説明

二輪車両用制御装置

【課題】ユーザが二輪車両を使用する場合の利便性を高めることのできる二輪車両用制御装置を提供する。
【解決手段】切替スイッチ58を始動発電機36の中性点N側に接続状態としてかつ、インバータIVの各スイッチング素子Sjp(j=u,v,w)、Sjn(j=u,v,w)を操作することで昇圧チョッパ回路を形成し、バッテリ56に対しコンデンサ54の電圧を昇圧する。そして、コンデンサ54の昇圧された電圧を始動発電機36に印加して始動発電機36を回転駆動させることで、始動発電機36からクランク軸30に回転エネルギを付与する中性点駆動処理を行う。そして、中性点駆動処理が実行される場合、その旨をユーザに報知する処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車両の内燃機関等に設けられる始動発電機について、該始動発電機等を制御対象とする制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に見られるように、スタータ機能及び発電機能を有する3相回転機(第1の回転機)と、車載主機としての3相回転機(第2の回転機)と、車載バッテリに電気的に接続されてかつ第1,第2の回転機の各相の固定子巻線に流れる電流をそれぞれ制御する第1,第2のインバータと、第1の回転機の固定子巻線の中性点及びバッテリの正極側を接続する電気経路を開閉するスイッチとを備えるハイブリッド4輪車両が知られている。
【0003】
詳しくは、この車両では、第1の回転機を使用せず、第2の回転機を使用する場合にスイッチを閉状態とし、第1の回転機の固定子巻線及び第1のインバータを昇圧回路として用いてバッテリ電圧を昇圧させる。そして、昇圧された電圧を第2の回転機に印加することで第2の回転機を回転駆動させる。これにより、第2の回転機の出力トルクの増大を図っている。
【0004】
なお、回転機が備える固定子巻線と回転機を制御するインバータとを昇圧回路として用いる技術としては、例えば、下記特許文献2,3に記載されているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4211806号公報
【特許文献2】特許第3223842号公報
【特許文献3】特許第3219039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本発明者らは、車載主機としての内燃機関の燃費低減効果を高めること等を目的として、車載回転機の固定子巻線及びインバータを昇圧回路として用いる上述した技術を二輪車両(例えばスクータ)に適用することを考えた。ここで、本発明者らは、上記技術を二輪車両に適用した場合、ユーザが二輪車両を使用するときの利便性に関して種々の不都合が発生するとの知見を得た。
【0007】
本発明は、こうした不都合を解決するためになされたものであり、その目的は、ユーザが二輪車両を使用する場合の利便性を高めることのできる二輪車両用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0009】
請求項1記載の発明は、車載主機としての内燃機関と、該内燃機関の出力軸と動力伝達を行う始動発電機と、該始動発電機及び車載蓄電池の間に介在してかつ該始動発電機を制御するインバータとを備える二輪車両に適用され、前記インバータには、前記始動発電機の各相に対応する高電位側スイッチング素子及び低電位側スイッチング素子の直列接続体と、該直列接続体において前記低電位側スイッチング素子から前記高電位側スイッチング素子へと向かう方向にのみ電流の流れを許容すべく前記スイッチング素子に並列接続される整流手段とが備えられ、前記高電位側スイッチング素子及び前記低電位側スイッチング素子の直列接続体の接続点のそれぞれには、前記始動発電機の各相の固定子巻線の一端が接続され、前記インバータの入力端子間に接続されてかつ前記蓄電池とは異なる蓄電手段、前記固定子巻線、前記スイッチング素子及び前記整流手段を昇圧回路とし、該昇圧回路が備える前記スイッチング素子の開閉操作によって前記蓄電池の電圧を昇圧する昇圧手段と、前記昇圧手段によって前記蓄電池の電圧を昇圧しつつ、該昇圧された電圧を前記始動発電機に印加して該始動発電機を回転駆動させることで、該始動発電機から前記出力軸に回転エネルギを付与する中性点駆動処理を行うトルクアシスト手段と、前記中性点駆動処理の実行の有無に関する情報をユーザに報知する報知手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記発明では、始動発電機の固定子巻線、スイッチング素子、整流手段及び蓄電手段を備えて構成される昇圧回路を形成させる。そして、昇圧回路が備えるスイッチング素子の開閉操作によって蓄電池の電圧を昇圧しつつ、昇圧された電圧を始動発電機に印加して始動発電機を回転駆動させることで、始動発電機から内燃機関の出力軸に回転エネルギを付与する中性点駆動処理を行う。昇圧された電圧を始動発電機に印加すると、始動発電機を流れる電流が増大するため、始動発電機の出力トルクを増大させることができる。こうした中性点駆動処理によれば、内燃機関の燃焼の開始回転速度を高める方向にアシストすることができ、内燃機関の燃費低減効果を高めること等が可能となる。
【0011】
ところで、上記中性点駆動処理が実行される旨をユーザが認識しない状態でこの処理が実行されたり、中性点駆動処理の実行をユーザが期待している状態でこの処理が実行されなかったりする場合、ユーザが車両を使用するときの利便性に関して種々の不都合が生じることが懸念される。この点、上記発明では、報知手段を備えることで、中性点駆動処理の実行の有無に関する情報をユーザに報知する。すなわち、中性点駆動処理が実行される旨をユーザに認識させつつこの処理を実行したり、中性点駆動処理の実行を期待しているユーザに対してこの処理が実行されない旨を認識させたりする。これにより、中性点駆動処理の実行によって例えば燃費低減効果の高い内燃機関の運転状態にあることをユーザに認識させたり、中性点駆動処理の実行に合わせた二輪車両の操作を促したり、更にはユーザに違和感を与えることを回避したりできる等、ユーザが車両を使用する場合の利便性を高めることができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記トルクアシスト手段は、前記内燃機関の燃焼の開始が指示される場合に対応する前記中性点駆動処理である始動アシスト処理を行い、前記報知手段は、前記始動アシスト処理が実行される場合、その旨をユーザに報知することを特徴とする。
【0013】
始動発電機によって出力軸に初期回転を付与しつつ内燃機関への燃料供給を開始させ、出力軸の回転速度を燃焼が安定する所定回転速度(アイドル回転速度)まで上昇させることで、内燃機関の始動が完了する。ここで、内燃機関の始動を完了させる場合に要する内燃機関の燃料供給量は通常、内燃機関を定常運転させる場合に要する内燃機関の燃料供給量と比較して多くなる傾向にある。ここで、上記発明では、内燃機関の燃焼の開始が指示される場合に対応する中性点駆動処理(始動アシスト処理)を行う。このため、内燃機関の始動時において、出力軸の回転速度をアイドル回転速度まで上昇させるために要するエネルギのうち始動発電機の回転駆動によって出力軸に付与可能な回転エネルギの割合を高めることができる。これにより、内燃機関の始動時における燃費低減効果を高めることができる。
【0014】
こうした構成を前提して、上記発明では、始動アシスト処理が実行される場合、その旨をユーザに報知する。このため、燃費低減効果の高い内燃機関の始動手法によって内燃機関が始動されたことをユーザに認識させることができる。これにより、燃費低減効果に対するユーザの意識を高めることなどが期待できる。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記二輪車両には、前記内燃機関の出力トルクを指示すべくユーザの操作対象とされるアクセルグリップが備えられ、所定の停止条件が成立する場合に前記内燃機関を自動停止させ、その後、前記アクセルグリップが操作されるとの条件を含む所定の再始動条件が成立する場合に前記内燃機関を再始動させるアイドルストップ制御手段を更に備え、前記始動アシスト処理は、前記アイドルストップ制御手段によって前記内燃機関を再始動させる場合に対応する前記中性点駆動処理であることを特徴とする。
【0016】
上記発明では、アイドルストップ制御手段による内燃機関の再始動時において始動アシスト処理を行うことで、内燃機関の始動時における燃費低減効果を高めている。
【0017】
ところで、ユーザは、内燃機関が自動停止された状態から二輪車両の走行を開始させる場合における自身のアクセルグリップの操作態様と、この操作態様に基づく車両の加速態様との関係を自身の過去の走行経験から感覚的に把握している。ここで、ユーザの普段のアクセルグリップの操作態様に従ってアクセルグリップが操作される状況下において始動アシスト処理が実行されると、二輪車両の実際の加速態様がユーザの想定したものからずれることで、ユーザに不安感を与えるおそれがある。特に、二輪車両においては、例えば4輪車両(乗用車)と比較してユーザの体感速度が高くなる傾向にあることから、ユーザに与える不安感が顕著となるおそれがある。
【0018】
この点、上記発明では、内燃機関を再始動させる状況下において始動アシスト処理が実行される場合、その旨をユーザに報知する。このため、内燃機関の再始動時に始動アシスト処理が実行されることに起因して、ユーザに不安感を与える事態を好適に回避することができる。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記二輪車両には、前記内燃機関の出力トルクを指示すべくユーザの操作対象とされるアクセルグリップが備えられ、前記アクセルグリップの操作状態に基づき、前記二輪車両の加速指示がなされるか否かを判断する判断手段を更に備え、前記トルクアシスト手段は、前記加速指示がなされると判断される場合に対応する前記中性点駆動処理である加速アシスト処理を行い、前記報知手段は、前記加速アシスト処理が実行される場合、その旨をユーザに報知することを特徴とする。
【0020】
上記発明では、アクセルグリップの操作状態に基づき二輪車両の加速指示がなされると判断される場合に対応する中性点駆動処理(加速アシスト処理)を行うこととしている。これにより、二輪車両の加速性能を維持しつつ、二輪車両の加速時における燃料増量を低減させることができる。
【0021】
ところで、ユーザは、二輪車両を加速させる場合における自身のアクセルグリップの操作態様と、この操作態様に基づく車両の加速態様との関係を自身の過去の走行経験から感覚的に把握している。ここで、ユーザの普段のアクセルグリップの操作態様に従ってアクセルグリップが操作される状況下において加速アシスト処理が実行されると、二輪車両の実際の加速態様がユーザの想定したものからずれることで、ユーザに不安感を与えるおそれがある。特に、二輪車両においては、例えば4輪車両(乗用車)と比較してユーザの体感速度が高くなる傾向にあることから、ユーザに与える不安感が顕著となるおそれがある。
【0022】
