説明

ポリシロキサン系トレンチ埋め込み用反応物

【課題】基体に形成されたトレンチ内に酸化シリコンを埋め込むために使用するのに好適な溶液のポットライフが長く、トレンチへの埋め込み性が高く、HF耐性、クラック耐性を有するトレンチ埋め込み用反応物を提供する。
【解決手段】トレンチ埋め込み用縮合反応物を、該縮合反応物が少なくともポリシロキサン化合物とシリカ粒子との縮合反応物を含み、該ポリシロキサン化合物がHSiO3/2基、MeHSiO基、及びHSiO基から選ばれる基の少なくとも一種を40mol%以上有し、該ポリシロキサンの重量平均分子量が1000以上200000以下であり、該シリカ粒子の平均一次粒径が1nm以上100nm以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子に形成されたトレンチ内の絶縁保護膜用トレンチ埋め込み用反応物及びその含有溶液の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
D R A M ( D y n a m i c R a n d o m A c c e s s M e m o r y ) に代表される電子デバイスの構成要素であるトランジスタなどの回路素子を電気的に分離するための技術のひとつとして、シャロートレンチ分離技術(STI技術)が開発されている。STI技術とは、基板中、回路素子の間隙にあたる箇所にトレンチを形成し、トレンチ内に絶縁材料を埋め込むことにより、回路素子間の電気的分離を行う技術である。
デバイスの高集積化が進行するにつれ、STI技術におけるトレンチ幅は狭くなり、そのためトレンチのアスペクト比( トレンチの開口幅を、トレンチの深さで除した値)も大きくなる傾向にある。
【0003】
このようなトレンチ埋め込みに使われる材料としては、高い電気絶縁性が求められるためシリコン酸化物が広く好適に用いられている。
トレンチ内にシリコン酸化物を埋め込むための手段としては、従来、高密度プラズマCVD法に代表されるスパッタ法によりトレンチを有するシリコン基材上にシリコン酸化物膜を形成している。しかしながら、近年半導体素子の微細化に伴い、トレンチ幅が狭くなり、アスペクト比が大きくなる傾向がある。トレンチ幅が0.2μm以下、アスペクト比が2以上の微細溝にCVD法によりシリコン酸化物を埋めると、微細溝の中にボイドが発生し易い問題があった。
【0004】
スパッタ法以外の方法として、塗布法により微細溝を埋設し、酸化雰囲気下の焼成によりシリカ膜を形成する方法が知られており、材料としてはポリシラザン材料、ポリシラン材料、シリコーン材料が知られている。
ポリシラザン材料は、トレンチ埋め込み性が良く、シリコン酸化物膜への転化時の硬化収縮が少ない特長が報告されている。(例えば特許文献1)しかしながら、水蒸気酸化による焼成によって得られるシリコン酸化物膜中に残留窒素量が多く、電気的分離能が劣ること、また焼成時にアンモニアガスが発生するため、危険であるといった問題があった。
ポリシラン材料は、塗布したポリシラン化合物が蒸発し易く、また塗布量を多くすると、割れ易いといった問題があった。(例えば特許文献2)
【0005】
シリコーン材料は、塗膜、焼成時に脱水、脱アルコール縮合反応を伴うため、得られたシリコン酸化物膜中にボイドやクラックが発生する問題、有機基を有するシリコーン材料を用いた場合、焼成後のシリコン酸化物に残留炭素量が多く、電気特性が悪くなる問題、シリコーン材料からシリコン酸化物に転化する際に大きな硬化収縮を伴い、膜表面から微細溝の底部に向かって密度が不均一になるといった問題があった。
シリコーン材料を用いてボイドやクラックの発生を回避する方法として、酸化シリコン粒子とシリコン原子バインダーによる組成物が提案されている。(例えば特許文献3)しかしながら、シリコン原子バインダーに有機基を多く含むため焼成時にシリコン酸化物膜の硬化収縮が大きく、加熱後のシリコン酸化物のHFエッチレート(焼成後に1%HF水溶液中に1分間浸漬させたときの単位時間当たりの膜減量)が高いためCMP後のHF洗浄工程でトレンチ内に埋め込んだシリコン酸化物のダメージが大きい問題があった。
【0006】
残留炭素量を少なくし、高純度のシリコン酸化物を得る方法として、末端シラノール基が少なくし、水素化シリコーン化合物が提案されている。(例えば特許文献4)しかしながら、耐クラック性が悪いといった問題があった。
【特許文献1】特開2001−308090号公報
【特許文献2】特開2003−31568号公報
【特許文献3】特開2006−310448号公報
【特許文献4】特開2008−101206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みなされたものであり、その目的は、基体に形成されたトレンチ内に酸化シリコンを埋め込むために使用するのに好適な溶液のポットライフが長く、埋め込み性が高く、硬化収縮率が小さく、HF耐性、クラック耐性を有するトレンチ埋め込み用縮合反応物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記目的を達成する方法を開発すべく鋭意研究を行った結果、以下に示すトレンチ埋め込み用組成物を見出し、本発明を完成させた。 即ち、本発明は、
[1] トレンチ埋め込み用縮合反応物であって、該縮合反応物が少なくともポリシロキサン化合物とシリカ粒子との縮合反応物を含み、該ポリシロキサン化合物がHSiO3/2基、MeHSiO基、及びHSiO基から選ばれる基の少なくとも一種を40mol%以上有し、該ポリシロキサンの重量平均分子量が1000以上200000以下であり、該シリカ粒子の平均一次粒径が1nm以上100nm以下であることを特徴とするトレンチ埋め込み用縮合反応物、
【0009】
[2] 前記縮合反応物が、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子に加えてさらに一般式(1)に示されるシラン化合物とを縮合反応させた反応物を含む上記1に記載のトレンチ埋め込み用縮合反応物、
SiX4−n 一般式(1)
(一般式(1)中のnは1から3の整数であり、Rは水素原子又は、炭素数1から10の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子、炭素数1から6のアルコキシ基、アセトキシ基から選ばれる基である。)
【0010】
[3] 前記ポリシロキサン化合物が一般式(2)から一般式(6)で表されるシラン化合物由来の成分を含み、一般式(2)で表されるシラン化合物を30mol%以上含む上記1又は2に記載のトレンチ埋め込み用縮合反応物、
HSiX3 一般式(2)
SiX 一般式(3)
SiX 一般式(4)
SiX 一般式(5)
SiX 一般式(6)
(一般式(5)及び一般式(6)中のRは水素原子又は、炭素数1から10の炭化水素基であり、一般式(2)から一般式(6)中のXは上記記載と同一であり、一般式(4)中のRは炭素数1から10の炭化水素基である。)
【0011】
[4] 前記シリカ粒子が前記ポリシロキサン化合物と前記シリカ粒子、又は前記ポリシロキサン化合物と前記シリカ粒子と前記シラン化合物の合計に対して、1質量%以上80質量%以下である上記1から3のいずれか1項に記載のトレンチ埋め込み用縮合反応物、
[5] 前記シラン化合物が前記ポリシロキサン化合物とシリカ粒子とシラン化合物の合計に対して、0質量%超過40質量%以下であることを特徴とする上記1から4のいずれか1に記載のトレンチ埋め込み用縮合反応物、
[6] 上記1〜5のいずれか1に記載の縮合反応物が含まれる溶液において、沸点100℃以上200℃以下のアルコール、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素系溶媒から選ばれる少なくとも1種類の溶媒が、該溶液に占める溶媒の合計に対して50質量%以上含まれていることを特徴とするトレンチ埋め込み用反応溶液、
【0012】
[7]前記ポリシロキサンの製造工程において、前記一般式(2)〜(6)で表されるシラン化合物に含有するX数の合計に対して、0.1当量以上10当量以下の水と反応させる工程を有することを特徴とする、上記1〜6のいずれか1に記載の縮合反応物の製造方法、
[8]前記ポリシロキサン化合物及びシリカ粒子、又は前記ポリシロキサン化合物、シリカ粒子とシラン化合物の反応を酸性雰囲気下で行う上記7に記載の縮合反応物の製造方法、に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、基体に形成されたトレンチ内に酸化シリコンを埋め込むために使用するのに好適な焼成後のシリコン酸化膜の純度が高く、硬化収縮率が小さく、HF耐性、クラック耐性を有するトレンチ埋め込み用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明で使用されるポリスチレン換算重量平均分子量が1000以上かつ200000以下で、HSiO3/2基、MeHSiO基もしくはHSiO基から選ばれる基の中で少なくとも一種類の基を40mol%以上含むポリシロキサン化合物は一般式(2)から一般式(6)で表されるシラン化合物を酸性雰囲気下、一般式(2)から一般式(6)で表されるシラン化合物に含有するX数の合計に対して0.1当量以上10当量以下の水と反応させた縮合反応物である。
HSiX3 一般式(2)
SiX 一般式(3)
SiX 一般式(4)
SiX 一般式(5)
SiX 一般式(6)
一般式(2)、一般式(5)及び一般式(6)中のRは水素原子又は、炭素数1から10の炭化水素基であり、一般式(2)から一般式(6)中のXはハロゲン原子、炭素数1から6のアルコキシ基、アセトキシ基から選ばれる基であり、RおよびXは同一でも異なっていても構わない。RおよびXは同一でも異なっていても構わない。一般式(4)中のRは炭素数1から10の炭化水素基である。
