説明

ハイブリッド車両およびその制御方法

【課題】減筒運転可能な内燃機関を備えたハイブリッド車両において全筒運転と減筒運転とをより適正に実行して振動やショックの発生を抑制しつつエネルギ効率を向上させる。
【解決手段】全筒運転よりも減筒運転の方がエンジンから要求パワーPe*を効率よく発生可能とする場合であってエンジンが全筒運転されているときにエンジンの運転停止が見込まれるか否かが判定される(S200,S210)。エンジンの運転停止が見込まれない場合には、エンジンが減筒運転されると共に要求トルクTr*に基づくトルクが得られるようにエンジンやモータMG1,MG2が制御され、エンジンの運転停止が見込まれる場合には、エンジンが全筒運転されると共に要求トルクTr*に基づくトルクが得られるようにエンジンやモータMG1,MG2が制御される(S220〜S300)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全燃焼室で混合気を燃焼させる全筒運転および一部の燃焼室で混合気を燃焼させる減筒運転により走行用の動力を出力可能な内燃機関と、走行用の動力を出力可能な電動機とを含むハイブリッド車両およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1モータ、クラッチおよびトランスミッションを介して前輪に接続された内燃機関と、後輪に接続された第2モータとを備えたハイブリッド車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド車両は、車両の運転状態に応じて、ポンピングロスの低減のために吸気バルブが閉弁された状態にある内燃機関を第1モータにより回転(空転)させる休筒空転運転を行いながら第2モータからの動力により走行可能である。そして、休筒空転運転中の内燃機関に対する燃料供給および点火制御を再開すると共に第1モータを駆動することで内燃機関を始動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−108167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の燃焼室を有する内燃機関の中には、全燃焼室で混合気を燃焼させる全筒運転のみならず一部の燃焼室で混合気を燃焼させる減筒運転を実行可能なものも存在する。このような内燃機関では、比較的負荷が低いときに減筒運転を実行することにより、全筒運転時に比べて燃料消費量を低減すると共にポンピングロスの低減による燃費改善を図ることができる。従って、このような減筒運転を実行可能な内燃機関をハイブリッド車両に搭載すれば、車両の全体のエネルギ効率をより向上させることができると考えられる。しかしながら、全筒運転と減筒運転とが頻繁に繰り返されると、運転の切替に伴う振動やショックが顕在化してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、減筒運転可能な内燃機関を備えたハイブリッド車両において、内燃機関の全筒運転と減筒運転とをより適正に実行して振動やショックの発生を抑制しつつエネルギ効率を向上させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド車両およびその制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採っている。
【0007】
本発明のハイブリッド車両は、
複数の燃焼室を有すると共に全燃焼室で混合気を燃焼させる全筒運転および一部の燃焼室で混合気を燃焼させる減筒運転により走行用の動力を出力可能な内燃機関と、走行用の動力を出力可能な電動機と、該電動機と電力をやり取り可能な蓄電装置とを含むハイブリッド車両であって、
走行に要求される要求トルクを設定する要求トルク設定手段と、
前記設定された要求トルクに基づいて前記内燃機関に要求される要求機関パワーを設定する要求機関パワー設定手段と、
前記内燃機関の運転中であって該内燃機関の運転を継続させるべきときに、前記全筒運転と前記減筒運転とのうちの何れが前記内燃機関から前記設定された要求機関パワーをより効率よく発生可能とするかを判定する第1の判定手段と、
前記第1の判定手段により前記減筒運転が前記要求機関パワーをより効率よく発生可能とすると判断されると共に前記内燃機関が全筒運転されているときに、車両状態から前記内燃機関の運転停止が見込まれるか否かを判定する第2の判定手段と、
前記第2の判定手段により前記内燃機関の運転停止が見込まれないと判断された場合には、前記内燃機関が前記設定された要求機関パワーを発生するように減筒運転されると共に前記設定された要求トルクに基づくトルクが得られるように前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記第1の判定手段により前記全筒運転が前記要求機関パワーをより効率よく発生可能とすると判断された場合および前記第2の判定手段により前記内燃機関の運転停止が見込まれると判断された場合には、前記内燃機関が前記設定された要求機関パワーを発生するように全筒運転されると共に前記設定された要求トルクに基づくトルクが得られるように前記内燃機関と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えるものである。
【0008】
このハイブリッド車両では、内燃機関を運転すべきであると共に減筒運転よりも全筒運転の方が内燃機関から要求機関パワーを効率よく発生可能とする場合、内燃機関が要求機関パワーを発生するように全筒運転されると共に要求トルクに基づくトルクが得られるように内燃機関と電動機とが制御される。また、全筒運転よりも減筒運転の方が内燃機関から要求機関パワーを効率よく発生可能とし、かつ内燃機関が全筒運転されている場合には、車両状態から内燃機関の運転停止が見込まれるか否かが判定される。そして、内燃機関の運転停止が見込まれないと判断された場合には、内燃機関が要求機関パワーを発生するように減筒運転されると共に要求トルクに基づくトルクが得られるように内燃機関と電動機とが制御され、内燃機関の運転停止が見込まれると判断された場合には、内燃機関が要求機関パワーを発生するように全筒運転されると共に要求トルクに基づくトルクが得られるように内燃機関と電動機とが制御される。これにより、このハイブリッド車両では、内燃機関の全筒運転中に効率との関係から内燃機関を減筒運転を選択し得ると判断されると共に内燃機関の運転停止が見込まれないと判断された場合には、内燃機関が減筒運転され、全筒運転から減筒運転への移行により内燃機関の燃料消費量を低減すると共にポンピングロスの低減による燃費改善を図ることができる。また、内燃機関の全筒運転中に効率との関係から内燃機関の減筒運転を選択し得ると判断されても、内燃機関の運転停止が見込まれると判断された場合には、減筒運転を実行してもごく短時間のうちに内燃機関が停止される可能性が高く、減筒運転による燃費改善効果が低いと考えられることから、内燃機関の全筒運転が継続され、それにより全筒運転から減筒運転への移行に伴う振動やショックの発生を抑制することができる。従って、このハイブリッド車両では、内燃機関の全筒運転と減筒運転とをより適正に実行して振動やショックの発生を抑制しつつエネルギ効率を向上させることが可能となる。