この点、上記発明では、加速アシスト処理が実行される場合、その旨をユーザに報知する。このため、加速アシスト処理が実行されることに起因して、ユーザに不安感を与える事態を好適に回避することができる。
【0023】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記トルクアシスト手段は、前記内燃機関の燃焼の開始が指示される場合に対応する前記中性点駆動処理である始動アシスト処理を行い、前記報知手段は、前記始動アシスト処理が実行される旨を前記内燃機関の燃焼開始指示に先立ってユーザに報知してかつ、前記加速アシスト処理の実行と同時に該加速アシスト処理が実行される旨をユーザに報知し、前記加速アシスト処理が実行される場合、前記始動アシスト処理が実行される場合よりも前記その旨の報知の度合いを大きくする報知度合い増大手段を更に備えることを特徴とする。
【0024】
上記発明では、上記始動アシスト処理がその後実行されるか否かの予測が比較的容易であることに鑑み、始動アシスト処理が実行される旨を内燃機関の燃焼開始指示に先立ってユーザに報知することとしている。これにより、始動アシスト処理の実行をユーザに的確に認識させることが可能となる。一方、二輪車両の加速指示がなされる状況を予測しにくいことから、上記発明では、加速アシスト処理の実行と同時にこの処理が実行される旨をユーザに報知することとしている。
【0025】
ここで、上記した報知手法を採用すると、加速アシスト処理の実行に先立ってこの処理が実行される旨をユーザに報知できないことから、始動アシスト処理の報知と比較して、加速アシスト処理が実行される旨をユーザに的確に認識させることができないおそれがある。この点、上記発明では、報知度合い増大手段を備えることで、加速アシスト処理が実行される場合、上記態様にて加速アシスト処理が実行される旨の報知の度合いを大きくする。これにより、加速アシスト処理を実行する旨の信号が始動アシスト処理を実行する旨の信号と比較してユーザにより迅速に知覚されやすいため、加速アシスト処理が実行される旨をユーザに的確に報知することができる。
【0026】
請求項6記載の発明は、請求項4又は5記載の発明において、前記アクセルグリップが操作されていなくてかつ前記出力軸の回転速度が第1の規定速度以上であると判断される場合、前記内燃機関に対する燃料供給を停止し、その後、前記出力軸の回転速度が前記第1の規定速度よりも低い第2の回転速度以下になると判断される場合、前記内燃機関に対する燃料供給を再開する燃料カット制御手段を更に備え、前記トルクアシスト手段は、前記燃料カット制御手段によって前記燃料供給が再開される場合に対応する前記中性点駆動処理である復帰アシスト処理を行い、前記報知手段は、前記燃料カット制御手段によって前記燃料供給が停止される状況において前記復帰アシスト処理が実行される旨をユーザに報知してかつ、前記加速アシスト処理の実行と同時に該加速アシスト処理が実行される旨をユーザに報知し、前記加速アシスト処理が実行される場合、前記復帰アシスト処理が実行される場合よりも前記その旨の報知の度合いを大きくする報知度合い増大手段を更に備えることを特徴とする。
【0027】
上記発明では、内燃機関の燃費低減効果を高めることを目的として、上記復帰アシスト処理を行うこととしている。この復帰アシスト処理がその後実行されるか否かの予測が比較的容易であることに鑑み、上記発明では、燃料カット制御手段によって内燃機関に対する燃料供給が停止される状況において復帰アシスト処理が実行される旨をユーザに報知することとしている。すなわち、復帰アシスト処理が実行される旨を復帰アシスト処理の実行に先立ってユーザに報知することとしている。これにより、復帰アシスト処理の実行をユーザに的確に認識させることが可能となる。
【0028】
一方、二輪車両の加速指示がなされる状況を予測しにくいことから、上記発明では、加速アシスト処理の実行と同時にこの処理が実行される旨をユーザに報知することとしている。
【0029】
ここで、上記した報知手法を採用すると、加速アシスト処理の実行に先立ってこの処理が実行される旨をユーザに報知できないことから、復帰アシスト処理の報知と比較して、加速アシスト処理が実行される旨をユーザに的確に認識させることができないおそれがある。この点、上記発明では、報知度合い増大手段を備えることで、加速アシスト処理が実行される場合、上記態様にて加速アシスト処理が実行される旨の報知の度合いを大きくする。これにより、加速アシスト処理を実行する旨の信号が復帰アシスト処理を実行する旨の信号と比較してユーザにより迅速に知覚されやすいため、加速アシスト処理が実行される旨をユーザに的確に報知することができる。
【0030】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記二輪車両には、前記内燃機関の出力トルクを指示すべくユーザの操作対象とされるアクセルグリップが備えられ、所定の停止条件が成立する場合に前記内燃機関を自動停止させ、その後、前記アクセルグリップが操作されるとの条件を含む所定の再始動条件が成立する場合に前記内燃機関を再始動させるアイドルストップ制御手段と、前記アイドルストップ制御手段によって前記内燃機関が自動停止された後、前記出力軸の回転速度が0になる前に前記再始動条件が成立するか否かを判断する自動停止直後判断手段とを更に備え、前記トルクアシスト手段は、前記自動停止直後判断手段によって前記再始動条件が成立すると判断される場合に対応する前記中性点駆動処理である自動停止直後アシスト処理を行い、前記報知手段は、前記自動停止直後アシスト処理が実行される場合、その旨をユーザに報知することを特徴とする。
【0031】
上記発明では、内燃機関の燃費低減効果を高めるべく、アイドルストップ制御手段を備えている。ここで、アイドルストップ制御手段によって内燃機関が自動停止されたものの、その直後にユーザによってアクセルグリップが操作される場合には、内燃機関が再始動されることがある。こうした状況下における内燃機関の燃費低減効果等を高めるべく、上記発明では、内燃機関が自動停止された後、出力軸の回転速度が0になる前に再始動条件が成立する場合に中性点駆動処理(自動停止直後アシスト処理)を行うこととしている。
【0032】
ところで、ユーザは、二輪車両の走行を開始させる場合における自身のアクセルグリップの操作態様と、この操作態様に基づく車両の加速態様との関係を自身の過去の走行経験から感覚的に把握している。ここで、ユーザの普段のアクセルグリップの操作態様に従ってアクセルグリップが操作される状況下において自動停止直後アシスト処理が実行されると、内燃機関の自動停止状態から二輪車両を加速させる状況下における二輪車両の実際の加速態様がユーザの想定したものからずれることで、ユーザに不安感を与えるおそれがある。特に、二輪車両においては、例えば4輪車両(乗用車)と比較してユーザの体感速度が高くなる傾向にあることから、ユーザに与える不安感が顕著となるおそれがある。
【0033】
この点、上記発明では、自動停止直後アシスト処理が実行される場合、その旨をユーザに報知する。このため、内燃機関の再始動時に自動停止直後アシスト処理が実行されることに起因してユーザに不安感を与える事態を好適に回避することができる。
【0034】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の発明において、前記トルクアシスト手段は、前記出力軸の回転速度が0となる状況下において前記内燃機関の燃焼の開始が指示される場合に対応する前記中性点駆動処理である始動アシスト処理を行い、前記報知手段は、前記始動アシスト処理が実行される旨を前記内燃機関の燃焼開始指示に先立ってユーザに報知してかつ、前記自動停止直後アシスト処理の実行と同時に該自動停止直後アシスト処理が実行される旨をユーザに報知し、前記自動停止直後アシスト処理が実行される場合、前記始動アシスト処理が実行される場合よりも前記その旨の報知の度合いを大きくする報知度合い増大手段を更に備えることを特徴とする。
【0035】
上記発明では、上記始動アシスト処理がその後実行されるか否かの予測が比較的容易であることに鑑み、始動アシスト処理が実行される旨を内燃機関の燃焼開始指示に先立ってユーザに報知することとしている。これにより、始動アシスト処理の実行をユーザに的確に認識させることが可能となる。一方、内燃機関の自動停止直後にユーザによってアクセルグリップが操作されるか否かを予測しにくいことから、上記発明では、自動停止直後アシスト処理の実行と同時にこの処理が実行される旨をユーザに報知することとしている。
【0036】
ここで、上記した報知手法を採用すると、自動停止直後アシスト処理の実行に先立ってこの処理が実行される旨をユーザに報知できないことから、始動アシスト処理の報知と比較して、自動停止直後アシスト処理が実行される旨をユーザに的確に認識させることができないおそれがある。この点、上記発明では、報知度合い増大手段を備えることで、自動停止直後アシスト処理が実行される場合、上記態様にて自動停止直後アシスト処理が実行される旨の報知の度合いを大きくする。これにより、自動停止直後アシスト処理を実行する旨の信号が始動アシスト処理を実行する旨の信号と比較してユーザにより迅速に知覚されやすいため、自動停止直後アシスト処理が実行される旨をユーザに的確に報知することができる。
【0037】
請求項9記載の発明は、請求項7又は8記載の発明において、前記アクセルグリップが操作されていなくてかつ前記出力軸の回転速度が第1の規定速度以上であると判断される場合、前記内燃機関に対する燃料供給を停止し、その後、前記出力軸の回転速度が前記第1の規定速度よりも低い第2の回転速度以下になると判断される場合、前記内燃機関に対する燃料供給を再開する燃料カット制御手段を更に備え、前記トルクアシスト手段は、前記燃料カット制御手段によって前記燃料供給が再開される場合に対応する前記中性点駆動処理である復帰アシスト処理を行い、前記報知手段は、前記燃料カット制御手段によって前記燃料供給が停止される状況において前記復帰アシスト処理が実行される旨をユーザに報知してかつ、前記自動停止直後アシスト処理の実行と同時に該自動停止直後アシスト処理が実行される旨をユーザに報知し、前記自動停止直後アシスト処理が実行される場合、前記復帰アシスト処理が実行される場合よりも前記その旨の報知の度合いを大きくする報知度合い増大手段を更に備えることを特徴とする。
【0038】
上記発明では、上記復帰アシスト処理がその後実行されるか否かの予測が比較的容易であることに鑑み、燃料カット制御手段によって内燃機関に対する燃料供給が停止される状況において復帰アシスト処理が実行される旨をユーザに報知することとしている。すなわち、復帰アシスト処理の実行に先立ってこの処理が実行される旨をユーザに報知することとしている。これにより、復帰アシスト処理の実行をユーザに的確に認識させることが可能となる。
【0039】
一方、内燃機関の自動停止直後にユーザによってアクセルグリップが操作されるか否かを予測しにくいことから、上記発明では、自動停止直後アシスト処理の実行と同時にこの処理が実行される旨をユーザに報知することとしている。
【0040】
