光透過性デバイス用導電性構造
光透過性デバイス用導電性構造、および光透過性デバイス用導電性構造を形成する方法が提供される。この構造は、第1のプロセス条件を用いて形成される第1の透明導電性材料層と、直接第1の層上に形成される少なくとも1つの他の透明導電性材料層であって、第1のプロセス条件とは異なる第2のプロセス条件を用いて形成される少なくとも1つの他の透明導電性材料層とを備え、前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の形成中に、第1の層が、光透過性デバイスに対する悪影響を低減させるためのバッファ層として機能する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には、光透過性デバイス用導電性構造、および光透過性デバイス用導電性構造を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上面発光型有機発光ダイオード(OLED)などのデバイスでは、極薄金属膜が透明カソードとして典型的に使用される。しかし、極薄金属カソード、例えばMg:Ag、LiF/Al、LiF/Al/Ag、Ca/Agなどは典型的に、水分および酸素に対して低い耐性を呈し、その結果、デバイス寿命が短くなる。さらに、極薄金属カソードは典型的に、カソード/空気界面での屈折率の不整合のため、電極/空気界面で比較的多くの内面反射を引き起こす。さらに、極薄金属カソードは典型的に、可視光波長領域内で高吸収性を有し、それが低透過率の原因となることがある。
【0003】
したがって、技術が進歩して、金属カソードを覆う透明導電性酸化物(TCO)からなるカバー層を形成し、したがって金属/TCOベースのカソードを生み出すまでになっている。
【0004】
TCOからなる薄膜には、例えば良好な導電性および可視スペクトル領域内での高光透過性というその特性のため、多くの用途がある。TCO薄膜を形成するために、ドープ酸化物材料、例えばZnO、SnO2、およびIn2O3が典型的に、別々の層の形で個別に使用され、またはインジウムスズ酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)などの混合物として使用される。多くのTCO薄膜のうち、ITO、アルミニウムドープZnO(AZO)、およびフッ素ドープSnO2(FTO)が、より一般に使用されるTCO材料である。TCOは典型的に、静電防止被覆、ヒートミラー、太陽セル、フラットパネルディスプレイ、センサ、および有機発光ダイオード(OLED)などのデバイス応用に不可欠な部分として使用される。
【0005】
TCO層は典型的に、上面発光型有機/ポリマー発光ダイオード(OLED/PLED)内のカソードで、またはタンデム構造有機光起電力セル内の電荷再結合ゾーンとして使用される。TCO層は、有機材料および他の材料との界面を形成するために使用することができ、また電気接点として働くこともできる。したがって、有機エレクトロニクスでは、有機層上に高性能TCOベースの透明電極を、下にある機能材料に損傷を与えずに堆積させることが望ましい。例えば透明性および導電性という典型的なTCOの特性に加えて、低プロセス温度を用いて、また、高速作製、高い電極導電性、および低コストなどの拡大されたプロセス柔軟性を用いて作製される電極があることが望ましい。
【0006】
しかし、典型的な金属/TCOベースのカソードは、いくつかの問題に直面する。高導電性の透明なTCO膜をガラス基板上に作製する場合、200℃を上回るプロセス温度が典型的に必要である。100℃未満のプロセス温度で形成されたTCO膜は典型的に、200℃を上回る基板温度で作製されたTCO膜よりも比較的高い抵抗率および低い光透過性を有することが認識されている。典型的には、TCOベースの透明電極は、高いプロセス温度と適合し得ない活性材料/活性層上に堆積される。例えば、DC/RFマグネトロンスパッタリングにより形成されるITO膜は典型的に、膜作製中に高温で基板を加熱する、または200℃を上回る温度での追加のポストアニール処理を追加する必要がある。1つの問題は、高いプロセス温度が、有機エレクトロニクスへの応用に適していないことである。例えば、タンデム有機光起電力(PV)セルおよび上面発光型OLEDは典型的に、高温プラズマプロセスとの適合性がない。
【0007】
さらに、高いプロセス温度による損傷に加えて、TCOの堆積に関連する他の問題がある。例えば、TCOの1種であるITOは典型的に、アノード/カソード材料として使用される。ITOカソード接点が、タンデム光起電力セル内の有機電子受容体上、または上面発光型OLED内の電場発光物質上に堆積される場合、典型的なスパッタリングプロセスにより形成されるITO電極は、次のことに直面する可能性がある。ITO堆積によって引き起こされる、下にあるポリマー/有機機能層への損傷により、デバイス性能が典型的に悪化する。さらに、電子インジェクタおよび導電性金属層を有する半透明カソードの場合、電流拡がりおよび光出力結合効率を向上させるために、屈折率整合層が典型的に必要になる。
【0008】
さらに、有機エレクトロニクス用の透明カソードは典型的に、下にある機能材料にほとんど損傷を与えずに、比較的大きな堆積速度で、低いプロセス温度にて作製されることが望ましい。透明電極は、高光透過性、高導電性、平滑な表面形態、および高安定性という特性を有することが望ましい。さらに、低コスト量産用のスケーラブルなプロセスがあることが望ましい。
【0009】
したがって、上述の問題のうち、典型的な金属/TCOベースのカソードの場合、TCO堆積が、下にある機能層に対する損傷を引き起こすことが認識されている。さらに、典型的な金属/TCOベースのカソードには、低堆積速度という欠点がある。G.Gu等、Appl.Phys.Lett.68(19)、1996、(2606−2608)、RF−sputtered ITO Cathode、Ar/O2では、カソードの成長速度が1.0nm/分未満であることが分かっている。さらに、金属/ITOベースのカソードは、比較的高いシート抵抗Rsを呈することも分かった。したがって、典型的な金属/TCOベースのカソードの場合、乏しいTCO導電性を補償するために、より厚い金属層が使用される。このことが、光透過性のさらなる減少、および起こり得るコスト増加の原因となる可能性がある。
【0010】
典型的な金属/TCOベースのカソードを用いることから生じる問題に対処すべく、有機バッファ層/TCOカソードが提案されている。典型的には、有機バッファ層/TCOカソードでは、金属中間層が使用されない。これについては、米国特許第6569697号、US6420031B1、G.Parthasarathy等、Appl.Phys.Lett.76(15)、2000、(2128−2130)、Haiying Chen等、IEEE Electron Device Letters 24(5)、2003、(315−317)、およびHo Won Choi等、Appl.Phys.Lett.、2005、86(012104)の中で研究された。しかし、有機バッファ層/TCOカソードの作製は、次のものを含むいくつかの問題を引き起こす可能性がある。有機バッファ層が必要なため、作製プロセスがより複雑になる可能性がある。さらに、電気的性質、光学的性質、および仕事関数の整合などの要因のため、有機バッファ層を形成するための材料の選択肢が限定される。さらに、有機バッファ層/TCOカソードは典型的に、接触抵抗の増加を引き起こし、それにより、有機/カソード界面でのキャリア収集/注入特性の欠陥を生じさせることも分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、上記に鑑みて、上記の問題のうち少なくとも1つへの対処を図る、光透過性デバイス用導電性構造、および光透過性デバイス用導電性構造を形成する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、光透過性デバイス用導電性構造であって、第1のプロセス条件を用いて形成される第1の透明導電性材料層と、直接第1の層上に形成される少なくとも1つの他の透明導電性材料層であって、第1のプロセス条件とは異なる第2のプロセス条件を用いて形成される少なくとも1つの他の透明導電性材料層とを備え、前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の形成中に、第1の層が、光透過性デバイスに対する悪影響を低減させるためのバッファ層として機能する構造が提供される。
【0013】
第1のプロセス条件は、第1の堆積電力および第1の堆積温度を有してよく、第2のプロセス条件は、第2の堆積電力および第2の堆積温度を有してよく、第1の堆積電力、第1の堆積温度、および第2の堆積温度をそれぞれ、温度および堆積電力により引き起こされる、光透過性デバイスに対する悪影響が低減するように選択することができ、第2の堆積電力を、前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の所望の膜品質をもたらすように選択することができる。
【0014】
この構造は、1つまたは複数の金属層をさらに備えることができ、第1の層が金属層の上に形成される。
【0015】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層と、それが上に形成された第1の層が共に、デバイスの光出力を向上させるための屈折率整合構造として機能することができる。
【0016】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層と、それが上に形成された第1の層が共に、デバイスの電流拡がりを向上させるように機能することができる。
【0017】
第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層は、物理堆積技法、化学堆積技法、または両方を用いて形成することができる。
【0018】
第1の層は、直流(DC)マグネトロンスパッタリングを用いて形成することができる。
【0019】
第1の堆積電力は、約10Wの電力とすることができる。
【0020】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層は、高周波(RF)マグネトロンスパッタリングを用いて形成することができる。
【0021】
第2の堆積電力は、約100Wの電力とすることができる。
【0022】
第1の層の堆積中の基板温度は、約60℃以下とすることができる。
【0023】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の堆積中の基板温度は、約60℃以下とすることができる。
【0024】
第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層はそれぞれ、SnO2、Ga−In−Sn−O(GITO)、Zn−In−Sn−O(ZITO)、Ga−In−O(GIO)、Zn−In−O(ZIO)、In−Sn−O(ITO)、および他の透明導電性材料からなる群から選択される、1種または複数種の材料を含むことができる。
【0025】
第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層は、同じ透明導電性材料を含むことができる。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、光透過性デバイス用導電性構造を形成する方法であって、第1の透明導電性材料層を、第1のプロセス条件を用いて形成すること、直接第1の層上に、少なくとも1つの他の透明導電性材料層を、第1のプロセス条件とは異なる第2のプロセス条件を用いて形成することを含み、前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の形成中に、第1の層が、光透過性デバイスに対する悪影響を低減させるためのバッファ層として機能する方法が提供される。
【0027】
第1のプロセス条件は、第1の堆積電力および第1の堆積温度を有してよく、第2のプロセス条件は、第2の堆積電力および第2の堆積温度を有してよく、この方法はさらに、第1の堆積電力、第1の堆積温度、および第2の堆積温度をそれぞれ、温度および堆積電力により引き起こされる、光透過性デバイスに対する悪影響が低減するように選択すること、ならびに第2の堆積電力を、前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の所望の膜品質をもたらすように選択することを含むことができる。
【0028】
この方法は、1つまたは複数の金属層を設けること、および第1の層を金属層の上に形成することをさらに含むことができる。
【0029】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層と、それが上に形成された第1の層が共に、デバイスの光出力を向上させるための屈折率整合構造として機能することができる。
【0030】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層と、それが上に形成された第1の層が共に、デバイスの電流拡がりを向上させるように機能することができる。
【0031】
第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層は、物理堆積技法、化学堆積技法、または両方を用いて形成することができる。
【0032】
第1の層は、直流(DC)マグネトロンスパッタリングを用いて形成することができる。
【0033】
第1の堆積電力は、約10Wの電力とすることができる。
【0034】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層は、高周波(RF)マグネトロンスパッタリングを用いて形成することができる。
【0035】
第2の堆積電力は、約100Wの電力とすることができる。
【0036】
第1の層の堆積中の基板温度は、約60℃以下とすることができる。
【0037】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の堆積中の基板温度は、約60℃以下とすることができる。
【0038】
第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層はそれぞれ、SnO2、Ga−In−Sn−O(GITO)、Zn−In−Sn−O(ZITO)、Ga−In−O(GIO)、Zn−In−O(ZIO)、In−Sn−O(ITO)、および他の透明導電性材料からなる群から選択される、1種または複数種の材料を含むことができる。
【0039】
第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層は、同じ透明導電性材料を含むことができる。
【0040】
本発明の諸実施形態は、一例としてのみの以下の記載と、それに併せて図面から、当業者により良く理解され、容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】一実施形態例における光透過性デバイスを示す概略図である。
【図2】該実施形態例のITOベースの電極を組み込んだ有機光起電力デバイスを示す概略図である。
【図3】図2のデバイスの積分光透過率(%)対ITOカソード厚さ(nm)、および図2のデバイスの光吸収層の積分光吸収率(%)対ITOカソード厚さ(nm)のグラフである。