【0009】
また、前記ハイブリッド車両は、車速を取得する車速取得手段と、アクセルペダルの操作量を検出するアクセル操作量検出手段とを更に備えてもよく、前記第2の判定手段は、前記取得された車速と前記検出されたアクセルペダルの操作量とに基づいて前記内燃機関の運転停止が見込まれるか否かを判定するものであってもよい。これにより、内燃機関の運転停止が見込まれるか否か、すなわち、その後に内燃機関の運転が停止される可能性の高低をより適正に判定することが可能となる。
【0010】
更に、前記第2の判定手段は、前記取得された車速が所定車速未満であると共に前記検出されたアクセルペダルの操作量が所定操作量以上であると前記内燃機関の運転停止が見込まれないと判断するものであってもよい。すなわち、車速が比較的低く、かつアクセルペダルの操作量がある程度大きい場合には、運転者により加速要求がなされており、その後の短時間のうちにエンジンの運転が停止される可能性が低いと考えられる。従って、このような判定手段を用いることにより、内燃機関の運転停止の見込みをより適正に判定して、内燃機関の全筒運転と減筒運転とをより適正に実行することが可能となる。
【0011】
また、前記ハイブリッド車両は、動力を入出力可能な第2の電動機と、前記内燃機関の出力軸と前記第2の電動機の回転軸と駆動輪に連結される駆動軸との3軸に接続され、これら3軸のうちの何れか2軸に入出力される動力に基づく動力を残余の軸に入出力する動力分配手段とを更に備えてもよく、前記電動機は、前記駆動軸または該駆動軸とは異なる他の車軸に動力を入出力可能であり、前記制御手段は、前記内燃機関が前記設定された目標運転ポイントで全筒運転および減筒運転されると共に前記設定された要求トルクに基づくトルクが得られるように前記内燃機関と前記電動機と前記第2の電動機とを制御するものであってもよい。
【0012】
この場合、前記動力分配手段は、前記内燃機関の前記出力軸に接続される第1要素と、前記第2の電動機の前記回転軸に接続される第2要素と、前記駆動軸に接続される第3要素とを有すると共に、これら3つの要素が互いに差動回転できるように構成された遊星歯車機構であってもよい。
【0013】
本発明によるハイブリッド車両の制御方法は、
複数の燃焼室を有すると共に全燃焼室で混合気を燃焼させる全筒運転および一部の燃焼室で混合気を燃焼させる減筒運転により走行用の動力を出力可能な内燃機関と、走行用の動力を出力可能な電動機と、該電動機と電力をやり取り可能な蓄電装置とを含むハイブリッド車両であって、
(a)前記内燃機関の運転中であって該内燃機関の運転を継続させるべきときに、前記全筒運転と前記減筒運転との何れが前記内燃機関から該内燃機関に要求される要求機関パワーをより効率よく発生可能とするかを判定するステップと、
(b)ステップ(a)にて前記減筒運転が前記要求機関パワーをより効率よく発生可能とすると判断されると共に前記内燃機関が全筒運転されているときに、車両状態から前記内燃機関の運転停止が見込まれるか否かを判定するステップと、
(c)ステップ(b)にて前記内燃機関の運転停止が見込まれないと判断された場合には、前記内燃機関が前記要求機関パワーを発生するように減筒運転されると共に前記要求トルクに基づくトルクが得られるように前記内燃機関と前記電動機とを制御し、ステップ(a)にて前記全筒運転が前記要求機関パワーをより効率よく発生可能とすると判断された場合およびステップ(b)にて前記内燃機関の運転停止が見込まれると判断された場合には、前記内燃機関が前記要求機関パワーを発生するように全筒運転されると共に前記要求トルクに基づくトルクが得られるように前記内燃機関と前記電動機とを制御するステップと、
を含むものである。
【0014】
この方法によれば、内燃機関の全筒運転と減筒運転とをより適正に実行して振動やショックの発生を抑制しつつエネルギ効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係るハイブリッド自動車20の概略構成図である。
【図2】ハイブリッドECU70により実行されるエンジン運転時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】エンジン22の制御に用いられる全筒運転用動作ラインおよび減筒運転用動作ラインを例示する説明図である。
【図5】動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を例示する説明図である。
【図6】変形例に係るハイブリッド自動車120の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の実施例に係るハイブリッド自動車20の概略構成図である。同図に示すハイブリッド自動車20は、エンジン22と、エンジン22の出力軸であるクランクシャフト26に図示しないダンパを介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに連結された減速ギヤ35と、この減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに接続されたモータMG2と、ハイブリッド自動車20の全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「ハイブリッドECU」という)70等とを備えるものである。
【0018】
エンジン22は、複数の燃焼室23を有すると共に各燃焼室23内でガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料と空気との混合気を燃焼させて動力を出力する内燃機関であり、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24による吸入空気制御や燃料噴射制御、点火時期制御を受ける。エンジンECU24には、エンジン22に対して設けられて当該エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号が入力される。エンジンECU24は、ハイブリッドECU70と通信しており、ハイブリッドECU70からの制御信号や上記センサからの信号等に基づいてエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッドECU70に出力する。また、実施例のエンジン22は、可変バルブタイミング機構として構成された動弁機構(図示省略)を有し、エンジンECU24は、所定条件が成立したときに、例えば半数の燃焼室の吸気バルブおよび排気バルブの双方が全閉となるように動弁機構を制御すると共に、当該半数の燃焼室に対する燃料供給を禁止する。これにより、燃料供給を受ける残りの半数の燃焼室23内で混合気を燃焼させる減筒運転を実行してエンジン22の燃料消費量を低減すると共にポンピングロスの低減による燃費改善を図ることができる。すなわち、実施例のエンジン22では、すべての燃焼室23内で混合気を燃焼させる全筒運転と一部の燃焼室23内で混合気を燃焼させる減筒運転との双方を実行することができる。
