説明

光学センサおよびそれを備えた機器

【課題】機器の周辺でこの機器を使用し又は使おうとしている人の有無を、小型かつ簡単な構成で検知でき、機器の省エネを図ることができる光学センサを提供すること。
【解決手段】1つのパッケージに、パッケージの外部の被写体を撮像して画像信号を出力するイメージセンサ部12と、イメージセンサ部12が出力する画像信号を処理する信号処理回路部13とが収容されている。信号処理回路部13は、画像信号が表す画像内に人の顔が存在するか否かを判定して、画像内に人の顔が存在すると判定したとき、実空間でのイメージセンサ部と顔との間の距離及びイメージセンサ部に対する顔の向きを検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は光学センサに関し、より詳しくは、人の存在を光学式に検出する光学センサに関する。
【0002】
また、この発明は、そのような光学センサを備えた機器に関する。
【背景技術】
【0003】
画面表示を伴う機器の表示デバイスが、消費電力の大きなCRT(陰極線管)から消費電力の小さい液晶、プラズマ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)等へと近年急速な変化を遂げている。さらに世界的な環境問題やCOの削減要求から、欧州を筆頭に、各種機器に対する省エネルギ(以下「省エネ」と略称する。)の要求は年々厳しさを増している。特に、日本では、省エネ推進のために、トップランナー方式、つまり、指定機器において、省エネの基準を、基準設定時に商品化されている製品のうち「最も省エネ性能が優れている機器(トップランナー)」の性能以上に設定する制度が採用されている。
【0004】
一般的な省エネ手法としては、例えばパーソナルコンピュータでは、ある一定時間のキー操作やマウス操作が無ければ、自動的に画面を消灯する等の手法が行われている。しかし、その手法ではタイムラグが大きいという欠点があるため、自動消灯のための設定をこまめに実施しているユーザは少ない。
【0005】
また、テレビ受像機では、一定時間リモコン操作がないと電源をオフする機能をもつものがある。しかしながら、この機能によれば、映画等の長時間番組を視聴していると、画面に邪魔な電源オフの予告文字が不意に現れたり、予期せぬときに電源がオフしたりすることがある。このため、この機能はユーザにあまり利用されていないのが実情である。
【0006】
最近では、省エネ推進のために、機器に、この機器を操作又は使用する人の有無を検知するための光量検知方式のセンサを設ける方式が提案されている(例えば、特許文献1(特開2007−312259号公報)参照。)。この方式は、例えば図12に示すように、センサ1を構成する発光素子2からの光(赤外線)を前方へ照射し、前方に存在する物体(人を含む。)3からの反射光を受光素子4で受けて、その受光素子4が出力する検知信号に基づいて物体の有無を検知するものである。具体的には、センサ1とは別に設けられた制御部(図示しない信号処理回路)が、受光素子4の検知信号(反射光量の大きさ)と設定されたスレッシュレベルとの間の大小比較を行い、その比較結果に応じて、液晶テレビ本体から或る範囲内に物体3が存在するかどうかを検知する。
【0007】
また、例えば図13に示すようなPSD方式のセンサが知られている(例えば、特許文献2(特開平5−312948号公報)参照。)。この方式では、センサ5を構成する発光素子6からの光(赤外線)を前方へ照射し、前方に存在する物体3または3′からの反射光を受光素子であるPSD(Position Sensing Diode;位置検出ダイオード)7で受けて、PSD7が複数の電極から出力する検知信号に基づいてセンサ5と物体3または3′との間の距離を検知するものである。具体的には、幾何学的な三角法の原理によって、センサ5と物体3,3′との間の距離に応じて、物体3,3′からの反射光がPSD7上に集光されるスポット位置I3,I3′が決定される。図示しない信号処理回路が、スポット位置I3,I3′に応じたPSD7の複数の電極から得られる出力電流の比を求めることによって、センサ5と物体3,3′との間の距離を検知する。
【0008】
また、機器にテレビカメラを設置して画像を撮影し、得られた画像の中に人が存在するかどうかをコンピュータシステムによる画像解析によって判定する方式が提案されている(例えば、特許文献3(特開平8−106519号公報)、特許文献4(特開平11−288259号公報)参照。)。この方式では、図14に示すように、機器8の前の空間をテレビカメラ9によってリアルタイムに撮影し、得られた画像をコンピュータ10に転送する。コンピュータ10のCPU(中央演算処理装置)を用いて、OS(オペレーティングシステム)上のアプリケーションソフトウェアを実行することによって画像解析(例えばハードディスク装置に保存されているデータベースを利用したパターン認識)を行って、人(機器の操作者)の存在有無を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−312259号公報
【特許文献2】特開平5−312948号公報
【特許文献3】特開平8−106519号公報
【特許文献4】特開平11−288259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の方式では、センサ1(受光素子4)の出力は、物体3との距離以外にも、物体3の反射率や表面状態、発光素子2の経年変化、温度特性によって影響を受ける。このため、物体3の有無の判定に誤差が生じやすい。また、反射光量の大きさがスレッシュレベルを超えるか否かの判定しか行っていないため、物体3が機器を操作する人であるか、人以外の物(椅子等)であるかの識別ができないという問題がある。
【0011】
特許文献2の方式では、特許文献1の方式に比べて、原理上、物体の反射率の影響を受けにくく、センサと物体との間の距離をより正確に検出できる。しかしながら、特許文献2の方式では、特許文献1の方式と同様に、物体が人であるか否かの判断ができないという問題がある。
【0012】
これに対して特許文献3,4の方式では、確かに機器の前方に存在している物体が人か椅子かを識別することは可能となる。しかしながら、人の検出のためには常時コンピュータ10のアプリケーションソフトウェアが動作していなければならない。最近のCPUは動作周波数が数GHzの値をもち、コンピュータ10は数十Wの電力を消費する。このため、人が存在しない時に画面を消灯して表示に要する電力を低減しても、トータルで考えると、コンピュータ10の消費電力は依然として大きいという問題がある。また、人が存在しない時にコンピュータ10の電源を落として省エネを図る場合、人が戻ってきた時にコンピュータ10が元の状態に復帰しない。
【0013】
そこで、この発明の課題は、機器の周辺でこの機器を使用し又は使おうとしている人の有無を、小型かつ簡単な構成で検知でき、機器の省エネを図ることができる光学センサを提供することにある。
【0014】
