説明

ロータ位置検出装置

【課題】一部に磁力が異なる永久磁石をロータに配置した永久磁石モータに対し、低コストの磁気検出センサを用いてロータ位置を正確に検出する。
【解決手段】永久磁石モータ1が、ロータ3に、磁力が異なる2種類の磁石,ネオジム磁石9aとアルニコ磁石9bとを配置して構成される場合、速度・位置検出部55は、3つのホールセンサ68(A,B,C)を用いて永久磁石モータ1の回転速度を検出すると、その回転速度に基づいてロータ3の位置を検出する。そして、速度・位置補正部80は、ホールセンサ68により出力されるセンサ信号の変化状態からネオジム磁石9aとアルニコ磁石9bとの境界を検出すると、速度・位置検出部55により検出される回転速度又はロータ位置を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の内の一部に磁力が異なる永久磁石をロータに配置した永久磁石モータについて、ロータ位置を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、洗濯機においては、ダイレクトドライブ方式の永久磁石モータと、ベクトル制御を採用したモータ制御装置との組み合わせにより、モータの制御精度や洗濯性能の向上を図ると共に、消費電力の低減や洗濯運転中の振動低減などの効果が得られている。従来の一般的な制御方式では、脱水運転等でモータを高速回転させる場合はトルクに寄与しないd軸電流Idを通電してモータの誘起電圧を減少させる弱め界磁制御を行っている。この場合、脱水運転ではトルクに寄与しない電流を常時流すことで銅損を増加させており、効率の低下を招いている。
【0003】
これに対し、特許文献1に開示されている技術では、保磁力が低い永久磁石にd軸電流を一瞬流すことで不可逆的に減磁現象を起こさせて、脱水運転時には、永久磁石の磁束を減少させるようにしている。それにより、高速回転時にモータの巻線に発生する誘起電圧を減少させて、d軸電流を常時通電することなく高速運転を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−118663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような永久磁石モータを駆動制御するため、ロータ位置を検出する位置センサとして、磁束を検知するホール素子やホール素子を組み込んだICを備えてなるホールセンサを使用する場合、位置検出誤差が増加する可能性がある。例として、磁束の検出結果を2値信号で出力するホールセンサを、電気角60度間隔で3個配置した場合について、ロータ位置と各ホールセンサより出力される信号波形との関係を図13に示す。
ホールセンサは永久磁石の磁束を検出し、その磁束はロータ位置によって変化するから、ロータ位置に応じて3つの2値信号が異なる位相(60度間隔)で変化し(図13(b)参照)、これらの信号からロータ位置及び回転速度が検出できる。
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、発生する磁束(磁力)が大きく異なる永久磁石を混成して配置した場合には、それらの磁束の変化とロータ位置の変化との関係が図13の場合とは異なる。図14において、中心に配置されている永久磁石101は、低保磁力の永久磁石であり(特許文献1ではアルニコ磁石)、その両隣に配置されている永久磁石102は、何れも高保磁力の永久磁石である(特許文献1ではネオジム磁石)。
この場合、2つの永久磁石102が隣り合う間で、磁束密度が0になる境界は直線状(3次元的には平面状)をなすが、永久磁石101と、その両隣の永久磁石102との間では、上記境界が両側から押される形となり、永久磁石101側に曲がり込んだ曲線状(3次元的には、境界面は上端側,下端側が曲面をなす)となる。
【0007】
図15は、ロータに配置された永久磁石が発生する磁束と、ホールセンサ(A相のみ)の出力パルスとを示す。ホールセンサが、他の磁石よりも磁力が強い磁石に係る場合にパルス幅が広がる方向に変化している。逆に、ホールセンサが、他の磁石よりも磁力が弱い磁石に係る場合は、パルス幅が狭まる方向に変化する。このようにパルス幅が一時的に変化すると、位置検出に誤差を生じる。
【0008】
また、永久磁石の磁束が異なる場合に、ステータコイルに電流を通電すると、コイルが発生した磁束がホールセンサへ影響を及ぼして、上記の位置検出誤差がより拡大する傾向を示す。すなわち、ホールセンサは、磁石からの漏れ磁束を検出しているので、ステータ側より磁石に作用する磁界が、磁石の主磁束を減磁する方向に作用したり,増磁する方向に作用することで、ホールセンサに作用する漏れ磁束量も変化する。例えばステータ側の磁界が磁石の主磁束を大きく増磁する方向に作用すると、漏れ磁束の方向自体が反転し、パルス信号が部分的に反転する場合もある。すると、検出されるロータ位置と回転速度とに大きな誤差が生じてしまい、この検出結果に基づいてモータ制御を行うと、電流の急激な変化により騒音が発生したり、脱調によりモータが停止するおそれがある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、一部に磁力が異なる永久磁石をロータに配置した永久磁石モータについて、低コストの磁気検出センサ用いてロータ位置を正確に検出できるロータ位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1記載のロータ位置検出装置は、ロータに配置される複数の永久磁石の一部に、磁力が異なる永久磁石を備える永久磁石モータを検出対象とするもので、
