説明

バッテリー支持部材

【課題】十分な剛性を有するバッテリー支持部材を提供することを目的とする。
【解決手段】電動車両1の床板の下方にあるフレーム3には、トレイ状のバッテリー支持部材4が取り付けられている。バッテリー支持部材4は、互いに所定間隔を有して対向する一対の側壁42と、この側壁42の下端を互いに連結する底面43とを備えている。一対の側壁42は、下方に行くにつれて互いに接近するように傾斜しており、底面43はその側端部に比べ、幅方向の中央部が高くなるように、山形に形成されている。これにより、バッテリー支持部材4の長さ方向に対して垂直な断面は、略W字状を呈している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリー支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両のフレームの下方に取り付けられた、バッテリーケースに関する従来技術があった(例えば、特許文献1参照)。これは、収納される複数のバッテリー形状に合わせて、箱型に形成されたものであった。
【特許文献1】特開2000−100481公報(第3−5頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
車両用のバッテリーは、単体でもかなりの重量を有しており、それを複数個搭載する場合、その総重量はかなりのものになり、これがバッテリーケースの撓み、変形等を招きやすかった。それに加えて、車両走行中の振動の発生もあり、これらの抑制の点において、バッテリーケースには十分な強度、剛性が要求される。特に、近年、車両の小型軽量化のために、バッテリーケースの薄型化が進んでおり、益々、その高剛性化の要求が高まっている。本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、十分な剛性を有するバッテリー支持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、車両のフロア下のフレームに取り付けられ、バッテリーを下方から支持するバッテリー支持部材において、長さ方向に延びるとともに、互いに所定間隔を有して対向する一対の側壁と、該側壁の下端を互いに連結する底面とを備え、前記底面はその側端部に比べ、幅方向の中央部が高くなるように形成されることにより、その断面が略W字状を呈している。
【0005】
これにより、断面が略W字状を呈しているため、十分な剛性を備えたバッテリー支持部材にすることができる。尚、断面が略W字状をしているものには、対向する一対の側壁が直立したものも含んでいる。
【0006】
本発明の実施態様として、次の構成が好ましい。
(1)一対の側壁は、下方に行くにつれて互いに接近するように傾斜しているため、単純な箱形のものに比べて成形性も良好で、バッテリー支持部材をプレス成形等によっても製造できる。
(2)長さ方向の両端部には、側壁および底面と接続して、その端部を閉塞する一対の囲繞壁が形成されたため、支持しているバッテリーの外気からの閉塞性が向上し、バッテリーの性能が安定する。
(3)バッテリーは、側壁と底面によって支えられて、互いに対向するように長さ方向に2列に配置されるとともに、底面の形状に倣って、各列のバッテリーは互いに対向する側が斜め上方を向くことにより、双方の列のバッテリー間において所定の空間が形成されており、各列のバッテリーは、他列に対する対向面に端子が配置されているため、上方から2列のバッテリーの間に容易に手を入れることができ、端子へのケーブルの脱着等の作業性を向上させることができる。
(4)底面の表面には、長さ方向に隣り合ったバッテリー間を区切るように、幅方向に延びたリブが形成されているため、バッテリー支持部材の剛性を更に向上させることができ、車両の衝突等に対しても、バッテリーを安全に支持することができる。
(5)合成樹脂材料による板材を、熱プレス成形することにより形成するため、絞り性がよく、その成形性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0007】
十分な剛性を有しているため、バッテリーの搭載による撓み、変形を低減し、車両走行中の振動を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1乃至図4によって説明する。尚、図2において、左下が電動車両1の前方に該当する。図1に示した電動車両1のバッテリー収納部2は、電動車両1の図示しない床板の下に配置されている。バッテリー収納部2を形成するフレーム3は、従来のものと同様に鋼材によって形成されており、互いに対向して、車両1の前後方向に延びる一対のサイドメンバ31と、これらを互いに連結する4本のクロスメンバ32〜35が形成されている(図2示)。従前のフレームであれば、前輪取付部のクロスメンバ33と後輪取付部のクロスメンバ34との間にも、更にクロスメンバが形成されていたが、本実施形態においては、後述するバッテリー支持部材4によって所定の剛性が得られるため、それらは設けられていない。
【0009】
