説明

作業車のPTOクラッチ操作構造

【課題】 作業車のPTOクラッチ操作構造において、昇降レバー及びポジション制御手段を備えた場合、作業装置の昇降駆動に応じてPTOクラッチを適切に伝動及び遮断状態に操作することができるように構成する。
【解決手段】 所定範囲A1に亘って人為的に操作される昇降レバー12を備えて、ポジション制御手段を備える。所定範囲A1の上限位置A3よりも下降側にPTO切換位置A4,A5を設定する。昇降レバー12がPTO切換位置A4,A5よりも下降側に位置すると、PTOクラッチ29を伝動状態に操作し、昇降レバー12がPTO切換位置A4,A5よりも上昇側に位置すると、PTOクラッチ29を遮断状態に操作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体に連結された作業装置に動力を伝達可能なPTO軸、及びPTO軸に動力を伝動及び遮断自在なPTOクラッチを備えた作業車のPTOクラッチ操作構造に関する。
【背景技術】
【0002】
PTO軸及びPTOクラッチを備えた作業車の一例である農用トラクタでは、リンク機構(3点リンク機構や2点リンク機構等)、及びリンク機構を昇降駆動自在な油圧シリンダ(昇降アクチュエータに相当)を機体に備えており、作業装置(例えばロータリ耕耘装置)をリンク機構に連結可能に構成している。
この場合、特許文献1に開示されているように、ロータリ耕耘装置が地面に接地している状態で、昇降スイッチ(特許文献1の図3及び図5の27)を押し操作すると、ロータリ耕耘装置がリンク機構の上限角度の位置に上昇駆動され、次に昇降スイッチをもう一度押し操作すると、ロータリ耕耘装置が地面に接地する位置に下降駆動されるように構成されたものがある。
【0003】
特許文献1では、ロータリ耕耘装置が地面に接地している状態で、昇降スイッチを押し操作すると、PTOクラッチが遮断状態に操作されて、ロータリ耕耘装置がリンク機構の上限角度の位置に上昇駆動されるように構成されており、次に昇降スイッチをもう一度押し操作すると、ロータリ耕耘装置が地面に接地する位置に下降駆動されて、PTOクラッチが伝動状態に操作されるように構成されている。
【0004】
ロータリ耕耘装置が上昇駆動された状態で回転駆動されると、ロータリ耕耘装置の耕耘爪に付着した土が飛散したり、回転するロータリ耕耘装置の耕耘爪が畦際の障害物に接触することによる破損が生じたりすることがあるので、前述のように昇降スイッチの押し操作によってロータリ耕耘装置が上昇駆動された際に、PTOクラッチを遮断状態に操作して、ロータリ耕耘装置を停止させることにより、ロータリ耕耘装置の耕耘爪に付着した土の飛散や、回転するロータリ耕耘装置の耕耘爪が畦際の障害物に接触することによる破損を防止している。
これにより、ロータリ耕耘装置の耕耘爪に付着した土の飛散や、回転するロータリ耕耘装置の耕耘爪が畦際の障害物に接触することによる破損を防止すると言う点から、ロータリ耕耘装置が上昇駆動される際には、できるだけ速くPTOクラッチを遮断状態に操作することが好ましい。
【0005】
【特許文献1】特開平8−56413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の昇降スイッチを押し操作した場合、作業装置は地面に接地する位置及びリンク機構の上限角度の位置に亘って昇降駆動されるのであり、地面に接地する位置及びリンク機構の上限角度の位置の間の中間位置に、作業装置を停止させることはできない。例えば畦際での旋回時のように、作業装置を作動させる必要がない場合、作業装置を中間位置で停止させる必要もないので、昇降スイッチが有効なものになる。
【0007】
農用トラクタ等の作業車では前述の昇降スイッチに加えて、昇降レバー及びポジション制御手段を備えているものが多くある。昇降レバーは所定範囲に亘って人為的に操作されるものであり、ポジション制御手段は、昇降レバーの所定範囲の操作位置を検出する位置センサーの検出値、及びリンク機構の機体に対する上下角度を検出する角度センサーの検出値に基づいて、所定範囲での昇降レバーの操作位置に対応する上下角度に、リンク機構が機体に対して位置するように、リンク機構を昇降駆動する昇降アクチュエータを作動させるものである。これにより、昇降レバーを任意の操作位置に操作することによって、地面に接地する位置及びリンク機構の上限角度の位置の間の任意の中間位置に、作業装置を停止させることができる。
本発明は作業車のPTOクラッチ操作構造において、昇降レバー及びポジション制御手段を備えた場合、作業装置の昇降駆動に応じてPTOクラッチを適切に伝動及び遮断状態に操作することができるように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、作業車のPTOクラッチ操作構造において次のように構成することにある。
作業装置を昇降自在に連結自在なリンク機構と、リンク機構を昇降駆動可能な昇降アクチュエータと、リンク機構の機体に対する上下角度を検出する角度センサーと、所定範囲に亘って人為的に操作される昇降レバーと、昇降レバーの所定範囲の操作位置を検出する位置センサーとを備える。
位置及び角度センサーの検出値に基づいて、所定範囲での昇降レバーの操作位置に対応する上下角度にリンク機構が機体に対して位置するように、昇降アクチュエータを作動させるポジション制御手段を備える。
リンク機構に連結された作業装置に動力を伝達可能なPTO軸と、PTO軸に動力を伝動及び遮断自在なPTOクラッチとを備える。
所定範囲の上限位置よりも下降側にPTO切換位置を設定する。位置センサーの検出値に基づいて、昇降レバーがPTO切換位置よりも下降側に位置すると、PTOクラッチを伝動状態に操作し、昇降レバーがPTO切換位置よりも上昇側に位置すると、PTOクラッチを遮断状態に操作するPTO操作手段を備える。
【0009】
(作用)
[I−1]
昇降レバー及びポジション制御手段を備えた場合、昇降レバーを任意の操作位置に操作することによって、地面に接地する位置及びリンク機構の上限角度の間の任意の中間位置に、作業装置を停止させることができる。
このことについて言い換えると、昇降レバーを所定範囲の下限位置付近及び上限位置に操作することにより、作業装置を地面に接地する位置及びリンク機構の上限角度の位置に亘って昇降駆動することができるのであり、昇降レバーを所定範囲の下限位置付近で操作することにより、作業装置の作業高さ(例えばロータリ耕耘装置の耕耘深さ)を変更することができる。
