説明

中和洗浄装置および中和洗浄方法

【課題】洗浄処理に使用される液体の量を低減しつつ、基板処理装置の内部に付着した薬液成分を確実に除去することができる基板処理装置の中和洗浄装置および中和洗浄方法を提供する。
【解決手段】中和洗浄装置1は、基板処理装置90の内部との間で希釈液の循環経路を構成し、希釈液を循環させつつ希釈液中に中和剤を添加する。また、中和洗浄装置1は、循環される希釈液のpH値をpHセンサ16により計測し、その計測値が所定の数値範囲内に入るまで中和剤の添加を継続する。このため、希釈液を循環させることにより希釈液の使用量を低減させることができ、また、pHセンサ16の計測値に基づいて希釈液中の薬液成分を確実に中和することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置の内部に付着した薬液を中和洗浄する中和洗浄装置および中和洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板等の基板に対して、薬液を使用したエッチング処理や薬液洗浄処理等の薬液処理を行う基板処理装置が知られている。基板処理装置は、薬液を貯留する薬液槽を有しており、薬液槽に貯留された薬液中に基板を浸漬することにより、基板に薬液処理を行う。このような基板処理装置については、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
基板処理装置において繰り返し薬液処理が行われると、薬液の排液後においても基板処理装置内の各部に薬液成分が付着した状態となる。このため、基板処理装置を廃棄またはリサイクルする際には、予め基板処理装置の内部を洗浄する必要がある。従来では、例えば、基板処理装置の内部に純水をシャワー状に供給し、基板処理装置の内部に付着した薬液成分を希釈しつつ排液することにより、基板処理装置の内部を洗浄していた。
【0004】
【特許文献1】特開2007−53282公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の洗浄方法では、基板処理装置の内部に付着した薬液成分を確実に除去することは困難であった。特に、基板処理装置の排液配管や排気配管の内部には純水が行き届きにくく、また、これらの箇所は目視で確認することもできないため、これらの箇所に付着した薬液成分を確実に除去することは困難であった。
【0006】
また、上記従来の洗浄方法では、基板処理装置の内部に供給した純水を二次的に使用することなく排液していたため、大量の純水を供給する必要があった。また、大量の純水が薬液成分とともに排液されるため、排液時の無害化処理の負担も大きかった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、洗浄処理に使用される液体の量を低減しつつ、基板処理装置の内部に付着した薬液成分を確実に除去することができる基板処理装置の中和洗浄装置および中和洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、基板処理装置の内部に付着した薬液を中和洗浄する中和洗浄装置であって、前記基板処理装置に接続されることにより前記基板処理装置との間で希釈液の循環経路を構成し、前記基板処理装置内に供給された希釈液を循環させる循環部と、前記循環経路において希釈液のpH値を計測するpHセンサと、前記循環部により循環される希釈液に中和剤を添加する中和剤供給部と、前記pHセンサの計測値を受信するとともに前記中和剤供給部の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記pHセンサの計測値が予め設定された数値範囲内に入るまで前記中和剤供給部による中和剤の添加を継続させることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の中和洗浄装置であって、前記循環部は、前記基板処理装置の排液配管および排気配管から希釈液を回収するとともに前記基板処理装置へ希釈液を再供給することを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の中和洗浄装置であって、前記中和剤供給部は、アルカリ性の中和剤を供給するアルカリ性中和剤供給部と、酸性の中和剤を供給する酸性中和剤供給部とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、基板処理装置の内部に付着した薬液を中和洗浄する中和洗浄装置であって、ミスト状の中和剤を前記基板処理装置の内部に供給する中和剤供給部と、前記基板処理装置に接続されることにより前記基板処理装置との間で循環経路を構成し、前記中和剤供給部から供給されたミスト状の中和剤を循環させる循環部と、前記循環経路において循環気体のpH値を計測するpHセンサと、前記pHセンサの計測値を受信するとともに前記中和剤供給部および前記循環部の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記pHセンサの計測値が予め設定された数値範囲内に入るまで前記中和剤供給部によるミスト状の中和剤の供給と前記循環部によるミスト状の中和剤の循環とを継続させることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の中和洗浄装置であって、前記循環部は、前記基板処理装置の排液配管および排気配管からミスト状の中和剤を回収しつつミスト状の中和剤を循環させることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項4または請求項5に記載の中和洗浄装置であって、前記中和剤供給部は、アルカリ性の中和剤を供給するアルカリ性中和剤供給部と、酸性の中和剤を供給する酸性中和剤供給部とを有することを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、基板処理装置の内部に付着した薬液を中和洗浄する中和洗浄方法であって、前記基板処理装置の内部に希釈液を供給する第1工程と、前記基板処理装置の内部と所定の循環経路との間で希釈液を循環させる第2工程と、循環される希釈液中に中和剤を添加する第3工程と、循環される希釈液のpH値を計測する第4工程と、を備え、前記第3工程の中和剤の添加を、前記第4工程における計測値が予め設定された数値範囲内に入るまで継続させることを特徴とする。
