光電変換基板、放射線検出器、放射線画像撮影装置、及び放射線検出器の製造方法
【課題】光電変換素子の静電破壊を防止することができる、光電変換基板、放射線検出器、放射線画像撮影装置、及び放射線検出器の製造方法を提供する。
【解決手段】基板1上に形成されたTFTスイッチ4及びセンサ部103の上面が平坦化層18により平坦化されており、当該平坦化層18の略全面に帯電防止機能を有する導電膜30が形成されている。導電膜30は、グランド配線32及びグランド接続端子34と一体的に形成されており、グランド接続端子34を介してグランドに接続可能に構成されている。また、光電変換基板60(導電膜30)の上には、シンチレータ70が形成されており、シンチレータ70は、光電変換基板60に近い方から非柱状部71及び柱状部72を備えている。導電膜30をグランド接続端子34を介してグランドに接続した状態で、光電変換基板60の表面に表面処理を施す。
【解決手段】基板1上に形成されたTFTスイッチ4及びセンサ部103の上面が平坦化層18により平坦化されており、当該平坦化層18の略全面に帯電防止機能を有する導電膜30が形成されている。導電膜30は、グランド配線32及びグランド接続端子34と一体的に形成されており、グランド接続端子34を介してグランドに接続可能に構成されている。また、光電変換基板60(導電膜30)の上には、シンチレータ70が形成されており、シンチレータ70は、光電変換基板60に近い方から非柱状部71及び柱状部72を備えている。導電膜30をグランド接続端子34を介してグランドに接続した状態で、光電変換基板60の表面に表面処理を施す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換基板、放射線検出器、放射線画像撮影装置、及び放射線検出器の製造方法に係り、特に、放射線画像の撮影等に用いられる光電変換基板、放射線検出器、放射線画像撮影装置、及び放射線検出器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線画像の撮影を行うための放射線画像撮影装置として、放射線照射装置から照射され、被写体を透過した放射線を放射線検出器により検出する放射線画像撮影装置が知られている。このような放射線画像撮影装置の放射線検出器として、照射された放射線を光に変換する蛍光体等のシンチレータと、シンチレータにより変換された光が照射されることにより電荷を発生する光電変換素子及び当該光電変換素子で発生した電荷を読み出すスイッチング素子を各々備えた画素により構成される光電変換基板と、を備えたものが知られている。
【0003】
このような放射線検出器は、光電変換基板上にシンチレータが設けられるため、光電変換基板とシンチレータとの密着性を向上させるための技術が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、光電変換素子を保護する保護層と、シンチレータとの間に、熱伝導率が高くシンチレータとの接合力が強い金属層又は金属化合物層の分離防止層を設けることにより、保護層とシンチレータとを分離しにくくする技術が記載されている。
【0005】
また、光電変換基板の表面に、密着性を向上させるためのプラズマ処理等の表面処理を行うことが一般的に行われている。例えば、特許文献2には、光電変換素子を備えたセンサパネル上に配された蛍光体下地層の表面を大気圧プラズマ処理し、当該蛍光体下地層表面上に蛍光体層を形成することにより、蛍光体層の密着不良による剥がれを防止する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−74846号公報
【特許文献2】特開2004−325442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光電変換基板の表面に上述のように表面処理を行う際に、光電変換基板の表面が帯電することにより、光電変換素子の静電破壊が引き起こされる場合がある。例えば、表面処理として、大気圧中でプラズマ処理を行う場合は、空気があるため帯電しづらく、静電破壊を引き起す恐れが少ないが、真空中でプラズマ処理を行う場合、帯電による静電破壊を引き起こす恐れが大きい。
【0008】
また、表面処理を行う際だけではなく、光電変換基板の表面が帯電してしまうと、同様に静電破壊が引き起こされる場合がある。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するために成されたものであり、光電変換素子の静電破壊を防止することができる、光電変換基板、放射線検出器、放射線画像撮影装置、及び放射線検出器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明の光電変換基板は、基板上に形成されたスイッチング素子、及び前記スイッチング素子により照射された光に応じて発生した電荷が読み出される光電変換素子を含むセンサ部、を各々備えた複数の画素と、前記スイッチング素子及び前記センサ部が設けられた前記基板の表面を平坦化する平坦化層と、前記平坦化層上の全面に形成された帯電防止膜と、前記帯電防止膜をグランドに接続するための接続部と、を備える。
【0011】
一般に、光電変換基板では、その表面にシンチレータ等の発光層を形成し、放射線検出器を製造する際に、発光層との密着性を向上させるために、発光層と密着させる表面に対して、プラズマ処理等の表面処理が行われる。当該表面処理の際に、特に真空プラズマ処理の際に、表面処理を施している光電変換基板の表面が帯電し、蓄積された電荷により、スイッチング素子等の静電破壊を引き起こす場合がある。
【0012】
本発明の光電変換基板は、スイッチング素子及びセンサ部が設けられた前記基板の表面を平坦化する平坦化層と、平坦化層上の全面に形成された帯電防止膜と、帯電防止膜をグランドに接続するための接続部と、を備えているため、上述のように表面処理を行う場合、接続部を介して帯電防止膜をグランドに接続することにより、表面に蓄積された電荷がグランドに流れるため、光電変換基板の表面の帯電が防止される。従って、光電変換素子の静電破壊を防止することができる。また、上述の表面処理を行う場合のみならず、当該接続部を介して帯電防止膜をグランドに接続することにより、外部からのノイズ(電磁波等)の影響を低減することができる。
【0013】
また、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記帯電防止膜は、照射された光の予め定められた長波長成分を吸収することが好ましい。
【0014】
一般に長波長成分は、短波長成分よりも屈折しづらく、隣接する画素に斜入光が入射する可能性が高い。このように隣接する画素に斜入光が入射すると、放射線画像に画像ボケが生じる要因となる。これに対して本発明では、帯電防止膜で照射された光の予め定められた長波長成分(例えば赤色光)を吸収することにより、当該長波長成分が隣接する画素に入射するのを抑制することができる。
【0015】
また、本発明は、請求項3に記載の発明のように、前記光電変換素子は、キナクリドンより成る有機光電変換素子であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、請求項4に記載の発明のように、前記帯電防止膜は、光透過性を有することが好ましい。
【0017】
また、本発明は、請求項5に記載の発明のように、前記接続部を介して、前記帯電防止膜がグランドに接続されていることが好ましい。
【0018】
請求項6に記載の放射線検出器は、前記請求項1から前記請求項5のいずれか1項に記載の前記光電変換基板と、前記光電変換基板の前記帯電防止膜上に設けられ、かつ、照射された放射線の線量に応じて発光する発光層と、を備える。
【0019】
請求項7に記載の放射線検出器は、前記発光層は、アルカリハライド系柱状結晶より成ることが好ましい。
【0020】
請求項8に記載の放射線画像撮影装置は、前記請求項6または前記請求項7に記載の放射線検出器と、放射線の照射に応じて前記放射線検出器で発生した電荷を読み出して、放射線画像を撮影する撮影手段と、を備える。
【0021】
請求項9に記載の放射線検出器の製造方法は、前記請求項1から前記請求項5のいずれか1項に記載の光電変換基板の帯電防止膜を接続部を介してグランドに接続する工程と、前記帯電防止膜がグランドに接続された状態で、前記光電変換基板の前記帯電防止膜が設けられた表面に表面処理する工程と、前記表面処理が成された前記光電変換基板の前記帯電防止膜上に発光層を形成する工程と、を備える。
【0022】
また、本発明は、請求項10に記載の発明のように、前記発光層を形成する工程は、前記帯電防止膜がグランドに接続された状態で行われることが好ましい。
