説明

マクロ検査装置、マクロ検査方法

【課題】 被検査物の表面の平坦度を高感度で簡易に検出する。
【解決手段】 被検査物2を乗せるステージ1と、被検査物の上面に対して任意に選択した角度方向からその上面に光を照射する光源5と、光源によって照射されるその上面の領域のエッジに光軸が合うように、被検査物の上面に対して選択した角度方向に置かれ、被検査物の上面の領域のエッジからの反射光を受光するライン・センサ9とを備える、マクロ検査装置100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物の表面の平坦度を検査するマクロ検査装置および方法に関し、より詳細には、基板上の薄膜の平坦度を検査するマクロ検査装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、液晶等の製造工程で行われる検査の一つにマクロ検査がある。マクロ検査とは、一般に人間が目視で、製造された膜等の表面の欠陥(平坦度、きずの有無等)を見つける検査である。マクロ検査は、人間の目が見分けることができる限りにおいて、広い面積での欠陥を一度に見つけることができる点で有効な検査である。
【0003】
膜の平坦度、すなわち膜厚のばらつき(不均一性)を調べるマクロ検査として、従来から干渉光を利用する検査が行われてきた。干渉光を利用する検査では、狭波長の光を膜に照射して、その膜からの干渉光を検出する。しかし、この方法は干渉が起こらない、光が透過しない膜には利用できない。すなわち、従来の干渉光を利用する方法では、光が透過する膜しか検査できないという制約があった。
【0004】
従来の表面欠陥のマクロ検査装置として、例えば日本の公開特許公報2003-28621がある。この公報は、検査照明用光の正反射光を受光せずかつ散乱光を効率よく受光する位置に受光ユニットを配置する表面欠陥検査装置を開示する。
【0005】
【特許文献1】公開特許公報、特開2003-28621号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、被検査物の表面の平坦度を高感度で簡易に検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被検査物の表面の平坦度を検査するマクロ検査装置であって、被検査物を乗せるステージと、被検査物の上面に対して任意に選択した角度方向からその上面に光を照射する光源と、光源によって照射されるその上面の領域のエッジに光軸が合うように、被検査物の上面に対して選択した角度方向に置かれ、その上面の領域のエッジからの反射光を受光するライン・センサとを備える、マクロ検査装置を提供する。
【0008】
本発明は、光源とライン・センサを用いて被検査物の表面の平坦度を検査するマクロ検査方法であって、光源を被検査物の上面に対して任意に選択した角度にセットして、その上面に光を照射するステップと、光源によって照射されるその上面の領域のエッジに光軸が合うように、被検査物の上面に対して選択した角度にライン・センサをセットするステップと、選択された角度にセットされたライン・センサにより、その上面の領域のエッジからの反射光を受光するステップとを含む、マクロ検査方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の一実施の形態のマクロ検査装置100を示した図である。図1において、円形のステージ1上に被検査物2が載る。ステージ1は、ステージ・コントローラ4の制御下で、リニアモータ3によって、回転(θ)、水平(x)あるいは垂直(y)の方向に移動する。光源5は、コントローラ8の制御下で、ステッピング・モータ7によって、円弧状のレール6に沿って移動する。光源5の角度は、ステージ1上の被検査物2の上面に対して任意に設定される。光源の明るさは、光源用の電源10によって調整される。ラインセンサカメラ9は、光源5と同様に、コントローラ8の制御下で、ステッピング・モータ7により、円弧状のレール6に沿って移動する。ラインセンサカメラ9の出力は画像処理手段11に入る。画像処理手段11は、ステージ・コントローラ4、コントローラ8、ラインセンサカメラ9および光源用の電源を制御する。
【0010】
