説明

ハイブリッドシステムの制御装置

【課題】電動モータと、過給機及びインタークーラを備えるエンジンと、を備え、電動モータとエンジンとの少なくとも何れかの動力によりハイブリッド車両を駆動するハイブリッドシステムの制御装置において、ハイブリッドシステムの冷間始動時に電動モータ系統を早期に暖機できる技術を提供する。
【解決手段】インタークーラ及び電動モータ冷却系統用ラジエータは、導入される外気の流通経路の上流側からインタークーラ、電動モータ冷却系統用ラジエータの順に配置されるか、あるいは少なくとも互いの一部が接するように配置されるか、の少なくとも何れか一方となるように配置されており、ハイブリッドシステムの冷間始動時において、過給機による過給圧が所定の目標過給圧以上となるようにエンジンのエンジン負荷を制御して過給空気を昇温する暖機手段を、更に備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッドシステムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン及び電動モータを備え、少なくともこれらの何れかの動力によりハイブリッド車両を駆動するハイブリッドシステムが公知である。ハイブリッドシステムでは、エンジン系統のほか、例えば電動モータ、発電機(ジェネレータ)、インバータ、トランスミッション等から構成される電動モータ系統を備えるため、これらの系統別に外部との熱交換を行う冷却系統がハイブリッドシステムに備えられる場合がある。
【0003】
また、ハイブリッドシステムに適用されるエンジンが過給機を備える場合には、この過給機により過給される過給空気(吸気)を冷却するインタークーラが更に備えられるのが通常である。過給空気は、過給機による過給(圧縮)によって昇温(例えば、200℃程度)する。そして、高温状態の過給吸気をエンジンが吸入すると充填効率が低下するため、インタークーラから過給空気の熱を放熱することで該過給空気を冷却している。
【0004】
特許文献1には、過給機およびインタークーラを備える内燃機関、あるいは電動機の少なくともいずれか一方により駆動されるハイブリッド車両において、内燃機関用ラジエータを有する内燃機関用冷却系統と、インバータ用ラジエータを有するインバータ冷却系統と、を備えるハイブリッド車両について開示されている。そして上記文献に開示のハイブリッド車両では、車両の前方からインバータ用ラジエータ、インタークーラ、内燃機関用ラジエータの順で配置している。
【特許文献1】特開2006−144703号公報
【特許文献2】特開2005−186879号公報
【特許文献3】特開2001−173444号公報
【特許文献4】特開平10−266855号公報
【特許文献5】特開平11−313406号公報
【特許文献6】特開平10−227213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動モータ系統を構成する駆動素子(例えば、電動モータ、ジェネレータ、トランスミッション等)は潤滑油によって潤滑されている。ハイブリッドシステムの冷間始動時には電動モータ系統の潤滑油の粘度が高くなっているため、電動モータの出力によって車両を駆動する場合に、フリクションロスが大きくなってしまう。従って、このフリクションロスの増大は燃費の悪化につながるため、冷間始動時には電動モータ系統を早期に暖機する必要がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のハイブリッド車両では、車両の前方からインバータ用ラジエータ、インタークーラの順で配置されているため、過給されることで昇温した過給空気の熱がインタークーラから放熱され、この放熱によって加熱された外気は、インバータ用ラジエータを通過せずに走行風によって車両の後方側に流れることになる。
【0007】
従って、ハイブリッドシステムの冷間始動時においては、電動モータ系統の暖機を迅速に行うことが困難となる場合がある。つまり、冷間始動時における電動モータ系統のフリクションロスを早期に低減することが困難となり、燃費が悪化してしまう虞があった。
【0008】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電動モータと、過給機及びインタークーラを備えるエンジンと、を備え、電動モータとエンジンとの少なくとも何れかの動力によりハイブリッド車両を駆動するハイブリッドシステムの制御装置において、ハイブリッドシステムの冷間始動時に電動モータ系統を早期に暖機できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るハイブリッドシステムの制御装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、電動モータと、
過給機及びインタークーラを備えるエンジンと、
少なくとも前記電動モータを含む電動モータ系統を冷却する電動モータ冷却系統を循環する冷却媒体と外気との熱交換を行う電動モータ冷却系統用ラジエータと、
を備え、前記エンジンと前記電動モータとの少なくとも何れかの動力によりハイブリッド車両を駆動するハイブリッドシステムの制御装置において、
前記インタークーラ及び電動モータ冷却系統用ラジエータは、導入される外気の流通経路の上流側からインタークーラ、電動モータ冷却系統用ラジエータの順に配置されるか、あるいは少なくとも互いの一部が接するように配置されるか、の少なくとも何れか一方となるように配置されており、
前記ハイブリッドシステムの冷間始動時において、前記過給機による過給圧が所定の目標過給圧以上となるように前記エンジンのエンジン負荷を制御して過給空気を昇温する暖機手段を、更に備えることを特徴とする。
【0010】
ここで、本発明における電動モータ系統とは、電動モータの他、ジェネレータ、インバータ、トランスミッション等、電動モータに関連する駆動素子が含まれても良い。
【0011】
上記のように、ハイブリッドシステムの冷間始動時には、電動モータ系統を構成する駆動素子を潤滑する潤滑油の粘度は非常に高くなる場合があり、電動モータの出力によって車両を駆動する場合に、フリクションロスが増大すること冷間始動時の燃費が悪化する虞がある。
