説明

パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器

【課題】貫通電極の位置精度を向上できるパッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器を提供する。
【解決手段】成形型60によりベース基板用ウエハ40を厚さ方向両側から押圧しつつ、加熱し、ベース基板用ウエハ40を鋲体30に溶着させる溶着工程を有し、成形型60の受型63に芯材部28の先端を収容可能な鋲体収容部67を形成し、鋲体収容部67の内面を底部側から開口側にかけて広がるテーパ形状に形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子(パッケージ)が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装(SMD)型の圧電振動子が知られている。表面実装型の圧電振動子は、例えば互いに接合されたガラス材料からなるベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で収納された圧電振動片(電子部品)とを備えている。
【0003】
このような圧電振動子では、ベース基板に形成された貫通孔に貫通電極を形成し、この貫通電極によってキャビティ内の圧電振動片と、キャビティ外の外部電極とを電気的に接続する構成が知られている。
【0004】
貫通電極を形成する方法としては、ベース基板に形成された貫通孔に、銀ペースト等の導電部材を充填し、焼成する方法がある。
しかしながら、この方法では、焼成により銀ペースト中の樹脂等の有機物が除去されて体積が減少するので、貫通電極の表面に凹部が生じたり、貫通電極に穴が開いたりすることがあった。そして、この貫通電極の凹部や穴がキャビティ内の気密性の低下や、圧電振動片と外部電極との導電性の悪化の原因となることがあった。
【0005】
そこで、近時では、ベース基板に形成された貫通孔に金属ピンを溶着させることで、貫通電極を形成する方法が開発されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、まず孔開け機でベース基板を押圧しつつ、加熱することで、金属ピンを挿通させるための貫通孔を形成する(1次成形)。その後、金属ピンを貫通孔内に挿通させた状態で、ベース基板を成形型内にセットし、押圧しつつ、加熱する(2次成形)。これにより、溶融したベース基板(ガラス材料)が成形型内で流動して金属ピンと貫通孔との隙間を塞ぐとともに、ベース基板が金属ピンに溶着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−209198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、圧電振動子では、ベース基板に貫通電極を形成した後、貫通電極と外部とを電気的接続する外部電極や、貫通電極と圧電振動片とを電気的接続する引き回し電極等の電極膜を、フォトリソグラフィ技術やスパッタリング法等を用いて形成する。そのため、貫通電極と電極膜との導通を確保するには、ベース基板上における貫通電極の位置精度(金属ピンの位置精度)を高くする必要がある。
【0008】
しかしながら、上述した方法の場合、2次成形において、ガラス材料(ベース基板)の流動とともに金属ピンが成形型内で移動して、金属ピンが傾いたり、金属ピンが所望の位置からずれたりした状態で溶着される虞がある。そのため、貫通電極の位置精度が低いという問題がある。
【0009】
これに対して、特許文献1には、土台部と、土台部の表面から法線方向に沿って立設される芯材部とを有する金属ピンを用い、成形型に形成された収容部内で金属ピンの土台部を保持した状態で2次成形を行う方法が記載されている。
ところが、成形型の型締め時において、土台部を収容部内にスムーズに収容するためには、収容部の径を金属ピンの土台部の径よりも十分に大きくする必要がある。この場合、収容部の内周面と土台部の側面との間には隙間が生じることになる。そのため、2次成形時において、土台部が収容部内を移動してしまい、貫通電極の位置精度(金属ピンの位置精度)の向上が高く望めない。
【0010】
そこで本発明は、貫通電極の位置精度を向上できるパッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係るパッケージの製造方法は、互いに接合された複数の基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、前記複数の基板のうち、貫通電極形成基板を厚さ方向に貫通し、前記キャビティの内側と前記複数の基板の外側とを導通させる貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、前記貫通電極形成工程は、前記貫通電極形成基板に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記貫通孔内に導電性の金属ピンを挿入する金属ピン配置工程と、成形型により前記貫通電極形成基板を厚さ方向両側から押圧しつつ、加熱し、前記貫通電極形成基板を前記金属ピンに溶着させる溶着工程とを有し、前記成形型には、前記金属ピンの少なくとも一端側を収容可能な収容部が形成され、前記収容部は、内径が底部側から開口側にかけて広がるテーパ形状に形成されていることを特徴としている。
【0012】
この構成によれば、溶着工程において、貫通電極形成基板を押圧しつつ、加熱することで、貫通電極形成基板が成形型内で流動して金属ピンと貫通孔との隙間を塞ぐとともに、貫通電極形成基板が金属ピンに溶着されることとなる。そのため、貫通電極(金属ピン)と貫通孔との間に隙間ができるのを抑制し、キャビティ内の気密性を確保できる。
