ブレーキシステム
【課題】ブレーキシステムの改良を図る。
【解決手段】電気系の異常時には、マスタシリンダ62の液圧により増圧機構100が作動させられ、サーボ圧が、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42に供給される。それに対して、液漏れの可能性が有ると検出された場合には、前後遮断弁330,左右遮断弁332が閉状態とされる。その結果、いずれかのブレーキ系統に液漏れが検出されても、他のブレーキ系統に、その影響が及ぶことを回避することができる。一方、左右遮断弁332,前後遮断弁330は、常開の電磁開閉弁であるため、液圧ブレーキ40,50の非作用状態である場合等の開許可条件が満たされる間は、開状態とされる。それにより、消費電力の低減を図り、かつ、ソレノイドの発熱を抑制することができる。
【解決手段】電気系の異常時には、マスタシリンダ62の液圧により増圧機構100が作動させられ、サーボ圧が、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42に供給される。それに対して、液漏れの可能性が有ると検出された場合には、前後遮断弁330,左右遮断弁332が閉状態とされる。その結果、いずれかのブレーキ系統に液漏れが検出されても、他のブレーキ系統に、その影響が及ぶことを回避することができる。一方、左右遮断弁332,前後遮断弁330は、常開の電磁開閉弁であるため、液圧ブレーキ40,50の非作用状態である場合等の開許可条件が満たされる間は、開状態とされる。それにより、消費電力の低減を図り、かつ、ソレノイドの発熱を抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の回転を抑制する液圧ブレーキを備えたブレーキシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、(a)車輪の回転を抑制する液圧ブレーキと、(b)マスタシリンダと、(c)アキュムレータと、(d)そのアキュムレータの液圧を利用して、電気アクチュエータの駆動により作動させられる増圧機構と、(e)その増圧機構の液圧とマスタシリンダの液圧とのうち高い方を選択して液圧ブレーキのブレーキシリンダに供給する選択バルブとを備えたブレーキシステムが記載されている。
電気アクチュエータが正常である場合には、増圧装置は電気アクチュエータにより作動させられ、異常である場合には、マスタシリンダの液圧より作動させられる。また、アキュムレータから高圧の作動液が供給され得る場合には、マスタシリンダの液圧より高い液圧を発生させることができるが、アキュムレータの液圧が低くなると、増圧機構の出力液圧も低くなる。
ブレーキシリンダには、選択バルブにより、増圧機構の出力液圧とマスタシリンダの液圧との高い方の液圧が供給されるため、アキュムレータの液圧が低く、増圧機構の出力液圧が低い場合には、マスタシリンダの液圧が供給される。
特許文献2には、(a)車両の前後左右の車輪に設けられ、車輪の回転を抑制する液圧ブレーキと、(b)マスタシリンダと、(c)マスタシリンダと前輪の液圧ブレーキのブレーキシリンダとの間に設けられた機械式倍力機構と、(d)高圧源およびその高圧源の液圧を制御する電磁弁とを備えたブレーキシステムが記載されている。このブレーキシステムにおいて、高圧源および電磁弁が正常な場合には、電磁弁によって制御された高圧源の液圧が前輪および後輪のブレーキシリンダに供給される。電磁弁等が異常である場合には、前輪のブレーキシリンダには機械式増圧機構により発生させられた液圧が供給され、後輪のブレーキシリンダにはマスタシリンダの液圧が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−502645号公報
【特許文献2】特開平10−287227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ブレーキシステムの改良を図ることである。
【課題を解決するための手段および効果】
【0005】
請求項1に係るブレーキシステムは、(a)車両の複数の車輪にそれぞれ設けられ、ブレーキシリンダの液圧により作動させられて、その車輪の回転を抑制する液圧ブレーキと、(b)1つ以上の液圧源と、(c)その1つ以上の液圧源が接続されるとともに、前記複数の液圧ブレーキのブレーキシリンダのうちの第1ブレーキシリンダが第1個別通路を介して接続され、前記複数のブレーキシリンダのうち前記第1ブレーキシリンダとは別の第2ブレーキシリンダが前記第1個別通路とは別の第2個別通路を介して接続された共通通路と、(d)それら第1個別通路、第2個別通路および共通通路を含む液圧供給通路の、前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとの間の部分に設けられ、ソレノイドに電流が供給されない場合に開状態にある常開の電磁開閉弁である連通遮断弁と、(e)当該ブレーキシステムに液漏れの可能性が有るか無いかを検出する液漏れ可能性有無検出装置と、(f)その液漏れ可能性有無検出装置によって液漏れの可能性が有ると検出された場合に、前記連通遮断弁を閉状態として、前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとを遮断する連通遮断制御装置とを含むものとされる。
液圧供給通路の第1ブレーキシリンダと第2ブレーキシリンダとの間に連通遮断弁が設けられるが、連通遮断弁は常開の電磁開閉弁である。そのため、ソレノイドに電流が供給されない場合に、共通通路、第1ブレーキシリンダおよび第2ブレーキシリンダが連通状態とされる。例えば、液圧源が、電気エネルギが供給されなくても液圧を発生させ得るものである場合には、電気系の異常時に、第1ブレーキシリンダ、第2ブレーキシリンダに液圧源の液圧を供給することが可能となる。
また、液漏れの可能性が有ると検出された場合に連通遮断弁が閉状態とされる。その結果、第1ブレーキシリンダと第2ブレーキシリンダとを遮断することができる。仮に、第1ブレーキシリンダを含むブレーキ系統と第2ブレーキシリンダを含むブレーキ系統とのいずれか一方に液漏れが生じていても、その影響が他方のブレーキ系統に及ばないようにすることができるのであり、ブレーキシステムの信頼性を向上させることができる。
なお、連通遮断弁は、第1,第2の個別通路に設けても、共通通路に設けてもよい。また、液圧供給通路の第1ブレーキシリンダと第2ブレーキシリンダとの間に少なくとも1つの連通遮断弁が設けられるが、連通遮断弁の他に1つ以上の電磁開閉弁が設けられることもある。
また、連通遮断弁は、ソレノイドへの供給電流量の連続的な制御により、それの前後の差圧(および/または)開度が連続的に制御可能なもの(リニア制御弁と称することができる)であっても、供給電流のON/OFF制御により開状態と閉状態とのいずれかに切り換えられ得るもの(単なる開閉弁と称することができる)であってもよい。以下、本明細書において、「リニア制御弁」、「単なる開閉弁」と記載しない場合には、電磁開閉弁は、リニア制御弁であっても、単なる開閉弁であってもよいものとする。
【特許請求可能な発明】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組を、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
(1)車両の複数の車輪にそれぞれ設けられ、ブレーキシリンダの液圧により作動させられて、その車輪の回転を抑制する液圧ブレーキと、
1つ以上の液圧源と、
その1つ以上の液圧源が接続されるとともに、前記複数の液圧ブレーキのブレーキシリンダのうちの第1ブレーキシリンダが第1個別通路を介して接続され、前記複数のブレーキシリンダのうち前記第1ブレーキシリンダとは別の第2ブレーキシリンダが前記第1個別通路とは別の第2個別通路を介して接続された共通通路と、
それら第1個別通路、第2個別通路および共通通路を含む液圧供給通路の、前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとの間に設けられ、ソレノイドに電流が供給されない場合に開状態にある常開の電磁開閉弁である連通遮断弁と、
当該ブレーキシステムに液漏れの可能性が有るか無いかを検出する液漏れ可能性有無検出装置と、
その液漏れ可能性有無検出装置によって液漏れの可能性が有ると検出された場合に、前記連通遮断弁を閉状態として、前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとを遮断する連通遮断制御装置と
を含むことを特徴とするブレーキシステム。
液漏れ可能性有無検出装置は、液漏れの可能性が有るか否かを検出するものであっても、液漏れの可能性が高いか低いかを検出するものであってもよい。
また、後述するように、連通遮断制御装置は、液漏れの可能性が有ると検出された場合に、直ちに、連通遮断弁を閉状態に切り換える閉切換部を含むものとしても、閉切換部を含まないものとしてもよい。
さらに、液漏れの可能性が有ると検出された場合に閉状態に切り換え、その後、液漏れの可能性が有る間(液漏れの可能性が無いと検出されるまでの間)、閉状態を保持する閉保持部を含むものとしても、閉保持部を含まないものとしてもよい。
(2)前記液漏れ可能性有無検出装置が、(a)前記共通通路の液圧が第1液漏れ判定しきい値より低いこと、(b)前記第1ブレーキシリンダを含むブレーキ系統と、前記第2ブレーキシリンダを含むブレーキ系統との少なくとも一方の液圧が第2液漏れ判定しきい値より低いこと、(c)前記複数の液圧ブレーキのブレーキシリンダで使用される作動液を収容するリザーバに蓄えられた作動液量が予め定められた第3液漏れ判定しきい値以下であること、(d)前記液圧源の液圧が第4液漏れ判定しきい値より低いことのうちの1つ以上が満たされた場合に、当該ブレーキシステムに液漏れの可能性が有ると検出するものである(1)項に記載のブレーキシステム。
液漏れ可能性有無検出装置は、液漏れが生じている可能性を検出するものであるため、液漏れの可能性が有ると検出された場合であっても、実際に液漏れが生じていない場合がある。また、液漏れの量が非常に少ないこともある。さらに、液漏れの箇所を特定できないことが多い。しかし、(a)〜(d)の場合には液漏れが無いと断定することはできないため、液漏れの可能性が有るとされるのである。
液圧源と共通通路とが連通状態にあり、かつ、液圧源が作動状態にある場合、あるいは、液圧源が設定状態で設定時間以上継続して作動しているにもかかわらず、共通通路の液圧が全く増加しない場合、あるいは、充分に増加しない場合、すなわち、共通通路の液圧が第1液漏れ判定しきい値より低い場合には、液漏れの可能性が有るとすることができる。
制動要求がある場合(ブレーキ操作部材が操作されている場合、自動ブレーキを作用作動させる要求がある場合)に、第1ブレーキシリンダを含むブレーキ系統と、第2ブレーキシリンダを含むブレーキ系統との少なくとも一方の液圧が第2液漏れ判定しきい値より低い場合にも、液漏れの可能性が有るとすることができる。第2液漏れ判定しきい値は、制動要求値(ブレーキ操作部材の操作状態や、自動ブレーキを作動させる要求に応じた値)に基づいて決まる可変値としても、予め定められた固定値(比較的小さい値)としてもよい。
リザーバに収容されている作動液量に基づく液漏れの可能性の有無の検出は、液圧ブレーキの作動状態、ブレーキ操作部材の操作状態に関係なく、常時、行うことができる。
例えば、液圧源が動力式液圧源である場合に、動力式液圧源が設定状態で設定時間以上作動状態にあるにもかかわらず液圧が充分に高くならない場合には、液漏れの可能性が有るとすることができる。
(3)前記連通遮断制御装置が、前記液漏れ可能性有無検出装置によって前記液漏れの可能性が有ると検出され、かつ、閉条件が満たされた場合に、前記連通遮断弁を閉状態とする電磁弁閉制御部を含む(1)項または(2)項に記載のブレーキシステム。
液漏れの可能性が有ると検出されても、真に必要な場合に、連通遮断弁が閉状態とされるようにすることができる。それによって、ソレノイドへの消費電力の低減を図りつつ、液漏れの影響が他のブレーキシリンダに及ばないようにすることができる。
『液漏れの可能性が有ると検出され』とは、(i)その時点において、液漏れの可能性の有無が検出され、その検出結果が可能性有である場合、(ii)それより前に液漏れの可能性が有ると検出され、その検出結果が同じである場合の少なくとも一方が該当する。
『閉条件が満たされた場合』についても同様であり、閉条件が満たされた状態が液漏れの可能性が有ると検出された時点より前から継続していても、その時点において満たされてもよく、少なくとも、その時点において、閉条件が満たされていればよい。
(4)前記電磁弁閉制御部が、(i)前記第1ブレーキシリンダと第2ブレーキシリンダとの少なくとも一方の液圧が設定液圧より大きいことと、(b)前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとの少なくとも一方の液圧の変化勾配の絶対値が設定勾配より大きいこととの少なくとも一方が満たされた場合に前記閉条件が満たされたとして、前記連通遮断弁を閉状態とする液圧対応閉制御部を含む(3)項に記載のブレーキシステム。
設定液圧は、液圧ブレーキが作用状態にあるとみなし得る大きさとしたり、これ以上液圧が高いと液漏れの他のブレーキ系統への影響が大きくなるおそれがあると推定し得る大きさとしたりすることができる。設定液圧を小さくすれば、連通遮断弁が閉状態とされる機会が多くなり、設定液圧を大きくすれば、閉状態とされる機会が少なくなる。いずれにしても、ブレーキシリンダの液圧が設定液圧より大きい場合には、閉状態とすることが望ましい。
ブレーキシリンダ液圧が増加したり減少したりする状態においては連通遮断弁を閉状態とすることが望ましい。また、ブレーキシリンダ液圧の増加勾配が大きい場合には、ブレーキシリンダ液圧が設定液圧以上になる可能性が高い。そのため、変化勾配の絶対値が設定勾配より大きい場合に、遮断弁を閉状態としておくことは妥当なことである。
なお、液圧ブレーキが、液漏れの可能性が有る場合でも、車両の走行状態、前方車両との相対位置関係等に基づき、制動要求があるとされた場合に作動させられるようにされている場合には、車両の走行状態、相対位置関係の変化等に基づけば、制動要求の値を推定したり、制動要求の有無を予測したりすることができる。その場合には、ブレーキシリンダの液圧の変化勾配の絶対値が設定勾配より大きくなる可能性の有無を取得することが可能となる。
(5)当該ブレーキシステムが、運転者によって操作可能なブレーキ操作部材を含み、前記電磁弁閉制御部が、前記ブレーキ操作部材が操作されていることと前記ブレーキ操作部材が操作される可能性が高いこととの少なくとも一方が満たされた場合に前記閉条件が満たされたとして、前記連通遮断弁を閉状態とする操作対応閉制御部を含む(3)項または(4)項に記載のブレーキシステム。
ブレーキ操作中、ブレーキ操作される可能性が高い場合、換言すれば、液圧ブレーキが作用状態にある場合、作用作動させられる可能性が高い場合に、連通遮断弁が閉状態とされる。
ブレーキ操作が行われる可能性が高い場合の具体例については後述するが、例えば、車両の停車中には、ブレーキ操作が行われる可能性が高いとすることができる。
また、ブレーキ操作が行われる可能性が高い場合は、ブレーキシリンダの液圧が増加する可能性が高い(増加勾配が設定勾配より大きくなる可能性が高い)とすることができ、この場合に連通遮断弁が閉状態とされれば、ブレーキシリンダの液圧が増加するのに先だって、連通遮断弁を閉状態にしておくことができる。
なお、連通遮断弁は、ブレーキ操作が行われる可能性がある場合に、閉状態とされるようにすることもできる。
(6)前記電磁弁閉制御部が、前記車両のメインスイッチがON状態にある間、前記閉条件が満たされた状態にあるとして、前記連通遮断弁を閉状態に保持するスイッチON中閉制御部を含む(3)項ないし(5)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
メインスイッチとしてのイグニッションスイッチがONである間には、液圧ブレーキが作動させられる可能性が高いため、連通遮断弁を閉状態とすることが望ましい。
(7)前記電磁弁閉制御部が、前記車両の走行速度が停止状態にあるとみなし得る設定速度以下である間、前記閉条件が満たされている状態であるとして、前記連通遮断弁を閉状態に保持する停車中閉制御部を含む(3)項ないし(6)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
車両が停止状態にある場合には、ブレーキ操作部材が操作される可能性が高い。そのため、連通遮断弁が閉状態に保持されることは妥当なことである。
イグニッションスイッチがONであり、かつ、停止状態にある場合に閉状態にされても、イグニッションスイッチがON状態であってもOFF状態であっても、閉状態にされるようにしてもよい。
(8)前記電磁弁閉制御部が、アクセル操作部材が操作されていない間、前記閉条件が満たされている状態であるとして、前記連通遮断弁を閉状態に保持するアクセルOFF中閉制御部を含む(3)項ないし(7)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
アクセル操作部材が操作されていない状態においては、ブレーキ操作部材が操作される可能性が高いため、連通遮断弁が閉状態に保持されることは妥当なことである。
(9)前記連通遮断制御装置が、少なくとも、前記液漏れ可能性有無検出装置によって、前記液漏れの可能性が有ると検出された場合には、前記液漏れの可能性が無いと検出されるまで、前記連通遮断弁を閉状態に保持する電磁弁閉保持部を含む(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
液漏れの可能性が有ると検出された場合には、その後、少なくとも、液漏れ可能性が無いと検出されるまで、連通遮断弁は閉状態に保持されることが望ましい。イグニッションスイッチのON・OFFに関係なく、ブレーキ操作部材の操作の有無に関係なく、常に、閉状態とされるのである。それによって、液漏れの影響が他のブレーキ系統に及ぶことを良好に回避することができる。
液漏れの可能性が無いと検出された場合には、連通遮断弁は、他のブレーキ制御プログラム等によって制御される。そのため、液漏れの可能性がないと検出されても、閉状態にされることもある。しかし、本項に記載のブレーキシステムにおいては、液漏れの原因が解消され、液漏れの可能性がないと検出されるより前に、原則として、開状態にされることはないのである。
(10)前記連通遮断制御装置が、前記連通遮断弁が閉状態にされている場合であっても、閉中開許可条件が満たされた場合に、前記連通遮断弁を閉状態から開状態に切り換え、前記閉中開許可条件が満たされなくなった場合に前記連通遮断弁を閉状態に戻す強制的電磁弁開制御部を含む(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
漏れの可能性が有ると検出されたことに起因して連通遮断弁が閉状態にされている状態であっても、閉中開許可条件が満たされた場合には開状態とされる。それによって、消費電力の低減を図ることができ、ソレノイドの発熱を抑制することができる。
(11)前記強制的電磁弁開制御部が、前記複数の液圧ブレーキすべてが非作用状態にあり、かつ、前記複数の液圧ブレーキのすべてが作用作動させられる可能性が低い場合に前記閉中開許可条件が満たされたとされて、前記連通遮断弁を開状態にする非作用時強制的開部を含む(10)項に記載のブレーキシステム。
(12)前記連通遮断制御装置が、前記液漏れ可能性有無検出装置によって、液漏れの可能性が有ると検出されても、検出中開許可条件が満たされた場合に、前記連通遮断弁を開状態とする電磁弁開制御部を含む(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
例えば、前述の閉条件が満たされない場合には、検出中開許可条件が満たされたとして、連通遮断弁を開状態にすることができる。具体的には、液圧ブレーキが非作用状態にある場合、作用作動させられる可能性が低い場合、ブレーキ操作部材が操作されていない場合、ブレーキ操作部材の操作が行われる可能性が低い場合、車両の走行速度が設定速度以上である場合、アクセルペダルが操作されている場合等に検出中開許可条件が満たされたと考えることができる。
なお、閉中開許可条件と検出中開許可状態とは同じ内容であっても異なる内容であってもよい。
【0008】
(13)前記液圧供給通路の前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとの間に、ソレノイドに電流が供給されない場合に閉状態にある常閉の電磁開閉弁が設けられていない(1)項ないし(12)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
コストダウンの観点から、できる限り、電磁開閉弁の個数は少なくすることが望ましい。
(14)当該ブレーキシステムが、前記1つ以上の液圧源とは別の、運転者によって操作可能なブレーキ操作部材の操作によって液圧を発生させる2つのマニュアル式液圧源を含み、それら2つのマニュアル式液圧源の一方が、前記第1個別通路に前記第1マニュアル通路を介して接続され、前記2つのマニュアル式液圧源の他方が、前記第2個別通路に前記第2マニュアル通路を介して接続され、前記連通遮断弁が、前記液圧供給通路の、前記第1マニュアル通路の接続部と前記第2マニュアル通路の接続部との間に設けられた第1・第2連通遮断弁である(1)項ないし(13)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
第1ブレーキシリンダ、第2ブレーキシリンダは、左右前輪のブレーキシリンダとすることができる。第1・第2連通遮断弁は、左右遮断弁と称することができる。
(15)前記第1・第2連通遮断弁が、前記第1個別通路と前記第2個別通路とのいずれか一方に設けられ、前記共通通路の液圧を制御して、それに対応する前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとのいずれか一方に供給する増圧制御弁としての機能を果たす(14)項に記載のブレーキシステム。
(16)前記共通通路に、前記複数の液圧ブレーキのブレーキシリンダのうちの前記第1ブレーキシリンダ、第2ブレーキシリンダとは異なる第3ブレーキシリンダが、前記第1個別通路、第2個別通路とは別個の第3個別通路を介して接続され、かつ、前記連通遮断弁が、前記共通通路の前記第3個別通路の接続部と前記第1個別通路の接続部との間の部分に設けられた第1・第3連通遮断弁である(1)項ないし(15)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
第1ブレーキシリンダが前輪のブレーキシリンダであり、第3ブレーキシリンダが後輪のブレーキシリンダである場合には、第1・第2連通遮断弁は左右連通弁と称し、第1・第3連通遮断弁は前後遮断弁と称することができる。
当該ブレーキシステムは、第1・第2連通遮断弁と第1・第3連通遮断弁との少なくとも一方を含むものとすることができる。
【0009】
(17)当該ブレーキシステムが、前記1つ以上の液圧源とは別の、運転者によって操作可能なブレーキ操作部材の操作によって液圧を発生させるマニュアル式液圧源を含み、前記液圧源が、機械的に作動可能であって、電気系の異常時に、前記マニュアル液圧源の液圧より高い液圧を発生させ得る高圧発生器を含む(1)項ないし(16)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
(18)前記液圧源が、電力の供給により作動させられる動力液圧源を含み、前記液圧源としての高圧発生器が、前記共通通路と、前記動力式液圧源と、前記マニュアル式液圧源との間に設けられ、前記マニュアル式液圧源の液圧により機械的に作動させられるものである(1)項ないし(17)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
(19)前記高圧発生器が、(a)段付きピストンを含み、前記マニュアル式液圧源の液圧を増圧して出力するメカ式増圧器と、(b)前記メカ式増圧器と前記動力式液圧源との間に設けられ、前記動力式液圧源から前記メカ式の増圧器への作動液の流れを許容し、逆向きの流れを阻止する高圧側逆止弁とを含む(18)項に記載のブレーキシステム。
本項に記載のブレーキシステムにおいては、高圧発生器が、動力式液圧源とは別個に設けられ、機械的に作動させられるものである。そのため、電気系の異常時等にも、マニュアル式液圧源の液圧より高圧の液圧を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の共通の実施例である液圧ブレーキシステムが搭載された車両全体を示す図である。
