説明

ポジ型感光性組成物及びその硬化物

【課題】耐熱性及び高温熱履歴後の耐薬品性に優れ、現像時の膜減りが少なく、現像工程における現像マージンが大きいポジ型感光性組成物を提供する。
【解決手段】(A)式(1)で表わされる化合物と式(2)で表わされる化合物とを加水分解・縮合反応させて得られる構造からなるシラノール基含有ポリシロキサン化合物、(B)エポキシ含有有機基を少なくとも2つ有する化合物、(C)ジアゾナフトキノン類及び(D)有機溶剤を含有するポジ型感光性組成物。R1はC1〜4アルキル基等、R2はC2〜10の2価炭化水素基、R3はC2〜10の2価飽和脂肪族炭化水素基、Xは特定の一般式で表される基をそれぞれ表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサン化合物を用いたポジ型感光性組成物に関し、更に該ポジ型感光性組成物を用いた硬化物、及び該ポジ型感光性組成物を用いた永久レジストの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報化社会の進展とマルチメデイアシステムの普及により、液晶表示装置、有機EL表示装置等の重要性はますます増大している。これらの表示装置では、画素ごとに薄膜トランジスタ(TFT)等のスイッチング素子を備えたアクティブマトリクス基板が使用されている。アクティブマトリクス基板上には多数の走査配線と、これらの走査配線に絶縁膜を介して交差する信号配線が形成される。アクティブマトリクス基板の走査配線、信号配線、絶縁膜等は、スパッタリング法、CVD法、塗布法等により形成された導電膜又は絶縁膜に、フォトリソグラフィーによるパターニングを繰り返すことにより形成される(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
一般に、フォトリソグラフィーには、フォトレジストが使用され、パターニング後も剥離させずに絶縁膜又は保護膜として使用されるレジスト(永久レジスト)も開発されている。アクティブマトリクス基板に永久レジストを用いる場合には、耐薬品性(耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性)だけでなく、高度の耐熱性と、高熱履歴後の耐薬品性が求められる。これは以下のような理由による。
すなわち、アクティブマトリクス基板では、絶縁基板であるガラス基板上に、多結晶シリコン薄膜を活性層とするTFTを形成し、多結晶シリコン薄膜を絶縁膜で覆うが、多結晶シリコン内部や、多結晶シリコン薄膜と絶縁基板や絶縁膜との界面にシリコン結合の欠陥であるダングリングボンドを生じやすく、トランジスタの特性が低下するという問題がある。ダングリングボンドの問題を解消するには、窒化ケイ素(SiNx)等の水素の拡散を防止する膜が存在する状態で、300〜400℃程度の温度で水素化処理する必要がある(例えば、特許文献3参照)。従来の永久レジストでいう耐熱性は、プリント配線板におけるハンダ付けに耐えられる260℃に数分間耐えられる程度の耐熱性(例えば、特許文献4参照)であり、上述のようなアクティブマトリクス基板における永久レジストに要求される耐熱性及び高熱履歴後の耐薬品性とは大きく異なる。
【0004】
一方、シリコーン樹脂は透明性、絶縁性、耐熱性、耐薬品性等に優れ、シリコーン樹脂をベース樹脂としたフォトレジストも開発されている。近年では、耐熱性や耐薬品性の向上した構造のものとして、フェノール性水酸基や環状シロキサン構造を導入したシリコーン樹脂をベース樹脂としたフォトレジスト(例えば、特許文献5、6を参照)も検討されている。しかしながら、フェノール性水酸基や環状シロキサン構造を導入したシリコーン樹脂をベース樹脂とした従来公知のフォトレジストは、耐熱性や高温熱履歴後の耐薬品性には優れるが、現像時の膜減りが大きく、微細なパターンを形成することが困難であるとともに、現像工程における現像マージン(現像時間が最適となる時間の幅)が狭いために、現像時間がわずかでも過剰となると、パターンと基板との間に現像液が浸透して剥がれが生じやすくなるため、現像時間を厳密に制御する必要があり、製品の歩留まりの点で問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−281506号公報
【特許文献2】特開2007−225860号公報
【特許文献3】特開平6−77484号公報
【特許文献4】特開2007−304543号公報
【特許文献5】特開2010−101957号公報
【特許文献6】国際公開第2009/063887号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、耐熱性及び高温熱履歴後の耐薬品性に優れ、現像時の膜減りが少なく、現像工程における現像マージンが大きいポジ型感光性組成物、このポジ型感光性組成物を用いた永久レジスト、及び該永久レジストの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(A)成分として、下記一般式(1)で表わされる環状シロキサン化合物と下記一般式(2)で表わされるアルコキシシラン化合物とを加水分解・縮合反応させて得られる構造からなるシラノール基含有ポリシロキサン化合物、
(B)成分として、エポキシ含有有機基を少なくとも2つ有する化合物、
(C)成分として、ジアゾナフトキノン類、及び
(D)成分として、有機溶剤を含有することを特徴とするポジ型感光性組成物
を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
【化3】

【0011】
【化4】

【0012】
【化5】

【0013】
また、本発明は、上記ポジ型感光性組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化物を提供することにより、上記目的を達成したものである。
また、本発明は、上記ポジ型感光性組成物を対象材料に塗布し、プリベークした後、露光し、アルカリ現像し、次いで、ブリーチング露光した後、120〜400℃の温度でポストベークすることを特徴とする永久レジストの製造方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
また、本発明は、上記ポジ型感光性組成物を用いて得られた永久レジストを絶縁層又は平坦化膜とするアクティブマトリクス基板を有することを特徴とする液晶表示装置及び有機EL表示装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐熱性及び高温熱履歴後の耐薬品性に優れ、現像時の膜減りが少なく、現像工程における現像マージンが大きいポジ型感光性組成物、及び該ポジ型感光性組成物を用いた永久レジストの製造方法を提供することができる。該ポジ型ポジ型感光性組成物の硬化物からなる永久レジストは、アクティブマトリクス基板を有する液晶表示装置及び有機EL表示装置等の絶縁層又は平坦化膜として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る(A)成分は、上記一般式(1)で表わされる環状シロキサン化合物と上記一般式(2)で表わされるアリールアルコキシシラン化合物とを加水分解・縮合反応させて得られる構造からなるシラノール基含有ポリシロキサン化合物である。
始めに、一般式(1)で表わされる環状シロキサン化合物について説明する。なお、一般式(1)で表される環状シロキサン化合物において、複数あるR1は互いに同一でも異なってもよく、また、R2、R3及びXも、それぞれ、複数ある場合は互いに同一でも異なってもよい。
【0016】
一般式(1)において、R1は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2級ブチル、t−ブチル等が挙げられる。炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル、エチルフェニル、トルイル、クメニル、キシリル、プソイドクメニル、メシチル、t−ブチルフェニル、ベンジル、フェネチル等が挙げられる。
1としては、工業的な入手の容易さから、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、フェニルが好ましく、メチル、エチル、フェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。
【0017】
2は炭素数2〜10の2価の炭化水素基を表わす。炭素数2〜10の2価の炭化水素基としては、エチレン、プロピレン、1−メチルエチレン、2−メチルエチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、3−メチルペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、シクロヘキサン−1,4−ジイル、2−フェニルエタン−1,2’−ジイル、2−フェニルエタン−1,4’−ジイル、2−フェニルプロパン−1,4’−ジイル等が挙げられ、工業的な入手の容易さと、耐熱性の点から、エチレン、2−メチルエチレン、2−フェニルエタン−1,4’−ジイルが好ましく、エチレン、2−メチルエチレンが更に好ましく、エチレンが最も好ましい。
【0018】
3は炭素数2〜10の2価の飽和脂肪族炭化水素基を表わす。炭素数2〜10の2価の飽和脂肪族炭化水素基としては、エチレン、プロピレン、1−メチルエチレン、2−メチルエチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、3−メチルペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン等が挙げられ、工業的な入手の容易さと、耐熱性の点から、R3としては、エチレン、2−メチルエチレン、プロピレンが好ましく、エチレンが更に好ましい。
【0019】
3に結合するベンゼン環のフェノール性水酸基の位置は、R3に対して、オルト位、メタ位、パラ位のいずれでもよいが、耐熱性がより高く、原料の工業的な入手が容易であることから、R3に対してオルト位又はパラ位にあることが好ましく、パラ位にあることが更に好ましい。
【0020】
一般式(1)において、Xは上記一般式(3)で表される基、上記一般式(4)で表される基又は上記一般式(5)で表される基を表わす。
【0021】
一般式(3)において、R6は炭素数1〜4のアルキル基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2級ブチル、t−ブチルが挙げられ、R6としては、一般式(2)で表わされるアルコキシシラン化合物との反応が良好であることから、メチル、エチルが好ましく、メチルが更に好ましい。R7は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、R1で例示した基が挙げられ、R7としては、耐熱性がより向上することから、メチル、フェニルが好ましく、メチルが更に好ましい。bは1〜3の数を表わし、一般式(2)で表わされるアルコキシシラン化合物との反応が良好であることから、2〜3の数が好ましく、3が更に好ましい。
【0022】
一般式(4)において、R9は炭素数1〜4のアルキル基を表わし、R10は炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、R1で例示したアルキル基が挙げられる。R9としては、一般式(2)で表わされるアルコキシシラン化合物との反応性が良好であることから、メチル、エチルが好ましく、メチルが更に好ましい。R10としては、耐熱性がより向上することから、メチル、フェニルが好ましく、メチルが更に好ましい。cは1〜3の数を表わし、一般式(2)で表わされるアルコキシシラン化合物との反応が良好であることから、2〜3の数が好ましく、3が更に好ましい。dは1又は2の数を表わし、R10が分子量1000以下のジビニル化合物からビニル基を除いた残基を表わす場合にはdは1となり、R10が分子量1000以下のトリビニル化合物からビニル基を除いた残基を表わす場合にはdは2となる。
【0023】
一般式(4)において、R8は分子量1000以下のジビニル化合物又はトリビニル化合物からビニル基を除いた残基を表わす。このようなジビニル化合物又はトリビニル化合物は下記一般式(4a)で表わされる化合物であり、例えば、下記一般式(6)〜(12)で表わされる化合物等が挙げられる。
【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
【化8】

