説明

ワーク処理装置及びプラズマ発生装置

ワーク処理装置Sは、2.45GHzのマイクロ波を発生するマイクロ波発生装置20と、マイクロ波を伝搬する導波管10と、導波管10のワークWとの対向面に設けられたプラズマ発生部30とを具備するプラズマ発生装置PUと、プラズマ発生部30を通過するようにワークWを搬送するワーク搬送手段Cとを備える。プラズマ発生部30は、マイクロ波を受信しそのマイクロ波のエネルギーに基づきプラズマ化したガスを生成して放出するプラズマ発生ノズル31が、複数個配列して取り付けられてなる。ワークWは、ワーク搬送手段Cで搬送されつつ、プラズマ発生部30においてプラズマ化したガスが照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板等の被処理ワークに対してプラズマを照射しワーク表面の清浄化や改質を図ることが可能なワーク処理装置及びこれに用いるプラズマ発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体基板等の被処理ワークに対してプラズマを照射し、その表面の有機汚染物の除去、表面改質、エッチング、薄膜形成又は薄膜除去等を行うワーク処理装置が知られている。例えば特許文献1には、内側電極と外側電極とを有するプラズマ発生ノズルを用い、常圧下において両電極間に電界を印加することでグロー放電プラズマを発生させ、プラズマ化されたガスを固定的に配置された被処理ワークに放射するワーク処理装置が開示されている。また、プラズマを発生させるエネルギー源として、例えば2.45GHzのマイクロ波を用いた常圧プラズマ発生装置を利用したワーク処理装置も知られている。
【特許文献1】特開2003−197397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のワーク処理装置は、被処理ワークをチャンバーや作業ステージ上に固定的に配置した状態で、その表面にプラズマ化されたガスを吹き付ける構成とされている。このため、ワークに対する処理工程はバッチ処理とならざるを得ず、多数のワークをプラズマ処理する場合に作業性が悪いという問題があった。また、特許文献1のように単一のノズルを備えるワーク処理装置であると、例えば大面積基板の表面処理等を行うことが困難であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点が除かれたワーク処理装置及びプラズマ発生装置を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、複数の被処理ワークや大面積のワークに対して連続的に、且つ効率良くプラズマ処理を行うことができるワーク処理装置及びプラズマ発生装置を提供することにある。
【0006】
本発明の一局面によれば、処理対象とされるワークは所定方向に搬送され、プラズマ発生手段により発生されるプラズマを照射される。プラズマ発生手段は、マイクロ波を発生するマイクロ波発生手段と、前記マイクロ波を伝搬する導波管と、前記マイクロ波を受信しそのマイクロ波のエネルギーに基づきプラズマ化したガスを生成して放出するプラズマ発生ノズルとを含むプラズマ発生部とを具備する。プラズマ発生ノズルは、前記導波管に複数個配列して取り付けられる。ワークは、前記プラズマ発生部を通過する。
【0007】
これら本発明の目的、特徴、利点は、後述する詳細な説明、図面によって、一層明らかにされるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係るワーク処理装置Sの全体構成を示す斜視図である。このワーク処理装置Sは、プラズマを発生し被処理物となるワークWに前記プラズマを照射するプラズマ発生ユニットPU(プラズマ発生装置)と、ワークWを前記プラズマの照射領域を経由する所定のルートで搬送する搬送手段Cとから構成されている。図2は、図1とは視線方向を異ならせたプラズマ発生ユニットPUの斜視図、図3は一部透視側面図である。なお、図1〜図3において、X−X方向を前後方向、Y−Y方向を左右方向、Z−Z方向を上下方向というものとし、−X方向を前方向、+X方向を後方向、−Yを左方向、+Y方向を右方向、−Z方向を下方向、+Z方向を上方向として説明する。
【0009】