【図4】DCおよびRFマグネトロンスパッタリングを用いて堆積された膜についての、ITO成長速度(nm/分)対スパッタ電力(W)、およびシート抵抗(オーム/スクエア)対スパッタ電力(W)のグラフである。
【図5】さまざまな層組合せを有する傾斜ITO膜についての、シート抵抗(オーム/スクエア)対バッファITOx/キャッピングITO60−x厚さのグラフである。
【図6】バッファITOx/キャッピングITO60−x厚さのさまざまな層組合せを有する傾斜ITO電極についての、シート抵抗(オーム/スクエア)対時間(日)のグラフである。
【図7】バッファITOx/キャッピングITO60−x厚さのさまざまな層組合せを有する傾斜ITO電極について測定した、透過率(%)対波長(nm)のグラフである。
【図8】別の実施形態例における上面発光型有機発光ダイオード(OLED)を示す概略図である。
【図9】1組の上面発光型OLEDについて測定した、電流密度J(mA/cm2)対電圧V(V)のグラフである。
【図10】該1組の上面発光型OLEDについて測定した、輝度L(cd/m2)対電圧V(V)のグラフである。
【図11】電流密度J(mA/cm2)対電圧V(V)のグラフである。
【図12】輝度L(cd/m2)対電圧V(V)のグラフである。
【図13】発光効率(cd/A)対電流密度(mA/cm2)のグラフである。
【図14】正規化輝度対動作時間(時間)のグラフである。
【図15】別の実施形態例の有機光起電力(OPV)デバイスの概略図である。
【図16】入射光子/電流効率(IPCE)対波長(nm)のグラフである。
【図17】図15のデバイスおよび対照デバイスについて、約100mW/cm2の擬似エアマス(AM1.5)照度下で測定した、光電流密度J(mA/cm2)対電圧V(V)のグラフである。
【図18】別の実施形態例におけるタンデム太陽セルを示す概略図である。
【図19】タンデム太陽セルについてのIPCE(%)対波長(nm)のグラフである。
【図20】タンデム太陽セルについての光電流密度J(mA/cm2)対電圧V(V)のグラフである。
【図21】一実施形態例における光透過性デバイス用電極構造を形成する方法を示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書で説明する諸実施形態例は、1種または複数種の透明導電性材料を含む透明導電性傾斜構造を形成することができる。用途には、電極または電荷再結合中間層がある。
【0043】
図1は、一実施形態例における光透過性デバイス102を示す概略図である。デバイス102は、基板104と、基板104の上に形成された、機能層108、110からなる積層体106と、積層体106の上に形成された正孔/電子−インジェクタ/コレクタ112などの金属層と、正孔/電子−インジェクタ/コレクタ112の上に形成された、2層または多層TCOベースの透明電極114などの透明傾斜構造とを備える。電極114の上に封止層115が形成される。
【0044】
説明の中では、例示を目的として、電極114は2つのTCO層を備えている。電極114は、例えば単接合およびタンデム構造有機光起電力セル、上面発光型および反転型OLED、ならびに透明な電極接点、カバー層(複数可)、または中間層(複数可)を利用する他の有機/無機機能構成要素で使用するのに適した光透過性構造である。電極114は、導電性TCOバッファ層116および導電性TCOキャッピング層118を備える。この実施形態例では、使用されるTCO材料はITOである。基板104は、剛性でも可撓性でもよく、かつ/または不透明でも透明でもよい。機能層108、110はそれぞれ、有機または無機材料を含むことができる。正孔/電子−インジェクタ/コレクタ112は、有機もしくは無機材料、または両方の組合せを含むことができる。封止層115は、Al2O3、SiO2など、適切な材料を含む。
【0045】
傾斜ITO構造などの透明傾斜導電性材料層は、空気中で安定しており、それ自体が一時的な封止層の働きをすることができることが理解されよう。その導電性のため、別の封止層(115を参照されたい)が、好ましくは、透明傾斜導電性材料層(114を参照されたい)の上に形成される。説明上、封止層の形成は以下の実施形態例から省略する。
【0046】
TCOは、高い仕事関数を有することが認識されている。したがって、一方では、電極114をアノードとして使用すべき場合、電極114の透明傾斜構造自体がアノードとして機能することが可能である。他方では、透明カソードを上面発光型OLED、半透明PVセル、タンデム太陽セルなどのデバイス応用に使用すべき場合、低仕事関数中間層が望ましい。低仕事関数中間層は、低仕事関数金属、有機および無機化合物などを含むことができる。そのような場合、透明傾斜構造は、例えば、カソードシステムの電気的性質および光学的性質を向上させるための、低仕事関数中間層を覆う高品質TCO膜として使用される。
【0047】
この実施形態例では、透明傾斜構造が、「傾斜」の異なる材料から構成される。例えば、異なる「傾斜」は、異なる堆積条件を用いて形成することができる。
【0048】
この実施形態例では、バッファ層116が、低電力、例えば約10Wでの直流(DC)マグネトロンスパッタリングを用いて形成される。低電力は、スパッタリング放射により引き起こされる、下にある層、例えば106に対する起こり得る損傷を防ぐことができる。形成されるバッファ層116は高光透過性を有するが、バッファ層116は多孔性であることに留意されたい。多孔性は、導電性の安定性を制限する。
【0049】
キャッピング層118は、直接バッファ層116の上に、高電力、例えば約100Wでの高周波(RF)マグネトロンスパッタリングを用いて形成される。形成されるキャッピング層118は、比較的高い密度を有し、比較的高い光透過性および空気中での安定した膜導電性をもつ。傾斜構造を有する電極114は、比較的高い導電性を有する光透過性2層ITO電極として形成される。2層構造は、透明導電性材料傾斜構造の一例であることに再度留意されたい。換言すれば、傾斜構造は、1種の透明導電性材料または異なる透明導電性材料の組合せを用いて形成された3層以上を備えることができる。
【0050】
この実施形態例では、ITOの堆積に、In2O3とSnO2が9:1の重量比にある酸化ターゲットが使用される。堆積プロセスは、酸素、アルゴン、および水素からなるガス混合物中に0.1%未満の酸素分圧を与えることを含む。バッファ層116の場合のITO堆積速度は、約2.0nm/分であり、キャッピング層118の場合のITO堆積速度は、約4.2nm/分である。膜堆積中に誘発される基板温度は、約60℃である。傾斜ITO電極は、他の物理および化学堆積方法を用いて形成することもできることに留意されたい。
【0051】
ITOは、イオン結合半導体酸化物であることが認識されている。共有結合材料に比べて、酸素空孔が比較的容易に形成される。DC/RFマグネトロンスパッタにより作製されるITO膜は、大部分が非化学量論的である。酸素空孔の数は、スパッタ電力、基板温度、スパッタガス圧力、ターゲット中のSn/In組成、および混合物中のガスなどの堆積条件により影響を受ける。スズドーパントおよびイオン化した酸素空孔ドナーによりもたらされる自由電子が、伝導電荷キャリアを構成する。
【0052】
さらに、スパッタリングガス混合物中の水素の存在が、膜内の酸素損失を補償する。スパッタリングガス混合物中に水素が添加されると、マグネトロンスパッタリング中の成長流(grow flux)が、大量の高エネルギー水素種を含み、それが、堆積中の膜内の弱く結合した酸素を取り除くことを可能にする。したがって、スパッタリングガス混合物中に水素を添加することにより、酸化物に対する還元効果が現れて、膜内の酸素空孔の数が増加し、したがって電荷キャリアの数が増加する。導電性は電荷キャリアの濃度と移動度の積に比例するため、したがって、この実施形態例では、ITO膜内のキャリア濃度の増加が、膜の導電性を向上させる助けとなっている。
【0053】
上面発光型OLEDおよび有機PVセルの場合、上部半透明カソード構造が極めて重要である。この実施形態例を用いて、極薄金属/TCOを備える複合半透明カソードを形成することができる。適切なTCOカバー層、例えばITOカバー層を有する複合半透明カソードを形成することが可能である。良好な品質の傾斜TCO層(例えば層114を参照されたい)は、上面発光型または反転型OLEDにおいて光出力を向上させる(例えば透過率T(λ)を向上させる)屈折率整合層として働き、また可視光波長全体にわたる比較的より良好な光透過性(例えば高いT(λ)を有する)、および高導電性のため、電流拡がりを向上させる。この実施形態例における傾斜TCOベースの透明電極114は、低温で堆積され、高導電性であり、膜導電性の良好な安定性を有し、高堆積速度を有し、下にある有機/無機層、例えば112との良好な接触を形成することができる。ガス混合物中に水素がある状態で室温にて堆積されたITOにおいて、可能な最も低い抵抗率が達成されることが分かっている。
【0054】
この実施形態例では、高性能傾斜ITO構造、この場合には2層ITOカソードを、「低電力」ITO堆積プロセスと「低温」ITO堆積プロセスの組合せを用いて形成することができる。バッファ層116が、高密度、高導電性、および高安定性を有するITOベースのカソード114を、下にある材料にほとんど損傷を与えずに作製することを可能にしている。10WのDCスパッタしたバッファITO層116と、100WのRFスパッタしたキャッピングITO層118の組合せ(すなわち2層ITO電極114)はまた、比較的大きな堆積速度を有し、それに限定されないが、有機エレクトロニクスへの応用に適している。したがって、この実施形態例は、TCOベースの半透明カソードを、有機および/または無機機能層の表面上に比較的低い温度で作製するための効果的な解決策となり得る。
【0055】
図2は、この実施形態例のITOベースの電極204を組み込んだ有機光起電力デバイス202を示す概略図である。デバイス202は、次の構造、ガラス/ITO/ポリ(スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT:PSS)/ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT):1−(3−メトキシカルボニル)−プロピル−1−フェニル−(6,6)C60(PCBM)(75nm)/Ca(10nm)/Ag(10nm)/ITO(60nm)を有する。換言すれば、ITOベースの電極204は、約60nm厚の厚さを有する。表1は、各スパッタリングプロセスの成長速度を表にまとめたものを示す。
【0056】
【表1】
【0057】
図3は、デバイス202の積分光透過率(%)対ITOカソード厚さ(nm)、およびデバイス202のP3HT:PCBM層206の積分光吸収率(%)対ITOカソード厚さ(nm)のグラフを示す。最大透過率が数字302で示されており、最大積分光吸収率が数字304で示されている。したがって、カソード厚さの関心領域が、数字306で示されている。
【0058】
図4は、DCおよびRFマグネトロンスパッタリングを用いて堆積された膜についての、ITO成長速度(nm/分)対スパッタリング電力(W)、およびシート抵抗(オーム/スクエア)対スパッタリング電力(W)のグラフを示す。DC/RFスパッタリングしたITO膜の成長速度が、スパッタリング電力と共に増加し、膜抵抗率が電力と共に減少することを観測することができる。
【0059】
この実施形態例では、ITOベースの電極204の透過率T(λ)が、約85%を上回り得ることが分かっている。図3は、波長依存の膜透過率を示す。(約120nm厚さでの)シート抵抗Rsは、約25Ω/スクエアとなり得る。さらに、ITOベースの電極204(図2)は、平滑な表面(すなわち、約1.0nm未満のrms測定値)を有する。ITOベースの電極204(図2)はまた、それほど応力がなく、その非晶質性のため大きなエッチング速度を有する。
【0060】
ガラス基板内の導波モードによる約80%の光損失がある底面発光型OLEDとは異なり、上面発光型OLED内の導波モードは抑制されており、その結果光出力が増加し、したがって、上面発光型OLEDアーキテクチャが、OLEDベースのディスプレイおよび照明への応用に適していることが理解されよう。高品質上部透明電極は、上面発光型OLEDにとって有利である。光学的な観点から、OLEDまたは上面発光型OLEDは、薄膜システムと見なすことができる。この実施形態例を用いて、ITO層厚さ、および複合上部カソード構造(例えば、図1の傾斜電極114および金属層112を参照されたい)を、利用できる発光材料(emissive material)およびデバイスアーキテクチャに応じて最適化することができる。
【0061】
別の実施形態例では、ITO膜の安定性が調査される。60nm厚さの傾斜ITO構造、この例では2層ITOベースの上部カソードが、上面発光型OLEDおよび半透明ポリマーPVセル上に室温にて堆積される。2層ITOベースのカソードは、下にある有機層にほとんど損傷を与えることなく、比較的大きな膜堆積速度、比較的高い導電性、および比較的高い光透過性という特性を有する。
【0062】
図5は、さまざまな層組合せを有する傾斜ITO膜についての、シート抵抗(オーム/スクエア)対バッファITOx/キャッピングITO60−x厚さのグラフである。値xは、0から60nmまで変化する。傾斜電極構成において、バッファITOとは、約10WでのDCマグネトロンスパッタリングを用いて堆積された中間層ITOバッファ層を意味し、キャッピングITOとは、約100WでのRFマグネトロンスパッタリングを用いて作製されたITOキャッピング層を意味する。
【0063】
バッファITOX/キャッピングITO60−X膜を備える60nm厚さの傾斜電極のシート抵抗が、バッファITO0/キャッピングITO60の場合の約67オーム/スクエアから、バッファITO60/キャッピングITO0の場合の約126オーム/スクエアまで変わったことが分かる。バッファITO0/キャッピングITO60の組合せは、膜導電性の点から好都合のように思われるが、バッファITO0/キャッピングITO60を上面発光型OLEDおよび有機PVセルの上部カソードとして直接使用すると、典型的にデバイス性能の悪化を招く。これは、キャッピング層のITO堆積中に高スパッタリング電力(例えば約100W)を使用したことによる、下にある有機材料の起こり得る損傷に関連付けられる。バッファITO層厚の厚さを(例えば、バッファITO60/キャッピングITO0の場合の60nmに)増加させることも、好都合ではないことにも留意されたい。これは、約10Wおよび低温、この場合には室温でのDCマグネトロンスパッタによって作製される(バッファ層の)ITO膜が、安定した膜導電性を有していないためである。これについては、図6を参照して論じる。
【0064】
図6は、バッファITOx/キャッピングITO60−x厚さのさまざまな層組合せを有する傾斜ITO電極についての、シート抵抗(オーム/スクエア)対時間(日)のグラフである。バッファITO0/キャッピングITO60、バッファITO15/キャッピングITO45、バッファITO30/キャッピングITO30、バッファITO45/キャッピングITO15、バッファITO60/キャッピングITO0というさまざまな層組合せを有する60nm厚さの2層ITO膜の、空気中で18日間にわたって測定したシート抵抗が示されている。結果は、バッファITO60/キャッピングITO0膜(数字602を参照されたい)の導電性が、空気中で安定していないことを明らかに示している。したがって、低電力でのDCマグネトロンスパッタリングによって堆積される単一層ITOは、関連する堆積プロセスが下にある有機材料に可能な最小の損傷を与えるものの、有機エレクトロニクスへのカソードとしての応用に適していないと結論付けられる。図6から分かるように、バッファITO15/キャッピングITO45、バッファITO30/キャッピングITO30、およびバッファITO45/キャッピングITO15の2層ITO電極は、大きな膜成長速度および空気中での高い膜安定性というその特性のため、有機エレクトロニクスへの応用に使用することができる。