【0023】
また、本発明は、請求項11に記載の発明のように、前記発光層は、前記光電変換基板上に発光層を蒸着することにより形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明によれば、光電変換素子の静電破壊を防止することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施の形態に係る放射線画像撮影装置の全体構成の一例を示す構成図である。
【図2】本実施の形態に係るシンチレータの一例を示す概略構成図である。
【図3】本実施の形態に係る光電変換基板上の放射線検出器の1画素単位の構造の一例を示す平面図である。
【図4】図3に示した放射線検出器のA−A線断面図である。
【図5】図3に示した放射線検出器のB−B線断面図である。
【図6】CsI(Tl)の発光特性及びキナクリドンの吸収波長範囲を示すグラフである。
【図7】本実施の形態に係る放射線検出器に入射する短波長成分を説明するための説明図である。
【図8】本実施の形態に係る放射線検出器に入射する長波長成分を説明するための説明図である。
【図9】ITOの屈折率を示すグラフである。
【図10】本実施の形態に係る放射線検出器の製造工程を説明するための説明図(断面図)である。
【図11】本実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の図10に示した工程の次の工程を説明するための説明図(断面図)である。
【図12】本実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の図11に示した工程の次の工程を説明するための説明図(断面図)である。
【図13】本実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の図12に示した工程の次の工程を説明するための説明図(断面図)である。
【図14】本実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の図13に示した工程の次の工程を説明するための説明図(断面図)である。
【図15】本実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の図14に示した工程の次の工程を説明するための説明図(断面図)である。
【図16】本実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の図15に示した工程の次の工程を説明するための説明図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、各図面を参照して本実施の形態の一例について説明する。
【0027】
本実施の形態の光電変換基板を備えた放射線検出器を用いた放射線画像撮影装置の概略構成について説明する。図1は、本実施の形態の光電変換基板を備えた放射線検出器を用いた放射線画像撮影装置の全体構成の一例を示す全体構成図である。なお、図1では、シンチレータ70(詳細後述)の記載が省略されている。
【0028】
本実施の形態に係る放射線画像撮影装置100は、間接変換方式の放射線検出器10と、走査配線駆動装置104と、信号検出回路105と、制御装置106と、を備えている。本実施の形態の放射線検出器10は、光電変換基板60及びシンチレータ70を備えている。
【0029】
まず、シンチレータ70について説明する。本実施の形態のシンチレータ70の一例の概略構成図を図2に示す。シンチレータ70は、照射された放射線を光に変換して、光を出射する。すなわち、本実施の形態のシンチレータ70は、照射された放射線の線量に応じて発光する機能を有している。
【0030】
シンチレータ70には、例えば、CsI(Tl)、GOS(Gd2O2S:Tb)、NaI:Tl(タリウム賦活ヨウ化ナトリウム)、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)からなる結晶を用いることができるが、シンチレータ70は、これらの材料からなるものに限られるものではない。なお、これらのなかでも、発光スペクトルがa−Siフォトダイオードの分光感度の極大値(550nm付近)と適合する点、及び、湿度による経時的な劣化が生じがたいという点で、CsI(Tl)を用いてなるものが好ましい。
【0031】
また、シンチレータ70が発する光の波長域は、可視光域(波長360nm〜830nm)であることが好ましく、放射線画像検出器100によってモノクロ撮像を可能とするためには、緑色の波長域(495nm〜570nm)を含んでいることがより好ましい。
【0032】
シンチレータ70に用いる蛍光体としては、具体的には、放射線としてX線を用いて撮像する場合、ヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましく、X線照射時の発光スペクトルが、例えば、420nm〜700nmにあるCsI(Tl)を用いることが特に好ましい。なお、CsI(Tl)の可視光域における発光ピーク波長は565nmである。
【0033】
また発光効率等の観点から、柱状結晶、特にアルカリハライド系柱状結晶からなることが好ましい。本実施の形態では、具体的一例として、CsI(Tl)の柱状結晶からなるシンチレータ70を用いている。図2に示した本実施の形態のシンチレータ70は、CsI(Tl)の非柱状結晶から成る非柱状部71と、柱状結晶から成る柱状部72とにより構成されている。なお、非柱状部71側が、光電変換基板60側にあたる(図4、図5参照)。
【0034】
柱状部72においては、各柱状結晶内で光が発生し、効率よい発光が得られるとともに、柱状結晶の間隙が光のガイドとなって光拡散を抑制することで放射線画像のボケが抑制される。さらに、深部まで到達した光も、非柱状結晶からなる非柱状部71において反射され、発光の検出効率が向上するとともに、光電変換基板60との密着性が向上する。
図2に示すように、シンチレータ70の柱状部72の厚みをt1とし、非柱状部71の厚みをt2としたとき、t1とt2との関係が下記(1)式を満たすことが好ましい。
【0035】
0.01≦(t2/t1)≦0.25 ・・・(1)
【0036】
柱状部72の厚みt1と非柱状部71領域の厚みt2とが上記(1)式を満たすことで、シンチレータ70の厚さ方向における発光効率、光の拡散防止及び光が反射される領域が好適な範囲となり、光の発光効率、光の検出効率と画像の解像度がより向上する。非柱状部71の厚みt2が厚すぎる場合には、発光効率の低い領域が増え、感度の低下が懸念される。そのような観点から、(t2/t1)は0.02以上0.1以下の範囲であることがより好ましい。
【0037】
また、非柱状部71の非柱状結晶の結晶径は0.2μm以上7.0μm以下であることが、効率的な反射を与える観点から好ましく、1.0μm以上6.0μm以下であることがより好ましい。また、非柱状結晶の結晶形状は、反射効率の観点から、略球状であることが好ましく、非柱状部71は、球状に近い結晶(略球状結晶)の集合体で構成されることが好ましい。
【0038】
次に、本実施の形態の光電変換基板60について説明する。図1に示すように、本実施の形態の光電変換基板60には、後述する上部電極、半導体層、及び下部電極を備え、照射された放射線をシンチレータ70で変換した光を受けて電荷を蓄積するセンサ部103と、センサ部103に蓄積された電荷を読み出すためのTFTスイッチ4と、を含んで構成される画素20が2次元状(マトリックス状)に複数設けられている。
【0039】
画素20は、一方向(図1の横方向、以下「行方向」ともいう)及び当該行方向に対する交差方向(図1の縦方向、以下「列方向」ともいう)にマトリクス状に複数配置されている。図1では、画素20の配列を簡略化して示しているが、例えば、画素20は行方向及び列方向に1024×1024個配置されている。以下では、画素20が形成されている光電変換基板60の領域を画素領域20Aという。
【0040】
また、光電変換基板60には、上記TFTスイッチ4をON/OFFするための複数の走査配線101と、上記センサ部103に蓄積された電荷を読み出すための複数の信号配線3と、が互いに交差して設けられている。
【0041】
各信号配線3には、当該信号配線3に接続された何れかの画素20のTFTスイッチ4がONされることによりセンサ部103に蓄積された電荷量に応じた電気信号が流れる。各信号配線3には、各信号配線3に流れ出した電気信号を検出する信号検出回路105が接続されており、各走査配線101には、各走査配線101にTFTスイッチ4をON/OFFするためのスキャン信号を出力するスキャン信号制御装置104が接続されている。