【図2】本発明の実施例1に係る液圧ブレーキシステムのブレーキ液圧回路図である。
【図3】上記ブレーキ液圧回路に含まれる増圧リニア制御弁、減圧リニア制御弁の断面図である。
【図4】上記液圧ブレーキシステムに含まれるブレーキECUの記憶部に記憶されたイニシャルチェックプログラムを表すフローチャートである。
【図5】上記ブレーキECUの記憶部に記憶された供給状態制御プログラムを表すフローチャートである。
【図6】上記液圧ブレーキシステムにおいて、供給状態制御プログラムが実行された場合の状態を示す図である(正常な場合)。
【図7】上記液圧ブレーキシステムにおいて、供給状態制御プログラムが実行された場合の別の状態を示す図である(制御系が異常な場合)。
【図8】上記液圧ブレーキシステムにおいて、供給状態制御プログラムが実行された場合のさらに別の状態を示す図である(液漏れの可能性がある場合)。
【図9】本発明の実施例2に係る液圧ブレーキシステムのブレーキ液圧回路図である。
【図10】上記液圧ブレーキシステムにおいて、供給状態制御プログラムが実行された場合の状態を示す図である(正常な場合)。
【図11】上記液圧ブレーキシステムにおいて、供給状態制御プログラムが実行された場合の別の状態を示す図である(制御系が異常な場合)。
【図12】上記液圧ブレーキシステムにおいて、供給状態制御プログラムが実行された場合のさらに別の状態を示す図である(液漏れの可能性がある場合)。
【図13】上記液圧ブレーキシステムのブレーキECUの記憶部に記憶された左右遮断弁、前後遮断弁制御プログラムを表すフローチャートである。
【図14】本発明の実施例3に係る液圧ブレーキシステムのブレーキECUの記憶部に記憶された別の左右遮断弁、前後遮断弁制御プログラムを表すフローチャートである。
【図15】上記ブレーキECUの記憶部に記憶されたさらに別の左右遮断弁、前後遮断弁制御プログラムを表すフローチャートである。
【図16】上記ブレーキECUの記憶部に記憶された別の左右遮断弁、前後遮断弁制御プログラムを表すフローチャートである。
【図17】上記ブレーキECUの記憶部に記憶されたさらに別の左右遮断弁、前後遮断弁制御プログラムを表すフローチャートである。
【図18】本発明の実施例4に係る液圧ブレーキシステムのブレーキ液圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態であるブレーキシステムについて図面に基づいて詳細に説明する。
最初に、本発明の一実施形態であるブレーキシステムである液圧ブレーキシステムが搭載された車両について説明する。
本車両は、駆動装置として電動モータとエンジンとを含むハイブリッド車両である。ハイブリッド車両において、駆動輪としての左右前輪2,4は、電気的駆動装置6と内燃的駆動装置8とを含む駆動装置10によって駆動される。駆動装置10の駆動力はドライブシャフト12,14を介して左右前輪2,4に伝達される。内燃的駆動装置8は、エンジン16,エンジン16の作動状態を制御するエンジンECU18等を含むものであり、電気的駆動装置6は電動モータ20,蓄電装置22,モータジェネレータ24,電力変換装置26,モータECU28、動力分割機構30等を含む。動力分割機構30には、電動モータ20、モータジェネレータ24、エンジン16が連結され、これらの制御により、出力部材32に電動モータ20の駆動トルクのみが伝達される場合、エンジン16の駆動トルクと電動モータ20の駆動トルクとの両方が伝達される場合、エンジン16の出力がモータジェネレータ24と出力部材32とに出力される場合等に切り換えられる。出力部材32に伝達された駆動力は、減速機、差動装置を介してドライブシャフト12,14に伝達される。
電力変換装置26は、インバータ等を含むものであり、モータECU28によって制御される。インバータの電流制御により、少なくとも、電動モータ20に蓄電装置22から電気エネルギが供給されて回転させられる回転駆動状態と、回生制動により発電器として機能することにより蓄電装置22に電気エネルギを充電する充電状態とに切り換えられる。充電状態においては、左右前輪2,4に回生制動トルクが加えられる。その意味において、電気的駆動装置6は回生ブレーキ装置であると考えることができる。
【0012】
液圧ブレーキシステムは、左右前輪2,4に設けられた液圧ブレーキ40のブレーキシリンダ42,左右後輪46,48(図2,9,18参照)に設けられた液圧ブレーキ50のブレーキシリンダ52と、これらブレーキシリンダ42,52の液圧を制御可能な液圧制御部54等を含む。液圧制御部54は、コンピュータを主体とするブレーキECU56によって制御される。
また、車両には、ハイブリッドECU58が設けられ、これらハイブリッドECU58,ブレーキECU56,エンジンECU18,モータECU28は、CAN(Car area Network)59を介して接続されている。互いに通信可能とされており、適宜必要な情報が通信される。
【0013】
なお、本液圧ブレーキシステムは、ハイブリッド車輪に限らず、プラグインハイブリッド車両、電気自動車、燃料電池車両に搭載することもできる。電気自動車においては、内燃的駆動装置8が不要となる。燃料電磁車両においては、駆動用モータが燃料電池スタック等によって駆動される。
また、本液圧ブレーキシステムは、内燃駆動車両に搭載することもできる。電気的駆動装置6が設けられていない車両においては、駆動輪2,4に回生制動トルクが加えられることがないため、回生協調制御が行われることはない。
【0014】
以下、液圧ブレーキシステムについて説明するが、ブレーキシリンダ、液圧ブレーキ、後述する種々の電磁開閉弁等を、前後左右の車輪の位置に対応して区別する必要がある場合には、車輪位置を表す符号(FL,FR,RL,RR)を付して記載し、代表して、あるいは、区別する必要がない場合には、符号を付さないで記載する。
【実施例1】
【0015】
実施例1に係る液圧ブレーキシステムは、図2に示すブレーキ回路を含む。
60はブレーキ操作部材としてのブレーキペダルであり、62はブレーキペダル60の操作により液圧を発生させるマニュアル式液圧源としてのマスタシリンダである。64はポンプ装置65とアキュムレータ66とを含む動力式液圧源である。液圧ブレーキ40,50は、ブレーキシリンダ42,52の液圧により作動させられ、車輪の回転を抑制するものであり、本実施例においては、ディスクブレーキである。
なお、液圧ブレーキ40,50は、ドラムブレーキとすることができる。また、前輪2,4の液圧ブレーキ40をディスクブレーキとし、後輪46,48の液圧ブレーキ50をドラムブレーキとすることもできる。
マスタシリンダ62は、2つの加圧ピストン68,69を備えたタンデム式のものであり、加圧ピストン68,69のそれぞれの前方が加圧室70,72とされる。本実施例においては、加圧室70,72がそれぞれマニュアル式液圧源に該当する。また、加圧室72,70には、それぞれ、マニュアル通路としてのマスタ通路74,76を介して、左前輪2の液圧ブレーキ40FLのブレーキシリンダ42FL、右前輪4の液圧ブレーキ40FRのブレーキシリンダ42FRが接続される。
また、加圧室70,72は、加圧ピストン68,69が後退端に達した場合に、それぞれ、リザーバ78に連通させられる。リザーバ78の内部は、作動液を収容する複数の収容室80,82,84に仕切られている。収容室80,82は、それぞれ、加圧室70,72に対応して設けられ、収容室74はポンプ装置65に対応して設けられたものである。
【0016】
動力式液圧源64において、ポンプ装置65は、ポンプ90およびポンプモータ92を含み、ポンプ90によりリザーバ78の収容室84から作動液が汲み上げられて吐出されて、アキュムレータ66に蓄えられる。ポンプモータ92は、アキュムレータ66に蓄えられた作動液の圧力が予め定められた設定範囲内にあるように制御される。また、リリーフ弁94により、ポンプ90の吐出圧が過大になることが防止される。
【0017】
動力式液圧源64とマスタ通路76との間には高圧発生器としての増圧機構100が設けられる。増圧機構100は、ハウジング102と、ハウジング102に液密かつ摺動可能に嵌合された段付きピストン104とを含み、段付きピストン104の大径側に大径側室110が設けられ、小径側に小径側室112が設けられる。
小径側室112には、動力式液圧源64に接続された高圧室114が連通させられ、小径側室112と高圧室114との間に、高圧供給弁116が設けられる。高圧供給弁116は、弁子120および弁座122と、スプリング124とを含み、スプリング124の付勢力が、弁子120を弁座122に押し付ける向きに作用する。高圧供給弁116は常閉弁である。
小径側室112には、弁子120に対向して開弁部材125が設けられ、開弁部材125と段付きピストン104との間にスプリング126が設けられる。スプリング126の付勢力は、開弁部材125を段付きピストン104から離間させる向きに作用する。
段付きピストン104の段部とハウジング102との間には、スプリング128(リターンスプリング)が設けられ、段付きピストン104を後退方向に付勢する。なお、段付きピストン104とハウジング102との間には図示しないストッパが設けられ、段付きピストン104の前進端位置を規制する。
また、段付きピストン104には、大径側室110と小径側室112とを連通させる連通路130が形成される。連通路130は、少なくとも段付きピストン104の後退端位置において、開弁部材125から離間した状態で、大径側室110と小径側室112とを連通させるが、段付きピストン104が前進して、開弁部材125に当接すると遮断される。
本実施例においては、ハウジング102,段付きピストン104,高圧供給弁116,開弁部材125等によりメカ式増圧器134が構成される。
【0018】
高圧室114と動力式液圧源64とが高圧供給通路131によって接続され、高圧供給通路131に、動力式液圧源64から高圧室114への作動液の流れは許容し、逆向きの流れを阻止する高圧側逆止弁132が設けられる。高圧側逆止弁132は、動力式液圧源64の液圧が高圧室114の液圧より高い場合には、動力式液圧源64から高圧室114への作動液の流れを許容するが、動力式液圧源64の液圧が高圧室114の液圧以下の場合には閉状態にあり、双方向の流れを阻止する。そのため、仮に、動力液圧源64に液漏れが生じても、高圧室114から動力式液圧源64への作動液の逆流が防止され、小径側室112の液圧の低下が防止される。
さらに、マスタ通路74とメカ式増圧器134の出力側(小径側室112でもよい)との間には、メカ式増圧器134をバイパスして接続するバイパス通路136が設けられ、バイパス通路136にはマスタ通路74からメカ式増圧器134の出力側への作動液の流れを許容し、逆向きの流れを阻止するマニュアル側逆止弁138が設けられる。
【0019】
増圧機構100において、大径側室110にマスタシリンダ14の加圧室72の液圧が供給されると、作動液は、連通路130を経て小径側室112に供給される。
段付きピストン104に作用する前進方向の力(大径側室110の液圧による)が、リターンスプリング128の付勢力より大きくなると前進させられる。段付きピストン104が開弁部材125に当接し、液通路130が遮断されると、小径側室112の液圧が増加し、出力される(後述するように共通通路に供給される)。
また、開弁部材125の前進により高圧供給弁116が開状態に切り換えられると、高圧室114から高圧の作動液が小径側室112に供給され、小径側室112の液圧が高くなる。一方、アキュムレータ66に蓄えられた作動液の圧力が高圧室114の圧力より高い場合には、アキュムレータ66の液圧が高圧側逆止弁132を経て高圧室114に供給され、小径側室112に供給される。
段付きピストン104において、大径側室110の液圧が、大径側に作用する力(マスタシリンダ62の液圧×受圧面積)と小径側に作用する力(出力液圧×受圧面積)とが釣り合う大きさに調整されて、出力される。この意味において、増圧機構100を倍力機構と称することができる。
また、マニュアル側逆止弁138によりメカ式増圧器134の出力液圧がマスタ通路74に向かって流れることが防止される。
一方、アキュムレータ66の液圧が高圧室114の液圧以下である場合には、高圧側逆止弁132により、アキュムレータ66と高圧室114との間の双方向の作動液の流れが阻止されるため、段付きピストン104がそれ以上前進できなくなる。また、段付きピストン104はストッパに当接することにより前進できなくなることもある。この状態から、加圧室72の液圧が、小径側室112の液圧より高くなると、増圧器バイパス通路136およびマニュアル側逆止弁138を経て液圧がメカ式増圧器134の出力側に供給される。
【0020】
一方、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FR、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL、RRは、それぞれ、個別通路150FL、FR、RL、RRを介して共通通路152に接続される。
個別通路150FL、FR、RL、RRには、それぞれ、保持弁(SHij:i=F,R、j=L,R)153FL、FR、RL、RRが設けられるとともに、ブレーキシリンダ42FL、42FR、52RL、52RRとリザーバ78との間には、それぞれ、減圧弁(SRij:i=F,R、j=L,R)156FL,FR,RL,RRが設けられる。
本実施例においては、左前輪2,右後輪48に対応して設けられた保持弁153FL、RRが、ソレノイドに電流が供給されない場合に開状態にある常開の電磁開閉弁であり、右前輪4,左後輪46に対応して設けられた保持弁153FR,RLがソレノイドに電流が供給されない場合に閉状態にある常閉の電磁開閉弁である。
その結果、前輪側の左右輪2,4に対応する保持弁153FL、FR、後輪側の左右輪46,48に対応する保持弁153RL、RRにおいて、一方が常開の電磁開閉弁とされ他方が常閉の電磁開閉弁とされる。
また、対角位置にある一方の2つの車輪、すなわち、左前輪2および右後輪48に対応する保持弁153FL,RRが常開の電磁開閉弁とされ、対角位置にある他方の2つの車輪、すなわち、右前輪4および左後輪46に対応する保持弁153FR、RLが常閉の電磁開閉弁とされることになる。
また、減圧弁156FL,FR,RRは常閉の電磁開閉弁であり、左後輪46に対応して設けられた減圧弁156RLは常開の電磁開閉弁である。
【0021】
共通通路152には、ブレーキシリンダ42,52に加えて、動力式液圧源64、増圧機構100も接続される。
動力式液圧源64は、制御圧通路170を介して共通通路152に接続される。制御圧通路170に増圧リニア制御弁(SLA)172が設けられ、制御圧通路170とリザーバ78との間に減圧リニア制御弁(SLR)176が設けられる。これら増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176の制御により、動力式液圧源64の出力液圧が制御されて、共通通路152に供給される。増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176により出力液圧制御弁装置178が構成される。また、増圧リニア制御弁172、減圧リニア制御弁176は、出力液圧制御弁と称することができる。増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176は、いずれもソレノイドに電流が供給されない場合に閉状態にある常閉の電磁開閉弁であり、ソレノイドへの供給電流の大きさの連続的な制御により、出力液圧の大きさを連続的に制御可能なものである。
図3に示すように、増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176は、いずれも、弁子180と弁座182とを含むシーティング弁と、スプリング184と、ソレノイド186とを含み、スプリング184の付勢力F2は、弁子180を弁座182に接近させる向きに作用し、ソレノイド186に電流が供給されることにより駆動力F1が弁子180を弁座182から離間させる向きに作用する。また、増圧リニア制御弁172において、動力式液圧源64と共通通路152との差圧に応じた差圧作用力F3が弁子180を弁座182から離間させる向きに作用し、減圧リニア制御弁176においては、共通通路152(制御圧通路170)とリザーバ78との差圧に応じた差圧作用力F3が作用する(F1+F3:F2)。いずれにしても、ソレノイド186への供給電流の制御により、差圧作用力F3が制御され、制御圧通路170の液圧が制御される。また、増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176の制御により、共通通路152の液圧が制御されると考えることもできる。
【0022】
共通通路152には、増圧機構100がサーボ圧通路190を介して接続される。サーボ圧通路190には、高圧発生器遮断弁としての増圧機構遮断弁(SREG)192が設けられる。増圧機構遮断弁192は常開の電磁開閉弁である。
【0023】
一方、マスタ通路74,76が、左右前輪2,4の個別通路150FL,FRの保持弁153FL,FRの下流側に接続され、マスタ通路74、76の途中にそれぞれマニュアル遮断弁としてのマスタ遮断弁(SMCFL,FR)194FL,FRが設けられる。マスタ遮断弁194FLは常閉の電磁開閉弁であり、マスタ遮断弁194FRは常開の電磁開閉弁である。
さらに、マスタ通路74には、ストロークシミュレータ200がシミュレータ制御弁202を介して接続される。シミュレータ制御弁202は常閉の電磁開閉弁である。
【0024】
以上のように、本実施例においては、動力式液圧源64,出力液圧制御弁装置178、マスタ遮断弁194,保持弁153,減圧弁156、増圧機構遮断弁192等により液圧制御部54が構成される。
液圧制御部54はブレーキECU56の指令に基づいて制御される。ブレーキECU56は、図1に示すように、実行部、入出力部、記憶部等を含むコンピュータを主体とするものであり、入出力部には、ブレーキスイッチ218,ストロークセンサ220,マスタシリンダ圧センサ222,アキュムレータ圧センサ224,ブレーキシリンダ圧センサ226,レベルウォーニング228,車輪速度センサ230,ドア開閉スイッチ232,イグニッションスイッチ234、アクセルスイッチ236等が接続されるとともに液圧制御部54等が接続される。
ブレーキスイッチ218は、ブレーキペダル60が操作されるとOFFからONになるスイッチである。
ストロークセンサ220は、ブレーキペダル60の操作ストローク(STK)を検出するものであり、本実施例においては、2つのセンサが設けられ、同様に、ブレーキペダル60の操作ストロークが検出される。
マスタシリンダ圧センサ222は、マスタシリンダ62の加圧室の液圧(PMCFL、FR)を検出するものであり、マスタ通路74,76にそれぞれ設けられる。マスタ通路74,76の液圧は、原則として、同じ大きさである。
このように、本実施例においては、ストロークセンサ220,マスタシリンダ圧センサ222について2系統とされており、2つのセンサのうちの一方が故障しても他方によりブレーキ操作状態を検出することが可能となる。
【0025】
アキュムレータ圧センサ224は、アキュムレータ66に蓄えられている作動液の圧力(PACC)を検出するものである。
ブレーキシリンダ圧センサ226は、ブレーキシリンダ42,52の液圧(PWC)を検出するものであり、共通通路152に設けられる。保持弁153の開状態において、ブレーキシリンダ42,52と共通通路152とは連通させられるため、共通通路152の液圧をブレーキシリンダ42,52の液圧とすることができる。
レベルウォーニング228は、リザーバ78に収容された作動液が予め定められた設定量以下になるとONとなるスイッチである。本実施例においては、3つの収容室80、82,84のいずれか1つに収容された作動液量が設定量以下になると、ONとなる。
車輪速度センサ230は、左右前輪2,4、左右後輪46,48に対応してそれぞれ設けられ、車輪の回転速度を検出する。また、4輪の回転速度に基づいて車両の走行速度が取得される。
ドア開閉スイッチ232は、車両に設けられたドアの開閉を検出するものである。運転席側のドアの開閉を検出するものであっても、その他のドアの開閉を検出するものであってもよい。例えば、ドアカーテシランプスイッチをドア開閉スイッチとすることができる。
イグニッションスイッチ(IGSW)234は、車両のメインスイッチであり、アクセルスイッチ236は、図示しないアクセル操作部材が操作状態にある場合にONとなるスイッチである。
また、CAN59には、車間制御ECU240,衝突回避ECU242等が接続され、ブレーキECU56は、これらECUからの制動要求に応じて液圧制御部54等を制御する。
さらに、記憶部には、種々のプログラム、テーブル等が記憶されている。
【0026】
<イニシャルチェック>
本実施例において、予め定められた検査開始条件が満たされた場合にイニシャルチェックが行われる。例えば、ドア開閉スイッチ232がONにされたこと、イグニッションスイッチ234がONにされてから、最初にブレーキ操作が行われたこと等が検査開始条件とされる。
【0027】
図4のフローチャートで表されるイニシャルチェックプログラムは予め定められた設定時間毎に実行される。
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする。)において、予め定められた検査開始条件が満たされたか否かが判定される。検査開始条件が満たされた場合には、S2において、制御系のチェックが行われ、S3において、液漏れの可能性のチェックが行われる。
制御系の異常検出においては、例えば、各バルブ(増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176,保持弁153,減圧弁156,マスタ遮断弁194,増圧機構遮断弁192等)において断線が生じていないか否か、各センサ(ブレーキスイッチ218,ストロークセンサ220、マスタシリンダ圧センサ222、アキュムレータ圧センサ224,ブレーキシリンダ圧センサ226,車輪速度センサ230等)において断線が生じていないか否かが判定される。
【0028】
液漏れの可能性有無のチェックは、イグニッションスイッチ234がONになった場合、ブレーキ操作が行われた場合等に行われる。例えば、(a)レベルウォーニングスイッチ228がONである場合、(b)ブレーキ操作が行われた場合において、ブレーキペダル60のストロークとマスタシリンダ62の液圧との間に予め定められた関係が成立する場合には液漏れがないとされるが、マスタシリンダ62の液圧がストロークに対して小さい場合には液漏れの可能性が有るとされる。また、(c)ポンプ92が予め定められた設定時間以上継続して作動してもアキュムレータ圧センサ226の検出値が液漏れ判定しきい値以上にならない場合、(d)回生協調制御が行われていない場合において、マスタシリンダ圧センサ222の検出値に対してブレーキシリンダ圧センサ226の検出値が小さい場合、(e)前回のブレーキ作動時に、液漏れの可能性が有ると検出された場合(左右前輪2,4のブレーキシリンダ42にマスタシリンダ62の液圧が供給され、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52にポンプ圧が供給された場合)等には、液漏れの可能性が有るとされる。
このように、本実施例においては、(a)〜(e)の条件に基づいて液漏れの可能性の有無が検出される。そのため、液漏れの可能性が有ると検出された場合であっても、液漏れが実際に生じていない場合がある{液漏れ以外の原因によって、上述の(b)〜(e)の条件が満たされる場合があり得る}。また、実際に液漏れがあっても、液漏れ量が僅かである場合もある。しかし、これらの場合であっても、液漏れの可能性が無いと断定することはできないため、液漏れの可能性が有るとされるのである。
【0029】
<液圧供給状態の制御>
そして、イニシャルチェックの結果に基づいて、ブレーキシリンダ42,52への液圧の供給状態が制御されるのであり、図5のフローチャートで表される供給状態制御プログラムは予め定められた設定時間毎に実行される。
S11において、制動要求があるか否かが判定される。ブレーキスイッチ118がONである場合、あるいは、自動ブレーキを作動させる要求がある場合等には制動要求があるとされて、判定がYESとなる。自動ブレーキは、トラクション制御、ビークルスタビリティ制御、車間距離制御、衝突回避制御において作動させられる場合があり、これらの制御開始条件が満たされた場合に、制動要求があるとされることがある。
