説明

プリント配線板用プリプレグ及び金属張り積層板

【課題】 ハロゲンを用いずに難燃性を有し、かつ光反射率が高く、基板はんだ耐熱性に優れた環境問題対応のプリント配線板用プリプレグ及びそれを使用した金属張り積層板を提供する。
【解決手段】 (a)1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する非ハロゲン化エポキシ樹脂化合物、(b)酸化チタン(c)高純度水酸化アルミニウムを必須成分とする、実質的にハロゲン元素を含まない熱硬化性樹脂ワニスをガラス織布に含浸し、加熱、乾燥して、Bステージ化したプリント配線板用プリプレグ及び前記のプリント配線板用プリプレグを少なくとも1枚以上重ね、その片面若しくは両面に金属箔を配して加熱加圧成形して得られる金属張り積層板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板用プリプレグの製造方法および金属張り積層板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器等に用いられる発光体としては発光ダイオード(LED) 素子が主流となりつつある。携帯電話やカメラ一体型VTRでは、LED素子をプリント配線板上に配置し、透明樹脂で封止されたチップLEDが用いられるようになっている。
【0003】
LED素子を載せるプリント配線板としては、LED素子の上面への発光を効率よくするために、プリント配線板を形成するエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂中に酸化チタン等の白色染料を添加することが試みられている。
【0004】
ところで、各種電子機器等に用いられる多くの樹脂組成物には、火災等に対する安全性を確保するために難燃性が付与されている。難燃化には様々な手法が用いられているが、その優れた難燃性からこれまで臭素化合物が広く用いられてきた。
しかしながら、地球規模で環境破壊に関する問題意識が高まるなか、焼却時等に腐食性の臭素だけでなく毒性の高い化合物を形成する可能性がある臭素化合物に代わる難燃システムが検討されている。
【0005】
一方、実装部品のはんだ材料に関しても、従来Sn−Pb系が主に使用されているが、廃棄処理時等に土壌等を汚染する可能性があるPbを用いないはんだ材料の検討も進んでいる。はんだ材料のPbフリー化に関する報告等を見ると融点は上昇することが予想されており、これに伴ってリフロー温度も上昇する可能性が高い。
こうした状況において、今後の電子材料に用いられる樹脂組成物には、臭素化合物を用いないことと同時にこれまで以上に高い耐熱性が要求される。
【0006】
臭素化合物に代わる難燃化の手法としては、従来からリンや窒素化合物の添加や樹脂骨格への導入等が行われている(特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−124489号公報
【特許文献2】特開平11−199753号公報
【0007】
しかしながら、リンや窒素により難燃性を確保するためにはある程度の量を配合する必要があり、これによって吸水率の増加や耐熱性の低下等を引き起こす問題があった。このため、リンや窒素の導入量の低減を目的に、金属水和物を併用する方法がある。
【0008】
しかしながら、金属水和物は燃焼時に冷却効果を発現する水を多くトラップしているため、ある程度の量以上配合すると耐熱性が急激に低下する問題がある。これは、金属水和物が水をリリースする温度がはんだの溶融温度よりも低いことに起因しており、今後溶融温度が更に高くなることが予想されているPbフリーのはんだではより顕著になると思われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ハロゲンを用いずに難燃性・耐熱性を有し、かつ光反射率の高い環境問題対応のプリント配線板用プリプレグ及びそれを使用した金属張り積層板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(a)1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する非ハロゲン化エポキシ樹脂、(b)フェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物、および(c)硬化促進剤、(d)酸化チタン(e)高純度水酸化アルミニウムを必須成分とする、実質的にハロゲン元素を含まない熱硬化性樹脂ワニスをガラス織布に含浸し、加熱,乾燥してBステージ化することを特徴とするプリント配線板用プリプレグに関する。
また、本発明は、(a)の非ハロゲン化エポキシ樹脂が、フェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物のグリシジルエーテル化物であるプリント配線板用プリプレグに関する。
【0011】
また、本発明は、(d)の酸化チタンが、ワニス中の有機樹脂固形分に対して10〜50重量%であるプリント配線板用プリプレグに関する。
また、本発明は、(e)の高純度水酸化アルミニウムが、ワニス中の有機樹脂固形分に対して50〜150重量%であるプリント配線板用プリプレグに関する。
