説明

レベルシフト回路及びスイッチング電源装置

【課題】dv/dt印加時に誤動作を防止し且つローサイド側からハイサイド側へ信号を伝達し低電圧でも広い範囲で動作するレベルシフト回路。
【解決手段】dv/dt過渡信号が印加され且つ入力信号が入力されないとき第1抵抗R1を含むセット側負荷抵抗R1,R9,MP1のオン抵抗及び第2抵抗R2を含むリセット側負荷抵抗R2,R10,MP2のオン抵抗を第1抵抗及び第2抵抗よりも小さくし、トランジスタMN3がオンである場合にセット信号を生成し且つセット側負荷抵抗をリセット側負荷抵抗よりも大きくし、トランジスタMN4がオンである場合にリセット信号を生成し且つリセット側負荷抵抗をセット側負荷抵抗よりも大きくする制御部MN1,MN2,MP1,MP2,R1,R2,R9,R10、セット信号とリセット信号とに基づいて入力信号をレベルシフトした出力信号を出力するフリップフロップ12を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源電圧の異なる回路相互間のインターフェースに用いられるレベルシフト回路及び当該レベルシフト回路を用いたスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型化の要求が特に強いフラットパネルディスプレイ等に用いられるスイッチング電源装置は、スイッチング素子を2石用いるハーフブリッジ型で、さらにスイッチング損失を減らすことができる電流共振型を採用する場合が多い。さらに、将来的にフラットパネルディスプレイ(LCD−TV等)に代表される民生装置の小型化と薄型化のために、スイッチング電源の高周波化による各部品のダウンサイジングが要求されている。
【0003】
ハーフブリッジ構成においてはNch型MOSFETが2石用いられており、ローサイド側の制御信号をハイサイド側に伝達するレベルシフト回路が必要とされる。民生用スイッチング電源の1次側コンバータ入力電圧は、高調波規制対応PFC(Power Factor Correction)回路の出力になるので、一般的にはDC400V程度となる。レベルシフト回路についても、ローサイド側電位から400V程度まで、ほぼ同じ電圧だけレベルシフトする必要があるために特有の問題が発生し、各種対策が検討されている。
【0004】
図7は、従来のレベルシフト回路を利用するハーフブリッジ構成の電流共振型電源の構成例を示す図である。レベルシフト回路は、制御回路2内においてハイサイドドライバとして使用されている。
【0005】
図7に示す電源装置において、制御回路2は、ハイサイドのスイッチング素子とローサイドのスイッチング素子を交互にオン/オフさせ、周波数を制御することにより共振コンデンサCiへの充放電期間を変化させ、トランスの二次側に誘導される電力量を制御する。
【0006】
特許文献1には、dv/dt電流によるフリップフロップ回路の誤動作を防止してスイッチングデバイスを保護する半導体装置が記載されている。図8は、特許文献1に記載されている従来のレベルシフト回路を含む半導体装置の構成を示す回路図であり、一般的なハイサイドドライバ回路HD1の構成を示している。この半導体装置は、図8に示すように、電源とグランドとの間にIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等によるスイッチング素子17,18を直列に接続したハーフブリッジ型パワーデバイス19を構成しており、スイッチング素子17とスイッチング素子18との接続点N1に負荷(モータ等の誘導性負荷)21を接続している。
【0007】
ハイサイド側のスイッチング素子17は、接続点N1の電位を基準電位として、当該基準電位と電源が供給する電源電位(例えば400V)との間でスイッチング動作する素子である。一方、ローサイド側のスイッチング素子18は、接地電位を基準電位として、当該基準電位と接続点N1の電位との間でスイッチング動作する素子である。
【0008】
図8に示すようなハイサイドドライバ回路HD1においては、ハーフブリッジ型パワーデバイス19のスイッチング状態によって、接続点N1からダイオード8及びダイオード9のアノードに至るラインL1及びL1を基準電位とするハイサイド側回路に速いdv/dt過渡信号が印加される。高耐圧のMOSFET20,30は、ドレインと各部耐圧(通常700〜1100V程度)を持たせるための素子領域が大きく、ドレインとソース、バックゲート、ゲート、サブ基板間において寄生容量を有する。
【0009】
仮にフィルタ回路26が存在しない場合、ハイサイドドライバ回路HD1は、MOSFET20,30のドレイン−ソース間に存在する寄生容量により寄生容量とdv/dt過渡信号との積算で得られるdv/dt電流が流れ、抵抗4及び抵抗5に同時に電圧降下が生じるので、インバータ6,7を動作させてフリップフロップ回路12のセット入力およびリセット入力に誤って“H(High)”信号を与えてしまう場合がある。
【0010】
図8に示すハイサイドドライバ回路HD1は、フリップフロップ回路12の入力の前段にフィルタ回路26を備えているので、ラインL1にdv/dt過渡信号が印加されてMOSFET20,30に同時にdv/dt電流が流れることにより抵抗4,5に同時に電圧降下が生じた場合においても、フィルタ回路26がインバータ回路6,7により出力される“H”信号を阻止する。
【0011】
すなわち、フィルタ回路26は、自己が有するCRフィルタの時定数に応じた時間が経過するまでフリップフロップ回路12に“H”信号を出力しないので、遅延時間をdv/dt過渡信号の印加時間よりも長く設定することによりdv/dt電流による“H”信号がフリップフロップ回路12に入力されるのを阻止し、フリップフロップ回路12の誤動作を防止できる。
【0012】
一方、パルス発生回路10から出力されるオン信号及びオフ信号のパルス幅をdv/dt過渡信号印加時間よりも十分に長く、すなわちフィルタ回路26による遅延時間よりも長く設定することにより、パルス発生回路10により出力されるオン信号及びオフ信号に基づいたインバータ回路6,7の出力信号は、フリップフロップ回路12に与えられ、フリップフロップ回路12を正常に動作させる。
【0013】
図9は、特許文献1に記載されている従来のレベルシフト回路を含む半導体装置の動作を示すタイミングチャートである。スイッチング素子17をオンさせる場合には、パルス発生回路10は、オン信号として“H”信号を出力し、オフ信号として“L(Low)”信号を出力する。この場合に、インバータ回路7による“H”信号を受けたオン側CRフィルタ回路の出力は、図9に示すように、コンデンサ25に電荷が満たされるまで徐々に立ち上がることになる。なお、立ち下がりも同様である。オン側CRフィルタ回路の出力が立ち上がると、フリップフロップ回路12は、Q出力として“H”信号を出力する。
【0014】