制動要求がある場合には、S12、13において、液漏れの可能性があるか否か、制御系が異常であるか否かの判定結果が読み込まれる。
いずれの判定もNOであり、当該ブレーキシステムが正常である場合(本実施例においては、制御系が正常で、かつ、液漏れの可能性が無いとされた場合)には、S14において、回生協調制御が行われる。
制御系が異常である場合には、S13の判定がYESとなり、S15において、すべてのバルブのソレノイドに電流が供給されなくなることにより、原位置に戻される。また、ポンプモータ98は停止状態に保たれる。
液漏れの可能性が有ると検出された場合には、S12の判定がNOとなり、S16において、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42にマスタシリンダ62の液圧が供給され、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52に出力液圧制御弁装置178によって制御された液圧が供給される状態とされる。制御系の異常と液漏れの可能性との両方が生じることは稀であるため、液漏れの可能性が有るとされても制御系は正常であり、各バルブの制御、ポンプモータ92の駆動は可能であると考えられる。
なお、電気系が異常である場合には、当該ブレーキシステムに電流が供給されなくなるため、バルブは原位置に戻され、ポンプモータ92は停止状態に保持される。制御系が異常である場合と同様の状態とされる。
また、本実施例においては、制御系が異常であるとされた場合、液漏れの可能性が有るとされた場合には自動ブレーキは作動させられないようにされている。
【0030】
1)システムが正常な場合
前後左右の4輪2,4,46,48のブレーキシリンダ42,52には、動力式液圧源64の液圧が制御されて供給される(ポンプ加圧)のであり、原則として回生協調制御が行われる。
回生協調制御は、駆動輪2,4に加わる回生制動トルクと、駆動輪2,4と従動輪46,48との両方に加わる摩擦制動トルクとの和である総制動トルクが総要求制動トルクとなるように行われる制御である。
総要求制動トルクは、ストロークセンサ220,マスタシリンダ圧センサ222の検出値等に基づいて取得される場合(運転者が要求する制動トルク)、車両の走行状態に基づいて取得される場合(トラクション制御、ビークルスタビリティ制御において必要な制動トルク)、車間制御ECU242,衝突回避ECU244等から供給された情報に基づいて取得される場合等がある。そして、ハイブリッドECU58から供給された情報(電動モータ20の回転数等に基づいて決まる回生制動トルクの上限値である発電側上限値、蓄電装置22の充電容量等に基づいて決まる上限値である蓄電側上限値)と、上述の総要求制動トルク(要求値)とのうちの最小値が要求回生制動トルクとして決定され、この要求回生制動トルクを表す情報がハイブリッドECU58に供給される。
ハイブリッドECU58は要求回生制動トルクを表す情報をモータECU28に出力する。モータECU28は、電動モータ20によって左右前輪2,4に加えられる制動トルクが要求回生制動トルクとなるように、電力変換装置26に制御指令を出力する。電動モータ20は、電力変換装置26によって制御される。
電動モータ20の実際の回転数等の作動状態を表す情報がモータECU28からハイブリッドECU58に供給される。ハイブリッドECU58において、電動モータ20の実際の作動状態に基づいて実際に得られた実回生制動トルクが求められ、その実回生制動トルク値を表す情報をブレーキECU56に出力する。
ブレーキECU56は、総要求制動トルクから実回生制動トルクを引いた値等に基づいて要求液圧制動トルクを決定し、ブレーキシリンダ液圧が要求液圧制動トルクに対応する目標液圧に近づくように、増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176等を制御する。
【0031】
回生協調制御においては、図6に示すように、原則として、前後左右の各輪2,4,46,48の保持弁153FL,FR,RL,RRがすべて開状態とされ、減圧弁156FL,FR,RL,RRがすべて閉状態とされる。また、マスタ遮断弁194FL,FRは閉状態とされ、シミュレータ制御弁202が開状態とされ、増圧機構遮断弁192は閉状態とされる。共通通路152が増圧機構100から遮断され、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL、FRがマスタシリンダ62から遮断された状態で、増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176が制御され、その制御圧が共通通路152に供給され、4輪のブレーキシリンダ42,52に供給される。
なお、この状態で、車輪2,4,46,48のスリップが過大となり、アンチロック制御開始条件が満たされると、保持弁153、減圧弁156が別個独立にそれぞれ開閉させられ、各ブレーキシリンダ42,52の液圧が制御される。前後左右の各輪2,4,46,48のスリップ状態が適正な状態とされる。
また、液圧ブレーキシステムが電気的駆動装置8を備えていない車両に搭載された場合等回生協調制御が行われない車両においては、総要求制動トルクと液圧制動トルクとが等しくなるように、出力液圧制御弁装置178が制御される。
【0032】
2)制御系が異常である場合(電気系が異常である場合)
図7に示すように、各バルブは原位置に戻される。
増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176は、ソレノイド184に電流が供給されないことにより閉状態とされて、動力式液圧源64が共通通路152から遮断される。
また、増圧機構遮断弁192は開状態とされるため、増圧機構100が共通通路152に連通させられる。
さらに、保持弁153FR、RLは閉状態にあり、保持弁153FL、RRは開状態にあるため、共通通路152に左前輪2,右後輪48のブレーキシリンダ42FL、52RRが連通させられ、右前輪4,左後輪46のブレーキシリンダ42FR、52RLは遮断される。
【0033】
ブレーキペダル60の操作によって、マスタシリンダ62の加圧室70,72に液圧が発生させられる。
加圧室72の液圧が増圧機構100に供給されて、増圧機構100が作動させられる。段付きピストン104の前進により小径側室112が大径側室110から遮断され、液圧が増加させられる。開弁部材125が前進させられ、高圧供給弁116が開状態とされる。また、アキュムレータ66から高圧側逆止弁132を経て高圧室114に高圧の作動液が供給され、小径側室112に供給される。小径側室112の液圧(サーボ圧)は、マスタシリンダ62の液圧より高くされ(ブレーキ操作力が倍力され)、開状態にある増圧機構遮断弁192を経て共通通路152に供給され、保持弁153FL,RRを経て左前輪、右後輪のブレーキシリンダ42FL,52RRに供給される。
この場合において、左前輪2に対応するマスタ遮断弁194FLは閉状態にあるため、ブレーキシリンダ42FLに供給されたサーボ圧のマスタシリンダ62への流出が防止される。それによって、液圧ブレーキ40FLを良好に作動させることができる。
【0034】
ポンプ装置65は停止状態にあるため、そのうちに、アキュムレータ66の液圧が低くなる。アキュムレータ66の液圧が高圧室114の液圧以下になると、アキュムレータ66と高圧室114との間の作動液の流れが阻止されるため、段付きピストン104の前進が阻止される。また、段付きピストン104は、ストッパに当接することによって前進が阻止されることもある。いずれにしても、小径側室112の液圧はそれ以上高くなることがないのであり、メカ式増圧器134は倍力機能を発揮できなくなる。
一方、ブレーキペダル60の操作力が増加させられ、マスタシリンダ62の加圧室72の液圧が小径側室112の液圧より高くなると、メカ増圧器バイパス通路136,マニュアル側逆止弁138を経て小径側室112(メカ式増圧器134の出力側)に供給され、増圧機構遮断弁192,保持弁153FL,RRを介して左前輪2、右後輪48のブレーキシリンダ42FL,52RRに供給される。
この場合には、マスタシリンダ62の加圧室72の液圧は、倍力されることなく、左前輪2、右後輪48のブレーキシリンダ42FL,52RRに供給される。
【0035】
また、保持弁153FR、RLは閉状態にあるため、右前輪4,左後輪46のブレーキシリンダ42FR、52RLには、加圧室72の液圧が供給されないようにされている。
マスタシリンダ62の1つの加圧室72から供給可能な作動液の量は決まっている。そのため、供給先のブレーキシリンダの個数が多くなると、ブレーキシリンダの液圧を充分に高くすることができないという問題が生じる。一方、前輪のブレーキシリンダ42の方が後輪のブレーキシリンダ52よりピストンの受圧面積が大きいため、液圧を同じにした場合に、ブレーキシリンダにおいて消費される作動液の量が多くなる。
これらの事情から、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRに加圧室72から液圧が供給されるようにすると制動力不足が生じるおそれがある。
それに対して、幅方向の同じ側の2つの車輪、例えば、左前輪2、左後輪46のブレーキシリンダ42FL、52RLに加圧室72の液圧が供給されるようにすることも可能であるが、その場合には、ヨーモーメントが生じるおそれがある。
そこで、互いに対角位置にある2つの車輪(左前輪2,右後輪48)のブレーキシリンダ42FL、52RRに作動液が供給されるようにすれば、ヨーモーメントを生じ難くしつつ、2つの液圧ブレーキ40FL、50RRを良好に作動させることができる。
【0036】
また、右前輪4のブレーキシリンダ42FRには開状態にあるマスタ遮断弁194FRを経てマスタシリンダ62の加圧室70から液圧が供給される。
左後輪46のブレーキシリンダ52RLには、液圧が供給されることがない。
このように、本実施例においては、制御系の異常、電気系の異常時に、3輪のブレーキシリンダ42FL,FR,52RRに、増圧機構100,マスタシリンダ62の液圧が供給される。その結果、2輪のブレーキシリンダに液圧が供給される場合に比較して、車両全体として制動力を大きくすることができる。
また、増圧機構100が作動している間には、左前輪2にサーボ圧が供給され、右前輪4にマスタ圧、右後輪48にサーボ圧が供給されるため、車両の左側と右側との間の制動力差が小さくなり、より一層、ヨーモーメントを生じ難くすることができる。
【0037】
3)液漏れの可能性が有ると検出された場合
図8に示すように、左右前輪2,4の保持弁153FL,FRは閉状態とされ、左右後輪46,48の保持弁153RL、RRは開状態とされる。また、マスタ遮断弁194FL,FRは開状態とされ、増圧機構遮断弁192は閉状態とされ、シミュレータ制御弁202は閉状態とされる。さらに、すべての減圧弁156は閉状態とされる。前述のように、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRにはマスタシリンダ62の液圧が供給され、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL,RRには、ポンプ装置65の液圧が制御されて供給されるのである。
このように、左右前輪2,4の保持弁153FL,FRが遮断状態とされるため、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRが互いに遮断される。また、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRと左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL,RRとが遮断される。このように、前輪、後輪のブレーキシリンダ同士が互いに遮断されるとともに、前輪側において、左前輪2、右前輪4のブレーキシリンダ同士が遮断される。すなわち、(左前輪のブレーキシリンダ42FLを含むブレーキ系統250FL)、(右前輪のブレーキシリンダ42FRを含むブレーキ系統250FR)、(左右後輪のブレーキシリンダ52FL,RRを含むブレーキ系統250R)の3つのブレーキ系統が互いに遮断される。その結果、たとえ、これら3つのブレーキ系統のうちの1つに液漏れが生じた場合であっても、他のブレーキ系統に影響が及ばないようにされる。
また、増圧機構遮断弁192が閉状態とされるため、動力式液圧源64から共通通路152に供給された作動液が増圧機構100に流れることを防止することができる。すなわち、本実施例においては、液漏れの可能性の有無が検出されるが、液漏れの位置が特定されない。仮に、ブレーキ系統250FLに液漏れが生じている場合には、大径側室110に高圧の液圧を供給することができず、増圧機構100は非作動状態に保持される。段付きピストン104が後退端位置にあり、連通路130により小径側室112と大径側室110とが連通させられている。この場合に、増圧機構遮断弁192が開状態にあると、連通路130を介して、共通通路152と加圧室72とが連通させられ、共通通路152の液圧が逆流するおそれがある。それに対して、増圧機構遮断弁192が閉状態とされれば、共通通路152の作動液がマスタシリンダ62に流出させられることを良好に防止することができ、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL,RRに制御圧を供給することが可能となる。
なお、本実施例において、ブレーキ系統250FRは、ブレーキシリンダ42FR、マスタ通路76,加圧室70,収容室80等を含むものであり、ブレーキ系統250FLは、ブレーキシリンダ42FL、マスタ通路74,加圧室72,収容室82等を含むものであり、ブレーキ系統250Rは、ブレーキシリンダ52RL,RR,個別通路150RL、RR,動力式液圧源64,収容室84等を含むものである。
【0038】
4)液圧ブレーキが解除される場合
ブレーキ操作が解除されると、すべてのバルブのソレノイドに電流が供給されなくなることにより、図2の原位置に戻される。また、増圧機構100において、段付きピストン104は後退端に戻され、液通路130により大径側室110と小径側室112とが連通させられる。
右前輪のブレーキシリンダ42FRの液圧は開状態にあるマスタ遮断弁194FRを経て、マスタシリンダ62,リザーバ78に戻され、左前輪2のブレーキシリンダ42FLの液圧は開状態にある保持弁153FL,増圧機構遮断弁192,連通路130を経て、マスタシリンダ62、リザーバ78に戻される。右後輪48のブレーキシリンダ52RRの液圧も同様に、保持弁153RR,増圧機構遮断弁192,増圧機構100を経てリザーバ78に戻される。左後輪46のブレーキシリンダ52の作動液は開状態にある減圧弁156RLを介してリザーバ78に戻される。
左後輪46のブレーキシリンダ52RLについては、制御系の異常(電気系の異常)時に、マスタシリンダ62や増圧機構100の作動液が供給されないようにするために、保持弁153RLが常閉の電磁制御弁とされる。そのため、ブレーキ解除時に、ブレーキシリンダ52FLが共通通路152から遮断され、増圧機構100を経て、マスタシリンダ62に作動液を戻すことができない。それに対して、減圧弁156RLが常開の電磁開閉弁とされるため、減圧弁156RLを経てブレーキシリンダ52RLの作動液をリザーバ78に戻すことができる。また、減圧弁156が常開の電磁開閉弁である場合には、液圧ブレーキ40,50の作用状態においてソレノイドに電流を供給し続けなければならず、消費電力が多くなるという問題がある。それに対して、本実施例において、常開の減圧弁156RLは1つであるため、それによる消費電力の増加を抑制することができる。
【0039】
以上のように、本実施例においては、イニシャルチェックの結果に応じて、ブレーキシリンダ42,52への液圧の供給状態が制御される。
制御系の異常(電気系の異常)には、増圧機構100の作動によりマスタシリンダ62の液圧より高い液圧をブレーキシリンダ42FL、52RRに供給することができる。また、右前輪4のブレーキシリンダ42FRには、マスタシリンダ62から液圧が供給されるため、電気系の異常時に、3輪の液圧ブレーキ40FL,FR,50RRを作動させることができる。その結果、2輪の液圧ブレーキが作動させられる場合に比較して、制動力不足を解消することができる。さらに、サーボ圧が対角位置にある車輪のブレーキシリンダに供給されるため、それにより、ヨーモーメントが生じ難くすることができる。
液漏れの可能性がある場合には、ブレーキ系統250FL,FR,Rが互いに遮断される。そのため、3つのブレーキ系統250FL,FR,Rのうちの1つに液漏れが生じていても、その影響が他のブレーキ系統に及ぶことを良好に回避することができる。また、液漏れが生じていないブレーキ系統においては、より確実に液圧ブレーキを作動させることが可能となる。
また、本実施例においては、保持弁153FLが左右遮断弁としての機能を果たし、保持弁153FL,FRが前後遮断弁としての機能を果たす。そのため、専用の前後遮断弁、左右遮断弁が不要となり、その分、コストダウンを図ることができる。
【0040】
以上のように構成された液圧ブレーキシステムにおいて、ブレーキECU56の図5のフローチャートで表される供給状態制御プログラムを記憶する部分、実行する部分等により供給状態制御装置が構成される。供給状態制御装置は電磁弁制御部でもある。なお、S16を記憶する部分、実行する部分等により連通遮断制御装置が構成されると考えることもできる。
また、出力液圧制御弁装置178およびブレーキECU56のS14,16を記憶する部分、実行する部分等により出力液圧制御装置が構成される。
さらに、マスタ通路74,個別通路150FL,保持弁153FL,マスタ遮断弁194FL、ブレーキシリンダ42FLが、それぞれ、第1マニュアル通路、第1個別通路、第1開閉弁、第1マニュアル遮断弁、第1ブレーキシリンダに対応し、マスタ通路76,個別通路150FR,保持弁153FR,マスタ遮断弁194FR、ブレーキシリンダ42FRが、それぞれ、第2マニュアル通路、第2個別通路、第2開閉弁、第2マニュアル遮断弁、第2ブレーキシリンダに対応する。また、保持弁153FL,FR,RL,RRは、増圧制御弁でもある。
また、共通通路152,個別通路150等によって液圧供給通路が構成される。
さらに、ブレーキECU56のS3を記憶する部分、実行する部分等により、液漏れ可能性検出装置が構成される。
【実施例2】
【0041】
実施例2の液圧ブレーキシステムのブレーキ回路を図9に示す。実施例1におけるブレーキ回路の構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。また、ブレーキECU56による制御等については実施例1における場合と同様である。
実施例2おいては、共通通路310に、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL,RRが1つの個別通路312を介して接続される。左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL,RRの液圧は共通に制御されるのである。そして、個別通路312には共通の保持弁314が設けられる。保持弁314は常閉の電磁開閉弁である。また、保持弁314と並列にブレーキシリンダ52RL、RRから共通通路310への作動液の流れを許容し、逆向きの流れを阻止するブレーキシリンダ側逆止弁316が設けられる。
また、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRは、それぞれ、個別通路320FL,FRを介して共通通路310に接続されるが、個別通路320FL,FRに保持弁が設けられていない。一方、個別通路320FL,FRには、マスタ通路74,76が接続され、マスタ通路74,76に、それぞれ、マスタ遮断弁324FL,FRが設けられる。マスタ遮断弁324FLは常閉の電磁開閉弁であり、マスタ遮断弁324FRは常開の電磁開閉弁である。
さらに、共通通路310の個別通路312の接続部とサーボ圧通路190の接続部との間に前後遮断弁330が設けられ、共通通路310および2つの個別通路320FL,320FRの接続部の間の部分に左右遮断弁332が設けられる。
前後遮断弁330、左右遮断弁332は、常開の電磁開閉弁である。
なお、図9に示す液圧ブレーキ回路において、左右遮断弁332が、共通通路310に設けられていたが、個別通路320FL,FRのマスタ通路74,76の接続部より共通通路側の部分に設けてもよい。また、前後遮断弁330が、サーボ圧通路190の接続部より個別通路312側の部分に設けられたが、サーボ圧通路190の接続部より個別通路320側に設けてもよい。
【0042】
以上のように構成された液圧ブレーキシステムの作動について説明する。
1)液圧ブレーキシステムが正常である場合
図10に示すように、増圧機構100が共通通路310から遮断され、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRがマスタシリンダ62から遮断された状態で、共通通路310に、出力液圧制御弁装置178によって制御された液圧が供給される。
また、左右後輪46,48の保持弁314が開状態とされ、前後遮断弁330,左右遮断弁332が開状態とされる。そのため、すべてのブレーキシリンダ42,52に、制御圧が供給される。
【0043】
2)制御系が異常である場合(電気系が異常である場合)
すべてのバルブは、図11に示す原位置に戻される。増圧機構100から出力されたサーボ圧が共通通路310に供給される。この場合に、左右後輪46,48の保持弁314は常閉弁であるため、サーボ圧は、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRに供給される。
また、マスタ遮断弁324FRが開状態にあるため、増圧機構100の出力液圧がマスタシリンダ62の液圧より高い間、加圧室70に供給される。それにより、加圧室70の液圧が高くなり、加圧ピストン69に加えられる力が大きくなり、加圧室72の液圧が高くなる。増圧機構100を作動させる液圧が高くなり、出力液圧が高くなり、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL、FRの液圧をより一層高くすることが可能となる。
アキュムレータ66に蓄えられた作動液の圧力が低くなり、加圧室72の液圧が増圧機構100の出力液圧より大きくなると、マスタシリンダ62の液圧がマニュアル側逆止弁138を経て主として左前輪2のブレーキシリンダ42FLに供給される。また、マスタシリンダ62の加圧室70の液圧は、主として、右前輪4のブレーキシリンダ42FRに供給される。このように、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL、FRには、それぞれ、加圧室72,70の液圧が供給されるのであり、良好に液圧ブレーキ40FL,FRを作動させることができる。
また、左右前輪2,4のブレーキシリンダ液圧はほぼ同じ大きさになるため、ヨーモーメントが生じ難くなる。
【0044】
3)液漏れの可能性が有ると検出された場合
図12に示すように、増圧機構遮断弁192,左右遮断弁332,前後遮断弁330が閉状態にされる。また、保持弁314が開状態とされ、マスタ遮断弁324FL,FRが開状態とされる。
左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL、RRには動力式液圧源64の液圧が制御されて供給され、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL、FRには、それぞれ、マスタシリンダ62の液圧が供給される。この場合に、左右遮断弁332,前後遮断弁330が閉状態にされるため、(ブレーキシリンダ42FLを含むブレーキ系統350FL)、(ブレーキシリンダ42FRを含むブレーキ系統350FR)、(ブレーキシリンダ52RL、RRを含むブレーキ系統350R)の3つの系統が互いに遮断される。そのため、たとえ、3つのブレーキ系統350FL,FR,Rうちの1つに液漏れがあっても、それの影響が他のブレーキ系統に及ぶことが回避される。また、液漏れが生じていないブレーキ系統においては、より確実に液圧ブレーキを作動させることができる。
なお、本実施例においては、左右遮断弁332が共通通路310のサーボ圧通路190の接続部より右前輪4のブレーキシリンダ42FR側に設けられるため、増圧機構遮断弁192を閉状態とする必要は必ずしもない。左右遮断弁332,前後遮断弁330が閉状態とされた場合には、増圧機構100は左前輪2のブレーキシリンダ42FLにのみ連通する状態となり、他のブレーキ系統350FR、350Rから遮断されるからである。