【0027】
【化9】

【0028】
【化10】

【0029】
【化11】

【0030】
【化12】

【0031】
【化13】

【0032】
一般式(6)において、R13〜R16はおのおの独立して炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、R1で例示した基が挙げられ、耐熱性がより良好であることからメチル、エチル、プロピル、フェニルが好ましく、メチル、エチル、フェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。fは0〜6の数を表わし、工業的な入手が容易であることから、0〜2の数が好ましく、0〜1の数が更に好ましい。一般式(6)で表わされる化合物の中で、好ましい化合物としては、ジメチルジビニルシラン、ジエチルジビニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラエチル−1,3−ジビニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジビニルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ジビニルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ジビニルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサフェニル−1,5−ジビニルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチル−1,7−ジビニルテトラシロキサン等が挙げられ、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラエチル−1,3−ジビニルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ジビニルトリシロキサンがより好ましく、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサンが更に好ましい。
【0033】
一般式(7)において、R17〜R19はおのおの独立して炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、R1で例示した基が挙げられ、耐熱性がより良好であることからメチル、エチル、プロピル、フェニルが好ましく、メチル、エチル、フェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。gは1〜4の数を表わし、hは0〜4の数を表わす。工業的な入手が容易であることから、gが1〜2の数でありhが0〜2の数であることが好ましく、gが1でありhが0〜1の数が更に好ましい。一般式(7)で表わされる化合物の中で、好ましい化合物としては、トリス(ジメチルビニルシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルビニルシロキシ)フェニルシラン、トリス{(ジメチルビニルシロキシ)ジメチルシロキシ}メチルシラン等が挙げられ、トリス(ジメチルビニルシロキシ)メチルシランがより好ましい。
【0034】
一般式(8)において、R20、R21はおのおの独立して炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わし、dは一般式(4)と同義である。炭素数1〜10のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、R1で例示した基が挙げられ、耐熱性がより良好であることからメチル、エチルが好ましく、メチルが更に好ましい。一般式(8)で表わされる化合物の中で、好ましい化合物としては、1,2−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(ジエチルビニルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(ジエチルビニルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルビニルシリル)ベンゼン、1,3,5−トリス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン)、1,3,5−トリス(ジエチルビニルシリル)ベンゼン)等が挙げられ、工業的な入手が容易であり、耐熱性もより良好であることから、1,2−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼンがより好ましく、1,4−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼンが更に好ましい。
【0035】
一般式(9)において、dは一般式(4)と同義である。一般式(9)で表わされる化合物としては、1,2−ジビニルベンゼン、1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、1,2,4−トリビニルベンゼン、1,3,5−トリビニルベンゼン等が挙げられ、工業的な入手が容易であり、耐熱性もより良好であることから、1,4−ジビニルベンゼンが好ましい。
一般式(10)において、dは一般式(4)と同義である。一般式(10)で表わされる化合物としては、1,2−ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジビニルシクロヘキサン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリビニルシクロヘキサン等が挙げられ、工業的な入手が容易であり、耐熱性もより良好であることから、1,4−ジビニルシクロヘキサンが好ましい。
【0036】
一般式(11)において、R22は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又はアリル基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、R1で例示した基が挙げられる。R22は、耐熱性がより良好であることからメチル、エチル、アリルが好ましく、メチル、アリルが更に好ましい。一般式(11)で表わされる化合物の中で、好ましい化合物としては、ジアリルメチルイソシアヌレート、ジアリルエチルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられ、トリアリルイソシアヌレートが更に好ましい。
【0037】
一般式(12)で表わされる化合物において、R23〜R25はおのおの独立して炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数1〜10のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、R1で例示した基が挙げられ、耐熱性がより良好であることからメチル、エチル、プロピル、フェニルが好ましく、メチル、エチル、フェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。dは一般式(4)と同義であり、iはd+iが3〜6となる0〜4の数を表わす。工業的な入手が容易であることから、d+iは4〜5の数が好ましく、4が更に好ましい。一般式(12)で表わされる化合物の中で、好ましい化合物としては、2,2,4,6−テトラメチル−4,6−ジビニルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,8−ヘキサメチル−6,8−ジビニルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,10−オクタメチル−8,10−ジビニルシロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリビニルシクロトリシロキサン、2,2,4,6,8−ペンタメチル−4,6,8−トリビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0038】
以上に一般式(4)中のR8で表される基を提供し得る分子量1000以下のジビニル化合物又はトリビニル化合物について詳述したが、これらの化合物のなかでも、工業的な入手の容易さと硬化物の耐熱性から、一般式(9)〜(11)で表わされる化合物が好ましく、1,4−ジビニルベンゼン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、トリアリルイソシアヌレートが更に好ましく、1,4−ジビニルベンゼンが最も好ましい。
【0039】
一般式(5)において、R11、R12は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、一般式(1)のR1で例示した基が挙げられ、製造が容易であることから炭素数6〜10のアリール基が好ましく、中でもフェニルが好ましい。eは1〜10の数を表わし、製造が容易であることから、1〜5の数が好ましく、1〜3の数が更に好ましい。
【0040】
一般式(1)において、Xとしては、製造が容易であり、耐熱性も良好であることから一般式(3)で表される基が好ましい。
【0041】
一般式(1)において、m、n及びpは、それぞれ、1分子あたりの平均の数であって、m:n:p=1:2.1〜12:1〜6及びm+n+p=3〜6を満足する数を表わす。一般式(1)で表わされる環状シロキサン化合物は、1種のみを使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、mに対するnの比が小さすぎる場合には、現像時の膜減りが大きく、現像工程における現像マージンが小さくなり、大きすぎる場合には、現像時のレジスト残渣が増えることから、2.4〜10であることが好ましく、2.8〜9であることが更に好ましく、3〜8であることが最も好ましい。
【0042】
一般式(1)で表わされる環状シロキサン化合物は、例えば、下記の一般式(1a)で表わされる環状シロキサン化合物に、下記一般式(13)で表わされるカルボン酸化合物及び下記一般式(14)で表わされるフェノール化合物をヒドロシリル化反応させて、一般式(1b)で表わされる中間体とし、この中間体に更に上記の一般式(3)〜(5)で表される基を導入することにより得ることができる。
【0043】
【化14】

【0044】
【化15】

【0045】
【化16】

【0046】
【化17】

【0047】
一般式(1a)で表わされる環状シロキサン化合物のうち、好ましい化合物の具体例としては、例えば、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6−トリエチルシクロトリシロキサン、2,4,6−トリフェニルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,2,4,6,8−ペンタメチルシクロテトラシロキサン、2,2,2,4,4,6,8−ヘキサメチルシクロテトラシロキサン」、2,4,6,8−テトラエチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、2−エチル−4,6,8−トリメチルシクロテトラシロキサン、2−フェニル−4,6,8−トリメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10−ペンタエチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10,12−ヘキサメチルシクロヘキサシロキサン、2,4,6,8,10,12−ヘキサエチルシクロヘキサシロキサン、2,4,6,8,10,12−ヘキサフェニルシクロヘキサシロキサン等が挙げられ、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン及び2,4,6,8,10−ペンタメチルシクロペンタシロキサンが更に好ましく、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが最も好ましい。
【0048】
一般式(13)で表わされるカルボン酸化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸、10−ウンデセン酸、2−ビニル安息香酸、3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸、2−アリル安息香酸、3−アリル安息香酸、4−アリル安息香酸、2−イソプロペニル安息香酸、3−イソプロペニル安息香酸、4−イソプロペニル安息香酸等が挙げられ、工業的に入手が容易で、本発明のポジ型感光性組成物の耐膜減り性の面からは、アクリル酸、メタクリル酸、4−ビニル安息香酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸が更に好ましい。一般式(13)で表わされるカルボン酸化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0049】
一般式(14)で表わされるフェノール化合物の具体例としては、2−ビニルフェノール、3−ビニルフェノール、4−ビニルフェノール、2−アリルフェノール、3−アリルフェノール、4−アリルフェノール、2−イソプロペニルフェノール、3−イソプロペニルフェノール、4−イソプロペニルフェノール等が挙げられ、工業的に入手が容易であることから、2−ビニルフェノール、3−ビニルフェノール、4−ビニルフェノール、4−イソプロペニルフェノールが好ましく、2−ビニルフェノール、4−ビニルフェノールが更に好ましく、4−ビニルフェノールが最も好ましい。一般式(14)で表わされるフェノール化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0050】
一般式(1a)で表わされる環状シロキサン化合物と、一般式(13)で表わされるカルボン酸化合物、一般式(14)で表わされるフェノール化合物とのヒドロシリル化反応は、触媒を用いて行うことが好ましく、ヒドロシリル化触媒としては、例えば、白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。白金系触媒としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニルビニルメチル錯体(Ossko触媒)、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(KaRstedt触媒)、白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金−オクチルアルデヒド錯体、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt[P(C6534、PtCl[P(C6533、Pt[P(C4934]、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OC6534)、Pt[P(OC4934)、ジカルボニルジクロロ白金等が挙げられる。パラジウム系触媒又はロジウム系触媒としては、例えば、上記白金系触媒の白金原子の代わりにパラジウム原子又はロジウム原子を含有する化合物が挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ヒドロシリル化触媒としては、反応性の点から、白金系触媒が好ましく、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体及び白金−カルボニルビニルメチル錯体が更に好ましく、白金−カルボニルビニルメチル錯体が最も好ましい。また、触媒の使用量は反応性の点から、各原料の合計量の5質量%以下が好ましく、0.0001〜1.0質量%が更に好ましく、0.001〜0.1質量%が最も好ましい。ヒドロシリル化の反応条件は特に限定されず、上記触媒を使用して従来公知の条件で行なえばよいが、反応速度の点から、室温(25℃)〜130℃で行なうのが好ましく、反応時にトルエン、ヘキサン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の従来公知の溶媒を使用してもよい。
【0051】
次に、一般式(1b)で表わされる中間体に上記の一般式(3)〜(5)で表される基を導入する方法について説明する。一般式(1b)で表わされる中間体に一般式(3)で表される基を導入する場合には、一般式(1b)で表わされる中間体のSiH基と、下記一般式(3a)で表されるアルコキシルシラン化合物のビニル基とをヒドロシリル化反応させればよい。ヒドロシリル化反応の条件は、一般式(1b)で表わされる中間体を得る場合の条件と同様でよい。
【0052】
【化18】

