緊急避難誘導処理の流れ全体を示すフロー図である。
【0053】
主制御部101は、車載用ナビゲーション装置100の本体への電源投入直後、一定の周期で、本フローを実施する。
【0054】
主制御部101は、車両の現在位置を算出する(ステップS001)。
【0055】
具体的には、主制御部101は、GPS受信装置8を用いて、GPS衛星からの信号を受信し、車両とGPS衛星間の距離と距離の変化率を3個以上の衛星に対して測定することで車両の現在位置を測定する。
【0056】
あわせて、主制御部101は、ジャイロセンサ8によって車両の状態を取得して、得られた現在位置を補正し、マップマッチングを行って車両の現在位置を推定する。
【0057】
そして、緊急避難判定部102は、避難開始判定処理を開始する(ステップS002)。
【0058】
具体的には、図6に示すフローチャートに記載の処理を実施する。
【0059】
図6には、避難開始判定処理のフローチャートが記載されている。
【0060】
まず、緊急避難判定部102は、放送波受信装置10またはビーコン受信装置11を介して道路交通情報を受信する(ステップS101)。
【0061】
そして、次に、緊急避難判定部102は、ステップS101で受信した道路交通情報に、自車位置から所定の距離内、例えば30km以内等に、竜巻(トルネード)が存在するという情報が含まれるか否かを判定する(ステップS102)。
【0062】
なお、ステップS102は、より具体的には、緊急避難判定部102は、道路交通情報に含まれる竜巻の現在位置の座標を取得し、その座標と現在位置の座標との間の直線距離が例えば30km以内であるか否かを判定する、という処理を実施する。
【0063】
もしくは、緊急避難判定部102は、竜巻との直線距離が所定距離内であるかどうかを判定する代わりに、その竜巻が存在する座標に到達するための経路を経路探索部104に指示し、得られた所要時間が所定時間(例えば60分)以内であるか否かを判定する、という処理を実施しても良い。
【0064】
竜巻が所定の距離内に存在するという情報が含まれる場合には(ステップS102にて「Y」)、緊急避難判定部102は、緊急避難が必要であると判定し、図示しない記憶装置3の所定の記憶領域に竜巻の位置と竜巻の危険範囲を記憶させる(ステップS103)。
【0065】
そして、緊急避難判定部102は、RAM22上の所定の領域に避難開始フラグをTrueとして記憶させる(ステップS104)。
【0066】
竜巻が所定の距離内に存在するという情報が含まれない場合には(ステップS102にて「N」)、緊急避難判定部102は、その避難開始判定処理を終了する。
【0067】
図5の緊急避難誘導処理の説明に戻る。
【0068】
緊急避難判定部102は、ステップS002における避難開始判定処理のステップS104で避難開始フラグをTrueに設定されたか否かを判定する(ステップS003)。
【0069】
ステップS003の判定の結果、避難開始フラグをTrueに設定されていれば(ステップS003にて「Y」)、避難開始と判定し、次のステップS004へ処理を移す。
【0070】
そうでない場合(ステップS003にて「N」)には、処理をステップS001へ戻し、再度実行する。
【0071】
次に、緊急避難場所特定部103は、リンクテーブル500の中から所定の条件を満たすリンクのリンクIDを取得して、記憶装置3またはRAM22の記憶領域に記憶させる(ステップS004)。
【0072】
具体的には、緊急避難場所特定部103は、リンクテーブル500の中から、路幅528が所定の幅(例えば、幅10m)以上、かつ道路属性530に「トンネル」が設定されているリンクであって、かつ現在位置から所定の距離内にあるリンクを特定する。
【0073】
そして、緊急避難場所特定部103は、特定したリンクのリンクIDを、記憶装置3またはRAM22の所定の記憶領域に記憶させる。
【0074】
次に、緊急避難場所特定部103は、リンクテーブル500の中から所定の条件を満たすリンクのリンクIDを取得して、記憶装置3またはRAM22の記憶領域に記憶させる(ステップS005)。
【0075】
具体的には、緊急避難場所特定部103は、リンクテーブル500の中から、路幅528が所定の幅(例えば、幅20m)以上である道路であり、かつ道路属性530に「陸橋」が設定されているリンクであり、かつ現在位置から所定の距離内にあるリンクを特定する。
【0076】
あわせて、緊急避難場所特定部103は、リンクテーブル500の中から、道路種別523に「高速道路(フリーウェイ)」が設定されているリンクであり、かつ現在位置から所定の距離内にあるリンクを特定する。
