説明

位置検出システム及び投射型表示システム

【課題】複数の検出対象物の位置をそれぞれ検出することができる光学式の位置検出システムを提供する。
【解決手段】光学式の位置検出システム1000は、第1検出対象物31と第2検出対象物32とに向けて光を射出する光射出部20と、波長の異なる第1検出対象物31からの第1反射光41を受光する第1受光部51と第2検出対象物32からの第2反射光42を受光する第2受光部52を有し、前記第1検出対象物31は前記第1反射光41を反射する第1反射フィルター61を有し、前記第2検出対象物32は前記第2反射光42を反射する第2反射フィルター62を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象物の位置を光学的に検出する位置検出システム及び投射型表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話、カーナビゲーション、券売機及び自動現金預け払い機等の表示画面付き電子機器にはタッチパネルの如き位置検出システムが用いられている。この位置検出システムは表示画面の視認側に配置されており、表示画面の画像を参照しながらペンや指の如き検出対象物を表示画面上に配置することによって当該検出対象物の位置を検出するものである。例えば、特許文献1と特許文献2に記載されている。
【0003】
特許文献1と特許文献2に記載の位置検出システムはそれぞれ光学式であり、物体表面の基準面上に検出空間が設定されており、光源と光検出部とを有している。この検出空間内の任意の位置に検出対象物を配置すると、光源の光が当該検出対象物の表面で反射して、その反射光の一部が光検出部によって受光されることにより検出対象物の位置を検出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5666037号明細書
【特許文献2】米国特許第6927384号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の位置検出システムでは、その検出空間内に2個の検出対象物を同時に配置すると、その光検出部が当該2個の検出対象物の反射光をそれぞれ区別することができないことによって当該2個の検出対象物の中間位置を検出してしまうため、当該2個の検出対象物のそれぞれの位置を検出することができないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、複数の検出対象物の位置をそれぞれ検出することができる光学式位置検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる位置検出システムは、第1検出対象物と第2検出対象物とに向けて光を射出する光射出部と、前記第1検出対象物と前記第2検出対象物とから反射する光を受光する受光部と、前記受光部が受光する光を用いて前記第1検出対象物及び前記第2検出対象物の位置を検出する位置検出部と、を有し、前記第1検出対象物は第1反射光を反射する第1反射フィルターを有し、前記第2検出対象物は前記第1反射光と波長の異なる第2反射光を反射する第2反射フィルターを有し、前記受光部は光の波長を区別して前記第1反射光を検出する第1受光部と前記第2反射光を検出する第2受光部とを有することを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、光射出部は第1検出対象物と第2検出対象物とに向けて光を射出する。第1検出対象物は第1反射光を反射する第1反射フィルターを有し、第2検出対象物は第1反射光と波長の異なる第2反射光を反射する第2反射フィルターを有している。これにより、第1反射光と第2反射光とは波長が異なる光となる。
【0009】
そして、光射出部から射出された光のうち第1反射光が第1検出対象物によって反射される。そして、第1受光部は反射された光の波長を区別して第1反射光を受光する。これにより、第1検出対象物の位置を前記位置検出部によって検出することが可能になる。同様に、光射出部から射出された光のうち第2反射光が第2検出対象物によって反射される。第2受光部はその反射された光の波長を区別して第2反射光を受光する。これにより、第2検出対象物の位置を位置検出部が検出することが可能になる。従って、光学式位置検出システムは、第1検出対象物の位置と第2検出対象物の位置をそれぞれ区別して検出することができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例に記載の位置検出システムは、前記第1反射フィルターと前記第2反射フィルターとは周波数フィルターと、入射光を入射方向と逆の方向に反射する再帰性反射体と、を備えることが好ましい。
【0011】
本適用例によれば、周波数フィルターによって第1検出対象物が反射する第1反射光と第2検出対象物が反射する第2反射光とは明確に異なる周波数にすることができる。また、再帰性反射体が反射光を所定の方向に反射させることにより位置を検出するための反射光を効率よく受信することができる。従って、複数の検出対象物の位置を精度良く検出することができる。
【0012】
[適用例3]上記適用例に記載の位置検出システムでは、前記再帰性反射体はプリズム形状であることが好ましい。
【0013】
本適用例によれば、再帰性反射体はプリズム形状となっている。プリズム形状は断面形状が直角となる2辺を有する形状である。このとき、プリズム形状は入射光に対して効率よく確実に平行な逆方向の反射光とすることができる。
【0014】
[適用例4]上記適用例に記載の位置検出システムでは、前記周波数フィルターは前記再帰性反射体の表面にコーティングまたは貼合により設置されていることが好ましい。
【0015】
本適用例によれば、周波数フィルターと再帰性反射体との間の空気層が無くなり、光射出部からの光が界面反射で劣化することがなくなる。その結果、検出対象物の製造バラツキによる反射率の個体差を小さくすることができる。
【0016】
[適用例5]上記適用例に記載の位置検出システムは、前記第1受光部と前記第2受光部とは、1つの光検出器に設置されていることが好ましい。
【0017】
