説明

パワーデバイス

【課題】ポリイミド膜上に設けた電極パッドに導体バンプなしにAlワイヤを確実に接合でき、ポリイミド膜からの電極パッドの剥離や電極パッドとAlワイヤとの接合不良を防止できるパワーデバイスを提供する。
【解決手段】絶縁基板1上に設けられた半導体素子(2,3,6)と、絶縁基板1上に形成され、半導体素子(2,3,6)を覆う軟質ポリイミド膜11と、軟質ポリイミド膜11上に形成された電極パッド9と、電極パッド9にワイヤボンディングにより一端が接合されたAlワイヤ12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パワーデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置としては、ポリイミド膜上に形成された電極パッドに導体バンプを設けて、その導体バンプを介して電極パッドにAuワイヤをボンディングするものがある(例えば、特開2006−253289号公報(特許文献1)参照)。しかしながら、上記半導体装置においても、ボンディング時のポリイミド膜と電極パッドとの剥離や密着性の悪化を防ぐことは難しい。
【0003】
また、白物家電などで用いるパワーデバイスに求められる電流量は5A以上であり、ワイヤの長さを3mmとすると、1本のワイヤで所望の電流を流すためには、電流5Aで70μm以上のワイヤ径が必要となる。このような場合、ポリイミド膜上に電極パッドを設けたパワーデバイスでは、大きな径のワイヤを使うときに大きな導体バンプが必要となると共に、電極パッドとワイヤとの良好な接合が得られないという問題がある。
【0004】
また、このようなパワーデバイスで大径のワイヤを接合するために、コスト面からAuワイヤの代わりにAlワイヤを用いた場合、Alワイヤ先端を融かして導体バンプを作ることが困難である。また、Alワイヤは、Auワイヤに比べ、ボンディングに必要な荷重大きく、ワイヤ径が大きくなるほど、より大きな荷重が必要となるため、例え導体バンプを設けたとしても、ボンディング時のポリイミド膜と電極パッドとの剥離や密着性の悪化を防ぐことは難しい。
【0005】
そこで、本出願人は、ポリイミド膜上に形成された電極パッドに直接Alワイヤを接合したパワーデバイスを考え、試作を繰り返した。しかしながら、このようなパワーデバイスは、ポリイミド膜からの電極パッドの剥離や電極パッドとAlワイヤとの接合不良などが生じるという問題があった。
【0006】
なお、このポリイミド膜上に形成された電極パッドに直接Alワイヤを接合するパワーデバイスは、この発明を理解しやすくするために説明するものであって、公知技術ではなく、従来技術ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−253289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明の課題は、ポリイミド膜上に設けた電極パッドに導体バンプなしにAlワイヤを確実に接合でき、ポリイミド膜からの電極パッドの剥離や電極パッドとAlワイヤとの接合不良を防止できるパワーデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明のパワーデバイスは、
基板と、
上記基板上に設けられた半導体素子と、
上記基板上に形成され、上記半導体素子を覆う軟質ポリイミド膜と、
上記軟質ポリイミド膜上に形成された電極パッドと、
上記電極パッドにワイヤボンディングにより一端が接合されたAlワイヤと
を備えたことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、軟質ポリイミド膜上に形成された電極パッドにワイヤボンディングによりAlワイヤの一端を接合することによって、軟質ポリイミド膜上に設けた電極パッドに導体バンプなしにAlワイヤを確実に接合でき、軟質ポリイミド膜からの電極パッドの剥離や電極パッドとAlワイヤとの接合不良などを防止できる。
【0011】
また、一実施形態のパワーデバイスでは、
上記軟質ポリイミド膜の引張弾性率は、2.2GPa〜6.1GPaである。
【0012】
上記実施形態によれば、軟質ポリイミド膜の引張弾性率を2.2GPa以上かつ6.1GPa以下にすることによって、軟質ポリイミド膜と電極パッドとの間で膜剥がれが生じることなく、十分な接合強度を有する電極パッド−ワイヤ接合を形成することができる。
【0013】
また、一実施形態のパワーデバイスでは、
上記半導体素子表面の配線と上記電極パッドとの間の上記軟質ポリイミド膜の最小膜厚は、4μm〜10μmである。
【0014】