【0053】
一般式(3a)で表わされるアルコキシシラン化合物のうち、好ましい化合物の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルフェニルジメトキシシラン等が挙げられ、耐熱性と密着性がより向上することから、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランが好ましく、ビニルトリメトキシシランが更に好ましい。一般式(3a)で表わされるアルコキシシラン化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0054】
一般式(1b)で表わされる中間体に一般式(4)で表される基を導入する場合には、一般式(1b)で表わされる中間体のSiH基と、前記一般式(4a)で表されるジビニル化合物又はトリビニル化合物の1つのビニル基とをヒドロシリル化反応して、下記一般式(1c)で表わされる中間体とし、一般式(1c)で表わされる中間体のビニル基と下記一般式(4b)で表されるアルコキシルシラン化合物のSiH基とをヒドロシリル化反応させればよい。これらのヒドロシリル化反応の条件は、一般式(1b)で表わされる中間体を得る場合の条件と同様でよい。
【0055】
【化19】

【0056】
【化20】

【0057】
一般式(4b)で表わされるアルコキシシラン化合物のうち、好ましい化合物の具体例としては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジメトキシメチルシラン、ジメトキシエチルシラン、ジメトキシフェニルシラン等が挙げられ、耐熱性と密着性がより向上することから、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、エチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシランが好ましく、トリメトキシシラン及びトリエトキシシランが更に好ましく、トリメトキシシランが最も好ましい。一般式(4b)で表わされるアルコキシシラン化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0058】
一般式(1b)で表わされる中間体に一般式(5)で表される基を導入する場合には、一般式(1b)で表わされる中間体のSiH基に、下記一般式(5a)で表されるシランジオールを反応させればよい。
【0059】
【化21】

【0060】
一般式(5a)で表されるシランジオールのうち好ましい化合物としては、例えば、ジメチルシランジオール、ジエチルシランジオール、ジイソプロピルシランジオール、メチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール等が挙げられ、中でも、メチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオールが好ましく、ジフェニルシランジオールが更に好ましい
【0061】
一般式(1b)で表わされる中間体のSiH基に、一般式(5a)で表されるシランジオールを反応させる場合には、有機金属触媒を用いて反応すればよい。有機金属触媒としては、有機スズ触媒、有機白金触媒、有機亜鉛触媒、有機アルミニウム触媒等が挙げられ、有機スズ触媒が好ましい。有機スズ触媒としては、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、ステアリン酸スズ、バーサチック酸スズ、ジブチルスズラウレート、トリフェニルスズアセテート、塩化トリブチルスズが挙げられ、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、ステアリン酸スズが好ましく、オクチル酸スズが更に好ましい。有機金属触媒の使用量は、各原料の使用量の0.001〜1質量%が好ましく、0.002〜0.1質量%が更に好ましい。
【0062】
次に、上記一般式(2)で表されるアルコキシシラン化合物について説明する。
一般式(2)において、aは1〜2の数を表わし、耐熱性がより向上することから、1が好ましい。R4は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わし、R5は炭素数1〜4のアルキル基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、一般式(1)のR1で例示した基が挙げられる。R4としては、耐熱性がより向上することから、メチル、エチル、フェニルが好ましく、メチル、フェニルが更に好ましく、フェニルが最も好ましい。R5としては、反応性に優れることから、メチル、エチル、プロピルが好ましく、メチルが更に好ましい。
【0063】
一般式(2)で表されるアルコキシシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、エチルフェニルジメトキシシラン、エチルフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等が挙げられ、耐熱性と密着性がより向上することから、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン及びフェニルメチルジエトキシシランが好ましく、フェニルトリメトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランが更に好ましく、フェニルトリメトキシシランが最も好ましい。尚、前記一般式(2)で表されるアルコキシシラン化合物は1種のみを使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0064】
次に、一般式(1)で表わされる環状シロキサン化合物と一般式(2)で表わされるアルコキシシラン化合物とを加水分解・縮合反応させ、(A)シラノール基含有ポリシロキサン化合物を得る方法について説明する。
【0065】
一般式(1)で表わされる環状シロキサン化合物と一般式(2)で表わされるアリールアルコキシシラン化合物の加水分解・縮合反応は、いわゆるゾル・ゲル反応を行えばよく、溶媒中で、酸又は塩基等の触媒を使用し、アルコキシシリル基を加水分解・縮合反応させればよい。この時に用いられる溶媒は特に限定されず、具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、トルエン等が挙げられ、これらの1種を用いることも2種以上を混合して用いることも出来る。アルコキシシリル基の加水分解・縮合反応は、アルコキシシリル基が水によって加水分解してシラノール基(Si−OH基)を生成し、生成したシラノール基同士、又は、シラノール基とアルコキシシリル基が縮合することにより進行する。
【0066】
加水分解・縮合反応で用いられる酸、塩基等の触媒としては、例えば、塩酸、リン酸、硫酸等の無機酸類;ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸モノイソプロピル等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等の無機塩基類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン化合物(有機塩基)類等が挙げられる。これら触媒は、1種を用いてよいし、2種以上を併用してもよい。加水分解・縮合反応の温度は、溶媒の種類、触媒の種類及び量等により変わるが、30〜100℃が好ましく、40〜80℃が更に好ましく、45〜70℃が最も好ましい。
【0067】
アルコキシシリル基の加水分解により生成したシラノール基は、全て縮合反応を起こすわけではなく、一部が反応せずに残っている。本発明に係る(A)成分であるシラノール基含有ポリシロキサン化合物は、シラノール基を有するところに特徴がある。(A)成分中のシラノール基の含量は、密着性が向上することから、OHの含量として、1〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることが更に好ましく、5〜20質量%であることが最も好ましい。シラノール基の定量方法としては、シラノール基をトリメチルクロロシラン等でトリメチルシリル化し反応前後の質量増加量により定量する方法(TMS化法)、近赤外線分光光度計(特開2001−208683号公報、特開2003−35667号公報等を参照)や29Si−NMR(特開2007−217249公報等を参照)を使用した機器分析に定量する方法が挙げられる。
【0068】
なお、(A)成分中のシラノール基は、縮合反応しやすいことから、加水分解・縮合反応後、(A)成分を反応液から単離せずに、必要に応じて、脱触媒処理、溶媒置換、溶媒濃縮等を行い、(A)成分を含む溶液の状態で用いることが好ましい。
【0069】
(A)成分であるシラノール基含有ポリシロキサン化合物の分子量が、あまりに小さい場合には、ポジ型感光性組成物を用いて永久レジストを形成する際の成膜性が不良となり、あまりに大きい場合には、アルカリ現像液への溶解性又は分散性が低下しアルカリ現像後の基板表面のレジスト残渣が増加することから、シラノール基含有ポリシロキサン化合物の質量平均分子量が1000〜50000であることが好ましく、2000〜25000であることが更に好ましく、3000〜15000であることが最も好ましい。なお、本発明において、質量平均分子量とは、テトラヒドロフラン(以下、THFという)を溶媒としてGPC分析を行った場合のポリスチレン換算の質量平均分子量をいう。
【0070】
(A)成分であるシラノール基含有ポリシロキサン化合物を得る加水分解・縮合反応において、一般式(1)で表わされる環状シロキサン化合物と一般式(2)で表わされるアルコキシシラン化合物との反応比は、一般式(1)で表わされる環状シロキサン化合物に対して、一般式(2)で表わされるアルコキシシラン化合物がモル比で0.5〜10であることが好ましく、1〜7が更に好ましく、1.5〜6が最も好ましい。この比が0.5よりも低い場合には硬化物の硬度が不十分となる場合があり、10よりも高い場合には、アルカリ現像後の基板表面のレジスト残渣が増加する場合がある。
【0071】
(A)成分であるシラノール基含有ポリシロキサン化合物は、一般式(1)で表される環状シロキサン化合物と、一般式(2)で表されるアリールアルコキシシラン化合物と、加水分解・縮合反させて得られる構造からなる化合物であるが、(A)成分のシラノール基含有ポリシロキサン化合物を製造するに際し、必ずしも一般式(1)で表される環状シロキサン化合物を使用する必要はなく、カルボキシル基やフェノール基を酸解離性の保護基でマスクした化合物、即ち、下記一般式(1p)で表される化合物と、一般式(2)で表されるアリールアルコキシシラン化合物とを反応させてアリールアルコキシシラン化合物の前駆体を得た後、酸解離性の保護基を脱離させることにより(A)成分であるシラノール基含有ポリシロキサン化合物を得ることもできる。尚、一般式(1p)で表される化合物を用いる場合について、以下に特に説明しない点については、一般式(1)で表される環状シロキサン化合物を用いる場合の説明を適宜適用することができる。
【0072】
【化22】