【0045】
4)液圧ブレーキが解除される場合
各バルブは図9が示す原位置に戻される。右前輪4のブレーキシリンダ42FRの作動液はマスタ通路76を介してマスタシリンダ62に戻され、左前輪2のブレーキシリンダ42FLの作動液は増圧機構100を経て戻される。また、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL、RRの作動液はブレーキシリンダ側逆止弁316,開状態にある前後遮断弁330,共通通路310,増圧機構100、あるいは、開状態にある前後遮断弁330,左右遮断弁332,マスタ遮断弁324を経てマスタシリンダ62に戻される。
このように、本実施例においては、後輪46,48に対応して設けられた保持弁314が常閉の電磁開閉弁とされるが、保持弁314と並列にブレーキシリンダ側逆止弁316が設けられるため、電気系統の異常時に、後輪46,48のブレーキシリンダ52に作動液が供給されないようにすることにより、制動力を確保しつつ、ブレーキ解除時にブレーキシリンダ52の作動液を確実に戻すことが可能となる。
本実施例においては、個別通路312が第3個別通路に対応し、保持弁314が第3開閉弁に対応する。
【0046】
なお、保持弁314をブレーキ側逆止弁としての機能を備えたものとすることができる。保持弁314は常閉の電磁開閉弁であり、図3に示す増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176等と構造が同じである。保持弁314の閉状態において、ソレノイドに電流が供給されない場合には、弁子には前後の差圧に応じた差圧作用力F3とスプリングの付勢力F2とが作用する。この場合において、保持弁314のスプリングを、付勢力F2が小さいものとすれば、保持弁314の閉状態において、ブレーキシリンダ52の液圧が共通通路310の液圧より高くなり、差圧作用力F3がスプリングの付勢力F2より大きくなると、保持弁314が開状態に切り換えられる。このように、保持弁314のスプリングを、付勢力が小さいものとすることによって、ブレーキシリンダ側逆止弁316が不要となり、さらに、コストダウンを図ることができる。
【実施例3】
【0047】
実施例2の液圧ブレーキシステムにおいては、液漏れの可能性が有ると検出された場合には、図12に示す状態とされていたが、それに限らない。
以下、実施例2に記載の液圧ブレーキ回路を含むブレーキシステムにおいて、液漏れの可能性が有ると検出された場合の、左右遮断弁332,前後遮断弁330の制御について説明する。
左右遮断弁332,前後遮断弁330は、液漏れの可能性があると検出された場合には、できる限り閉状態に保持されることが望ましい。液漏れの可能性が有ると検出されても、実際に液漏れが有るとは限らないが、仮に、実際に液漏れが有る場合には、その液漏れの影響が他のブレーキ系統に及ばないようにすることが望ましい。しかし、左右遮断弁332,前後遮断弁330は、常開の電磁開閉弁であるため、閉状態に保持するためには、ソレノイドに電流を供給し続ける必要があり、電流が長時間継続して供給されると、消費電力が多くなったり、ソレノイドが過熱する等の問題が生じる。
一方、ブレーキ系統350FL,FR,Rに液圧が加えられない場合等には、たとえ、実際に液漏れしている部分があっても、そこから、作動液が外部に流出することは殆どなく、他のブレーキ系統への影響も小さい。
以上の事情を考慮して、実施例2においては、液漏れの可能性が有るとされた場合には、左右遮断弁332,前後遮断弁330を、原則として、閉状態に保持し、予め定められた開許可条件が満たされた場合(開状態にしても差し支えない場合)に、ソレノイドへの供給電流がOFFとされ、開状態とされる。
換言すれば、液漏れの可能性が有るとされた場合であっても、真に必要な場合(閉条件が満たされた場合)に、ソレノイドへの供給電流がONとされて、閉状態にされるのである。いずれにしても、ソレノイドの過熱を防止し、消費電力の低減を図ることができる。
【0048】
A)左右遮断弁332,前後遮断弁330は、図13のフローチャートで表される左右遮断弁、前後遮断弁制御プログラムにより制御されるようにすることができる。図13のフローチャートで表されるプログラムは予め定められた設定時間毎に実行される。
S61において、液漏れの可能性の有無の検出結果が読み込まれる。液漏れの可能性が有る場合には、S62において、ブレーキスイッチ218がONであるか否かが判定される。ONである場合には、S63において、左右遮断弁332,前後遮断弁330が閉状態とされるが、OFFである場合には、S64において、ソレノイドに電流が供給されず、開状態とされる。また、ブレーキスイッチ218がOFFからONに切り換えられた場合には、左右遮断弁332,前後遮断弁330も閉状態に切り換えられる。
ブレーキスイッチ218がONで、液圧ブレーキ40,50の作用中においては、左右遮断弁332,前後遮断弁330を閉状態として、3つのブレーキ系統350FL,FR,Rを互いに独立にすることが望ましい。この場合には、実施例2における場合と同様に、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL、RRには、出力液圧制御弁装置178によって制御された液圧が供給され、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRにはマスタシリンダ62から液圧が供給されるようにすることができる。
液漏れの可能性が有ると検出された場合に、回生協調制御が行われないようにされている場合には、ブレーキスイッチ218がONである場合には、液圧ブレーキ40,50は作用状態にあると考えられる。
左右遮断弁332,前後遮断弁330においては、ソレノイドのコイルの巻き数が多くされることによって発熱が抑制されたり、供給電流の制御により発熱が抑制されたりする。
それに対して、ブレーキスイッチ218がOFFであり、液圧ブレーキ40,50が非作用状態にある場合には、左右遮断弁332,前後遮断弁330が開状態にあっても、他のブレーキ系統への液漏れの影響は小さい。そのため、ブレーキスイッチ218のOFF状態において左右遮断弁332,前後遮断弁330のソレノイドへの供給電流がOFFとされ、開状態とされる。それによって、消費電力の低減を図り得、過熱を抑制することができる。
また、液漏れの可能性が無い場合にはS61の判定がNOとなり、S63,64が実行されることがない。このことは、左右遮断弁332,前後遮断弁330が、本プログラムによって制御されるのではなく、供給状態制御プログラム等別のプログラムによって制御されるという意味である。したがって、液漏れの可能性がないと検出された場合に開状態に戻されるのが普通であるが、直ちに開状態に切り換えられるとは限らない。例えば、ビークルスタビリティ制御、トラクション制御において、左前輪2のブレーキシリンダ42FLにのみ出力液圧制御弁装置178によって制御された液圧を供給する場合には、左右遮断弁332が閉状態とされる。
【0049】
なお、S62において、ブレーキシリンダ圧センサ224の検出液圧が液圧ブレーキ40,50が作用状態にあるとみなし得る作用判定しきい値以上であるか否かが判定されるようにすることもできる。このようにすれば、例えば、液漏れの可能性が有ると検出された場合に自動ブレーキが作動させられるようにされている場合であっても、左右遮断弁332,前後遮断弁330を閉状態にすることができる。
また、液漏れ可能性の有無は、イニシャルチェック時に限らず、その都度、検出されるようにすることができる。すなわち、S61において、液漏れ可能性の有無の検出が行われるようにすることができるのである。
ブレーキECU56の図13の左右遮断弁、前後遮断弁制御プログラムを記憶する部分、実行する部分等により連通遮断制御装置が構成される。そのうちの、S62,S63を記憶する部分、実行する部分等により電磁弁閉制御部が構成され、S62,64を記憶する部分、実行する部分等により電磁弁開制御部が構成される。電磁弁閉制御部は、操作対応閉制御部でもある。
また、左右遮断弁332が第1連通遮断弁に対応し、前後遮断弁330は第2連通遮断弁に対応する。
なお、電磁弁閉制御部が電磁弁閉保持部に対応し、電磁弁開制御部が強制的電磁弁開制御部に対応すると考えることもできる。
【0050】
B)左右遮断弁332,前後遮断弁330は、図14のフローチャートで表される制御プログラムによって制御されるようにすることもできる。
S71において、液漏れの可能性の有無の検出結果が読み込まれる。液漏れの可能性が有る場合には、S72、73において、少なくとも1つのブレーキシリンダ42,52の液圧が予め定められた設定液圧より大きいか否か、少なくとも1つのブレーキシリンダ42,52の液圧の変化勾配の絶対値が設定勾配より大きいか否かが判定される。少なくとも1つの判定結果がYESである場合には、S74において閉状態とされるが、いずれの判定もNOの場合には、S75において、開状態とされる。
設定液圧は、例えば、仮に、液漏れがあった場合に、液漏れ部分(例えば、シールが劣化している部分)から作動液が外部に設定量以上流出するため、それによる他のブレーキ系統への影響が問題となるとみなし得る液圧(影響判定しきい値と称することができる)とすることができる。設定液圧は、液圧ブレーキ42,52が作用状態にあるとみなし得る液圧(作用判定しきい値)より大きい値とすることができる。換言すれば、液圧ブレーキ42,52が作用状態にあっても、ブレーキシリンダ42,52の液圧が低い場合には漏れ量も少ないため、それによる影響も小さく開状態にあっても差し支えないが、液圧が高い場合には、それによる影響が大きく、閉状態にする必要性が高いと考えられる。
一方、ブレーキシリンダ42,52の液圧の変化勾配の絶対値が設定勾配より大きい場合には、液漏れ量が多くなると考えられる。また、ブレーキシリンダ液圧の増加勾配が大きい場合には、ブレーキシリンダ液圧が高くなる可能性が高いと考えることもできる。したがって、変化勾配の絶対値が大きい場合には、左右遮断弁332,前後遮断弁330を閉状態とすることが望ましい。
また、左右遮断弁332,前後遮断弁330の開状態においては、マスタ遮断弁324FL,FRを閉状態とすることが望ましい。
本実施例においては、ブレーキECU56のS72,73,74を記憶する部分、実行する部分等により液圧対応閉制御部が構成される。
なお、S73において、ブレーキシリンダ液圧の変化勾配の絶対値が設定勾配より大きくなる可能性が高いか否かが判定されるようにすることもできる。例えば、ブレーキペダル60が操作される可能性が高い場合には、増加勾配が設定勾配より大きくなる可能性が高いと考えることができる。
【0051】
C)左右遮断弁332,前後遮断弁330は、図15のフローチャートで表される制御プログラムによって制御されるようにすることもできる。
液漏れの可能性が有る場合には、S82、83において、イグニションスイッチ234がONであって、かつ、車両の走行速度が停車中であるとみなし得る設定速度以下であるか否か、イグニッションスイッチ234がONであって、かつ、アクセルスイッチ236がOFFであるか否かが判定される。少なくとも一方の判定結果がYESである場合には、S84において閉状態とされるが、両方の判定結果がNOの場合には、S85において、開状態とされる。イグニッションスイッチ234がOFFである場合、あるいは、イグニッションスイッチ234がONであり、車両が走行中であって、アクセルペダルが操作されている場合には、ブレーキペダル60が操作される可能性が低いため、開状態としても差し支えないと考えられる。
車両の走行速度が設定速度以下である場合、アクセルペダルが操作されていない場合には、ブレーキペダル60が操作される可能性が高いため、閉状態にしておくことが望ましい。ブレーキペダル60の作用操作時にはブレーキシリンダ42,52の液圧の増加勾配が大きくなるため、液漏れの他のブレーキ系統への影響が大きくなる。そのため、実際にブレーキペダル60の操作が開始されるのに先立って、閉状態としておくことが望ましい。
また、実際にブレーキペダル60が操作されている場合には、アクセルスイッチ324はOFFであるため、S83の判定がNOとなり、S84において、左右遮断弁332,前後遮断弁330は閉状態にされる。
本実施例においては、ブレーキECU56のS82,84を記憶する部分、実行する部分等により停車中閉制御部が構成される。また、S82〜84を記憶する部分、実行する部分等により操作対応閉制御部が構成されると考えることもできる。
なお、ブレーキペダル60の操作が解除された場合にも、左右遮断弁332,前後遮断弁330は閉状態にあるため、操作後、減圧リニア制御弁176を設定時間の間、開状態として、後輪46,48のブレーキシリンダ52RL,RRの液圧が、減圧リニア制御弁176を経てリザーバ78に戻されるようにすることが望ましい。
【0052】
D)前後遮断弁330,左右遮断弁332は、図16のフローチャートで表されるプログラムによって制御されるようにすることもできる。本実施例においては、液漏れが検出された場合には原則として常に閉状態に保持されるのであるが、ブレーキスイッチ218がONからOFFにされてから設定時間内は開状態とされる。ブレーキペダルが解除されてから設定時間内に再びブレーキ操作が行われる可能性は低いからである。設定時間は、ブレーキ操作解除後に、再び、ブレーキ操作が行われる可能性が低いと考えられる時間とされる。
S91において、液漏れの可能性の有無が検出され、液漏れの可能性が有るとされた場合には、S92において、ブレーキスイッチ218がONからOFFに切り換えられてから設定時間(例えば、2秒程度)が経過したか否かが判定される。設定時間が経過する以前においては、S93において、開状態とされるが、設定時間が経過した場合には、S94において閉状態にされる。ブレーキスイッチ218のOFF状態にあっても閉状態にされるのであり、イグニッションスイッチ234がONであってもOFFであっても閉状態に保持される。
本実施例においては、ブレーキECU56のS91,92,94を記憶する部分、実行する部分等により電磁弁閉保持部が構成され、S92,93を記憶する部分、実行する部分等により強制的電磁弁開制御部が構成される。また、S92,93を記憶する部分、実行する部分等により操作対応閉制御部が構成されると考えることもできる。
【0053】
E)図17のフローチャートで表されるプログラムに従って制御することもできる。本実施例においては、液漏れが検出された場合には、イグニッションスイッチ234がON状態にある間、閉状態に保持されるのであるが、イグニッションスイッチ234がOFFの間は開状態に保持される。
S95において、液漏れの可能性の有無が検出され、液漏れの可能性が有るとされた場合には、S96において、イグニッションスイッチ234がON状態にあるか否かが判定される。ON状態にある場合には、S97において閉状態にされるが、OFF状態にある場合には、S97において、開状態とされる。
本実施例においては、S96,97を記憶する部分、実行する部分等によりスイッチON中閉制御部が構成される。
【0054】
なお、左右遮断弁332,前後遮断弁330は、イグニッションスイッチ234がONであってもOFFであっても、常に、閉状態に保持されるようにすることができる。
また、左右遮断弁332,前後遮断弁330の閉状態が予め定められた発熱抑制時間以上継続した場合であって、かつ、ブレーキスイッチ218がOFFである場合に、予め定められた冷却時間だけ開状態とすることもできる。このようにすれば、ソレノイドの加熱を良好に抑制することができ、消費電力を低減させることができる。
さらに、左右遮断弁332,前後遮断弁330の制御は、上述の5つのプログラムのうちの2つ以上の一部あるいはすべてを組み合わせた態様で行われるようにすることもできる。
また、左右遮断弁332の制御と前後遮断弁330の制御とを別個のプログラムにより行われるようにしたり、左右遮断弁332,前後遮断弁330が、予め定められた条件が満たされた場合に交互に開状態とされるようにすることもできる。
【実施例4】
【0055】
ブレーキ回路は、図18に示す構成を成したものとすることができる。
本実施例に係るブレーキ回路においては、左右前輪2,4の個別通路320FR,FLの途中に、ブレーキシリンダ42FL,FRの液圧を制御可能な個別液圧制御部360FR、FLが設けられる。個別液圧制御部360FL,FRは、それぞれ、1つ以上の電磁開閉弁を含むものとすることができ、実施例1の液圧ブレーキシステムにおける保持弁153、減圧弁156を含むものとしたり、増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176を含むものとしたりすることができる。個別液圧制御部360FL、FRを設ければ、ブレーキシリンダ42FL,FRの液圧を細かに制御することが可能となる。
【0056】
なお、増圧機構100や出力液圧制御弁装置178は不可欠ではない。動力式液圧源64は、増圧機構100を作動させるためにのみ用いられるようにすることもできる。
また、実施例1,2,3のうちの2つ以上を組み合わせた態様で実施することもできる。例えば、実施例1,2を組み合わせ、ブレーキ液圧回路において、(i)左右前輪のブレーキシリンダ42FL,FRに対応して保持弁153FL,FR、減圧弁156FL,FRを設け、左右後輪のブレーキシリンダ52RL,RRに対応して共通に保持弁314を設けたり、(ii)右前輪のブレーキシリンダ42FRに対応して保持弁332を設け、左右後輪のブレーキシリンダ52RL,FRに対応して保持弁153RL、RR、減圧弁156RL、RRを設けることもできる。さらに、実施例1のブレーキ液圧回路に実施例3の制御を適用することができる。この場合には、保持弁153FL,FRの両方、あるいは、常開の保持弁153FRが、制御対象バルブとされる。
その他、本発明は、上述に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
40,50:液圧ブレーキ 42,52:ブレーキシリンダ 54:液圧制御部 56:ブレーキECU 60:ブレーキペダル 62:マスタシリンダ 64:動力式液圧源 66:アキュムレータ 70,72:加圧室 74,76:マスタ通路 100:増圧機構 104:段付きピストン 110:大径側室 112:小径側室 132:高圧側逆止弁 138:マニュアル側逆止弁 134:メカ式増圧器 150:個別通路 152:共通通路 153:保持弁 156;減圧弁 170:制御圧通路 172:増圧リニア制御弁 176:減圧リニア制御弁 178:出力液圧制御弁装置 190:サーボ圧通路 192:増圧機構遮断弁 218:ブレーキスイッチ 220:ストロークセンサ 222:マスタシリンダ圧センサ 224:アキュムレータ圧センサ 226:ブレーキシリンダ圧センサ 228:レベルウォーニング 230:車輪速度センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の回転を抑制する液圧ブレーキを備えたブレーキシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、(a)車輪の回転を抑制する液圧ブレーキと、(b)マスタシリンダと、(c)アキュムレータと、(d)そのアキュムレータの液圧を利用して、電気アクチュエータの駆動により作動させられる増圧機構と、(e)その増圧機構の液圧とマスタシリンダの液圧とのうち高い方を選択して液圧ブレーキのブレーキシリンダに供給する選択バルブとを備えたブレーキシステムが記載されている。
電気アクチュエータが正常である場合には、増圧装置は電気アクチュエータにより作動させられ、異常である場合には、マスタシリンダの液圧より作動させられる。また、アキュムレータから高圧の作動液が供給され得る場合には、マスタシリンダの液圧より高い液圧を発生させることができるが、アキュムレータの液圧が低くなると、増圧機構の出力液圧も低くなる。
ブレーキシリンダには、選択バルブにより、増圧機構の出力液圧とマスタシリンダの液圧との高い方の液圧が供給されるため、アキュムレータの液圧が低く、増圧機構の出力液圧が低い場合には、マスタシリンダの液圧が供給される。
特許文献2には、(a)車両の前後左右の車輪に設けられ、車輪の回転を抑制する液圧ブレーキと、(b)マスタシリンダと、(c)マスタシリンダと前輪の液圧ブレーキのブレーキシリンダとの間に設けられた機械式倍力機構と、(d)高圧源およびその高圧源の液圧を制御する電磁弁とを備えたブレーキシステムが記載されている。このブレーキシステムにおいて、高圧源および電磁弁が正常な場合には、電磁弁によって制御された高圧源の液圧が前輪および後輪のブレーキシリンダに供給される。電磁弁等が異常である場合には、前輪のブレーキシリンダには機械式増圧機構により発生させられた液圧が供給され、後輪のブレーキシリンダにはマスタシリンダの液圧が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−502645号公報
【特許文献2】特開平10−287227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ブレーキシステムの改良を図ることである。
【課題を解決するための手段および効果】
【0005】
請求項1に係るブレーキシステムは、(a)車両の複数の車輪にそれぞれ設けられ、ブレーキシリンダの液圧により作動させられて、その車輪の回転を抑制する液圧ブレーキと、(b)1つ以上の液圧源と、(c)その1つ以上の液圧源が接続されるとともに、前記複数の液圧ブレーキのブレーキシリンダのうちの第1ブレーキシリンダが第1個別通路を介して接続され、前記複数のブレーキシリンダのうち前記第1ブレーキシリンダとは別の第2ブレーキシリンダが前記第1個別通路とは別の第2個別通路を介して接続された共通通路と、(d)それら第1個別通路、第2個別通路および共通通路を含む液圧供給通路の、前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとの間の部分に設けられ、ソレノイドに電流が供給されない場合に開状態にある常開の電磁開閉弁である連通遮断弁と、(e)当該ブレーキシステムに液漏れの可能性が有るか無いかを検出する液漏れ可能性有無検出装置と、(f)その液漏れ可能性有無検出装置によって液漏れの可能性が有ると検出された場合に、前記連通遮断弁を閉状態として、前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとを遮断する連通遮断制御装置とを含むものとされる。
液圧供給通路の第1ブレーキシリンダと第2ブレーキシリンダとの間に連通遮断弁が設けられるが、連通遮断弁は常開の電磁開閉弁である。そのため、ソレノイドに電流が供給されない場合に、共通通路、第1ブレーキシリンダおよび第2ブレーキシリンダが連通状態とされる。例えば、液圧源が、電気エネルギが供給されなくても液圧を発生させ得るものである場合には、電気系の異常時に、第1ブレーキシリンダ、第2ブレーキシリンダに液圧源の液圧を供給することが可能となる。
また、液漏れの可能性が有ると検出された場合に連通遮断弁が閉状態とされる。その結果、第1ブレーキシリンダと第2ブレーキシリンダとを遮断することができる。仮に、第1ブレーキシリンダを含むブレーキ系統と第2ブレーキシリンダを含むブレーキ系統とのいずれか一方に液漏れが生じていても、その影響が他方のブレーキ系統に及ばないようにすることができるのであり、ブレーキシステムの信頼性を向上させることができる。
なお、連通遮断弁は、第1,第2の個別通路に設けても、共通通路に設けてもよい。また、液圧供給通路の第1ブレーキシリンダと第2ブレーキシリンダとの間に少なくとも1つの連通遮断弁が設けられるが、連通遮断弁の他に1つ以上の電磁開閉弁が設けられることもある。
また、連通遮断弁は、ソレノイドへの供給電流量の連続的な制御により、それの前後の差圧(および/または)開度が連続的に制御可能なもの(リニア制御弁と称することができる)であっても、供給電流のON/OFF制御により開状態と閉状態とのいずれかに切り換えられ得るもの(単なる開閉弁と称することができる)であってもよい。以下、本明細書において、「リニア制御弁」、「単なる開閉弁」と記載しない場合には、電磁開閉弁は、リニア制御弁であっても、単なる開閉弁であってもよいものとする。
【特許請求可能な発明】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組を、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0007】