【0012】
そこで、本発明にかかるハイブリッドシステムの制御装置では、冷間始動時における過給圧が所定の目標過給圧以上となるようにエンジン負荷を制御することで過給空気を昇温させる。そして、インタークーラから放出される過給空気の熱を電動モータ冷却系統を循環する冷却媒体(以下、「電動モータ冷却系統用冷却媒体」ともいう)に効率的に供給することで、冷間始動時における電動モータ系統の暖気を促進させることとした。
【0013】
ここで、所定の目標過給圧とは、過給空気(吸気)の温度を充分に昇温できると判断できる過給圧であり、例えばインタークーラに流入する過給空気が、電動モータ冷却系統用冷却媒体の温度に所定のマージンを加えた温度まで昇温するように目標過給圧が定められても良い。
【0014】
ここで、上記のように、過給圧が目標過給圧まで高められることによって昇温した過給空気は、導入された外気と熱交換を行うことにより、この外気が加熱される。
【0015】
ここで、本発明におけるインタークーラ及び電動モータ冷却系統用ラジエータが、外気の流通経路の上流側からインタークーラ、電動モータ冷却系統用ラジエータの順に配置される場合、インタークーラからの放熱によって加熱された外気は、外気の流通経路における下流側に位置する電動モータ冷却系統用ラジエータを通過する。その結果、電動モータ冷却系統用ラジエータにおいて電動モータ冷却系統用冷却媒体と外気との間で熱交換が行
われ、該電動モータ冷却系統用冷却媒体が昇温する。例えば、車両に導入された外気が車両の前方から後方に向かって流通する場合、インタークーラ及び電動モータ冷却系統用ラジエータを、車両の前方からインタークーラ、電動モータ冷却系統用ラジエータの順に配置することで、外気の流通経路の上流側からインタークーラ、電動モータ冷却系統用ラジエータの順にこれらを配置することができる。
【0016】
一方、インタークーラ及び電動モータ冷却系統用ラジエータが、少なくとも互いの一部が接するように配置される場合、過給空気の有する熱によって電動モータ冷却系統用冷却媒体が直接加熱されることになる。以上のように、本発明によれば、ハイブリッドシステムの冷間始動時において、エンジン負荷を制御することによって過給空気を迅速に昇温させると共にインタークーラからの排熱回収を効率的に行うことで、電動モータ冷却系統用冷却媒体を早期に昇温させることができる。従って、冷間始動時における電動モータ系統の暖機を促進させることが可能となる。その結果、冷間始動時における電動モータ系統のフリクションロスを早期に低減し、燃費を向上させることができる。
【0017】
尚、本発明におけるインタークーラは空冷式であっても良いし、水冷式であっても良い。前者の場合には、インタークーラを通過する外気は該インタークーラに流入する過給空気によって加熱される。また、後者の場合においては、インタークーラ内を循環する冷却水が過給空気によって加熱され、加熱された冷却水がインタークーラを通過する外気を加熱することになる。また、空気の熱容量と水の熱容量とを比較すると空気の方が小さいため、本発明におけるインタークーラは空冷式であるとより好適である。空冷式のインタークーラを採用することで、過給空気の熱をより円滑に電動モータ冷却系統用冷却媒体へ供給できる。
【0018】
また、ハイブリッドシステムの冷間始動時には、エンジンが冷機状態になっている。また、エンジンの排気系に排気浄化触媒が設けられる場合には、同触媒温度も低温となっている。従って、排気エミッションの観点から冷間始動時におけるエンジン出力を比較的低出力に維持しつつ、要求出力に対するエンジン出力の不足分は電動モータによるモータ出力によって補償することが行われる。本発明では、冷間始動時における車両駆動力の大部分を電動モータによって出力させる場合に適用されると、特に好適である。その場合には、本発明を適用しない場合に比べて燃費向上という効果をより顕著に奏することができるからである。
【0019】
ところで、ハイブリッドシステムの冷間始動時において、ハイブリッド車両の車速が速い(高い)ほど走行風が強くなるので、インタークーラを通過する外気の流量が増加することになる。ここで、冷間始動時には導入される外気の温度は低いため、インタークーラを通過する外気の流量が多いほど、インタークーラからの放熱によって電動モータ冷却系統用冷却媒体を昇温し難くなる。そこで、本発明においては、冷間始動時におけるハイブリッド車両の車速が高い(速い)ほど、目標過給圧が高く設定されても良い。
【0020】
また、冷間始動時における外気温が低い場合には、エンジンの吸気通路に導入される吸気の温度も低くなるため、過給空気を昇温させる昇温幅が大きくなる。また、インタークーラを通過する外気の温度も低いため、この外気を昇温させる昇温幅も大きくなる。従って、本発明においては、冷間始動時における外気温が低いほど、目標過給圧が高く設定されても良い。
【0021】
また、冷間始動時における電動モータ冷却系統用冷却媒体の温度が低い場合には、電動モータ冷却系統用冷却媒体に供給するインタークーラからの放熱量をより多くする必要がある。そこで、本発明においては、冷間始動時における電動モータ冷却系統用冷却媒体の温度が低いほど、目標過給圧が高くされても良い。
【0022】
以上のように、本発明によれば、冷間始動時におけるハイブリッド車両の車速、外気温、電動モータ冷却系統用冷却媒体の温度に応じて、目標過給圧を細やかに設定し、これに応じてエンジン負荷を精度良く制御できる。これにより、電動モータ系統の暖機を好適に行うことができる。なお、本発明における課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせて採用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にあっては、電動モータと、過給機及びインタークーラを備えるエンジンと、を備え、電動モータとエンジンとの少なくとも何れかの動力によりハイブリッド車両を駆動するハイブリッドシステムの制御装置において、ハイブリッドシステムの冷間始動時に電動モータ系統を早期に暖機することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。尚、本実施の形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0025】