【0015】
請求項8に係る発明は、基板処理装置の内部に付着した薬液を中和洗浄する中和洗浄方法であって、前記基板処理装置の内部にミスト状の中和剤を供給する第1工程と、前記基板処理装置の内部と所定の循環経路との間でミスト状の中和剤を循環させる第2工程と、循環気体のpH値を計測する第3工程と、を備え、前記第1工程のミスト状の中和剤の供給と前記第2工程のミスト状の中和剤の循環とを、前記第3工程における計測値が予め設定された数値範囲内に入るまで継続させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、中和洗浄装置は、基板処理装置に接続されることにより基板処理装置との間で希釈液の循環経路を構成し、基板処理装置内に供給された希釈液を循環させる循環部と、循環経路において希釈液のpH値を計測するpHセンサと、循環部により循環される希釈液に中和剤を添加する中和剤供給部と、pHセンサの計測値を受信するとともに中和剤供給部の動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、pHセンサの計測値が予め設定された数値範囲内に入るまで中和剤供給部による中和剤の添加を継続させる。このため、希釈液を循環させることにより希釈液の使用量を低減させつつ、pHセンサの計測値に基づいて希釈液中の薬液成分を確実に中和することができる。
【0017】
特に、請求項2に記載の発明によれば、循環部は、基板処理装置の排液配管および排気配管から希釈液を回収するとともに基板処理装置へ希釈液を再供給する。このため、排液配管および排気配管も含めて希釈液の循環経路が構成され、これらの配管の内部に付着した薬液成分も良好に除去される。
【0018】
特に、請求項3に記載の発明によれば、中和剤供給部は、アルカリ性の中和剤を供給するアルカリ性中和剤供給部と、酸性の中和剤を供給する酸性中和剤供給部とを有する。このため、中和洗浄装置は、除去対象となる薬液の種類に応じて適切な中和剤を供給することができる。
【0019】
また、請求項4に記載の発明によれば、中和洗浄装置は、ミスト状の中和剤を基板処理装置の内部に供給する中和剤供給部と、基板処理装置に接続されることにより基板処理装置との間で循環経路を構成し、中和剤供給部から供給されたミスト状の中和剤を循環させる循環部と、循環経路において循環気体のpH値を計測するpHセンサと、pHセンサの計測値を受信するとともに中和剤供給部および循環部の動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、pHセンサの計測値が予め設定された数値範囲内に入るまで中和剤供給部によるミスト状の中和剤の供給と循環部によるミスト状の中和剤の循環とを継続させる。このため、希釈液を使用することなく基板処理装置の内部に中和剤を行き渡らせることができ、また、pHセンサの計測値に基づいて薬液成分を確実に中和することができる。
【0020】
特に、請求項5に記載の発明によれば、循環部は、基板処理装置の排液配管および排気配管からミスト状の中和剤を回収しつつミスト状の中和剤を循環させる。このため、排液配管および排気配管も含めて中和剤の循環経路が構成され、これらの配管の内部に付着した薬液成分も良好に中和される。
【0021】
特に、請求項6に記載の発明によれば、中和剤供給部は、アルカリ性の中和剤を供給するアルカリ性中和剤供給部と、酸性の中和剤を供給する酸性中和剤供給部とを有する。このため、中和洗浄装置は、除去対象となる薬液の種類に応じて適切な中和剤を供給することができる。
【0022】
また、請求項7に記載の発明によれば、中和洗浄方法は、基板処理装置の内部に希釈液を供給する第1工程と、基板処理装置の内部と所定の循環経路との間で希釈液を循環させる第2工程と、循環される希釈液中に中和剤を添加する第3工程と、循環される希釈液のpH値を計測する第4工程と、を備え、第3工程の中和剤の添加を、第4工程における計測値が予め設定された数値範囲内に入るまで継続させる。このため、希釈液を循環させることにより希釈液の使用量を低減させつつ、pHセンサの計測値に基づいて希釈液中の薬液成分を確実に中和することができる。
【0023】
また、請求項8に記載の発明によれば、中和洗浄方法は、基板処理装置の内部にミスト状の中和剤を供給する第1工程と、基板処理装置の内部と所定の循環経路との間でミスト状の中和剤を循環させる第2工程と、循環気体のpH値を計測する第3工程と、を備え、第1工程のミスト状の中和剤の供給と第2工程のミスト状の中和剤の循環とを、第3工程における計測値が予め設定された数値範囲内に入るまで継続させる。このため、希釈液を使用することなく基板処理装置の内部に中和剤を行き渡らせることができ、また、pHセンサの計測値に基づいて薬液成分を確実に中和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
<1.第1実施形態>
<1−1.基板処理装置の構成および動作>