【0019】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31と噛合すると共にリングギヤ32と噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを有し、これら3つの要素が互いに差動回転できるように構成されたシングルピニオン式遊星歯車機構である。かかる動力分配統合機構30の第1要素であるキャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、第2要素であるサンギヤ31にはモータMG1の回転軸が、第3要素であるリングギヤ32には駆動軸としてのリングギヤ軸32aと減速ギヤ35とを介してモータMG2の回転軸がそれぞれ連結されている。動力分配統合機構30は、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側とにそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからデファレンシャルギヤ38を介して最終的に駆動輪である車輪39a,39bに出力される。
【0020】
モータMG1およびMG2は、いずれも発電機として作動すると共に電動機として作動可能な周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介して二次電池であるバッテリ50と電力のやり取りを行う。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ラインは、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれか一方により発電される電力を他方のモータで消費できるようになっている。従って、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電され、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとることにすれば、バッテリ50は充放電されないことになる。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ(図示せず)からの信号や、図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流等が入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号等が出力される。また、モータECU40は、回転位置検出センサから入力した信号に基づいて図示しない回転数算出ルーチンを実行し、モータMG1,MG2の回転子の回転数Nm1,Nm2を計算している。更に、モータECU40は、ハイブリッドECU70と通信しており、ハイブリッドECU70からの制御信号等に基づいてモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッドECU70に出力する。
【0021】
バッテリ50は、リチウムイオン二次電池あるいはニッケル水素二次電池として構成されており、バッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52によって管理される。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧Vb、バッテリ50の出力端子に接続された電力ラインに取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流Ib、バッテリ50に取り付けられた図示しない温度センサからのバッテリ温度Tb等が入力される。バッテリECU52は、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッドECU70に出力する。更に、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために、電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量SOCを算出したり、当該残容量SOCに基づいてバッテリ50の充放電要求パワーPb*を算出したり、残容量SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50の充電に許容される電力である許容充電電力としての入力制限Winとバッテリ50の放電に許容される電力である許容放電電力としての出力制限Woutとを算出したりする。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定すると共に、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定可能である。
【0022】
ハイブリッドECU70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74や、データを一時的に記憶するRAM76、図示しない入出力ポートおよび通信ポート等を備える。ハイブリッドECU70には、イグニッションスイッチ(スタートスイッチ)80からのイグニッション信号、シフトレバー81の操作位置であるシフトポジションSPを検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP、アクセルペダル83の踏み込み量(操作量)を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルストロークセンサ86からのブレーキペダルストロークBS、車速センサ87からの車速V等が入力ポートを介して入力される。そして、ハイブリッドECU70は、上述したように、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52等と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52等と各種制御信号やデータのやり取りを行っている。
【0023】