【0065】
図7は、バッファITOx/キャッピングITO60−x厚さのさまざまな層組合せを有する傾斜ITO電極について測定した、透過率(%)対波長(nm)のグラフである。ガラス基板上に堆積された、バッファITO0/キャッピングITO60、バッファITO15/キャッピングITO45、バッファITO30/キャッピングITO30、バッファITO45/キャッピングITO15、およびバッファITO60/キャッピングITO0という60nm厚さの2層ITO膜の、波長依存透過率T(λ)が示されている。短波長領域内(すなわち、このサンプルの場合には約400nm未満)の僅かなずれは別として、2層ITO膜について測定されたT(λ)は、可視光波長範囲全体にわたってほぼ同一の光透過率を有する。換言すれば、図7にプロットした結果は、この実施形態例の2層ITOベースの透明電極が、類似の光学的性質を有していることを示す。したがって、そのことが、ITOベースのカソードを有機エレクトロニクスへの応用に合わせて最適化する際の自由度をもたらし得る。
【0066】
この実施形態例の2層ITOカソードは、上面発光型OLEDおよび半透明有機光起電力セルに応用することができる。高性能2層ITO電極は、電極の横方向の導電性を向上させることができる。2層ITO電極は、上面発光型OLEDにおける光出力、およびPVシステム内のサブユニット有機PVセル、例えば半透明有機PVセルの総透過性を向上させるための、屈折率整合層として機能することもできる。
【0067】
図8は、別の実施形態例における上面発光型OLED802を示す概略図である。OLED802は、トリス−(8−ヒドリキシキノリン)アルミニウム(Alq3)ベースの上面発光型OLEDである。OLED802は、ガラス/ITO/N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)/クマリン545:Alq3/Alq3/LiF/Al/バッファITO45/キャッピングITO15からなる構造を有し、ただしNPBは正孔輸送層であり、クマリン545:Alq3/Alq3はそれぞれ、発光層および電子輸送層として働き、LiF/Al/バッファITO45/キャッピングITO15は、上部カソードである。
【0068】
この実施形態例では、LiF(0.3nm)/Al(1〜5nm)/バッファITO45/キャッピングITO15からなる薄膜積層体が、上面発光型OLED802内の上部カソード804として使用される。806の極薄LiF/Al層は、808の有機/カソード界面で電子注入コンタクトとして働く。2層ITOカソード804は、In2O3とSnO2が9:1の重量比にある6″の酸化ITOターゲットを用いたDC/RFスパッタを使用して堆積される。スパッタリングチャンバ内のベース圧力は、約2×10−4Pa未満に維持される。スパッタリングガスの全圧は、約3×10−1Paで一定に維持された。堆積プロセスは室温で実施され、すなわち、基板は膜堆積中または膜堆積後に加熱されない。バッファITO45/キャッピングITO15 ITO電極の組合せは、約90Ω/スクエア(図5を比較されたい)のシート抵抗を有する。
【0069】
バッファITO0/キャッピングITO60の厚さを有するITOカソードが、有機エレクトロニクスに適していないことを確認するために、LiF(0.3nm)/Al(1.0nm)/バッファITO0/キャッピングITO60層構造を備えるサンプルを調査した。得られた結果(図示せず)は、上部カソードとしてのLiF(0.3nm)/Al(1.0nm)/バッファITO0/キャッピングITO60構造を有するOLEDが、短絡することを示していた。これは、バッファITO0/キャッピングITO60電極を約100WでのRFマグネトロンスパッタリングによって作製することにより、下にある有機材料に対して損傷が生じるためである。したがって、結果は、ほとんど損傷のないバッファITO層が好ましいことを示している。
【0070】
次に、バッファITO45/キャッピングITO15からなるカソード構造を有するOLEDとバッファITO60/キャッピングITO0からなるカソード構造を有するOLEDを比較する。
【0071】
図9は、1組の上面発光型OLEDについて測定した、電流密度J(mA/cm2)対電圧V(V)のグラフである。この実施形態例では、これらのOLEDは、LiF(0.3nm)/Al(1.0nm)/バッファITO45/キャッピングITO15カソード、およびLiF(0.3nm)/Al(1.0nm)/バッファITO60/キャッピングITO0カソードを備える。
【0072】
図10は、この実施形態例においてLiF(0.3nm)/Al(1.0nm)/バッファITO45/キャッピングITO15カソード、およびLiF(0.3nm)/Al(1.0nm)/バッファITO60/キャッピングITO0カソードを伴って形成された該1組の上面発光型OLEDについて測定した、輝度L(cd/m2)対電圧V(V)のグラフである。
【0073】
図9および10によると、2タイプの上部カソード構造を有する上面発光型OLEDは、類似のJ−VおよびL−V特性を有する。しかし、図5および6を参照すると、バッファITO45/キャッピングITO15構造を備える傾斜電極の方が、バッファITO60/キャッピングITO0構造を備える傾斜電極よりも、デバイス応用向けの上部透明電極として一層優れた選択肢である。というのも、バッファITO45/キャッピングITO15構造の導電性は、ITO60/キャッピングITO0 ITO構造のそうした特性に比べて高く、また安定しているためである。
【0074】
バッファ層なしのITO電極に対するこれらの実施形態例の2層電極の性能を調査する上で、一般に、金属(例えばアルミニウム)中間層の厚さを増加させると、後続のスパッタリングにより引き起こされる、有機層に対する損傷を抑制できることに留意されたい。しかし、厚い金属中間層は典型的に、内面反射の増加のため、上部電極側からの光出力の減少を引き起こすことが理解されよう。
【0075】
別の実施形態例では、LiF(0.3nm)/Al/バッファITO0/キャッピングITO60構造が、アルミニウム層の厚さが5.0nmを上回る場合に、上面発光型OLED内の上部カソードとして機能できることが分かる。この実施形態例では、LiF(0.3nm)/Al(5.0nm)/バッファITO0/キャッピングITO60カソード構造を備える上面発光型OLEDと、LiF(0.3nm)/Al(5.0nm)/バッファITO45/キャッピングITO15カソード構造を備える上面発光型OLEDを比較する。
【0076】
図11は、電流密度J(mA/cm2)対電圧V(V)のグラフである。図12は、輝度L(cd/m2)対電圧V(V)のグラフである。図11および12から、LiF(0.3nm)/Al(5.0nm)/バッファITO0/キャッピングITO60構造を伴って形成された上面発光型OLEDと、LiF(0.3nm)/Al(5.0nm)/バッファITO45/キャッピングITO15構造を伴って形成された上面発光型OLEDは、類似または同等のJ−VおよびL−J特性を有することが観測される。
【0077】
図13は、発光効率(cd/A)対電流密度(mA/cm2)のグラフである。図14は、正規化輝度対動作時間(時間)のグラフである。
【0078】
LiF(0.3nm)/Al(5.0nm)/バッファITO0/キャッピングITO60構造を備えるOLEDは、LiF(0.3nm)/Al(5.0nm)/バッファITO45/キャッピングITO15構造を伴って作製された、構造的に同一の上面発光型OLED(数字1304および1404を参照されたい)に比べて、低い発光効率(数字1302を参照されたい)を有し、また経時的輝度がそれほど安定していない(数字1402を参照されたい)ことが観測される。この性能の差は、バッファITO0/キャッピングITO60を約100WでのRFマグネトロンスパッタリングによって作製することにより引き起こされる、下にある有機材料に対する部分的な損傷に帰することができる。
【0079】
したがって、これらの実施形態例では、例えばバッファITO45/キャッピングITO15構造を備える傾斜ITOカソードが、上面発光型OLEDへの応用に適していることが実証されている。
【0080】
OLEDに関する上記の実施形態例を説明した後は、光起電力(PV)セルについて以下の説明の中で論じる。
【0081】
薄膜有機PVセルは、低コスト発電を行うことができる。PVデバイス内で活性構成要素として機能する有機半導体には、広い表面積、コスト効果、化学的堅固性、および機械的可撓性の点からを含めて利点がある。太陽スペクトルの限られた吸収性、および比較的低い開放電圧が、現在の有機PVセルの効率を制限し得る2つの要因であることに留意されたい。したがって、光起電力応用に適した低バンドギャップ有機半導体材料を探ることに加えて、有機PVセルの性能を向上させる1つの方法が、タンデム構造を使用することであることが認識されている。タンデムPVセルは、半透明カソードを用いてサブセルを積層することにより形成することができる。有機PVセル内に高性能半透明カソードがあることも望ましい。
【0082】
図15は、別の実施形態例の有機光起電力(PV)デバイス1502の概略図である。デバイス1502は、セミポリマーPVセルであり、次の構造、ガラス/ITO/ポリ(スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT:PSS)(40nm)/ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT):1−(3−メトキシカルボニル)−プロピル−1−フェニル−(6,6)C60(PCBM)(75nm)/Ca(10nm)/Ag(10nm)/バッファITO45/キャッピングITO15を有する。したがって、デバイス1502は、バッファITO45/キャッピングITO15構造1504を上部透明電極の一部として備える。
【0083】
2層ITO構造1504がデバイス1502の性能に及ぼす影響を調査するために、ガラス/ITO/PEDOT−PSS(40nm)/P3HT:PCBM(75nm)/Ca(10nm)/Ag(100nm)というデバイス構成を有する対照デバイス(図示せず)が作製される。この対照デバイスは、バッファITO45/キャッピングITO15構造1504の代わりに、厚さ約100nmのAgを含む電極を有することに留意されたい。
【0084】
図16は、入射光子/電流効率(IPCE)対波長(nm)のグラフである。プロット1602はデバイス1502の性能を示し、プロット1604は対照デバイスの性能を示す。
【0085】
図17は、デバイス1502および対照デバイスについて、約100mW/cm2の擬似エアマス(AM1.5)照度下で測定した、光電流密度J(mA/cm2)対電圧V(V)のグラフである。プロット1702は、デバイス1502の「暗」条件でのJ−V特性を示し、プロット1704は、デバイス1502のAM1.5条件でのJ−V特性を示す。プロット1706は、対照デバイスの「暗」条件でのJ−V特性を示し、プロット1708は、対照デバイスのAM1.5条件でのJ−V特性を示す。
【0086】
以下の表2は、対照デバイスおよびPVデバイス1502の性能を表にまとめたものである。
【0087】
【表2】
FFは曲線因子であり、PCEは電力変換効率である。
【0088】
表から分かるように、PVデバイス1502は、約48%の外部量子効率および約1.23%の変換効率を示している。表2に示すように、半透明PVセルまたはデバイス1502は、同等のFFを生じるが、対照デバイスについて測定された約8.22mA/cm2の短絡電流密度(Jsc)に比べて相対的に低い約5.8mA/cm2の短絡電流密度(Jsc)を生じる。入射光の40%超(図3を比較されたい)が上部傾斜TCO電極または構造1504の中を透過するため、半透明ポリマーPVセルまたはデバイス1502において光電流密度がわずかに減少すると予想される。
【0089】
PVセルに関する上記の実施形態例を説明した後は、タンデム有機太陽セルについて以下の説明の中で論じる。
【0090】
タンデム有機太陽セルでは、1つ1つの太陽セルを非常に薄くすることができる(約20〜40nm)。これには、電荷輸送に対する、次のことを含む利点がある。タンデムPVセルの開放電圧を増加させることができる。太陽スペクトルの異なる部分に応答する2つ以上の異なる太陽セルを積層することにより、タンデム有機PVセルが太陽スペクトルを十分に利用できる。
【0091】
別の実施形態例では、バッファITO/キャッピングITOタイプの傾斜構造などの高性能傾斜透明導電性材料構造が、薄膜タンデム太陽セル内の電荷再結合中間層として使用される。
【0092】
これらの実施形態例の透明導電性材料傾斜構造の用途には、タンデム太陽セル、または光透過性かつ導電性の層を利用する他の任意の有機/無機機能デバイス内の、アノード、カソード、および/または電荷再結合ゾーンがある。
【0093】
図18は、この実施形態例におけるタンデム太陽セルを示す概略図である。タンデム太陽セル1802は、次の構造、ITO/PEDOT:PSS/P3HT:PCBM(75nm)/Ca(5nm)/Ag(5nm)/バッファITO45/キャッピングITO15/PEDOT:PSS/P3HT:PCBM(200nm)/Ca(20nm)/Ag(200nm)を有する。したがって、タンデム太陽セル1802は、バッファITO/キャッピングITOからなる電荷再結合用の傾斜ITO中間層1804を備える。
【0094】
図19は、タンデム太陽セル1802についてのIPCE(%)対波長(nm)のグラフである。図20は、タンデム太陽セル1802についての光電流密度J(mA/cm2)対電圧V(V)のグラフである。
【0095】
以下の表3は、タンデム太陽セル1802の性能を表にまとめたものである。
【0096】
【表3】
したがって、タンデムポリマーPVセル1802の主要な結果は、単接合半透明PVセル(例えば図15のデバイス1502を参照されたい)について測定された約0.5Vの開放電圧に比べて、向上した約0.8Vの開放(Voc)電圧を示している。
【0097】
図21は、一実施形態例における光透過性デバイス用導電性構造を形成する方法を示す概略フローチャート2100である。ステップ2102において、第1の透明導電性材料層が、第1のプロセス条件を用いて形成される。ステップ2104において、直接第1の層上に、少なくとも1つの他の透明導電性材料層が、第1のプロセス条件とは異なる第2のプロセス条件を用いて形成される。ステップ2106において、前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の形成中に、第1の層が、光透過性デバイスに対する悪影響を低減させるためのバッファ層として機能する。
【0098】
上記の実施形態例では、剛性または可撓性の不透明または透明基板ベースと、前記基板の上に形成された無機および/または有機機能層からなる積層体と、無機および/または有機機能層からなる積層体の上に形成された有機または無機の正孔/電子−インジェクタ/コレクタと、有機または無機の正孔/電子−インジェクタ/コレクタの上に形成された2層または多層TCOベースの透明電極と、封止層とを備える、有機および/または無機デバイスを形成することができる。