本適用例によれば、第1受光部と第2受光部とが1つの光検出器に設置されている。従って、別体である場合に比べて、部品点数を低減できる。さらに、第1受光部と第2受光部とが受光する向きを調整し易くすることができる。従って、両受光部の指向性の差を低減して検出位置のずれによる位置情報への影響を低減できる。その結果、各検出対象物の相対位置を複雑な処理を行わずに精度良く検出することができる。
【0018】
[適用例6]上記適用例に記載の位置検出システムは、前記光射出部と前記第1検出対象物とを結ぶ線と、前記光検出器と前記第1検出対象物とを結ぶ線と、の成す角が10度以下であり、前記光射出部と前記第2検出対象物とを結ぶ線と、前記光検出器と前記第2検出対象物とを結ぶ線と、の成す角が10度以下であることが好ましい。
【0019】
本適用例によれば、光射出部と第1検出対象物とを結ぶ線と、光検出器と第1検出対象物とを結ぶ線と、の成す角が10度以下となっている。さらに、光射出部と第2検出対象物とを結ぶ線と、光検出器と第2検出対象物とを結ぶ線と、の成す角が10度以下となっている。再帰性反射体は入射光に対して平行な逆の方向に反射する特性をもつ為、光射出部と第1検出対象物及び第2検出対象物とを結ぶ線と、光検出器と第1検出対象物及び第2検出対象物とを結ぶ線と、のなす角が10度以上になると受光部で受光する光量が少なくなり、位置検出するためには不十分となる。本適用例では、反射光を受光可能となる場所に光検出器が位置している。従って、光射出部からの光を第1検出対象物及び第2検出対象物が反射した光を効率よく受光することができる。
【0020】
[適用例7]本適用例にかかる投射型表示システムは、上記位置検出システムと、基準面に画像を投射する画像照射システムと、を具備することを特徴とする。
【0021】
投射型表示システムは基準面に画像を投射する画像照射システムを具備している。従って、基準面に投射された画像を見ることができる。さらに、投射型表示システムは上記光学式位置検出システムを具備している。従って、画像と、第1検出対象物と第2検出対象物と検出する機能と、を組み合わせたシステムを構築することができる。この場合、光射出部を画像照射システムに設けてもよく、画像照射システムとは別に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】位置検出システムの構成を示す概略斜視図。
【図2】位置検出システムの構成を示す模式側面図。
【図3】位置検出システムの構成を示す模式正面図。
【図4】光射出部の構成を示す概略斜視図。
【図5】光源駆動部の回路構成を示す回路図。
【図6】光射出部が射出する光の周波数分布を示す分布図。
【図7】光射出部が射出する光の周波数分布を示す分布図。
【図8】検出対象物の構造を示す模式図。
【図9】再帰性反射体の基本構成例を示す模式断面図。
【図10】再帰反射要素層の形状の例を示す模式図。
【図11】(a)は、第1反射フィルターの再帰性反射体の反射特性を示す図、(b)は、第2反射フィルターの再帰性反射体の反射特性を示す図。
【図12】(a)は、第1反射光の周波数分布を示す図、(b)は、第2反射光の周波数分布を示す図。
【図13】位置検出部の構成を示すブロック図。
【図14】位置検出光の強度分布及び位置検出部での処理内容を説明するための模式図。
【図15】第1位置検出部の信号処理回路の例を示す概略回路図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図面を参照して本発明にかかる光学式位置検出システムの実施形態について説明する。尚、以下に示す本実施形態は光学式位置検出システムを投射型表示システムに適用したものであるが、本発明は投射型表示システムに限らず、種々の表示システム、その他の各種の操作システム等に適用できる。また以下の各図においては、各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0024】
(実施形態1)
(位置検出システムの全体構成)
図1は、位置検出システムの構成を示す概略斜視図であり、図2は、位置検出システムの構成を示す模式側面図である。図3は、位置検出システムの構成を示す模式正面図である。図1〜図3に示すように、本発明にかかる位置検出システム1000は、位置検出の対象となる第1検出対象物31及び第2検出対象物32と、第1検出対象物31及び第2検出対象物32に向けて光を射出する光射出部20と、を具備する。さらに、位置検出システム1000は、第1検出対象物31及び第2検出対象物32のそれぞれの反射光(第1反射光41及び第2反射光42)を受光する位置検出部としての光検出器30と、を具備する。投射型表示システム1100は光学式の位置検出システム1000と、前記基準面に画像を投射する画像照射システム1200とを具備する。
【0025】
尚、これら図1から図3までは説明の便宜上、基準面10に沿ってX軸及びY軸が設定され、基準面10の法線方向に沿ってZ軸が設定されている。これらX軸、Y軸及びZ軸はそれぞれ交差している。
【0026】
画像照射システム1200は基準面10に画像を投射する。これにより、操作者11が基準面10を見るとき、基準面10に投射された画像を見ることが可能となっている。そして、操作者11は第1検出対象物31と第2検出対象物32とを把持している。操作者11は第1検出対象物31と第2検出対象物32と用いて投影された画像の特定の場所を指示する。光射出部20は基準面10と平行に設定された検出空間70に光を射出する。そして、第1検出対象物31と第2検出対象物32とが検出空間70に位置するとき、第1検出対象物31と第2検出対象物32とには光射出部20が射出した光が照射される。
【0027】
図3に示すように、第1検出対象物31には第1反射フィルター61が設置されている。そして、照射された光が第1反射フィルター61にて反射する光を第1反射光41とする。第2検出対象物32には第2反射フィルター62が設置されている。そして、照射された光が第2反射フィルター62にて反射する光を第2反射光42とする。第1反射フィルター61と第2反射フィルター62とは異なる波長の光を反射する機能をそなえている。従って、第1反射光41と第2反射光42とは異なる波長となる。