また、この発明の課題は、そのような光学センサを備えて、人が存在しない時に省エネを図ることができる機器を提供すること、またその上、人が現れた時に元の状態に容易に復帰できる機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、この発明の光学センサは、
1つのパッケージに、
上記パッケージの外部の被写体を撮像して画像信号を出力するイメージセンサ部と、
上記イメージセンサ部が出力する上記画像信号を処理する信号処理回路部と
が収容され、
上記信号処理回路部は、上記画像信号が表す画像内に人の顔が存在するか否かを判定して、上記画像内に人の顔が存在すると判定したとき、実空間での上記イメージセンサ部と上記顔との間の距離及び上記イメージセンサ部に対する上記顔の向きを検知することを特徴とする。
【0016】
本明細書で、「被写体」とは撮像される対象を意味する。
【0017】
この発明の光学センサでは、イメージセンサ部は、上記パッケージの外部の被写体を撮像して画像信号を出力する。信号処理回路部は、上記イメージセンサ部が出力する上記画像信号を次のように処理する。すなわち、まず、上記画像信号が表す画像内に人の顔が存在するか否かを判定する。この判定のためには、例えば上記画像内の陰影等から目、鼻、口等の顔の特徴を表す部分を検知する手法を用いることができる。続いて、上記画像内に人の顔が存在すると判定したとき、実空間での上記イメージセンサ部と上記顔との間の距離及び上記イメージセンサ部に対する上記顔の向きを検知する。ここで、上記イメージセンサ部から或る距離範囲内に上記イメージセンサ部を向いている顔が少なくとも1つ存在すれば、上記光学センサが設けられた機器の周辺でその機器を使用し又は使おうとしている人が存在すると考えられる(なお、「使用」は「操作」を含む広い概念である。「使おうとしている」には、「注視している」場合も含まれる。)。したがって、上記信号処理回路部の検知結果に基づいて、機器の周辺でこの機器を使用し又は使おうとしている人の有無を検知できる。
【0018】
このような構成をとれば、この光学センサは、コンピュータのアプリケーションソフトウェアを用いることなく動作する。この結果、この光学センサの消費電力は、イメージセンサ単体の場合とほとんど同等となり、mWレベルになる。したがって、この光学センサが設けられた機器、例えば液晶、プラズマ、有機EL等の表示デバイスを有する機器において、効果的な省エネを実現できる。
【0019】
また、この光学センサは、イメージセンサ部、信号処理回路部を1つのパッケージに収容しているので、小型かつ簡単に構成され得る。
【0020】
なお、上記イメージセンサ部としては、例えば市販の2次元イメージセンサを用いることができる。また、上記信号処理回路部としては、形状認識処理を行う必要最小限の機能をもつ専用のDSP(デジタルシグナルプロセッサ)を用いることができる。
【0021】
一実施形態の光学センサでは、上記信号処理回路部は、上記イメージセンサ部から或る距離範囲内に上記イメージセンサ部を向いている顔が少なくとも1つ存在するか否かを表す検知信号を出力することを特徴とする。
【0022】
この一実施形態の光学センサでは、上記検知信号はこの光学センサが設けられた機器の省エネのための制御(例えば、機器の主電源のオンオフ)に活用される。
【0023】
なお、上記検知信号としては、上記イメージセンサ部から或る距離範囲内に上記イメージセンサ部を向いている顔が少なくとも1つ存在するかどうかを、例えば電圧レベル等を可変して表すことができる。
【0024】
一実施形態の光学センサでは、上記信号処理回路部は、上記画像内に上記人の顔が存在するか否かを、少なくとも目、鼻、口のいずれかに相当する部分が存在するか否かに応じて判定することを特徴とする。
【0025】
この一実施形態の光学センサでは、上記画像内に人の顔が存在するか否かを、少なくとも目、鼻、口のいずれかに相当する部分が存在するか否かに応じて判定する。この判定の仕方は、公知の形状認識手法であり、通常、20×20ピクセル程度の解像度があれば足りる。また、実空間での上記イメージセンサ部と上記顔との間の距離及び上記イメージセンサ部に対する上記顔の向きは、上記画像内の上記特徴を表す部分同士の位置関係に基づいて比較的簡単に算出される。これにより、上記イメージセンサ部および上記信号処理回路部がさらに簡単に構成される。
【0026】
一実施形態の光学センサでは、上記イメージセンサ部と上記信号処理回路部とがCMOSプロセスを用いた1つのチップ上に形成されていることを特徴とする。
【0027】
この一実施形態の光学センサでは、上記イメージセンサ部と上記信号処理回路部とがCMOSプロセスを用いた1つのチップ上に形成されている。したがって、さらに上記光学センサの小型化および低消費電力化を図ることができる。
【0028】
一実施形態の光学センサでは、上記イメージセンサ部と上記信号処理回路部とがCMOSプロセスを用いた互いに別のチップ上に形成されていることを特徴とする。
【0029】
この一実施形態の光学センサでは、この光学センサを構成するために、任意の解像度をもつイメージセンサと汎用のDSPとを組み合わせて用いることが容易になる。したがって、設計の自由度が高まる。
【0030】
一実施形態の光学センサでは、
上記イメージセンサ部がCCD型であり、
上記信号処理回路部がCMOSプロセスを用いた複数のチップで構成されていることを特徴とする。
【0031】
この一実施形態の光学センサでは、イメージセンサ部がCCD型であるから、さらに設計の自由度が高まる。
【0032】
一実施形態の光学センサでは、上記パッケージ内に、上記イメージセンサ部が出力する上記画像信号を上記パッケージ外へ出力するためのインターフェイス部を備えたことを特徴とする。
【0033】
この一実施形態の光学センサでは、上記イメージセンサ部が出力する上記画像信号を、上記信号処理回路部へ出力する以外に、一般的なカメラの出力信号としても用いることができる。したがって、この光学センサを、例えばWeb(ウェブ)カメラや監視カメラとして兼用できる。
【0034】
一実施形態の光学センサでは、上記信号処理回路部は、上記検知の周期と時間を設定するタイマ機能を有することを特徴とする。
【0035】
この一実施形態の光学センサでは、上記タイマ機能によって、所謂ディレイや検出感度の設定が可能となり、ユーザが好みに応じた基準を設定することが可能となる。
【0036】
一実施形態の光学センサでは、上記パッケージ内に、上記パッケージの周囲の明るさを検出する受光素子を備えて、上記明るさに応じた信号を出力することを特徴とする。
【0037】
この一実施形態の光学センサでは、上記明るさに応じた信号は、例えばこの光学センサが設けられた機器の表示画面の明るさ調整を行うために活用される。これにより、上記機器は、省エネ機能に加えて、表示画面の最適な明るさ調整を行うことが可能になる。
【0038】
なお、上記受光素子は、上記イメージセンサ部の一部によって、または別チップの受光素子によって構成され得る。
【0039】
一実施形態の光学センサでは、上記パッケージ内に、上記パッケージの周囲の環境光の色合いを検出する受光素子を備えて、上記環境光の色合いに応じた信号を出力することを特徴とする。
【0040】
