説明

ハフニウムベースの高誘電率誘電体の原子層堆積

ハフニウムベースの誘電体膜を堆積する方法が提供される。本方法は、オゾンとハフニウム前駆体を含む1つ又はそれ以上の反応物質とを用いた原子層堆積段階を含む。半導体デバイスもまた提供される。該デバイスは、基板と、基板上に形成されたハフニウムベースの誘電体層と、基板及びハフニウムベースの誘電体層間に形成された界面層とを含み、該界面層は二酸化ケイ素を含み且つ結晶構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、その開示事項が引用により全て本明細書に組み込まれる、2003年9月30日に出願された米国特許仮出願番号第60/507,851号に対する恩恵及び優先権を主張する。
【0002】
本出願は、その全ての開示事項が引用により全て本明細書に組み込まれる、2002年7月19日に出願された米国特許仮出願番号第60/396,723号及び2002年7月19日に出願された米国特許仮出願番号第60/396,745号に対する恩恵及び優先権を主張する「Atomic Layer Deposition of High−K Dielectric Films(Attorney Docket No.FP−71639−PC/MSS)」の名称の2003年7月16日に出願されたPCT特許出願シリアル番号第PCT/US03/22235号;その全ての開示事項が引用により全て本明細書に組み込まれる、2002年6月23日に出願された米国特許仮出願番号第60/391,011号に対する恩恵及び優先権を主張する「Method and System for Atomic Layer Removal and Atomic Layer Exchange(Attorney Docket No.FP−71606−PC/MSS)」の名称の2003年6月23日に出願されたPCT特許出願シリアル番号第PCT/US03/19982号;及び、その全ての開示事項が引用により全て本明細書に組み込まれる、2002年6月23日に出願された米国特許仮出願番号第60/391,012号及び2002年7月19日に出願された米国特許仮出願番号第60/396,743号の恩恵を主張する、「Method for Energy−Assisted Atomic Layer Deposition and Removal(Attorney Docket No.FP−71606−1−PC/MSS)」の名称の2003年6月23日に出願されたPCT/US03/19984号の関連出願である。
【0003】
本発明は、全体的には半導体分野に関し、より具体的には半導体デバイス及び集積回路で使用される高誘電率誘電体膜を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
次世代の半導体デバイスは、金属酸化膜半導体(MOS)ゲート及びキャパシタ誘電体用の薄い誘電体膜を必要とする。二酸化ケイ素(SiO2)は、その完全性が高いこと、欠陥密度が低いこと、及びバンドギャップが高いことに起因して、半導体デバイスでの誘電体として最も一般的に用いられている。半導体デバイスの特徴サイズは、常に縮小されるのに伴い、集積回路内のSiO2層の厚さも同様に減少している。しかしながらSiO2は比較的低誘電率(k=3.9)であるので、このようなスケーリングにより直ちにSiO2厚さが10オングストローム(Å)オーダーとなり、この場合、量子力学的トンネル効果による電荷リークが顕著になり、低ゲート電圧においてさえSiO2層の破壊が生じる可能性がある。
【0005】
デバイスの特徴サイズが更に小さくなるにつれて、SiO2に代わりより高い誘電率を有する材料、すなわち誘電率が4を超える材料である「high−k」誘電体が開発されている。ゲート誘電体として、例えば、Ta25、TiO2、Y23、ZrO2、及び強誘電体BST(バリウム ストロンチウム チタン酸塩)などの金属酸化物が提案され開発されている。これらの高誘電率誘電体材料の多くは、十分に高い誘電率と堆積時の十分な完全性を有する。しかしながら、高誘電率誘電体材料の中には、シリコン基板と接触した状態では化学的安定性が無く、或いは堆積後のプロセスに特有の温度の熱安定性に欠けるものもある。