プラズマ発生ユニットPUは、マイクロ波を利用し常温常圧でのプラズマ発生が可能なユニットであって、大略的に、マイクロ波を伝搬させる導波管10、この導波管10の一端側(左側)に配置され所定波長のマイクロ波を発生するマイクロ波発生装置20、導波管10に設けられたプラズマ発生部30、導波管10の他端側(右側)に配置されマイクロ波を反射させるスライディングショート40、導波管10に放出されたマイクロ波のうち反射マイクロ波がマイクロ波発生装置20に戻らないよう分離するサーキュレータ50、サーキュレータ50で分離された反射マイクロ波を吸収するダミーロード60及びインピーダンス整合を行うスタブチューナ70を備えて構成されている。また搬送手段Cは、図略の駆動手段により回転駆動される搬送ローラ80を含んで構成されている。本実施形態では、平板状のワークWが搬送手段Cにより搬送される例を示している。
【0010】
導波管10は、例えば非磁性金属(アルミニウム等)からなり、断面矩形の長尺管状を呈し、マイクロ波発生装置20により発生されたマイクロ波をプラズマ発生部30へ向けて、その長手方向に伝搬させるものである。導波管10は、分割された複数の導波管ピースが互いのフランジ部同士で連結された連結体で構成されており、一端側から順に、マイクロ波発生装置20が搭載される第1導波管ピース11、スタブチューナ70が組み付けられる第2導波管ピース12及びプラズマ発生部30が設けられている第3導波管ピース13が連結されてなる。なお、第1導波管ピース11と第2導波管ピース12との間にはサーキュレータ50が介在され、第3導波管ピース13の他端側にはスライディングショート40が連結されている。
【0011】
第1導波管ピース11、第2導波管ピース12及び第3導波管ピース13は、それぞれ金属平板からなる上面板、下面板及び2枚の側面板を用いて角筒状に組み立てられ、その両端にフランジ板が取り付けられて構成されている。このような平板の組み立てによらず、押し出し成形や板状部材の折り曲げ加工等により形成された矩形導波管ピース若しくは非分割型の導波管を用いるようにしても良い。また、断面矩形の導波管に限らず、例えば断面楕円の導波管を用いることも可能である。さらに、非磁性金属に限らず、導波作用を有する各種の部材で導波管を構成することができる。
【0012】
マイクロ波発生装置20は、例えば2.45GHzのマイクロ波を発生するマグネトロン等のマイクロ波発生源と、このマイクロ波発生源にて発生されたマイクロ波の強度を所定の出力強度に調整するアンプとを具備する装置本体部21と、装置本体部21で発生されたマイクロ波を導波管10の内部へ放出するマイクロ波送信アンテナ22とを備えて構成されている。本実施形態に係るプラズマ発生ユニットPUでは、例えば1W〜3kWのマイクロ波エネルギーを出力できる連続可変型のマイクロ波発生装置20が好適に用いられる。
【0013】
図3に示すように、マイクロ波発生装置20は、装置本体部21からマイクロ波送信アンテナ22が突設された形態のものであり、第1導波管ピース11に載置される態様で固定されている。詳しくは、装置本体部21が第1導波管ピース11の上面板11Uに載置され、マイクロ波送信アンテナ22が上面板11Uに穿設された貫通孔111を通して第1導波管ピース11内部の導波空間110に突出する態様で固定されている。このように構成されることで、マイクロ波送信アンテナ22から放出された例えば2.45GHzのマイクロ波は、導波管10により、その一端側(左側)から他端側(右側)に向けて伝搬される。
【0014】
プラズマ発生部30は、第3導波管ピース13の下面板13B(矩形導波管の一つの側面;処理対象ワークとの対向面)に、左右方向へ一列に整列して突設された8個のプラズマ発生ノズル31を具備して構成されている。このプラズマ発生部30の幅員、つまり8個のプラズマ発生ノズル31の左右方向の配列幅は、平板状ワークWの搬送方向と直交する幅方向のサイズtと略合致する幅員とされている。これにより、ワークWを搬送ローラ80で搬送しながら、ワークWの全表面(下面板13Bと対向する面)に対してプラズマ処理が行えるようになっている。なお、8個のプラズマ発生ノズル31の配列間隔は、導波管10内を伝搬させるマイクロ波の波長λに応じて定めることが望ましい。例えば、波長λの1/2ピッチ、1/4ピッチでプラズマ発生ノズル31を配列することが望ましく、2.45GHzのマイクロ波を用いる場合は、λ=230mmであるので、115mm(λ/2)ピッチ、或いは57.5mm(λ/4)ピッチでプラズマ発生ノズル31を配列すれば良い。
【0015】
図4は、2つのプラズマ発生ノズル31を拡大して示す側面図(一方のプラズマ発生ノズル31は分解図として描いている)、図5は、図4のA−A線側断面図である。プラズマ発生ノズル31は、中心導電体32(内部導電体)、ノズル本体33(外部導電体)、ノズルホルダ34、シール部材35及び保護管36を含んでいる。