【0010】
この場合、ロータリ耕耘装置の耕耘爪に付着した土の飛散や、回転するロータリ耕耘装置の耕耘爪が畦際の障害物に接触することによる破損を防止すると言う点から、昇降レバーが現在の操作位置から上昇側に操作されると、直ちにPTOクラッチが遮断状態に操作されるように構成することが考えられる。
しかしながら、このように構成すると、PTOクラッチの伝動状態において、昇降レバーを所定範囲の下限位置付近で操作して、作業装置の作業高さを変更する際に、PTOクラッチが遮断状態に操作されてしまうので、作業を続行する為には再びPTOクラッチを伝動状態に操作しなければならず、手間の掛かるものとなる。
【0011】
本発明の第1特徴によると、所定範囲に亘って人為的に操作される昇降レバーにおいて所定範囲の上限位置よりも下降側にPTO切換位置が設定されており、昇降レバーがPTO切換位置よりも上昇側に位置すると、PTOクラッチが遮断状態に操作されるように構成している。
これにより、昇降レバーを所定範囲の下限位置付近で操作して作業装置の作業高さを変更する際に、昇降レバーはPTO切換位置の下降側に位置しており、PTOクラッチが遮断状態に操作されないのであり、作業を続行する為に再びPTOクラッチを伝動状態に操作すると言うようなことを行う必要がない。
【0012】
[I−2]
本発明の第1特徴によると、例えば畦際での旋回時等のように、作業装置を作動させる必要がなく、作業装置を中間位置で停止させる必要がない場合、昇降レバーを所定範囲の上限位置に操作すれば、作業装置がリンク機構の上限角度の位置に上昇駆動されるのであり、PTOクラッチが遮断状態に操作される。
この場合、ロータリ耕耘装置の耕耘爪に付着した土の飛散や、回転するロータリ耕耘装置の耕耘爪が畦際の障害物に接触することによる破損を防止すると言う点から、昇降レバーを所定範囲の上限位置に操作すると、PTOクラッチが遮断状態に操作されるように構成した場合、PTOクラッチの遮断状態への操作が遅いと言うことができる。
【0013】
本発明の第1特徴によると、所定範囲に亘って人為的に操作される昇降レバーにおいて所定範囲の上限位置よりも下降側にPTO切換位置が設定されているので、昇降レバーを所定範囲の上限位置に操作した際に、昇降レバーがPTO切換位置を通過してから所定範囲の上限位置に到達することになり、昇降レバーが所定範囲の上限位置に到達する前に、比較的早くPTOクラッチが遮断状態に操作される。
これにより、昇降レバーを所定範囲の上限位置に操作した際に、PTOクラッチが遮断状態に操作される構成に比べて、ロータリ耕耘装置の耕耘爪に付着した土の飛散や、回転するロータリ耕耘装置の耕耘爪が畦際の障害物に接触することによる破損を防止すると言う点で、有利なものとなる。
【0014】
[I−3]
昇降レバー及びポジション制御手段を備えた場合、昇降アクチュエータの反応速度及び作動速度には限界があるので、例えば昇降レバーをある操作位置から別の操作位置に素早く操作した際に、昇降レバーをある操作位置から操作し始めると、少し遅れて昇降アクチュエータが作動し、昇降レバーが別の操作位置に到達すると、昇降レバーの別の操作位置に対応する上下角度に、少し遅れて昇降アクチュエータが到達して停止すると言うような状態が生じる。
【0015】
本発明の第1特徴によると、昇降レバーの所定範囲の操作位置を検出する位置センサーを備え、位置センサーの検出値に基づいて、昇降レバーがPTO切換位置よりも上昇側に位置すると、PTOクラッチが遮断状態に操作されるように構成している。
これにより、例えば昇降レバーを所定範囲の下限位置付近から上限位置に素早く操作した際に、PTO切換位置に対応する上下角度にリンク機構(作業装置)が到達する前に(PTO切換位置に対応する上下角度よりも低い上下角度)、昇降レバーがPTO切換位置に到達して、さらに早くPTOクラッチが遮断状態に操作される。
従って、ロータリ耕耘装置の耕耘爪に付着した土の飛散や、回転するロータリ耕耘装置の耕耘爪が畦際の障害物に接触することによる破損を防止すると言う点で、前項[I−2]に記載の本発明の第1特徴の状態よりもさらに有利なものとなる。
【0016】
[I−4]
作業装置をリンク機構の上限角度の位置に上昇駆動した後(PTOクラッチの遮断状態)、作業装置を地面に接地する位置に下降駆動する場合、作業装置が地面に接地する前にPTOクラッチが伝動状態に操作されることが好ましい(例えばロータリ耕耘装置では、ロータリ耕耘装置の耕耘爪が回転駆動された状態でロータリ耕耘装置が下降駆動され、回転するロータリ耕耘装置の耕耘爪が徐々に地面に入り込んでいく状態が好ましい)。
【0017】
本発明の第1特徴によると、所定範囲の上限位置よりも下降側にPTO切換位置が設定され、位置センサーの検出値に基づいて、昇降レバーがPTO切換位置よりも下降側に位置すると、PTOクラッチが伝動状態に操作されるように構成しており、作業装置が地面に接地する位置に対応する所定範囲の位置よりも高い位置に、PTO切換位置が位置している。
これにより、昇降レバーを所定範囲の上限位置から下限位置付近に操作する際に、作業装置が地面に接地する前に昇降レバーがPTO切換位置に到達して、比較的早くPTOクラッチが伝動状態に操作されるのであり、昇降レバーが所定範囲の下限位置付近に到達して、作業装置が地面に接地する位置に到達する状態となる。
【0018】
さらに、前項[I−3]に記載のように、昇降アクチュエータの反応速度及び作動速度には限界があり、昇降レバーを素早く操作した際に、昇降レバーの操作に対して昇降アクチュエータの作動が遅れる状態が生じるので、例えば昇降レバーを所定範囲の上限位置から下限位置付近に素早く操作すれば、PTO切換位置に対応する上下角度にリンク機構(作業装置)が到達する前に(PTO切換位置に対応する上下角度よりも高い上下角度)、昇降レバーがPTO切換位置に到達して、さらに早くPTOクラッチが伝動状態に操作される。
【0019】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、作業車のPTOクラッチ操作構造において、昇降レバー及びポジション制御手段を備えた場合、PTOクラッチの伝動及び遮断状態への操作を伴って、作業装置を地面に接地する位置及びリンク機構の上限角度の位置に亘って昇降駆動する状態、並びにPTOクラッチを伝動状態に維持しながら作業装置の作業高さを変更する状態の両方の状態に適切に対応することができるようになって、作業車のPTOクラッチの操作性及び作業性を向上させることができた。