【0006】
高誘電率誘電体材料は、電流リークを最小限に抑え又は回避するために、高バンドギャップ及び障壁高さを有するのが望ましい。バンドギャップ(Eg)は、固体材料内の最大価電子帯と最小伝導帯との間のエネルギーギャップである。障壁高さは、高誘電率誘電体が存在することによる、金属と半導体との間の電位(電圧)障壁と呼ばれる。残念ながら、殆どの高誘電率誘電体材料は、SiO2よりも低いバンドギャップ有し、これらのバンドギャップは誘電率に反比例する。
【0007】
高誘電率誘電体材料の集積化に対して、半導体デバイス性能における電荷捕捉及び電子移動度の低下が重大な課題になっている。ゲートチャネルの電子は、デバイスに高動作速度、高性能特性、及び低消費電力を与えるために、高移動度又は低電気抵抗を有するのが望ましい。従来のH2Oベースの高誘電率誘電体膜は、捕捉電荷の主要発生源又は部位であるヒドロキシル(OH−)不純物を含有し、高誘電率膜の電子移動度の低下を生じる結果となる。
従って、従来技術の誘電体材料のこれら及び他の問題を解決するために、高誘電率誘電体材料の更なる開発が必要とされている。
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,579,372号
【特許文献2】米国特許第6,573,184号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ハフニウムベースの誘電体膜の堆積方法を提供する。本方法は、オゾンとハフニウム前駆体を含む1つ又はそれ以上の反応物質とを用いる原子層堆積段階を含む。ハフニウム前駆体は、ハフニウムt−ブトキシド(Hf(OtBu)4)、テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム(TDMAHf)、テトラキス(ジエチルアミノ)ハフニウム(TDEAHf)、Hf(MMP)4、及びテトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム(TEMAHf)とすることができる。形成されたハフニウムベースの誘電体膜は、酸化ハフニウム又はハフニウムシリケートとすることができる。1つ又はそれ以上の反応物質及びオゾンを、シャワーヘッド注入器によってALDチャンバ内に注入することができる。原子層堆積は、好ましくは400℃よりも低い温度下で得られる。
【0010】
幾つかの実施形態では、1つ又はそれ以上の反応物質は、ハフニウム前駆体及びシリコン前駆体を含み、ハフニウム前駆体及びシリコン前駆体は、予混合されて原子層堆積中にALDチャンバ内に同時注入することができる。或いは、ハフニウム前駆体及びシリコン前駆体は、原子層堆積中にALDチャンバ内に単独で且つ別々に注入することができる。
【0011】
本発明は更に、半導体デバイスを提供する。半導体デバイスは、基板と、基板上に形成されたハフニウムベースの誘電体層と、基板及びハフニウムベースの誘電体層間に形成された界面層とを含む。界面層は、二酸化ケイ素を含み且つ結晶構造を有する。ハフニウムベースの誘電体は、酸化ハフニウム又はハフニウムシリケートとすることができ、且つ非結晶構造を有することができる。界面層の厚さは、約2〜5オングストロームの範囲とすることができる。デバイスは更に、ハフニウムベースの誘電体層上に電極層を含むことができ、且つMOSEFT及びMOSキャパシタ内で用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のこれら及び種々の他の特徴並びに利点は、添付図面及び添付の請求項と共に以下の詳細な説明を読むと明らかになるであろう。