ここで、本発明の構成によれば、成形型に金属ピンの少なくとも一端側を収容する収容部を形成することで、収容部に金属ピンの一端側が保持された状態で貫通電極形成基板に金属ピンが溶着されることになる。これにより、溶着工程において、金属ピンが所望の位置からずれたり、傾いたりするのを抑制できる。
【0013】
特に、収容部の内面が底部側から開口側に向けて広がるテーパ形状に形成されているため、金属ピンの一端側が収容部の開口側からスムーズに入り込む。一方、金属ピンが収容部の底部側に向かうにつれ、金属ピンの側面と収容部の内面との間が狭くなるため、金属ピンを収容部の底部側まで押圧することで、収容部内の径方向中央部において、金属ピンの延在方向と貫通電極形成基板の厚さ方向とが一致するように金属ピンをずれなく保持できる。
また、仮に金属ピンが貫通孔内に傾いて挿入された場合等においては、溶着工程において貫通電極形成基板を押圧することで、金属ピンの一端側が収容部の内面(テーパ面)に倣って押し込まれることになる。これにより、金属ピンが収容部の底部側、かつ収容部の径方向中央部に導かれる。したがって、金属ピンが収容部の底面に到達した際には、金属ピンの延在方向と貫通電極形成基板の厚さ方向とが一致するように位置決めされる。これにより、貫通電極の位置精度を向上できる。
【0014】
また、前記金属ピンの長さは、前記貫通電極形成基板の厚さよりも長く形成され、前記金属ピン配置工程では、前記金属ピンを前記貫通電極形成基板から厚さ方向に突出するように挿入することを特徴としている。
この構成によれば、溶着工程に先立って、成形型内に貫通電極形成基板をセットした際に、金属ピンの一端側が収容部内に保持されることになる。すなわち、金属ピンが収容部内に保持された状態で溶着工程に移行できるので、溶着時における金属ピンの流動を確実に抑制できる。
【0015】
また、前記金属ピンは、土台部と、前記土台部の表面に立設され、前記金属ピン配置工程において前記貫通孔に挿入される芯材部と、を有していることを特徴としている。
この構成によれば、土台部が貫通電極形成基板に接触するまで挿入するだけの簡単な作業で、芯材部の軸方向と貫通電極形成基板の厚さ方向と一致させた状態で、芯材部を貫通孔内に挿入できる。したがって、金属ピン配置工程時における作業性を向上することができるとともに、溶着工程後における貫通電極の位置精度を向上できる。
【0016】
また、本発明のパッケージは、上記本発明のパッケージの製造方法により製造されたことを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のパッケージの製造方法を使用してパッケージを製造することで、貫通電極の位置精度に優れたパッケージを提供でき、貫通電極と電極膜との導通性を確保できる。
【0017】
また、本発明の圧電振動子は、上記本発明のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のパッケージを備えているので、圧電振動片と貫通電極との導電性を確保することができる。また、貫通電極形成基板を芯材部に溶着させているので、キャビティ内の気密性を確保することができる。その結果、信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
【0018】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
この構成によれば、圧電振動片と貫通電極との導通性が安定して確保されている圧電振動子を用いているため、信頼性の高い発振器を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るパッケージの製造方法及びパッケージによれば、貫通電極の位置精度を向上できる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、上記本発明のパッケージを備えているので、信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
本発明に係る発振器においては、上記本発明の圧電振動子を用いているため、信頼性の高い発振器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る圧電振動子の外観斜視図である。
【図2】図2のA−A線に沿う側面断面図である。
【図3】圧電振動子のリッド基板を取り外した状態の平面図である。
【図4】圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】図1に示す圧電振動子を製造する際に使用する鋲体の斜視図である。
【図6】実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
【図7】ウエハ接合体の分解斜視図である。
【図8】ベース基板用ウエハの断面図であり、貫通電極形成工程を説明するための工程図である。
【図9】ベース基板用ウエハの断面図であり、貫通電極形成工程を説明するための工程図である。
【図10】ベース基板用ウエハの断面図であり、貫通電極形成工程を説明するための工程図である。
【図11】ベース基板用ウエハの断面図であり、溶着工程を説明するための工程図である。
【図12】実施形態に係る発振器の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
(圧電振動子)
次に、本発明の実施形態に係る圧電振動子を、図面を参照して説明する。図1は、実施形態に係る圧電振動子の外観斜視図である。図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。図3は、圧電振動子のリッド基板を取り外した状態の平面図である。図4は、圧電振動子の分解斜視図である。
図1〜図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板(貫通電極形成基板)2及びリッド基板3が接合膜23を介して陽極接合されたパッケージ26と、パッケージ26のキャビティCに収納された圧電振動片4と、を備えた表面実装型の圧電振動子1である。
