説明

プリプレグ及び積層板

【課題】ハロゲン化合物を使用せずに高度の難燃性を保持し、耐薬品性に優れ、ガラス転移温度が高く、優れた半田耐熱性を有するプリント配線板材料用プリプレグ及び積層板を提供する。
【解決手段】特定のシアン酸エステル樹脂と非ハロゲン系エポキシ樹脂に、酸・アルカリに難溶であるベーマイト、難燃助剤であるシリコーンパウダーを配合した難燃性樹脂組成物と基材からなるプリプレグおよびこのプリプレグを硬化して得られる積層板または金属箔張り積層板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板用の難燃性を有する樹脂組成物によるプリプレグ、それを用いた積層板、金属張り積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器や通信機、パーソナルコンピューター等に広く用いられている半導体の高集積化・高機能化・高密度実装化はとどまるところを知らず、その進展はますます加速している。特に近年では携帯電話に代表されるモバイル機器の技術が急進し、ユピキタス社会の実現に向けた技術革新が著しい。
半導体パッケージもQFPからBGA・CSPのようなエリア実装型に展開し、さらにMCP・SIP等の高機能型の出現ように、その形態は多種多様になりつつある。そのため、以前にも増して半導体パッケージ用積層板に対する耐熱性・高剛性・低熱膨張性・低吸水性などの特性の要求が強まっている。
【0003】
従来、プリント配線板用の積層板としては、エポキシ樹脂をジシアンジアミドで硬化させるFR−4タイプの積層板が広く使用されているが、この手法では高耐熱性の要求に対応するには限界があった。耐熱性に優れるプリント配線板用樹脂としては、シアン酸エステル樹脂が知られており、ビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂と、他の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂との樹脂組成物をベースにして、近年、半導体パッケージ用積層板に幅広く使用されている。
このビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂は、電気特性、機械特性、耐薬品性、接着性などに優れた特性を有しているが、吸水性や吸湿耐熱性の面では、過酷な条件下では不十分な場合があり、更なる特性の向上を目指して、他の構造を有するシアン酸エステル樹脂の検討が行われている。
他の構造のシアン酸エステル樹脂としては、ノボラック型シアン酸エステル樹脂の事例が多く見受けられる(例えば特許文献1参照)が、ノボラック型シアン酸エステル樹脂は、通常の硬化条件では、硬化不足になり易く、得られる硬化物は、吸水率が大きく、吸湿耐熱性が低下するなどの問題があった。ノボラック型シアン酸エステル樹脂の改善手法として、ビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂とのプレポリマーが開示されている(例えば特許文献2参照)が、本プレポリマーは、硬化性の点は向上するものの、特性改善の点では未だ不十分であった。
【0004】
また、電子機器等に使用されるプリント配線板用積層板としては、通常難燃性が必要であり、従来、この難燃性を付与するために臭素系難燃剤を併用する処方が用いられている(例えば特許文献3参照)が、昨今の環境問題の高まりに呼応して、ハロゲン系化合物を使用しない樹脂組成物が求められている。非ハロゲン系の難燃剤としてはリン化合物の検討が行われてきたが、燃焼時にホスフィンなどの有毒化合物が発生する恐れがあった。他の難燃剤では無機化合物として、金属水和物が知られており、水酸化アルミニウムは加熱時に結晶水を放出する反応による難燃剤として知られている。しかしながら、水酸化アルミニウム等の金属水和物を単独で難燃剤として使用する場合、UL94V-0を達成する添加量は50wt%以上を必要とすることが多く(例えば特許文献4参照)、水酸化アルミニウムの一般構造であるギブサイトの添加量が多い場合、アルカリや酸に対する耐薬品性が著しく劣る傾向にある。プリント配線板の製造工程におけるエッチング・デスミア・メッキ処理などは過酷なアルカリ性・酸性条件であり、耐薬品性の劣る絶縁層の改善が要求されていた。
【0005】
さらに半導体パッケージの組み立て工程では、ベーキング・ワイヤーボンディング・ダイアタッチ・モールド樹脂硬化等の工程で120〜200℃の熱加工が行われ、半田ボール接続では、環境問題から、従来の鉛半田に替えて無鉛半田になることでリフロー温度が20〜30℃上昇するため、半導体パッケージ用積層板に求められる高耐熱性の要求は留まることがない。難燃剤としてギブサイトを用いた積層板では、ギブサイトの脱水開始温度が200℃をやや超えた付近であることから、200℃以上の高温加工では耐熱性が劣ることがあり、高い信頼性が要求される半導体パッケージ用積層板において、耐熱性に優れたハロゲン系化合物を使用しない積層板の開発が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開平11-124433号公報
【特許文献2】特開2000-191776号公報
【特許文献3】特開平11-021452号公報