ステージ1は、被検査物2の表面以外からの反射光ができるだけ発生しにくい構造を有することが望ましい。具体的には、被検査物2が透明で、かつその表面での散乱光が十分に発生する場合、ステージ1は、光源5の光(波長)に対して鏡面となる材料からなることが望ましい。被検査物2の表面が鏡面で、かつその表面での散乱光が発生しない場合、ステージ1は、光源5の光(波長)を吸収し、つや消しの材料からなることが望ましい。被検査物2としては、例えば、半導体基板(半導体ウエハ)上の薄膜、ガラス基板上の液晶層、ハードディスク、パターンド・メディアが該当する。ただし、被検査物2はこれらに限られず、基本的に所定の面積の表面を有する物であれば何でも良い。
【0011】
光源5は、被検査物2の表面に例えば長方形のような縦長(線状)の照射領域ができるように、光を照射できることが望ましい。言い換えれば、光源5は、被検査物2の表面に、所定の長さの線状のエッジを含む照射領域を形成できることが望ましい。その縦(エッジ)の長さは、被検査物2のサイズ、ラインセンサカメラ9の画素数等に応じて決める。光源5の構成としては、ハロゲン電球のような電球型の光源、あるいはLEDのような発光素子を列状の並べたもののいずれの形態であってもよい。光源5は、いずれの形態の場合も、レンズ等の光学系も有する。
【0012】
ラインセンサカメラ9としては、CCDのような受光素子(画素)を列状に並べたセンサを有することが望ましい。ラインセンサカメラ9は、被検査物2の表面からの反射光を受光素子(画素)に導くためのレンズ等の光学系を含む。光源5とラインセンサカメラ9は、ステッピング・モータ7によって、所定の最小制御角度Δθ毎に、被検査物2の表面に対する角度が変えられる。ステッピング・モータ7による最小制御角度Δθは1/100度以下である。その最小制御角度はできるだけ小さいほうが望ましい。
【0013】
画像処理手段11は、所定の測定プログラムに基づき、ラインセンサカメラ9からの画像情報を処理する。画像処理手段11は、各コントローラ4、8および照明用電源10を制御する。画像処理手段11は、ラインセンサカメラ9の制御用のカード(回路基板)、各コントローラ4、8あるいは照明用電源10を制御するためのカード(回路基板)、画像データを格納するためのメモリ等を有する。画像処理手段11としては、例えばディスプレイを有するパーソナル・コンピュータ(PC)が該当する。
【0014】
図2は、図1のマクロ検査装置100の光源5とラインセンサカメラ9の位置関係の一例を示す図である。被検査物2の表面に光源5による照明領域15、言い換えれば光源自身が写りこんでいる。図2の(a)は、ラインセンサカメラ9の光軸18が照明領域15の左端の領域16に合っている場合を示す。図2の(b)は、ラインセンサカメラ9の光軸18が照明領域15の右端の領域17に合っている場合を示す。(a)と(b)の各々において、上の図は側面図であり、下の図は上面図である。符号19は光源の光軸を意味する。光源の光軸19とラインセンサカメラ9の光軸18は一致していない。すなわち、ラインセンサカメラ9は、被検査物2の表面からの正反射光から光軸をずらした位置(角度)に置かれる。
【0015】
図2に示すように、マクロ検査装置100の一つの特徴は、ラインセンサカメラ9の光軸18を光源5によって照射される領域15のエッジ16、17に合わせることである。その理由は、そのエッジからの反射光が、非常に指向性が高いことを実験により見出したからである。本発明では、その指向性の高いエッジからの反射光を利用することで、被検査物2の表面の状態(平坦性)を検出する。なお、本出願で言うエッジは、照射領域の端のみならずその端を含む所定の領域(狭い幅)も含む。
【0016】
指向性の高いエッジからの反射光を検出するためには、以下の関係を満たす必要がある。すなわち、ラインセンサカメラ9の画素サイズをd、光学倍率をM、その光軸18の長さをR、ステッピング・モータ7によって制御可能な最小角度をΔθとした場合、
d/M ≦ 2Rsin(Δθ/2) (1)
の関係を満たす必要がある。ここで、光学倍率Mは、ラインセンサカメラの長さL(例えば、CCDの場合、画素サイズ×画素数)と有効視野Fにより、
M=L/F (2)
により、求まるパラメータである。光学倍率Mは、ラインセンサカメラに取り付けるレンズにより変わる。例えば、85mmレンズ、1000mmの対物間距離(基板からレンズまでの距離)、画素サイズ14μm、画素数2048画素の場合、L=28.672mm、F=305.272mm になるので、M = 28.672 / 305.272 = 0.0939となる。
【0017】