【0022】
圧電振動片4は、水晶の圧電材料から形成されたATカット型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片4は、平面視略矩形で厚さが均一の板状に加工された水晶板17と、水晶板17の両面に対向する位置で配置された一対の励振電極5,6と、励振電極5,6に電気的に接続された引き出し電極19,20と、引き出し電極19,20に電気的に接続されたマウント電極7,8と、を有している。マウント電極7は、水晶板17の側面電極15に電気的に接続され、励振電極6が形成された側の面に形成されたマウント電極7に電気的に接続されている。
【0023】
励振電極5,6、引き出し電極19,20、マウント電極7,8及び側面電極15は、例えば、金(Au)の被膜で形成されている。なお、これらの膜は、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の導電性膜の被膜あるいはこれら導電性膜のいくつかを組み合わせた積層膜により形成されていてもよい。
【0024】
このように構成された圧電振動片4は、金からなるバンプ11,12を利用して、ベース基板2の第1面2a(上面側)にバンプ接合されている。具体的には、ベース基板2の第1面2aにパターニングされた後述する引き回し電極9,10上にバンプ11,12が形成され、そのバンプ11,12上に、一対のマウント電極7,8がそれぞれ接触した状態でバンプ接合されている。これにより、圧電振動片4は、ベース基板2の第1面2aからバンプ11,12の厚さ分、浮いた状態で支持されるとともに、マウント電極7,8と引き回し電極9,10とがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0025】
リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスで形成された基板であり、ベース基板2が接合される接合面側には、圧電振動片4が収まる矩形状の凹部16が形成されている。この凹部16は、ベース基板2とリッド基板3とが重ね合わされたときに、圧電振動片4を収容するキャビティCとなるキャビティ用の凹部16である。そして、リッド基板3は、この凹部16をベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して陽極接合されている。
【0026】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスで形成された基板であり、リッド基板3に対して重ね合わせ可能な大きさで略板状に形成されている。
また、ベース基板2には、ベース基板2を貫通する一対の貫通孔24,25が形成されている。貫通孔24,25の一端は、キャビティC内を臨むように形成されている。具体的に、貫通孔24,25は、ベース基板2の対角上に位置するように形成され、ベース基板2の厚さ方向に沿って平行になるように略円柱状に貫通している。
【0027】
そして、一対の貫通孔24,25には、貫通孔24,25を埋めるように形成された一対の貫通電極13,14が形成されている。この貫通電極13,14は、貫通孔24,25を閉塞してキャビティC内の気密を維持しているとともに、後述する外部電極21,22と引き回し電極9,10とを導通させる役割を担っている。貫通電極13,14は、貫通孔24,25の中に導電性の金属材料からなる芯材部28を配設して形成され、芯材部28を通して安定した電気導通性が確保されている。
【0028】
芯材部28は、ベース基板2との溶着によって固定されており、芯材部28が貫通孔24,25を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持している。芯材部28は、例えば、コバールやFe−Ni合金(42アロイ)等の、熱膨張係数がベース基板2のガラス材料と近い(好ましくは同等か低め)材料により円柱状に形成された導電性の金属芯材で、両端が平坦で且つベース基板2の厚さと同じ厚さである。
【0029】
なお、貫通電極13,14が完成品として形成された場合には、上述したように芯材部28は、円柱状でベース基板2の厚さと同じ厚さとなるように形成されているが、製造過程では、図5(a)に示すように、円板状の土台部29表面から法線方向に向けて突出して形成されており、この土台部29とともに鋲体30を形成している。なお、鋲体30の寸法の一例を挙げると、芯材部28の長さが0.48mm程度、芯材部28の外径が0.15mm程度、土台部29の厚さが0.05mm程度、土台部29の外径が0.30mm程度に形成されている。なお、土台部29の平面視形状は、円形状に限らず、図5(b)に示すように矩形状等であってもよい。
【0030】
図2〜4に戻り、ベース基板2の第1面2a側には、導電性材料(例えば、アルミニウム、シリコン等)により、陽極接合用の接合膜23と、一対の引き回し電極9,10とがパターニングされている。このうち接合膜23は、リッド基板3に形成された凹部16の周囲を囲むようにベース基板2の周縁に沿って形成されている。
【0031】
一対の引き回し電極9,10は、一対の貫通電極13,14のうち、一方の貫通電極13と圧電振動片4の一方のマウント電極7とを電気的に接続するとともに、他方の貫通電極14と圧電振動片4の他方のマウント電極8とを電気的に接続するようにパターニングされている。具体的には、一方の引き回し電極9は、圧電振動片4のマウント電極7,8側に位置するように一方の貫通電極13の真上に形成されている。また、他方の引き回し電極10は、一方の引き回し電極9に隣接した位置から圧電振動片4に沿って、ベース基板2上の貫通電極13と対向する側に引き回しされた後、他方の貫通電極14の真上に位置するように形成されている。
【0032】