ここで、上記した報知手法を採用すると、自動停止直後アシスト処理の実行に先立ってこの処理が実行される旨をユーザに報知できないことから、復帰アシスト処理の報知と比較して、自動停止直後アシスト処理が実行される旨をユーザに的確に認識させることができないおそれがある。この点、上記発明では、報知度合い増大手段を備えることで、自動停止直後アシスト処理が実行される場合、上記態様にて自動停止直後アシスト処理が実行される旨の報知の度合いを大きくする。これにより、自動停止直後アシスト処理を実行する旨の信号が復帰アシスト処理を実行する旨の信号と比較してユーザにより迅速に知覚されやすいため、自動停止直後アシスト処理が実行される旨をユーザに的確に報知することができる。
【0041】
請求項10記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の発明において、前記二輪車両には、前記内燃機関の出力トルクを指示すべくユーザの操作対象とされるアクセルグリップが備えられ、前記アクセルグリップが操作されていなくてかつ前記出力軸の回転速度が第1の規定速度以上であると判断される場合、前記内燃機関に対する燃料供給を停止し、その後、前記出力軸の回転速度が前記第1の規定速度よりも低い第2の回転速度以下になると判断される場合、前記内燃機関に対する燃料供給を再開する燃料カット制御手段を更に備え、前記トルクアシスト手段は、前記燃料カット制御手段によって前記燃料供給が再開される場合に対応する前記中性点駆動処理である復帰アシスト処理を行い、前記報知手段は、前記復帰アシスト処理が実行される場合、その旨をユーザに報知することを特徴とする。
【0042】
上記発明では、燃料カット制御手段によって内燃機関に対する燃料供給が再開される場合に対応する中性点駆動処理(復帰アシスト処理)を行うこととしている。このため、内燃機関の燃焼を再開させる場合、蓄電池から始動発電機に電力を直接供給して始動発電機から出力軸に回転エネルギを供給する場合と比較して、始動発電機の出力トルクを増大させることができるため、上記第2の回転速度を低く設定することができる。これにより、燃料カット制御手段による内燃機関に対する燃料供給停止期間を長くすることができ、ひいては内燃機関の燃費低減効果を高めることができる。
【0043】
こうした構成を前提して、上記発明では、復帰アシスト処理が実行される場合、その旨をユーザに報知する。これにより、燃費低減効果の高い内燃機関の始動手法によって内燃機関が始動されたことをユーザに認識させることができ、ひいては燃費低減効果に対するユーザの意識を高めることなどが期待できる。
【0044】
請求項11記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載の発明において、前記トルクアシスト手段は、前記蓄電池の充電率が規定値以下であることに基づき、前記中性点駆動処理の実行を禁止する禁止手段を備え、前記報知手段は、前記禁止手段によって前記中性点駆動処理の実行が禁止される場合、その旨をユーザに報知する処理を行うことを特徴とする。
【0045】
蓄電池の充電率が低いと、中性点駆動処理による始動発電機の出力トルクの増大度合いが小さくなることから、内燃機関の燃費低減効果等、中性点駆動処理によって得られる効果が小さくなる。このため、上記発明では、蓄電池の充電率が規定値以下であることに基づき、中性点駆動処理の実行を禁止している。
【0046】
ここで、禁止手段によって中性点駆動処理が禁止される場合、中性点駆動処理が実行される旨がユーザに報知されないことから、車両用制御装置の報知機能が故障したとユーザに思わせる等、ユーザに違和感を与えるおそれがある。
【0047】
この点、上記発明では、禁止手段によって中性点駆動処理の実行が禁止される場合、その旨をユーザに報知する処理を行う。これにより、ユーザに違和感を与える事態を回避することができる。
【0048】
請求項12記載の発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の発明において、所定の停止条件が成立する場合に前記内燃機関を自動停止させ、その後、所定の再始動条件が成立する場合に前記内燃機関を再始動させるアイドルストップ制御手段を更に備え、前記二輪車両には、前記アイドルストップ制御手段によって前記内燃機関が自動停止されている旨をユーザに報知する表示灯が備えられ、前記報知手段は、前記アイドルストップ制御手段によって前記自動停止されている旨をユーザに報知する場合の前記表示灯の表示態様とは異なる表示態様で該表示灯に表示させることで、前記中性点駆動処理が実行される旨をユーザに報知することを特徴とする。
【0049】
上記発明では、上記態様にて中性点駆動処理が実行される旨をユーザに報知している。このため、アイドルストップ制御手段によって内燃機関が自動停止されている旨を表示する表示灯を流用して、中性点駆動処理が実行される旨をユーザに報知することができる。これにより、車載部品の増大を好適に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】一実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】一実施形態にかかるバッテリ電圧の昇圧手法の概要を示す図。
【図3】一実施形態にかかる中性点駆動処理の効果を示す図。
【図4】一実施形態にかかる始動アシスト処理の概要を示す図。
【図5】一実施形態にかかる加速アシスト処理の概要を示す図。
【図6】一実施形態にかかる燃料カット復帰アシスト処理の概要を示す図。
【図7】一実施形態にかかるエンジン再始動時のアシスト処理の概要を示す図。
【図8】一実施形態にかかるエンジン初回始動時におけるアシスト報知処理の手順を示す流れ図。
【図9】一実施形態にかかるメータによるユーザへの報知態様の概要を示す図。
【図10】一実施形態にかかる加速時におけるアシスト報知処理の手順を示す流れ図。
【図11】一実施形態にかかる燃料カット復帰時のアシスト報知処理の手順を示す流れ図。
【図12】一実施形態にかかるエンジン再始動時におけるアシスト報知処理の手順を示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明にかかる制御装置を単気筒エンジンが搭載されたスクータに適用した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0052】
図1に、本実施形態にかかるシステムの全体構成を示す。
【0053】
図示されるエンジン10は、4ストロークエンジンである。すなわち、このエンジン10は、吸気・圧縮・膨張・排気の4行程を1燃焼サイクル(720℃A)として運転される。
【0054】
エンジン10の吸気通路12には、スロットルバルブ14が設けられている。スロットルバルブ14は、その開度(スロットル開度)が調節されることで、エンジン10の燃焼室16に供給される空気量(吸気量)を調節するための部材である。上記スロットル開度は、ユーザがエンジン10の出力トルクを指示するための操作部材であるアクセルグリップ18の操作に応じて調節される。詳しくは、アクセルグリップ18の操作量が大きいほどスロットル開度が大きくなる傾向にある。なお、本実施形態では、スロットル開度調節機構として、スロットルバルブ14とアクセルグリップ18とがワイヤ等によって機械的に接続されるものを採用している。また、スロットルバルブ14付近には、スロットル開度を検出するスロットルセンサ20が設けられている。
【0055】
吸気通路12のうち、スロットルバルブ14の下流側の吸気ポート近傍には、燃料噴射弁22が設けられている。詳しくは、燃料噴射弁22は、図示しない燃料タンクから供給される燃料を吸気ポート付近に噴射供給する電磁駆動式のポート噴射弁である。燃料噴射弁22から噴射供給された燃料と吸気との混合気は、吸気バルブ24の開動作によって燃焼室16に供給される。
【0056】
燃焼室16に供給された混合気は、燃焼室16に突出する点火プラグ26の放電火花によって着火され、燃焼に供される。混合気の燃焼によって発生するエネルギは、ピストン28を介してエンジン10の出力軸(クランク軸30)の回転エネルギとして取り出される。なお、燃焼に供された混合気は、排気バルブ32の開動作によって、排気として排気通路34に排出される。
【0057】
上記クランク軸30には、始動発電機36のロータ38が接続されている。始動発電機36は、エンジン10始動時にクランク軸30に初期回転を付与する(クランキングを行う)機能、エンジン10が駆動される状況下においてクランク軸30の回転エネルギにより発電する機能、及び後述するトルクアシスト機能を有する。
【0058】
詳しくは、始動発電機36は、永久磁石同期モータ(例えば、SPMSMやIPMSM)であり、U相コイル40u、V相コイル40v及びW相コイル40wを有するステータと、永久磁石を有する上記ロータ38と、各相に対応して設けられたホール素子42u,42v,42wとを備えて構成されている。これらコイル40u,40v,40wは、それぞれの一端同士が中性点Nで接続されることによりY結線されている。なお、ホール素子42u,42v,42wは、ロータ38のN極が近づくことで論理「H」の信号を出力し、N極との距離が所定以上となる場合、論理「L」の信号を出力する。
【0059】
クランク軸30及びロータ38のそれぞれは、変速機構44を介して駆動輪46に機械的に接続されている。詳しくは、変速機構44は、クランク軸30の回転速度を変速比に見合った回転速度に変換する変速装置(自動変速装置)と、遠心式クラッチとを備えて構成されている。なお、本実施形態では、ロータ38がクランク軸30の同軸上に配置されてかつ、ロータ38とクランク軸30とが直結されている。このため、クランク軸30の回転速度(エンジン回転速度)とロータ38の回転速度(モータ回転速度)とは同一となる。
【0060】
スクータには、スクータの運転状態を表示する運転状態表示装置としてのメータ48が備えられている。詳しくは、メータ48は、スクータの走行速度を表示する車速表示部48a、図示しない方向指示器の操作状態を表示する一対の方向指示表示部48b、エンジン10を冷却する冷却水温度が過度に高くなる場合に点灯される警告灯48c、燃料残量を表示する燃料表示部48d、及び後述するアイドルストップ制御の実行の有無を表示するIS表示部48e等を備えて構成されている。
【0061】
電子制御装置(以下、ECU50)は、エンジン10、始動発電機36及びメータ48を操作対象とし、インバータIVと、マイクロコンピュータ(マイコン52)とを備えて構成されている。
【0062】
上記インバータIVの一対の入力端子には、蓄電手段としてのコンデンサ54が並列接続されている。コンデンサ54は、インバータIVの入力電圧の変動を抑制する機能を有する。
【0063】
また、インバータIVの一対の入力端子には、バッテリ56が並列接続されている。詳しくは、バッテリ56の正極側は、メインリレー57及び切替スイッチ58(例えば電磁リレー)を介して上記入力端子のうち一方(正極端子)に接続され、バッテリ56の負極側は、上記入力端子のうち他方(負極端子)に接続されている。本実施形態では、バッテリ56として、所定電圧(例えば12V)の鉛蓄電池を用いている。なお、バッテリ56付近には、バッテリ56の電圧を検出する電圧センサ60が備えられている。また、バッテリ56の負極側は接地されている。