この一実施形態の光学センサでは、上記環境光の色合いに応じた信号(RGB等の色情報)は、例えばこの光学センサが設けられた機器の表示画面のカラー調整を行うために活用される。これにより、上記機器は、省エネ機能に加えて、環境の照明種類に応じて表示画面の最適なカラー調整を行うことが可能になる。
【0041】
なお、上記受光素子は、上記イメージセンサ部の一部によって、または別チップの受光素子によって構成され得る。
【0042】
一実施形態の光学センサでは、
上記パッケージ内に、上記被写体へ向けて光を発する発光素子を備え、
上記イメージセンサ部は、上記光に起因した上記被写体からの反射光を受けて上記画像信号を出力することを特徴とする。
【0043】
この一実施形態の光学センサでは、上記発光素子が上記被写体へ向けて光を発する。上記イメージセンサ部は、上記光に起因した上記被写体からの反射光(散乱光を含む。)を受けて上記画像信号を出力する。これにより、周囲の光によらず、上記被写体からの画像情報が得られる。
【0044】
一実施形態の光学センサでは、上記発光素子が発する光の波長は可視波長領域にあることを特徴とする。
【0045】
ここで、「可視波長領域」とは、人の目に見える波長領域を意味する。
【0046】
この一実施形態の光学センサでは、上記発光素子が発する光の波長は可視波長領域にあるので、上記被写体からの反射光は主に可視波長領域の光を含む。したがって、上記画像信号が表す画像内に人の顔が存在するか否かを判定するために、人の肌の色に関する情報等を利用することが可能となる。これにより、上記画像信号が表す画像内に人の顔が存在するか否かの判定の精度が高まる。この結果、実空間での上記イメージセンサ部と上記顔との間の距離及び上記イメージセンサ部に対する上記顔の向きを検知する精度が高まる。
【0047】
一実施形態の光学センサでは、上記イメージセンサ部に対して赤外光が入射するのを遮断する赤外光遮断構造を備えたことを特徴とする。
【0048】
この一実施形態の光学センサでは、上記赤外光遮断構造によって、上記イメージセンサ部に対して赤外光が入射するのが遮断される。したがって、上記イメージセンサ部が上記被写体を撮像する際に、各種機器のリモートコントローラやバックライトに起因する赤外光がノイズとなるのを防止できる。したがって、上記画像信号が表す画像内に人の顔が存在するか否かの判定の精度が高まる。この結果、実空間での上記イメージセンサ部と上記顔との間の距離及び上記イメージセンサ部に対する上記顔の向きを検知する精度がさらに高まる。
【0049】
なお、上記赤外光遮断構造は、例えば上記イメージセンサ部を覆うように赤外線カットフィルタ等の部品を設けることによって構成される。
【0050】
一実施形態の光学センサでは、上記発光素子が発する光の波長は赤外波長領域にあることを特徴とする。
【0051】
この一実施形態の光学センサでは、上記発光素子が発する光の波長は赤外波長領域にあるので、その光が直接人に見えることはない。したがって、この光学センサが動作する際に、上記発光素子が発する光が人に不快感を与えることはない。
【0052】
一実施形態の光学センサでは、上記イメージセンサ部に対して可視光が入射するのを遮断する可視光遮断構造を備えたことを特徴とする。
【0053】
この一実施形態の光学センサでは、上記可視光遮断構造によって、上記イメージセンサ部に対して可視光が入射するのが遮断される。したがって、上記イメージセンサ部が上記被写体を撮像する際に、被写体の周囲の太陽光や照明光がノイズとなるのを防止できる。したがって、上記画像信号が表す画像内に人の顔が存在するか否かの判定の精度が高まる。この結果、実空間での上記イメージセンサ部と上記顔との間の距離及び上記イメージセンサ部に対する上記顔の向きを検知する精度がさらに高まる。
【0054】
なお、上記可視光遮断構造は、例えば上記イメージセンサ部を覆うように可視光カットフィルタ等の部品を設けることによって構成される。
【0055】
この発明の機器は、
上記発明の光学センサを搭載した機器であって、
上記光学センサの検知結果に基づいて、上記機器の周辺でこの機器を使用し又は使おうとしている人が無いとき、上記機器を通常動作モードから低消費電力モードへ移行させる制御部を備えたことを特徴とする。
【0056】
この発明の機器では、上記光学センサの検知結果に基づいて、上記機器の周辺でこの機器を使用し又は使おうとしている人が無いとき、上記制御部は、上記機器を通常動作モードから低消費電力モードへ移行させる。したがって、人が存在しない時に省エネを図ることができる。
【0057】
ここで、「通常動作モード」とは、機器が動作をしている状態又は動作が直ちに可能な状態を指す。「低消費電力モード」とは、通常動作モードよりも消費電力が低い状態を指す。例えばパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」と略称する。)では、「低消費電力モード」は、液晶画面のバックライトとなるLED(発光ダイオード)を消灯若しくは減光したり、CPUの動作周波数を低減したり、またはHDD(ハードディスクドライブ)を休止したりしている待機状態を指す。低消費電力モードには、停止状態も含まれる。
【0058】
一実施形態の機器では、
表示画面を有し、
上記光学センサは上記表示画面の周辺に取り付けられていることを特徴とする。
【0059】
この一実施形態の機器は、表示画面を有する。この機器を使用し又は使おうとしている人は、上記表示画面の前方に顔を位置させて表示画面を注視する。そこで、上記光学センサは上記表示画面の周辺に取り付けられている。したがって、上記光学センサは、この機器を使用し又は使おうとしている人の有無を適切に検知できる。
【0060】
なお、「表示画面」とは、例えば液晶、プラズマ、又は有機EL等の表示デバイスの表示画面を指す。
【0061】
一実施形態の機器では、
上記機器に電力を供給する主電源とは別に、上記光学センサに電力を供給する副電源を備え、
上記光学センサの検知結果に応じて上記主電源のオン又はオフを行うことを特徴とする。
【0062】
この一実施形態の機器では、上記光学センサは、上記副電源から電力供給を受けて動作する。そして、上記光学センサの検知結果に応じて上記主電源のオン又はオフを行う。すなわち、人がこの機器を使用している場合、通常の動作モードが維持される。その人がこの機器の周辺から立ち去った場合、上記光学センサは上記機器の周辺に人が存在しなくなったことを検知して、その検知結果に応じて上記主電源をオフする。これにより、上記機器(上記光学センサ以外の部分)の動作を停止することができる。この後、この機器を使おうとする人が現れたときには、上記光学センサはその人を検知し、その検知結果に応じて上記主電源をオンする。これにより、上記機器を起動して元の状態に容易に復帰でき、通常の動作を行わせることができる。上記光学センサは常に動作を続けるが、上記光学センサ自体の消費電力は低いので、上記機器全体として省エネを図ることができる。
【0063】
一実施形態の機器では、上記光学センサの検知状況を表示する検知状況表示部を備えたことを特徴とする。
【0064】