複数の磁気検出センサを用いて前記永久磁石モータの回転速度を検出すると、その回転速度に基づいて前記ロータの位置を検出する速度・位置検出手段と、
前記磁気検出センサにより出力されるセンサ信号の変化状態から、前記複数の永久磁石のうち互いに磁力が異なる永久磁石の境界を検出すると、前記速度・位置検出手段により検出される前記回転速度又は前記ロータ位置を補正する補正手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載のロータ位置検出装置によれば、一部に磁力が異なる永久磁石をロータに配置してなる永久磁石モータのロータ位置を、磁気検出センサによって検出する場合、磁力が異なる磁石の境界に歪みが生じていても、速度・位置検出手段により検出される永久磁石モータの回転速度又はロータ位置を補正手段が補正するので、ロータ位置を正確に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施例であり、速度及び位置を補正する処理を示すフローチャート
【図2】速度及び位置の検出処理を示すフローチャート
【図3】全ての磁石の磁力が等しい場合の各信号波形を示すタイミングチャート
【図4】一部の磁石の磁力が異なる場合の図3相当図
【図5】ホールセンサの信号パルス幅が大きく拡がった場合を示すタイミングチャート
【図6】ロータの回転方向により誤検出するホールセンサが異なる場合を示す図
【図7】モータ制御装置の構成を示すブロック図
【図8】永久磁石モータのロータの構成を示す平面図
【図9】ホールセンサの配置状態を示す図
【図10】ドラム式洗濯乾燥機の内部構成を概略的に示す縦断側面図
【図11】ヒートポンプの構成を示す図
【図12】洗濯機の運転シーケンスを示す図
【図13】従来技術を説明する図3の一部相当図
【図14】ロータに配置される磁石の磁力が異なる場合に、磁束密度が0になる境界が変化する状態を説明する図
【図15】ロータに配置された永久磁石が発生する磁束と、A相ホールセンサの出力パルスとを示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施例について図1ないし図12を参照して説明する。図8は、永久磁石モータ1(アウタロータ型ブラシレスモータ)のロータの構成を示す平面図である。永久磁石モータ1は、ステータ2と、これの外周に設けたロータ3とから構成されている。ステータ2は、ステータコア4とステータ巻線5とから構成されている。ステータコア4は、打ち抜き形成した軟磁性体であるケイ素鋼板を多数枚積層して構成され、環状のヨーク部4aと、当該ヨーク部4aの外周部から放射状に突出する多数のティース部4bとを有している。ステータコア4の表面は、各ティース部4bの先端面を除き、PET樹脂(モールド樹脂)により覆われている。
【0014】
また、このPET樹脂から成る複数の取付部6が、ステータ2の内周部に一体的に成形されている。これら取付部6には複数のねじ穴6aが設けられており、各取付部6をねじ止めすることで、ステータ2が、この場合、ドラム式洗濯乾燥機21の水槽25(図10参照)の背面に固着される。ステータ巻線5は三相からなり、各ティース部4bに巻装されている。
【0015】
ロータ3は、フレーム7とロータコア8と複数の永久磁石9とを図示しないモールド樹脂により一体化した構成となっている。フレーム7は、磁性体である例えば鉄板をプレス加工することにより扁平な有底円筒状に形成されている。ロータコア8は、ほぼ環状に打ち抜き形成した軟磁性体であるケイ素鋼板を多数枚積層してかしめることにより構成したもので、フレーム7の内周部に配置されている。このロータコア8の内周面(ステータ2の外周面(ステータコア4の外周面)と対向し当該ステータ2との間に空隙を形成する面)は、内方に向けて円弧状に突出する複数の凸部(磁極チップ)8aを有した凹凸状に形成されている。
【0016】
これら複数の凸部8aの内部には、ロータコア8を軸方向(ケイ素鋼板の積層方向)に貫通する矩形状の挿入穴が形成されており、これら複数の挿入穴がロータコア8において環状に配置されている。永久磁石9は、挿入穴に挿入された矩形状のネオジム磁石9a(高保磁力永久磁石)と、同じく矩形状のアルニコ磁石9b(低保磁力永久磁石)とから構成されている。この場合、ネオジム磁石9aの保磁力は約900kA/m、アルニコ磁石9bの保磁力は約100kA/mであり、保磁力が9倍程度異なっている。永久磁石9は全数48であり、それらの内6個がアルニコ磁石9bであり、42個がネオジム磁石9aとなっている。
【0017】
図8では、アルニコ磁石9bが配置されている位置にA〜Fを付しており、A−B間に配置されているネオジム磁石9aは5個,B−C間に配置されているネオジム磁石9aは9個,C−D間に配置されているネオジム磁石9aは5個,D−E間に配置されているネオジム磁石9aは9個,E−F間に配置されているネオジム磁石9aは5個,F−A間に配置されているネオジム磁石9aは9個となっている。この配置形態は、同じ相について発生する誘起電圧の平均値を何れも同じ値にすることで、コギングトルクの発生を抑制するようにしたものである。そして、永久磁石モータ1は、48極/36スロット構成となっており、3スロット当たりでは4極が対応する(4極/3スロット)。
【0018】