【0020】
本発明の第1特徴によると、昇降レバーを所定範囲の上限位置に操作した際に、比較的早くPTOクラッチが遮断状態に操作される点、並びに、昇降レバーを所定範囲の下限位置付近に操作した際に、比較的早くPTOクラッチが伝動状態に操作される点により、作業車のPTOクラッチの操作性及び作業性を向上させることができた。
【0021】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の作業車のPTOクラッチ操作構造において次のように構成することにある。
作業装置を機体に対してローリング駆動するローリングアクチュエータを備えて、作業装置の水平面に対する機体左右方向の角度を設定角度に維持するように、ローリングアクチュエータを作動操作するローリング制御手段を備える。リンク機構の上限角度よりも下降側にローリング切換角度を設定する。角度センサーの検出値に基づいて、リンク機構の上下角度がローリング切換角度よりも下降側であると、ローリング制御手段を作動させ、リンク機構の上下角度がローリング切換角度よりも上昇側であると、ローリング制御手段を停止させるローリング操作手段を備える。
【0022】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
[II−1]
農用トラクタ等の作業車では、作業装置を機体に対してローリング駆動するローリングアクチュエータを備えて、作業装置の水平面に対する機体左右方向の角度を設定角度に維持するように、ローリングアクチュエータを作動操作するローリング制御手段を備えているものが多くある。
【0023】
本発明の第2特徴によると、作業装置が地面に接地する位置及びリンク機構の上限角度の位置に亘って昇降駆動される場合、前項[I]に記載のように、PTOクラッチが伝動及び遮断状態に操作されるのに加えて、ローリング制御手段が作動及び停止状態に操作される。
作業装置が大きく上昇駆動された状態(リンク機構の上限角度の位置に上昇駆動された状態)において、ローリング制御手段が作動して作業装置がローリング駆動されると、機体の安定と言う点で好ましくないが、本発明の第2特徴のように、作業装置が大きく上昇駆動された状態(リンク機構の上限角度の位置に上昇駆動された状態)において、ローリング制御手段を停止させることにより、機体の安定と言う点で良いものとなる。
【0024】
[II−2]
本発明の第2特徴によると、リンク機構の上限角度よりも下降側にローリング切換角度を設定されており、リンク機構の上下角度とローリング切換角度とに基づいて、ローリング制御手段が作動及び停止状態に操作される。
この場合、機体に対する作業装置の実際の高さ(上下角度)に相当するリンク機構の上下角度を利用しているので、地面の状態(硬い作業地において機体が地面に沈み込まない状態や、深い水田等のように機体が沈み込んだ状態等)の影響を受けることなく、地面から上方の位置にローリング切換角度を設定することができる。
【0025】
これにより、作業装置をリンク機構の上限角度の位置に上昇駆動した後(PTOクラッチの遮断状態で、ローリング制御手段の停止状態)、昇降レバーを所定範囲の上限位置から下限位置付近に操作する際に、作業装置が地面に接地する前にリンク機構の上下角度がローリング切換位置に到達して、比較的早くローリング制御手段が作動状態となり、作業装置の水平面に対する機体左右方向の角度が設定角度に維持された状態で、作業装置が地面に接地する位置に到達する状態となる。
従って、作業装置の水平面に対する機体左右方向の角度が適切でない角度に維持された状態で、作業装置が地面に接地することによる不具合を防止することができる。
【0026】
[II−3]
前項[II−2]に記載のように、昇降レバーを所定範囲の上限位置から下限位置付近に操作する状態を考慮すると、リンク機構の上限角度にローリング切換角度を設定することも考えられる。
しかしながら、昇降レバーを所定範囲の下限位置付近から上限位置に操作する際に、前項[II−1]に記載のように、ローリング制御手段を停止させることにより、機体の安定と言う点で良いものとなると言うことから、ローリング制御手段の停止状態への操作が遅いと言うことができる。
【0027】
本発明の第2特徴によると、リンク機構の上限角度よりも下降側にローリング切換角度を設定されているので、昇降レバーを所定範囲の下限位置付近から上限位置に操作する際に、リンク機構の上下角度がローリング切換角度を通過してからリンク機構の上限角度に到達することになり、リンク機構の上下角度がリンクきこうの上限角度に到達する前に、比較的早くローリング制御手段が停止状態に操作される。
これにより、昇降レバーを所定範囲の下限位置付近から上限位置に操作する際に、リンク機構の上限角度にローリング切換角度を設定する構成に比べて、ローリング制御手段を停止させることにより、機体の安定と言う点で良いものとなると言うことにおいて、有利なものとなる。
【0028】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、作業装置が大きく上昇駆動された状態(リンク機構の上限角度の位置に上昇駆動された状態)において、ローリング制御手段を停止させることにより、機体の安定性を向上させることができた。
【0029】
本発明の第2特徴によると、昇降レバーを所定範囲の上限位置から下限位置付近に操作する際に、比較的早くローリング制御手段が作動状態に操作される点、並びに、昇降レバーを所定範囲の下限位置付近から上限位置に操作する際に、比較的早くローリング制御手段が停止状態に操作される点により、作業車のPTOクラッチの操作性及び作業性を向上させることができた。
【0030】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1又は第2特徴の作業車のPTOクラッチ操作構造において次のように構成することにある。
作業装置が地面から設定高さに位置するように、昇降アクチュエータを作動操作する昇降制御手段を備える。昇降制御手段が停止状態に操作されると、PTO操作手段が停止状態に操作されるように構成する。