【0015】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物を製造される際に用いられるシラン化合物の上記一般式(2)、一般式(5)及び一般式(6)中のRの具体例としては、水素原子、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、i−ヘプチル、n−オクチル、i−オクチル、t―オクチル、n−ノニル、i−ノニル、n−デシル、i−デシル等の非環式又は環式の脂肪族炭化水素基、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、シクロヘキセニルエチル、ノルボルネニルエチル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、スチレニル等の非環式及び環式アルケニル基、ベンジル、フェネチル、2−メチルベンジル、3−メチルベンジル、4−メチルベンジル等のアラルキル基、PhCH=CH−基のようなアラアルケニル基、フェニル基、トリル基あるいはキシリル基のようなアリール基が挙げられる。この中でも焼成時に酸化シリコン酸化物への転換の際に重量減少が少なく、収縮率が小さい基として、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基であり、より好ましくは水素基である。
【0016】
上記一般式(2)から一般式(6)中のXの具体例としては、例えばクロライド、ブロマイド、アイオダイド等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等のアルコキシ基、アセトキシ基等が挙げられる。この中でもクロライド、ブロマイド、アイオダイド等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基やアセトキシ基が縮合反応の反応性が高いため好ましい。
【0017】
一般式(4)中のRの具体例としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、i−ヘプチル、n−オクチル、i−オクチル、t―オクチル、n−ノニル、i−ノニル、n−デシル、i−デシル等の非環式又は環式の脂肪族炭化水素基、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、シクロヘキセニルエチル、ノルボルネニルエチル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、スチレニル等の非環式及び環式アルケニル基、ベンジル、フェネチル、2−メチルベンジル、3−メチルベンジル、4−メチルベンジル等のアラルキル基、PhCH=CH−基のようなアラアルケニル基、フェニル基、トリル基あるいはキシリル基のようなアリール基が挙げられる。この中でも焼成時に酸化シリコン酸化物への転換の際に重量減少が少なく収縮率が小さい基として、好ましくはメチル、エチル基である。
【0018】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物は、上記一般式(2)の水素化シラン化合物及び/又は上記一般式(5)中のHSiX又はMeHSiXで表される水素化シラン化合物の割合が、ポリシロキサン化合物を製造する際に用いられるシラン化合物の合計に対して40mol%以上が好ましく、より好ましくは50mol%以上である。上記一般式(2)で表される水素化シラン化合物の量が上記範囲内に入っている場合は、焼成時に酸化シリコン酸化物への転換の際に塗布膜の収縮率が小さいため好ましい。
又、水素化シラン化合物の中でも、上記一般式(2)で表される水素化シラン化合物の割合が30質量%以上であることが、クラック耐性を上げるため好ましい。
【0019】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物の製造の際に使用される上記一般式(3)で表されるシラン化合物の割合はポリシロキサン化合物を製造する際に用いられるシラン化合物の合計に対して30mol%以下が好ましく、より好ましくは20mol%以下である。上記の範囲内であると、成膜性が良く収縮率も小さいため好ましい。
本発明で使用されるポリシロキサン化合物の製造の際に使用される上記一般式(4)で表されるシラン化合物の割合はポリシロキサン化合物を製造する際に用いられるシラン化合物の合計に対して30mol%以下が好ましく、より好ましくは20mol%以下である。上記の範囲内であると、成膜性が良く収縮率が小さいため好ましい。
【0020】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物の製造の際に使用される上記一般式(5)で表されるシラン化合物の割合はポリシロキサン化合物を製造する際に用いられるシラン化合物の合計に対して50mol%以下が好ましく、より好ましくは30mol%以下である。上記の範囲内であると、埋め込み性がよく、耐クラック性が高いため好ましい。
本発明で使用されるポリシロキサン化合物の製造の際に使用される上記一般式(6)で表されるシラン化合物の割合はポリシロキサン化合物を製造する際に用いられるシラン化合物の合計に対して30mol%以下が好ましく、より好ましくは20mol%以下である。上記の範囲内であると、埋め込み性がよく、耐クラック性が高いため好ましい。
【0021】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物は酸性雰囲気下で上記一般式(2)から(6)で表されるシラン化合物の縮合反応によって製造される。ポリシロキサン化合物を製造する際に上記一般式(2)から(6)で表されるシラン化合物の少なくとも1種類のシラン化合物のXにハロゲン原子やアセトキシ化合物が含まれている場合は、縮合反応のために水を加えることによって、反応系が酸性を示すため、シラン化合物の他に酸触媒を加えても、加えなくても、どちらでも構わない。またポリシロキサン化合物を製造する際に用いられる上記一般式(2)から(6)に表されるシラン化合物のXが全てアルコキシ基である場合は、酸触媒を加えることが好ましい。
【0022】
酸触媒としては、無機酸又は有機酸を挙げることができる。
上記無機酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ホウ酸等を挙げることができる。
上記有機酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、安息香酸、p − アミノ安息香酸、p − トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、シトラコン酸、リンゴ酸、グルタル酸等を挙げる事ができる。
【0023】
これらの化合物は、一種又は二種以上を混合して用いることができる。また使用される酸触媒の量はポリシロキサン化合物を製造する際の反応系のPHを0.01から6.0の範囲に調整することがポリシロキサン化合物の重量平均分子量を制御できるため好ましい。
本発明で使用されるポリシロキサン化合物を製造する際は有機溶媒中または水と有機溶媒の混合溶液系中で製造される。縮合反応に使用される有機溶媒としては、例えばアルコール、エステル、ケトン、エーテル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素化合物、アミド化合物等を挙げることができる。
【0024】
上記アルコール類としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールのような一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールのような多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルのような多価アルコールのモノエーテル類等が挙げられる。
【0025】
上記エステル類としては例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。ケトン類としては例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン等が挙げられる。
上記エーテル類としては上記の多価アルコールのモノエーテル類の他に、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのような多価アルコールの水酸基の全てをアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アニソール等が挙げられる。
【0026】
上記脂肪族炭化水素としては例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素としては例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
上記アミド化合物としては例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N− メチルピロリドン等を、それぞれ挙げることができる。
以上の溶媒の中でもメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が水と混合しやすく、シリカ粒子を分散させやすいため好ましい。
【0027】
これらの溶媒は単独で使用してもいいし、複数の溶媒を合わせて使用しても構わない。また上記溶媒を用いずにバルク中で反応を行っても良い。
本発明で使用されるポリシロキサン化合物は上記一般式(2)から(6)で表されるシラン化合物に、水を添加することによって製造されることが好ましい。水の添加量としては、ポリシロキサン化合物を製造する際に用いられる上記一般式(2)から(6)で表されるシラン化合物のXの合計モル数に対して0.1当量から10当量の範囲で添加することが好ましく、更に好ましくは0.4当量以上、8当量以下の範囲である。水の添加量が0.1当量以上であると、ポリシロキサン化合物の分子量が上がるため好ましく、10当量以下で反応させることは、トレンチ埋め込み用反応物溶液のポットライフを長くし、成膜後のクラック耐性を向上させるため好ましい。