上述のように構成された実施例のハイブリッド自動車20では、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*が計算され、この要求トルクTr*に基づくトルクがリングギヤ軸32aに出力されるようにエンジン22とモータMG1およびMG2とが制御される。エンジン22とモータMG1およびMG2の運転制御モードとしては、要求トルクTr*に見合うパワーがエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力されるパワーのすべてが動力分配統合機構30とモータMG1およびMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや、要求トルクTr*とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合うパワーがエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力されるパワーの全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1およびMG2とによるトルク変換を伴って要求トルクTr*に基づくトルクがリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22を停止して要求トルクTr*に基づくトルクをリングギヤ軸32aに出力するようにモータMG2を駆動制御するモータ運転モード等がある。また、実施例のハイブリッド自動車20では、トルク変換運転モードや充放電運転モードのもとで、所定条件が成立するとエンジン22を自動的に停止・始動させる間欠運転が実行される。
【0024】
次に、実施例のハイブリッド自動車20の動作、特にエンジン22が運転された状態でハイブリッド自動車20が走行しているときの動作について説明する。
【0025】
図2は、実施例のハイブリッドECU70により実行されるエンジン運転時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、エンジン22が運転された状態でハイブリッド自動車20が走行している最中に所定時間ごとに(例えば、数msecごとに)繰り返し実行されるものである。
【0026】
図2のルーチンの開始に際して、ハイブリッドECU70のCPU72は、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ87からの車速V、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2、バッテリ50の残容量SOC、充放電要求パワーPb*,入出力制限WinおよびWoutといった制御に必要なデータの入力処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、モータECU40から通信により入力される。また、バッテリ50の残容量SOC、充放電要求パワーPb*、入出力制限WinおよびWoutは、バッテリECU52から通信により入力される。
【0027】
ステップS100のデータ入力処理の後、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて車輪39a,39bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*を設定した上で、エンジン22に要求される要求パワーPe*を設定する(ステップS110)。実施例では、アクセルオン状態でのアクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係が図3に例示する要求トルク設定用マップとして予め定められており、このマップからアクセル開度Accと車速Vとに対応した要求トルクTr*が導出・設定される。また、実施例において、要求パワーPe*は、要求トルクTr*とリングギヤ軸32aの回転数Nrとの積と充放電要求パワーPb*とロスLossとの総和として計算される。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除するか、あるいは車速Vに換算係数を乗じることによって求めることができる。
【0028】
次いで、ステップS100にて入力した残容量SOCが予め定められた下限残容量Sref(例えば20〜40%)以上であるか否かを判定する(ステップS120)。残容量SOCが下限残容量Sref以上であれば、ステップS100にて入力した車速Vが予め定められた間欠禁止車速Vref1未満であるか否かを判定する(ステップS130)。間欠禁止車速Vref1は、例えばエンジン22の運転が必要となって間欠運転を禁止すべき車速域の下限値として設定され(例えば60〜70km/h)、バッテリ50の状態やエンジン22の状態、ハイブリッド自動車20の走行状態等に応じて変化するように設定されてもよいものである。車速Vが間欠禁止車速Vref1未満であれば、ステップS110にて設定した要求トルクTr*が予め定められた停止判定トルクTref以下であるか否かを判定する(ステップS140)。停止判定トルクTrefは、例えばモータ運転モードのもとでモータMG2からリングギヤ軸32aに効率よく出力可能なトルクの上限またはそれに近い値とされる。要求トルクTr*が停止判定トルクTref以下であれば、ステップS110にて設定したエンジン22に対する要求パワーPe*が予め定められた始動判定パワーPref以上であるか否かを判定する(ステップS150)。始動判定パワーPrefは、例えばエンジン22を比較的効率よく運転することができる領域における下限またはその近傍のパワーとされ、エンジン22やモータMG2の特性等に基づいて定められる。そして、要求パワーPe*が始動判定パワーPref未満であれば、エンジン22を運転する必要がないとみなして、エンジン22を停止させるべくエンジン停止フラグをオンし(ステップS310)、本ルーチンを終了させる。こうしてエンジン停止フラグがオンされると、ハイブリッドECU70、エンジンECU24およびモータECU40によりモータMG1からクランクシャフト26への負のトルクの出力を伴ってエンジン22の運転が停止されると共に要求トルクTr*に基づくトルクがリングギヤ軸32aに出力されるようにエンジン22とモータMG1およびMG2とが制御される。そして、エンジン22の運転が停止されると、モータ運転モードのもとでハイブリッド自動車20がモータMG2のみから動力により走行するようにハイブリッドECU70によりエンジン停止時駆動制御ルーチンが実行されることになる。
【0029】