式(1)は、概念的には、指向性の高い反射光を検出するためにはラインセンサカメラ9を被検査物2から所定の距離以上の遠くへ離す必要があることを示している。言い換えれば、式(1)は、被検査物2の表面からの反射光(光束)を便宜上一つのベクトルとみなした場合、ラインセンサカメラ9の画素サイズが、カメラ9の最小移動角度Δθよりも大きいと(光軸18の長さが短いと)、そのベクトル以外の光束が増加して、指向性の高い反射光を捕らえることができなくなることを意味する。その場合、被検査物2の表面の平坦度を精度良く検出することができない。
【0018】
式(1)において、例えば、画素サイズdが10マイクロメータ、制御可能な最小角度Δθが0.01度の場合、光軸18の長さRは573ミリメートル以上必要となる。但しその時のマクロ検査光学系における光学倍率を0.1とする。
【0019】
次に、本発明のマクロ検査方法の一実施形態を図1のマクロ検査装置を例にとり説明する。図3に図1の画像処理装置11による制御フローを示す。この制御フローは、画像処理手段11のメモリに格納させるプログラムによって実行される。被検査物2をステージ1上にセットする(ステップ30)。この時、ステージ1を動かして、被検査物2を最初の測定位置まで移動させる。光源5を所定の角度にセットする(ステップ31)。この時、光源5は、その光束が被検査物2の最初の測定位置に当たるようにセットされる。ラインセンサカメラ9を所定の角度にセットする(ステップ32)。この時、ラインセンサカメラ9は、被検査物2の上面の光源5による照射領域のエッジ(図2の符号16、17)にその光軸が合うようにセットされる。ラインセンサカメラ9のセットについてはさらに後述する。
【0020】
ラインセンサカメラ9で被検査物2の表面からの反射光を測定する(ステップ33)。測定結果(反射光データ)は画像処理手段11のメモリに格納される。その際、反射光のデータは、最初に輝度データとして、一端画像処理手段11内の画像ボード(回路基板)に送られる。その後、輝度データは、その画像ボードから、一定の単位(例えば1ラインの輝度データ)毎に、画像処理手段11内のメモリに送られ、そこで一端格納される。次の被検査物2の表面の測定位置までステージ1が移動する(ステップ34)。この時、被検査物2の表面の照射領域が所定の間隔で移動する。ラインセンサカメラ9で被検査物2の表面からの反射光を測定する(ステップ33)。反射光の測定(ステップ33)とステージ1の移動(ステップ34)を、被検査物2の表面の全ての測定領域が測定されるまで繰り返す(35)。
【0021】
メモリに格納された輝度データは、ビットマップ形式に変換された後、画像処理手段11内の他のメモリ(ハードデイスク等)に格納される(ステップ36)。画像処理の結果、被検査物2の表面のマクロ検査結果(画像)が得られる。なお、画像処理(ステップ36)は、各反射光の測定(ステップ33)ごとに、あるいは複数の測定ごとに行ってもよい。その場合は、最後に複数の画像処理結果(ビットマップ形式)が1つの画像として複合(編集)される。
【0022】
図4は、ラインセンサカメラ9のセット(ステップ32)の詳細を示すフローである。ラインセンサカメラ9を、被検査物2の表面の照射領域15のエッジ16(17)から正反射光が受光できる角度θ1にセットする(ステップ40)。ラインセンサカメラ9の角度を最小制御角度Δθごとに変えながら、正反射光が受光できなくなる角度θ2までラインセンサカメラ9を動かす(ステップ41)。ラインセンサカメラ9を角度θ2から角度nΔθ(nは任意の自然数)だけ戻した角度(θ2−nΔθ)にセットする(ステップ42)。nの値は被検査物2の表面状態等に応じて、より検出感度が良くなるように任意に設定される。
【0023】
図5は、図1のマクロ検査装置により、半導体ウエハをステージ(吸着板)に吸着させた(真空引きした)状態で、その表面を測定した結果である。図5で特に明るい部分は凸部であり、逆に暗い部分は凹部である。ウエハの表面全体の歪、凹凸等の状態をマクロ的に観察することができた。
【0024】
本発明の実施形態について、図1−図5を例にとり説明をした。しかし、本発明はこれらの実施形態に限られるものではない。本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変形を加えた態様で実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態のマクロ検査装置を示す図である。
【図2】図1のマクロ検査装置の光源とラインセンサカメラの位置関係を示す図である。
