説明

二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム、金属化フィルムおよびコンデンサー

【課題】優れた耐熱性、寸法安定性、電気特性および平面性を有する二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを提供することであり、特にコンデンサー用として用いると高い電気特性と優れた自己回復性(SH性)を具備することにより、高温・高電圧で使用しても信頼性の高いコンデンサーを形成しうるポリアリーレンスルフィドフィルム、この金属化フィルムおよびこれを用いたコンデンサーを提供すること。
【解決手段】23℃での絶縁破壊電圧V(23)(V/μm)と150℃での絶縁破壊電圧V(150)(V/μm)がV(150)/V(23)≧0.85かつV(150)≧300であることを特徴とする二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐熱性、寸法安定性、電気特性および平面特性を有する二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム、コンデンサー用二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム、金属化二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムおよびこれらを用いたコンデンサーに関するものである。詳しくは、高温での耐電圧等の電気特性に優れているためコンデンサー、モーター、トランス等の電気絶縁材料、回路基板材料、リチウムイオン電池材料、燃料電池材料、振動板などに使用することができ、特にコンデンサー用として用いると自己回復性(セルフヒール性、SH性)も向上することにより、高温・高電圧で使用しても信頼性の高いコンデンサーを形成しうるポリアリーレンスルフィドフィルム、金属化フィルムおよびこれを用いたコンデンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム(以下、PPSフィルムと略称することがある。)は、特許文献1等で開示されている。また、PPSフィルムをコンデンサーの誘電体に用い、耐熱性、周波数特性、温度特性等に優れたコンデンサーを提供できることが特許文献2等で提案されている。しかし、上記のようなコンデンサーは、その製造工程、すなわち捲回や裁断、成形等の工程において製造条件の範囲が狭く、これらの管理が不十分だとフィルム面内の物性バラツキが生じ、低電圧破壊による不良品が増加するという欠点がある。さらに、上記コンデンサーは低電圧破壊が生じたときに自己回復(セルフヒール)せずショートすることが多く、さらに不良率を増加させたり、使用時の信頼性が低い等の欠点があった。
【0003】
この問題を解決するために、特許文献3〜5で、PPSフィルムの少なくとも片面にポリエステル樹脂やポリオレフィン樹脂を積層してなるPPS積層フィルムをコンデンサーに用いることが提案されている。しかしながら、これら従来のPPS積層フィルムはポリエステル、ポリオレフィン樹脂層とPPS層の接着性が十分でなくコンデンサー製造過程において剥離しやすい場合が多く、自己回復性(SH性)についても十分な品質のものが得られ難かった。また、ポリエステルやポリオレフィンなどPPS以外の樹脂を積層したフィルムは実質的に自己回収ができず、トリミングエッジや製品外フィルムを再度フィルム原料として使用することはできなかった。
【0004】
特許文献6では、SH性を向上させるために非晶性ポリエステル樹脂組成物を積層してなるPPS積層フィルムが提案されている。本手法はインライン、オフラインで非晶性ポリエステル樹脂層をPPS層の上に形成するものであるが、ガラス転移温度Tgが高々90℃であり、100℃以上の高温で使用する場合、特に湿度の高い環境下で使用する場合の耐熱性や信頼性が低下するという問題点があった。
【0005】
特許文献7では、SH性を向上させるために、フィルムの厚み方向全部分が実質的にPPSで構成され、表層部が内層部より非晶性であるPPSフィルムが提案されている。本手法は、PPSフィルム表面をフレーム処理等により溶融させ非晶化させる、もしくは非晶性PPS樹脂を積層するものであるが、何れの場合でもフィルムが例えば3μm以下と薄くなると平面性が悪化し、生産性が悪化する場合があるという問題点があり、さらにSH性も不十分であった。
【0006】
特許文献8では、PPSフィルムの少なくとも片面にセラミック層が設けられたPPSフィルムが提案されているが、例えば100nmもの厚さの蒸着層でないと十分な自己回復特性(SH性)が得られないため生産性の悪さやフィルムの蒸着熱負けによる面荒れなどが問題となる場合があった。
【0007】
また、ポリマーブレンドもしくはアロイにより、ポリフェニレンスルフィドフィルムの特性を改良しようとする提案もあった(特許文献9〜12)。特許文献9ではPPSとポリエーテルイミド、特許文献11ではPPSとポリアリレートとのブレンドが提案されている。しかしながら、特許文献9では単にPPSとポリエーテルイミドを2軸押出機でブレンドすることによりフィルムの耐引き裂き性を向上させるとしているが、単に2種のポリマーをブレンドしポリエーテルイミドの分散長径が30μm以下となるよう制御したことに留まり、電気特性やコンデンサー特性の改善については言及されていない。また、特許文献11ではPPSとポリアリレートの単純ブレンドによりフィルムの滑り性を改善することを目的としており、分散径制御については言及されておらず電気特性やコンデンサー特性の改善については言及されていない。一方、特許文献10ではPPSにポリエーテルイミドを相溶化させることによって、PPSフィルムのガラス転移温度を95℃以上と向上させることにより耐電圧を向上させることが提案されているが、SH性については言及されておらず、チップコンデンサーのような小型の低圧コンデンサーの性能向上はガラス転移温度の上昇分耐熱温度が向上することにより図れたとしても、例えばハイブリッドカーのインバーター用コンデンサーのような高温・高電圧下で使用される大容量の捲回コンデンサーに用いる場合には性能が不十分な場合があった。さらに特許文献12ではPPSと他の熱可塑性樹脂の分散状態を制御するため相溶化剤を介してブレンドし、フィルム面内の物性バラツキを抑制し、かつ、PPSフィルムの伸度を向上させ靱性改良することが開示されているが、電気特性やコンデンサー特性の改善については言及されておらず改良の余地がある。
【特許文献1】特開昭54−142275号公報
【特許文献2】特開昭57−187327号公報
【特許文献3】特願平2−168861号公報
【特許文献4】特開平4−219236号公報
【特許文献5】特開平5−318665号公報
【特許文献6】特開2000−218738号公報
【特許文献7】特開2002−20508号公報
【特許文献8】特開昭63−189458号公報
【特許文献9】特開昭62−158312号公報
【特許文献10】特開2001―261959号公報
【特許文献11】特開平1−266146号公報
【特許文献12】特開2006−321977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上記問題を解決するために、優れた耐熱性、寸法安定性、電気特性および平面性を有する二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを提供することである。即ち、高温での耐電圧等の電気特性に優れているためコンデンサー、モーター、トランス等の電気絶縁材料、回路基板材料、リチウムイオン電池材料、燃料電池材料、振動板などに好適にしようできるポリアリーレンスルフィドフィルムを提供することであり、特にコンデンサー用として用いると高い電気特性と優れた自己回復性(SH性)を具備することにより、高温・高電圧で使用しても信頼性の高いコンデンサーを形成しうるポリアリーレンスルフィドフィルム、この金属化フィルムおよびこれを用いたコンデンサーを提供することである。より具体的には、従来PPSフィルムが多く用いられてきたチップコンデンサーのような小型コンデンサー用途だけでなく、高温・高電圧での高い信頼性が求められる高速鉄道やハイブリッドカーのインバーター用コンデンサーのような高温・高電圧下で使用される大容量の捲回コンデンサー用としても使用しうるコンデンサー用フィルム、この金属化フィルムおよびそれを用いたコンデンサーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するための本発明は、23℃での絶縁破壊電圧V(23)(V/μm)と150℃での絶縁破壊電圧V(150)(V/μm)が
V(150)/V(23)≧0.85
かつ
V(150)≧300
であることをとする二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムである。
もしくは、フィルムの長手方向および幅方向における23℃での伸度−応力曲線において、伸度2%と(破断点伸度−5%)の区間における微分係数が何れの方向も常に0以上である二軸配向ポリアリーレンフィルムである。
また、本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、
(1)フィルムの長手方向および幅方向における23℃での破断伸度がいずれも30%以上80%未満であり、破断強度が230MPa以上500MPa以下であること、
(2)フィルムの長手方向および幅方向における23℃での破断伸度がいずれも30%以上80%未満であり、破断強度が230MPa以上500MPa以下であること、
(3)ポリアリーレンスルフィドと、ポリアリーレンスルフィドとは異なる他の熱可塑性樹脂Aとを含む熱可塑性樹脂からなるフィルムであって、熱可塑性樹脂Aが分散相を形成し、該分散相の平均分散径が50〜500nmであり、該フィルムのガラス転移温度が80℃以上95℃未満に観察され、かつ95℃以上130℃以下には観察されないこと 、
(4)ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの含有量の和を100重量部としたときにポリアリーレンスルフィドの含有量が70〜99.5重量部、熱可塑性樹脂Aの含有量が0.5〜30重量部であること、
(5)熱可塑性樹脂Aが非晶性樹脂であり、そのガラス転移温度が150℃以上かつポリアリーレンスルフィドの融点以下であること、
(6)熱可塑性樹脂Aがポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンおよびポリスルホンからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーであること、
(7)ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aおよび、エポキシ基、アミノ基、イソシアナート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する相溶化剤を0.05〜3重量部含む原材料を混練してなる樹脂組成物を溶融製膜してなること、
(8)ポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンスルフィドであること、
(9)二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムがコンデンサー用であること、
(10)面積倍率が11倍以上になるよう長手方向および幅方向に延伸し、延伸後の熱固定を温度の異なる2段以上の工程で行う製造方法であって、その1段目の熱固定温度を(直前の延伸温度+5℃)以上240℃以下とし、後段の熱固定温度の最高値を(1段目の熱固定温度+20℃)以上(フィルムを構成するポリアリーレンスルフィドの融点−5℃)以下とするポリアリーレンスルフィドフィルムの製造方法
(11)二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの少なくとも片面に金属層を形成してなる金属化フィルム。
(12)金属化フィルムを捲回あるいは積層してなることを特徴とするコンデンサー。
をそれぞれ好ましい様態として含んでいる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下説明の通り、優れた耐熱性、寸法安定性、電気特性および平面性を有する二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムが得られ、高温での耐電圧等の電気特性に優れているためコンデンサー、モーター、トランス等の電気絶縁材料、回路基板材料、リチウムイオン電池材料、燃料電池材料、振動板などに使用することができ、特にコンデンサー用として用いると高い電気特性と優れた自己回復性(SH性)を具備することにより、高温・高電圧で使用しても信頼性の高い大型・小型コンデンサーを形成しうるポリアリーレンスルフィドフィルムおよびこれを用いたコンデンサーを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム、コンデンサー用二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム、金属化二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムおよびこれらを用いたコンデンサーについて説明する。
本発明の二軸配向ポリアリーレンフィルムは、優れた耐熱性、寸法安定性、電気特性および平面性を有し、特にコンデンサー用として用いると高い電気特性と優れた自己回復性(SH性)を具備することにより、高温・高電圧で使用しても信頼性の高いコンデンサーを形成しうる。
【0012】
本発明における二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、特にコンデンサー用として用いると特に高温で高い電気特性を有し、優れた自己回復性(SH性)を発現させる観点から、23℃での絶縁破壊電圧V(23)(V/μm)と150℃での絶縁破壊電圧V(150)(V/μm)が
V(150)/V(23)≧0.85
かつ
V(150)≧300
であることが必須である。より好ましくはV(150)/V(23)≧0.9であり、更に好ましくはV(150)/V(23)≧0.95である。
【0013】
