説明

ハイブリッド車両における排気浄化装置

【課題】ハイブリッド車両における排気浄化装置において、未浄化NOxや還元剤の流出を防止して吸蔵したNOx触媒の還元効率を向上することで排気浄化効率の向上を図る。
【解決手段】排気管46に排気ガス中のNOxを吸蔵して還元可能な第1触媒51及び第2触媒52からなる排気浄化装置50を設けると共に、各触媒51,52に還元剤としての燃料を供給する燃料添加弁61を設け、DE11を停止したMG12,13によるEV走行時に、燃料添加弁61から排気ポート33に燃料が噴射されたとき、低圧EGR弁59を開放すると共にシャッタバルブ68を閉止した状態で、電動アシストターボ過給機を駆動し、第1触媒51及び第2触媒52から流出したNOx及び燃料を低圧EGR通路58を通して吸気管37に戻し、この第1触媒51及び第2触媒52に循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と電気モータとを動力源として走行可能なハイブリッド車両において、内燃機関の排気通路に吸蔵還元型NOx触媒が設けられた排気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排気空燃比がリーンのときに排気ガス中のNOxを吸蔵し、排気ガス中の酸素濃度が低下したときに吸蔵したNOxを放出し、添加した還元剤により還元するようにした吸蔵還元型NOx触媒が既に知られている。即ち、このような吸蔵還元型NOx触媒を有する排気浄化装置では、内燃機関がリーン空燃比で運転されているときに、排気ガス中のNOxを吸蔵還元型NOx触媒で吸蔵させ、この吸蔵還元型NOx触媒のNOx吸蔵量が所定値に達したとき、上流側の排気通路に還元剤を噴射する。すると、吸蔵還元型NOx触媒に排気ガスと共に還元剤が供給され、酸化反応により排気ガス中の酸素濃度が低下することで吸蔵還元型NOx触媒に吸蔵されたNOxが放出され、放出されたNOxと還元剤が反応して還元し、排気ガスが浄化される。
【0003】
ところで、上述した吸蔵還元型NOx触媒では、NOx吸蔵量が所定値に達したときに還元剤が供給され、排気ガス中の酸素濃度が低下することで放出されたNOxに対して還元剤が反応して還元される。この場合、吸蔵還元型NOx触媒から放出されるNOx放出速度は一定ではなく、還元剤が供給されて酸素濃度が低下した直後に比較的多量のNOxが急激に放出され、その後はほぼ一様な比較的低い放出速度でNOxが放出される。そのため、吸蔵還元型NOx触媒から比較的多量のNOxが放出されるNOxの放出時に、ほとんどのNOxが還元剤と反応して還元されるものの、一部のNOxが残留している酸素により適正に還元されず、未浄化のNOxとして吸蔵還元型NOx触媒から染み出し、NOx浄化率が低下してしまう。
【0004】
また、吸蔵還元型NOx触媒は、放出されたNOxを効果的に還元することができる温度領域を有しており、この吸蔵還元型NOx触媒を事前に活性化温度に昇温している。ところが、吸蔵還元型NOx触媒に還元剤を供給すると、酸化反応により吸蔵されているNOxが放出されると共に吸蔵還元型NOx触媒が加熱されて活性化温度よりも高い温度となり、NOxを効果的に還元することができる温度領域から外れてしまう。すると、吸蔵還元型NOx触媒は放出されたNOxを還元剤により確実に還元することができず、一部のNOxが未浄化のNOxとして吸蔵還元型NOx触媒から吐き出され、NOx浄化率が低下してしまう。
【0005】
このような問題を解決するものとして、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この下記特許文献1に記載された内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関の排気通路に吸蔵還元型NOx触媒を配置し、リーン空燃比運転中に排気ガス中のNOxを吸蔵し、吸蔵量が判定値に達したときに、排気通路に還元剤を噴射して吸蔵還元型NOx触媒からNOxを放出して還元浄化するものであり、この判定値を還元剤供給直後の吸蔵還元型NOx触媒からの吐き出しによる未浄化NOx放出量、またはNOx吸蔵中の染み出しによる浄化NOx放出量が予め定めた低い値になるように設定している。
【0006】
【特許文献1】特開2000−240428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1の排気浄化装置では、吸蔵還元型NOx触媒を還元するときの判定値を、吸蔵還元型NOx触媒からの吐き出しによる未浄化NOx放出量とNOx吸蔵中の染み出しによる浄化NOx放出量を考慮して設定しており、NOx吸蔵量の増大による吐き出しや染み出しによる未浄化NOxの放出量を低い値に抑制してNOx浄化率を向上することができる。この場合、事前の実験により吸蔵還元型NOx触媒のNOx吸蔵量と吐き出しによる未浄化NOx放出量、NOx吸蔵中の染み出しによる浄化NOx放出量との関係を求めておき、この関係に基づいて未浄化のNOx放出量が所定値以下となるNOx吸蔵量の最大値を求め、これを判定値としている。ところが、このような排気浄化装置では、NOxの還元処理のために高精度な制御が必要となり、コスト増を招いてしまう。また、この方法であっても、吐き出しや染み出しによる未浄化NOx放出量を完全になくすことはできない。
【0008】
また、上述した排気浄化装置は、吸蔵能力が低下したとき、還元剤が吸蔵還元型NOx触媒の空隙部を通過したときにその表面に担持された貴金属と接触することで反応し、吸蔵したNOxを放出して還元するものであることから、還元剤と吸蔵還元型NOx触媒とが効率良く接触すると、NOxの還元効率、つまり、排気ガスの浄化効率が向上する。ところが、還元剤が添加された排気ガスが吸蔵還元型NOx触媒へ流れ込むとき、その流速により一部の還元剤が吸蔵還元型NOx触媒と反応せずにこれをすり抜けて外部排出されてしまう。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためのものであって、未浄化NOxや還元剤の流出を防止して吸蔵したNOx触媒の還元効率を向上することで排気浄化効率の向上を図ったハイブリッド車両における排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のハイブリッド車両における排気浄化装置は、内燃機関と電気モータとを動力源として走行可能なハイブリッド車両において、前記内燃機関の排気通路に設けられて排気ガス中のNOxを吸蔵して還元可能な吸蔵還元型NOx触媒と、前記吸蔵還元型NOx触媒に還元剤を供給する還元剤供給手段と、前記電気モータによる車両走行時にて前記還元剤供給手段から前記吸蔵還元型NOx触媒に還元剤が供給されたときに前記吸蔵還元型NOx触媒から流出したNOx及び前記吸蔵還元型NOx触媒をすり抜けた還元剤を前記吸蔵還元型NOx触媒に戻す循環手段とを具えたことを特徴とするものである。