【0031】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
農用トラクタ等の作業車では、作業装置が地面から設定高さに位置するように、昇降アクチュエータを作動操作する昇降制御手段を備えているものが多くある。例えばロータリ耕耘装置のように、機体の姿勢変化に関係なく作業高さ(ロータリ耕耘装置の耕耘深さ)を設定値に維持する必要がある作業装置の場合、昇降制御手段を作動させるのであり、前項[I]に記載のようにPTO操作手段を作動させることが有効なものとなる。
これに対して、例えば掘削機や牧草作業機等のような作業装置では、リンク機構の上下角度(作業装置の高さ)に関係なく、作業状態に応じてPTOクラッチを伝動及び遮断状態に操作する必要があり、昇降制御手段を作動させない方が適切であることがある。
【0032】
本発明の第3特徴によると、作業状態に応じてPTOクラッチを伝動及び遮断状態に操作する必要がある作業装置の場合、昇降制御手段が停止状態に操作すれば、PTO操作手段が停止状態に自動的に操作されるので、PTO操作手段を停止状態に操作することを忘れてしまうと言うようなことがない。これにより、昇降レバー及びポジション制御手段により作業装置を昇降駆動した際に、PTO操作手段によりPTOクラッチが自動的に伝動及び遮断状態に操作されることはなく、作業状態に応じて作業者が人為的にPTOクラッチを伝動及び遮断状態に操作することができる。
【0033】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、作業状態に応じてPTOクラッチを伝動及び遮断状態に操作する必要がある作業装置の場合、PTO操作手段を停止状態に操作することを忘れてしまうと言うようなことがなくなり、作業状態に応じてPTOクラッチを伝動及び遮断状態に操作する必要がある作業装置において、PTO操作手段によりPTOクラッチが自動的に伝動及び遮断状態に操作されることによる不具合を防止することができて、作業車のPTOクラッチの操作性及び作業性を向上させることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
[1]
図1及び図2に示すように、前輪23及び後輪24で支持された機体のミッションケース3に、トップリンク1(リンク機構に相当)と右及び左のロアリンク2(リンク機構に相当)とが上下に揺動自在に支持され、単動型の油圧シリンダ5(昇降アクチュエータに相当)により上下に揺動駆動される右及び左のリフトアーム6(リンク機構に相当)が備えられており、右及び左リフトアーム6と右及び左のロアリンク2とが、リフトロッド7及び複動型の油圧シリンダ8(ローリングアクチュエータに相当)を介して連結されて、作業車の一例である四輪駆動型式の農用トラクタが構成されている。この場合、トップリンク1、右及び左のロアリンク2に、ロータリ耕耘装置4(作業装置に相当)が連結されている。
【0035】
図3に示すように、油圧シリンダ5に対する3位置切換式の制御弁16が制御装置22により操作されて、油圧シリンダ5によりリフトアーム6、トップリンク1及びロアリンク2(ロータリ耕耘装置4)が昇降駆動される。油圧シリンダ8に対する3位置切換式の制御弁17が制御装置22により操作されて、油圧シリンダ8の伸縮作動によりロータリ耕耘装置4が、油圧シリンダ8とは反対側のロアリンク2との連結点周りにローリング駆動される。
【0036】
図1及び図2に示すように、ミッションケース3の後部にPTO軸26が備えられ、PTO軸26とロータリ耕耘装置4とに亘って伝動軸27が接続されている。機体に搭載されたエンジン28の動力が、ミッションケース3に内装された走行用の変速装置(図示せず)を介して前輪23及び後輪24に伝達されており、エンジン28の動力がミッションケース3に内装されたPTOクラッチ29を介してPTO軸26に伝達され、伝動軸27を介してロータリ耕耘装置4に伝達される。図3に示すように、PTOクラッチ29は摩擦多板型式の油圧クラッチであり、遮断状態に付勢されて、作動油が供給されることにより伝動状態に操作されるように構成されており、PTOクラッチ29に作動油の給排操作を行う制御弁30が備えられている。
【0037】
[2]
次に、昇降制御手段及びポジション制御手段について説明する。
図1,2,3に示すように、ロータリ耕耘装置4に上下揺動自在に後部カバー9が備えられ、バネ18により後部カバー9が下方側に付勢されて、ロータリ耕耘装置4に対する後部カバー9の上下角度を検出する耕深センサー10が備えられており、耕深センサー10の検出値が制御装置22に入力されている。ダイヤル操作式で人為的に操作される耕深設定器11及び人為的に操作される昇降制御スイッチ21が、運転部19に備えられて、耕深設定器11の設定耕耘深さ及び昇降制御スイッチ21の操作信号が制御装置22に入力されており、昇降制御スイッチ21は昇降制御手段を作動及び停止状態に操作するものである。
【0038】
これにより、図1,2,3に示すように、昇降制御スイッチ21により昇降制御手段を作動状態に操作した状態において、耕深センサー10の検出値が耕深設定器11の設定耕耘深さとなるように制御弁16が操作されて、油圧シリンダ5によりリフトアーム6、トップリンク1及びロアリンク2(ロータリ耕耘装置4)が昇降駆動される。耕深センサー10は地面Gからロータリ耕耘装置4までの高さを検出するものであり、ロータリ耕耘装置4の耕耘深さH1を検出するものなので、ロータリ耕耘装置4が地面Gから設定高さに位置するように、ロータリ耕耘装置4の耕耘深さH1が耕深設定器11の設定耕耘深さとなるように、油圧シリンダ5によりリフトアーム6、トップリンク1及びロアリンク2(ロータリ耕耘装置4)が昇降駆動される(昇降制御手段)。
【0039】
図1,2,3に示すように、リフトアーム6の機体に対する上下角度を検出する角度センサー13がリフトアーム6の基部に備えられており、角度センサー13の検出値が制御装置22に入力されている。機体の運転部19に昇降レバー12が備えられ、昇降レバー12の操作位置を検出する位置センサー25の検出値が制御装置22に入力されている。昇降レバー12は所定範囲A1に亘って人為的に操作自在であり、昇降レバー12から手を離しても摩擦保持機構(図示せず)により、昇降レバー12はその操作位置に保持される。
【0040】