(1)車両の複数の車輪にそれぞれ設けられ、ブレーキシリンダの液圧により作動させられて、その車輪の回転を抑制する液圧ブレーキと、
1つ以上の液圧源と、
その1つ以上の液圧源が接続されるとともに、前記複数の液圧ブレーキのブレーキシリンダのうちの第1ブレーキシリンダが第1個別通路を介して接続され、前記複数のブレーキシリンダのうち前記第1ブレーキシリンダとは別の第2ブレーキシリンダが前記第1個別通路とは別の第2個別通路を介して接続された共通通路と、
それら第1個別通路、第2個別通路および共通通路を含む液圧供給通路の、前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとの間に設けられ、ソレノイドに電流が供給されない場合に開状態にある常開の電磁開閉弁である連通遮断弁と、
当該ブレーキシステムに液漏れの可能性が有るか無いかを検出する液漏れ可能性有無検出装置と、
その液漏れ可能性有無検出装置によって液漏れの可能性が有ると検出された場合に、前記連通遮断弁を閉状態として、前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとを遮断する連通遮断制御装置と
を含むことを特徴とするブレーキシステム。
液漏れ可能性有無検出装置は、液漏れの可能性が有るか否かを検出するものであっても、液漏れの可能性が高いか低いかを検出するものであってもよい。
また、後述するように、連通遮断制御装置は、液漏れの可能性が有ると検出された場合に、直ちに、連通遮断弁を閉状態に切り換える閉切換部を含むものとしても、閉切換部を含まないものとしてもよい。
さらに、液漏れの可能性が有ると検出された場合に閉状態に切り換え、その後、液漏れの可能性が有る間(液漏れの可能性が無いと検出されるまでの間)、閉状態を保持する閉保持部を含むものとしても、閉保持部を含まないものとしてもよい。
(2)前記液漏れ可能性有無検出装置が、(a)前記共通通路の液圧が第1液漏れ判定しきい値より低いこと、(b)前記第1ブレーキシリンダを含むブレーキ系統と、前記第2ブレーキシリンダを含むブレーキ系統との少なくとも一方の液圧が第2液漏れ判定しきい値より低いこと、(c)前記複数の液圧ブレーキのブレーキシリンダで使用される作動液を収容するリザーバに蓄えられた作動液量が予め定められた第3液漏れ判定しきい値以下であること、(d)前記液圧源の液圧が第4液漏れ判定しきい値より低いことのうちの1つ以上が満たされた場合に、当該ブレーキシステムに液漏れの可能性が有ると検出するものである(1)項に記載のブレーキシステム。
液漏れ可能性有無検出装置は、液漏れが生じている可能性を検出するものであるため、液漏れの可能性が有ると検出された場合であっても、実際に液漏れが生じていない場合がある。また、液漏れの量が非常に少ないこともある。さらに、液漏れの箇所を特定できないことが多い。しかし、(a)〜(d)の場合には液漏れが無いと断定することはできないため、液漏れの可能性が有るとされるのである。
液圧源と共通通路とが連通状態にあり、かつ、液圧源が作動状態にある場合、あるいは、液圧源が設定状態で設定時間以上継続して作動しているにもかかわらず、共通通路の液圧が全く増加しない場合、あるいは、充分に増加しない場合、すなわち、共通通路の液圧が第1液漏れ判定しきい値より低い場合には、液漏れの可能性が有るとすることができる。
制動要求がある場合(ブレーキ操作部材が操作されている場合、自動ブレーキを作用作動させる要求がある場合)に、第1ブレーキシリンダを含むブレーキ系統と、第2ブレーキシリンダを含むブレーキ系統との少なくとも一方の液圧が第2液漏れ判定しきい値より低い場合にも、液漏れの可能性が有るとすることができる。第2液漏れ判定しきい値は、制動要求値(ブレーキ操作部材の操作状態や、自動ブレーキを作動させる要求に応じた値)に基づいて決まる可変値としても、予め定められた固定値(比較的小さい値)としてもよい。
リザーバに収容されている作動液量に基づく液漏れの可能性の有無の検出は、液圧ブレーキの作動状態、ブレーキ操作部材の操作状態に関係なく、常時、行うことができる。
例えば、液圧源が動力式液圧源である場合に、動力式液圧源が設定状態で設定時間以上作動状態にあるにもかかわらず液圧が充分に高くならない場合には、液漏れの可能性が有るとすることができる。
(3)前記連通遮断制御装置が、前記液漏れ可能性有無検出装置によって前記液漏れの可能性が有ると検出され、かつ、閉条件が満たされた場合に、前記連通遮断弁を閉状態とする電磁弁閉制御部を含む(1)項または(2)項に記載のブレーキシステム。
液漏れの可能性が有ると検出されても、真に必要な場合に、連通遮断弁が閉状態とされるようにすることができる。それによって、ソレノイドへの消費電力の低減を図りつつ、液漏れの影響が他のブレーキシリンダに及ばないようにすることができる。
『液漏れの可能性が有ると検出され』とは、(i)その時点において、液漏れの可能性の有無が検出され、その検出結果が可能性有である場合、(ii)それより前に液漏れの可能性が有ると検出され、その検出結果が同じである場合の少なくとも一方が該当する。
『閉条件が満たされた場合』についても同様であり、閉条件が満たされた状態が液漏れの可能性が有ると検出された時点より前から継続していても、その時点において満たされてもよく、少なくとも、その時点において、閉条件が満たされていればよい。
(4)前記電磁弁閉制御部が、(i)前記第1ブレーキシリンダと第2ブレーキシリンダとの少なくとも一方の液圧が設定液圧より大きいことと、(b)前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとの少なくとも一方の液圧の変化勾配の絶対値が設定勾配より大きいこととの少なくとも一方が満たされた場合に前記閉条件が満たされたとして、前記連通遮断弁を閉状態とする液圧対応閉制御部を含む(3)項に記載のブレーキシステム。
設定液圧は、液圧ブレーキが作用状態にあるとみなし得る大きさとしたり、これ以上液圧が高いと液漏れの他のブレーキ系統への影響が大きくなるおそれがあると推定し得る大きさとしたりすることができる。設定液圧を小さくすれば、連通遮断弁が閉状態とされる機会が多くなり、設定液圧を大きくすれば、閉状態とされる機会が少なくなる。いずれにしても、ブレーキシリンダの液圧が設定液圧より大きい場合には、閉状態とすることが望ましい。
ブレーキシリンダ液圧が増加したり減少したりする状態においては連通遮断弁を閉状態とすることが望ましい。また、ブレーキシリンダ液圧の増加勾配が大きい場合には、ブレーキシリンダ液圧が設定液圧以上になる可能性が高い。そのため、変化勾配の絶対値が設定勾配より大きい場合に、遮断弁を閉状態としておくことは妥当なことである。
なお、液圧ブレーキが、液漏れの可能性が有る場合でも、車両の走行状態、前方車両との相対位置関係等に基づき、制動要求があるとされた場合に作動させられるようにされている場合には、車両の走行状態、相対位置関係の変化等に基づけば、制動要求の値を推定したり、制動要求の有無を予測したりすることができる。その場合には、ブレーキシリンダの液圧の変化勾配の絶対値が設定勾配より大きくなる可能性の有無を取得することが可能となる。
(5)当該ブレーキシステムが、運転者によって操作可能なブレーキ操作部材を含み、前記電磁弁閉制御部が、前記ブレーキ操作部材が操作されていることと前記ブレーキ操作部材が操作される可能性が高いこととの少なくとも一方が満たされた場合に前記閉条件が満たされたとして、前記連通遮断弁を閉状態とする操作対応閉制御部を含む(3)項または(4)項に記載のブレーキシステム。
ブレーキ操作中、ブレーキ操作される可能性が高い場合、換言すれば、液圧ブレーキが作用状態にある場合、作用作動させられる可能性が高い場合に、連通遮断弁が閉状態とされる。
ブレーキ操作が行われる可能性が高い場合の具体例については後述するが、例えば、車両の停車中には、ブレーキ操作が行われる可能性が高いとすることができる。
また、ブレーキ操作が行われる可能性が高い場合は、ブレーキシリンダの液圧が増加する可能性が高い(増加勾配が設定勾配より大きくなる可能性が高い)とすることができ、この場合に連通遮断弁が閉状態とされれば、ブレーキシリンダの液圧が増加するのに先だって、連通遮断弁を閉状態にしておくことができる。
なお、連通遮断弁は、ブレーキ操作が行われる可能性がある場合に、閉状態とされるようにすることもできる。
(6)前記電磁弁閉制御部が、前記車両のメインスイッチがON状態にある間、前記閉条件が満たされた状態にあるとして、前記連通遮断弁を閉状態に保持するスイッチON中閉制御部を含む(3)項ないし(5)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
メインスイッチとしてのイグニッションスイッチがONである間には、液圧ブレーキが作動させられる可能性が高いため、連通遮断弁を閉状態とすることが望ましい。
(7)前記電磁弁閉制御部が、前記車両の走行速度が停止状態にあるとみなし得る設定速度以下である間、前記閉条件が満たされている状態であるとして、前記連通遮断弁を閉状態に保持する停車中閉制御部を含む(3)項ないし(6)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
車両が停止状態にある場合には、ブレーキ操作部材が操作される可能性が高い。そのため、連通遮断弁が閉状態に保持されることは妥当なことである。
イグニッションスイッチがONであり、かつ、停止状態にある場合に閉状態にされても、イグニッションスイッチがON状態であってもOFF状態であっても、閉状態にされるようにしてもよい。
(8)前記電磁弁閉制御部が、アクセル操作部材が操作されていない間、前記閉条件が満たされている状態であるとして、前記連通遮断弁を閉状態に保持するアクセルOFF中閉制御部を含む(3)項ないし(7)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
アクセル操作部材が操作されていない状態においては、ブレーキ操作部材が操作される可能性が高いため、連通遮断弁が閉状態に保持されることは妥当なことである。
(9)前記連通遮断制御装置が、少なくとも、前記液漏れ可能性有無検出装置によって、前記液漏れの可能性が有ると検出された場合には、前記液漏れの可能性が無いと検出されるまで、前記連通遮断弁を閉状態に保持する電磁弁閉保持部を含む(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
液漏れの可能性が有ると検出された場合には、その後、少なくとも、液漏れ可能性が無いと検出されるまで、連通遮断弁は閉状態に保持されることが望ましい。イグニッションスイッチのON・OFFに関係なく、ブレーキ操作部材の操作の有無に関係なく、常に、閉状態とされるのである。それによって、液漏れの影響が他のブレーキ系統に及ぶことを良好に回避することができる。
液漏れの可能性が無いと検出された場合には、連通遮断弁は、他のブレーキ制御プログラム等によって制御される。そのため、液漏れの可能性がないと検出されても、閉状態にされることもある。しかし、本項に記載のブレーキシステムにおいては、液漏れの原因が解消され、液漏れの可能性がないと検出されるより前に、原則として、開状態にされることはないのである。
(10)前記連通遮断制御装置が、前記連通遮断弁が閉状態にされている場合であっても、閉中開許可条件が満たされた場合に、前記連通遮断弁を閉状態から開状態に切り換え、前記閉中開許可条件が満たされなくなった場合に前記連通遮断弁を閉状態に戻す強制的電磁弁開制御部を含む(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
漏れの可能性が有ると検出されたことに起因して連通遮断弁が閉状態にされている状態であっても、閉中開許可条件が満たされた場合には開状態とされる。それによって、消費電力の低減を図ることができ、ソレノイドの発熱を抑制することができる。
(11)前記強制的電磁弁開制御部が、前記複数の液圧ブレーキすべてが非作用状態にあり、かつ、前記複数の液圧ブレーキのすべてが作用作動させられる可能性が低い場合に前記閉中開許可条件が満たされたとされて、前記連通遮断弁を開状態にする非作用時強制的開部を含む(10)項に記載のブレーキシステム。
(12)前記連通遮断制御装置が、前記液漏れ可能性有無検出装置によって、液漏れの可能性が有ると検出されても、検出中開許可条件が満たされた場合に、前記連通遮断弁を開状態とする電磁弁開制御部を含む(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
例えば、前述の閉条件が満たされない場合には、検出中開許可条件が満たされたとして、連通遮断弁を開状態にすることができる。具体的には、液圧ブレーキが非作用状態にある場合、作用作動させられる可能性が低い場合、ブレーキ操作部材が操作されていない場合、ブレーキ操作部材の操作が行われる可能性が低い場合、車両の走行速度が設定速度以上である場合、アクセルペダルが操作されている場合等に検出中開許可条件が満たされたと考えることができる。
なお、閉中開許可条件と検出中開許可状態とは同じ内容であっても異なる内容であってもよい。
【0008】
(13)前記液圧供給通路の前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとの間に、ソレノイドに電流が供給されない場合に閉状態にある常閉の電磁開閉弁が設けられていない(1)項ないし(12)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
コストダウンの観点から、できる限り、電磁開閉弁の個数は少なくすることが望ましい。
(14)当該ブレーキシステムが、前記1つ以上の液圧源とは別の、運転者によって操作可能なブレーキ操作部材の操作によって液圧を発生させる2つのマニュアル式液圧源を含み、それら2つのマニュアル式液圧源の一方が、前記第1個別通路に前記第1マニュアル通路を介して接続され、前記2つのマニュアル式液圧源の他方が、前記第2個別通路に前記第2マニュアル通路を介して接続され、前記連通遮断弁が、前記液圧供給通路の、前記第1マニュアル通路の接続部と前記第2マニュアル通路の接続部との間に設けられた第1・第2連通遮断弁である(1)項ないし(13)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
第1ブレーキシリンダ、第2ブレーキシリンダは、左右前輪のブレーキシリンダとすることができる。第1・第2連通遮断弁は、左右遮断弁と称することができる。
(15)前記第1・第2連通遮断弁が、前記第1個別通路と前記第2個別通路とのいずれか一方に設けられ、前記共通通路の液圧を制御して、それに対応する前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとのいずれか一方に供給する増圧制御弁としての機能を果たす(14)項に記載のブレーキシステム。
(16)前記共通通路に、前記複数の液圧ブレーキのブレーキシリンダのうちの前記第1ブレーキシリンダ、第2ブレーキシリンダとは異なる第3ブレーキシリンダが、前記第1個別通路、第2個別通路とは別個の第3個別通路を介して接続され、かつ、前記連通遮断弁が、前記共通通路の前記第3個別通路の接続部と前記第1個別通路の接続部との間の部分に設けられた第1・第3連通遮断弁である(1)項ないし(15)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
第1ブレーキシリンダが前輪のブレーキシリンダであり、第3ブレーキシリンダが後輪のブレーキシリンダである場合には、第1・第2連通遮断弁は左右連通弁と称し、第1・第3連通遮断弁は前後遮断弁と称することができる。
当該ブレーキシステムは、第1・第2連通遮断弁と第1・第3連通遮断弁との少なくとも一方を含むものとすることができる。
【0009】
(17)当該ブレーキシステムが、前記1つ以上の液圧源とは別の、運転者によって操作可能なブレーキ操作部材の操作によって液圧を発生させるマニュアル式液圧源を含み、前記液圧源が、機械的に作動可能であって、電気系の異常時に、前記マニュアル液圧源の液圧より高い液圧を発生させ得る高圧発生器を含む(1)項ないし(16)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
(18)前記液圧源が、電力の供給により作動させられる動力液圧源を含み、前記液圧源としての高圧発生器が、前記共通通路と、前記動力式液圧源と、前記マニュアル式液圧源との間に設けられ、前記マニュアル式液圧源の液圧により機械的に作動させられるものである(1)項ないし(17)項のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
(19)前記高圧発生器が、(a)段付きピストンを含み、前記マニュアル式液圧源の液圧を増圧して出力するメカ式増圧器と、(b)前記メカ式増圧器と前記動力式液圧源との間に設けられ、前記動力式液圧源から前記メカ式の増圧器への作動液の流れを許容し、逆向きの流れを阻止する高圧側逆止弁とを含む(18)項に記載のブレーキシステム。
本項に記載のブレーキシステムにおいては、高圧発生器が、動力式液圧源とは別個に設けられ、機械的に作動させられるものである。そのため、電気系の異常時等にも、マニュアル式液圧源の液圧より高圧の液圧を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の共通の実施例である液圧ブレーキシステムが搭載された車両全体を示す図である。
【図2】本発明の実施例1に係る液圧ブレーキシステムのブレーキ液圧回路図である。
【図3】上記ブレーキ液圧回路に含まれる増圧リニア制御弁、減圧リニア制御弁の断面図である。
【図4】上記液圧ブレーキシステムに含まれるブレーキECUの記憶部に記憶されたイニシャルチェックプログラムを表すフローチャートである。
【図5】上記ブレーキECUの記憶部に記憶された供給状態制御プログラムを表すフローチャートである。
【図6】上記液圧ブレーキシステムにおいて、供給状態制御プログラムが実行された場合の状態を示す図である(正常な場合)。
【図7】上記液圧ブレーキシステムにおいて、供給状態制御プログラムが実行された場合の別の状態を示す図である(制御系が異常な場合)。
【図8】上記液圧ブレーキシステムにおいて、供給状態制御プログラムが実行された場合のさらに別の状態を示す図である(液漏れの可能性がある場合)。
【図9】本発明の実施例2に係る液圧ブレーキシステムのブレーキ液圧回路図である。
【図10】上記液圧ブレーキシステムにおいて、供給状態制御プログラムが実行された場合の状態を示す図である(正常な場合)。
【図11】上記液圧ブレーキシステムにおいて、供給状態制御プログラムが実行された場合の別の状態を示す図である(制御系が異常な場合)。
【図12】上記液圧ブレーキシステムにおいて、供給状態制御プログラムが実行された場合のさらに別の状態を示す図である(液漏れの可能性がある場合)。
【図13】上記液圧ブレーキシステムのブレーキECUの記憶部に記憶された左右遮断弁、前後遮断弁制御プログラムを表すフローチャートである。
【図14】本発明の実施例3に係る液圧ブレーキシステムのブレーキECUの記憶部に記憶された別の左右遮断弁、前後遮断弁制御プログラムを表すフローチャートである。
【図15】上記ブレーキECUの記憶部に記憶されたさらに別の左右遮断弁、前後遮断弁制御プログラムを表すフローチャートである。
【図16】上記ブレーキECUの記憶部に記憶された別の左右遮断弁、前後遮断弁制御プログラムを表すフローチャートである。
【図17】上記ブレーキECUの記憶部に記憶されたさらに別の左右遮断弁、前後遮断弁制御プログラムを表すフローチャートである。
【図18】本発明の実施例4に係る液圧ブレーキシステムのブレーキ液圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態であるブレーキシステムについて図面に基づいて詳細に説明する。
最初に、本発明の一実施形態であるブレーキシステムである液圧ブレーキシステムが搭載された車両について説明する。
本車両は、駆動装置として電動モータとエンジンとを含むハイブリッド車両である。ハイブリッド車両において、駆動輪としての左右前輪2,4は、電気的駆動装置6と内燃的駆動装置8とを含む駆動装置10によって駆動される。駆動装置10の駆動力はドライブシャフト12,14を介して左右前輪2,4に伝達される。内燃的駆動装置8は、エンジン16,エンジン16の作動状態を制御するエンジンECU18等を含むものであり、電気的駆動装置6は電動モータ20,蓄電装置22,モータジェネレータ24,電力変換装置26,モータECU28、動力分割機構30等を含む。動力分割機構30には、電動モータ20、モータジェネレータ24、エンジン16が連結され、これらの制御により、出力部材32に電動モータ20の駆動トルクのみが伝達される場合、エンジン16の駆動トルクと電動モータ20の駆動トルクとの両方が伝達される場合、エンジン16の出力がモータジェネレータ24と出力部材32とに出力される場合等に切り換えられる。出力部材32に伝達された駆動力は、減速機、差動装置を介してドライブシャフト12,14に伝達される。
電力変換装置26は、インバータ等を含むものであり、モータECU28によって制御される。インバータの電流制御により、少なくとも、電動モータ20に蓄電装置22から電気エネルギが供給されて回転させられる回転駆動状態と、回生制動により発電器として機能することにより蓄電装置22に電気エネルギを充電する充電状態とに切り換えられる。充電状態においては、左右前輪2,4に回生制動トルクが加えられる。その意味において、電気的駆動装置6は回生ブレーキ装置であると考えることができる。
【0012】
液圧ブレーキシステムは、左右前輪2,4に設けられた液圧ブレーキ40のブレーキシリンダ42,左右後輪46,48(図2,9,18参照)に設けられた液圧ブレーキ50のブレーキシリンダ52と、これらブレーキシリンダ42,52の液圧を制御可能な液圧制御部54等を含む。液圧制御部54は、コンピュータを主体とするブレーキECU56によって制御される。
また、車両には、ハイブリッドECU58が設けられ、これらハイブリッドECU58,ブレーキECU56,エンジンECU18,モータECU28は、CAN(Car area Network)59を介して接続されている。互いに通信可能とされており、適宜必要な情報が通信される。
【0013】
なお、本液圧ブレーキシステムは、ハイブリッド車輪に限らず、プラグインハイブリッド車両、電気自動車、燃料電池車両に搭載することもできる。電気自動車においては、内燃的駆動装置8が不要となる。燃料電磁車両においては、駆動用モータが燃料電池スタック等によって駆動される。
また、本液圧ブレーキシステムは、内燃駆動車両に搭載することもできる。電気的駆動装置6が設けられていない車両においては、駆動輪2,4に回生制動トルクが加えられることがないため、回生協調制御が行われることはない。
【0014】
以下、液圧ブレーキシステムについて説明するが、ブレーキシリンダ、液圧ブレーキ、後述する種々の電磁開閉弁等を、前後左右の車輪の位置に対応して区別する必要がある場合には、車輪位置を表す符号(FL,FR,RL,RR)を付して記載し、代表して、あるいは、区別する必要がない場合には、符号を付さないで記載する。
【実施例1】
【0015】
実施例1に係る液圧ブレーキシステムは、図2に示すブレーキ回路を含む。
60はブレーキ操作部材としてのブレーキペダルであり、62はブレーキペダル60の操作により液圧を発生させるマニュアル式液圧源としてのマスタシリンダである。64はポンプ装置65とアキュムレータ66とを含む動力式液圧源である。液圧ブレーキ40,50は、ブレーキシリンダ42,52の液圧により作動させられ、車輪の回転を抑制するものであり、本実施例においては、ディスクブレーキである。
なお、液圧ブレーキ40,50は、ドラムブレーキとすることができる。また、前輪2,4の液圧ブレーキ40をディスクブレーキとし、後輪46,48の液圧ブレーキ50をドラムブレーキとすることもできる。
マスタシリンダ62は、2つの加圧ピストン68,69を備えたタンデム式のものであり、加圧ピストン68,69のそれぞれの前方が加圧室70,72とされる。本実施例においては、加圧室70,72がそれぞれマニュアル式液圧源に該当する。また、加圧室72,70には、それぞれ、マニュアル通路としてのマスタ通路74,76を介して、左前輪2の液圧ブレーキ40FLのブレーキシリンダ42FL、右前輪4の液圧ブレーキ40FRのブレーキシリンダ42FRが接続される。