そして、これら一対の引き回し電極9,10上にバンプ11,12が形成されており、バンプ11,12を利用して圧電振動片4がマウントされている。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極7が、一方の引き回し電極9を介して一方の貫通電極13に導通し、他方のマウント電極8が、他方の引き回し電極10を介して他方の貫通電極14に導通するようになっている。
【0033】
また、ベース基板2の第2面2b(下面側)には、一対の貫通電極13,14に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極21,22が形成されている。つまり、一方の外部電極21は、一方の貫通電極13及び一方の引き回し電極9を介して圧電振動片4の第1の励振電極5に電気的に接続されている。また、他方の外部電極22は、他方の貫通電極14及び他方の引き回し電極10を介して圧電振動片4の第2の励振電極6に電気的に接続されている。
【0034】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極21,22に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極5及び第2の励振電極6からなる励振電極に電流を流すことができ、所定の周波数で振動させることができる。そして、振動を利用して、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0035】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法について説明する。図6は、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。図7は、ウエハ接合体の分解斜視図である。以下には、図7に示すように、複数のベース基板2が連なるベース基板用ウエハ40と、複数のリッド基板3が連なるリッド基板用ウエハ50との間に複数の圧電振動片4を封入してウエハ接合体70を形成し、ウエハ接合体70を切断することにより複数の圧電振動子1を同時に製造する方法について説明する。なお、図7に示す破線Mは、切断工程で切断する切断線を図示したものである。
図6に示すように、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、圧電振動片作製工程(S10)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)と、を主に有している。そのうち、圧電振動片作製工程(S10)、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)及びベース基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。
【0036】
初めに、圧電振動片作製工程を行って図2〜図4に示す圧電振動片4を作製する(S10)。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、ポリッシュ等の鏡面研磨加工を行って、一定の厚みのウエハとする。ただし、ポリッシュ等の鏡面研磨加工を行わない場合もある。続いて、ウエハに洗浄等の適切な処理を施した後、ウエハをフォトリソグラフィ技術やメタルマスク等によって圧電振動片4の外形形状にパターニングするとともに、金属膜の成膜及びパターニングを行って、励振電極5,6、引き出し電極19,20、マウント電極7,8及び側面電極15を形成する。これにより、複数の圧電振動片4を作製する。
【0037】
(リッド基板用ウエハ作製工程)
次に、図7に示すように、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するリッド基板用ウエハ作製工程を行う(S20)。まず、ソーダ石灰ガラスからなるリッド基板用ウエハ50を所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の接合面に、エッチングや型押し等の方法により行列方向にキャビティ用の凹部16を複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。凹部16を形成したら、後述する接合工程(S60)に備えて凹部16が形成された表面を研磨する。この時点で、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)が終了する。
【0038】
(ベース基板用ウエハ作製工程)
図8〜図10は、ベース基板用ウエハの断面図であり、ベース基板用ウエハ作製工程を説明するための工程図である。
次に、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)と同時、または前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を製作するベース基板用ウエハ作製工程を行う(S30)。まず、図8(a)に示すようなベース基板用ウエハ40を形成する。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去する(S31)。
【0039】
(貫通電極形成工程)
続いて、ベース基板用ウエハ40に貫通電極13,14を形成する貫通電極形成工程(S30A)を行う。
(貫通孔形成工程)
まず、ベース基板用ウエハ40を貫通する貫通孔24,25(図2参照)を形成する(S32)。貫通孔24,25の形成は、図8(b)に示すように、例えばカーボン等からなる貫通孔形成用型57で、ベース基板用ウエハ40を押圧しつつ加熱して行う。
【0040】
貫通孔形成用型57は、ベース基板用ウエハ40を第1面40a側から保持する受型51と、ベース基板用ウエハ40を第2面40b側から厚さ方向に沿って押圧する加圧型52とを有している。