【0099】
透明基板は、ガラス、またはOLED/ポリマーOLED(PLED)への応用に適した浸透バリア層付きの透明なプラスチック箔とすることができる。不透明(opaque)基板は、ベア基板でも、有機および無機機能材料の表面でもよい、不透明(non−transparent)な無機および有機基板とすることができる。2層または多層TCO材料は、溶液法および真空法によって室内プロセス温度以上にて形成することができる。
【0100】
傾斜TCOベースの透明電極は、用途に応じて、導電性および光結合層を形成することができる。TCOベースの電極は、下にある機能層に対する起こり得る損傷を防ぐためのバッファ層を備えることができる。透明電極材料は、溶液または真空膜作製法により形成される酸素欠乏TCOから選択される。この材料は、インジウムスズ酸化物(ITO)、亜鉛アルミニウム酸化物、インジウム亜鉛酸化物、スズ酸化物、Ga−In−Sn−O(GITO)、Zn−In−Sn−O(ZITO)、Ga−In−O(GIO)、Zn−In−O(ZIO)、ならびに有機および/または無機デバイス内で透明または半透明電極として使用するのに適した他の材料からなる群から選択することができる。これらの材料は個々に、または異なる材料の組合せで使用することができる。
【0101】
TCO層の厚さは調整することができる。電子インジェクタは、低仕事関数金属または金属合金から形成することができる。低仕事関数金属および金属合金は、Ca、Li、Ba、Mgからなる群から選択される。電子インジェクタは、LiF/AlまたはCsF/AlまたはMg/AgまたはCa/Agの薄い2層から形成することができる。
【0102】
上述の実施形態例は、反転型OLED、上面発光型OLED、半透明ポリマー光起電力(PV)セル、タンデム構造PVセル、および透明導電性層(複数可)を利用する、無機/有機ダイオード、トランジスタ、またはデバイスの積層体を備えた機能構成要素用のバッファITO45/キャッピングITO15 2層ITO構造を形成することができる。本発明者らは、光活性層内での集光性、ならびにタンデム構造薄膜光起電力デバイス内でのサブユニット太陽セルの透過性を向上させるために、TCOベースの半透明カソードをさらに最適化できることを認識している。
【0103】
それらの実施形態例の傾斜TCO電極は、発光型および非発光型フラットパネルディスプレイ、有機光電装置、無機光電装置、およびハイブリッド光電装置、センサ、ヒートミラー、静電遮蔽、透明ダイオード、透明トランジスタ、透明回路、ならびに他の光電子応用における透明接点または透明導電性電極として使用することができる。傾斜TCO電極は、メモリデバイス、TCOベースのp−n接合部、電気接点、透明回路、OLED/ポリマーLED(PLED)ディスプレイ、自動車の指示計器/ディスプレイ、屋外用計器ディスプレイ、看板または広告表示板、屋外用PCモニタおよびTVモニタでも使用することができ、またフレキシブルOLED(FOLED)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)などを含む有機エレクトロニクスでも使用することができる。
【0104】
上記の実施形態例は、下にある有機材料に実質的に損傷を与えずに、低い処理温度にて、平滑な表面、高導電性、高光透過性を有する高品質TCOベースの電極を形成することができる。透過性および導電性に加えて、それらの実施形態例は、新規の堆積設備の追加を必要としない、またプレまたはポストアニールを必要としないなどの、他の利点をもたらすことができる。それらの実施形態例はまた、大面積の剛性および可撓性基板向けに使用するのに適切となり得る。
【0105】
それらの実施形態例により、増加したVoc、より良好な電荷輸送特性を得るためのより薄い活性層、および太陽スペクトル内での幅広いスペクトル応答を有する、タンデムOPVセルが得られるようになる。それらの実施形態例により、例えば屈折率整合および電流拡がりによる高い導電性および光透過性を有し、電気的短絡を低減させるための平滑な表面を有し、下にある層に損傷を与えずに大きな堆積速度を有し、空気中で安定しており、スケーラブルで低コストのプロセスにおいて生産することのできる、TOLEDまたは半透明OPVセルが得られるようにもなる。
【0106】
上記の実施形態例では、傾斜ITO膜が、高導電性および可視光波長領域全体にわたる高光透過性というその好ましい特性のため使用される。ITOを堆積させるための技法として、マグネトロンスパッタリングが説明されている。というのも、この技法には、均一なITO膜を再現可能に作製するという利点があるためである。DC/RFマグネトロンスパッタリングの反応性形態と非反応性形態をどちらも、膜作製に使用することができる。マグネトロンスパッタリングはまた、高品質ITO膜の作製が可能であると思われる。さらに、ITO膜を、それらに限定されないが、熱蒸着堆積、電子ビーム蒸着、噴霧熱分解、化学気相成長、浸漬コーティング技法、パルスレーザ堆積(PLD)法、非平衡マグネトロンスパッタリング、ならびにさまざまな物理堆積方法および化学堆積方法を含む、他の技法によって作製することもできることが理解されよう。これらの堆積方法は、上記の実施形態例において説明したマグネトロンスパッタリング技法と同様に、第1の透明導電性材料層を用いて、光透過性デバイスに対する、堆積により引き起こされる悪影響が低減するように、また光透過性デバイスにとって所望の膜品質を、光透過性デバイス用導電性構造の少なくとも1つの他の透明導電性材料層内にもたらすことができるように、制御/選択することのできるプロセス条件を有することが理解されよう。こうしたプロセス条件は、それらに限定されないが、温度および堆積電力を含む。
【0107】
説明した実施形態例には、単一堆積プロセスまたは異なる作製技術の組合せを用いるなどの作製上の柔軟性があってよい。
【0108】
さらに、説明した実施形態例は、ITOの使用に限定されるのではなく、SnO2、Ga−In−Sn−O(GITO)、Zn−In−Sn−O(ZITO)、Ga−In−O(GIO)、Zn−In−O(ZIO)、および有機エレクトロニクスに適した他の透明導電性材料を含めて、他の酸化物材料を含むことができることが理解されよう。それらの実施形態例は、導電性ポリマー/有機物、透明導電性窒化物、および他の透明導電性材料の使用を含むこともできる。これらの材料は個々に、または異なる材料の組合せで使用することができる。
【0109】
広範に記載した本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、特定の実施形態において示した本発明に多数の変更および/または修正を加えることができることが、当業者には理解されよう。したがって、本実施形態は、あらゆる点で例示的なものであり、制限するものではないと見なされる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には、光透過性デバイス用導電性構造、および光透過性デバイス用導電性構造を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上面発光型有機発光ダイオード(OLED)などのデバイスでは、極薄金属膜が透明カソードとして典型的に使用される。しかし、極薄金属カソード、例えばMg:Ag、LiF/Al、LiF/Al/Ag、Ca/Agなどは典型的に、水分および酸素に対して低い耐性を呈し、その結果、デバイス寿命が短くなる。さらに、極薄金属カソードは典型的に、カソード/空気界面での屈折率の不整合のため、電極/空気界面で比較的多くの内面反射を引き起こす。さらに、極薄金属カソードは典型的に、可視光波長領域内で高吸収性を有し、それが低透過率の原因となることがある。
【0003】
したがって、技術が進歩して、金属カソードを覆う透明導電性酸化物(TCO)からなるカバー層を形成し、したがって金属/TCOベースのカソードを生み出すまでになっている。
【0004】
TCOからなる薄膜には、例えば良好な導電性および可視スペクトル領域内での高光透過性というその特性のため、多くの用途がある。TCO薄膜を形成するために、ドープ酸化物材料、例えばZnO、SnO2、およびIn2O3が典型的に、別々の層の形で個別に使用され、またはインジウムスズ酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)などの混合物として使用される。多くのTCO薄膜のうち、ITO、アルミニウムドープZnO(AZO)、およびフッ素ドープSnO2(FTO)が、より一般に使用されるTCO材料である。TCOは典型的に、静電防止被覆、ヒートミラー、太陽セル、フラットパネルディスプレイ、センサ、および有機発光ダイオード(OLED)などのデバイス応用に不可欠な部分として使用される。
【0005】
TCO層は典型的に、上面発光型有機/ポリマー発光ダイオード(OLED/PLED)内のカソードで、またはタンデム構造有機光起電力セル内の電荷再結合ゾーンとして使用される。TCO層は、有機材料および他の材料との界面を形成するために使用することができ、また電気接点として働くこともできる。したがって、有機エレクトロニクスでは、有機層上に高性能TCOベースの透明電極を、下にある機能材料に損傷を与えずに堆積させることが望ましい。例えば透明性および導電性という典型的なTCOの特性に加えて、低プロセス温度を用いて、また、高速作製、高い電極導電性、および低コストなどの拡大されたプロセス柔軟性を用いて作製される電極があることが望ましい。
【0006】
しかし、典型的な金属/TCOベースのカソードは、いくつかの問題に直面する。高導電性の透明なTCO膜をガラス基板上に作製する場合、200℃を上回るプロセス温度が典型的に必要である。100℃未満のプロセス温度で形成されたTCO膜は典型的に、200℃を上回る基板温度で作製されたTCO膜よりも比較的高い抵抗率および低い光透過性を有することが認識されている。典型的には、TCOベースの透明電極は、高いプロセス温度と適合し得ない活性材料/活性層上に堆積される。例えば、DC/RFマグネトロンスパッタリングにより形成されるITO膜は典型的に、膜作製中に高温で基板を加熱する、または200℃を上回る温度での追加のポストアニール処理を追加する必要がある。1つの問題は、高いプロセス温度が、有機エレクトロニクスへの応用に適していないことである。例えば、タンデム有機光起電力(PV)セルおよび上面発光型OLEDは典型的に、高温プラズマプロセスとの適合性がない。
【0007】
さらに、高いプロセス温度による損傷に加えて、TCOの堆積に関連する他の問題がある。例えば、TCOの1種であるITOは典型的に、アノード/カソード材料として使用される。ITOカソード接点が、タンデム光起電力セル内の有機電子受容体上、または上面発光型OLED内の電場発光物質上に堆積される場合、典型的なスパッタリングプロセスにより形成されるITO電極は、次のことに直面する可能性がある。ITO堆積によって引き起こされる、下にあるポリマー/有機機能層への損傷により、デバイス性能が典型的に悪化する。さらに、電子インジェクタおよび導電性金属層を有する半透明カソードの場合、電流拡がりおよび光出力結合効率を向上させるために、屈折率整合層が典型的に必要になる。
【0008】
さらに、有機エレクトロニクス用の透明カソードは典型的に、下にある機能材料にほとんど損傷を与えずに、比較的大きな堆積速度で、低いプロセス温度にて作製されることが望ましい。透明電極は、高光透過性、高導電性、平滑な表面形態、および高安定性という特性を有することが望ましい。さらに、低コスト量産用のスケーラブルなプロセスがあることが望ましい。
【0009】
したがって、上述の問題のうち、典型的な金属/TCOベースのカソードの場合、TCO堆積が、下にある機能層に対する損傷を引き起こすことが認識されている。さらに、典型的な金属/TCOベースのカソードには、低堆積速度という欠点がある。G.Gu等、Appl.Phys.Lett.68(19)、1996、(2606−2608)、RF−sputtered ITO Cathode、Ar/O2では、カソードの成長速度が1.0nm/分未満であることが分かっている。さらに、金属/ITOベースのカソードは、比較的高いシート抵抗Rsを呈することも分かった。したがって、典型的な金属/TCOベースのカソードの場合、乏しいTCO導電性を補償するために、より厚い金属層が使用される。このことが、光透過性のさらなる減少、および起こり得るコスト増加の原因となる可能性がある。
【0010】
典型的な金属/TCOベースのカソードを用いることから生じる問題に対処すべく、有機バッファ層/TCOカソードが提案されている。典型的には、有機バッファ層/TCOカソードでは、金属中間層が使用されない。これについては、米国特許第6569697号、US6420031B1、G.Parthasarathy等、Appl.Phys.Lett.76(15)、2000、(2128−2130)、Haiying Chen等、IEEE Electron Device Letters 24(5)、2003、(315−317)、およびHo Won Choi等、Appl.Phys.Lett.、2005、86(012104)の中で研究された。しかし、有機バッファ層/TCOカソードの作製は、次のものを含むいくつかの問題を引き起こす可能性がある。有機バッファ層が必要なため、作製プロセスがより複雑になる可能性がある。さらに、電気的性質、光学的性質、および仕事関数の整合などの要因のため、有機バッファ層を形成するための材料の選択肢が限定される。さらに、有機バッファ層/TCOカソードは典型的に、接触抵抗の増加を引き起こし、それにより、有機/カソード界面でのキャリア収集/注入特性の欠陥を生じさせることも分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、上記に鑑みて、上記の問題のうち少なくとも1つへの対処を図る、光透過性デバイス用導電性構造、および光透過性デバイス用導電性構造を形成する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、光透過性デバイス用導電性構造であって、第1のプロセス条件を用いて形成される第1の透明導電性材料層と、直接第1の層上に形成される少なくとも1つの他の透明導電性材料層であって、第1のプロセス条件とは異なる第2のプロセス条件を用いて形成される少なくとも1つの他の透明導電性材料層とを備え、前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の形成中に、第1の層が、光透過性デバイスに対する悪影響を低減させるためのバッファ層として機能する構造が提供される。
【0013】
第1のプロセス条件は、第1の堆積電力および第1の堆積温度を有してよく、第2のプロセス条件は、第2の堆積電力および第2の堆積温度を有してよく、第1の堆積電力、第1の堆積温度、および第2の堆積温度をそれぞれ、温度および堆積電力により引き起こされる、光透過性デバイスに対する悪影響が低減するように選択することができ、第2の堆積電力を、前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の所望の膜品質をもたらすように選択することができる。
【0014】
この構造は、1つまたは複数の金属層をさらに備えることができ、第1の層が金属層の上に形成される。