【特許文献4】特開2001-226465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ハロゲン化合物を使用せずに高度の難燃性を保持し、耐薬品性に優れ、ガラス転移温度が高く、優れた半田耐熱性を有するプリント配線板材料用プリプレグ及び積層板を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定構造のシアン酸エステル樹脂と非ハロゲン系エポキシ樹脂に、酸・アルカリに難溶であるベーマイト、難燃助剤であるシリコーンパウダーを配合することで、シアン酸エステル樹脂の分子構造などによる反応阻害要因を低減させて硬化性を高め、樹脂骨格の剛直な構造により耐熱性(高ガラス転移温度)を維持するとともに、耐薬品性と吸湿耐熱性に優れたハロゲンフリー系の難燃性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、一般式(1)で示されるシアン酸エステル樹脂(A)、非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)、ベーマイト(C)、シリコーンパウダー(D)、基材(E)からなるプリプレグであり、これらプリプレグを硬化して得られる積層板または金属箔張り積層板である。
【化1】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは平均値として1から10である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明によるプリプレグの硬化物は、耐薬品性に優れ、ガラス転移温度が高く、耐熱性が優れており、ハロゲン系難燃材を使用することなく高い難燃性を有することから、高い耐薬品性を要求される過酷条件下で製造され、高耐熱性・高信頼性を要求される高機能化対応のプリント配線板用の材料に好適であり、工業的な実用性は極めて高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において用いられるシアン酸エステル樹脂(A)は、一般式(1)で示されるシアン酸エステル樹脂及びそのプレポリマーであれば特に限定されない。一般式(1)で示されるシアン酸エステル樹脂(A)は、α-ナフトールあるいはβ-ナフトール等のナフトール類とp-キシリレングリコール、α,α’-ジメトキシ-p-キシレン、1,4-ジ(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ベンゼン等との反応により得られるナフトールアラルキル樹脂とシアン酸とを縮合させて得られるものであり、その製法は特に限定されず、シアン酸エステル合成として現存するいかなる方法で製造してもよい。具体的に例示すると、一般式(2)で示されるナフトールアラルキル樹脂とハロゲン化シアンを不活性有機溶媒中で、塩基性化合物存在下反応させることにより得ることができる。また、同様なナフトールアラルキル樹脂と塩基性化合物による塩を、水を含有する溶液中にて形成させ、その後、ハロゲン化シアンと2相系界面反応を行い、合成する方法を採ることもできる。
【化2】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは平均値として1から10である。)
【0011】
本発明において使用される非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)とは、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、意図的に分子骨格内にハロゲン原子を有しない化合物であれば特に限定されるものではない。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル、ブタジエンなどの2重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物等が挙げられ、特に難燃性を向上させるためにはアラルキルノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。アラルキルノボラック型エポキシ樹脂とは式(3)で表せるものであり、フェノールフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)は、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することが可能である。
【化3】

G:グリシジル基
(式中、Ar1・Ar2はフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の単環あるいは多環の芳香族炭化水素が置換基になったアリール基を示し、Rx・Ryは水素原子またはアルキル基、アリール基を示し、mは1〜5までの整数を示し、nは1から50までの整数を示す。)
【0012】
本発明において使用されるシアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)は、樹脂組成物中のシアン酸エステル樹脂(A)のシアネート基数と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)のエポキシ基数の比(CN/Ep)が0.7〜2.5で配合することが好ましい。CN/Epが0.7未満では積層板の難燃性が低下し、2.5を超える配合では硬化性などが低下する場合がある。
【0013】