スイッチング素子17をオフさせる場合には、パルス発生回路10は、オン信号として“L”信号を出力し、オフ信号として“H”信号を出力する。この場合に、インバータ回路6による“H”信号を受けたオフ側CRフィルタ回路の出力は、図9に示すように、コンデンサ24に充電されるまで徐々に立ち上がることになる。なお、立ち下がりも同様である。オフ側CRフィルタ回路の出力が立ち上がると、フリップフロップ回路12は、Q出力として“L”信号を出力する。
【0015】
したがって、スイッチング素子17は、フリップフロップ回路12のQ出力から“H”信号が出力されている期間においてオンしており、フィルタ回路26を有さない場合に比してオン側オフ側CRフィルタ回路の遅延時間の分だけフリップフロップ回路12のQ出力が遅れてオン/オフすることになる。
【0016】
また、MOSFET20,30は、上述したようにオン/オフのパルス幅がフィルタ回路26による遅延時間よりも長く設定されている必要があるが、誤動作耐量を上げるためにフィルタ回路26のフィルタ時間を長くすると、消費電力を増大するという問題がある。そこで、特許文献1には、論理回路で構成することにより遅延時間を生じさせない保護回路を有する半導体装置も記載されている。
【0017】
特許文献2には、dv/dt過渡現象に対する妨害排除能力を備えたレベルシフト回路が記載されている。このレベルシフト回路は、パルスフィルター回路を備えており、このパルスフィルター回路がパルス幅に基づいてdv/dt過渡信号により生成されるパルスを識別し、正常動作パルスのみを選択して通過させるので、dv/dt過渡信号による誤動作を回避することができる。
【0018】
特許文献3に記載されたレベルシフト回路は、セットレベル回路を作動させるために必要な値より低い入力信号で、リセットレベル回路を作動し、パワーMOSFETをターンオフするリセット優先回路を備えている。すなわち、このレベルシフト回路は、リセット電圧降下抵抗器の大きさを増加するかあるいは、セットおよびリセット電圧降下抵抗器を読む回路の入力しきい値を調整することによりリセット優先に構成されており、ノイズパルスによる誤動作を防止することができる。
【0019】
リセット優先の概念は、図8に示すレベルシフト回路に適用することもできる。リセット側の抵抗4を大きくすることにより図8に示すレベルシフト回路は、リセット優先でハイサイド側のスイッチング素子17をオフにするため、スイッチング素子17,18が同時にオンするのを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開平9−200017号公報
【特許文献2】特開平4−230117号公報
【特許文献3】特開平8−65143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
レベルシフト回路において、例えばローサイド側スイッチング素子がオフでハイサイド側スイッチング素子がターンオンすることにより、0Vから400Vに変化する場合(あるいはハイサイド側スイッチング素子がターンオフしてローサイド側スイッチング素子がオンすることにより400Vから0Vに変化する場合)、スイッチング素子のオン/オフに同期してレベルシフト回路にdv/dtが印加される。この場合には、スイッチング素子のオン/オフに起因するdv/dtにより誤動作しないように対策を行う必要がある。
【0022】
特許文献1に記載の半導体装置は、dv/dtが高くなったときにハイサイド側フリップフロップに対して保護回路を入れることにより誤動作を防止している。そのため、dv/dtが高くなりローサイドからハイサイド移行時間中に、ローサイド側からMOSFET20,30を介して正規の信号が伝達されても、保護回路が動作しているので、ローサイド側からハイサイド側にオン/オフ信号が送れなくなるという問題がある。
【0023】
この問題は、主スイッチング素子にIGBT等を用いてスイッチング周波数が最高でも20KHz程度のモータ用途ではdv/dtが小さいため、問題にならない可能性が高い。しかし、電流共振型スイッチング電源を高周波化(500kHz程度)した場合には、dv/dtを高くする必要がある。スイッチングするオン/オフ周期が短くなり(500kHzでは2μSの周期)、相対的にdv/dtを速くしなければ、必要とするオン時間を確保することができなくなる(例えば、dv/dtが0.5μSあると500kHzでは完全なオン又はオフの時間は残りの1μSを折半した値となる。)。従って、dv/dtを高くせざるを得ないので、問題になる可能性が高くなる。
【0024】
特許文献1に記載の装置において上述した問題をクリアする半導体製品を設計する場合(例えば、電流共振型IC等の設計)のレベルシフト回路において高周波化を目指す場合には、当該装置は、通常想定される動作時において保護回路が動作しないように適切な定数設定を行う必要がある。具体的には、設計者は、図8に示す抵抗4,5の抵抗値を下げて、dv/dtによりMOSFET20,30の寄生容量に流れる充電電流による抵抗4,5の電圧降下を小さくして、後段の検出回路が動作しないように設計を行う。さらにMOSFET20,30に流す電流を大きくし、後段の検出回路が動作するのに必要な電流を流せる設計にする。この問題点として、高周波化するにつれてdv/dtが高くなるため、抵抗4,5の抵抗値をより下げる方向になり、MOSFET20,30に流れる電流が増える方向であり、消費電流が増加してしまう点が挙げられる。
【0025】
また、レベルシフト回路は、ハイサイド側電位31(図8)が低い場合(例えば10V以下等)、かつハイサイド基準電位が低い場合はMOSFET20,30が飽和領域から非飽和領域になるため、ドレイン電流が急激に下がる。しかし、レベルシフト回路は、ハイサイド側電位が、どのような電位でもローサイド側からハイサイド側へ信号を伝達することが求められる。このため、ハイサイド側電位が低い時でも信号を伝達できるように、MOSFET20,30のドレイン電流を設定し、抵抗4,5で十分な信号が確保されるように設計する。この場合、ハイサイド側電位が高い場合には、ドレイン電流が増加してしまうので、消費電力が増加する。通常であれば、ハイサイド側電位が低い時(例えば10V以下)のMOSFET20,30のドレイン電流は1〜5mA程度まで下がり、ハイサイド側電位が高い時(400V等)のMOSFET20,30のドレイン電流は7〜30mA程度まで増加し、ハイサイド側電位が高いと、MOSFET20,30の静特性によりドレイン電流が3倍以上に増加する。
【0026】
レベルシフト回路の損失は、MOSFET20,30のゲート幅を150nsとし、発振周波数を200kHz,ドレイン電流を10mAと設定した場合に、2×150ns×400V×10mA×200kHz=0.24Wであり、無視できない値である。発振周波数に比例して損失が増加するため、高周波化するためには、1パルスの損失を下げる必要がある。あるいは、回路電流を下げるために、ハイサイド側電位が低い時(10V以下)を見越して、抵抗4,5を大きくして電圧振幅を大きくする方法もあるが、抵抗4,5とMOSFET20,30のもつ寄生容量との時定数が大きくなり、dv/dt印加時に寄生容量への充電が間に合わず、インバータ6,7が動作して後段に信号を伝えて、フリップフロップ回路12を誤動作させてしまう。