【0073】
酸解離性の保護基でマスクされた化合物を使用した場合には、酸解離性の保護基を脱離する工程が必要となり製造が煩雑になるが、副反応、特に、一般式(1b)で表わされる中間体を製造する際の副反応が起こりにくくなり、本発明のポジ型感光性組成物を用いて得られる永久レジストの耐熱性、耐薬品性等がより向上するという利点がある。
【0074】
カルボキシル基及びフェノール基の酸解離性の保護基としては、t−ブチル基、1−エトキシエチル基、アセチル基、t−ブトキシカルボニル基等が挙げられ、t−ブチル基が好ましい。このような酸解離性の保護基は、酸性条件下に脱離することが可能であり、塩酸、トリフルオロ酢酸、三フッ化ホウ素等を触媒として使用することが好ましい。
【0075】
酸解離性の保護基を脱離する場合の溶媒としては、25℃において水を1質量%以上溶解することができる有機溶剤が好ましく、このような有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;1−メトキシ−エタノール、1−エトキシ−エタノール、1−プロポキシ−エタノール、1−イソプロポキシ−エタノール、1−ブトキシ−エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のエーテルアルコール類;1−メトキシ−エチルアセテート、1−エトキシ−エチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、3−メトキシ−1−ブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート等のエーテルアルコールの酢酸エステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;4−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシ−3メチル−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−2−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)等のケトアルコール類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類等が挙げられる。これらの中でも、メタノール、エタノール、プロパノール、メチルエチルケトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、1−メトキシ−2−プロパノールアセテートが好ましい。
【0076】
一般式(1p)で表される化合物は、前記一般式(1a)で表わされる環状シロキサン化合物に、前記一般式(13)で表わされる化合物の代わりに下記一般式(13p)で表わされる化合物、前記一般式(14)で表わされる化合物の代わりに下記一般式(14p)で表わされる化合物をヒドロシリル化反応させて、下記一般式(1bp)で表わされる中間体とし、この一般式(1bp)で表わされる中間体に、前記一般式(1b)で表わされる中間体の場合と同様に一般式(3)〜(5)で表される基を導入すればよい。
【0077】
【化23】

【0078】
【化24】

【0079】
【化25】

【0080】
次に、本発明のポジ型感光性組成物が含有する(B)成分であるエポキシ含有有機基を少なくとも2つ有する化合物について説明する。
本発明に係る(B)成分であるエポキシ含有有機基を少なくとも2つ有する化合物のエポキシ基としては、下記式(15)〜(16)等の脂肪族エポキシ基、下記式(17)〜(19)等の脂環式エポキシ基、下記式(20)〜(21)等の芳香族エポキシ基等が挙げられるが、本発明のポジ型感光性組成物の保存安定性が良好となることから脂肪族エポキシ基が好ましく、式(15)の1,2−エポキシプロピル基(グリシジル基)が更に好ましい。
(B)成分である化合物が有するエポキシ含有有機基は、これらのエポキシ基を含有するものであればよく、例えば、これらのエポキシ基そのものであってもよいし、これらのエポキシ基に、炭化水素基、エーテル基、エステル基等の連結基の1つ以上を組み合わせてなる基でもよい。中でも、(B)成分である化合物は、エポキシ含有有機基としてグリシジルエーテル基を有する化合物であることが好ましい。
【0081】
【化26】

【0082】
好ましい(B)成分であるグリジジルエーテル基を少なくとも2つ有する化合物としては、多価フェノール化合物のグリシジルエーテル、多価アルコール化合物のグリシジルエーテル、グリシジルエーテル基を有するシロキサン化合物等が挙げられ、耐熱性がより良好であることから、グリシジルエーテル基を有するシロキサン化合物が好ましい。グリシジルエーテル基を少なくとも2つ有するシロキサン化合物としては、例えば、下記の一般式(22)で表わされる直線状シロキサン化合物、下記の一般式(23)で表わされる環状シロキサン化合物、下記の一般式(24)で表わされる環状シロキサン化合物、グリシジルエーテル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物等が挙げられ、中でも、一般式(23)で表わされる環状シロキサン化合物及び一般式(24)で表わされる環状シロキサン化合物が好ましく、一般式(24)で表わされる環状シロキサン化合物であることが更に好ましい。
【0083】
【化27】

【0084】
【化28】

【0085】
【化29】

【0086】
上記一般式(22)で表わされる直線状シロキサン化合物について説明する。
一般式(22)において、Gはグリシジルエーテル基を有する基を表わし、R26〜R30は同一でも異なってもよい炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基としては、一般式(1)のR1で例示したアルキル基が挙げられ、耐熱性がより良好であることから、メチル、エチル及びフェニルが好ましく、メチル及びフェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。Y1はグリシジルエーテル基を有する基又はメチル基を表わし、jは0〜1000の数を表わし、kは0〜1000の数を表わす。但し、jが0又は1の場合には、Y1はグリシジルエーテル基を有する基を表わす。
【0087】
一般式(22)で表わされる直線状シロキサン化合物は、下記一般式(22a)で表わされる直線状化合物に、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合とグリシジルエーテル基を有する化合物をヒドロシリル化反応させることにより製造することができる。SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合とグリシジルエーテル基を有する化合物としては、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、5−グリシドキシプルピル−2−ノルボルネン等が挙げられ、工業的な入手の容易さとヒドロシリル化の反応性からアリルグリシジルエーテルが好ましい。ヒドロシリル化反応の条件は、一般式(1b)で表わされる中間体を得る場合の条件と同様でよい。
【0088】
【化30】

【0089】
一般式(22)で表わされる直線状シロキサン化合物の分子中のエポキシ基の割合が、あまりに少ない場合には架橋効果が少なくなり、本発明のポジ型感光性組成物から得られる永久レジストの物性が低下することから、一般式(22)で表わされる直線状シロキサン化合物のエポキシ当量は、1000以下であることが好ましく、700以下であることが更に好ましく、350以下であることが最も好ましい。なお、なお、エポキシ当量とは、1当量のエポキシ基を含むエポキシ化合物の質量(グラム数)をいう。
【0090】
一般式(22)で表わされる直線状シロキサン化合物の分子量は、特に限定されないが、あまりに大きい場合には、アルカリ現像液への溶解性又は分散性が低下しアルカリ現像後の基板表面にレジスト残渣が残留する場合があることから、質量平均分子量が20000以下であることが好ましく、15000以下であることが更に好ましく、10000以下であることが最も好ましい。
【0091】
次に、上記一般式(23)で表わされる環状シロキサン化合物について説明する。
一般式(23)において、R31〜R33は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基としては、R1で例示したアルキル基が挙げられる。R31〜R33は、耐熱性がより良好であることから、メチル、エチル及びフェニルが好ましく、メチル及びフェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。qは2〜6の数を表わし、rはq+rが3〜6となる0〜4の数を表わす。工業的に入手が容易であることから、q+rは4〜6が好ましく、4〜5が更に好ましく、4が最も好ましい。また、rは、0であることが好ましい。
【0092】
一般式(23)で表わされる環状シロキサン化合物は、下記一般式(23a)で表わされる環状化合物に、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合とグリシジルエーテル基を有する化合物とをヒドロシリル化反応させることにより製造することができる。ヒドロシリル化反応の条件は、一般式(1b)で表わされる中間体を得る場合の条件と同様でよい。
【0093】
【化31】