【0016】
中心導電体32は、良導電性の金属から構成された棒状部材からなり、その上端部321の側が第3導波管ピース13の下面板13Bを貫通して導波空間130に所定長さだけ突出(この突出部分を受信アンテナ部320という)する一方で、下端部322がノズル本体33の下端縁331と略面一になるように、上下方向に配置されている。この中心導電体32には、受信アンテナ部320が導波管10内を伝搬するマイクロ波を受信することで、マイクロ波エネルギー(マイクロ波電力)が与えられる。当該中心導電体32は、長さ方向略中間部において、シール部材35により保持されている。
【0017】
ノズル本体33は、良導電性の金属から構成され、中心導電体32を収納する筒状空間332を有する筒状体である。また、ノズルホルダ34も良導電性の金属から構成され、ノズル本体33を保持する比較的大径の下部保持空間341と、シール部材35を保持する比較的小径の上部保持空間342とを有する筒状体である。一方、シール部材35は、テフロン(デュポン社の登録商標)等の耐熱性樹脂材料やセラミック等からなる絶縁性部材からなり、前記中心導電体32を固定的に保持する保持孔351をその中心軸上に備える筒状体からなる。
【0018】
ノズル本体33は、上方から順に、ノズルホルダ34の下部保持空間341に嵌合される上側胴部33Uと、後述するガスシールリング37を保持するための環状凹部33Sと、環状に突設されたフランジ部33Fと、ノズルホルダ34から突出する下側胴部33Bとを具備している。また、上側胴部33Uには、所定の処理ガスを前記筒状空間332へ供給させるための連通孔333が穿孔されている。
【0019】
ノズル本体33は、中心導電体32の周囲に配置された外部導電体として機能するもので、中心導電体32は所定の環状空間H(絶縁間隔)が周囲に確保された状態で筒状空間332の中心軸上に挿通されている。ノズル本体33は、上側胴部33Uの外周部がノズルホルダ34の下部保持空間341の内周壁と接触し、またフランジ部33Fの上端面がノズルホルダ34の下端縁343と接触するようにノズルホルダ34に嵌合されている。なお、ノズル本体33は、例えばプランジャやセットビス等を用いて、ノズルホルダ34に対して着脱自在な固定構造で装着されることが望ましい。
【0020】
ノズルホルダ34は、第3導波管ピース13の下面板13Bに穿孔された貫通孔131に密嵌合される上側胴部34U(上部保持空間342の位置に略対応する)と、下面板13Bから下方向に延出する下側胴部34B(下部保持空間341の位置に略対応する)とを備えている。下側胴部34Bの外周には、処理ガスを前記環状空間Hに供給するためのガス供給孔344が穿孔されている。図示は省略しているが、このガス供給孔344には、所定の処理ガスを供給するガス供給管の終端部が接続するための管継手等が取り付けられる。かかるガス供給孔344と、ノズル本体33の連通孔333とは、ノズル本体33がノズルホルダ34への定位置嵌合された場合に互いに連通状態となるように、各々位置設定されている。なお、ガス供給孔344と連通孔333との突き合わせ部からのガス漏洩を抑止するために、ノズル本体33とノズルホルダ34との間にはガスシールリング37が介在されている。
【0021】
シール部材35は、その下端縁352がノズル本体33の上端縁334と当接し、その上端縁353がノズルホルダ34の上端係止部345と当接する態様で、ノズルホルダ34の上部保持空間342に保持されている。すなわち、上部保持空間342に中心導電体32を支持した状態のシール部材35が嵌合され、ノズル本体33の上端縁334でその下端縁352が押圧されるようにして組み付けられているものである。
【0022】
保護管36(図5では図示省略している)は、所定長さの石英ガラスパイプ等からなり、ノズル本体33の筒状空間332の内径に略等しい外径を有する。この保護管36は、ノズル本体33の下端縁331の耐食性を向上するため、その一部がノズル本体33の下端縁331から突出するように、前記筒状空間332に内挿されている。なお、保護管36は、その先端部が下端縁331と一致するように、或いは下端縁331よりも内側へ入り込むように、その全体が筒状空間332に収納されていても良い。
【0023】
プラズマ発生ノズル31は上記のように構成されている結果、ノズル本体33、ノズルホルダ34及び第3導波管ピース13(導波管10)は導通状態(同電位)とされている一方で、中心導電体32は絶縁性のシール部材35で支持されていることから、これらの部材とは電気的に絶縁されている。従って、図6に示すように、導波管10がアース電位とされた状態で、中心導電体32の受信アンテナ部320でマイクロ波が受信され中心導電体32にマイクロ波電力が給電されると、その下端部322及びノズル本体33の下端縁331の近傍に電界集中部が形成されるようになる。