図1は、本発明の第1実施形態において洗浄対象となる基板処理装置90の構成を示した図である。この基板処理装置90は、複数枚の基板(以下、単に「基板」という。)Wを一括して薬液中に浸漬することにより、基板Wにエッチングや薬液洗浄等の薬液処理を行うための装置である。図1に示したように、基板処理装置90は、薬液を貯留する薬液槽91と、薬液槽91を収容するチャンバ92と、基板Wを保持するリフタ93と、薬液槽91に薬液を供給する薬液供給部94と、薬液槽91およびチャンバ92からの排液を行う排液部95と、チャンバ92からの排気を行う排気部96と、装置内の各部を動作制御する制御部97とを備えている。
【0026】
薬液槽91は、石英等の耐腐食性材料により構成され、その内部に薬液を貯留する。薬液槽91の底部には、薬液槽91の内部に向けて薬液を吐出するための一対の薬液吐出ノズル91aが設けられている。薬液吐出ノズル91aは、複数の吐出口(図示省略)を有しており、複数の吐出口から薬液を吐出することにより薬液槽91の内部に薬液を貯留する。また、薬液槽91の外周面の上端部には、薬液槽91からオーバーフローした薬液を回収するための外槽91bが設けられている。このため、薬液槽91の上部まで貯留された薬液は、薬液槽91の上部からオーバーフローして外槽91bに回収される。
【0027】
チャンバ92は、気密性の部材により構成され、その内部に薬液槽91を収容する。チャンバ92の上部には、開閉自在なシャッタ92aが設けられている。シャッタ92aは、図示しない駆動機構によりスライド移動し、チャンバ92上部の開口部92bを開放する状態と、開口部92bを閉鎖する状態とを切り替える。シャッタ92aを開放したときには、開口部92bを介して基板Wの搬入および搬出が可能となる。また、シャッタ92aを閉鎖したときには、チャンバ92の内部が密閉され、薬液の成分を含むチャンバ92内の雰囲気がチャンバ92の外部に拡散することが防止される。
【0028】
リフタ93は、チャンバ92の内部において基板Wを上下に搬送するための搬送機構である。リフタ93は、水平方向(図1において紙面に直交する方向)にのびる3本の保持棒93aを有しており、基板Wは、各保持棒93aに刻設された複数の保持溝上に起立姿勢で保持される。また、リフタ93は、所定の駆動機構により昇降移動する。リフタ93上に基板Wを載置した状態でリフタ93を昇降移動させると、基板Wは、薬液槽91内の浸漬位置と、薬液槽91の上方の引き上げ位置との間で上下に搬送される。
【0029】
薬液供給部94は、薬液槽91の薬液吐出ノズル91aに薬液を供給するための配管系である。薬液供給部94は、薬液供給源94aと、薬液供給源94aと薬液吐出ノズル91aとを繋ぐ薬液供給配管94bと、薬液供給配管94b上に設けられたバルブ94cとを有している。バルブ94cを開放すると、薬液供給源94aから薬液供給配管94bを介して薬液吐出ノズル91aに薬液が供給され、薬液吐出ノズル91aの複数の吐出口から薬液槽91の内部に向けて薬液が吐出される。薬液供給源94aから供給される薬液は、フッ酸やカロ酸(硫酸と過酸化水素水との混合溶液)等の酸性薬液であってもよく、あるいは、アンモニア水等のアルカリ性薬液であってもよい。
【0030】
排液部95は、薬液槽91またはチャンバ92からの排液を行うための配管系である。排液部95は、薬液槽91の底部に接続された排液配管95aと、外槽91bに接続された排液配管95bと、チャンバ92の底部に接続された排液配管95cと、を有している。各排液配管95a,95b,95c上には、それぞれバルブ95d,95e,95fが設けられている。また、排液配管95aと排液配管95bとは、下流側において1本の排液配管95gに合流する。また、排液配管95cおよび排液配管95gの下流側の端部は、工場内の無害化機構を介して排液ラインに接続されている。このため、バルブ95d,95e,95fを開放すると、薬液槽91,外槽91b,およびチャンバ92内の液体が、排液配管95a,95b,95c,95gを通って工場内の無害化機構へ送給され、無害化処理後に排液ラインへ排出される。
【0031】
排気部96は、チャンバ92の側部に形成された排気ダクト96aと、排気ダクト96aの下流側に接続された排気配管96bと、排気配管96b上に設けられたバルブとを有している。また、排気配管96bの下流側の端部は、工場内の無害化機構を介して排気ラインに接続されている。このため、バルブ96cを開放すると、チャンバ92内の気体が排気ダクト96aおよび排気配管96bを通って工場内の無害化機構へ送給され、無害化処理後に排気ラインへ排出される。
【0032】
制御部97は、上記のバルブ94c,95d,95e,95f,96cと電気的に接続されており、これらの動作を制御する。制御部97は、例えば、CPUやメモリを有するコンピュータにより構成され、作業者からの指示入力およびコンピュータにインストールされたプログラムに従ってコンピュータが動作することにより、上記各部の制御を行う。
【0033】
このような基板処理装置90において、基板Wを処理するときには、まず、バルブ94cを開放することにより、薬液槽91内に薬液を貯留し、薬液槽91の上部から外槽91bへ薬液がオーバーフローする状態とする。そして、チャンバ92のシャッタ92aを開放し、未処理の基板Wをリフタ93上に載置するとともにリフタ93を降下させることにより、薬液槽91内に貯留された薬液中に基板Wを浸漬する。基板Wは、薬液中に浸漬されることにより、所定の薬液処理を受ける。その後、所定時間が経過すると、リフタ93を上昇させることにより基板Wを引き上げ、一組の基板Wに対する薬液処理を終了する。
【0034】
このような基板処理装置90において、繰り返し薬液処理を行うと、基板処理装置90の各部には、薬液成分が付着する。例えば、薬液槽91の内壁や排液配管95a,95b,95gの内部のように、薬液が直接接触する部分には、比較的高濃度の薬液成分が付着する。また、薬液槽91の外壁、チャンバ92の内壁、排気ダクト96aの内部、排気配管96bの内部のように通常であれば薬液が接触しない箇所にも、薬液のミストが飛散すること等により、低濃度の薬液成分が付着する。このため、基板処理装置90を廃棄またはリサイクルする際には、装置内の各部を洗浄する必要がある。