まず加圧型52は、外径がベース基板用ウエハ40と同等に形成され、ベース基板用ウエハ40を押圧するときに、ベース基板用ウエハ40の第2面40bに接するフラットな部材である。
【0041】
受型51は、断面で凹形状に形成され、ベース基板用ウエハ40を収容可能に構成されている。具体的に、受型51は、ベース基板用ウエハ40の第1面10aに対向する底壁部53と、底壁部53の外周縁全周に亘って立設された側壁部54とを備えている。
【0042】
底壁部53の内面における外周部分には、厚さ方向に沿って窪んだ受型凹部55が形成されている。受型凹部55は、底壁部53の周方向全周に亘ってリング状に形成されている。そして、底壁部53の内面における中央部(受型凹部55に囲まれた領域)には、厚さ方向に向けて突出する複数の受型凸部56が形成されている。これら受型凸部56は、貫通孔24,25となる凹部41(図8(d)参照)を形成するものであり、ベース基板用ウエハ40における貫通孔24,25の形成位置に合わせて形成されている。なお、受型凸部56の側面には型抜き用のテーパが形成されており、この略円錐台状の受型凸部56の形状がベース基板用ウエハ40に転写される。
【0043】
貫通孔形成工程(S32)では、貫通孔形成用型57の受型51を受型凸部56が上向きとなるようにセットした状態で、受型51内にベース基板用ウエハ40をセットする。この際、受型凸部56の先端面にベース基板用ウエハ40の第1面40aが当接するようにセットする。さらに、貫通孔形成用型57の加圧型52をベース基板用ウエハ40の第2面40bに接するようにセットし、受型51と加圧型52とでベース基板用ウエハ40を厚さ方向で挟持する。
【0044】
そして、図8(c)に示すように、ベース基板用ウエハ40を貫通孔形成用型57にセットした状態で加熱炉内に配置し、約900℃程の高温状態で加圧型52によりベース基板用ウエハ40の厚さ方向に沿って圧力をかける。すると、ベース基板用ウエハ40の第1面40aにおける中央部には、受型凸部56の形状が転写されてなる凹部41が形成される一方、外周部分には受型凹部55の形状が転写されてなる凸部42が形成される。その後、ベース基板用ウエハ40を徐々に温度を下げながら冷却する。
【0045】
これにより、図8(d)に示すように、ベース基板用ウエハ40の第1面40a側には、外周縁全周に沿って厚さ方向に突出する凸部42と、第1面40aの中央部(凸部42の内側の領域)に形成され、後に貫通孔24,25となるテーパ状の複数の凹部41とが形成される。なお、凹部41は、ベース基板用ウエハ40における貫通孔24,25の形成位置に合わせて形成される。
【0046】
次に、図9(a)に示すように、ベース基板用ウエハ40の少なくとも第2面40bを研磨して、ベース基板用ウエハ40の厚さ方向に沿って凹部41を貫通させることにより、ベース基板用ウエハ40に略円錐台状の貫通孔24,25を形成する。この際、ベース基板用ウエハ40の寸法の一例を挙げると、厚さ(第1面40aから第2面40bまでの厚さ)は0.35mm程度、凸部42の高さは0.20mm程度、貫通孔24,25の小径側(第2面40b側)の直径が0.20mm程度となっている。なお、ベース基板用ウエハ40を加熱する際に、貫通孔形成用型57の受型凸部56をベース基板用ウエハ40に貫通させるようにし、上述した研磨を省略しても構わない。
【0047】
(芯材部挿入工程)
続いて、貫通孔24,25内に芯材部28を挿入する芯材部挿入工程(金属ピン配置工程)を行う(S33)。
図9(b)に示すように、芯材部挿入工程(S33)では、ベース基板用ウエハ40を例えばカーボン等からなる成形型61の受型63内にセットした状態で、貫通孔24,25内に鋲体30の芯材部28を挿入する。
【0048】
ここで、まず成形型61について説明する。
図9(c)に示すように、成形型61は、ベース基板用ウエハ40を第1面40a側から保持する受型63と、ベース基板用ウエハ40を第2面40b側から厚さ方向に沿って押圧する加圧型62と、を備えている。
まず加圧型62は、外径がベース基板用ウエハ40と同等に形成され、ベース基板用ウエハ40を押圧するときに、ベース基板用ウエハ40の第2面40bに接するフラットな部材である。
【0049】
受型63は、断面で凹形状に形成され、ベース基板用ウエハ40を収容可能に構成されている。具体的に、受型63は、ベース基板用ウエハ40の第1面40aに対向する底壁部64と、底壁部64の外周縁全周に亘って底壁部64の厚さ方向に向けて立設された側壁部65とを有している。
底壁部64の内面における外周部分には、厚さ方向に沿って窪んだ受型凹部66が底壁部64の周方向全周に亘ってリング状に形成されている。受型凹部66の深さは、貫通孔形成工程(S32)後におけるベース基板用ウエハ40の凸部42の高さと同等に形成されている。
【0050】
そして、底壁部64の中央部(受型凹部66に囲まれた領域)には、厚さ方向に向けて窪み形成された複数の鋲体収容部67が形成されている。これら鋲体収容部67は、その中心軸がベース基板用ウエハ40の貫通孔24,25の中心軸に一致するように形成された円錐台状の凹部である。各鋲体収容部67の内面は、鋲体収容部67の内径が底部側から開口側にかけて漸次大きくなるテーパ形状に形成されている。この場合、鋲体収容部67の底部側の径は、例えば0.20mm程度、開口側の径は例えば0.22mm程度、鋲体収容部67の深さは、0.20mm程度に形成され、鋲体収容部67の内面の勾配は例えば10°程度に形成される。
【0051】
そして、図9(b)に示すように、芯材部挿入工程(S33)では、ベース基板用ウエハ40を、第2面40bが上方を向くように受型63内にセットする。この場合、ベース基板用ウエハ40の第1面40aが底壁部64に突き当たるとともに、ベース基板用ウエハ40の凸部42が受型凹部66内に入り込んだ状態で、ベース基板用ウエハ40が受型63にセットされる。この状態で、振り込み機を用いて貫通孔24,25の小径側(第2面40b側)から鋲体30の芯材部28を挿入する。