また、V(150)≧350が好ましく、さらに好ましくはV(150)≧400以上である。本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムのV(150)の上限は特に設けないが、1000(V/μm)以上となる場合には、コンデンサーとした場合にSH性が機能せず貫通破壊に至る場合がある。
【0014】
かかる特性を発現させるために、本発明では製膜時の延伸工程にてポリアリーレンスルフィド分子鎖を高度に配向させ、さらに引き続き実施する熱固定工程の温度を制御することにより分子鎖配向を保ち分子鎖緊張を保持して構造を固定する。たとえば、延伸工程では延伸温度を長手方向および幅方向ともに(Tg(ポリアリーレンスルフィドのガラス転移温度))〜(Tg+40)、好ましくは(Tg+5℃)〜(Tg+20℃)、延伸倍率は長手方向および幅方向ともに3倍以上、好ましくは3.5倍以上で面積倍率を11倍以上とし、延伸後の熱固定温度を170〜(Tm(ポリアリーレンスルフィドの融点)−5℃)℃、好ましくは200〜250℃の1段熱固定、より好ましい条件としては延伸後の熱固定を温度の異なる2段以上の工程で行い、その1段目の熱固定温度を(直前の延伸温度+5℃)〜240℃、好ましくは(直前の延伸温度+30℃)〜220℃とし、後段の熱固定温度の最高値を(1段目の熱固定温度+20℃)〜(Tm−5℃)とし、熱固定後に幅方向に8%以下、好ましくは2〜5%の弛緩処理を後段の熱固定温度の最高値未満で適宜調節して行うことにより本発明の範囲にすることができる。ここで熱固定とは、長手方向、幅方向に張力をかけてフィルムを張った状態で所定の熱を加える工程を言う。特に150℃での絶縁破壊電圧V(150)を300V/μm以上とするためには、ポリアリーレンスルフィドとは異なる熱可塑性樹脂Aの種類、含有量および分散相の平均分散径を本発明の好ましい範囲内となるように調節することが好ましい。
【0015】
また、本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、フィルムを構成する樹脂組成物の310℃における溶融比抵抗が1×10Ω・cm〜1×1011Ω・cmであることが、特に高温、高電圧下での電気絶縁性に優れたフィルムを得るという観点から好ましく、特に5×10Ω・cm〜1×1011Ω・cmであることが好ましい。
【0016】
また、本発明の二軸配向ポリアリーレンフィルムの150℃、直流500V印加における体積固有抵抗は1.0×1014Ω・cm以上であることが好ましく、より好ましくは1.0×1015Ω・cm以上である。150℃、直流500V印加における体積固有抵抗が1.0×1014Ω・cm未満であると、本フィルムを用いてコンデンサーを製造する場合、フィルムのガラス転移温度以上、即ち95℃以上の高温でのコンデンサーの漏れ電流が大きくなり高温での安定性が悪い場合がある。二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの体積固有抵抗の上限は特に設けないが、1.0×1016Ω・cm以上となると、溶融製膜時に静電印加方式によるキャスト工程が困難になる場合がある。
【0017】
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの溶融比抵抗や体積固有抵抗を上記の好ましい範囲とするために、フィルム中の金属成分は1〜10000ppm、好ましくは10〜1000ppm以下、30〜500ppm以下であることが更に好ましい。このため、ポリアリーレンスルフィド中の過剰金属イオンや、熱可塑性樹脂Aおよび粒子に含まれる金属成分や金属イオン成分を制御することが好ましい。
【0018】
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、フィルムの長手方向および幅方向における23℃での伸度−応力曲線において、伸度2%と(破断点伸度−5%)の区間における微分係数が何れの方向も常に0以上であることが必要である。いずれかの方向の微分係数が0,1(MPa/%)以上であることがより好ましく、更に好ましくは0.5(MPa/%)以上である。微分係数が負となる場合は、フィルムの強度が低下するだけでなく、耐熱性、寸法安定性、電気特性、平面特性などが低下したり、150℃と23℃の絶縁破壊電圧の差が大きくなったり、SH性が不良になるため好ましくない場合がある。この原因は必ずしも明らかではないが、フィルムを構成する非晶分子鎖の弛緩の程度が大きく、特にポリアリーレンスルフィドのガラス転移点以上ではポリアリーレンスルフィド分子鎖の運動性が高くなることに起因するものと考えている。また、微分係数が常に10(MPa/%)を越える場合は、フィルムの伸度が30%未満となり、好ましくない場合がある。
かかる特性を発現させるために、本発明では製膜時の延伸工程にてポリアリーレンスルフィド分子鎖を高度に配向させ、さらに引き続き実施する熱固定工程の温度を制御することにより分子鎖配向を保ち分子鎖緊張を保持して構造を固定する。
【0019】
本発明の範囲にするためには、たとえば、延伸工程では、延伸温度を長手方向および幅方向ともに(Tg(ポリアリーレンスルフィドのガラス転移温度))〜(Tg+40)、好ましくは(Tg+5℃)〜(Tg+20℃)、延伸倍率は長手方向および幅方向ともに3倍以上、好ましくは3.5倍以上で面積倍率を11倍以上、より好ましくは12倍以上とし、延伸後の熱固定温度を170〜(Tm(ポリアリーレンスルフィドの融点)−5℃)℃、好ましくは200〜250℃の1段熱固定、より好ましい条件としては延伸後の熱固定を温度の異なる2段以上の工程で行い、その1段目の熱固定温度を(直前の延伸温度+5℃)〜240℃、好ましくは(直前の延伸温度+30℃)〜220℃とし、後段の熱固定温度の最高値を(1段目の熱固定温度+20℃)〜(Tm−5℃)とし、熱固定後に幅方向に8%以下、好ましくは2〜5%の弛緩処理を後段の熱固定温度の最高値未満で適宜調節して行うことが好ましい。
【0020】
特に伸度−応力曲線において微分係数が長手および幅方向も常に0以上とするために、ポリアリーレンスルフィドとは異なる熱可塑性樹脂Aを含み、その種類、含有量および分散相の平均分散径を本発明の好ましい範囲内となるように調節することが好ましい。
【0021】
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは長手方向および幅方向の破断伸度がいずれも30%以上80%未満が好ましく、より好ましくは35%以上65%未満、さらに好ましくは40%以上55%未満である。フィルムの破断伸度が30%未満の場合は、フィルムスリット時に破断しやすかったり、折り曲げなどの加工時にワレが生じやすく、特にコンデンサー用とした場合、捲回コンデンサーを製造する際に破断し易くなり加工が困難となる。他方、フィルムの破断伸度が80%以上の場合、コンデンサー用とした場合、低電圧破壊を生じたり、SH性が不十分となり信頼性の劣ったコンデンサーとなる場合があるため好ましくない。
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは長手方向および幅方向の破断強度がいずれも230MPa以上500MPa以下、より好ましくは250MPa以上450MPa以下、さらに好ましくは270MPa以上400MPa以下である。フィルムの破断強度が230MPa未満の場合、折り曲げなどの加工時にワレが生じやすくなる場合があったり高温での耐電圧が低くなる場合があり、特にコンデンサー用とした場合、捲回コンデンサーを製造する際に破断し易くなり加工が困難となったり、低電圧破壊を生じやすく、SH性が不十分となり信頼性の劣ったコンデンサーとなり好ましくない場合がある。他方、500MPaを超えるフィルムを得るためには、製膜時の延伸倍率を極めて高倍率にする必要があり、製膜工程の延伸時にフィルム破れが発生しやすくなるため好ましくない場合がある。
【0022】
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは長手方向および幅方向のヤング率がいずれも3GPa以上7GPa未満であることが好ましく、より好ましくは3.2GPa以上6GPa未満、さらに好ましくは3.5GPa以上5GPa未満である。フィルムの長手方向および幅方向におけるヤング率のいずれかが3GPa未満である場合は、高温での耐電圧が低くなる場合があり、特にコンデンサー用とした場合、低電圧破壊を生じやすく、SH性が不十分となり信頼性の劣ったコンデンサーとなる場合があるので好ましくない。他方、フィルムの長手方向および幅方向におけるヤング率が7GPaを超える場合は、製膜時の延伸倍率を極めて高倍率にする必要があり、製膜工程の延伸時にフィルム破れが発生しやすくなり好ましくない場合がある。
【0023】
本発明の二軸配向ポリアリ−レンスルフィドフィルムは、レーザーラマン分光により得られる長手方向と幅方向の配向パラメータがそれぞれ3〜7の範囲であることが好ましい。ポリアリーレンスルフィドフィルムが二軸配向であることは、このようにレーザーラマン分光により得られる長手方向と幅方向の配向パラメータがそれぞれ上記範囲にあることなどにより判別できる。配向パラメータのより好ましい範囲は3.5〜6.5であり、さらに好ましい範囲は4〜6である。レーザーラマン分光による配向パラメータは、分子配向や結晶量を反映する。配向パラメータが7を超えると、分子鎖配向が進み過ぎたり、結晶化が進行しすぎたりして、引張破断伸度が小さくなり、特にコンデンサー用とした場合、捲回コンデンサーを製造する際に破断し易くなり加工が困難となる。他方、配向パラメータが3未満であると、分子配向が不十分となり、高温での耐電圧が低くなる場合があり特にコンデンサー用とした場合、低電圧破壊を生じやすく、SH性が不十分となり信頼性の劣ったコンデンサーとなりうるため好ましくない。ポリアリ−レンスルフィドフィルムのレーザーラマン分光による配向パラメータは、例えば、縦延伸における延伸温度や延伸倍率、横延伸前の予熱温度、横延伸における延伸温度や延伸倍率、さらに、延伸後の熱固定温度を本発明の好ましい範囲にすることにより、本発明の範囲にすることができる。
【0024】
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、ポリアリーレンスルフィドと、ポリアリーレンスルフィドとは異なる他の熱可塑性樹脂Aとを含み、熱可塑性樹脂Aが分散相を形成し、その分散相の平均分散径が50〜500nmであり、かつフィルムのガラス転移温度が80℃以上95℃未満に観察される一方で95℃以上130℃以下には観察されないことが好ましい。本発明では、ポリアリ−レンスルフィドが連続相(海相あるいはマトリックス)を形成し、他の熱可塑性樹脂Aが分散相(島相あるいはドメイン)を形成し、その分散相の平均分散径の平均値は50〜500nmであることが好ましく、さらに好ましい範囲は60〜300nmであり、よりに好ましくは70〜200nmである。ポリアリ−レンスルフィドが連続相を形成することによりポリアリ−レンスルフィドの耐熱性、耐薬品性、機械特性の優れた特性をフィルムに大きく反映できる。平均分散径を上記の範囲にすることにより、二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの分子鎖配向を高めやすく、コンデンサーの誘電体として用いた場合に150℃と23℃での耐電圧の差を50V/μm以下と小さくしやすく、さらに150℃でも高い耐電圧とすることができ、さらにはSH性をフィルムに付与することも可能となる。分散相の平均分散径の平均値が50nm未満であると、本発明のコンデンサーの誘電体として用いた場合の150℃と23℃での耐電圧の差を小さくする効果が不十分となる場合がある。また、平均分散径の平均値が500nmより大きいと、フィルムの耐熱性や平面性が悪化し、また、延伸時にフィルム破れが発生しやすくなる。
【0025】
ここでいう分散相の平均分散径とは、(ア)長手方向に平行かつフィルム面に垂直な方向、(イ)幅方向に平行かつフィルム面に垂直な方向、(ウ)フィルム面に対して平行な方向に切断した面に対して観察される分散粒子径を数平均したものである。(ア)の切断面に現れる分散相のフィルム厚み方向の最大長さ(la)と長手方向の最大長さ(lb)、(イ)の切断面に現れる分散相のフィルム厚さ方向の最大長さ(lc)と幅方向の最大長さ(ld)、(ウ)の切断面に現れる分散相のフィルム長手方向の最大長さ(le)と幅方向の最大長さ(lf)を求め、分散相の形状指数I=(lbの数平均値+leの数平均値)/2、形状指数J=(ldの数平均値+lfの数平均値)/2、形状指数K=(laの数平均値+lcの数平均値)/2とし、分散相の平均分散径を(I+J+K)/3とする。
【0026】
測定は、サンプルを超薄切片法で作製し、透過型電子顕微鏡を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、2万倍で写真を撮影して、得られた写真をイメ−ジアナライザ−に画像として取り込み、必要に応じて、画像処理を行うことにより、任意の100個の分散粒子の平均分散径を計算する。
【0027】
熱可塑性樹脂Aの分散相の形状は、球状もしくは細長い島状、小判状、あるいは繊維状であることが好ましい。分散相のアスペクト比は、1〜20の範囲であることが好ましい。さらに好ましい分散相のアスペクト比の範囲は1〜10であり、より好ましい範囲は1〜5である。これら島成分のアスペクト比を上記範囲にすることにより、引張伸度の向上した二軸配向ポリアリ−レンスルフィドフィルムを得やすいので好ましい。ここで、アスペクト比は、分散相の平均長径/平均短径の比を意味するものである。該アスペクト比は、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡などの手法を用いて測定することができる。例えば、サンプルを超薄切片法で作製し、透過型電子顕微鏡を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、2万倍で写真を撮影して、得られた写真をイメ−ジアナライザ−に画像として取り込み、画像処理を行うことにより、アスペクト比を計算することができる(測定法の詳細は後述する)。
【0028】
本発明では、二軸配向ポリアリーレンフィルムのガラス転移温度(Tg)は、ポリアリーレンスルフィド以外の樹脂成分を含む場合、80℃以上95℃未満に観察される一方で95℃以上130℃以下には観察されないことが必要である。Tgが80℃未満の場合は、フィルムの耐熱性が低くなる。また、Tgが95℃以上130℃以下に観測される場合は、フィルムをコンデンサーの誘電体として用いる場合にSH性が不十分となる。