【0035】
<1−2.中和洗浄装置の構成>
続いて、上記の基板処理装置90を廃棄またはリサイクルする際に基板処理装置90の内部を中和洗浄するための中和洗浄装置1について説明する。図2は、第1実施形態に係る中和洗浄装置1の構成を示した図である。図2に示したように、中和洗浄装置1は、主として、基板処理装置90の内部に付着した薬液成分を希釈するための希釈液を循環させる希釈液循環部10と、希釈液を中和するための中和剤を供給する中和剤供給部20と、中和洗浄装置1内の各部を動作制御する制御部30とを備えている。
【0036】
希釈液循環部10は、基板処理装置90の排液部95または排気部96に接続されるカプラ11と、薬液槽91またはチャンバ92に向けて設置される循環ノズル12と、カプラ11と循環ノズル12との間を繋ぐ循環配管13とを有している。循環配管13の経路途中には、上流側から順にフィルタ14、循環ポンプ15、およびpHセンサ16が設けられている。このため、カプラ11および循環ノズル12をそれぞれ基板処理装置90に接続するとともに循環ポンプ15を動作させると、カプラ11に回収された希釈液が循環配管13を通って薬液槽91またはチャンバ92へ再供給される。また、循環配管13の経路途中において、希釈液はフィルタ14により濾過され、また、pHセンサ16によりそのpH値が計測される。
【0037】
中和剤供給部20は、中和剤供給源21と、中和剤を送給する中和剤供給配管22と、薬液槽91またはチャンバ92へ中和剤を吐出する中和剤供給ノズル23とを有している。中和剤供給源21は、アルカリ性中和剤を供給するためのアルカリ性中和剤供給源211と、酸性中和剤を供給するための酸性中和剤供給源212とを有している。アルカリ性中和剤としては、例えば、希アンモニア水、希水酸化ナトリウム水溶液、希水酸化カリウム水溶液等の低濃度のアルカリ性溶液が使用される。また、酸性中和剤としては、例えば、希塩酸や希硫酸等の低濃度の酸性溶液が使用される。
【0038】
アルカリ性中和剤供給源211は、バルブ211aおよび補充ポンプ211bを介して中和剤供給配管22に接続されており、また、酸性中和剤供給源212は、バルブ212aおよび補充ポンプ212bを介して中和剤供給配管22に接続されている。このため、バルブ212aを閉鎖するとともにバルブ211aを開放し、補充ポンプ211bを動作させると、アルカリ性中和剤供給源211から中和剤供給配管22を介して中和剤供給ノズル23へアルカリ性中和剤が供給され、中和剤供給ノズル23から薬液槽91またはチャンバ92の内部へアルカリ性中和剤が吐出される。また、バルブ211aを閉鎖するとともにバルブ212aを開放し、補充ポンプ212bを動作させると、酸性中和剤供給源212から中和剤供給配管22を介して中和剤供給ノズル23へ酸性中和剤が供給され、中和剤供給ノズル23から薬液槽91またはチャンバ92の内部へ酸性中和剤が吐出される。
【0039】
このように、中和剤供給源21は、アルカリ性中和剤と酸性中和剤とを切り替えて供給することができる。このため、中和剤供給部20は、中和すべき薬液の種類に応じてアルカリ性中和剤または酸性中和剤を適切に供給することができる。
【0040】
制御部30は、上記の循環ポンプ15、pHセンサ16、中和剤供給源21(より具体的には、中和剤供給源21内のバルブ211a,212aおよび補充ポンプ211b,212b)と電気的に接続されている。制御部30は、pHセンサ16の計測値を受信するとともに、循環ポンプ15や中和剤供給源21の動作を制御する。特に、制御部30は、pHセンサ16から受信した計測値に基づいてバルブ211a,212aの開閉や補充ポンプ211b,212bの動作を制御することにより、中和剤の供給および停止のタイミングを制御することができる。制御部30は、例えば、CPUやメモリを有するコンピュータにより構成され、作業者からの指示入力およびコンピュータにインストールされたプログラムに従ってコンピュータが動作することにより、上記の制御を行う。
【0041】
また、中和洗浄装置1のうち、フィルタ14、循環ポンプ15、pHセンサ16、中和剤供給源21、および制御部30は、本体ボックス40の内部に収容されて一体化されている。このため、中和洗浄装置1は、基板処理装置90に接続されるカプラ11、循環ノズル12、および中和剤供給ノズル23のみが本体ボックス40の外部に配置された取り扱い容易な構成となっている。
【0042】
<1−3.洗浄作業>
続いて、上記の基板処理装置90を廃棄またはリサイクルする際に、中和洗浄装置1を使用して行う基板処理装置90の洗浄作業について、図3のフローチャートおよび図4,図5を参照しつつ説明する。なお、基板処理装置90の薬液槽91の内壁や排液配管95a,95b,95gの内部には、比較的高濃度の薬液成分が付着しているものとし、これらの部分を以下では「高濃度エリア」という。また、基板処理装置90の薬液槽91の外壁、チャンバ92の内壁、排気ダクト96aの内部、および排気配管96bの内部にも、長年の使用により低濃度の薬液成分が付着しているものとし、これらの部分を以下では「低濃度エリア」という。
【0043】
図4に示したように、まず、作業者は、基板処理装置90の高濃度エリアに中和洗浄装置1を接続する(ステップS1)。すなわち、基板処理装置90の高濃度エリアからのびる排液配管95gの下流側の端部を封止するとともに、中和洗浄装置1のカプラ11を排液配管95gの下流側の端部に接続する。また、作業者は、中和洗浄装置1の循環ノズル12を基板処理装置90の薬液槽91の内部に向けて設置する。これにより、基板処理装置90の高濃度エリアと中和洗浄装置1の希釈液循環部10との間で希釈液の循環経路が構成される。