図1は、本実施例におけるハイブリッドシステム1の概略構成を示す図である。図1に示すように、ハイブリッドシステム1は、エンジン10、トランスアクスル30、インバータ40、バッテリ50、ハイブリッドシステム1全体を制御するハイブリッド制御ユニット(以下、「HV_ECU(Electronic Control Unit)」という)60を備えている
。また、図中には、二点鎖線にて、ハイブリッド車両の外形の一部を示す。
【0026】
エンジン10は、燃料の燃焼エネルギを源としてハイブリッド車両の駆動力(エンジン出力)を発生させる。トランスアクスル30はトランスミッションとアクスル(車軸)とを一体構造として構成されており、トランスアクスル30の内部には動力分割機構(例えば、遊星歯車機構)31、減速機32、電動モータ33、ジェネレータ34、電動モータ33及びジェネレータ34の制御を行うパワー制御ユニット(以下、「MG_ECU」という)35が収容されている。また、トランスアクスル30内には潤滑油が貯留されており、電動モータ33、ジェネレータ34、動力分割機構31、減速機32等が潤滑される。本発明の電動モータ系統は本実施例におけるトランスアクスル30、インバータ40を含んで構成される。
【0027】
ジェネレータ34は、エンジン10が発生させるエンジン出力を通じて発電を行う。電動モータ33は、電動モータ33を駆動するための電力を充電するバッテリ50あるいはジェネレータ34から供給される電力を通じてハイブリッド車両の駆動力(モータ出力)を発生させる。そして、エンジン出力及びモータ出力は、動力分配機構31を介して減速機32へ伝達される。そして、減速機32が車輪へと伝達されることによりハイブリッド車両が駆動される。
【0028】
動力分配機構31は、エンジン10とジェネレータ34との間における動力の伝達、エンジン10と減速機32との間における動力の伝達、及び電動モータ33と減速機32との間における動力の伝達を行う。また、インバータ40は、バッテリ50の直流と電動モータ33及びジェネレータ34の交流とを変換しながら電流制御を行う。本実施例において、インバータ40には電力を昇圧する昇圧コンバータ(図示省略)が備えられている。
【0029】
次に、エンジン10及びその吸排気系の概略構成について説明する。エンジン10には
、吸気マニホールド11が接続されており、吸気マニホールド11の各枝管は吸気ポートを介して各気筒の燃焼室と連通されている。吸気マニホールド11は吸気通路13と接続されており、吸気通路13には排気のエネルギを駆動源として作動するターボチャージャ14のコンプレッサハウジング14aが設けられている。また、吸気通路13におけるコンプレッサハウジング14aよりも下流側には、吸気通路13を流れるガスを冷却する空冷式のインタークーラ15が設けられている。また、吸気通路13におけるコンプレッサハウジング14aとインタークーラ15との間には、過給空気の温度に対応した電気信号を出力する吸気温度センサ16が設けられている。
【0030】
上記のように構成されたエンジン10の吸気系において、コンプレッサハウジング14aに流入した吸気は、該コンプレッサハウジング14aに内装されたコンプレッサホイール(図示省略)の回転によって圧縮される。そして、圧縮されて高温となった過給空気(吸気)は、インタークーラ15にて冷却された後、吸気マニホールド11に流入する。そして、吸気マニホールド11に流入した吸気は、吸気ポートを介して各気筒に分配される。そして、各気筒に分配された吸気は燃料噴射弁(図示省略)から噴射される燃料とともに混合気を形成し、燃焼する。
【0031】
また、エンジン10には排気マニホールド18が接続され、排気マニホールド18の各枝管は排気ポート(図示省略)を介して各気筒の燃焼室と接続されている。排気マニホールド18は排気通路19と接続されており、排気通路19にはターボチャージャ14のタービンハウジング14bが設けられている。また、排気通路19におけるタービンハウジング14bよりも下流側には排気浄化触媒20(例えば、三元触媒等)が設けられ、排気通路19は排気浄化触媒20の下流にてマフラー(図示省略)に接続されている。
【0032】
このように構成されたエンジン10の排気系では、各気筒からの排気が排気ポートを介して排気マニホールド18に排出された後、タービンハウジング14bに流入する。タービンハウジング14bに流入した排気は、タービンハウジング14b内に回転自在に支持されたタービンホイール(図示省略)を回転させる。その際、タービンホイール(図示省略)の回転トルクはコンプレッサハウジング14a内のコンプレッサホイール(図示省略)に伝達される。そして、タービンハウジング14bから流出した排気は、排気浄化触媒20において有害物質(例えば、NOx、HC、CO等)が浄化された後、マフラーを介して大気中に放出される。
【0033】
本実施例においてHV_ECU60はエンジン10の運転状態を制御するほか、吸気温度センサ16、エンジン回転数を検出するクランクポジションセンサ(図示省略)等のセンサ類が電気配線を介して接続され、それらの出力信号がHV_ECU60に入力される。また、HV_ECU60には、燃料噴射弁(図示省略)が電気配線を介して接続されておりHV_ECU60によってエンジン10に供給される燃料噴射量が制御される。
【0034】
更に、HV_ECU60には、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度Acc)に対応した電気信号を出力するアクセルポジションセンサ21、ハイブリッド車両の走行速度に対応した電気信号を出力する車速センサ22、外気温度に対応した電気信号を出力する外気温度センサ23が電気配線を介して接続されており、これらセンサの出力信号がHV_ECU60に入力される。尚、ここでの外気温度とは、インタークーラ15等の熱交換器との間で熱交換が行われる前の外気温度を意味しており、ハイブリッド車両のエンジンルーム内に導入される前の外気温度と略一致する。
【0035】
