説明

パターン形成方法、パターン形成システム、並びに電子機器

【課題】 リールツーリール方式と液滴吐出方式とを用いたパターン形成技術を確立する。
【解決手段】 リールツーリール方式と液滴吐出方式により、帯状基板上にパターンを形成する。そして、液体材料を配置する空間に隣接する空間での所定処理の間、液体材料の配置を休止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法、パターン形成システム、並びに電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子回路又は集積回路などに使われる配線の製造には、例えば、リソグラフィー法が用いられる。リソグラフィー法は、一般に、真空装置などの大がかりな設備と複雑な工程を必要とするだけでなく、材料使用効率が低く、製造コストが高い。さらに、配線パターンの微細化に限界がある。
【0003】
そこで、機能性材料を含む液体を基材に吐出して、配線パターンを直接的に描画形成する液滴吐出方式の利用が検討されている。この方法は、導電性微粒子を分散させた液体を液滴吐出ヘッドから基板に吐出して液状ラインを形成し、その後、熱処理や光処理(レーザ照射など)により液状ラインを焼成し、配線パターンを形成するものである(例えば、特許文献1参照)。この方法では、液滴吐出方式の利用により、製造工程が簡略化されるとともに、材料使用効率も高いので製造コストを低減することができる。また、配線パターンの微細化を実現しやすい。
【特許文献1】米国特許第5132248号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液滴吐出方式を用いたパターン形成では、複数の板状基板を個別搬送する技術、いわゆる枚葉搬送方式を用いるのが一般的である。枚葉搬送方式は、基板の移動制御に関して柔軟性が比較的高いことなどから、液滴吐出方式への適用が容易である。
【0005】
これに対して、巻出しリールと巻取りリールとの間で帯状基板(あるいはテープ形状基板)を連続的に走行させるいわゆるリールツーリール方式(Reel to Reel System)の搬送技術がある。リールツーリール方式は、基板の移動制御に関する制限が比較的多いものの、量産性が高く、基板の薄型化にも適している。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、リールツーリール方式と液滴吐出方式とを用いたパターン形成技術の確立を目的とする。
また、本発明の別の目的は、量産化により電子機器の低コスト化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明のパターン形成方法は、リールツーリール方式により帯状基板上にパターンを形成する方法であって、液滴吐出方式により前記帯状基板に液体材料を配置する工程を有し、前記液体材料を配置する空間に隣接する空間での所定処理の間、前記液体材料の配置を休止することを特徴とする。
【0008】
例えば、前記隣接する空間は、熱処理または光処理を行う空間である構成とすることができる。
【0009】
この方法によれば、隣接空間での所定処理の間、液体材料の配置が休止されるから、隣接空間での所定処理の影響が液滴吐出装置の処理空間に及ぶのが防止される。
すなわち、リールツーリール方式では、複数の処理空間にわたって帯状基板が配されるから、帯状基板に沿って互いに隣接する処理空間の間をガスが移動したり、基板に反射した光が隣りの空間に入射したりする可能性がある。上記処理タイミングの制御によって、液体材料の配置の間は、隣接空間での所定処理が行われないことから、その隣接空間での所定処理の影響が液滴吐出装置の処理空間に及ぶのが防止される。
例えば、隣接空間が熱処理または光処理を行う空間であると、その熱影響または光影響が液滴吐出装置の処理空間に及ぶのが防止される。
その結果、このパターン形成方法では、精度よく液滴吐出が実施され、パターン形成を正確に行うことができる。
【0010】
本発明のパターン形成システムは、リールツーリール方式により帯状基板上にパターンを形成するシステムであって、液滴吐出方式により前記帯状基板に液体材料を配置する液滴吐出装置を有し、前記液滴吐出装置は、該液滴吐出装置の処理空間に隣接する空間での所定処理の間、前記液体材料の配置を休止することを特徴とする。
【0011】
例えば、前記隣接する空間は、熱処理または光処理を行う空間である構成とすることができる。
【0012】
このパターン形成システムによれば、上記パターン形成システムと同様に、液体材料の配置の間は、隣接空間での所定処理が行われないことから、その隣接空間での所定処理の影響が液滴吐出装置の処理空間に及ぶのが防止される。上記処理タイミングの制御の結果、このシステムでは、精度よく液滴吐出が実施され、パターン形成を正確に行うことができる。
例えば、隣接空間が熱処理または光処理を行う空間であると、その熱影響または光影響が液滴吐出装置の処理空間に及ぶのが防止される。
【0013】
上記のパターン形成システムにおいて、前記液滴吐出装置とそれに隣接する空間との間に配設され、所定長さの前記帯状基板を一時的に蓄える緩衝装置(バッファ)を含む構成とすることができる。
この構成によれば、液滴吐出装置とその隣接空間との間に緩衝装置が配設されることにより、上記処理タイミングの制御に伴う処理能力の低下が抑制される。
【0014】
例えば、緩衝装置は、前記液滴材料の配置と前記隣接する空間での所定処理とのうちの、一方が処理中でありかつ他方が休止中であるときに生じる前記帯状基板の余剰長さ分または不足長さ分を一時的に蓄える構成とすることができる。
この構成によれば、前記液滴材料の配置または前記隣接する空間での所定処理に際して、帯状基板を走行させながらの処理が可能となる。