上記実施形態によれば、半導体素子表面の配線と電極パッドとの間の軟質ポリイミド膜の最小膜厚を4μm〜10μmとすることによって、半導体素子表面の配線と電極パッドとの間で耐圧600V以上を確保できる。
【0015】
また、一実施形態のパワーデバイスでは、
上記Alワイヤは、Siを1wt%含むAlからなる。
【0016】
上記実施形態によれば、Siを1wt%含むAlからなるAlワイヤを用いることによって、Alワイヤの強度を向上できると共に、良好な電極パッド−ワイヤ接合を形成できる。
【0017】
また、一実施形態のパワーデバイスでは、
上記Alワイヤの径は、30μm〜600μmである。
【0018】
上記実施形態によれば、ワイヤ径が30μm〜600μmのAlワイヤを用いることによって、大きな電流を流すことができる。また、太いワイヤ径のAlワイヤであっても、軟質ポリイミド膜上に形成された電極パッドにAlワイヤを接合するので、軟質ポリイミド膜と電極パッドとの間で膜剥がれが生じることなく、十分な接合強度を有する電極パッド−ワイヤ接合を形成することができる。
【0019】
また、一実施形態のパワーデバイスでは、
上記電極パッドの材料は、Al、Siを1wt%含むAl、Cu、Au、Ag、Tiの少なくとも1つである。
【0020】
上記実施形態によれば、Al、Siを1wt%含むAl、Cu、Au、Ag、Tiの少なくとも1つの材料を用いた電極パッドは、導体バンプなしにAlワイヤを確実に接合でき、軟質ポリイミド膜からの電極パッドの剥離や電極パッドとAlワイヤとの接合不良などを防止できる。
【発明の効果】
【0021】
以上より明らかなように、この発明のパワーデバイスによれば、ポリイミド膜上に設けた電極パッドに導体バンプなしにAlワイヤを確実に接合でき、ポリイミド膜からの電極パッドの剥離や電極パッドとAlワイヤとの接合不良を防止できるパワーデバイスを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1はこの発明の実施の一形態のパワーデバイスの縦断面図である。
【図2】図2は上記パワーデバイスのワイヤ引張強度試験結果を示す図である。
【図3】図3は上記ワイヤ引張強度試験における膜剥がれ状態を示す図である。
【図4】図4は上記ワイヤ引張強度試験におけるワイヤ切れ状態を示す図である。
【図5】図5は上記ワイヤ引張強度試験におけるワイヤ切れ状態を示す図である。
【図6】図6は上記ワイヤ引張強度試験における膜剥がれ状態を示す図である。
【図7】図7はウェッジツールを用いたAlワイヤのボンディングを説明する図である。
【図8】図8はウェッジツールを用いたAlワイヤのボンディングを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明のパワーデバイスを図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0024】
図1はこの発明の実施の一形態のパワーデバイスの縦断面図を示している。この実施の形態のパワーデバイスは、図1に示すように、絶縁基板1上に配置された半導体チップ基板2と、半導体チップ基板2上に形成されたSiNからなるゲート絶縁膜3と、ゲート絶縁膜3上に形成されたAu/W/Tiからなるゲート電極6と、ゲート絶縁膜3上かつゲート電極6を覆うように形成されたSiNからなる無機絶縁膜4と、半導体チップ基板2上かつゲート絶縁膜3の一方の側に形成されたソース電極5と、半導体チップ基板2上かつゲート絶縁膜3の他方の側に形成されたドレイン電極7と、半導体チップ基板2上に形成された軟質ポリイミド膜11と、その軟質ポリイミド膜11上に形成された電極パッド8,9と、絶縁基板1上かつ半導体チップ基板2が配置されていない領域に形成された電極パターン10とを備えている。上記電極パッド8はソース電極5の上端と接続され、電極パッド9はドレイン電極7の上端と接続されている。そして、上記電極パッド9と電極パターン10とをAlワイヤ12を介して接続している。図1において、13,14はボンディング部である。
【0025】
上記半導体チップ基板2とゲート絶縁膜3とゲート電極6で半導体素子を形成している。この半導体素子表面の配線の一例としてのゲート電極6と電極パッド8,9との間にある軟質ポリイミド膜11の最小膜厚Dを4μm以上かつ10μm以下としている。この軟質ポリイミド膜11の引張弾性率は、2.2GPa〜6.1GPaである。
【0026】
上記絶縁基板1は、セラミック基板などを用いている。また、ソース電極5とドレイン電極7は、Au/Tiなどからなる。また、電極パターン10は、Au,Cu,Alの少なくとも1つからなる。