図8に示す磁石配置の場合、A〜Fにおけるアルニコ磁石9bと、その両隣に位置するネオジム磁石9aとの間が、図14に示したように、周方向において磁束が「0」となる境界に歪みが生じる位置となる。
尚、ネオジム磁石9aが高保磁力であり、アルニコ磁石9bが低保磁力であるというのは、後述するようにステータ2を介して着磁電流を通電した場合に、アルニコ磁石9bの着磁量を変化させることができる程度の電流ではネオジム磁石9aの着磁量が変化しないという基準において、前者を高保磁力,後者を低保磁力と称している。
【0019】
次に、上記のように構成された永久磁石モータ1を備えたドラム式洗濯乾燥機21の構成について説明する。図10は、ドラム式洗濯乾燥機21の内部構成を概略的に示す縦断側面図である。ドラム式洗濯乾燥機21の外殻を形成する外箱22は、前面に円形状に開口する洗濯物出入口23を有しており、この洗濯物出入口23は、ドア24により開閉されるようになっている。外箱22の内部には、背面が閉鎖された有底円筒状の水槽25が配置されており、この水槽25の背面中央部には上述の永久磁石モータ1(ステータ2)がねじ止めにより固着されている。この永久磁石モータ1の回転軸26は、後端部(図10では右側の端部)が永久磁石モータ1(ロータ3)の軸取付部10に固定されており、前端部(図10では左側の端部)が水槽25内に突出している。
【0020】
回転軸26の前端部には、背面が閉鎖された有底円筒状のドラム27が水槽25に対して同軸状となるように固定されており、このドラム27は、永久磁石モータ1の駆動によりロータ3および回転軸26と一体的に回転する。なお、ドラム27には、空気および水を流通可能な複数の流通孔28と、ドラム27内の洗濯物の掻き上げやほぐしを行うための複数のバッフル29が設けられている。水槽25には給水弁30が接続されており、当該給水弁30が開放されると、水槽25内に給水されるようになっている。また、水槽25には排水弁31を有する排水ホース32が接続されており、当該排水弁31が開放されると、水槽25内の水が排出されるようになっている。
【0021】
水槽25の下方には、前後方向へ延びる通風ダクト33が設けられている。この通風ダクト33の前端部は前部ダクト34を介して水槽25内に接続されており、後端部は後部ダクト35を介して水槽25内に接続されている。通風ダクト33の後端部には、送風ファン36が設けられており、この送風ファン36の送風作用により、水槽25内の空気が、矢印で示すように、前部ダクト34から通風ダクト33内に送られ、後部ダクト35を通して水槽25内に戻されるようになっている。
通風ダクト33内部の前端側には蒸発器37が配置されており、後端側には凝縮器38が配置されている。これら蒸発器37および凝縮器38は、コンプレッサ39および絞り弁40とともにヒートポンプ41を構成しており(図11参照)、通風ダクト33内を流れる空気は、蒸発器37により除湿され凝縮器38により加熱されて、水槽25内に循環される。絞り弁40は膨張弁から成り、開度調整機能を有している。
【0022】
外箱22の前面にはドア24の上方に位置して操作パネル42が設けられており、この操作パネル42には運転コースなどを設定するための複数の操作スイッチ(図示せず)が設けられている。操作パネル42は、マイクロコンピュータを主体として構成されドラム式洗濯乾燥機21の運転全般を制御する制御回路部(図示せず)に接続されており、当該制御回路部は、操作パネル42を介して設定された内容に従って、永久磁石モータ1、給水弁30、排水弁31、コンプレッサ39、絞り弁40などの駆動を制御しながら各種の運転コースを実行する。また、図示しないが、コンプレッサ39を構成するコンプレッサモータも、永久磁石モータ1と同様の構成を採用しても良い。
【0023】
図7は、永久磁石モータ1の回転をベクトル制御するモータ制御装置50の構成をブロック図で示したものである。尚、上記コンプレッサモータも同様の構成によって制御される。ベクトル制御では、電機子巻線に流れる電流を、界磁である永久磁石の磁束方向と、それに直交する方向とに分離してそれらを独立に調整し、磁束と発生トルクとを制御する。電流制御には、モータ1のロータと共に回転する座標系、いわゆるd−q座標系で表わした電流値が用いられるが、d軸はロータに取り付けた永久磁石の作る磁束方向であり、q軸はd軸に直交する方向である。巻線に流れる電流のq軸成分であるq軸電流Iqは回転トルクを発生させる成分であり(トルク成分電流)、同d軸成分であるd軸電流Idは磁束を作る成分である(励磁または磁化成分電流)。
【0024】
電流センサ51(U,V,W)は、モータ1の各相(U相、V相、W相)に流れる電流Iu,Iv,Iwを検出するセンサである。尚、電流センサ51(電流検出手段)に替えて、インバータ回路52(駆動手段)を構成する下アーム側のスイッチング素子とグランドとの間に3個のシャント抵抗を配置し、それらの端子電圧に基づいて電流Iu,Iv,Iwを検出する構成としても良い。
【0025】
電流センサ51により検出された電流Iu,Iv,Iwは、図示しないA/D変換器によりA/D変換されるとuvw/dq座標変換器53により2相電流Iα,Iβに変換された後、更にd軸電流Id,q軸電流Iqに変換される。α,βは、モータ1のステータに固定された2軸座標系の座標軸である。ここでの座標変換の計算には、速度・位置推定部54により推定されるロータの回転位置推定値(α軸とd軸との位相差の推定値)θ_est,若しくは速度・位置検出部55により検出され、速度・位置補正部80を介して出力される回転位置検出値θ_hoの何れかが、切換えスイッチ56により選択されて出力される位相θが用いられる。また、速度・位置推定部54により推定されるモータ1の回転速度(角速度)ω_estと、速度・位置検出部55により検出され、速度・位置補正部80を介して出力される回転速度ω_hoとは、切換えスイッチ56に連動する切換えスイッチ57により選択されて回転速度ωが出力される。