【0077】
そして、緊急避難場所特定部103は、特定したそれらのリンクのリンクIDを、記憶装置3またはRAM22の所定の記憶領域に記憶させる。
【0078】
次に、緊急避難場所特定部103は、ステップS004とS005で特定したリンクをもとに、具体的な避難場所を特定する処理である避難場所候補算出処理を行い、続けて経路探索部104に対して、避難場所候補算出処理の結果得られた避難場所候補のそれぞれについて、現在位置からその場所へ到達するのに必要な時間を算出するよう指示する(ステップS006)。
【0079】
図7に、避難場所候補算出処理のフローチャートを示す。
【0080】
まず、緊急避難場所特定部103は、記憶装置3またはRAM22の記憶領域から、ステップS005において記憶された高速道路または陸橋を構成するリンクについてのリンクIDを取得する(ステップS201)。
【0081】
そして、緊急避難場所特定部103は、ステップS201で特定したリンクIDにより特定されるリンクの下をくぐるリンクをそれぞれ特定しリスト構造体などの順アクセス可能な記憶領域としてRAM22上に記憶する(ステップS202)。
【0082】
具体的には、緊急避難場所特定部103は、ステップS201で取得したリンクIDを備えるリンクの情報をリンクテーブル500上で特定する。
【0083】
そして、緊急避難場所特定部103は、特定したリンクのリンクデータ511に含まれる開始ノード・終了ノード522を取得する。
【0084】
次に、緊急避難場所特定部103は、開始ノードと終了ノードを結ぶ仮想的な線分を算出し、その線分と交差するリンクをリンクテーブル500から検索する。
【0085】
緊急避難場所特定部103は、検索の結果見つけたリンクから、その平均高度522が、ステップS201で取得したリンクIDにより特定されるリンクの平均高度522よりも低いものを抽出する。
【0086】
緊急避難場所特定部103は、そのように抽出した結果得られたリンクを、ステップS201で特定したリンクIDにより特定されるリンクの下をくぐるリンクとして特定する。
【0087】
ここで、ステップS202の処理について、具体例を用いて説明する。
【0088】
図8は、地図画面1000の例である。地図画面1000には、車両の現在位置を示す位置に表示されたカーマーク1001と、高速道路を構成するノードであるノード1002と、ノード1003と、ノード1004と、高速道路ではない道路を構成するノード1005と、ノード1006と、ノード1007と、ノード1008と、高速道路を構成するリンクであるリンク1009と、リンク1010と、リンク1009に交差する交差1011と、交差1012と、リンク1010に交差する交差1013と、が表示されているものとする。
【0089】
この例において、ステップS202では、緊急避難場所特定部103は、ステップS201で取得したリンクIDとして、リンク1009のIDとリンク1010のリンクIDを取得する。
【0090】
そして、緊急避難場所特定部103は、リンク1009と、リンク1010と、のそれぞれのリンクデータ511に含まれる開始ノード・終了ノード522を取得する。その結果として、リンク1009については、開始ノードである1002と、終了ノードである1003と、を取得し、リンク1010については、開始ノードである1003と、終了ノードである1004と、を取得する。
【0091】
次に、緊急避難場所特定部103は、まず、リンク1009について、リンク開始ノードであるノード1002と終了ノードであるノード1003とを結ぶ仮想的な線分を算出し、その線分と交差するリンクをリンクテーブル500から検索する。検索した結果、ノード1005を開始ノードとし、ノード1006を終了ノードとし、交差1011で交差するリンク、およびノード1008を開始ノードとし、ノード1007を終了ノードとし、交差1012で交差するリンク、を得る。
【0092】
リンク1010については、リンク開始ノードであるノード1003と終了ノードであるノード1004とを結ぶ線分を算出し、その線分と交差するリンクをリンクテーブル500から検索する。検索した結果、交差1013においてリンク1010と交差するリンクを得る。
【0093】
つぎに、緊急避難場所特定部103は、検索の結果見つけた上記の3つのリンク(それぞれ交差1011、1012、1013で交差するリンク)から、その平均高度522が、ステップS201で取得したリンクIDにより特定されるリンクの平均高度522よりも低いものを抽出する(この例では、上記3リンクのうちリンク1009と交差する2つのリンクは、リンク1009よりも平均高度522が低く、リンク1010と交差する1つのリンクは、リンク1010よりも平均高度522が低いものとする)。