本発明ではベーマイト(C)を含むことが特徴である。従来、ハロゲン系難燃剤を用いないプリント配線板用積層板の無機系難燃剤としては、ギブサイトが好適に使用されていたが、積層板の耐薬品性が劣る問題があった。本発明において使用されるシアン酸エステル樹脂(A)を含む樹脂組成物に酸・アルカリに難溶なベーマイト(C)を添加したところ、積層板の難燃性を維持し、耐薬品性が向上することがわかった。さらにベーマイトはギブサイトに比べ結晶水が少なく、脱水開始温度が高いため、半田耐熱性も向上することがわかった。本発明で用いられるベーマイトの平均粒子径(D50)は特に限定されないが、分散性を考慮すると平均粒子径(D50)が0.2〜5μmであることが好ましい。ベーマイトの配合量はシアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)の合計配合量100重量部に対して、50〜300重量部であり、積層板の厚さ方向の熱膨張率を低くするには、配合量を多くした方が良いが、配合量が多くなりすぎると樹脂ワニスが増粘し、取り扱いが悪くなり、また成形性が低下することがあるため、80〜250重量部の範囲が特に好ましい。
【0014】
本発明のプリプレグの樹脂組成物には、上記ベーマイト(C)以外に、他の無機充填剤も併用することができる。その具体例としては、天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ、中空シリカ等のシリカ類、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、アルミナ、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、ガラス短繊維(EガラスやDガラスなどのガラス微粉末類)、中空ガラスなどが挙げられる。併用する無機充填剤の平均粒子径(D50)は特に限定されないが、分散性を考慮すると平均粒子径(D50)が0.2〜5μmであることが好ましい。無機充填剤の配合量は、シアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)の合計配合量100重量部に対して、ベーマイト(C)との合計配合として300重量部以下であり、無機充填剤の配合量が多すぎると成形性が低下することがあることから、ベーマイト(C)との合計配合として250重量部以下が特に好ましい。
【0015】
ベーマイト(C)と併用する無機充填剤に関して、シランカップリング剤や湿潤分散剤を併用することも可能である。これらのシランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカップリング剤であれば、特に限定されるものではない。具体例としては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン系、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系、γ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン系、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩などのカチオニックシラン系、フェニルシラン系などが挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜組み合わせて使用することも可能である。また湿潤分散剤とは、塗料用に使用されている分散安定剤であれば、特に限定されるものではない。例えばビッグケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk-110、111、180、BYK-W996、W9010、W903等の酸基を有する共重合体ベースの湿潤分散剤などが挙げられる。
【0016】
本発明において用いられるシリコーンパウダー(D)は、シロキサン結合が三次元網目状に架橋したポリメチルシルセスキオキサンを微粉末化したもの、ビニル基含有ジメチルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンの付加重合物を微粉末化したもの、ビニル基含有ジメチルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンの付加重合物による微粉末の表面にシロキサン結合が三次元網目状に架橋したポリメチルシルセスキオキサンを被服させたもの、無機担持体表面にシロキサン結合が三次元網目状に架橋したポリメチルシルセスキオキサンを被服させたもの等である。シリコーンパウダーは燃焼時間を遅らせ、難燃効果を高める難燃助剤としての作用があり、シリコーンパウダーをシアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)の合計配合量100重量部に対して5重量部以上配合すると顕著な難燃効果があることがわかった。シリコーンパウダーの配合量としては、シアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)の合計配合量100重量部に対して5〜30重量部であり、好適には5〜20重量部である。
【0017】
本発明のプリプレグの樹脂組成物には、ビスマレイミド化合物を併用することも可能である。これらは1分子中に2個のマレイミド基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。その具体例としては、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタンなどが挙げられる。なお、これらビスマレイミド化合物のプレポリマー、もしくはビスマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマーなどの形で配合する事もでき、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することも可能である。より好適なものとしては、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタンが挙げられる。