【0024】
かかる状態で、ガス供給孔344から例えば酸素ガスや空気のような酸素系の処理ガスが環状空間Hへ供給されると、前記マイクロ波電力により処理ガスが励起されて中心導電体32の下端部322付近においてプラズマ(電離気体)が発生する。このプラズマは、電子温度が数万度であるものの、ガス温度は外界温度に近い反応性プラズマ(中性分子が示すガス温度に比較して、電子が示す電子温度が極めて高い状態のプラズマ)であって、常圧下で発生するプラズマである。
【0025】
このようにしてプラズマ化された処理ガスは、ガス供給孔344から与えられるガス流によりプルームPとしてノズル本体33の下端縁331から放射される。このプルームPにはラジカルが含まれ、例えば処理ガスとして酸素系ガスを使用すると酸素ラジカルが生成されることとなり、有機物の分解・除去作用、レジスト除去作用等を有するプルームPとすることができる。本実施形態に係るプラズマ発生ユニットPUでは、プラズマ発生ノズル31が複数個配列されていることから、左右方向に延びるライン状のプルームPを発生させることが可能となる。
【0026】
因みに、処理ガスとしてアルゴンガスのような不活性ガスや窒素ガスを用いれば、各種基板の表面クリーニングや表面改質を行うことができる。また、フッ素を含有する化合物ガスを用いれば基板表面を撥水性表面に改質することができ、親水基を含む化合物ガスを用いることで基板表面を親水性表面に改質することができる。さらに、金属元素を含む化合物ガスを用いれば、基板上に金属薄膜層を形成することができる。
【0027】
スライディングショート40は、各々のプラズマ発生ノズル31に備えられている中心導電体32と、導波管10の内部を伝搬されるマイクロ波との結合状態を最適化するために備えられているもので、マイクロ波の反射位置を変化させて定在波パターンを調整可能とするべく第3導波管ピース13の右側端部に連結されている。従って、定在波を利用しない場合は、当該スライディングショート40に代えて、電波吸収作用を有するダミーロードが取り付けられる。
【0028】
図7は、スライディングショート40の内部構造を示す透視斜視図である。図7に示すように、スライディングショート40は、導波管10と同様な断面矩形の筐体構造を備えており、導波管10と同じ材料で構成された中空空間410を有する筐体部41と、前記中空空間410内に収納された円柱状の反射ブロック42と、反射ブロック42の基端部に一体的に取り付けられ前記中空空間410内を左右方向に摺動する矩形ブロック43と、この矩形ブロック43に組み付けられた移動機構44と、反射ブロック42にシャフト45を介して直結されている調整ノブ46とが備えられている。
【0029】
反射ブロック42は、マイクロ波の反射面となる先端面421が第3導波管ピース13の導波空間130に対向するよう左右方向に延在する円柱体である。この反射ブロック42は、矩形ブロック43と同様な角柱状を呈していても良い。前記移動機構44は、調整ノブ46の回転操作により矩形ブロック43及びこれと一体化された反射ブロック42を左右方向に推進若しくは後退させる機構であって、調整ノブ46を回転させることで反射ブロック42が中空空間410内において矩形ブロック43にてガイドされつつ左右方向に移動可能とされている。かかる反射ブロック42の移動による先端面421の位置調整によって、定在波パターンが最適化される。なお、調整ノブ46の回転操作を、ステッピングモータ等を用いて自動化することが望ましい。
【0030】
サーキュレータ50は、例えばフェライト柱を内蔵する導波管型の3ポートサーキュレータからなり、一旦はプラズマ発生部30へ向けて伝搬されたマイクロ波のうち、プラズマ発生部30で電力消費されずに戻って来る反射マイクロ波を、マイクロ波発生装置20に戻さずダミーロード60へ向かわせるものである。このようなサーキュレータ50を配置することで、マイクロ波発生装置20が反射マイクロ波によって過熱状態となることが防止される。
【0031】