【0028】
光検出器30には第1反射光41を検出する第1受光部51と第2反射光42を検出する第2受光部52とが設置されている。従って、光検出器30は第1反射光41と第2反射光42とを区別して検出することが可能になっている。そして、第1受光部51と第2受光部52とが1つの光検出器に設置されている。従って、別体である場合に比べて、部品点数を低減できる。さらに、第1受光部51と第2受光部52とが受光する向きを調整し易くすることができる。従って、両受光部の指向性の差を低減して検出位置のずれによる位置情報への影響を低減できる。その結果、各検出対象物の相対位置を複雑な処理を行わずに精度良く検出することができる。
【0029】
図4は、光射出部の構成を示す概略斜視図である。図4に示すように、光射出部20は、赤外光を射出する複数の発光素子90と、この複数の発光素子90を駆動する光源駆動部100とを有している。この複数の発光素子90は例えばLED(Light Emitting Diode,発光ダイオード)であり、この複数の発光素子90から位置検出光80が射出されるようになっている。第1検出対象物31及び第2検出対象物32に向けて光を射出する光射出部20は検出空間70内に位置検出光80の強度分布を形成する。
【0030】
図5は、光源駆動部の回路構成を示す回路図である。図5に示すように、光源駆動部100は複数の発光素子90を駆動する光源駆動回路110と、この光源駆動回路110を介して複数の発光素子90の発光強度をそれぞれ制御する光源制御部120とを備えている。このうち光源駆動回路110は例えば第1反射光源駆動回路111と第2反射光源駆動回路112と第3光源駆動回路113と第4光源駆動回路114とからなり、これらはそれぞれ1個の発光素子90に電気的に接続されている。これにより、位置検出光80は所定の波長域の光となっている。図6は、光射出部が射出する光の周波数分布を示す分布図である。図6において、位置検出光分布線83は位置検出光80の波長の分布の例を示す。位置検出光分布線83が示すように、例えば、位置検出光80は約800nmから1,000nmまでの波長域の光である。尚、位置検出光80は900nm以下の波長域にピーク強度を1つ有している。
【0031】
また、図7は、光射出部が射出する光の周波数分布を示す分布図である。図7において、位置検出光分布線84は位置検出光80の波長の分布の例を示す。位置検出光分布線84が示すように、位置検出光80の周波数分布は波長域が互いに異なる2種類の赤外光分布線81、82を合成した位置検出光分布線84であってもよい。例えば、一方の赤外光分布線81は約800nmから約900nmまでの波長域の光の分布であり、他方の赤外光分布線82は約900nmから約1,000nmまでの波長域の光の分布となっている。したがって、全体として約800nmから約1,000nmまでの波長域となり、異なる波長域にそれぞれピーク強度を有している。
【0032】
これにより、赤外光分布線81と赤外光分布線82のいずれか1つから位置検出光を構成する場合に比べて、位置検出光分布線84の位置検出光80は位置検出光の波長域を広げることができるとともに、互いに離れた波長域においても光強度を十分に備えることができる。この位置検出光80は、例えば、赤外光分布線81を射出するLEDの如き第1の発光素子と、赤外光分布線82を射出するLEDの如き第2の発光素子とを位置検出システムの光射出部20にそれぞれ複数個設けて同時に点灯することによって生成できる。尚、位置検出光80は波長域がそれぞれ異なる発光素子を3種類以上用いて生成させてもよい。
【0033】
図8は、検出対象物の構造を示す模式図である。図8に示すように、第1検出対象物31及び第2検出対象物32は、それぞれペン型形状となっている。そして、第1検出対象物31及び第2検出対象物32の表面には再帰性反射体130が設けられている。再帰性反射体130は第1検出対象物31及び第2検出対象物32に設置されてもよく、全体を覆って設置されても良い。位置検出光80が照射される場所に設置されていれば良い。
【0034】
図9は、再帰性反射体の基本構成例を示す模式断面図である。図9に示すように、再帰性反射体130は再帰反射要素層140を備え、再帰反射要素層140の一面には周波数フィルターとしての周波数フィルター付表面保護層150が設置されている。周波数フィルター付表面保護層150は設置された面が位置検出光80が入射する面となっている。第1反射フィルター61に設置された周波数フィルター付表面保護層150を第1周波数フィルター151とし、第2反射フィルター62に設置された周波数フィルター付表面保護層150を第2周波数フィルター152とする。第1周波数フィルター151と第2周波数フィルター152とは異なる周波数特性を備えている。
【0035】
周波数フィルター付表面保護層150は再帰性反射体130の表面にコーティングまたは貼合により設置されている。これにより、周波数フィルター付表面保護層150と再帰性反射体130の間の空気層が無くなり、光射出部からの光が界面反射で劣化することがなくなる。その結果、検出対象物の製造バラツキによる反射率の個体差を小さくすることができる。
【0036】
再帰反射要素層140において、周波数フィルター付表面保護層150と反対側は空洞部141が設置されている。そして、再帰反射要素層140と空洞部141との屈折率の差により光が反射するようになっている。
【0037】
図10は、再帰反射要素層の形状の例を示す模式図である。図10(a)は第1例の再帰反射要素層を示す模式平面図であり、図10(b)は第1例の再帰反射要素層を示す模式断面図である。図10(a)及び10(b)に示すように、再帰反射要素層142は三角錐コーナーキューブ型再帰反射素子から構成されている。図10(c)は第2例の再帰反射要素層を示す模式平面図であり、図10(d)は第2例の再帰反射要素層を示す模式断面図である。図10(c)及び10(d)に示すように、再帰反射要素層143は六角プリズム型再帰反射素子から構成されている。
【0038】