【0027】
本発明は、dv/dtの印加によるフリップフロップ回路の誤動作を防止し、かつdv/dtの印加時でもローサイド側からハイサイド側へ信号を伝達し、ハイサイド側電位が低電圧でも低消費電力で広い範囲で動作できるレベルシフト回路及び当該レベルシフト回路を用いたスイッチング電源装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明に係るレベルシフト回路は、上記課題を解決するために、一端がレベルシフト電源に接続された所定値以上の抵抗値を有する第1抵抗と、前記第1抵抗の他端にドレインが接続され、ソースがグランドに接続された第1のN型MOSFETと、前記第1抵抗と同じ抵抗値を有し、一端が前記レベルシフト電源に接続された第2抵抗と、前記第2抵抗の他端にドレインが接続され、ソースがグランドに接続された第2のN型MOSFETと、入力信号に基づいて前記第1のN型MOSFETと前記第2のN型MOSFETとのオン/オフを制御するパルス発生回路と、dv/dt過渡信号が印加され且つ前記入力信号が入力されないとき前記第1抵抗を含むセット側負荷抵抗及び前記第2抵抗を含むリセット側負荷抵抗を前記第1抵抗及び前記第2抵抗よりも小さくし、前記第1のN型MOSFETがオンである場合にセット信号を生成し且つ前記セット側負荷抵抗を前記リセット側負荷抵抗よりも大きくし、前記第2のN型MOSFETがオンである場合にリセット信号を生成し且つ前記リセット側負荷抵抗を前記セット側負荷抵抗よりも大きくする制御部と、前記制御部により生成されたセット信号とリセット信号とに基づいて前記入力信号をレベルシフトした出力信号を出力するフリップフロップとを備えることを特徴とする。
【0029】
本発明に係るスイッチング電源装置は、上記課題を解決するために、ハイサイド側スイッチング素子とローサイド側スイッチング素子とを有するスイッチング電源装置において、前記ハイサイド側スイッチング素子を制御するための回路として、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のレベルシフト回路を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、dv/dtの印加によるフリップフロップ回路の誤動作を防止し、dv/dtの印加時でもローサイド側からハイサイド側へ信号を伝達し、ハイサイド側電位が低い電圧でも低消費電力で広い範囲で動作できるレベルシフト回路及びスイッチング電源装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1の形態のレベルシフト回路の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施例1の形態のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【図3】本発明の実施例1の形態のレベルシフト回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の実施例1の形態のレベルシフト回路の動作を示すタイミングチャートの別例である。
【図5】本発明の実施例1の形態のレベルシフト回路の動作を示すタイミングチャートの別例である。
【図6】本発明の実施例2の形態のレベルシフト回路の構成を示す回路図である。
【図7】従来のレベルシフト回路を利用するハーフブリッジ構成の電流共振型電源の構成例を示す図である。
【図8】従来のレベルシフト回路を含む半導体装置の構成を示す回路図である。
【図9】従来のレベルシフト回路を含む半導体装置の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明のレベルシフト回路及びスイッチング電源装置の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0033】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。まず、本実施の形態の構成を説明する。図1は、本発明の実施例1のレベルシフト回路の構成を示す回路図である。このレベルシフト回路は、図1に示すように、抵抗R1〜R6,R9,R10と、パルス発生回路10と、トランジスタMN1,MN2,MN3,MN4と、トランジスタMP1,MP2と、フリップフロップ12と、ダイオードD1,D2とを備えている。すなわち、本実施例のレベルシフト回路は、図8に示す従来のレベルシフト回路からフィルタ回路26を削除して抵抗R5,R6,R9,R10及びトランジスタMN1,MN2、トランジスタMP1,MP2、ダイオードD1,D2を追加した。
【0034】
図2は、本発明の実施例1のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。このスイッチング電源装置は、図2に示すように、ハーフブリッジ構成のハイサイド側スイッチング素子17aとローサイド側スイッチング素子18aとを有する電流共振型スイッチング電源装置であり、ハイサイド側スイッチング素子17aを制御するための回路として制御回路2内のレベルシフト回路を用いている。ただし、本発明を適用するにあたり必ずしもハーフブリッジ構成である必要はなく、フルブリッジ構成のスイッチング電源装置にも適用可能である。
【0035】
図2に示すスイッチング電源装置において、制御回路2は、ハイサイド側スイッチング素子17aとローサイド側スイッチング素子18aを交互にオン/オフさせ、周波数を制御することにより共振コンデンサCiへの充放電期間を変化させ、トランスの二次側に誘導される電力量を制御する。
【0036】
図2に示すように、中点電圧(レベルシフト基準電位)は、ハイサイド側スイッチング素子17aのソースとローサイド側スイッチング素子18aのドレインとに接続されたライン上の電位であり、レベルシフト電源に対して所定の電圧差を有する。本実施例において、レベルシフト電源VB(ハイサイド側電源)とレベルシフト基準電位VS(ハイサイド基準電位)との間の電圧差は、10V程度である。
【0037】
図1の抵抗R1は、本発明の第1抵抗に対応し、一端がレベルシフト電源に接続され、他端がトランジスタMN3のドレインに接続されている。
【0038】
トランジスタMN3は、本発明の第1のN型MOSFETに対応し、抵抗R1の他端にドレインが接続され、ソースがグランドに接続されている。ただし、本実施例においては、トランジスタMN3のソースは、抵抗R3を介してグランドに接続されている。すなわち、抵抗R3は、本発明の第9抵抗に対応し、トランジスタMN3のソースとグランドとの間に接続されている。さらに、トランジスタMN3のドレインとグランドとの間には、寄生容量C1が存在する。また、トランジスタMN3のゲートは、パルス発生回路10に接続されている。
