説明

ピンを差し込んで性能を補強した複合材積層構造物、前記複合材積層構造物の製造方法、装置、及び前記装置の製作方法

本発明は、複合材積層構造物の厚さ方向にピンを差し込んで複合材積層構造物の層間性能を補強するか、複数の積層部材を接触連結する、ピンを差し込んで性能を補強または複数部材を連結した複合材積層構造物、前記複合材積層構造物の製造方法、装置及び前記装置の製作方法に関する。本発明の複合材積層構造物の製造装置は、層間分離性能補強または複数の積層部材間の接触連結のためにピンを差し込む複合材積層構造物の製造装置であって、硬化前または硬化後の状態の複合材積層構造物21上にのせられて、垂直方向に形成された複数個の穴53内に、それぞれ前記複合材積層構造物21内に挿入されるピン51が備えられる下部ガイド50と、前記下部ガイド50上にのせられて、前記ピン51と対応する位置に垂直方向に移動自在に形成されるガイドピン41が備えられる上部ガイド40と、を含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材積層構造物の厚さ方向にピンを差し込んで複合材積層構造物の層間性能を補強するか、複数の積層部材を接触連結する、ピンを差し込んで性能を補強または複数部材を連結した複合材積層構造物、前記複合材積層構造物の製造方法、装置及び前記装置の製作方法に関する。
【0002】
航空宇宙及び輸送器具構造部材などの軽量化構造物によく使用されている繊維強化複合材料は、大部分、一方向または製織されたプリプレグ(prepreg)を積層して、熱と圧力を加える硬化(又は成形)過程を経ることにより製作される。このように積層硬化された複合材構造物は、厚さ方向には別途の強化材がないため、外部の衝撃などにより容易に層間が分離される層間分離現象が発生する。この層間分離は、構造物の強度を落としてしまうため、これを防止するための方法が関連分野の研究者らによって多く研究されてきた。即ち、複合材積層構造物の脆弱な層間分離特性を補強するために、stitching、z-pinning、textile、toughened matrixなどの方法に対する研究が多く行われてきた。
【背景技術】
【0003】
複合材積層構造物の層間剛性を高めるか、二つの複合材積層構造部材間の連結のための研究の中、z−ピン止め(z-pinning)技術に対する研究は、比較的最近始まった研究分野である。z−ピン止めに対して知られた従来の研究内容を簡略に説明すると、以下のようである。
【0004】
z−ピン止め方法の最初の概念は、米国特許登録第4,808,461号(1989.2.28.、以下、先行技術1)にみられる。前記先行技術1の核心概念は、ポリビニル系列のフォームにピンを厚さ方向に差し込んでおいて、上部には薄いステンレス板を付着し、下部には離型フィルムを付着した、いわゆる‘強化構造’というものを硬化時、積層する複合材の上部に位置させて硬化させることにより、硬化過程で高温高圧によりプリフォームが崩壊されつつ、ピンが積層板内部に差し込まれるようになる原理である(図1参照)。硬化が完了すると、崩壊されて圧縮されたプリフォームの残滓を除去して、その厚さだけ突出したピンを物理力で折って除去すると、積層構造物内部には、積層厚さ方向にピンが差し込まれ残っているため、層間分離性能が強化される。前記先行技術1は、このような方法と上記の‘強化構造’を特徴としているが、今まで、この概念の実用化が実際成功したという報告は、まだ知られていない。
【0005】
以後、米国特許登録第5,186,776号(1993.2.16.、以下、先行技術2)には、ピンを複合材料強化繊維束から直ちに硬化して、硬化したピンに超音波振動を付加して複合材構造物に挿入する一連の作動ができる機械装置及びその方法が開示されており、米国特許登録第5,589,015号(1996.12.31.、以下、先行技術3)には、ピンを予め差し込んでおいた圧縮可能な‘フォーム構造’に、超音波振動装置を使用して振動を付加しながら圧縮することにより、ピンを硬化前または硬化後の状態の複合材構造物に打ち込む方法及びシステムが開示されている。前記先行技術3は、実際商用化されて、F/A−18 E/Fの後部胴体ダクト構造物連結部に活用されたと知られている。以後、z−ピン止めと関連し、米国特許登録第5,667,859号(1997)、第5,800,672号(1998)、第5,919,413号(1999)、第6,190,602号(2001)、第6,291,049号(2001)、第6,405,417号(2002)、第6,436,507号(2002)などがあるが、初期の概念である‘強化構造’または‘フォーム構造’を使用する概念が持続的に維持されている。