【0064】
上記切替スイッチ58は、インバータIVの上記正極端子及び始動発電機36のコイルの中性点Nのうちいずれかと、バッテリ56の正極側とを選択的に接続可能な電子制御式の切替手段である。
【0065】
インバータIVは、パワー素子としての高電位側のスイッチング素子Sjp(j=u,v,w)及び低電位側のスイッチング素子Sjnの直列接続体が3つ並列接続されて構成されている。そして、これら高電位側のスイッチング素子Sjp及び低電位側のスイッチング素子Sjnの接続点が、始動発電機36の各相にそれぞれ接続されている。詳しくは、スイッチング素子Sup,Sunの接続点には、U相コイル40uの一端が接続され、スイッチング素子Svp,Svnの接続点には、V相コイル40vの一端が接続され、スイッチング素子Swp,Swnの接続点には、W相コイル40wの一端が接続されている。ちなみに、本実施形態では、上記スイッチング素子Sjp,Sjnとして、NチャネルMOSトランジスタを用いている。
【0066】
高電位側のスイッチング素子Sjp,低電位側のスイッチング素子Sjnの入出力端子間(ソース及びドレイン間)には、フリーホイールダイオードDjp,Djnが接続されている。詳しくは、フリーホイールダイオードDjp,Djnは、アノード側が自身に対応するスイッチング素子のソースに接続され、カソード側が自身に対応するスイッチング素子のドレインに接続されている。
【0067】
上記マイコン52は、ユーザのシートへの着座の有無を検出するシートスイッチ62や、スロットルセンサ20、ホール素子42u,42v,42w、更には電圧センサ60等の検出信号を取り込みつつ、エンジン10の燃焼制御や、始動発電機36の駆動・発電制御、更にはメータ48の表示制御等を行う。
【0068】
まず、エンジン10の燃焼制御について説明する。エンジン10の燃焼制御としては、主に、エンジン10の始動制御や、通常時の燃料噴射制御、燃料噴射弁22からの燃料噴射を停止させる燃料カット制御、更にはアイドルストップ制御がある。
【0069】
エンジン10の始動制御について説明すると、まず、イグニッションスイッチ64と、始動発電機36の駆動を指示するスタータスイッチ66とがユーザによってオン操作されることでメインリレー57がオン状態とされてかつ、切替スイッチ58によってバッテリ56の正極側及びインバータIVの正極端子が導通状態とされる。これにより、バッテリ56の電力がインバータIVを介して始動発電機36に供給され、始動発電機36によるクランキングが行われる。そして、クランキングが行われる状況下、燃料噴射弁22からの燃料噴射及び点火プラグ26の点火を実施することで、エンジン回転速度をアイドル回転速度まで上昇させる。これにより、エンジン10の始動が完了される。なお、エンジン回転速度は、例えば、上記ホール素子42u,42v,42wの出力値に基づき算出すればよい。
【0070】
続いて、通常時の燃料噴射制御について説明すると、まず、スロットルセンサ20の出力値から算出されるスロットル開度と、エンジン回転速度とに基づき、混合気の空燃比を目標空燃比(例えば理論空燃比)とするための基本噴射量を算出する。詳しくは、エンジン回転速度及びスロットル開度と関係付けられた基本噴射量が規定されるマップ(αNマップ)を用いて基本噴射量を算出する。
【0071】
そして、算出された基本噴射量に各種補正処理を施すことで指令噴射量を算出する。そして指令噴射量に基づき燃料噴射弁22を通電操作することで、燃料噴射弁22から上記指令噴射量に応じた量の燃料が噴射させる。
【0072】
続いて、燃料カット制御について説明する。本実施形態では、燃料カット制御の実行条件を、アクセルグリップ18が操作されていないとの条件、及びエンジン回転速度が所定の燃料カット回転速度よりも高いとの条件の論理積が真であるとの条件とする。ここで、アクセルグリップ18が操作されているか否かは、スロットル開度が規定開度(0よりもやや大きい開度)を下回るか否かで判断すればよい。また、燃料カット制御の停止条件を、アクセルグリップ18が操作されるとの条件と、エンジン回転速度が燃料カット回転速度よりも低い閾値速度を下回るとの条件との論理和が真であるとの条件とする。
【0073】
続いて、アイドルストップ制御について説明する。この制御は、所定の停止条件が成立する場合に燃料噴射の停止等によってエンジン10を自動停止させ、その後、所定の再始動条件が成立する場合にエンジン10を再始動させる処理である。ここで、本実施形態では、上記停止条件を、スクータの停車状態が所定時間(例えば3秒)継続されたとの条件とする。また、上記再始動条件を、アクセルグリップ18が操作されるとの条件、及びシートスイッチ62の出力値に基づきユーザがシートに着座しているとの条件の論理積が真であるとの条件とする。なお、アイドルストップ制御によってエンジン10が自動停止される期間において、IS表示部48eが点灯される。これにより、ユーザは、アイドルストップ制御によってエンジン10が自動停止されていることを認識することができる。
【0074】
次に、始動発電機36の駆動制御について説明すると、スイッチング素子Sjp,Sjnを操作する操作信号gjp,gjnを生成し、生成された操作信号gjp,gjnをスイッチング素子の導通制御端子(ゲート)に対して出力する。これにより、スイッチング素子Sjp,Sjnがオンオフ操作される。なお、本実施形態では、高電位側のスイッチング素子Sjp及び低電位側のスイッチング素子Sjnの双方がオン状態とならないようにしつつ180度周期でオン状態及びオフ状態のうち一方から他方へ切り替えてかつ、各相に対応するスイッチング素子のオンオフ切替タイミングを互いに120度ずつずらすいわゆる180°通電方式を採用している。
【0075】
特に、上記マイコン52は、中性点駆動処理を行う。この処理は、始動発電機36に対する印加電圧を上昇させ、始動発電機36の出力トルクを増大させてクランク軸30に加える処理である。以下、この処理について説明する。
【0076】
まず、図2を用いて、始動発電機36に対する印加電圧の上昇手法について説明する。詳しくは、図2(a)及び図2(b)は、車載システムのうちインバータIV及び始動発電機36近傍の構成を示す図である。なお、図2では、メインリレー57の図示を省略している。
【0077】
この手法は、インバータIVが備える低電位側のスイッチング素子Sjn及び高電位側のフリーホイールダイオードDjpと、始動発電機36が備えるコイルとを昇圧回路として用い、この昇圧回路によってバッテリ56の電圧を昇圧させる手法である。詳しくは、W相に対応するスイッチング素子Swn等を昇圧回路として用いた場合について説明すると、まず、図2(a)に示すように、切替スイッチ58によってバッテリ56の正極側及びコイルの中性点Nを接続してかつ、低電位側のスイッチング素子Swnをオン状態とすることで、バッテリ56、切替スイッチ58、W相コイル40w及びスイッチング素子Swnを含む閉ループ回路が形成される。これにより、バッテリ56からW相コイル40wに電流が供給され、W相コイル40wに磁気エネルギが蓄えられる。
【0078】
その後、図2(b)に示すように、スイッチング素子Swnをオフ状態とすると、W相コイル40wに蓄えられた磁気エネルギが高電位側のフリーホイールダイオードDwpを介してコンデンサ54に放出される。これにより、昇圧されたバッテリ56の電圧がコンデンサ54に印加される。
【0079】
そして、こうしたバッテリ56電圧の昇圧動作を行いつつ、昇圧させた電圧によって始動発電機36を回転駆動(以下、中性点駆動)させる。中性点駆動によれば、始動発電機36を流れる電流が増大し、始動発電機36の出力トルクを増大させることができる。ちなみに、本実施形態では、上記手法によってバッテリ56の電圧を2倍(24V)に昇圧させている。
【0080】
なお、W相に対応するスイッチング素子の操作による中性点駆動処理に限らず、U相,V相に対応するスイッチング素子の操作による中性点駆動処理についても、上述した手法によって実現することができる。
【0081】
また、上記中性点駆動処理は、実際には、スイッチング素子Sjp,Sjnが180度通電方式で操作される場合に実行される。詳しくは、180度通電方式の操作が行われる状況下、高電位側のスイッチング素子Sjpがオフ状態とされる期間において、低電位側のスイッチング素子Sjnを所定のDuty(規定時間Tαに対するスイッチング素子のオン時間Tonの比率「Ton/Tα」)によってオンオフ操作する。ここでは、Dutyが大きいほどバッテリ56の電圧の昇圧度合いが大きくなる。
【0082】
続いて、図3を用いて、上述した中性点駆動処理による始動発電機36の出力トルクの増大効果について説明する。
【0083】
図中実線にて示すように、中性点駆動処理を行う場合、この処理を行わない場合(図中破線にて表記)と比較して、始動発電機36の出力トルクを増大させることができる。すなわち、中性点駆動処理によれば、始動発電機36の出力トルクを利用可能なモータ回転速度の上限値を高めることができる。
【0084】
次に、本実施形態にかかるトルクアシスト処理について説明する。トルクアシスト処理は、スクータの種々の走行状態において上述した中性点駆動処理を実行することで、エンジン10の燃費低減効果を高めること等を目的とした処理である。本実施形態では、以下、トルクアシスト処理が実行される状況を大きく4つに分けてこの処理について説明する。
【0085】
<1.始動アシスト処理>
この処理は、ユーザのスタータスイッチ66の操作によるエンジン10始動時(エンジン10の初回始動時)、又はアイドルストップ制御によるエンジン10の再始動時において実行される中性点駆動処理であり、エンジン10始動時における燃料噴射弁22からの燃料噴射量を低減させるための処理である。以下、図4を用いて、始動アシスト処理について説明する。
【0086】
図4は、エンジン10の初回始動時における始動アシストの一例を示す図である。
【0087】
エンジン10を停止状態から自立駆動状態とするためには、エンジン10の燃焼状態を安定させてエンジン回転速度NEをアイドル回転速度Nidlとすることが要求される。ここで、始動発電機36の中性点駆動を行わない場合、図中破線にて示すように、時刻t1において始動発電機36によってクランキングが開始された後、始動発電機36のみではエンジン回転速度NEをアイドル回転速度Nidlまで上昇させることができない。このため、クランキングが開始される時刻t1からエンジン10の始動が完了する時刻t4までの時間ΔT2において、燃料噴射弁22から燃料噴射されるとともに点火制御が実施される。特に、始動時における燃料噴射弁22からの燃料噴射量が多くなる傾向にあることから、エンジン10の始動に要する燃料噴射量が多くなる傾向にある。
【0088】