【0039】
抵抗R2は、本発明の第2抵抗に対応し、抵抗R1と同じ抵抗値を有し、一端がレベルシフト電源に接続され、他端がトランジスタMN4のドレインに接続されている。抵抗R1,R2は、所定値である1kΩ以上の抵抗値を有し、1kΩ〜10kΩ程度の抵抗値を有し、例えば5kΩである。
【0040】
トランジスタMN4は、本発明の第2のN型MOSFETに対応し、抵抗R2の他端にドレインが接続され、ソースがグランドに接続されている。ただし、本実施例においては、トランジスタMN4のソースは、抵抗R4を介してグランドに接続されている。すなわち、抵抗R4は、本発明の第10抵抗に対応し、トランジスタMN4のソースとグランドとの間に接続されている。さらに、トランジスタMN4のドレインとグランドとの間には、寄生容量C2が存在する。また、トランジスタMN4のゲートは、パルス発生回路10に接続されている。
【0041】
パルス発生回路10は、入力信号に基づいてトランジスタMN3とトランジスタMN4とのオン/オフを制御する。具体的には、パルス発生回路10は、入力信号の立ち上がりの際にセットパルス信号をトランジスタMN3のゲートに出力する。また、パルス発生回路10は、入力信号の立ち下がりの際にリセットパルス信号をトランジスタMN4のゲートに出力する。
【0042】
なお、トランジスタMN3,MN4のゲート駆動パルスは、例えば50nS〜200nS程度である。
【0043】
抵抗R5,R6,R9,R10とトランジスタMN1,MN2とトランジスタMP1,MP2とは、本発明の制御部に対応する。この制御部は、dv/dt過渡信号が印加され且つ入力信号が入力されないとき抵抗R1を含むセット側負荷抵抗及び抵抗R2を含むリセット側負荷抵抗を抵抗R1及び抵抗R2よりも小さくし、トランジスタMN3がオンである場合にセット信号を生成し且つセット側負荷抵抗をリセット側負荷抵抗よりも大きくし、トランジスタMN4がオンである場合にリセット信号を生成し且つリセット側負荷抵抗をセット側負荷抵抗よりも大きくする。
【0044】
セット側負荷抵抗は、抵抗R1と抵抗R9とトランジスタMP1とからなり、リセット側負荷抵抗は、抵抗R2と抵抗R10とトランジスタMP2とからなる。
【0045】
抵抗R5は、本発明の第5抵抗に対応し、一端がレベルシフト電源に接続され、他端がトランジスタMN1のドレインに接続されている。
【0046】
トランジスタMN1は、本発明の第3のN型MOSFETに対応し、抵抗R5の他端とフリップフロップ12のセット端子とにドレインが接続され、ソースがトランジスタMN3のドレインに接続され、ゲートがトランジスタMN4のドレインに接続されている。なお、本実施例のトランジスタMN1のドレインは、インバータ16を介してフリップフロップ12のセット端子に接続されている。
【0047】
抵抗R6は、本発明の第6抵抗に対応し、抵抗R5と同じ抵抗値を有し、一端がレベルシフト電源に接続され、他端がトランジスタMN2のドレインに接続されている。抵抗R5,R6は、例えば抵抗R1,R2の2倍から20倍程度の抵抗値を有している。
【0048】
トランジスタMN2は、本発明の第4のN型MOSFETに対応し、抵抗R6の他端とフリップフロップ12のリセット端子とにドレインが接続され、ソースがトランジスタMN4のドレインに接続され、ゲートがトランジスタMN3のドレインに接続されている。なお、本実施例のトランジスタMN2のドレインは、インバータ16を介してフリップフロップ12のリセット端子に接続されている。
【0049】
抵抗R5,R6に接続される検出インバータ回路のスレッショルドは、レベルシフト電源とレベルシフト基準電位との電圧差の50%(20%〜80%の間)である。
【0050】
フリップフロップ12は、制御部により生成されたセット信号とリセット信号とに基づいて入力信号をレベルシフトした出力信号を出力する。本実施例においては、フリップフロップ12による出力信号は、図2に示すハイサイド側スイッチング素子17aのゲートに印加される。
【0051】
抵抗R9は、本発明の第3抵抗に対応し、例えば、5kΩである。抵抗R9の一端がレベルシフト電源に接続され、他端がトランジスタMP1のソースに接続されている。トランジスタMP1は、本発明の第1のP型MOSFETに対応し、ソースが抵抗R9の他端に接続され、ゲートがトランジスタMN1のゲートとトランジスタMN4のドレインに接続され、ドレインがトランジスタMN3のドレインとトランジスタMN1のソースとに接続されている。
【0052】
抵抗R10は、本発明の第4抵抗に対応し、抵抗R9の抵抗値と同じ抵抗値を有し、例えば、5kΩである。抵抗R10の一端がレベルシフト電源に接続され、他端がトランジスタMP2のソースに接続されている。トランジスタMP2は、本発明の第2のP型MOSFETに対応し、ソースが抵抗R10の他端に接続され、ゲートがトランジスタMN2のゲートとトランジスタMN3のドレインに接続され、ドレインがトランジスタMN4のドレインとトランジスタMN1のゲートとトランジスタMP1のゲートとに接続されている。
【0053】
トランジスタMP1,MP2は、dv/dt過渡信号がレベルシフト電源VBに印加され且つパルス発生回路10から入力信号が入力されないとき抵抗R1及び抵抗R2の抵抗値を小さくするように動作する。
【0054】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。本実施例のレベルシフト回路は、大きく分けて4つの動作があるため、分けて説明を行う。
【0055】
最初に、レベルシフト回路に対するdv/dt印加時の誤動作耐量について説明する(動作1)。図3は、本実施例のレベルシフト回路の動作を示すタイミングチャートであり、図2に示すような電流共振型スイッチング電源装置を想定したものである。図3において、LOは、ローサイド側スイッチング素子18aのゲートに印加される電圧であり、HOは、ハイサイド側スイッチング素子17aのゲートに印加される電圧である。
【0056】
時刻t1においてローサイド側スイッチング素子18aがオフされると、時刻t1から時刻t2までの間に共振回路の影響により中点電圧が0Vから400Vに変化する(dv/dtが印加される)。中点電圧が上がりきった時刻t2においてハイサイド側スイッチング素子17aがオンするので、ハイサイド側スイッチング素子17aのスイッチ端子間電圧はほぼ0Vであり、図2に示すスイッチング電源装置は、ZVS(ゼロボルトスイッチング)を行うことができ、スイッチングクロス低減(=電源効率改善)とノイズ低減に効果がある。
【0057】