図10(e)は第3例の再帰反射要素層を示す模式平面図であり、図10(f)は第3例の再帰反射要素層を示す模式断面図である。図10(e)及び10(f)に示すように、再帰反射要素層144は三角錐コーナーキューブ型再帰反射素子から構成されている。図10(g)は第4例の再帰反射要素層を示す模式平面図であり、図10(h)は第4例の再帰反射要素層を示す模式断面図である。図10(g)及び10(h)に示すように、再帰反射要素層145は六角プリズム型再帰反射素子から構成されている。再帰反射要素層142〜再帰反射要素層145はこれらの形状から入射光を平行な逆向きに反射する特性を備えている。
【0039】
この、第1検出対象物31に設けられた再帰性反射体130には第1周波数フィルター151が設けられているとともに、第2検出対象物32に設けられた再帰性反射体130には第2周波数フィルター152が設けられており、これら第1周波数フィルター151と第2周波数フィルター152とは互いに異なる反射特性を備えている。
【0040】
光射出部20と第1検出対象物31とを結ぶ線と、光検出器30と第1検出対象物31を結ぶ線と、の成す角が10度以下であることが好ましい。同様に、光射出部20と第2検出対象物32とを結ぶ線と、光検出器30と第2検出対象物32とを結ぶ線と、の成す角が10度以下であることが好ましい。再帰性反射体130は入射光に対して平行な逆の方向に反射する特性をもつ為、光射出部20と第1検出対象物31及び第2検出対象物32とを結ぶ線と、光検出器30と第1検出対象物31及び第2検出対象物32とを結ぶ線と、のなす角が10度以上になると光検出器30で受光する光量が少なくなり、位置検出するためには不十分となる。反射光を受光可能となる場所に光検出器30を設置することにより、光検出器30は、光射出部20からの光を第1検出対象物31及び第2検出対象物32が入射光と平行な逆の方向に反射した光を効率よく受光することができる。
【0041】
図11(a)は、第1反射フィルターの再帰性反射体の反射特性を示す図であり、図11(b)は、第2反射フィルターの再帰性反射体の反射特性を示す図である。図11(a)に示おいて、第1周波数特性線151aは第1周波数フィルター151のフィルター特性を示す。第1周波数特性線151aが示すように、具体的には、第1周波数フィルター151は約800nmから約900nmまでの波長域(第1の波長域)の反射率が約900nmから約1,000nmまでの波長域(第2の波長域)の反射率より高い反射特性を備えている。
【0042】
一方、図11(b)に示おいて、第2周波数特性線152aは第2周波数フィルター152のフィルター特性を示す。第2周波数特性線152aが示すように、第2周波数フィルター152は約900nmから約1,000nmまでの波長域の反射率が約800nmから約900nmまでの波長域の反射率より高い反射特性を備えている。
【0043】
図12(a)は、第1反射光の周波数分布を示す図であり、図12(b)は、第2反射光の周波数分布を示す図である。位置検出光分布線80aは位置検出光80の周波数分布を示す。第1反射光分布線41aは第1反射光41の周波数分布を示し、第2反射光分布線42aは第2反射光42の周波数分布を示す。図12(a)に示すように、位置検出光80がこの第1周波数フィルター151に入射すると、位置検出光80の約900nmから約1,000nmまでの波長域の光成分が第1周波数フィルター151により吸収されるとともに、位置検出光80の約800nmから約900nmまでの波長域の光成分が再帰性反射体130により反射されて、第1反射光41として射出する。
【0044】
図12(b)に示すように、位置検出光80がこの第2周波数フィルター152に入射すると、位置検出光80の約800nmから約900nmまでの波長域の光成分が第2周波数フィルター152により吸収されるとともに、位置検出光80の約900nmから約1,000nmまでの波長域の光成分が再帰性反射体130により反射されて、第2反射光42として射出するようになっている。したがって、第1検出対象物31の第1反射光41と第2検出対象物32の第2反射光42はその波長分布が互いに異なったものとされる。
【0045】
(位置検出部の構成)
図1から図3までに示すように、光検出器30では第1受光部51(第1の光検出部)と第2受光部52(第2の光検出部)とが同一の筐体内に備えられている。図13は、位置検出部の構成を示すブロック図である。図13に示すように、第1受光部51には、第1反射光検出部511が設けられており、第2受光部52には、第2反射光検出部521が設けられている。光検出器30には、第1反射光検出部511の検出値に基づいて位置情報を求める第1位置検出部512と、第2反射光検出部521の検出値に基づいて位置情報を求める第2位置検出部522とが設けられている。
【0046】
これら第1反射光検出部511と第2反射光検出部521は互いに異なる感度特性を備えている。具体的には、第1反射光検出部511は約800nmから約900nmまでの波長域の検出感度が約900nmから約1,000nmまでの波長域の検出感度より高い感度特性を備えている。これにより、第1反射光検出部511の検出値に対する第2反射光42の影響を少なくし、第1反射光41の強度を反映する検出値が得られるようになっている。この第1反射光検出部511は第1位置検出部512に電気的に接続されており、第1反射光検出部511の検出値が第1位置検出部512に出力されるようになっている。
【0047】
一方、第2反射光検出部521は約900nmから約1,000nmまでの波長域の検出感度が約800nmから約900nmまでの波長域の検出感度より高い感度特性を備えている。これにより、第2反射光検出部521の検出値に対する第1反射光41の影響を少なくし、第2反射光42の強度を反映する検出値が得られるようになっている。この第2反射光検出部521は第2位置検出部522に電気的に接続されており、第2反射光検出部521の検出値が第2位置検出部522に出力されるようになっている。
【0048】
したがって、第1受光部51の第1位置検出部512は、第1反射光41を検出した第1反射光検出部511の検出値と位置検出光80の強度分布とを用いて検出空間70における第1検出対象物31の位置を検出することができるようになっている。さらに、第2受光部52の第2位置検出部522は、第2反射光42を検出した第2反射光検出部521の検出値と位置検出光80の強度分布とを用いて検出空間70における第2検出対象物32の位置を検出することができるようになっている。