【0006】
図1は、一般的な複合材硬化方法を示す例示図である。複合材硬化のためのモールド111上に離型材112を適用して、複合材プリプレグ積層物121をのせ、再び離型材112及びレジンを吸収するブリーダー(bleeder)113を敷いて、真空を付与するアダプター116付きフィルムバック115で全体を覆った後、縁部はシーラント117で密閉する。複合材積層構造物121を硬化させる硬化法の特徴によって、コルクダム114を使用しない場合もある。
【0007】
図2は、従来のz−ピン止め方法についての一例を示す図であって、前記先行技術1の概念を示している。ピン231が圧縮可能なフォーム232に差し込まれており、上部にはステンレス板及び下部には離型フィルムが付着された‘強化構造230’を図2のように配置して硬化させると、硬化圧力と硬化温度によりフォーム232が崩壊しつつピン231が複合材積層構造物221内部に差し込まれるようになるのである。
【0008】
図3は、従来のz−ピン止め方法に対するまた他の例示図であって、従来のz−ピン止め方法を使用し、厚さが一定ではない複合材構造物を硬化させる場合に対するものである。厚さが一定ではない複合材積層構造物を従来のz−ピン止め方法で硬化させる場合、‘強化構造330’上部のステンレス板が変形を邪魔するため困難である。たとえステンレス板を付着しなかった‘フォーム構造’を使用するとしても、ピン331の長さが一定な‘フォーム構造(330、230と類似)’を使用すると、複合材の厚さが厚い部分322と厚さが薄い部分323において、硬化条件を同時に満足することは難しい。即ち、ピン331の長さを厚い部分322に合わせると、薄い部分323の場合は、ピン331の長さが長くて、硬化圧力が複合材積層構造物323に作用しなくなり、複合材硬化の基本的な要求条件(硬化段階で複合材積層構造物の内部から発生する気泡を除去して、余分のレジンを放出するために、複合材積層構造物に7〜8気圧または材料によって20気圧程度の高圧が加えられる必要がある)を満足しないようになる。また、ピン331の長さを薄い部分323に合わせると、厚い部分322の場合は、ピン331の長さが短くて、積層構造物の厚さ方向の一部にのみピンが差し込まれる現象が発生し、z−ピン止め方法の効果が十分発揮できなくなる。したがって、従来のz−ピン止め方法によって、厚さが一定ではない複合材構造物を硬化させるためには、‘フォーム構造330’の厚さを積層構造物の厚さに合わせて製作しなければならないが、これは、圧縮可能なフォーム332構造の特性上、加工が容易ではない場合がある。
【0009】
このように、従来の先行技術は共通して、複合材積層構造物にピンを差し込むために、フォームにピンが予め差し込まれており、外部の振動荷重や硬化圧力によりフォームが圧縮崩壊されつつピンが複合材積層構造物内に差し込まれる特性を有する、いわゆる‘フォーム構造(‘強化構造’も‘フォーム構造’の一種とみられる)’を媒介体として活用しており、この‘フォーム構造’をその技術の特徴としている。ところが、このような従来の技術を利用して‘フォーム構造’を使用する場合は、ピンを差し込んだ後、圧縮崩壊されたフォームを人為的に除去しなければならなく、またピンの突出された部分も強制に破断して除去しなければならないため、素材の無駄遣い及び工程上の非効率が不可避である。また、ピンが破断されて除去された位置には、一部傷が発生する場合もあり、ピンの破断過程でピンと周辺構造物の強度に悪影響を与えるような問題点がある。
【0010】