【0015】
本発明の電子機器は、上記のパターン形成システムを用いて製造されたことを特徴とする。
この電子機器によれば、リールツーリール方式により、量産化による電子機器の低コスト化が図られる。さらに、処理環境の精度向上により、品質の向上が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るパターン形成システムおよびパターン形成方法について図面を参照して説明する。
本発明の実施形態に係るパターン形成方法は、本発明の実施形態に係るパターン形成システムを用いて実行することができる。本実施形態のパターン形成システムおよびパターン形成方法は、リールツーリール方式により、導電膜からなる配線をテープ形状基板に形成するものである。
【0017】
(パターン形成システム)
図1は、本発明の実施形態に係るパターン形成システムおよびパターン形成方法の概要を示す模式図である。本パターン形成システムは、巻出しリール10と、巻取りリール15と、両リール10,15の間に配設される処理装置とを含んで構成される。
【0018】
テープ形状基板11としては、例えば、ポリイミドなどの樹脂材を基材とする帯状のフレキシブル基板が適用される。テープ形状基板11の形状は、例えば、幅105mm、長さ200mである。そして、テープ形状基板11は、その帯状長手方向の一方の端部が巻出しリール10に接続され、他方の端部が巻取りリール15に接続される。巻出しリール10から巻き出されたテープ形状基板11は、巻取りリール15に巻き取られ、その長手方向(テープ形状基板11の送り方向)に連続的に走行する。
【0019】
また、本パターン形成システムは、巻出しリール10と巻取りリール15との間に配設され、テープ形状基板11に対して複数の工程を実行する複数の処理装置を有している。複数の工程としては、例えば、洗浄工程、表面処理工程、描画工程、膜硬化工程等が挙げられる。そして、これらの工程により、テープ形状基板11に配線および絶縁膜などを形成することができる。
【0020】
テープ形状基板11には、その長手方向に関して、所定長さごとに多数の基板形成領域(以下「単位領域」という。)が設定される。テープ形状基板11の走行に伴い、各単位領域が複数の処理装置の各々に順次送られるとともに、各単位領域に対して複数の工程の処理が連続的に行われる。すなわち、上述した複数の工程は、流れ作業として実行されるとともに、それぞれ同時に又は時間的に重複して、複数の処理装置で実行される。
【0021】
このようなリールツーリール方式のパターン形成技術は、複数の板状基板を個別に搬送する枚葉式の搬送技術に比べて、搬送機構やアライメント機構の簡略化が可能であり、装置のコンパクト化や装置コストの低減に有利である。また、基板搬送動作の効率化を図りやすく、量産性に優れている。
【0022】
図2は、本パターン形成システムにおける、描画工程及び膜硬化工程を行うための装置構成の概略を示す模式図である。
【0023】
図2に示すように、本パターン形成システムは、テープ形状基板11に対して前処理を行う前処理装置19と、液滴吐出方式によりテープ形状基板11に液体材料を配置する液滴吐出装置20と、基板11上に形成された液体材料の膜を硬化する膜硬化装置21とを有している。
【0024】
前処理装置19における処理としては、基板洗浄、表面改質などが挙げられる。基板洗浄は、基板11の表面を洗浄するものであり、例えば、エキシマUV(波長172nm)を、基板11の表面に光照射する。表面改質は、基板11上に形成された下地膜の表面を改質するもので、例えば、基板11の表面にエキシマUV(波長172nm)を光照射する。処理条件は、紫外光の強度、波長、熱処理(加熱)との組み合わせ、あるいは、酸素を反応ガスとするプラズマ処理や、基板をオゾン雰囲気に曝す処理との組み合わせ等によって調整することもできる。
【0025】
液滴吐出装置20は、基板11(テープ状基板)を搭載するテーブル4と、基板11に液滴を吐出するインクジェットヘッド30とを主として構成されている。テーブル4は、基板11を吸着保持するための真空吸着装置等の吸着手段が設けられている。インクジェットヘッド30とテーブル4とを相対的に移動させながら、インクジェットヘッド30に形成されたノズルから液体材料を液滴状に吐出することにより、基板11上に液体材料が配置され、所望パターン形状で液体材料の膜(液状ライン)が形成される。インクジェットヘッド30の内部構造および動作については、後に詳述する。
【0026】
膜硬化装置21は、基板11上に形成された液状パターンの硬化(あるいは焼成)を行うものであり、本例では、基板11の表面にUV(波長365nm)を光照射し、液状膜を硬化させる構成からなる。液状膜の硬化あるいは焼成は、ホットプレート、電気炉などによる熱処理の他、ランプアニールによる光照射によって行うこともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。絶縁性の材料膜を硬化することにより絶縁膜が形成される。導電性の材料膜を硬化(焼成)することにより配線膜が形成される。
【0027】
図3は、本例のパターン形成システムにおける処理手順を示す模式図である。
図3(a)に示すように、本例のパターン形成システムでは、前処理装置19及び膜硬化装置21での処理の間、液滴吐出装置20での液滴吐出を休止する。すなわち、前処理装置19における基板洗浄や表面改質などの処理の間及び膜硬化装置21における液状ラインの硬化(あるいは焼成)処理の間において、液滴吐出装置20での基板11上への液体材料の配置を一時停止する。
【0028】