一方、ステップS120にて残容量SOCが下限残容量Sref未満であると判断された場合、ステップS130にて車速Vが間欠禁止車速Vref1以上であると判断された場合、ステップS140にて要求トルクTr*が停止判定トルクTrefを上回っていると判断された場合、およびステップS150にて要求パワーPe*が始動判定パワーPref以上であると判断された場合には、エンジン22の運転を継続させるべく要求パワーPe*に基づいてエンジン22の目標回転数の仮の値である仮目標回転数Netmp1およびNetmp2を設定する(ステップS160)。ここで、仮目標回転数Netmp1は、全筒運転によりエンジン22に要求パワーPe*を出力させるときの回転数であり、仮目標回転数Netmp2は、上述の減筒運転によりエンジン22に要求パワーPe*を出力させるときの回転数である。実施例では、エンジン22の目標回転数Ne*の設定に用いられる動作ラインとして、エンジン22が効率よく全筒運転される運転ポイント(回転数およびトルク)を規定する全筒運転用動作ラインと、エンジン22が効率よく減筒運転される運転ポイントを規定する減筒運転用動作ライン(図4における二点鎖線参照)とが予め定められている。全筒運転用動作ラインは、図4において一点鎖線で示すように、全筒運転時における等高線状の等燃費率曲線上のポイントを結ぶことにより得られるものである。また、減筒運転用動作ラインは、図4において二点鎖線で示すように、減筒運転時における等高線状の等燃費率曲線上のポイントを結ぶことにより得られるものであり、全筒運転用動作ラインに比べて同一の回転数に対するトルクを低く規定するものである。そして、ステップS160では、全筒運転用動作ラインと要求パワーPe*(回転数×トルク)が一定となることを示す相関曲線との交点に対応した回転数が仮目標回転数Netmp1として設定されると共に、減筒運転用動作ラインと要求パワーPe*(回転数×トルク)が一定となることを示す相関曲線との交点に対応した回転数が仮目標回転数Netmp2として設定される。
【0030】
こうしてエンジン22の仮目標回転数Netmp1およびNetmp2とを設定したならば、要求パワーPe*と仮目標回転数Netmp1とが得られるようにエンジン22を全筒運転したときの効率η1と、要求パワーPe*と仮目標回転数Netmp2とが得られるようにエンジン22を減筒運転したときの効率η2とを導出する(ステップS170)。実施例では、全筒運転用動作ラインに対応した等燃費率曲線(図4の細い一点鎖線参照)を利用して要求パワーPe*と仮目標回転数Netmp1とエンジン22を全筒運転したときの効率η1との関係が全筒運転時効率導出用マップとして予め定められており、当該マップから要求パワーPe*と仮目標回転数Netmp1とに対応した効率η1が導出される。同様に、減筒運転用動作ラインに対応した等燃費率曲線(図4の細い二点鎖線参照)を利用して要求パワーPe*と仮目標回転数Netmp2とエンジン22を減筒運転したときの効率η2との関係が減筒運転時効率導出用マップとして予め定められており、当該マップから要求パワーPe*と仮目標回転数Netmp2とに対応した効率η2が導出される。そして、導出した効率η1およびη2を比較して減筒運転時の効率η2が全筒運転時のη1を上回っているか否かを判定する(ステップS180)。
【0031】
ステップS180にて減筒運転時の効率η2が全筒運転時のη1を上回っていると判断された場合には、エンジン22が全筒運転されているか否かを判定し(ステップS190)、エンジン22が全筒運転されていれば、ステップS100にて入力した車速Vが所定車速Vref2未満であるか否かを判定する(ステップS200)。所定車速Vref2は、上述の間欠禁止車速Vref1よりも低い車速として定められるものであり、実施例では、例えば40km/hとされる。車速Vが所定車速Vref2未満であれば、更にステップS100にて入力したアクセル開度Accが所定開度Accref(例えば20%程度の値)以上であるか否かを判定する(ステップS210)。なお、ステップS190にてエンジン22が減筒運転されていると判断された場合には、ステップS200およびS210の処理はスキップされる。そして、ステップS210にてアクセル開度Accが所定開度Accref以上である判断された場合には、エンジン22を減筒運転するためにステップS170にて設定した仮目標回転数Netmp2をエンジン22の目標回転数Ne*として設定した上で(ステップS220)、ステップS110にて設定した要求パワーPe*,ステップS220にて設定した目標回転数Ne*および減筒運転指令をエンジンECU24に送信する(ステップS230)。要求パワーPe*と目標回転数Ne*と減筒運転指令を受信したエンジンECU24は、要求パワーPe*を目標回転数Ne*で除することによりエンジン22の目標トルクTe*を求めた上で、減筒運転によりエンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*となると共にエンジン22から目標トルクTe*に相当するトルクが出力されるようにスロットル開度制御や燃料噴射制御、点火時期制御、バルブタイミング制御等を実行する。
【0032】
ここで、ステップS180にて減筒運転時の効率η2が全筒運転時のη1を上回っていると判断された場合には、全筒運転よりも減筒運転の方がエンジン22から要求パワーPe*を効率よく発生可能とすることになるから、エンジンの運転方式として減筒運転を選択することができる。ただし、エンジン22の全筒運転中に効率η1およびη2との関係からエンジン22の減筒運転を選択しても、その後にエンジン22の運転停止が見込まれる場合には、減筒運転を実行してもごく短時間のうちにエンジン22の運転が停止される可能性が高く、減筒運転による燃費改善効果が低いと考えられる。また、一般に、車速Vが比較的低くかつアクセルペダル83の踏み込み量が小さい場合には、運転者により加速要求がなされていないと考えられ、この場合には、その後に要求パワーPe*との関係からエンジン22の運転が停止される可能性が高いとみなすことができる。一方、車速Vがある程度高い場合や車速Vが比較的低くてもアクセルペダル83の踏み込み量がある程度大きい場合には、運転者により加速要求がなされていると考えられ、この場合には、その後に要求パワーPe*との関係からエンジン22の運転が継続される可能性が高いとみなすことができる。これを踏まえて、実施例では、上述のステップS190にてエンジン22が全筒運転されていると判断された場合に、車速Vと所定車速Vref2との比較(ステップS200)およびアクセル開度Accと所定開度Accrefとの比較(S210)を実行することにより、その後にエンジン22の運転停止が見込まれるか否かを判定している。そして、ステップS200およびS210の双方にて肯定判断がなされた場合にのみ減筒運転の実行が許容される。
【0033】