この一実施形態の機器では、上記検知状況表示部は、上記光学センサの検知状況を表示する。したがって、この機器を使用し又は使おうとしている人は、上記光学センサの検知状況を知ることができる。例えば、その人は、上記光学センサが正常に動作しているか否かを知ることができる。
【0065】
なお、上記機器が表示画面を有する場合、上記光学センサの検知状況の表示は、その表示画面上で行うことができる。
【0066】
一実施形態の機器では、上記検知状況表示部は、この機器を使用し又は使おうとしている人が現れた時から所定時間が経過した後は上記光学センサの検知状況の表示を消すことを特徴とする。
【0067】
この機器を使用し又は使おうとしている人が現れた時から所定時間が経過するまでの間に、その人は、上記検知状況表示部による表示を見て、上記光学センサの検知状況を知ることができる。その後は、その人にとって、上記検知状況表示部による表示は不要であるかも知れない。そこで、この一実施形態の機器では、上記検知状況表示部は、この機器を使用し又は使おうとしている人が現れた時から所定時間が経過した後は上記光学センサの検知状況の表示を消す。これにより、不要な表示を避けることができる。
【0068】
一実施形態の機器では、
上記機器は表示画面を有し、
上記検知状況表示部は、上記光学センサの検知状況を動画として上記表示画面上に表示することを特徴とする。
【0069】
この一実施形態の機器では、この機器を使用し又は使おうとしている人は、上記光学センサの検知状況を動画として視ることができる。
【0070】
一実施形態の機器では、
上記機器は表示画面を有し、
上記検知状況表示部は、上記光学センサの検知状況を静止画として上記表示画面上に表示することを特徴とする。
【0071】
この一実施形態の機器では、この機器を使用し又は使おうとしている人は、上記光学センサの検知状況を静止画として視ることができる。
【発明の効果】
【0072】
以上より明らかなように、この発明の光学センサによれば、機器の周辺でこの機器を使用し又は使おうとしている人の有無を、小型かつ簡単な構成で検知でき、機器の省エネを図ることができる。
【0073】
また、この発明の機器は、そのような光学センサを備えて、人が存在しない時に省エネを図ることができる。またその上、人が現れた時に元の状態に容易に復帰できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態の光学センサに用いられるセンサチップの平面レイアウトを示す図である。
【図2】上記光学センサの断面構造を示す図である。
【図3】(a)は上記センサチップのイメージセンサ部によって得られた画像を示す図であり、(b)は上記センサチップのDSP部による形状認識処理によって得られた画像を示す図である。
【図4】本発明の別の実施形態の光学センサの断面構造を示す図である。
【図5】本発明のさらに別の実施形態の光学センサの断面構造を示す図である。
【図6】図2の光学センサの電気系統のブロック図である。
【図7】図5の光学センサの電気系統のブロック図である。
【図8】図1のセンサチップの平面レイアウトを変形した変形例を示す図である。
【図9】図1のセンサチップの平面レイアウトを変形した別の変形例を示す図である。
【図10】図2の光学センサが設けられた機器としての、液晶モニタが設けられたパソコンを示す図である。
【図11】光学センサが設けられた図10のパソコンの動作フローを示す図である。
【図12】従来の光量検知方式のセンサを示す図である。
【図13】従来のPSD方式のセンサを示す図である。
【図14】画像解析を行って人を検知する従来のコンピュータシステムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下、この発明の光学センサおよび機器を、図示の実施形態により詳細に説明する。
【0076】
(第1実施形態)
図2は、本発明の一実施形態の光学センサ(符号30で示す。)の断面構造を示している。この光学センサ30は、断面凹状の1つのパッケージ17と、このパッケージ17の底部にダイボンドされたセンサチップ11と、パッケージ17の上部を塞ぐようにホルダ19を介して取り付けられたレンズ18とを備えている。センサチップ11は、ワイヤ41,42によって、この光学センサの外部端子(後述する図6中の58,59)に電気的に接続されている。
【0077】
図1の平面レイアウトに示すように、センサチップ11は、CMOS型のイメージセンサ部12と、アンプ・ADC(アナログデジタルコンバータ)部14と、信号処理回路部としてのDSP(デジタルシグナルプロセッサ)部13と、インターフェイス部15と、電源回路16とを含んでいる。電源回路16は、この光学センサ30が設けられる機器の主電源とは別の副電源として設けられており、このセンサチップの各部12,13,14,15に電力を供給する。
【0078】
パッケージ17の外部からの光は、レンズ18を通してイメージセンサ部12に結像される。これにより、イメージセンサ部12は、パッケージの外部の被写体を撮像して画像信号を出力する。詳しくは、イメージセンサ部12は、図示しないフォトダイオードとトランジスタとを含む行列状に配置された複数の画素を有する。そして、各画素毎に、入射光をフォトダイオードによって光電変換し、得られた信号をトランジスタを通して出力する。
【0079】
イメージセンサ部12が出力した画像信号は、アンプ・ADC(アナログデジタルコンバータ)部14で、増幅されるとともにデジタル変換される。このデジタル変換された画像信号は、さらにDSP部13で次のように処理される。
【0080】
例えば、イメージセンサ部12によって、図3(a)に示すような画像99が得られたものとする。この画像99には、被写体としての人90が写っていて、この人90の顔91は正面を向いている。
【0081】
i) この場合、まず、DSP部13は、形状認識処理を行って、画像99内の陰影から目、鼻、口等の特徴を表す部分92,93,94を検知して、画像99内に人の顔91′が存在するか否かを判定する。この例では、図3(b)の判定画像に示すように、両目92′,93′と口94′とが検知されて、人の顔91′が「存在」すると判定される。
【0082】
この判定の仕方は、公知の形状認識手法であり、通常、20×20ピクセル程度の解像度があれば足りる。すなわちイメージセンサ部12自体の画素数は、VGA(640×480画素)以下でも十分実用に耐えうるものである。また、実空間でのイメージセンサ部12と顔との間の距離及びイメージセンサ部12に対する顔の向きは、画像99内の特徴を表す部分同士の位置関係に基づいて比較的簡単に算出される。
【0083】
なお、画像99内に人の顔91′が存在するか否かを判定するために、目、鼻、口に代えて、又はまたはそれらに加えて、顔の輪郭、眉、耳等を検知しても良い。また、顔の皮膚の色を表す色情報を用いて、判定の精度を向上させることも可能である。
【0084】
