説明

光集積回路モジュール、このモジュールに用いる光学ベンチ、及び光集積回路モジュールの作製方法

【課題】歩留まりの向上を図ることができる光集積回路モジュール、このモジュールに用いる光学ベンチ、及び光集積回路モジュールの作製方法を提供する。
【解決手段】光集積回路モジュール1は、LDアレイ2が実装された光学ベンチとしてのSOB(シリコンオプチカルベンチ)3の端面4と、平面光波回路5が形成された光導波路素子としてのPLC6の端面7とを突き合わせて、LDアレイ2の複数の半導体導波路8と平面光波回路5の複数の光導波路9を光学的に接続した光モジュールである。この光集積回路モジュール1では、SOB3の端面4は、ダイサーで切削された表面粗さよりも小さい表面粗さに研磨された面になっている。つまり、SOB3の端面4を研磨で仕上げることによって、端面4の位置精度を上げ、端面距離Zの誤差ΔZを小さくしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体導波路素子が実装された光学ベンチの端面と平面光波回路(PLC;Planar Lightwave Circuit)が形成された光導波路素子の端面とを突き合わせて、半導体導波路素子の半導体導波路と平面光波回路の光導波路を光学的に接続した光集積回路モジュール、このモジュールに用いる光学ベンチ、及び光集積回路モジュールの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体導波路素子やシリカ系光導波路素子といった異種の導波路材(導波路素子)を光学的に接続したハイブリッドデバイス(光集積回路モジュール)の開発が試みられている。異種の導波路素子間の光結合部は、各導波路素子の導波路(半導体導波路素子の半導体導波路と光導波路素子の光導波路)のモード径が小さく、導波路の高さも異なるため、精度の高い導波路同士の位置合わせが必要となる。
【0003】
従来、Si基板上にテラス型の基準部を設けて、半導体導波路素子の半導体導波路と平面光波回路の光導波路の高さを合わせる方法が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−031731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に開示された従来技術のようにSi基板上にテラス型の基準部を形成するのは、構造的に作製が困難で、高い歩留まりを保証できないので、より簡便で高い歩留まりを保証できる技術が望まれている。
【0005】
また、Si基板などの光学ベンチに搭載された半導体導波路素子の端面と平面光波回路が形成された光導波路素子(PLC基板)の端面とを突き合わせて、半導体導波路素子の半導体導波路と平面光波回路の光導波路を光学的に接続する場合、光学ベンチの端面をダイサーでカットすることが考えられる。この場合、ダイサーの切削精度によって半導体導波路素子の端面と光導波路素子の端面との間の端面距離の精度に影響を及ぼすことが懸念される。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて為されたもので、その目的は、歩留まりの向上を図ることができる光集積回路モジュール、このモジュールに用いる光学ベンチ、及び光集積回路モジュールの作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る光モジュールは、半導体導波路素子が実装された光学ベンチの端面と平面光波回路が形成された光導波路素子の端面とを突き合わせて、半導体導波路素子の半導体導波路と平面光波回路の光導波路を光学的に接続した光集積回路モジュールであって、前記光学ベンチの端面は、ダイサーで切削された表面粗さよりも小さい表面粗さに研磨された面であることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、(1)光導波路素子の端面と突き合わされる光学ベンチの端面が、ダイサーで切削された端面よりも加工精度の良い面になる。このため、光学ベンチの端面を光導波路素子の端面に突き合わせる際に、半導体導波路素子の端面、例えばレーザダイオードの光出射面或いはフォトダイオードの光入射面(受光面)と、光導波路素子の端面との間の端面距離Zの誤差ΔZを小さくすることができる。その結果、光学的に接続される半導体導波路素子の半導体導波路と平面光波回路の光導波路との結合損失のばらつきΔCを小さく抑えることができ、光集積回路モジュールを作製する際の歩留まりを向上することができる。