【0044】
更に、作業者は、中和洗浄装置1の中和剤供給ノズル23と、希釈液を供給するための希釈液供給ノズル81とを、薬液槽91の内部に向けて設置する。希釈液供給ノズル81は、希釈液供給配管82を介して希釈液供給源83に接続されており、希釈液供給配管82上にはバルブ84が設けられている。希釈液としては、例えば純水や工業用水を使用することができ、上記の希釈液供給源83は、工場内のユーティリティとして提供される純水供給源あるいは工業用水供給源を使用すればよい。
【0045】
以上の接続作業が終了すると、次に、作業者は、バルブ84を開放する。これにより、希釈液供給源83から希釈液供給配管82および希釈液供給ノズル81を介して薬液槽91の内部に希釈液が供給され、薬液槽91の内部に希釈液が貯留される(ステップS2)。その後、作業者は、基板処理装置90のバルブ95d,95eを開放するとともに、中和洗浄装置1の循環ポンプ15を動作させ、薬液槽91の内部に貯留された希釈液を循環配管13を介して循環させる(ステップS3)。作業者は、希釈液が良好に循環される状態になると、バルブ84を閉鎖して希釈液の供給を停止する。
【0046】
薬液槽91の内壁や排液配管95a,95b,95gの内部に付着した薬液成分は、希釈液の流れによって付着面から遊離し、希釈液中に混合する。これにより、薬液成分は希釈される。また、中和洗浄装置1は、循環される希釈液のpH値をpHセンサ16により計測し、計測されたpH値に基づいて中和剤供給源21からアルカリ性中和剤または酸性中和剤を供給する(ステップS4)。すなわち、pHセンサ16の計測値が比較的低い(希釈液が酸性である)場合には、中和剤供給部20からアルカリ性中和剤を供給し、また、pHセンサ16の計測値が比較的高い(希釈液がアルカリ性である)場合には、中和剤供給部20から酸性中和剤を供給する。具体的には、制御部30からの指令により、中和剤供給源21のバルブ211a,212aのいずれか一方が開放され、補充ポンプ211b,212bのいずれか一方が動作することにより、中和剤が供給される。中和剤は、中和剤供給ノズル23から吐出されて薬液槽91内の希釈液中に添加される。
【0047】
また、中和洗浄装置1のpHセンサ16は、引き続き希釈液のpH値を計測し、その計測値を制御部30に送信する。制御部30は、pHセンサ16から受信した計測値が予め設定された数値範囲内にあるかどうかを判断し(ステップS5)、当該数値範囲から外れている場合には、引き続きステップS14の中和剤の添加を行う。一方、pHセンサ16から受信した計測値が所定の数値範囲内に入った場合には、制御部30は、希釈液の中和が完了したと判断し、補充ポンプ211b,212bを停止させるとともにバルブ211a,212aを閉鎖することにより、中和剤供給源21からの中和剤の供給を停止させる。
【0048】
希釈液の中和が完了すると、中和洗浄装置1は、循環ポンプ15を一旦停止させる。そして、作業者は、循環ノズル12を薬液槽91から取り外して工場内の排液ラインに接続する。中和洗浄装置1は、再び循環ポンプ15を動作させることにより、希釈液を排液ラインへ排出する(ステップS6)。希釈液は、上記のステップS4〜S5において中和済みであるため、工場内の無害化機構を経由させることなく排液ラインへ排出することができる。以上をもって、基板処理装置90の高濃度エリアについての洗浄処理が終了する。
【0049】
続いて、作業者は、基板処理装置90の低濃度エリアに中和洗浄装置1を接続し直す(ステップS7)。すなわち、図5に示したように、基板処理装置90の低濃度エリアからのびる排液配管95cおよび排気配管96bの下流側の端部を封止するとともに、中和洗浄装置1のカプラ11を排液配管95gおよび排気配管96bの下流側の端部に接続する。また、作業者は、中和洗浄装置1の循環ノズル12をチャンバ92の内壁と薬液槽91の外壁との間に向けて設置する。これにより、基板処理装置90の低濃度エリアと中和洗浄装置1の希釈液循環部10との間で希釈液の循環経路が構成される。また、作業者は、中和剤供給ノズル23および希釈液供給ノズル81を、チャンバ92の内壁と薬液槽91の外壁との間に向けて設置する。
【0050】
次に、作業者は、バルブ84を開放する。これにより、希釈液供給源83から希釈液供給配管82および希釈液供給ノズル81を介してチャンバ92の内部に希釈液が供給され、チャンバ92の内部に希釈液が貯留される(ステップS8)。その後、作業者は、基板処理装置90のバルブ95f,96cを開放するとともに、中和洗浄装置1の循環ポンプ15を動作させ、チャンバ92の内部に貯留された希釈液を循環配管13を介して循環させる(ステップS9)。作業者は、希釈液が良好に循環される状態になると、バルブ84を閉鎖して希釈液の供給を停止する。
【0051】
薬液槽91の外壁、チャンバ92の内壁、排気ダクト96aの内部、および排気配管96bの内部に付着した薬液成分は、希釈液の流れによって付着面から遊離し、希釈液中に混合する。これにより、薬液成分は希釈される。また、中和洗浄装置1は、循環される希釈液のpH値をpHセンサ16により計測し、計測されたpH値に基づいて中和剤供給源21からアルカリ性中和剤または酸性中和剤を供給する(ステップS10)。すなわち、pHセンサ16の計測値が比較的低い(希釈液が酸性である)場合には、中和剤供給部20からアルカリ性中和剤を供給し、また、pHセンサ16の計測値が比較的高い(希釈液がアルカリ性である)場合には、中和剤供給部20から酸性中和剤を供給する。具体的には、制御部30からの指令により、中和剤供給源21のバルブ211a,212aのいずれか一方が開放され、補充ポンプ211b,212bのいずれか一方が動作することにより、中和剤が供給される。中和剤は、中和剤供給ノズル23から吐出されて薬液槽91内の希釈液中に添加される。
【0052】