【0042】
信号検出回路105は、各信号配線3毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路(図示省略)を内蔵している。信号検出回路105では、各信号配線3より入力される電気信号を増幅回路により増幅して検出することにより、放射線画像を構成する各画素20の情報として、各センサ部103に蓄積された電荷量を検出する。ここで電気信号の「検出」とは、電気信号をサンプリングすることを表している。
【0043】
この信号検出回路105及びスキャン信号制御装置104には、信号検出回路105において検出された電気信号に所定の処理を施すとともに、信号検出回路105に対して信号検出のタイミングを示す制御信号を出力し、スキャン信号制御装置104に対してスキャン信号の出力のタイミングを示す制御信号を出力する制御装置106が接続されている。
【0044】
次に、図3〜図5を参照して、本実施の形態に係る光電変換基板60についてさらに詳細に説明する。なお、図3には、本実施の形態に係る光電変換基板60上の放射線検出器の1画素単位の構造を示す平面図が示されており、図4には、図3のA−A線断面図が示されており、図5には、図3のB−B線断面図が示されている。
【0045】
図4及び図5に示すように、本実施の形態の放射線検出器は、無アルカリガラス等からなる絶縁性の基板1上に、走査配線101、ゲート電極2が形成されており、走査配線101とゲート電極2は接続されている(図3参照。)。走査配線101及びゲート電極2が形成された配線層(以下、この配線層を「第1信号配線層」ともいう。)は、Al若しくはCu、またはAl若しくはCuを主体とした積層膜を用いて形成されているが、これらに限定されるものではない。
【0046】
この走査配線101及びゲート電極2上には、走査配線101及びゲート電極2を覆い一面に絶縁膜15が形成されており、ゲート電極2上に位置する部位がTFTスイッチ4におけるゲート絶縁膜として作用する。この絶縁膜15は、例えば、SiNX 等からなっており、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)成膜により形成される。
【0047】
絶縁膜15上のゲート電極2上には、半導体活性層8が島状に形成されている。この半導体活性層8は、TFTスイッチ4のチャネル部であり、例えば、アモルファスシリコン膜からなる。
【0048】
これらの上層には、ソース電極9、及びドレイン電極13が形成されている。このソース電極9及びドレイン電極13が形成された配線層には、ソース電極9、ドレイン電極13とともに、信号配線3、及び当該信号配線3と並行に共通電極配線25が形成されている。ソース電極9は信号配線3に接続されている。信号配線3、ソース電極9、及び共通電極配線25が形成された配線層(以下、この配線層を「第2信号配線層」ともいう。)は、Al若しくはCu、またはAl若しくはCuを主体とした積層膜が用いて形成されるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
このソース電極9及びドレイン電極13と半導体活性層8との間にはコンタクト層(図示省略)が形成されている。このコンタクト層は、不純物添加アモルファスシリコン等の不純物添加半導体からなる。これらによりスイッチング用のTFTスイッチ4が構成される。
【0050】
そして、これら半導体活性層8、ソース電極9、ドレイン電極13、信号配線3、及び共通電極配線25を覆い、基板1上の画素20が設けられた画素領域20Aのほぼ全面(ほぼ全領域)には、TFT保護膜層11が形成されている。このTFT保護膜層11は、例えば、SiNX 等からなっており、例えば、CVD成膜により形成される。
【0051】
このTFT保護膜層11上には、塗布型の層間絶縁膜12が形成されている。この層間絶縁膜12は、低誘電率(比誘電率εr=2〜4)の感光性の有機材料(例えば、ポジ型感光性アクリル系樹脂:メタクリル酸とグリシジルメタクリレートとの共重合体からなるベースポリマーに、ナフトキノンジアジド系ポジ型感光剤を混合した材料等)により1〜4μmの膜厚で形成されている。本実施の形態に係る放射線検出器10では、この層間絶縁膜12によって層間絶縁膜12上層と下層に配置される金属間の容量を低く抑えている。また、一般的にこのような材料は平坦化膜としての機能も有しており、下層の段差が平坦化される効果も有する。これにより、上層に配置される半導体層6の形状が平坦化されるため、半導体層6の凹凸による吸収効率の低下や、リーク電流の増加を抑制することができる。この層間絶縁膜12及びTFT保護膜層11には、ドレイン電極13と対向する位置、及び走査配線101が形成された領域の照射面側の位置に各々コンタクトホール16、及びコンタクトホール22Aが形成されている。
【0052】
層間絶縁膜12上には、コンタクトホール16を埋めつつ、画素領域20Aを覆うようにセンサ部103の下部電極14が形成されており、この下部電極14は、TFTスイッチ4のドレイン電極13と接続されている。この下部電極14は、後述する半導体層6が1μm前後と厚い場合には導電性があれば材料に制限がほとんどない。このため、Al系材料、ITO(酸化スズインジウム)など導電性の金属を用いて形成すれば問題ない。
【0053】
一方、半導体層6の膜厚が薄い場合(0.2〜0.5μm前後)、半導体層6での光の吸収が十分でないため、TFTスイッチ4への光照射によるリーク電流の増加を防ぐため、遮光性メタルを主体とする合金、もしくは積層膜とすることが好ましい。
【0054】
下部電極14上には、フォトダイオード(光電変換素子)として機能する半導体層6が形成されている。本実施の形態では、半導体層6として、PIN構造のフォトダイオードを採用しており、下層からn+層、i層、p+層を順に積層して形成する。
【0055】
なお、半導体層6は、有機光電変換素子とすることが好ましい。有機光電変換素子としては、シンチレータ70で発光した光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ70の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ70の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ70から発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ70の放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0056】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えば、キナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。図6に示すように、CsI(Tl)は、発光ピーク波長が565nmであるが、発光した光に幅広い波長域(400nm〜700nm)の光が含まれる。一方、キナクリドンは、430nm〜620nmの波長域の光に対して感度を有する。キナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ70の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜4で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。そのため、半導体層6には、キナクリドンよりなる有機光電変換材料を用いることがより好ましい。
【0057】
なお、本実施の形態では、下部電極14を半導体層6よりも大きくしている。なお、半導体層6の膜厚が薄い場合(例えば、0.5μm以下の場合)には、TFTスイッチ4への光入射を防ぐ目的で、遮光性金属を配置してTFTスイッチ4を覆うことが好ましい。
【0058】
好ましくは、デバイス内部の光の乱反射によるTFTスイッチ4への光進入を抑制するため、TFTスイッチ4のチャネル部から遮光性金属からなる下部電極14の端部への間隔を5μm以上確保している。
【0059】