【0015】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層と、それが上に形成された第1の層が共に、デバイスの光出力を向上させるための屈折率整合構造として機能することができる。
【0016】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層と、それが上に形成された第1の層が共に、デバイスの電流拡がりを向上させるように機能することができる。
【0017】
第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層は、物理堆積技法、化学堆積技法、または両方を用いて形成することができる。
【0018】
第1の層は、直流(DC)マグネトロンスパッタリングを用いて形成することができる。
【0019】
第1の堆積電力は、約10Wの電力とすることができる。
【0020】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層は、高周波(RF)マグネトロンスパッタリングを用いて形成することができる。
【0021】
第2の堆積電力は、約100Wの電力とすることができる。
【0022】
第1の層の堆積中の基板温度は、約60℃以下とすることができる。
【0023】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の堆積中の基板温度は、約60℃以下とすることができる。
【0024】
第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層はそれぞれ、SnO2、Ga−In−Sn−O(GITO)、Zn−In−Sn−O(ZITO)、Ga−In−O(GIO)、Zn−In−O(ZIO)、In−Sn−O(ITO)、および他の透明導電性材料からなる群から選択される、1種または複数種の材料を含むことができる。
【0025】
第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層は、同じ透明導電性材料を含むことができる。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、光透過性デバイス用導電性構造を形成する方法であって、第1の透明導電性材料層を、第1のプロセス条件を用いて形成すること、直接第1の層上に、少なくとも1つの他の透明導電性材料層を、第1のプロセス条件とは異なる第2のプロセス条件を用いて形成することを含み、前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の形成中に、第1の層が、光透過性デバイスに対する悪影響を低減させるためのバッファ層として機能する方法が提供される。
【0027】
第1のプロセス条件は、第1の堆積電力および第1の堆積温度を有してよく、第2のプロセス条件は、第2の堆積電力および第2の堆積温度を有してよく、この方法はさらに、第1の堆積電力、第1の堆積温度、および第2の堆積温度をそれぞれ、温度および堆積電力により引き起こされる、光透過性デバイスに対する悪影響が低減するように選択すること、ならびに第2の堆積電力を、前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の所望の膜品質をもたらすように選択することを含むことができる。
【0028】
この方法は、1つまたは複数の金属層を設けること、および第1の層を金属層の上に形成することをさらに含むことができる。
【0029】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層と、それが上に形成された第1の層が共に、デバイスの光出力を向上させるための屈折率整合構造として機能することができる。
【0030】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層と、それが上に形成された第1の層が共に、デバイスの電流拡がりを向上させるように機能することができる。
【0031】
第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層は、物理堆積技法、化学堆積技法、または両方を用いて形成することができる。
【0032】
第1の層は、直流(DC)マグネトロンスパッタリングを用いて形成することができる。
【0033】
第1の堆積電力は、約10Wの電力とすることができる。
【0034】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層は、高周波(RF)マグネトロンスパッタリングを用いて形成することができる。
【0035】
第2の堆積電力は、約100Wの電力とすることができる。
【0036】
第1の層の堆積中の基板温度は、約60℃以下とすることができる。
【0037】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の堆積中の基板温度は、約60℃以下とすることができる。
【0038】
第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層はそれぞれ、SnO2、Ga−In−Sn−O(GITO)、Zn−In−Sn−O(ZITO)、Ga−In−O(GIO)、Zn−In−O(ZIO)、In−Sn−O(ITO)、および他の透明導電性材料からなる群から選択される、1種または複数種の材料を含むことができる。
【0039】
第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層は、同じ透明導電性材料を含むことができる。
【0040】
本発明の諸実施形態は、一例としてのみの以下の記載と、それに併せて図面から、当業者により良く理解され、容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】一実施形態例における光透過性デバイスを示す概略図である。
【図2】該実施形態例のITOベースの電極を組み込んだ有機光起電力デバイスを示す概略図である。
【図3】図2のデバイスの積分光透過率(%)対ITOカソード厚さ(nm)、および図2のデバイスの光吸収層の積分光吸収率(%)対ITOカソード厚さ(nm)のグラフである。
【図4】DCおよびRFマグネトロンスパッタリングを用いて堆積された膜についての、ITO成長速度(nm/分)対スパッタ電力(W)、およびシート抵抗(オーム/スクエア)対スパッタ電力(W)のグラフである。
【図5】さまざまな層組合せを有する傾斜ITO膜についての、シート抵抗(オーム/スクエア)対バッファITOx/キャッピングITO60−x厚さのグラフである。
【図6】バッファITOx/キャッピングITO60−x厚さのさまざまな層組合せを有する傾斜ITO電極についての、シート抵抗(オーム/スクエア)対時間(日)のグラフである。
【図7】バッファITOx/キャッピングITO60−x厚さのさまざまな層組合せを有する傾斜ITO電極について測定した、透過率(%)対波長(nm)のグラフである。
【図8】別の実施形態例における上面発光型有機発光ダイオード(OLED)を示す概略図である。
【図9】1組の上面発光型OLEDについて測定した、電流密度J(mA/cm2)対電圧V(V)のグラフである。
【図10】該1組の上面発光型OLEDについて測定した、輝度L(cd/m2)対電圧V(V)のグラフである。
【図11】電流密度J(mA/cm2)対電圧V(V)のグラフである。
【図12】輝度L(cd/m2)対電圧V(V)のグラフである。
【図13】発光効率(cd/A)対電流密度(mA/cm2)のグラフである。
【図14】正規化輝度対動作時間(時間)のグラフである。
【図15】別の実施形態例の有機光起電力(OPV)デバイスの概略図である。
【図16】入射光子/電流効率(IPCE)対波長(nm)のグラフである。
【図17】図15のデバイスおよび対照デバイスについて、約100mW/cm2の擬似エアマス(AM1.5)照度下で測定した、光電流密度J(mA/cm2)対電圧V(V)のグラフである。
【図18】別の実施形態例におけるタンデム太陽セルを示す概略図である。
【図19】タンデム太陽セルについてのIPCE(%)対波長(nm)のグラフである。
【図20】タンデム太陽セルについての光電流密度J(mA/cm2)対電圧V(V)のグラフである。
【図21】一実施形態例における光透過性デバイス用電極構造を形成する方法を示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書で説明する諸実施形態例は、1種または複数種の透明導電性材料を含む透明導電性傾斜構造を形成することができる。用途には、電極または電荷再結合中間層がある。
【0043】
図1は、一実施形態例における光透過性デバイス102を示す概略図である。デバイス102は、基板104と、基板104の上に形成された、機能層108、110からなる積層体106と、積層体106の上に形成された正孔/電子−インジェクタ/コレクタ112などの金属層と、正孔/電子−インジェクタ/コレクタ112の上に形成された、2層または多層TCOベースの透明電極114などの透明傾斜構造とを備える。電極114の上に封止層115が形成される。
【0044】
説明の中では、例示を目的として、電極114は2つのTCO層を備えている。電極114は、例えば単接合およびタンデム構造有機光起電力セル、上面発光型および反転型OLED、ならびに透明な電極接点、カバー層(複数可)、または中間層(複数可)を利用する他の有機/無機機能構成要素で使用するのに適した光透過性構造である。電極114は、導電性TCOバッファ層116および導電性TCOキャッピング層118を備える。この実施形態例では、使用されるTCO材料はITOである。基板104は、剛性でも可撓性でもよく、かつ/または不透明でも透明でもよい。機能層108、110はそれぞれ、有機または無機材料を含むことができる。正孔/電子−インジェクタ/コレクタ112は、有機もしくは無機材料、または両方の組合せを含むことができる。封止層115は、Al2O3、SiO2など、適切な材料を含む。
【0045】
傾斜ITO構造などの透明傾斜導電性材料層は、空気中で安定しており、それ自体が一時的な封止層の働きをすることができることが理解されよう。その導電性のため、別の封止層(115を参照されたい)が、好ましくは、透明傾斜導電性材料層(114を参照されたい)の上に形成される。説明上、封止層の形成は以下の実施形態例から省略する。
【0046】
TCOは、高い仕事関数を有することが認識されている。したがって、一方では、電極114をアノードとして使用すべき場合、電極114の透明傾斜構造自体がアノードとして機能することが可能である。他方では、透明カソードを上面発光型OLED、半透明PVセル、タンデム太陽セルなどのデバイス応用に使用すべき場合、低仕事関数中間層が望ましい。低仕事関数中間層は、低仕事関数金属、有機および無機化合物などを含むことができる。そのような場合、透明傾斜構造は、例えば、カソードシステムの電気的性質および光学的性質を向上させるための、低仕事関数中間層を覆う高品質TCO膜として使用される。
【0047】
この実施形態例では、透明傾斜構造が、「傾斜」の異なる材料から構成される。例えば、異なる「傾斜」は、異なる堆積条件を用いて形成することができる。
【0048】
この実施形態例では、バッファ層116が、低電力、例えば約10Wでの直流(DC)マグネトロンスパッタリングを用いて形成される。低電力は、スパッタリング放射により引き起こされる、下にある層、例えば106に対する起こり得る損傷を防ぐことができる。形成されるバッファ層116は高光透過性を有するが、バッファ層116は多孔性であることに留意されたい。多孔性は、導電性の安定性を制限する。
【0049】
キャッピング層118は、直接バッファ層116の上に、高電力、例えば約100Wでの高周波(RF)マグネトロンスパッタリングを用いて形成される。形成されるキャッピング層118は、比較的高い密度を有し、比較的高い光透過性および空気中での安定した膜導電性をもつ。傾斜構造を有する電極114は、比較的高い導電性を有する光透過性2層ITO電極として形成される。2層構造は、透明導電性材料傾斜構造の一例であることに再度留意されたい。換言すれば、傾斜構造は、1種の透明導電性材料または異なる透明導電性材料の組合せを用いて形成された3層以上を備えることができる。
【0050】
この実施形態例では、ITOの堆積に、In2O3とSnO2が9:1の重量比にある酸化ターゲットが使用される。堆積プロセスは、酸素、アルゴン、および水素からなるガス混合物中に0.1%未満の酸素分圧を与えることを含む。バッファ層116の場合のITO堆積速度は、約2.0nm/分であり、キャッピング層118の場合のITO堆積速度は、約4.2nm/分である。膜堆積中に誘発される基板温度は、約60℃である。傾斜ITO電極は、他の物理および化学堆積方法を用いて形成することもできることに留意されたい。
【0051】
ITOは、イオン結合半導体酸化物であることが認識されている。共有結合材料に比べて、酸素空孔が比較的容易に形成される。DC/RFマグネトロンスパッタにより作製されるITO膜は、大部分が非化学量論的である。酸素空孔の数は、スパッタ電力、基板温度、スパッタガス圧力、ターゲット中のSn/In組成、および混合物中のガスなどの堆積条件により影響を受ける。スズドーパントおよびイオン化した酸素空孔ドナーによりもたらされる自由電子が、伝導電荷キャリアを構成する。
【0052】
さらに、スパッタリングガス混合物中の水素の存在が、膜内の酸素損失を補償する。スパッタリングガス混合物中に水素が添加されると、マグネトロンスパッタリング中の成長流(grow flux)が、大量の高エネルギー水素種を含み、それが、堆積中の膜内の弱く結合した酸素を取り除くことを可能にする。したがって、スパッタリングガス混合物中に水素を添加することにより、酸化物に対する還元効果が現れて、膜内の酸素空孔の数が増加し、したがって電荷キャリアの数が増加する。導電性は電荷キャリアの濃度と移動度の積に比例するため、したがって、この実施形態例では、ITO膜内のキャリア濃度の増加が、膜の導電性を向上させる助けとなっている。
【0053】
上面発光型OLEDおよび有機PVセルの場合、上部半透明カソード構造が極めて重要である。この実施形態例を用いて、極薄金属/TCOを備える複合半透明カソードを形成することができる。適切なTCOカバー層、例えばITOカバー層を有する複合半透明カソードを形成することが可能である。良好な品質の傾斜TCO層(例えば層114を参照されたい)は、上面発光型または反転型OLEDにおいて光出力を向上させる(例えば透過率T(λ)を向上させる)屈折率整合層として働き、また可視光波長全体にわたる比較的より良好な光透過性(例えば高いT(λ)を有する)、および高導電性のため、電流拡がりを向上させる。この実施形態例における傾斜TCOベースの透明電極114は、低温で堆積され、高導電性であり、膜導電性の良好な安定性を有し、高堆積速度を有し、下にある有機/無機層、例えば112との良好な接触を形成することができる。ガス混合物中に水素がある状態で室温にて堆積されたITOにおいて、可能な最も低い抵抗率が達成されることが分かっている。
【0054】