本発明は、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSEFT)及びMOSキャパシタなどの、半導体デバイスの製作に有用な高誘電率誘電体膜の形成方法を提供する。一般に、本発明の方法は、オゾン及びハフニウム前駆体を含む1つ又はそれ以上の反応物質を用いた原子層堆積(ALD)の段階を含む。ハフニウム前駆体は、Hf(OtBu)4、TDMAHf、TDEAHf、Hf(MMP)4、及びTEMAHfとすることができる。本発明の方法により形成されたハフニウムベースの誘電体膜は、酸化ハフニウム及びハフニウムシリケートとすることができる。幾つかの実施形態では、1つ又はそれ以上の反応物質は、ハフニウム前駆体及びシリコン前駆体を含むことができる。ハフニウム前駆体及びシリコン前駆体は、予混合されてALDチャンバ内に同時注入することができる。或いは、ハフニウム前駆体及びシリコン前駆体は、原子層堆積のプロセス中にALDチャンバ内に別個に及び交互に注入することができる。
【0013】
本発明はまた、基板、該基板上に形成されたハフニウムベースの誘電体層、及び基板とハフニウムベースの誘電体層との間に形成された界面層を含む半導体デバイスを提供する。界面層は、2〜5オングストロームの範囲の厚さがあり、二酸化ケイ素を含む。界面層は、化学的安定性が高く熱安定性を備えた結晶構造を有する。ハフニウムベースの誘電体層は、酸化ハフニウム又はハフニウムシリケートを含むことができ、特定の用途に応じた厚さを有する。半導体デバイスは更に、ゲート電極層のような電極層を含むことができる。
【0014】
上述のように、半導体デバイスの形状サイズを縮小する取組みは、デバイスキャパシタンスを増大させるために誘電体層の厚さを低減する必要があり、これは、電流リーク又は誘電体層破壊を最小限に抑え又は回避するために誘電率の高い誘電体材料を必要とする。通常、MOSデバイスでは、ゲート電極と下にあるチャネル領域との間のキャパシタンスは、誘電体層の誘電率に比例し、ゲート誘電体層の厚さが減少するに伴い増加する。二酸化ケイ素は、ゲート誘電体材料として最も一般的に用いられているので、高誘電率誘電体材料及び二酸化ケイ素の性能比較において高誘電率誘電体層の等価酸化膜厚(EOT)が用いられる。EOTは、厚い高誘電率誘電体材料で得られたのと同じゲートキャパシタンスを得るのに必要なSiO2の厚さを意味する。例えば、1ナノメートルのEOTは、誘電率39(SiO2の誘電率は3.9)を有する10ナノメートルの厚さの誘電体材料で得ることができる。半導体国際技術ロードマップ(ITRS)によれば、低出力半導体デバイスは、65nm技術ノード用に15オングストローム又はそれ以下のEOTを有する誘電体材料を必要とすることになるが、高出力性能デバイスは、10オングストローム又はそれ以下のEOTを必要とする。ゲートリーク電流要件が10-7A/cm2よりも低い低消費電力用途では、シリコンと接触した状態で熱的に安定し化学的に安定した高誘電率誘電体膜が必要とされる。
【0015】
有利には、本発明の方法は、酸化ハフニウム又はハフニウムシリケートを含む高誘電率誘電体材料を提供する。酸化ハフニウムは、約25の誘電率を有する。ハフニウムシリケートは、膜内のシリコンの含有量に応じて約10から約25の範囲の誘電率を有する。
【0016】
有利には、酸化ハフニウム及びハフニウムシリケート誘電体層は、原子層堆積(ALD)によって形成することができる。従来の化学蒸着(CVD)技術は、動力学的に制御された成長反応又は拡散限界反応を生じやすく、薄層堆積を制御するのは困難である。CVDプロセスでは、マイクロローディング効果なしにウエーハ表面領域全体にわたり1〜2オングストローム内の厚さ変動を制御することは極めて困難である。この効果は、大きなウエーハサイズ堆積では更に顕著である。更に、化学蒸着を用いることによってナノメートル領域内に高収率で再現可能デバイス及び回路性能を達成することは難しい。同様にプラズマ成長CVDは、ナノスケール薄膜上の電荷の蓄積は通常極低電圧においてさえ誘電体破壊電圧よりも大きいので、誘電体膜に対して電荷損傷を起こす恐れがある。
【0017】
