説明

光半導体装置用シリコーン樹脂組成物

【課題】硬化後の強度、白色性、耐熱性及び耐光性に優れた硬化物を与える光半導体装置用のシリコーン樹脂組成物の提供。
【解決手段】(A)下記平均組成式(1)のオルガノポリシロキサン100質量部(CHaSi(ORb(OH)c(4-a-b-c)/2(1)(Rは炭素数1〜4の一価炭化水素基、0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、及び0.801≦a+b+c<2を満たす)(B)下記(C)以外の白色顔料3〜200質量部(C)平均粒径0.2〜40μmの球状シリカ60〜80重量%と平均粒径5〜10μmの破砕状シリカ20〜40重量%からなる、平均粒径10〜40μmの無機充填剤400〜1000重量部(D)縮合触媒0.01〜10質量部(E)−[−(R)Si(R)−O−]−で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン残基を有する、オルガノポリシロキサン2〜50質量部を含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置用シリコーン樹脂組成物に関し、詳細にはシラノール基を有するオルガノポリシロキサンと、所定の長さの直鎖状ジオルガノポリシロキサン残基を有するオルガノポリシロキサンを含むことで、成型性と硬化物の光劣化による変色に優れ、成型物の強度の問題に優れたシリコーン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)等の光半導体素子は、種々のインジケータや光源として利用されている。近年、光半導体装置の高出力化及び短波長化が進み、光半導体素子の周辺に使用する樹脂材料が光劣化して黄変する等により光出力低下等が起こるという問題がある。
【0003】
光半導体封止用樹脂組成物としてエポキシ樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を構成成分とするBステージ状光半導体封止用エポキシ樹脂組成物が知られている(特許文献1)。特許文献1では、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂が主として用いられ、トリグリシジルイソシアネート等を使用することができると開示されている。しかし、該組成物は光劣化による黄変の問題を有しており、この問題は特に、半導体素子を高温下で点灯または長時間点灯したときに発生する。
【0004】
耐熱性、耐光性に優れる発光素子用封止材エポキシ樹脂組成物として、イソシアヌル酸誘導体エポキシ樹脂を含むもの(特許文献2)が知られている。しかし、該組成物も耐光性の点で十分とはいえない。
【0005】
耐紫外線性に優れる重量平均分子量が5×102以上のオルガノポリシロキサン及び縮合触媒を含有するLED素子封止用樹脂組成物が知られている(特許文献3)。しかし、該組成物はリフレクター等の白色顔料を用いる用途ではなく、より高い透明性が要求される用途向けの樹脂組成物である。
【0006】
また、上記各シリコーン樹脂組成物に白色顔料やシリカを用いた場合、成型後の強度が低くなり、その後の工程でクラックの発生が問題となる。上記各シリコーン樹脂組成物はこの点においても満足の行くものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平02−189958号公報
【特許文献2】特開2005−306952号公報
【特許文献3】特開2006−77234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、硬化後の強度に優れ、白色性、耐熱性及び耐光性に優れた硬化物を与える光半導体装置用のシリコーン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記を含むシリコーン樹脂組成物である。
(A)下記平均組成式(1)で表され、重量平均分子量(ポリスチレン換算)が500〜20000のオルガノポリシロキサン 100質量部

(CHaSi(ORb(OH)c(4-a-b-c)/2 (1)

(式中、Rは炭素数1〜4の一価炭化水素基であり、a、b、cは、0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、及び0.801≦a+b+c<2を満たす数である)
(B)下記(C)以外の白色顔料 3〜200質量部
(C)前記白色顔料以外の無機充填剤であり、平均粒径0.2〜40μmの球状シリカ60〜80重量%と平均粒径5〜10μmの破砕状シリカ20〜40重量%からなる、平均粒径10〜40μmの無機充填剤 400〜1000重量部
(D)縮合触媒 0.01〜10質量部
(E)下記式(2)で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン残基を有する、オルガノポリシロキサン 2〜50質量部