バッテリー支持部材4は、ABS樹脂あるいはフェノール樹脂による板材、もしくはこれらの合成樹脂材料にケナフ等の植物繊維を含んだ板材を、熱プレス成形することによりトレイ状に一体に形成されている。また、絞り成形が可能であれば、金属製の板材から形成されてもよい。バッテリー支持部材4には、その長さ方向に延びるとともに、互いに所定間隔を有して対向する一対の側壁42と、この側壁42の下端を互いに連結する底面43とが備えられている。一対の側壁42は、下方に行くにつれて互いに接近するように傾斜しており、底面43はその側端部に比べ、幅方向の中央部が高くなるように、山形に形成されている。これにより、バッテリー支持部材4の長さ方向に対して垂直な断面は、略W字状を呈している(図4示)。
【0010】
また、バッテリー支持部材4の長さ方向の両端部には、側壁42および底面43と接続して、その両端部を閉塞する一対の囲繞壁44が形成され、側壁42および底面43とともに、窪み状の格納部41が形成されている(図4示)。また、各々の側壁42および囲繞壁44の上端部には、幅方向外方に突出したフランジ45が形成されている。更に、底面43の表面(上面)には、幅方向に延びた複数のリブ46が形成され、格納部41に収納されたバッテリー5のうち、バッテリー支持部材4の長さ方向に隣り合ったバッテリー5間を区切っている。バッテリー支持部材4は、フランジ45をフレーム3のサイドメンバ31上に配置された後、ボルトまたはリベット等(図示せず)にて、フレーム3に取り付けられている。
【0011】
複数のバッテリー5は、電動車両1の駆動モータ(図示せず)用の電源であり、バッテリー支持部材4の格納部41内に収納され、下方から支持されている。バッテリー5は、側壁42と底面43によって支えられて、互いに対向するように、バッテリー支持部材4の長さ方向(車両1の前後方向)に2列に配置されている(図4示)。各列のバッテリー5は、上述したように、リブ46により隣同士のものが隔てられて収納されるとともに、底面43の山形の形状に倣って、互いに対向する側が斜め上方を向くことにより、双方の列のバッテリー5間において所定の空間が形成されている。
【0012】
また、各列のバッテリー5は、他の列に対する対向面51に、車両1のケーブル(図示せず)が接続される端子52が配置されている。尚、各バッテリー5には、手による持ち上げ用のバンド部材53が取り付けられている(図2示)。バッテリー5は、バッテリー支持部材4上に載置された後、例えば、上方から床板にて下方に押圧されることにより、上下移動不能なように固定される。
【0013】
本実施形態によれば、バッテリー支持部材4の長さ方向に対して垂直な断面が、略W字状を呈しているため、十分な剛性を備えたバッテリー支持部材4にすることができ、フレーム3のクロスメンバの数を減らすことができる。また、側壁42が傾斜しているため、単純な箱形のものに比べて成形性も良好なため、プレス成形等によっても製造でき、製造に手間を要することがなく、低コストのバッテリー支持部材4にすることができる。また、バッテリー支持部材4の前後端部には、側壁42および底面43と接続して、その両端部を閉塞する一対の囲繞壁44が形成されたため、車両1が走行しても、バッテリー5に直接に走行風が当たることがなく、支持しているバッテリー5が外気から遮断され、その閉塞性が向上してバッテリー5の性能が安定する。
【0014】
また、バッテリー5は、側壁42と底面43によって支えられて、互いに対向するように長さ方向に2列に配置されるとともに、底面43の形状に倣って、各列のバッテリー5は互いに対向する側が斜め上方を向いているため、双方の列のバッテリー5間において所定の空間が形成されており、各列のバッテリー5は、他列に対する対向面51に端子52が配置されているため、上方から2列のバッテリー5の間に容易に手を入れることができ、端子52へのケーブルの脱着等の作業性が向上する。また、バッテリー5の端子52が上方に突出することがないため、バッテリー収納部2の縦方向寸法を低減することができる。
【0015】
また、各々の側壁42および囲繞壁44の上端部には、幅方向外方に突出したフランジ45が形成されるとともに、底面43の表面には、長さ方向に隣り合ったバッテリー5間を区切るように、幅方向に延びたリブ46が形成されているため、バッテリー支持部材4の剛性を更に向上させることができ、車両の衝突等に対しても、バッテリー5を安全に支持することができ、また、リブ46により、バッテリー5の位置決めも確実に行うことができる。また、バッテリー支持部材5は、合成樹脂材料による板材を、熱プレス成形することにより形成するため、絞り性がよく、その成形性を向上させることができる。更に、バッテリー5が合成樹脂材料によって閉塞されることにより、その保温性が向上する。
【0016】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を、図5および図6によって説明する。尚、図5において、左方が電動車両1の前方に該当する。本実施形態によるバッテリー支持部材6は、実施形態1によるバッテリー支持部材4と同様に、傾斜した一対の側壁62と山形の底面63により形成され、断面が略W字状をした一対の格納部61が、その一方の側壁62の上端部同士が連結されるように、互いに接続されて構成されている(図6示)。また、各々の格納部61の他方の側壁62の上端には、バッテリー支持部材6の前後端に位置するように、大小のフランジ64、65が形成されており、これらをフレーム3のクロスメンバ上に固定することにより、バッテリー支持部材6はフレーム3に固定されている。