【0094】
一般式(23a)で表わされる環状化合物としては、一般式(1a)で表わされる環状化合物で例示した化合物の他、2,2,4,6−テトラメチルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,8−ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,10−オクタメチルシロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,2,4,6,8−ペンタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0095】
次に、上記一般式(24)で表わされる環状シロキサン化合物について説明する。
一般式(24)において、R34は炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基としては、R1で例示したアルキル基が挙げられる。R34としては、耐熱性がより良好であることから、メチル、エチル及びフェニルが好ましく、メチル及びフェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。R35は分子量1000以下のジビニル化合物又はトリビニル化合物からビニル基を除いた残基を表わし、分子量1000以下のジビニル化合物又はトリビニル化合物としては、一般式(4)で例示した分子量1000以下のジビニル化合物又はトリビニル化合物等が挙げられる。R35で表される基を提供するジビニル化合物又はトリビニル化合物としては、工業的な入手の容易さと硬化物の耐熱性から、前記一般式(9)〜(11)で表わされる化合物が好ましく、1,4−ジビニルベンゼン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、トリアリルイソシアヌレートが更に好ましく、1,4−ジビニルベンゼンが最も好ましい。Gはグリシジルエーテル基を有する基を表わし、sは2〜5の数を表わす。sとしては、工業的な原料の入手が容易であることから2〜4の数が好ましく、3が更に好ましい。tは1又は2の数を表わし、R35が分子量1000以下のジビニル化合物からビニル基を除いた残基の場合にはtは1であり、分子量1000以下のトリビニル化合物からビニル基を除いた残基の場合にはtは2である。
【0096】
一般式(24)で表わされる環状シロキサン化合物は、下記一般式(24a)で表わされる環状化合物に、分子量1000以下のジビニル化合物又はトリビニル化合物をヒドロシリル化反応させることにより下記一般式(24b)で表わされる中間体とし、一般式(24b)で表わされる中間体のSiH基に、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合とグリシジルエーテル基を有する化合物とをヒドロシリル化反応させることにより製造することができる。ヒドロシリル化反応の条件は、一般式(1b)で表わされる中間体を得る場合の条件と同様でよい。
【0097】
【化32】

【0098】
一般式(24a)で表わされる環状化合物としては、一般式(1a)で表わされる環状化合物で例示した化合物等が挙げられ、分子量1000以下のジビニル化合物又はトリビニル化合物としては、一般式(4)のR8で例示した化合物等が挙げられる。
【0099】
次に、上記のグリシジルエーテル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物について説明する。
グリシジルエーテル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物は、グリシジルエーテル基を有するアルコキシシランを、公知の方法、例えば、(A)成分で説明した加水分解・縮合反応で説明した方法等により加水分解・縮合反応して得られる化合物である。グリシジルエーテル基を有するアルコキシシランとしては、例えば、グリシジルトリメトキシシラン、グリシジルトリエトキシシラン等のグリシジルアルコキシシラン化合物;2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン等のグリシドキシエチルアルコキシシラン化合物;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、ビス(3−グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン、ビス(3−グリシドキシプロピル)ジエトキシシラン等の3−グリシドキシプロピルアルコキシシラン化合物;2−(4−グリシドキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−グリシドキシフェニル)エチルトリエトキシシラン等の2−(4−グリシドキシフェニル)エチルアルコキシシラン化合物;5−(グリシドキシメチル)ノルボニルトリメトキシシラン、6−(グリシドキシメチル)ノルボニルトリメトキシシラン等のグリシドキシメチルノルボニルアルコキシシラン化合物等が挙げられ、加水分解・縮合反応の反応性と工業的な入手の容易さから、3−グリシドキシプロピルアルコキシシラン化合物が好ましい。3−グリシドキシプロピルアルコキシシラン化合物の中でも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが更に好ましく、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが更に一層好ましく、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが最も好ましい。
【0100】
グリシジルエーテル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物を製造する場合には、グリシジルエーテル基を有するアルコキシシランに加えて、グリシジルエーテル基を有しない、他のアルコキシシラン化合物を併用しても良い。
【0101】
グリシジルエーテル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物の分子中のエポキシ基の割合が、あまりに少ない場合には架橋効果が少なく本発明のポジ型感光性組成物から得られる永久レジストの物性が低下する場合があることから、エポキシ当量が1000以下であることが好ましく、700以下であることが更に好ましく、350以下であることが最も好ましい。
【0102】
グリシジルエーテル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物の分子量は、特に限定されないが、あまりに大きい場合には、アルカリ現像液への溶解性又は分散性が低下して、アルカリ現像後の基板表面にレジスト残渣が残留する場合があることから、質量平均分子量が20000以下であることが好ましく、15000以下であることが更に好ましく、10000以下であることが最も好ましい。
【0103】
グリシジルエーテル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物は、シラノール基を有していることが好ましい。グリシジルエーテル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物中のシラノール基の含量は、1〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることが更に好ましい。
【0104】
トリアルコキシシラン化合物を反応に使用した、グリシジルエーテル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物は、Si−O−Si結合による橋かけ構造を有する場合があり、その橋かけ構造により、例えば、はしご状(ラダー状)、かご状、環状等の構造になる場合もある。
【0105】
グリシジルエーテル基を有するアルコキシシランの加水分解・縮合反応物は、一般式(1)で表わされる環状シロキサン化合物と一般式(2)で表わされるアルコキシシラン化合物との加水分解・縮合反応と同様の反応条件により製造することができる。
【0106】
本発明のポジ型感光性組成物において、(B)成分であるエポキシ含有有機基を少なくとも2つ有する化合物の含量は、(A)成分100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、2〜40質量部であることが更に好ましく、5〜30質量部であることが最も好ましい。
【0107】
次に、本発明の(C)成分であるジアゾナフトキノン類について説明する。
本発明に使用することのできるジアゾナフトキノン類としては、感光性材料に使用するできることが知られているジアゾナフトキノン類化合物であれば、特に限定されないが、中でも、フェノール性水酸基を有する化合物の水素原子が下記式(25)で置換された化合物(4−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル)又は下記式(26)で置換された化合物(5−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル)が好ましい。
【0108】
【化33】

【0109】
このようなジアゾナフトキノン類の好ましい具体例としては、例えば、以下の式(27)〜(32)で表わされる化合物及びそれらの位置異性体等を例示することができる。
【0110】
【化34】