本実施例におけるハイブリッドシステム1では、運転者からの要求出力や運転条件、具体的に例えばアクセル開度Acc、バッテリ50の充電状態(SOC)に基づいてHV_ECU60がエンジン10と電動モータ33との駆動力配分を決定し、エンジン出力及び
モータ出力が制御される。ハイブリッドシステム1には、バッテリ50のSOCを検出するSOCセンサ(図示省略)が備えられ、HV_ECU60によってバッテリのSOCが管理制御される。
【0036】
次に本実施例におけるハイブリッドシステム1の冷却系統について説明する。本実施例のインタークーラ15は、インタークーラ用コア15aとインタークーラ用タンク15b、15cとから構成される。また、インタークーラ用コア15aは内部が中空に形成された複数のインタークーラ用チューブと、インタークーラ用チューブに取り付けられる複数の波形形状をした金属板(以下、「インタークーラ用フィン」という)とから構成されている。
【0037】
インタークーラ用タンク15b、15cはインタークーラ用チューブと同様に中空形状である。ターボチャージャ14により過給された過給空気は、一方のインタークーラ用タンク15bに流入した後、インタークーラ用コア15aのインタークーラ用チューブを通過する。そして、過給空気がこのインタークーラ用チューブを通過する際に、該過給空気の熱はインタークーラ用チューブを介してインタークーラ用フィンに伝達される。
【0038】
ここで、ハイブリッド車両が走行することでエンジンルーム内に取り込まれた外気が複数のインタークーラ用フィンを通過する。これにより、インタークーラ用フィンと外気との間で熱交換が行われ、過給空気が冷却される。そして冷却された過給空気は、他方のインタークーラ用タンク15cに流入し、その後は吸気通路13を流通し、エンジン10の各気筒に吸気される。このように、高温となった過給吸気をインタークーラ15によって冷却することでエンジン10における燃焼室内の体積効率が低下することが抑制される。
【0039】
また、ハイブリッドシステム1は、上述した電動モータ系統を冷却するための電動モータ冷却系統70を備える。電動モータ冷却系統70は、熱交換器である電動モータ冷却系統用ラジエータ71と、電動モータ冷却系統用冷却水が循環する電動モータ冷却系統用冷却水路72と、電動ウォータポンプ73とを含んで構成される。本実施例においては電動モータ冷却系統用冷却水が本発明における電動モータ冷却系統を循環する冷却媒体に相当する。
【0040】
本実施例の電動モータ冷却系統用ラジエータ71は、モータ系統用コア71aとモータ系統用タンク71b、71cとから構成される。また、モータ系統用コア71aは内部が中空に形成された複数のモータ系統用チューブと、モータ系統用チューブに取り付けられる複数の波形形状をした金属板(以下、「モータ系統用フィン」という)とから構成されている。また、電動モータ冷却系統用ラジエータ71には、電動モータ冷却系統用冷却水の温度(以下、「電動モータ冷却系統用冷却水温度」という)を検出する水温センサ74が設けられている。この水温センサ74は電気配線を介してHV_ECU60と接続されており、水温センサ74の出力値がHV_ECU60に入力される。
【0041】
電動モータ冷却系統用冷却水路72は、電動モータ冷却系統用ラジエータ71のモータ系統用タンク71b、71cに連通されているとともに、インバータ40及びトランスアクスル30の構成素子に接するように設けられる。具体的には、電動モータ冷却系統用冷却水路72はインバータ40の筐体或いはその内部の構成素子、及びトランスアクスル30の筐体或いはその内部に収容された電動モータ33、ジェネレータ34、動力分割機構31、減速機32等に当接するように設けられる。
【0042】
電動ウォータポンプ73は駆動することによって電動モータ冷却系統用冷却水を電動モータ冷却系統用冷却水路72内で循環させる。この電動ウォータポンプ73は電気配線を介してHV_ECU60と接続されており、HV_ECU60からの指令信号によって駆
動される。
【0043】
上記構成の電動モータ冷却系統70によれば、電動ウォータポンプ73が作動することで吐出された電動モータ冷却系統用冷却水は、インバータ40、トランスアクスル30に順次流入する。そして、トランスアクスル30から流出した電動モータ冷却系統用冷却水は、電動モータ冷却系統用ラジエータ71における一方のモータ系統用タンク71bに流入した後、モータ系統用コア71aのモータ系統用チューブを通過する。そして、電動モータ冷却系統用冷却水がモータ系統用チューブを通過する際に、電動モータ冷却系統用冷却水の熱がモータ系統用フィンに伝達され、モータ系統用フィンと外気との間で熱交換が行われる。
【0044】
すなわち、モータ系統用フィンを通過する外気温度が該モータ系統用フィンよりも低温であれば電動モータ冷却系統用冷却水が冷却され、この外気温度がモータ系統用フィンよりも高温であれば電動モータ冷却系統用冷却水は加熱される。
【0045】
次に、本実施例のエンジン10系統を冷却するエンジン冷却系統80について説明する。エンジン冷却系統80は、エンジン冷却系統用ラジエータ81と、ウォータポンプ82と、エンジン10のシリンダヘッドやシリンダブロック等に形成されたウォータジャケット(図示省略)と、これらを接続するとともにエンジン冷却系統用冷却水が循環するエンジン冷却系統用冷却水路83とにより構成されている。
【0046】
ここでエンジン冷却系統用ラジエータ81は、エンジン系統用コア81aとエンジン系統用タンク81b、81cとから構成される。また、エンジン系統用コア81aは内部が中空に形成された複数のエンジン系統用チューブと、エンジン系統用チューブに取り付けられる複数の波形形状をした金属板(以下、「エンジン系統用フィン」という)とから構成されている。また、ウォータポンプ82は、エンジン10のクランクシャフト(図示省略)の回転力により駆動する。
【0047】
上記構成のエンジン冷却系統80によれば、ウォータポンプ82が作動することで吐出されたエンジン冷却系統用冷却水はウォータジャケットに流入することで、エンジン10において発生した熱が伝達される。これにより、エンジン10とエンジン冷却系統用冷却水との間で熱交換が行われる。そして、エンジン冷却系統用冷却水は、エンジン冷却系統用冷却水路83を流通してエンジン冷却系統用ラジエータ81に流入する。