これに対し、始動発電機36を中性点駆動させる場合には、図中実線にて示すように、時刻t1においてスタータスイッチ66がオンされてから始動発電機36のみによってエンジン回転速度NEをアイドル回転速度Nidlまで上昇させることができる。そして、時刻t2から時刻t3までの期間ΔT1において、エンジン10始動のための燃料噴射がなされる。こうした始動アシスト処理によれば、エンジン10始動時における燃料噴射時間をΔT2からΔT1に短縮させることができ、エンジン10始動時における燃料消費量を低減させることが可能となる。
【0089】
<2.加速アシスト処理>
この処理は、エンジン10がアイドル運転される状況からユーザのアクセルグリップ18の操作によってスクータが加速される状況下において実行される中性点駆動処理であり、具体的には例えば、図5に示すように、時刻t1において二輪車両の加速指示がなされると判断されてからエンジン回転速度NEが上限速度Nαを超える時刻t2まで実行される処理である。この処理によれば、二輪車両の加速性能を維持しつつ、加速時における燃料噴射量を低減させることが可能となる。
【0090】
<3.燃料カット(FC)復帰アシスト処理>
この処理は、燃料カット制御が停止されてエンジン10の燃焼が再開される場合に実行される中性点駆動処理であり、燃料カットの実行期間を長くすることでエンジン10の燃費低減効果を高めるための処理である。
【0091】
つまり、燃料カット制御の停止条件のうちエンジン回転速度NEが上記閾値速度を下回るとの条件は、エンジンストール等を回避する観点から、燃焼停止状態から燃焼を再開させることが可能なエンジン回転速度NEの下限値を定める条件である。ここで、始動発電機36が中性点駆動される場合には、燃焼再開時の始動発電機36の出力トルクを増大させることができる。このため、図6に示すように、中性点駆動される場合には、中性点駆動されない場合と比較して、上記閾値速度Nγを低く設定でき、ひいては燃料カット制御の実行期間を長くすることができる。したがって、エンジン10の燃費低減効果を高めることができる。
【0092】
<4.CMアシスト処理>
この処理は、図7に示すように、時刻t1においてアイドルストップ制御によってエンジン10が自動停止された後、エンジン回転速度NEが0となる前の時刻t2においてアクセルグリップ18が操作されることで実行される中性点駆動処理である。この処理は、例えば、信号機の停止指示によってスクータを停車させることでエンジン10が自動停止された直後に停止指示から進行指示に切り変わり、ユーザがアクセルグリップ18を操作する場合に実行される。この処理によれば、始動アシスト処理と同様に、エンジン10始動時における燃料消費量を低減させることが可能となる。
【0093】
ところで、上述したトルクアシスト処理は、所定の条件を満たせばユーザの意思とは無関係に自動的に実行される。ここで、トルクアシスト処理が実行される旨をユーザに報知することで、ユーザがスクータを使用する場合の利便性を高めることができると考えられる。こうした点に鑑み、本実施形態では、トルクアシスト処理が実行される旨をユーザに報知するアシスト報知処理を行う。以下、図8〜図12を用いて、アシスト報知処理について説明する。
【0094】
まず、図8を用いて、エンジン10の初回始動時におけるアシスト報知処理について説明する。詳しくは、図8は、エンジン10の初回始動時におけるアシスト報知処理の手順を示す流れ図である。この処理は、イグニッションスイッチ64のオンによってマイコン52への給電が開始されることで、マイコン52によって例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0095】
この一連の処理では、まず、ステップS10において、始動アシスト処理の実行条件が成立しているか否かを判断する。本実施形態では、上記実行条件を、電圧センサ60の出力値から算出されるバッテリ56の電圧Vbatが規定電圧Vα以上であるとの条件とする。ここで、上記実行条件をバッテリ56の電圧に関する条件とするのは、始動発電機36の出力トルクの増大度合いの低下によってエンジン10を適切に始動できなくなることを回避するためである。なお、上記規定電圧Vαは、例えば、始動アシスト処理(トルクアシスト処理)によってエンジン10の燃費低減効果が十分に得られる観点から設定される値である。
【0096】
ステップS10において始動アシスト処理の実行条件が成立すると判断された場合には、ステップS12に進み、始動アシスト処理の実行に先立ちアシスト報知処理を開始する。本実施形態では、この報知処理を、図9(a)に示すように、メータ48が備えるIS表示部48eを点滅させることで、始動アシスト処理が実行される旨をユーザに報知する処理とする。こうしたアシスト報知処理によれば、始動アシスト処理によってエンジン10の燃費低減効果が高められる旨をユーザに認識させることができる。
【0097】
なお、本実施形態において、始動アシスト処理の実行に先立ちアシスト報知処理を実行するのは、始動アシスト処理が近い将来実行されることをユーザに予め報知することで、始動アシスト処理が実行される旨をユーザに的確に認識させるためである。こうしたタイミングでアシスト報知処理が実行可能となるのは、始動アシスト処理がその後実行されるか否かの予測が比較的容易であることに鑑みたものである。つまり、上記ステップS10において肯定判断された場合、その後まもなくユーザによってスタータスイッチ66がオン操作され、エンジン10の始動制御が開始されると考えられる。
【0098】
続くステップS14では、ユーザによってスタータスイッチ66がオン状態とされるまで待機する。この処理は、ユーザによってエンジン10の始動(燃焼開始)が指示されるか否かを判断するための処理である。
【0099】
続くステップS16では、エンジン10の始動時における燃料噴射制御及び点火制御を開始し、上述した始動アシスト処理によってエンジン10の始動が完了したと判断されるまで待機する。
【0100】
続くステップS18では、始動アシスト処理と、アシスト報知処理とを終了する。これにより、IS表示部48eが消灯状態とされる。
【0101】
一方、上記ステップS10において否定判断された場合には、ステップS20に進み、バッテリ56の電圧Vbatが低い旨をユーザに報知する処理を行う。この処理は、始動アシスト処理が実行されずIS表示部48eが点滅状態とされないことで、ユーザに違和感を与えることを回避するための処理である。つまり、バッテリ56の電圧Vbatが規定電圧Vαを下回る場合、始動アシスト実行条件が成立しないことから、アシスト報知処理が実行されない。このとき、IS表示部48eによる始動アシスト処理の報知機能が故障しているとユーザに思わせる等、ユーザに違和感を与えるおそれがある。このため、始動アシスト処理の実行条件が成立しない場合には、バッテリ56の電圧Vbatが低い旨をユーザに報知する。なお、バッテリ56の電圧Vbatが低い旨の報知は、始動アシスト処理の実行を報知する態様(IS表示部48eの点滅)とは異なる態様で行われ、具体的には例えば、警告灯48cを点滅させる態様で行えばよい。
【0102】
なお、ステップS18,S20の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0103】
続いて、図10を用いて、加速アシスト処理が実行される場合におけるアシスト報知処理について説明する。詳しくは、図10は、スクータの加速時におけるアシスト報知処理の手順を示す流れ図である。この処理は、マイコン52によって例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図10において、先の図8に示したステップと同一又は対応する処理については、説明の便宜上、同一の符号を付すこととする。
【0104】
この一連の処理では、まず、ステップS22において、加速アシスト処理の実行条件が成立しているか否かを判断する。本実施形態では、上記実行条件を以下(A)〜(C)の条件の論理積が真であるとの条件とする。
【0105】
(A)エンジン回転速度NEがアイドル回転速度Nidl以上であってかつ上限速度Nα以下であるとの条件。この条件は、中性点駆動処理の実行可能領域がモータ回転速度によって制限されることから、加速アシスト処理の実行可能領域を定めるための条件である。
【0106】
(B)スロットル開度Thrが規定開度Sαを上回る状態が所定時間(例えば20msec)継続されたとの条件。この条件は、ユーザによってアクセルグリップ18が操作されているか否かを判断するための条件である。ここで、規定開度Sαは、アクセルグリップ18が操作されていることを判別可能な値として設定される。
【0107】
(C)スロットル開度の増大速度ΔThrが規定速度γを上回る状態が所定時間(例えば20msec)継続されたとの条件。
【0108】
ステップS22において加速アシスト処理の実行条件が成立すると判断された場合には、ステップS24に進み、バッテリ56の電圧Vbatが規定電圧Vα以上であるか否かを判断する。
【0109】
ステップS24において肯定判断された場合には、ステップS26に進み、アシスト報知処理及び加速アシスト処理の双方を開始する。ここで、アシスト報知処理は、スクータの加速時においてユーザに不安感を与える事態を回避するための処理である。
【0110】
つまり、ユーザは、スクータを加速させる場合における自身のアクセルグリップ18の操作態様と、この操作態様に基づくスクータの加速態様との関係を自身の過去の走行経験から感覚的に把握している。ここで、ユーザの普段のアクセルグリップ18の操作態様に従ってアクセルグリップ18が操作される状況下において加速アシスト処理が実行されると、スクータの実際の加速態様がユーザの想定した加速態様からずれることで、ユーザに不安感を与えるおそれがある。特に、スクータにおいては、ユーザの搭乗スペースがドア等によって囲われていないことから、例えば普通乗用車と比較してユーザの体感速度が高くなる傾向にあり、ユーザに与える不安感が顕著となるおそれがある。このため、アシスト報知処理を行うことで、ユーザに不安感を与える事態を回避する。
【0111】
ここで、本実施形態では、加速アシスト処理の実行時におけるアシスト報知処理によるユーザへの報知の度合いを、始動アシスト処理の実行時におけるアシスト報知処理による報知の度合いよりも大きくする。本実施形態では、報知の度合いを大きくする手法として、具体的には、図9(b)に示すように、IS表示部48eの点滅速度を上述した始動アシスト処理の実行時におけるIS表示部48eの点滅速度よりも高くする手法を採用する。この手法は、加速アシスト処理が実行される旨をユーザに的確に報知するためのものである。
【0112】
つまり、上述したように始動アシスト処理がその後実行されるか否かの予測は比較的容易であるのに対し、加速アシスト処理の実行条件が成立するか否かの予測はしにくい。このため、本実施形態では、加速アシスト処理と同時にアシスト報知処理を実行することとしている。ここで、こうしたタイミングでアシスト報知処理を実行すると、加速アシスト処理の実行に先立ってこの処理が実行される旨をユーザに報知できないことから、例えば始動アシスト処理の報知と比較して、加速アシスト処理が実行される旨をユーザに的確に認識させることができないおそれがある。ここで、先の図9(b)に示したように、IS表示部48eの点滅周期を短くすると、IS表示部48eが消灯状態とされる時間間隔が短くなってユーザがIS表示部48eの表示を認識するのに要する時間が短くなること、及びユーザへのアピールが大きくなること等から、加速アシスト処理が実行される旨のユーザに対する報知の度合いを始動アシスト処理が実行される旨の報知の度合いよりも大きくすることができると考えられる。こうした理由により、IS表示部48eの点滅速度を高く手法を採用することで、加速アシスト処理が実行される旨をユーザに的確に報知する。