(R及びRは、互いに独立に、炭素数1〜3のアルキル基、シクロヘキシル基、ビニル基、フェニル基及びアリル基から選ばれる基であり、mは5〜50の整数である)
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物は、所定の長さの直鎖状ジオルガノポリシロキサン残基を有するオルガノポリシロキサン(E)と分岐を有するオルガノポリシロキサン(A)の組合せによって装置に歪みを与えることなく硬化することができ、さらに所定の平均粒径を有する無機充填剤を含有することにより強度を備えた硬化物を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明のシリコーン樹脂組成物を用いた光半導体装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)オルガノポリシロキサン
(A)オルガノポリシロキサンはシラノール基を備え、(D)縮合触媒の存在下で架橋構造を形成する。上記平均組成式(1)においてRは炭素数1〜4の一価炭化水素基である。a、b、cは、0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5であり、0.801≦a+b+c<2、好ましくは、0.911≦a+b+c≦1.8、より好ましくは1.0≦a+b+c≦1.5である。
【0013】
式(1)中、aは0.8≦a≦1.5、好ましくは0.9≦a≦1.2、より好ましくは0.9≦a≦1.1である。aが上記下限値未満では、樹脂組成物の硬化物が硬過ぎてしまいクラック等を生じ得るため好ましくなく、上記上限値超では樹脂組成物が固形化しないため好ましくない。
【0014】
式(1)中、bは0≦b≦0.3、好ましくは0.001≦b≦0.2、より好ましくは0.01≦b≦0.1である。bが上記上限値超では、分子量が小さくなりクラック防止性能が不十分となる場合がある。なお、化合物中のOR基は、赤外吸収スペクトル(IR)、アルカリクラッキングによるアルコール定量法等で定量することができる。
【0015】
式(1)中、cは0.001≦c≦0.5、好ましくは0.01≦c≦0.3、より好ましくは0.05≦c≦0.2である。cが上記上限値超では、加熱硬化時の縮合反応及び/又は(E)成分との縮合反応により、硬度が高くなり耐クラック性に乏しい硬化物を与えることとなり好ましくない。cが上記下限値未満では、融点が高くなる傾向があり作業性に問題が生じる場合があり、さらに(E)成分との結合生成が全くなくなると硬化物の硬度が低くなり、耐溶剤性が悪くなる傾向があるため好ましくない。cを上記範囲内に制御するためには原料のアルコシキ基の完全縮合率を86〜96%にすることが好ましい。上記下限値未満では融点が低くなり、上記上限値超では融点が高くなりすぎるため好ましくない。
【0016】
上記式(1)中、Rは同一又は異種の炭素数1〜4の一価炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基等のアルキル基又は、ビニル基、アリル基等のアルケニル基が挙げられる。中でも原料の入手が容易である点で、メチル基及びイソプロポキシ基が好ましい。
【0017】
(A)オルガノポリシロキサンはGPCにより測定したポリスチレン標準で換算した重量平均分子量が500〜20000、好ましくは1000〜10000、より好ましくは2000〜8000である。分子量が前記下限値未満では樹脂組成物が固形化し難く、分子量が上記上限値超では樹脂組成物の粘度が高くなり流動性が低下する。
【0018】
(A)成分は、一般にQ単位(SiO)、T単位(CHSiO1.5)、及びD単位((CHSiO)の組み合わせで表現することができる。式中、全シロキサン単位の総モル数に対するT単位の含有モル数の比率が、70モル%以上、好ましくは75モル%以上、特に好ましくは80モル%以上であることがよい。T単位が上記下限値未満では、硬度、密着性及び概観等の総合的なバランスが崩れる場合がある。D、Q単位は全シロキサン単位の総モル数に対し30モル%以下であることが好ましい。D、Q単位の割合が多くなるほど樹脂組成物の融点が高くなる傾向がある。
【0019】
(A)成分は、下記一般式(3)で示されるオルガノシランの加水分解縮合物として得ることができる。
[化3]
(CHnSiX4-n (3)
(式中、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルコキシ基、nは1、2又は0であり、Xはハロゲン原子、特に塩素原子であることが好ましい。)
【0020】
上記式(3)で表されるシラン化合物としては、例えば、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラクロロシラン、テトラメトキシラン、テトラエトキシラン等があげられる。
【0021】
上記オルガノシランの加水分解縮合は公知の方法で行うことができ、酢酸、塩酸、硫酸等の酸触媒、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ触媒の存在下で行うことが好ましい。加水分解性基として塩素基を含有するシランを使用する場合は、水添加によって発生する塩酸を触媒として、目的とする適切な分子量の加水分解縮合物を得ることができる。
【0022】
加水分解縮合の際に添加される水の量は、上記オルガノシラン中の加水分解性基の合計量1モル当り、通常、0.9〜1.6モル、好ましくは1.0〜1.3モルである。前記範囲内では作業性に優れたオルガノポリシロキサンを得ることができ、硬化物の強靭性が優れたものとなる。
【0023】
上記加水分解縮合は、通常、アルコール類、ケトン類、エステル類、セロソルブ類、芳香族化合物類等の有機溶剤を併用することが好ましい。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類、芳香族化合物としてトルエン、キシレンが好ましく、中でもイソプロピルアルコール、トルエンの使用が硬化性に優れたオルガノポリシロキサンを与え、また硬化物の強靭性が優れたものとなるため好ましい。
【0024】
加水分解縮合の反応温度は、好ましくは10〜120℃、より好ましくは20〜100℃である。反応温度が係る範囲内では、ゲル化することなく作業性に優れた固体のオルガノポリシロキサンを得ることができる。
【0025】
上記加水分解縮合として、例えばメチルトリクロロシランを用いた加水分解縮合を行う場合は、トルエンに溶解したメチルトリクロロシランに、水及びイソプロピルアルコールを添加して部分加水分解(反応温度−5℃〜100℃)し、残存する塩素基の全量が加水分解される量の水を添加して、反応させることにより、下記式(4)で示される融点76℃の固体シリコーンポリマーが得られる。
[化4]
(CHaSi(OC37b(OH)c(4-a-b-c)/2 (4)
(式中、a、b、cは上述のとおりである。)
【0026】
上記平均組成式(4)の例としては、下記式(5)、(6)などが挙げられる。
[化5]
(CH31.0Si(OC370.07(OH)0.131.4 (5)