ii) 続いて、DSP部13は、画像99内に人の顔91′が存在すると判定したとき、実空間でのイメージセンサ部12と顔91との間の距離及びイメージセンサ部12に対する顔91の向きを検知する。ここで、イメージセンサ部12から或る距離範囲内にイメージセンサ部12を向いている顔が少なくとも1つ存在すれば、この光学センサ30が設けられた機器の周辺でその機器を使用し又は使おうとしている人が存在すると考えられる。したがって、DSP部13の検知結果に基づいて、この光学センサ30が設けられた機器の周辺でこの機器を使用し又は使おうとしている人の有無を検知できる。
【0085】
iii) そして、この例では、DSP部13は、イメージセンサ部12から或る距離範囲内にイメージセンサ部12を向いている顔が少なくとも1つ存在するか否かを表す検知信号を出力する。この検知信号としては、イメージセンサ部12から或る距離範囲内にイメージセンサ部12を向いている顔が少なくとも1つ存在するかどうかを、例えば電圧レベル等を可変して表す。
【0086】
この検知信号は、インターフェイス部15を通して出力され、この光学センサ30が設けられた機器の省エネのための制御(例えば、機器の主電源のオンオフ)に活用される。
【0087】
また、DSP部13は、上述のi)〜iii)の検知動作の周期と時間を設定するタイマ機能を有する。このタイマ機能によって、所謂ディレイや検出感度の設定が可能となり、ユーザが好みに応じた基準を設定することが可能となる。
【0088】
このような構成をとれば、この光学センサ30は、コンピュータのアプリケーションソフトウェアを用いることなく動作する。この結果、この光学センサ30の消費電力は、イメージセンサ単体の場合とほとんど同等となり、mWレベルになる。したがって、この光学センサ30が設けられた機器、例えば液晶、プラズマ、有機EL等の表示デバイスを有する機器において、効果的な省エネを実現できる。
【0089】
また、この光学センサ30は、各部12,13,14,15を1つのパッケージに収容しているので、小型かつ簡単に安価で構成される。特に、この光学センサ30では、イメージセンサ部12とDSP部13とがCMOSプロセスを用いた1つのチップ11上に形成されている。したがって、光学センサ30の小型化および低消費電力化をさらに図ることができる。
【0090】
センサチップ11の製造にはCMOSプロセスを用いているので、センサチップ11内にメモリを形成することも容易である。メモリをセンサチップ11に内蔵することによって、光学センサ組み立て後の電気的調整機能をもたせることが可能となる。したがって、ユーザにとって、この光学センサ30をより使い易くすることができる。
【0091】
図6は、そのようなメモリ53を有する場合の光学センサ30の電気系統のブロック構成を示している。センサチップ11上のイメージセンサ部12、アンプ・ADC部14、DSP部13、インターフェイス部15は、それぞれ図6中の受光部51、アンプ・ADC部52、DSP部54、I/F部55に対応する。
【0092】
パッケージ17に設けられた外部端子58に電源VCCが供給され、電源回路(図6では図示が省略されている。)を通して各部51,52,53,54,55に電力が供給される。光学センサ30の検出信号Voutは、外部端子59を通して、この光学センサ30が設けられた機器に供給される。
【0093】
(第2実施形態)
図4は、図2の光学センサ30の構成を変形した変形例(符号31で示す。)を示している。なお、理解の容易のために、図4において、図2中の要素と同じ要素には同じ符号を付している。
【0094】
この光学センサ31は、パッケージ17の底部にダイボンドされた2つのチップ20,21を備えている。チップ20,21は互いにワイヤ43によって電気的に接続されている。
【0095】
一方のチップ20は、CMOSプロセスを用いて形成された図2中のイメージセンサ部12、アンプ・ADC部14、インターフェイス部15、電源回路16を含んでいる。他方のチップ21は、CMOSプロセスを用いて形成された図2中のDSP部13を含んでいる。
【0096】
レンズ18は、イメージセンサ部12を有するチップ20の直上に配置されている。
【0097】
なお、この光学センサ31の電気系統のブロック構成は、図6に示したものと同じである。
【0098】
このような構成をとれば、この光学センサ31の消費電力は、図2の光学センサ30と同様に、mWレベルになる。したがって、この光学センサが設けられた機器、例えば液晶、プラズマ、有機EL等の表示デバイスを有する機器において、効果的な省エネを実現できる。
【0099】
また、この光学センサ31では、イメージセンサ部12を有するチップ20と、信号処理回路部としてのDSP部13を有するチップ21とを、互いに別チップとしている。したがって、この光学センサ30を構成するために、任意の解像度をもつイメージセンサと汎用のDSPとを組み合わせて用いることが容易になる。これにより、設計の自由度を高めることができる。
【0100】
また、複数チップを用いる場合、イメージセンサ部12としてCCD型のものを用いることができる。また、DSP部13は、VGAやXGA(1024×768画素)等の複数種類の画素数のセンサからの信号処理に対応できるのが望ましい。これにより、さらに設計の自由度を高めることができる。
【0101】
さらに言えば、イメージセンサ部12としては、例えば市販の2次元イメージセンサを用いることができる。また、DSP部13としては、形状認識処理を行う必要最小限の機能をもつ専用のDSPを用いることができる。
【0102】
(第3実施形態)
図5は、図2の光学センサ30の構成を変形した別の変形例(符号32で示す。)を示している。なお、理解の容易のために、図5において、図2中の要素と同じ要素には同じ符号を付している。
【0103】
この光学センサ32は、図2の光学センサ30の要素に加えて、パッケージ17′の底部にダイボンドされた発光素子としてのLED(発光ダイオード)チップ22を備えている。センサチップ11とLEDチップ22との間は、平板状の遮光部17aによって仕切られ、遮光されている。遮光の理由は、LEDチップ22が発した光が内乱光となって、センサチップ11の検知動作へ悪影響を与えるのを防止するためである。
【0104】
LEDチップ22は、ワイヤ44によって、このLEDチップ22を発光させるためのドライバ部(図7(電気系統のブロック構成)中に符号56で示す。)に接続されている。
【0105】
LEDチップ22の直上には、LEDチップ22が発した光をコリメートするためのレンズ18′が設けられている。
【0106】
レンズ18とセンサチップ11との間には、センサチップ11を覆うように、検出に不要な光をカットするためのフィルタ23が設けられている。
【0107】
この光学センサ32では、LEDチップ22がレンズ18′を通して、例えば図3中に示した被写体90へ向けて光を発する。イメージセンサ部12は、その光に起因した被写体90からの反射光(散乱光を含む。)を、レンズ18とフィルタ23を通して受けて画像信号を出力する。これにより、周囲の光によらず、被写体90からの画像情報が得られる。
【0108】
上記LEDチップ22としては、用途に応じて、可視波長領域の光を発する可視光LEDと、赤外は跳梁域の光を発する赤外LEDとのいずれを用いてもよい。
【0109】