また、このようにフォーム構造または強化構造を使用して複合材積層構造物にピンを差し込む方法は、複合材積層構造物の高さが一定ではない場合、高さによってピンの差し込まれる深さが異なってくるため、前記先行技術により製作された高さの一定ではない複合材積層構造物は、位置によって層間剛性が均一ではないという大きい問題点があった。また、高さが一定ではない複合材積層構造物にz−ピン止めする従来の方法は、装備の構成が複雑で、過程が非常に難解であるため、適用が非常に難しい問題点もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために案出されたもので、本発明の目的は、このような使い捨ての‘フォーム構造’を使用せず、関連治具を反復的に再使用してピンを差し込むことができるような、ピンを差し込んで性能を補強した複合材積層構造物、前記複合材積層構造物の製造方法、装置及び前記装置の製作方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、複合材積層構造物の高さが均一ではない場合も、全ての位置において必要な深さだけピンを差し込むことができるように、硬化後の複合材積層構造物の最終厚さと正確に一致する長さのピンを複合材積層構造物内に差し込む、ピンを差し込んで性能を補強した複合材積層構造物、前記複合材積層構造物の製造方法、装置及び前記装置の製作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記のような目的を達成するための本発明による複合材積層構造物の製造装置は、層間分離性能補強または複数の積層部材間の接触連結のためにピンを差し込む複合材積層構造物の製造装置において、硬化(curing)前または硬化後の状態の複合材積層構造物21上にのせられて、垂直方向に形成された複数個の穴53内に、それぞれ前記複合材積層構造物21内に挿入されるピン51が備えられた下部ガイド50と、前記下部ガイド50上にのせられて、前記ピン51と対応する位置に垂直方向に移動自在に形成されたガイドピン41が備えられる上部ガイド40と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0014】
また、前記複合材積層構造物の製造装置は、前記上部ガイド40上にのせられて、前記ガイドピン41が前記穴53に挿入されて前記ピン51を押圧し、前記硬化前または硬化後の状態の複合材積層構造物21に挿入されるように前記上部ガイド40に荷重を付加する荷重付加手段60をさらに含むことを特徴とする。
【0015】
また、前記荷重付加手段60は、硬化圧力による圧力荷重付加、超音波または振動による振動荷重付加、及び、重量物による重力荷重付加から選択される一つ以上の物理力を使用して荷重を付加することを特徴とする。
【0016】
また、前記ピン51は、各挿入される位置における前記硬化後の状態の複合材積層構造物21の厚さと同一な高さを有することを特徴とする。
【0017】
また、前記下部ガイド50には、前記硬化前または硬化後の状態の複合材積層構造物21への挿入工程の前に、前記ピン51の抜け落ちを防止するフィルム12が下面に付着していることを特徴とする。
【0018】
また、前記下部ガイド50は、前記上部ガイド40の移動が垂直方向にのみ案内可能なように、縁52が垂直方向に形成されたものであることを特徴とする。この際、前記上部ガイド50は、前記縁52と対応する案内部が縁に形成されたものであることを特徴とする。
【0019】
また、前記ピン51は、荷重伝達に有利であるように、上端部56が平坦な形状で、挿入時に有利であるように、下端部55が鋭い形状に形成されたものであることを特徴とする。
【0020】
また、前記ピン41は、荷重伝達に有利であるように、下端部42が平坦な形状に形成されたものであることを特徴とする。
【0021】
また、前記穴53は、その内部にパイプまたはチューブが備えられて形成されたものであることを特徴とする。
【0022】
また、前記上部ガイド40及び下部ガイド50は、金属材または複合材からなることを特徴とする。
【0023】