(CH31.1Si(OC370.06(OH)0.121.3 (6)
【0027】
(B)白色顔料
(B)白色顔料は、光半導体装置のリフレクター(反射板)等の用途向けに、硬化物を白色にするために配合するものである。白色顔料(白色着色剤)としては、二酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等を単独で又は二酸化チタンと併用して使用することもできる。これらのうち、二酸化チタン、酸化マグネシウム、アルミナが好ましく、二酸化チタンがより好ましい。二酸化チタンの結晶形はルチル型、アナタース型、ブルカイト型のどれでも構わないが、ルチル型が好ましく使用される。
【0028】
白色顔料は、平均粒径が0.05〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜10μmである。また、(A)及び(E)の樹脂成分もしくは(C)無機充填剤との混合性、分散性を高めるため白色顔料を、AlやSiなどの水酸化物等で予め表面処理してもよい。なお、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。
【0029】
白色顔料の配合量は、(A)成分100質量部に対し、3〜200質量部、好ましくは5〜170質量部、特に10〜140質量部が好ましい。前記下限値未満では十分な白色度が得られない場合があり、硬化物の反射率が初期値の反射率で70%以上、180℃で、24時間加熱する劣化テスト後の反射率が70%以上の物性が得られ難くなる。また、上記上限値超では、機械的強度向上の目的で添加する(C)無機充填剤の割合が少なくなるため好ましくない。白色顔料の量はシリコーン樹脂組成物全体に対し1〜50質量%であることがよく、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
【0030】
(C)無機充填剤
(C)無機充填剤は、上記白色顔料以外の充填剤である。該充填剤としては、通常、エポキシ樹脂組成物に配合されるものを使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、三酸化アンチモン等が挙げられる。特に、溶融シリカ、溶融球状シリカが好ましく、平均粒径が10μm以上40μm以下であり、かつ粒径90μm以上の粒子を含有しないことが好ましい。平均粒径はレーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。成型物の強度を保つためには破砕状シリカを含有させることが好ましい。
【0031】
本発明の無機充填剤は、平均粒径0.2〜40μmの球状シリカ60〜80重量%と平均粒径5〜10μmの破砕状シリカ20〜40重量%からなる、平均粒径10〜40μmの無機充填剤であることが望ましい。中でも、平均粒径3μm以下の球状シリカ0〜15重量%、平均粒径4〜8μmの球状シリカ10〜30重量%、平均粒径10〜40μmの球状シリカ60〜90重量%から成る球状シリカ60〜80重量%と平均粒径5〜10μmの破砕状シリカ20〜40重量%からなるものが好適である。破砕状シリカがこの割合で含有されていると硬化物の強度が向上する。上記下限値未満では硬化物の強度向上効果がなく、上記上限値超では流動性が低下するため好ましくない。
【0032】
(C)無機充填剤は、(B)成分と(C)成分を合わせて測定したロジン−ラムラー式のn値が0.7〜0.9であり、回帰直線の相関係数が0.99以下、好ましくは0.96以上0.99以下である粒度分布を示すものがよい。ロジン−ラムラー式のn値及び相関係数の測定方法は、(B)成分と(C)成分の各平均粒径のデータを下記式に示されるロジン−ラムラーの式に入れてロジン−ラムラー線図に変換し、最大粒子径から粒子径1μmまでの回帰直線を引き、直線の傾き(n値)と回帰直線の相関係数を算出する。
R(Dp)=100・exp(−b・Dpn)
(但し、式中Dpは粒径、R(Dp)は最大粒径からDpまでの積算重量%、n,bは定数である。)
【0033】
無機充填剤の平均粒径は10〜40μm、好ましくは14〜25μmである。平均粒径が10μmより小さい無機充填剤、或いはロジン−ラムラー式の回帰直線の相関係数が0.99より大きい無機充填剤では、樹脂組成物の流動性が低下するため好ましくない。無機充填剤を高充填するためには、ロジン−ラムラー式のn値が0.7以上0.9以下、好ましくは0.85以上0.9以下である粒度分布を有する無機充填剤を用いる必要があり、この時に樹脂組成物中の高い流動性を得ることができる。n値が上記下限値未満、或いは上記上限値超では、充分な流動性が得られず本発明の目的を達成し得ない。
【0034】
上記無機充填剤は、樹脂と無機充填剤との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤で予め表面処理したものを配合してもよい。
【0035】
このようなカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシランなどを用いることが好ましい。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではない。
【0036】
(C)無機充填剤の配合量は、(A)成分100質量部に対し、400〜1000質量部、特に600〜950質量部が好ましい。上記下限値未満では、十分な強度を得られない恐れがあり、1000質量部を超えると増粘によるモールドの未充填不良や柔軟性が失われることで、素子内の剥離等の不良が発生する場合がある。なお、(B)白色顔料と(C)無機充填剤の合計量は、シリコーン樹脂組成物全体の70〜93質量%、特に75〜91質量%であることが好ましい。
【0037】
(D)縮合触媒
(D)縮合触媒は、上記(A)成分を硬化させる縮合触媒であり、(A)成分の貯蔵安定性、目的とする硬度などを考慮して選択される。縮合触媒としては、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、n−ヘキシルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジシアンジアミド等の塩基性化合物類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタンアセチルアセトナート、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラブチレート、コバルトオクチレート、コバルトアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナート、スズアセチルアセトナート、ジブチルスズオクチレート、ジブチルスズラウレート、オクチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、p−tert−ブチル安息香酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド等の含金属化合物類、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等の有機チタンキレート化合物、等が挙げられる。この中で特に、オクチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、p−tert−ブチル安息香酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシドが好ましい。中でも安息香酸亜鉛、有機チタンキレート化合物が好ましく使用される。
【0038】
硬化触媒の配合量は、(A)100質量部に対し、0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜6質量部である。該範囲内では、硬化性が良好であり、組成物の貯蔵安定性もよい。
【0039】
(E)オルガノポリシロキサン
(E)成分は下記式(2)で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン残基を有することを特徴とする。
【化6】