この液滴吐出の休止の間、液滴吐出装置20では、フラッシング、キャッピングなどのインクジェットヘッド30のノズルの乾燥を防止する処置を施すのが望ましい。フラッシングは、ノズル詰まりの防止あるいは解消を目的として、インクジェットヘッドから所定場所に液滴を吐出(捨て打ち)するものである。キャッピングは、ノズルの乾燥防止を目的として、インクジェットヘッドのノズル面を所定部材で覆うものである。
【0029】
一方、図3(b)に示すように、液滴吐出装置20での液滴吐出方式による液体材料の配置の間、前処理装置19及び膜硬化装置21での処理を休止する。すなわち、液滴吐出装置20におけるインクジェットヘッド30による基板11上への液体材料の配置の間、前処理装置19における基板洗浄や表面改質などの処理、及び膜硬化装置21における液状パターンの硬化(あるいは焼成)処理を停止する。
【0030】
このように、液滴吐出装置20の処理空間とそれに隣接する処理空間との間で、処理のタイミングをずらす制御により、このパターン形成システムでは、隣接空間の処理の影響が液滴吐出装置20の処理空間に及ぶのが防止される。
【0031】
ここで、リールツーリール方式では、複数の処理空間にわたってテープ状基板11(帯状基板)が配されるから、その基板11に沿って互いに隣接する処理空間の間をガスが移動したり、基板11に反射した光が隣りの空間に入射したりする可能性がある。本例のシステムでは、上記処理タイミングの制御によって、液体材料の配置の間は、隣接空間での所定処理が行われないことから、前処理装置19及び膜硬化装置21が光処理または熱処理を行う場合にもその光影響または熱影響が液滴吐出装置20の処理空間に及ぶのが防止される。その結果、液滴吐出装置20の処理空間において精度よく液滴吐出が実施され、配線パターンを正確に形成することができる。
【0032】
図4は、上記パターン形成システムの変形例を示している。
本例のパターン形成システムでは、前処理装置19と液滴吐出装置20との間、及び液滴吐出装置20と膜硬化装置21との間にそれぞれ、所定長さの基板11(テープ状基板)を一時的に蓄える緩衝装置(バッファ)26,27が配設されている。緩衝装置26,27はそれぞれ、鉛直方向上下に移動自在に配設されたローラ28,29と、ローラ28,29の位置を検出するセンサ(不図示)と、センサの検出結果に基づいてローラ28,29の上下位置を適宜調節する駆動部(不図示)などを含む。また、前処理装置19、液滴吐出装置20、及び膜硬化装置21は、各処理空間において基板11を走行させるための補助駆動部(不図示)を有する。
【0033】
図4(a)に示すように、本例のパターン形成システムにおいて、前処理装置19及び膜硬化装置21での処理の間、液滴吐出装置20での液滴吐出を休止する。このとき、液滴吐出装置20での処理が停止していることから、前処理装置19及び膜硬化装置21において所定長さの領域に対して処理を進めようとすると、前処理装置19と液滴吐出装置20との間に基板11の余剰が生じる。そこで、緩衝装置26は、ローラ28を下方へ移動させることにより、この余剰分長さの基板11を一時的に蓄える。またこのとき、液滴吐出装置20と膜硬化装置21との間に基板11の不足が生じる。そこで、緩衝装置27は、この不足分長さ以上の基板11を予め蓄えており、ローラ29を上方へ移動させることにより、この不足分長さの基板11を下流に向けて供給する。
【0034】
一方、図4(b)に示すように、本例のパターン形成システムにおいて、液滴吐出装置20での液滴吐出方式による液体材料の配置の間、前処理装置19及び膜硬化装置21での処理を休止する。このとき、前処理装置19で処理が停止していることから、液滴吐出装置20において所定長さの領域に対して処理を進めようとすると、前処理装置19と液滴吐出装置20との間に基板11の不足が生じる。そこで、緩衝装置26は、この不足分長さ以上の基板11を予め蓄えており、ローラ28を上方へ移動させることにより、この不足分長さの基板11を下流に向けて供給する。またこのとき、膜硬化装置21で処理が停止しているから、液滴吐出装置20において所定長さの領域に対して処理を進めようとすると、液滴吐出装置20と膜硬化装置21との間に基板11の余剰が生じる。そこで、緩衝装置27は、ローラ29を下方へ移動させることにより、この余剰分長さの基板11を一時的に蓄える。
【0035】
このように、本例のパターン形成システムによれば、液滴吐出装置20の処理空間とそれに隣接する処理空間との間で処理のタイミングをずらす制御を行う場合であっても、各処理空間において基板11を走行させながらの処理が確実に行える。すなわち、処理タイミングの制御に伴う処理能力の低下が抑制される。
【0036】
なお、図3及び図4の例において、隣接する処理空間間のガスの移動をより確実に防止するために、前処理装置19、液滴吐出装置20、及び膜硬化装置21の各処理空間の気圧を適宜制御するのが望ましい。
【0037】
(液滴吐出装置)
次に、上述したインクジェットヘッドにつき、図5を参照して具体的に説明する。
図5はインクジェットヘッドを示す図であり、図5(a)は要部斜視図であり、図5(b)は要部断面図である。
図5(a)に示すように、インクジェットヘッド30は、例えばステンレス製のノズルプレート32と振動板33とを備え、両者を仕切部材(リザーバプレート)34を介して接合したものである。ノズルプレート32と振動板33との間には、仕切部材34によって複数の空間35と液溜まり36とが形成されている。各空間35と液溜まり36の内部は液状体で満たされており、各空間35と液溜まり36とは供給口37を介して連通したものとなっている。また、ノズルプレート32には、空間35から液状体を噴射するためのノズル孔38が縦横に整列させられた状態で複数形成されている。一方、振動板33には、液溜まり36に液状体を供給するための孔39が形成されている。