図8は、サーキュレータ50の作用を説明するためのプラズマ発生ユニットPUの上面図である。図示するように、サーキュレータ50の第1ポート51には第1導波管ピース11が、第2ポート52には第2導波管ピース12が、さらに第3ポート53にはダミーロード60がそれぞれ接続されている。マイクロ波発生装置20のマイクロ波送信アンテナ22から発生されたマイクロ波は、矢印aで示すように第1ポート51から第2ポート52を経由して第2導波管ピース12へ向かう。一方、第2導波管ピース12側から入射する反射マイクロ波は、矢印bで示すように、第2ポート52から第3ポートへ向かうよう偏向され、ダミーロード60へ入射される。
【0032】
ダミーロード60は、上述の反射マイクロ波を吸収して熱に変換する水冷型(空冷型でも良い)の電波吸収体である。このダミーロード60には、冷却水を内部に流通させるための冷却水流通口61が設けられており、反射マイクロ波を熱変換することにより発生した熱が前記冷却水に熱交換される。
【0033】
スタブチューナ70は、負荷となるプラズマ発生ノズル31の中心導電体32に対するインピーダンス整合を図るためのもので、第2導波管ピース12の上面板12Uに所定間隔を置いて直列配置された3つのスタブチューナユニット70A〜70Cを備えている。図9は、スタブチューナ70の設置状況を示す透視側面図である。図示するように、3つのスタブチューナユニット70A〜70Cは同一構造を備えており、第2導波管ピース12の導波空間120に突出するスタブ71と、該スタブ71に直結された操作棒72と、スタブ71を上下方向に出没動作させるための移動機構73と、これら機構を保持する外套74とから構成されている。
【0034】
スタブチューナユニット70A〜70Cに各々備えられているスタブ71は、その導波空間120への突出長が各操作棒72により独立して調整可能とされている。これらスタブ71の突出長は、例えばマイクロ波電力パワーをモニターしつつ、中心導電体32による消費電力が最大となるポイント(反射マイクロ波が最小になるポイント)を探索することで決定される。なお、このようなインピーダンス整合は、必要に応じてスライディングショート40と連動させて実行される。このスタブチューナ70の操作も、ステッピングモータ等を用いて自動化することが望ましい。
【0035】
搬送手段Cは、所定の搬送路に沿って配置された複数の搬送ローラ80を備え、図略の駆動手段により搬送ローラ80が駆動されることで、処理対象となるワークWを、前記プラズマ発生部30を経由して搬送させるものである。ここで、処理対象となるワークWとしては、プラズマディスプレイパネルや半導体基板のような平型基板、電子部品が実装された回路基板等を例示することができる。また、平型形状でないパーツや組部品等も処理対象とすることができる。この場合は、搬送ローラに代えてベルトコンベア等を採用すれば良い。
【0036】
次に、本実施形態に係るワーク処理装置Sの電気的構成について説明する。図10は、ワーク処理装置Sの制御系90を示すブロック図である。この制御系90はCPU(中央演算処理装置)等からなり、機能的にマイクロ波出力制御部91、ガス流量制御部92、モータ制御部93、全体制御部94が備えられている。さらに、全体制御部94に対して所定の操作信号を与える操作部95が備えられている。
【0037】
マイクロ波出力制御部91は、マイクロ波発生装置20から出力されるマイクロ波のON−OFF制御、出力強度制御を行うもので、所定のパルス信号を生成してマイクロ波発生装置20の装置本体部21によるマイクロ波発生の動作制御を行う。
【0038】
ガス流量制御部92は、プラズマ発生部30の各プラズマ発生ノズル31へ供給する処理ガスの流量制御を行うものである。具体的には、ガスボンベ等の処理ガス供給源921とプラズマ発生ノズル31との間を接続するガス供給管922に設けられた流量制御弁923の開閉制御乃至は開度調整を行う。
【0039】
モータ制御部93は、搬送ローラ80を回転駆動させる駆動モータ931の動作制御を行うもので、ワークWの搬送開始及び停止、搬送速度の制御等を行う。
【0040】
全体制御部94は、当該ワーク処理装置Sの全体的な動作制御を司るもので、操作部95から与えられる操作信号に応じて、上記マイクロ波出力制御部91、ガス流量制御部92及びモータ制御部93を、所定のシーケンスに基づいて動作制御する。すなわち、予め与えられた制御プログラムに基づいて、ワークWの搬送を開始させてワークWをプラズマ発生部30へ導き、所定流量の処理ガスを各プラズマ発生ノズル31へ供給させつつマイクロ波電力を与えてプラズマ(プルームP)を発生させ、ワークWを搬送しながらその表面にプルームPを放射させるものである。これにより、複数のワークWを連続的に処理することができる。
【0041】