(2)また、通常、ダイサーで切削された面は非常に荒れていて表面粗さが大きいため、ダイサーで切削された光学ベンチの端面と光導波路素子の端面とを突き合わせて、接着により光学ベンチと光導波路素子を結合する際に、接着の信頼性が悪い。また、その切削された面に塗布した接着剤にチッピングが起き、そこから傷やクラックが発生し易く、この点でも接着の信頼性が悪い。これに対して、この構成によれば、光学ベンチの端面は、ダイサーで切削された表面粗さよりも小さい表面粗さに研磨された面であるため、接着の信頼性が向上する。これと共に、その研磨された面に塗布した接着剤にチッピングが起きにくく、傷やクラックの発生を抑制できるので、この点でも接着の信頼性が向上する。
【0009】
上記課題を解決するために、請求項2に記載の発明に係る光集積回路モジュールに用いる光学ベンチは、半導体導波路素子が実装された光学ベンチの端面と平面光波回路が形成された光導波路素子の端面とを突き合わせて、半導体導波路素子の半導体導波路と平面光波回路の光導波路を光学的に接続した光集積回路モジュールに用いる光学ベンチであって、前記半導体導波路素子が実装される表面に、前記光学ベンチの端面から目標仕上がり位置までの残り寸法を視認して確認するための研磨用マーカーが形成されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、光導波路素子の端面と突き合わされる光学ベンチの端面を研磨する際に、光学ベンチの端面から目標仕上がり位置までの残り寸法を、研磨用マーカーを顕微鏡等で視認して確認できるので、光学ベンチの端面を目標仕上がり位置まで研磨により精度良く加工することができる。これにより、光学ベンチの端面を光導波路素子の端面に突き合わせる際に、半導体導波路素子の端面と光導波路素子の端面との間の端面距離Zの誤差ΔZを小さくすることができる。その結果、光学的に接続される半導体導波路素子の半導体導波路と平面光波回路の光導波路との結合損失のばらつきΔCを小さく抑えることができ、光集積回路モジュールを作製する際の歩留まりを向上することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明に係る光学ベンチは、前記研磨用マーカーは、平面視で、研磨方向に一定の間隔ずつずれた複数の段が連続した階段状の部材であることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、研磨用マーカーである階段状の部材を顕微鏡等で視認して、その部材の複数の段のうち、どの段までダイサーで切削されているかを確認することで、光学ベンチの端面から目標仕上がり位置までの残り寸法を知ることができる。この残り寸法の大きさに応じて、研磨に用いる砥粒の大きさや研磨速度を決めることができるので、研磨による端面の加工精度が向上すると共に、加工時間を短縮することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明に係る光学ベンチは、前記研磨用マーカーは、平面視で、矩形状或いは線状の複数の部材が研磨方向に一定の間隔ずつずれて配置された集合体であることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、研磨用マーカーである矩形状或いは線状の複数の部材の集合体を顕微鏡等で視認して、矩形状或いは線状の複数の部材のうち、どの部材までダイサーで切削されているかを確認することで、光学ベンチの端面から目標仕上がり位置までの残り寸法を知ることができる。この残り寸法の大きさに応じて、研磨に用いる砥粒の大きさや研磨速度を決めることができるので、研磨による端面の加工精度が向上すると共に、加工時間を短縮することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明に係る光学ベンチは、前記研磨用マーカーは、前記半導体導波路素子が実装される位置の左右両側に形成されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、半導体導波路素子が実装される位置の左右両側にある研磨用マーカーを顕微鏡等で視認することで、半導体導波路素子が実装される位置の左右両側で光学ベンチの端面から目標仕上がり位置までの残り寸法を知ることができる。