【0038】
また、図5(b)に示すように、振動板33の空間35に対向する面と反対側の面上には、圧電素子(ピエゾ素子)40が接合されている。この圧電素子40は、一対の電極41の間に位置し、通電するとこれが外側に突出するようにして撓曲するよう構成されたものである。そして、このような構成のもとに圧電素子40が接合されている振動板33は、圧電素子40と一体になって同時に外側へ撓曲するようになっており、これによって空間35の容積が増大するようになっている。したがって、空間35内に増大した容積分に相当する液状体が、液溜まり36から供給口37を介して流入する。また、このような状態から圧電素子40への通電を解除すると、圧電素子40と振動板33はともに元の形状に戻る。したがって、空間35も元の容積に戻ることから、空間35内部の液状体の圧力が上昇し、ノズル孔38から基板に向けて液状体の液滴42が吐出される。
【0039】
なお、各ノズル孔38には、それぞれに独立して圧電素子40が設けられていることにより、その吐出動作がそれぞれ独立してなされるようになっている。すなわち、このような圧電素子40に送る電気信号としての吐出波形を制御することにより、各ノズルからの液滴の吐出量を調整し、変化させることができるようになっている。
なお、インクジェットヘッド30の方式としては、前記の圧電素子40を用いたピエゾジェットタイプ以外に限定されることなく、例えばサーマル方式を採用することもでき、その場合には印可時間を変化させることなどにより、液滴吐出量を変化させることができる。
【0040】
(配線パターン)
次に、上記パターン形成方法を用いて形成される配線パターンの一例について説明する。
図6は、配線パターンの一例の説明図である。なお、図6(a)は図6(b)のB−B線における平面断面図であり、図6(b)は図6(a)のA−A線における側面断面図である。図6(b)に示す配線パターンは、下層の電気配線72と上層の電気配線76とが、層間絶縁膜84を介して積層されるとともに、導通ポスト74により導通接続された構成となっている。なお、以下に説明する配線パターンはほんの一例に過ぎず、これ以外の配線パターンに本発明を適用することも可能である。
【0041】
図6(b)に示す配線パターンは、上述したテープ形状基板11の表面に形成されている。そのテープ形状基板11の表面に、下地絶縁膜81が形成されている。この下地絶縁膜81は、アクリル等の紫外線硬化性樹脂を主成分とする電気絶縁性材料によって構成されている。
【0042】
その下地絶縁膜81の表面に、複数の電気配線72が形成されている。この電気配線72は、Ag等の導電性材料により、所定のパターンに形成されている。なお、下地絶縁膜81の表面における電気配線72の非形成領域には、層内絶縁膜82が形成されている。そして、液滴吐出方式を採用することにより、電気配線72のライン×スペースは、例えば30μm×30μm程度に微細化されている。
【0043】
また、主として電気配線72を覆うように、層間絶縁膜84が形成されている。この層間絶縁膜84も、下地絶縁膜81と同様の樹脂材料で構成されている。そして、電気配線72の端部から上方に向かって、層間絶縁膜84を貫通するように、相当高さの導通ポスト74が形成されている。この導通ポスト74は、電気配線72と同じAg等の導電性材料により、円柱状に形成されている。一例を挙げれば、電気配線72の厚さは2μm程度であり、導通ポスト74の高さは8μm程度に形成されている。
【0044】
その層間絶縁膜84の表面には、上層の電気配線76が形成されている。この上層の電気配線76も、下層の電気配線72と同様に、Ag等の導電性材料で構成されている。なお図6(a)に示すように、上層の電気配線76は、下層の電気配線72と交差するように配置してもよい。そして、上層の電気配線76は、導通ポスト74の上端部に接続されて、下層の電気配線72との導通が確保されている。
【0045】
また、図6(b)に示すように、層間絶縁膜84の表面における電気配線76の非形成領域には、層内絶縁膜86が形成されている。さらに、主として電気配線76を覆うように、保護膜88が形成されている。これらの層内絶縁膜86および保護膜88も、下地絶縁膜81と同様の樹脂材料で構成されている。
【0046】
以上には、2層の電気配線72,76を備えた配線パターンを例にして説明したが、3層以上の電気配線を備えた配線パターンとすることも可能である。この場合、第1層の電気配線72から第2層の電気配線76までの構造と同様に、第n層の電気配線から第n+1層の電気配線までを形成すればよい。
(配線パターン形成方法)
次に、上述した配線パターンの形成方法について説明する。
図7は、配線パターンの形成方法の工程表である。以下には、図7の左端欄のステップ番号の順に、図6(b)を参照しつつ各工程を説明する。
【0047】
まず、テープ形状基板11の表面を洗浄する(ステップ1)。具体的には、波長172nmのエキシマUVを、テープ形状基板11の表面に300秒程度照射する。なお、水などの溶媒でテープ形状基板11を洗浄してもよく、超音波を用いて洗浄してもよい。また、テープ形状基板11に常圧でプラズマを照射することで洗浄してもよい。
【0048】
次に、テープ形状基板11の表面に下地絶縁膜81を形成する前提として、下地絶縁膜81の土手(周縁部)を描画形成する(ステップ2)。この描画は、液滴吐出方式(インクジェット方式)によって行う。すなわち、後述する液滴吐出装置を用いて、下地絶縁膜81の形成材料である硬化前の樹脂材料を、下地絶縁膜81の形成領域の周縁部に沿って吐出する。
次に、吐出された樹脂材料を硬化させる(ステップ3)。具体的には、波長365nmのUVを4秒程度照射して、下地絶縁膜81の形成材料であるUV硬化性樹脂を硬化させる。これにより、下地絶縁膜81の形成領域の周縁部に、土手が形成される。