さらに、本発明は、上記のいずれかに記載のプリント配線板用プリプレグを少なくとも1枚以上重ね、その片面若しくは両面に金属箔を配して加熱加圧成形して得られる金属張り積層板に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるプリプレグを用いれば、ハロゲンを用いずに難燃性を有し、光反射率が高く、基板はんだ耐熱性に優れたプリント配線板用金属張り積層板を得ることができる。また、この積層板は優れた難燃性を示すにも拘わらず、燃焼時にダイオキシン等の有害物質を発生する原因となるハロゲン成分を実質的に含有していない、環境問題に対応した金属箔張り積層板である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で使用する(a)の非ハロゲン化エポキシ樹脂の種類としては、分子内に2個以上のエポキシ基を有するもので、ハロゲン化されていなければどんな樹脂でもよく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能フェノールのジグリシジルエーテル化物、多官能アルコールのジグリシジルエーテル化物、これらの水素添加物等があり、何種類かを併用することもできる。
【0014】
また、硬化後の樹脂系のTgや耐熱性を向上するために、フェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物のグリシジルエーテル化物を用いることがより好ましい。このような樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独若しくは併用して使用することができる。
【0015】
本発明で用いるエポキシ樹脂の硬化剤である(b)のフェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物は、分子量の制限はなく、このような樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等が挙げられ、これらは単独若しくは併用して使用することができる。
硬化剤の配合量は、使用する硬化剤の水酸基当量に対しエポキシ当量が水酸基当量/エポキシ当量=0.8〜1.2となるように配合するのが好ましい。0.8未満及び1.2を越えると耐熱性に劣るようになるためである。
【0016】
本発明で用いる(c)の硬化促進剤として、イミダゾール化合物、アミン類等があるが特に制限はない。
イミダゾールとしては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5ジ(シアノエトキシメチル)イミダゾール等が挙げられる。
【0017】
アミン類としては、ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6,−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールのトリ−2−エチルヘキサン塩等が挙げられる。
また、その他に,3ふっ化ほう素錯化合物である、3ふっ化ほう素・モノエチルアミン錯化合物、3ふっ化ほう素・トリエチルアミン錯化合物、3ふっ化ほう素・ピペリジン錯化合物、3ふっ化ほう素・n−ブチルエーテル錯化合物、3ふっ化ほう素・アミン錯化合物等が挙げられる。
【0018】
硬化促進剤は、(a)エポキシ樹脂と(b)フェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物100重量部に対し、0.1〜10重量部配合することが好ましい。0.1重量部未満であると効果に乏しく、10重量部を越えるとプリプレグの保存安定性が悪くなる。
【0019】
本発明で用いる(d)の酸化チタンは特に限定されず、用途によって結晶構造がルチル型のものと、アナタース型のものを選択、または併用することができる。ルチル型を用いた場合、耐候性に優れた積層板が得られ、アナタース型を用いた場合は、より光反射率の高い積層板が得られる。これら酸化チタンは、有機樹脂成分100重量%に対して10〜50重量%配合することが好ましい。10重量%未満では十分な光反射率が得られず、50重量%を越えると成形性の悪化やピール強度の低下等の原因となる。
【0020】
本発明で用いる(e)の高純度水酸化アルミニウムは、水酸化アルミニウムに含まれる不純物NaOの含有率が0.2重量%未満のものであれば良く、形状については特に制限はない。NaOの含有率が0.2重量%以上であると耐熱性が劣る傾向にある。高純度水酸化アルミニウムは市販されているものを使用することができる。この高純度水酸化アルミニウムは、有機樹脂成分100重量%に対して50〜150重量%配合することが好ましい。50重量%未満では難燃効果が得られず、150重量%を越えると塗工作業性が低下したり、成形性の悪化、耐熱性およびピール強度の低下等の原因となる。
【0021】
上記(a)〜(e)は必須成分であり、その他必要に応じて酸化チタン、高純度水酸化アルミニウム以外の充填剤、着色剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線不透過剤等を加えてもよい。特に無機充填剤は難燃化を向上するために好適に使用できる。
【0022】
上記(a)〜(e)を溶剤中で配合して得たエポキシ樹脂ワニスをガラス織布に含浸させて、乾燥することによりプリプレグを得ることができる。ここで使用するガラス織布の種類には特に指定はなく、厚さ0.02〜0.4mmまでのものを、目的のプリプレグまたは積層板の厚さに合わせて使用することができる。
【0023】
含浸量は樹脂分として示されるが、樹脂分とはプリプレグの全重量に対する有機樹脂固形分と無機充填剤類の合計重量の割合のことであり、30〜90重量%であると好ましく、40〜80重量%であるとより好ましい。
樹脂分は目的のプリプレグの性能、および積層後の絶縁層の厚さに合せて適宜決定される。プリプレグを製造する時の乾燥条件は乾燥温度60〜200℃、乾燥時間1〜30分間の間で目的のプリプレグ特性に合わせて自由に選択することができる。
【0024】