【0111】
なお、式(25)で表される基はi線(波長365nm)領域に吸収を持つため、i線露光に適し、式(26)で表される基は広範囲の波長領域に吸収が存在するため、広範囲の波長での露光に適していることから、露光する波長によって式(25)で表される基、式(26)で表される基の何れかを選択することが好ましい。
【0112】
(C)成分であるジアゾナフトキノン類の含有量は、(A)成分のシラノール基含有ポリシロキサン化合物100質量部に対して、0.1〜20質量部、好ましくは2〜10質量部であることが、本発明のポジ型感光性組成物から得られる永久レジストの現像性、微細加工性の点から好ましい。
【0113】
次に、本発明の(D)成分である有機溶剤について説明する。
本発明に使用できる(D)有機溶剤は、上記(A)シラノール基含有ポリシロキサン化合物、(B)エポキシ含有有機基を少なくとも2つ有する化合物、及び(C)ジアゾナフトキノン類を溶解又は分散することのできる有機溶剤であれば、特に限定されないが、25℃において水を1質量%以上溶解することができる有機溶剤が好ましく、このような有機溶剤としては、保護基の脱離で挙げた有機溶剤の他に、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート等が挙げられる。
【0114】
(A)成分が、カルボキシル基やフェノール性水酸基を保護基でマスクされた化合物から得られた化合物である場合には、保護基の脱離反応で使用した有機溶剤を、そのまま、(D)成分の有機溶剤として利用してもよい。
【0115】
(D)成分である有機溶剤の含有量は、(A)シラノール基含有ポリシロキサン化合物100質量部に対して、10〜10000質量部、より好ましくは100〜1000質量部であることが、本発明のポジ型感光性組成物を用いて永久レジストを形成する際の形成性や得られた永久レジストの物性等の点から好ましい。
【0116】
本発明のポジ型感光性組成物は、(A)シラノール基含有ポリシロキサン化合物、(B)エポキシ含有有機基を少なくとも2つ有する化合物、(C)ジアゾナフトキノン類及び(D)有機溶剤を溶解又は分散させたものであるが、必要に応じて、例えば、孔径0.2μm程度のフィルターで濾過した後、使用に供することもできる。
【0117】
本発明のポジ型感光性組成物は、(A)〜(D)成分ほか、必要に応じて、可塑剤、チクソ性付与剤、光酸発生剤、熱酸発生剤、分散剤、消泡剤、顔料、染料等の任意成分を含有することができる。本発明の効果を損ねない観点から、任意成分の合計含有量は、(A)シラノール基含有ポリシロキサン化合物100質量部に対して、30質量部以下とすることが好ましい。
【0118】
本発明のポジ型感光性組成物は、従来公知のポジ型感光性組成物と同様に硬化させることができ、例えば後述の(1)〜(6)の工程を経て硬化させれば、耐熱性及び高温熱履歴後の耐薬品性等に優れた硬化物となる。本発明のポジ型感光性組成物を硬化させてなる硬化物は、永久レジストに好適なものである。以下に、本発明のポジ型感光性組成物を使用して永久レジストを製造する好ましい方法について説明する。
【0119】
対象材料(基材)上にポジ型感光性組成物の層を形成する場合には、本発明のポジ型感光性組成物を対象材料に直接塗布する方法と、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の支持体フィルムに塗布した後、溶媒を蒸発させてポジ型感光性組成物の層を形成させてドライフィルムレジスト(DFR)とし、そのDFRを対象材料に貼り合わせる方法とがある。
まず、直接塗布する方法について説明する。この方法は、以下の(1)塗膜形成工程、(2)プリベーク工程、(3)露光工程、(4)現像工程、(5)ブリーチング露光工程、(6)ポストベーク工程を含む。
【0120】
(1)塗膜形成工程
本工程においては、本発明のポジ型感光性組成物を対象材料(基材)に塗布して塗膜を形成する。本発明のポジ型感光性組成物を適用し、塗膜を形成する対象材料は、ポジ型感光性組成物中の有機溶剤等に対する耐薬品性、(4)現像工程のアルカリ性溶液による現像処理や(6)ポストベーク工程における加熱処理に対する耐性等を有する材料であれば特に限定されるものではなく、ガラス、金属、半導体等を対象材料とすることができる。特に、絶縁層としての永久レジストを必要とする液晶ディスプレーのTFT表面等を好ましいものとして例示することができる。塗布の方法は、特に限定されず、例えばスピンコート法、ディップコート法、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、スリットコート法等の各種の方法を利用することができる。
【0121】
(2)プリベーク工程
上記(1)の工程の後、対象材料に塗布されたポジ型感光性組成物層から(D)有機溶剤を除去するためにプリベークを行なう。プリベークされたポジ型感光性組成物層は、アルカリ性溶液に対し難溶性であり、次の露光工程で光を照射することにより光が照射された部分(以下、露光部分という場合がある)がアルカリ可溶性となる。プリベークの温度は、使用した有機溶剤の種類によっても異なるが、温度が低すぎると、有機溶剤の残留分が多くなり、露光感度や解像度の低下の原因となる場合があり、また温度が高すぎると、プリベークにより塗膜の全体の硬化が進行し、光が照射された部分のアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、結果として露光感度や解像度が低下する場合があることから、60〜140℃が好ましく、70〜120℃が更に好ましい。プリベークの時間は、使用した有機溶剤の種類とプリベークの温度により異なるが、30秒〜10分が好ましく、1〜5分が更に好ましい。
【0122】
プリベークは、本発明のポジ型感光性組成物を対象材料に塗布した後、そのまま行ってもよいが、永久レジストの高熱履歴後の物性、耐薬品性等がより向上することから、プリベークの前に、室温〜60℃未満の温度で、常圧又は減圧下に、ポジ型感光性組成物層中の有機溶剤の濃度が5質量%以下になるよう有機溶剤を揮発させた後に、プリベークを行うことが好ましい。プリベーク後のポジ型感光性組成物層の厚さは、永久レジストが使用される用途により異なり、特に限定されないが、好ましくは0.1μm〜100μm、さらに好ましくは0.3μm〜10μmである。
【0123】
(3)露光工程
露光工程は、プリベークされたポジ型感光性組成物層に対して、パターン化された光を照射し、露光部分のアルカリ溶解性を向上させる工程である。プリベークされたポジ型感光性組成物層は、アルカリ性溶液に対し難溶性であるが、光照射により露光部分のジアゾナフトキノン類が分解されて、インデンカルボン酸に変化して、アルカリ性溶液に溶解・分散が可能になる。照射光は、特に限定されず、プリベークされたポジ型感光性組成物層の光照射部のアルカリ溶解性を向上させることのできるエネルギー量の光であればよく、例えば10〜1000mJ/cm2、好ましくは40〜300mJ/cm2がよい。また照射光の波長は可視光でも紫外光でも良く特に限定されないが、(C)ジアゾナフトキノン類として、4−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル類を使用した場合にはi線(365nm)を主体とする狭い波長の光を、5−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル類を使用した場合には、i線(365nm)、h線(405nm)及びg線(436nm)を含むブロードな波長の光を、高圧水銀灯、超高圧水銀灯等を用いて照射すればよい。上記照射光のパターン化の方法は、特に限定されず、従来知られている方法、例えば、フォトマスク等を介した光照射方法であってもよく、レーザー光用いた選択的な光照射方法でもよい。
【0124】
(4)現像工程
現像工程は、露光工程で、光が照射されてアルカリ溶解性が向上した部分を現像液を用いて除去することにより、所定のパターンを形成する工程である。
現像方法としては、例えば、液盛り法、浸漬法、シャワー法、スプレー法等のいずれの方法も利用することができる。現像時間は、(A)シラノール基含有ポリシロキサン化合物や(B)エポキシ含有有機基を少なくとも2つ有する化合物の種類や分子量、現像液の温度等によって異なるが、通常30〜180秒間である。現像工程で用いられる現像液は、露光部分を液中に溶解又は分散して除去できるものであれば特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア等の無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミン等の1級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の2級アミン類;トリメチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン類;ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の3級アルカノールアミン類;ピロール、ピペリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、1、8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1、5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等の環状3級アミン類;ピリジン、コリジン、ルチジン、キノリン等の芳香族3級アミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩の水溶液等のアルカリ類の水溶液を用いることができ、その濃度は、従来のポジ型感光性組成物層の除去に用いられている現像液のアルカリ濃度でよい。これらアルカリ類の水溶液は、更に、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒及び/又は界面活性剤を適当量含有してもよい。露光部分を現像液で除去した後、流水又はシャワーにより水でリンスすることが好ましく、必要により50〜120℃の範囲で、脱水乾燥させてもよい。
【0125】
(5)ブリーチング露光工程
ブリーチング露光工程は、アルカリ溶液処理にて残存したポジ型感光性組成物層(以下、レジスト層という場合がある)の全体に光を照射して可視光透過性を向上させる工程である。レジスト層は、(C)ジアゾナフトキノン類を含有していることから、淡黄色乃至淡褐色に着色している。レジスト層に光を照射することにより、残存する未反応の(C)ジアゾナフトキノン類が光分解して、可視光領域で吸収のないインデンカルボン酸に変化して可視光透過性が向上し、液晶表示装置、有機EL表示装置等に用いられるアクティブマトリクス基板用の永久レジストとして用いる場合に都合が良い。ブリーチング露光工程における照射光は、特に限定されず、例えば10〜1000mJ/cm2、好ましくは40〜600mJ/cm2の光を照射すればよい。また照射光の波長は、可視光でも紫外光でも良く、特に限定されないが、(2)露光工程と同様に、使用した(C)ジアゾナフトキノン類に応じて、照射光の波長を選択することが好ましい。
【0126】
(6)ポストベーク工程
ブリーチング露光されたレジスト層は可視光透過性が向上するが、アルカリ溶解性も向上する。ポストベーク工程は、このようなブリーチング露光されたレジスト層に対して、120℃以上の熱処理を行い、レジスト層中のシリコーン樹脂を熱架橋させ、永久レジストとして要求される耐熱性、耐薬品性、耐経時変化性を付与するものである。本発明では、ポジ型感光性組成物の(B)成分であるエポキシ基を少なくとも2つ有する化合物が架橋剤として機能し、これまでにない高熱履歴後の耐薬品性が得られるものと考えられる。ポストベークは、好ましくは、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行われる。また、ポストベークは、好ましくは120〜400℃、さらに好ましくは120〜350℃、最も好ましくは200〜350℃での温度で、15分〜2時間行うことが好ましい。
【0127】
本発明のポジ型感光性組成物は、半導体基板等の対象材料に以上のようにして直接塗布して使用してもよいが、支持体フィルムに塗布して塗膜を形成し、ドライフィルムレジストとして使用してもよい。支持体フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン等が使用できるが、支持体フィルムとしての熱的特性及び機械的特性に優れることから、PETフィルムが好ましい。支持体フィルムの膜厚は、通常1μm〜5mmであり、好ましくは10μm〜100μmである。支持体フィルム上に形成される塗膜の厚さは用途により異なり、特に限定されないが、0.1μm〜100μm、好ましくは0.3μm〜10μmが目安となる。塗膜形成後、上記(2)プリベーク工程と同様にプリベークして塗膜中の溶剤を除去し、塗膜表面に保護フィルムをラミネートしてドライフィルムレジストが作成される。本発明のポジ型感光性組成物から得られたドライフィルムレジストを使用する場合は、ドライフィルムレジストから保護フィルムを剥がした後、対象材料に熱圧着して、対象物に貼り付け、必要に応じて支持体フィルムを剥がした後、上記の(3)〜(6)の工程と同様にして、露光、アルカリ現像、ブリーチング露光、ポストベークを行えばよい。
【0128】
本発明のポジ型感光性組成物から得られる永久レジストは、透明性、絶縁性、耐熱性、耐薬品性に優れるだけでなく、300〜350℃程度の高温の熱履歴(高熱履歴)後の透明性、絶縁性、耐薬品性にも優れることから、液晶表示装置、有機EL表示装置等に用いられるアクティブマトリクス基板用の絶縁膜又は平坦化膜(特に層間絶縁膜)、中でも、多結晶シリコン薄膜を活性層とするTFTを有するアクティブマトリクス基板用の層間絶縁膜として極めて有用である。
【0129】
更に、本発明のポジ型感光性組成物から得られる永久レジストは、半導体素子の層間絶縁膜にも使用することができる。また、半導体素子のウエハコート材料(表面保護膜、バンプ保護膜、MCM(multi-chip module)層間保護膜、ジャンクションコート)、パッケージ材(封止材、ダイボンディング材)にも使用することができる。
【0130】