【0029】
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムがポリアリーレンスルフィドとは異なる他の熱可塑性樹脂Aを含有する場合、ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの含有量の和を100重量部としたときにポリアリーレンスルフィドの含有量が70〜99.5重量部、熱可塑性樹脂Aの含有量が0.5〜30重量部であることが好ましく、ポリアリーレンスルフィドの含有量が80〜98重量部、熱可塑性樹脂Aの含有量が2〜20重量部であることがより好ましく、ポリアリーレンスルフィドの含有量が90〜97重量部、熱可塑性樹脂Aの含有量が3〜10重量部であることがさらに好ましい。ポリアリーレンスルフィドとは異なる熱可塑性樹脂Aの含有量が30重量部を越えると、二軸配向ポリアリーレンスルフィドの耐熱性、機械特性、電気特性が損なわれる場合があり、また延伸性が悪く製膜性に劣る場合がある。熱可塑性樹脂Aの含有量が1重量部未満であると、優れた平面特性やコンデンサーの誘電体として用いた場合のSH性を付与することが困難となる。
【0030】
本発明でいうポリアリ−レンスルフィドとは、−(Ar−S)−の繰り返し単位を有するホモポリマ−あるいはコポリマ−である。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などで表される構成単位などが挙げられる。
【0031】
【化1】

【0032】
(R1,R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
本発明に用いるポリアリ−レンスルフィドの繰り返し単位としては、上記の式(A)で表される構造式が好ましく、これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリ−レンスルフィドとしては、フィルム物性と経済性の観点から、ポリフェニレンスルフィド(PPS)が好ましく例示され、ポリマー−の主要構成単位として下記構造式で示されるp−フェニレンスルフィド単位を好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上含む樹脂である。かかるp−フェニレンスルフィド成分が80モル%未満では、ポリマー−の結晶性や熱転移温度などが低く、PPSの特徴である耐熱性、寸法安定性、機械特性および誘電特性などを損なうことがある。
【0033】
【化2】

【0034】
上記PPS樹脂において、繰り返し単位の20モル%未満、好ましくは10モル%未満であれば、共重合可能な他のスルフィド結合を含有する単位が含まれていても差し支えない。繰り返し単位の20モル%未満、好ましくは10モル%未満の繰り返し単位としては、例えば、3官能単位、エ−テル単位、スルホン単位、ケトン単位、メタ結合単位、アルキル基などの置換基を有するアリ−ル単位、ビフェニル単位、タ−フェニレン単位、ビニレン単位およびカーボネート単位などが例として挙げられ、具体例として、下記の構造単位を挙げることができる。これらのうち一つまたは二つ以上共存させて構成することができる。この場合、該構成単位は、ランダム型またはブロック型のいずれの共重合方法であってもよい。
【0035】
【化3】

【0036】
実質的にp−フェニレンスルフィドのみからなるPPS、もしくは3官能成分が1モル%以下添加され99モル%以上がp−フェニレンスルフィドからなるPPSがフィルム原料としてコスト、製膜性、特に高温でのフィルム性能などの観点から最も好ましい。なお、この場合、得られるPPS樹脂の融点は280℃以上290℃未満、ガラス転移温度は90℃以上95℃未満に観察される。
【0037】
PPS樹脂およびPPS樹脂組成物の溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に限定されないが、温度310℃で剪断速度1,000(1/sec)のもとで、100〜2000Pa・sの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは200〜1,000Pa・sの範囲である。
【0038】
本発明でいうPPSは種々の方法、例えば、特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法、あるいは、特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きい重合体を得る方法などによって製造することができる。
【0039】
本発明において、得られたPPS樹脂を、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水および酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネ−トおよび官能基ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など、種々の処理を施した上で使用することも可能である。
【0040】
次に、PPS樹脂の製造法を例示するが、本発明では特にこれに限定されない。例えば、硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で、高温高圧下で反応させる。必要に応じて、トリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることも可能である。重合度調整剤として苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し230〜280℃で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルター−で濾過後、粒状ポリマーを得る。これを酢酸もしくは酢酸塩などの水溶液中で30〜100℃、10〜60分攪拌処理し、イオン交換水にて30〜80℃で数回洗浄、乾燥してPPS粉末を得る。この粉末ポリマーを酸素分圧10ト−ル以下、好ましくは5ト−ル以下でNMPにて洗浄後、30〜80℃のイオン交換水で数回洗浄し、5ト−ル以下の減圧下で乾燥する。かくして得られたポリマーは、実質的に線状のPPSポリマーであるので、安定した延伸製膜が可能になる。もちろん必要に応じて、他の高分子化合物や酸化珪素、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレン、マイカ、タルクおよびカオリンなどの無機や有機化合物や熱分解防止剤、熱安定剤および酸化防止剤などを添加してもよい。
【0041】
PPS樹脂の加熱による架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気や酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素やアルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法を例示することができる。加熱処理温度は、通常170〜280℃が選択され、より好ましくは200〜270℃であり、また、加熱処理時間は、通常0.5〜100時間が選択され、より好ましくは2〜50時間であるが、この両者を制御することにより目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置であってもよいが、効率よくしかも均一に処理するためには、回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置を用いることが好ましい。
【0042】
PPS樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法を例示することができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置でもよいが、効率よく、しかもより均一に処理するためには回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置を用いることが好ましい。本発明で用いるPPS樹脂は、引張破断伸度の向上の目標を達成するために熱酸化架橋処理による高分子量化を行わない実質的に直鎖状のPPSであることが好ましい。
【0043】
本発明で用いられるPPS樹脂は、脱イオン処理もしくは脱金属成分処理を施されたPPS樹脂、もしくはPPS中にCaなどのアリカリ土類金属塩を導入しても良い。脱イオン処理もしくは脱金属成分処理の具体的方法としては、酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理、有機溶剤洗浄処理、およびエントレーナー処理などを例示することができ、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
PPS樹脂の有機溶剤洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、有機溶剤としては、PPS樹脂を分解する作用などを有していないものであれば特に制限はなく、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエ−テル、ジプロピルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、ペンタノ−ル、エチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、フェノ−ル、クレゾ−ル、ポリエチレングリコ−ルなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒の中で、N−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムが特に好ましく用いられる。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
【0045】
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要に応じて適宜攪拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度について特に制限はなく、常温〜300℃の範囲で任意の温度を選択することができる。洗浄温度が高くなるほど、洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の温度で十分効果が得られる。また、有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
【0046】
PPS樹脂の熱水洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱し攪拌することにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の方が多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
【0047】
PPS樹脂の酸水溶液洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要に応じて適宜攪拌または加熱することも可能である。用いられる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸および酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸やジクロロ酢酸などのハロゲン置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸やクロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸やサリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸およびフマル酸などのジカルボン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸および珪酸などの無機酸性化合物などが挙げられる。中でも酢酸と塩酸が好ましく用いられる。酸処理を施されたPPS樹脂は、残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また、洗浄に用いられる水は、酸処理によりPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。酸水溶液洗浄処理を施すと、PPS樹脂の酸末端成分が増加して、他の熱可塑性樹脂Aと混合する場合に分散混合性が高まり、分散相の平均分散径が小さくなる効果が得られやすくなるので好ましい。また、酸水溶液洗浄処理により、PPS中の金属量が減少し、特に高温・高電圧下での電気絶縁性を向上させることができるので好ましい場合がある。
【0048】
本発明においては、PPS中にCaなどのアリカリ土類金属塩を導入したPPSを用いても良い。かかるアルカリ土類金属塩を導入する方法としては、有機溶剤洗浄や、温水または熱水洗浄で残留オリゴマーや残留塩を除いた後にアルカリ土類金属塩を添加する方法が挙げられる。アルカリ土類金属塩は、酢酸塩、水酸化物、炭酸塩などのアルカリ土類金属イオンの形でPPS中に導入するのが好ましい。また過剰のアルカリ土類金属塩は温水洗浄などにより取り除く方が好ましい。上記アルカリ土類金属イオン導入の際のアルカリ土類金属イオン濃度としてはPPS1gに対して0.001mmol以上が好ましく、0.01mmol以上がより好ましい。温度としては、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましく、90℃以上が特に好ましい。上限温度は特にないが、操作性の観点から通常280℃以下が好ましい。浴比(乾燥PPS重量に対する洗浄液重量)としては0.5以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましい。
【0049】