以上説明したワーク処理装置Sによれば、ワーク搬送手段CでワークWを搬送しつつ、導波管10に複数個配列して取り付けられたプラズマ発生ノズル31からプラズマ化されたガスをワークWに対して放射することが可能である。このため、複数の被処理ワークWに対して連続的にプラズマ処理を行うことができ、また大面積のワークに対しても効率良くプラズマ処理を行うことができる。従って、従来のバッチ処理タイプのワーク処理装置に比較して、各種の被処理ワークに対するプラズマ処理作業性に優れるワーク処理装置S若しくはプラズマ発生装置PUを提供することができる。しかも、外界の温度及び圧力でプラズマを発生させることができるので、真空チャンバー等を必要とせず、設備構成を簡素化することができる。
【0042】
また、マイクロ波発生装置20から発生されたマイクロ波を、各々のプラズマ発生ノズル31が備える中心導電体32で受信させ、そのマイクロ波のエネルギーに基づきそれぞれのプラズマ発生ノズル31からプラズマ化されたガスを放出させることができる。このため、マイクロ波が保有するエネルギーの各プラズマ発生ノズル31への伝達系を簡素化することができる。従って、装置構成のシンプル化、コストダウン等を図ることができる。
【0043】
さらに、複数のプラズマ発生ノズル31が一列に整列配置されてなるプラズマ発生部30が、平板状のワークWの搬送方向と直交する幅方向のサイズtに略合致した幅員を有しているので、当該ワークWを、搬送手段Cにより一度だけプラズマ発生部30を通過させるだけで、その全面の処理を完了させることができ、平板状のワークWに対するプラズマ処理効率を格段に向上させることができる。また、搬送されて来るワークWに対して同じタイミングでプラズマ化されたガスを放射できるようになり、均質的な表面処理等を行うことができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態に係るワーク処理装置Sについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば下記の実施形態を取ることができる。
(1)上記実施形態では、複数のプラズマ発生ノズル31を一列に整列配置した例を示したが、ノズル配列はワークの形状やマイクロ波電力のパワー等に応じて適宜決定すれば良い。例えば、ワークの搬送方向に複数列プラズマ発生ノズル31をマトリクス整列したり、千鳥配列したりしても良い。
(2)上記実施形態では、搬送手段Cとして搬送ローラ80の上面に平板状のワークWを載置して搬送する形態を例示したが、この他に例えば上下の搬送ローラ間にワークをニップさせて搬送させる形態、搬送ローラを用いず所定のバスケット等にワークを収納し前記バスケット等をラインコンベア等で搬送させる形態、或いはロボットハンド等でワークを把持してプラズマ発生部30へ搬送させる形態であっても良い。
(3)上記実施形態では、マイクロ波発生源として2.45GHzのマイクロ波を発生するマグネトロンを例示したが、マグネトロン以外の各種高周波電源も使用可能である。また、2.45GHzとは異なる波長のマイクロ波を用いるようにしても良い。
(4)導波管10内におけるマイクロ波電力を測定するために、パワーメータを導波管10の適所に設置することが望ましい。例えば、マイクロ波発生装置20のマイクロ波送信アンテナ22から放出されたマイクロ波電力に対する反射マイクロ波電力の比を知見するために、サーキュレータ50と第2導波管ピース12との間に、パワーメータを内蔵する導波管を介在させるようにすることができる。
【0045】
以上説明した通り、新規なワーク処理装置は、ワークを搬送しながら、ワークにプラズマを照射して所定の処理を行わせる。ワーク処理装置は、マイクロ波を発生するマイクロ波発生手段と、前記マイクロ波を伝搬する導波管と、前記マイクロ波を受信しそのマイクロ波のエネルギーに基づきプラズマ化したガスを生成して放出するプラズマ発生ノズルが前記導波管に複数個配列して取り付けられてなるプラズマ発生部とを具備するプラズマ発生手段と、前記プラズマ発生部を通過するようにワークを搬送するワーク搬送手段とを備える。
【0046】
この構成によれば、ワーク搬送手段でワークを搬送しつつ、導波管に取り付けられたプラズマ発生ノズルから、プラズマ化されたガスをワークに対して放射することで、ワークの表面処理等を連続的に行うことが可能となる。しかも、プラズマ発生ノズルは、導波管に複数個配列して取り付けられているので、大面積のワークにも対応することができる。従って、各種の被処理ワークに対するプラズマ処理作業性に優れるワーク処理装置若しくはプラズマ発生装置を提供することができる。
【0047】