【0049】
(座標検出の基本原理)
本実施形態の光学式位置検出システムにおいては、光射出部20の複数の発光素子90を点灯させることにより、検出空間70に基準面10に沿って位置検出光80の強度分布を形成した。この状態で、第1検出対象物31の再帰性反射体130で反射した第1反射光41を第1反射光検出部511によって検出し、その結果に基づいて第1位置検出部512によって検出空間70における第1検出対象物31の位置を検出する。さらに、第2検出対象物32の再帰性反射体130で反射した第2反射光42を第2反射光検出部521によって検出してその結果に基づいて第2位置検出部522によって検出空間70における第2検出対象物32の位置を検出する。以下においては、図14を参照して、光強度分布の構成及び第1検出対象物31の座標検出の原理を説明する。尚、第2検出対象物32の座標検出原理は第1検出対象物31の座標検出の原理と同様であり、その説明は省略する。
【0050】
図14は、位置検出光の強度分布及び位置検出部での処理内容を説明するための模式図である。図14(a)は、位置検出光のX軸方向の強度分布を説明するための図であり、図14(b)は、第1検出対象物で反射した反射光の強度を説明するための図である。図14(c)は、第1検出対象物で反射した反射光の強度が等しくなるように位置検出光の強度分布を調整する様子を説明するための図である。
【0051】
光射出部20から位置検出光80が射出されると、複数の発光素子90の点灯パターンによって基準面10に沿った検出空間70に位置検出光80の強度分布が形成される。例えば、X座標を検出する際には、図14(a)及び図14(b)に示すように、まず、第1期間においてX軸方向の一方側X1から他方側X2に向かって強度が漸次減少していくX座標検出用第1強度分布80Xaを形成した後、第2期間においてX軸方向の他方側X2から一方側X1に向かって強度が漸次減少していくX座標検出用第2強度分布80Xbを形成する。
【0052】
ここで、図示例のように、第1期間においてX軸方向の一方側X1から他方側X2に向かって強度が直線的に減少していくX座標検出用第1強度分布80Xaを形成し、第2期間においてX軸方向の他方側X2から一方側X1に向かって強度が直線的に減少していくX座標検出用第2強度分布80Xbを形成することが好ましい。
【0053】
この状態において、第1検出対象物31を検出空間70に配置すると、位置検出光80が第1検出対象物31の再帰性反射体130によって反射されて第1反射光41に変調され、この第1反射光41の一部が光検出器30の第1反射光検出部511によって検出される。このときX座標検出用第1強度分布80XaとX座標検出用第2強度分布80Xbとを予め設定しておけば以下の方法等により、第1検出対象物31のX座標を検出することができる。
【0054】
図14(b)に示すように、第1の方法はX座標検出用第1強度分布80XaとX座標検出用第2強度分布80Xbの差を利用する方法である。具体的には、X座標検出用第1強度分布80XaとX座標検出用第2強度分布80Xbは予め設定した既定の分布態様になるように構成されているので、X座標検出用第1強度分布80XaとX座標検出用第2強度分布80Xbの差も予め設定した態様のX座標の関数になっている。したがって、第1期間においてX座標検出用第1強度分布80Xaを形成した際の第1反射光検出部511での検出値300Xaと、第2期間においてX座標検出用第2強度分布80Xbを形成した際の第1反射光検出部511での検出値300Xbとの差を求めれば、第1検出対象物31のX座標を検出することができる。尚、検出値300Xaと300Xbの比もX座標の関数となるため、当該比を求めてX座標を検出することも可能である。
【0055】
第2の方法は、X座標検出用第1強度分布80Xaにおける検出値300XaとX座標検出用第2強度分布80Xbにおける検出値300Xbとが等しくなるように複数の発光素子90の駆動電流を調整する際の調整量を利用する方法である。尚、この第2の方法は図14(b)に示すX座標検出用第1強度分布80XaとX座標検出用第2強度分布80XbとがX座標に対して直線的に変化する場合に適用できる。
【0056】
図14(b)に示すように、まず、第1期間及び第2期間においてX座標検出用第1強度分布80XaとX座標検出用第2強度分布80Xbとを絶対値が等しくかつX軸方向に逆向きに形成する。この状態で、X座標検出用第1強度分布80Xaにおける検出値300Xaと、X座標検出用第2強度分布80Xbにおける検出値300Xbとが等しければ、第1検出対象物31がX軸方向の中央に位置することが分かる。
【0057】
これに対して、図14(c)に示すように、検出値300Xaと検出値300Xbが相違している場合には、両者が等しくなるように第1期間と第2期間の両方またはいずれか一方の期間における複数の発光素子90に対する駆動電流を調整して、再度、第1期間においてX座標検出用第1強度分布80Xaを形成するとともに第2期間においてX座標検出用第2強度分布80Xbを形成する。その結果、検出値300Xaと検出値300Xbが等しくなれば、第1期間における調整量Δ300Xaと、第2期間における調整量Δ300Xbとの比や差等により、第1検出対象物31のX座標を検出することができる。または調整した後の第1期間での複数の発光素子90に対する制御量と、調整した後の第2期間での複数の発光素子90に対する制御量との比や差等により、第1検出対象物31のX座標を検出することができる。
【0058】
上記の第1の方法と第2の方法とのいずれの方法を採用する場合でも同様に、第3期間においてY軸方向の一方側から他方側に向かって強度が漸次減少するY座標検出用第1強度分布を形成する。その後、第4期間においてY軸方向の他方側から一方側に向かって強度が漸次減少するY座標検出用第2強度分布を形成する。これにより、第1検出対象物31のY座標を検出することができる。さらに、第5期間においてZ軸方向の強度分布を形成すれば、第1検出対象物31のZ座標を検出することができる。ここで、この第5期間においては、例えば光射出部20の総ての発光素子90を総て同じ発光量となるように駆動し、これによってX軸及びY軸方向には強度がほぼ一定であるが、Z軸方向には強度が変化する強度分布を形成することができる。尚、上記の第1の方法または第2の方法を用いて同様に第2検出対象物32のX座標とY座標とZ座標とをそれぞれ検出することができる。