PPS樹脂のエントレーナー処理の具体的方法としては、PPS樹脂もしくはPPSを含む樹脂組成物を溶融押出する際に、樹脂組成物に対して不活性な媒体を押出機にフィードして、溶融混練後に該押出機のベントから吸引することにより、媒体と合わせて金属や金属塩成分などの不純物を回収し、PPS樹脂中もしくはPPS樹脂組成物中のイオン・金属成分を削減させる。PPSに対して不活性な媒体としては前述の有機溶媒洗浄処理での有機溶媒や超臨界炭酸ガスなどが挙げられる。樹脂組成物に対して不活性な媒体としては、熱可塑性樹脂Aを分解するなどの作用を持たない媒体を適宜選ぶことができ、たとえば熱可塑性樹脂Aがポリエーテルイミドの場合は、エチレングリコールやプロピレングリコールなどが挙げられる。本処理に用いる押出機としては樹脂成分と媒体の接触機会を高めイオンもしくは金属成分を媒体中に分散させやすくするため混練能力の高い2軸押出機を用いることが好ましい。
【0050】
本発明の二軸配向ポリアリ−レンスルフィドフィルムがポリアリ−レンスルフィドとは異なる熱可塑性樹脂Aを含有する場合、熱可塑性樹脂Aとしては、例えば、ポリアミド、ポリエ−テルイミド、ポリエ−テルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンエ−テル、ポリエステル、ポリアリレ−ト、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトン等の各種ポリマーおよびこれらのポリマー−の少なくとも一種を含むブレンド物を用いることができる。熱可塑性樹脂Aは、そのガラス転移温度Tgが150℃以上かつポリアリーレンスルフィドの融点(Tm)以下の非晶性樹脂であることが好ましく、170℃以上(Tm−20)℃以下の非晶性樹脂であることが更に好ましく、180℃以上(Tm−50)℃以下の非晶性樹脂であることが最も好ましい。熱可塑性樹脂AのTgが150℃未満の場合、本フィルムをコンデンサー誘電体として用いる場合の耐熱性や電気特性向上の効果が得られにくい場合がある。また、熱可塑性樹脂AのTgがポリアリーレンスルフィドの融点(Tm)以上の場合や、熱可塑性樹脂がフィルム中で結晶性を示す場合、コンデンサー誘電体として用いる場合のSH性に劣る場合がある。 熱可塑性樹脂Aは、ポリアリ−レンスルフィドの混合性および本発明の効果発現の観点から、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンおよびポリスルホンからなる群から選ばれるポリマーもしくは少なくとも1種を含むブレンド物であることが好ましく、特にポリエーテルイミドの場合にポリアリーレンスルフィドへの分散性に優れ、不純物や金属成分量が少ないためか二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムとした場合に電気特性に優れており好ましい。
【0051】
ポリエ−テルイミドは、特に限定されないが、例えば、下記一般式で示されるように、ポリイミド構成成分にエ−テル結合を含有する構造単位であるポリマーを好ましく挙げることができる。
【0052】
【化4】

【0053】
ただし、上記式中R1は、2〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族または脂肪族基、脂環族基からなる群より選択された2価の有機基であり、R2は、前記Rと同様の2価の有機基である。
上記R1、R2としては、例えば、下記式群に示される芳香族基
【0054】
【化5】

【0055】
を挙げることができる。
【0056】
本発明で最も好ましいポリアリーレンスルフィド樹脂は、上記の通りp−フェニレンスルフィドからなるPPS、もしくは3官能成分が1モル%以下添加され99モル%以上がp−フェニレンスルフィドからなるPPS樹脂であり、通常その融点は280〜290℃であり、本発明では、ガラス転移温度がポリアリーレンスルフィドの融点(Tm)以下であることが好ましいことから280℃以下、より好ましくは260℃以下のポリエ−テルイミドを用いると本発明の効果が得やすく、ポリアリ−レンスルフィドとの相溶性、溶融成形性等の観点から、下記式で示される構造単位を有する、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミン、またはp−フェニレンジアミンとの縮合物が好ましい。
【0057】
【化6】

【0058】
この構造単位を有するポリエ−テルイミドは、“ウルテム”(登録商標)の商標名で、ジーイープラスチックス社より入手可能である。例えば、m−フェニレンジアミン由来の単位を含む構造単位(前者の式)を有するポリエ−テルイミドとして、“ウルテム1000”および“ウルテム1010”が挙げられる。また、p−フェニレンジアミン由来の単位を含む構造単位(後者の式)を有するポリエ−テルイミドとして、“ウルテムCRS5000”が挙げられる。
【0059】
本発明の二軸配向ポリアリ−レンスルフィドフィルムに含まれる熱可塑性樹脂Aとして用いられる他の例として、分子骨格にスルホン基を含むポリスルホンやポリエ−テルスルホンが挙げられる。ポリスルホンやポリエ−テルスルホンは、公知のものを種々使用することができる。ポリアリ−レンスルフィドとの混合性の観点から、ポリエ−テルスルホンの末端基として、塩素原子、アルコキシ基あるいはフェノ−ル性水酸基が挙げられる。また、熱可塑性樹脂Aとして、ポリアリ−レンスルフィドと分子構造が近似するポリフェニレンエ−テルやポリアリレートなども好ましく例示される。
【0060】
本発明において、ポリアリーレンスルフィドと他の熱可塑性樹脂Aを混合する時期は、特に限定されないが、溶融押出前に、ポリアリーレンスルフィドとその他の熱可塑性樹脂Aの混合物を予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する方法や、溶融押出時に混合して溶融混練させる方法などがある。中でも、二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いて予備混練してマスターチップ化する方法などが好ましく例示される。その場合、通常の一軸押出機に該混合されたマスターチップ原料を投入して溶融製膜してもよいし、高せん断を付加した状態でマスターチップ化せずに直接にシーティングしてもよい。特に、溶融押出前に、それぞれの樹脂の混合物を予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する方法が好ましく例示され、その場合、ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの重量分率が99.5/0.5〜70/30のブレンド原料を作成することが好ましい。二軸押出機で混合する場合、分散不良物を低減させる観点から、3条二軸タイプまたは2条二軸タイプのスクリューを装備したものが好ましく、混練部ではPPS樹脂の融点+5〜55℃の樹脂温度範囲が好ましい。さらに好ましい温度範囲はPPS樹脂の融点+10〜45℃であり、より好ましい温度範囲はPPS樹脂の融点+10〜35℃である。混練部の温度範囲を好ましい範囲にすることは、せん断応力を高めやすく、分散不良物も低減できる効果が高くなり、分散相の分散径を本発明の好ましい範囲に制御することができる。そのときの滞留時間は1〜5分の範囲が好ましい。また、スクリュー回転数を100〜500回転/分とすることが好ましく、さらに好ましくは200〜400回転/分の範囲である。スクリュー回転数を好ましい範囲に設定することで、高いせん断応力が付加され易く、分散相の分散径を本発明の好ましい範囲に制御することができる。また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率は20〜60の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜50の範囲である。さらに、二軸スクリューにおいて、混練力を高めるためにニーディングパドルなどによる混練部を設けることは好ましく、その混練部を好ましくは2箇所以上、さらに好ましくは3箇所以上設けたスクリュー形状にする。この際、原料の混合順序には特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、プラスチック成形加工学会誌「成形加工」第15巻第6号、382〜385頁(2003年)に記載された超臨界流体を利用する方法なども好ましく例示することができる。
【0061】
本発明においては、熱可塑性樹脂Aドメインの分散径を制御するために、相溶化剤として、エポキシ基、アミノ基、イソシアネ−ト基から選択される一種以上の基を有する化合物をポリアリ−レンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの合計100重量部に対し、0.1〜5重量部添加することが好ましい。より好ましくは0.2〜3重量部添加することであり、さらに好ましくは0.3〜2重量部添加することである。相溶化剤の添加量が0.1重量部未満であると、ポリアリ−レンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの相溶性が不良となり、本発明の効果が得られにくかったりすることがある。また、相溶化剤の添加量が5重量部を超えると、ポリアリ−レンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの反応性が高まりすぎて、溶融粘度が増加してフィルム押出成形がしにくくなったりすることがある。
【0062】
かかる相溶化剤の具体例としては、ビスフェノ−ルA、レゾルシノ−ル、ハイドロキノン、ピロカテコ−ル、ビスフェノ−ルF、サリゲニン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ビスフェノ−ルS、トリヒドロキシ−ジフェニルジメチルメタン、4,4‘−ジヒドロキシビフェニル、1,5−ジヒドロキシナフタレン、カシューフェノール、2.2.5.5.−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサンなどのビスフェノ−ル類のグリシジルエ−テル、ビスフェノ−ルの替わりにハロゲン化ビスフェノ−ルを用いたもの、ブタンジオ−ルのジグリシジルエ−テルなどのグリシジルエ−テル系エポキシ化合物、フタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル系化合物、N−グリシジルアニリン等のグリシジルアミン系化合物等々のグリシジルエポキシ樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化大豆油等の線状エポキシ化合物、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド等の環状系の非グリシジルエポキシ樹脂などが挙げられる。またその他ノボラック型エポキシ樹脂も挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂はエポキシ基を2個以上有し、通常ノボラック型フェノ−ル樹脂にエピクロルヒドリンを反応させて得られるものである。また、ノボラック型フェノ−ル樹脂はフェノ−ル類とホルムアルデヒドとの縮合反応により得られる。原料のフェノ−ル類としては特に制限はないがフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、ビスフェノールA、レゾルシノール、p−ターシャリ−ブチルフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよびこれらの縮合物が挙げられる。
【0063】
本発明の二軸配向ポリアリ−レンスルフィドフィルムに用いられる相溶化剤の最も好ましい例として、エポキシ基、アミノ基、イソシアネ−ト基から選択される一種以上の官能基を有するアルコキシシランが挙げられる。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアネ−トプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナネ−トプロピルトリクロロシランなどのイソシアネ−ト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。中でも、γ−イソシアネ−トプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナネ−トプロピルトリクロロシランなどのイソシアネ−ト基含有アルコキシシラン化合物を用いると、二軸配向ポリアリ−レンスルフィドフィルムの分散相の平均分散径を本発明の好ましい範囲に制御しやすくなる。
【0064】
本発明において相溶化剤としてアルコキシシランを用いる場合、混練時もしくは押出時などにアルコキシシラン由来のアルコールが発生する場合がある。フィルム製膜用の原料としてアルコールの発生量の少ない樹脂組成物を得るためには、ニーディング部を少なくとも2カ所有する二軸押出機を使用して、一度ポリフェニレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aと相溶化剤を溶融混練した後に、さらに一回以上溶融混練する手法が好ましい方法として挙げられる。また、2回目以降の溶融混練する際に、ポリフェニレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの合計100重量部に対して、水を0.02重量部以上、より好ましくは0.1〜5重量部添加することが好ましい場合がある。この方法により、アルコキシシラン化合物の加水分解が促進され、得られる樹脂組成物から発生するアルコール量を低減することができる。ポリアリーレンスルフィドや熱可塑性樹脂A中の不純物やオリゴマー、相溶化剤の反応に由来して発生するアルコールなどを、混練して得られる製膜用原料チップ中からなるべく除去することが製膜安定上好ましく、そのために溶融混練時に押出機の混練ゾーン以降に真空ベントを設けることが好ましい。水の添加方法としては、特に限定しないが、押出機の途中からギアポンプ、プランジャーポンプなどの送液装置を使用して水をサイドフィードする手法や、一度溶融混練した後に、さらに一回以上溶融混練する際に、水を配合もしくは押出機の途中からサイドフィードする手法が好ましい方法として挙げられる。
【0065】
エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基から選択される一種以上の官能基を有するアルコキシシランを用いた場合、ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの間にシロキサン結合を形成しやすく、分散相の界面近傍にシロキサン結合が存在しやすい。TEM−EDX法などを用いて分散相の界面近傍にシリコン原子を検出することができる。本発明では、熱可塑性樹脂Aからなる分散相の界面にシロキサン結合に起因するシリコン(Si)原子を含むことが好ましい。