【0018】
本発明のプリプレグの樹脂組成物には、所期の特性が損なわれない範囲において、他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及びそのオリゴマー、エラストマー類などの種々の高分子化合物、他の難燃性の化合物、添加剤などの併用も可能である。これらは一般に使用されているものであれば、特に限定されるものではない。例えば、難燃性の化合物では、メラミンやベンゾグアナミンなどの窒素含有化合物、オキサジン環含有化合物などが挙げられる。添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、重合禁止剤等、所望に応じて適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0019】
本発明において使用される基材(E)には、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを使用することが出来る。例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、NEガラス等のガラス繊維、あるいはガラス以外の無機繊維、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルなどの有機繊維が挙げられ、目的とする用途や性能により適宜選択できる。形状としては織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマットなどが挙げられる。厚みについては、特に制限はされないが、通常は0.01〜0.3mm程度を使用する。これら基材のなかでも強度と吸水性の点でガラス繊維による基材が好ましい。
【0020】
本発明のプリプレグの樹脂組成物には、必要に応じ、硬化速度を適宜調節するために硬化促進剤を併用することも可能である。これらは、シアン酸エステル樹脂(A)や非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)の硬化促進剤として一般に使用されるものであれば、特に限定されるものではない。これらの具体例としては、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル等の有機金属塩類、イミダゾール類及びその誘導体、第3級アミン等が挙げられる。
【0021】
本発明のプリプレグの製造方法は、シアン酸エステル樹脂(A)、非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)、ベーマイト(C)、シリコーンパウダー(D)を必須成分として含有する樹脂組成物と基材(E)とを組み合わせてプリプレグを製造する方法であれば、特に限定されない。例えば、上記樹脂組成物からなる樹脂ワニスを基材(E)に含浸または塗布させた後、100〜200℃の乾燥機中で、1〜60分加熱させる方法などにより半硬化させ、プリプレグを製造する方法などが挙げられる。基材(E)に対する樹脂組成物の付着量は、プリプレグの樹脂量(無機充填剤を含む)で20〜90重量%の範囲が好ましい。
【0022】
前記樹脂ワニスに用いられる有機溶剤としては、シアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)との混合物が相溶するものであれば、特に限定されるものではない。具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドなどのアミド類等が挙げられる。
【0023】
本発明の積層板は、上述のプリプレグを用いて積層成形したものである。具体的には前述のプリプレグを1枚あるいは複数枚を重ね、所望によりその片面もしくは両面に、銅やアルミニウムなどの金属箔を配置した構成で、積層成形することにより製造する。使用する金属箔は、プリント配線板材料に用いられるものであれば、特に限定されない。成形条件としては、通常のプリント配線板用積層板および多層板の手法が適用できる。例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機などを使用し、温度は100〜300℃、圧力は2〜100kgf/cm2、加熱時間は0.05〜5時間の範囲が一般的である。また、必要に応じて150〜300℃の温度で後硬化を行っても良い。
【実施例】
【0024】
以下に合成例、実施例、比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
(合成例1)α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂の合成-1
【化4】

式(4)で表されるα−ナフトールアラルキル樹脂(SN485、OH基当量:219g/eq.軟化点:86℃、新日鐵化学(株)製) 103g(OH基0.47モル)をクロロホルム 500mlに溶解後、トリエチルアミン 0.7モルを添加混合し、これを 0.93モルの塩化シアンのクロロホルム溶液 300gに、-10℃で1.5時間かけて滴下し、30分撹拌した後、更に 0.1モルのトリエチルアミンとクロロホルム 30gの混合溶液を滴下し、30分撹拌して反応を完結させた。生成するトリエチルアミンの塩酸塩を濾別した後、得られた濾液を 0.1N塩酸 500mlで洗浄した後、水 500mlでの洗浄を4回繰り返した。ついで、クロロホルム/水混合溶液のクロロホルム層を分液処理により抽出、クロロホルム溶液に硫酸ナトリウムを添加し脱水処理を行った。硫酸ナトリウムを濾別した後、75℃でエバポレートし、更に90℃で減圧脱気することにより、褐色固形の式(5)で表されるα−ナフトールアラルキル型のシアン酸エステル樹脂を得た。赤外吸収スペクトルにおいて、2264cm-1付近にシアン酸エステル基の吸収を確認。また、13C-NMR及び1H-NMRにより、構造を同定し、OH基からOCN基への転化率は、99%以上であった。