【0059】
また、上記の第1の方法と第2の方法のいずれの方法でも、環境光に含まれる赤外成分が第1反射光検出部511に入射したとしても、検出値300Xa、300Xbの差を求める際に、または検出値300Xa、300Xbが等しくなるように調整する際に環境光の強度が相殺されるので、環境光が第1検出対象物31の検出精度に影響を及ぼすことがない。環境光が第2反射光検出部521に入射したとしても同様に第2検出対象物32の検出精度に影響を及ぼすことがない。
【0060】
上記のように、第1反射光検出部511の検出結果に基づいて検出空間70における第1検出対象物31の位置情報を取得する。そして、第2反射光検出部521の検出結果に基づいて検出空間70における第2検出対象物32の位置情報を取得する。このとき、例えば、第1位置検出部512と第2位置検出部522とにマイクロプロセッサーユニット(MPU:Micro Processing Unit)をそれぞれ用いて、これに所定のソフトウェア(動作プログラム)を実行することに従って処理を行う構成を採用することができる。また、図15を参照して以下に説明するように、論理回路等のハードウェアを用いた信号処理部で処理を行う構成を採用することもできる。
【0061】
図15は、第1位置検出部の信号処理回路の例を示す概略回路図である。ここに示す第1位置検出部512は、上述の座標検出の基本原理における第1の方法を実現するものである。すなわち、第1期間における第1反射光検出部511での検出値300Xaと、第2期間における第1反射光検出部511での検出値300Xbとの差を算出する。次に、算出した差の値を予め設定されたX座標検出用第1強度分布80XaとX座標検出用第2強度分布80Xbとの差の関数値に照合させて、第1検出対象物31のX座標を検出するものである。尚、第1検出対象物31のX座標とY座標とZ座標とをそれぞれ検出するための構成は同様であるため、以下の説明では第1検出対象物31のX座標を求める場合のみを説明する。また、図13に示す第2検出対象物32のX座標とY座標とZ座標とを検出するための第2受光部52の第2反射光検出部521及び第2位置検出部522は、第1受光部51の第1反射光検出部511及び第1位置検出部512とそれぞれ同様であり、その説明は省略する。
【0062】
図15に示すように、本実施形態の位置検出システム1000における光源駆動回路110は、第1期間では可変抵抗160を介して複数の発光素子90に所定電流値の駆動パルスを印加し、第2期間では可変抵抗161及び反転回路170を介して複数の発光素子90に所定電流値の駆動パルスを印加するものとして表される。したがって、光源駆動回路110は第1期間と第2期間とでは、複数の発光素子90に対して逆相の駆動パルスを印加することになる。
【0063】
そして、第1期間においてX座標検出用第1強度分布80Xaを形成した際の位置検出光80が第1検出対象物31の再帰性反射体130で反射して第1反射光41に変調され、この第1反射光41が第1反射光検出部511で受光される。同様に、第2期間においてX座標検出用第2強度分布80Xbを形成した際の位置検出光80が第1検出対象物31の再帰性反射体130で反射して第1反射光41に変調され、この第1反射光41が第1反射光検出部511で受光される。この第1反射光検出部511は光強度信号生成回路180の中に設けられており、1kΩ程度の抵抗190が直列に電気的に接続され、それらの両端にはバイアス電圧Vbが印加されている。
【0064】
光強度信号生成回路180において、第1反射光検出部511と抵抗190との接続点200には、第1位置検出部512が電気的に接続されている。この接続点200から出力される検出信号Vcは第1反射光検出部511が受光する光強度を反映したレベル及び振幅を備えた、上記パルス信号に対応する交流信号となっている。
【0065】
第1位置検出部512は光強度信号生成回路180の出力に接続されている。第1位置検出部512は、光検出信号を取り出す信号抽出回路220と、光検出信号から第1期間と第2期間の信号を分離する信号抽出回路260と、分離された信号に基づいて位置情報と関連する信号を形成する信号処理回路300とを有している。
【0066】
この信号抽出回路220は、1nF程度のキャパシターからなるフィルター230を備えており、このフィルター230は第1反射光検出部511と抵抗190との接続点200から出力された信号から直流成分を除去するハイパスフィルターとして機能する。このため、フィルター230によって接続点200から出力された検出信号Vcからは、電圧Vcの交流成分である位置検出信号Vdが抽出される。つまり、位置検出光80は変調されているのに対して、環境光はある期間内において強度が一定であると見なすことができるので、環境光に起因する低周波成分あるいは直流成分はフィルター230によって除去される。
【0067】
また、信号抽出回路220は、フィルター230の後段に220kΩ程度の帰還抵抗240を備えた加算回路250を有している。フィルター230によって抽出された位置検出信号Vdは、バイアス電圧Vbの1/2倍の電圧V/2に重畳された位置検出信号Vsとして信号抽出回路260に出力される。
【0068】
信号抽出回路260は、第1期間において発光素子90に印加される駆動パルスに同期してスイッチング動作を行うスイッチ270と、比較器280と、比較器280の入力線にそれぞれ電気的に接続されたキャパシター290とを備えている。このため、位置検出信号Vsが信号抽出回路260に入力されると、信号抽出回路260から信号処理回路300には、第1期間での位置検出信号Vsの実効値Veaと、第2期間での位置検出信号Vsの実効値Vebとが交互に出力される。
【0069】