【0049】
次に、形成された土手の内側に下地絶縁膜81を描画形成する(ステップ4)。この描画も、液滴吐出方式によって行う。具体的には、上述した液滴吐出装置のインクジェットヘッドを土手の内側全体に走査させつつ、そのインクジェットヘッドから下地絶縁膜81の形成材料である硬化前の樹脂材料を吐出する。ここで、吐出された樹脂材料が流動しても、周縁部の土手により堰き止められるので、下地絶縁膜81の形成領域を越えて広がることはない。
次に、吐出された樹脂材料を硬化させる(ステップ5)。具体的には、波長365nmのUVを60秒程度照射して、下地絶縁膜81の形成材料であるUV硬化性樹脂を硬化させる。これにより、テープ形状基板11の表面に下地絶縁膜81が形成される。
【0050】
次に、下地絶縁膜81の表面に電気配線72を形成する前提として、下地絶縁膜81の表面の接触角を調整する(ステップ6)。次述するように、電気配線72の形成材料を含む液滴を吐出した場合に、下地絶縁膜81の表面との接触角が大きすぎると、吐出された液滴が玉状になって所定位置に所定形状の電気配線72を形成することが困難になる。一方、下地絶縁膜81の表面との接触角が小さすぎると、吐出された液滴が濡れ広がって電気配線72の微細化が困難になる。硬化した下地絶縁膜81の表面は撥液性を示しているので、その表面に波長172nmのエキシマUVを15秒程度照射することにより、下地絶縁膜81の表面の接触角を調整する。撥液性の緩和の程度は、紫外光の照射時間で調整できるが、紫外光の強度、波長、熱処理(加熱)との組み合わせ等によって調整することもできる。なお、親液化処理の他の方法としては、酸素を反応ガスとするプラズマ処理や、基板をオゾン雰囲気に曝す処理等が挙げられる。
【0051】
次に、下地絶縁膜81の表面に、後に電気配線となる液状ライン72pを描画形成する(ステップ7)。この描画は、後述する液滴吐出装置を用いた液滴吐出方式によって行う。ここで吐出するのは、電気配線の形成材料である導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液である。その導電性微粒子として、銀が好適に用いられる。その他にも、金、銅、パラジウム、ニッケルの何れかを含有する金属微粒子の他、導電性ポリマーや超電導体の微粒子などを用いることができる。
【0052】
導電性微粒子は、分散性を向上させるため表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。導電性微粒子の表面にコーティングするコーティング材としては、例えば立体障害や静電反発を誘発するようなポリマーが挙げられる。また、導電性微粒子の粒径は5nm以上、0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きいと、ノズルの目詰まりが起こりやすく、液滴吐出ヘッドによる吐出が困難になるからである。また5nmより小さいと、導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる導電体中の有機物の割合が過多となるからである。
【0053】
使用する分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されないが、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、又はエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、更にプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を挙げることができる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また、液滴吐出方式への適用のし易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、特に好ましい分散媒としては水、炭化水素系化合物を挙げることができる。これらの分散媒は、単独でも、あるいは2種以上の混合物としても使用できる。
【0054】
導電性微粒子を含有する液体の分散媒としては、室温での蒸気圧が0.001mmHg以上、200mmHg以下(約0.133Pa以上、26600Pa以下)であるものが好ましい。蒸気圧が200mmHgより高い場合には、吐出後に分散媒が急激に蒸発してしまい、良好な導電体を形成することが困難となるためである。また、分散媒の蒸気圧は、0.001mmHg以上、50mmHg以下(約0.133Pa以上、6650Pa以下)であることがより好ましい。蒸気圧が50mmHgより高い場合には、液滴吐出方式で液滴を吐出する際に乾燥によるノズル詰まりが起こり易く、安定な吐出が困難となるためである。一方、室温での蒸気圧が0.001mmHgより低い分散媒の場合、乾燥が遅くなり導電体中に分散媒が残留しやすくなり、後工程の熱および/または光処理後に良質の導電体が得られにくい。
【0055】
上記導電性微粒子を分散媒に分散する場合の分散質濃度は、1質量%以上、80質量%以下であり、導電体の所望厚さに応じて調整することができる。80質量%を超えると凝集をおこしやすくなり、均一な導電体が得にくい。
【0056】
上記導電性微粒子の分散液の表面張力は、0.02N/m以上、0.07N/m以下の範囲に入ることが好ましい。液滴吐出方式にて液体を吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インク組成物のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じ易くなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量、吐出タイミングの制御が困難になるためである。