【0027】
この実施の形態では、ゲート絶縁膜3の膜厚を30nmとし、無機絶縁膜4の膜厚を150nmとしている。また、電極パッド8,9は、膜厚50nmのTi膜と膜厚3μmのAl−Si膜(Siを1wt%含むAl)とを積層して形成している。
【0028】
ここで、「引張弾性率」は、JIS K 7161規格における引張弾性率であり、サンプルの作製方法は、ベアのSi基板上にポリイミド膜を塗布し、表1に示す硬化条件に従って熱処理炉内でベークを行う。その後、所望のサイズにサンプルを切り出し、希釈フッ酸にサンプルを浸漬させ、Si基板からポリイミド膜を剥離する。そして、剥離した後のポリイミド膜に対してJIS K 7161規格に従って引張弾性率の測定を行う。
【0029】
【表1】

【0030】
図2は上記パワーデバイスのワイヤ引張強度試験の結果を示している。図2において、横軸は引張弾性率[GPa]を表し、縦軸は引張強度[mN]を表している。
【0031】
このワイヤ引張強度試験の条件は、軟質ポリイミド膜11の膜厚を7μmとし、Alワイヤ12の径を250μmとしている。また、このワイヤ引張強度試験では、JEITA ED−4703 K−112規格におけるワイヤボンド強度(ワイヤプル)を試験している。
【0032】
また、図3は上記ワイヤ引張強度試験における膜剥がれ状態を示している。図3において、31は電極パッド、32はAlワイヤである。電極パッド31は、引張弾性率が2.0GPaのポリイミド膜(図示せず)上に形成されている。
【0033】
図3の中央部分Aに示すように、Alワイヤ32が接合されていた電極パッド31の膜剥がれが生じた。
【0034】
図4は上記ワイヤ引張強度試験におけるワイヤ切れ状態を示している。図4において、41は電極パッド、42はAlワイヤである。電極パッド41は、引張弾性率が2.2GPaのポリイミド膜(図示せず)上に形成されている。
【0035】
図4では、電極パッド41とAlワイヤ42との接合箇所近傍の部分BでAlワイヤ42が切断された。すなわち、引張強度がワイヤ破断強度以上でワイヤ切れを起こしたもので、軟質ポリイミド膜と電極パッド41との間で膜剥がれが生じることなく、十分な接合強度を有する電極パッド−ワイヤ接合が形成されている。
【0036】
図5は上記ワイヤ引張強度試験におけるワイヤ切れ状態を示している。図5において、51は電極パッド、52はAlワイヤである。電極パッド51は、引張弾性率が6.1GPaのポリイミド膜(図示せず)上に形成されている。
【0037】
図5では、電極パッド51とAlワイヤ52との接合部分から離れた図示しない位置でAlワイヤ52が切断された。すなわち、引張強度がワイヤ破断強度以上でワイヤ切れを起こしたもので、軟質ポリイミド膜と電極パッド51との間で膜剥がれが生じることなく、十分な接合強度を有する電極パッド−ワイヤ接合が形成されている。
【0038】
図6は上記ワイヤ引張強度試験における膜剥がれ状態を示している。図6において、61は電極パッドである。電極パッド61は、引張弾性率が8.8GPaのポリイミド膜(図示せず)上に形成されている。
【0039】
図6の中央部分に示すように、Alワイヤ(図示せず)が接合されていた電極パッド61の膜剥がれが生じた。
【0040】
Alワイヤは、Auワイヤに比べ、ボンディングに必要な荷重大きく、例えばワイヤ径が50μmのときのボンディング荷重は、Auワイヤで40gfとなり、Alワイヤで60gfとなる。また、ワイヤ径が大きくなるにつれて、より大きなボンディング荷重が必要となり、Alワイヤの径が250μmではボンディング荷重が550gfとなる。
【0041】
また、図7,図8はこの実施の形態の半導体装置のAlワイヤ12のボンディングについて説明する図である。
【0042】
ここでは、超音波ワイヤボンダ(超音波工業製、型番USW−20ZD60S)を用いて、下記の条件でAlワイヤのボンディングを行った。
ワイヤ種類 : Alワイヤ(ワイヤ径250μm)
ステージ温度 : 室温
ボンディング条件 : 超音波出力 1.5W
超音波印加時間 150msec
ボンディング荷重 550gf
【0043】
図7,図8に示すウェッジツール20により、Alワイヤ12に超音波を印加すると共にボンディング荷重550gfを印加し、Alワイヤ12と電極パッド9を接合する。ここで、図7に示すウェッジツール20のAlワイヤ12の軸方向の寸法は500μmであり、図8に示すウェッジツール20のAlワイヤ12の軸に直交する方向の寸法は300μmである。
【0044】