【0048】
エンジン冷却系統用冷却水はエンジン冷却系統用ラジエータ81における一方のエンジン系統用タンク81bに流入した後、エンジン系統用コア81aのエンジン系統用チューブを通過する。そして、エンジン冷却系統用冷却水がエンジン系統用チューブを通過する際に、エンジン冷却系統用冷却水の熱はエンジン系統用フィンに伝達され、エンジン系統用フィンと外気との間で熱交換が行われる。すなわち、エンジン系統用フィンを通過する外気温度がエンジン系統用フィンよりも低温であればエンジン冷却系統用冷却水が冷却され、この外気温度がエンジン系統用フィンよりも高温であればエンジン冷却系統用冷却水は加熱される。
【0049】
本実施例におけるインタークーラ15、電動モータ冷却系統用ラジエータ71、エンジン冷却系統用ラジエータ81(以下、これらを総称して「熱交換器」ともいう)は、ハイブリット車両に車両前方からインタークーラ15、電動モータ冷却系統用ラジエータ71、エンジン冷却系統用ラジエータ81の順で配置される。ここで、ハイブリッド車両の外部からエンジンルーム内に導入された外気は、車両前方から後方に向かって流通するため、インタークーラ15、電動モータ冷却系統用ラジエータ71、エンジン冷却系統用ラジエータ81は、外気の流通経路の上流側からインタークーラ15、電動モータ冷却系統用
ラジエータ71、エンジン冷却系統用ラジエータ81の順に配置されている、ということもできる。
【0050】
次に、本実施例におけるハイブリッドシステム1の冷間始動時に係る制御について説明する。ハイブリッドシステム1の冷間始動時においては、エンジン10や排気浄化触媒20の温度が低温となるため、冷間始動時にエンジン出力を増大させてしまうと燃焼状態の悪化及び排気浄化効率の悪化に起因してエミッションが悪化する虞がある。そこで、本実施例に係るハイブリッドシステム1では、冷間始動時の車両駆動力を主に電動モータ33によるモータ出力によって賄い、エンジン10の暖機が完了するまではエンジン出力を比較的に低く抑えることとした。これにより、冷間始動時における排気エミッションの悪化が抑制される。
【0051】
しかしながら、冷間始動時には上述したように電動モータ系統を潤滑する潤滑油の粘度が非常に高くなっている。従って、冷間始動時における車両駆動力を主として電動モータ33に出力させる場合には、フリクションロスが顕著になり、燃費の悪化を招いてしまう。そこで、本実施例では、ハイブリッドシステム1の冷間始動時においてモータ系統の暖機を促進させる暖機促進制御を実行することとした。
【0052】
本実施例の暖機促進制御の概略としては、ハイブリッドシステム1の冷間始動時において、エンジン負荷TQeが高負荷に制御される。具体的には、暖機促進制御におけるエンジン負荷TQeは、ターボチャージャ14の過給圧が目標過給圧Cit以上に維持できる冷間始動時目標負荷TQetに制御される。ここで目標過給圧Citとは、インタークーラ15に流入する過給空気を目標温度THatまで昇温可能な過給圧であり、予め実験的に求めておく。また、過給空気の目標温度THatは、インタークーラ15に流入する過給空気の温度の目標値であり、少なくとも電動モータ冷却系統用冷却水温度THwよりも高温側に設定される。
【0053】
本実施例では、上記のようにエンジン負荷TQeを冷間始動時目標負荷TQetに制御することによって、過給空気を目標温度THatまで昇温させ、インタークーラ15からこの過給空気の熱を放熱させる。そして、この過給空気の熱を電動モータ冷却系統用冷却水へ優先的に供給することにより、電動モータ系統の暖機を促進させることとした。
【0054】
以下、HV_ECU60によって実行される暖機促進制御について、図2に基づいて説明する。ここで、図2は、本実施例における暖機促進制御ルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンは、HV_ECU60のROMに記憶されたプログラムであり、ハイブリッドシステム1の始動毎に実行されるルーチンである。また、本実施例においては本ルーチンを実行するHV_ECU60が本発明における暖機手段に相当する。
【0055】
本ルーチンが実行されると、ステップS101では、HV_ECU60は水温センサ74の出力値に基づいて電動モータ冷却系統用冷却水温度THwを検出し、この電動モータ冷却系統用冷却水温度THwが基準水温THw1以下であるか否かが判定される。本ステップでは、ハイブリッドシステム1の始動時に暖機促進制御を実行すべきかどうかが判断される。ここで、基準水温THw1は、電動モータ冷却系統用冷却水温度が低いことに起因して潤滑油の粘度が過度に高くなると判断できる温度であり、予め実験的に定めておく。本ステップにおいて肯定判定(THw≦THw1)された場合には、ステップS102に進む。否定判定(THw>THw1)された場合には、本ルーチンを一旦終了する。
【0056】
ステップS102では、過給空気を昇温させる際の目標温度THatが設定される。この目標温度THatは、ステップS101で検出された電動モータ冷却系統用冷却水温度THwに所定温度だけ加えた温度として設定される。ステップS103では、吸気温度セ
ンサ16の出力値に基づいて過給空気の温度が検出され、検出された過給空気の温度と目標温度THatとに基づいて目標過給圧Citが算出される。
【0057】
ステップS104では、目標過給圧Citに基づいて冷間始動時目標負荷TQetが算出される。本実施例では、目標過給圧Citと冷間始動時目標負荷TQetとの関係を予め実験的に求めておき、これらの関係が格納されたマップをHV_ECU60のROMに記憶しておく。そして、目標過給圧Citをこのマップに代入することで冷間始動時目標負荷TQetが求められる。
【0058】
ステップS105では冷間始動時目標負荷TQetに応じて、エンジン10に供給される目標燃料噴射量Qftが算出される。
【0059】