【0011】
従って、内燃機関による走行から電気モータによる走行に切り換ったとき、還元剤供給手段から吸蔵還元型NOx触媒に還元剤が供給されると、この吸蔵還元型NOx触媒で還元剤が反応してNOxが還元され、一部の未浄化NOxや還元剤が吸蔵還元型NOx触媒から流出されるが、内燃機関が停止された状態で、循環手段により吸蔵還元型NOx触媒から流出したNOxや吸蔵還元型NOx触媒からすり抜けた還元剤が吸蔵還元型NOx触媒に戻されることとなり、この流出した未浄化NOxがすり抜けた還元剤により吸蔵還元型NOx触媒で再び浄化処理されるため、吸蔵還元型NOx触媒の下流側に補助的な触媒を設ける必要はなく、その結果、吸蔵したNOx触媒の還元効率を向上して排気浄化効率を向上することができる。
【0012】
本発明のハイブリッド車両における排気浄化装置では、前記循環手段は、吸気通路及び前記排気通路に設けられた電動アシストターボ過給機と、前記吸蔵還元型NOx触媒より下流側の前記排気通路と前記電動アシストターボ過給機より上流側の前記吸気通路とを連結する排気ガス再循環通路と、該排気ガス再循環通路に設けられた排気ガス再循環バルブと、前記排気通路における前記吸蔵還元型NOx触媒の下流側に設けられたシャッタバルブとを有し、前記排気ガス再循環バルブにより前記排気ガス再循環通路を開放すると共に、前記シャッタバルブにより前記排気通路を閉止した状態で、前記電動アシストターボ過給機を駆動することで、NOx及び還元剤を前記吸蔵還元型NOx触媒に戻すことを特徴としている。
【0013】
従って、内燃機関による走行から電気モータによる走行に切り換ったとき、シャッタバルブを閉弁して電動アシストターボ過給機を駆動することで、吸蔵還元型NOx触媒から流出したNOxや吸蔵還元型NOx触媒からすり抜けた還元剤を含んだ排気ガスが、排気ガス再循環通路を通して吸気通路に戻され、この排気ガスが吸蔵還元型NOx触媒で繰り返し浄化処理されることとなり、吸蔵したNOx触媒の還元効率を向上して排気浄化効率を向上することができる。
【0014】
本発明のハイブリッド車両における排気浄化装置では、前記循環手段は、前記吸蔵還元型NOx触媒の上流側の排気通路と下流側の排気通路とを連結する循環通路と、前記循環通路に設けられた電動ポンプと、前記吸蔵還元型NOx触媒の上流側の排気通路及び下流側の排気通路を遮断すると共に前記吸蔵還元型NOx触媒と前記循環通路とを連通する切換バルブとを有し、前記切換バルブにより前記排気通路を遮断すると共に前記循環通路を連通した状態で前記電動ポンプを駆動することで、NOx及び還元剤を前記吸蔵還元型NOx触媒に戻すことを特徴としている。
【0015】
従って、内燃機関による走行から電気モータによる走行に切り換ったとき、切換バルブにより吸蔵還元型NOx触媒の上流側の排気通路と下流側の排気通路を遮断すると共に吸蔵還元型NOx触媒と循環通路とを連通し、電動ポンプを駆動することで、吸蔵還元型NOx触媒から流出したNOxや吸蔵還元型NOx触媒からすり抜けた還元剤を含んだ排気ガスが、循環通路により吸蔵還元型NOx触媒に戻されて繰り返し浄化処理されることとなり、吸蔵したNOx触媒の還元効率を向上して排気浄化効率を向上することができる。
【0016】
本発明のハイブリッド車両における排気浄化装置では、前記電気モータによる車両走行時にて前記還元剤供給手段から前記吸蔵還元型NOx触媒に還元剤が供給されたとき、この還元剤が前記吸蔵還元型NOx触媒を通過する時期を推定する通過時期推定手段を設け、前記通過時期推定手段が推定した還元剤の通過時期に、前記電動アシストターボ過給機または前記電動ポンプを予め設定した所定の低回転数で駆動する一方、前記通過時期以外の時期に、前記電動アシストターボ過給機または前記電動ポンプを予め設定した所定の高回転数で駆動することを特徴としている。
【0017】
従って、還元剤が吸蔵還元型NOx触媒を通過する時期には、電動アシストターボ過給機または前記電動ポンプを低回転数で駆動することで、そのときの空間速度が低下し、還元剤により吸蔵還元型NOx触媒から放出されたNOxを効率良く還元することができ、一方、還元剤が吸蔵還元型NOx触媒以外を通過する時期には、電動アシストターボ過給機または電動ポンプを高回転数で駆動することで、還元剤を早期に吸蔵還元型NOx触媒に移行させることができ、吸蔵したNOx触媒の還元効率を向上して排気浄化効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のハイブリッド車両における排気浄化装置によれば、内燃機関または電気モータにより走行可能とし、内燃機関を停止して電気モータによる走行時に、吸蔵還元型NOx触媒から流出した未浄化NOxや還元剤を循環手段によりこの吸蔵還元型NOx触媒に戻すため、吸蔵還元型NOx触媒の下流側に補助的な触媒を設けることなく、未浄化NOxや還元剤の流出を確実に防止することができ、吸蔵したNOx触媒の還元効率を向上することで排気浄化効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明に係るハイブリッド車両における排気浄化装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の実施例1に係るハイブリッド車両における排気浄化装置の概略構成図、図2は、実施例1のハイブリッド車両における排気浄化装置によるNOx還元処理を表すフローチャート、図3は、実施例1の排気浄化装置が適用されたハイブリッド車両を表す概略構成図である。
【0021】
実施例1の排気浄化装置が搭載された車両は、内燃機関と電気モータの2種類の動力源を組み合わせて使用するパワートレーンを有するハイブリッド車両である。まず、実施例1の排気浄化装置が搭載されたハイブリッド車両について説明する。
【0022】