dv/dt印加時にdv/dtに応じて寄生容量C1,C2を充電する電流が抵抗R1,R2に流れるので、抵抗R1,R2の両端に電圧降下が発生する。この場合に、抵抗R1,R2における電圧降下量が同じであるため、トランジスタMN3のドレインにおける電位とトランジスタMN4のドレインにおける電位との間に電圧差は生じない。従って、トランジスタMN1,MN2は、それぞれにおけるゲート−ソース間電圧が約0Vとなるのでオフ状態を維持し、抵抗R5,R6の両端に電圧降下を発生させない。これにより、抵抗R5,R6とトランジスタMN1,MN2,MP1,MP2とからなる制御部は、後段のインバータ及びフリップフロップ12に信号を出力しないので、dv/dtに起因する誤動作を生じさせない。
【0058】
このとき、寄生容量C1,C2を充電する電流により抵抗R1の両端と抵抗R2の両端とに電圧降下が生ずる。すなわち、抵抗R1と抵抗R2とは同一抵抗値であるので、抵抗R1と抵抗R2との電圧降下分も同じになる。このため、トランジスタMP1のソースにはレベルシフト電源電圧が印加され、ゲートにはレベルシフト電源電圧から抵抗R2の両端電圧を引いた電圧が印加される。トランジスタMP2のソースにはレベルシフト電源電圧が印加され、ゲートにはレベルシフト電源電圧から抵抗R1の両端電圧を引いた電圧が印加される。
【0059】
すなわち、トランジスタMP1(MP2)のゲート電位がソース電位よりも抵抗R1(R2)の電圧降下分だけ低くなるので、トランジスタMP1(MP2)はオンする。トランジスタMP1(MP2)のオン抵抗は、ゲートとソースとの印加される電圧によって決定される。従って、抵抗R9(R10)とトランジスタMP1(MP2)の合計抵抗値が抵抗R1(R2)に並列に接続されるので、セット側負荷抵抗及びリセット側負荷抵抗は小さくなる。従って、抵抗R1,R2の電圧降下は小さくなるので、誤信号やノイズに強くなる。
【0060】
なお、特許文献1の引用例では、dv/dt印加時にdv/dtに応じて寄生容量C1,C2を充電する電流が抵抗4,5に流れるので、抵抗4,5の両端に電圧降下が発生する。この電圧降下がインバータ6,7のスレッショルドに達すると後段に信号が伝達され、フィルタ回路26は、信号をカットオフするが、遅延時間よりもパルス発生回路10から出力されるオン信号オフ信号のパルス幅を十分に長くするので消費電力増大の問題を生じ、さらにフィルタ回路26の処理能力以上のノイズ信号が入力されれば、フリップフロップ12に誤信号を伝達してしまい、動作不安定となって誤動作の原因となる。特許文献2も同様である。
【0061】
次に、セットパルス、リセットパルス伝達時の動作について説明する(動作2)。ただし、セットパルス伝達時の動作とリセットパルス伝達時の動作とは、使用するトランジスタや抵抗が異なるだけで動作自体に違いは無いため、ここではセットパルス伝達時の動作についてのみ説明する。
【0062】
図3の時刻t2において、パルス発生回路10がトランジスタMN3のゲートに対してセットパルス信号を出力すると、トランジスタMN3はオンして抵抗R1に電流を流す。これによって抵抗R1の両端に電圧差が発生するので、トランジスタMN1のソース電圧が下がり、ゲート−ソース間電圧がスレッショルド以上になると、トランジスタMN1はオンして抵抗R5に電流を流す。抵抗R5の両端に生じた電圧降下が後段のインバータにおけるスレッショルドに達すると、セット信号がフリップフロップ12に入力され、フリップフロップ12は、ハイサイド側スイッチング素子17aのゲートにH(HIGH)レベルの信号を出力し、スイッチング素子17aをオンさせる。
【0063】
このとき、トランジスタMN1がオンしているため、トランジスタMN1のゲートとソースとに接続されたトランジスタMP1のゲートとソースとの間の電位差は、同じであるので、P型であるトランジスタMP1はオフとなる。このため、セット側負荷抵抗は、抵抗R1の抵抗値と抵抗R5との並列になる。なお、抵抗R1とR5は、抵抗R1が抵抗R5の10倍以上大きい抵抗値のため、抵抗R5の影響は小さい。よって、抵抗R1と抵抗R5は並列接続となるが、ほぼ抵抗R1の抵抗値となるため、後述する説明では、抵抗R5は無視する。このときには、トランジスタMN3からの電流は全て抵抗R1に流れるので、最大の電圧振幅を得ることができる。
【0064】
また、トランジスタMP2のゲート電位がソース電位よりも抵抗R1の電圧降下分だけ低くなるので、トランジスタMP2はオンする。トランジスタMP2のオン抵抗は、ゲートとソースとの印加される電圧によって決定される。従って、抵抗R10とトランジスタMP2の合計抵抗値が抵抗R2に並列に接続されるので、リセット側負荷抵抗は、セット側負荷抵抗よりも小さくなる。従って、リセット側は誤信号やノイズに強くなる。
【0065】
次に、dv/dt印加時で、且つローサイドからハイサイドに信号を伝達する際の動作について説明する(動作3)。図4は、本実施例のレベルシフト回路の動作を示すタイミングチャートの別例であり、図2に示すような電流共振型スイッチング電源装置を想定したものである。
【0066】
時刻t1においてローサイド側スイッチング素子18aがオフされると、共振回路の影響により中点電圧が0Vから上昇する(dv/dtが印加される)。dv/dt印加時にdv/dtに応じて寄生容量C1,C2を充電する電流が抵抗R1,R2に流れるので、抵抗R1,R2の両端に電圧降下が発生する。この場合に、抵抗R1,R2における電圧降下量が同じであるため、トランジスタMN3のドレインにおける電位とトランジスタMN4のドレインにおける電位との間に電圧差は生じない。したがって、トランジスタMN1,MN2は、それぞれにおけるゲート−ソース間電圧が約0Vとなるのでオフ状態を維持し、抵抗R5,R6の両端に電圧降下を発生させないので、後段に信号を伝えない。
【0067】
さらに、トランジスタMP1(MP2)のゲート電位がソース電位よりも抵抗R1(R2)の電圧降下分だけ低くなるので、ゲートとソースとの電位差がスレッショルド以上になれば、トランジスタMP1(MP2)はオンする。従って、抵抗R9(R10)とトランジスタMP1(MP2)のオン抵抗との合計抵抗値が抵抗R1(R2)に並列に接続される。
【0068】
この状態で、トランジスタMN3がオンして電流が流れると、トランジスタMN1のソース電位がトランジスタMN2のソース電位よりも下がるため、トランジスタMN1のソースとゲート間に電位差が生じて、この電位差がスレッショルドに達すると、トランジスタMN1はオンする。抵抗R5には電圧降下が生じて後段に信号を伝えることができる。
【0069】
さらに、この時点でトランジスタMP1とトランジスタMP2とのゲートとソースとの間の電圧を比較すると、トランジスタMN1がオンしているので、トランジスタMP1のゲートとソースとの間の電圧よりもトランジスタMP2のゲートとソースとの間の電圧の方が大きい。このため、抵抗R10とトランジスタMP2のオン抵抗との合計抵抗値が抵抗R2に並列に接続される。