これにより、光学ベンチの端面と半導体導波路素子の端面との平行度が向上する。その結果、光学的に接続される半導体導波路素子の半導体導波路と平面光波回路の光導波路との結合損失のばらつきΔCを更に小さく抑えることができ、光集積回路モジュールを作製する際の歩留まりを更に向上することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明に係る光学ベンチは、前記半導体導波路素子が実装される表面には、前記半導体導波路素子と電子素子の間で電気信号を伝送するための伝送路である配線パターンと、前記半導体導波路素子が実装されるハンダ膜とが設けられていることを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するために、請求項7に記載の発明に係る光集積回路モジュールの作製方法は、半導体導波路素子が実装された光学ベンチの端面と平面光波回路が形成された光導波路素子の端面とを突き合わせて、半導体導波路素子と平面光波回路の光導波路を光学的に接続した光集積回路モジュールの作製方法であって、前記光学ベンチの端面をダイサーで切削し、前記切削の後、切削された前記光学ベンチの端面を目標仕上がり位置まで研磨することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、(1)光学ベンチの端面をダイサーで切削した後、切削された光学ベンチの端面を目標仕上がり位置まで研磨するので、光導波路素子の端面と突き合わされる光学ベンチの端面が、ダイサーで切削された端面よりも加工精度の良い面になる。このため、光学ベンチの端面を光導波路素子の端面に突き合わせて、接着する際に、半導体導波路素子の端面と光導波路素子の端面との間の端面距離Zの誤差ΔZを小さくすることができる。その結果、光学的に接続される半導体導波路素子の半導体導波路と平面光波回路の光導波路との結合損失のばらつきΔCを小さく抑えることができ、光集積回路モジュールを作製する際の歩留まりを向上することができる。(2)また、研磨した光学ベンチの端面は、ダイサーで切削された表面粗さよりも小さい表面粗さになるため、接着の信頼性が向上する。これと共に、その研磨された面に塗布した接着剤にチッピングが起きにくく、傷やクラックの発生を抑制できるので、この点でも。接着の信頼性が向上する。
【0020】
請求項8に記載の発明に係る光集積回路モジュールの作製方法は、前記光学ベンチの端面をダイサーで切削した後、切削された前記光学ベンチの端面から目標仕上がり位置までの残り寸法を、前記半導体導波路素子が実装される前記光学ベンチの表面に形成された研磨用マーカーを視認して把握し、その後、把握した前記残り寸法だけ前記光学ベンチの端面を研磨することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、光学ベンチの端面をダイサーで切削した後、光導波路素子の端面と突き合わされる光学ベンチの端面を研磨する際に、光学ベンチの端面から目標仕上がり位置までの残り寸法を、研磨用マーカーを視認して確認できるので、光学ベンチの端面を目標仕上がり位置まで研磨により精度良く加工することができる。これにより、光学ベンチの端面を光導波路素子の端面に突き合わせて接着する際に、半導体導波路素子の端面と光導波路素子の端面との間の端面距離Zの誤差ΔZを小さくすることができる。その結果、光学的に接続される半導体導波路素子の半導体導波路と平面光波回路の光導波路との結合損失のばらつきΔCを小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、歩留まりの向上を図ることができる光集積回路モジュールを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る光集積回路モジュール1を図1に基づいて説明する。
【0024】
この光集積回路モジュール1は、半導体導波路素子としての半導体レーザダイオードアレイ(LDアレイ)2が実装された光学ベンチとしてのシリコン(Si)オプチカルベンチ(SOB)3の端面4と、平面光波回路5が形成された光導波路素子としてのシリカ系光導波路素子(PLC)6の端面7とを突き合わせて、LDアレイ2の複数の半導体導波路8と平面光波回路5の複数の光導波路9を光学的に接続した光モジュールである。LDアレイ2は、例えば、複数の分布帰還型(Distributed Feedback:DFB)半導体レーザダイオードを1列に並べた半導体レーザダイオードアレイである。