また、本発明による複合材積層構造物の製造装置を製作する方法は、上述のような複合材積層構造物の製造装置を製作する方法において、a1)プリプレグを積層して複合材積層構造物21を形成するか、または硬化後の状態の複合材積層構造物21を配置する段階と、b1)前記複合材積層構造物21上に離型フィルム21を設ける段階と、c1)前記ガイドピン41の長さを考慮した厚さとして下部ガイド用プリプレグを積層する段階と、d1)積層された前記下部ガイド用プリプレグ上に離型フィルム12を設ける段階と、e1)前記離型フィルム12上に、前記ガイドピン41を固定するに適した厚さとして上部ガイド用プリプレグを積層する段階と、f1)積層された前記上部ガイド用プリプレグ上に硬化圧力が加えられ、前記複合材積層構造物21、前記上部ガイド40の本体及び前記下部ガイド50の本体を同時に硬化させる段階と、g1)硬化した前記上部ガイド40の本体に前記ガイドピン41が備えられて、前記下部ガイド50の本体に前記穴53が形成される段階と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の複合材積層構造物の製造方法は、製造装置を使用した上述のような複合材積層構造物の製造方法において、a2)硬化前または硬化後の状態の複合材積層構造物21を配置する段階と、b2)前記硬化前または硬化後の状態の複合材積層構造物21内に挿入されるピン51が穴53内に備えられた下部ガイド50を配置する段階と、c2)前記下部ガイド50上に、前記ピン51と対応する位置に形成されるガイドピン41が備えられた上部ガイド40を配置する段階と、d2)前記上部ガイド40及び前記下部ガイド50が互いに近づきながら前記ガイドピン41が前記ピン51を押圧して、前記ピン51が前記硬化前または硬化後の状態の複合材積層構造物21内に挿入する段階と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の複合材積層構造物の結合方法は、製造装置を使用した上述のような複合材積層構造物の結合方法において、a3)作業テープル上に、下部複合材積層構造部材24及び上部複合材積層構造部材25、26が下から順に配置された複合材積層構造部材24、25、26を配置する段階と、b3)積層された前記複合材積層構造部材24、25、26の結合部位上に、積層された前記複合材積層構造部材24、25、26内に挿入されるピン51を穴53内に備えた下部ガイド50を配置する段階と、c3)前記下部ガイド50上に、前記ピン51と対応する位置に形成されるガイドピン41を備えた上部ガイド40を配置する段階と、d3)前記上部ガイド40及び前記下部ガイド40が互いに近づきながら前記ガイドピン41が前記ピン51を押圧し、前記ピン51を積層された前記複合材積層構造部材24、25、26の結合部位内に挿入する段階と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0026】
この際、前記下部複合材積層構造部材24及び上部複合材積層構造部材25、26は、接着、圧着または熱付着を含む第1結合加工を経て結合された状態であることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、脆弱な層間分離性能を有する複合材積層構造物の製作において、基本的には、複合材積層構造物の厚さ方向にピンを差し込むz−ピン止め方法を適用することにより、層間分離性能の補強効果があって、また、二つの複合材積層構造部材間を連結する効果もある。
【0028】
特に、本発明によると、従来のz−ピン止め方法では、使い捨ての‘フォーム構造(‘強化構造’概念を含む)’を使用することにより、材料の無駄遣いが不可避であり、厚さが一定ではない複合材積層構造物の場合は、適用が困難であった問題点を完全に克服する効果がある。即ち、本発明は、反復使用が可能な治具概念を導入することにより、材料の無駄遣いを防止して、厚さが一定ではない複合材積層構造物の場合にも容易に適用可能であって、また、厚さが一定ではない複合材積層構造物においても、高品質のピン差し込みが達成できるような大きい効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】一般的な複合材硬化方法の例示図である。
【図2】従来のz−ピン止め方法の例示図である。
【図3】従来のz−ピン止め方法の他の例示図である。
【図4】本発明のz−ピン止め方法の初期状態の例示図である。