この実施形態例では、高性能傾斜ITO構造、この場合には2層ITOカソードを、「低電力」ITO堆積プロセスと「低温」ITO堆積プロセスの組合せを用いて形成することができる。バッファ層116が、高密度、高導電性、および高安定性を有するITOベースのカソード114を、下にある材料にほとんど損傷を与えずに作製することを可能にしている。10WのDCスパッタしたバッファITO層116と、100WのRFスパッタしたキャッピングITO層118の組合せ(すなわち2層ITO電極114)はまた、比較的大きな堆積速度を有し、それに限定されないが、有機エレクトロニクスへの応用に適している。したがって、この実施形態例は、TCOベースの半透明カソードを、有機および/または無機機能層の表面上に比較的低い温度で作製するための効果的な解決策となり得る。
【0055】
図2は、この実施形態例のITOベースの電極204を組み込んだ有機光起電力デバイス202を示す概略図である。デバイス202は、次の構造、ガラス/ITO/ポリ(スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT:PSS)/ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT):1−(3−メトキシカルボニル)−プロピル−1−フェニル−(6,6)C60(PCBM)(75nm)/Ca(10nm)/Ag(10nm)/ITO(60nm)を有する。換言すれば、ITOベースの電極204は、約60nm厚の厚さを有する。表1は、各スパッタリングプロセスの成長速度を表にまとめたものを示す。
【0056】
【表1】
【0057】
図3は、デバイス202の積分光透過率(%)対ITOカソード厚さ(nm)、およびデバイス202のP3HT:PCBM層206の積分光吸収率(%)対ITOカソード厚さ(nm)のグラフを示す。最大透過率が数字302で示されており、最大積分光吸収率が数字304で示されている。したがって、カソード厚さの関心領域が、数字306で示されている。
【0058】
図4は、DCおよびRFマグネトロンスパッタリングを用いて堆積された膜についての、ITO成長速度(nm/分)対スパッタリング電力(W)、およびシート抵抗(オーム/スクエア)対スパッタリング電力(W)のグラフを示す。DC/RFスパッタリングしたITO膜の成長速度が、スパッタリング電力と共に増加し、膜抵抗率が電力と共に減少することを観測することができる。
【0059】
この実施形態例では、ITOベースの電極204の透過率T(λ)が、約85%を上回り得ることが分かっている。図3は、波長依存の膜透過率を示す。(約120nm厚さでの)シート抵抗Rsは、約25Ω/スクエアとなり得る。さらに、ITOベースの電極204(図2)は、平滑な表面(すなわち、約1.0nm未満のrms測定値)を有する。ITOベースの電極204(図2)はまた、それほど応力がなく、その非晶質性のため大きなエッチング速度を有する。
【0060】
ガラス基板内の導波モードによる約80%の光損失がある底面発光型OLEDとは異なり、上面発光型OLED内の導波モードは抑制されており、その結果光出力が増加し、したがって、上面発光型OLEDアーキテクチャが、OLEDベースのディスプレイおよび照明への応用に適していることが理解されよう。高品質上部透明電極は、上面発光型OLEDにとって有利である。光学的な観点から、OLEDまたは上面発光型OLEDは、薄膜システムと見なすことができる。この実施形態例を用いて、ITO層厚さ、および複合上部カソード構造(例えば、図1の傾斜電極114および金属層112を参照されたい)を、利用できる発光材料(emissive material)およびデバイスアーキテクチャに応じて最適化することができる。
【0061】
別の実施形態例では、ITO膜の安定性が調査される。60nm厚さの傾斜ITO構造、この例では2層ITOベースの上部カソードが、上面発光型OLEDおよび半透明ポリマーPVセル上に室温にて堆積される。2層ITOベースのカソードは、下にある有機層にほとんど損傷を与えることなく、比較的大きな膜堆積速度、比較的高い導電性、および比較的高い光透過性という特性を有する。
【0062】
図5は、さまざまな層組合せを有する傾斜ITO膜についての、シート抵抗(オーム/スクエア)対バッファITOx/キャッピングITO60−x厚さのグラフである。値xは、0から60nmまで変化する。傾斜電極構成において、バッファITOとは、約10WでのDCマグネトロンスパッタリングを用いて堆積された中間層ITOバッファ層を意味し、キャッピングITOとは、約100WでのRFマグネトロンスパッタリングを用いて作製されたITOキャッピング層を意味する。
【0063】
バッファITOX/キャッピングITO60−X膜を備える60nm厚さの傾斜電極のシート抵抗が、バッファITO0/キャッピングITO60の場合の約67オーム/スクエアから、バッファITO60/キャッピングITO0の場合の約126オーム/スクエアまで変わったことが分かる。バッファITO0/キャッピングITO60の組合せは、膜導電性の点から好都合のように思われるが、バッファITO0/キャッピングITO60を上面発光型OLEDおよび有機PVセルの上部カソードとして直接使用すると、典型的にデバイス性能の悪化を招く。これは、キャッピング層のITO堆積中に高スパッタリング電力(例えば約100W)を使用したことによる、下にある有機材料の起こり得る損傷に関連付けられる。バッファITO層厚の厚さを(例えば、バッファITO60/キャッピングITO0の場合の60nmに)増加させることも、好都合ではないことにも留意されたい。これは、約10Wおよび低温、この場合には室温でのDCマグネトロンスパッタによって作製される(バッファ層の)ITO膜が、安定した膜導電性を有していないためである。これについては、図6を参照して論じる。
【0064】
図6は、バッファITOx/キャッピングITO60−x厚さのさまざまな層組合せを有する傾斜ITO電極についての、シート抵抗(オーム/スクエア)対時間(日)のグラフである。バッファITO0/キャッピングITO60、バッファITO15/キャッピングITO45、バッファITO30/キャッピングITO30、バッファITO45/キャッピングITO15、バッファITO60/キャッピングITO0というさまざまな層組合せを有する60nm厚さの2層ITO膜の、空気中で18日間にわたって測定したシート抵抗が示されている。結果は、バッファITO60/キャッピングITO0膜(数字602を参照されたい)の導電性が、空気中で安定していないことを明らかに示している。したがって、低電力でのDCマグネトロンスパッタリングによって堆積される単一層ITOは、関連する堆積プロセスが下にある有機材料に可能な最小の損傷を与えるものの、有機エレクトロニクスへのカソードとしての応用に適していないと結論付けられる。図6から分かるように、バッファITO15/キャッピングITO45、バッファITO30/キャッピングITO30、およびバッファITO45/キャッピングITO15の2層ITO電極は、大きな膜成長速度および空気中での高い膜安定性というその特性のため、有機エレクトロニクスへの応用に使用することができる。
【0065】
図7は、バッファITOx/キャッピングITO60−x厚さのさまざまな層組合せを有する傾斜ITO電極について測定した、透過率(%)対波長(nm)のグラフである。ガラス基板上に堆積された、バッファITO0/キャッピングITO60、バッファITO15/キャッピングITO45、バッファITO30/キャッピングITO30、バッファITO45/キャッピングITO15、およびバッファITO60/キャッピングITO0という60nm厚さの2層ITO膜の、波長依存透過率T(λ)が示されている。短波長領域内(すなわち、このサンプルの場合には約400nm未満)の僅かなずれは別として、2層ITO膜について測定されたT(λ)は、可視光波長範囲全体にわたってほぼ同一の光透過率を有する。換言すれば、図7にプロットした結果は、この実施形態例の2層ITOベースの透明電極が、類似の光学的性質を有していることを示す。したがって、そのことが、ITOベースのカソードを有機エレクトロニクスへの応用に合わせて最適化する際の自由度をもたらし得る。
【0066】
この実施形態例の2層ITOカソードは、上面発光型OLEDおよび半透明有機光起電力セルに応用することができる。高性能2層ITO電極は、電極の横方向の導電性を向上させることができる。2層ITO電極は、上面発光型OLEDにおける光出力、およびPVシステム内のサブユニット有機PVセル、例えば半透明有機PVセルの総透過性を向上させるための、屈折率整合層として機能することもできる。
【0067】
図8は、別の実施形態例における上面発光型OLED802を示す概略図である。OLED802は、トリス−(8−ヒドリキシキノリン)アルミニウム(Alq3)ベースの上面発光型OLEDである。OLED802は、ガラス/ITO/N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)/クマリン545:Alq3/Alq3/LiF/Al/バッファITO45/キャッピングITO15からなる構造を有し、ただしNPBは正孔輸送層であり、クマリン545:Alq3/Alq3はそれぞれ、発光層および電子輸送層として働き、LiF/Al/バッファITO45/キャッピングITO15は、上部カソードである。
【0068】
この実施形態例では、LiF(0.3nm)/Al(1〜5nm)/バッファITO45/キャッピングITO15からなる薄膜積層体が、上面発光型OLED802内の上部カソード804として使用される。806の極薄LiF/Al層は、808の有機/カソード界面で電子注入コンタクトとして働く。2層ITOカソード804は、In2O3とSnO2が9:1の重量比にある6″の酸化ITOターゲットを用いたDC/RFスパッタを使用して堆積される。スパッタリングチャンバ内のベース圧力は、約2×10−4Pa未満に維持される。スパッタリングガスの全圧は、約3×10−1Paで一定に維持された。堆積プロセスは室温で実施され、すなわち、基板は膜堆積中または膜堆積後に加熱されない。バッファITO45/キャッピングITO15 ITO電極の組合せは、約90Ω/スクエア(図5を比較されたい)のシート抵抗を有する。
【0069】
バッファITO0/キャッピングITO60の厚さを有するITOカソードが、有機エレクトロニクスに適していないことを確認するために、LiF(0.3nm)/Al(1.0nm)/バッファITO0/キャッピングITO60層構造を備えるサンプルを調査した。得られた結果(図示せず)は、上部カソードとしてのLiF(0.3nm)/Al(1.0nm)/バッファITO0/キャッピングITO60構造を有するOLEDが、短絡することを示していた。これは、バッファITO0/キャッピングITO60電極を約100WでのRFマグネトロンスパッタリングによって作製することにより、下にある有機材料に対して損傷が生じるためである。したがって、結果は、ほとんど損傷のないバッファITO層が好ましいことを示している。
【0070】
次に、バッファITO45/キャッピングITO15からなるカソード構造を有するOLEDとバッファITO60/キャッピングITO0からなるカソード構造を有するOLEDを比較する。
【0071】
図9は、1組の上面発光型OLEDについて測定した、電流密度J(mA/cm2)対電圧V(V)のグラフである。この実施形態例では、これらのOLEDは、LiF(0.3nm)/Al(1.0nm)/バッファITO45/キャッピングITO15カソード、およびLiF(0.3nm)/Al(1.0nm)/バッファITO60/キャッピングITO0カソードを備える。
【0072】
図10は、この実施形態例においてLiF(0.3nm)/Al(1.0nm)/バッファITO45/キャッピングITO15カソード、およびLiF(0.3nm)/Al(1.0nm)/バッファITO60/キャッピングITO0カソードを伴って形成された該1組の上面発光型OLEDについて測定した、輝度L(cd/m2)対電圧V(V)のグラフである。
【0073】
図9および10によると、2タイプの上部カソード構造を有する上面発光型OLEDは、類似のJ−VおよびL−V特性を有する。しかし、図5および6を参照すると、バッファITO45/キャッピングITO15構造を備える傾斜電極の方が、バッファITO60/キャッピングITO0構造を備える傾斜電極よりも、デバイス応用向けの上部透明電極として一層優れた選択肢である。というのも、バッファITO45/キャッピングITO15構造の導電性は、ITO60/キャッピングITO0 ITO構造のそうした特性に比べて高く、また安定しているためである。
【0074】
バッファ層なしのITO電極に対するこれらの実施形態例の2層電極の性能を調査する上で、一般に、金属(例えばアルミニウム)中間層の厚さを増加させると、後続のスパッタリングにより引き起こされる、有機層に対する損傷を抑制できることに留意されたい。しかし、厚い金属中間層は典型的に、内面反射の増加のため、上部電極側からの光出力の減少を引き起こすことが理解されよう。
【0075】
別の実施形態例では、LiF(0.3nm)/Al/バッファITO0/キャッピングITO60構造が、アルミニウム層の厚さが5.0nmを上回る場合に、上面発光型OLED内の上部カソードとして機能できることが分かる。この実施形態例では、LiF(0.3nm)/Al(5.0nm)/バッファITO0/キャッピングITO60カソード構造を備える上面発光型OLEDと、LiF(0.3nm)/Al(5.0nm)/バッファITO45/キャッピングITO15カソード構造を備える上面発光型OLEDを比較する。
【0076】
図11は、電流密度J(mA/cm2)対電圧V(V)のグラフである。図12は、輝度L(cd/m2)対電圧V(V)のグラフである。図11および12から、LiF(0.3nm)/Al(5.0nm)/バッファITO0/キャッピングITO60構造を伴って形成された上面発光型OLEDと、LiF(0.3nm)/Al(5.0nm)/バッファITO45/キャッピングITO15構造を伴って形成された上面発光型OLEDは、類似または同等のJ−VおよびL−J特性を有することが観測される。
【0077】
図13は、発光効率(cd/A)対電流密度(mA/cm2)のグラフである。図14は、正規化輝度対動作時間(時間)のグラフである。
【0078】
LiF(0.3nm)/Al(5.0nm)/バッファITO0/キャッピングITO60構造を備えるOLEDは、LiF(0.3nm)/Al(5.0nm)/バッファITO45/キャッピングITO15構造を伴って作製された、構造的に同一の上面発光型OLED(数字1304および1404を参照されたい)に比べて、低い発光効率(数字1302を参照されたい)を有し、また経時的輝度がそれほど安定していない(数字1402を参照されたい)ことが観測される。この性能の差は、バッファITO0/キャッピングITO60を約100WでのRFマグネトロンスパッタリングによって作製することにより引き起こされる、下にある有機材料に対する部分的な損傷に帰することができる。
【0079】
したがって、これらの実施形態例では、例えばバッファITO45/キャッピングITO15構造を備える傾斜ITOカソードが、上面発光型OLEDへの応用に適していることが実証されている。
【0080】
OLEDに関する上記の実施形態例を説明した後は、光起電力(PV)セルについて以下の説明の中で論じる。
【0081】
薄膜有機PVセルは、低コスト発電を行うことができる。PVデバイス内で活性構成要素として機能する有機半導体には、広い表面積、コスト効果、化学的堅固性、および機械的可撓性の点からを含めて利点がある。太陽スペクトルの限られた吸収性、および比較的低い開放電圧が、現在の有機PVセルの効率を制限し得る2つの要因であることに留意されたい。したがって、光起電力応用に適した低バンドギャップ有機半導体材料を探ることに加えて、有機PVセルの性能を向上させる1つの方法が、タンデム構造を使用することであることが認識されている。タンデムPVセルは、半透明カソードを用いてサブセルを積層することにより形成することができる。有機PVセル内に高性能半透明カソードがあることも望ましい。