【0113】
続くステップS28では、エンジン回転速度NEが上記上限速度Nαを上回るとの条件と、加速アシスト処理時に切替スイッチ58がオン状態とされてから所定時間が経過したとの条件との論理和が真であると判断されるまで待機する。ここで、切替スイッチ58に関する条件は、加速アシスト処理によってバッテリ56の電力が過度に消費される事態を回避するための処理である。
【0114】
続くステップS30では、加速アシスト処理と、アシスト報知処理とを終了する。これにより、IS表示部48eが消灯状態とされる。
【0115】
一方、上記ステップS24において否定判断された場合には、上記ステップS20に進み、バッテリ56の電圧Vbatが低い旨をユーザに報知する処理を行う。
【0116】
なお、上記ステップS22において否定判断された場合や、ステップS20,S30の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0117】
続いて、図11を用いて、FC復帰アシスト処理が実行される場合におけるアシスト報知処理について説明する。詳しくは、図11は、FC復帰アシスト報知処理が実行される場合におけるアシスト報知処理の手順を示す流れ図である。この処理は、マイコン52によって例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図11において、先の図8に示したステップと同一又は対応する処理については、説明の便宜上、同一の符号を付すこととする。
【0118】
この一連の処理では、まず、ステップS32において、燃料カット制御の実行条件が成立しているか否かを判断する。ここで、上記実行条件は、上述したように、アクセルグリップ18が操作されていないとの条件、及びエンジン回転速度NEが上記燃料カット回転速度Nβよりも高いとの条件の論理積が真であるとの条件とする。
【0119】
ステップS32において燃料カット制御の実行条件が成立すると判断された場合には、ステップS34に進み、バッテリ56の電圧Vbatが規定電圧Vα以上であるか否かを判断する。
【0120】
ステップS34において否定判断された場合には、FC復帰アシスト処理を実行しないと判断し、ステップS20に進む。ステップS20では、バッテリ56の電圧Vbatが低い旨をユーザに報知する処理を行う。
【0121】
続くステップS36では、通常の態様で燃料カット状態からエンジン10の燃焼を再開(復帰)させる処理を行う。なお、エンジン10の復帰が完了する場合、バッテリ56の電圧Vbatが低い旨をユーザに報知する処理を終了する。
【0122】
一方、上記ステップS34において否定判断された場合には、ステップS38に進み、燃料カット制御の停止条件としてのエンジン回転速度NEが上記閾値速度Nγを下回るとの条件が成立するか否かを判断する。なお、閾値速度Nγは、上限速度Nαよりも低い値とされる。また、閾値速度Nγは、ステップS36において用いられる閾値速度よりも低く設定される。
【0123】
ステップS38において否定判断された場合には、上記ステップS34に戻る。一方、上記ステップS38において肯定判断された場合には、ステップS40に進む。なお、本実施形態では、エンジン回転速度NEが閾値速度Nγまで低下する前にアクセルグリップ18が操作されるとの条件が成立すると判断された場合、上記ステップS36に移行するものとする。
【0124】
ステップS40では、FC復帰アシスト処理の実行に先立ちアシスト報知処理を開始する。本実施形態では、先の図7(a)に示すように、IS表示部48eを点滅状態とさせることでユーザに報知する処理とする。こうしたアシスト報知処理によれば、その後エンジン10が始動される場合において、エンジン10の燃費低減効果が高められる旨をユーザに報知することができる。
【0125】
なお、FC復帰アシスト処理によれば、上述したように上記閾値速度Nγを低く設定可能なことから、エンジン10の始動時におけるエンジン回転速度が過度に低いと感じさせることにより、エンストする等、ユーザに不安感を与えるおそれがある。ここで、アシスト報知処理によれば、事前にFC復帰アシスト処理が実行されることを報知できるため、ユーザに不安感を与える事態を回避できる。
【0126】
また、本実施形態において、FC復帰アシスト処理の実行に先立ちアシスト報知処理を実行するのは、上記加速アシスト処理における報知と同様に、FC復帰アシスト処理が近い将来実行されることをユーザに予め報知することで、FC復帰アシスト処理が実行される旨をユーザに的確に認識させるためである。
【0127】
続くステップS42では、燃料噴射制御及び点火制御を開始し、FC復帰アシスト処理によってエンジン10が復帰されると判断されるまで待機する。
【0128】
続くステップS44では、FC復帰アシスト処理と、アシスト報知処理とを終了する。これにより、IS表示部48eが消灯状態とされる。
【0129】
なお、上記ステップS32において否定判断された場合や、ステップS36,S44の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0130】
次に、図12を用いて、アイドルストップ制御時におけるアシスト報知処理について説明する。詳しくは、図12は、アイドルストップ制御時におけるアシスト報知処理の手順を示す流れ図である。この処理は、マイコン52によって例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図12において、先の図8に示したステップと同一又は対応する処理については、説明の便宜上、同一の符号を付すこととする。また、アイドルストップ制御を実行するか否かを選択すべくユーザによって操作される図示しないIS選択スイッチによってアイドルストップ制御を実行しない旨が選択された場合、図12に示した処理は実行されない。
【0131】
この一連の処理では、まず、ステップS46において、自動停止指示フラグFの値が「1」であるか否かを判断する。ここで、自動停止指示フラグFは、「1」によってエンジン10の自動停止が指示されていることを示し、「0」によって自動停止が指示されていないことを示す。なお、自動停止指示フラグFの初期値は「0」とする。
【0132】
ステップS46において否定判断された場合には、ステップS48に進み、上述したエンジン10の自動停止条件が成立しているか否かを判断する。
【0133】
ステップS48において自動停止条件が成立すると判断された場合には、ステップS50に進み、エンジン10の自動停止処理を行うとともに、自動停止指示フラグFの値を「1」とする。ここで、上記自動停止処理は、具体的には、燃料噴射弁22からの燃料噴射の停止等によってエンジン10を停止させる処理となる。
【0134】
ステップS46において肯定判断された場合や、ステップS50の処理が完了する場合には、ステップS52に進み、バッテリ56の電圧Vbatが規定電圧Vα以上であるか否かを判断する。
【0135】
ステップS52において否定判断された場合には、始動アシスト処理を実行しないと判断し、ステップS54に進む。ステップS54では、IS表示部48eを点灯させることで、アイドルストップ制御によってエンジン10が自動停止される旨をユーザに報知する。
【0136】
一方、上記ステップS52において肯定判断された場合には、ステップS56に進み、始動アシスト処理の実行(後述するステップS64の処理)に先立ち、アシスト報知処理を開始する。本実施形態では、先の図9(a)に示したように、IS表示部48eを点滅させることでユーザに報知する。これにより、加速アシスト処理の実行時におけるアシスト報知処理と同様に、ユーザに不安感を与えることを回避することができる。
【0137】
なお、本実施形態において、始動アシスト処理の実行に先立ちアシスト報知処理を実行するのは、先の図8に示した始動アシスト処理と同様に、始動アシスト処理が近い将来実行されることをユーザに予め報知することで、始動アシスト処理が実行される旨をユーザに的確に認識させるためである。こうしたタイミングでアシスト報知処理が実行可能となるのは、始動アシスト処理がその後実行されるか否かの予測が比較的容易であることに鑑みたものである。つまり、エンジン10が自動停止された場合、その後まもなくユーザのアクセルグリップ18の操作によってエンジン10の再始動条件が成立すると考えられる。
【0138】
続くステップS58では、エンジン回転速度NEが0まで低下する途中で上述した再始動条件が成立するか否かを判断する。この処理は、エンジン10の自動停止直後、ユーザの発進意思が生じたか否かを判断するための処理である。
【0139】
ステップS58において否定判断された場合や、ステップS54の処理が完了する場合には、ステップS60に進み、エンジン10の再始動条件が成立するか否かを判断する。
【0140】
ステップS60において肯定判断された場合には、ステップS62に進み、自動停止指示フラグFの値を「0」とする。
【0141】
続くステップS64では、燃料噴射制御及び点火制御を開始し、始動アシスト処理によってエンジン10の始動が完了するまで待機する。なお、上記ステップS54の処理を経由して本ステップに移行する場合、始動アシスト処理を実行しない通常の態様でエンジン10の始動処理を実行する。
【0142】
続くステップS66では、始動アシスト処理と、アシスト報知処理とを終了する。これにより、IS表示部48eが消灯状態とされる。なお、上記ステップS54を経由して本ステップに移行する場合、IS表示部48eの点灯処理が停止される。
【0143】
一方、上記ステップS58において肯定判断された場合には、CMアシスト処理を実行すると判断し、ステップS68においてアシスト報知処理を行う。この処理によれば、加速アシスト処理の実行時におけるアシスト報知処理と同様に、ユーザに不安感を与える事態を回避できる。
【0144】
なお、本実施形態では、CMアシスト処理が実行される場合のアシスト報知処理を、先の図9(b)に示すように、IS表示部48eの点滅速度を上述した始動アシスト処理や復帰アシスト処理の実行時におけるIS表示部48eの点滅速度よりも高くする処理とする。この処理は、加速アシスト処理における報知と同様に、CMアシスト処理の実行条件が成立するか否かの予測がしにくいことに鑑み、CMアシスト処理が実行される旨をユーザに的確に報知するための処理である。
【0145】
続くステップS70では、燃料噴射制御及び点火制御を開始し、CMアシスト処理によってエンジン10の始動が完了すると判断されるまで待機する。
【0146】
続くステップS72では、CMアシスト処理と、アシスト報知処理とを終了する。これにより、IS表示部48eが消灯状態とされる。