表面張力を調整するため、上記分散液には、下地絶縁膜81との接触角を不当に低下させない範囲で、フッ素系、シリコン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加することができる。ノニオン系表面張力調節剤は、下地絶縁膜81への濡れ性を良好化し、膜のレベリング性を改良し、塗膜のぶつぶつの発生、ゆず肌の発生などの防止に役立つものである。上記分散液は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでいても差し支えない。
【0057】
上記分散液の粘度は、1mPa・s以上、50mPa・s以下であることが好ましい。液滴吐出方式にて吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合には、ノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また、粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となるためである。
【0058】
本実施形態では、上記分散液の液滴(第1液滴)を液滴吐出ヘッドから吐出して、電気配線を形成すべき場所に滴下する。このとき、液だまり(バルジ)が生じないように、続けて吐出する液滴の重なり程度を調整することが望ましい。特に、一回目の吐出では複数の液滴を互いに接しないように離間して吐出し、2回目以降の吐出によって、その間を埋めていくような吐出方法を採用することが望ましい。
以上により、下地絶縁膜81の表面に液状ライン72pが形成される。
【0059】
次に、図6(b)に示すように、液状ライン72pの焼成を行う(ステップ8)。具体的には、液状ライン72pが形成されたテープ形状基板11を、150℃のホットプレートで30分程度加熱することによって行う。この焼成処理は、通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行うこともできる。なお、本焼成の処理温度を150℃としたが、液状ライン72pに含まれる分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング材の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して、適当に設定することが望ましい。
【0060】
このような焼成処理は、通常のホットプレート、電気炉などによる処理の他、ランプアニールによって行うこともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上、5000W以下の範囲のものが用いられる。
【0061】
上記のような焼成処理により、液状ライン72pに含まれる分散媒が揮発し、導電性微粒子間の電気的接触が確保されて、電気配線72が形成される。
【0062】
次に、焼成した電気配線72の端部に、後に導通ポストとなる液状ポスト74pを描画形成する(ステップ9)。この描画も、ステップ7の液状ライン72pの描画と同様に、前記液滴吐出装置を用いた液滴吐出方式によって行う。ここで吐出するのは、導通ポスト74の形成材料である導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液の液滴(第2液滴)であり、具体的には液状ライン72pの描画に用いる液状体と同じものである。すなわち液状ライン72pを描画した後に、同じ液状体を充填した同じ液滴吐出ヘッドを用いて、導通ポスト74の形成位置に第2液滴を吐出すればよい。
【0063】
次に、図6(b)に示すように、描画形成した液状ポスト74pを焼成する(ステップ10)。この焼成処理は、液状ポスト74pが形成されたテープ形状基板11を、150℃のホットプレートで30分程度加熱することによって行う。これにより、液状ポスト74pに含まれる分散媒が揮発し、導電性微粒子間の電気的接触が確保されて、導通ポスト74が形成される。
【0064】
次に、電気配線72の形成層に層内絶縁膜82を形成する前提として、下地絶縁膜81の表面の接触角を調整する(ステップ11)。硬化した下地絶縁膜81の表面は撥液性を示すことから、その表面に親液性を付与するため、波長172nmのエキシマUVを60秒程度照射する。
【0065】
次に、電気配線72の周囲に層内絶縁膜82を描画形成する(ステップ12)。この描画も、下地絶縁膜81の描画と同様に、液滴吐出装置を用いて行う。ここでは、まず導通ポスト74および電気配線72の周囲に隙間を空けて、その外側に樹脂材料を吐出する。
【0066】
次に、導通ポスト74および電気配線72の周囲の隙間に、波長172nmのエキシマUVを10秒程度照射して、親液処理を施す(ステップ13)。これにより、導通ポスト74および電気配線72の周囲の隙間に親液性が付与されるので、その隙間に樹脂材料が流動して、導通ポスト74および電気配線72と接触する。この場合、樹脂材料は、電気配線72の表面には濡れ上がるが、導通ポスト74の上端には濡れ上がることがない。したがって、導通ポスト74と上層の電気配線76との導通を確保することができる。
そして、吐出された樹脂材料を硬化させる(ステップ14)。具体的には、波長365nmのUVを4秒程度照射して、層内絶縁膜82の形成材料であるUV硬化性樹脂を硬化させる。これにより、層内絶縁膜82が形成される。
【0067】
次に、主に電気配線72の表面に、層間絶縁膜84を描画形成する(ステップ15)。この描画も、下地絶縁膜81の描画と同様に、液滴吐出装置を用いて行う。ここでも、導通ポスト74の周囲に隙間を空けて、樹脂材料を吐出することが望ましい。