【0052】
すると、土台部29の表面が、ベース基板用ウエハ40の第2面40bに当接するまで、芯材部28が貫通孔24,25内に挿入される。この際、芯材部28は、土台部29の表面から法線方向に突出しているため、土台部29がベース基板用ウエハ40に接触するまで挿入するだけの簡単な作業で、芯材部28の延在方向とベース基板用ウエハ40の厚さ方向と一致させた状態で、芯材部28を貫通孔24,25内に挿入できる。したがって、芯材部挿入工程(S33)時における作業性を向上することができる。
【0053】
また、芯材部28の長さは、ベース基板用ウエハ40の厚さより長く形成されているので、芯材部28が貫通孔24,25内に挿入された状態では、芯材部28の先端部がベース基板用ウエハ40の第1面40aから突出している。そのため、芯材部28の先端側(一端側)が鋲体収容部67内に入り込んだ状態で保持される。この際、鋲体収容部67が底部側から開口側に向けて広がるテーパ形状に形成されているため、鋲体収容部67の開口側の径は、芯材部28の径よりも十分大きくなっている。そのため、芯材部28の先端側が鋲体収容部67の開口側からスムーズに入り込む。
【0054】
なお、この状態で鋲体収容部67の底部と芯材部28の先端面との間には僅かに隙間を有している。そのため、後述する溶着工程(S34)において、加熱による芯材部28の膨張を逃がすことができる。また、加圧型62でベース基板用ウエハ40押圧する時に、加圧型62から芯材部28へ圧力がかからず、芯材部28の変形や変位を防ぐことができる。
【0055】
(溶着工程)
続いて、ベース基板用ウエハ40を加熱し、芯材部28(鋲体30)にベース基板用ウエハ40を溶着させる工程を行う(S34)。
図10(a)に示すように、溶着工程(S34)は、受型63内にセットされたベース基板用ウエハ40を加圧型62で押圧しつつ加熱して行う。具体的に、鋲体30(芯材部28)が挿入されたベース基板用ウエハ40の第2面40bに接するように、成形型61の加圧型62をセットし、受型63と加圧型62とでベース基板用ウエハ40を厚さ方向で挟持する。
この状態で、まず成形型61を金属製のメッシュベルトの上に乗せ、大気雰囲気下に保持された加熱炉内に入れて加熱する。そして、加熱炉内に配置されたプレス機等を利用して、ベース基板用ウエハ40を厚さ方向に沿って、例えば30〜50g/cm2の圧力で加圧する。なお、加熱温度は、ベース基板用ウエハ40のガラス材料の軟化点(例えば545℃)よりも高い温度とし、例えば約900℃とする。
【0056】
そして、ベース基板用ウエハ40を高温状態で加圧することによって、溶融したガラス材料(ベース基板用ウエハ40)が成形型60内を流動して、芯材部28と貫通孔24,25との隙間を塞ぎ、ベース基板用ウエハ40が芯材部28に溶着して、芯材部28が貫通孔24,25を塞ぐ状態となる。
また、本実施形態では、溶着工程(S34)において、ベース基板用ウエハ40が溶融して成形型60内を流動すると、加圧型62により鋲体30がベース基板用ウエハ40の厚さ方向に沿って押し込まれるため、芯材部28の先端面が鋲体収容部67の底面に突き当たる。これにより、芯材部28の延在方向がベース基板用ウエハ40の厚さ方向に一致した状態で溶着されることになる。なお、この際、芯材部28の先端側(一端側)における半分程度が鋲体収容部67内に入り込んだ状態で位置決めされる。
【0057】
ところで、上述した芯材部挿入工程(S33)において、仮に芯材部28が貫通孔24,25内に傾いて挿入されたり、溶着工程(S34)において、鋲体30が斜め方向(ベース基板用ウエハ40の厚さ方向に交差する方向)に沿って移動したりする場合等には、芯材部28が傾いたり、芯材部28が所望の位置からずれたりした状態で溶着される虞がある。
【0058】
これに対して、本実施形態では、鋲体収容部67の内面がテーパ形状に形成されているため、ベース基板用ウエハ40が溶融した状態で鋲体30が押し込まれると、図11(a)に示すように、芯材部28の先端が鋲体収容部67の内面(テーパ面)に接触する。すると、図11(b)に示すように、芯材部28は、先端が鋲体収容部67の内面に倣って押し込まれることで、鋲体収容部67の底部に向かうにつれ、鋲体収容部67の径方向中央部に導かれる。さらに、芯材部28の延在方向とベース基板用ウエハ40の厚さ方向と一致するように、芯材部28が除々起き上がっていく。その後、さらに鋲体30が押し込まれることで、芯材部28の先端面が鋲体収容部67の底面に突き当たる。これにより、図11(c)に示すように、芯材部28の延在方向とベース基板用ウエハ40の厚さ方向とが一致した状態で、芯材部28の先端部が鋲体収容部67内の径方向中央部に収容されることになる。
【0059】
次に、溶着工程の加熱時の900℃から徐々に温度を下げ、ベース基板用ウエハ40を冷却する(S35)。これにより、図10(b)に示すような、鋲体30の芯材部28が貫通孔24,25を塞いだ状態のベース基板用ウエハ40が形成される。この際、ベース基板用ウエハ40の第1面40aからは凸部42及び芯材部28の先端側が突出するとともに、第2面40b側には鋲体30の土台部29が埋設され、土台部29と第2面40bとが面一になるように配置される。
【0060】
(研磨工程)
続いて、ベース基板用ウエハ40を研磨する(S36)。具体的には、第1面40aにおける凸部42及び芯材部28の突出部分を研磨して除去するとともに、第2面40bを研磨して第2面40b内に埋設された土台部29を除去する。これにより、図10(c)に示すように、ベース基板用ウエハ40の表面と貫通電極13,14(芯材部28)の表面とが、略面一な状態となる。このようにして、ベース基板用ウエハ40に貫通電極13,14が形成される。なお、土台部29や芯材部28の突出した部分は除去せずに、そのまま使用してもよい。