【化5】

【0026】
(合成例2)α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂の合成-2
α−ナフトールアラルキル樹脂(SN485、OH基当量:219g/eq.軟化点:86℃、新日鐵化学(株)製)の代わりにα−ナフトールアラルキル樹脂(SN4105、OH基当量:226g/eq.軟化点:105℃、新日鐵化学(株)製) 102g(OH基0.45モル)を使用し、塩化シアンの使用量を0.90モルとした以外は合成法1と同様の手法にて合成した。
【0027】
(実施例1)
合成例1で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:237g/eq.)35重量部とフェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-FH,エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)65重量部、湿潤分散剤(BYK-W903、ビッグケミージャパン(株)製) 1.5重量部をメチルエチルケトンで溶解混合し、更にシリコーンパウダー(トスパール120、GE東芝シリコーン(株)製)10重量部、ベーマイト(BN100、河合石灰工業(株)製)150重量部、オクチル酸亜鉛 0.02重量部を混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ 0.1mmのEガラスクロス(比重:2.5g/cm3)に含浸塗工し、160℃で 4分間加熱乾燥して、樹脂含有量51重量%のプリプレグを得た。
【0028】
(実施例2)
合成例1で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:237g/eq.)64重量部と、フェノールフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(ザイロック型エポキシ樹脂:240g/eq.、日本化薬(株)製)18重量部、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(ESN-175,エポキシ当量:268g/eq.、東都化成(株)製)18重量部、シランカップリング剤(Z6040、東レ・ダウコーニング(株)製)2重量部、湿潤分散剤(BYK-W996、ビッグケミージャパン(株)製) 1重量部をメチルエチルケトンで溶解混合し、更にシリコーンパウダー(トスパール130、GE東芝シリコーン(株)製)10重量部、ベーマイト(BS100、河合石灰工業(株)製)80重量部、オクチル酸亜鉛 0.02重量部を混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ 0.1mmのEガラスクロス(比重:2.5g/cm3)に含浸塗工し、160℃で 4分間加熱乾燥して、樹脂含有量48重量%のプリプレグを得た。
【0029】
(実施例3)
合成例1で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:237g/eq.)50重量部とフェノールノボラック型エポキシ樹脂(EPICLON N-770、エポキシ当量:190 g/eq.,大日本インキ化学工業(株)製) 50重量部、湿潤分散剤(BYK-W996、ビッグケミージャパン(株)製) 1重量部をメチルエチルケトンで溶解混合し、更にシリコーンパウダー(トスパール130、GE東芝シリコーン(株)製)20重量部、モリブデン酸亜鉛をタルクにコートしたもの(ケムガード911C、モリブデン酸亜鉛担持:10重量%、シャーウィン・ウイリアムズ・ケミカルズ製)3重量部、ベーマイト(BN100、河合石灰工業(株)製)120重量部、焼成タルク(BST-200L、日本タルク(株)製)15重量部、オクチル酸亜鉛 0.02重量部を混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ 0.1mmのEガラスクロス(比重:2.5g/cm3)に含浸塗工し、160℃で 4分間加熱乾燥して、樹脂含有量50重量%のプリプレグを得た。
【0030】
(実施例4)
合成例1で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:237g/eq.)50重量部とナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(ESN-175,エポキシ当量:268g/eq.、東都化成(株)製)10重量部、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂(EPPN-501HY、エポキシ当量:169g/eq.、日本化薬(株)製)30重量部、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂(HP-4032D、エポキシ当量:140g/eq.、大日本インキ化学工業(株)製)10重量部、シランカップリング剤(Z6040、東レ・ダウコーニング(株)製)2重量部、湿潤分散剤(BYK-W903、ビッグケミージャパン(株)製) 2.0重量部をメチルエチルケトンで溶解混合し、更にシリコーンパウダー(KMP-590、信越化学工業(株)製)20重量部、モリブデン酸亜鉛をタルクにコートしたもの(ケムガード911C、モリブデン酸亜鉛担持:10重量%、シャーウィン・ウイリアムズ・ケミカルズ製)3重量部、ベーマイト(BN100、河合石灰工業(株)製)200重量部、オクチル酸亜鉛 0.02重量部を混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ 0.1mmのEガラスクロス(比重:2.5g/cm3)に含浸塗工し、160℃で 4分間加熱乾燥して、樹脂含有量50重量%のプリプレグを得た。