【図5】図4のS部分詳細図である。
【図6】本発明のz−ピン止め方法の終了状態の例示図である。
【図7】二つの複合材部材間の連結状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、上記のような構成を有する本発明による、ピンを差し込んで性能を補強した複合材積層構造物、前記複合材積層構造物の製造方法、装置及び前記装置の製作方法を、添付の図面を参考して詳細に説明する。
【0031】
図4は、本発明のz−ピン止め方法の中、硬化前の状態の複合材積層構造物21を対象とする本発明の初期状態の例示図であり、図5は、図4のS部分を詳細に示す詳細図である。まず、図1の一般的な複合材硬化方法のように、硬化前の状態の複合材積層構造物21及び離型フィルム12、ブリーダー13を積層した上に、下部ガイド50及び上部ガイド40を順に配置する。本明細書において、硬化前の状態とは、プリプレグが積層されている状態をいい、硬化後の状態とは、積層されたプリプレグに硬化圧力を加えて硬化が完了された状態をいう。即ち、本発明は、プリプレグが積層された状態で、硬化と同時にピンを挿入することもでき、積層されたプリプレグに先ずピンを差し込んだ後、一般的な複合材硬化過程を行って複合材積層構造物を完成することもでき、既に硬化が完了された複合材積層構造物にピンを挿入することもできて、硬化前または硬化後の状態の複数個の複合材積層構造物を結合するためにピンを挿入することもできる。最後の場合については、後で図7の説明でより詳細に説明する。
【0032】
前記下部ガイド50には、図5に示されたように穴53が形成されていて、その内部にそれぞれピン51が備えられて、前記上部ガイド40の前記下部ガイド50と向き合う面上に、(前記下部ガイド50の)前記穴53の位置と対応する位置には、ガイドピン41が備えられる。
【0033】
前記上部ガイド40及び前記下部ガイド50が互いに接近するにつれて、前記ガイドピン41は、前記穴53の内部に進入するようになり、これによって前記ガイドピン41は、前記ピン51を押し出し、究極的に前記ピン51が前記複合材積層構造物21に差し込まれるようになる。
【0034】
前記硬化前または硬化後の状態の複合材積層構造物21内に差し込まれる前記ピン51は、硬化後の前記複合材積層構造物21の厚さに合わせてその長さが加工される。また、前記下部ガイド50の下面には、フィルム12を付着し、前記ピン51の抜け落ちを防止することが好ましい。さらに、前記ピン51の上端部56及び前記ガイドピン41の下端部42は平坦に加工することが、前記ピン51の挿入のための荷重伝達に有利であって、前記ピン51の下端部55は、よりよく差し込まれるように、鋭く加工することが有利である。また、前記穴53の上部54は、フラットヘッドなどのような形態に加工することにより、前記ガイドピン41を前記穴53に容易に案内することができる。
【0035】
前記穴53を製作するにおいて、前記ピン51及び前記ガイドピン41は非常に細い形状になっているため、前記下部ガイド50の本体上に微細な穴を加工することが難しい場合がある。このような場合、前記下部ガイド50に前記ピン51及び前記ガイドピン41より少し大きい直径を有する穴を形成して、前記形成された穴内にパイプまたはチューブを挿入して備えることにより、前記穴53の直径を適宜調節することができる。前記穴53内にパイプまたはチューブが挿入される場合、前記パイプまたはチューブの材質を、摩擦力が極めて少ない材質、即ち、滑らかな材質を使用すれば、前記ピン51及び前記ガイドピン41がより円滑に移動できるようになる。
【0036】
前記穴53は、前記ガイドピン41及び前記ピン51が通過できる程度の小さい直径を有しているため、前記ガイドピン41は、正確に前記穴53の位置で垂直方向にのみ移動しなければならない。もし、前記上部ガイド40が移動中に水平方向に動くようになると、前記ガイドピン41が前記穴53に挿入できなくなるか、破損される虞があり、また、前記ピン51も前記ガイドピン41による力をろくに受けなくなるため、前記複合材積層構造物21に正しく差し込まれることができなくなる。したがって、前記上部ガイド40が水平方向に動くことなく、垂直方向にのみ移動可能にするために、前記下部ガイド50の縁52は、前記上部ガイド40の動きを案内する形状に形成されることが好ましい。