実施例1のハイブリッド車両において、図3に示すように、車両には、動力源として、内燃機関としてのディーゼルエンジン(DE)11と電気モータとしてのモータジェネレータ(MG)12が搭載されており、また、この車両には、DE11の出力を受けて発電を行うモータジェネレータ(MG)13も搭載されている。これらのDE11とMG12とMG13は、動力分割機構14によって接続されている。この動力分割機構14は、DE11の出力をMG13と駆動輪15とに振り分けると共に、MG12からの出力を駆動輪15に伝達したり、減速機16及び駆動軸17を介して駆動輪15に伝達される駆動力に関する変速機として機能する。
【0023】
MG12は交流同期電動機であり、交流電力によって駆動する。インバータ18は、バッテリ19に蓄えられた電力を直流から交流に変換してMG12に供給すると共に、MG13によって発電される電力を交流から直流に変換してバッテリ19に蓄えるためのものである。MG13も、基本的には上述したMG12とほぼ同様の構成を有しており、交流同期電動機としての構成を有している。この場合、MG12が主として駆動力を出力するのに対し、MG13は主としてDE11の出力を受けて発電するものである。
【0024】
また、MG12は主として駆動力を発生させるが、駆動輪15の回転を利用して発電(回生発電)することもでき、発電機として機能することも可能である。このとき、駆動輪15にはブレーキ(回生ブレーキ)が作用するので、これをフットブレーキやエンジンブレーキと併用することにより、車両を制動させることができる。一方、MG13は主としてDE11の出力を受けて発電をするが、インバータ18を介してバッテリ19の電力を受けて駆動する電動機としても機能することができる。
【0025】
DE11のクランクシャフト20には、ピストン位置及びエンジン回転数を検出するクランクポジションセンサ21が設けられている。このクランクポジションセンサ21は、エンジンECU22に接続され、検出結果を出力している。また、MG12及びMG13の各駆動軸23,24には、それぞれの回転位置及び回転数を検出する回転数センサ25,26が設けられている。各回転数センサ25,26は、それぞれモータECU27に接続され、検出結果を出力している。
【0026】
上述した動力分割機構14は、プラネタリギヤユニットにより構成されている。即ち、この動力分割機構(プラネタリギヤユニット)14は、図示しないが、サンギヤと、このサンギヤの周囲に配置されたプラネタリギヤと、このプラネタリギヤのさらに外周に配置されたリングギヤと、プラネタリギヤを保持するギヤキャリアとから構成されている。そして、DE11のクランクシャフト20が中心軸を介してギヤキャリアに結合されており、DE11の出力はプラネタリギヤユニット14のギヤキャリアに入力される。また、MG12は内部にステータとロータを有しており、このロータがリングギヤに結合され、ロータ及びリングギヤは減速機16に結合されている。この減速機16は、MG12からプラネタリギヤユニット14のリングギヤに入力された出力を駆動軸17に伝達するものであり、MG12は駆動軸17と常時接続された状態となっている。
【0027】
また、MG13はMG12と同様に、内部にステータとロータを有しており、このロータがサンギヤに結合されている。つまり、DE11の出力は、プラネタリギヤユニット14で分割され、サンギヤを介してMG13のロータに入力される。また、DE11の出力は、プラネタリギヤユニット14で分割され、リングギヤなどを介して駆動軸17にも伝達可能となっている。
【0028】
そして、MG13の発電量を制御してサンギヤの回転を制御することにより、プラネタリギヤユニット14全体を無断変速機として用いることができる。即ち、DE11またはMG12の出力は、プラネタリギヤユニット14によって変速された後に駆動軸17に出力される。また、MG13の発電量(モータとして機能する場合は電力消費量)を制御してDE11の回転数を制御することもできる。なお、MG12、MG13の回転数を制御する場合は、回転センサ25,26の出力を参照してモータECU27がインバータ18を制御することにより行われることとなり、これによりDE11の回転数も制御可能である。
【0029】
上述した各種制御は、複数の電子制御ユニット(ECU)によって制御される。ハイブリッド車両として特徴的なDE11による駆動とMG12及びMG13による駆動とは、メインECU28によって総合的に制御される。即ち、メインECU28によりDE11の出力とMG12及びMG13による出力の配分が決定され、DE11、MG12及びMG13を制御すべく、各制御指令がエンジンECU22及びモータECU27に出力される。
【0030】
また、エンジンECU22及びモータECU27は、DE11、MG12及びMG13の情報をメインECU28にも出力している。このメインECU28には、バッテリ19を制御するバッテリECU29やブレーキを制御するブレーキECU30にも接続されている。このバッテリECU29はバッテリ19の充電状態を監視し、充電量が不足した場合には、メインECU28に対して充電要求指令を出力する。充電要求を受けたメインECU28はバッテリ19に充電をするようにMG13を発電させる制御を行う。ブレーキECU30は車両の制動を司っており、メインECU28と共にMG12による回生ブレーキを制御する。
【0031】
本実施例のハイブリッド車両は、上述したように構成されているので、ハイブリッド車両を運行している間に車両全体で要求される必要出力をDE11とMG12(MG13)とに配分することにより、DE11の運転状態を所望の運転状態に制御しつつ、車両全体で要求される出力をも満たすことが可能となっている。
【0032】
次に、上述した実施例1のハイブリッド車両における排気浄化装置について説明する。実施例1のハイブリッド車両における排気浄化装置において、図1に示すように、内燃機関としてのディーゼルエンジン(DE)11は、図示しないが、シリンダブロック上にシリンダヘッドが締結されており、複数のシリンダボアにピストンがそれぞれ上下移動自在に嵌合している。そして、シリンダブロックの下部にクランクケースが締結され、このクランクケース内にクランクシャフトが回転自在に支持されており、各ピストンはコネクティングロッドを介してこのクランクシャフトにそれぞれ連結されている。
【0033】
シリンダブロックとシリンダヘッドとピストンにより複数の燃焼室31が構成されており、この燃焼室31は、上部に吸気ポート32及び排気ポート33が対向して形成されており、この吸気ポート32及び排気ポート33に対して吸気弁34及び排気弁35の下端部がそれぞれ位置している。この吸気弁34及び排気弁35は、シリンダヘッドに軸方向に沿って移動自在に支持されると共に、吸気ポート32及び排気ポート33を閉止する方向に付勢支持されている。また、シリンダヘッドには、吸気カムシャフト及び排気カムシャフトが回転自在に支持されており、吸気カム及び排気カムがローラロッカアームを介して吸気弁32及び排気弁33の上端部に接触している。