目的とする積層板の厚みに合わせて得られたプリプレグを積層し、その片側または両側に金属箔を重ね、加熱加圧して積層板を製造する。金属箔としては主に銅箔やアルミ箔を用いるが、他の金属箔を用いてもよい。金属箔の厚みは通常3〜200μmである。
【0025】
積層板製造時の加熱温度は130〜250℃、より好ましくは160〜200℃で、圧力は0.5〜10Mpa、より好ましくは1〜4Mpaであり、プリプレグ特性や、プレス機の能力、目的の積層板の厚み等により適宜決定する。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
実施例1
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量205) 100重量部
ビスフェノールA型ノボラック樹脂(水酸基当量118) 58重量部
2−エチル−4−メチルイミダゾール 0.2重量部
酸化チタン 40重量部
高純度水酸化アルミニウム(Na2Oの含有量0.03重量%) 160重量部
【0027】
上記化合物をエチレングリコールモノメチルエーテルに溶解、分散し、不揮発分75wt%の樹脂ワニスを作成した。このワニスを100μmのガラス織布(IPC品番#2116タイプ)に含浸し、180℃の乾燥器中で6分間乾燥し、樹脂分60%のB−ステージ状態のプリプレグを得た。
【0028】
実施例2
0−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量210) 100重量部
ビスフェノールA型ノボラック樹脂(水酸基当量118) 56重量部
2−エチル−4−メチルイミダゾール 0.2重量部
酸化チタン 40重量部
高純度水酸化アルミニウム(NaOの含有量0.03重量%) 160重量部
上記化合物を混合、分散して樹脂ワニスを作成し、実施例1と同様にしてプリプレグを得た。
【0029】
比較例1
実施例1における酸化チタンの配合量を10重量部にした以外は実施例1と同様な方法で、B−ステージ状態のプリプレグを得た。
【0030】
比較例2
実施例1における高純度水酸化アルミニウムの代わりに、NaOの含有量が0.2重量%である一般的な水酸化アルミニウムを使用した以外は実施例1と同様な方法でB−ステージ状態のプリプレグを得た。
【0031】
比較例3
実施例1における高純度水酸化アルミニウムの配合量を70重量部にした以外は実施例1と同様な方法で、B−ステージ状態のプリプレグを得た。
【0032】
比較例4
実施例1における高純度水酸化アルミニウムの配合量を250重量部にした以外は実施例1と同様な方法で、B−ステージ状態のプリプレグを得た。
【0033】
金属箔張り積層板の製造方法
実施例1、2および比較例1、2、3、4で得られたプリプレグ4枚を重ねて、その両側に厚み18μmの銅箔を配し、圧力3MPa、温度185℃で90分間加熱加圧して両面銅張積層板を得た。
【0034】
得られた両面銅箔張積層板の銅箔をエッチング後、UL−94燃焼性試験および基板はんだ耐熱性試験を行なった。その結果を表1に示す。なお、基板はんだ耐熱性は、表1に記載した吸湿処理後に288℃のはんだ槽に20秒間浸漬した基材を観察した結果である。各記号は、○:変化無し、△:ミーズリング発生、×:ふくれ発生を意味し、3つの記号は、3つの試験片により評価した結果をそれぞれ示したものである。
【0035】
【表1】

【0036】
表1から、本発明のプリプレグを用いた金属張り積層板は、ハロゲンを用いずにUL−94燃焼性試験においてV−0を達成した。
また、基板はんだ耐熱性も良好であった。これに対して、酸化チタンの配合量が有機樹脂固形分に対して10重量部未満の比較例1は光反射率が劣る結果となった。
また、水酸化アルミニウム中のNaOの含有量が0.2重量%の一般的な水酸化アルミニウムを使用した比較例2は、難燃性は有するものの基板はんだ耐熱性が劣る結果となった。
更に、酸化アルミニウムの配合量が有機樹脂固形分に対して50重量部未満の比較例3は難燃性が劣り、水酸化アルミニウムの配合量が有機樹脂固形分に対して150重量部以上の比較例4は耐熱性に劣る結果となった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する非ハロゲン化エポキシ樹脂、(b)フェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物、および(c)硬化促進剤、(d)酸化チタン(e)高純度水酸化アルミニウムを必須成分とする、実質的にハロゲン元素を含まない熱硬化性樹脂ワニスをガラス織布に含浸し、加熱、乾燥して、Bステージ化したプリント配線板用プリプレグ。
【請求項2】
(a)の非ハロゲン化エポキシ樹脂が、フェノール類とホルムアルデヒドの重縮合物のグリシジルエーテル化物である請求項1に記載のプリント配線板用プリプレグ。
【請求項3】
(d)の酸化チタンが、ワニス中の有機樹脂固形分に対して10〜50重量%である請求項1に記載のプリント配線板用プリプレグ。
【請求項4】
(e)の高純度水酸化アルミニウムが、ワニス中の有機樹脂固形分に対して50〜150重量%である請求項1に記載のプリント配線板用プリプレグ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のプリプレグを少なくとも1枚以上重ね、その片面若しくは両面に金属箔を配して加熱加圧成形して得られる金属張り積層板。



【公開番号】特開2006−324307(P2006−324307A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143904(P2005−143904)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】