本発明によるハフニウムベースの誘電体膜の形成は、低温、好ましくは約400℃よりも低く、更に好ましくは300℃よりも低い温度のハフニウム前駆体及びオゾンを含む1つ又はそれ以上の反応物質及びオゾンを用いた原子層堆積によって実施される。有利には、ALDプロセスは、低温化に向かう当業界の傾向に適合する比較的低い温度で行うことができる。ALDは、高い前駆体利用効率を有し、共形の薄膜層を生成して原子スケールで膜厚を制御することができ、更に、「ナノエンジニア」複合薄膜に用いることができる。ALDプロセス堆積サイクルでは、第1の反応物質の単層は、基板表面上に物理吸着又は化学吸着される。過剰の第1の反応物質は、好ましくは不活性パージガスの助けにより反応チャンバから排出される。次に、第2の反応物質は、反応チャンバ内に導入されて第1の反応物質と反応し、自己制御表面反応によって所望の薄膜の単層を形成する。最初に吸着された第1の反応物質が完全に第2の反応物質と反応すると自己制御式反応が停止する。過剰の第2の反応物質は、好ましくは不活性パージガスの助けにより排出される。所望の膜厚は、必要に応じて堆積サイクルを繰り返すことによって得られる。膜厚は、単に堆積サイクルの数をカウントすることによって原子層の精度に制御することができる。
【0018】
本発明の幾つかの実施形態では、反応ガスは、好ましくはガスを均等に分布させるためにシャワーヘッドと呼ばれるものによって反応チャンバ内に導入される。種々の反応チャンバを用いることができ、これらは当技術分野で公知である。シャワーヘッド型反応器は、オゾンを用いるときの前駆体の導入において好ましい。本発明を実施するための適切なチャンバ及びシステムの2つの実施例が、米国特許第6,579,372号及び第6,573,184号に記載されている。
【0019】
幾つかの実施形態では、ハフニウム前駆体及びオゾンは、交互にALDチャンバ内に導入されて、原子層堆積によって酸化ハフニウム膜を形成する。幾つかの実施形態では、ハフニウム前駆体及びシリコン前駆体並びにオゾンは、交互にALDチャンバ内に導入されて、原子層堆積によってハフニウムシリケート膜を形成する。ハフニウム前駆体及びシリコン前駆体は、マニホルドで予混合され、シャワーヘッドを介してALDチャンバ内に同時注入され、均質なハフニウムシリケート膜を形成することができる。或いは、ハフニウム前駆体及びシリコン前駆体を交互にALDチャンバ内に導入し、積層化酸化ケイ素/酸化ハフニウム膜を形成することができる。サイクルの繰り返しにより、所望の厚さの酸化ハフニウム又はハフニウムシリケート膜を提供する。
【0020】
多くの種類の前駆体を本発明の方法で用いることができ、1つには誘電体膜の組成物に基づいて選択されることになる。前駆体は、固体又は液体の形態で用いることができる。しかしながら、固体前駆体を使用するときには、十分な蒸気圧を生成し且つ凝縮を防ぐために、使用中は常に前駆体を過熱したまま保持する必要がある。使用中の固体前駆体の加熱損失或いはガス供給システム内のコールドスポットが、蒸気を凝縮させて反応器を閉塞させる可能性がある。固体前駆体はまた、これらが様々な表面領域で消費されるので、検出するのが困難となる場合がある。液体有機金属前駆体を用いると、膜内に取り込まれる炭素含有量を低減するよう注意を要する。膜内に取り込まれる炭素は、この炭素が電流リークを引き起こし膜の性能を低下させる可能性があるので望ましくない。本発明で用いられた液体ハフニウム前駆体の例には、限定ではないが、ハフニウムt−ブトキシド(Hf(OtBu)4)、テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム(TDMAHf)、テトラキス(ジエチルアミノ)ハフニウム(TDEAHf)、Hf(MMP)4、及びテトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム(TEMAHf)が挙げられる。図1A及び図1Bは、様々なハフニウム前駆体を用いて得られた酸化ハフニウム膜の原子組成を示す。AES分析は、TEMAHf及びオゾンによって形成された酸化ハフニウム膜内の炭素含有量が最も少ないことを示している。
【0021】
例示的な実施例として、酸化ハフニウム層が原子層堆積によって低温で形成された。250℃の水温及び1Torrのチャンバ圧で、テトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム(TEMAHf)をAr流量200sccmで3.5秒間プロセスチャンバ内に送出し、続いてO3(180g/m3,200sccm)を1秒間パージ及び2秒間パルス化して送り、更に3秒間パージを行った。この堆積サイクルで、直径200ミリメートルのシリコン基板上にHfO2膜を1.5オングストローム/サイクルの堆積速度で提供した。