上記LEDチップ22として可視光LEDを用いる場合には、被写体90からの反射光は主に可視波長領域の光を含む。したがって、画像信号が表す画像99内に人の顔91′が存在するか否かを判定するために、人の肌の色に関する情報等を利用することが可能となる。これにより、画像信号が表す画像99内に人の顔91′が存在するか否かの判定の精度が高まる。この結果、実空間でのイメージセンサ部12と顔91との間の距離及びイメージセンサ部12に対する顔91の向きを検知する精度が高まる。
【0110】
この場合、フィルタ23としては、赤外光遮断構造としての赤外カットフィルタを用いる。これにより、イメージセンサ部12に対して赤外光が入射するのが遮断される。したがって、イメージセンサ部12が被写体90を撮像する際に、各種機器のリモートコントローラやバックライトに起因する赤外光がノイズとなるのを防止できる。したがって、画像信号が表す画像99内に人の顔91′が存在するか否かの判定の精度が高まる。この結果、実空間でのイメージセンサ部12と顔91との間の距離及びイメージセンサ部12に対する顔91の向きを検知する精度がさらに高まる。
【0111】
一方、上記LEDチップ22として赤外LEDを用いる場合には、そのLEDチップ22が発する光の波長は赤外波長領域にあるので、その光が直接人に見えることはない。したがって、この光学センサ30が動作する際に、そのLEDチップ22が発する光が人に不快感を与えることはない。
【0112】
この場合、フィルタ23としては、可視光遮断構造としての可視光カットフィルタを用いる。これにより、イメージセンサ部12に対して可視光が入射するのが遮断される。したがって、イメージセンサ部12が被写体90を撮像する際に、被写体90の周囲の太陽光や照明光がノイズとなるのを防止できる。したがって、画像信号が表す画像99内に人の顔91′が存在するか否かの判定の精度が高まる。この結果、実空間でのイメージセンサ部12と顔91との間の距離及びイメージセンサ部12に対する顔91の向きを検知する精度がさらに高まる。
【0113】
もちろん、パッケージ内に発光素子を内蔵していない場合でも、センサチップ11を覆うように、イメージセンサ部12の分光特性に応じたフィルタを設置してもよい。
【0114】
(第4実施形態)
図8は、図1のセンサチップ11の平面レイアウトを変形した変形例(符号11′で示す。)を示している。
【0115】
このセンサチップ11′は、図1中のイメージセンサ部12の面積を縮小したのに相当するイメージセンサ部12′と、その縮小した跡に設けられた、パッケージの周囲の明るさを検出する受光素子としての照度検知領域24とを備えている。センサチップ11′の他の構成は、図1中のイメージセンサ部12の構成と同じである。
【0116】
照度検知領域24が出力する上記明るさに応じた信号は、例えば光学センサ30が設けられた機器の表示画面の明るさ調整を行うために活用される。これにより、その機器は、省エネ機能に加えて、表示画面の最適な明るさ調整を行うことが可能になる。例えば、液晶ディスプレイのバックライトの輝度調整等を行えば、無駄なバックライトの電力消費を削減でき、更なる省エネを実現できる。
【0117】
なお、このようなパッケージの周囲の明るさを検出する受光素子は、イメージセンサ部12の一部によって、または別チップの受光素子によって構成され得る。
【0118】
(第5実施形態)
図9は、図1のセンサチップ11の平面レイアウトを変形した別の変形例(符号11″で示す。)を示している。
【0119】
このセンサチップ11″は、図1中のイメージセンサ部12の面積を縮小したのに相当するイメージセンサ部12″と、その縮小した跡に設けられた、パッケージの周囲の環境光の色合いを検出する受光素子としてのカラー照度検知領域25とを備えている。センサチップ11″の他の構成は、図1中のイメージセンサ部12の構成と同じである。
【0120】
カラー照度検知領域25が出力する環境光の色合いに応じた信号(RGB等の色情報)は、例えば光学センサ30が設けられた機器の表示画面のカラー調整を行うために活用される。これにより、その機器は、省エネ機能に加えて、環境の照明種類に応じて表示画面の最適なカラー調整を行うことが可能になる。
【0121】
なお、このようなパッケージの周囲の環境光の色合いを検出する受光素子は、イメージセンサ部12の一部によって、または別チップの受光素子によって構成され得る。
【0122】
(第6実施形態)
図10は、図2の光学センサ30を搭載した機器としての、液晶モニタ102をもつパソコン101を示している。この例では、パソコン101の本体は机83の下に設けられ、液晶モニタ102は机83の上に置かれている。
【0123】
パソコン101を使用し又は使おうとしている人80は、この例では椅子82に座って、液晶モニタ102の表示画面の前方に顔81を位置させて表示画面を注視する。そこで、光学センサ30は、このパソコン101を使用し又は使おうとしている人80の有無を適切に検知できるように、液晶モニタ102の額縁部、つまり表示画面の上辺に取り付けられている。そして、液晶モニタ102の正面方向に視野角をもつように、レンズ18を液晶モニタ102の正面方向に向けて配置されている。
【0124】
この例では、光学センサ30の視野角は、レンズ18の光軸に対して約±30度とした。また、検出すべき距離範囲は、光学センサ30(より正確には、イメージセンサ部12)に対して30cmから100cm程度離間した範囲とした。この結果、図10中に斜線で示す領域Aが人の顔81を検出すべき範囲となっている。この領域A内に光学センサ30を向いている顔が少なくとも1つ存在すれば、パソコン101の周辺でこのパソコン101を使用し又は使おうとしている人が存在すると考えられる。なお、領域Aの光学センサ30から遠い側の境界にあるときの椅子、人、顔は、それぞれ符号82′、80′、81′で表されている。もちろん、領域Aを規定する数値については、そのパソコン101や液晶モニタ102の大きさ、用途、使用状態によって変更することが可能である。
【0125】
パソコン101は、光学センサ30の検知結果に基づいて、パソコン101の周辺でこのパソコン101を使用し又は使おうとしている人が無いとき、パソコン101を通常動作モードから低消費電力モードへ移行させる制御部としてのコントローラを備えている。したがって、人が存在しない時に省エネを図ることができる。このようなコントローラは、パソコン101のシステムソフトウェアによって構成される。
【0126】
図11は、光学センサ30が設けられたパソコン101の動作フローを例示している。なお、この例では、光学センサ30は、パソコン101から電力供給を受けて動作するものとする。
【0127】
最初にパソコン101はオフ(OFF)状態にあるものとする(ステップS1)。
【0128】
人によってパソコン101の主電源がオン(ON)されてパソコン101が起動し(ステップS2)、通常動作モードとしての通常オペレーションに入る(ステップS3)。
【0129】