次に、吐出された樹脂材料を硬化させる(ステップ16)。具体的には、波長365nmのUVを60秒程度照射して、層間絶縁膜84の形成材料であるUV硬化性樹脂を硬化させる。これにより、層間絶縁膜84が形成される。
【0068】
次に、層間絶縁膜84の表面に、上層の電気配線76を形成する。その具体的な方法は、下層の電気配線72を形成するためのステップ6ないしステップ10と同様である。
次に、電気配線76の形成層に層内絶縁膜86を形成する。その具体的な方法は、電気配線72の形成層に層内絶縁膜82を形成するためのステップ11ないしステップ14と同様である。さらに、ステップ15およびステップ16を行えば、上層の電気配線76の表面に層間絶縁膜を形成することができる。
【0069】
このように、ステップ6ないしステップ16を繰り返すことにより、電気配線を積層配置することができる。なお、最上層の電気配線の表面には、ステップ15およびステップ16と同様の方法により、保護膜88を形成すればよい。
以上により、図6に示す配線パターンが形成される。
【0070】
上述した各工程は、図1に示す巻出しリール10と巻取りリール15との間で順次行うようにする。すなわち、1つの単位領域について液滴吐出装置でパターン形成した後に、テープ形状基板11を液滴吐出装置に対してずらすことにより、極めて簡便にテープ形状基板11の他の単位領域について配線パターンを形成することができる。これらにより、本実施形態は、テープ形状基板11の各単位領域(各回路基板領域)について、簡便に且つ迅速に配線パターンを形成でき、配線基板などについて、効率よく大量に製造することができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、テープ形状基板11が巻出しリール10から巻き出されてから巻取りリール15に巻き取られるまでに、液滴塗布工程を含む複数の工程を実行する。これにより、テープ形状基板11の一端側を巻取りリール15で巻き取るだけで、前工程を実行する装置から後工程を実行する装置へテープ形状基板11を移動させることができる。したがって、本実施形態によれば、テープ形状基板11を各工程の各装置へ移動させる搬送機構を簡略化することができ、製造装置の設置スペースを低減でき、大量生産などにおける製造コストを低減することができる。
【0072】
(電気光学装置)
上述した配線パターンの形成方法を使用して、フレキシブルプリント配線基板(Flexible Printed Circuit;以下「FPC」という。)を形成することができる。そこで、そのFPCが採用された電気光学装置の一例である液晶モジュールについて説明する。
図8は、COF(Chip On Film)構造の液晶モジュールの分解斜視図である。液晶モジュール101は、大別すると、カラー表示用の液晶パネル102と、液晶パネル102に接続されるFPC130と、FPC130に実装される液晶駆動用IC100とを備えている。なお必要に応じて、バックライト等の照明装置やその他の付帯機器が、液晶パネル102に付設される。
【0073】
液晶パネル102は、シール材104によって接着された一対の基板105a及び基板105bを有し、これらの基板105bと基板105bとの間に形成される間隙、所謂セルギャップに液晶が封入される。換言すると、液晶は基板105aと基板105bとによって挟持されている。これらの基板105a及び基板105bは、一般には透光性材料、例えばガラス、合成樹脂等によって形成される。基板105a及び基板105bの外側表面には偏光板106aが貼り付けられている。
【0074】
また、基板105aの内側表面には電極107aが形成され、基板105bの内側表面には電極107bが形成される。これらの電極107a,107bは、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)等の透光性材料によって形成される。基板105aは基板105bに対して張り出した張り出し部を有し、この張り出し部に複数の端子108が形成されている。これらの端子108は、基板105a上に電極107aを形成するときに電極107aと同時に形成される。従って、これらの端子108は、例えばITOによって形成される。これらの端子108には、電極107aから一体に延びるもの、及び導電材(不図示)を介して電極107bに接続されるものが含まれる。
【0075】
一方、FPC130の表面には、本実施形態に係る配線パターンの形成方法により、配線パターン139a,139bが形成されている。すなわち、FPC130の一方の短辺から中央に向かって入力用配線パターン139aが形成され、他方の短辺から中央に向かって出力用配線パターン139bが形成されている。これらの入力用配線パターン139aおよび出力用配線パターン139bの中央側の端部には、電極パッド(不図示)が形成されている。
【0076】
そのFPC130の表面には、液晶駆動用IC100が実装されている。具体的には、FPC130の表面に形成された複数の電極パッドに対して、液晶駆動用IC100の能動面に形成された複数のバンプ電極が、ACF(Anisotropic Conductive Film:異方性導電膜)160を介して接続されている。このACF160は、熱可塑性又は熱硬化性の接着用樹脂の中に、多数の導電性粒子を分散させることによって形成されている。このように、FPC130の表面に液晶駆動用IC100を実装することにより、いわゆるCOF構造が実現されている。
【0077】