【0022】
有利には、オゾンは本発明の原子層堆積で酸素源として用いられる。これは、酸素源としてH2Oを用いており、結果としてヒドロキシルイオン(OH−)が、形成された誘電体膜内に不純物として不可避的に取り込まれ、固定電荷及び捕捉電荷の主要な発生源又は部位になる従来技術の方法とは対照的である。MOSFET性能での電荷捕捉は、高誘電率誘電体材料の集積化に対する重大な課題である。固定電荷は、誘電体膜内部の不動電荷部位である。これらの電荷は、電界が誘電体膜全体に印加されるときに移動しない。固定電荷は、界面又はその近傍、或いは誘電体膜の大部分に位置する可能性がある。界面捕捉電荷は、基板界面に位置し、エネルギーバンドギャップ内でエネルギー状態を有する。界面捕捉電荷は、界面捕捉密度Ditによって定量化される。1010原子/cm2(105表面原子当たり1捕捉電荷に相当)又はそれ以下の界面捕捉電荷を有するのが望ましい。
【0023】
例えば、水(H2O)は従来、アルミナ(Al23)などの高誘電率誘電体膜を作る際に酸素源として用いられる。疎水性Si表面上の水性Al23膜の成長は、Al23が堆積され始める前に最初にインキュベーションを経て、又は相を開始する必要があり、Al23膜が成長し始める前までに約15サイクルのALDが必要とされる。H2OベースAl23膜のインキュベーション中の化学反応は、一般的に以下の通りである。
Si+Al(CH33+H2O → Si+Al+O+OH-+CH4 (1)
→ Si(OH)+Al(OH)+AlO+...(2)
10オングストローム又はそれ以下のこのようなAl23膜のALD堆積物は、実質的なAl23成長が始まる前にインキュベーション相堆積物がこの厚さまで成長するので、不可能である。更に、40オングストロームよりも薄いAl23膜は漏電の傾向がある。
【0024】
インキュベーション層が完成すると、Al23成長の化学反応は以下のように進む。
2Al(CH33+3H2O → Al23+3CH4 (3)
例えば、約300℃前後の温度では、単層成長は、前駆体としてトリメチルアルミニウム(TMA又はAl(CH33)及び水蒸気で進行する。各ALDサイクルでは、約0.85Åの誘電体材料が付加される。しかしながら、本質的に前駆体としてTMA及び水を伴うALDプロセス内では、幾分かのAl(OH)3を含有する誘電体膜が残る以下の反応も生じる。
Al(CH33+3H2O → Al(OH)3+3CH4 (4)
Al(OH)3は、誘電体膜の特性を弱める傾向にある。ヒドロキシルイオン(OH−)は、誘電体膜の電気的性能を低下させる固定電荷及び捕捉電荷の主要な発生源である。
【0025】
本発明の方法は、オゾン並びにハフニウム及びシリコン前駆体を使用し、インキュベーションの兆候を示さない。誘電体膜は、核生成なしに基板上で直接成長する。更に、本発明による堆積は、酸化ハフニウム膜の水性原子層堆積で観察されるようなアイランド型成長ではなく、層毎の成長を生じる。アイランド型成長は望ましくなく、特定の部位又はアイランドで膜の核が最初に形成され、次いで膜がアイランドから横方向及び上方に成長することにより生じる。幾つかの実施形態では、シリコン基板がフッ化水素(HF)酸で処理され、自然酸化物を除去して水素で終端されたクリーンなシリコン表面(Si−H結合)を残す。ベアシリコン表面が空気中に曝露されると形成される自然酸化物は、リーク及び他の電気的特性の点で低品質の絶縁体であり、従って除去されるのが好ましい。図2の高解像度透過型電子顕微鏡画像は、本発明に従ってハフニウムシリケート膜が層毎に成長することを示している。図3に示した非結晶ハフニウムシリケート膜は、どのような粒界関連効果をも示さない。粒界は、ドーパント、酸素拡散経路及びリーク経路として機能する。本発明により作られた誘電体膜は、優れた熱安定性を有し、リーク特性が改善される。
【0026】