【0094】
このようにして、緊急避難場所特定部103は、上記3つのリンクを、ステップS201で特定したリンクIDにより特定されるリンクの下をくぐるリンクとして特定し、RAM22などの記憶領域に順アクセス可能な記憶領域を割り付け(例えばリスト構造体を作成し)、作成した記憶領域にその特定したリンクを記憶させる。
【0095】
ステップS203に説明を戻す。
【0096】
次に、ステップS202で特定したリンクを含む記憶領域上の次のリンクのリンクIDを取得する(ステップS203)。
【0097】
次に、緊急避難場所特定部103は、現在位置の存在するリンクは高速道路であるか否かを判定する(ステップS204)。
【0098】
具体的には、緊急避難場所特定部103は、現在位置の属するリンクについて、リンクIDをもとにリンクテーブル500を検索し、その道路種別523に「高速道路」が設定されているか否かを判定する。
【0099】
現在位置の属するリンクは高速道路であれば(ステップS204にて「Y」)、緊急避難場所特定部103は、ステップS203で特定したリンクが、高速道路であるか否かを判定する(ステップS205)。
【0100】
具体的には、緊急避難場所特定部103は、ステップS203で特定したリンクについて、その道路種別523に「高速道路」が設定されているか否かを判定する。
【0101】
ステップS205の判定の結果、ステップS203で特定したリンクが高速道路のリンクであれば(ステップS205にて「Y」)、緊急避難場所特定部103は、そのリンクが現在の推奨経路に含まれるリンクであるか否かを判定する(ステップS206)。
【0102】
具体的には、緊急避難場所特定部103は、ステップS203で特定したリンクについて、そのリンクIDが、現在誘導中の経路情報に含まれているか否かを判定する。
【0103】
ステップS206の判定の結果、現在の推奨経路に含まれるリンクであれば(ステップS206にて「Y」)、緊急避難場所特定部103は、下記のステップS209を実施する。
【0104】
現在位置の存在するリンクは高速道路でない場合には(ステップS204にて「N」)、緊急避難場所特定部103は、ステップS203で特定したリンクが、高速道路外であるか否かを判定する(ステップS207)。
【0105】
具体的には、緊急避難場所特定部103は、ステップS203で特定したリンクについて、その道路種別523に「高速道路」以外の値が設定されているか否かを判定する。
【0106】
ステップS207の判定の結果、ステップS203で特定したリンクが高速道路外の場合(ステップS207にて「Y」)には、下記のステップS209に処理を移す。
【0107】
ステップS207の判定の結果、ステップS203で特定したリンクが高速道路外でない場合(ステップS207にて「N」)、緊急避難場所特定部103は、そのリンクが現在の推奨経路に含まれるリンクであるか否かを判定する(ステップS208)。
【0108】
具体的には、緊急避難場所特定部103は、ステップS203で特定したリンクについて、そのリンクIDが、現在誘導中の経路情報に含まれているか否かを判定する。
【0109】
次に、ステップS205の判定の結果が「N」である場合と、ステップS206の判定の結果が「Y」である場合と、ステップS207の判定の結果が「Y」である場合と、ステップS208の判定の結果が「Y」である場合と、には、緊急避難場所特定部103は、ステップS203で特定したリンクについて、そのリンクIDを、避難場所候補として記憶装置3またはRAM22の所定の領域記憶に記憶させる(ステップS209)。
【0110】
そして、ステップS206の判定の結果が「N」である場合と、ステップS208の判定の結果が「N」である場合と、またはステップS209を実施した場合と、には、ステップS202で作成した記憶領域上にステップS203で選択していないリンクがあるか否かを判定する(ステップS210)。
【0111】
選択していないリンクが有る場合(ステップS210にて「Y」)、緊急避難場所特定部103は、ステップS203に処理を移す。
【0112】
次に、緊急避難場所特定部103は、記憶装置3またはRAM22の記憶領域から、ステップS004において記憶されたトンネル属性を有するリンクについてのリンクIDを取得する(ステップS211)。
【0113】