これにより、図1及び図3に示すように、位置及び角度センサー25,13の検出値に基づいて、所定範囲A1での昇降レバー12の操作位置に対応する上下角度に、リフトアーム6が機体に対して位置するように、油圧シリンダ5によりリフトアーム6、トップリンク1及びロアリンク2(ロータリ耕耘装置4)が昇降駆動される(ポジション制御手段)。この場合、昇降レバー12の所定範囲A1がリフトアーム6の上下範囲B1に対応しており、所定範囲A1の下限位置A2が上下範囲B1の下限角度B2に対応し、所定範囲A1の上限位置A3が上下範囲B1の上限角度B3に対応している。
【0041】
前述の昇降制御手段及びポジション制御手段において、昇降制御スイッチ21により昇降制御手段を停止状態に操作している場合、昇降制御手段が停止し、ポジション制御手段が作動する。昇降制御スイッチ21を作動位置に操作している場合(昇降制御手段の作動状態)、昇降レバー12を所定範囲A1の下限位置A2に操作すると、昇降制御手段が作動し、ポジション制御手段が作動するのであり、昇降レバー12を所定範囲A1の下限位置A2以外の操作位置に操作すると、昇降制御手段が停止し、ポジション制御手段が作動する。
【0042】
[3]
次に、強制昇降手段及びローリング制御手段について説明する。
図1及び図2に示すように、前輪23の操向操作を行う操縦ハンドル31の右下側に強制昇降レバー32が備えられており、強制昇降レバー32の操作位置が制御装置22に入力されている。強制昇降レバーは中立位置、上昇位置及び下降位置に操作自在に構成されて、中立位置に付勢されている。
【0043】
強制昇降レバー32を上昇位置に操作すると(上昇位置に操作して中立位置に操作すると)、油圧シリンダ8によりリフトアーム6、トップリンク1及びロアリンク2(ロータリ耕耘装置4)が、現在のリフトアーム6の上下角度から上下範囲B1の上限角度B3に上昇駆動される。強制昇降レバー32を下降位置に操作すると(下降位置に操作して中立位置に操作すると)、油圧シリンダ8によりリフトアーム6、トップリンク1及びロアリンク2(ロータリ耕耘装置4)が、上下範囲B1の上限角度B3から上昇駆動される前のリフトアー6の上下角度に下降駆動される(強制昇降手段)。
【0044】
後述する[6][7][8]に記載のPTO操作手段の作動及び停止状態に関係なく、強制昇降レバー32を上昇位置に操作すると(上昇位置に操作して中立位置に操作すると)、油圧シリンダ8によりリフトアーム6、トップリンク1及びロアリンク2(ロータリ耕耘装置4)が上昇駆動され始めるのと同時に、PTOクラッチ29が遮断状態に操作されて、昇降制御手段及びポジション制御手段が停止状態に操作される。後述するローリング制御手段が停止状態に操作されて、油圧シリンダ8がリフトロッド7と同じ長さになるように伸縮作動して、機体に対してロータリ耕耘装置4が機体左右方向で平行に保持される。
【0045】
後述する[6][7][8]に記載のPTO操作手段の作動及び停止状態に関係なく、強制昇降レバー32を下降位置に操作すると(下降位置に操作して中立位置に操作すると)、油圧シリンダ8によりリフトアーム6、トップリンク1及びロアリンク2(ロータリ耕耘装置4)が下降駆動され始めるのと同時に、PTOクラッチ29が伝動状態に操作されて、昇降制御手段及びポジション制御手段、ローリング制御手段が作動状態に操作される。
【0046】
図2及び図3に示すように、油圧シリンダ8の作動位置を検出するストロークセンサー14、機体の水平面に対する機体左右方向の角度を検出する重錘式の傾斜センサー15が備えられており、ストロークセンサー14の検出値及び傾斜センサー15の検出値が制御装置22に入力されている。ストロークセンサー14により油圧シリンダ8の作動位置を検出することによって、ロータリ耕耘装置4の機体に対する機体左右方向の角度を検出することができるので、傾斜センサー15により機体の水平面に対する機体左右方向の角度を検出することにより、ロータリ耕耘装置4の水平面に対する機体左右方向の角度を検出することができる。
【0047】
図2及び図3に示すように、ダイヤル操作式で人為的に操作される傾斜設定器20が運転部19に備えられ、傾斜設定器20の設定角度が制御装置22に入力されている。傾斜設定器20の設定角度は、ロータリ耕耘装置4の水平面に対して維持されるべき機体左右方向の角度を意味しており、傾斜設定器20の設定角度を水平位置から右下り側及び左下り側に任意に設定及び変更することができる。
これにより、ロータリ耕耘装置4の水平面に対する機体左右方向の角度を、傾斜設定器20の設定角度に維持するように、油圧シリンダ8によりトップリンク1及びロアリンク2(ロータリ耕耘装置4)がローリング駆動される(ローリング制御手段)。
【0048】
[4]
次に、PTOスイッチ33について説明する。
図3に示すように、ダイヤル操作式で人為的に操作されるPTOスイッチ33が運転部19に備えられている。PTOスイッチ33は中央に遮断位置が設定されて、遮断位置の右側に伝動位置が設定され、遮断位置の左側に自動位置が設定されており、PTOスイッチ33の操作位置が制御装置22に入力されている。
この場合、遮断位置の左側に伝動位置を設定し、遮断位置の右側の自動位置を設定するように構成してもよい。
【0049】
図3に示すように、PTOスイッチ33は押し操作自在、且つ右及び左の回転操作自在に構成されており、PTOスイッチ33を遮断位置に操作している状態において、PTOスイッチ33を押し操作しながら右に回転操作することにより、PTOスイッチ33を伝動位置に操作することができる。PTOスイッチ33を遮断位置に操作している状態において、PTOスイッチ33を押し操作しながら左に回転操作することにより、PTOスイッチ33を自動位置に操作することができる。PTOスイッチ33を伝動及び自動位置に操作している状態において、PTOスイッチ33を押し操作すると、PTOスイッチ33が自動的に遮断位置に戻し操作される。
【0050】
[5]
次に、PTOスイッチ33を伝動及び遮断位置に操作した場合の制御について、図4に基づいて説明する。
PTOスイッチ33を伝動位置に操作すると(ステップS1)、後述する[6][7][8]に記載のPTO操作手段が停止状態に操作されて(ステップS2)、PTOクラッチ29が伝動状態に操作される(ステップS3)。PTOスイッチ33を遮断位置に操作すると(ステップS1)、後述する[6][7][8]に記載のPTO操作手段が停止状態に操作されて(ステップS4)、PTOクラッチ29が遮断状態に操作される(ステップS5)。