【図3】図1の画像処理装置11による制御フローを示す図である。
【図4】図3のラインセンサカメラのセット(ステップ32)のフローを示す図である。
【図5】図1のマクロ検査装置による測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ステージ
2 被検査物
3 リニアモータ
4、8 コントローラ
5 光源
6 レール
7 ステッピング・モータ
9 ラインセンサカメラ
10 光源用電源
11 画像処理装置
15 照明領域
16、17 照明領域のエッジ
18、19 光軸
100 マクロ検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の表面の平坦度を検査するマクロ検査装置であって、
前記被検査物を乗せるためのステージと、
前記被検査物の上面に対して任意に選択した角度方向から前記上面に光を照射する光源と、
前記光源によって照射される前記上面の領域のエッジに光軸が合うように、前記被検査物の上面に対して選択した角度方向に置かれ、前記上面の領域のエッジからの反射光を受光するためのライン・センサと
を備える、マクロ検査装置。
【請求項2】
前記光源によって照射される前記上面の領域は、所定の長さの線状のエッジを含む、請求項1のマクロ検査装置。
【請求項3】
前記光源は線状光源からなる、請求項1のマクロ検査装置。
【請求項4】
前記光源は、前記被検査物の上面に、所定の長さの線状のエッジを含む照射領域を形成させるための光学系を含む、請求項1のマクロ検査装置。
【請求項5】
前記ライン・センサの画素サイズをd、光学倍率をM、光軸の長さをR、制御可能な最小角度をΔθとした場合、
d/M ≦ 2Rsin(Δθ/2)
の関係を満たす、請求項1のマクロ検査装置。
【請求項6】
前記被検査物は基板の表面に形成された薄膜を含む、請求項1のマクロ検査装置。
【請求項7】
前記プレートの表面は、鏡面または入射光を吸収する面を含む、請求項1のマクロ検査装置。
【請求項8】
前記ライン・センサの出力信号を受け取り、前記ライン・センサが受光した反射光量に対応した画像を生成する画像処理手段と、
前記光源の角度を変えるための光源駆動手段と、
前記ライン・センサの角度を変えるためのライン・センサ駆動手段と、
前記ステージを移動させる移動手段と
をさらに含む、請求項1ないし7のいずれか1項のマクロ検査装置。
【請求項9】
光源とライン・センサを用いて被検査物の表面の平坦度を検査するマクロ検査方法であって、
光源を被検査物の上面に対して任意に選択した角度にセットして、前記上面に光を照射するステップと、
前記光源によって照射される前記上面の領域のエッジに光軸が合うように、前記被検査物の上面に対して選択した角度にライン・センサをセットするステップと、
前記選択された角度にセットされたライン・センサにより、前記上面の領域のエッジからの反射光を受光するステップと
を含む、マクロ検査方法。
【請求項10】
前記ライン・センサをセットするステップは、
前記ライン・センサを、前記被検査物の上面から正反射光が受光できる角度θ1にセットするステップと、
前記ライン・センサの角度を最小制御角度Δθごとに変えながら、前記正反射光が受光できなくなる角度θ2まで前記ライン・センサを動かすステップと、
前記ライン・センサを前記角度θ2から角度nΔθ(nは任意の自然数)だけ戻した角度(θ2−nΔθ)にセットするステップと
を含む、請求項9のマクロ検査方法。
【請求項11】
前記ライン・センサの画素サイズをd、光学倍率をM、光軸の長さをR、制御可能な最小角度をΔθとした場合、
d/M ≦ 2Rsin(Δθ/2)
の関係を満たす、請求項9または10のマクロ検査方法。
【請求項12】
前記光源による前記上面の照射領域が所定の間隔で移動するように、前記被検査物を移動させるステップをさらに含み、
当該移動ステップと前記被検査物の上面の照射領域からの反射光を受光するステップを前記被検査物の上面の検査が終わるまで、交互に繰り返すことを特徴とする、請求項9ないし11のいずれか1項のマクロ検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−139333(P2009−139333A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318735(P2007−318735)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】