【0034】
従って、DE11に同期して吸気カムシャフト及び排気カムシャフトが回転すると、吸気カム及び排気カムがローラロッカアームを作動させ、吸気弁34及び排気弁35が所定のタイミングで上下移動することで、吸気ポート32及び排気ポート33を開閉し、吸気ポート32と燃焼室31、燃焼室31と排気ポート33とをそれぞれ連通することができる。
【0035】
吸気ポート32には、インテークマニホールド36を介して吸気管(吸気通路)37が連結されており、この吸気管37の空気取入口にエアクリーナ38が取付けられている。そして、このエアクリーナ38の下流側にスロットルバルブ39が設けられている。そして、シリンダヘッドには、各燃焼室31に燃料としての軽油を高圧で噴射可能なインジェクタ41がそれぞれ装着されている。各インジェクタ41は、デリバリパイプ42及び燃料供給管43を介して燃料ポンプ44に連結されており、この燃料ポンプ44はDE11によって駆動される。一方、排気ポート33には、エギゾーストマニホールド45を介して排気管(排気通路)46が連結されている。
【0036】
また、吸気管37及び排気管46には、電動アシストターボ過給機(MAT)47が設けられている。この電動アシストターボ過給機47は、吸気管37に設けられたコンプレッサ47aと排気管46に設けられたタービン47bとが駆動軸47cにより一体に連結されてなり、駆動モータ48により強制的に駆動することができる。そして、この電動アシストターボ過給機47におけるコンプレッサ47aの下流側の吸気管37には、このコンプレッサ47aにより過給されて温度が上昇した吸気を冷却するインタークーラ49が設けられている。
【0037】
排気管46には、排気ガス中に含まれる有害物質を浄化処理する排気浄化装置50が設けられており、この排気浄化装置50は、第1触媒51と第2触媒52とが直列に配設されて構成されている。第1触媒51は、吸蔵還元型NOx触媒であって、排気空燃比がリーンのときに排気ガス中のNOxを吸蔵し、排気ガス中の酸素濃度が低下したときに吸蔵したNOxを放出し、添加した還元剤としての燃料(本実施例では、軽油)により還元するものである。第2触媒52は、パティキュレートフィルタを有する吸蔵還元型NOx触媒であって、排気ガス中の微粒子(PM:パティキュレート)、特に、黒煙を捕集すると共に、排気空燃比がリーンのときに排気ガス中のNOxを吸蔵し、排気ガス中の酸素濃度が低下したときに吸蔵したNOxを放出し、添加した燃料により還元するものである。
【0038】
DE11には、高圧の排気ガスを吸気系に戻す高圧排気再循環(EGR)装置53と、低圧の排気ガスを吸気系に戻す低圧排気再循環(EGR)装置54が設けられている。高圧EGR装置53は、エギゾーストマニホールド45とインテークマニホールド36の直前の吸気管37とを連結して高圧の排気ガスの一部を吸気系へ再循環させる高圧EGR通路55と、この高圧EGR通路55に設けられた高圧EGR弁56と、高圧EGR通路55に設けられて高圧の排気ガスを冷却するEGRクーラ57とから構成されている。低圧EGR装置54は、排気浄化装置51の下流側の排気管46とスロットルバルブ39の下流側で電動アシストターボ過給機47におけるコンプレッサ47aの上流側の吸気管37とを連結して低圧の排気ガスの一部を吸気系へ再循環させる低圧EGR通路58と、この低圧EGR通路58に設けられた低圧EGR弁59と、低圧EGR通路58に設けられて低圧の排気ガスを冷却するEGRクーラ60とから構成されている。
【0039】
また、第1触媒51及び第2触媒52は、排気ガス中の酸素濃度が低下したときに吸蔵したNOxを放出し、この放出したNOxを燃料により還元するものであることから、排気ポート33に燃料(還元剤)を噴射する燃料添加弁61がシリンダヘッドに設けられている。そして、この燃料添加弁61は、燃料供給管62を介して燃料ポンプ44に連結されており、この燃料供給管62には開閉弁63が設けられている。
【0040】
ところで、エンジンECU22は、DE11の各種機器を制御可能となっている。即ち、エンジンECU22には、クランクポジションセンサ21が検出したクランク角度が入力されており、このエンジンECU22は、クランク角度に基づいて各気筒における吸気、圧縮、膨張(爆発)、排気の各行程を判別すると共に、エンジン回転数を算出している。また、エンジンECU22には、アクセルポジションセンサ64が検出したアクセル開度が入力されており、このエンジンECU22は、アクセル開度及びエンジン回転数に基づいて燃料噴射量を決定している。そして、エンジンECU22は、燃料ポンプ44を制御してデリバリパイプ42内の燃圧を所定値に維持し、インジェクタ41を駆動制御することで、所定の噴射時期に所定量の燃料を燃焼室31に噴射することができる。
【0041】
また、エンジンECU22は、アクセル開度に基づいて電動アシストターボ過給機47を駆動制御し、DE11の出力調整を可能としている。更に、エンジンECU22は、エンジン運転状態に応じて高圧EGR装置53及び低圧EGR装置54を駆動制御している。即ち、所定の運転状態で、各EGR弁56,59を開閉することで、高圧の排気ガスまたは低圧の排気ガスをEGR通路55,58を通して吸気系にEGRガスとして循環し、燃焼温度を下げてNOxの発生を抑制する。
【0042】
更に、エンジンECU22は、所定時期に排気浄化装置50を構成する第1触媒51及び第2触媒52を再生するようにしている。即ち、第1触媒51の下流側には、排気ガスの温度を測定する第1温度センサ65が設けられると共に、第2触媒52の下流側には、排気ガスの温度を測定する第2温度センサ66が設けられている。また、排気浄化装置50に流入する排気ガスの圧力と排気浄化装置50から排出される排気ガスの圧力との差圧を検出する差圧センサ67が設けられている。
【0043】
従って、DE11がリーン空燃比で運転されているときに、第1触媒51及び第2触媒52は排気ガス中のNOxを吸蔵する。そして、この第1触媒51及び第2触媒52のNOx吸蔵量が所定値に達したとき、エンジンECU22は燃料添加弁61を制御し、排気ポート33に所定量の燃料を還元剤として噴射する。すると、排気管46を通して第1触媒51及び第2触媒52に燃料が供給されると、酸化反応により排気ガス中の酸素濃度が低下することで各触媒51,52に吸蔵されたNOxが放出され、放出されたNOxと燃料が反応して還元し、排気ガスが浄化されることで、第1触媒51及び第2触媒52が再生される。