そして、液晶駆動用IC100を備えたFPC130が、液晶パネル102の基板105aに接続されている。具体的には、FPC130の出力用配線パターン139bが、ACF140を介して、基板105aの端子108と電気的に接続されている。なお、FPC130は可撓性を有するので、自在に折り畳むことによって省スペース化を実現しうるようになっている。
【0078】
上記のように構成された液晶モジュール101では、FPC130の入力用配線パターン139aを介して、液晶駆動用IC100に信号が入力される。すると、液晶駆動用IC100から、FPC130の出力用配線パターン139bを介して、液晶パネル102に駆動信号が出力される。これにより、液晶パネル102において画像表示が行われるようになっている。
【0079】
なお、電気光学装置としては、電界により物質の屈折率が変化して光の透過率を変化させる電気光学効果を有する装置の他、電気エネルギーを光学エネルギーに変換する装置等も含まれている。すなわち、本発明は、液晶表示装置だけでなく、有機EL(Electro-Luminescence)装置や無機EL装置、プラズマディスプレイ装置、電気泳動ディスプレイ装置、電子放出素子を用いた表示装置(Field Emission Display 及び Surface-Conduction Electron-Emitter Display 等)などの発光装置等に対しても、広く適用することが可能である。例えば、本発明の配線パターンを備えたFPCを有機ELパネルに接続して、有機ELモジュールを構成することも可能である。
【0080】
(電子機器)
次に、本実施形態の膜形成方法を使用して製造した電子機器につき、図を用いて説明する。
図9は、携帯電話の斜視図である。図9において符号1000は携帯電話を示し、符号1001は表示部を示している。この携帯電話1000の表示部1001には、本実施形態の配線パターンを備えた電気光学装置が採用されている。したがって、電気的接続の信頼性に優れた小型の携帯電話1000を提供することができる。
本発明は、上記携帯電話に限らず、電子ブック、パーソナルコンピュータ、ディジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダ型あるいはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネル等の電子機器の画像表示手段として好適に用いることができ、いずれの場合でも、電気的接続の信頼性に優れた小型の電子機器を提供することができる。
【0081】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本実施形態に係るパターン形成システムの概要を示す模式図である。
【図2】描画工程及び膜硬化工程を行うための装置構成の概略を示す模式図である。
【図3】本例のパターン形成システムにおける処理手順を示す模式図である。
【図4】パターン形成システムの変形例を示している。
【図5】インクジェットヘッドの説明図である。
【図6】配線パターンの説明図である。
【図7】配線パターンの形成方法の工程表である。
【図8】COF構造の液晶モジュールの分解斜視図である。
【図9】携帯電話の斜視図である。
【符号の説明】
【0083】
10…巻出しリール、11…テープ形状基板(帯状基板)、15…巻取りリール、19…前処理装置、20…液滴吐出装置、21…膜硬化装置、26,27…緩衝装置、28,29…ローラ、30…インクジェットヘッド、72…電気配線、139a,139b…配線パターン、1000…携帯電話。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リールツーリール方式により帯状基板上にパターンを形成する方法であって、
液滴吐出方式により前記帯状基板に液体材料を配置する工程を有し、
前記液体材料を配置する空間に隣接する空間での所定処理の間、前記液体材料の配置を休止することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記隣接する空間は、熱処理または光処理を行う空間であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
リールツーリール方式により帯状基板上にパターンを形成するシステムであって、
液滴吐出方式により前記帯状基板に液体材料を配置する液滴吐出装置を有し、
前記液滴吐出装置は、該液滴吐出装置の処理空間に隣接する空間での所定処理の間、前記液体材料の配置を休止することを特徴とするパターン形成システム。
【請求項4】
前記隣接する空間は、熱処理または光処理を行う空間であることを特徴とする請求項3に記載のパターン形成システム。
【請求項5】
前記液滴吐出装置と前記隣接する空間との間に配設され、所定長さの前記帯状基板を一時的に蓄える緩衝装置を含むことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のパターン形成システム。
【請求項6】
前記緩衝装置は、前記液滴材料の配置と前記隣接する空間での所定処理とのうちの、一方が処理中でありかつ他方が休止中であるときに生じる前記帯状基板の余剰長さ分または不足長さ分を一時的に蓄えることを特徴とする請求項5に記載のパターン形成システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のパターン形成システムを用いて製造されたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−122804(P2006−122804A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313840(P2004−313840)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】