【0051】
昇降レバー12の操作位置が検出されて(ステップS6)、昇降レバー12を所定範囲A1の下限位置A2以外の操作位置に操作していると(ステップS7)、昇降制御手段が停止状態に操作され(ステップS8)、ポジション制御手段が作動状態に操作されて(ステップS9)、昇降レバー12の操作位置(位置及び角度センサー25,13の検出値)及びポジション制御手段に従って、油圧シリンダ5によりリフトアーム6、トップリンク1及びロアリンク2(ロータリ耕耘装置4)が昇降駆動される。
【0052】
昇降レバー12を所定範囲A1の下限位置A2に操作していると(ステップS7)、昇降制御スイッチ21が作動位置に操作されていれば(ステップS10)、昇降制御手段が作動状態に操作され(ステップS11)、ポジション制御手段が停止状態に操作されて(ステップS12)、耕深センサー10の検出値、耕深設定器11の設定耕耘深さ及び昇降制御手段に従って、油圧シリンダ5によりリフトアーム6、トップリンク1及びロアリンク2(ロータリ耕耘装置4)が昇降駆動される。この場合、昇降制御スイッチ21が停止位置に操作されていると(ステップS10)、昇降制御手段が停止状態に操作され(ステップS8)、ポジション制御手段が作動状態に操作される(ステップS9)。
【0053】
図3に示すように、上下範囲B1において、上下範囲B1の上限角度B3よりも下降側に第1ローリング切換角度B4が設定されて、第1ローリング切換角度B4よりも下降側に第2ローリング切換角度B5が設定されている。上下範囲B1の中央角度よりも上昇側に、第1及び第2ローリング切換角度B4,B5が設定されており、第1及び第2ローリング切換角度B4,B5の間に、間隔(例えば不感帯のような間隔)が存在している。
【0054】
前述のように、昇降レバー12の操作位置(位置及び角度センサー25,13の検出値)及びポジション制御手段に従って、油圧シリンダ5によりリフトアーム6、トップリンク1及びロアリンク2(ロータリ耕耘装置4)が昇降駆動される状態において、リフトアーム6の上下角度が検出されている(ステップS13)。
【0055】
この場合、リフトアーム6の上下角度が第1ローリング切換角度B4を越えて上昇側に変化すると(図3の矢印BY1参照)(ステップS14)、ローリング制御手段が停止状態に操作されて(ステップS15)、油圧シリンダ8がリフトロッド7と同じ長さになるように伸縮作動し(ステップS16)、機体に対してロータリ耕耘装置4が機体左右方向で平行に保持される。リフトアーム6の上下角度が第2ローリング切換角度B5を越えて下降側に変化すると(図3の矢印BY2参照)(ステップS17)、ローリング制御手段が作動状態に操作される(ステップS18)。
【0056】
[6]
次に、PTO操作手段及びPTOスイッチ33を自動位置に操作した場合の制御の前半について、図4に基づいて説明する。
PTOスイッチ33を自動位置に操作した場合(ステップS1)、昇降制御スイッチ21が停止位置に操作されていると(ステップS19)、PTOスイッチ33が遮断位置に操作される(ステップS21)。これにより、PTO操作手段が停止状態に操作されて(ステップS4)、PTOクラッチ29が遮断状態に操作される(ステップS5)(昇降制御手段が停止状態に操作されていると、PTO操作手段が停止状態に操作される状態に相当)。
【0057】
PTOスイッチ33を自動位置に操作した場合に(ステップS1)、機体が中断状態であるか否かが検出されて、機体が中断状態であると(ステップS20)、PTOスイッチ33が遮断位置に操作され(ステップS21)、PTO操作手段が停止状態に操作されて(ステップS4)、PTOクラッチ29が遮断状態に操作される(ステップS5)。
【0058】
この場合に、中断状態とは、通常の作業状態では走行しない高速で一定時間以上に亘って走行した状態、通常の作業状態では走行しない高速で一定距離以上に亘って走行した状態、走行用の変速装置(図示せず)を路上走行用の高速位置に操作した状態、低速ではあるが作業を行わずに一定距離以上に亘って走行した状態、エンジン28の停止操作を行った後に再始動操作を行った状態、ロータリ耕耘装置4(作業装置に相当)がトップリンク1、右及び左のロアリンク2から取り外された状態等のことを言う。
【0059】
[7]
次に、PTO操作手段及びPTOスイッチ33を自動位置に操作した場合の制御の後半について、図5に基づいて説明する。
PTOスイッチ33を自動位置に操作した場合(ステップS1)、昇降制御スイッチ21が作動位置に操作され(ステップS19)、機体が中断状態になっていないと(ステップS20)、PTO操作手段が作動状態に操作される(ステップS31)。昇降レバー12の操作位置が検出され(ステップS32)、昇降レバー12の操作位置が微分処理されて、昇降レバー12の操作速度が検出されている(ステップS33)。
【0060】
昇降レバー12を所定範囲A1の下限位置A2以外の操作位置に操作していると(ステップS34)、昇降制御手段が停止状態に操作され(ステップS35)、ポジション制御手段が作動状態に操作されて(ステップS36)、昇降レバー12の操作位置(位置及び角度センサー25,13の検出値)及びポジション制御手段に従って、油圧シリンダ5によりリフトアーム6、トップリンク1及びロアリンク2(ロータリ耕耘装置4)が昇降駆動される。
【0061】
昇降レバー12を所定範囲A1の下限位置A2に操作していると(ステップS34)、昇降制御手段が作動状態に操作され(ステップS37)、ポジション制御手段が停止状態に操作されて(ステップS38)、耕深センサー10の検出値、耕深設定器11の設定耕耘深さ及び昇降制御手段に従って、油圧シリンダ5によりリフトアーム6、トップリンク1及びロアリンク2(ロータリ耕耘装置4)が昇降駆動される。
【0062】
図3に示すように、所定範囲A1において、所定範囲A1の上限位置A3よりも下降側に第1PTO切換位置A4が設定されて、第1PTO切換位置A4よりも下降側に第2PTO切換位置A5が設定されている。所定範囲A1の中央位置よりも上昇側に、第1及び第2PTO切換位置A4,A5が設定されており、第1及び第2PTO切換位置A4,A5の間に、間隔(例えば不感帯のような間隔)が存在している。