また、加圧室70,72は、加圧ピストン68,69が後退端に達した場合に、それぞれ、リザーバ78に連通させられる。リザーバ78の内部は、作動液を収容する複数の収容室80,82,84に仕切られている。収容室80,82は、それぞれ、加圧室70,72に対応して設けられ、収容室74はポンプ装置65に対応して設けられたものである。
【0016】
動力式液圧源64において、ポンプ装置65は、ポンプ90およびポンプモータ92を含み、ポンプ90によりリザーバ78の収容室84から作動液が汲み上げられて吐出されて、アキュムレータ66に蓄えられる。ポンプモータ92は、アキュムレータ66に蓄えられた作動液の圧力が予め定められた設定範囲内にあるように制御される。また、リリーフ弁94により、ポンプ90の吐出圧が過大になることが防止される。
【0017】
動力式液圧源64とマスタ通路76との間には高圧発生器としての増圧機構100が設けられる。増圧機構100は、ハウジング102と、ハウジング102に液密かつ摺動可能に嵌合された段付きピストン104とを含み、段付きピストン104の大径側に大径側室110が設けられ、小径側に小径側室112が設けられる。
小径側室112には、動力式液圧源64に接続された高圧室114が連通させられ、小径側室112と高圧室114との間に、高圧供給弁116が設けられる。高圧供給弁116は、弁子120および弁座122と、スプリング124とを含み、スプリング124の付勢力が、弁子120を弁座122に押し付ける向きに作用する。高圧供給弁116は常閉弁である。
小径側室112には、弁子120に対向して開弁部材125が設けられ、開弁部材125と段付きピストン104との間にスプリング126が設けられる。スプリング126の付勢力は、開弁部材125を段付きピストン104から離間させる向きに作用する。
段付きピストン104の段部とハウジング102との間には、スプリング128(リターンスプリング)が設けられ、段付きピストン104を後退方向に付勢する。なお、段付きピストン104とハウジング102との間には図示しないストッパが設けられ、段付きピストン104の前進端位置を規制する。
また、段付きピストン104には、大径側室110と小径側室112とを連通させる連通路130が形成される。連通路130は、少なくとも段付きピストン104の後退端位置において、開弁部材125から離間した状態で、大径側室110と小径側室112とを連通させるが、段付きピストン104が前進して、開弁部材125に当接すると遮断される。
本実施例においては、ハウジング102,段付きピストン104,高圧供給弁116,開弁部材125等によりメカ式増圧器134が構成される。
【0018】
高圧室114と動力式液圧源64とが高圧供給通路131によって接続され、高圧供給通路131に、動力式液圧源64から高圧室114への作動液の流れは許容し、逆向きの流れを阻止する高圧側逆止弁132が設けられる。高圧側逆止弁132は、動力式液圧源64の液圧が高圧室114の液圧より高い場合には、動力式液圧源64から高圧室114への作動液の流れを許容するが、動力式液圧源64の液圧が高圧室114の液圧以下の場合には閉状態にあり、双方向の流れを阻止する。そのため、仮に、動力液圧源64に液漏れが生じても、高圧室114から動力式液圧源64への作動液の逆流が防止され、小径側室112の液圧の低下が防止される。
さらに、マスタ通路74とメカ式増圧器134の出力側(小径側室112でもよい)との間には、メカ式増圧器134をバイパスして接続するバイパス通路136が設けられ、バイパス通路136にはマスタ通路74からメカ式増圧器134の出力側への作動液の流れを許容し、逆向きの流れを阻止するマニュアル側逆止弁138が設けられる。
【0019】
増圧機構100において、大径側室110にマスタシリンダ14の加圧室72の液圧が供給されると、作動液は、連通路130を経て小径側室112に供給される。
段付きピストン104に作用する前進方向の力(大径側室110の液圧による)が、リターンスプリング128の付勢力より大きくなると前進させられる。段付きピストン104が開弁部材125に当接し、液通路130が遮断されると、小径側室112の液圧が増加し、出力される(後述するように共通通路に供給される)。
また、開弁部材125の前進により高圧供給弁116が開状態に切り換えられると、高圧室114から高圧の作動液が小径側室112に供給され、小径側室112の液圧が高くなる。一方、アキュムレータ66に蓄えられた作動液の圧力が高圧室114の圧力より高い場合には、アキュムレータ66の液圧が高圧側逆止弁132を経て高圧室114に供給され、小径側室112に供給される。
段付きピストン104において、大径側室110の液圧が、大径側に作用する力(マスタシリンダ62の液圧×受圧面積)と小径側に作用する力(出力液圧×受圧面積)とが釣り合う大きさに調整されて、出力される。この意味において、増圧機構100を倍力機構と称することができる。
また、マニュアル側逆止弁138によりメカ式増圧器134の出力液圧がマスタ通路74に向かって流れることが防止される。
一方、アキュムレータ66の液圧が高圧室114の液圧以下である場合には、高圧側逆止弁132により、アキュムレータ66と高圧室114との間の双方向の作動液の流れが阻止されるため、段付きピストン104がそれ以上前進できなくなる。また、段付きピストン104はストッパに当接することにより前進できなくなることもある。この状態から、加圧室72の液圧が、小径側室112の液圧より高くなると、増圧器バイパス通路136およびマニュアル側逆止弁138を経て液圧がメカ式増圧器134の出力側に供給される。
【0020】
一方、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FR、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL、RRは、それぞれ、個別通路150FL、FR、RL、RRを介して共通通路152に接続される。
個別通路150FL、FR、RL、RRには、それぞれ、保持弁(SHij:i=F,R、j=L,R)153FL、FR、RL、RRが設けられるとともに、ブレーキシリンダ42FL、42FR、52RL、52RRとリザーバ78との間には、それぞれ、減圧弁(SRij:i=F,R、j=L,R)156FL,FR,RL,RRが設けられる。
本実施例においては、左前輪2,右後輪48に対応して設けられた保持弁153FL、RRが、ソレノイドに電流が供給されない場合に開状態にある常開の電磁開閉弁であり、右前輪4,左後輪46に対応して設けられた保持弁153FR,RLがソレノイドに電流が供給されない場合に閉状態にある常閉の電磁開閉弁である。
その結果、前輪側の左右輪2,4に対応する保持弁153FL、FR、後輪側の左右輪46,48に対応する保持弁153RL、RRにおいて、一方が常開の電磁開閉弁とされ他方が常閉の電磁開閉弁とされる。
また、対角位置にある一方の2つの車輪、すなわち、左前輪2および右後輪48に対応する保持弁153FL,RRが常開の電磁開閉弁とされ、対角位置にある他方の2つの車輪、すなわち、右前輪4および左後輪46に対応する保持弁153FR、RLが常閉の電磁開閉弁とされることになる。
また、減圧弁156FL,FR,RRは常閉の電磁開閉弁であり、左後輪46に対応して設けられた減圧弁156RLは常開の電磁開閉弁である。
【0021】
共通通路152には、ブレーキシリンダ42,52に加えて、動力式液圧源64、増圧機構100も接続される。
動力式液圧源64は、制御圧通路170を介して共通通路152に接続される。制御圧通路170に増圧リニア制御弁(SLA)172が設けられ、制御圧通路170とリザーバ78との間に減圧リニア制御弁(SLR)176が設けられる。これら増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176の制御により、動力式液圧源64の出力液圧が制御されて、共通通路152に供給される。増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176により出力液圧制御弁装置178が構成される。また、増圧リニア制御弁172、減圧リニア制御弁176は、出力液圧制御弁と称することができる。増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176は、いずれもソレノイドに電流が供給されない場合に閉状態にある常閉の電磁開閉弁であり、ソレノイドへの供給電流の大きさの連続的な制御により、出力液圧の大きさを連続的に制御可能なものである。
図3に示すように、増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176は、いずれも、弁子180と弁座182とを含むシーティング弁と、スプリング184と、ソレノイド186とを含み、スプリング184の付勢力F2は、弁子180を弁座182に接近させる向きに作用し、ソレノイド186に電流が供給されることにより駆動力F1が弁子180を弁座182から離間させる向きに作用する。また、増圧リニア制御弁172において、動力式液圧源64と共通通路152との差圧に応じた差圧作用力F3が弁子180を弁座182から離間させる向きに作用し、減圧リニア制御弁176においては、共通通路152(制御圧通路170)とリザーバ78との差圧に応じた差圧作用力F3が作用する(F1+F3:F2)。いずれにしても、ソレノイド186への供給電流の制御により、差圧作用力F3が制御され、制御圧通路170の液圧が制御される。また、増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176の制御により、共通通路152の液圧が制御されると考えることもできる。
【0022】
共通通路152には、増圧機構100がサーボ圧通路190を介して接続される。サーボ圧通路190には、高圧発生器遮断弁としての増圧機構遮断弁(SREG)192が設けられる。増圧機構遮断弁192は常開の電磁開閉弁である。
【0023】
一方、マスタ通路74,76が、左右前輪2,4の個別通路150FL,FRの保持弁153FL,FRの下流側に接続され、マスタ通路74、76の途中にそれぞれマニュアル遮断弁としてのマスタ遮断弁(SMCFL,FR)194FL,FRが設けられる。マスタ遮断弁194FLは常閉の電磁開閉弁であり、マスタ遮断弁194FRは常開の電磁開閉弁である。
さらに、マスタ通路74には、ストロークシミュレータ200がシミュレータ制御弁202を介して接続される。シミュレータ制御弁202は常閉の電磁開閉弁である。
【0024】
以上のように、本実施例においては、動力式液圧源64,出力液圧制御弁装置178、マスタ遮断弁194,保持弁153,減圧弁156、増圧機構遮断弁192等により液圧制御部54が構成される。
液圧制御部54はブレーキECU56の指令に基づいて制御される。ブレーキECU56は、図1に示すように、実行部、入出力部、記憶部等を含むコンピュータを主体とするものであり、入出力部には、ブレーキスイッチ218,ストロークセンサ220,マスタシリンダ圧センサ222,アキュムレータ圧センサ224,ブレーキシリンダ圧センサ226,レベルウォーニング228,車輪速度センサ230,ドア開閉スイッチ232,イグニッションスイッチ234、アクセルスイッチ236等が接続されるとともに液圧制御部54等が接続される。
ブレーキスイッチ218は、ブレーキペダル60が操作されるとOFFからONになるスイッチである。
ストロークセンサ220は、ブレーキペダル60の操作ストローク(STK)を検出するものであり、本実施例においては、2つのセンサが設けられ、同様に、ブレーキペダル60の操作ストロークが検出される。
マスタシリンダ圧センサ222は、マスタシリンダ62の加圧室の液圧(PMCFL、FR)を検出するものであり、マスタ通路74,76にそれぞれ設けられる。マスタ通路74,76の液圧は、原則として、同じ大きさである。
このように、本実施例においては、ストロークセンサ220,マスタシリンダ圧センサ222について2系統とされており、2つのセンサのうちの一方が故障しても他方によりブレーキ操作状態を検出することが可能となる。
【0025】
アキュムレータ圧センサ224は、アキュムレータ66に蓄えられている作動液の圧力(PACC)を検出するものである。
ブレーキシリンダ圧センサ226は、ブレーキシリンダ42,52の液圧(PWC)を検出するものであり、共通通路152に設けられる。保持弁153の開状態において、ブレーキシリンダ42,52と共通通路152とは連通させられるため、共通通路152の液圧をブレーキシリンダ42,52の液圧とすることができる。
レベルウォーニング228は、リザーバ78に収容された作動液が予め定められた設定量以下になるとONとなるスイッチである。本実施例においては、3つの収容室80、82,84のいずれか1つに収容された作動液量が設定量以下になると、ONとなる。
車輪速度センサ230は、左右前輪2,4、左右後輪46,48に対応してそれぞれ設けられ、車輪の回転速度を検出する。また、4輪の回転速度に基づいて車両の走行速度が取得される。
ドア開閉スイッチ232は、車両に設けられたドアの開閉を検出するものである。運転席側のドアの開閉を検出するものであっても、その他のドアの開閉を検出するものであってもよい。例えば、ドアカーテシランプスイッチをドア開閉スイッチとすることができる。
イグニッションスイッチ(IGSW)234は、車両のメインスイッチであり、アクセルスイッチ236は、図示しないアクセル操作部材が操作状態にある場合にONとなるスイッチである。
また、CAN59には、車間制御ECU240,衝突回避ECU242等が接続され、ブレーキECU56は、これらECUからの制動要求に応じて液圧制御部54等を制御する。
さらに、記憶部には、種々のプログラム、テーブル等が記憶されている。
【0026】
<イニシャルチェック>
本実施例において、予め定められた検査開始条件が満たされた場合にイニシャルチェックが行われる。例えば、ドア開閉スイッチ232がONにされたこと、イグニッションスイッチ234がONにされてから、最初にブレーキ操作が行われたこと等が検査開始条件とされる。
【0027】
図4のフローチャートで表されるイニシャルチェックプログラムは予め定められた設定時間毎に実行される。
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする。)において、予め定められた検査開始条件が満たされたか否かが判定される。検査開始条件が満たされた場合には、S2において、制御系のチェックが行われ、S3において、液漏れの可能性のチェックが行われる。
制御系の異常検出においては、例えば、各バルブ(増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176,保持弁153,減圧弁156,マスタ遮断弁194,増圧機構遮断弁192等)において断線が生じていないか否か、各センサ(ブレーキスイッチ218,ストロークセンサ220、マスタシリンダ圧センサ222、アキュムレータ圧センサ224,ブレーキシリンダ圧センサ226,車輪速度センサ230等)において断線が生じていないか否かが判定される。
【0028】
液漏れの可能性有無のチェックは、イグニッションスイッチ234がONになった場合、ブレーキ操作が行われた場合等に行われる。例えば、(a)レベルウォーニングスイッチ228がONである場合、(b)ブレーキ操作が行われた場合において、ブレーキペダル60のストロークとマスタシリンダ62の液圧との間に予め定められた関係が成立する場合には液漏れがないとされるが、マスタシリンダ62の液圧がストロークに対して小さい場合には液漏れの可能性が有るとされる。また、(c)ポンプ92が予め定められた設定時間以上継続して作動してもアキュムレータ圧センサ226の検出値が液漏れ判定しきい値以上にならない場合、(d)回生協調制御が行われていない場合において、マスタシリンダ圧センサ222の検出値に対してブレーキシリンダ圧センサ226の検出値が小さい場合、(e)前回のブレーキ作動時に、液漏れの可能性が有ると検出された場合(左右前輪2,4のブレーキシリンダ42にマスタシリンダ62の液圧が供給され、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52にポンプ圧が供給された場合)等には、液漏れの可能性が有るとされる。
このように、本実施例においては、(a)〜(e)の条件に基づいて液漏れの可能性の有無が検出される。そのため、液漏れの可能性が有ると検出された場合であっても、液漏れが実際に生じていない場合がある{液漏れ以外の原因によって、上述の(b)〜(e)の条件が満たされる場合があり得る}。また、実際に液漏れがあっても、液漏れ量が僅かである場合もある。しかし、これらの場合であっても、液漏れの可能性が無いと断定することはできないため、液漏れの可能性が有るとされるのである。
【0029】
<液圧供給状態の制御>
そして、イニシャルチェックの結果に基づいて、ブレーキシリンダ42,52への液圧の供給状態が制御されるのであり、図5のフローチャートで表される供給状態制御プログラムは予め定められた設定時間毎に実行される。
S11において、制動要求があるか否かが判定される。ブレーキスイッチ118がONである場合、あるいは、自動ブレーキを作動させる要求がある場合等には制動要求があるとされて、判定がYESとなる。自動ブレーキは、トラクション制御、ビークルスタビリティ制御、車間距離制御、衝突回避制御において作動させられる場合があり、これらの制御開始条件が満たされた場合に、制動要求があるとされることがある。
制動要求がある場合には、S12、13において、液漏れの可能性があるか否か、制御系が異常であるか否かの判定結果が読み込まれる。
いずれの判定もNOであり、当該ブレーキシステムが正常である場合(本実施例においては、制御系が正常で、かつ、液漏れの可能性が無いとされた場合)には、S14において、回生協調制御が行われる。
制御系が異常である場合には、S13の判定がYESとなり、S15において、すべてのバルブのソレノイドに電流が供給されなくなることにより、原位置に戻される。また、ポンプモータ98は停止状態に保たれる。
液漏れの可能性が有ると検出された場合には、S12の判定がNOとなり、S16において、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42にマスタシリンダ62の液圧が供給され、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52に出力液圧制御弁装置178によって制御された液圧が供給される状態とされる。制御系の異常と液漏れの可能性との両方が生じることは稀であるため、液漏れの可能性が有るとされても制御系は正常であり、各バルブの制御、ポンプモータ92の駆動は可能であると考えられる。
なお、電気系が異常である場合には、当該ブレーキシステムに電流が供給されなくなるため、バルブは原位置に戻され、ポンプモータ92は停止状態に保持される。制御系が異常である場合と同様の状態とされる。
また、本実施例においては、制御系が異常であるとされた場合、液漏れの可能性が有るとされた場合には自動ブレーキは作動させられないようにされている。
【0030】
1)システムが正常な場合
前後左右の4輪2,4,46,48のブレーキシリンダ42,52には、動力式液圧源64の液圧が制御されて供給される(ポンプ加圧)のであり、原則として回生協調制御が行われる。
回生協調制御は、駆動輪2,4に加わる回生制動トルクと、駆動輪2,4と従動輪46,48との両方に加わる摩擦制動トルクとの和である総制動トルクが総要求制動トルクとなるように行われる制御である。
総要求制動トルクは、ストロークセンサ220,マスタシリンダ圧センサ222の検出値等に基づいて取得される場合(運転者が要求する制動トルク)、車両の走行状態に基づいて取得される場合(トラクション制御、ビークルスタビリティ制御において必要な制動トルク)、車間制御ECU242,衝突回避ECU244等から供給された情報に基づいて取得される場合等がある。そして、ハイブリッドECU58から供給された情報(電動モータ20の回転数等に基づいて決まる回生制動トルクの上限値である発電側上限値、蓄電装置22の充電容量等に基づいて決まる上限値である蓄電側上限値)と、上述の総要求制動トルク(要求値)とのうちの最小値が要求回生制動トルクとして決定され、この要求回生制動トルクを表す情報がハイブリッドECU58に供給される。
ハイブリッドECU58は要求回生制動トルクを表す情報をモータECU28に出力する。モータECU28は、電動モータ20によって左右前輪2,4に加えられる制動トルクが要求回生制動トルクとなるように、電力変換装置26に制御指令を出力する。電動モータ20は、電力変換装置26によって制御される。
電動モータ20の実際の回転数等の作動状態を表す情報がモータECU28からハイブリッドECU58に供給される。ハイブリッドECU58において、電動モータ20の実際の作動状態に基づいて実際に得られた実回生制動トルクが求められ、その実回生制動トルク値を表す情報をブレーキECU56に出力する。
ブレーキECU56は、総要求制動トルクから実回生制動トルクを引いた値等に基づいて要求液圧制動トルクを決定し、ブレーキシリンダ液圧が要求液圧制動トルクに対応する目標液圧に近づくように、増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176等を制御する。
【0031】
回生協調制御においては、図6に示すように、原則として、前後左右の各輪2,4,46,48の保持弁153FL,FR,RL,RRがすべて開状態とされ、減圧弁156FL,FR,RL,RRがすべて閉状態とされる。また、マスタ遮断弁194FL,FRは閉状態とされ、シミュレータ制御弁202が開状態とされ、増圧機構遮断弁192は閉状態とされる。共通通路152が増圧機構100から遮断され、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL、FRがマスタシリンダ62から遮断された状態で、増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176が制御され、その制御圧が共通通路152に供給され、4輪のブレーキシリンダ42,52に供給される。
なお、この状態で、車輪2,4,46,48のスリップが過大となり、アンチロック制御開始条件が満たされると、保持弁153、減圧弁156が別個独立にそれぞれ開閉させられ、各ブレーキシリンダ42,52の液圧が制御される。前後左右の各輪2,4,46,48のスリップ状態が適正な状態とされる。
また、液圧ブレーキシステムが電気的駆動装置8を備えていない車両に搭載された場合等回生協調制御が行われない車両においては、総要求制動トルクと液圧制動トルクとが等しくなるように、出力液圧制御弁装置178が制御される。
【0032】
2)制御系が異常である場合(電気系が異常である場合)
図7に示すように、各バルブは原位置に戻される。
増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176は、ソレノイド184に電流が供給されないことにより閉状態とされて、動力式液圧源64が共通通路152から遮断される。
また、増圧機構遮断弁192は開状態とされるため、増圧機構100が共通通路152に連通させられる。
さらに、保持弁153FR、RLは閉状態にあり、保持弁153FL、RRは開状態にあるため、共通通路152に左前輪2,右後輪48のブレーキシリンダ42FL、52RRが連通させられ、右前輪4,左後輪46のブレーキシリンダ42FR、52RLは遮断される。
【0033】
ブレーキペダル60の操作によって、マスタシリンダ62の加圧室70,72に液圧が発生させられる。
加圧室72の液圧が増圧機構100に供給されて、増圧機構100が作動させられる。段付きピストン104の前進により小径側室112が大径側室110から遮断され、液圧が増加させられる。開弁部材125が前進させられ、高圧供給弁116が開状態とされる。また、アキュムレータ66から高圧側逆止弁132を経て高圧室114に高圧の作動液が供給され、小径側室112に供給される。小径側室112の液圧(サーボ圧)は、マスタシリンダ62の液圧より高くされ(ブレーキ操作力が倍力され)、開状態にある増圧機構遮断弁192を経て共通通路152に供給され、保持弁153FL,RRを経て左前輪、右後輪のブレーキシリンダ42FL,52RRに供給される。
この場合において、左前輪2に対応するマスタ遮断弁194FLは閉状態にあるため、ブレーキシリンダ42FLに供給されたサーボ圧のマスタシリンダ62への流出が防止される。それによって、液圧ブレーキ40FLを良好に作動させることができる。