ここで、R及びRは、互いに独立に、炭素数1〜3のアルキル基、シクロヘキシル基、ビニル基、フェニル基及びアリル基から選ばれる基であり、好ましくはメチル基及びフェニル基である。mは5〜50、好ましくは8〜30、より好ましくは10〜20の整数である。mが前記下限値未満では、硬化物の可撓性(耐クラック性)に乏しく、装置の反りを起こし得る。一方、前記上限値を超えては、機械的強度が不足する傾向がある。
【0040】
(E)成分は、R23SiO1単位に加えて、mが5〜50の範囲外であるD単位(RSiO)、M単位(RSiO0.5)、T単位(RSiO1.5)、Q単位(SiO)を含んでいてよい。(ここでRは有機基である。)それらのモル比はそれぞれ、90〜24:75〜0:50〜1、特に70〜28:70〜20:10〜2(但し、合計で100)であることが硬化物特性から好ましい。
【0041】
(E)成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は3,000〜1,000,000であることが好ましく、より好ましくは10,000〜100,000である。この範囲にあると、該ポリマーは固体もしくは半固体状であり作業性、硬化性などから好適である。
【0042】
(E)成分は、上記各単位の原料となる化合物を、生成ポリマー中で所要のモル比となるように組み合わせ、例えば酸の存在下で加水分解して縮合を行うことによって合成することができる。
【0043】
ここで、RSiO1.5単位の原料としては、MeSiCl3、EtSiCl3、PhSiCl3、プロピルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン等のクロロシラン類、これらそれぞれのクロロシラン類に対応するメトキシシラン類などのアルコキシシラン類などを例示できる。ここで、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。
【0044】
上記式(2)のR2SiO単位の原料としては、下記のものが挙げられる。
【化7】