【0028】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物を製造する際の反応温度は特に制限は無いが、−50℃から200℃の範囲、より好ましくは0℃から150℃の範囲で行うことが好ましい。上記の範囲で反応を行うことにより、ポリシロキサン化合物を製造する際の分子量を制御することができる。
本発明で用いられるトレンチ埋め込み用反応物を製造する際に用いるポリシロキサン化合物のポリスチレン換算での重量平均分子量は1,000以上200,000以下の範囲が好ましく、更に好ましくは2,000以上150,000以下である。ポリシロキサン化合物の重量平均分子量が1,000以上であると、成膜性とクラック耐性が良く、重量平均分子量が200,000以下であると、トレンチ埋め込みよう反応物のポットライフが長くなるため好ましい。本発明で使用されるポリシロキサン化合物は、上記有機溶液中で製造した後、そのままシリカ粒子と反応させても良いし、上記有機溶液中で製造した後、濃縮したり、他の有機溶媒に置換してから、シリカ粒子と反応させても構わない。
【0029】
次に本発明で使用されるシリカ粒子について説明する。
本実施の形態のトレンチ埋め込み用反応物に使用されるシリカ粒子とは、例えばヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等を挙げることができる。
上記ヒュームドシリカは、シリコン原子を含む化合物を気相中で酸素及び水素を反応させることによって得ることができる。ここで原料となるケイ素化合物としては、例えばハロゲン化ケイ素( 例えば塩化ケイ素等) 等を挙げることができる。
コロイダルシリカは、原料化合物を加水分解及び縮合するゾルゲル法により合成することができる。コロイダルシリカの原料化合物としては、例えば、アルコキシケイ素( 例えばテトラエトキシシラン等) 、ハロゲン化シラン化合物( 例えばジフェニルジクロロシラン等) 等を挙げることができる。中でも、金属やハロゲン等の不純物が少ないことが求められていることより、アルコキシケイ素から得られたコロイダルシリカがより好ましい。
【0030】
シリカ粒子の平均一次粒子径は、1以上120nm以下であることが好ましく、1以上40nm以下であることがより好ましい。120nm以下であると、トレンチへの埋め込み性が高くなるため好ましく、1nm以上であると耐クラック性が向上するため好ましい。
シリカの平均二次粒子径は、2nm以上250nm以下であることが好ましく、2以上80nm以下であることがより好ましい。250nm以下であると、トレンチへの埋め込み性が高くなるため好ましく、2nm以上であると耐クラック性が向上するため好ましい。また、シリカ粒子の平均二次粒子径は、上記の範囲内で、基板に形成されたトレンチのうち、最小の開口幅に対して、0.1〜3倍であることがトレンチへの埋め込み性が高くなることより好ましく、0.1〜2倍であることが更に好ましい。
【0031】
なお、シリカ粒子は、加熱された際に結合が開裂・再結合して再配列する、いわゆる「リフロー」といわれる現象を示すことが知られている。このため、シリカ粒子の平均二次粒子径がトレンチの開口幅より大きくても、後述する加熱工程においてリフロー現象が起こり、これによって細分化されたシリカ粒子の一部がトレンチ内部まで到達することとなる。
シリカ粒子の形状としては、球状、棒状、板状若しくは繊維状又はこれらのいくつかが合体した形状であることができるが、好ましくは球状である。なお、ここでいう球状とは、真球状の他、回転楕円体や卵形等の略球状である場合も含むものである。
シリカ粒子の比表面積としては、HF耐性が上がることより1000m/g以下 であることが好ましく、500m/g以下であることがより好ましい。
シリカ粒子としては、上記の要件に適合する限りで、制限は無く、市販品を使用することもできる。
【0032】
このような市販品としては、コロイダルシリカとして、例えばLEVASILシリーズ(H.C.Starck(株)製)、メタノールシリカゾルIPA−ST、同MEK−S T 、同NBA−ST、同XBA−ST、同DMAC−ST、同ST−UP、同ST−OU P、同ST−20、同ST−40、同ST−C、同ST−N、同ST−O、同ST−50 、同ST−OL(以上、日産化学工業( 株) 製) 、クオートロンP L シリーズ(扶桑化学( 株) 製) 等;粉体状のシリカ粒子として、例えばアエロジル130 、同300 、同380 、同TT600 、同OX50 ( 以上、日本アエロジル( 株) 製) 、シルデックスH31 、同H32、同H51 、同H52 、同H121 、同H122( 以上、旭硝子( 株) 製) 、E220A、E220 ( 以上、日本シリカ工業( 株) ) 、SYLYSIA470( 富士シリシア( 株)製)、SGフレーク( 日本板硝子( 株) 製) 等を、それぞれ挙げることができる。
【0033】
本発明のポリシロキサン化合物に上記シリカ粒子を反応させる際には、溶媒に分散した状態で反応させることができる。使用される溶媒としては、水若しくは有機溶媒又はこれらの混合溶媒を使用することができる。使用される有機溶媒は使用されるシリカ粒子の分散媒によって変わる。使用されるシリカ粒子の分散媒が水系の場合は、水若しくは、アルコール系溶媒をシリカ粒子の水分散媒に加えてからポリシロキサン化合物と反応を行ってもよいし、シリカ粒子の水溶液を一度アルコール系溶媒に置換してから、ポリシロキサン化合物と反応を行っても良い。使用できるアルコール溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール等であり、水と容易に混合するため好ましい。
【0034】
使用されるシリカ粒子の分散媒がアルコール、ケトン、エステル、炭化水素等の溶媒の場合は、水若しくはアルコール、エーテル、ケトン、エステル等の溶媒を使用することができる。アルコール類としては例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール等が挙げられる。エーテル系溶媒としては例えばジメトキシエタンが挙げられる。ケトン系溶媒としては例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル等が挙げられる。
【0035】
シリカ粒子とポリシロキサン化合物の反応は酸性雰囲気下で行われることが好ましい。使用できる酸触媒はポリシロキサン化合物を製造する際と、同じ酸触媒を使用することができる。ポリシロキサン化合物を製造する際に一度酸触媒を取り除いた場合は、シリカ粒子とポリシロキサン化合物を反応する際に酸触媒を加える必要があるが、ポリシロキサン化合物を製造する際に酸触媒を取り除かずそのまま反応させる場合は、酸触媒を加えなくても、ポリシロキサン化合物を反応させる際に使用された酸触媒でポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応を行うことができるし、改めて酸触媒を加えても構わない。
【0036】
シリカ粒子とポリシロキサン化合物溶液の反応温度は特に制限は無く、通常の範囲である−50℃から200℃の範囲で行われる。
使用されるシリカ粒子の割合は、前記シリカ粒子が前記ポリシロキサン化合物と前記シリカ粒子、又は前記ポリシロキサン化合物と前記シリカ粒子と前記シラン化合物の合計に対して、1質量%以上80質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上70質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以上60質量%以下である。1質量%以上であるとクラック耐性が上がるため好ましく、80質量%以下であると膜質が良くなるため好ましい。
【0037】
本発明のポリシロキサン系トレンチ埋め込み用反応物は、シリカ粒子の分散媒にポリシロキサン化合物溶液を加えて反応させた後に、一般式(1)に示されるシラン化合物を反応させても構わない。
SiX4−n 一般式(1)
一般式(1)中のnは1から3の整数である。Rは水素原子又は、炭素数1から10の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子、炭素数1から6のアルコキシ基、アセトキシ基から選ばれる基であり、RおよびXは同一でも異なっていても構わない。一般式(1)中のR及びXは上記一般式(2)、(5)、(6)と同じ基から選ばれることが好ましく、Rの具体例としては、水素原子、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、i−ヘプチル、n−オクチル、i−オクチル、t―オクチル、n−ノニル、i−ノニル、n−デシル、i−デシル等の非環式又は環式の脂肪族炭化水素基、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、シクロヘキセニルエチル、ノルボルネニルエチル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、スチレニル等の非環式及び環式アルケニル基、ベンジル、フェネチル、2−メチルベンジル、3−メチルベンジル、4−メチルベンジル等のアラルキル基、PhCH=CH−基のようなアラアルケニル基、フェニル基、トリル基あるいはキシリル基のようなアリール基が挙げられる。この中でも焼成時に酸化シリコン酸化物への転換の際に重量減少が少なく、収縮率が小さい基として、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基であり、より好ましくは水素基である。
【0038】