本発明のポジ型感光性組成物から得られる永久レジストは、半導体素子、多層配線板等の絶縁膜としても有用である。半導体素子としては、ダイオード、トランジスタ、化合物半導体、サーミスタ、バリスタ、サイリスタ等の個別半導体素子、DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)、SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリー)、EPROM(イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、マスクROM(マスク・リード・オンリー・メモリー)、EEPROM(エレクトリカル・イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、フラッシュメモリー等の記憶素子、マイクロプロセッサー、DSP、ASIC等の理論回路素子、MMIC(モノリシック・マイクロウェーブ集積回路)に代表される化合物半導体等の集積回路素子、混成集積回路(ハイブリッドIC)、発光ダイオード、電荷結合素子等の光電変換素子等が挙げられる。また、多層配線板としては、MCM等の高密度配線板等が挙げられる。
【実施例】
【0131】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、シラノール基の含量は、試料をピリジン溶液中でトリメチルクロロシランと反応させてシラノール基をトリメチルシリルエーテル基に変えた後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド((CH34NOH)水溶液で処理してC−O−Si結合を加水分解し、反応後の質量増加率から逆算して求めた。
【0132】
製造例1:中間体a1
温度計、攪拌装置を備えたガラス製反応容器に、溶剤としてトルエン300g、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン240g(1モル)、アクリル酸−t−ブチルエステル64.1g(0.5モル)、4−t−ブトキシスチレン352g(2モル)及び触媒として白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)0.05gを加えて、攪拌しながら60℃で10時間反応させて、溶媒を留去し中間体a1を得た。中間体a1は、一般式(1bp)に相当する化合物である(R1=メチル、R2=R3=エチレン、Pg=t−ブチル、m=0.5、n=2、p=1.5、m:n:p=1:4:3)。
【0133】
製造例2:中間体a2
製造例1において、アクリル酸−t−ブチルエステル64.1g(0.5モル)の代わりに、4−ビニル安息香酸−t−ブチルエステル102g(0.5モル)を使用した以外は製造例1と同様の操作を行い中間体a2を得た。中間体a2は、一般式(1bp)に相当する化合物である(R1=メチル、R2=2−フェニルエタン−1,4’−ジイル、R3=エチレン、Pg=t−ブチル、m=0.5、n=2、p=1.5、m:n:p=1:4:3)。
【0134】
製造例3:中間体a3
製造例1において、アクリル酸−t−ブチルエステルの使用量を64.1g(0.5モル)から38.4g(0.3モル)、4−t−ブトキシスチレンの使用量を352g(2モル)から387g(2.2モル)に変更した以外は製造例1と同様の操作を行い中間体a3を得た。中間体a3は、一般式(1bp)に相当する化合物である(R1=メチル、R2=R3=エチレン、Pg=t−ブチル、m=0.3、n=2.2、p=1.5、m:n:p=1:7.3:5)。
【0135】
製造例4:中間体a’1
製造例1において、アクリル酸−t−ブチルエステル64.1g(0.5モル)の代わりに4−ビニル安息香酸−t−ブチルエステル204g(1モル)を使用し、4−t−ブトキシスチレンの使用量を352g(2モル)から264g(1.5モル)に変更した以外は製造例1と同様の操作を行い、中間体a’1を得た。なお、中間体a’1は、R1=メチル、R2=2−フェニルエタン−1,4’−ジイル、R3=エチレン、Pg=t−ブチル、m=1、n=1.5、p=1.5であるが、m:n:p=1:1.5:1.5である点で、一般式(1bp)を満たさないものである。
【0136】
製造例5:中間体a’2
製造例1において、アクリル酸−t−ブチルエステルの使用量を64.1g(0.5モル)から19.2g(0.15モル)に、4−t−ブトキシスチレンの使用量を352g(2モル)から414g(2.35モル)に変更した以外は製造例1と同様の操作を行い、中間体a’2を得た。なお、中間体a’2は、R1=メチル、R2=R3=エチレン、Pg=t−ブチル、m=0.15、n=2.35、p=1.5であるが、m:n:p=1:15.7:10である点で、一般式(1bp)を満たさないものである。
【0137】
製造例6:ポリシロキサン化合物A1
温度計、攪拌装置を備えたガラス製反応容器に、溶剤としてトルエン200g、中間体a1の65.6g(0.1モル)、トリメトキシビニルシラン22.1g(0.15モル)、及び触媒として白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)0.001gを加えて、攪拌しながら60℃で10時間反応させて、一般式(3)で表される基を導入した。
次いで、一般式(2)で表される化合物としてフェニルトリメトキシシラン45.6g(0.23モル)を添加し、5〜10℃になるよう氷冷撹拌しながら、5%シュウ酸水溶液50gを30分かけて滴下し、更に10℃で15時間撹拌した。50℃、減圧下で還流脱水・脱アルコール処理し、50℃減圧下で溶媒のトルエンを1−メトキシ−2−プロパノールアセテート(以下PGMEAという)へと溶媒交換を行い、25%のPGMEA溶液とした。
t−ブチル基を脱離するために、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体3gを加えて、80℃で3時間攪拌の後、酸性物質の吸着剤(協和化学工業製、商品名:キョーワード500SH)を10g加えた後に80℃で1時間攪拌したスラリー溶液について、濾過により固形物を除去した。この後、80℃で溶剤の一部を留去して濃度を調整し、(A)成分であるポリシロキサン化合物A1の30%PGMEA溶液を得た。ポリシロキサン化合物A1のGPC分析による質量平均分子量は6400、シラノール基含量は5.4質量%であった。
【0138】
製造例7:ポリシロキサン化合物A2
製造例6において、中間体a1の65.6g(0.1モル)の代わりに、中間体a2の69.4g(0.1モル)を使用した以外は製造例6と同様の操作を行い、(A)成分であるポリシロキサン化合物A2の30%PGMEA溶液を得た。ポリシロキサン化合物A2のGPC分析による質量平均分子量は6500、シラノール基含量は5.4質量%であった。
【0139】
製造例8:ポリシロキサン化合物A3
製造例6において、中間体a1の65.6g(0.1モル)の代わりに、中間体a3の65.4g(0.1モル)を使用した以外は製造例6と同様の操作を行い、(A)成分であるポリシロキサン化合物A3の30%PGMEA溶液を得た。ポリシロキサン化合物A3のGPC分析による質量平均分子量は6300、シラノール基含量は5.4質量%であった。
【0140】
製造例9:ポリシロキサン化合物A4
温度計、攪拌装置を備えたガラス製反応容器に、溶剤としてトルエン200g、中間体a1の65.6g(0.1モル)、一般式(4a)で表されるジビニル化合物としてジビニルベンゼン39g(0.3モル)、及び触媒として白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)0.001gを加えて、攪拌しながら60℃で10時間反応させて、一般式(1c)で表される中間体を得た。溶媒を留去して、溶媒とともに未反応のジビニルベンゼンを60℃で減圧除去した後、改めて溶剤としてトルエン200g、及び一般式(4b)で表される化合物としてトリメトキシシラン19.5g(0.16モル)を添加し、攪拌しながら60℃で10時間反応させて、一般式(4)で表される基を導入した。
次いで、一般式(2)で表される化合物としてフェニルトリメトキシシラン45.5g(0.23モル)を添加し、5〜10℃になるよう氷冷撹拌しながら、5%シュウ酸水溶液50gを30分かけて滴下し、更に10℃で15時間撹拌した。50℃、減圧下で還流脱水・脱アルコール処理し、50℃減圧下で溶媒のトルエンを1−メトキシ−2−プロパノールアセテート(以下PGMEAという)へと溶媒交換を行い、25%のPGMEA溶液とした。
t−ブチル基を脱離するために、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体3gを加えて、80℃で3時間攪拌の後、酸性物質の吸着剤(協和化学工業製、商品名:キョーワード500SH)を10g加えた後に80℃で1時間攪拌したスラリー溶液について、濾過により固形物を除去した。この後、80℃で溶剤の一部を留去して濃度を調整し、(A)成分であるポリシロキサン化合物A4の30%PGMEA溶液を得た。ポリシロキサン化合物A4のGPC分析による質量平均分子量は8300、シラノール基含量は6.2質量%であった。
【0141】
製造例10:ポリシロキサン化合物A5
温度計、攪拌装置を備えたガラス製反応容器に、溶剤としてジオキサン200g、中間体a1の65.6g(0.1モル)、ジフェニルシランジオール43.2g(0.2モル)、触媒としてオクチル酸スズ0.025gを加えて溶解した後、60℃で10時間反応させて、一般式(5)で表される基を導入した。
一般式(2)で表される化合物としてフェニルトリメトキシシラン45.5g(0.23モル)を添加し、5〜10℃になるよう氷冷撹拌しながら、5%シュウ酸水溶液50gを30分かけて滴下し、更に10℃で15時間撹拌した。50℃、減圧下で還流脱水・脱アルコール処理し、50℃減圧下で溶媒のジオキサンを1−メトキシ−2−プロパノールアセテート(以下PGMEAという)へと溶媒交換を行い、25%のPGMEA溶液とした。
t−ブチル基を脱離するために、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体3gを加えて、80℃で3時間攪拌の後、酸性物質の吸着剤(協和化学工業製、商品名:キョーワード500SH)を10g加えた後に80℃で1時間攪拌したスラリー溶液について、濾過により固形物を除去した。この後、80℃で溶剤の一部を留去して濃度を調整し、(A)成分であるポリシロキサン化合物A5の30%PGMEA溶液を得た。ポリシロキサン化合物A5のGPC分析による質量平均分子量は5900、シラノール基含量は5.1質量%であった。
【0142】
製造例11:ポリシロキサン化合物A’1
製造例6において、中間体a1の65.6g(0.1モル)の代わりに、中間体a’1の70.8g(0.1モル)を使用した以外は製造例6と同様の操作を行い比較のポリシロキサン化合物A’1の30%PGMEA溶液を得た。ポリシロキサン化合物A’1のGPC分析による質量平均分子量は6500、シラノール基含量は5.4質量%であった。
【0143】
製造例12:ポリシロキサン化合物A’2
製造例6において、中間体a1の65.6g(0.1モル)の代わりに、中間体a’2の67.3g(0.1モル)を使用した以外は製造例6と同様の操作を行い比較のポリシロキサン化合物A’2の30%PGMEA溶液を得た。ポリシロキサン化合物A’2のGPC分析による質量平均分子量は6400、シラノール基含量は5.4質量%であった。
【0144】
製造例13:エポキシ化合物B1(一般式(23)で表される化合物)
温度計、攪拌装置を備えたガラス製反応容器に、溶剤としてトルエン200g、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン120g(0.5モル)、アリルグリシジルエーテル228g(2モル)、及び白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)9mgを加えて、攪拌しながら50〜60℃で15時間反応させた後、溶媒を60℃で減圧留去させ、(B)成分であるエポキシ化合物B1を得た。エポキシ化合物B1のエポキシ当量の分析値は174であった。
【0145】
製造例14:エポキシ化合物B2(一般式(24)で表される化合物)
温度計、攪拌装置を備えたガラス製反応容器に、溶剤としてトルエン250g、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン144g(0.6モル)、ジビニルベンゼン52g(0.4モル)、アリルグリシジルエーテル194g(1.7モル)、及び白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)9mgを加えて、攪拌しながら50〜60℃で15時間反応させた後、溶媒を60℃で減圧留去させ、(B)成分であるエポキシ化合物B2を得た。エポキシ化合物B2の質量平均分子量は1500、エポキシ当量の分析値は244であった。
【0146】
製造例15:エポキシ化合物B3
温度計、攪拌装置を備えたガラス製反応容器に、トルエン200g、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン134g(1モル)、ジビニルベンゼン52g(0.4モル)、アリルグリシジルエーテル194g(1.7モル)、及び白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)9mgを加えて、攪拌しながら50〜60℃で15時間反応させた。この反応液から溶媒を60℃で減圧留去させ、(B)成分であるエポキシシラン化合物B3を得た。エポキシ化合物B3の質量平均分子量は1500、エポキシ当量の分析値は244であった。
【0147】
実施例1〜10及び比較例1〜3:
以上の製造例で得られた化合物を用い、表1に示す割合で配合後、ろ過して、実施例1〜10及び比較例1〜4のポジ型感光性組成物をそれぞれ調製した。なお、溶剤は、表中の値になるように追加した。
【0148】
表1に記載の(C)成分及び(D)成分は、それぞれ以下の通りである。
(C)ジアゾナフトキノン類(DNQ)
上記式(27)において全てのQが式(26)で表わされる基である化合物(ダイトーケミックス社製、商品名:PA−6)
(D)溶剤
PGMEA:1−メトキシ−2−プロパノールアセテート
【0149】
【表1】