【0045】
【化8】

【0046】
【化9】


(ここで、m=5〜50の整数(平均値)、n=0〜50の整数(平均値)、かつm+nが5〜50(平均値)である。)
【0047】
また、M単位、T単位等の原料としては、Me2PhSiCl、Me2ViSiCl、MePhSiCl2、MeViSiCl2、Ph2MeSiCl、Ph2ViSiCl、PhViSiCl2等のクロロシラン類、これらのクロロシランのそれぞれに対応するメトキシシラン類等のアルコキシシラン類などを例示することができる。ここで、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基、Viはビニル基を示す。
【0048】
これらの原料となる化合物を、所定のモル比で組合せて、例えば以下の反応で得ることが出来る。フェニルメチルジクロロシラン100質量部、フェニルトリクロロシラン2100質量部、Si数21個の両末端クロルジメチルシリコーンオイル2400質量部、トルエン3000質量部を投入混合し、水11000質量部中に混合シランを滴下し30〜50℃で1時間共加水分解する。その後、50℃で1時間熟成後、水を入れて洗浄し、その後共沸脱水、濾過、減圧ストリップをする。
【0049】
なお、上記共加水分解及び縮合により製造する際に、シラノール基を有するシロキサン単位が含まれ得る。(E)成分のオルガノポリシロキサンは、かかるシラノール基含有シロキサン単位を、通常、全シロキサン単位に対して0.5〜10モル%、好ましくは1〜5モル%程度含有することが好ましい。上記シラノール基含有シロキサン単位としては、例えば、R(HO)SiO単位、R(HO)2SiO0.5単位、R2(HO)SiO0.5単位が挙げられる(Rは水酸基ではない)。(F)成分のオルガノポリシロキサンはシラノール基を含有するので、(A)成分の硬化性ポリオルガノシロキサンと反応する。
【0050】
(E)成分の配合量は(A)成分100質量部に対し、好ましくは2〜50質量部、より好ましくは3〜30質量部である。添加量が少ないと連続成形性の向上効果が少なく、また低反り性を達成することが出来ない。添加量が多いと、組成物の粘度が上昇し成形に支障をきたすことがある。
【0051】
(F)その他の添加剤
本発明のシリコーン樹脂組成物には、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、樹脂の性質を改善する目的でγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等などのカップリング材、ウィスカー、シリコーンパウダー、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴムなどの添加材、脂肪酸エステル、グリセリン酸エステル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の内部離型剤、フェノール系、リン系、もしくは硫黄系酸化防止剤等を本発明の効果を損なわない範囲で添加配合することができる。但し、本発明の組成物は、酸化防止剤を含有せずとも、従来の熱硬化性シリコーン樹脂組成物に比べて、光による変色性が少ない。
【0052】
本発明組成物の製造方法としては、シリコーン樹脂、白色顔料、無機充填材、硬化触媒、その他の添加物を所定の組成比で配合し、これをミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕してエポキシ樹脂組成物の成形材料とすることができる。
【0053】
得られたシリコーン樹脂組成物は、光半導体装置、特にはLED用ケース、フォトカプラー用の封止材として特に有用である。図1に光半導体装置の一例であるLEDリフレクターの断面図を示す。図1においてLED等の光半導体素子1が、リードフレーム2にダイボンドされ、更にボンディングワイヤ3により別のリードフレーム(図示せず)にワイヤボンドされている。また、受光用の半導体素子(図示せず)がリードフレーム(図示せず)上にダイボンドされ、更にボンディングワイヤ(図示せず)により別のリードフレーム(図示せず)にワイヤーボンディングされている。これらの半導体素子の間は透明封止樹脂4により充填されている。図1に示す例において、本発明のシリコーン樹脂組成物の硬化物は、白色リフレクター5に使用される。また、6はレンズである。
【0054】
得られるリフレクターの波長450nmでの光反射率は、初期値で70%以上、特に80%以上、とりわけ85%以上であり、180℃で24時間劣化テスト後の反射率も70%以上、特に80%以上、とりわけ85%以上を達成できる。反射率が、70%未満であると、例えば、LED用半導体素子リフレクターとしての耐用時間が短くなる。
【0055】