二酸化ケイ素膜は、印加された電界下で良好な電子移動度を有する。SiO2膜の電子移動度の90%以上の高誘電率誘電体膜の電子移動度を改良する方法は、高誘電率ゲート技術を実施する際の課題となる。高電子移動度又は小さな電気抵抗を有する誘電体膜は、高動作速度、高性能特性、及び低消費電力の半導体デバイスを提供することができる。幾つかの実施形態では、歪シリコンを用いて、電子移動度を向上させることができる。引張り歪みのある薄い結晶シリコン層が、緩和傾斜バッファ層上で成長し、該バッファ層はシリコン基板のような結晶基板上で形成される。Si−Ge層のようなバッファ層は、純粋シリコンよりも大きな格子定数又は格子面間隔を有する原子から構成される。結果としてバッファ層上に堆積されるシリコン原子は、バッファ層の下にある格子と整合するように「伸張」される。このような歪シリコン層内の電子は、小さな原子内間隔を有する従来の緩和シリコン層よりも大きな移動度を有する。
【0027】
幾つかの実施形態では、界面酸化ケイ素をシリコン基板とゲート誘電体層との間に形成して、SiO2の良好な電子移動度を利用することができる。界面層の厚さが増大すると、膜の電子移動度を向上させることができる。他方、デバイス性能を高めるために、EOTを低減させるため界面層の厚さを最小化することが望ましい。低EOTの達成と高電子移動度の維持との間の妥協ポイントがある。本発明は、薄い結晶界面酸化ケイ素層を作る方法と、界面層の厚みを制御する方法とを提供する。
【0028】
本発明の範囲を限定するものではない例示的な実施例では、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)のようなシリコン前駆体、テトラキスエチルメチルアミノハフニウム(TEMAHf)のようなハフニウム前駆体、及び180g/m3の濃度のオゾンは、0.5から6Torrまで、好ましくは約1Torrの圧力に維持されたALDチャンバ内に別個に連続してパルス化して送られた。TMDSO、TEMAHf及びオゾンの流量は、それぞれ200sccmであった。TMDSO前駆体は、0.2秒間ALDチャンバ内にパルス化して送られ、続いて2秒間不活性ガスでパージし、2秒間オゾンをパルス化して送り、2秒間不活性ガスをパージした。次いで、TEMAHf前駆体を0.4秒間ALDチャンバ内にパルス化して送り、続いて2秒間不活性ガスをパージし、2秒間オゾンをパルス化して送り、2秒間不活性ガスでパージした。積層SiO2/HfO2膜をシリコン基板上に形成した。薄い結晶界面SiO2層が、図2の透過型電子顕微鏡画像に示されるように、シリコン基板と積層膜との間に形成された。基板温度は、結晶界面層の厚さに影響を与える可能性がある。基板温度が低いほど、より薄い界面層を生じる結果となる可能性がある。約250℃の温度では、5Åよりも小さな界面層が形成された。HF−last処理のようなウエーハ前処理もまた、界面厚さに影響を与える場合がある。図3は、本発明に従って作られたSiO2/HfO2膜の様々な成分の原子濃度を示す。
【0029】
本発明により形成された結晶界面層は、従来の界面二酸化ケイ素層とは明確に異なる。従来の界面酸化層は、シリコン基板から酸化ハフニウム層のような高誘電率誘電体内へのシリコンの上方拡散によって形成される。従来の界面層は、様々な誘電率(k−遷移)を有する遷移界面であり、これは望ましいものではなく、抑制する必要がある。本発明の幾つかの実施形態によれば、薄い結晶界面酸化ケイ素が形成される。
【0030】
本発明による誘電体膜を作る方法は、MOSFET及びMOSキャパシタなどの半導体デバイスの製作に用いることができる。例えば、MOSFETは、適切な半導体基板、本発明による原子層堆積によって形成された基板上にある誘電体層、誘電体層上に形成された電極層、及び基板と誘電体層との間に形成された結晶界面層を含むことができる。
【0031】
本発明は、上記で詳述された好ましい実施形態及び実施例を参照して開示されたが、当業者には変更及びその組合せが容易に想起され、この変更及び組合せは本発明の範囲及び添付の請求項の範囲内にあることが企図されるので、これらの実施例は限定を意味するものではなく例証であることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1A】本発明の1つの実施形態によるTEMAHf及びO3から得られたHfO2膜のオージェ電子分光法(AES)分析のグラフを示す。