【0025】
このようにSOB3の端面4とPLC6の端面7とを突き合わせて、LDアレイ2の複数の半導体導波路8と平面光波回路5の複数の光導波路9を光学的に接続した光集積回路モジュール1を作製する際には、工程上、PLC6の端面7とSOB3の端面4とを突き合わせて(L=0)、基準点を出す必要がある。
【0026】
したがって、この光集積回路モジュール1を作製する際には、PLC6の端面7とLDアレイ2の端面10との間の端面距離ZはZ=D+Lで決定されるが、SOB3の端面4の位置に誤差ΔLが発生すると、端面距離Zの誤差に影響する。
【0027】
そこで、第1実施形態に係る光集積回路モジュール1では、SOB3の端面4は、ダイサーで切削された表面粗さよりも小さい表面粗さに研磨された面になっている。つまり、この光集積回路モジュール1では、SOB3の端面4を研磨で仕上げることによって、端面4の位置精度を上げ、端面距離Zの誤差ΔZを小さくしている。
【0028】
図2は、端面距離Zの誤差ΔZと結合損失CのばらつきΔCの関係を示している。図2から、端面4の位置精度を上げて端面距離Zの誤差ΔZを小さくすることで、光学的に接続されるLDアレイ2の複数の半導体導波路8と平面光波回路5の複数の光導波路9との結合損失CのばらつきΔCを小さく抑えることができることが分かる。
【0029】
PLC6は、次のようにして作製される。
火炎堆積(Flame Hydrolysis Deposition, FHD)法により、Si基板上に、下部クラッド層およびコア層となるシリカ材料(SiO2系のガラス粒子)を堆積し、加熱してガラス膜を溶融透明化する。この後、フォトリソグラフィと反応性イオンエッチングで所望の複数の光導波路9を形成し、再びFHD法により上部クラッドを形成する。
【0030】
次に、図1に示す光集積回路モジュール1に用いる第1実施形態に係る光学ベンチを図3に基づいて説明する。
【0031】
図3に示す光学ベンチとしてのSOB3においては、LDアレイ2が実装される表面3aに、SOB3の端面から目標仕上がり位置までの残り寸法を視認して確認するための研磨用マーカー20,21が形成されている。目標仕上がり位置は、図3の研磨目標線30で示す位置である。
【0032】
またSOB3の表面3aには、LDアレイ2の各DFB半導体レーザダイオード(LD)と図示を省略した電子素子としてのドライバICとの間で電気信号を伝送するための伝送路である配線パターン22,23と、LDアレイ2が実装されるハンダ膜24とが形成されている。なお、図3において、符号「31」は、1枚のシリコン(Si)ウェハから1チップのSOB3を、ダイサーで切削して分離するためのダイシング線である。
【0033】
研磨用マーカー20,21は、LDアレイ2が実装されるハンダ膜24の左右両側に形成されている。左側の研磨用マーカー20は、図4(A)に示すように、平面視で、図3の矢印25で示す研磨方向に一定の間隔dずつずれた複数の段が連続した階段状の部材である。同様に、右側の研磨用マーカー21は、図4(B)に示すように、平面視で、研磨方向に一定の間隔dずつずれた複数の段が連続した階段状の部材である。一定の間隔dは、例えば、1μm、或いは数μmである。各研磨用マーカー20,21は、SOB3の表面3a上に、スパッタ法などの金属蒸着法により形成されている。
【0034】
複数の配線パターン22,23はそれぞれ、例えば、SOB3の表面3a側から順にTi,NIおよびAuをそれぞれ積層した電極膜(Ti/Ni/Au)である。ハンダ膜24は、SOB3の表面3a側から順にAuとSnを積層して形成されている。ハンダ膜24のAu層の両端部は、2つの配線パターン22と電気的に接続されている。
【0035】
LDアレイ2は、例えば、その基板の裏面電極(コモン電極)をハンダ膜24のSn層とハンダ接合して実装(フリップチップ実装)される。これにより、LDアレイ2の裏面電極が2つの配線パターン22を介して電源(図示省略)の負極と電気的に接続される。
【0036】
一方、LDアレイ2の表面には、複数のLDにそれぞれ対応する独立した複数の上部電極が形成されている。複数の上部電極は、対応する複数の配線パターン23とそれぞれワイヤ(図示省略)で電気的に接続される。これにより、LDアレイ2を駆動するドライバICからLDアレイ2の複数のLDには、複数の配線パターン23および複数のワイヤ(図示省略)をそれぞれ介して変調信号が入力され、各LDから変調信号により変調された光信号が出射されて、PLC6の複数の光導波路9にそれぞれ光結合するようになっている。