【0017】
図5に示すように、バッテリー支持部材6の格納部61は、実施形態1によるバッテリー支持部材4と異なり、略W字状の断面形状を維持しながら、車両1の幅方向に延びている。また、各々の底面63上には、その幅方向の中央部に、バッテリー支持部材6の前後方向に延びるようにリブ66が形成されており、これは、実施形態1によるバッテリー支持部材4と同様に、支持される隣り合ったバッテリー5間を隔てている。バッテリー5は、対向面51同士が車両1の前後方向に対向するように、各格納部61内に収納される(図5示)。
【0018】
本実施形態によれば、バッテリー支持部材6の前後端に形成された側壁62により、車両1が走行しても、バッテリー5に直接に走行風が当たることがなく、バッテリー5が外気から遮断され、その閉塞性が向上して、バッテリー5の性能が安定する。また、バッテリー支持部材6の側端部には、壁部が形成されていないため、トレイ状のものに比べて、絞り成形がいっそう容易で、金属製の板材をプレス成形することによっても、容易に形成することが可能となる。
【0019】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)本発明によるバッテリー支持部材によって支持されるバッテリーは、電動車両の駆動モータ用の電源だけでなく、一般的な車両の電装品を駆動するためのバッテリーであってもよい。
(2)本発明によるバッテリー支持部材を用いて支持するバッテリーの数は、特に限定されることはない。
(3)対向する一対の側壁は直立していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】バッテリー収納部が形成された電動車両の斜視図
【図2】実施形態1によるバッテリー収納部の分解斜視図
【図3】図2に示したバッテリー収納部の外観斜視図
【図4】図2に示したバッテリー収納部を車両幅方向にカットした場合の断面図
【図5】実施形態2によるバッテリー収納部の車両前後方向にカットした場合の断面図
【図6】図5に示したバッテリー支持部材の外観斜視図
【符号の説明】
【0021】
2…バッテリー収納部
3…フレーム
4、6…バッテリー支持部材
5…バッテリー
42、62…側壁
43、63…底面
44…囲繞壁
45、64、65…フランジ
46、66…リブ
51…対向面
52…端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロア下のフレームに取り付けられ、バッテリーを下方から支持するバッテリー支持部材において、
長さ方向に延びるとともに、互いに所定間隔を有して対向する一対の側壁と、該側壁の下端を互いに連結する底面とを備え、
前記底面はその側端部に比べ、幅方向の中央部が高くなるように形成されることにより、その断面が略W字状を呈していることを特徴とするバッテリー支持部材。
【請求項2】
前記一対の側壁は、下方に行くにつれて互いに接近するように傾斜していることを特徴とする請求項1記載のバッテリー支持部材。
【請求項3】
長さ方向の両端部には、前記側壁および前記底面と接続して、その端部を閉塞する一対の囲繞壁が形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のバッテリー支持部材。
【請求項4】
前記バッテリーは、前記側壁と前記底面によって支えられて、互いに対向するように長さ方向に2列に配置されるとともに、前記底面の形状に倣って、各列の前記バッテリーは互いに対向する側が斜め上方を向くことにより、双方の列の前記バッテリー間において所定の空間が形成されており、各列の前記バッテリーは、他列に対する対向面に端子が配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のバッテリー支持部材。
【請求項5】
前記底面の表面には、長さ方向に隣り合った前記バッテリー間を区切るように、幅方向に延びたリブが形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のバッテリー支持部材。
【請求項6】
合成樹脂材料による板材を、熱プレス成形することにより形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のバッテリー支持部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−331669(P2007−331669A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168072(P2006−168072)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】