【0026】
速度・位置補正部80は、速度・位置検出部55で検出されたモータの回転速度ω_hと電気角θ_hを前回検出した値と比較して補正処理を行い、補正したモータの回転速度ω_hoと電気角θ_hoとして出力する。また、洗濯機全体の運転を管理する制御回路部から洗濯機シーケンス信号を受け取り、シーケンス状態によって補正を行うか否かを切り替える。
【0027】
着磁制御部58(着磁制御手段)は、上記位相θ及び回転速度ωに基づいて決定した、アルニコ磁石9bを着磁するための着磁電流指令Id_com2を加算器59に出力し、加算器59は、その着磁電流指令Id_com2に、高速回転時などに必要に応じて出力される弱め界磁電流指令Id_com1を加算した結果を、d軸電流指令値Id_refとして電流制御部60に出力する。また、外部より与えられる回転数指令値ω_refは、減算器61において回転速度ωとの差が求められると、その差が比例積分器62で比例積分演算され、q軸電流指令値Iq_refとして電流制御部60に出力される。
Id_com2は、増磁の場合は正、減磁の場合は負の値をとる。そして、ロータ3が回転している場合の通電指令位置θref(内部にて設定されている)に基づいて電気角360毎に2回、各々数ms〜数10msの期間通電指令を出力する。すなわち、アルニコ磁石9bを3個ずつ2回に分けて着磁する。
【0028】
電流制御部60では、減算器63d,63qにおいてd軸電流指令値Id_ref,q軸電流指令値Iq_refとd軸電流Id,q軸電流Iqとの差がそれぞれ求められ、その差が比例積分器64d,64qで比例積分演算される。そして、比例積分演算の結果は、d−q座標系で表わされた出力電圧指令値Vd,Vqとして、dq/uvw座標変換器65に出力される。dq/uvw座標変換器65では、電圧指令値Vd,Vqは、α−β座標系で表わした値に変換された後、更に各相電圧指令値Vu,Vv,Vwに変換される。なお、dq/uvw座標変換器65における座標変換の計算にも、回転位置θが用いられる。
【0029】
各相電圧指令値Vu,Vv,Vwは電力変換部66に入力され、指令値に一致する電圧を供給するためのパルス幅変調されたゲート駆動信号が形成される。インバータ回路52は例えばIGBTなどのスイッチング素子を三相ブリッジ接続して構成され、図示しない直流電源回路より直流電圧の供給を受けるようになっている。電力変換部66で形成されたゲート駆動信号は、インバータ回路52を構成する各スイッチング素子のゲートに与えられ、それにより各相電圧指令値Vu,Vv,Vwに一致するPWM変調された三相交流電圧が生成されてモータ1の巻線5に印加される。
【0030】
上記の構成において、電流制御器60では比例積分(PI)演算によるフィードバック制御が行なわれ、d軸電流Id,q軸電流Iqはそれぞれd軸電流指令値Id_ref,q軸電流指令値Iq_refに一致するように制御される。その制御結果としての角速度推定値ωが減算器61にフィードバックされ、比例積分器62は、比例積分演算により偏差Δωをゼロに収束させる。その結果、回転速度ωは指令値ωrefに一致するようになる。
【0031】
速度・位置推定部54(速度・位置推定手段)は、モータ1の角速度ω,ロータの回転位置θをそれぞれ推定するもので、モータ1の回路定数(モータ定数)である電機子巻線のd軸インダクタンスLd,q軸インダクタンスLq,巻線抵抗値Rの各値が記憶されていると共に、d軸電流Id,q軸電流Iq及びd軸出力電圧指令値Vdが入力されている。速度・位置推定部54は、(1)式のd軸モータ電圧方程式を用いて、モータ1の回転速度ω_estを推定する。
Vd=R・Id−ω_est・Lq・Iq …(1)
更に、角速度ω_estを積分器67で積分し、その積分結果が回転位置推定値θ_estとして出力される。
【0032】
モータ1には、ホールICを用いて構成される位置センサ:ホールセンサ(磁気検出センサ)68が3個(A,B,C)配置されており、これらのホールセンサ68により出力される位置信号Ha,Hb,Hcは、速度・位置検出部55に与えられている。速度・位置検出部55は、位置信号Ha,Hb,Hcに基づいて回転位置検出値θ_h,回転速度検出値ω_hを算出して出力する。
【0033】
図9は、ホールセンサ68の配置状態を示す。ステータ2におけるティース部4bの図中上方から、ロータ3の上方に突出するように端子台81が設けられており、ホールセンサ68は、永久磁石9の部位に対応する上方に配置されている。そして、ホールセンサ68Aと68Bとの間,68Bと68Cとの間は、それぞれ電気角60度相当の間隔となるように配置されている。
なお、以上の構成において、モータ制御装置50に永久磁石モータ1を加えたものが、モータ制御システム70を構成している。また、速度・位置検出部55,ホールセンサ68, 速度・位置補正部80は、ロータ位置検出装置82を構成している。また、インバータ回路52,電力変換部66を除く部分は、モータ制御装置50を構成するマイクロコンピュータのソフトウエアにより実現されている機能である。
【0034】