【0044】
この場合、第1触媒51及び第2触媒52は、吸蔵したNOxを放出し、このNOxを燃料によって還元できる活性温度領域が設定されており、各触媒51,52がこの活性温度領域にあるとき、エンジンECU22は再生制御を実行する。即ち、エンジンECU22は、第1温度センサ65が検出した排気ガス温度がこの活性温度領域にあるとき、燃料添加弁61により所定量の燃料を噴射し、第1触媒51及び第2触媒52の再生制御を実行する。一方、第1温度センサ65が検出した排気ガス温度がこの活性温度領域にないとき、エンジンECU22は第1触媒51及び第2触媒52の昇温制御を実行する。この昇温制御は、例えば、燃料添加弁61により触媒昇温のために燃料を噴射し、各触媒51,52での酸化反応により排気ガス温度を上げて各触媒51,52を昇温する。なお、第1触媒51及び第2触媒52は、触媒機能が劣化する劣化温度が存在しており、エンジンECU22は、第2温度センサ66が検出した排気ガス温度がこの劣化温度を超えないかどうかを監視している。また、第1触媒51及び第2触媒52に吸蔵されたNOx吸蔵量は、継続しているエンジン運転状態により推定する。
【0045】
一方、DE11がリーン空燃比で運転されているときに、第2触媒52は排気ガス中のPMを捕集する。そして、この第2触媒52のPM捕集量が所定値に達したとき、エンジンECU22は燃料添加弁61を制御し、排気ポート33に所定量の燃料を噴射する。すると、排気管46を通して第1触媒51及び第2触媒52に燃料が供給されると、酸化反応により触媒温度が上昇することで、第2触媒52に捕集されているPMを燃焼して再生される。この場合、エンジンECU22は、差圧センサ67が検出した排気ガスの圧力差が予め設定された所定値を超えたときに、第2触媒52に圧力損失が発生してPM捕集量が飽和状態とあると判定し、燃料添加弁61により所定量の燃料を噴射し、第2触媒52の再生制御を実行する。
【0046】
なお、燃料中にはイオウ(S)成分が含まれており、このS成分は酸素と反応して硫黄酸化物(SOx)となり、このSOxがNOxの代わりに第1触媒51及び第2触媒52に吸蔵される。そのため、第2触媒52が捕集したPMを燃焼して再生制御を実行するとき、エンジンECU22は燃料添加弁61が噴射する燃料量を調整し、第1触媒51及び第2触媒52に吸蔵されたSOxを除去して再生する。
【0047】
ところで、NOxを吸蔵還元する機能を有する第1触媒51及び第2触媒52では、燃料を供給して再生するときに比較的多量のNOxが急激に放出されるため、一部のNOxが残留酸素により適正に還元されずに未浄化のNOxとして第1触媒51及び第2触媒52から染み出してしまう。また、燃料が排気ガスと共に第1触媒51及び第2触媒52へ流れ込むとき、その流速により一部の燃料が第1触媒51及び第2触媒52と反応せずにすり抜けてしまう。
【0048】
そこで、実施例1のハイブリッド車両における排気浄化装置では、MG12及びMG13からなるEV走行時に、燃料添加弁61から排気ポート33に所定量の燃料が還元剤として噴射されたとき、第1触媒51及び第2触媒52から流出したNOx及び燃料をこの第1触媒51及び第2触媒52に戻す(循環手段)ようにしている。この場合、本実施例では、循環手段として、電動アシストターボ過給機47と低圧EGR装置54を適用すると共に、第1触媒51及び第2触媒52及び低圧EGR装置54の下流側の排気管46にシャッタバルブ68を設けている。
【0049】
従って、DE11が停止してMG12及びMG13のみによるハイブリッド車両の走行時に、燃料添加弁61から所定量の燃料を噴射する一方、低圧EGR装置54の低圧EGR弁59を開放すると共に、シャッタバルブ68を閉止し、この状態で、電動アシストターボ過給機47を駆動することで、第1触媒51及び第2触媒52から流出したNOx及び燃料を含んだ排気ガスを低圧EGR通路58を通して吸気管37に戻す。これにより、各触媒51,52から流出したNOx及び燃料の外部流出を阻止しながら、第1触媒51及び第2触媒52にて、流出したNOxが燃料により確実に浄化される。
【0050】
なお、DE11を停止してMG12,MG13のみによるハイブリッド車両の走行時に、排気ガスを排気系から吸気系に戻して燃焼室31を通して各触媒51,52に戻す場合、DE11におけるいずれかの気筒が、排気行程後期と吸気行程前期とが所定期間重なるオーバーラップ期間となる位置でDE11を停止させることが望ましい。この場合、エンジンECU22は、クランク角センサ21が検出したクランク角度に基づいて各気筒における吸気、圧縮、膨張(爆発)、排気の各行程を判別しており、この検出信号に基づいて気筒のオーバーラップ期間を把握し、所定の時期に燃料噴射を停止すればよい。
【0051】
ここで、実施例1のハイブリッド車両における排気浄化装置によるNOx還元処理の制御を図2のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0052】
実施例1のハイブリッド車両における排気浄化装置によるNOx還元処理の制御において、図2に示すように、ステップS11にて、排気浄化装置50におけるNOx還元処理の開始条件が成立したかどうかを判定する。この場合、エンジンECU22は、DE11が運転を開始してからエンジン運転状態に基づいて排気浄化装置50における各触媒51,52のNOx吸蔵量を検出しており、現在のNOx吸蔵量が、各触媒51,52のNOx飽和量に基づいて設定された判定値を超えたかどうかを判定することで、排気浄化装置50のNOx還元処理の開始条件が成立したかどうかを判定する。このステップS11にて、現在のNOx吸蔵量が判定値を超えてなれれば、排気浄化装置50のNOx還元処理をまだ開始すべきでないと判定し、何もしないでこのルーチンを抜ける。
【0053】
また、ステップS11で、現在のNOx吸蔵量が判定値を超えていれば、排気浄化装置50のNOx還元処理を開始すべきとしてステップS12に移行する。このステップS12では、ハイブリッド車両がMG11及びMG12のみによるEV走行条件が成立しているかどうかを判定する。ここで、EV走行条件が成立していなければ、ステップS13に移行し、ここで、エンジン走行でのNOx還元処理制御を実行する。
【0054】