この信号処理回路300は、第1期間での実効値Veaと第2期間での実効値Vebとの差を求めるものであり、この差を位置検出信号Vgとして位置判定部310に出力する。位置判定部310の記憶部320には検出空間70のX軸方向にわたるX座標検出用第1強度分布80XaとX座標検出用第2強度分布80Xbの差の関数値が収容されており、位置検出信号Vgをこの関数値と照合して対応するX座標を割り出し、これにより第1検出対象物31のX座標を得ることができる。
【0070】
尚、上述の座標検出の基本原理における第2の方法は、第1期間及び第2期間における第1反射光検出部511での検出値300Xa、300Xbが等しくなるように、複数の発光素子90に対する制御量(駆動電流)を調整した際の調整量に基づいて第1検出対象物31のX座標を検出する。図15に点線で示すように、第1受光部51の信号処理回路300から、第1期間での位置検出信号Vsの実効値Veaと、第2期間での位置検出信号Vsの実効値Vebとが同一レベルとなるように位置検出システム1000の光源駆動回路110に制御信号Vfが出力するように構成される。この場合には、第1期間の実効値Veaと第2期間の実効値Vebとを比較して、それらが等しい場合には現状の駆動条件を維持させる。これに対して、第1期間の実効値Veaが第2期間の実効値Vebより低い場合には可変抵抗160の抵抗値を下げさせて第1期間での発光素子90からの射出光量を高める。また、第2期間の実効値Vebが第1期間の実効値Veaより低い場合には可変抵抗161の抵抗値を下げさせて第2期間の射出光量を高める。そして、最終的に実効値VeaとVebとが同一レベルになったときの上記調整量を位置情報の算出に用いる。
【0071】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態では、第1検出対象物31及び第2検出対象物32に互いに異なる反射特性を備えた第1周波数フィルター151と第2周波数フィルター152がそれぞれ設けられた。そして、入射光に対し平行な逆方向に強く反射する再帰性反射体130が設けられているとともに、光検出器30に互いに異なる感度特性を備えた第1反射光検出部511と第2反射光検出部521がそれぞれ設けられた。これにより、第1反射光検出部511の検出値は第1周波数フィルター151の反射光(第1反射光41)を反映するが、第2周波数フィルター152の反射光(第2反射光42)の影響は抑制される。また、第2反射光検出部521の検出値は第2周波数フィルター152の反射光(第2反射光42)を反映するが、第1周波数フィルター151の反射光(第1反射光41)の影響は抑制される。2つの反射光はそれぞれ強い反射光を検出器に戻すことができるので、第1検出対象物31及び第2検出対象物32の反射光を混同することなく区別して、精度良く検出できる。従って、第1検出対象物31及び第2検出対象物32の検出空間70における位置をそれぞれ検出できる。
【0072】
(2)第1周波数フィルター151と第2周波数フィルター152は第1検出対象物31及び第2検出対象物32の先端部にそれぞれ設けられている。そして、第1周波数フィルター151は第1反射光41を通過させ、第2周波数フィルター152は第2反射光42を通過させている。第1受光部51は第1反射光41を検出し、第2受光部52は第2反射光42を検出する。従って、第1受光部51は第1検出対象物31の位置を検出することができ、第2受光部52は第2検出対象物32の位置を検出することができる。また、再帰性反射体130が反射光を所定の方向に反射させることにより位置を検出するための反射光を効率よく受信することができる。従って、複数の検出対象物の位置を精度良く検出することができる。
【0073】
(3)本実施形態では、再帰性反射体130はプリズム形状となっている。このとき、プリズム形状は入射光に対して効率よく確実に平行な逆方向の反射光とすることができる。
【0074】
(4)本実施形態では、周波数フィルター付表面保護層150は再帰性反射体130の表面にコーティングまたは貼合により設置されている。周波数フィルター付表面保護層150と再帰性反射体130との間の空気層が無くなり、光射出部20からの光が界面反射で劣化することがなくなる。その結果、検出対象物の製造バラツキによる反射率の個体差を小さくすることができる。
【0075】
(5)本実施形態では、第1受光部51と第2受光部52とが1つの光検出器30に設置されている。従って、別体である場合に比べて、部品点数を低減できる。さらに、第1受光部51と第2受光部52とが受光する向きを調整し易くすることができる。従って、両受光部の指向性の差を低減して検出位置のずれによる位置情報への影響を低減できる。その結果、各検出対象物の相対位置を複雑な処理を行わずに精度良く検出することができる。
【0076】
(6)本実施形態では、光射出部20と第1検出対象物31とを結ぶ線と、光検出器30と第1検出対象物31とを結ぶ線と、の成す角が10度以下となっている。さらに、光射出部20と第2検出対象物32とを結ぶ線と、光検出器30と第2検出対象物32とを結ぶ線と、の成す角が10度以下となっている。再帰性反射体は入射光に対して平行な逆の方向に反射する特性をもつ為、光射出部20と第1検出対象物31及び第2検出対象物32とを結ぶ線と、光検出器30と第1検出対象物31及び第2検出対象物32とを結ぶ線と、のなす角が10度以上になると光検出器30で受光する光量が少なくなり、位置検出するためには不十分となる。本実施形態では、反射光を受光可能となる場所に光検出器30が位置している。従って、光射出部20からの光を第1検出対象物31及び第2検出対象物32が反射した光を効率よく受光することができる。
【0077】
(7)本実施形態では、再帰性反射体130により第1検出対象物31及び第2検出対象物32からの反射光を強めることが可能になる。従って、投射型表示装置(プロジェクター)のように表示エリアが広い場合であっても、光学的に位置を検出することが可能になる。
【0078】