次に、モータ制御システム70を備えたドラム式洗濯乾燥機21の作用について説明する。制御回路部が着磁制御部58を介して、インバータ回路52によりステータ巻線5に通電すると、電機子反作用による外部磁界(ステータ巻線5を流れる電流により発生する磁界)が、ロータ3の永久磁石9a,9bに作用する。そして、保磁力が小さいアルニコ磁石9bの磁化状態が、上記外部磁界により減磁または増磁され、その結果、ステータ巻線5に鎖交する磁束量(鎖交磁束量)が増減される。
洗濯運転では、制御回路部は、給水弁30を開放して水槽25内に給水を行い、続いてドラム27を回転させて洗濯を行う。この場合、アルニコ磁石9bの磁化状態を増磁させる。これにより、ステータ巻線5に作用する磁束量が多く(磁力が強く)なるので、ドラム27を高トルク低速度で回転させるのに適した特性となる。
【0035】
脱水運転では、制御回路部は、排水弁31を開放して水槽25内の水を排出し、続いてドラム27を高速回転させて洗濯物に含まれる水分を脱水する。この場合、アルニコ磁石9bの磁化状態を減磁させる。これにより、ステータ巻線5に作用する磁束量が少なく(磁力が弱く)なることから、ドラム27を低トルク高速度で回転させるのに適した特性となる。最後に、乾燥運転では、制御回路部は、送風ファン36およびヒートポンプ41を駆動させると共にドラム27を回転させて洗濯物の乾燥を行う。この場合、次回の洗濯運転に備えて、アルニコ磁石9bの磁化状態を増磁させる。
【0036】
次に、本実施例の作用について図1ないし図6を参照して説明する。まず、ロータ3に配置される永久磁石9が、全てネオジム磁石9aである場合(一般的な永久磁石モータの構成である)を仮定して、ロータ位置検出を行う場合の処理を説明する。図3に示すようにロータ3が回転すると、ホールセンサ68は、それに応じて3つの2値(ロウ:L,ハイ:H)パルスを60度位相差で出力する(図3(a),(b)参照)。尚、これらは図1に示す位置信号Ha,Hb,Hcに対応する。
【0037】
速度・位置検出部55は、内部にエンコーダ55Eを備えており、これら3つのパルスのL,Hパターンに応じて、例えば図中に示すホールナンバ(3ビット)をエンコードして出力する(図3(c)参照)。例えば、ホールセンサ68のA/B/C各相の信号レベルがL/H/Hの組み合わせである場合はナンバ0を出力し、以降信号レベルの組み合わせが変化する毎にホールナンバは、1,3,7,6,4,0,1,3,…と循環して変化する。
【0038】
これらのホールナンバおよびその変化によって、現在のロータ位置とロータの回転方向とが検出できる。図3(e)は、ホールナンバの変化に対応してステップ状に変化するロータ位置を示している。ホールナンバが0の場合はロータ位置,すなわちホールセンサ68の検出角度が−150度となるように設定してある。次に、速度・位置検出部55は、ホールナンバが変化する間隔時間をカウンタ等により計測し、その時間を速度に換算して、ロータ速度ω_hを演算する。演算した結果がホールセンサ検出モータ速度であり(図3(d)参照)、ホールナンバが変化する毎に値が更新される。尚、図3(d)は、検出速度の変わり目を示す意味で不連続な線で示しているが、モータ1の回転速度が一定であれば、もちろん連続した直線となる。
【0039】
そして、検出したモータ速度を積分することで、速度に基づくホールセンサ検出角度を算出する(図3(e)に右肩上がりの直線で示す)。この検出角度に基づいてモータ電流を制御する。このため、電流波形は図3(f)に示すように(U相のみ)正弦波状になり、電流が急激に変化することが無いのでモータ駆動時の騒音が減少する。
尚、永久磁石モータ1を駆動制御する場合、モータ1を強制転流により起動すると、回転数が例えば30rpmまでは、速度・位置検出部55により検知される回転位置及び速度を用い、それ以降は速度・位置推定部54により推定される回転位置及び速度を用いて位置センサレス制御を行うようにスイッチ56及び57が切り替えられる。
【0040】
図2は、位置検出処理を示すフローチャートである。この処理は、例えば1m秒の周期で実行される。速度・位置検出部55は、ホールナンバを取得すると(ステップS1)、そのホールナンバが前回の値から変化したか否かを判断し(ステップS2)、変化がなければ(NO)ホールナンバが変化する間隔を測定するカウンタ(間隔測定カウンタ)をインクリメントする(ステップS8)。そして、前記カウンタの値からモータ1の回転速度(角速度ω)を演算し、速度を積分することでモータ位置(電気角)を算出する(ステップS9)。
【0041】
一方、ステップS2において、ホールナンバが前回の値から変化した場合は(YES)、その時点で求められているモータ速度を前回値として保存する(ステップS3)。そして、間隔測定カウンタの値から新たにモータ速度を算出すると(ステップS4)、間隔測定カウンタをゼロクリアする(ステップS5)。続いて、今回のホールナンバと前回のホールナンバとから、電気角60度毎のモータ位置を算出すると(ステップS6)、そのモータ位置から機械角を算出する(ステップS7)。
本実施例の永久磁石モータ1の構成では、電気角360度が、機械角で(360/24=)15度に相当するので、電気角60度は更にその1/6である機械角2.5度に対応する。したがって、その値を累積すれば機械角を得ることができる。
【0042】