【0034】
ポンプ装置65は停止状態にあるため、そのうちに、アキュムレータ66の液圧が低くなる。アキュムレータ66の液圧が高圧室114の液圧以下になると、アキュムレータ66と高圧室114との間の作動液の流れが阻止されるため、段付きピストン104の前進が阻止される。また、段付きピストン104は、ストッパに当接することによって前進が阻止されることもある。いずれにしても、小径側室112の液圧はそれ以上高くなることがないのであり、メカ式増圧器134は倍力機能を発揮できなくなる。
一方、ブレーキペダル60の操作力が増加させられ、マスタシリンダ62の加圧室72の液圧が小径側室112の液圧より高くなると、メカ増圧器バイパス通路136,マニュアル側逆止弁138を経て小径側室112(メカ式増圧器134の出力側)に供給され、増圧機構遮断弁192,保持弁153FL,RRを介して左前輪2、右後輪48のブレーキシリンダ42FL,52RRに供給される。
この場合には、マスタシリンダ62の加圧室72の液圧は、倍力されることなく、左前輪2、右後輪48のブレーキシリンダ42FL,52RRに供給される。
【0035】
また、保持弁153FR、RLは閉状態にあるため、右前輪4,左後輪46のブレーキシリンダ42FR、52RLには、加圧室72の液圧が供給されないようにされている。
マスタシリンダ62の1つの加圧室72から供給可能な作動液の量は決まっている。そのため、供給先のブレーキシリンダの個数が多くなると、ブレーキシリンダの液圧を充分に高くすることができないという問題が生じる。一方、前輪のブレーキシリンダ42の方が後輪のブレーキシリンダ52よりピストンの受圧面積が大きいため、液圧を同じにした場合に、ブレーキシリンダにおいて消費される作動液の量が多くなる。
これらの事情から、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRに加圧室72から液圧が供給されるようにすると制動力不足が生じるおそれがある。
それに対して、幅方向の同じ側の2つの車輪、例えば、左前輪2、左後輪46のブレーキシリンダ42FL、52RLに加圧室72の液圧が供給されるようにすることも可能であるが、その場合には、ヨーモーメントが生じるおそれがある。
そこで、互いに対角位置にある2つの車輪(左前輪2,右後輪48)のブレーキシリンダ42FL、52RRに作動液が供給されるようにすれば、ヨーモーメントを生じ難くしつつ、2つの液圧ブレーキ40FL、50RRを良好に作動させることができる。
【0036】
また、右前輪4のブレーキシリンダ42FRには開状態にあるマスタ遮断弁194FRを経てマスタシリンダ62の加圧室70から液圧が供給される。
左後輪46のブレーキシリンダ52RLには、液圧が供給されることがない。
このように、本実施例においては、制御系の異常、電気系の異常時に、3輪のブレーキシリンダ42FL,FR,52RRに、増圧機構100,マスタシリンダ62の液圧が供給される。その結果、2輪のブレーキシリンダに液圧が供給される場合に比較して、車両全体として制動力を大きくすることができる。
また、増圧機構100が作動している間には、左前輪2にサーボ圧が供給され、右前輪4にマスタ圧、右後輪48にサーボ圧が供給されるため、車両の左側と右側との間の制動力差が小さくなり、より一層、ヨーモーメントを生じ難くすることができる。
【0037】
3)液漏れの可能性が有ると検出された場合
図8に示すように、左右前輪2,4の保持弁153FL,FRは閉状態とされ、左右後輪46,48の保持弁153RL、RRは開状態とされる。また、マスタ遮断弁194FL,FRは開状態とされ、増圧機構遮断弁192は閉状態とされ、シミュレータ制御弁202は閉状態とされる。さらに、すべての減圧弁156は閉状態とされる。前述のように、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRにはマスタシリンダ62の液圧が供給され、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL,RRには、ポンプ装置65の液圧が制御されて供給されるのである。
このように、左右前輪2,4の保持弁153FL,FRが遮断状態とされるため、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRが互いに遮断される。また、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRと左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL,RRとが遮断される。このように、前輪、後輪のブレーキシリンダ同士が互いに遮断されるとともに、前輪側において、左前輪2、右前輪4のブレーキシリンダ同士が遮断される。すなわち、(左前輪のブレーキシリンダ42FLを含むブレーキ系統250FL)、(右前輪のブレーキシリンダ42FRを含むブレーキ系統250FR)、(左右後輪のブレーキシリンダ52FL,RRを含むブレーキ系統250R)の3つのブレーキ系統が互いに遮断される。その結果、たとえ、これら3つのブレーキ系統のうちの1つに液漏れが生じた場合であっても、他のブレーキ系統に影響が及ばないようにされる。
また、増圧機構遮断弁192が閉状態とされるため、動力式液圧源64から共通通路152に供給された作動液が増圧機構100に流れることを防止することができる。すなわち、本実施例においては、液漏れの可能性の有無が検出されるが、液漏れの位置が特定されない。仮に、ブレーキ系統250FLに液漏れが生じている場合には、大径側室110に高圧の液圧を供給することができず、増圧機構100は非作動状態に保持される。段付きピストン104が後退端位置にあり、連通路130により小径側室112と大径側室110とが連通させられている。この場合に、増圧機構遮断弁192が開状態にあると、連通路130を介して、共通通路152と加圧室72とが連通させられ、共通通路152の液圧が逆流するおそれがある。それに対して、増圧機構遮断弁192が閉状態とされれば、共通通路152の作動液がマスタシリンダ62に流出させられることを良好に防止することができ、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL,RRに制御圧を供給することが可能となる。
なお、本実施例において、ブレーキ系統250FRは、ブレーキシリンダ42FR、マスタ通路76,加圧室70,収容室80等を含むものであり、ブレーキ系統250FLは、ブレーキシリンダ42FL、マスタ通路74,加圧室72,収容室82等を含むものであり、ブレーキ系統250Rは、ブレーキシリンダ52RL,RR,個別通路150RL、RR,動力式液圧源64,収容室84等を含むものである。
【0038】
4)液圧ブレーキが解除される場合
ブレーキ操作が解除されると、すべてのバルブのソレノイドに電流が供給されなくなることにより、図2の原位置に戻される。また、増圧機構100において、段付きピストン104は後退端に戻され、液通路130により大径側室110と小径側室112とが連通させられる。
右前輪のブレーキシリンダ42FRの液圧は開状態にあるマスタ遮断弁194FRを経て、マスタシリンダ62,リザーバ78に戻され、左前輪2のブレーキシリンダ42FLの液圧は開状態にある保持弁153FL,増圧機構遮断弁192,連通路130を経て、マスタシリンダ62、リザーバ78に戻される。右後輪48のブレーキシリンダ52RRの液圧も同様に、保持弁153RR,増圧機構遮断弁192,増圧機構100を経てリザーバ78に戻される。左後輪46のブレーキシリンダ52の作動液は開状態にある減圧弁156RLを介してリザーバ78に戻される。
左後輪46のブレーキシリンダ52RLについては、制御系の異常(電気系の異常)時に、マスタシリンダ62や増圧機構100の作動液が供給されないようにするために、保持弁153RLが常閉の電磁制御弁とされる。そのため、ブレーキ解除時に、ブレーキシリンダ52FLが共通通路152から遮断され、増圧機構100を経て、マスタシリンダ62に作動液を戻すことができない。それに対して、減圧弁156RLが常開の電磁開閉弁とされるため、減圧弁156RLを経てブレーキシリンダ52RLの作動液をリザーバ78に戻すことができる。また、減圧弁156が常開の電磁開閉弁である場合には、液圧ブレーキ40,50の作用状態においてソレノイドに電流を供給し続けなければならず、消費電力が多くなるという問題がある。それに対して、本実施例において、常開の減圧弁156RLは1つであるため、それによる消費電力の増加を抑制することができる。
【0039】
以上のように、本実施例においては、イニシャルチェックの結果に応じて、ブレーキシリンダ42,52への液圧の供給状態が制御される。
制御系の異常(電気系の異常)には、増圧機構100の作動によりマスタシリンダ62の液圧より高い液圧をブレーキシリンダ42FL、52RRに供給することができる。また、右前輪4のブレーキシリンダ42FRには、マスタシリンダ62から液圧が供給されるため、電気系の異常時に、3輪の液圧ブレーキ40FL,FR,50RRを作動させることができる。その結果、2輪の液圧ブレーキが作動させられる場合に比較して、制動力不足を解消することができる。さらに、サーボ圧が対角位置にある車輪のブレーキシリンダに供給されるため、それにより、ヨーモーメントが生じ難くすることができる。
液漏れの可能性がある場合には、ブレーキ系統250FL,FR,Rが互いに遮断される。そのため、3つのブレーキ系統250FL,FR,Rのうちの1つに液漏れが生じていても、その影響が他のブレーキ系統に及ぶことを良好に回避することができる。また、液漏れが生じていないブレーキ系統においては、より確実に液圧ブレーキを作動させることが可能となる。
また、本実施例においては、保持弁153FLが左右遮断弁としての機能を果たし、保持弁153FL,FRが前後遮断弁としての機能を果たす。そのため、専用の前後遮断弁、左右遮断弁が不要となり、その分、コストダウンを図ることができる。
【0040】
以上のように構成された液圧ブレーキシステムにおいて、ブレーキECU56の図5のフローチャートで表される供給状態制御プログラムを記憶する部分、実行する部分等により供給状態制御装置が構成される。供給状態制御装置は電磁弁制御部でもある。なお、S16を記憶する部分、実行する部分等により連通遮断制御装置が構成されると考えることもできる。
また、出力液圧制御弁装置178およびブレーキECU56のS14,16を記憶する部分、実行する部分等により出力液圧制御装置が構成される。
さらに、マスタ通路74,個別通路150FL,保持弁153FL,マスタ遮断弁194FL、ブレーキシリンダ42FLが、それぞれ、第1マニュアル通路、第1個別通路、第1開閉弁、第1マニュアル遮断弁、第1ブレーキシリンダに対応し、マスタ通路76,個別通路150FR,保持弁153FR,マスタ遮断弁194FR、ブレーキシリンダ42FRが、それぞれ、第2マニュアル通路、第2個別通路、第2開閉弁、第2マニュアル遮断弁、第2ブレーキシリンダに対応する。また、保持弁153FL,FR,RL,RRは、増圧制御弁でもある。
また、共通通路152,個別通路150等によって液圧供給通路が構成される。
さらに、ブレーキECU56のS3を記憶する部分、実行する部分等により、液漏れ可能性検出装置が構成される。
【実施例2】
【0041】
実施例2の液圧ブレーキシステムのブレーキ回路を図9に示す。実施例1におけるブレーキ回路の構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。また、ブレーキECU56による制御等については実施例1における場合と同様である。
実施例2おいては、共通通路310に、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL,RRが1つの個別通路312を介して接続される。左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL,RRの液圧は共通に制御されるのである。そして、個別通路312には共通の保持弁314が設けられる。保持弁314は常閉の電磁開閉弁である。また、保持弁314と並列にブレーキシリンダ52RL、RRから共通通路310への作動液の流れを許容し、逆向きの流れを阻止するブレーキシリンダ側逆止弁316が設けられる。
また、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRは、それぞれ、個別通路320FL,FRを介して共通通路310に接続されるが、個別通路320FL,FRに保持弁が設けられていない。一方、個別通路320FL,FRには、マスタ通路74,76が接続され、マスタ通路74,76に、それぞれ、マスタ遮断弁324FL,FRが設けられる。マスタ遮断弁324FLは常閉の電磁開閉弁であり、マスタ遮断弁324FRは常開の電磁開閉弁である。
さらに、共通通路310の個別通路312の接続部とサーボ圧通路190の接続部との間に前後遮断弁330が設けられ、共通通路310および2つの個別通路320FL,320FRの接続部の間の部分に左右遮断弁332が設けられる。
前後遮断弁330、左右遮断弁332は、常開の電磁開閉弁である。
なお、図9に示す液圧ブレーキ回路において、左右遮断弁332が、共通通路310に設けられていたが、個別通路320FL,FRのマスタ通路74,76の接続部より共通通路側の部分に設けてもよい。また、前後遮断弁330が、サーボ圧通路190の接続部より個別通路312側の部分に設けられたが、サーボ圧通路190の接続部より個別通路320側に設けてもよい。
【0042】
以上のように構成された液圧ブレーキシステムの作動について説明する。
1)液圧ブレーキシステムが正常である場合
図10に示すように、増圧機構100が共通通路310から遮断され、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRがマスタシリンダ62から遮断された状態で、共通通路310に、出力液圧制御弁装置178によって制御された液圧が供給される。
また、左右後輪46,48の保持弁314が開状態とされ、前後遮断弁330,左右遮断弁332が開状態とされる。そのため、すべてのブレーキシリンダ42,52に、制御圧が供給される。
【0043】
2)制御系が異常である場合(電気系が異常である場合)
すべてのバルブは、図11に示す原位置に戻される。増圧機構100から出力されたサーボ圧が共通通路310に供給される。この場合に、左右後輪46,48の保持弁314は常閉弁であるため、サーボ圧は、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRに供給される。
また、マスタ遮断弁324FRが開状態にあるため、増圧機構100の出力液圧がマスタシリンダ62の液圧より高い間、加圧室70に供給される。それにより、加圧室70の液圧が高くなり、加圧ピストン69に加えられる力が大きくなり、加圧室72の液圧が高くなる。増圧機構100を作動させる液圧が高くなり、出力液圧が高くなり、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL、FRの液圧をより一層高くすることが可能となる。
アキュムレータ66に蓄えられた作動液の圧力が低くなり、加圧室72の液圧が増圧機構100の出力液圧より大きくなると、マスタシリンダ62の液圧がマニュアル側逆止弁138を経て主として左前輪2のブレーキシリンダ42FLに供給される。また、マスタシリンダ62の加圧室70の液圧は、主として、右前輪4のブレーキシリンダ42FRに供給される。このように、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL、FRには、それぞれ、加圧室72,70の液圧が供給されるのであり、良好に液圧ブレーキ40FL,FRを作動させることができる。
また、左右前輪2,4のブレーキシリンダ液圧はほぼ同じ大きさになるため、ヨーモーメントが生じ難くなる。
【0044】
3)液漏れの可能性が有ると検出された場合
図12に示すように、増圧機構遮断弁192,左右遮断弁332,前後遮断弁330が閉状態にされる。また、保持弁314が開状態とされ、マスタ遮断弁324FL,FRが開状態とされる。
左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL、RRには動力式液圧源64の液圧が制御されて供給され、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL、FRには、それぞれ、マスタシリンダ62の液圧が供給される。この場合に、左右遮断弁332,前後遮断弁330が閉状態にされるため、(ブレーキシリンダ42FLを含むブレーキ系統350FL)、(ブレーキシリンダ42FRを含むブレーキ系統350FR)、(ブレーキシリンダ52RL、RRを含むブレーキ系統350R)の3つの系統が互いに遮断される。そのため、たとえ、3つのブレーキ系統350FL,FR,Rうちの1つに液漏れがあっても、それの影響が他のブレーキ系統に及ぶことが回避される。また、液漏れが生じていないブレーキ系統においては、より確実に液圧ブレーキを作動させることができる。
なお、本実施例においては、左右遮断弁332が共通通路310のサーボ圧通路190の接続部より右前輪4のブレーキシリンダ42FR側に設けられるため、増圧機構遮断弁192を閉状態とする必要は必ずしもない。左右遮断弁332,前後遮断弁330が閉状態とされた場合には、増圧機構100は左前輪2のブレーキシリンダ42FLにのみ連通する状態となり、他のブレーキ系統350FR、350Rから遮断されるからである。
【0045】
4)液圧ブレーキが解除される場合
各バルブは図9が示す原位置に戻される。右前輪4のブレーキシリンダ42FRの作動液はマスタ通路76を介してマスタシリンダ62に戻され、左前輪2のブレーキシリンダ42FLの作動液は増圧機構100を経て戻される。また、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL、RRの作動液はブレーキシリンダ側逆止弁316,開状態にある前後遮断弁330,共通通路310,増圧機構100、あるいは、開状態にある前後遮断弁330,左右遮断弁332,マスタ遮断弁324を経てマスタシリンダ62に戻される。
このように、本実施例においては、後輪46,48に対応して設けられた保持弁314が常閉の電磁開閉弁とされるが、保持弁314と並列にブレーキシリンダ側逆止弁316が設けられるため、電気系統の異常時に、後輪46,48のブレーキシリンダ52に作動液が供給されないようにすることにより、制動力を確保しつつ、ブレーキ解除時にブレーキシリンダ52の作動液を確実に戻すことが可能となる。
本実施例においては、個別通路312が第3個別通路に対応し、保持弁314が第3開閉弁に対応する。
【0046】
なお、保持弁314をブレーキ側逆止弁としての機能を備えたものとすることができる。保持弁314は常閉の電磁開閉弁であり、図3に示す増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176等と構造が同じである。保持弁314の閉状態において、ソレノイドに電流が供給されない場合には、弁子には前後の差圧に応じた差圧作用力F3とスプリングの付勢力F2とが作用する。この場合において、保持弁314のスプリングを、付勢力F2が小さいものとすれば、保持弁314の閉状態において、ブレーキシリンダ52の液圧が共通通路310の液圧より高くなり、差圧作用力F3がスプリングの付勢力F2より大きくなると、保持弁314が開状態に切り換えられる。このように、保持弁314のスプリングを、付勢力が小さいものとすることによって、ブレーキシリンダ側逆止弁316が不要となり、さらに、コストダウンを図ることができる。
【実施例3】
【0047】
実施例2の液圧ブレーキシステムにおいては、液漏れの可能性が有ると検出された場合には、図12に示す状態とされていたが、それに限らない。
以下、実施例2に記載の液圧ブレーキ回路を含むブレーキシステムにおいて、液漏れの可能性が有ると検出された場合の、左右遮断弁332,前後遮断弁330の制御について説明する。
左右遮断弁332,前後遮断弁330は、液漏れの可能性があると検出された場合には、できる限り閉状態に保持されることが望ましい。液漏れの可能性が有ると検出されても、実際に液漏れが有るとは限らないが、仮に、実際に液漏れが有る場合には、その液漏れの影響が他のブレーキ系統に及ばないようにすることが望ましい。しかし、左右遮断弁332,前後遮断弁330は、常開の電磁開閉弁であるため、閉状態に保持するためには、ソレノイドに電流を供給し続ける必要があり、電流が長時間継続して供給されると、消費電力が多くなったり、ソレノイドが過熱する等の問題が生じる。
一方、ブレーキ系統350FL,FR,Rに液圧が加えられない場合等には、たとえ、実際に液漏れしている部分があっても、そこから、作動液が外部に流出することは殆どなく、他のブレーキ系統への影響も小さい。
以上の事情を考慮して、実施例2においては、液漏れの可能性が有るとされた場合には、左右遮断弁332,前後遮断弁330を、原則として、閉状態に保持し、予め定められた開許可条件が満たされた場合(開状態にしても差し支えない場合)に、ソレノイドへの供給電流がOFFとされ、開状態とされる。
換言すれば、液漏れの可能性が有るとされた場合であっても、真に必要な場合(閉条件が満たされた場合)に、ソレノイドへの供給電流がONとされて、閉状態にされるのである。いずれにしても、ソレノイドの過熱を防止し、消費電力の低減を図ることができる。
【0048】
A)左右遮断弁332,前後遮断弁330は、図13のフローチャートで表される左右遮断弁、前後遮断弁制御プログラムにより制御されるようにすることができる。図13のフローチャートで表されるプログラムは予め定められた設定時間毎に実行される。
S61において、液漏れの可能性の有無の検出結果が読み込まれる。液漏れの可能性が有る場合には、S62において、ブレーキスイッチ218がONであるか否かが判定される。ONである場合には、S63において、左右遮断弁332,前後遮断弁330が閉状態とされるが、OFFである場合には、S64において、ソレノイドに電流が供給されず、開状態とされる。また、ブレーキスイッチ218がOFFからONに切り換えられた場合には、左右遮断弁332,前後遮断弁330も閉状態に切り換えられる。
ブレーキスイッチ218がONで、液圧ブレーキ40,50の作用中においては、左右遮断弁332,前後遮断弁330を閉状態として、3つのブレーキ系統350FL,FR,Rを互いに独立にすることが望ましい。この場合には、実施例2における場合と同様に、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL、RRには、出力液圧制御弁装置178によって制御された液圧が供給され、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRにはマスタシリンダ62から液圧が供給されるようにすることができる。
液漏れの可能性が有ると検出された場合に、回生協調制御が行われないようにされている場合には、ブレーキスイッチ218がONである場合には、液圧ブレーキ40,50は作用状態にあると考えられる。
左右遮断弁332,前後遮断弁330においては、ソレノイドのコイルの巻き数が多くされることによって発熱が抑制されたり、供給電流の制御により発熱が抑制されたりする。
それに対して、ブレーキスイッチ218がOFFであり、液圧ブレーキ40,50が非作用状態にある場合には、左右遮断弁332,前後遮断弁330が開状態にあっても、他のブレーキ系統への液漏れの影響は小さい。そのため、ブレーキスイッチ218のOFF状態において左右遮断弁332,前後遮断弁330のソレノイドへの供給電流がOFFとされ、開状態とされる。それによって、消費電力の低減を図り得、過熱を抑制することができる。
また、液漏れの可能性が無い場合にはS61の判定がNOとなり、S63,64が実行されることがない。このことは、左右遮断弁332,前後遮断弁330が、本プログラムによって制御されるのではなく、供給状態制御プログラム等別のプログラムによって制御されるという意味である。したがって、液漏れの可能性がないと検出された場合に開状態に戻されるのが普通であるが、直ちに開状態に切り換えられるとは限らない。例えば、ビークルスタビリティ制御、トラクション制御において、左前輪2のブレーキシリンダ42FLにのみ出力液圧制御弁装置178によって制御された液圧を供給する場合には、左右遮断弁332が閉状態とされる。
【0049】