上記構成において、前記プラズマ発生ノズルが、前記導波管の内部に一端が突出する内部導電体と、該内部導電体の周囲に離間して配置された外部導電体と、前記内部導電体と外部導電体との間に所定のガスを供給するガス供給部とを具備し、ノズル先端部からプラズマ化されたガスを放出するよう構成されていることが望ましい。
【0048】
この構成によれば、内部導電体の導波管への突出部により導波管内を伝搬するマイクロ波が受信され、マイクロ波電力エネルギーが内部導電体に与えられる。かかるエネルギーを利用して外部導電体との間に高電界部を形成することで、プラズマを発生させることが可能となる。従って、ガス供給部から所定のガスを内部導電体と外部導電体との間に供給することで、プラズマ化されたガスをノズル先端部から放出させることができる。
【0049】
これにより、マイクロ波発生手段から発生されたマイクロ波を、各々のプラズマ発生ノズルが備える内部導電体で受信させ、そのマイクロ波のエネルギーに基づきそれぞれのプラズマ発生ノズルからプラズマ化されたガスを放出させることができる。このため、マイクロ波が保有するエネルギーの各プラズマ発生ノズルへの伝達系を簡素化することができる。従って、装置構成のシンプル化、コストダウン等が図り易くなるという利点がある。
【0050】
上記構成において、前記ワーク搬送手段が平板状ワークを搬送可能な構成を備え、前記プラズマ発生部は、前記平板状ワークの搬送方向と直交する幅方向のサイズに略合致した幅員を有していることが望ましい。この構成によれば、広幅のフラット基板等のワークを、搬送手段により一度だけプラズマ発生部を通過させるだけで、その全面の処理を完了させることができる。従って、広幅サイズのワークのプラズマ処理効率を格段に向上させることができる。
【0051】
この場合、前記導波管が矩形導波管からなり、前記複数のプラズマ発生ノズルが、前記矩形導波管の一つの側面に、一列に整列配置されていることが望ましい。この構成によれば、搬送されて来るワークに対して同じタイミングでプラズマ化されたガスを放射できるようになり、均質的な表面処理等が行い易くなる。従って、広幅サイズのワークのプラズマ処理効率を向上させることができるだけでなく、均質的な処理も行えるようになる。
【0052】
また、新規なプラズマ発生装置は、マイクロ波を発生するマイクロ波発生手段と、前記マイクロ波を伝搬する導波管と、前記マイクロ波を受信しそのマイクロ波のエネルギーに基づきプラズマ化したガスを生成して放出するプラズマ発生ノズルが前記導波管に複数個配列して取り付けられてなるプラズマ発生部とを具備する。前記導波管は、移動する処理対象ワークの搬送経路に対向可能な対向面を有する。前記プラズマ発生部は前記対向面に設置されている。
【0053】
かかるプラズマ発生装置において、前記プラズマ発生ノズルが、前記導波管の内部に一端が突出する内部導電体と、該内部導電体の周囲に離間して配置された外部導電体と、前記内部導電体と外部導電体との間に所定のガスを供給するガス供給部とを具備し、ノズル先端部からプラズマ化されたガスを放出するよう構成されていることが望ましい。
【0054】
本発明に係るワーク処理装置及びプラズマ発生装置は、半導体ウェハ等の半導体基板に対するエッチング処理装置や成膜装置、プラズマディスプレイパネル等のガラス基板やプリント基板の清浄化処理装置、医療機器等に対する滅菌処理装置、タンパク質の分解装置等に好適に適用することができる。
【0055】
上述において本発明の本質的な要点から離脱しない範囲のいくつかの実施形態を示したが、これらは実施形態であって、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の範囲は、実施形態ではなく請求の範囲によって規定される。従って、変更形態又は改良形態が、請求の範囲を離脱しない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係るワーク処理装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1とは視線方向を異ならせたプラズマ発生ユニットの斜視図である。
【図3】ワーク処理装置の一部透視側面図である。
【図4】2つのプラズマ発生ノズルを拡大して示す側面図(一方のプラズマ発生ノズルは分解図として描いている)である。
【図5】図4のV−V線側断面図である。
【図6】プラズマ発生ノズルにおけるプラズマの発生状態を説明するための透視側面図である。
【図7】スライディングショートの内部構造を示す透視斜視図である。
【図8】サーキュレータの作用を説明するためのプラズマ発生ユニットの上面図である。