【0031】
(実施例5)
合成例1で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:237g/eq.)55重量部とフェノールフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(ザイロック型エポキシ樹脂,エポキシ当量:240g/eq.、日本化薬(株)製)20重量部、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(EPICLON N-770、エポキシ当量:190 g/eq.,大日本インキ化学工業(株)製) 20重量部、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂(HP-4032D、エポキシ当量:140g/eq.、大日本インキ化学工業(株)製)5重量部、シランカップリング剤(Z6040、東レ・ダウコーニング(株)製)2重量部、湿潤分散剤(BYK-W903、ビッグケミージャパン(株)製) 1.5重量部をメチルエチルケトンで溶解混合し、更にシリコーンパウダー(KMP-701、信越化学工業(株)製)15重量部、モリブデン酸亜鉛をタルクにコートしたもの(ケムガード911C、モリブデン酸亜鉛担持:10重量%、シャーウィン・ウイリアムズ・ケミカルズ製)3重量部ベーマイト(BN100、河合石灰工業(株)製)150重量部、オクチル酸亜鉛 0.02重量部を混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ 0.1mmのEガラスクロス(比重:2.5g/cm3)に含浸塗工し、160℃で 4分間加熱乾燥して、樹脂含有量51重量%のプリプレグを得た。
【0032】
(実施例6)
合成例1で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:237g/eq.)55重量部とフェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-FH,エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)20重量部、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂(EPPN-501HY、エポキシ当量:169g/eq.、日本化薬(株)製)20重量部、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂(HP-4032D、エポキシ当量:140g/eq.、大日本インキ化学工業(株)製)5重量部、シランカップリング剤(Z6040、東レ・ダウコーニング(株)製)2重量部、湿潤分散剤(BYK-W903、ビッグケミージャパン(株)製) 1.5重量部をメチルエチルケトンで溶解混合し、更にシリコーンパウダー(トスパール130、GE東芝シリコーン(株)製)10重量部、モリブデン酸亜鉛をタルクにコートしたもの(ケムガード911C、モリブデン酸亜鉛担持:10重量%、シャーウィン・ウイリアムズ・ケミカルズ製)3重量部、ベーマイト(BN100、河合石灰工業(株)製)120重量部、球状合成シリカ(SC-2050、(株)アドマテックス製)15重量部、オクチル酸亜鉛 0.02重量部を混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ 0.1mmのEガラスクロス(比重:2.5g/cm3)に含浸塗工し、160℃で 4分間加熱乾燥して、樹脂含有量50重量%のプリプレグを得た。
【0033】
(実施例7)
合成例1で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:237g/eq.)50重量部とフェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-FH,エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)50重量部、シランカップリング剤(Z6040、東レ・ダウコーニング製)2重量部をメチルエチルケトンで溶解混合し、更にシリコーンパウダー(KMP-590、信越化学工業(株)製)5重量部、モリブデン酸亜鉛をタルクにコートしたもの(ケムガード911C、モリブデン酸亜鉛担持:10重量%、シャーウィン・ウイリアムズ・ケミカルズ製)3重量部、ベーマイト(BN100、河合石灰工業(株)製)80重量部、オクチル酸亜鉛 0.02重量部を混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ 0.1mmのEガラスクロス(比重:2.5g/cm3)に含浸塗工し、160℃で 4分間加熱乾燥して、樹脂含有量48重量%のプリプレグを得た。
【0034】
(実施例8)