ステップS106では、電動モータ33に出力させるべきモータ出力Psmが算出される。すなわち、本ステップではアクセルポジションセンサ21の出力値(アクセル開度Acc)に基づいて要求出力Psaが検出される。そして、エンジン負荷TQeを冷間始動時目標負荷TQetに制御した場合のエンジン出力Pseの要求出力Psaに対する不足分がモータ出力の目標値である目標モータ出力Psmtとして算出される。なお、本実施例では、冷間始動時における排気エミッションの悪化を抑制する観点からエンジン出力Pseは比較的に低出力に制御される。従って、ジェネレータ34の回転数及びエンジン負荷TQeを適宜調節することで冷間始動時におけるエンジン回転数は低回転領域にて制御される。
【0060】
ステップS107では、エンジン10の燃料噴射量QfがステップS105で算出された目標燃料噴射量Qftに、モータ出力PsmがステップS106で算出された目標値Psmtに調整される。
【0061】
ステップS108では、水温センサ74の出力値に基づいて電動モータ冷却系統用冷却水温度THwを検出し、この電動モータ冷却系統用冷却水温度THwが第2基準水温THw2以上であるか否かが判定される。本ステップでは、暖機促進制御を終了しても良いかどうか判断される。ここで、第2基準水温THw2は、電動モータ冷却系統用冷却水温度が高くなり、潤滑油の粘度が充分に低下したと判断できる温度であり、基準水温THw1よりも高温側に設定される。
【0062】
本ステップにおいて否定判定(THw<THw2)された場合には、ステップS102に戻り暖機促進制御が継続される。尚、この場合にはステップS102において過給空気の目標温度THatが再度設定される。すなわち、ステップS108で検出された電動モータ冷却系統用冷却水温度THwに所定温度だけ加えた温度として過給空気の目標温度THatが設定される。そして、ステップS108において肯定判定(THw≧THw2)された場合には、本ルーチンを一旦終了する。
【0063】
以上のように、本実施例ではハイブリッドシステム1の冷間始動時において暖機促進制御を実施することで、目標温度THatまで昇温した過給空気がインタークーラ15に流入し、過給空気の熱がインタークーラ用チューブを介してインタークーラ用フィンに伝達される。ここで、図1を参照してハイブリッド車両のエンジンルーム内に導入された外気と熱の流れについて説明する。ターボチャージャ14の過給により昇温した過給空気の熱はインタークーラ用チューブを介してインタークーラ用フィンに伝達される。
【0064】
インタークーラ15は、熱交換器のうちで車両の最も前方に配置されている。つまり、インタークーラ15はエンジンルームに導入された外気の流通経路の最上流側に配置されるため、エンジンルーム内に導入された外気は先ずインタークーラ15内の過給空気と熱
交換を行い、外気が加熱される。
【0065】
また、電動モータ冷却系統用ラジエータ71はインタークーラ15の次に車両の前方に配置される。つまり、外気の流通経路において電動モータ冷却系統用ラジエータ71はインタークーラ15よりも下流側に配置されるため、インタークーラ15を通過する際に加熱された外気が電動モータ冷却系統用ラジエータ71を通過する際に、外気の熱がモータ系統用コア71aのモータ系統用フィンに伝達される。これにより、モータ系統用チューブ内の電動モータ冷却系統用冷却水が加熱される。
【0066】
尚、本実施例では、HV_ECU60の指令により電動ウォータポンプ73を駆動させ、加熱された電動モータ冷却系統用冷却水に電動モータ冷却系統用冷却水路72内を循環させる。その結果、インバータ40、トランスアクスル30等の電動モータ系統の暖機を促進させることができる。
【0067】
次に、電動モータ冷却系統用ラジエータ71との熱交換によって冷却された外気とエンジン冷却系統用ラジエータ81との熱交換について説明する。エンジン冷却系統用ラジエータ81は熱交換器のうち車両の最も後方に配置される。つまり、外気の流通経路においてエンジン冷却系統用ラジエータ81は最も下流側に配置されるため、電動モータ冷却系統用ラジエータ71によって冷却された外気は、エンジン冷却系統用ラジエータ81を通過することになる。
【0068】
ここで、本実施例の暖機促進制御においてエンジン出力Pseは低出力側で制御される。また、エンジン冷却系統用冷却水の量は電動モータ冷却系統用冷却水の量に比べて多い。従って、電動モータ冷却系統用ラジエータ71によって冷却された後であってエンジン冷却系統用ラジエータ81を通過する外気の温度は、エンジン冷却系統用冷却水温度よりも高温に維持される。
【0069】
これにより、エンジン冷却系統用ラジエータ81を外気が通過する際に外気の熱がエンジン系統用フィンに伝わることで、エンジン系統用チューブ内のエンジン冷却系統用冷却水が加熱される。このように加熱されたエンジン冷却系統用冷却水はウォータポンプ82の作動によってエンジン冷却系統用冷却水路83内を循環し、エンジン10の暖機が促進される。
【0070】
以上のように、本実施例によれば、インタークーラ15及び電動モータ冷却系統用ラジエータ71を、外気の流通経路の上流側からインタークーラ15、電動モータ冷却系統用ラジエータ71の順に配置することで、電動モータ系統に供給する供給熱量を充分に確保できる。つまり、電動モータ系統を優先的に暖機することができるので、電動モータ系統のフリクションロスを早期に低減させ、燃費を向上させることができる。
【0071】
また、電動モータ冷却系統用冷却水に比べてエンジン冷却系統用冷却水を昇温させる際に外気に要求される要求温度の方が低いことに着目し、電動モータ冷却系統用ラジエータ71の後方にエンジン冷却系統用ラジエータ81を配置した。これによれば、電動モータ系統の暖機と並行してエンジン10の暖機を行うことができるので、インタークーラ15からの排熱回収を無駄なく行うことができる。また、本制御中はエンジン負荷TQeが高負荷側の冷間始動時目標負荷TQetに制御されるため、エンジン10からの排気温度も高くなり、排気浄化触媒20も早期に暖機することができる。
【0072】
ここで、暖機促進制御を実行する際のハイブリッド車両の走行状態、走行条件により適合した目標過給圧Citの設定方法について、図3〜5に基づいて説明する。図3は、目標過給圧Citと車速SPとの関係を例示した図である。ここで、車速SPが高い場合に