【0082】
図15は、別の実施形態例の有機光起電力(PV)デバイス1502の概略図である。デバイス1502は、セミポリマーPVセルであり、次の構造、ガラス/ITO/ポリ(スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT:PSS)(40nm)/ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT):1−(3−メトキシカルボニル)−プロピル−1−フェニル−(6,6)C60(PCBM)(75nm)/Ca(10nm)/Ag(10nm)/バッファITO45/キャッピングITO15を有する。したがって、デバイス1502は、バッファITO45/キャッピングITO15構造1504を上部透明電極の一部として備える。
【0083】
2層ITO構造1504がデバイス1502の性能に及ぼす影響を調査するために、ガラス/ITO/PEDOT−PSS(40nm)/P3HT:PCBM(75nm)/Ca(10nm)/Ag(100nm)というデバイス構成を有する対照デバイス(図示せず)が作製される。この対照デバイスは、バッファITO45/キャッピングITO15構造1504の代わりに、厚さ約100nmのAgを含む電極を有することに留意されたい。
【0084】
図16は、入射光子/電流効率(IPCE)対波長(nm)のグラフである。プロット1602はデバイス1502の性能を示し、プロット1604は対照デバイスの性能を示す。
【0085】
図17は、デバイス1502および対照デバイスについて、約100mW/cm2の擬似エアマス(AM1.5)照度下で測定した、光電流密度J(mA/cm2)対電圧V(V)のグラフである。プロット1702は、デバイス1502の「暗」条件でのJ−V特性を示し、プロット1704は、デバイス1502のAM1.5条件でのJ−V特性を示す。プロット1706は、対照デバイスの「暗」条件でのJ−V特性を示し、プロット1708は、対照デバイスのAM1.5条件でのJ−V特性を示す。
【0086】
以下の表2は、対照デバイスおよびPVデバイス1502の性能を表にまとめたものである。
【0087】
【表2】
FFは曲線因子であり、PCEは電力変換効率である。
【0088】
表から分かるように、PVデバイス1502は、約48%の外部量子効率および約1.23%の変換効率を示している。表2に示すように、半透明PVセルまたはデバイス1502は、同等のFFを生じるが、対照デバイスについて測定された約8.22mA/cm2の短絡電流密度(Jsc)に比べて相対的に低い約5.8mA/cm2の短絡電流密度(Jsc)を生じる。入射光の40%超(図3を比較されたい)が上部傾斜TCO電極または構造1504の中を透過するため、半透明ポリマーPVセルまたはデバイス1502において光電流密度がわずかに減少すると予想される。
【0089】
PVセルに関する上記の実施形態例を説明した後は、タンデム有機太陽セルについて以下の説明の中で論じる。
【0090】
タンデム有機太陽セルでは、1つ1つの太陽セルを非常に薄くすることができる(約20〜40nm)。これには、電荷輸送に対する、次のことを含む利点がある。タンデムPVセルの開放電圧を増加させることができる。太陽スペクトルの異なる部分に応答する2つ以上の異なる太陽セルを積層することにより、タンデム有機PVセルが太陽スペクトルを十分に利用できる。
【0091】
別の実施形態例では、バッファITO/キャッピングITOタイプの傾斜構造などの高性能傾斜透明導電性材料構造が、薄膜タンデム太陽セル内の電荷再結合中間層として使用される。
【0092】
これらの実施形態例の透明導電性材料傾斜構造の用途には、タンデム太陽セル、または光透過性かつ導電性の層を利用する他の任意の有機/無機機能デバイス内の、アノード、カソード、および/または電荷再結合ゾーンがある。
【0093】
図18は、この実施形態例におけるタンデム太陽セルを示す概略図である。タンデム太陽セル1802は、次の構造、ITO/PEDOT:PSS/P3HT:PCBM(75nm)/Ca(5nm)/Ag(5nm)/バッファITO45/キャッピングITO15/PEDOT:PSS/P3HT:PCBM(200nm)/Ca(20nm)/Ag(200nm)を有する。したがって、タンデム太陽セル1802は、バッファITO/キャッピングITOからなる電荷再結合用の傾斜ITO中間層1804を備える。
【0094】
図19は、タンデム太陽セル1802についてのIPCE(%)対波長(nm)のグラフである。図20は、タンデム太陽セル1802についての光電流密度J(mA/cm2)対電圧V(V)のグラフである。
【0095】
以下の表3は、タンデム太陽セル1802の性能を表にまとめたものである。
【0096】
【表3】
したがって、タンデムポリマーPVセル1802の主要な結果は、単接合半透明PVセル(例えば図15のデバイス1502を参照されたい)について測定された約0.5Vの開放電圧に比べて、向上した約0.8Vの開放(Voc)電圧を示している。
【0097】
図21は、一実施形態例における光透過性デバイス用導電性構造を形成する方法を示す概略フローチャート2100である。ステップ2102において、第1の透明導電性材料層が、第1のプロセス条件を用いて形成される。ステップ2104において、直接第1の層上に、少なくとも1つの他の透明導電性材料層が、第1のプロセス条件とは異なる第2のプロセス条件を用いて形成される。ステップ2106において、前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の形成中に、第1の層が、光透過性デバイスに対する悪影響を低減させるためのバッファ層として機能する。
【0098】
上記の実施形態例では、剛性または可撓性の不透明または透明基板ベースと、前記基板の上に形成された無機および/または有機機能層からなる積層体と、無機および/または有機機能層からなる積層体の上に形成された有機または無機の正孔/電子−インジェクタ/コレクタと、有機または無機の正孔/電子−インジェクタ/コレクタの上に形成された2層または多層TCOベースの透明電極と、封止層とを備える、有機および/または無機デバイスを形成することができる。
【0099】
透明基板は、ガラス、またはOLED/ポリマーOLED(PLED)への応用に適した浸透バリア層付きの透明なプラスチック箔とすることができる。不透明(opaque)基板は、ベア基板でも、有機および無機機能材料の表面でもよい、不透明(non−transparent)な無機および有機基板とすることができる。2層または多層TCO材料は、溶液法および真空法によって室内プロセス温度以上にて形成することができる。
【0100】
傾斜TCOベースの透明電極は、用途に応じて、導電性および光結合層を形成することができる。TCOベースの電極は、下にある機能層に対する起こり得る損傷を防ぐためのバッファ層を備えることができる。透明電極材料は、溶液または真空膜作製法により形成される酸素欠乏TCOから選択される。この材料は、インジウムスズ酸化物(ITO)、亜鉛アルミニウム酸化物、インジウム亜鉛酸化物、スズ酸化物、Ga−In−Sn−O(GITO)、Zn−In−Sn−O(ZITO)、Ga−In−O(GIO)、Zn−In−O(ZIO)、ならびに有機および/または無機デバイス内で透明または半透明電極として使用するのに適した他の材料からなる群から選択することができる。これらの材料は個々に、または異なる材料の組合せで使用することができる。
【0101】
TCO層の厚さは調整することができる。電子インジェクタは、低仕事関数金属または金属合金から形成することができる。低仕事関数金属および金属合金は、Ca、Li、Ba、Mgからなる群から選択される。電子インジェクタは、LiF/AlまたはCsF/AlまたはMg/AgまたはCa/Agの薄い2層から形成することができる。
【0102】
上述の実施形態例は、反転型OLED、上面発光型OLED、半透明ポリマー光起電力(PV)セル、タンデム構造PVセル、および透明導電性層(複数可)を利用する、無機/有機ダイオード、トランジスタ、またはデバイスの積層体を備えた機能構成要素用のバッファITO45/キャッピングITO15 2層ITO構造を形成することができる。本発明者らは、光活性層内での集光性、ならびにタンデム構造薄膜光起電力デバイス内でのサブユニット太陽セルの透過性を向上させるために、TCOベースの半透明カソードをさらに最適化できることを認識している。
【0103】
それらの実施形態例の傾斜TCO電極は、発光型および非発光型フラットパネルディスプレイ、有機光電装置、無機光電装置、およびハイブリッド光電装置、センサ、ヒートミラー、静電遮蔽、透明ダイオード、透明トランジスタ、透明回路、ならびに他の光電子応用における透明接点または透明導電性電極として使用することができる。傾斜TCO電極は、メモリデバイス、TCOベースのp−n接合部、電気接点、透明回路、OLED/ポリマーLED(PLED)ディスプレイ、自動車の指示計器/ディスプレイ、屋外用計器ディスプレイ、看板または広告表示板、屋外用PCモニタおよびTVモニタでも使用することができ、またフレキシブルOLED(FOLED)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)などを含む有機エレクトロニクスでも使用することができる。
【0104】
上記の実施形態例は、下にある有機材料に実質的に損傷を与えずに、低い処理温度にて、平滑な表面、高導電性、高光透過性を有する高品質TCOベースの電極を形成することができる。透過性および導電性に加えて、それらの実施形態例は、新規の堆積設備の追加を必要としない、またプレまたはポストアニールを必要としないなどの、他の利点をもたらすことができる。それらの実施形態例はまた、大面積の剛性および可撓性基板向けに使用するのに適切となり得る。
【0105】
それらの実施形態例により、増加したVoc、より良好な電荷輸送特性を得るためのより薄い活性層、および太陽スペクトル内での幅広いスペクトル応答を有する、タンデムOPVセルが得られるようになる。それらの実施形態例により、例えば屈折率整合および電流拡がりによる高い導電性および光透過性を有し、電気的短絡を低減させるための平滑な表面を有し、下にある層に損傷を与えずに大きな堆積速度を有し、空気中で安定しており、スケーラブルで低コストのプロセスにおいて生産することのできる、TOLEDまたは半透明OPVセルが得られるようにもなる。
【0106】
上記の実施形態例では、傾斜ITO膜が、高導電性および可視光波長領域全体にわたる高光透過性というその好ましい特性のため使用される。ITOを堆積させるための技法として、マグネトロンスパッタリングが説明されている。というのも、この技法には、均一なITO膜を再現可能に作製するという利点があるためである。DC/RFマグネトロンスパッタリングの反応性形態と非反応性形態をどちらも、膜作製に使用することができる。マグネトロンスパッタリングはまた、高品質ITO膜の作製が可能であると思われる。さらに、ITO膜を、それらに限定されないが、熱蒸着堆積、電子ビーム蒸着、噴霧熱分解、化学気相成長、浸漬コーティング技法、パルスレーザ堆積(PLD)法、非平衡マグネトロンスパッタリング、ならびにさまざまな物理堆積方法および化学堆積方法を含む、他の技法によって作製することもできることが理解されよう。これらの堆積方法は、上記の実施形態例において説明したマグネトロンスパッタリング技法と同様に、第1の透明導電性材料層を用いて、光透過性デバイスに対する、堆積により引き起こされる悪影響が低減するように、また光透過性デバイスにとって所望の膜品質を、光透過性デバイス用導電性構造の少なくとも1つの他の透明導電性材料層内にもたらすことができるように、制御/選択することのできるプロセス条件を有することが理解されよう。こうしたプロセス条件は、それらに限定されないが、温度および堆積電力を含む。
【0107】
説明した実施形態例には、単一堆積プロセスまたは異なる作製技術の組合せを用いるなどの作製上の柔軟性があってよい。
【0108】
さらに、説明した実施形態例は、ITOの使用に限定されるのではなく、SnO2、Ga−In−Sn−O(GITO)、Zn−In−Sn−O(ZITO)、Ga−In−O(GIO)、Zn−In−O(ZIO)、および有機エレクトロニクスに適した他の透明導電性材料を含めて、他の酸化物材料を含むことができることが理解されよう。それらの実施形態例は、導電性ポリマー/有機物、透明導電性窒化物、および他の透明導電性材料の使用を含むこともできる。これらの材料は個々に、または異なる材料の組合せで使用することができる。
【0109】
広範に記載した本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、特定の実施形態において示した本発明に多数の変更および/または修正を加えることができることが、当業者には理解されよう。したがって、本実施形態は、あらゆる点で例示的なものであり、制限するものではないと見なされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性デバイス用導電性構造であって、
第1のプロセス条件を用いて形成される第1の透明導電性材料層と、
直接前記第1の層上に形成される少なくとも1つの他の透明導電性材料層であって、前記第1のプロセス条件とは異なる第2のプロセス条件を用いて形成される少なくとも1つの他の透明導電性材料層とを備え、
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の形成中に、前記第1の層が、前記光透過性デバイスに対する悪影響を低減させるためのバッファ層として機能する、構造。
【請求項2】
前記第1のプロセス条件が、第1の堆積電力および第1の堆積温度を有し、
前記第2のプロセス条件が、第2の堆積電力および第2の堆積温度を有し、
前記第1の堆積電力、前記第1の堆積温度、および前記第2の堆積温度がそれぞれ、温度および堆積電力により引き起こされる、前記光透過性デバイスに対する悪影響が低減するように選択され、
前記第2の堆積電力が、前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の所望の膜品質をもたらすように選択される、請求項1に記載の構造。
【請求項3】
1つまたは複数の金属層をさらに備え、前記第1の層が前記金属層の上に形成される、請求項1または2に記載の構造。
【請求項4】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層と、それが上に形成された前記第1の層が共に、前記デバイスの光出力を向上させるための屈折率整合構造として機能する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造。
【請求項5】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層と、それが上に形成された前記第1の層が共に、前記デバイスの電流拡がりを向上させるように機能する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の構造。
【請求項6】