上記一般式(1)中のXの具体例としては、例えばクロライド、ブロマイド等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等のアルコキシ基、アセトキシ基等が挙げられる。この中でもメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基やアセトキシ基が縮合反応の反応性が高いため好ましい。
本発明のトレンチ埋め込み用反応物に加える上記一般式(1)に示されるシラン化合物は、1種類でも良いし、複数のシラン化合物を加えても構わない。複数のシラン化合物を加える際には、1種類ずつ加えても良いし、複数のシラン化合物を混合させてから加えてもよい。
【0039】
上記一般式(1)に示されるシラン化合物の添加量はポリシロキサン化合物、シリカ粒子、シラン化合物の合計に対して、0質量%超過、40質量%以下の範囲が好ましく、より好ましくは0質量%超過、30質量%以下の範囲である。上記の範囲であると、本発明のトレンチ埋め込み用反応物のポットライフが長くなり、耐クラック性が上がるため好ましい。
上記一般式(1)に示されるシラン化合物は、ニートで加えてもよいし、一度溶媒で希釈してから加えても良い。希釈できる溶媒としては、シラン化合物が反応しなければどの溶媒を用いても構わない。例えばエーテル系、炭化水素系、ハロゲン化溶媒等が用いられる。
【0040】
添加するシラン化合物の濃度は1wt%以上100wt%以下の範囲が好ましく、より好ましくは3質量%以上50質量%以下である。上記の範囲内であると、製造時の溶媒量が少なくなるため好ましい。
シラン化合物を添加する後に、−50℃以上200℃以下の範囲で、1分以上100時間の範囲で反応させることが好ましい。反応温度と反応時間を制御することで、本発明のトレンチ埋め込み用反応物を成膜する際の粘度を制御することができるため上記の範囲で反応させることが好ましい。
【0041】
本発明のトレンチ埋め込み用反応物は、上記一般式(1)で表されるシラン化合物と反応させた後、沸点100℃以上200℃以下のアルコール、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素系溶媒から選ばれる少なくとも1種類の溶媒が、本発明のポリシロキサン系トレンチ埋め込み用縮合反応物溶液に占める溶媒の合計に対して50質量%以上含まれている分散液または溶液にすることが好ましい。アルコール、ケトン、エステル、エーテル系溶媒は、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子との反応、あるいはポリシロキサンとシリカ粒子の反応物と、シラン化合物の反応の際にあらかじめ加えておいても構わないし、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応、あるいは、ポリシロキサン化合物、シリカ粒子とシラン化合物の反応を行った後に、上記から選ばれる溶媒を更に添加しても構わない。また反応物を形成させた後、一度反応の際に使用した溶媒を蒸留等の方法により、濃縮させた後に加えても構わない。
【0042】
上記のアルコール、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素系溶媒の具体例としては、例えばブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメトキシエーテル、プロピレングリコールモノエトキシエーテル等のアルコール系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソアミルケトン、エチルヘキシルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ―ブチロラクトン等のケトン系溶媒、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、ペンチルプロピオネート、ヘキシルプロピオネート、プロピレングリコールメチルエチルアセテート、乳酸エチル等のエステル系溶媒、ブチルエチルエーテル、ブチルプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒系は、本発明のトレンチ埋め込み用反応物に含まれる溶媒系の中で50質量%以上含まれていれば、沸点が100℃以下の溶媒が混合されていても構わない。また上記の溶媒系が複数用いられていても構わない。上記の沸点が100℃以上200℃以下のアルコール、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素系溶媒が50質量%以上含まれることによって、トレンチ埋め込み用反応物のポットライフを長くすることができ、また成膜性も向上するために好ましい。
【0043】
ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応、あるいはポリシロキサン化合物、シリカ粒子、シラン化合物の反応の際に使用される溶媒、およびポリシロキサン化合物とシリカ粒子との反応、あるいはポリシロキサン化合物、シリカ粒子とシラン化合物の反応の際に生成される水やアルコールが、上記のアルコール、ケトン、エステル、エーテル系溶媒よりも沸点が低い場合は、反応の際か、反応後に上記から選ばれる溶媒を加えた後に、蒸留等の方法によって低沸点の溶媒を取り除く方が、本発明のトレンチ埋め込み用反応物のポットライフが長くなるため好ましい。
このような方法により製造されたトレンチ埋め込み用反応物は、通常の方法で塗布することができる。例えばスピンコート法、ディップコート法、ローラーブレード塗布法、スプレー塗布法等が挙げられる。中でも成膜時の塗布厚みが均一になるためスピンコート法が好ましい。
【0044】
これらの方法で塗布した後、塗布膜中の残存溶媒を除くため50〜200℃で予備硬化することが好ましい。
予備硬化させて得られた膜を酸化、加熱焼成することによって酸化物を得ることができる。
本硬化の酸化、加熱焼成方法としては、ホットプレート、オーブン、ファーネス等の一般的な加熱手段を適用することができる。熱処理温度は、好ましくは100℃〜1200℃であり、より好ましくは200℃〜1000℃である。更に好ましくは300℃〜900℃である。上記の範囲に入っていれば、焼成後の膜密度が高く、また得られた膜質が良いため好ましい。加熱焼成時の雰囲気としては、空気や酸素又は水蒸気酸化のいずれを用いても構わない。酸化、加熱焼成温度としては200〜850℃の範囲で行われ、酸化前後にNやAr等の不活性雰囲気下で焼成しても構わない。
【0045】
酸化、加熱焼成工程時の圧力に特に制限は無く加圧下、常圧下、減圧下又は真空中のいずれの圧力でも実施することができる。
また酸化、加熱燃焼時に光処理を併用しても構わない。この場合、光処理は加熱前後のどちらに行っても良いし、加熱しながら光処理を同時に行っても構わない。加熱と光処理を同時に行う場合の温度としては、好ましくは室温から500℃であり、処理時間は0.1から120分程度である。
光処理としては、可視光線、紫外線、遠紫外線などを使用できるほか、低圧もしくは高圧の水銀ランプ、重水素ランプや、アルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガスの放電光や、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザー等を光源として使用することができる。これらの光源としては、好ましくは10〜5,000Wの出力のものである。これらの光の波長は、塗布した膜中の組成物に少しでも吸収があれば構わないが、好ましくは170nmから600nmの波長の光であり、照射量としては、0.1から1,000J/cmであり、より好ましくは1〜100J/cmである。光処理する時に同時にオゾンを発生させても構わない。上記の範囲で光処理することによって酸化反応が進行し、焼成後の膜質が良くなるため好ましい。
本発明のトレンチ埋め込み用樹脂組成物を使用して得られた絶縁膜は、例えばフラッシュメモリ等の絶縁膜として好適である。
【0046】
以下、実施例及び比較例により本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)ポリシロキサン化合物の分子量測定
東ソー製のゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)、HLC−8220を使用し、テトラヒドロフラン(THF)溶媒中、ポリシロキサン化合物を1質量%溶液にして測定し、示差屈折率計(RI)によりポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。
(2)クラック耐性
焼成後の膜厚が0.7μmになるように塗布・焼成を行い、焼成後のSi基板を光学顕微鏡にて観察し、光学顕微鏡にてクラックが入っているか否かを判定し、クラックが入っていない場合を○とした。
(3)収縮率
Si基板の焼成前膜厚と、焼成後膜厚をHORIBA JOBINYVON製分光エリプソメーターUVISELで測定し、焼成前後の膜厚の差より収縮率を求めた。
【0047】
(4)HF耐性
焼成後のSi基板を重量比1:199のHF溶液に20秒浸し、HF試験前後の膜厚を分光エリプソメーターで測定し、基板上の膜が溶解するHFレートが50nm/min以下であれば○とした。
(5)埋め込み性
トレンチを有するSi基板を割断し、FIB加工をした後、日立製作所製、走査型電子顕微鏡(SEM)S4700を使用し、加速電圧5kVで測定し、トレンチ内が埋まっていれば○とした。
(6)ワニスポットライフ
製造したポリシロキサン系トレンチ埋め込み用反応物溶液を室温で3日放置し、ゲル化しなければ○とした。
ポリシロキサン化合物の製造例
【0048】
[製造例1]