【0066】
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、フィルムを構成する樹脂組成物の310℃における溶融比抵抗が1×10Ω・cm〜1×1011Ω・cmであることが、特に高温、高電圧下での電気絶縁性に優れたフィルムを得るという観点から好ましく、特に5×10Ω・cm〜1×1011Ω・cmであることが好ましい。上記の通り、本発明で用いられるPPS樹脂は、耐電圧を高くする観点から脱イオン処理もしくは脱金属成分処理をしたものを一部もしくは全量用いて金属量を減少させていることが好ましい場合がある。その具体的方法としては、酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理、有機溶剤洗浄処理、およびエントレーナー処理などを例示することができ、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いてもよい。熱可塑性樹脂Aとして金属・イオン量の少ないものを選択することや、マスターチップ作成時にエントレーナー処理を行うことも好ましい。これらの手法を組み合わせることにより上記範囲を達成することができる。フィルムの電気特性、特にコンデンサーとした場合の高温特性という観点からは溶融比抵抗が高い方が好ましい。一方、溶融比抵抗については特に上限はないが、溶融時の樹脂の熱安定性が悪化する場合があったり製膜時の静電キャスト性から1×1011Ω・cm以下であることが好ましい。
【0067】
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは摩擦係数が0.2以上0.8以下であることが好ましい。より好ましくは0.25以上0.6以下、さらに好ましくは0.3以上0.5未満である。摩擦係数が0.2未満の場合、フィルムに十分な滑り性を付与することが出来ず、フィルム製膜時に巻き皺が発生したり、捲回コンデンサーを製造する際に皺が発生し、加工が困難となる。他方、摩擦係数が0.8を超える場合、表面の荒れが大きく、フィルムの表面にアルミニウム、亜鉛等の蒸着膜を形成させた際、蒸着膜厚みムラが生じたり、捲回コンデンサーとしたときフィルム間に空気介在が生じ、電気特性の不安定化、耐電圧の低下を招いたり、また使用時に電界集中が発生したり、フィルムおよび金属薄膜層の溶失または焼失が起こり、コンデンサー用フィルムとして使用した場合にコンデンサーの高性能化が困難となる。
【0068】
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは中心線平均粗さRaが20nm以上200nm以下、最大高さRmaxが1000nm以下であることが好ましい。Raが30nm未満の場合、フィルムに十分な滑り性を付与することが出来ず、フィルム製膜時に巻き皺が発生したり、捲回コンデンサーを製造する際に皺が発生し、加工が困難となる。他方、Raが200nmより大きい場合、もしくはRmaxが1000nmより大きい場合、表面の荒れが大きく、フィルムの表面にアルミニウム、亜鉛等の蒸着膜を形成させた際、蒸着膜厚みムラが生じたり、捲回コンデンサーとしたときフィルム間に空気介在が生じ、電気特性の不安定化、耐電圧の低下を招いたり、また使用時に電界集中が発生したり、フィルムおよび金属薄膜層の溶失または焼失が起こり、コンデンサー用フィルムとして使用した場合にコンデンサーの高性能化が困難となる場合がある。Rmaxの下限は特に制限されないが、適度な滑り性を付与する観点から300nmとするものである。
【0069】
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、フィルムに滑り性を付与したり、加工適性を向上するために、上記のフィルムの摩擦係数範囲および表面粗さを達成するように粒子を含有させることができる。粒子としては例えば酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナやジルコニアなどの無機粒子やシリコン粒子、架橋アクリル粒子や架橋ポリスチレン粒子などの有機粒子などの不活性粒子を例示でき、またポリマーの重合時に酢酸カルシウムや酢酸リチウムなどを使用し、ポリマーの重合過程で粒子を析出させることも可能である。粒子の平均粒径はフィルム厚み以下であることが好ましく、フィルム厚みの2/3以下であることがより好ましく、1/2以下であることが更に好ましい。また、本発明では粒径2μm以上もしくはフィルム厚み以上の粗大な粒子を含まないことが好ましい。粗大粒子を含んでいる場合、製膜の安定性に劣る場合があったり、コンデンサー使用中にフィルムから粒子脱落が起こり、絶縁欠点が生じコンデンサーとしての信頼性を損なう場合がある。このため、無機粒子や有機粒子などの不活性粒子はPPS重合時の溶媒中でスラリーとしサンドグラインダーなどの媒体攪拌型分散装置や超音波分散装置で分散し、その後湿式分級装置で分級したりフィルター出濾過し粗大粒子を除去するのが好ましい。
【0070】
本発明は熱可塑性樹脂Aをふくむ場合、その分散状態により表面に微細な突起構造を形成する場合があり、この場合は粒子を実質的に添加しなくとも上記の摩擦係数の範囲を達成する場合がある。熱可塑性樹脂Aの平均分散径が小さくなるほど、突起高さは小さくなる傾向があるため、平均分散径が200nmより小さくなる場合には必要な加工適性を付与させるために上記の無機または有機粒子を添加することが必要な場合がある。
【0071】
なお、本発明のフィルム中には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤防錆剤などを添加してもかまわない。
【0072】
本発明の二軸配向ポリアリ−レンスルフィドフィルムの厚さは、用途等により異なるが500μm以下が好ましい。コンデンサー用途の場合は、0.5〜20μmが好ましく、より好ましくは1〜10μmである。電気絶縁用フィルムなどの場合は、作業性などの観点から、より好ましくは10〜300μmの範囲であり、さらに好ましくは20〜200μmの範囲である。
【0073】
本発明の二軸配向ポリアリ−レンスルフィドフィルムは、これにポリアリ−レンスルフィドやその他のポリマー−層、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデンまたはアクリル系ポリマー−からなる層を直接、あるいは接着剤などの層を介して、さらに積層させて用いてもよい。
【0074】
また、本発明の二軸配向ポリアリ−レンスルフィドフィルムは、必要に応じて、熱処理、成形、表面処理、ラミネ−ト、コ−ティング、印刷、エンボス加工およびエッチングなどの任意の加工を行ってもよい。
【0075】
本発明の二軸配向ポリアリ−レンスルフィドフィルムは、コンデンサー用誘電体、モーター、トランスなどの電気絶縁材料や成形材料、回路基板材料、回路・光学部材などの工程・離型フィルムや保護フィルム、リチウムイオン電池材料、燃料電池材料、振動板などに用いられる。特に、高温での電気絶縁性能に優れているため、コンデンサー、電気絶縁材料、回路基板などに好ましく用いることができる。更にコンデンサー誘電体として用いるとSH性に優れているため、安全性が高く耐熱性に優れたコンデンサーとする事ができ好ましい。
【0076】
次いで、本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを製造する方法について、ポリアリーレンスルフィドとしてポリ−p−フェニレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aとしてジーイープラスチック社製のポリエーテルイミド“ウルテム1010”からなる二軸配向ポリフェニレンフィドフィルムの製造を例にとって説明する。もちろん、本発明は、下記の記載に限定されない。
【0077】
ポリフェニレンスルフィド(PPS)とポリエーテルイミド(PEI)を混合する場合、溶融押出前に、それぞれの樹脂の混合物を予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する方法が好ましく例示される。
【0078】
本発明では、まず、上記PPSとPEIを二軸混練押出機に投入し、PPSとPEIの重量分率が99.5/0.5〜70/30のブレンド原料を作成することが好ましい。ブレンド原料の樹脂組成物の混合・混錬方法は、特に限定されることはなく各種混合・混錬手段が用いられる。例えば、各々別々に溶融押出機に供給して混合してもよいし、また、予め紛体原料のみをヘンシェルミキサー、ボールミキサー、ブレンダーあるいはタンブラー等の混合機を利用して乾式予備混合し、その後、溶融混錬機にて溶融混練することでもよい。その後、前記ブレンド原料を必要に応じてPPS、これらの回収原料と共に押出機に投入して、目的とする組成としたものを原料とすることが、フィルムの品質と製膜性の観点で好ましい。上記原料を作成する場合、フィルム中への異物混入を可能な限り低減させるために、溶融押出工程で樹脂をフィルトレーションすることも好ましく行うことができる。この押出機内で異物や変質ポリマーを除去するために各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンドおよび金網などの素材からなるフィルターを用いることが好ましい。また、必要に応じて、定量供給性を向上させるためにギアポンプを設けてもよい。
【0079】
上記の好ましい二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの製造法のより具体的な条件は、以下のとおりである。
【0080】
まず、PPSのペレットまたは顆粒とPEIのペレットとを、一定の割合で混合して、ベント式の二軸混練押出機に供給し、溶融混練してブレンドチップを得る。二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いることが好ましく、さらに、分散不良物を低減させる観点から、3条二軸タイプまたは2条二軸タイプのスクリューを装備したものが好ましく、そのときの滞留時間は1〜5分の範囲が好ましい。また、混練部では290〜350℃の樹脂温度範囲であることが好ましく、さらに好ましい温度範囲は295〜330℃である。混練部の樹脂温度範囲を好ましい範囲にすることは、せん断応力を高めやすく、分散不良物も低減できる効果が高くなり、分散相の分散径を本発明の好ましい範囲に制御することができる。また、スクリュー回転数を100〜500回転/分とすることが好ましく、さらに好ましくは200〜400回転/分の範囲である。スクリュー回転数を好ましい範囲に設定することで、高いせん断応力が付加され易く、分散相の分散径を本発明の好ましい範囲に制御することができる。また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率は20〜60の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜50の範囲である。さらに、二軸スクリューにおいて、混練力を高めるためにニーディングパドルなどによる混練部を設けることは好ましく、その混練部を2箇所以上設けて、各混練部の間を通常のフィードスクリューとしたスクリュー形状にすることはさらに好ましい。
【0081】
PPSとPEIを混合する上で、PPSとPEIの混合組成物あるいは相溶化剤が添加されると、分散不良物が低減できて相溶性が高まることがある。
【0082】
その後、上記ペレタイズ作業により得られた、PPSとPEIからなるブレンドチップ、必要に応じてPPSや製膜後の回収原料や粒子を混合した原料を一定の割合で適宜混合して、180℃で3時間以上10mmHg以下の減圧で乾燥した後、300〜350℃の温度、好ましくは320〜340℃に加熱された押出機に投入する。その後、押出機を経た溶融ポリマーをフィルターに通過させた後、その溶融ポリマーをTダイの口金を用いてシート状に吐出する。このシート状物を表面温度20〜70℃の冷却ドラム上に密着させて冷却固化し、実質的に非晶で無配向状態の未延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを得る。
【0083】
次に、この未延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを二軸延伸し、二軸配向させる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることができる。
【0084】
ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を用いる。
【0085】
未延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを加熱ロール群で加熱し、延伸倍率は電気特性向上させる観点から長手方向(MD方向)に3〜5倍、好ましくは3.3〜4.7倍、さらに好ましくは3.5〜4.5倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸する(MD延伸)。延伸温度は、Tg(PPSのガラス転移温度)〜(Tg+40)℃、好ましくは(Tg+5)〜(Tg+20)℃の範囲である。その後20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。
【0086】
MD延伸に続く幅方向(TD方向)の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。延伸温度はTg〜(Tg+40)℃が好ましく、より好ましくは(Tg+5)〜(Tg+20)℃の範囲である。延伸倍率は電気特性向上させる観点から3〜5倍、好ましくは3.3〜4.7倍、さらに好ましくは3.5〜4.5倍の範囲であり、面積倍率(MD方向の倍率とTD方向の倍率の積)が11倍以上が好ましく、12倍以上がより好ましく、13倍以上が更に好ましい。面積倍率が25倍を越えるような延伸の場合は、製膜中にフィルムが破れやすくなる場合があり、またフィルムの伸度が30%未満となるなど好ましくない場合がある。
【0087】