この場合、第1PTO切換位置A4と第1ローリング切換位置B4とが対応している(第1PTO切換位置A4に対応する上下角度が、第1ローリング切換角度B4と一致している)。第2ローリング切換角度B5が第2PTO切換位置A5よりも少し上昇側になるように設定されている(第2PTO切換位置A5に対応する上下角度が、第2ローリング切換角度B5よりも少し下降側に設定されている)。
【0063】
前述のように、昇降レバー12の操作位置(位置及び角度センサー25,13の検出値)及びポジション制御手段に従って、油圧シリンダ5によりリフトアーム6、トップリンク1及びロアリンク2(ロータリ耕耘装置4)が昇降駆動される状態において、昇降レバー12の操作位置が第1PTO切換位置A4を越えて上昇側に変化すると(図3の矢印AY1参照)(ステップS39)、PTOクラッチ29が遮断状態に操作され(ステップS40)、ブザー(図示せず)が作動すると同時に、図1に示すメータパネル34に報知メッセージ(PTO操作手段の作動状態においてPTOクラッチ29が遮断状態に操作されたこと)が表示される(ステップS41)。
【0064】
リフトアーム6の上下角度が検出されており(ステップS46)、リフトアーム6の上下角度が微分処理されて、リフトアーム6の作動速度が検出されている(ステップS47)。リフトアーム6の上下角度が第1ローリング切換角度B4を越えて上昇側に変化すると(図3の矢印BY1参照)(ステップS48)、ローリング制御手段が停止状態に操作されて(ステップS49)、油圧シリンダ8がリフトロッド7と同じ長さになるように伸縮作動し(ステップS50)、機体に対してロータリ耕耘装置4が機体左右方向で平行に保持される。
【0065】
前述のように、昇降レバー12の操作位置(位置及び角度センサー25,13の検出値)及びポジション制御手段に従って、油圧シリンダ5によりリフトアーム6、トップリンク1及びロアリンク2(ロータリ耕耘装置4)が昇降駆動される状態において、昇降レバー12の操作位置が第2PTO切換位置A5を越えて下降側に変化し(図3の矢印AY2参照)(ステップS42)、且つ、昇降レバー12の操作速度が設定操作速度V1よりも高速であると(ステップS43)、PTOクラッチ29が伝動状態に操作され(ステップS44)、ブザー(図示せず)が停止すると同時に、図1に示すメータパネル34の報知メッセージが消える(ステップS45)。
【0066】
リフトアーム6の上下角度が第2ローリング切換角度B5を越えて下降側に変化し(図3の矢印BY2参照)(ステップS51)、且つ、リフトアーム6の作動速度が設定作動速度V2(ステップS43の設定操作速度V1に対応)よりも高速であると(ステップS52)、ローリング制御手段が作動状態に操作される(ステップS53)。
この場合、第2ローリング切換角度B5が第2PTO切換位置A5よりも少し上昇側になるように設定されているので(第2PTO切換位置A5に対応する上下角度が、第2ローリング切換角度B5よりも少し下降側に設定されているので)、前述のように昇降レバー12の操作位置が第2PTO切換位置A5を越えて下降側に変化した場合(図3の矢印AY2参照)(ステップS42)、ローリング制御手段が作動状態に操作されてから、PTOクラッチ29が伝動状態に操作されるような状態となる。
【0067】
[8]
前項[7]に記載の図5のステップS43において、昇降レバー12の操作位置が第2PTO切換位置A5を越えて下降側に変化しても(図3の矢印AY2参照)(ステップS42)、昇降レバー12の操作速度が設定操作速度V1よりも低速であると(ステップS43)、PTOクラッチ44は伝動状態に操作されずに遮断状態に維持される。
前項[7]に記載の図5のステップS52において、リフトアーム6の上下角度が第2ローリング切換角度B5を越えて下降側に変化しても(図3の矢印BY2参照)(ステップS51)、リフトアーム6の作動速度が設定作動速度V2よりも低速であると(ステップS52)、ローリング制御手段が作動状態に操作されずに停止状態に維持される。
【0068】
前述のように、昇降レバー12の操作速度が設定操作速度V1よりも低速である状態(リフトアーム6の作動速度が設定作動速度V2よりも低速である状態)は、昇降レバー12を任意の操作位置に操作した後に、作業者が昇降レバー12から手を離し、走行時の機体の振動によって、昇降レバー12が現在の操作位置から次第に下降側に移動していく状態と考えられる。
【0069】
これにより昇降レバー12の操作位置が第2PTO切換位置A5を越えて下降側に変化しても、昇降レバー12の操作速度が設定操作速度V1よりも低速であることによって、PTOクラッチ29が伝動状態に操作されなかった場合(リフトアーム6の上下角度が第2ローリング切換角度B5を越えて下降側に変化しても、リフトアーム6の作動速度が設定作動速度V2よりも低速であることによって、ローリング制御手段が作動状態に操作されなかった場合)、作業者は昇降レバー12を持ち、第2PTO切換位置A5を越えて上昇側に昇降レバー12を操作した後、再び第2PTO切換位置A5を越えて下降側に昇降レバー12を、設定操作速度V1よりも高速の操作速度で操作すれば、図5のステップS44,S45,S53に復帰する。
【0070】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]の図4のステップS19において、昇降制御スイッチ21が停止位置に操作されたことに代えて、ロータリ耕耘装置4(作業装置に相当)がトップリンク1及びロアリンク2から取り外されると、又はロータリ耕耘装置4から後部カバー9が取り外されると、PTOスイッチ33が遮断位置に操作されるように構成してもよい(ステップS21)。
【0071】
前述の[発明を実施するための最良の形態]の図4のステップS19において、昇降制御スイッチ21が停止位置に操作されたことに代えて、ローリング制御手段が停止状態に操作されたこと、又はオートアップ手段が停止状態に操作されたこと、又はバックアップ手段が停止状態に操作されたことに基づいて、PTOスイッチ33が遮断位置に操作されるように構成してもよい(ステップS21)。
【0072】