蒸留塔、滴下ロートを備えた1Lの4つ口フラスコにトリエトキシシラン37.19g(0.23mol)とイソプロパノール200gを入れ、水36.68g(2.04mol)と塩酸0.4gの混合溶液を室温で滴下した。滴下終了後、2時間攪拌した。キシレン250gを加え、昇温してイソプロパノール、水、塩酸、キシレンを留去し、ポリシロキサン化合物の10質量%のキシレン溶液を得た。得られたキシレン溶液は中性であった。一部をサンプリングしGPCを測定すると重量平均分子量は12,000であった。
【0049】
[製造例2]
蒸留塔、滴下ロートを備えた1Lの4つ口フラスコにトリエトキシシラン33.04g(0.20mol)とテトラエトキシシラン4.65g(0.022mol)とイソプロパノール200gを入れ、水37.41g(2.08mol)と塩酸0.4gの混合溶液を室温で滴下した。滴下終了後、2時間攪拌した。キシレン250gを加え、昇温してイソプロパノール、水、塩酸、キシレンを留去し、10質量%のポリシロキサン化合物のキシレン溶液を得た。得られたキシレン溶液は中性であった。一部をサンプリングしGPCを測定すると重量平均分子量は65,000であった。
【0050】
[製造例3]
200mLのナスフラスコにトリエトキシシラン32.20g(0.20mol)とジメトキシジメチルシラン2.62g(0.022mol)とイソプロパノール50gを入れ、水11.37g(0.063mol)と塩酸1.0gの混合溶液を室温で滴下した。滴下終了後、2時間攪拌し、ポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液を得た。一部をサンプリングしGPCを測定すると重量平均分子量は6,800であった。
【0051】
[製造例4]
200mLのナスフラスコにトリエトキシシラン33.04g(0.20mol)とジメトキシメチルシラン2.37g(0.022mol)とイソプロパノール100gを入れ、水11.66g(0.65mol)と塩酸1.0gの混合溶液を室温で滴下した。滴下終了後、2時間攪拌し、ポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液を得た。一部をサンプリングしGPCを測定すると重量平均分子量は7,200であった。
【0052】
[製造例5]
200mLのナスフラスコにトリエトキシシラン32.20g(0.20mol)とメトキシトリメチルシラン2.17g(0.021mol)とイソプロパノール50gを入れ、水10.96g(0.61mol)と塩酸1.0gの混合溶液を室温で滴下した。滴下終了後、2時間攪拌し、ポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液を得た。一部をサンプリングしGPCを測定すると重量平均分子量は5,400であった。
【0053】
[製造例6]
200mLのナスフラスコにトリエトキシシラン19.61g(0.12mol)とジメトキシジメチルシラン4.41g(0.037mol)と、イソプロパノール50gを入れ、水7.77g(0.43mol)と塩酸1.0gの混合溶液を室温で滴下した。滴下終了後、2時間攪拌し、ポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液を得た。一部をサンプリングしGPCを測定すると重量平均分子量は4,800であった。
【0054】
[製造例7]
200mLのナスフラスコにトリエトキシシラン19.61g(0.12mol)とジメトキシメチルシラン4.10g(0.040mol)と、イソプロパノール100gを入れ、水7.84gと塩酸1.0gの混合溶液を室温で滴下した。滴下終了後、2時間攪拌し、ポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液を得た。一部をサンプリングしGPCを測定すると重量平均分子量は5,200であった。
【0055】
[製造例8]
還流塔と滴下ロートを備えた500mLの4つ口フラスコにトリエトキシシラン19.61g(0.12mol)とイソプロパノール150gを入れ、ドライアイス−エタノール浴で冷却した。25質量%のジクロロシランのキシレン溶液16.48g(0.041mol)をシリンジにて滴下した。0℃まで昇温した後、水7.91gを滴下した。滴下終了後2時間攪拌し、ポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液を得た。一部をサンプリングしGPCを測定すると重量平均分子量は7,500であった。
【0056】
[製造例9]
200mLのナスフラスコにトリエトキシシラン3.13g(0.019mol)とジメトキシジメチルシラン13.05g(0.109mol)と、イソプロパノール50gを入れ、水4.94g(0.27mol)と塩酸1.0gの混合溶液を室温で滴下した。滴下終了後、2時間攪拌し、ポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液を得た。一部をサンプリングしGPCを測定すると重量平均分子量は3,700であった。
【0057】
[製造例10]
200mLのナスフラスコにトリエトキシシラン3.64g(0.022mol)とメトキシトリメチルシラン12.87g(0.12mol)とイソプロパノール50gを入れ、水3.42g(0.19mol)と塩酸1.0gの混合溶液を室温で滴下した。滴下終了後、2時間攪拌し、ポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液を得た。一部をサンプリングしGPCを測定すると重量平均分子量は850であった。
以上の製造例1から9を表1にまとめた。
【0058】
【表1】

【0059】
[実施例1]
蒸留塔および滴下ロートを有する4つ口の1Lフラスコに、触媒化成工業製の平均粒径7nm、20質量%濃度のイソプロパノール分散シリカ粒子;AZ−1003、15g、イソプロパノール100gと塩酸1.0gを入れ、上記製造例1で製造した10質量%のポリシロキサン化合物のキシレン溶液120gを室温で滴下した。滴下終了後、さらにキシレン250gを追加した後、オイルバス100℃に昇温し、4時間還流した。還流後にオイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、塩酸、水、キシレンを留去し、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液を得た。得られたポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液は中性であった。このキシレン溶液を20質量%まで濃縮し、室温で3日間放置したが、ワニスはゲル化しなかった。
【0060】
上記ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液を6インチのSi基板上に2mL滴下し、回転速度500rpmで10秒と、回転速度1000rpmで30秒間の2段階でスピンコートを行った。この基板を空気中、50℃、100℃、200℃のホットプレート上で2分間ずつ、段階的にプリベークし、溶媒を除去した。得られた塗膜はハジキや異物の観察されない均一なものであった。
得られたSi基板を酸素雰囲気下、5℃/minで400℃まで昇温し、30分焼成した。雰囲気を酸素から窒素に切り替え、30分放置後、700℃まで昇温し、1時間焼成し、2℃/minで室温まで降温した。
【0061】
焼成後のSi基板を上記(2)から(4)で示される評価を行い、評価結果を表2に示した。
また上記ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液を開口度100nm、深さ0.3μmのトレンチを有するSiチップに1mL滴下し、上記条件でスピンコート、プリベーク、焼成を行った。
得られた焼成後の基板を割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、局所的な溝、孔、クラック等のボイドは観察されず、成膜異常は認められなかった。
【0062】
[実施例2]
蒸留塔および滴下ロートを有する4つ口の1Lフラスコに、触媒化成工業製の平均粒径7nm、20質量%濃度のイソプロパノール分散シリカ粒子;AZ−1003、15g、イソプロパノール100gと塩酸1.0gを入れ、上記製造例2で製造した10質量%のポリシロキサン化合物のキシレン溶液122gを室温で滴下した。滴下終了後、さらにキシレン250gを追加した後、オイルバス100℃に昇温し、4時間還流した。還流後にオイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、塩酸、水、キシレンを留去し、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液を得た。得られたポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液は中性であった。このキシレン溶液を20質量%まで濃縮し、室温で3日間放置したが、ワニスはゲル化しなかった。
【0063】
上記ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液を6インチのSi基板と、開口度100nm、深さ0.3μmのトレンチを有するSi基板に実施例1と同条件で塗膜、プリベーク、焼成を行った。得られたSi基板はハジキや異物の観察されない均一なものであった。トレンチを有するSi基板を割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、局所的な溝、孔、クラック等のボイドは観察されず、成膜異常は認めれなかった。
その他の評価結果は表2に示した。
【0064】
[実施例3]