次に、図8に示したように、磁束が異なる永久磁石が混在した場合のロータの位置検出処理について説明する。ここで、C相のホールセンサ68Cが検知した磁束に基づく信号のパルス波形が、図4(b)に破線で囲んだ部分に示すようにずれた場合を想定する。ただし、この場合のずれは図8に示すロータ3の構成には対応せず、他の永久磁石よりも磁力が強い永久磁石の存在によりパルス幅が拡がる方向にずれた場合を示す。
【0043】
上記のずれが生じたことで、ホールナンバが3から7に変化するタイミングが正常なケースよりも早くなるため(図4(c)参照)検出角度に誤差が生じ(図4(e)参照)、ホールセンサ速度は、実際の速度よりも高い値で検出される(図4(d)参照)。すると、永久磁石モータ1のステータ巻線5に通電される電流波形は、図4(f)に破線で示すように急激に変化し、騒音等が発生する。そこで、このような誤差を補正するため、以下のように処理を行う。
【0044】
図1は、速度及び位置を補正する処理を示すフローチャートであり、1m秒の周期で実行される図2の処理に引き続いて実行される。先ず、ステップS2と同様に、ホールナンバが変化したか否かを判断して(ステップS11)、変化した場合にだけ(YES)以降の処理を実行する。ホールナンバの変化状態からモータ1の回転方向が正転方向か否かを判断し(ステップS12)、正転(YES),反転(NO)それぞれの場合について、後述する補正回数測定カウンタの値が、ロータの構造に応じて予め決定される補正すべき回数に達していないか否かを判断する(ステップS13,S14)。
【0045】
ここで「補正すべき回数」とは、例えばロータに配置されている永久磁石のうち、磁力が異なる永久磁石それぞれの配置数について、少数側となる磁石の数を2倍したものとなる。本実施例のロータ3についていえば、少数側のアルニコ磁石9bの数「6」を2倍した「12」となる。すなわち、ロータ3が正転方向,反転方向にそれぞれ1周して、図8に示すアルニコ磁石9bの位置A〜Fを一通り通過したことに対応する。アルニコ磁石9bの数を2倍するのは、図15に示したように、ホールセンサ68が検知する磁束波形の変化に応じて、出力される信号パルスの立ち上り側と立ち下がり側との双方についてずれが発生するからである。尚、図4では説明を簡単にするため、信号パルスの片側だけにずれが発生した場合を示している。
【0046】
ステップS13,S14において、補正回数測定カウンタの値が補正すべき回数に達していれば(NO)それぞれステップS15,S16に移行し、モータ機械角から、今回ホールナンバが変化した位置が、以降の処理において既に補正を行った位置であるか否かを判断する。既に補正を行った位置であれば(YES)後述するステップS19に移行し、補正を行った位置でなければ(NO)図1の処理を終了する(CONTINUE)。
【0047】
また、正転,反転それぞれについて場合分けをしているのは、モータの回転方向に応じて誤検出が生じるホールセンサが異なるためである。この現象について、図6を参照して説明する。図6は、モータが正転した場合と、反転した場合とで出力される3相の信号パルス波形を示す。ただし、この場合、ホールセンサA,B,Cの配置が図9に示すケースと異なっており、C相のホールセンサが中央に位置している。また、波形の変化を明確にするため、前述したようにパルス波形が部分的に反転した状態を示している。
【0048】
すなわち、図6(a)に示すようにロータが正転方向(図中右方向)に回転すると、図中で右端に配置されているA相の信号パルスに部分反転が生じているが、図6(b)に示すようにロータが反転方向(図中左方向)に回転すると、図中で左端に配置されているB相の信号パルスに部分反転が生じている。このように、ホールセンサが複数配置されている場合には、両端側に配置されているセンサが影響を大きく受けることになる。
【0049】
再び図1を参照する。ステップS13,S14の何れかで、補正回数測定カウンタの値が補正すべき回数に達していなければ(YES)ステップS17に移行し、ホールナンバの変化が正転方向,反転方向のそれぞれに応じた順番で変化しているか否かを判断する。そして、上記の順番通りであれば(YES)ステップS18に移行し、順番通りでなければ(NO)ステップS19に移行する。
【0050】
ここで、ステップS17で(NO)と判断される場合について、図5を参照して説明する。図5は、C相の信号パルス幅が、より大きく拡がるように変化した場合を示す。正常な正転のケースでは、ホールナンバ「1」の次は「3」となるが、C相信号パルスの立ち下がりが電気角60度を超えて大きく変化した結果、ナンバ「1」が続いた後に、異常なレベルの組み合わせとなり(HLH)、エンコーダ55EによってエラーEがエンコードされる。このような場合も、ステップS19に移行して補正を行うようにする。
【0051】
ステップS18では、図4に示したような誤検出が生じているか否かを判定する。すなわち、ステップS4で算出したモータ速度ω_hを、ステップS3で記憶させた前回値ω_h_d1に所定の割合を乗じた閾値と比較し、算出したモータ速度が前記閾値以上に変化したか、又は前記閾値以下に変化したかを判断する。何れの場合にも該当しなければ(NO)、誤検出は生じていない判断されるので補正は行わない。一方、何れかの場合に該当すれば(YES)、今回検出したω_hは実際のロータ位置・速度により検出されたのではなく、磁力の異なる磁石の影響によって生じたホールセンサ検出誤差によるものと判断する。つまり、図4に示したような誤検出が生じている(この場合は、算出モータ速度≧閾値)と判断されるので、ステップS19に移行して補正を行う。
【0052】