前記第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層が、物理堆積技法、化学堆積技法、または両方を用いて形成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の構造。
【請求項7】
前記第1の層が、直流(DC)マグネトロンスパッタリングを用いて形成される、請求項6に記載の構造。
【請求項8】
前記第1の堆積電力が約10Wの電力である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の構造。
【請求項9】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層が、高周波(RF)マグネトロンスパッタリングを用いて形成される、請求項6〜8のいずれか1項に記載の構造。
【請求項10】
前記第2の堆積電力が約100Wの電力である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の構造。
【請求項11】
前記第1の層の堆積中の基板温度が、約60℃以下である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の構造。
【請求項12】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の堆積中の前記基板温度が、約60℃以下である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の構造。
【請求項13】
前記第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層がそれぞれ、SnO2、Ga−In−Sn−O(GITO)、Zn−In−Sn−O(ZITO)、Ga−In−O(GIO)、Zn−In−O(ZIO)、In−Sn−O(ITO)、および他の透明導電性材料からなる群から選択される、1種または複数種の材料を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の構造。
【請求項14】
前記第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層が、同じ透明導電性材料を含む、請求項13に記載の構造。
【請求項15】
光透過性デバイス用導電性構造を形成する方法であって、
第1の透明導電性材料層を、第1のプロセス条件を用いて形成すること、
直接前記第1の層上に、少なくとも1つの他の透明導電性材料層を、前記第1のプロセス条件とは異なる第2のプロセス条件を用いて形成すること、を含み、
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の形成中に、前記第1の層が、前記光透過性デバイスに対する悪影響を低減させるためのバッファ層として機能する、方法。
【請求項16】
前記第1のプロセス条件が、第1の堆積電力および第1の堆積温度を有し、
前記第2のプロセス条件が、第2の堆積電力および第2の堆積温度を有し、
前記方法がさらに、
前記第1の堆積電力、前記第1の堆積温度、および前記第2の堆積温度をそれぞれ、温度および堆積電力により引き起こされる、前記光透過性デバイスに対する悪影響が低減するように選択すること、ならびに
前記第2の堆積電力を、前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の所望の膜品質をもたらすように選択することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
1つまたは複数の金属層を設けること、および前記第1の層を前記金属層の上に形成することをさらに含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層と、それが上に形成された前記第1の層が共に、前記デバイスの光出力を向上させるための屈折率整合構造として機能する、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層と、それが上に形成された前記第1の層が共に、前記デバイスの電流拡がりを向上させるように機能する、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層が、物理堆積技法、化学堆積技法、または両方を用いて形成される、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の層が、直流(DC)マグネトロンスパッタリングを用いて形成される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の堆積電力が約10Wの電力である、請求項15〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層が、高周波(RF)マグネトロンスパッタリングを用いて形成される、請求項20〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の堆積電力が約100Wの電力である、請求項15〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の層の堆積中の基板温度が、約60℃以下である、請求項15〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の堆積中の基板温度が、約60℃以下である、請求項15〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層がそれぞれ、SnO2、Ga−In−Sn−O(GITO)、Zn−In−Sn−O(ZITO)、Ga−In−O(GIO)、Zn−In−O(ZIO)、In−Sn−O(ITO)、および他の透明導電性材料からなる群から選択される、1種または複数種の材料を含む、請求項15〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層が、同じ透明導電性材料を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項1】
光透過性デバイス用導電性構造であって、
第1のプロセス条件を用いて形成される第1の透明導電性材料層と、
直接前記第1の層上に形成される少なくとも1つの他の透明導電性材料層であって、前記第1のプロセス条件とは異なる第2のプロセス条件を用いて形成される少なくとも1つの他の透明導電性材料層とを備え、
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の形成中に、前記第1の層が、前記光透過性デバイスに対する悪影響を低減させるためのバッファ層として機能する、構造。
【請求項2】
前記第1のプロセス条件が、第1の堆積電力および第1の堆積温度を有し、
前記第2のプロセス条件が、第2の堆積電力および第2の堆積温度を有し、
前記第1の堆積電力、前記第1の堆積温度、および前記第2の堆積温度がそれぞれ、温度および堆積電力により引き起こされる、前記光透過性デバイスに対する悪影響が低減するように選択され、
前記第2の堆積電力が、前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の所望の膜品質をもたらすように選択される、請求項1に記載の構造。
【請求項3】
1つまたは複数の金属層をさらに備え、前記第1の層が前記金属層の上に形成される、請求項1または2に記載の構造。
【請求項4】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層と、それが上に形成された前記第1の層が共に、前記デバイスの光出力を向上させるための屈折率整合構造として機能する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造。
【請求項5】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層と、それが上に形成された前記第1の層が共に、前記デバイスの電流拡がりを向上させるように機能する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の構造。
【請求項6】
前記第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層が、物理堆積技法、化学堆積技法、または両方を用いて形成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の構造。
【請求項7】
前記第1の層が、直流(DC)マグネトロンスパッタリングを用いて形成される、請求項6に記載の構造。
【請求項8】
前記第1の堆積電力が約10Wの電力である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の構造。
【請求項9】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層が、高周波(RF)マグネトロンスパッタリングを用いて形成される、請求項6〜8のいずれか1項に記載の構造。
【請求項10】
前記第2の堆積電力が約100Wの電力である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の構造。
【請求項11】
前記第1の層の堆積中の基板温度が、約60℃以下である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の構造。
【請求項12】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の堆積中の前記基板温度が、約60℃以下である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の構造。
【請求項13】
前記第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層がそれぞれ、SnO2、Ga−In−Sn−O(GITO)、Zn−In−Sn−O(ZITO)、Ga−In−O(GIO)、Zn−In−O(ZIO)、In−Sn−O(ITO)、および他の透明導電性材料からなる群から選択される、1種または複数種の材料を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の構造。
【請求項14】
前記第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層が、同じ透明導電性材料を含む、請求項13に記載の構造。
【請求項15】
光透過性デバイス用導電性構造を形成する方法であって、
第1の透明導電性材料層を、第1のプロセス条件を用いて形成すること、
直接前記第1の層上に、少なくとも1つの他の透明導電性材料層を、前記第1のプロセス条件とは異なる第2のプロセス条件を用いて形成すること、を含み、
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の形成中に、前記第1の層が、前記光透過性デバイスに対する悪影響を低減させるためのバッファ層として機能する、方法。
【請求項16】
前記第1のプロセス条件が、第1の堆積電力および第1の堆積温度を有し、
前記第2のプロセス条件が、第2の堆積電力および第2の堆積温度を有し、
前記方法がさらに、
前記第1の堆積電力、前記第1の堆積温度、および前記第2の堆積温度をそれぞれ、温度および堆積電力により引き起こされる、前記光透過性デバイスに対する悪影響が低減するように選択すること、ならびに
前記第2の堆積電力を、前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の所望の膜品質をもたらすように選択することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
1つまたは複数の金属層を設けること、および前記第1の層を前記金属層の上に形成することをさらに含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層と、それが上に形成された前記第1の層が共に、前記デバイスの光出力を向上させるための屈折率整合構造として機能する、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層と、それが上に形成された前記第1の層が共に、前記デバイスの電流拡がりを向上させるように機能する、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層が、物理堆積技法、化学堆積技法、または両方を用いて形成される、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の層が、直流(DC)マグネトロンスパッタリングを用いて形成される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の堆積電力が約10Wの電力である、請求項15〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層が、高周波(RF)マグネトロンスパッタリングを用いて形成される、請求項20〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の堆積電力が約100Wの電力である、請求項15〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の層の堆積中の基板温度が、約60℃以下である、請求項15〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層の堆積中の基板温度が、約60℃以下である、請求項15〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層がそれぞれ、SnO2、Ga−In−Sn−O(GITO)、Zn−In−Sn−O(ZITO)、Ga−In−O(GIO)、Zn−In−O(ZIO)、In−Sn−O(ITO)、および他の透明導電性材料からなる群から選択される、1種または複数種の材料を含む、請求項15〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の層、および前記少なくとも1つの他の透明導電性材料層が、同じ透明導電性材料を含む、請求項27に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2011−524463(P2011−524463A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508446(P2011−508446)
【出願日】平成20年5月6日(2008.5.6)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000168
【国際公開番号】WO2009/136863
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月6日(2008.5.6)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000168
【国際公開番号】WO2009/136863
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】
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