【0061】
次に、ベース基板用ウエハ40の第1面40aに導電性材料をパターニングして、接合膜23を形成する接合膜形成工程を行う(S37)とともに、ベース基板用ウエハ40の第1面40aに導電性材料をパターニングして、引き回し電極形成工程を行う(S38)。このようにして、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)が終了する。
【0062】
そして、上述した圧電振動片作製工程(S10)で作製した複数の圧電振動片4を、ベース基板用ウエハ40の各引き回し電極9,10上に、それぞれ金等のバンプBを介してマウントする(S40)。そして、上述した各基板用ウエハ40,50の作製工程で作成されたベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる(S50)。これにより、マウントされた圧電振動片4が、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部16とベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0063】
両基板用ウエハ40,50の重ね合わせ後、重ね合わせた2枚の各基板用ウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、図示しない保持機構により各基板用ウエハ40,50の外周部分をクランプした状態で、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する(S60)。これにより、圧電振動片4をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合したウエハ接合体70を得ることができる。
その後、ベース基板用ウエハ40の第2面40b側に、一対の貫通電極13,14にそれぞれ電気的に接続する一対の外部電極21,22を形成する(S70)。そして、ウエハ接合体70を切断線Mに沿って個片化する切断工程(S80)を行い、内部の電気特性検査(S90)を行うことで圧電振動片4を収容した圧電振動子1が形成される。
【0064】
このように、本実施形態では、受型63に芯材部28の先端を収容可能な鋲体収容部67を形成し、鋲体収容部67の内面を底部側から開口側にかけて広がるテーパ形状に形成する構成とした。
この構成によれば、溶着工程(S34)において、ベース基板用ウエハ40を押圧しつつ、加熱することで、ベース基板用ウエハ40が成形型60内で流動して芯材部28と貫通孔24,25との隙間を塞ぐとともに、ベース基板用ウエハ40が芯材部28に溶着されることとなる。そのため、貫通電極13,14(芯材部28)と貫通孔24,25との間に隙間ができるのを抑制し、キャビティC内の気密性を確保できる。
ここで、鋲体収容部67内に芯材部28の先端側が保持された状態でベース基板用ウエハ40に鋲体30が溶着されることになるので、溶着工程(S34)において、鋲体30が所望の位置からずれたり、傾いたりするのを抑制できる。
特に、鋲体収容部67が底部側から開口側に向けて広がるテーパ形状に形成されているため、芯材部28の先端側が鋲体収容部67の開口側からスムーズに入り込む。一方、芯材部28が鋲体収容部67の底部側に向かうにつれ、芯材部28の側面と鋲体収容部67の内面との間が狭くなるため、鋲体30を鋲体収容部67の底部側まで押し込むことで、鋲体収容部67内の径方向中央部で芯材部28をずれなく保持できる。
【0065】
さらに、仮に芯材部28が貫通孔24,25内に傾いて挿入された場合等においては、溶着工程(S34)においてベース基板用ウエハ40を押圧することで、芯材部28の先端が鋲体収容部67の内面(テーパ面)に倣って移動することになる。これにより、芯材部28が鋲体収容部67の底部側に向かうにつれ、鋲体収容部67の径方向中央部に導かれるとともに、芯材部28が除々起き上がっていく。したがって、芯材部28が鋲体収容部67の底面に到達した際には、鋲体収容部67の径方向中央部において、芯材部28の延在方向とベース基板用ウエハ40の厚さ方向とが一致するように位置決めされる。これにより、貫通電極13,14の位置精度を向上できる。また、この際、芯材部28の半分程度が鋲体収容部67内に保持された状態で溶着されるため、貫通電極13,14の位置精度を確実に向上できる。
【0066】
しかも、本実施形態では、芯材部挿入工程(S33)において、受型63内にベース基板用ウエハ40を挿入する際に、芯材部28の先端側が鋲体収容部67内に収容されることになる。すなわち、芯材部28を鋲体収容部67内に収容した状態で溶着工程(S34)に移行できるので、溶着工程(S34)時における鋲体30の流動を確実に抑制できる。
【0067】
そして、本実施形態の圧電振動子1では、貫通電極13,14の位置精度を向上できるため、貫通電極13,14と電極膜(外部電極21,22や引き回し電極9,10)との導通性を確保して、信頼性の高い圧電振動子1を提供できる。
【0068】
なお、万が一芯材部28が鋲体収容部67内で傾いた状態で溶着された場合であっても、その傾きを鋲体収容部67の内面の勾配までに抑えることができる。また、芯材部28が鋲体収容部67の底部側まで到達していれば、芯材部28の先端側は鋲体収容部67の径方向中央部に配置される。そのため、少なくとも芯材部28が鋲体収容部67に保持される第1面40a側では、貫通電極13,14を所望の位置に形成することができる。
ここで、本実施形態の圧電振動子1において、ベース基板用ウエハ40(ベース基板2)の第1面40a(第1面2a)は、引き回し電極9,10を介して圧電振動片4が実装されることになる。そのため、ベース基板用ウエハ40の第1面40aは、広範囲で外部電極21が形成される第2面40b(第2面2b)側に比べて貫通電極13,14の位置精度が高く要求される。