蒸留塔および滴下ロートを有する4つ口の1Lフラスコに、触媒化成工業製の平均粒径7nm、20質量%濃度のイソプロパノール分散シリカ粒子;AZ−1003、15g、イソプロパノール100gを入れ、上記製造例3で製造したポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液97gを室温で滴下した。滴下終了後、さらにキシレン250gを追加した後、オイルバス100℃に昇温し、4時間還流した。還流後にオイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、塩酸、水、キシレンを留去し、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液を得た。得られたポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液は中性であった。このキシレン溶液を20質量%まで濃縮し、室温で3日間放置したが、ワニスはゲル化しなかった。
【0065】
上記ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液を6インチのSi基板と、開口度100nm、深さ0.3μmのトレンチを有するSi基板に実施例1と同条件で塗膜、プリベーク、焼成を行った。得られたSi基板はハジキや異物の観察されない均一なものであった。トレンチを有するSi基板を割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、局所的な溝、孔、クラック等のボイドは観察されず、成膜異常は認めれなかった。
その他の評価結果は表2に示した。
【0066】
[実施例4]
蒸留塔および滴下ロートを有する4つ口の1Lフラスコに、触媒化成工業製の平均粒径7nm、20質量%濃度のイソプロパノール分散シリカ粒子;AZ−1003、15g、イソプロパノール100gを入れ、上記製造例4で製造した10質量%のポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液148gを室温で滴下した。滴下終了後、さらにキシレン250gを追加した後、オイルバス100℃に昇温し、4時間還流した。還流後にオイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、塩酸、水、キシレンを留去し、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液を得た。得られたポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液は中性であった。このキシレン溶液を20質量%まで濃縮し、室温で3日間放置したが、ワニスはゲル化しなかった。
【0067】
上記ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液を6インチのSi基板と、開口度100nm、深さ0.3μmのトレンチを有するSi基板に実施例1と同条件で塗膜、プリベーク、焼成を行った。得られたSi基板はハジキや異物の観察されない均一なものであった。トレンチを有するSi基板を割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、局所的な溝、孔、クラック等のボイドは観察されず、成膜異常は認めれなかった。
その他の評価結果は表2に示した。
【0068】
[実施例5]
蒸留塔および滴下ロートを有する4つ口の1Lフラスコに、触媒化成工業製の平均粒径7nm、20質量%濃度のイソプロパノール分散シリカ粒子;AZ−1003、15g、イソプロパノール100gを入れ、室温で上記製造例3で製造した10質量%のポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液96gを室温で滴下した。滴下終了後、さらにキシレン250gを追加した後、オイルバス100℃に昇温し、4時間還流した。還流後にオイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、塩酸、水を留去し、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液を得た。得られたポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液は中性であった。このキシレン溶液を20質量%まで濃縮し、室温で3日間放置したが、ワニスはゲル化しなかった。
【0069】
上記ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液を6インチのSi基板と、開口度100nm、深さ0.3μmのトレンチを有するSi基板に実施例1と同条件で塗膜、プリベーク、焼成を行った。得られたSi基板はハジキや異物の観察されない均一なものであった。トレンチを有するSi基板を割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、局所的な溝、孔、クラック等のボイドは観察されず、成膜異常は認めれなかった。
その他の評価結果は表2に示した。
【0070】
[実施例6]
蒸留塔および滴下ロートを有する4つ口の1Lフラスコに、扶桑化学工業製の平均粒径7nm、6.3質量%濃度の水分散シリカ粒子;PL−06、47.62gとイソプロパノール350gを入れ、上記製造例1で製造した10質量%のポリシロキサン化合物のキシレン溶液120gを室温で滴下した。滴下終了後、30分攪拌し、トリエトキシシラン2.0g(0.012mol)とキシレン10gで希釈した溶液を滴下した。オイルバス100℃で4時間還流した。還流後にプロピレングリコールメチルエチルアセテート(PGMEA)200gを加え、オイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、塩酸、水、キシレンを留去し、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子とシラン化合物の反応物のPGMEA溶液を得た。得られたポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液は中性であった。このPGMEA溶液を20質量%まで濃縮し、室温で3日間放置したが、ワニスはゲル化しなかった。
【0071】
上記ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液を6インチのSi基板と、開口度100nm、深さ0.3μmのトレンチを有するSi基板に実施例1と同条件で塗膜、プリベーク、焼成を行った。得られたSi基板はハジキや異物の観察されない均一なものであった。トレンチを有するSi基板を割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、局所的な溝、孔、クラック等のボイドは観察されず、成膜異常は認めれなかった。
その他の評価結果は表2に示した。
【0072】
[実施例7]
蒸留塔および滴下ロートを有する4つ口の1Lフラスコに、扶桑化学工業製の平均粒径7nm、6.3質量%濃度の水分散シリカ粒子;PL−06、47.62gとイソプロパノール350gを入れ、上記製造例2で製造した10質量%のポリシロキサン化合物のキシレン溶液113gを室温で滴下した。滴下終了後、30分攪拌し、トリエトキシシラン2.0g(0.012mol)とキシレン10gで希釈した溶液を滴下した。オイルバス100℃で4時間還流した。還流後にPGMEA200gを加え、オイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、塩酸、水、キシレンを留去し、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子とシラン化合物の反応物のPGMEA溶液を得た。得られたポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液は中性であった。このPGMEA溶液を20質量%まで濃縮し、室温で3日間放置したが、ワニスはゲル化しなかった。
【0073】
上記ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液を6インチのSi基板と、開口度100nm、深さ0.3μmのトレンチを有するSi基板に実施例1と同条件で塗膜、プリベーク、焼成を行った。得られたSi基板はハジキや異物の観察されない均一なものであった。トレンチを有するSi基板を割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、局所的な溝、孔、クラック等のボイドは観察されず、成膜異常は認めれなかった。
その他の評価結果は表2に示した。
【0074】
[実施例8]
蒸留塔および滴下ロートを有する4つ口の1Lフラスコに、扶桑化学工業製の平均粒径7nm、6.3質量%濃度の水分散シリカ粒子;PL−06、47.62gとイソプロパノール162gを入れ、上記製造例3で製造したポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液94gを室温で滴下した。滴下終了後、30分攪拌し、トリエトキシシラン2.0g(0.012mol)とキシレン34gで希釈した溶液を滴下した。オイルバス100℃で4時間還流した。還流後にPGMEA200gを加え、オイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、塩酸、水、キシレンを留去し、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子とシラン化合物の反応物のPGMEA溶液を得た。得られたポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液は中性であった。このPGMEA溶液を20質量%まで濃縮し、室温で3日間放置したが、ワニスはゲル化しなかった。
【0075】
上記ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液を6インチのSi基板と、開口度100nm、深さ0.3μmのトレンチを有するSi基板に実施例1と同条件で塗膜、プリベーク、焼成を行った。得られたSi基板はハジキや異物の観察されない均一なものであった。トレンチを有するSi基板を割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、局所的な溝、孔、クラック等のボイドは観察されず、成膜異常は認めれなかった。