また、中和洗浄装置1のpHセンサ16は、引き続き希釈液のpH値を計測し、その計測値を制御部30に送信する。制御部30は、pHセンサ16から受信した計測値が予め設定された数値範囲内にあるかどうかを判断し(ステップS11)、当該数値範囲から外れている場合には、引き続きステップS10の中和剤の添加を行う。一方、pHセンサ16から受信した計測値が所定の数値範囲内に入った場合には、制御部30は、希釈液の中和が完了したと判断し、補充ポンプ211b,212bを停止させるとともにバルブ211a,212aを閉鎖することにより、中和剤供給源21からの中和剤の供給を停止させる。
【0053】
希釈液の中和が完了すると、中和洗浄装置1は、循環ポンプ15を一旦停止させる。そして、作業者は、循環ノズル12をチャンバ92から取り外して工場内の排液ラインに接続する。中和洗浄装置1は、再び循環ポンプ15を動作させることにより、希釈液を排液ラインへ排出する(ステップS12)。希釈液は、上記のステップS10〜S11において中和済みであるため、工場内の無害化機構を経由させることなく排液ラインへ排出することができる。以上をもって、基板処理装置90の低濃度エリアについての洗浄処理が終了する。
【0054】
以上のように、この中和洗浄装置1は、基板処理装置90の内部との間で希釈液の循環経路を構成し、希釈液を循環させつつ希釈液中に中和剤を添加する。そして、中和された希釈液を排出することにより、基板処理装置90の内部に付着した薬液成分を除去する。このため、希釈液を循環させることにより希釈液の使用量を低減させることができ、また、無害化機構を経由させることなく希釈液を排液することができる。
【0055】
また、中和洗浄装置1は、循環される希釈液のpH値を計測し、その計測値が所定の数値範囲内に入るまで中和剤の添加を継続する。このため、希釈液中の薬液成分を確実に中和することができる。また、中和洗浄装置1は、基板処理装置90の排液配管95c,95gおよび排気配管96bの下流側の端部にカプラ11を接続する。このため、排液配管95a,95b,95c,95g、排気ダクト96a、および排気配管96bも含めて希釈液の循環経路が構成され、これらの配管の内部に付着した薬液成分も良好に除去される。
【0056】
<2.第2実施形態>
<2−1.中和洗浄装置の構成>
図6は、本発明の第2実施形態に係る中和洗浄装置2の構成を示した図である。中和洗浄装置2は、上記第1実施形態と同様の基板処理装置90の各部を洗浄するための装置である。図6に示したように、中和洗浄装置2は、主として、ミスト状の中和剤を供給するための中和剤供給部50と、ミスト状の中和剤を循環させるための中和剤循環部60と、中和洗浄装置2内の各部を動作制御するための制御部70とを備えている。
【0057】
中和剤供給部50は、中和剤供給源51と、中和剤を送給する中和剤供給配管52と、中和剤供給配管52を基板処理装置90の薬液供給配管94bに接続するための接続部53とを有している。また、中和剤供給源51は、アルカリ性中和剤を供給するためのアルカリ性中和剤供給源511と、酸性中和剤を供給するための酸性中和剤供給源512とを有している。アルカリ性中和剤としては、例えば、希アンモニア水、希水酸化ナトリウム水溶液、希水酸化カリウム水溶液等の低濃度のアルカリ性溶液が使用される。また、酸性中和剤としては、例えば、希塩酸や希硫酸等の低濃度の酸性溶液が使用される。
【0058】
アルカリ性中和剤供給源511は、バルブ511aおよび補充ポンプ511bを介して中和剤供給配管52に接続されており、また、酸性中和剤供給源512は、バルブ512aおよび補充ポンプ512bを介して中和剤供給配管52に接続されている。また、中和剤供給配管52上には、中和剤をミスト化するためのミスト生成部521が設けられている。ミスト生成部521は、例えば、中和剤に圧縮気体を混合させることにより中和剤を微小液滴に粉砕する機構により実現することができる。バルブ512aを閉鎖するとともにバルブ511aを開放し、補充ポンプ511bおよびミスト生成部521を動作させると、アルカリ性中和剤供給源511から中和剤供給配管52にアルカリ性中和剤が供給され、ミスト生成部521においてミスト状のアルカリ性中和剤が生成される。また、バルブ511aを閉鎖するとともにバルブ512aを開放し、補充ポンプ512bおよびミスト生成部521を動作させると、酸性中和剤供給源512から中和剤供給配管52に酸性中和剤が供給され、ミスト生成部521においてミスト状の酸性中和剤が生成される。
【0059】
このように、中和剤供給部50は、ミスト状のアルカリ性中和剤とミスト状の酸性中和剤とを切り替えて供給することができる。このため、中和剤供給部50は、中和すべき薬液の種類に応じてミスト状のアルカリ性中和剤またはミスト状の酸性中和剤を適切に供給することができる。
【0060】
中和剤循環部60は、基板処理装置90の排液部95または排気部96に接続されるカプラ61と、カプラ61からのびる循環配管62とを有している。循環配管62の経路途中には、循環ポンプ63およびpHセンサ64が設けられており、循環配管62の下流側の端部は、中和剤供給配管52に接続されている。このため、カプラ61を基板処理装置90に接続するとともに循環ポンプ63を動作させると、基板処理装置90の内部に供給された中和剤のミストが、循環配管62および中和剤供給配管52を介してチャンバ92内に再供給される。また、pHセンサ64は、循環配管62の経路途中において、循環気体のpH値を計測する。
【0061】