まず、Alワイヤ12に荷重を加えながら超音波を印加することにより、チップのアルミ蒸着膜表面に成長している酸化膜などの不純物を破壊し、正常な金属膜表面を露出(メカニカルクリーニング作用)させる。その上で、超音波のエネルギーにより、Alワイヤ12に塑性変形を起こし、電極パッド9とAlワイヤ12との界面で凝集核層を形成して接合する。
【0045】
ここで、ボンディング荷重が軽すぎると、平面上で超音波が暴れる状態となり、ボンディングツールと電極パッドが同時に超音波の振幅、つまり、摩擦が上手く伝わらず、接合不良になる。
【0046】
なお、この実施の形態では、断面略円形のAlワイヤについて行ったが、リボン状のAlワイヤでは、用いるウェッジツールの形状が異なるが、ウェッジツールによりAlワイヤに超音波と荷重を印加する原理は同じである。
【0047】
表2は、下記の条件で行ったワイヤボンディングの性能評価試験の結果を示している。
Alワイヤのワイヤ径:300μm
ボンディング荷重 : 550g
超音波出力 : 1.6W
超音波印加時間 : 150msec
電極パッド : 膜厚50nmのTi膜と膜厚3μmのAl−Si膜(Siを1wt%含むAl)
【0048】
ここで、「○」印は、引張強度がワイヤ破断強度以上でワイヤ切れを起こしたもの、「△」印は、ボンディング時に電極パッドのワイヤが接合できなかったもの、「▲」印は、ボンディング時に膜剥がれを起こしたものである。
【0049】
【表2】

【0050】
また、表3は、下記の条件で行ったワイヤボンディングの性能評価試験の結果を示している。
Alワイヤのワイヤ径:30μm
ボンディング荷重 : 25g
超音波出力 : 1.6W
超音波印加時間 : 30msec
電極パッド : 膜厚50nmのTi膜と膜厚3μmのAl−Si膜(Siを1wt%含むAl)
【0051】
【表3】

【0052】
また、表4は、下記の条件で行ったワイヤボンディングの性能評価試験の結果を示している。
Alリボンワイヤのワイヤ径 : 幅2mm×厚さ0.15mm
ボンディング荷重 : 2000g
超音波出力 : 2.0W
超音波印加時間 : 50msec
電極パッド : 膜厚50nmのTi膜と膜厚3μmのAl−Si膜(Siを1wt%含むAl)
【0053】
【表4】

【0054】
〔軟質ポリイミド膜の引張弾性率について〕
引張弾性率が2.2GPa未満のポリイミド膜のように硬度が柔らかいと、ボンディング時、ポリイミド膜が超音波のエネルギーを吸収してしまい、電極パッドとアルミワイヤとの界面の接合に要するエネルギーが不足し、ボンディング不良となるものと考えられる。
【0055】
また、引張弾性率が6.1GPaを越えるポリイミド膜のように硬度が硬いと、超音波のエネルギーは、ポリイミド膜に吸収されず、電極パッドとアルミワイヤの接合に効率よく活用される。しかしながら、ポリイミド膜が硬すぎると、超音波の発振により、ポリイミド膜近傍は過度に発熱し、ポリイミド膜が有機膜であるが故に熱損傷や機械的損傷を引き起こして劣化し、電極パッドである金属膜とポリイミド膜の密着性が損なわれるものと考えられる。
【0056】
このため、引張弾性率が2.2GPa未満または6.1GPaを越えるポリイミド膜では、電極パッドの膜剥がれを引き起こし、ボンディング不良となる。
【0057】
〔軟質ポリイミド膜の膜厚について〕
引張弾性率が2.2GPa〜6.1GPaでかつ膜厚が4μm〜10μmの軟質ポリイミド膜において、膜厚が厚いほど、ボンディング時の超音波の減衰が少なく、エネルギーロスが小さいため、超音波エネルギーを、ワイヤ接合時のエネルギーとして効率よく変換できる。しかし、軟質ポリイミド膜の膜厚が10μmよりも厚くなると、ワイヤ接合時に必要とされるエネルギーに比べ、過度なエネルギーとなってしまい、上記ポリイミド膜の硬度が硬い場合と同様に、超音波の発振により、ポリイミド膜近傍は過度に発熱し、ポリイミド膜が有機膜であるが故に熱損傷や機械的損傷を引き起こして劣化し、電極パッドである金属膜とポリイミド膜の密着性が損なわれるものと考えられる。
【0058】
上記構成のパワーデバイスによれば、軟質ポリイミド膜11上に形成された電極パッド9にワイヤボンディングによりAlワイヤ12の一端を接合することによって、軟質ポリイミド膜11上に設けた電極パッド9に導体バンプなしにAlワイヤ12を確実に接合でき、軟質ポリイミド膜11からの電極パッド9の剥離や電極パッド9とAlワイヤ12との接合不良などを防止することができる。
【0059】
また、軟質ポリイミド膜11の引張弾性率を2.2GPa以上かつ6.1GPa以下にすることによって、軟質ポリイミド膜11と電極パッド9との間で膜剥がれが生じることなく、十分な接合強度を有する電極パッド9ワイヤ接合を形成することができる。