その他の評価結果は表2に示した。
【0076】
[実施例9]
蒸留塔および滴下ロートを有する4つ口の1Lフラスコに、扶桑化学工業製の平均粒径7nm、6.3質量%濃度の水分散シリカ粒子;PL−06、71.43gとイソプロパノール243gを入れ、上記製造例6で製造したポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液83gを室温で滴下した。滴下終了後、30分攪拌し、トリエトキシシラン4.51g(0.027mol)とキシレン88gで希釈した溶液を滴下した。オイルバス100℃で4時間還流した。還流後にPGMEA200gを加え、オイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、塩酸、水、キシレンを留去し、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子とシラン化合物の反応物のPGMEA溶液を得た。得られたポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液は中性であった。このPGMEA溶液を20質量%まで濃縮し、室温で3日間放置したが、ワニスはゲル化しなかった。
【0077】
上記ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液を6インチのSi基板と、開口度100nm、深さ0.3μmのトレンチを有するSi基板に実施例1と同条件で塗膜、プリベーク、焼成を行った。得られたSi基板はハジキや異物の観察されない均一なものであった。トレンチを有するSi基板を割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、局所的な溝、孔、クラック等のボイドは観察されず、成膜異常は認めれなかった。
その他の評価結果は表2に示した。
【0078】
[実施例10]
蒸留塔および滴下ロートを有する4つ口の1Lフラスコに、扶桑化学工業製の平均粒径7nm、6.3質量%濃度の水分散シリカ粒子;PL−06、71.43gとイソプロパノール243gを入れ、上記製造例7で製造したポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液133gを室温で滴下した。滴下終了後、30分攪拌し、トリエトキシシラン4.51g(0.027mol)とキシレン88gで希釈した溶液を滴下した。オイルバス100℃で4時間還流した。還流後にPGMEA250gを加え、オイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、塩酸、水、キシレンを留去し、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子とシラン化合物の反応物のPGMEA溶液を得た。得られたポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液は中性であった。このPGMEA溶液を20質量%まで濃縮し、室温で3日間放置したが、ワニスはゲル化しなかった。
【0079】
上記ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液を6インチのSi基板と、開口度100nm、深さ0.3μmのトレンチを有するSi基板に実施例1と同条件で塗膜、プリベーク、焼成を行った。得られたSi基板はハジキや異物の観察されない均一なものであった。トレンチを有するSi基板を割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、局所的な溝、孔、クラック等のボイドは観察されず、成膜異常は認めれなかった。
その他の評価結果は表2に示した。
【0080】
[実施例11]
蒸留塔および滴下ロートを有する4つ口の1Lフラスコに、扶桑化学工業製の平均粒径7nm、6.3質量%濃度の水分散シリカ粒子;PL−06、71.43gとイソプロパノール243gを入れ、上記製造例8で製造したポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液183gを室温で滴下した。滴下終了後、30分攪拌し、トリエトキシシラン4.51g(0.027mol)とキシレン76gで希釈した溶液を滴下した。オイルバス100℃で4時間還流した。還流後にPGMEA250gを加え、オイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、塩酸、水、キシレンを留去し、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子とシラン化合物の反応物のPGMEA溶液を得た。得られたポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液は中性であった。このキシレン溶液を20質量%まで濃縮し、室温で3日間放置したが、ワニスはゲル化しなかった。
【0081】
上記ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液を6インチのSi基板と、開口度100nm、深さ0.3μmのトレンチを有するSi基板に実施例1と同条件で塗膜、プリベーク、焼成を行った。得られたSi基板はハジキや異物の観察されない均一なものであった。トレンチを有するSi基板を割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、局所的な溝、孔、クラック等のボイドは観察されず、成膜異常は認めれなかった。
その他の評価結果は表2に示した。
【0082】
[実施例12]
蒸留塔および滴下ロートを有する4つ口の1Lフラスコに、扶桑化学工業製の平均粒径7nm、6.3質量%濃度の水分散シリカ粒子;PL−06、95.24gとイソプロパノール324gを入れ、上記製造例3で製造したポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液78gを室温で滴下した。滴下終了後、30分攪拌し、トリエトキシシラン6.01g(0.037mol)とキシレン95gで希釈した溶液を滴下した。オイルバス100℃で4時間還流した。還流後にPGMEA300gを加え、オイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、塩酸、水、キシレンを留去し、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子とシラン化合物の反応物のPGMEA溶液を得た。得られたポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液は中性であった。このPGMEA溶液を20質量%まで濃縮し、室温で3日間放置したが、ワニスはゲル化しなかった。
【0083】
上記ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液を6インチのSi基板と、開口度100nm、深さ0.3μmのトレンチを有するSi基板に実施例1と同条件で塗膜、プリベーク、焼成を行った。得られたSi基板はハジキや異物の観察されない均一なものであった。トレンチを有するSi基板を割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、局所的な溝、孔、クラック等のボイドは観察されず、成膜異常は認めれなかった。
その他の評価結果は表2に示した。
【0084】
[実施例13]
蒸留塔および滴下ロートを有する4つ口の1Lフラスコに、扶桑化学工業製の平均粒径7nm、6.3質量%濃度の水分散シリカ粒子;PL−06、95.24gとイソプロパノール324gを入れ、上記製造例6で製造したポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液76gを室温で滴下した。滴下終了後、30分攪拌し、トリエトキシシラン6.01g(0.037mol)とキシレン95gで希釈した溶液を滴下した。オイルバス100℃で4時間還流した。還流後にPGMEA300gを加え、オイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、塩酸、水、キシレンを留去し、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子とシラン化合物の反応物のPGMEA溶液を得た。得られたポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液は中性であった。このキシレン溶液を20質量%まで濃縮し、室温で3日間放置したが、ワニスはゲル化しなかった。
【0085】
上記ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液を6インチのSi基板と、開口度100nm、深さ0.3μmのトレンチを有するSi基板に実施例1と同条件で塗膜、プリベーク、焼成を行った。得られたSi基板はハジキや異物の観察されない均一なものであった。トレンチを有するSi基板を割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、局所的な溝、孔、クラック等のボイドは観察されず、成膜異常は認めれなかった。
その他の評価結果は表2に示した。
【0086】
[比較例1]
上記製造例2で製造した10質量%のポリシロキサン化合物のキシレン溶液を20質量%に濃縮し、6インチのSi基板に実施例1と同条件で塗膜、プリベーク、焼成を行った。得られたSi基板はハジキが見られ、不均一なものであった。
【0087】
[比較例2]