該リフレクターの最も一般的な成形方法としては、トランスファー成形法や圧縮成形法が挙げられる。トランスファー成形法では、トランスファー成形機を用い、成形圧力5〜20N/mm、120〜190℃で30〜500秒、特に150〜185℃で30〜180秒で行うことが好ましい。また、圧縮成形法では、コンプレッション成形機を用い、成形温度は120〜190℃で30〜600秒、特に130〜160℃で120〜300秒で行うことが好ましい。更に、いずれの成形法においても、後硬化を150〜185℃で2〜20時間行ってよい。
【0056】
このようにして得られた本発明のエポキシ樹脂組成物は成形性、耐熱性や耐光性、特に耐紫外線性に優れていることから白色や青色、更には紫外LED用プレモールドパッケージ用に好適なばかりでなく、ソーラセル用のパッケージ材料としても最適なものである。
【0057】
更に、リード部やパッド部が形成されたマトリックスアレー型の金属基板や有機基板上で、LED素子搭載部分のみを空けた状態で本材料を用い一括封止するプレモールドパッケージも本発明の範疇に入る。また、通常の半導体用封止材や車載用各種モジュールなどの封止にも使用することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0059】
実施例、比較例で使用した原料を以下に示す。
[合成例1]
(A)オルガノポリシロキサンの合成
メチルトリクロロシラン100g、トルエン200gを1Lのフラスコに入れ、氷冷下で水8g、イソプロピルアルコール60gの混合液を液中滴下した。内温は−5〜0℃で5〜20hrかけて滴下し、その後加熱して還流温度で20分間撹拌した。それから室温まで冷却し、水12質量部を30℃以下、30分間で滴下し、20分間撹拌した。更に水25質量部を滴下後、40〜45℃で60分間撹拌した。その後水200部をいれて有機層を分離した。この有機層を中性になるまで洗浄し、その後共沸脱水、濾過、減圧ストリップをすることにより、下記式(7)で示される無色透明の固体(融点76℃)36.0質量部の熱硬化性オルガノポリシロキサン(A)を得た。
[化10]
(CH31.0Si(OC370.07(OH)0.101.4 (7)
【0060】
(B)白色顔料
白色顔料:二酸化チタン(ルチル型)、平均粒径0.29μm(堺化学工業(株)製)
【0061】
(C)無機充填剤
球状シリカ:平均粒径30μm ((株)龍森製)
球状シリカ:平均粒径4μm ((株)龍森製)
球状シリカ:平均粒径0.5μm ((株)アドマテック製)
破砕状シリカ:平均粒径8μm (福島窯業(株)製)
【0062】
(D)硬化触媒
安息香酸亜鉛 和光純薬工業(株)製
【0063】
[合成例2]
(E)オルガノポリシロキサンの合成
フェニルメチルジクロロシラン100g、フェニルトリクロロシラン2100g、Si数21個の両末端クロルジメチルシリコーンオイル2400g、トルエン3000gを混合し、水11000質量部中に混合した上記シランを滴下し30〜50℃で1時間共加水分解する。その後、50℃で1時間熟成後、水を入れて洗浄し、その後共沸脱水、濾過、減圧ストリップをすることにより、150℃での溶融粘度5Pa.s、無色透明のオルガノポリシロキサン(E)を得た。
【0064】
添加剤
シランカップリング剤:KBM803 (信越化学工業(株)製)
離型剤;ステアリン酸カルシウム (和光純薬工業(株)製)
【0065】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
表1に示す配合で、(A)オルガノポリシロキサン、(B)白色顔料、(C)無機充填剤、(D)硬化触媒、および(E)オルガノポリシロキサンを配合し、ロール混合にて製造し、冷却、粉砕して白色シリコーン樹脂組成物を得た。
【0066】
これらの組成物につき、以下の諸特性を測定した。結果を表1に示す。なお、成形は全てトランスファー成形機で、175℃×120秒で行った。
【0067】
スパイラルフロー値
EMMI規格に準じた金型を使用して、175℃、6.9N/mm、成形時間120秒の条件で測定した。
【0068】
溶融粘度
高化式フローテスターを用い、25kgfの加圧下、直径1mmのノズルを用い、温度175℃で粘度を測定した。
【0069】
室温での曲げ強度
JIS−K6911規格に準じた金型を使用して、175℃,6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で成形した試験片を室温(25℃)にて、曲げ強度を測定した。
【0070】
光反射率
175℃,6.9N/mm2、成形時間90秒の条件で直径50mm×厚さ3mmの円盤(硬化物)を成形し、成形直後、180℃で24時間放置後、UV照射(365nmピーク波長の高圧水銀灯60mW/cm)24時間後の波長450nmにおける光反射率をエス・デイ・ジ−(株)製X−rite8200を使用して測定した。
【0071】
球状シリカの平均粒径
球状シリカの平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(シーラス,HR850)を用いて測定した。
【0072】
【表1】