これに対して、ステップS180にて減筒運転時の効率η2が全筒運転時の効率η1以下であると判断された場合、ステップS190にてエンジン22が減筒運転されていると判断された場合、ステップS200にて車速Vが所定車速Vref2以上であると判断された場合、およびステップS210にてアクセル開度Accが所定開度Accref未満であると判断された場合には、エンジン22を全筒運転するためにステップS170にて設定した仮目標回転数Netmp1をエンジン22の目標回転数Ne*として設定した上で(ステップS240)、ステップS110にて設定した要求パワーPe*,ステップS230にて設定した目標回転数Ne*および全筒運転指令をエンジンECU24に送信する(ステップS250)。要求パワーPe*と目標回転数Ne*と全筒運転指令を受信したエンジンECU24は、要求パワーPe*を目標回転数Ne*で除することによりエンジン22の目標トルクTe*を求めた上で、全筒運転によりエンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*となると共にエンジン22から目標トルクTe*に相当するトルクが出力されるようにスロットル開度制御や燃料噴射制御、点火時期制御、バルブタイミング制御等を実行する。すなわち、実施例のハイブリッド自動車20では、減筒運転よりも全筒運転の方がエンジン22から要求パワーPe*を効率よく発生可能とする場合や、全筒運転よりも減筒運転の方がエンジン22から要求パワーPe*を効率よく発生可能とするもののその後にエンジン22の運転停止が見込まれる場合には、エンジン22が全筒運転されることになる。
【0034】
ステップS220またはS240の処理の後、目標回転数Ne*とリングギヤ軸32aの回転数Nr(Nm2/Gr)と動力分配統合機構30のギヤ比ρ(サンギヤ31の歯数/リングギヤ32の歯数)とを用いて次式(1)に従いモータMG1の目標回転数Nm1*を計算した上で、要求パワーPe*や目標回転数Ne*、モータMG1の目標回転数Nm1*や現在の回転数Nm1等を用いて次式(2)に従いモータMG1に対するトルク指令Tm1*を設定する(ステップS260)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。図5に動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を例示する。図中、左側のS軸はモータMG1の回転数Nm1に一致するサンギヤ31の回転数を示し、中央のC軸はエンジン22の回転数Neに一致するキャリア34の回転数を示し、右側のR軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。また、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1にトルクTm1を出力させたときにこのトルク出力によりリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2にトルクTm2を出力させたときに減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。モータMG1の目標回転数Nm1*を求めるための式(1)は、この共線図における回転数の関係を用いれば容易に導出することができる。そして、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0035】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) …(1)
Tm1*=-ρ/(1+ρ)・Pe*/Ne*+k1・(Nm1*-Nm1)+k2・∫(Nm1*-Nm1)dt …(2)
【0036】
モータMG1に対するトルク指令Tm1*を設定したならば、バッテリ50の入出力制限Win,WoutとステップS260にて設定したモータMG1に対するトルク指令Tm1*とモータMG1,MG2の現在の回転数Nm1,Nm2とを用いてモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tmin,Tmaxを次式(3)および式(4)に従い計算する(ステップS270)。更に、要求トルクTr*とトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いてモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮モータトルクTm2tmpを次式(5)に従い計算する(ステップS280)。そして、モータMG2に対するトルク指令Tm2*をトルク制限Tmin,Tmaxで仮モータトルクTm2tmpを制限した値に設定する(ステップS290)。このようしてモータMG2に対するトルク指令Tm2*を設定することにより、車軸としてのリングギヤ軸32aに出力するトルクをバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内に制限することができる。なお、式(5)は、図5の共線図から容易に導出することができる。モータMG1,MG2に対するトルク指令Tm1*,Tm2*を設定したならば、設定したトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信し(ステップS300)、本ルーチンを一旦終了させる。トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*に従ってモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*に従ってモータMG2が駆動されるようにインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0037】
Tmin=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 …(3)
Tmax=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 …(4)
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr …(5)
【0038】
以上説明したように、実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22を運転すべきであると共に減筒運転よりも全筒運転の方がエンジン22から要求パワーPe*を効率よく発生可能とする場合、エンジン22が要求パワーPe*を発生するように全筒運転されると共に要求トルクTr*に基づくトルクが得られるようにエンジン22とモータMG1およびMG2とが制御される(ステップS180,S240,S250,S260〜S300)。また、全筒運転よりも減筒運転の方がエンジン22から要求パワーPe*を効率よく発生可能とし、かつエンジン22が全筒運転されている場合には、車速Vやアクセル開度Accといった車両状態からエンジン22の運転停止が見込まれるか否かが判定される(ステップS200,S210)。そして、エンジン22の運転停止が見込まれないと判断された場合には、エンジン22が要求パワーPe*を発生するように減筒運転されると共に要求トルクTr*に基づくトルクが得られるようにエンジン22とモータMG1およびMG2とが制御される(ステップS220,S230,S260〜S300)。