【0037】
特に、硬化前の状態の複合材積層構造物21上に前記下部ガイド50及び上部ガイド40を順に配置した後、その上にフィルムバック15を覆って、一般的な複合材硬化方法と同様に硬化をすると、硬化前の状態である場合、積層されたプリプレグが複合材積層構造物に形成されると同時にピンが挿入されて、結果的にピンの差し込まれた複合材積層構造物が形成されるようになる。
【0038】
また、前記下部ガイド50及び上部ガイド40上に、ピン51の挿入をより容易にする荷重付加手段60を備えることが好ましい。この荷重付加手段60には、硬化圧力による圧力荷重付加、超音波または振動による振動荷重付加、重量物による重力荷重付加などのように、物理力を付加する様々な手段がいずれも可能である。図4のように、フィルムバック15で覆って、フィルムバック15の外部から硬化圧力を付加する場合は、荷重付加手段60のための別途のハードウェア装置が不要となる。
【0039】
上記のように本発明は、積層されたプリプレグに、硬化過程を通じてピンを挿入することにより、硬化後にピンの差し込まれた複合材積層構造物を形成する概念を含んでいる。また、本発明は、プリプレグ積層段階で、積層されたプリプレグにピンを先に差し込んで、その後硬化過程を通じて複合材積層構造物に完成する概念も含んでいるが、この場合は、プリプレグ積層物に先ずピンを差し込んだ後、ピンの差し込まれたプリプレグ積層物に一般的な複合材構造物の硬化方法を適用して硬化させる。また、硬化の完了した複合材構造物の場合も、超音波振動装置などを活用する高周波振動荷重付加装置などを使用して、本発明の方法と装置を使用してピンを差し込むことができる。
【0040】
図6は、上記の本発明の多様な概念の中、硬化前の状態の複合材積層構造物を対象として、硬化過程を通じてピンを挿入するz−ピン止め方法の終了状態に対する例示図である。本発明のz−ピン止め方法を使用すると、最初は、図4のように長さの長いピン51からガイドピン41と接触し、複合材積層構造物21内部に差し込まれるようになる。後では全てのピン51がガイドピン41と接触し、複合材積層構造物21内部に差し込まれ、ひいては上部ガイド40と下部ガイド50とが互いに接触するまでピン51が複合材積層構造物21内に差し込まれるようになる。上部ガイド40と下部ガイド50が互いに接触すると、荷重付加手段60による荷重が複合材積層構造物21全体に伝達されて、本例示図のように、硬化前の状態の複合材積層構造物を対象として、硬化過程を通じてピンを挿入する場合は、剰余レジンの放出を可能にすることにより、図3の説明で述べたように、従来のz−ピン止め方法では充足できない複合材硬化の基本要求条件を、本発明では充足できるようになる。むろん、荷重付加手段60による荷重が複合材積層構造物21全体に伝達されると、複合材積層構造物21も一定部分圧縮されるようになるが、最終的に圧縮された状態で、ピン51の下端部55がモールド11に当たらなければならず、このためには、事前に試験や経験などを活用し、ピン51の長さを正確に判断して決定しなければならない。
【0041】
下部ガイド50及び上部ガイド40は、金属材及び複合材料を使用して製作することができる。複合材料を使用して上部ガイド40及び下部ガイド50を製作する場合は、まず製作しようとする複合材積層構造物21をプリプレグ状態で積層するか、硬化の完了した複合材積層構造物21をのせて、即ち、硬化前または硬化後の状態の複合材積層構造物21をモールド11及び離型フィルム12上にのせて、その上部に離型フィルム12を適用し(必要時、ブリーダー13追加)、ガイドピン41の長さを考慮して、適した厚さで下部ガイド用プリプレグを積層し、再び離型フィルムを適用した後、ガイドピン41を固定するに適した厚さで上部ガイド用プリプレグを積層して硬化させると、本複合材料積層構造物21、上部ガイド40及び下部ガイド50用複合材構造物を一遍に製作することができる。製作された下部ガイド50用複合材構造物には、穴53を加工して、上部ガイド40用複合材構造物には、ガイドピン41を固定する。この際、上述のように、微細な穴53の加工が困難な場合は、少し大きい穴を加工した後、パイプやチューブを挿入して穴の直径を調整することができる。ガイドピン41は、ピン51より厚く製作することができて、これは、ガイドピン41の構造的耐久性をよくし、上部ガイド40の反復使用を容易にする。最終製作された下部ガイド50の縁52には、上部ガイド40の移動を積層構造物の厚さ方向にのみ誘導できる機能を追加する。