緊急避難場所特定部103は、ステップS211で取得したリンクIDを、避難場所候補として記憶装置3またはRAM22の所定の領域記憶に記憶させる(ステップS212)。
【0114】
以上が、避難場所候補算出処理である。
【0115】
図5の緊急避難誘導処理のフローの説明に戻る。
【0116】
経路探索部104は、避難場所候補算出処理の結果得られた避難場所候補のそれぞれについて、現在位置からその場所へ到達するのに必要な時間を算出し、緊急避難場所特定部103に算出した時間を通知する(ステップS007)。
【0117】
そして、経路探索部104から通知を受けた緊急避難場所特定部103は、その通知に含まれる避難場所候補ごとの到達に必要な時間を比較し、最も短い(最も早く到達する)避難場所候補を、避難場所として特定する(ステップS008)。
【0118】
そして、ステップS008で特定した避難場所について、経路探索部104は経路を探索し、経路情報を作成する(ステップS009)。
【0119】
次に、経路誘導部105は、経路探索部104により探索した結果得られた経路の経路情報に従って経路を特定し、使用者に対して走行経路を誘導する(ステップS010)。
【0120】
以上、緊急避難誘導処理について説明した。
【0121】
このように、緊急避難誘導処理により、竜巻発生時等に、予め避難場所として所定の地点が記録された地図データを保持しないナビゲーション装置であっても、緊急避難方法として、トンネルや高架橋などの立体建造物の下まで経路誘導を行うことができるようになる。
【0122】
以上、本発明の一実施形態について説明した。
【0123】
本発明は、上記実施形態に制限されない。上記実施形態は、本発明の技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。
【0124】
例えば、上記実施形態では、避難場所について、経路探索部104は経路を通常の経路探索と同様に探索し、経路情報を作成しているが、これに限らない。
【0125】
すなわち、ステップS008で特定した避難場所について、経路探索部104は、ステップS103で記憶装置3の記憶領域に記憶された竜巻の現在位置とその位置を基準とした所定の範囲(例えば周囲10km圏内、また例えば竜巻の暴風圏内)のリンクについてはコストに重みをつけて求めるようにしてもよい。
【0126】
このようにすることで、竜巻が存在する方向に向かう経路のコストが大きくなり、結果として竜巻が存在する方向に向かう経路でない経路を推奨経路として経路情報を作成することができるようになる。
【0127】
また例えば、上記実施形態では、ステップS008にて、緊急避難場所特定部103が避難場所を特定する際に、避難場所候補ごとの到達に必要な時間を比較し、最も短い(最も早く到達する)避難場所候補を避難場所として特定しているが、これに限られない。
【0128】
すなわち、避難場所候補ごとの到達に必要な時間を比較して、時間が短い順にその経路と避難場所とをディスプレイ2上に一覧形式で表示してもよい。
【0129】
そして、緊急避難場所特定部103は、入力受付部106を介して、表示した一覧からの選択入力を受け付けて、受け付けた避難場所候補を避難場所として特定してもよい。
【0130】
このようにすることで、避難場所を使用者が選択することができるようになり、例えば混雑することが予想される避難場所候補を避けて避難場所とすることが可能となる。
【0131】
さらに、例えば、上記実施形態では、ステップS008にて、緊急避難場所特定部103が避難場所を特定する際に、避難場所候補ごとの到達に必要な時間を比較し、最も短い(最も早く到達しうる)避難場所候補を避難場所として特定しているが、これに限られない。
【0132】
すなわち、避難場所候補ごとに、現在位置から到達に必要な時間を比較するのではなく、その避難場所候補から現在経路誘導されている目的地までの到達予想時間を算出して比較することで避難場所候補を避難場所として特定してもよい。
【0133】
こうすることで、緊急避難後に目的地への移動を再開する際に迅速に目的地へ到達できる可能性を高くすることができる。
【0134】
以上が、変形例である。
【0135】
なお、上記の実施形態では、本発明を車載用ナビゲーション装置に適用した例について説明したが、本発明は車載用以外のナビゲーション装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】図1は、本発明の一実施形態が適用された車載用ナビゲーション装置の概略構成図である。
【図2】図2は、記憶装置に記憶されているリンクテーブルの構成例を示す図である。
【図3】図3は、演算処理部の機能構成を示す図である。