一方、ステップS12にて、ハイブリッド車両のEV走行条件が成立していたら、ステップS14以降で、DE11を停止したEV走行でNOx還元処理制御を実行する。このステップS14にて、第1温度センサ65が検出した排気ガス温度Tが触媒活性温度Tgより高いかどうかを判定し、排気ガス温度Tが触媒活性温度Tg以下のときには、ステップS15にて、触媒昇温制御を実行する。即ち、燃料添加弁61により所定量の燃料を噴射し、第1触媒51及び第2触媒52での酸化反応により排気ガス温度を上げて各触媒51,52を昇温する。
【0055】
そして、第1触媒51及び第2触媒52が昇温されて、ステップS14で排気ガス温度Tが触媒活性温度Tgより高いと判定されたら、ステップS16にて、まず、燃料添加弁61により各触媒51,52が吸蔵したNOxを還元処理可能な量の燃料を噴射する。次に、ステップS17にて、DE11における各インジェクタ41からの燃料噴射をやめることでDE11を停止した後、ステップS18にて、低圧EGR装置54における低圧EGR弁59を開放する一方、スロットルバルブ39及びシャッタバルブ68を閉止し、ステップS19にて、EV走行を開始する。
【0056】
続いて、ステップS20では、電動アシストターボ過給機47を駆動し、ステップS21にて、還元処理タイマのカウントアップを開始してから、ステップS22にて、燃料添加弁61が排気ポート33に噴射した燃料の到達位置を推定する。この場合、エンジンECU(通過時期推定手段)22は、吸気系や排気系の通路容積及び長さ、電動アシストターボ過給機47の駆動力などにより噴射燃料の流速を推定し、燃料が排気浄化装置50を通過する時期を推定している。そのため、ステップS23では、燃料の到達位置(通過時期)が排気浄化装置50にないときには、ステップS24で、電動アシストターボ過給機47を高回転で駆動する一方、燃料の到達位置(通過時期)が排気浄化装置50の近傍であるときには、ステップS25で電動アシストターボ過給機47を低回転で駆動する。
【0057】
DE11がリーン空燃比で運転されているときに、第1触媒51及び第2触媒52は排気ガス中のNOxを吸蔵する。そして、この第1触媒51及び第2触媒52のNOx吸蔵量が所定値に達したとき、DE11を停止した状態で、燃料添加弁61により排気ポート33に所定量の燃料を噴射する。すると、燃料が排気管46を通して第1触媒51及び第2触媒52に供給され、酸化反応により排気ガス中の酸素濃度が低下することで各触媒51,52に吸蔵されたNOxが放出され、放出されたNOxと燃料が反応して還元し、排気ガスが浄化される。
【0058】
この場合、第1触媒51及び第2触媒52から微量のNOx及び燃料が流出するが、この流出したNOx及び燃料は、排気管46の下流側端部がシャッタバルブ68により閉止されているために外部に排出されず、電動アシストターボ過給機47の駆動力により低圧EGR通路58により吸気管37に戻され、吸気系及び排気系を所定時間循環することとなる。このとき、前述したように、燃料添加弁61が噴射した燃料の到達位置が排気浄化装置50にないときには、電動アシストターボ過給機47を高回転で駆動し、排気浄化装置50の近傍であるときには、電動アシストターボ過給機47を低回転で駆動するため、燃料が排気浄化装置50内を移動する空間速度が低下し、NOx還元処理時間を長くして処理効率を向上できる。従って、第1触媒51及び第2触媒52から流出したNOx及び燃料の外部流出を阻止しながら、この第1触媒51及び第2触媒52に吸蔵したNOxが燃料を用いて確実に浄化される。
【0059】
そして、ステップS26では、還元処理タイマのカウント時間が、予め設定された処理時間を経過したかどうかを判定し、還元処理タイマのカウント時間がこの処理時間を経過したら、ステップS27にて、電動アシストターボ過給機47を停止し、ステップS28にて、低圧EGR弁59を閉止する一方、スロットルバルブ39及びシャッタバルブ68を開放し、ステップS29にて、還元処理タイマのカウントをクリアする。なお、ステップS26で説明した処理時間とは、NOxを吸蔵して飽和状態となった第1触媒51及び第2触媒52を燃料により完全に再生できる時間であり、予め実験等により求めておく。
【0060】
このように実施例1のハイブリッド車両における排気浄化装置にあっては、排気管46に排気ガス中のNOxを吸蔵して還元可能な第1触媒51及び第2触媒52からなる排気浄化装置50を設けると共に、各触媒51,52に還元剤としての燃料を供給する燃料添加弁61を設け、DE11を停止したMG12及びMG13によるEV走行時に、燃料添加弁61から排気ポート33に所定量の燃料が噴射されたとき、低圧EGR装置における低圧EGR弁59を開放すると共にシャッタバルブ68を閉止した状態で、電動アシストターボ過給機を駆動することで、第1触媒51及び第2触媒52から流出したNOx及び燃料を低圧EGR通路58を通して吸気管37に戻し、この第1触媒51及び第2触媒52に循環させるようにしている。
【0061】
従って、DE11が停止し、MG12及びMG13のみによるハイブリッド車両の走行時に、燃料添加弁61から所定量の燃料が噴射されると、酸素濃度が低下することで各触媒51,52からNOxが放出され、この放出されたNOxが燃料と反応して還元され、このとき、一部の未浄化NOxや還元剤が各触媒51,52から流出されるが、この流出したNOxや燃料含んだ排気ガスは、電動アシストターボ過給機47により低圧EGR通路58を通して吸気管37に戻され、再び各触媒51,52に戻されることとなる。その結果、各触媒51,52から流出した未浄化NOxや燃料が外部に排出されることはなく、且つ、流出した未浄化NOxがすり抜けた燃料により触媒51,52で再び浄化処理されることとなり、触媒51,52の下流側に未浄化NOxやすり抜けた燃料を処理する補助的な触媒が不要となり、吸蔵したNOx触媒の還元効率を向上して排気浄化効率を向上することができる。
【0062】
また、燃料を噴射した後、低圧EGR弁59を開放すると共にシャッタバルブ68を閉止し、電動アシストターボ過給機を駆動して第1触媒51及び第2触媒52から流出したNOx及び燃料を低圧EGR通路58を通して吸気管37に戻し、再び第1触媒51及び第2触媒52に循環させるとき、エンジンECU22は、噴射された燃料の到達位置を推定し、燃料の到達位置が排気浄化装置50にないときは、電動アシストターボ過給機47を高回転で駆動する一方、燃料の到達位置が排気浄化装置50の近傍であるときには、電動アシストターボ過給機47を低回転で駆動する。