【0042】
図7は、二つの複合材積層構造部材間の連結状態図であって、硬化前または硬化後の状態の二つの複合材積層構造部材間の連結にも、本発明の方法が適用できることを示すためのものである。下部複合材積層構造部材24及び上部複合材積層構造部材25、26間の連結に本概念を使用すると、金属材リベットやボルトの使用が避けられ、軽量化側面で有利である。
【0043】
本発明は、上述の実施例に限らず、適用範囲が多様であり、請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく、 本発明の属する分野で通常の知識を有する者なら誰でも多様な変形実施が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0044】
11 モールド
12 離型フィルム
13 ブリーダー
14 コルクダム
15 フィルムバック
16 アダプター
17 シーラント
21 複合材積層構造物
24 下部複合材積層構造部材
25、26 上部複合材積層構造部材
40 上部ガイド
41 ガイドピン
42 (ガイドピンの)下端部
50 下部ガイド
51 ピン
52 縁
53 穴
54 (穴の)上部
55 (ピンの)下端部
56 (ピンの)上端部
60 荷重付加手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層間分離性能補強または複数の積層部材間の接触連結のためにピンを差し込む複合材積層構造物の製造装置であって、
硬化前または硬化後の状態の複合材積層構造物21上にのせられて、垂直方向に形成された複数個の穴53内に、それぞれ前記複合材積層構造物21内に挿入されるピン51が備えられた下部ガイド50と、
前記下部ガイド50上にのせられて、前記ピン51と対応する位置において垂直方向に移動自在に形成されたガイドピン41が備えられた上部ガイド40と、
を含んで構成されることを特徴とする、複合材積層構造物の製造装置。
【請求項2】
前記上部ガイド40上にのせられて、前記ガイドピン41が前記穴53に挿入されて前記ピン51を押圧し、前記硬化前または硬化後の状態の複合材積層構造物21に挿入されるように前記上部ガイド40に荷重を付加する荷重付加手段60をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の複合材積層構造物の製造装置。
【請求項3】
前記荷重付加手段60は、硬化圧力による圧力荷重付加、超音波または振動による振動荷重付加、及び、重量物による重力荷重付加から選択される一つ以上の物理力を使用して荷重を付加することを特徴とする、請求項2に記載の複合材積層構造物の製造装置。
【請求項4】
前記下部ガイド50には、前記硬化前または硬化後の状態の複合材積層構造物21への挿入工程以前に、前記ピン51の抜け落ちを防止するフィルム12が下面に付着していることを特徴とする、請求項1に記載の複合材積層構造物の製造装置。
【請求項5】
前記穴53は、その内部にパイプまたはチューブが備えられて形成されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の複合材積層構造物の製造装置。
【請求項6】
前記上部ガイド40及び下部ガイド50は、金属材または複合材からなることを特徴とする、請求項1に記載の複合材積層構造物の製造装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の複合材積層構造物の製造装置を製作する方法であって、
a1)プリプレグを積層して複合材積層構造物21を形成するか、または硬化後の状態の複合材積層構造物21を配置する段階と、
b1)前記複合材積層構造物21上に離型フィルム21を設ける段階と、