制御部70は、上記の中和剤供給源51(より具体的には、中和剤供給源51内のバルブ511a,512aおよび補充ポンプ511b,512b)、ミスト生成部521、循環ポンプ63、およびpHセンサ64と電気的に接続されている。制御部70は、pHセンサ64の計測値を受信するとともに、中和剤供給源51、ミスト生成部521、および循環ポンプ63の動作を制御する。特に、制御部70は、pHセンサ64から受信した計測値に基づいてバルブ511a,512aの開閉やポンプ511b,512bの動作を制御することにより、中和剤の供給および停止のタイミングを制御することができる。制御部70は、例えば、CPUやメモリを有するコンピュータにより構成され、作業者からの指示入力およびコンピュータにインストールされたプログラムに従ってコンピュータが動作することにより、上記の制御を行う。
【0062】
また、中和洗浄装置2のうち、中和剤供給源51、ミスト生成部521、循環ポンプ63、pHセンサ64、および制御部70は、本体ボックス80の内部に収容されて一体化されている。このため、中和洗浄装置2は、基板処理装置90に接続される接続部53およびカプラ61のみが本体ボックス40の外部に配置された取り扱い容易な構成となっている。
【0063】
<2−2.洗浄作業>
続いて、上記の基板処理装置90を廃棄またはリサイクルする際に、中和洗浄装置2を使用して行う基板処理装置90の洗浄作業について、図7のフローチャートおよび図8を参照しつつ説明する。
【0064】
図8に示したように、まず、作業者は、基板処理装置90に中和洗浄装置2を接続する(ステップS21)。すなわち、基板処理装置90の排液配管95c,95gおよび排気配管96bの下流側の端部を封止するとともに、中和洗浄装置2のカプラ61を排液配管95c,95gおよび排気配管96bの下流側の端部に接続する。また、作業者は、基板処理装置90の薬液供給配管94bを薬液供給源94aから切り離し、中和洗浄装置2の接続部53を薬液供給配管94bに接続する。なお、基板処理装置90のシャッタ92aは閉鎖し、チャンバ92の内部を密閉状態とする。
【0065】
以上の接続作業が終了し、作業者が所定のスタート操作を行うと、中和洗浄装置2は、アルカリ性中和剤および酸性中和剤のうちのいずれか一方を中和剤供給源51から供給する(ステップS22)。作業者は、洗浄対象となる薬液の種類に応じていずれの中和剤を供給するかを選択する。例えば、薬液が酸性薬液である場合にはアルカリ性中和剤を供給し、また、薬液がアルカリ性薬液である場合には酸性中和剤を供給するようにすればよい。具体的には、制御部30からの指令により、中和剤供給源21のバルブ211a,212aのいずれか一方が開放され、補充ポンプ211b,212bのいずれか一方が動作することにより、中和剤が供給される。中和剤は、ミスト生成部521においてミスト化される。そして、生成されたミスト状の中和剤が中和剤供給配管52、薬液供給配管94b、および薬液吐出ノズル91aを介してチャンバ92の内部に吐出される。
【0066】
また、作業者は、基板処理装置90のバルブ95d,95e,95f,96cを開放するとともに中和洗浄装置2の循環ポンプ63を動作させ、チャンバ92の内部に供給されたミスト状の中和剤を循環配管62、中和剤供給配管52、および薬液供給配管94bを介して循環させる(ステップS23)。ミスト状の中和剤は、薬液槽91の内壁、薬液槽91の外壁、チャンバ92の内壁、排液配管95a,95b,95c,95gの内部、排気ダクト96aの内部、および排気配管96bの内部に行き渡り、これらの各部に付着した薬液成分を中和する。
【0067】
また、中和洗浄装置2のpHセンサ64は、循環気体のpH値を計測し、その計測値を制御部70に送信する。制御部70は、pHセンサ64から受信した計測値が予め設定された数値範囲内にあるかどうかを判断し(ステップS24)、当該数値範囲から外れている場合には、引き続きステップS22の中和剤の供給とステップS23の中和剤の循環とを繰り返す。そして、pHセンサ64から受信した計測値が所定の数値範囲内に入った場合には、制御部70は、基板処理装置90の内部における薬液の中和が完了したと判断し、中和剤の供給と中和剤の循環とを停止させ、基板処理装置90の洗浄処理を終了する。
【0068】
以上のように、この中和洗浄装置2は、基板処理装置90の内部との間で循環経路を構成し、ミスト状の中和剤を循環しつつ循環気体のpH値をpHセンサ64で計測する。そして、pHセンサ64の計測値が所定の数値範囲内に入るまでミスト状の中和剤の供給と循環とを継続する。このため、希釈液を使用することなく基板処理装置90の内部に中和剤を行き渡らせることができ、また、pHセンサ64の計測値に基づいて薬液成分を確実に中和することができる。
【0069】
また、中和洗浄装置2は、基板処理装置90の排液配管95c,95gおよび排気配管96bの下流側の端部にカプラ61を接続する。このため、排液配管95a,95b,95c,95g、排気ダクト96a、および排気配管96bも含めて中和剤の循環経路が構成され、これらの配管の内部に付着した薬液成分も良好に中和される。
【0070】
<3.変形例>
以上、本発明の主たる実施形態について説明したが、本発明は上記の例に限定されるものではない。例えば、上記の第1実施形態では、循環される希釈液を循環ノズル12を介して基板処理装置90内に供給していたが、循環配管13の下流側の端部を薬液供給配管94bに接続し、循環される希釈液を薬液吐出ノズル91aを介して基板処理装置90内に供給してもよい。また、中和剤供給部20の中和剤供給配管22の下流側の端部を薬液供給配管94bに接続し、薬液吐出ノズル91aを介して基板処理装置90内に中和剤を供給するようにしてもよい。
【0071】
また、上記の第1実施形態では、中和剤供給装置とは別体の希釈液供給ノズル81を使用して希釈液を供給していたが、希釈液を供給するための希釈液供給ノズルを中和洗浄装置1の一部として構成してもよい。
【0072】
また、洗浄対象となる基板処理装置の構成も上記の例に限定されるものではなく、希釈液を貯留可能あるいはミスト状の中和剤の循環経路を構成可能なものであればよい。
【0073】