合成例1で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:237g/eq.)45重量部とフェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-FH,エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)28重量部、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂(EPPN-501HY、エポキシ当量:169g/eq.、日本化薬(株)製)27重量部、シランカップリング剤(Z6040、東レ・ダウコーニング(株)製)2重量部、湿潤分散剤(BYK-W903、ビッグケミージャパン(株)製) 1.5重量部をメチルエチルケトンで溶解混合し、更にシリコーンパウダー(KMP-600、信越化学工業(株)製)10重量部、モリブデン酸亜鉛をタルクにコートしたもの(ケムガード911C、モリブデン酸亜鉛担持:10重量%、シャーウィン・ウイリアムズ・ケミカルズ製)3重量部、ベーマイト(BN100、河合石灰工業(株)製)250重量部、オクチル酸亜鉛 0.02重量部を混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ 0.1mmのEガラスクロス(比重:2.5g/cm3)に含浸塗工し、160℃で 4分間加熱乾燥して、樹脂含有量51重量%のプリプレグを得た。
【0035】
(実施例9)
合成例1で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:237g/eq.)70重量部とフェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-FH,エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)15重量部、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(EPICLON N-770、エポキシ当量:190 g/eq.,大日本インキ化学工業製) 15重量部、湿潤分散剤(BYK-W996、ビッグケミージャパン(株)製) 1重量部をメチルエチルケトンで溶解混合し、更にシリコーンパウダー(トスパール130、GE東芝シリコーン(株)製)15重量部、ベーマイト(BN100、河合石灰製)80重量部、焼成タルク(BST-200L、日本タルク(株)製)20重量部、オクチル酸亜鉛 0.01重量部を混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ 0.1mmのEガラスクロス(比重:2.5g/cm3)に含浸塗工し、160℃で 4分間加熱乾燥して、樹脂含有量49重量%のプリプレグを得た。
【0036】
(実施例10)
実施例7において、合成例1で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:237g/eq.)の代わりに、合成例2で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:244g/eq.)を使用する以外は、実施例7と同様にプリプレグを得た。
【0037】
(実施例11)
実施例8において、合成例1で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:237g/eq.)の代わりに、合成例2で得たα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:244g/eq.)を使用する以外は、実施例8と同様にプリプレグを得た。
【0038】
(比較例1)
実施例1において、ベーマイト(BN100、河合石灰工業(株)製)150重量部の代わりに、ギブサイト(水酸化アルミニウムCL303、住友化学(株)製)150重量部を使用する以外は、実施例1と同様にプリプレグを得た。
【0039】
(比較例2)
実施例2において、ベーマイト(BS100、河合石灰工業(株)製)80重量部の代わりに、ギブサイト(水酸化アルミニウムCL303、住友化学(株)製)80重量部を使用する以外は、実施例2と同様にプリプレグを得た。
【0040】
(比較例3)
実施例3においてシリコーンパウダー(トスパール130、GE東芝シリコーン(株)製)20重量部を除いた以外は実施例3と同様にプリプレグを得た。
【0041】
(比較例4)
実施例4においてシリコーンパウダー(KMP-590、信越化学工業(株)製)20重量部を除いた以外は実施例4と同様にプリプレグを得た。
【0042】
(比較例5)
比較例4においてベーマイト(BN100、河合石灰工業(株)製)200重量部の代わりに、ギブサイト(水酸化アルミニウムCL303、住友化学(株)製)200重量部を使用する以外は、比較例4と同様にプリプレグを得た。
【0043】
(比較例6)
実施例5において、α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:237g/eq.)55重量部の代わりに、2,2-ビス(4-シアネートフェニル)プロパンのプレポリマー(BT2070,シアネート当量:139g/eq.、三菱ガス化学(株)製)55重量部を使用する以外は、実施例5と同様にプリプレグを得た。
【0044】
(比較例7)
実施例6において、α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(シアネート当量:237g/eq.)55重量部の代わりに、フェノールノボラック型シアネート(PT-30,シアネート当量:126g/eq.、Lonza社製)55重量部を使用する以外は、実施例6と同様にプリプレグを得た。