c1)前記ガイドピン41の長さを考慮した厚さとして下部ガイド用プリプレグを積層する段階と、
d1)積層された前記下部ガイド用プリプレグ上に離型フィルム12を設ける段階と、
e1)前記離型フィルム12上に、前記ガイドピン41を固定するに適した厚さとして上部ガイド用プリプレグを積層する段階と、
f1)積層された前記上部ガイド用プリプレグ上に硬化圧力が加えられ、前記複合材積層構造物21、前記上部ガイド40の本体及び前記下部ガイド50の本体を同時に硬化させる段階と、
g1)硬化した前記上部ガイド40の本体に前記ガイドピン41を備えて、前記下部ガイド50の本体に前記穴53を形成する段階と、
を含んで構成されることを特徴とする、複合材積層構造物の製造装置の製作方法。
【請求項8】
製造装置を使用した請求項1乃至6のいずれかに記載の複合材積層構造物の製造方法であって、
a2)硬化前または硬化後の状態の複合材積層構造物21を配置する段階と、
b2)前記硬化前または硬化後の状態の複合材積層構造物21内に挿入されるピン51を穴53内に備えた下部ガイド50を配置する段階と、
c2)前記下部ガイド50上に、前記ピン51と対応する位置に形成されたガイドピン41を備えた上部ガイド40を配置する段階と、
d2)前記上部ガイド40及び前記下部ガイド50が互いに近づきながら前記ガイドピン41が前記ピン51を押圧して、前記ピン51を前記硬化前または硬化後の状態の複合材積層構造物21内に挿入する段階と、
を含んで構成されることを特徴とする、複合材積層構造物の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の複合材積層構造物の製造方法を使用して製作されたものであることを特徴とする、複合材積層構造物。
【請求項10】
製造装置を使用した請求項1乃至6のいずれかに記載の複合材積層構造部材の結合方法であって
a3)作業テープル上に、下部複合材積層構造部材24及び上部複合材積層構造部材25、26が下から順に配置された複合材積層構造部材24、25、26を配置する段階と、
b3)積層された前記複合材積層構造部材24、25、26の結合部位上に、積層された前記複合材積層構造部材24、25、26内に挿入されるピン51を穴53内に備えた下部ガイド50を配置する段階と、
c3)前記下部ガイド50上に、前記ピン51と対応する位置に形成されたガイドピン41を備えた上部ガイド40を配置する段階と、
d3)前記上部ガイド40及び前記下部ガイド40が互いに近づきながら前記ガイドピン41が前記ピン51を押圧し、前記ピン51を積層された前記複合材積層構造部材24、25、26の結合部位内に挿入する段階と、
を含んで構成されることを特徴とする、複合材積層構造部材の結合方法。
【請求項11】
前記下部複合材積層構造部材24及び上部複合材積層構造部材25、26は、接着、圧着または熱付着を含む第1結合加工を経て結合された状態であることを特徴とする、請求項10に記載の複合材積層構造部材の結合方法。
【請求項12】
請求項10に記載の複合材積層構造部材の結合方法を使用して製作されたものであことを特徴とする、複合材積層構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−522655(P2010−522655A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500852(P2010−500852)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005293
【国際公開番号】WO2009/038301
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(509259345)韓国航空宇宙研究院 (2)
【氏名又は名称原語表記】KOREA AEROSPACE RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】45, Eoeun−dong, Yuseong−gu, Daejeon 305−702 Republic of Korea
【Fターム(参考)】