光学センサ30は、パソコン101が通常オペレーションに入ると同時に、既述のi)〜iii)の検知動作を開始する(ステップS4)。そして、光学センサ30のDSP部13が有するタイマ機能(第1タイマ)によって、或る一定の周期T1(秒)で、上述のi)〜iii)の検知動作を繰り返す(ステップS5)。このタイマ機能によって、所謂ディレイや検出感度の設定が可能となり、ユーザが好みに応じた基準を設定することが可能となる。
【0130】
ここで、検知の結果、パソコン101の周辺でこのパソコン101を使用し又は使おうとしている人が有るときは、この例では光学センサ30はパソコン101へ検出信号を送らず、パソコン101が通常オペレーションを継続するのを許容する。これを状態1Lとする。
【0131】
一方、検知の結果、パソコン101の周辺でこのパソコン101を使用し又は使おうとしている人が無いときは、光学センサ30はその旨を表す検出信号Voutをパソコン101のコントローラへフィードバックする。
【0132】
なお、フィードバックの仕方は、この例のようにパソコン101を使用し又は使おうとしている人が無いときのみ検出信号Voutをコントローラへ送っても良いし、検知動作の度(周期T1)毎に検出信号Voutをコントローラへ送っても良い。
【0133】
光学センサ30からパソコン101を使用し又は使おうとしている人が無い旨の検出信号Voutを受けると、パソコン101は、低消費電力モードとしてのスタンバイモード(STBモード)へ移行する(ステップS6)。このパソコン101は、スタンバイモードにあるとき、液晶画面のバックライトとなるLEDを消灯若しくは減光したり、CPUの動作周波数を低減したり、またはHDD(ハードディスクドライブ)を休止したりする。したがって、人が存在しない時に省エネを図ることができる。
【0134】
例えば、一般的な液晶モニタ102について考えると、その消費電力は約25W程度あるが、オフ時には約1/10の2.5W程度に低減できる。この消費電力の低減を、1000台のパソコン101を使用するオフィスで考えると、1年間に約3.3トンのCOの削減が可能となる。これはテニスコート56面分の森林の効果に相当する。
【0135】
また、パソコン101は、スタンバイモードにあるとき、コントローラが有するタイマ機能(第2タイマ)によって、或る一定の周期T2(秒)で、人がキーボードまたはマウスの操作を行った否かを確認する(ステップS7,S8)。これを状態2Lとする。
【0136】
この状態2Lにある間は、光学センサ30はスタンバイ状態もしくは停止状態とする。 人がキーボードまたはマウスの操作を行うと(ステップS8でYES)、パソコン101はスタンバイモード(状態2L)からステップS3へ戻って通常動作モード(状態1L)へ復帰する。それと同時に、この例では光学センサ30も動作状態に復帰する。
【0137】
なお、状態2Lにある間も光学センサ30が動作して、一定の周期(例えばT2(秒))で、人の有無を検知し、その検知結果をパソコン101のコントローラへフィードバックし、通常動作モードへの復帰を行うことも可能である。フィードバックの仕方は、検知動作の度(周期T2)毎に検出信号Voutをコントローラへ送っても良いし、人が存在する状態を検出したときのみその旨を表す検出信号Voutをコントローラへ送っても良い。
【0138】
上述の例では、光学センサ30は、パソコン101から電力供給を受けて動作するものとした。しかしながら、これに限られるものではなく、パソコン101に電力を供給する主電源とは別に、光学センサ30に電力を供給する副電源を備えても良い。
【0139】
そのようにした場合、光学センサ30は、その内部にタイマ機能をもつので、前述の状態1Lの場合にも、状態2Lの場合でも機器(パソコン等)から電力供給や信号を受け取らずとも、光学センサ30自体が一定周期で検知動作を行って、省エネを図ることができる。
【0140】
具体的には、人がパソコン101を使用している場合、光学センサ30はその人を例えば10秒毎に定期的に検知し、通常動作モードを維持する。その人がパソコン101の周辺から立ち去った場合、光学センサ30はパソコン101の周辺に人が存在しないことを検知して、その検知結果に応じて一定のディレイ後にパソコン101の液晶モニタ102がオフする。さらにこの状態が一定時間続いた場合には、パソコン101の稼動に関するその他の電力を低減できる状態とし、最終的にはスタンバイ状態やシャットダウン(主電源オフ)を行う。この後、このパソコン101の周辺にパソコン101を使おうとする人が現れたときには、光学センサ30はその人を検知し、その検知結果に応じてパソコン101の主電源をオンする。これにより、パソコン101を起動して元の状態に容易に復帰でき、通常の動作を行わせることができる。
【0141】
この場合、光学センサ30は常に動作を続けるが、光学センサ30自体の消費電力は低いので、検知動作時の消費電力を数十mWとすることが可能である。これにより、全体として省エネを図ることができ、高レベルの省エネを実現することができる。
【0142】
また、例えば光学センサ30が設けられた機器を使用し又は使おうとする人が、光学センサ30の検知状況を知りたい場合がある。そこで、パソコン101に光学センサ30の検知状況を表示する検知状況表示部を設けても良い。
【0143】
具体的には、パソコン101にインストールされた公知の画像再生用アプリケーションソフトウェアを利用して、検知状況表示部としての液晶モニタ102の表示画面上に、光学センサ30の検知状況を、例えば図3(a),(b)に示したような態様で動画又は静止画として表示する。これにより、その人は、液晶モニタ102の表示画面を見て、光学センサ30が正常に動作しているか否かを知ることができる。その後は、その人にとって、検知状況の表示は不要であるかも知れない。そこで、この機器を使用し又は使おうとしている人が現れた時から所定時間が経過した後は光学センサ30の検知状況の表示を消す。これにより、不要な表示を避けることができる。このように、検知状況の表示は恒久的であっても良いし、一時的であっても良い。
【0144】
なお、検知状況表示部は、液晶モニタ102の表示画面ではなく、別途、例えば液晶モニタ102の額縁部やパソコン101の本体に設けられたLED等であっても良い。
【0145】
また、上述の例では、光学センサ30のイメージセンサ部12が出力する画像信号を専らDSP部13へ出力したが、これに限られるものではない。光学センサ30のパッケージ17内に、イメージセンサ部12が出力する画像信号をパッケージ外へ出力するためのインターフェイス部(図示せず)を設けておき、一般的なカメラの出力信号として用いても良い。例えば、ノートパソコンやデスクトップ型のパソコンにおいて、光学センサ30をWebカメラや監視カメラとして利用することができる。
【0146】
この実施形態では、光学センサ30を機器としてのパソコン101に設ける例について述べたが、当然ながら、これに限られるものではない。
【0147】
既述の他の実施形態の光学センサ31,32を設けても良い。また、本発明の光学センサが設けられる機器としては、パソコン以外の様々な機器であっても良く、例えば表示画面をもたない機器であっても良い。
【0148】