【0063】
従って、燃料が排気浄化装置50を移動する空間速度が低下し、触媒51,52でのNOx還元処理時間が長くなって処理効率を向上することができ、その結果、第1触媒51及び第2触媒52から流出したNOx及び燃料の外部流出を阻止しながら、この第1触媒51及び第2触媒52に吸蔵されたNOxをこの燃料を用いて確実に浄化処理することができる。
【実施例2】
【0064】
図4は、本発明の実施例2に係るハイブリッド車両における排気浄化装置の概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0065】
実施例2のハイブリッド車両における排気浄化装置において、図4に示すように、排気管46には、第1触媒51と第2触媒52とからなる排気浄化装置50が設けられており、第1触媒51は、吸蔵還元型NOx触媒であり、第2触媒52は、パティキュレートフィルタを有する吸蔵還元型NOx触媒である。そして、排気ポート33に燃料(還元剤)を噴射する燃料添加弁61がシリンダヘッドに設けられており、第1触媒51及び第2触媒52のNOx吸蔵量が飽和量となったとき、この燃料添加弁61により燃料を噴射することで、排気ガス中の酸素濃度を低下して吸蔵したNOxを放出し、この放出したNOxを燃料により還元するようにしている。
【0066】
また、実施例2のハイブリッド車両における排気浄化装置では、MG12及びMG13からなるEV走行時に、燃料添加弁61から排気ポート33に所定量の燃料が還元剤として噴射されたとき、第1触媒51及び第2触媒52から流出したNOx及び燃料をこの第1触媒51及び第2触媒52に戻す(循環手段)ようにしている。この場合、本実施例では、循環手段として、排気管46における排気浄化装置50の上流側の排気通路と下流側の排気通路とを連結する循環通路71を設けると共に、排気浄化装置50と排気管46とを遮断すると共にこの循環通路71と連通する切換バルブ72,73と設け、また、この循環通路71に電動ポンプ74を設けている。
【0067】
即ち、排気管46には、排気浄化装置50をバイパスするように循環通路71が設けられており、排気管46における排気浄化装置50の上流側と循環通路71の上流端部に第1切換バルブ72が設けられる一方、排気管46における排気浄化装置50の下流側と循環通路71の下流端部に第2切換バルブ72が設けられている。そして、循環通路71に電動ポンプ74が設けられている。この各切換バルブ72,73及び電動ポンプ74は、エンジンECU22により駆動制御可能であり、通常時、各切換バルブ72,73により排気管46と排気浄化装置50とを開放しており、所定時に、各切換バルブ72,73を作動することで排気管46と排気浄化装置50とを遮断すると共に、排気浄化装置50と循環通路71を連通し、電動ポンプ74を駆動することで、排気ガスを排気浄化装置50及び循環通路71で形成されたループ通路内で循環させることができる。
【0068】
従って、DE11が停止してMG12及びMG13のみによるハイブリッド車両のEV走行時に、燃料添加弁61から所定量の燃料を噴射し、噴射した燃料が排気浄化装置50に到達したことが推定されたら、各切換バルブ72,73により排気管46と排気浄化装置50とを遮断すると共に、排気浄化装置50と循環通路71を連通してループ通路を形成する。すると、燃料が第1触媒51及び第2触媒52に到達し、酸化反応により排気ガス中の酸素濃度が低下することで各触媒51,52に吸蔵されたNOxが放出され、放出されたNOxと燃料が反応して還元し、排気ガスが浄化される。
【0069】
この場合、第1触媒51及び第2触媒52から微量の未浄化のNOx及び燃料が流出するが、この流出したNOx及び燃料は、排気管46における排気浄化装置50の下流側が切換バルブ73により循環通路71に連通されているために外部に排出されることはない。そして、各切換バルブ72,73により排気浄化装置50と循環通路71とのよりループ通路が形成されているため、電動ポンプ74を駆動することで、第1触媒51及び第2触媒52から流出したNOx及び燃料を含んだ排気ガスが循環通路71を通して再び第1触媒51及び第2触媒52にもどされることとなる。そのため、各触媒51,52から流出したNOx及び燃料の外部流出を阻止しながら、第1触媒51及び第2触媒52にて燃料により流出したNOxが確実に浄化される。
【0070】
また、前述した実施例1と同様に、燃料が排気浄化装置50及び循環通路71を循環するとき、この燃料の到達位置が排気浄化装置50にないときには、電動ポンプ74を高回転で駆動し、排気浄化装置50の近傍であるときには、電動ポンプ74を低回転で駆動することで、燃料が排気浄化装置50内を移動する空間速度が低下し、NOx還元処理時間を長くして処理効率を向上できる。従って、第1触媒51及び第2触媒52から流出したNOx及び燃料の外部流出を阻止しながら、この第1触媒51及び第2触媒52に吸蔵したNOxが燃料を用いて確実に浄化される。
【0071】
このように実施例2のハイブリッド車両における排気浄化装置にあっては、排気管46に排気ガス中のNOxを吸蔵して還元可能な第1触媒51及び第2触媒52からなる排気浄化装置50を設けると共に、各触媒51,52に還元剤としての燃料を供給する燃料添加弁61を設け、排気管46における排気浄化装置50の上流側の排気通路と下流側の排気通路とを連結する循環通路71を設けると共に、排気浄化装置50と排気管46とを遮断すると共にこの循環通路71と連通する切換バルブ72,73とを設け、この循環通路71に電動ポンプ74を設けている。
【0072】
従って、DE11が停止し、MG12及びMG13のみによるハイブリッド車両のEV走行時に、燃料添加弁61から所定量の燃料が噴射されて排気浄化装置50に到達すると、各切換バルブ72,73により排気管46と排気浄化装置50とを遮断すると共に、排気浄化装置50と循環通路71を連通してループ通路を形成し、電動ポンプ74を駆動する。すると、燃料が第1触媒51及び第2触媒52に到達し、酸化反応により排気ガス中の酸素濃度が低下することで各触媒51,52に吸蔵されたNOxが放出され、放出されたNOxが燃料と反応して還元され、このとき、一部の未浄化NOxや還元剤が各触媒51,52から流出されるが、この流出したNOxや燃料含んだ排気ガスは、電動ポンプ74により循環通路71を通して再び各触媒51,52に戻されることとなる。その結果、各触媒51,52から流出した未浄化NOxや燃料が外部に排出されることはなく、且つ、流出した未浄化NOxがすり抜けた燃料により触媒51,52で再び浄化処理されることとなり、触媒51,52の下流側に未浄化NOxやすり抜けた燃料を処理する補助的な触媒が不要となり、吸蔵したNOx触媒の還元効率を向上して排気浄化効率を向上することができる。