これに対して、車速Vやアクセル開度Accといった車両状態からエンジン22の運転停止が見込まれると判断された場合には、エンジン22が要求パワーPe*を発生するように全筒運転されると共に要求トルクTr*に基づくトルクが得られるようにエンジン22とモータMG1およびMG2とが制御される(S240,S250,S260〜S300)。これにより、ハイブリッド自動車20では、エンジン22の全筒運転中に効率η1,η2との関係からエンジン22の減筒運転を選択し得ると判断されると共に(ステップS180)、エンジン22の運転停止が見込まれないと判断された場合には(ステップS200およびS210)、エンジン22が減筒運転され、全筒運転から減筒運転への移行によりエンジン22の燃料消費量を低減すると共にポンピングロスの低減による燃費改善を図ることができる。また、エンジン22の全筒運転中に効率η1,η2との関係からエンジン22の減筒運転を選択し得ると判断されても(ステップS180)、エンジン22の運転停止が見込まれると判断された場合には(ステップS200またはS210)、減筒運転を実行してもごく短時間のうちにエンジン22が停止される可能性が高く、減筒運転による燃費改善効果が低いと考えられることから、エンジン22の全筒運転が継続され、それにより全筒運転から減筒運転への移行に伴う振動やショックの発生を抑制することができる。従って、実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の全筒運転と減筒運転とをより適正に実行して振動やショックの発生を抑制しつつエネルギ効率を向上させることが可能となる。
【0039】
また、実施例のステップS200およびS210において、車速Vとアクセルペダル83の踏み込み量を示すアクセル開度Accとを判定用のパラメータとして用いることにより、エンジン22の運転停止が見込まれるか否か、すなわち、その後にエンジン22の運転が停止される可能性の高低をより適正に判定することが可能となる。更に、上記実施例のように、車速Vが所定車速Vref2未満であると共にアクセルペダルポジションセンサ84により検出されたアクセル開度Accが所定開度Accref以上であるとエンジン22の運転停止が見込まれないと判断すれば、エンジン22の運転停止の見込みをより適正に判定して、エンジン22の全筒運転と減筒運転とをより適正に実行することが可能となる。
【0040】
なお、上述のハイブリッド自動車20では、駆動軸としてのリングギヤ軸32aとモータMG2とがモータMG2の回転数を減速してリングギヤ軸32aに伝達する減速ギヤ35を介して連結されているが、減速ギヤ35の代わりに、例えばHi,Loの2段の変速段あるいは3段以上の変速段を有したモータMG2の回転数を変速してリングギヤ軸32aに伝達する変速機を採用してもよい。また、実施例のハイブリッド自動車20は、モータMG2の動力を動力分配統合機構30のリングギヤ32に接続されたリングギヤ軸32aに出力するものであるが、本発明の適用対象はこれに限られるものでもない。すなわち、本発明は、図6に示す変形例に係るハイブリッド自動車120のように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32a(車輪39a,39b)とは異なる車軸(図6における車輪39c,39dに接続された車軸)に出力するものに適用されてもよい。
【0041】
ここで、上記実施例および変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明しておく。すなわち、上記実施例等では、複数の燃焼室23を有すると共にすべての燃焼室23内で混合気を燃焼させる全筒運転および全体の半数の燃焼室23内で混合気を燃焼させる減筒運転により走行用の動力を出力可能なエンジン22が「内燃機関」に相当し、リングギヤ軸32aに動力を出力可能なモータMG2が「電動機」に相当し、モータMG2と電力をやり取り可能なバッテリ50が「蓄電装置」に相当し、図2のステップS110の処理を実行するハイブリッドECU70が「要求トルク設定手段」および「要求機関パワー設定手段」に相当し、図2のステップS160〜S180の処理を実行するハイブリッドECU70が「第1の判定手段」に相当し、図2のステップS190〜S210の処理を実行するハイブリッドECU70が「第2の判定手段」に相当し、図2のステップS220〜S300の処理を実行するハイブリッドECU70、エンジンECU24およびモータECU40との組み合わせが「制御手段」に相当し、アクセル開度Accを検出するアクセルペダルポジションセンサ84が「アクセル操作量検出手段」に相当し、車速センサ87が「車速取得手段」に相当し、動力を入出力可能なモータMG1が「第2の電動機」に相当し、エンジン22のクランクシャフト26に接続されるキャリア34とモータMG1の回転軸に接続されるサンギヤ31と駆動軸としてのリングギヤ軸32aに接続されるリングギヤ32とを有すると共にこれら3つの要素が互いに差動回転できるように構成された動力分配統合機構30が「動力分配手段」および「遊星歯車機構」に相当する。
【0042】
ただし、「内燃機関」は、全筒運転および減筒運転を実行可能なものであれば、ガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料の供給を受けて動力を出力するエンジン22に限られず、水素エンジンといったような他の如何なる形式のものであっても構わない。「電動機」や「第2の電動機」は、モータMG1,MG2のような同期発電電動機に限られず、誘導電動機といったような他の如何なる形式のものであっても構わない。「蓄電装置」は、バッテリ50のような二次電池に限られず、電動機と電力をやり取り可能なものであればキャパシタといったような他の如何なる形式のものであっても構わない。「要求トルク設定手段」は、アクセル開度と車速とに基づいて要求トルクを設定するものに限られず、例えばアクセル開度のみに基づいて要求駆動力を設定するもののような他の如何なる形式のものであっても構わない。「要求機関パワー設定手段」は、要求トルクに基づいて内燃機関に要求される要求機関パワーを設定するものであれば如何なる形式のものであっても構わない。「制御手段」は、単一の電子制御ユニット等のように、ハイブリッドECU70とエンジンECU24とモータECU40との組み合わせ以外の他の如何なる形式のものであっても構わない。いずれにしても、これら実施例および変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、実施例はあくまで課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の解釈は、その欄の記載に基づいて行われるべきものである。