もちろん光学センサ30は、それが搭載される機器の構成、インターフェイスの方式に従って、既述の例のように予め機器に組み込まれていても良いし、別途外付けとしても良い。
【符号の説明】
【0149】
11,11′,11″ センサチップ
12,12′,12″ イメージセンサ部
13 DSP部
14 アンプ・ADC部
15 インターフェイス部
16 電源回路
17,17′ パッケージ
18,18′ レンズ
20,21 チップ
22 LEDチップ
23 フィルタ
24 照度検知領域
25 カラー照度検知領域
30,31,32 光学センサ
101 パソコン
102 液晶モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのパッケージに、
上記パッケージの外部の被写体を撮像して画像信号を出力するイメージセンサ部と、
上記イメージセンサ部が出力する上記画像信号を処理する信号処理回路部と
が収容され、
上記信号処理回路部は、上記画像信号が表す画像内に人の顔が存在するか否かを判定して、上記画像内に人の顔が存在すると判定したとき、実空間での上記イメージセンサ部と上記顔との間の距離及び上記イメージセンサ部に対する上記顔の向きを検知することを特徴とする光学センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の光学センサにおいて、
上記信号処理回路部は、上記イメージセンサ部から或る距離範囲内に上記イメージセンサ部を向いている顔が少なくとも1つ存在するか否かを表す検知信号を出力することを特徴とする光学センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学センサにおいて、
上記信号処理回路部は、上記画像内に上記人の顔が存在するか否かを、少なくとも目、鼻、口のいずれかに相当する部分が存在するか否かに応じて判定することを特徴とする光学センサ。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一つに記載の光学センサにおいて、
上記イメージセンサ部と上記信号処理回路部とがCMOSプロセスを用いた1つのチップ上に形成されていることを特徴とする光学センサ。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれか一つに記載の光学センサにおいて、
上記イメージセンサ部と上記信号処理回路部とがCMOSプロセスを用いた互いに別のチップ上に形成されていることを特徴とする光学センサ。
【請求項6】
請求項1から3までのいずれか一つに記載の光学センサにおいて、
上記イメージセンサ部がCCD型であり、
上記信号処理回路部がCMOSプロセスを用いた複数のチップで構成されていることを特徴とする光学センサ。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一つに記載の光学センサにおいて、
上記パッケージ内に、上記イメージセンサ部が出力する上記画像信号を上記パッケージ外へ出力するためのインターフェイス部を備えたことを特徴とする光学センサ。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一つに記載の光学センサにおいて、
上記信号処理回路部は、上記検知の周期と時間を設定するタイマ機能を有することを特徴とする光学センサ。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一つに記載の光学センサにおいて、
上記パッケージ内に、上記パッケージの周囲の明るさを検出する受光素子を備えて、上記明るさに応じた信号を出力することを特徴とする光学センサ。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一つに記載の光学センサにおいて、
上記パッケージ内に、上記パッケージの周囲の環境光の色合いを検出する受光素子を備えて、上記環境光の色合いに応じた信号を出力することを特徴とする光学センサ。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一つに記載の光学センサにおいて、
上記パッケージ内に、上記被写体へ向けて光を発する発光素子を備え、
上記イメージセンサ部は、上記光に起因した上記被写体からの反射光を受けて上記画像信号を出力することを特徴とする光学センサ。
【請求項12】
請求項11に記載の光学センサにおいて、
上記発光素子が発する光の波長は可視波長領域にあることを特徴とする光学センサ。
【請求項13】
請求項12に記載の光学センサにおいて、
上記イメージセンサ部に対して赤外光が入射するのを遮断する赤外光遮断構造を備えたことを特徴とする光学センサ。
【請求項14】
請求項11に記載の光学センサにおいて、
上記発光素子が発する光の波長は赤外波長領域にあることを特徴とする光学センサ。
【請求項15】
請求項12に記載の光学センサにおいて、
上記イメージセンサ部に対して可視光が入射するのを遮断する可視光遮断構造を備えたことを特徴とする光学センサ。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか一つに記載の光学センサを搭載した機器であって、
上記光学センサの検知結果に基づいて、上記機器の周辺でこの機器を使用し又は使おうとしている人が無いとき、上記機器を通常動作モードから低消費電力モードへ移行させる制御部を備えたことを特徴とする機器。
【請求項17】
請求項16に記載の機器において、
表示画面を有し、
上記光学センサは上記表示画面の周辺に取り付けられていることを特徴とする機器。
【請求項18】
請求項16または17に記載の機器において、
上記機器に電力を供給する主電源とは別に、上記光学センサに電力を供給する副電源を備え、
上記光学センサの検知結果に応じて上記主電源のオン又はオフを行うことを特徴とする機器。
【請求項19】
請求項16から18までのいずれか一つに記載の機器において、
上記光学センサの検知状況を表示する検知状況表示部を備えたことを特徴とする機器。
【請求項20】
請求項19に記載の機器において、
上記検知状況表示部は、この機器を使用し又は使おうとしている人が現れた時から所定時間が経過した後は上記光学センサの検知状況の表示を消すことを特徴とする機器。
【請求項21】
請求項19または20に記載の機器において、
上記機器は表示画面を有し、
上記検知状況表示部は、上記光学センサの検知状況を動画として上記表示画面上に表示することを特徴とする機器。
【請求項22】
請求項19または20に記載の機器において、
上記機器は表示画面を有し、
上記検知状況表示部は、上記光学センサの検知状況を静止画として上記表示画面上に表示することを特徴とする機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−256066(P2010−256066A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103903(P2009−103903)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】