なお、S62において、ブレーキシリンダ圧センサ224の検出液圧が液圧ブレーキ40,50が作用状態にあるとみなし得る作用判定しきい値以上であるか否かが判定されるようにすることもできる。このようにすれば、例えば、液漏れの可能性が有ると検出された場合に自動ブレーキが作動させられるようにされている場合であっても、左右遮断弁332,前後遮断弁330を閉状態にすることができる。
また、液漏れ可能性の有無は、イニシャルチェック時に限らず、その都度、検出されるようにすることができる。すなわち、S61において、液漏れ可能性の有無の検出が行われるようにすることができるのである。
ブレーキECU56の図13の左右遮断弁、前後遮断弁制御プログラムを記憶する部分、実行する部分等により連通遮断制御装置が構成される。そのうちの、S62,S63を記憶する部分、実行する部分等により電磁弁閉制御部が構成され、S62,64を記憶する部分、実行する部分等により電磁弁開制御部が構成される。電磁弁閉制御部は、操作対応閉制御部でもある。
また、左右遮断弁332が第1連通遮断弁に対応し、前後遮断弁330は第2連通遮断弁に対応する。
なお、電磁弁閉制御部が電磁弁閉保持部に対応し、電磁弁開制御部が強制的電磁弁開制御部に対応すると考えることもできる。
【0050】
B)左右遮断弁332,前後遮断弁330は、図14のフローチャートで表される制御プログラムによって制御されるようにすることもできる。
S71において、液漏れの可能性の有無の検出結果が読み込まれる。液漏れの可能性が有る場合には、S72、73において、少なくとも1つのブレーキシリンダ42,52の液圧が予め定められた設定液圧より大きいか否か、少なくとも1つのブレーキシリンダ42,52の液圧の変化勾配の絶対値が設定勾配より大きいか否かが判定される。少なくとも1つの判定結果がYESである場合には、S74において閉状態とされるが、いずれの判定もNOの場合には、S75において、開状態とされる。
設定液圧は、例えば、仮に、液漏れがあった場合に、液漏れ部分(例えば、シールが劣化している部分)から作動液が外部に設定量以上流出するため、それによる他のブレーキ系統への影響が問題となるとみなし得る液圧(影響判定しきい値と称することができる)とすることができる。設定液圧は、液圧ブレーキ42,52が作用状態にあるとみなし得る液圧(作用判定しきい値)より大きい値とすることができる。換言すれば、液圧ブレーキ42,52が作用状態にあっても、ブレーキシリンダ42,52の液圧が低い場合には漏れ量も少ないため、それによる影響も小さく開状態にあっても差し支えないが、液圧が高い場合には、それによる影響が大きく、閉状態にする必要性が高いと考えられる。
一方、ブレーキシリンダ42,52の液圧の変化勾配の絶対値が設定勾配より大きい場合には、液漏れ量が多くなると考えられる。また、ブレーキシリンダ液圧の増加勾配が大きい場合には、ブレーキシリンダ液圧が高くなる可能性が高いと考えることもできる。したがって、変化勾配の絶対値が大きい場合には、左右遮断弁332,前後遮断弁330を閉状態とすることが望ましい。
また、左右遮断弁332,前後遮断弁330の開状態においては、マスタ遮断弁324FL,FRを閉状態とすることが望ましい。
本実施例においては、ブレーキECU56のS72,73,74を記憶する部分、実行する部分等により液圧対応閉制御部が構成される。
なお、S73において、ブレーキシリンダ液圧の変化勾配の絶対値が設定勾配より大きくなる可能性が高いか否かが判定されるようにすることもできる。例えば、ブレーキペダル60が操作される可能性が高い場合には、増加勾配が設定勾配より大きくなる可能性が高いと考えることができる。
【0051】
C)左右遮断弁332,前後遮断弁330は、図15のフローチャートで表される制御プログラムによって制御されるようにすることもできる。
液漏れの可能性が有る場合には、S82、83において、イグニションスイッチ234がONであって、かつ、車両の走行速度が停車中であるとみなし得る設定速度以下であるか否か、イグニッションスイッチ234がONであって、かつ、アクセルスイッチ236がOFFであるか否かが判定される。少なくとも一方の判定結果がYESである場合には、S84において閉状態とされるが、両方の判定結果がNOの場合には、S85において、開状態とされる。イグニッションスイッチ234がOFFである場合、あるいは、イグニッションスイッチ234がONであり、車両が走行中であって、アクセルペダルが操作されている場合には、ブレーキペダル60が操作される可能性が低いため、開状態としても差し支えないと考えられる。
車両の走行速度が設定速度以下である場合、アクセルペダルが操作されていない場合には、ブレーキペダル60が操作される可能性が高いため、閉状態にしておくことが望ましい。ブレーキペダル60の作用操作時にはブレーキシリンダ42,52の液圧の増加勾配が大きくなるため、液漏れの他のブレーキ系統への影響が大きくなる。そのため、実際にブレーキペダル60の操作が開始されるのに先立って、閉状態としておくことが望ましい。
また、実際にブレーキペダル60が操作されている場合には、アクセルスイッチ324はOFFであるため、S83の判定がNOとなり、S84において、左右遮断弁332,前後遮断弁330は閉状態にされる。
本実施例においては、ブレーキECU56のS82,84を記憶する部分、実行する部分等により停車中閉制御部が構成される。また、S82〜84を記憶する部分、実行する部分等により操作対応閉制御部が構成されると考えることもできる。
なお、ブレーキペダル60の操作が解除された場合にも、左右遮断弁332,前後遮断弁330は閉状態にあるため、操作後、減圧リニア制御弁176を設定時間の間、開状態として、後輪46,48のブレーキシリンダ52RL,RRの液圧が、減圧リニア制御弁176を経てリザーバ78に戻されるようにすることが望ましい。
【0052】
D)前後遮断弁330,左右遮断弁332は、図16のフローチャートで表されるプログラムによって制御されるようにすることもできる。本実施例においては、液漏れが検出された場合には原則として常に閉状態に保持されるのであるが、ブレーキスイッチ218がONからOFFにされてから設定時間内は開状態とされる。ブレーキペダルが解除されてから設定時間内に再びブレーキ操作が行われる可能性は低いからである。設定時間は、ブレーキ操作解除後に、再び、ブレーキ操作が行われる可能性が低いと考えられる時間とされる。
S91において、液漏れの可能性の有無が検出され、液漏れの可能性が有るとされた場合には、S92において、ブレーキスイッチ218がONからOFFに切り換えられてから設定時間(例えば、2秒程度)が経過したか否かが判定される。設定時間が経過する以前においては、S93において、開状態とされるが、設定時間が経過した場合には、S94において閉状態にされる。ブレーキスイッチ218のOFF状態にあっても閉状態にされるのであり、イグニッションスイッチ234がONであってもOFFであっても閉状態に保持される。
本実施例においては、ブレーキECU56のS91,92,94を記憶する部分、実行する部分等により電磁弁閉保持部が構成され、S92,93を記憶する部分、実行する部分等により強制的電磁弁開制御部が構成される。また、S92,93を記憶する部分、実行する部分等により操作対応閉制御部が構成されると考えることもできる。
【0053】
E)図17のフローチャートで表されるプログラムに従って制御することもできる。本実施例においては、液漏れが検出された場合には、イグニッションスイッチ234がON状態にある間、閉状態に保持されるのであるが、イグニッションスイッチ234がOFFの間は開状態に保持される。
S95において、液漏れの可能性の有無が検出され、液漏れの可能性が有るとされた場合には、S96において、イグニッションスイッチ234がON状態にあるか否かが判定される。ON状態にある場合には、S97において閉状態にされるが、OFF状態にある場合には、S97において、開状態とされる。
本実施例においては、S96,97を記憶する部分、実行する部分等によりスイッチON中閉制御部が構成される。
【0054】
なお、左右遮断弁332,前後遮断弁330は、イグニッションスイッチ234がONであってもOFFであっても、常に、閉状態に保持されるようにすることができる。
また、左右遮断弁332,前後遮断弁330の閉状態が予め定められた発熱抑制時間以上継続した場合であって、かつ、ブレーキスイッチ218がOFFである場合に、予め定められた冷却時間だけ開状態とすることもできる。このようにすれば、ソレノイドの加熱を良好に抑制することができ、消費電力を低減させることができる。
さらに、左右遮断弁332,前後遮断弁330の制御は、上述の5つのプログラムのうちの2つ以上の一部あるいはすべてを組み合わせた態様で行われるようにすることもできる。
また、左右遮断弁332の制御と前後遮断弁330の制御とを別個のプログラムにより行われるようにしたり、左右遮断弁332,前後遮断弁330が、予め定められた条件が満たされた場合に交互に開状態とされるようにすることもできる。
【実施例4】
【0055】
ブレーキ回路は、図18に示す構成を成したものとすることができる。
本実施例に係るブレーキ回路においては、左右前輪2,4の個別通路320FR,FLの途中に、ブレーキシリンダ42FL,FRの液圧を制御可能な個別液圧制御部360FR、FLが設けられる。個別液圧制御部360FL,FRは、それぞれ、1つ以上の電磁開閉弁を含むものとすることができ、実施例1の液圧ブレーキシステムにおける保持弁153、減圧弁156を含むものとしたり、増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁176を含むものとしたりすることができる。個別液圧制御部360FL、FRを設ければ、ブレーキシリンダ42FL,FRの液圧を細かに制御することが可能となる。
【0056】
なお、増圧機構100や出力液圧制御弁装置178は不可欠ではない。動力式液圧源64は、増圧機構100を作動させるためにのみ用いられるようにすることもできる。
また、実施例1,2,3のうちの2つ以上を組み合わせた態様で実施することもできる。例えば、実施例1,2を組み合わせ、ブレーキ液圧回路において、(i)左右前輪のブレーキシリンダ42FL,FRに対応して保持弁153FL,FR、減圧弁156FL,FRを設け、左右後輪のブレーキシリンダ52RL,RRに対応して共通に保持弁314を設けたり、(ii)右前輪のブレーキシリンダ42FRに対応して保持弁332を設け、左右後輪のブレーキシリンダ52RL,FRに対応して保持弁153RL、RR、減圧弁156RL、RRを設けることもできる。さらに、実施例1のブレーキ液圧回路に実施例3の制御を適用することができる。この場合には、保持弁153FL,FRの両方、あるいは、常開の保持弁153FRが、制御対象バルブとされる。
その他、本発明は、上述に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
40,50:液圧ブレーキ 42,52:ブレーキシリンダ 54:液圧制御部 56:ブレーキECU 60:ブレーキペダル 62:マスタシリンダ 64:動力式液圧源 66:アキュムレータ 70,72:加圧室 74,76:マスタ通路 100:増圧機構 104:段付きピストン 110:大径側室 112:小径側室 132:高圧側逆止弁 138:マニュアル側逆止弁 134:メカ式増圧器 150:個別通路 152:共通通路 153:保持弁 156;減圧弁 170:制御圧通路 172:増圧リニア制御弁 176:減圧リニア制御弁 178:出力液圧制御弁装置 190:サーボ圧通路 192:増圧機構遮断弁 218:ブレーキスイッチ 220:ストロークセンサ 222:マスタシリンダ圧センサ 224:アキュムレータ圧センサ 226:ブレーキシリンダ圧センサ 228:レベルウォーニング 230:車輪速度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の複数の車輪にそれぞれ設けられ、ブレーキシリンダの液圧により作動させられて、その車輪の回転を抑制する液圧ブレーキと、
1つ以上の液圧源と、
その1つ以上の液圧源が接続されるとともに、前記複数の液圧ブレーキのブレーキシリンダのうちの第1ブレーキシリンダが第1個別通路を介して接続され、前記複数のブレーキシリンダのうち前記第1ブレーキシリンダとは別の第2ブレーキシリンダが前記第1個別通路とは別の第2個別通路を介して接続された共通通路と、
それら第1個別通路、第2個別通路および共通通路を含む液圧供給通路の、前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとの間の部分に設けられ、ソレノイドに電流が供給されない場合に開状態にある常開の電磁開閉弁である連通遮断弁と、
当該ブレーキシステムに液漏れの可能性が有るか無いかを検出する液漏れ可能性有無検出装置と、
その液漏れ可能性有無検出装置によって液漏れの可能性が有ると検出された場合に、前記連通遮断弁を閉状態として、前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとを遮断する連通遮断制御装置と
を含むことを特徴とするブレーキシステム。
【請求項2】
前記連通遮断制御装置が、前記液漏れ可能性有無検出装置によって前記液漏れの可能性が有ると検出され、かつ、閉条件が満たされた場合に、前記連通遮断弁を閉状態とする電磁弁閉制御部を含む請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
前記電磁弁閉制御部が、前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとの少なくとも一方の液圧が設定液圧より高いことと前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとの少なくとも一方の液圧の変化勾配の絶対値が設定勾配より大きいこととの少なくとも一方が満たされた場合に前記閉条件が満たされたとして、前記連通遮断弁を閉状態とする液圧対応閉制御部を含む請求項2に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
当該ブレーキシステムが、運転者によって操作可能なブレーキ操作部材を含み、前記電磁弁閉制御部が、前記ブレーキ操作部材が操作されていることと前記ブレーキ操作部材が操作される可能性が高いこととの少なくとも一方が満たされた場合に前記閉条件が満たされたとして前記連通遮断弁を閉状態とする操作対応閉制御部を含む請求項2または3に記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記電磁弁閉制御部が、前記車両のメインスイッチがON状態にある間、前記閉条件が満たされているとして、前記連通遮断弁を閉状態に保持するスイッチON中閉制御部を含む請求項2ないし4のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記電磁弁閉制御部が、前記車両の走行速度が停止状態にあるとみなし得る設定速度以下である間、前記閉条件が満たされているとして、前記連通遮断弁を閉状態に保持する停車中閉制御部を含む請求項2ないし5のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項7】
前記連通遮断制御装置が、少なくとも、前記液漏れ可能性有無検出装置によって前記液漏れの可能性が有ると検出されてから、前記液漏れの可能性が無いと検出されるまでの間、前記連通遮断弁を閉状態に保持する電磁弁閉保持部を含む請求項1ないし6のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項8】
前記連通遮断制御装置が、前記連通遮断弁が閉状態にされていても、閉中開許可条件が満たされた場合に、前記連通遮断弁を閉状態から開状態に切り換え、前記閉中開許可条件が満たされなくなった場合に前記連通遮断弁を閉状態に戻す強制的電磁弁開制御部を含む請求項1ないし7のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項9】
前記連通遮断制御装置が、前記液漏れ可能性有無検出装置によって前記液漏れの可能性が有ると検出されても、検出中開許可条件が満たされている間、前記連通遮断弁を開状態とする電磁弁開制御部を含む請求項1ないし8のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項10】
前記液圧供給通路の前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとの間の部分に、ソレノイドに電流が供給されない場合に閉状態にある常閉の電磁開閉弁が設けられていない請求項1ないし9のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項11】
当該ブレーキシステムが、前記1つ以上の液圧源とは別の、運転者によって操作可能なブレーキ操作部材の操作によって液圧を発生させる2つのマニュアル式液圧源を含み、それら2つのマニュアル式液圧源の一方が、前記第1個別通路に前記第1マニュアル通路を介して接続され、前記2つのマニュアル式液圧源の他方が、前記第2個別通路に前記第2マニュアル通路を介して接続され、前記連通遮断弁が、前記液圧供給通路の、前記第1マニュアル通路の接続部と前記第2マニュアル通路の接続部との間の部分に設けられた第1・第2連通遮断弁である請求項1ないし10のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項12】
前記共通通路に、前記複数の液圧ブレーキのブレーキシリンダのうちの前記第1ブレーキシリンダ、第2ブレーキシリンダとは異なる第3ブレーキシリンダが、前記第1個別通路、第2個別通路とは別個の第3個別通路を介して接続され、かつ、前記連通遮断弁が、前記共通通路の前記第3個別通路の接続部と前記第1個別通路の接続部との間の部分に設けられた第1・第3連通遮断弁である請求項1ないし11のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項1】
車両の複数の車輪にそれぞれ設けられ、ブレーキシリンダの液圧により作動させられて、その車輪の回転を抑制する液圧ブレーキと、
1つ以上の液圧源と、
その1つ以上の液圧源が接続されるとともに、前記複数の液圧ブレーキのブレーキシリンダのうちの第1ブレーキシリンダが第1個別通路を介して接続され、前記複数のブレーキシリンダのうち前記第1ブレーキシリンダとは別の第2ブレーキシリンダが前記第1個別通路とは別の第2個別通路を介して接続された共通通路と、
それら第1個別通路、第2個別通路および共通通路を含む液圧供給通路の、前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとの間の部分に設けられ、ソレノイドに電流が供給されない場合に開状態にある常開の電磁開閉弁である連通遮断弁と、
当該ブレーキシステムに液漏れの可能性が有るか無いかを検出する液漏れ可能性有無検出装置と、
その液漏れ可能性有無検出装置によって液漏れの可能性が有ると検出された場合に、前記連通遮断弁を閉状態として、前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとを遮断する連通遮断制御装置と
を含むことを特徴とするブレーキシステム。
【請求項2】
前記連通遮断制御装置が、前記液漏れ可能性有無検出装置によって前記液漏れの可能性が有ると検出され、かつ、閉条件が満たされた場合に、前記連通遮断弁を閉状態とする電磁弁閉制御部を含む請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
前記電磁弁閉制御部が、前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとの少なくとも一方の液圧が設定液圧より高いことと前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとの少なくとも一方の液圧の変化勾配の絶対値が設定勾配より大きいこととの少なくとも一方が満たされた場合に前記閉条件が満たされたとして、前記連通遮断弁を閉状態とする液圧対応閉制御部を含む請求項2に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
当該ブレーキシステムが、運転者によって操作可能なブレーキ操作部材を含み、前記電磁弁閉制御部が、前記ブレーキ操作部材が操作されていることと前記ブレーキ操作部材が操作される可能性が高いこととの少なくとも一方が満たされた場合に前記閉条件が満たされたとして前記連通遮断弁を閉状態とする操作対応閉制御部を含む請求項2または3に記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記電磁弁閉制御部が、前記車両のメインスイッチがON状態にある間、前記閉条件が満たされているとして、前記連通遮断弁を閉状態に保持するスイッチON中閉制御部を含む請求項2ないし4のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記電磁弁閉制御部が、前記車両の走行速度が停止状態にあるとみなし得る設定速度以下である間、前記閉条件が満たされているとして、前記連通遮断弁を閉状態に保持する停車中閉制御部を含む請求項2ないし5のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項7】
前記連通遮断制御装置が、少なくとも、前記液漏れ可能性有無検出装置によって前記液漏れの可能性が有ると検出されてから、前記液漏れの可能性が無いと検出されるまでの間、前記連通遮断弁を閉状態に保持する電磁弁閉保持部を含む請求項1ないし6のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項8】
前記連通遮断制御装置が、前記連通遮断弁が閉状態にされていても、閉中開許可条件が満たされた場合に、前記連通遮断弁を閉状態から開状態に切り換え、前記閉中開許可条件が満たされなくなった場合に前記連通遮断弁を閉状態に戻す強制的電磁弁開制御部を含む請求項1ないし7のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項9】
前記連通遮断制御装置が、前記液漏れ可能性有無検出装置によって前記液漏れの可能性が有ると検出されても、検出中開許可条件が満たされている間、前記連通遮断弁を開状態とする電磁弁開制御部を含む請求項1ないし8のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項10】
前記液圧供給通路の前記第1ブレーキシリンダと前記第2ブレーキシリンダとの間の部分に、ソレノイドに電流が供給されない場合に閉状態にある常閉の電磁開閉弁が設けられていない請求項1ないし9のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項11】
当該ブレーキシステムが、前記1つ以上の液圧源とは別の、運転者によって操作可能なブレーキ操作部材の操作によって液圧を発生させる2つのマニュアル式液圧源を含み、それら2つのマニュアル式液圧源の一方が、前記第1個別通路に前記第1マニュアル通路を介して接続され、前記2つのマニュアル式液圧源の他方が、前記第2個別通路に前記第2マニュアル通路を介して接続され、前記連通遮断弁が、前記液圧供給通路の、前記第1マニュアル通路の接続部と前記第2マニュアル通路の接続部との間の部分に設けられた第1・第2連通遮断弁である請求項1ないし10のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項12】
前記共通通路に、前記複数の液圧ブレーキのブレーキシリンダのうちの前記第1ブレーキシリンダ、第2ブレーキシリンダとは異なる第3ブレーキシリンダが、前記第1個別通路、第2個別通路とは別個の第3個別通路を介して接続され、かつ、前記連通遮断弁が、前記共通通路の前記第3個別通路の接続部と前記第1個別通路の接続部との間の部分に設けられた第1・第3連通遮断弁である請求項1ないし11のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−156998(P2011−156998A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21185(P2010−21185)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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