【0147】
なお、上記ステップS48,S60において否定判断された場合や、ステップS66,S72の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0148】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0149】
(1)エンジン10の初回始動時において、始動アシスト処理の実行に先立ってこの処理が実行される旨を報知するアシスト報知処理を行った。これにより、燃費低減効果の高いエンジン10の始動手法によってエンジン10が始動されたことをユーザに的確に認識させることができ、ひいては燃費低減効果に対するユーザの意識を高めることなどが期待できる。
【0150】
(2)アイドルストップ制御によるエンジン10の再始動時において、始動アシスト処理の実行に先立ってこの処理が実行される旨を報知するアシスト報知処理を行った。これにより、エンジン10の再始動時に始動アシスト処理が実行されることに起因して、ユーザに不安感を与える事態を好適に回避することができる。
【0151】
(3)スクータの加速指示がなされると判断された場合、加速アシスト処理の実行と同時にこの処理が実行される旨を報知するアシスト報知処理を行った。これにより、スクータの加速時に加速アシスト処理が実行されることに起因して、ユーザに不安感を与える事態を好適に回避することができる。
【0152】
(4)CMアシスト処理が実行される場合、CMアシスト処理の実行と同時にこの処理が実行される旨を報知するアシスト報知処理を行った。これにより、CMアシスト処理が実行されることに起因して、ユーザに不安感を与える事態を好適に回避することができる。
【0153】
(5)燃料カット制御の実行条件が成立する場合、その後FC復帰アシスト処理が実行される旨を報知するアシスト報知処理を行った。これにより、燃費低減効果の高いエンジン10の始動手法によってエンジン10が始動されたことをユーザに的確に認識させることができ、ひいては燃費低減効果に対するユーザの意識を高めることなどが期待できる。
【0154】
さらに、上記アシスト報知処理によれば、エンストする等、ユーザに不安感を与える事態を回避することもできる。
【0155】
(6)加速アシスト処理やCMアシスト処理の実行時におけるIS表示部48eの点滅速度を始動アシスト処理やFC復帰アシスト処理の実行時におけるIS表示部48eの点滅速度よりも高くした。このため、加速アシスト処理やCMアシスト処理が実行される旨をユーザに的確に報知することもできる。
【0156】
(7)バッテリ56の電圧Vbatが規定電圧Vαを下回ると判断された場合、トルクアシスト処理の実行を禁止した。そして、アイドルストップ制御によってIS表示部48eの点灯処理(先の図12のステップS54の処理)が実行される場合を除き、バッテリ56の電圧Vbatが低い旨をユーザに報知する処理を行った。これにより、ユーザに違和感を与える事態を回避することができる。
【0157】
(8)IS表示部48eを用いてアシスト報知処理を行った。これにより、車載部品の増大を回避することができ、ひいてはスクータのコストの増大を好適に回避することができる。
【0158】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0159】
・上記実施形態では、先の図9(b)に示すように、IS表示部48eの点滅速度を高くすることで、加速アシスト処理等の実行時におけるユーザに対する報知の度合いを大きくしたがこれに限らない。例えば、表示部の光度を連続的又は段階的に可変設定可能なIS表示部を備え、加速アシスト処理等の実行時において、始動アシスト処理等の実行時よりも光度を大きくしてユーザに報知してもよい。なお、この場合、加速アシスト処理の報知に用いる色を始動アシストの報知に用いる色と比較して、より光度の大きい色等、ユーザにとって知覚されやすい色とすることが望ましい。
【0160】
・トルクアシスト処理の実行をユーザに報知する手法としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、表示部の表示色を可変とするIS表示部を備え、始動アシスト処理、加速アシスト処理、FC復帰アシスト処理及びCMアシスト処理のそれぞれで表示色を変更することでユーザに報知する手法としてもよい。また、これらトルクアシスト処理のそれぞれに対応した複数(4つ)の表示部をメータに備え、実行されるトルクアシスト処理に対応した表示部を点灯又は点滅させることでユーザに報知する手法としてもよい。さらに、例えば、車載ナビゲーション装置を備え、この装置の表示部に所定の表示を行うことでユーザに報知する手法としてもよい。
【0161】
また、ユーザに対するトルクアシスト処理の報知手法としては、視覚的な手法に限らず、音によるものであってもよい。この場合、具体的には、ユーザの使用するヘルメットの内側にスピーカを備え、スピーカによる音(音声)によって報知する手法を採用することができる。なお、こうした構成において、先の図9(a),(b)に示したように、ユーザに対する報知の度合いに大小をつける手法としては、報知のための信号をユーザに知覚されやすくする観点から、例えば、音量を大小させる手法を採用することが考えられる。
【0162】
さらに、ユーザに対するトルクアシスト処理の報知手法としては、振動を用いたものであってもよい。具体的には、車載型又はユーザによる携帯型の振動発生装置によってユーザに報知すればよい。この場合、ユーザに対する報知の度合いに大小をつける手法としては、例えば、振動発生装置の振動態様を規定する振動の振幅を大小させる手法を採用することが考えられる。
【0163】
・中性点駆動処理手法としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、低電位側のスイッチング素子Sjnのオンオフ操作によるバッテリ56電圧の昇圧時において、高電位側のスイッチング素子Sjpをオン状態としてもよい。これにより、フリーホイールダイオードDjpを電流が流れる場合における電力損失を抑制することができる。
【0164】
・FC復帰アシスト処理が実行される場合におけるアシスト報知処理手法としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、燃料カット制御の停止条件が成立したタイミングでアシスト報知処理を行ってもよい。この場合であっても、ユーザにFC復帰アシスト処理の実行を報知することができることから、ユーザに不安感を与える事態の発生を抑制することはできる。
【0165】
・バッテリ56に蓄えられる電気エネルギを維持する観点から、トルクアシスト処理の実行後、一定時間トルクアシスト処理の実行を禁止する処理を行ってもよい。この場合、ユーザに違和感を与える事態を回避すべく、トルクアシスト処理が禁止されている旨をユーザに報知することが望ましい。
【0166】
・アクセルグリップ18の操作態様に基づき二輪車両の加速指示がなされているか否かを判断する手法としては、上記実施形態に例示したもの(先の図10のステップS22の処理)に限らない。例えば、アクセルグリップ18の操作量を検出するアクセルセンサを備え、このセンサの検出値に基づき上記加速指示がなされているか否かを判断してもよい。
【0167】
・エンジン10のアイドル運転時においてバッテリ56の電圧Vbatが規定電圧Vα以上であると判断される場合、始動アシスト処理の実行時におけるアシスト報知処理を継続させる制御ロジックを採用してもよい。これにより、その後加速アシスト処理が実行可能な旨をユーザに的確に報知することができ、ドライバビリティを高めることが期待できる。
【0168】
・上記実施形態では、エンジン10のアイドル運転状態からの加速時に加速アシスト処理を行ったがこれに限らない。例えば、始動発電機36の中性点駆動可能なモータ回転速度の上限値が高いなら、アイドル運転状態ではないエンジン10の定常運転状態からの加速時において加速アシスト処理を行ってもよい。
【0169】
・上記実施形態では、始動発電機36のコイルの中性点N、コンデンサ54、スイッチング素子Sjp,Sjn等を先の図2に示すような接続態様に切替可能な回路構成を採用し、この回路構成によってバッテリ56の電圧を昇圧させたがこれに限らない。例えば、バッテリ56の正極側とコイルの中性点Nとを接続可能なようにバッテリ56の端子、コンデンサ54及び中性点Nの接続態様を切替可能な回路構成に代えて、バッテリ56の正極側とインバータIVの正極端子とを接続してかつ、バッテリ56の負極側及びインバータIVの負極端子とを遮断し、バッテリ56の負極側と中性点Nとを接続可能なように上記接続態様を切替可能な回路構成としてもよい。この場合、低電位側のスイッチング素子Sjnがオフ状態とされる期間に高電位側のスイッチング素子Sjpをオンオフ操作することで、バッテリ56の電圧を昇圧させることができる。なお、上記構成において、コンデンサ54を、バッテリ56の負極側及びインバータIVの負極端子の間に接続可能なように上記接続態様を切替可能な回路構成を採用してもよい。
【0170】
また、例えば、コンデンサ54を、インバータIVの正極端子及び中性点Nの間に接続可能なように上記接続態様を切替可能な回路構成を採用してもよい。
【0171】
・先の図8のステップS10に示した始動アシスト処理実行条件の判断処理や、先の図11のステップS34に示した処理において、バッテリ56の電圧Vbatに代えて、バッテリ56の充電率(SOC)を用いてもよい。具体的には、これら処理において、バッテリ56のSOCが規定値以上であるか否かを判断すればよい。なお、バッテリ56のSOCは、例えば、バッテリ56の流出入電流を検出する電流センサを備え、電流センサ及び電圧センサ60の検出値に基づき算出すればよい。
【0172】
・燃料カット制御の実行条件としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、先の図11のステップS32に示した条件に加えて、バッテリ56の電圧Vbatが規定電圧Vα以上であるとの条件を加えてもよい。この場合、先の図11において、ステップS34、S20、S36の処理を廃止すればよい。
【0173】
・上記実施形態では、全てのトルクアシスト処理(始動アシスト処理、加速アシスト処理、FC復帰アシスト処理及びCMアシスト処理)のそれぞれに対応したアシスト報知処理を行う制御ロジックを採用したがこれに限らない。例えば、これらトルクアシスト処理のうち一部のトルクアシスト処理(例えば、始動アシスト処理及び加速アシスト処理)に対応するアシスト報知処理のみ行う制御ロジックを採用してもよい。
【0174】
・先の図12のステップS54において、バッテリ56の電圧Vbatが低い旨をユーザに報知する処理をさらに行ってもよい。
【0175】
・二輪車両としては、アイドルストップ機能が備えられるものに限らず、この機能が備えられないものであってもよい。この場合、アイドルストップ制御によるエンジン再始動時における始動アシスト処理及びCMアシスト処理は行われないこととなる。
【0176】