【0150】
実施例1〜10及び比較例1〜4のポジ型感光性組成物を用いて下記試験片の調製法の手順で試験片を調製した。
〔試験片の調製法〕
ポジ型感光性組成物を、ガラス基板上に、スピンコート法により塗膜の膜厚が3〜4μmになるよう塗布した後、溶剤を揮発させ、100℃で3分間プリベークして、試験片として用いた。
【0151】
得られた試験片を用い、それぞれ以下の方法により、最適現像時間・現像マージンの評価、高熱履歴後の耐アルカリ性評価、レジスト残渣の評価、及び膜減り率の評価を行なった。なお、以下の各評価においては、パターニング露光はいずれも、試験片を90℃で2分間加熱処理した後、ガラス基板上部に線幅5μmが描かれたフォトマスクを設置し、超高圧水銀灯により90mJ/cm2(波長365nm露光換算)の紫外線を照射することにより行った。
【0152】
〔最適現像時間・現像マージンの評価〕
現像時間を30秒から、5秒おきに変えて、最適現像時間及び現像マージンの評価を以下の手順で評価した。即ち、各ポジ型感光性組成物について、各15枚の試験片を準備し、パターニング露光した後、これらの試験片を液温25℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に浸漬し、浸漬を開始して30秒後から、5秒おきに1枚ずつ取り出した。取り出した試験片は、直ちに超純水により1分間流水洗浄を行い、風乾した。風乾した試験片を観察し、ライン線幅が5μmになるのに必要な最短の現像時間を最適現像時間とし、最適現像時間から5μmのライン・パターンが剥がれるまでの時間を現像マージンとした。結果を表2に示す。
【0153】
〔高熱履歴後の耐アルカリ性評価〕
ポジ型感光性組成物の試験片について、パターニング露光した後、液温25℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いてシャワー現像法(シャワー圧0.05MPa)により現像した。なお、現像時間は先の評価で求めた各ポジ型感光性組成物の最適現像時間とした。現像後、直ちに超純水により1分間流水洗浄を行い、風乾した。風乾した試験片に対し、超高圧水銀灯を用いて200mJ/cm2(波長365nm露光換算)の条件でブリーチング露光を行った。ブリーチング露光後、大気雰囲気下230℃で60分間の加熱によりポストベークを行い永久レジスト膜を形成し、更に、窒素雰囲気下350℃で30分間の加熱処理を行った。350℃の加熱処理を行なった試験片について、波長400nmの光の透過率の測定、及び触針式表面形状測定器を用いてレジストの膜厚の測定を行った後、40℃のアルカリ溶液(モノエタノールアミン:N−メチル−2−ピロリドン:ブチルジグリコール=10:30:60質量比)に30分浸漬した。浸漬後の各試験片について、波長400nmの光の透過率及びレジストの膜厚を測定し、アルカリ溶液に浸漬する前後の光透過率の変化率と膜厚の変化率から、下記の評価基準にて高熱履歴後の耐アルカリ性を評価した。結果を表2に示す。
【0154】
(評価基準)
○:光透過率の変化率が3%未満及び膜厚の変化率が10%未満であり、高熱履歴後でも耐アルカリ性に優れる。
△:光透過率の変化率が5%未満及び膜厚の変化率が20%未満であるが、光透過率の変化率が3%未満及び膜厚の変化率が10%未満ではなく、高熱履歴後の耐アルカリ性にやや劣る。
×:光透過率の変化率が5%以上又は膜厚の変化率が10%以上であり、高熱履歴後の耐アルカリ性に劣る。
【0155】
〔レジスト残渣の評価〕
各ポジ型感光性組成物について、各3枚の試験片を用い、パターニング露光した後、液温25℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いてシャワー現像法(シャワー圧0.05MPa)により現像した。なお、現像時間は先の評価で求めた各ポジ型感光性組成物の最適現像時間とした。
現像後、直ちに超純水により1分間流水洗浄を行い、風乾した。風乾した試験片に、ブリーチング露光として、超高圧水銀灯により200mJ/cm2(波長365nm露光換算)の光を照射した後、大気雰囲気下230℃で60分間のポストベークを行い、永久レジスト膜を形成させた。各試験片を切断し、走査型電子顕微鏡用いて切断面を観察し、現像によりガラス基板が露出した部分におけるレジスト残渣の有無を調べ、下記の評価基準にてレジスト残渣を評価した。結果を表2に示す
(評価基準)
○:3枚の試験片すべてにレジスト残渣が見られない。
×:3枚の試験片のうち、1〜3枚にレジスト残渣が見られる。
【0156】
〔膜減り率の評価〕
各ポジ型感光性組成物について、各3枚の試験片について、パターニング露光及び現像をすることなく、レジスト残渣の評価と同条件で、ブリーチング露光、ポストベークを行い、永久レジスト層を形成させた。各試験片を切断し、走査型電子顕微鏡用いて永久レジスト層の厚さを測定した。また、レジスト残渣の評価で使用した試験片についても永久レジスト膜の厚さを測定し、以下の式により膜減り率(%)を求めた。なお、永久レジスト層の厚さは各3枚の試験片の平均値を用いた。結果を表2に示す
膜減り率(%)=100×TD/T0
D:露光及び現像を行った試験片の永久レジスト層の厚さ
0:露光及び現像を行わなかった試験片の永久レジスト層の厚さ
【0157】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として、下記一般式(1)で表わされる環状シロキサン化合物と下記一般式(2)で表わされるアルコキシシラン化合物とを加水分解・縮合反応させて得られる構造からなるシラノール基含有ポリシロキサン化合物、
(B)成分として、エポキシ含有有機基を少なくとも2つ有する化合物、
(C)成分として、ジアゾナフトキノン類、及び
(D)成分として、有機溶剤を含有することを特徴とするポジ型感光性組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【請求項2】
上記(B)成分としてのエポキシ含有有機基を少なくとも2つ有する化合物のエポキシ含有有機基が、グリシジル基を含有する基である請求項1記載のポジ型感光性組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポジ型感光性組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のポジ型感光性組成物を対象材料に塗布し、プリベークした後、露光し、アルカリ現像し、次いで、ブリーチング露光した後、120〜400℃の温度でポストベークすることを特徴とする永久レジストの製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載に記載のポジ型感光性組成物を用いて得られた永久レジストを絶縁層又は平坦化膜とするアクティブマトリクス基板を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載に記載のポジ型感光性組成物を用いて得られた永久レジストを絶縁層又は平坦化膜とするアクティブマトリクス基板を有することを特徴とする有機EL表示装置。

【公開番号】特開2012−237854(P2012−237854A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106297(P2011−106297)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】