は走行風が強くなるため、インタークーラ15を通過する外気の流量が増加する。ここで、冷間始動時にはエンジンルーム内に導入される外気の温度が低いため、インタークーラ15を通過する外気の流量が多いほど、インタークーラ15からの放熱によって電動モータ冷却系統用冷却水を昇温し難くなる。そこで、本実施例では暖機促進制御を実行する際の車速SPを車速センサ22の出力値に基づいて検出し、車速SPが高いほど目標過給圧Citをより高い値として設定することとした。
【0073】
図4は、目標過給圧Citと外気温度THaoとの関係を例示した図である。また、ここでの外気温度THaoとはインタークーラ15と熱交換が行われる前における外気の温度である。また、図5は、目標過給圧Citと電動モータ冷却系統用冷却水温度THwとの関係を例示した図である。
【0074】
ここで、ここで、外気温度THaoが低い場合にはエンジン10の吸気通路13を流通する吸気の温度も低くなるため、過給空気を昇温させる昇温幅が大きくなる。また、インタークーラ15を通過する外気の温度も低いため、この外気を昇温させる昇温幅も大きくなる。また、電動モータ冷却系統用冷却水温度THwが低い場合には、電動モータ冷却系統用冷却水に供給するインタークーラ15からの放熱量をより多くする必要がある。
【0075】
従って、本実施例では、暖機促進制御を実行する際の外気温度THao及び電動モータ冷却系統用冷却水温度THwを外気温度センサ23及び水温センサ74の出力値に基づいて検出する。そして外気温度THaoが低いほど、また電動モータ冷却系統用冷却水温度THwが低いほど目標過給圧Citをより高い値として設定することとした。これらによれば、ハイブリッド車両の車速SP、外気温度THao、電動モータ冷却系統用冷却水温度THwに応じて、目標過給圧Citを細やかに設定することができる。
【0076】
尚、本実施例におけるハイブリッドシステム1は、インタークーラ15、電動モータ冷却系統用ラジエータ71、エンジン冷却系統用ラジエータ81に外気を誘導する電動ファンを備えていても良い。そして、暖機促進制御中に車両が停止しているか、走行していても車速が過度に低い場合にはファンが作動されることで、外気にインタークーラ15、電動モータ冷却系統用ラジエータ71、エンジン冷却系統用ラジエータ81を効率よく通過させることができる。
【0077】
また、本実施例のインタークーラ15、電動モータ冷却系統用ラジエータ71、エンジン冷却系統用ラジエータ81は、外気の流通経路の上流側からインタークーラ15、電動モータ冷却系統用ラジエータ71、エンジン冷却系統用ラジエータ81の順に配置されていれば良く、必ずしも車両の前方からインタークーラ15、電動モータ冷却系統用ラジエータ71、エンジン冷却系統用ラジエータ81の順に配置されていなくても良い。これによれば、インタークーラ15及び各種ラジエータに導入される外気の流通経路において、設計上の自由度が好適に確保される。
【実施例2】
【0078】
次に、実施例1とは異なる実施の形態について、図6に基づいて説明する。図6は、本実施例におけるハイブリッドシステム2の概略構成を示す図である。ここで、図1に示したハイブリッドシステム1と同一又は同等の構成部分については同一の参照番号を付して詳しい説明を省略する。ハイブリッドシステム2が、図1に示したハイブリッドシステム1と異なる点は、インタークーラ15と電動モータ冷却系統用ラジエータ71とが一体化されている点である。言い換えると、インタークーラ15と電動モータ冷却系統用ラジエータ71とは互いに接するように配置されている。また、本実施例では、インタークーラ15及び電動モータ冷却系統用ラジエータ71は、相互間で直接的に熱交換を行うことができる熱交換構造を有している。
【0079】
より詳しくは、インタークーラ用コア15aのインタークーラ用チューブ及びモータ系統用コア71のモータ系統用チューブが互いに接合されており、インタークーラ用チューブとモータ系統用チューブとの間で直接的に熱交換が行われる。また、インタークーラ用タンク15b、15c及びモータ系統用タンク71b、71cも互いに接合されており、これらも熱交換構造を有している。
【0080】
上記構成によれば、上記インタークーラ用チューブ内を流通する過給空気の熱は、外気を介さずともモータ系統用チューブを介して電動モータ冷却系統用冷却水に伝達される。これによれば、ハイブリッド車両の停車時、すなわち走行風が殆どない場合においても電動モータ冷却系統用冷却水を昇温できるので、電動モータ系統の暖機の促進を好適に行うことができる。
【0081】
また、インタークーラ15と電動モータ冷却系統用ラジエータ71とを一体化することで、エンジンルーム内の占有スペースをコンパクトにすることができる。また、エンジンルーム内に導入された外気の風通しを良くすることができる。これによれば、インタークーラ15、電動モータ冷却系統用ラジエータ71、エンジン冷却系統用ラジエータ81等、熱交換器と外気との熱交換が効率良く行われる。例えば、インタークーラ15による過給空気の冷却効率が向上することで、エンジン10における吸気の充填効率をより向上させることができる。
【0082】
また、インタークーラ15と電動モータ冷却系統用ラジエータ71とを一体化することで、これらを構成する材料の統一、共通化を図ることが可能となり、コストダウンを実現することができる。また、インタークーラ15と電動モータ冷却系統用ラジエータ71とをコンパクトにできる分、エンジン冷却系統用ラジエータ81をより大きくすることもできる。これによれば、エンジン冷却系統用ラジエータ81の冷却能力が向上するので、エンジン10系統の暖機が完了した後において該エンジン10を冷却する際に好適である。
【0083】
また、電動モータ系統の暖機が充分に行われた後、ハイブリッドシステム2の通常制御時において、電動モータ冷却系統用冷却水の目標温度とインタークーラ15によって冷却される過給空気の目標温度とは温度差が比較的少ないため、インタークーラ用チューブからの伝熱によって電動モータ冷却系統用冷却水温度が過剰に昇温する虞がない。
【実施例3】
【0084】