【0043】
以上、実施例を用いて本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、ハイブリッド車両の製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
20,120 ハイブリッド自動車、22 エンジン、23 燃焼室、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、38 デファレンシャルギヤ、39a,39b,39c,39d 車輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、50 バッテリ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、70 ハイブリッド用電子制御ユニット(ハイブリッドECU)、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルストロークセンサ、87 車速センサ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃焼室を有すると共に全燃焼室で混合気を燃焼させる全筒運転および一部の燃焼室で混合気を燃焼させる減筒運転により走行用の動力を出力可能な内燃機関と、走行用の動力を出力可能な電動機と、該電動機と電力をやり取り可能な蓄電装置とを含むハイブリッド車両であって、
走行に要求される要求トルクを設定する要求トルク設定手段と、
前記設定された要求トルクに基づいて前記内燃機関に要求される要求機関パワーを設定する要求機関パワー設定手段と、
前記内燃機関の運転中であって該内燃機関の運転を継続させるべきときに、前記全筒運転と前記減筒運転とのうちの何れが前記内燃機関から前記設定された要求機関パワーをより効率よく発生可能とするかを判定する第1の判定手段と、
前記第1の判定手段により前記減筒運転が前記要求機関パワーをより効率よく発生可能とすると判断されると共に前記内燃機関が全筒運転されているときに、車両状態から前記内燃機関の運転停止が見込まれるか否かを判定する第2の判定手段と、
前記第2の判定手段により前記内燃機関の運転停止が見込まれないと判断された場合には、前記内燃機関が前記設定された要求機関パワーを発生するように減筒運転されると共に前記設定された要求トルクに基づくトルクが得られるように前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記第1の判定手段により前記全筒運転が前記要求機関パワーをより効率よく発生可能とすると判断された場合および前記第2の判定手段により前記内燃機関の運転停止が見込まれると判断された場合には、前記内燃機関が前記設定された要求機関パワーを発生するように全筒運転されると共に前記設定された要求トルクに基づくトルクが得られるように前記内燃機関と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えるハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両において、
車速を取得する車速取得手段と、
アクセルペダルの操作量を検出するアクセル操作量検出手段とを更に備え、
前記第2の判定手段は、前記取得された車速と前記検出されたアクセルペダルの操作量とに基づいて前記内燃機関の運転停止が見込まれるか否かを判定するハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項2に記載のハイブリッド車両において、
前記第2の判定手段は、前記取得された車速が所定車速未満であると共に前記検出されたアクセルペダルの操作量が所定操作量以上であると前記内燃機関の運転停止が見込まれないと判断するハイブリッド車両。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載のハイブリッド車両において、
動力を入出力可能な第2の電動機と、
前記内燃機関の出力軸と前記第2の電動機の回転軸と駆動輪に連結される駆動軸との3軸に接続され、これら3軸のうちの何れか2軸に入出力される動力に基づく動力を残余の軸に入出力する動力分配手段とを更に備え、
前記電動機は、前記駆動軸または該駆動軸とは異なる他の車軸に動力を入出力可能であり、前記制御手段は、前記内燃機関が前記設定された目標運転ポイントで全筒運転および減筒運転されると共に前記設定された要求トルクに基づくトルクが得られるように前記内燃機関と前記電動機と前記第2の電動機とを制御するハイブリッド車両。
【請求項5】
請求項4に記載のハイブリッド車両において、
前記動力分配手段は、前記内燃機関の前記出力軸に接続される第1要素と、前記第2の電動機の前記回転軸に接続される第2要素と、前記駆動軸に接続される第3要素とを有すると共に、これら3つの要素が互いに差動回転できるように構成された遊星歯車機構であるハイブリッド車両。
【請求項6】
複数の燃焼室を有すると共に全燃焼室で混合気を燃焼させる全筒運転および一部の燃焼室で混合気を燃焼させる減筒運転により走行用の動力を出力可能な内燃機関と、走行用の動力を出力可能な電動機と、該電動機と電力をやり取り可能な蓄電装置とを含むハイブリッド車両であって、
(a)前記内燃機関の運転中であって該内燃機関の運転を継続させるべきときに、前記全筒運転と前記減筒運転との何れが前記内燃機関から該内燃機関に要求される要求機関パワーをより効率よく発生可能とするかを判定するステップと、
(b)ステップ(a)にて前記減筒運転が前記要求機関パワーをより効率よく発生可能とすると判断されると共に前記内燃機関が全筒運転されているときに、車両状態から前記内燃機関の運転停止が見込まれるか否かを判定するステップと、
(c)ステップ(b)にて前記内燃機関の運転停止が見込まれないと判断された場合には、前記内燃機関が前記要求機関パワーを発生するように減筒運転されると共に前記要求トルクに基づくトルクが得られるように前記内燃機関と前記電動機とを制御し、ステップ(a)にて前記全筒運転が前記要求機関パワーをより効率よく発生可能とすると判断された場合およびステップ(b)にて前記内燃機関の運転停止が見込まれると判断された場合には、前記内燃機関が前記要求機関パワーを発生するように全筒運転されると共に前記要求トルクに基づくトルクが得られるように前記内燃機関と前記電動機とを制御するステップと、
を含むハイブリッド車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−241386(P2010−241386A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95257(P2009−95257)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】