200mLナスフラスコに扶桑化学工業製の平均粒径7nm、6.3質量%濃度の水分散シリカ粒子;PL−06、47.62gを入れ、上記製造例1で製造した10質量%のポリシロキサン化合物のキシレン溶液120gを反応させずに混合したところ、2層に分離した。エバポレーターにて水を留去したところ、ゲル化した。
【0088】
[比較例3]
200mLナスフラスコに20質量%濃度のイソプロパノール分散シリカ粒子;AZ−1003、15gを入れ、上記製造例1で製造した10質量%のポリシロキサン化合物のキシレン溶液120gと反応させずに混合させた。エバポレーターにてイソプロパノールを留去したところ、ゲル化した。
【0089】
[比較例4]
蒸留塔及び滴下ロートを備えた500mL4つ口フラスコに20質量%濃度のイソプロパノール分散シリカ粒子;AZ−1003、15gとトリエトキシシラン27.57g(0.17mol)、テトラエトキシシラン9.19g(0.044mol)を入れ、水24.48gと塩酸1.0gの混合溶液を室温で滴下した。滴下終了後、2時間攪拌し、キシレン250gを追加した後、昇温してイソプロパノール、水、塩酸を除去した。得られたキシレン溶液は中性であった。このキシレン溶液を20質量%まで濃縮し、室温で3日間放置したが、ワニスはゲル化しなかった。
上記シラン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液を6インチのSi基板と、開口度100nm、深さ0.3μmのトレンチを有するSi基板に実施例1と同条件で塗膜、プリベーク、焼成を行った。得られたSi基板は0.6μmでクラックが認められた。トレンチを有するSi基板を割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、ボイド及びクラックの発生が認められた。
【0090】
[比較例5]
蒸留塔および滴下ロートを有する4つ口の1Lフラスコに、扶桑化学工業製の平均粒径7nm、6.3質量%濃度の水分散シリカ粒子;PL−06、71.43gとイソプロパノール243gを入れ、上記製造例9で製造したポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液72gを室温で滴下した。滴下終了後、30分攪拌し、トリエトキシシラン4.51g(0.027mol)とキシレン56gで希釈した溶液を滴下した。オイルバス100℃で4時間還流した。還流後にPGMEA200gを追加し、オイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、塩酸、水、キシレンを留去し、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子とシラン化合物の反応物のPGMEA溶液を得た。得られたポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液は中性であった。このPGMEA溶液を20質量%まで濃縮し、室温で3日間放置したが、ワニスはゲル化しなかった。
【0091】
上記ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液を6インチのSi基板と、開口度100nm、深さ0.3μmのトレンチを有するSi基板に実施例1と同条件で塗膜、プリベーク、焼成を行った。得られたSi基板はハジキや異物の観察されない均一なものであった。トレンチを有するSi基板を割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、局所的な溝、孔、クラック等のボイドは観察されず、成膜異常は認めれなかった。
得られた6インチのSi基板のHF試験を行ったところ、Si基板は白濁した。HF試験後の膜厚をエリプソメーターで測定しようとしたが、測定できなかった。
【0092】
[比較例6]
蒸留塔および滴下ロートを有する4つ口の1Lフラスコに、扶桑化学工業製の平均粒径7nm、6.3質量%濃度の水分散シリカ粒子;PL−06、47.62gとイソプロパノール162gを入れ、上記製造例10で製造したポリシロキサン化合物のイソプロパノール溶液71gを室温で滴下した。滴下終了後、30分攪拌し、トリエトキシシラン2.0g(0.012mol)とキシレン34gで希釈した溶液を滴下した。オイルバス100℃で4時間還流した。還流後にPGMEA200gを追加し、オイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、塩酸、水、キシレンを留去し、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子とシラン化合物の反応物のPGMEA溶液を得た。得られたポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液は中性であった。このPGMEA溶液を20質量%まで濃縮し、室温で3日間放置したが、ワニスはゲル化しなかった。
【0093】
上記ポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液を6インチのSi基板と、開口度100nm、深さ0.3μmのトレンチを有するSi基板に実施例1と同条件で塗膜、プリベーク、焼成を行った。得られたSi基板の膜厚は0.6μmであり、クラックの発生が認められた。トレンチを有するSi基板を割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、局所的なクラックが認められた。
以上の結果を表2に示した。
【0094】
【表2】

【0095】
表2より、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子あるいは、ポリシロキサン化合物、シリカ粒子とシラン化合物の反応物はワニスとしてのポットライフが長く、成膜性、クラック耐性、HF耐性、埋め込み性に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の組成物は、半導体素子に形成されたトレンチ内の絶縁保護膜用トレンチ埋め込み用反応物の分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレンチ埋め込み用縮合反応物であって、該縮合反応物が少なくともポリシロキサン化合物とシリカ粒子との縮合反応物を含み、該ポリシロキサン化合物がHSiO3/2基、MeHSiO基、及びHSiO基から選ばれる基の少なくとも一種を40mol%以上有し、該ポリシロキサンの重量平均分子量が1000以上200000以下であり、該シリカ粒子の平均一次粒径が1nm以上100nm以下であることを特徴とするトレンチ埋め込み用縮合反応物。
【請求項2】
前記縮合反応物が、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子に加えてさらに一般式(1)に示されるシラン化合物とを縮合反応させた反応物を含む請求項1に記載のトレンチ埋め込み用縮合反応物。
SiX4−n 一般式(1)
(一般式(1)中のnは1から3の整数であり、Rは水素原子又は、炭素数1から10の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子、炭素数1から6のアルコキシ基、アセトキシ基から選ばれる基である。)
【請求項3】
前記ポリシロキサン化合物が一般式(2)から一般式(6)で表されるシラン化合物由来の成分を含み、一般式(2)で表されるシラン化合物を30mol%以上含む請求項1又は2に記載のトレンチ埋め込み用縮合反応物。
HSiX3 一般式(2)
SiX 一般式(3)
SiX 一般式(4)
SiX 一般式(5)
SiX 一般式(6)
(一般式(5)及び一般式(6)中のRは水素原子又は、炭素数1から10の炭化水素基であり、一般式(2)から一般式(6)中のXは上記記載と同一であり、一般式(4)中のRは炭素数1から10の炭化水素基である。)
【請求項4】
前記シリカ粒子が前記ポリシロキサン化合物と前記シリカ粒子、又は前記ポリシロキサン化合物と前記シリカ粒子と前記シラン化合物の合計に対して、1質量%以上80質量%以下である請求項1から3のいずれか1項に記載のトレンチ埋め込み用縮合反応物。
【請求項5】
前記シラン化合物が前記ポリシロキサン化合物とシリカ粒子とシラン化合物の合計に対して、0質量%超過40質量%以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のトレンチ埋め込み用縮合反応物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の縮合反応物が含まれる溶液において、沸点100℃以上200℃以下のアルコール、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素系溶媒から選ばれる少なくとも1種類の溶媒が、該溶液に占める溶媒の合計に対して50質量%以上含まれていることを特徴とするトレンチ埋め込み用反応溶液。
【請求項7】
前記ポリシロキサンの製造工程において、前記一般式(2)〜(6)で表されるシラン化合物に含有するX数の合計に対して、0.1当量以上10当量以下の水と反応させる工程を有すること特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の縮合反応物の製造方法。
【請求項8】
前記ポリシロキサン化合物及びシリカ粒子、又は前記ポリシロキサン化合物、シリカ粒子とシラン化合物の反応を酸性雰囲気下で行う請求7に記載の縮合反応物の製造方法。


【公開番号】特開2010−153655(P2010−153655A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331333(P2008−331333)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】