【0070】
従って、抵抗R2の両端電圧は小さくなるので、トランジスタMN2のゲートとソースとの間の電圧は、さらに小さくなり、トランジスタMN2がオフする方向になる。このため、誤信号やノイズに強くなる。また、抵抗R2の両端電圧が小さくなるので、トランジスタMP1のゲートとソースとの間の電圧が小さくなる。従って、トランジスタMP1の抵抗値が大きくなり、抵抗R1の両端電圧が大きくなる。
【0071】
このように、トランジスタMP1,MP2、抵抗R9,R10は、ローサイド側からのセット信号に対して、セット信号を増幅する方向に作用し、リセット側はノイズや誤信号に対して誤動作しないように方向に作用する。
【0072】
また、以下の問題がある。抵抗R1と抵抗R2とに電圧降下が発生しており、この電圧降下が、((VB-VS)+(D1又はD2の順方向電圧VF)+(MN1又はMN2のしきい値Vth)−(MN1又はMN2の後段に信号が伝わるMN1又はMN2のオーバードライブ電圧)以下、限界降下電圧と略する。)まで達すると、トランジスタMN3(MN4)がオンしても、トランジスタMN1(MN2)がオンしない。このため、フリップフロップ12に信号を伝達できない。
【0073】
しかしながら、実施例1では、dv/dt過渡信号が印加されてレベルシフト基準電位VSが高速に上昇したとき、寄生容量C1,C2に充電する電流により抵抗R1,R2の両端電圧が上昇する。このとき、前述した動作1と同様に、トランジスタMP1,MP2がオンし、抵抗R9,R10に電流が流れる。この場合には、抵抗R1に抵抗R9が並列に接続され、抵抗R2に抵抗R10が並列に接続されるので、抵抗R1,R2の両端電圧は下がり、限界降下電圧まで達しないように調整することができる。
【0074】
抵抗R1,R2の両端電圧が限界降下電圧まで達しなければ、トランジスタMN1(セット時)又はトランジスタMN2(リセット時)がオンして、dv/dt印加時でも、ローサイド側からハイサイド側に信号を伝達することができる。
【0075】
なお、抵抗R9,R10により負荷抵抗を下げているが、トランジスタMN3,MN4は、両端電圧が増加して非飽和領域から飽和領域に遷移するため、ドレイン電流は数倍に増加する。このため、ハイサイド側の信号振幅を十分に得ることができる。
【0076】
一方、特許文献1では、フリップフロップがオフ状態でセット信号が入力されると、セット信号は保護回路に入力されず、ハイサイド側に出力されない。なお、抵抗4,5が小さいと、保護回路が動作してないので、セット信号が入力されれば信号伝達が可能であるが、抵抗4,5の抵抗値を小さくすると、それに応じてMOSFET20,30のドレイン電流を大きくする必要があり、消費電力が増大してしまう。
【0077】
特許文献2では、dv/dt印加時の誤信号をフィルタリングするので、セット信号もフィルタリングされてしまうので、信号伝達できない。特許文献3では、dv/dt印加時にセット信号が入ると、セットとリセットの両方の信号がフリップフロップに印加されることとなり、フリップフロップはリセット優先となるため、セット信号を受け付けない。なお、抵抗4,5が小さいと、インバータ6が動作しないので、セット信号が入力されれば信号伝達が可能であるが、抵抗4,5の抵抗値を小さくすると、消費電力が増大してしまう。
【0078】
次に、レベルシフト回路に印加される電圧が低い場合に信号を伝達する際の動作について説明する(動作4)。
【0079】
基本的には、上述した動作2と同じであるが、抵抗R1,R2を特許文献1〜3の抵抗値よりも大きく設定する。レベルシフト電源VB電位が低い(例えば10V以下等)場合には、トランジスタMN3,MN4の電流値が下がるので、抵抗R1,R2の抵抗値を例えば5kΩと大きくすることにより、トランジスタMN3,MN4からの信号を大きくすることができる。
【0080】
レベルシフト電源VB電位が低い場合、この電圧は、セット側であれば、抵抗R1と抵抗R3とトランジスタMN3のオン抵抗とで電圧分割される。従って、抵抗R1(R2)が大きい方が、抵抗R1(R2)の電位差が大きくなるので、よりVB電位が低い範囲まで信号を伝達することができる。これにより、フリップフロップまで信号が伝達されるので、従来の回路よりもレベルシフト回路に印加される電圧が低くても信号を伝達することができる。
【0081】
このように、抵抗R1,R2を特許文献1〜3の抵抗値よりも大きくしてもフリップフロップ12の誤動作がなく、dv/dt時でも信号を伝達できるので、レベルシフト回路に印加される電圧が低くても、より広い範囲で動作することができる。
【0082】
なお、従来技術の動作範囲と同程度までの動作範囲では、抵抗R1,R2を大きくすることで、トランジスタMN3,MN4のドレイン電流を小さくすることができるので、低消費電力化でき、しかも高速化が可能である。
【0083】
このように、本発明の実施例1の形態に係るレベルシフト回路及び当該レベルシフト回路を用いたスイッチング電源装置によれば、dv/dtの印加によるフリップフロップ回路の誤動作を防止し、dv/dtの印加時でもローサイド側からハイサイド側へ信号を伝達し、ハイサイド側電位が低い電圧でも低消費電力で広い範囲で動作できるレベルシフト回路及びスイッチング電源装置を提供できる。
【0084】
さらに、実施例のレベルシフト回路は、抵抗R3,R4を備えることにより、トランジスタMN3,MN4がオンした場合に流れる電流を制限することができる。具体的に説明すると、トランジスタMN3(MN4)のソース電流は、抵抗R3(R4)の両端に電圧降下を発生させる。パルス発生回路10から出力されるパルス信号は一定の電圧値であるので、抵抗R3(R4)の電圧降下分だけトランジスタMN3(MN4)のゲート−ソース間電圧が小さくなることにより、ソース電流は一定の電流値で平衡する。したがって、本実施例のレベルシフト回路は、抵抗R3(R4)を備えることにより、トランジスタMN3(MN4)に流れるドレイン電流を定電流駆動することができる。
【0085】
なお、図5は、高周波化を行うための最適な設計を行った場合における本実施例のレベルシフト回路の動作を示すタイミングチャートであり、図2に示すような電流共振型スイッチング電源装置を想定したものである。
【0086】
通常、ハイサイド側とローサイド側のオン信号には、同時オン防止のためにデッドタイム回路が設けられている。このデッドタイム回路は、通常は抵抗等により任意の値に設定することができる。また、dv/dt時間は、共振回路と負荷電流によりある程度決定される。ここで、最適な設計が行われたアプリケーション回路とは、抵抗等によりデッドタイムを調整し、dv/dt時間中にローサイド側からハイサイド側に信号伝達を開始し、伝達の遅延時間によりハイサイド側がターンオンするのと、dv/dt印加時間が終わるのを、ほぼ同時に設定することである(実際には若干のマージンを設定し、ターンオンするのを若干遅らせる)。