次に、この延伸フィルムを緊張下で熱固定する。1段熱固定の場合の好ましい熱固定温度は170〜275℃、好ましくは200〜250℃であり、熱固定時間は1秒〜100秒間、好ましくは1秒〜60秒、より好ましくは1秒〜30秒である。より好ましい条件としては延伸後の熱固定を温度の異なる2段以上の工程で行い、その1段目の熱固定温度を(直前の延伸温度+5℃)〜240℃とし、後段の熱固定温度の最高値を(1段目の熱固定温度+5℃)〜(フィルムを構成するポリアリーレンスルフィドの融点−5℃)以下とすることが好ましく、更に好ましくは1段目の熱固定温度を(直前の延伸温度+5℃)〜220℃とし、後段の熱固定温度の最高値を(1段目の熱固定温度+30℃)〜(フィルムを構成するポリアリーレンスルフィドの融点−5℃)以下とすることが好ましい。多段熱固定の場合は1段目の熱固定を1秒〜100秒間、好ましくは1秒〜60秒、更に好ましくは1秒〜30秒とし、後段の最高温度での熱固定を1秒〜100秒間、好ましくは1秒〜60秒、更に好ましくは1秒〜30秒とし、熱固定全体の時間が200秒、好ましくは120秒、更に好ましくは60秒を越えないようにする。さらにこのフィルムを40〜275℃、より好ましくは延伸温度以上熱固定温度以下(多段熱固定の場合は最も高い熱固定温度)の温度ゾーンで幅方向に弛緩処理する。弛緩率は、0.1〜8%であることが好ましく、より好ましくは1.5〜6%、さらに好ましくは2〜5%の範囲である。弛緩処理は1秒〜100秒、好ましくは1秒〜60秒、更に好ましくは1秒〜30秒かけて上記温度範囲で行う。
【0088】
さらに、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、目的とする二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを得る。
本発明の金属化フィルムは、かかる二軸配向フィルムの少なくとも片面に金属層を形成したものであって、たとえば真空蒸着やスパッタリング法等の方法で金属薄膜を形成せしめたものを使用することができる。かかる金属としては、アルミニウム、亜鉛、錫、チタン、ニッケル、或いはそれらの合金などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
本発明のフィルムコンデンサーは、捲回法または積層法等の公知の方法で製造することができる。かかるコンデンサーの導電体としては、上記金属化フィルムを使用することができる。
次に本発明のコンデンサーの製造方法について述べる。コンデンサーの内部電極として金属箔が用いられる場合は金属箔と本発明の積層フィルムを箔はみだし捲回法や捲回途中でタブを挿入する方法などによって交互に重ね合わせて巻き取るなどして誘電体と電極を交互に重ね合わされ、かつ外部に電極が引き出せるような構造となるように捲回してコンデンサー素子あるいはコンデンサー母素子を得る。
【0090】
また、コンデンサーの内部電極として金属薄膜が用いられる場合は、まず上述した本発明のフィルムを金属化する。金属化の方法は蒸着による方法が好ましい。蒸着する金属はアルミニウムを主たる成分とする金属が好ましい。金属化する際、予め金属化する側のフィルム表面にコロナ放電処理、プラズマ処理などの処理によって金属薄膜とフィルムとの密着力を向上させることもできる。 金属層の抵抗値は0.5〜100Ω/□の範囲であることが好ましい。抵抗値が0.5Ω/□未満では、 セルフヒーリング性が悪化したり絶縁抵 抗が悪化する傾向が出てくるなど本来のコンデンサー特性が得られないことがある。100Ω/□を越えると直接等価抵抗が増大したり、誘電正接(tanδ)が悪化したりする傾向が出てくることがある。本発明の効果が発現しやすいことから1〜50Ω/□がより好ましく、2〜30Ω/□がさらに好ましい。
金属化する際、あるいは金属化後に対向電極が短絡しないようにテープマスク、オイルマージン、あるいはレーザービーム等により非金属化部分(いわゆるマージン)を設けるのが常法であるが全面に蒸着した後に放電、レーザー光線などを用いて非金属化帯を設けることもできる。その後、一方の端にマージン部分がくるように細幅のテープ状にスリットすることもある。
次にコンデンサー素子を製造する。捲回型コンデンサーを得る場合は、金属化フィルムを一方の端にマージン部分がくるように細幅のテープ状にスリットして2枚重ねて、あるいは両面金属化フィルムと非金属化フィルムを重ねて個々の素子を個別に巻いていくのが常法である。また、両面金属化フィルムにコーテイング法などで第2の誘電体を設けた1枚の複合フィルムを捲回する方法もある。
【0091】
積層型コンデンサーの場合は大径のドラム、あるいは平板に捲回してコンデンサー母素子を得る。 捲回型コンデンサーを製造する場合は、上記のようにして得たコンデンサー母素子をプレス成形するのが一般的である。このとき、100℃以上フィルムの融点以下の温度に加熱することもできる。その後、外部電極の取り付け工程(金属溶射、導電性樹脂等による)、必要なら樹脂または油含浸工程、リード付きタイプのコンデンサーとするときはリード線の取り付け工程、外装工程を経てコンデンサーを得ることができる。
積層型コンデンサーの場合は、大径のドラム、あるいは平板に捲回した母素子を熱処理する、あるいはリング等で締め付ける、あるいは平行平板等でプレスするなどフィルムの厚さ方向に圧力を加えて成形する。その際の温度範囲は常温からフィルムの融点以下である。この後、外部電極の取り付け工程(金属溶射、導電性樹脂による)、個々の素子切り出し工程、必要なら樹脂または油含浸工程を経てコンデンサーを得ることができる。
【0092】
また、本発明のコンデンサーの形状は上記いずれであっても良い。また、本発明のコンデンサーは交流および直流のいずれの用途にも展開可能である。
【0093】
本発明の特性値の測定方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
(1)分散相の平均分散径、アスペクト比
フィルムを(ア)長手方向に平行かつフィルム面に垂直な方向、(イ)幅方向に平行かつフィルム面に垂直な方向、(ウ)フィルム面に対して平行な方向に切断し、サンプルを超薄切片法で作成した。分散相のコントラストを明確にするために、オスミウム酸やルテニウム酸、リンタングステン酸などで染色してもよい。熱可塑性樹脂Aがポリアミドの場合では、リンタングステン酸による染色を用いる。切断面を透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、2万倍で写真を撮影した。得られた写真をイメージアナライザーに画像として取り込み、任意の100個の分散相を選択し、画像処理を行うことにより、次に示すようにしてそれぞれの分散相の大きさを求めた。(ア)の切断面に現れる各分散相のフィルム厚み方向の最大長さ(la)と長手方向の最大長さ(lb)、(イ)の切断面に現れる各分散相のフィルム厚さ方向の最大長さ(lc)と幅方向の最大長さ(ld)、(ウ)の切断面に現れる各分散相のフィルム長手方向の最大長さ(le)と幅方向の最大長さ(lf)を求めた。次いで、分散相の形状指数I=(lbの平均値+leの平均値)/2、形状指数J=(ldの平均値+lfの平均値)/2、形状指数K=(laの平均値+lcの平均値)/2とした場合、分散相の平均分散径を(I+J+K)/3とした。さらに、I、J、Kの中から、最大値を平均長径Lと最小値を平均短径Dを決定し、分散相のアスペクト比をL/Dとした。
(2)フィルムのガラス転移温度および融点
JIS K7121−1987に準じて測定した。示差走査熱量計セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上350℃で5分間溶融保持し、急冷固化した後、室温から昇温速度20℃/分で昇温した。なお、ガラス転移温度(Tg)は下記式により算出した。
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2
(3)ポリアリーレンスルフィドおよび熱可塑性樹脂Aのガラス転移温度および融解温度
上記(2)と同様にしてJIS K7121―1987に準じてポリアリーレンスルフィドおよび熱可塑性樹脂Aの原料チップのガラス転移温度を測定した。
【0094】
融解温度についても示差走査熱量計セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上で室温から340℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、340℃で5分間溶融保持し、急冷固化して5分間保持した後、室温から昇温速度20℃/分で昇温した。そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を融解温度(Tm)とした。
(4)フィルムの機械特性(破断伸度、破断強度、ヤング率)および伸度―応力曲線の微分係数
ASTM−D882−97に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて測定した。測定は下記の条件で行い、長手方向、幅方向それぞれについて試料数10にて実施した。破断伸度、破断強度、ヤング率は、引張り試験において、伸度を低い方から高い方に並べ最高・最低をそれぞれ2測定ずつ除いた残り6測定の破断伸度、破断強度、ヤング率の平均値とした。また、長手方向、幅方向それぞれについて伸度の順列の中央の2測定について、各々のデータサンプリング点(両端のサンプリング点を除く)について微分係数を求め、それぞれの方向について伸度2%と(破断点伸度(%)−5%)の区間における各測定の最低値の平均値をとり、両者比較して小さい方の値を最低微分係数γminとした。
【0095】
測定装置:オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”
試料サイズ:幅10mm×試長間50mm
引張り速度:300mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH
データのサンプリング間隔:伸度0.4%毎
微分係数γの計算方法
N番目の測定点の伸度(%)および応力(MPa)をそれぞれE(N)、S(N)とし、次式でN番目の測定点の微分係数γ(N)を計算する。
γ(N)={S(N+1)−S(N)}/{E(N+1)−E(N)}
微分係数の判定
C:γmin<0
B:0≦γmin<0.5
A:0.5≦γmin
(5)フィルムの絶縁破壊電圧および標準偏差
JIS C−2151−1990に規定された方法に準じて、環境温度23℃65%RHおよび150℃の条件で測定した。測定は、陰極に厚さ100μm、10cm角のアルミ箔電極、陽極に、径25mm、重さ500gの真鍮製の電極を用い、この間にフィルムを挟み、春日製高電圧直流電源を用いて100V/秒の速度で昇圧し、10mA以上流れたときに絶縁破壊したと見なした。この測定を30回測定し、フィルムの厚みで割り返した値の平均値をフィルムの絶縁破壊電圧とした。このとき30回測定した値における標準偏差を求めた。
【0096】
(6)溶融比抵抗
対向面積15cm(3cm×5cm)、電極間距離0.5cmの一対の銅製平行平板電極を挿入したガラス容器内に、被測定物質(フィルム)300gを入れた後、この容器を加熱したシリコンバス中に浸す。被測定物質を窒素ガス雰囲気下310℃で2時間溶融貯留し、直流高圧発生装置から両電極間に直流5KVの電圧を印加する。この時の電流計および電圧計の指示値及び電極面積、電極間距離により、次式に従い溶融比抵抗(ρ)を求めた。
ρ=V×S/(I×D)
ρ:溶融比抵抗(Ω・cm)
V:印加電圧 (V)
S:電極の面積(cm
I:測定電流 (A)
D:電極間距離(cm)
測定回数;3回測定し、平均値を算出する。
(7)溶融粘度
フローテスターCFT−500(島津製作所製)を用いて、口金長さを10mm、口金径を1.0mmとして、予熱時間を5分に設定して、310℃で測定した。
【0097】
剪断速度1000/sでの溶融粘度は、剪断速度500〜1000/sおよび1000〜2000/sでの溶融粘度をそれぞれn=2で測定し、両対数プロット上で直線近似して得られる相関線の剪断速度1000/sでの値とした。
(8)中心線平均粗さRa、最大高さRmax、突起個数
原子間力顕微鏡を用いて、下記の条件で場所を変えて20視野測定を行った。得られた画像について、三次元面粗さ(Roughness Analysis)を算出し、中心線平均粗さRa、最大突起高さRmaxを測定した。条件は下記のとおりであり、突起高さのしきい値を、50nmに設定してしきい値以上の高さを有する突起の個数を求め、計測した。
測定装置 :NanoScopeIII AFM(Digital Instruments社製)
カンチレバー:シリコン単結晶
走査モード :タッピングモード
走査範囲 :50μm□
走査速度 :0.5Hz
Peak Thresh ref(しきい値の基準): ZERO
Peak Threshold(ピーク高さのしきい値):50nm
(9)摩擦係数
フィルムを幅1/2インチのテープ状にスリットしたものテープ走行試験器を用いてステンレス製ガイドピン(表面粗度;Raで100nm)上を走行させる(走行速度250m/分、巻き付け角60°出側張力90g、走行回数1回)。このとき、入側の張力をTiとして、次の式、μk=2.20log(90/Ti)により求めた。
(10)フィルム厚み
23℃65%RHの雰囲気下でアンリツ(株)製電子マイクロメータ(K−312A型)を用いて、針圧30gにてフィルム厚みを測定した。
(11)レーザーラマン分光による配向度
レーザーラマン散乱法による顕微ラマンの測定条件は、次の通りである。
レーザーラマン装置: 近赤外ラマン分光装置(Photon Design社製)
マイクロプロ−ブ: 対物レンズ ×20
クロススリット :500μm
スポット径:5μm
光源: Nd−YAG(波長1064nm、出力:500mW)
回折格子: Spectrograph 300gr/mm
スリット:100μm
検出器: InGaAs(日本ローパー社製)
測定に用いるフィルムは、サンプリングしてエポキシ樹脂に包理後、ミクロト−ムでフィルム断面を出した。フィルム断面がフィルム長手方向または幅方向に平行なものを調整し、各試料の中央点を測定点として、長手方向および幅方向のそれぞれに対して5個の試料を測定して平均値をとった。測定は、フィルム面に平行な長手方向または幅方向の偏光での1570cm−1のラマンピ−ク強度(I)とフィルム面に垂直方向における偏光での740cm−1のラマンピ−ク強度(IND)の比I/INDを求めて、ポリアリ−レンスルフィドフィルムの配向パラメ−タ−とした。