【0037】
次に、図1に示す光集積回路モジュール1の作製方法について説明する。
この光集積回路モジュール1は、次のようにして作製される。
(工程1)まず、LDアレイ2をSOB3のハンダ膜24上に実装する(図1参照)。
(工程2)次に、SOB3の端面をダイサーで切削する。
(工程3)次に、切削されたSOB3の端面を、図3の研磨目標線30で示す目標仕上がり位置まで研磨する。
【0038】
この工程3では、まず、ダイサーで切削されたSOB3の端面から目標仕上がり位置までの残り寸法を、SOB3の表面3aに形成された研磨用マーカー20,21を顕微鏡で視認して把握する。この後、把握した残り寸法だけSOB3の端面を研磨する。
この研磨により、SOB3の端面は、ダイサーで切削された表面粗さよりも小さい表面粗さに研磨された端面4(図1参照)になる。
【0039】
(工程4)次に、LDアレイ2に対してPLC6を動かして、LDアレイ2の複数の半導体導波路8に対してPLC6の複数の光導波路9をアクティブ調芯する。
【0040】
(工程5)この調芯後、SOB3の端面4とPLC6の端面7の間にUV硬化接着剤を塗布し、UV硬化接着剤にUV光を照射してUV硬化接着剤全体を硬化させる。
【0041】
これにより、LDアレイ2が実装されたSOB3とPLC6とが結合されて光集積回路モジュール1が完成する。なお、結合されたSOB3とPLC6を補強のための基板上に固定するようにしても良い。
【0042】
以上のように構成された第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
○第1実施形態に係る光集積回路モジュール1では、SOB3の端面4は、ダイサーで切削された表面粗さよりも小さい表面粗さに研磨された面になっている。つまり、この光集積回路モジュール1では、SOB3の端面4を研磨で仕上げることによって、端面4の位置精度を上げ、端面距離Zの誤差ΔZを小さくしている。これにより、光導波路素子としてのPLC6の端面7と突き合わされる光学ベンチとしてのSOB3の端面4が、ダイサーで切削された端面よりも加工精度の良い面になる。このため、SOB3の端面4をPLC6の端面7に突き合わせる際に、各LDの光出射面であるLDアレイ2の端面10と、PLC6の端面7との間の端面距離Zの誤差ΔZを小さくすることができる。その結果、光学的に接続されるLDアレイ2の複数の半導体導波路8と平面光波回路5の複数の光導波路9との結合損失のばらつきΔCを小さく抑えることができ、光集積回路モジュール1を作製する際の歩留まりを向上することができる。
【0043】
○SOB3の端面4は、ダイサーで切削された表面粗さよりも小さい表面粗さに研磨された面であるため、SOB3の端面4とPLC6の端面7とを突き合わせて、UV硬化接着剤を用いた接着により光学ベンチと光導波路素子を結合する際に、接着の信頼性が向上する。
【0044】
○研磨されたSOB3の端面4に塗布したUV硬化接着剤にチッピングが起きにくく、傷やクラックの発生を抑制できるので、この点でも接着の信頼性が向上する。
【0045】
○第1実施形態に係る光学ベンチとしてのSOB3では、LDアレイ2が実装される表面3aに、SOB3の端面4から図3の研磨目標線30で示す目標仕上がり位置までの残り寸法を視認して確認するための研磨用マーカー20,21が形成されている。この構成により、PLC6の端面7と突き合わされるSOB3の端面を研磨する際に、SOB3の端面から目標仕上がり位置までの残り寸法を、研磨用マーカー20,21を顕微鏡等で視認して確認できるので、SOB3の端面4を目標仕上がり位置まで研磨により精度良く加工することができる。これにより、SOB3の端面4をPLC6の端面7に突き合わせる際に、LDアレイ2の端面10とPLC6の端面7との間の端面距離Zの誤差ΔZを小さくすることができる。その結果、光学的に接続されるLDアレイ2の各半導体導波路8と平面光波回路5の各光導波路9との結合損失のばらつきΔCを小さく抑えることができ、光集積回路モジュール1を作製する際の歩留まりを向上することができる。
【0046】