【0060】
また、半導体素子表面の配線と電極パッド9との間の軟質ポリイミド膜11の最小膜厚を4μm〜10μmとすることによって、半導体素子表面の配線と電極パッド9との間で耐圧600V以上を確保できる。
【0061】
また、Siを1wt%含むAlからなるAlワイヤ12を用いることによって、Alワイヤ12の強度を向上できると共に、良好な電極パッド−ワイヤ接合を形成できる。
【0062】
また、ワイヤ径が30μm〜600μmのAlワイヤを用いることによって、大きな電流を流すことができると共に、太いワイヤ径のAlワイヤであっても、軟質ポリイミド膜上に形成された電極パッドにAlワイヤを接合するので、軟質ポリイミド膜と電極パッドとの間で膜剥がれが生じることなく、十分な接合強度を有する電極パッド−ワイヤ接合を形成することができる。なお、この発明の半導体装置では、ワイヤ径が70μm〜500μmのAlワイヤを用いるのがより好ましく、この場合、1本のAlワイヤで5Aの電流を流すことができ、白物家電などで用いるパワーデバイスに求められる電流量が得られる。
【0063】
また、Al、Siを1wt%含むAl、Cu、Au、Ag、Tiの少なくとも1つの材料を用いた電極パッドは、導体バンプなしにAlワイヤを確実に接合でき、軟質ポリイミド膜11からの電極パッドの剥離や電極パッドとAlワイヤとの接合不良などを防止することができる。
【0064】
上記実施の形態では、半導体チップ基板2とゲート絶縁膜3とゲート電極6で形成された半導体素子を軟質ポリイミド膜11で覆ったが、半導体素子はこれに限らず、他の構成の半導体素子でもよい。なお、電極パッドは、上記材料に限らず、他の材料や種々の合金を用いてもよく、それらを積層した多層構造であってもよい。
【0065】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0066】
この発明のパワーデバイスは、冷蔵庫や空気調和機などの白物家電、液晶TV(television:テレビジョン)やLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)照明、ソーラーパワーコンディショナなどの電源コントロール機器などの分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1…絶縁基板
2…半導体チップ基板
3…ゲート絶縁膜
4…無機絶縁膜
5…ソース電極
6…ゲート電極
7…ドレイン電極
8,9,31,41,51,61…電極パッド
10…電極パターン
11…軟質ポリイミド膜
12,32,42,52…Alワイヤ
13,14…ボンディング部
20…ウェッジツール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
上記基板上に設けられた半導体素子と、
上記基板上に形成され、上記半導体素子を覆う軟質ポリイミド膜と、
上記軟質ポリイミド膜上に形成された電極パッドと、
上記電極パッドにワイヤボンディングにより一端が接合されたAlワイヤと
を備えたことを特徴とするパワーデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーデバイスにおいて、
上記軟質ポリイミド膜の引張弾性率は、2.2GPa〜6.1GPaであることを特徴とするパワーデバイス。
【請求項3】
請求項2に記載のパワーデバイスにおいて、
上記半導体素子表面の配線と上記電極パッドとの間の上記軟質ポリイミド膜の最小膜厚は、4μm〜10μmであることを特徴とするパワーデバイス。
【請求項4】
請求項2または3に記載のパワーデバイスにおいて、
上記Alワイヤは、Siを1wt%含むAlからなることを特徴とするパワーデバイス。
【請求項5】
請求項2から4までのいずれか1つに記載のパワーデバイスにおいて、
上記Alワイヤの径は、30μm〜600μmであることを特徴とするパワーデバイス。
【請求項6】
請求項2から5までのいずれか1つに記載のパワーデバイスにおいて、
上記電極パッドの材料は、Al、Siを1wt%含むAl、Cu、Au、Ag、Tiの少なくとも1つであることを特徴とするパワーデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−74463(P2012−74463A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216946(P2010−216946)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】