(11)フィルム中の粒子の平均粒径
走査型電子顕微鏡の試料台に固定した測定フィルム表面に、スパッタリング装置を用いて真空度10−3Torr、電圧0.25kV、電流12.5mAの条件にて10分間、イオンエッチング処理を施す。次に同装置にて該表面に金スパッタを施し、走査型電子顕微鏡にて10000〜30000倍の写真を撮影する。フィルム中の粒子の平均粒径は、上記写真から100個以上n個の粒子の面積円相当径(Di)を求め、下記式により求める。ここで面積円相当径(Di)は個々の外接円の直径である。
【0098】
【数1】

【0099】
(12)フィルム中の粒子濃度フィルム中の粒子濃度
フィルムをα−クロロナフタレンに溶解し、熱時に濾過を行って粒子を分離し、フィルム全重量に対する比率(重量部)で表す。また、必要に応じて赤外分光法、蛍光X線法、SEM−XMAを利用して定量することもできる
(13)コンデンサー特性
(a)コンデンサーの作成
フィルムの片面に表面抵抗値が10Ω/□となるようにアルミニウムを蒸着した。その際、長手方向に走るマージン部を有するストライプ状に蒸着した(蒸着部の幅80mm、マージン部の幅10mmの繰り返し)。この蒸着フィルムの各蒸着部中央とマージン部の中央に刃を入れてスリットし、左もしくは右に5mmマージン部を有する全幅45mmのテープ状にして巻き取った。得られたテープを左マージンおよび右マージンのもの各1枚重ねずつ合わせ捲回し、静電容量5μFの捲回体を得た。その際、幅方向に蒸着部がマージン部より5mmはみ出すように2枚のフィルムをずらして捲回した。これらの捲回体から芯材を抜いて、そのまま200℃、25kg/cm2の温度、圧力で5分間プレスした。さらに両端面にメタリコンを溶射して外部電極とし、メタリコンにリード線を溶接してコンデンサー素子を得た。得られた素子を220℃で2時間熱処理した後、粉体エポキシ樹脂による外装を施し(平均外装厚み0.5mm)、コンデンサーを作成した。
(b)耐電圧の評価(ステップアップ直流絶縁破壊電圧テスト)
2KV電源(ハイデン研究所製:型式HD2K2P−PS)にコンデンサー素子のリード線を接続し、150℃でスタート電圧:400Vで100V毎ステップアップを行い各ステップが終了毎にLCRメータ(安藤電気株式会社製TYPE AG−4311)で1kHzの容量を測定した。また、各ステップでの保持時間は10分とした。
【0100】
フィルム各水準に対しコンデンサー素子12個でテストを行い、電圧印加前の容量に対し、容量が10%以上低下する直前のステップの印加電圧値の平均値を耐電圧とした。
(c)セルフヒール性(SH性)の評価
上記直流耐電圧評価において、容量が10%以上低下した直後のステップにおいて絶縁破壊を起こしているコンデンサー素子をSH性不良とし、不良率(%)を以下の基準により判断した。○が合格である。
○:不良率10%未満
△:不良率10%以上50%未満
X:不良率50%以上
(d)耐熱性
30個のコンデンサーを150℃のオーブン中に置き、各コンデンサーに破壊時に荷電電圧を停止するスイッチを装備し、直流電源発生器と並列に接続し250V/μmの電圧を1000時間印加し続けて、破壊したコンデンサー素子を耐電圧不良素子とし不良率(%)を以下の基準によって判断した。◎および○が合格である。
【0101】
◎:不良率2%未満
○:不良率2%以上10%未満
△:不良率10%以上20%未満
×:不良率20%以上
(e)金属層の抵抗値
4端子法により、100mmの電極間の金属層の抵抗を測定し、測定値を測定幅と電極間距離で除し、幅10mm、電極間距離10mm当たりの金属層の抵抗値を算出した。単位はΩ/□と表示する。
【実施例】
【0102】
(参考例1)ポリ−p−フェニレンスルフィド(PPS―1)の重合
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5重量%水硫化ナトリウム8,267.37g(70.00モル)、96重量%水酸化ナトリウム2,957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11,434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2,583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10,500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14,780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
【0103】
次に、p−ジクロロベンゼン10,235.46g(69.63モル)、NMP9,009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1,260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
【0104】
内容物を取り出し、26,300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31,900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56,000gのイオン交換水で3回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70,000gで洗浄、濾別した。70,000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPSは、溶融粘度が200Pa・s(310℃、剪断速度1,000/s)であり、ガラス転移温度が93℃、融点が285℃であった。
(参考例2)ポリ−p−フェニレンスルフィド(PPS―2)の重合
参考例の洗浄工程において酢酸水溶液を用いる代わりに酢酸カルシウム水溶液を用いること以外は参考例1と同様にしてPPS樹脂を作成した。得られたPPS樹脂は溶融粘度が210Pa・s(310℃、剪断速度1,000/s)であり、ガラス転移温度が93℃、融点が285℃であった。
(参考例3)ポリ−p−フェニレンスルフィド(PPS―3)の重合
参考例1の反応工程において238℃での反応時間を100分、270℃での反応時間を125分とし、酢酸水溶液を用いる代わりに酢酸カルシウム水溶液を用いること以外は参考例1と同様にしてPPS樹脂を作成した。得られたPPS樹脂は溶融粘度が250Pa・s(310℃、剪断速度1,000/s)であり、ガラス転移温度が93℃、融点が285℃であった。
(参考例4)粒子マスターチップの作成
参考例1で作成したPPS樹脂92重量部に対し、平均粒径0.55μmのシリカ球状微粒子(日本触媒社製“シーホスター”KEP−50)8重量部となるよう配合し、ベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、滞留時間30秒、スクリュー回転数300回転/分、330℃で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして粒子マスターチップ(粒子8%含有)を作製した。
(実施例1)
参考例1で作成したPPS―1樹脂を180℃で3時間1mmHgの減圧下で乾燥し、熱可塑性樹脂Aとしてポリエーテルイミド(ジーイープラスチックス社製 “ウルテム1010”)(PEI)を120℃で3時間1mmHgの減圧下で別々に乾燥した。上記PPS―1樹脂70重量部とPEI30重量部にさらに、γ−イソシアネ−トプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製、”KBE9007”)2.4重量部を乾燥空気下で均一配合後、ニーディングパドル混練部を3箇所設けたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数300回転/分、330℃で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてブレンドチップを作製した。
得られたPPS/PEI(70/30重量部)のブレンドチップ原料17重量部、参考例2で作成したPPS−2樹脂73重量部および粒子マスターチップ10重量部をドライブレンドし、180℃で7時間1mmHgの減圧下で乾燥した後、溶融部が320℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機に供給した。
【0105】
次いで押出機で溶融したポリマーを温度320℃に設定したフィルターで濾過し、温度320℃に設定したTダイの口金から溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、未延伸ポリフェニレスルフィドフィルムを作製した。
【0106】
この未延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを、加熱された複数のロール群からなる縦延伸機を用い、ロールの周速差を利用して、延伸温度99℃、延伸速度30000%/分でフィルムの縦方向に3.6倍の倍率で延伸した。その後、このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、延伸温度100℃、延伸速度1100%/分、延伸倍率3.7倍でフィルムの幅方向に延伸を行い、引き続いて温度240℃で15秒間の熱処理を行った後、180℃にコントロールされた冷却ゾーンで2秒間横方向に2%弛緩処理を行い室温まで冷却した後、フィルムエッジを除去し、巻き取り、厚み3.0μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを得た。
【0107】
得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果およびコンデンサー特性は、表3に示したとおりであり、この二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムは絶縁破壊電圧に優れ、コンデンサー特性も良好なものであった。
(実施例2、27、比較例1、2、4)
熱可塑性樹脂AのPEIの添加量、相溶化剤の種類および量、製膜条件、厚みを表1、2に示した通り変更した以外は、実施例1と同様にしてそれぞれ二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの特性についての測定、評価結果およびコンデンサー特性は各々表3、4に示したとおりであり、実施例2、27の二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムは絶縁破壊電圧に優れ、コンデンサー特性も良好なものであった。他方、比較例1、2の二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムは実施例1と同様にして製膜を試みたが、得られたフィルムの微分係数は降伏点以降負の値を取る部分があり、高温耐電圧が室温耐電圧に比べ低く、さらに素子のSH性に劣る結果となり、比較例4ではフィルム破れが多発して評価できるサンプルが採取できなかった。
(実施例3〜16、22〜26、比較例3)
熱可塑性樹脂AのPEIの添加量、相溶化剤の種類および量、厚みを表1に示した通り変更し、更に製膜条件においては幅方向に延伸後に引き続いて行う熱処理を表1、2に記載の2つの熱固定温度各々7.5秒ずつ実施した以外は、実施例1と同様にしてそれぞれ二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの特性についての測定、評価結果およびコンデンサー特性は、表3、4に示したとおりであり、実施例3〜16および22〜26いずれの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムも製膜条件によって優劣はあるものの何れも絶縁破壊電圧に優れ、コンデンサー特性も良好なものであった。他方、比較例3の二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムは実施例3と同様にして製膜を試みたが、素子のSH性に劣る結果となった。
(実施例17)
熱可塑性樹脂Aとしてポリアリレート(ユニチカ社製 “Uポリマー”U100)(PAR)を用いる以外は、実施例3と同様にして二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果およびコンデンサー特性は、表1に示したとおりであり、この二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムは絶縁破壊電圧に優れ、コンデンサー特性も良好なものであった。
(実施例18)
熱可塑性樹脂Aとしてポリフェニレンエーテル(三菱ガス化学社製 YPX−100A)(PPE)を用いる以外は、実施例3と同様にして二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果およびコンデンサー特性は、表1に示したとおりであり、この二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムは絶縁破壊電圧に優れ、コンデンサー特性も良好なものであった。
(実施例19)
熱可塑性樹脂Aとしてポリエーテルスルホン(アモコ社製 “RADEL”A−200A)(PES)を用いる以外は、実施例3と同様にして二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果およびコンデンサー特性は、表1に示したとおりであり、この二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムは絶縁破壊電圧に優れ、コンデンサー特性も良好なものであった。
(実施例20)
熱可塑性樹脂Aとしてポリスルホン(アモコ社製 “UDEL”P−1700)(PSF)を用いる以外は、実施例3と同様にして厚み3.5μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果およびコンデンサー特性は、表1に示したとおりであり、この二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムは絶縁破壊電圧に優れ、コンデンサー特性も良好なものであった。
(実施例21)