○SOB3の研磨用マーカー20,21は、平面視で、研磨方向に一定の間隔ずつずれた複数の段が連続した階段状の部材である。この構成により、研磨用マーカー20,21である階段状の部材を顕微鏡等で視認して、その部材の複数の段のうち、どの段までダイサーで切削されているかを確認することで、SOB3の端面4から目標仕上がり位置までの残り寸法を知ることができる。この残り寸法の大きさに応じて、研磨に用いる砥粒の大きさや研磨速度を決めることができるので、研磨による端面4の加工精度が向上すると共に、加工時間を短縮することができる。
【0047】
○SOB3の研磨用マーカー20,21は、LDアレイ2が実装される位置(ハンダ膜24)の左右両側に形成されている。この構成により、研磨用マーカー20,21を顕微鏡等で視認することで、LDアレイ2が実装されるハンダ膜24の左右両側でSOB3の端面4から目標仕上がり位置までの残り寸法を知ることができる。これにより、SOB3の端面4とLDアレイ2の端面10との平行度が向上する。その結果、光学的に接続されるLDアレイ2の複数の半導体導波路8と平面光波回路5の複数の光導波路9との結合損失のばらつきΔCを更に小さく抑えることができ、光集積回路モジュール1を作製する際の歩留まりを更に向上することができる。
【0048】
○第1実施形態に係る光集積回路モジュール1の作製方法では、SOB3の端面をダイサーで切削し、この切削後、SOB3の端面を目標仕上がり位置まで研磨する。この構成により、SOB3の端面4が、ダイサーで切削された端面よりも加工精度の良い面になる。このため、光学的に接続されるLDアレイ2の複数の半導体導波路8と平面光波回路5の複数の光導波路9との結合損失のばらつきΔCを小さく抑えることができ、光集積回路モジュール1を作製する際の歩留まりを向上することができる。
【0049】
また、この作製方法により、SOB3の端面4は、ダイサーで切削された表面粗さよりも小さい表面粗さに研磨された面であるため、SOB3の端面4とPLC6の端面7とを突き合わせて、UV硬化接着剤を用いた接着により光学ベンチと光導波路素子を結合する際に、接着の信頼性が向上する。さらに、この作製方法により、研磨されたSOB3の端面4に塗布したUV硬化接着剤にチッピングが起きにくく、傷やクラックの発生を抑制できるので、この点でも接着の信頼性が向上する。
【0050】
(第2実施形態)
次に、図1に示す光集積回路モジュール1に用いる第2実施形態に係る光学ベンチを図5に基づいて説明する。
【0051】
本実施形態に係る光学ベンチでは、図3に示す左右の研磨用マーカー20,21のうち、左側の研磨用マーカー20に対応する左側の研磨用マーカー20Aは、図5に示すように、平面視で、矩形状或いは線状の複数の部材40が図3の矢印25で示す研磨方向に一定の間隔ずつずれて配置された集合体である。同様に、研磨用マーカー20,21のうち、右側の研磨用マーカー21に対応する右側の研磨用マーカー(図示省略)も、平面視で、複数の矩形状或いは線状の部材が研磨方向に一定の間隔ずつずれて配置された集合体である。
【0052】
第2実施形態に係る光学ベンチによれば、研磨用マーカー20Aである複数の部材40の集合体を顕微鏡等で視認して、複数の部材40のうち、どの部材40までダイサーで切削されているかを確認することで、SOB3の端面から目標仕上がり位置までの残り寸法を知ることができる。この残り寸法の大きさに応じて、研磨に用いる砥粒の大きさや研磨速度を決めることができるので、研磨によるSOB3の端面の加工精度が向上すると共に、加工時間を短縮することができる。
【0053】
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
・上記各実施形態では、半導体導波路素子としてLDアレイ2を用いているが、「半導体導波路素子」には、半導体レーザダイオード以外に、半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier:SOA)、半導体の電界吸収効果を用いた電界吸収型(Elcctro Absorption: EA)変調器、半導体受光素子などが含まれる。
【0054】
・上記各実施形態では、半導体導波路素子としてLDアレイ2を用いた光集積回路モジュールについて説明したが、半導体導波路素子として一つの半導体レーザダイオード、或いは一つの半導体光増幅器、一つの電界吸収型(Elcctro Absorption: EA)変調器、或いは一つの半導体受光素子を用いた構成の光集積回路モジュール、この光集積回路モジュールに用いる光学ベンチ、および光集積回路モジュールの作製方法にも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第1実施形態に係る光集積回路モジュールの概略構成を示す側面図。