表中、括弧内の数値は各無機充填剤の重量%を示す。
【0073】
表1に示すように、破砕状シリカがすくな過ぎる比較例1及び全く含まない比較例3は成型物の曲げ強度が低かった。一方、(B)成分を多量に含有する比較例2は流動性が悪く成形することができなかった。これに対し、本願実施例は光反射率が高く、室温での曲げ強度も高かった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の樹脂組成物は、硬化後の強度に優れ、白色性、耐熱性及び耐光性に優れた硬化物を提供することができ、光半導体素子、特にリフレクター用に好適である。
【符号の説明】
【0075】
1 半導体素子
2 リードフレーム
3 ボンディングワイヤ
4 透明封止樹脂
5 白色リフレクター(シリコーン樹脂組成物の硬化物)
6 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含むシリコーン樹脂組成物
(A)下記平均組成式(1)で表され、重量平均分子量(ポリスチレン換算)が500〜20000のオルガノポリシロキサン 100質量部

(CHaSi(ORb(OH)c(4-a-b-c)/2 (1)

(式中、Rは炭素数1〜4の一価炭化水素基であり、a、b、cは、0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、及び0.801≦a+b+c<2を満たす数である)
(B)下記(C)以外の白色顔料 3〜200質量部
(C)前記白色顔料以外の無機充填剤であり、平均粒径0.2〜40μmの球状シリカ60〜80重量%と平均粒径5〜10μmの破砕状シリカ20〜40重量%からなる、平均粒径10〜40μmの無機充填剤
400〜1000重量部
(D)縮合触媒 0.01〜10質量部
(E)下記式(2)で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン残基を有する、オルガノポリシロキサン 2〜50質量部


(R及びRは、互いに独立に、炭素数1〜3のアルキル基、シクロヘキシル基、ビニル基、フェニル基及びアリル基から選ばれる基であり、mは5〜50の整数である)
【請求項2】
(B)白色顔料が、平均粒径0.05〜10.0μmの、二酸化チタン、酸化マグネシウム及びアルミナからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、シリコーン樹脂組成物の質量に対し1〜50質量%で含有され、(B)白色顔料と(C)無機充填剤の、シリコーン樹脂組成物質量に対する合計質量%が70〜93質量%であることを特徴とする請求項1記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂組成物の硬化物を備える光半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−32392(P2011−32392A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180955(P2009−180955)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】