層間絶縁膜12及び半導体層6上には、各半導体層6部分で開口を持つように保護絶縁膜17が形成されている。そして、半導体層6及び保護絶縁膜17上には、少なくとも保護絶縁膜17の開口部を覆うように上部電極7が形成されている。この上部電極7には、例えば、ITOやIZO(酸化亜鉛インジウム)等の光透過性の高い材料を用いている。本実施の形態では、上部電極7は、下層に配置された、上部電極7にバイアス電圧を供給するための共通電極配線25と接続する導電部材も兼ねている。図5に示すように、共通電極配線25は、第1の層間絶縁膜12に設けられたコンタクトホール22Aを介して下部電極14の層に形成されたコンタクトパッド24と接続され、さらに保護絶縁膜17に設けられたコンタクトホール22B上を上部電極7で覆うことで、上部電極7と共通電極配線25とが電気的に接続されている。なお、上部電極7と、共通電極配線25に接続する導電部材とは別層の金属で形成してもかまわない。
【0060】
また、上部電極7及び保護絶縁膜17上には、表面を平坦化するための平坦化層18が形成されている。平坦化層18は、絶縁層であり、例えば、SiNX 等よりなっており、1μm〜10μmの厚みを有している。さらに、平坦化された平坦化層18の上には、導電膜30が形成されている。本実施の形態の導電膜30は、帯電防止機能を有しており、特に、光電変換基板60上にシンチレータ70を形成する場合に光電変換基板60(導電膜30)の表面に表面処理を施す際等にグランドと接続することにより、光電変換基板60(導電膜30)の表面が帯電するのを防止する機能を有している。光電変換基板60(導電膜30)の表面が帯電すると、光電変換基板60のセンサ部103が静電破壊を引き起こす場合がある。そのため、本実施の形態の導電膜30は、平坦化層18の全面(略全面も含む)、本実施の形態では画素領域20Aの全面にわたり、形成されている。導電膜30の材質としては、ITOや有機導電性ポリマーフィルム等が挙げられる。導電膜30の膜厚及び抵抗値は、帯電防止機能の観点から定められる。具体的一例としては、膜厚は数十nm〜数百nm、抵抗値は1010Ω以下が挙げられる。
【0061】
本実施の形態の導電膜30は、上述のように帯電防止の機能のため、グランド配線32を介してグランド接続端子34に接続されている。当該グランド接続端子34は、グランドに接続するためのものである。なお、グランド接続端子34は、グランド配線32をグランドに接続する機能を有していればその構成、形状は特に限定されるものではなく、パッドや電極等であってもよい。本実施の形態のグランド接続端子34は、画素領域20Aの外部、かつ基板1の端部領域に設けられている。なお、本実施の形態では、グランド配線32及びグランド接続端子34は、導電膜30と一体的に形成される。
【0062】
また、本実施の形態の導電膜30は、シンチレータ70の発光波長の長波長成分の一部を吸収する機能を有している。光電変換基板60(導電膜30)に斜入光が入射すると、隣の画素20で受光され易い。図7に示すように、短波長成分(例えば、青色光や緑色光)は、屈折しやすいため、隣接する画素20のセンサ部103で受光されないが、図8に示すように、長波長成分(例えば、赤色光)は、屈折し難いため、隣接する画素20のセンサ部103で受光され易く、画像ボケが生じる場合がある。
【0063】
また、図9に導電膜30の具体的一例であるITOの屈折率を示すが、シンチレータ70の具体的一例である、CsIの発光域においては、ITOの屈折率はCsIの屈折率(1.77)と殆ど変わらない。CsIの発光のピーク波長は550nmであり、このときのITOの屈折率は〜1.75なので、略同一とみなせる。従って、斜入光でもピーク波長域では、材料差による屈折は生じずに進むことになる。本実施の形態の導電膜30は、このような斜入光となる長波長成分をカットする機能を有している。そのため、本実施の形態の導電膜30では、長波長成分をカットするための着色剤を混入している。具体的一例としては、図6に示したキナクリドンの吸収波長領域外の長波長成分(赤色光:波長620nm〜750nm)をカットする場合は、シアン系の着色剤を混入すればよい。無機青色顔料としては、ウルトラマリン青、及びプロシア青(フェロシアン化鉄カリ)等が挙げられる。また、有機青色顔料としては、フタロシアニン、アントラキノン、インジゴイド、及びカルボニウム等が挙げられる。なお、放射線検出器10をISS方式(表面読取方式)とする場合、無機着色剤は、有機着色剤よりも原子番号が大きく放射線を吸収しやすいため、シンチレータ70により多くの放射線を到達させるためには、有機着色剤の方が好ましい。
【0064】
なお、赤色光は、少しでも吸収することが好ましい。画素20のサイズが小さい(例えば、100μm以下)場合、より隣の画素20で斜入光が受光され易くなる危険性が高まるため、着色剤の混入量を増加させて赤色光の吸収率を向上させることが好ましい。そのため、画素20のサイズ等に応じて、着色剤の混入量を定めるようにすることが好ましい。
【0065】
また、着色剤としては、顔料、染料等が挙げられる。なお、顔料は樹脂中に粒子として存在し、一方、染料は樹脂に溶融して存在する。
なお、長波長成分をよりカットするために、平坦化層18にも上述の着色剤を混入するようにしてもよい。
【0066】
次に、本実施形態に係る放射線検出器10の製造工程の一例を説明する。
【0067】
まず、図10に示すように、基板1上に、第1信号配線層として、ゲート電極2、走査配線101を形成する。この第1信号配線層は、Al、Al合金等の低抵抗金属、もしくは高融点金属からなるバリアメタル層との積層膜からなり、膜厚が100〜300nm前後でスパッタリング法にて基板1上に堆積される。その後、フォトリソグラフィー技術にてレジスト膜のパターンニングを行う。その後、Al用のエッチャントによるウェットエッチ法か、ドライエッチ法にて金属膜をパターンニングする。その後、レジストを除去することにより第1信号配線層が完成する。次に、第1信号配線層上に、絶縁膜15、半導体活性層8、コンタクト層(図示省略)を順次堆積する。絶縁膜15はSiNxからなり膜厚は200〜600nm、半導体活性層8はアモルファスシリコンからなり膜厚20〜200nm前後、コンタクト層は不純物添加アモルファスシリコンからなり膜厚10〜100nm前後で、P−CVD(Plasma−Chemical Vapor Deposition)法にて堆積する。その後、第1信号配線層と同様に、フォトリソグラフィー技術によりレジストのパターンニングを行う。その後、半導体活性層8と不純物添加半導体によるコンタクト層を絶縁膜15に対し選択的にドライエッチングすることにより半導体活性領域を形成する。次に、絶縁膜15、及び半導体活性層8の上層に、第2信号配線層として、信号配線3、ソース電極9、ドレイン電極13、共通電極配線25を形成する。この第2信号配線層は、第1信号配線層と同様に、Al、Al合金等の低抵抗金属、もしくは高融点金属からなるバリアメタル層との積層膜、またはMo等の高融点金属膜単層からなり、膜厚が100〜300nm前後である。第1信号配線層と同様に、フォトリソグラフィー技術にてパターンニングを行い、Al用のエッチャントによるウェットエッチ法か、ドライエッチ法にて金属膜をパターンニングする。その際、選択的にエッチング法を採用することにより絶縁膜15は除去されない。ドライエッチ法にて、コンタクト層と半導体活性層8の一部を除去しチャネル領域を形成する。
【0068】
次に、図11に示すように、上記のように形成された層の上層に、TFT保護膜層11及び層間絶縁膜12を順次形成する。TFT保護膜層11及び層間絶縁膜12は無機材料単体の場合や、無機材料からなる保護絶縁膜と有機系材料からなる層間絶縁膜の積層により形成する場合や、有機系からなる層間絶縁膜単層により形成する場合がある。本実施の形態では、下層の共通電極配線25と下部電極14間との静電容量を抑制する一方で、TFTスイッチ4の特性を安定させるため感光性の層間絶縁膜12と無機材料からなるTFT保護膜層11の積層構造としており、例えば、CVD成膜によりTFT保護膜層11を形成し、塗布系材料である感光性の層間絶縁膜12材料を塗布、プリベーク後、露光、現像のステップを通過後、焼成を行なって各層を形成する。次に、フォトリソグラフィー技術によりTFT保護膜層11をパターンニングする。なお、TFT保護膜11を配置しない場合には、このステップは必要ない。
【0069】
次に、図12に示すように、上記の層の上層にAl系材料もしくはITO等の金属材料をスパッタリング法により堆積する。膜厚は20〜200nm前後である。フォトリソグラフィー技術にてパターンニングを行い、メタル用のエッチャント等によるウェットエッチ法か、ドライエッチ法にてパターンニングして下部電極14を形成する。次に、半導体層6を形成する。半導体層6が有機光電変換材料である場合は、例えば、CVD法により形成すればよい。膜厚は30nm以上、300nm以下が好ましく、より好ましくは、50nm以上、250nm以下、特に好ましくは80nm以上、200nm以下である。また、無機光電変換材料である場合は、CVD法で下層より順にn+、i、p+の各層を堆積して半導体層6を形成する。膜厚は、例えばそれぞれn+層50〜500nm、i層0.2〜2μm、p+層50〜500nmである。半導体層6は各層を順に積層してフォトリソグラフィー技術により、半導体層6をパターンニングし、ドライエッチ、もしくはウェットエッチによる下層の層間絶縁膜12との選択エッチすることにより完成する。なお、n+、i、p+の順で積層するのではなく、p+、i、n+の順で積層し、PINダイオードとしてもかまわない。