【図2】図1に示す光集積回路モジュールにおける端面距離Zの誤差ΔZと結合損失CのばらつきΔCの関係を示すグラフ。
【図3】第1実施形態に係る光学ベンチであるSOBを示す平面図。
【図4】(A)は図3に示す左側の研磨用マーカーを示す拡大図、(B)は図3に示す右側の研磨用マーカーを示す拡大図。
【図5】第2実施形態に係る光学ベンチであるSOBの左側の研磨用マーカーを示す拡大図。
【符号の説明】
【0056】
1:光集積回路モジュール
2:半導体レーザダイオードアレイ(LDアレイ)
3:光学ベンチとしてのSOB(シリコンオプチカルベンチ)
3a:表面
4:SOBの端面
5:平面光波回路
6:光導波路素子としてのPLC
7:PLCの端面
8:半導体導波路
9:光導波路
10:LDアレイの端面
20,21:研磨用マーカー
22,23:配線パターン
24:ハンダ膜
30:目標仕上がり位置を示す研磨目標線
40:矩形状或いは線状の部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体導波路素子が実装された光学ベンチの端面と平面光波回路が形成された光導波路素子の端面とを突き合わせて、半導体導波路素子の半導体導波路と平面光波回路の光導波路を光学的に接続した光集積回路モジュールであって、
前記光学ベンチの端面は、ダイサーで切削された表面粗さよりも小さい表面粗さに研磨された面であることを特徴とする光集積回路モジュール。
【請求項2】
半導体導波路素子が実装された光学ベンチの端面と平面光波回路が形成された光導波路素子の端面とを突き合わせて、半導体導波路素子の半導体導波路と平面光波回路の光導波路を光学的に接続した光集積回路モジュールに用いる光学ベンチであって、
前記半導体導波路素子が実装される表面に、前記光学ベンチの端面から目標仕上がり位置までの残り寸法を視認して確認するための研磨用マーカーが形成されていることを特徴とする光学ベンチ。
【請求項3】
前記研磨用マーカーは、平面視で、研磨方向に一定の間隔ずつずれた複数の段が連続した階段状の部材であることを特徴とする請求項2に記載の光学ベンチ。
【請求項4】
前記研磨用マーカーは、平面視で、矩形状或いは線状の複数の部材が研磨方向に一定の間隔ずつずれて配置された集合体であることを特徴とする請求項2に記載の光学ベンチ。
【請求項5】
前記研磨用マーカーは、前記半導体導波路素子が実装される位置の左右両側に形成されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一つに記載の光学ベンチ。
【請求項6】
前記半導体導波路素子が実装される表面には、前記半導体導波路素子と電子素子の間で電気信号を伝送するための伝送路である配線パターンと、前記半導体導波路素子が実装されるハンダ膜とが設けられていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一つに記載の光学ベンチ。
【請求項7】
半導体導波路素子が実装された光学ベンチの端面と平面光波回路が形成された光導波路素子の端面とを突き合わせて、半導体導波路素子と平面光波回路の光導波路を光学的に接続した光集積回路モジュールの作製方法であって、
前記光学ベンチの端面をダイサーで切削し、
前記切削の後、切削された前記光学ベンチの端面を目標仕上がり位置まで研磨することを特徴とする光集積回路モジュールの作製方法。
【請求項8】
前記光学ベンチの端面をダイサーで切削した後、切削された前記光学ベンチの端面から目標仕上がり位置までの残り寸法を、前記半導体導波路素子が実装される前記光学ベンチの表面に形成された研磨用マーカーを視認して把握し、
その後、把握した前記残り寸法だけ前記光学ベンチの端面を研磨することを特徴とする請求項7に記載の光集積回路モジュールの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−237326(P2009−237326A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84061(P2008−84061)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】