そこで、本実施形態では、ベース基板用ウエハ40の第1面40a側に、引き回し電極9,10を形成することで、万が一芯材部28が鋲体収容部67内で傾いて保持された状態で溶着された場合であっても、引き回し電極9,10と貫通電極13,14との導通性を確保できる。
【0069】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図12を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図12に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0070】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、該圧電振動子1内の圧電振動片4が振動する。この振動は、圧電振動片4が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0071】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、上述したように圧電振動片4と貫通電極13,14との導通性が安定して確保されている圧電振動子1を用いているため、発振器100自体も同様に導通性が安定して確保され、作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0072】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や層構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、本発明に係るパッケージの製造方法を使用しつつ、パッケージの内部に圧電振動片を封入して圧電振動子を製造したが、パッケージの内部に圧電振動片以外の電子部品を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することも可能である。
また、上述した実施形態では、本発明のパッケージの製造方法を圧電振動子に適用下場合について説明したが、これに限らず、ICやLSI、センサ類に適用しても構わない。
また上述した実施形態では、貫通孔形成用型57によりベース基板用ウエハ40を加熱成形することで貫通孔24,25を形成しているが、他にサンドブラスト法等でベース基板用ウエハ40に貫通孔24,25を形成してもよい。
さらに、上述した実施形態では、内面がテーパ状に形成された鋲体収容部67が芯材部28を保持する構成としたが、これに限らず土台部29を収容する構成としてもよく、また芯材部28及び土台部29の双方を収容する構成にしても構わない。
【0073】
また、上述した実施形態では、ソーダ石灰ガラスからなる基板用ウエハ40,50に対して加熱成形する場合について説明したが、これに限らず、ホウケイ酸ガラス(軟化点温度は820℃程度)を加熱成形しても構わない。
さらに、上述した実施形態では、本発明を、ATカット型の圧電振動片(厚み滑り振動片)を用いた圧電振動子に採用した場合について説明したが、これに限らず、音叉型の圧電振動片を用いた圧電振動子に採用しても構わない。
【符号の説明】
【0074】
1…圧電振動子 2…ベース基板(貫通電極形成基板) 4…圧電振動片(電子部品) 13,14…貫通電極 24,25…貫通孔 28…芯材部 29…土台部 30…鋲体 61…成形型 62…加圧型 63…受型 67…鋲体収容部(収容部) 100…発信器 C…キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合された複数の基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、
前記複数の基板のうち、貫通電極形成基板を厚さ方向に貫通し、前記キャビティの内側と前記複数の基板の外側とを導通させる貫通電極を形成する貫通電極形成工程を有し、
前記貫通電極形成工程は、
前記貫通電極形成基板に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記貫通孔内に導電性の金属ピンを挿入する金属ピン配置工程と、
成形型により前記貫通電極形成基板を厚さ方向両側から押圧しつつ、加熱し、前記貫通電極形成基板を前記金属ピンに溶着させる溶着工程とを有し、
前記成形型には、前記金属ピンの少なくとも一端側を収容可能な収容部が形成され、
前記収容部は、内径が底部側から開口側にかけて広がるテーパ形状に形成されていることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項2】
前記金属ピンの長さは、前記貫通電極形成基板の厚さよりも長く形成され、
前記金属ピン配置工程では、前記金属ピンを前記貫通電極形成基板から厚さ方向に突出するように挿入することを特徴とする請求項1記載のパッケージの製造方法。
【請求項3】
前記金属ピンは、土台部と、前記土台部の表面に立設され、前記金属ピン配置工程において前記貫通孔に挿入される芯材部と、を有していることを特徴とする請求項1または請求項2記載のパッケージの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のパッケージの製造方法により製造されたことを特徴とするパッケージ。
【請求項5】
請求項4記載のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項6】
請求項5記載の前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−23610(P2012−23610A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160642(P2010−160642)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】