【図4】図4は、演算処理部のハードウェア構成を示す図である。
【図5】図5は、緊急避難誘導処理のフロー図である。
【図6】図6は、避難開始判定処理のフロー図である。
【図7】図7は、避難場所候補算出処理のフロー図である。
【図8】図8は、避難場所候補算出処理の具体例を説明するための地図である。
【符号の説明】
【0137】
1・・・演算処理部、2・・・ディスプレイ、3・・・記憶装置、4・・・音声出入力装置、5・・・入力装置、6・・・ROM装置、7・・・車速センサ、8・・・ジャイロセンサ、9・・・GPS受信機、10・・・放送波受信装置、11・・・ビーコン受信装置、21・・・CPU、22・・・RAM、23・・・ROM、24・・・DMA、25・・・描画コントローラ、26・・・VRAM、27・・・カラーパレット、28・・・A/D変換器、29・・・SCI、30・・・PIO、31・・・カウンタ、32・・・バス、41・・・マイクロフォン、42・・・スピーカ、51・・・タッチパネル、52・・・ダイヤルスイッチ、100・・・車載用ナビゲーション装置、101・・・主制御部、102・・・緊急避難判定部、103・・・緊急避難場所特定部、104・・・経路探索部、105・・・経路誘導部、106・・・入力受付部、107・・・出力処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用ナビゲーション装置であって、
緊急避難が必要か否かを判定する緊急避難判定手段と、
前記緊急避難判定手段により判定した結果避難が必要であれば緊急避難場所を特定する緊急避難場所特定手段と、
前記緊急避難場所特定手段により特定された場所までの経路を誘導する経路誘導手段と、
を備えることを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用ナビゲーション装置であって、
前記緊急避難判定手段は、外部から受信した回避すべき対象の情報をもとに、回避すべき対象が所定の距離内にある場合に緊急避難が必要であると判定する、
ことを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車載用ナビゲーション装置であって、
前記緊急避難場所特定手段は、上空に遮蔽物のある道路を緊急避難場所として特定する、
ことを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車載用ナビゲーション装置であって、
前記遮蔽物のある道路は、トンネルのある道路、または高架道路と交差する道路である、
ことを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車載用ナビゲーション装置であって、
前記緊急避難場所特定手段は、所定の距離内にある高架道路のリンクの開始ノードと終了ノードを結ぶ線分と交差する道路であって、平均高度が交差する高架道路よりも低い道路を、高架道路と交差する道路として特定する、
ことを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の車載用ナビゲーション装置であって、
前記緊急避難場所特定手段は、さらに、複数ある緊急避難場所のうちから、最も迅速に到着しうる場所を特定する、
ことを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の車載用ナビゲーション装置であって、
前記緊急避難場所特定手段は、さらに、複数ある緊急避難場所のうちから一つを選択する入力を受け付けて、選択された緊急避難場所を特定する、
ことを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項8】
車載用ナビゲーション装置の誘導方法であって、
前記車載用ナビゲーション装置は、
緊急避難が必要か否かを判定する緊急避難判定ステップと、
前記緊急避難判定手段により判定した結果避難が必要であれば緊急避難場所を特定する緊急避難場所特定ステップと、
前記緊急避難場所特定手段により特定された場所までの経路を誘導する経路誘導ステップと、
を実行することを特徴とする誘導方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−122004(P2009−122004A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297506(P2007−297506)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】