次に、実施例1及び2とは異なる実施の形態について、図7に基づいて説明する。図7は、本実施例におけるハイブリッドシステム3の概略構成を示す図である。ここで、図1に示したハイブリッドシステム1と同一又は同等の構成部分については同一の参照番号を付して詳しい説明を省略する。ハイブリッドシステム3が、図1に示したハイブリッドシステム1と異なる点は、電動モータ冷却系統用ラジエータ71とエンジン冷却系統用ラジエータ81とが一体化されている点である。言い換えると、電動モータ冷却系統用ラジエータ71とエンジン冷却系統用ラジエータ81とは互いに接するように配置されている。また、本実施例では、電動モータ冷却系統用ラジエータ71及びエンジン冷却系統用ラジエータ81は、相互間で直接的に熱交換を行うことができる熱交換構造を有している。
【0085】
より詳しくは、モータ系統用コア71のモータ系統用チューブ及びエンジン系統用コア81のエンジン系統用チューブが互いに接合されており、これらの間で直接的に熱交換が行われる。また、モータ系統用タンク71b、71c及びエンジン系統用タンク81c、81bも互いに接合されており、これらも熱交換構造を有している。上記構成によれば、電動モータ系統の暖機を優先的に行った後、電動モータ冷却系統用冷却水の熱によってエンジン冷却系統用冷却水を直接的に昇温させることができる。
【0086】
また、ハイブリッドシステム3によれば、実施例2にかかるハイブリッドシステム2と同様に、エンジンルーム内に導入された外気の風通しが良くなるので、インタークーラ15、電動モータ冷却系統用ラジエータ71、エンジン冷却系統用ラジエータ81による外気との熱交換が効率良く行われる。例えば、インタークーラ15による過給空気の冷却効率を更に向上させることができる。また、電動モータ冷却系統用ラジエータ71とエンジン冷却系統用ラジエータ81とを一体化することで、これらを構成する材料の統一、共通化を図り、コストダウンを実現することができる。
【0087】
また、上記実施例1〜3においては、インタークーラ15がハイブリッド車両の最も前方に配置されているが、これに限定されるものではない。例えば、ハイブリッド車両の室内温度を調整する空調機の空調用コンデンサをインタークーラ15よりも更にハイブリッド車両の前方側に配置しても良い。これによれば、空調用コンデンサの放熱分をハイブリッドシステムの冷間始動時に熱回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】実施例1におけるハイブリッドシステムの概略構成を示す図である。
【図2】実施例1における暖機促進制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】目標過給圧Citと車速SPとの関係を例示した図である。
【図4】目標過給圧Citと外気温度THaoとの関係を例示した図である。
【図5】目標過給圧Citと電動モータ冷却系統用冷却水温度THwとの関係を例示した図である。
【図6】実施例2におけるハイブリッドシステムの概略構成を示す図である。
【図7】実施例3におけるハイブリッドシステムの概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
1・・・ハイブリッドシステム
10・・エンジン
13・・吸気通路
14・・ターボチャージャ
15・・インタークーラ
15a・インタークーラ用コア
30・・トランスアクスル
31・・動力分割機構
32・・減速機
33・・電動モータ
34・・ジェネレータ
40・・インバータ
50・・走行用バッテリ
60・・HV_ECU
70・・電動モータ冷却系統
71・・電動モータ冷却系統用ラジエータ
71a・モータ系統用コア
72・・電動モータ冷却系統用冷却水路
80・・エンジン冷却系統
81・・エンジン冷却系統用ラジエータ
81a・エンジン系統用コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
過給機及びインタークーラを備えるエンジンと、
少なくとも前記電動モータを含む電動モータ系統を冷却する電動モータ冷却系統を循環する冷却媒体と外気との熱交換を行う電動モータ冷却系統用ラジエータと、
を備え、前記エンジンと前記電動モータとの少なくとも何れかの動力によりハイブリッド車両を駆動するハイブリッドシステムの制御装置において、
前記インタークーラ及び電動モータ冷却系統用ラジエータは、導入される外気の流通経路の上流側からインタークーラ、電動モータ冷却系統用ラジエータの順に配置されるか、あるいは少なくとも互いの一部が接するように配置されるか、の少なくとも何れか一方となるように配置されており、
前記ハイブリッドシステムの冷間始動時において、前記過給機による過給圧が所定の目標過給圧以上となるように前記エンジンのエンジン負荷を制御して過給空気を昇温する暖機手段を、更に備えることを特徴とするハイブリッドシステムの制御装置。
【請求項2】
前記冷間始動時における前記ハイブリッド車両の車速が高いほど、前記目標過給圧が高く設定されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッドシステムの制御装置。
【請求項3】
前記冷間始動時における外気温が低いほど、前記目標過給圧が高く設定されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッドシステムの制御装置。
【請求項4】
前記冷間始動時における前記電動モータ冷却系統を循環する前記冷却媒体の温度が低いほど、前記目標過給圧が高く設定されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッドシステムの制御装置。
【請求項5】
前記インタークーラは空冷式であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のハイブリッドシステムの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−108808(P2009−108808A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283623(P2007−283623)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】