・バッテリ56の正極側とコイルの中性点Nとを接続する電気経路を開閉する切替スイッチ58としては、電磁リレーに限らず、例えば半導体スイッチング素子(例えばMOSFET)であってもよい。
【0177】
・インバータが備えるスイッチング素子としては、MOSFETに限らず、例えば、バイポーラトランジスタやIGBTであってもよい。
【0178】
・インバータが備えるスイッチング素子の操作手法としては、180度通電方式に限らず、例えば120度通電方式であってもよい。
【0179】
・エンジン10としては、単気筒のものに限らず複数気筒のものであってもよい。また、エンジン10としては、ガソリンエンジンのような火花点火式内燃機関に限らず、ディーゼルエンジンのような圧縮着火式内燃機関であってもよい。
【0180】
・本願発明が適用される二輪車両としては、スクータに限らず、その他の二輪車両であってもよい。
【符号の説明】
【0181】
10…エンジン、22…燃料噴射弁、30…クランク軸、36…始動発電機、40u,40v,40w…コイル、46…駆動輪、48…メータ、52…マイコン(車両用制御装置の一実施形態)、54…コンデンサ、56…バッテリ、58…切替スイッチ、IV…インバータ、Sjp,Sjn…スイッチング素子、Djp,Djn…フリーホイールダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載主機としての内燃機関と、該内燃機関の出力軸と動力伝達を行う始動発電機と、該始動発電機及び車載蓄電池の間に介在してかつ該始動発電機を制御するインバータとを備える二輪車両に適用され、
前記インバータには、前記始動発電機の各相に対応する高電位側スイッチング素子及び低電位側スイッチング素子の直列接続体と、該直列接続体において前記低電位側スイッチング素子から前記高電位側スイッチング素子へと向かう方向にのみ電流の流れを許容すべく前記スイッチング素子に並列接続される整流手段とが備えられ、
前記高電位側スイッチング素子及び前記低電位側スイッチング素子の直列接続体の接続点のそれぞれには、前記始動発電機の各相の固定子巻線の一端が接続され、
前記インバータの入力端子間に接続されてかつ前記蓄電池とは異なる蓄電手段、前記固定子巻線、前記スイッチング素子及び前記整流手段を昇圧回路とし、該昇圧回路が備える前記スイッチング素子の開閉操作によって前記蓄電池の電圧を昇圧する昇圧手段と、
前記昇圧手段によって前記蓄電池の電圧を昇圧しつつ、該昇圧された電圧を前記始動発電機に印加して該始動発電機を回転駆動させることで、該始動発電機から前記出力軸に回転エネルギを付与する中性点駆動処理を行うトルクアシスト手段と、
前記中性点駆動処理の実行の有無に関する情報をユーザに報知する報知手段とを備えることを特徴とする二輪車両用制御装置。
【請求項2】
前記トルクアシスト手段は、前記内燃機関の燃焼の開始が指示される場合に対応する前記中性点駆動処理である始動アシスト処理を行い、
前記報知手段は、前記始動アシスト処理が実行される場合、その旨をユーザに報知することを特徴とする請求項1記載の二輪車両用制御装置。
【請求項3】
前記二輪車両には、前記内燃機関の出力トルクを指示すべくユーザの操作対象とされるアクセルグリップが備えられ、
所定の停止条件が成立する場合に前記内燃機関を自動停止させ、その後、前記アクセルグリップが操作されるとの条件を含む所定の再始動条件が成立する場合に前記内燃機関を再始動させるアイドルストップ制御手段を更に備え、
前記始動アシスト処理は、前記アイドルストップ制御手段によって前記内燃機関を再始動させる場合に対応する前記中性点駆動処理であることを特徴とする請求項2記載の二輪車両用制御装置。
【請求項4】
前記二輪車両には、前記内燃機関の出力トルクを指示すべくユーザの操作対象とされるアクセルグリップが備えられ、
前記アクセルグリップの操作状態に基づき、前記二輪車両の加速指示がなされるか否かを判断する判断手段を更に備え、
前記トルクアシスト手段は、前記加速指示がなされると判断される場合に対応する前記中性点駆動処理である加速アシスト処理を行い、
前記報知手段は、前記加速アシスト処理が実行される場合、その旨をユーザに報知することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の二輪車両用制御装置。
【請求項5】
前記トルクアシスト手段は、前記内燃機関の燃焼の開始が指示される場合に対応する前記中性点駆動処理である始動アシスト処理を行い、
前記報知手段は、前記始動アシスト処理が実行される旨を前記内燃機関の燃焼開始指示に先立ってユーザに報知してかつ、前記加速アシスト処理の実行と同時に該加速アシスト処理が実行される旨をユーザに報知し、
前記加速アシスト処理が実行される場合、前記始動アシスト処理が実行される場合よりも前記その旨の報知の度合いを大きくする報知度合い増大手段を更に備えることを特徴とする請求項4記載の二輪車両用制御装置。
【請求項6】
前記アクセルグリップが操作されていなくてかつ前記出力軸の回転速度が第1の規定速度以上であると判断される場合、前記内燃機関に対する燃料供給を停止し、その後、前記出力軸の回転速度が前記第1の規定速度よりも低い第2の回転速度以下になると判断される場合、前記内燃機関に対する燃料供給を再開する燃料カット制御手段を更に備え、
前記トルクアシスト手段は、前記燃料カット制御手段によって前記燃料供給が再開される場合に対応する前記中性点駆動処理である復帰アシスト処理を行い、
前記報知手段は、前記燃料カット制御手段によって前記燃料供給が停止される状況において前記復帰アシスト処理が実行される旨をユーザに報知してかつ、前記加速アシスト処理の実行と同時に該加速アシスト処理が実行される旨をユーザに報知し、
前記加速アシスト処理が実行される場合、前記復帰アシスト処理が実行される場合よりも前記その旨の報知の度合いを大きくする報知度合い増大手段を更に備えることを特徴とする請求項4又は5記載の二輪車両用制御装置。
【請求項7】
前記二輪車両には、前記内燃機関の出力トルクを指示すべくユーザの操作対象とされるアクセルグリップが備えられ、
所定の停止条件が成立する場合に前記内燃機関を自動停止させ、その後、前記アクセルグリップが操作されるとの条件を含む所定の再始動条件が成立する場合に前記内燃機関を再始動させるアイドルストップ制御手段と、
前記アイドルストップ制御手段によって前記内燃機関が自動停止された後、前記出力軸の回転速度が0になる前に前記再始動条件が成立するか否かを判断する自動停止直後判断手段とを更に備え、
前記トルクアシスト手段は、前記自動停止直後判断手段によって前記再始動条件が成立すると判断される場合に対応する前記中性点駆動処理である自動停止直後アシスト処理を行い、
前記報知手段は、前記自動停止直後アシスト処理が実行される場合、その旨をユーザに報知することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の二輪車両用制御装置。
【請求項8】
前記トルクアシスト手段は、前記出力軸の回転速度が0となる状況下において前記内燃機関の燃焼の開始が指示される場合に対応する前記中性点駆動処理である始動アシスト処理を行い、
前記報知手段は、前記始動アシスト処理が実行される旨を前記内燃機関の燃焼開始指示に先立ってユーザに報知してかつ、前記自動停止直後アシスト処理の実行と同時に該自動停止直後アシスト処理が実行される旨をユーザに報知し、
前記自動停止直後アシスト処理が実行される場合、前記始動アシスト処理が実行される場合よりも前記その旨の報知の度合いを大きくする報知度合い増大手段を更に備えることを特徴とする請求項7記載の二輪車両用制御装置。
【請求項9】
前記アクセルグリップが操作されていなくてかつ前記出力軸の回転速度が第1の規定速度以上であると判断される場合、前記内燃機関に対する燃料供給を停止し、その後、前記出力軸の回転速度が前記第1の規定速度よりも低い第2の回転速度以下になると判断される場合、前記内燃機関に対する燃料供給を再開する燃料カット制御手段を更に備え、
前記トルクアシスト手段は、前記燃料カット制御手段によって前記燃料供給が再開される場合に対応する前記中性点駆動処理である復帰アシスト処理を行い、
前記報知手段は、前記燃料カット制御手段によって前記燃料供給が停止される状況において前記復帰アシスト処理が実行される旨をユーザに報知してかつ、前記自動停止直後アシスト処理の実行と同時に該自動停止直後アシスト処理が実行される旨をユーザに報知し、
前記自動停止直後アシスト処理が実行される場合、前記復帰アシスト処理が実行される場合よりも前記その旨の報知の度合いを大きくする報知度合い増大手段を更に備えることを特徴とする請求項7又は8記載の二輪車両用制御装置。
【請求項10】
前記二輪車両には、前記内燃機関の出力トルクを指示すべくユーザの操作対象とされるアクセルグリップが備えられ、
前記アクセルグリップが操作されていなくてかつ前記出力軸の回転速度が第1の規定速度以上であると判断される場合、前記内燃機関に対する燃料供給を停止し、その後、前記出力軸の回転速度が前記第1の規定速度よりも低い第2の回転速度以下になると判断される場合、前記内燃機関に対する燃料供給を再開する燃料カット制御手段を更に備え、
前記トルクアシスト手段は、前記燃料カット制御手段によって前記燃料供給が再開される場合に対応する前記中性点駆動処理である復帰アシスト処理を行い、
前記報知手段は、前記復帰アシスト処理が実行される場合、その旨をユーザに報知することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の二輪車両用制御装置。
【請求項11】
前記トルクアシスト手段は、前記蓄電池の充電率が規定値以下であることに基づき、前記中性点駆動処理の実行を禁止する禁止手段を備え、
前記報知手段は、前記禁止手段によって前記中性点駆動処理の実行が禁止される場合、その旨をユーザに報知する処理を行うことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の二輪車両用制御装置。
【請求項12】
所定の停止条件が成立する場合に前記内燃機関を自動停止させ、その後、所定の再始動条件が成立する場合に前記内燃機関を再始動させるアイドルストップ制御手段を更に備え、
前記二輪車両には、前記アイドルストップ制御手段によって前記内燃機関が自動停止されている旨をユーザに報知する表示灯が備えられ、
前記報知手段は、前記アイドルストップ制御手段によって前記自動停止されている旨をユーザに報知する場合の前記表示灯の表示態様とは異なる表示態様で該表示灯に表示させることで、前記中性点駆動処理が実行される旨をユーザに報知することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の二輪車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−92096(P2013−92096A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234306(P2011−234306)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】