ステップS19では、ステップS4で算出したモータ速度に替えて、ステップS3で記憶させた前回値を演算処理に使用し、今回採用するホールセンサ速度ω_hを前回値であるω_h_d1に書き換える。その速度を積分してロータ位置を得ることで補正する(ステップS20)。このω_h_d1を用いてホールセンサ検出角度の補正を行うことで、角度検出の誤差が低減でき、モータ電流も急激に変化することなく制御でき、磁力の異なる磁石の影響による誤検知による騒音も発生しない。
【0053】
続いて、今回のホールナンバと前回のホールナンバ(図4のケースでは「7」と「3」)とを記憶させると共に、ステップS7で得られたモータ機械角も記憶させる(ステップS21)。それから、ステップS12と同様にモータ1の回転方向を判定し(ステップS22)、正転(YES),反転(NO)それぞれの場合について、ステップS15,S16と同様の判断を行う(ステップS23,S24)。そして、それぞれで「YES」と判断すると、正転用,反転用の補正回数測定カウンタをインクリメントする(ステップS25,S26)。
【0054】
したがって、モータ1が正転方向と反転方向にそれぞれ機械角で1回転すると、それぞれの補正回数測定カウンタは「補正すべき回数」以上となるので、ステップS13,S14では(NO)と判定されてステップS15,S16での判断が行われるようになる。そして、補正が行われた機械角のホールナンバであれば(YES)ステップS19に移行して同様に補正が行われる。
【0055】
以上に説明した一連の位置及び速度の検出処理とそれらの補正処理とを、洗濯機が実際に運転される場合に適用することを想定する。図12は、洗濯機の運転シーケンスを示している。最初に、給水が開始される前に、例えばドラム27を所定の加速度で回転させて、その期間内にサンプリングされるq軸電流の積算値を評価するなどして、投入された衣類の重量を測定する重量センシング(重量検知処理)が行わる。続いて、洗い運転,脱水運転とすすぎ運転とが繰り返される(その後、ユーザの選択に応じて乾燥運転が行われる)。
【0056】
そして、最初の重量センシング運転が行われる間に、速度・位置補正部80は、図2における一連の処理を行い、補正すべき位置の判定や記憶を行う。尚、重量センシング運転が、ドラム27を一方向だけに回転させて行うようになっている場合には、上記運転が終了した後に逆方向に1回転だけさせれば良い。その後に行われる洗い運転等では、ステップS13,S14で「NO」と判断されるので、記憶された回転位置では(ステップS15,S16:YES)ステップS19及びS20で得られる補正値を用いて運転する。
すると、負荷が重くモータ電流が大きくなる洗い運転時には判定済みの補正位置において補正が行われるので、大きな電流が通電される際に電流が急激に変化して騒音が発生することがなく、安定した運転が可能となる。また、速度検出と角度検出の誤差が低減されるので、モータ速度制御の追従性が良好となり、洗濯機としての洗浄性能も向上する。
【0057】
以上のように本実施例によれば、永久磁石モータ1が、ロータ3に、磁力が異なる2種類の磁石,ネオジム磁石9aとアルニコ磁石9bとを配置して構成される場合、速度・位置検出部55は、3つのホールセンサ68(A,B,C)を用いて永久磁石モータ1の回転速度を検出すると、その回転速度に基づいてロータ3の位置を検出する。そして、速度・位置補正部80は、ホールセンサ68により出力されるセンサ信号の変化状態からネオジム磁石9aとアルニコ磁石9bとの境界を検出すると、速度・位置検出部55により検出される回転速度又はロータ位置を補正するようにした。
したがって、ネオジム磁石9aとアルニコ磁石9bとの磁力差によって、ホールセンサ68により出力されるセンサ信号にずれが生じている場合でも、補正により正確なロータ位置を得ることができる。そして、そのロータ位置に基づき、インバータ回路52を介し永久磁石モータ1を駆動制御する場合に、通電電流の急変による騒音の発生を回避すると共に永久磁石モータ1が脱調することを防止できる。
【0058】
また、速度・位置補正部80は、永久磁石モータ1の回転中に検出した前記境界の位置を記憶し、以降は記憶した境界を越える場合に補正を行うので、補正処理をより簡単に行うことができる。そして、速度・位置補正部80は、永久磁石モータ1の回転中に、前記境界を越える場合に、ホールセンサ68により出力されるセンサ信号のパルス間隔が変化する時間をカウンタにより監視し、その変化時間が許容範囲を超えると補正を行うので、センサ信号の出力状態が変化したことを確実に検出できる。
【0059】
更に、速度・位置補正部80は、永久磁石モータ1の回転方向に応じて、補正対象とするホールセンサ68を替えるようにした。即ち、3つのホールセンサ68(A,B,C)が配置されている場合、両端に位置するホールセンサ68(A,C)が磁気変化の影響を受け易く、それがロータ3の回転方向に応じて異なるので、補正を適切に行うことができる。
加えて、速度・位置補正部80は、3つのホールセンサ68より出力される各センサ信号のレベル変化の組み合わせが、異常なパターンの組み合わせとなった場合にも補正を行うので、異なる種類の磁石の磁力差が大きく、センサ信号パルスのずれ幅が大きくなった場合でも、補正を行うことができる。
【0060】
また、ロータ3に配置されるアルニコ磁石9bは、着磁量を変更可能な程度に低保磁力である永久磁石であり、着磁制御部58は、速度・位置検出部55により検出されたロータ位置に応じて、アルニコ磁石9bの少なくとも一部を着磁するので、アルニコ磁石9bの着磁状態を変化させることで、永久磁石モータ1の特性を、高トルク出力・低速回転に適用させたり、低トルク出力・高速回転に適用させるように変化させることができる。