【0087】
図5において、時刻t1からt3までの間がデッドタイムであり、図2に示すハイサイド側スイッチング素子17aとローサイド側スイッチング素子18aとは、いずれもオフの状態である。また、理想的には、中点電圧の上昇が終わる時刻t3においてハイサイド側スイッチング素子17aのゲートに印加される電圧(HO)がHレベルになると、ハイサイド側スイッチング素子17aがオンできる最大時間となるので、ハイサイド側スイッチング素子17aの利用率は最大となる。
【0088】
図3,4で説明した波形においては、パルス発生回路10によりセットパルス信号が出力されるのとフリップフロップ12によりHOがHレベルになるのとがほぼ同時であるとして説明しているが、図5は、遅延時間を考慮したものとなっている。すなわち、実際の回路においては、パルス発生回路10によりセットパルス信号(MN3Gate)が出力されて、HO端子がHighとなるまでの間には、無視することができない回路遅延時間が存在する。そのため、時刻t3においてHOをHレベルにするためには、中点電圧にdv/dtが印加されている状態で、パルス発生回路10がセットパルス信号を出力する必要があり、この状態でもローサイド制御回路からハイサイド制御回路に信号伝達することが求められる。
【0089】
したがって、本実施例のレベルシフト回路は、dv/dt印加時においても、トランジスタMN3のドレインとトランジスタMN4のドレインとの間における電圧バランスがくずれることにより信号伝達ができるので、上述した理想動作を実現することが可能となる。すなわち、dv/dt印加が終わったのと同時にハイサイド側スイッチング素子17aをオンするため、最大限スイッチング素子のオン時間を得ることができ、且つZVSを行うことができる。
【実施例2】
【0090】
図6は、本発明の実施例2のレベルシフト回路の構成を示す回路図である。図1に示す実施例1のレベルシフト回路の構成と異なる点は、新たに、バッファ部14、及びフィルタ部32を備えている点である。本実施例におけるレベルシフト回路は、実施例1と同様に、図2に示すスイッチング電源装置に使用されているものとする。
【0091】
バッファ部14は、トランジスタMP3、トランジスタMP4、抵抗R7、及び抵抗R8を備えている。
【0092】
トランジスタMP3と抵抗R8とは、本発明の第1信号増幅部に対応し、制御部とフリップフロップ12との間に設けられ、制御部により生成されたセット信号をフリップフロップ12で検出される程度に増幅する。
【0093】
ここで、トランジスタMP3は、本発明の第3のP型MOSFETに対応し、ソースがレベルシフト電源に接続されるとともにゲートが抵抗R5に接続され、制御部により生成されたセット信号に基づいてオン/オフ動作を行う。また、抵抗R8は、本発明の第7抵抗に対応し、一端がトランジスタMP2のドレインに接続されるとともに他端がレベルシフト基準電位に接続されている。
【0094】
すなわち、第1信号増幅部は、レベルシフト電源と、レベルシフト電源に対して所定の電圧差を有するレベルシフト基準電位との間に直列に接続されたトランジスタMP3と抵抗R8とからなる。
【0095】
また、トランジスタMP4と抵抗R7とは、本発明の第2信号増幅部に対応し、制御部とフリップフロップ12との間に設けられ、制御部により生成されたリセット信号をフリップフロップ12で検出される程度に増幅する。
【0096】
ここで、トランジスタMP4は、本発明の第4のP型MOSFETに対応し、ソースがレベルシフト電源に接続されるとともにゲートが抵抗R6に接続され、制御部により生成されたリセット信号に基づいてオン/オフ動作を行う。また、抵抗R7は、本発明の第8抵抗に対応し、一端がトランジスタMP1のドレインに接続されるとともに他端がレベルシフト基準電位に接続されている。
【0097】
すなわち、第2信号増幅部は、レベルシフト電源と、レベルシフト電源に対して所定の電圧差を有するレベルシフト基準電位との間に直列に接続されたトランジスタMP4と抵抗R7とからなる。
【0098】
フィルタ部32は、バッファ部14により増幅されたセット信号、リセット信号に対してフィルタリングを行い、フリップフロップ12に出力する。このフィルタ部32は、さらなるノイズ耐量向上のために設けられたものであるが、必須の構成ではない。ただし、アナログ信号をデジタル信号に変換するためのインバータ又はバッファは必要である。
【0099】
ダイオードD1,D2は、トランジスタMN1,MN2に対する保護回路として作用するものであり、トランジスタMN3,MN4の動作時においても、トランジスタMN1,MN2の耐圧以上に電圧が印加されるのを防止するものである。
【0100】
その他の構成は、実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0101】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。最初に従来回路の問題点について説明すると、図8に示す従来のレベルシフト回路は、抵抗4,5におけるレベルシフト電源からの電圧降下により、MOSFET20,30に流れる電流を電圧変換し、インバータ6,7により電圧変換された電圧の検出が行われる。その際のインバータ6,7における検出スレッショルドは、通常、レベルシフト基準電位(図8におけるラインL1)に対して設定されたものである。したがって、スイッチング時に負荷21の浮遊インダクタンスと共振回路(Lr,Cv,Ci)の共振動作によりレベルシフト基準電位がローサイド側の基準電位である接地電位よりも下がった場合(例えば−3V等)に、従来のレベルシフト回路は、ローサイドからハイサイドに信号伝達を行う際に、MOSFET20,30がオンしたとしても、インバータ6,7の検出電位まで電位が下がらず、インバータ6,7の後段に信号伝達できない可能性がある。
【0102】
これに対し、本実施例のレベルシフト回路は、バッファ部14を備えているので、制御部により生成された信号がトランジスタMP3,MP4により信号増幅されるとともに、レベルシフト基準電位側から抵抗R7,R8を用いて検出電圧を得ており、レベルシフト基準電位がローサイド側の基準電位である接地電位よりも下がったとしても適切な動作が可能であり、従来よりも動作範囲を広げることができる。
【0103】
すなわち、抵抗R8,R7は、セット信号及びリセット信号をレベルシフト基準電位側にレベルシフトし、後段のインバータにより確実に検出されるようにする役割を有する。
【0104】
その他の作用は、実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0105】
上述のとおり、本発明の実施例2の形態に係るレベルシフト回路及び当該レベルシフト回路を用いたスイッチング電源装置によれば、実施例1の効果に加え、レベルシフト基準電位がローサイド側の基準電位である接地電位よりも下がって負電位となったとしても、適切にセット信号やリセット信号を検出し、ローサイド側からハイサイド側に確実に信号を伝達することができる。