【図9】スタブチューナの設置状況を示す透視側面図である。
【図10】ワーク処理装置の制御系を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0057】
10 導波管
20 マイクロ波発生装置(マイクロ波発生手段)
30 プラズマ発生部
31 プラズマ発生ノズル
32 中心導電体(内部導電体)
33 ノズル本体(外部導電体)
34 ノズルホルダ
344 ガス供給孔(ガス供給部)
40 スライディングショート
50 サーキュレータ
60 ダミーロード
70 スタブチューナ
S ワーク処理装置
PU プラズマ発生ユニット(プラズマ発生装置)
C 搬送手段
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象とされるワークを搬送しつつ該ワークにプラズマを照射して所定の処理を施与するワーク処理装置であって、
マイクロ波を発生するマイクロ波発生手段と、前記マイクロ波を伝搬する導波管と、前記マイクロ波を受信しそのマイクロ波のエネルギーに基づきプラズマ化したガスを生成して放出するプラズマ発生ノズルが前記導波管に複数個配列して取り付けられてなるプラズマ発生部とを具備するプラズマ発生手段と、
前記プラズマ発生部を通過するようにワークを搬送するワーク搬送手段と、
を備えることを特徴とするワーク処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワーク処理装置において、
前記プラズマ発生ノズルの各々が、前記導波管の内部に一端が突出する内部導電体と、該内部導電体の周囲に離間して配置された外部導電体と、前記内部導電体と外部導電体との間に所定のガスを供給するガス供給部とを具備し、ノズル先端部からプラズマ化されたガスを放出するよう構成されていることを特徴とするワーク処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載のワーク処理装置において、
前記ワーク搬送手段が平板状ワークを搬送可能な構成を備え、
前記プラズマ発生部は、前記平板状ワークの搬送方向と直交する幅方向のサイズに略合致した幅員を有していることを特徴とするワーク処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載のワーク処理装置において、
前記導波管が矩形導波管からなり、
前記複数のプラズマ発生ノズルが、前記矩形導波管の一つの側面に、一列に整列配置されていることを特徴とするワーク処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載のワーク処理装置において、
前記ワーク搬送手段が平板状ワークを搬送可能な構成を備え、
前記プラズマ発生部は、前記平板状ワークの搬送方向と直交する幅方向のサイズに略合致した幅員を有していることを特徴とするワーク処理装置。
【請求項6】
マイクロ波を発生するマイクロ波発生手段と、
前記マイクロ波を伝搬する導波管と、
前記マイクロ波を受信しそのマイクロ波のエネルギーに基づきプラズマ化したガスを生成して放出するプラズマ発生ノズルが前記導波管に複数個配列して取り付けられてなるプラズマ発生部と、を具備し、
前記導波管には移動する処理対象ワークの搬送経路に対向可能な対向面が形成され、前記プラズマ発生部が前記対向面に設置されていることを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項7】
請求項6に記載のプラズマ発生装置において、
前記プラズマ発生ノズルが、前記導波管の内部に一端が突出する内部導電体と、該内部導電体の周囲に離間して配置された外部導電体と、前記内部導電体と外部導電体との間に所定のガスを供給するガス供給部とを具備し、ノズル先端部からプラズマ化されたガスを放出するよう構成されていることを特徴とするプラズマ発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−525566(P2009−525566A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552283(P2008−552283)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/003422
【国際公開番号】WO2007/086875
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】