【0070】
次に、図13に示すように、CVD法等で、半導体層6を覆うようにSiNx膜からなる保護絶縁膜17を堆積する。膜厚は100〜300nm前後である。フォトリソグラフィー技術にてパターンニングを行い、ドライエッチ法にてパターンニングし、開口部を形成する。ここでは、一例としてCVD成膜のSiNxを記載したが、絶縁材料であれば適用でき、SiNxに限定するものではない。次に、上部電極7及び共通電極配線25との接続部位を形成する。上部電極7及び共通電極配線25との接続部位は上記のようにして形成された層の上層に、ITO等の透明電極材料をスパッタリング法により堆積する。膜厚は20〜200nm前後である。フォトリソグラフィー技術にてパターンニングを行い、ITO用のエッチャント等によるウェットエッチ法か、ドライエッチ法にて上部電極7をパターンニングする。その際、選択的にエッチングを採用することにより、下層の保護絶縁膜17はダメージを受けない。
【0071】
次に、図14に示すように、CVD法等で、上部電極7及び保護絶縁膜17を覆うようにSiNx膜からなる平坦化層18を堆積し、半導体層6等により生じている表面の凹凸を平坦化する。ここでは、一例としてCVD成膜のSiNxを記載したが、絶縁材料であれば適用でき、SiNxに限定するものではない。さらに、平坦化層18上の導電膜30と、グランド配線32及びグランド接続端子34とを、ITO等の透明導電材料を用いてスパッタリング法により形成する。★導電膜30の膜厚は、数十nm〜数百nm以下、導抵抗値は1010Ω以下が好ましい。なお、導電膜30の上に、さらに、保護膜等を設けてもよい。このようにして、光電変換基板60が形成される。
【0072】
光電変換基板60が形成されると、次の工程では、図15に示すように、グランド接続端子34をグランドに接続した状態、すなわち、導電膜30をグランド接続端子34を介してグランドに接続した状態で、光電変換基板60(導電膜30)の表面に、シンチレータ70の密着性を向上させるための前処理として、表面処理を施す。表面処理としては、例えば、真空プラズマ処理や大気圧プラズマ処理、及びコロナ放電処理等が挙げられる。このように表面処理を行う際、導電膜30をグランド接続端子34を介してグランドに接続しておくことにより、表面処理によって導電膜30の表面に生じた電荷がグランドに流れるため、導電膜30が帯電するのを防止することができる。従って、光電変換基板60のセンサ部103の静電破壊を防止することができる。なお、表面処理としては、シンチレータ70との密着性をより向上させられることから、真空プラズマ処理を行うことが好ましい。
【0073】
次に、図16に示すように、表面処理を施した光電変換基板60の導電膜30上に、シンチレータ70を形成する。本実施の形態では、光電変換基板60(導電膜30)上に、真空蒸着等を用いて気相堆積法により、直接CsI(Tl)より成るシンチレータ70を形成する。本実施の形態では、光電変換基板60上に結晶相を形成する際、まず、非柱状部71が形成され、続いて柱状部72が形成される。なお、本実施の形態では、シンチレータ70を形成する工程においても、上述の表面処理を行う工程(図15参照)と同様に、導電膜30をグランド接続端子34を介してグランドに接続した状態で行っている。当該工程においては、導電膜30をグランド接続端子34を介してグランドに接続した状態で行うことは必須ではないが、帯電による静電破壊の防止の観点からは、導電膜30をグランド接続端子34を介してグランドに接続した状態で行うことが好ましい。
【0074】
本実施の形態では、このようにして放射線検出器10が完成する。本実施の形態では、放射線検出器10の完成後に、グランド接続端子34とグランドとの接続を分離し、導電膜30をグランドと非接続の状態にする。なお、導電膜30とグランドとを非接続にするタイミングは、放射線検出器10の完成直後に限らず、放射線画像撮影装置100の完成後等であってもよい。例えば、この後、放射線検出器10に、スキャン信号制御装置104、信号検出回路105等を接続させる工程等を備えた放射線画像撮影装置100の製造・完成まで時間がある場合等、放射線検出器10を保管中や移動中等に光電変換基板60が帯電する恐れがある場合は、放射線画像撮影装置100の完成後等、所定のタイミングまで導電膜30をグランド接続端子34を介してグランドに接続した状態にしておくことが好ましい。また、放射線画像撮影装置100の完成後も、帯電防止等のために、導電膜30をグランド接続端子34を介してグランド(例えば、放射線画像撮影装置100の筐体のフレームグランド)に接続させて用いてもよい。
【0075】
以上、説明したように本実施の形態の放射線検出器10の光電変換基板60は、基板1上に形成されたTFTスイッチ4及びセンサ部103の上面が平坦化層18により平坦化されており、当該平坦化層18の略全面(本実施の形態では画素領域20Aの全面)に帯電防止機能を有する導電膜30が形成されている。導電膜30は、グランド配線32及びグランド接続端子34と一体的に形成されており、グランド接続端子34を介してグランドに接続可能に構成されている。また、光電変換基板60(導電膜30)の上には、シンチレータ70が形成されており、シンチレータ70は、光電変換基板60に近い方から非柱状部71及び柱状部72を備えている。
【0076】
このように本実施の形態では、導電膜30がグランド接続端子34を介してグランドに接続可能に構成されているため、シンチレータ70との密着性を向上させるための光電変換基板60(導電膜30)の表面に対する表面処理を、導電膜30をグランドに接続した状態で行うことができる。表面処理により生じ出た電荷がグランドに流れるため、光電変換基板60(導電膜30)の帯電を防止することができる。従って、帯電による、センサ部103の静電破壊を防止することができる。また、帯電を防止することができるため、表面処理として真空プラズマ処理を用いることができるため、光電変換基板60とシンチレータ70との密着性をより向上させることができる。
【0077】
なお、上記本実施の形態では、光電変換基板60にシンチレータ70を直接蒸着により形成する場合について説明したがこれに限らず、別途形成したシンチレータ70を、接着樹脂等を用いて光電変換基板60に貼りあわせるようにしてもよい。このように貼りあわせる場合においても、密着性の向上等のために光電変換基板60(導電膜30)の表面に表面処理を行う際には、上述と同様に、導電膜30をグランド接続端子34を介してグランドに接続することにより、帯電を防止することができ、センサ部103の静電破壊を防止することができる。
【0078】
また、上記本実施の形態では、光電変換基板60を用いたが、フレキシブル基板を用いてもよい。フレキシブル基板としては、近年開発されたフロート法による超薄板ガラスを基材として用いたものを適用することが、放射線の透過率を向上させるうえで好ましい。なお、この際に適用できる超薄板ガラスについては、例えば、「旭硝子株式会社、"フロート法による世界最薄0.1ミリ厚の超薄板ガラスの開発に成功"、[online]、[平成23年8月20日検索]、インターネット<URL:http://www.agc.com/news/2011/0516.pdf>」に開示されている。
【0079】
その他、上記本実施の形態で説明した光電変換基板60、放射線検出器10、及び放射線画像撮影装置100等の構成、動作等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【0080】
また、上記本実施の形態で説明した放射線は、特に限定されるものではなく、X線やγ線等を適用することができる。
【0081】
なお、本発明は、センサ部103に半導体層6を用いた場合について説明したがこれに限らず、CMOSセンサを適用することもできる。
【符号の説明】
【0082】
4 TFTスイッチ
10 放射線検出器
30 導電膜
34 グランド接続端子
60 光電変換基板
70 シンチレータ
100 放射線画像撮影装置