【0106】
レベルシフト基準電位は、例えばハイサイド側スイッチング素子17aがオフして、400V近辺から0Vまで下がるような場合にオーバーシュートして負電位まで下がる可能性が十分に考えられるため、バッファ部14を適用した本実施例のレベルシフト回路は、特性改善効果が高いといえる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明に係るレベルシフト回路は、電源電圧の異なる回路相互間のインターフェースに用いられるレベルシフト回路及びスイッチング電源装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 全波整流回路
2 制御回路
3 エラーアンプ
4,5 抵抗
6,7,11 インバータ回路
8,9,D1〜D6 ダイオード
10 パルス発生回路
12 フリップフロップ
14 バッファ部
16 インバータ部
17,17a ハイサイド側スイッチング素子
18,18a ローサイド側スイッチング素子
19 ハーフブリッジ型パワーデバイス
20,30 MOSFET
21 負荷
22,23 抵抗
24,25,C3,C4 コンデンサ
31 高電位側電源
C1,C2 寄生容量
Ci 共振コンデンサ
HD1 ハイサイドドライバ回路
L1 ライン
Lr 共振リアクトル
MN1,MN2,MN3,MN4,MP1,MP2,MP3,MP4 トランジスタ
P 一次巻線
R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8,R9,R10 抵抗
S1,S2 二次巻線
32 フィルタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端がレベルシフト電源に接続された所定値以上の抵抗値を有する第1抵抗と、
前記第1抵抗の他端にドレインが接続され、ソースがグランドに接続された第1のN型MOSFETと、
前記第1抵抗と同じ抵抗値を有し、一端が前記レベルシフト電源に接続された第2抵抗と、
前記第2抵抗の他端にドレインが接続され、ソースがグランドに接続された第2のN型MOSFETと、
入力信号に基づいて前記第1のN型MOSFETと前記第2のN型MOSFETとのオン/オフを制御するパルス発生回路と、
dv/dt過渡信号が印加され且つ前記入力信号が入力されないとき前記第1抵抗を含むセット側負荷抵抗及び前記第2抵抗を含むリセット側負荷抵抗を前記第1抵抗及び前記第2抵抗よりも小さくし、前記第1のN型MOSFETがオンである場合にセット信号を生成し且つ前記セット側負荷抵抗を前記リセット側負荷抵抗よりも大きくし、前記第2のN型MOSFETがオンである場合にリセット信号を生成し且つ前記リセット側負荷抵抗を前記セット側負荷抵抗よりも大きくする制御部と、
前記制御部により生成されたセット信号とリセット信号とに基づいて前記入力信号をレベルシフトした出力信号を出力するフリップフロップと、
を備えることを特徴とするレベルシフト回路。
【請求項2】
前記制御部と前記フリップフロップとの間に設けられ、前記制御部により生成されたセット信号を前記フリップフロップで検出される程度に増幅する第1信号増幅部と、
前記制御部と前記フリップフロップとの間に設けられ、前記制御部により生成されたリセット信号を前記フリップフロップで検出される程度に増幅する第2信号増幅部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載のレベルシフト回路。
【請求項3】
前記制御部は、
一端がレベルシフト電源に接続された第3抵抗と、
前記第3抵抗の他端にソースが接続され、ドレインが前記第1のN型MOSFETのドレインに接続され、ゲートが前記第2のN型MOSFETのドレインに接続された第1のP型MOSFETと、
前記第3抵抗と同じ抵抗値を有し、一端がレベルシフト電源に接続された第4抵抗と、
前記第4抵抗の他端にソースが接続され、ドレインが前記第2のN型MOSFETのドレインに接続され、ゲートが前記第1のN型MOSFETのドレインに接続された第2のP型MOSFETと、
一端がレベルシフト電源に接続された第5抵抗と、
前記第5抵抗の他端と前記フリップフロップのセット端子とにドレインが接続され、ソースが前記第1のN型MOSFETのドレインに接続され、ゲートが前記第2のN型MOSFETのドレインに接続された第3のN型MOSFETと、
前記第5抵抗と同じ抵抗値を有し、一端がレベルシフト電源に接続された第6抵抗と、
前記第6抵抗の他端と前記フリップフロップのリセット端子とにドレインが接続され、ソースが前記第2のN型MOSFETのドレインに接続され、ゲートが前記第1のN型MOSFETのドレインに接続された第4のN型MOSFETと、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のレベルシフト回路。
【請求項4】
前記第1信号増幅部は、前記レベルシフト電源と前記レベルシフト電源に対して所定の電圧差を有するレベルシフト基準電位との間に直列に接続された第3のP型MOSFETと第7抵抗とからなり、
前記第2信号増幅部は、前記レベルシフト電源と前記レベルシフト基準電位との間に直列に接続された第4のP型MOSFETと第8抵抗とからなり、
前記第3のP型MOSFETは、前記制御部により生成されたセット信号に基づいてオン/オフ動作を行い、
前記第4のP型MOSFETは、前記制御部により生成されたリセット信号に基づいてオン/オフ動作を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のレベルシフト回路。
【請求項5】
前記第1のN型MOSFETのソースとグランドとの間に接続された第9抵抗と、
前記第2のN型MOSFETのソースとグランドとの間に接続された第10抵抗と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のレベルシフト回路。
【請求項6】
ハイサイド側スイッチング素子とローサイド側スイッチング素子とを有するスイッチング電源装置において、
前記ハイサイド側スイッチング素子を制御するための回路として、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のレベルシフト回路を用いることを特徴とするスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−4786(P2012−4786A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137089(P2010−137089)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】