(8)本実施形態においては、第1検出対象物31及び第2検出対象物32の座標を検出するのに、座標検出の基本原理における第1の方法、すなわち、位置検出光80の2種類の強度分布の差を利用する方法を用いることができる。第2の方法を2種類の強度分布における検出値が等しくなるように複数の発光素子90の駆動電流を調整する際の調整量を利用する方法とする。このとき、第2の方法に比べて第1の方法は、第1検出対象物31及び第2検出対象物32のそれぞれについて複数の発光素子90の駆動電流を調節する必要がない。従って、第1検出対象物31及び第2検出対象物32の位置を同時に並行して検出することができる。したがって、時分割処理等を行う必要がなくなり、複数の検出対象物の位置情報を任意のタイミングで求めることが可能になるため、簡易な構成で複数の検出対象物を判別することができる。
【0079】
(9)本実施形態においては、投射型表示システム1100は基準面10に画像を投射する画像照射システム1200を具備している。従って、基準面10に投射された画像を見ることができる。さらに、投射型表示システム1100は位置検出システム1000を具備している。従って、画像と、第1検出対象物31と第2検出対象物32と検出する機能と、を組み合わせたシステムを構築することができる。この場合、光射出部20を画像照射システム1200に設けてもよく、画像照射システム1200とは別に設けてもよい。
【0080】
上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本考案の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
(変形例1)
本実施形態においては、第1検出対象物31と第2検出対象物32の表面に互いに異なる反射特性を備えた第1周波数フィルター151と第2周波数フィルター152とをそれぞれ設けた。これら第1周波数フィルター151と第2周波数フィルター152を設けることなく、第1検出対象物31と第2検出対象物32の表面に露出する構成材料を異なる素材で構成することで互いに異なる反射特性を有するものとしてもよい。
【0081】
(変形例2)
本実施形態では、第1検出対象物31及び第2検出対象物32と、これらに対応する第1反射光検出部511及び第2反射光検出部521とを設けている。そして、相互に異なる波長域を用いることにより第1検出対象物31及び第2検出対象物32の位置をそれぞれ検出している。この方法に限定されずに3種類以上の異なる波長域を用いることにより3個以上の検出対象物と3個以上の光検出器とを設けて3個以上の検出対象物の位置をそれぞれ検出することも可能である。
【0082】
以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は総て本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また光学式位置検出システム及び投射型表示システムの構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0083】
20…光射出部、30…位置検出部としての光検出器、31…第1検出対象物、32…第2検出対象物、51…第1受光部、52…第2受光部、61…第1反射フィルター、62…第2反射フィルター、130…再帰性反射体、151…周波数フィルターとしての第1周波数フィルター、152…周波数フィルターとしての第2周波数フィルター、512…第1位置検出部、522…第2位置検出部、1000…位置検出システム、1100…投射型表示システム、1200…画像照射システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1検出対象物と第2検出対象物とに向けて光を射出する光射出部と、
前記第1検出対象物と前記第2検出対象物とから反射する光を受光する受光部と、
前記受光部が受光する光を用いて前記第1検出対象物及び前記第2検出対象物の位置を検出する位置検出部と、を有し、
前記第1検出対象物は第1反射光を反射する第1反射フィルターを有し、前記第2検出対象物は前記第1反射光と波長の異なる第2反射光を反射する第2反射フィルターを有し、
前記受光部は光の波長を区別して前記第1反射光を検出する第1受光部と前記第2反射光を検出する第2受光部とを有することを特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
前記第1反射フィルターと前記第2反射フィルターとは周波数フィルターと、入射光を入射方向と逆の方向に反射する再帰性反射体と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記再帰性反射体はプリズム形状であることを特徴とする請求項2に記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記周波数フィルターは前記再帰性反射体の表面にコーティングまたは貼合により設置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の位置検出システム。
【請求項5】
前記第1受光部と前記第2受光部とは、1つの光検出器に設置されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項6】
前記光射出部と前記第1検出対象物とを結ぶ線と、前記光検出器と前記第1検出対象物とを結ぶ線と、の成す角が10度以下であり、前記光射出部と前記第2検出対象物とを結ぶ線と、前記光検出器と前記第2検出対象物とを結ぶ線と、の成す角が10度以下であることを特徴とする請求項5に記載の位置検出システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の位置検出システムと、基準面に画像を投射する画像照射システムと、を具備することを特徴とする投射型表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−189532(P2012−189532A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55185(P2011−55185)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】