【図1B】本発明の1つの実施形態によるTEMAHf及びO3から得られた、HfO2膜のオージェ電子分光法(AES)分析のグラフを示す。
【図2】本発明の1つの実施形態により作られた65Å厚のHf−Si−O膜の断面の高解像度透過型電子顕微鏡(HRTEM)画像である。
【図3】本発明の1つの実施形態により作られたSiO2/HfO2膜の様々な成分の原子濃度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンとハフニウム前駆体を含む1つ又はそれ以上の反応物質とを用いた原子層堆積段階を含むハフニウムベースの誘電体膜を堆積する方法。
【請求項2】
前記ハフニウム前駆体が、Hf(OtBu)4、TDMAHf、TDEAHf、Hf(MMP)4、及びTEMAHfを含み、前記ハフニウムベースの誘電体膜が酸化ハフニウムを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハフニウム前駆体がTEMAHfである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記原子層堆積が400℃よりも低い温度下で得られる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ又はそれ以上の反応物質が更にシリコン前駆体を含み、前記ハフニウムベースの誘電体膜が、基板上にハフニウムシリケート層と、該ハフニウムシリケート層及び前記基板の間にある界面酸化ケイ素層とを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記シリコン前駆体及び前記ハフニウム前駆体が混合されて、原子層堆積中にALDチャンバ内に同時注入される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記シリコン前駆体及び前記ハフニウム前駆体は、原子層堆積中にALDチャンバ内に交互に及び単独で注入されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ又はそれ以上の反応物質及びオゾンは、シャワーヘッド注入器によってALDチャンバ内に注入される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
基板と、
前記基板上に形成されたハフニウムベースの誘電体層と、
前記基板及び前記ハフニウムベースの誘電体層の間に形成された界面層と、
を含み、
前記界面層が二酸化ケイ素を含み、且つ結晶構造を有することを特徴とする半導体デバイス。
【請求項10】
前記ハフニウムベースの誘電体が非結晶性であることを特徴とする請求項9に記載の半導体デバイス。
【請求項11】
前記ハフニウムベースの誘電体が、酸化ハフニウムを含むことを特徴とする請求項9に記載の半導体デバイス。
【請求項12】
前記ハフニウムベースの誘電体が、ハフニウムシリケートを含むことを特徴とする請求項9に記載の半導体デバイス。
【請求項13】
前記界面層の厚さが、約2〜約5オングストロームの範囲にあることを特徴とする請求項9に記載の半導体デバイス。
【請求項14】
前記ハフニウムベースの誘電体層上に電極層を更に含むことを特徴とする請求項9に記載の半導体デバイス。
【請求項15】
前記電極層が、ゲート電極であることを特徴とする請求項14に記載の半導体デバイス。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−519225(P2007−519225A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534141(P2006−534141)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/032351
【国際公開番号】WO2005/034196
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(504069808)アヴィザ テクノロジー インコーポレイテッド (22)
【Fターム(参考)】