103 センサ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換基板、放射線検出器、放射線画像撮影装置、及び放射線検出器の製造方法に係り、特に、放射線画像の撮影等に用いられる光電変換基板、放射線検出器、放射線画像撮影装置、及び放射線検出器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線画像の撮影を行うための放射線画像撮影装置として、放射線照射装置から照射され、被写体を透過した放射線を放射線検出器により検出する放射線画像撮影装置が知られている。このような放射線画像撮影装置の放射線検出器として、照射された放射線を光に変換する蛍光体等のシンチレータと、シンチレータにより変換された光が照射されることにより電荷を発生する光電変換素子及び当該光電変換素子で発生した電荷を読み出すスイッチング素子を各々備えた画素により構成される光電変換基板と、を備えたものが知られている。
【0003】
このような放射線検出器は、光電変換基板上にシンチレータが設けられるため、光電変換基板とシンチレータとの密着性を向上させるための技術が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、光電変換素子を保護する保護層と、シンチレータとの間に、熱伝導率が高くシンチレータとの接合力が強い金属層又は金属化合物層の分離防止層を設けることにより、保護層とシンチレータとを分離しにくくする技術が記載されている。
【0005】
また、光電変換基板の表面に、密着性を向上させるためのプラズマ処理等の表面処理を行うことが一般的に行われている。例えば、特許文献2には、光電変換素子を備えたセンサパネル上に配された蛍光体下地層の表面を大気圧プラズマ処理し、当該蛍光体下地層表面上に蛍光体層を形成することにより、蛍光体層の密着不良による剥がれを防止する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−74846号公報
【特許文献2】特開2004−325442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光電変換基板の表面に上述のように表面処理を行う際に、光電変換基板の表面が帯電することにより、光電変換素子の静電破壊が引き起こされる場合がある。例えば、表面処理として、大気圧中でプラズマ処理を行う場合は、空気があるため帯電しづらく、静電破壊を引き起す恐れが少ないが、真空中でプラズマ処理を行う場合、帯電による静電破壊を引き起こす恐れが大きい。
【0008】
また、表面処理を行う際だけではなく、光電変換基板の表面が帯電してしまうと、同様に静電破壊が引き起こされる場合がある。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するために成されたものであり、光電変換素子の静電破壊を防止することができる、光電変換基板、放射線検出器、放射線画像撮影装置、及び放射線検出器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明の光電変換基板は、基板上に形成されたスイッチング素子、及び前記スイッチング素子により照射された光に応じて発生した電荷が読み出される光電変換素子を含むセンサ部、を各々備えた複数の画素と、前記スイッチング素子及び前記センサ部が設けられた前記基板の表面を平坦化する平坦化層と、前記平坦化層上の全面に形成された帯電防止膜と、前記帯電防止膜をグランドに接続するための接続部と、を備える。
【0011】
一般に、光電変換基板では、その表面にシンチレータ等の発光層を形成し、放射線検出器を製造する際に、発光層との密着性を向上させるために、発光層と密着させる表面に対して、プラズマ処理等の表面処理が行われる。当該表面処理の際に、特に真空プラズマ処理の際に、表面処理を施している光電変換基板の表面が帯電し、蓄積された電荷により、スイッチング素子等の静電破壊を引き起こす場合がある。
【0012】
本発明の光電変換基板は、スイッチング素子及びセンサ部が設けられた前記基板の表面を平坦化する平坦化層と、平坦化層上の全面に形成された帯電防止膜と、帯電防止膜をグランドに接続するための接続部と、を備えているため、上述のように表面処理を行う場合、接続部を介して帯電防止膜をグランドに接続することにより、表面に蓄積された電荷がグランドに流れるため、光電変換基板の表面の帯電が防止される。従って、光電変換素子の静電破壊を防止することができる。また、上述の表面処理を行う場合のみならず、当該接続部を介して帯電防止膜をグランドに接続することにより、外部からのノイズ(電磁波等)の影響を低減することができる。
【0013】
また、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記帯電防止膜は、照射された光の予め定められた長波長成分を吸収することが好ましい。
【0014】
一般に長波長成分は、短波長成分よりも屈折しづらく、隣接する画素に斜入光が入射する可能性が高い。このように隣接する画素に斜入光が入射すると、放射線画像に画像ボケが生じる要因となる。これに対して本発明では、帯電防止膜で照射された光の予め定められた長波長成分(例えば赤色光)を吸収することにより、当該長波長成分が隣接する画素に入射するのを抑制することができる。
【0015】
また、本発明は、請求項3に記載の発明のように、前記光電変換素子は、キナクリドンより成る有機光電変換素子であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、請求項4に記載の発明のように、前記帯電防止膜は、光透過性を有することが好ましい。
【0017】
また、本発明は、請求項5に記載の発明のように、前記接続部を介して、前記帯電防止膜がグランドに接続されていることが好ましい。
【0018】
請求項6に記載の放射線検出器は、前記請求項1から前記請求項5のいずれか1項に記載の前記光電変換基板と、前記光電変換基板の前記帯電防止膜上に設けられ、かつ、照射された放射線の線量に応じて発光する発光層と、を備える。
【0019】
請求項7に記載の放射線検出器は、前記発光層は、アルカリハライド系柱状結晶より成ることが好ましい。
【0020】
請求項8に記載の放射線画像撮影装置は、前記請求項6または前記請求項7に記載の放射線検出器と、放射線の照射に応じて前記放射線検出器で発生した電荷を読み出して、放射線画像を撮影する撮影手段と、を備える。
【0021】
請求項9に記載の放射線検出器の製造方法は、前記請求項1から前記請求項5のいずれか1項に記載の光電変換基板の帯電防止膜を接続部を介してグランドに接続する工程と、前記帯電防止膜がグランドに接続された状態で、前記光電変換基板の前記帯電防止膜が設けられた表面に表面処理する工程と、前記表面処理が成された前記光電変換基板の前記帯電防止膜上に発光層を形成する工程と、を備える。
【0022】
また、本発明は、請求項10に記載の発明のように、前記発光層を形成する工程は、前記帯電防止膜がグランドに接続された状態で行われることが好ましい。
【0023】
また、本発明は、請求項11に記載の発明のように、前記発光層は、前記光電変換基板上に発光層を蒸着することにより形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明によれば、光電変換素子の静電破壊を防止することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施の形態に係る放射線画像撮影装置の全体構成の一例を示す構成図である。
【図2】本実施の形態に係るシンチレータの一例を示す概略構成図である。
【図3】本実施の形態に係る光電変換基板上の放射線検出器の1画素単位の構造の一例を示す平面図である。
【図4】図3に示した放射線検出器のA−A線断面図である。
【図5】図3に示した放射線検出器のB−B線断面図である。
【図6】CsI(Tl)の発光特性及びキナクリドンの吸収波長範囲を示すグラフである。
【図7】本実施の形態に係る放射線検出器に入射する短波長成分を説明するための説明図である。
【図8】本実施の形態に係る放射線検出器に入射する長波長成分を説明するための説明図である。
【図9】ITOの屈折率を示すグラフである。
【図10】本実施の形態に係る放射線検出器の製造工程を説明するための説明図(断面図)である。
【図11】本実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の図10に示した工程の次の工程を説明するための説明図(断面図)である。