熱可塑性樹脂Aとしてナイロン610樹脂(東レ社製ナイロン樹脂“アミランCM2001”)(ポリアミド(PA))を用いる以外は、実施例3と同様にして二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果およびコンデンサー特性は、表1に示したとおりであり、この二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムは絶縁破壊電圧がやや低いが、コンデンサー特性としては十分高いレベルであり、実使用上問題ないレベルであった。
(実施例27、比較例6)
参考例2で作成したPPS―2樹脂を180℃で3時間1mmHgの減圧下で乾燥し、ニーディングパドル混練部を3箇所設けたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数300回転/分、330℃で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてブレンドチップを作製した。
得られたPPSチップ原料90重量部、参考例4で作成した粒子マスターチップ10重量部をドライブレンドし、180℃で7時間1mmHgの減圧下で乾燥した後、溶融部が320℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機に供給した。
【0108】
次いで押出機で溶融したポリマーを温度320℃に設定したフィルターで濾過し、温度320℃に設定したTダイの口金から溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、未延伸ポリフェニレスルフィドフィルムを作製した。表2の延伸条件以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果およびコンデンサー特性は、表4に示したとおりであり、この二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムは絶縁破壊電圧がやや低いが、コンデンサー特性としては十分高いレベルであり、実使用上問題ないレベルであった。一方、比較例6で実施例1と同様にして製膜を試みたが、耐熱性や素子のSH性に劣る結果となった。
(実施例28)
製膜条件において幅方向に延伸後に引き続いて行う熱処理を表2に記載の2つの熱固定温度各々7.5秒ずつ実施した以外は、実施例27と同様にしてそれぞれ二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの特性についての測定、評価結果およびコンデンサー特性は、表4に示したとおりであり、絶縁破壊電圧に優れ、コンデンサー特性も良好なものであった
(実施例29)
実施例28のPPS−2樹脂の代わりに、参考例1で作成したPPS−1樹脂10重量部および参考例2で作成したPPS−2樹脂を80重量部を用いたこと、および表2に示した製膜条件以外は実施例28と同様にして二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果およびコンデンサー特性は、表4に示したとおりであり、この二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムは絶縁破壊電圧がやや低いが、コンデンサー特性としては十分高いレベルであり、実使用上問題ないレベルであった。
(実施例30)
実施例28のPPS−2樹脂の代わりに、参考例3で作成したPPS−3を用いたこと、および表2に示した製膜条件以外は実施例28と同様にして二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果およびコンデンサー特性は、表4に示したとおりであり、この二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムは絶縁破壊電圧がやや低いが、コンデンサー特性としては十分高いレベルであり、実使用上問題ないレベルであった。
(実施例31)
参考例1で作成したPPS―1樹脂を180℃で3時間1mmHgの減圧下で乾燥し、熱可塑性樹脂Aとしてポリエーテルイミド(ジーイープラスチックス社製 “ウルテム1010”)(PEI)を120℃で3時間1mmHgの減圧下で別々に乾燥した。上記PPS―1樹脂70重量部とPEI30重量部にさらに、γ−イソシアネ−トプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製、”KBE9007”)2.4重量部を乾燥空気下で均一配合後、ニーディングパドル混練部を3箇所設けた真空ベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数300回転/分、330℃で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてブレンドチップを作製した。
得られたPPS/PEI(70/30重量部)のブレンドチップ原料17重量部、参考例2で作成したPPS−2樹脂73重量部および粒子マスターチップ10重量部をドライブレンドし、更に樹脂100重量部当たり0.3重量部の水を添加したものを、上記二軸混練押出機に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数300回転/分、330℃で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてブレンドチップを作製した。
これを原料として押し出す以外は実施例1と同様にして厚み3.0μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果およびコンデンサー特性は、表4に示したとおりであり、この二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムは絶縁破壊電圧に優れ、コンデンサー特性も良好なものであった。
(実施例32)
実施例31のブレンドチップ原料を押出し、製膜条件は実施例3と同様にして、厚み3.0μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの構成や特性についての測定、評価結果およびコンデンサー特性は、表4に示したとおりであり、この二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムは絶縁破壊電圧に優れ、コンデンサー特性も良好なものであった。
(実施例33)
参考例3で作成した粒子マスターチップのシリカ球状微粒子の平均粒径を1.2μmに変更し、フィルム中の粒子濃度を表4に示す濃度に変更した以外は、実施例32と同様にして厚み3.0μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。本実施例の二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムは絶縁破壊電圧に優れ、コンデンサー特性も良好なものであった。
(実施例34)
参考例3で作成した粒子マスターチップのシリカ球状微粒子を平均粒径1.2μmの炭酸カルシウム粉末粒子に変更し、フィルム中の粒子濃度を表4に示す濃度に変更した以外は、実施例32と同様にして厚み3.0μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。本実施例の二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムは絶縁破壊電圧に優れ、コンデンサー特性も良好なものであった。
(実施例35)
参考例3で作成した粒子マスターチップのシリカ球状微粒子を平均粒径1.0μmおよび平均粒径0.25μmの炭酸カルシウム粉末粒子(2粒子系)に変更し、フィルム中の粒子濃度を表4に示す濃度に変更した以外は、実施例32と同様にして厚み3.0μmの二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成した。本実施例の二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムは絶縁破壊電圧に優れ、コンデンサー特性も良好なものであった。
(比較例5)
実施例27のPPS−2樹脂の代わりに、参考例1で作成したPPS−1を用いたこと、および表2に示した製膜条件以外は実施例27と同様にして二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそれを使用したコンデンサーを作成したが、表4に示すとおり耐熱性や素子のSH性に劣る結果となった。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2】

【0111】
【表3】

【0112】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは、優れた耐熱性、寸法安定性、電気特性および平面性を有する二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを提供することであり、特にコンデンサー用として用いると高い電気特性と優れた自己回復性(SH性)を具備することにより、高温・高電圧で使用しても信頼性の高いコンデンサー用フィルムとして好適に使用することができる。さらに本発明の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを使用したコンデンサーは小型・高容量の高性能コンデンサーとして好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
23℃での絶縁破壊電圧V(23)(V/μm)と150℃での絶縁破壊電圧V(150)(V/μm)が下記(1)式及び下記(2)式を同時に満足することを特徴とする二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
V(150)/V(23)≧0.85 (1)
V(150)≧300 (2)
【請求項2】
フィルムの長手方向および幅方向における23℃での伸度−応力曲線において、伸度2%と(破断点伸度−5%)の区間における微分係数が長手方向、幅方向とも常に0以上である二軸配向ポリアリーレンフィルム。
【請求項3】
フィルムの長手方向および幅方向における23℃での破断伸度がいずれも30%以上80%未満であり、破断強度が230MPa以上500MPa以下である1または2に記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
【請求項4】
ポリアリーレンスルフィドと、ポリアリーレンスルフィドとは異なる他の熱可塑性樹脂Aとを含む熱可塑性樹脂からなるフィルムであって、熱可塑性樹脂Aが分散相を形成し、該分散相の平均分散径が50〜500nmであり、該フィルムのガラス転移温度が80℃以上95℃未満に観察され、かつ95℃以上130℃以下には観察されないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
【請求項5】
ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの含有量の和を100重量部としたときにポリアリーレンスルフィドの含有量が70〜99.5重量部、熱可塑性樹脂Aの含有量が0.5〜30重量部である請求項4に記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
【請求項6】
熱可塑性樹脂Aが非晶性樹脂であり、そのガラス転移温度が150℃以上かつポリアリーレンスルフィドの融点以下である請求項4または5に記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
【請求項7】
熱可塑性樹脂Aがポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンおよびポリスルホンからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーである請求項4〜6のいずれかに記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
【請求項8】
ポリアリーレンスルフィドと熱可塑性樹脂Aの和を100重量部として、エポキシ基、アミノ基、イソシアナート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する相溶化剤を0.05〜3重量部含む原材料を混練してなる樹脂組成物を溶融製膜してなる請求項4〜7のいずれかに記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
【請求項9】
ポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンスルフィドである請求項4に記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
【請求項10】
二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムがコンデンサー用である請求項1〜9のいずれかに記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドフィルムの製造方法であって、面積倍率が11倍以上になるよう長手方向および幅方向に延伸し、延伸後の熱固定を温度の異なる2段以上の工程で行う製造方法であって、その1段目の熱固定温度を(直前の延伸温度+5℃)以上240℃以下、後段の熱固定温度の最高値を(1段目の熱固定温度+20℃)以上(フィルムを構成するポリアリーレンスルフィドの融点−5℃)以下とするポリアリーレンスルフィドフィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの少なくとも片面に金属層を形成してなる金属化フィルム。
【請求項13】
請求項12に記載の金属化フィルムを捲回あるいは積層してなることを特徴とするコンデンサー。

【公開番号】特開2008−280508(P2008−280508A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289291(P2007−289291)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】