【0045】
金属箔張り積層板1の作成
実施例1〜11および比較例1〜7で得られたプリプレグを、それぞれ4枚重ねて18μm厚の電解銅箔(3EC-III、三井金属鉱業(株)製)を上下に配置し、圧力30 kgf/cm2、温度 220℃で120分間の積層成形を行い、絶縁層厚さ 0.4mmの銅張り積層板を得た。
【0046】
金属箔張り積層板2の作成
実施例1〜11および比較例1〜7で得られたプリプレグを、それぞれ2枚重ねて18μmの電解銅箔(3EC-III、三井金属鉱業(株)製)を上下に配置し、圧力30 kgf/cm2、温度 220℃で120分間の積層成形を行い、絶縁層厚さ 0.2mmの銅張り積層板を得た。
【0047】
得られた金属箔張り積層板1を用いて、難燃性、ガラス転移温度、熱膨張率、はんだ耐熱性、吸湿耐熱性を評価した結果を表1に示す。
【0048】
はんだ耐熱性以外の難燃性・ガラス転移温度・熱膨張率・吸湿耐熱性の評価は、金属箔張り積層板1をエッチングにより銅箔を除去した後、下記方法で行った。
燃焼試験:UL94垂直燃焼試験法に準拠して評価した。
ガラス転移温度:JIS C6481に従い、動的粘弾性分析装置(TAインスツルメント製)で測定した。
熱膨張率:熱機械分析装置(TAインスツルメント製)で40℃から340℃まで毎分10℃で昇温し、60℃から120℃での厚み方向の線膨張係数を測定した。
はんだ耐熱性:5cmx5cmのサンプルを115℃で20時間乾燥した後、288℃の半田浴に浮かし、ふくれるまでの時間を計測した。
表1のはんだ耐熱性の記号は、○:30分以上ふくれ無し ×:30分未満でふくれ発生 である。
吸湿耐熱性:5cmx5cmのサンプルを115℃で20時間乾燥した後、プレッシャークッカー試験器(平山製作所製 PC-3型)で121℃、2気圧で4時間処理後、260℃の半田浴に60秒浸漬し、膨れ有無を目視観察した。
表1の吸湿耐熱性の記号は、○:異常なし △:ミーズリング発生 ×:ふくれ発生 である。
【0049】
得られた金属箔張り積層板2を用いて、耐アルカリ性と耐酸性を評価した結果を表1に示す。
【0050】
評価は、金属箔張り積層板2をエッチングにより銅箔を除去した後、下記方法で行った。
耐アルカリ性:5cmx5cmのサンプルを(1)115℃で20時間乾燥し、(2)70℃の1N 水酸化ナトリウム水溶液に60分浸漬後、(3)115℃で20時間乾燥した後の重量変化率を測定した。(1)後のサンプル重量をW1、(3)後のサンプル重量をW2とし、重量変化率を以下の式で算出した。
重量変化率[wt%] = (W1-W2)x100/W1
耐酸性:5cmx5cmのサンプルを(4)115℃で20時間乾燥し、(5)60℃の4N 塩酸水溶液に60分浸漬後、(6)115℃で20時間乾燥した後の重量変化率を測定した。(4)後のサンプル重量をW3、(6)後のサンプル重量をW4とし、重量変化率を以下の式で算出した。
重量変化率[wt%] = (W3-W4)x100/W3
表1の耐アルカリ性と耐酸性の記号は、○:重量変化0.1wt%未満 ×:重量変化0.1wt%以上 である。
【0051】
【表1】

【0052】
(表1)は、本発明による実施例1〜11が、ギブサイトを難燃剤として用いた比較例1・2・5より耐薬品性とはんだ耐熱性に優れ、シリコーンパウダーを用いていない比較例3・4、2,2-ビス(4-シアネートフェニル)プロパンのプレポリマーを用いた比較例6より難燃性に優れ、フェノールノボラック型シアネートを用いた比較例7より吸湿耐熱性に優れていることを示した。よって本発明により得られるプリプレグによる積層板は、耐薬品性に優れ、ガラス転移温度が高く、耐熱性に優れ、ハロゲン系難燃剤を用いることなく難燃性がUL94V−0を達成できることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるシアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)、ベーマイト(C)、シリコーンパウダー(D)を含む樹脂組成物と基材(E)からなるプリプレグ。
【化1】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは平均値として1から10である。)
【請求項2】
前記ベーマイト(C)の配合量がシアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)の合計配合量100重量部に対して、50〜300重量部である請求項1記載のプリプレグ。
【請求項3】
前記シリコーンパウダー(D)がシアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)の合計配合量100重量部に対して、5〜30重量部である請求項1〜2のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のプリプレグを硬化して得られる積層板。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載のプリプレグと金属箔とを積層して硬化して得られる金属箔張り積層板。

【公開番号】特開2008−214602(P2008−214602A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186929(P2007−186929)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】