【0073】
なお、上述した各実施例では、還元剤供給手段としての燃料添加弁61をシリンダヘッドに設け、燃料を排気ポート33に噴射するようにしたが、装着位置はここに限らず、排気浄化装置50の上流側の排気系であればよい。前述した実施例2の場合、排気管46における排気浄化装置50の上流側と循環通路71の上流端部に、第1切換バルブ72とほぼ同位置に設けることで、第1触媒51及び第2触媒52の再生時に、各切換バルブ71,72を切り換えてから還元剤としての燃料を噴射することで、噴射された燃料の到達位置を推定する必要がなくなり、浄化効率を更に向上することができる。
【0074】
また、各実施例では、排気浄化装置50を、吸蔵還元型NOx触媒としての第1触媒51と、パティキュレートフィルタを有する吸蔵還元型NOx触媒としての第2触媒52とで構成したが、第1触媒は酸化触媒であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように、本発明に係るハイブリッド車両における排気浄化装置は、吸蔵還元型NOx触媒から流出したNOx及び還元剤を再び吸蔵還元型NOx触媒に循環して処理するものであり、内燃機関と電気モータとを動力源として走行可能なハイブリッド車両に適用して有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例1に係るハイブリッド車両における排気浄化装置の概略構成図である。
【図2】実施例1のハイブリッド車両における排気浄化装置によるNOx還元処理を表すフローチャートである。
【図3】実施例1の排気浄化装置が適用されたハイブリッド車両を表す概略構成図である。
【図4】本発明の実施例2に係るハイブリッド車両における排気浄化装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0077】
11 ディーゼルエンジン、DE(内燃機関)
12,13 モータジェネレータ、MG(電気モータ)
14 動力分配機構(プラネタリギヤユニット)
19 バッテリ
22 エンジンECU(通過時期推定手段)
27 モータECU
28 メインECU
29 バッテリECU
37 吸気管(吸気通路)
39 スロットルバルブ
46 排気管(排気通路)
47 電動アシストターボ過給機(循環手段)
50 排気浄化装置
51 第1触媒(吸蔵還元型NOx触媒)
52 第2触媒(吸蔵還元型NOx触媒)
54 低圧再循環(EGR)装置
58 低圧再循環(EGR)通路(循環手段)
59 低圧再循環(EGR)弁(循環手段)
61 燃料添加弁(還元剤供給手段)
68 シャッタバルブ(循環手段)
71 循環通路(循環手段)
72,73 切換バルブ(循環手段)
74 電動ポンプ(循環手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と電気モータとを動力源として走行可能なハイブリッド車両において、前記内燃機関の排気通路に設けられて排気ガス中のNOxを吸蔵して還元可能な吸蔵還元型NOx触媒と、前記吸蔵還元型NOx触媒に還元剤を供給する還元剤供給手段と、前記電気モータによる車両走行時にて前記還元剤供給手段から前記吸蔵還元型NOx触媒に還元剤が供給されたときに前記吸蔵還元型NOx触媒から流出したNOx及び前記吸蔵還元型NOx触媒をすり抜けた還元剤を前記吸蔵還元型NOx触媒に戻す循環手段とを具えたことを特徴とするハイブリッド車両における排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両における排気浄化装置において、前記循環手段は、吸気通路及び前記排気通路に設けられた電動アシストターボ過給機と、前記吸蔵還元型NOx触媒より下流側の前記排気通路と前記電動アシストターボ過給機より上流側の前記吸気通路とを連結する排気ガス再循環通路と、該排気ガス再循環通路に設けられた排気ガス再循環バルブと、前記排気通路における前記吸蔵還元型NOx触媒の下流側に設けられたシャッタバルブとを有し、前記排気ガス再循環バルブにより前記排気ガス再循環通路を開放すると共に、前記シャッタバルブにより前記排気通路を閉止した状態で、前記電動アシストターボ過給機を駆動することで、NOx及び還元剤を前記吸蔵還元型NOx触媒に戻すことを特徴とするハイブリッド車両における排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1に記載のハイブリッド車両における排気浄化装置において、前記循環手段は、前記吸蔵還元型NOx触媒の上流側の排気通路と下流側の排気通路とを連結する循環通路と、前記循環通路に設けられた電動ポンプと、前記吸蔵還元型NOx触媒の上流側の排気通路及び下流側の排気通路を遮断すると共に前記吸蔵還元型NOx触媒と前記循環通路とを連通する切換バルブとを有し、前記切換バルブにより前記排気通路を遮断すると共に前記循環通路を連通した状態で前記電動ポンプを駆動することで、NOx及び還元剤を前記吸蔵還元型NOx触媒に戻すことを特徴とするハイブリッド車両における排気浄化装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のハイブリッド車両における排気浄化装置において、前記電気モータによる車両走行時にて前記還元剤供給手段から前記吸蔵還元型NOx触媒に還元剤が供給されたとき、この還元剤が前記吸蔵還元型NOx触媒を通過する時期を推定する通過時期推定手段を設け、前記通過時期推定手段が推定した還元剤の通過時期に、前記電動アシストターボ過給機または前記電動ポンプを予め設定した所定の低回転数で駆動する一方、前記通過時期以外の時期に、前記電動アシストターボ過給機または前記電動ポンプを予め設定した所定の高回転数で駆動することを特徴とするハイブリッド車両における排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−200362(P2006−200362A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9669(P2005−9669)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】