【図12】本実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の図11に示した工程の次の工程を説明するための説明図(断面図)である。
【図13】本実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の図12に示した工程の次の工程を説明するための説明図(断面図)である。
【図14】本実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の図13に示した工程の次の工程を説明するための説明図(断面図)である。
【図15】本実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の図14に示した工程の次の工程を説明するための説明図(断面図)である。
【図16】本実施の形態に係る放射線検出器の製造工程の図15に示した工程の次の工程を説明するための説明図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、各図面を参照して本実施の形態の一例について説明する。
【0027】
本実施の形態の光電変換基板を備えた放射線検出器を用いた放射線画像撮影装置の概略構成について説明する。図1は、本実施の形態の光電変換基板を備えた放射線検出器を用いた放射線画像撮影装置の全体構成の一例を示す全体構成図である。なお、図1では、シンチレータ70(詳細後述)の記載が省略されている。
【0028】
本実施の形態に係る放射線画像撮影装置100は、間接変換方式の放射線検出器10と、走査配線駆動装置104と、信号検出回路105と、制御装置106と、を備えている。本実施の形態の放射線検出器10は、光電変換基板60及びシンチレータ70を備えている。
【0029】
まず、シンチレータ70について説明する。本実施の形態のシンチレータ70の一例の概略構成図を図2に示す。シンチレータ70は、照射された放射線を光に変換して、光を出射する。すなわち、本実施の形態のシンチレータ70は、照射された放射線の線量に応じて発光する機能を有している。
【0030】
シンチレータ70には、例えば、CsI(Tl)、GOS(Gd2O2S:Tb)、NaI:Tl(タリウム賦活ヨウ化ナトリウム)、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)からなる結晶を用いることができるが、シンチレータ70は、これらの材料からなるものに限られるものではない。なお、これらのなかでも、発光スペクトルがa−Siフォトダイオードの分光感度の極大値(550nm付近)と適合する点、及び、湿度による経時的な劣化が生じがたいという点で、CsI(Tl)を用いてなるものが好ましい。
【0031】
また、シンチレータ70が発する光の波長域は、可視光域(波長360nm〜830nm)であることが好ましく、放射線画像検出器100によってモノクロ撮像を可能とするためには、緑色の波長域(495nm〜570nm)を含んでいることがより好ましい。
【0032】
シンチレータ70に用いる蛍光体としては、具体的には、放射線としてX線を用いて撮像する場合、ヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましく、X線照射時の発光スペクトルが、例えば、420nm〜700nmにあるCsI(Tl)を用いることが特に好ましい。なお、CsI(Tl)の可視光域における発光ピーク波長は565nmである。
【0033】
また発光効率等の観点から、柱状結晶、特にアルカリハライド系柱状結晶からなることが好ましい。本実施の形態では、具体的一例として、CsI(Tl)の柱状結晶からなるシンチレータ70を用いている。図2に示した本実施の形態のシンチレータ70は、CsI(Tl)の非柱状結晶から成る非柱状部71と、柱状結晶から成る柱状部72とにより構成されている。なお、非柱状部71側が、光電変換基板60側にあたる(図4、図5参照)。
【0034】
柱状部72においては、各柱状結晶内で光が発生し、効率よい発光が得られるとともに、柱状結晶の間隙が光のガイドとなって光拡散を抑制することで放射線画像のボケが抑制される。さらに、深部まで到達した光も、非柱状結晶からなる非柱状部71において反射され、発光の検出効率が向上するとともに、光電変換基板60との密着性が向上する。
図2に示すように、シンチレータ70の柱状部72の厚みをt1とし、非柱状部71の厚みをt2としたとき、t1とt2との関係が下記(1)式を満たすことが好ましい。
【0035】
0.01≦(t2/t1)≦0.25 ・・・(1)
【0036】
柱状部72の厚みt1と非柱状部71領域の厚みt2とが上記(1)式を満たすことで、シンチレータ70の厚さ方向における発光効率、光の拡散防止及び光が反射される領域が好適な範囲となり、光の発光効率、光の検出効率と画像の解像度がより向上する。非柱状部71の厚みt2が厚すぎる場合には、発光効率の低い領域が増え、感度の低下が懸念される。そのような観点から、(t2/t1)は0.02以上0.1以下の範囲であることがより好ましい。
【0037】
また、非柱状部71の非柱状結晶の結晶径は0.2μm以上7.0μm以下であることが、効率的な反射を与える観点から好ましく、1.0μm以上6.0μm以下であることがより好ましい。また、非柱状結晶の結晶形状は、反射効率の観点から、略球状であることが好ましく、非柱状部71は、球状に近い結晶(略球状結晶)の集合体で構成されることが好ましい。
【0038】
次に、本実施の形態の光電変換基板60について説明する。図1に示すように、本実施の形態の光電変換基板60には、後述する上部電極、半導体層、及び下部電極を備え、照射された放射線をシンチレータ70で変換した光を受けて電荷を蓄積するセンサ部103と、センサ部103に蓄積された電荷を読み出すためのTFTスイッチ4と、を含んで構成される画素20が2次元状(マトリックス状)に複数設けられている。
【0039】
画素20は、一方向(図1の横方向、以下「行方向」ともいう)及び当該行方向に対する交差方向(図1の縦方向、以下「列方向」ともいう)にマトリクス状に複数配置されている。図1では、画素20の配列を簡略化して示しているが、例えば、画素20は行方向及び列方向に1024×1024個配置されている。以下では、画素20が形成されている光電変換基板60の領域を画素領域20Aという。
【0040】
また、光電変換基板60には、上記TFTスイッチ4をON/OFFするための複数の走査配線101と、上記センサ部103に蓄積された電荷を読み出すための複数の信号配線3と、が互いに交差して設けられている。
【0041】
各信号配線3には、当該信号配線3に接続された何れかの画素20のTFTスイッチ4がONされることによりセンサ部103に蓄積された電荷量に応じた電気信号が流れる。各信号配線3には、各信号配線3に流れ出した電気信号を検出する信号検出回路105が接続されており、各走査配線101には、各走査配線101にTFTスイッチ4をON/OFFするためのスキャン信号を出力するスキャン信号制御装置104が接続されている。
【0042】
信号検出回路105は、各信号配線3毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路(図示省略)を内蔵している。信号検出回路105では、各信号配線3より入力される電気信号を増幅回路により増幅して検出することにより、放射線画像を構成する各画素20の情報として、各センサ部103に蓄積された電荷量を検出する。ここで電気信号の「検出」とは、電気信号をサンプリングすることを表している。
【0043】
この信号検出回路105及びスキャン信号制御装置104には、信号検出回路105において検出された電気信号に所定の処理を施すとともに、信号検出回路105に対して信号検出のタイミングを示す制御信号を出力し、スキャン信号制御装置104に対してスキャン信号の出力のタイミングを示す制御信号を出力する制御装置106が接続されている。
【0044】
次に、図3〜図5を参照して、本実施の形態に係る光電変換基板60についてさらに詳細に説明する。なお、図3には、本実施の形態に係る光電変換基板60上の放射線検出器の1画素単位の構造を示す平面図が示されており、図4には、図3のA−A線断面図が示されており、図5には、図3のB−B線断面図が示されている。
【0045】
図4及び図5に示すように、本実施の形態の放射線検出器は、無アルカリガラス等からなる絶縁性の基板1上に、走査配線101、ゲート電極2が形成されており、走査配線101とゲート電極2は接続されている(図3参照。)。走査配線101及びゲート電極2が形成された配線層(以下、この配線層を「第1信号配線層」ともいう。)は、Al若しくはCu、またはAl若しくはCuを主体とした積層膜を用いて形成されているが、これらに限定されるものではない。