また、上記の第1実施形態および第2実施形態では、基板処理装置を廃棄またはリサイクルする際の洗浄作業について説明したが、定期的な装置メンテナンスの際に同様の洗浄作業を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】洗浄対象となる基板処理装置の構成を示した図である。
【図2】第1実施形態に係る中和洗浄装置の構成を示した図である。
【図3】第1実施形態に係る中和洗浄作業の流れを示したフローチャートである。
【図4】第1実施形態に係る中和洗浄装置を基板処理装置の高濃度エリアに接続した状態を示した図である。
【図5】第1実施形態に係る中和洗浄装置を基板処理装置の低濃度エリアに接続した状態を示した図である。
【図6】第2実施形態に係る中和洗浄装置の構成を示した図である。
【図7】第2実施形態に係る中和洗浄作業の流れを示したフローチャートである。
【図8】第2実施形態に係る中和洗浄装置を基板処理装置に接続した状態を示した図である。
【符号の説明】
【0075】
1,2 中和洗浄装置
10 希釈液循環部
13 循環配管
16 pHセンサ
20 中和剤供給部
211 アルカリ性中和剤供給源
212 酸性中和剤供給源
30 制御部
50 中和剤供給部
511 アルカリ性中和剤供給源
512 酸性中和剤供給源
521 ミスト生成部
60 中和剤循環部
62 循環配管
64 pHセンサ
70 制御部
90 基板処理装置
91 薬液槽
92 チャンバ
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置の内部に付着した薬液を中和洗浄する中和洗浄装置であって、
前記基板処理装置に接続されることにより前記基板処理装置との間で希釈液の循環経路を構成し、前記基板処理装置内に供給された希釈液を循環させる循環部と、
前記循環経路において希釈液のpH値を計測するpHセンサと、
前記循環部により循環される希釈液に中和剤を添加する中和剤供給部と、
前記pHセンサの計測値を受信するとともに前記中和剤供給部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記pHセンサの計測値が予め設定された数値範囲内に入るまで前記中和剤供給部による中和剤の添加を継続させることを特徴とする中和洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の中和洗浄装置であって、
前記循環部は、前記基板処理装置の排液配管および排気配管から希釈液を回収するとともに前記基板処理装置へ希釈液を再供給することを特徴とする中和洗浄装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の中和洗浄装置であって、
前記中和剤供給部は、アルカリ性の中和剤を供給するアルカリ性中和剤供給部と、酸性の中和剤を供給する酸性中和剤供給部とを有することを特徴とする中和洗浄装置。
【請求項4】
基板処理装置の内部に付着した薬液を中和洗浄する中和洗浄装置であって、
ミスト状の中和剤を前記基板処理装置の内部に供給する中和剤供給部と、
前記基板処理装置に接続されることにより前記基板処理装置との間で循環経路を構成し、前記中和剤供給部から供給されたミスト状の中和剤を循環させる循環部と、
前記循環経路において循環気体のpH値を計測するpHセンサと、
前記pHセンサの計測値を受信するとともに前記中和剤供給部および前記循環部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記pHセンサの計測値が予め設定された数値範囲内に入るまで前記中和剤供給部によるミスト状の中和剤の供給と前記循環部によるミスト状の中和剤の循環とを継続させることを特徴とする中和洗浄装置。
【請求項5】
請求項4に記載の中和洗浄装置であって、
前記循環部は、前記基板処理装置の排液配管および排気配管からミスト状の中和剤を回収しつつミスト状の中和剤を循環させることを特徴とする中和洗浄装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の中和洗浄装置であって、
前記中和剤供給部は、アルカリ性の中和剤を供給するアルカリ性中和剤供給部と、酸性の中和剤を供給する酸性中和剤供給部とを有することを特徴とする中和洗浄装置。
【請求項7】
基板処理装置の内部に付着した薬液を中和洗浄する中和洗浄方法であって、
前記基板処理装置の内部に希釈液を供給する第1工程と、
前記基板処理装置の内部と所定の循環経路との間で希釈液を循環させる第2工程と、
循環される希釈液中に中和剤を添加する第3工程と、
循環される希釈液のpH値を計測する第4工程と、
を備え、
前記第3工程の中和剤の添加を、前記第4工程における計測値が予め設定された数値範囲内に入るまで継続させることを特徴とする中和洗浄方法。
【請求項8】
基板処理装置の内部に付着した薬液を中和洗浄する中和洗浄方法であって、
前記基板処理装置の内部にミスト状の中和剤を供給する第1工程と、
前記基板処理装置の内部と所定の循環経路との間でミスト状の中和剤を循環させる第2工程と、
循環気体のpH値を計測する第3工程と、
を備え、
前記第1工程のミスト状の中和剤の供給と前記第2工程のミスト状の中和剤の循環とを、前記第3工程における計測値が予め設定された数値範囲内に入るまで継続させることを特徴とする中和洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−251779(P2008−251779A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90406(P2007−90406)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】