また、洗濯乾燥機21は、モータ制御システム70を備え、永久磁石モータ1が発生させる回転駆動力によりドラム27を回転させて洗濯運転を行うので、運転制御を安定させることができる。そして、永久磁石モータ1の特性を上記のように変化させることで、洗い運転に適した特性,脱水運転に適した特性に適応させて高い効率で運転を行い、消費電力を低減できる。
【0061】
また、洗濯乾燥機21が、運転開始時に洗濯物の重量を検知するための重量センシング動作を行う場合、モータ制御装置50の速度・位置補正部80は、重量センシング動作が行われている間,又はドラム27内に給水が開始される前に前記境界を検出して、その境界位置を記憶する。したがって、ドラム27に給水が開始されて負荷が重くなる洗い運転が開始される前に境界検知処理が終了するので、洗い運転の実行時には、検知された位置で補正を行うことができる。よって、比較的大きな電流が通電される運転期間では、位置検出誤差に基づく電流値の急変や騒音の発生を回避でき、運転を安定して行うことができる。
【0062】
本発明は上記し又は図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
例えば、同一の永久磁石であっても、その製造過程において特性(磁力)が異なるものが形成されることがある。このような製造上のばらつきが発生した場合でも、本発明の補正を行うことで位置検出を正確に行うことが可能となる。
ネオジム磁石9a,アルニコ磁石9bの配置個数比は、個別の設計に応じて適宜変更すれば良い。
低保磁力の永久磁石は、アルニコ磁石に限ることなく、その他例えばサマリウム・コバルト磁石を用いても良い。また、高保磁力の永久磁石もネオジム磁石に限ることはない。
【0063】
磁力が異なる永久磁石は、3種類以上あっても良い。
速度・位置推定部54,着磁制御部58は、必要に応じて設ければ良い。
補正については、回転速度を補正せずに、ロータ位置だけを補正しても良い。
ホールセンサ68の配置数は、2個でも、4個以上であっても良い。
磁気検出センサは、ホールセンサに限ることなく、磁気を検出した結果に応じて信号を出力するセンサであれば良い。
洗濯機に限ることなく、ロータ側の磁石の一部に磁力が異なるものが配置される永久磁石モータを検出対象,若しくは制御対象とするものであれば適用が可能である。
【符号の説明】
【0064】
図面中、1は永久磁石モータ、3はロータ、9aはネオジム磁石、9bはアルニコ磁石(低保磁力永久磁石)、21はドラム式洗濯乾燥機、50はモータ制御装置、52はインバータ回路、55は速度・位置検出部(速度・位置検出手段)、58は着磁制御部(着磁制御手段)、68はホールセンサ(磁気検出センサ)、80は速度・位置補正部(補正手段)、82はロータ位置検出装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータに配置される複数の永久磁石の一部に、磁力が異なる永久磁石を備える永久磁石モータを検出対象とするもので、
複数の磁気検出センサを用いて前記永久磁石モータの回転速度を検出すると、その回転速度に基づいて前記ロータの位置を検出する速度・位置検出手段と、
前記磁気検出センサにより出力されるセンサ信号の変化状態から、前記複数の永久磁石のうち互いに磁力が異なる永久磁石の境界を検出すると、前記速度・位置検出手段により検出される前記回転速度又は前記ロータ位置を補正する補正手段とを備えたことを特徴とするロータ位置検出装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記永久磁石モータの回転中に検出した前記境界の位置を記憶し、以降は記憶した境界を越える場合に補正を行うことを特徴とする請求項1記載のロータ位置検出装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記境界を越える場合に、前記磁気検出センサにより出力されるセンサ信号のパルス間隔が変化する時間を監視し、その変化時間が許容範囲を超えると補正を行うことを特徴とする請求項1または2記載のロータ位置検出装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記永久磁石モータの回転方向に応じて、補正対象とする磁気検出センサを替えることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のロータ位置検出装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記複数の磁気検出センサより出力される各センサ信号のレベル変化の組み合わせが、異常なパターンの組み合わせとなった場合にも補正を行うことを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載のロータ位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−66960(P2011−66960A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213141(P2009−213141)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】