この場合、オートアップ手段とは、操縦ハンドル31により前輪23を操向操作して旋回を行うと、油圧シリンダ5によりリフトアーム6、トップリンク1及びロアリンク2(ロータリ耕耘装置4)が、現在のリフトアーム6の上下角度から上下範囲B1の上限角度B3に上昇駆動される機能のことを言う。バックアップ手段とは、走行用の変速装置(図示せず)が後進位置に操作されると、油圧シリンダ5によりリフトアーム6、トップリンク1及びロアリンク2(ロータリ耕耘装置4)が、現在のリフトアーム6の上下角度から上下範囲B1の上限角度B3に上昇駆動される機能のことを言う。
【0073】
[発明の実施の第2別形態]
図1に示すように、後輪24の上方を覆う後輪フェンダ35の後部にブレーキランプ36が備えられて、右及び左の後輪フェンダ35の間にロプスフレーム37が備えられており、ロプスフレーム37の上部の右及び左側部の外側(又は内側)に、右及び左の方向指示器38が備えられている。この場合、ロプスフレーム37において右(又は左)の方向指示器38の下側に報知ランプ39を備えたり、ロプスフレーム37において右(又は左)の方向指示器38の上側に報知ランプ39を備えたり(図示せず)、ロータリ耕耘装置4に報知ランプ39を備えたり(図示せず)、メータパネル34に報知ランプ(図示せず)を備えたりしてもよい。
【0074】
これにより、前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]の図5のステップS41において、以下のように構成してもよい。
(1)ブザー(図示せず)を作動させ、ロプスフレーム37の報知ランプ39を点灯(又は点滅)させる。
(2)ブザー(図示せず)を作動させ、メータパネル34の報知ランプを点灯(又は点滅)させる。
(3)ブザー(図示せず)を作動させ、ロータリ耕耘装置4の報知ランプ39を点灯(又は点滅)させる。
(4)ブザー(図示せず)を作動させ、右及び左の方向指示器38を点滅(ハザード状態)させる。
【0075】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態][発明の実施の第2別形態]において、角度センサー13をトップリンク1の基部又はロアリンク2の基部に備えて、トップリンク1の機体に対する上下角度又はロアリンク2の機体に対する上下角度に基づいて、ポジション制御手段を作動させてもよい。トップリンク1を備えずに、右及び左のロアリンク2と右及び左のリフトアーム6とを備えた2点リンク機構にも本発明は適用できる。
【0076】
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第3別形態]において、第1及び第2PTO切換位置A4,A5を所定範囲A1において同じ位置に設定して、第1及び第2PTO切換位置A4,A5に対して不感帯を設定してもよい。第1及び第2ローリング切換角度B4,B5を上下範囲B1において同じ角度に設定して、第1及び第2ローリング切換角度B4,B5に対して不感帯を設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】農用トラクタ及びロータリ耕耘装置の全体側面図
【図2】農用トラクタの後部及びロータリ耕耘装置の全体斜視図
【図3】昇降レバー、リフトアーム、PTOクラッチ及びPTOスイッチ等の関係を示す図
【図4】PTOスイッチを伝動及び遮断位置に操作した場合の制御の流れを示す図
【図5】PTOスイッチを自動位置に操作した場合の制御の流れを示す図
【符号の説明】
【0078】
1,2,6 リンク機構
4 作業装置
5 昇降アクチュエータ
8 ローリングアクチュエータ
12 昇降レバー
13 角度センサー
25 位置センサー
26 PTO軸
29 PTOクラッチ
A1 所定範囲
A3 所定範囲の上限位置
A4,A5 PTO切換位置
B3 リンク機構の上限角度
B4,B5 ローリング切換角度
G 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置を昇降自在に連結自在なリンク機構と、前記リンク機構を昇降駆動可能な昇降アクチュエータと、前記リンク機構の機体に対する上下角度を検出する角度センサーと、所定範囲に亘って人為的に操作される昇降レバーと、前記昇降レバーの所定範囲の操作位置を検出する位置センサーとを備えて、
前記位置及び角度センサーの検出値に基づいて、前記所定範囲での昇降レバーの操作位置に対応する上下角度に、前記リンク機構が機体に対して位置するように、前記昇降アクチュエータを作動させるポジション制御手段を備えると共に、
前記リンク機構に連結された作業装置に動力を伝達可能なPTO軸と、前記PTO軸に動力を伝動及び遮断自在なPTOクラッチとを備え、
前記所定範囲の上限位置よりも下降側にPTO切換位置を設定して、
前記位置センサーの検出値に基づいて、前記昇降レバーがPTO切換位置よりも下降側に位置すると、前記PTOクラッチを伝動状態に操作し、前記昇降レバーがPTO切換位置よりも上昇側に位置すると、前記PTOクラッチを遮断状態に操作するPTO操作手段を備えてある作業車のPTOクラッチ操作構造。
【請求項2】
前記作業装置を機体に対してローリング駆動するローリングアクチュエータを備えて、前記作業装置の水平面に対する機体左右方向の角度を設定角度に維持するように、前記ローリングアクチュエータを作動操作するローリング制御手段を備えると共に、
前記リンク機構の上限角度よりも下降側にローリング切換角度を設定して、
前記角度センサーの検出値に基づいて、前記リンク機構の上下角度がローリング切換角度よりも下降側であると、前記ローリング制御手段を作動させ、前記リンク機構の上下角度がローリング切換角度よりも上昇側であると、前記ローリング制御手段を停止させるローリング操作手段を備えてある請求項1に記載の作業車のPTOクラッチ操作構造。
【請求項3】
前記作業装置が地面から設定高さに位置するように、前記昇降アクチュエータを作動操作する昇降制御手段を備えて、
前記昇降制御手段が停止状態に操作されると、前記PTO操作手段が停止状態に操作されるように構成してある請求項1又は2に記載の作業車のPTOクラッチ操作構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−74130(P2008−74130A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252342(P2006−252342)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】