【0046】
この走査配線101及びゲート電極2上には、走査配線101及びゲート電極2を覆い一面に絶縁膜15が形成されており、ゲート電極2上に位置する部位がTFTスイッチ4におけるゲート絶縁膜として作用する。この絶縁膜15は、例えば、SiNX 等からなっており、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)成膜により形成される。
【0047】
絶縁膜15上のゲート電極2上には、半導体活性層8が島状に形成されている。この半導体活性層8は、TFTスイッチ4のチャネル部であり、例えば、アモルファスシリコン膜からなる。
【0048】
これらの上層には、ソース電極9、及びドレイン電極13が形成されている。このソース電極9及びドレイン電極13が形成された配線層には、ソース電極9、ドレイン電極13とともに、信号配線3、及び当該信号配線3と並行に共通電極配線25が形成されている。ソース電極9は信号配線3に接続されている。信号配線3、ソース電極9、及び共通電極配線25が形成された配線層(以下、この配線層を「第2信号配線層」ともいう。)は、Al若しくはCu、またはAl若しくはCuを主体とした積層膜が用いて形成されるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
このソース電極9及びドレイン電極13と半導体活性層8との間にはコンタクト層(図示省略)が形成されている。このコンタクト層は、不純物添加アモルファスシリコン等の不純物添加半導体からなる。これらによりスイッチング用のTFTスイッチ4が構成される。
【0050】
そして、これら半導体活性層8、ソース電極9、ドレイン電極13、信号配線3、及び共通電極配線25を覆い、基板1上の画素20が設けられた画素領域20Aのほぼ全面(ほぼ全領域)には、TFT保護膜層11が形成されている。このTFT保護膜層11は、例えば、SiNX 等からなっており、例えば、CVD成膜により形成される。
【0051】
このTFT保護膜層11上には、塗布型の層間絶縁膜12が形成されている。この層間絶縁膜12は、低誘電率(比誘電率εr=2〜4)の感光性の有機材料(例えば、ポジ型感光性アクリル系樹脂:メタクリル酸とグリシジルメタクリレートとの共重合体からなるベースポリマーに、ナフトキノンジアジド系ポジ型感光剤を混合した材料等)により1〜4μmの膜厚で形成されている。本実施の形態に係る放射線検出器10では、この層間絶縁膜12によって層間絶縁膜12上層と下層に配置される金属間の容量を低く抑えている。また、一般的にこのような材料は平坦化膜としての機能も有しており、下層の段差が平坦化される効果も有する。これにより、上層に配置される半導体層6の形状が平坦化されるため、半導体層6の凹凸による吸収効率の低下や、リーク電流の増加を抑制することができる。この層間絶縁膜12及びTFT保護膜層11には、ドレイン電極13と対向する位置、及び走査配線101が形成された領域の照射面側の位置に各々コンタクトホール16、及びコンタクトホール22Aが形成されている。
【0052】
層間絶縁膜12上には、コンタクトホール16を埋めつつ、画素領域20Aを覆うようにセンサ部103の下部電極14が形成されており、この下部電極14は、TFTスイッチ4のドレイン電極13と接続されている。この下部電極14は、後述する半導体層6が1μm前後と厚い場合には導電性があれば材料に制限がほとんどない。このため、Al系材料、ITO(酸化スズインジウム)など導電性の金属を用いて形成すれば問題ない。
【0053】
一方、半導体層6の膜厚が薄い場合(0.2〜0.5μm前後)、半導体層6での光の吸収が十分でないため、TFTスイッチ4への光照射によるリーク電流の増加を防ぐため、遮光性メタルを主体とする合金、もしくは積層膜とすることが好ましい。
【0054】
下部電極14上には、フォトダイオード(光電変換素子)として機能する半導体層6が形成されている。本実施の形態では、半導体層6として、PIN構造のフォトダイオードを採用しており、下層からn+層、i層、p+層を順に積層して形成する。
【0055】
なお、半導体層6は、有機光電変換素子とすることが好ましい。有機光電変換素子としては、シンチレータ70で発光した光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ70の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ70の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ70から発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ70の放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0056】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えば、キナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。図6に示すように、CsI(Tl)は、発光ピーク波長が565nmであるが、発光した光に幅広い波長域(400nm〜700nm)の光が含まれる。一方、キナクリドンは、430nm〜620nmの波長域の光に対して感度を有する。キナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ70の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜4で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。そのため、半導体層6には、キナクリドンよりなる有機光電変換材料を用いることがより好ましい。
【0057】
なお、本実施の形態では、下部電極14を半導体層6よりも大きくしている。なお、半導体層6の膜厚が薄い場合(例えば、0.5μm以下の場合)には、TFTスイッチ4への光入射を防ぐ目的で、遮光性金属を配置してTFTスイッチ4を覆うことが好ましい。
【0058】
好ましくは、デバイス内部の光の乱反射によるTFTスイッチ4への光進入を抑制するため、TFTスイッチ4のチャネル部から遮光性金属からなる下部電極14の端部への間隔を5μm以上確保している。
【0059】
層間絶縁膜12及び半導体層6上には、各半導体層6部分で開口を持つように保護絶縁膜17が形成されている。そして、半導体層6及び保護絶縁膜17上には、少なくとも保護絶縁膜17の開口部を覆うように上部電極7が形成されている。この上部電極7には、例えば、ITOやIZO(酸化亜鉛インジウム)等の光透過性の高い材料を用いている。本実施の形態では、上部電極7は、下層に配置された、上部電極7にバイアス電圧を供給するための共通電極配線25と接続する導電部材も兼ねている。図5に示すように、共通電極配線25は、第1の層間絶縁膜12に設けられたコンタクトホール22Aを介して下部電極14の層に形成されたコンタクトパッド24と接続され、さらに保護絶縁膜17に設けられたコンタクトホール22B上を上部電極7で覆うことで、上部電極7と共通電極配線25とが電気的に接続されている。なお、上部電極7と、共通電極配線25に接続する導電部材とは別層の金属で形成してもかまわない。
【0060】
また、上部電極7及び保護絶縁膜17上には、表面を平坦化するための平坦化層18が形成されている。平坦化層18は、絶縁層であり、例えば、SiNX 等よりなっており、1μm〜10μmの厚みを有している。さらに、平坦化された平坦化層18の上には、導電膜30が形成されている。本実施の形態の導電膜30は、帯電防止機能を有しており、特に、光電変換基板60上にシンチレータ70を形成する場合に光電変換基板60(導電膜30)の表面に表面処理を施す際等にグランドと接続することにより、光電変換基板60(導電膜30)の表面が帯電するのを防止する機能を有している。光電変換基板60(導電膜30)の表面が帯電すると、光電変換基板60のセンサ部103が静電破壊を引き起こす場合がある。そのため、本実施の形態の導電膜30は、平坦化層18の全面(略全面も含む)、本実施の形態では画素領域20Aの全面にわたり、形成されている。導電膜30の材質としては、ITOや有機導電性ポリマーフィルム等が挙げられる。導電膜30の膜厚及び抵抗値は、帯電防止機能の観点から定められる。具体的一例としては、膜厚は数十nm〜数百nm、抵抗値は1010Ω以下が挙げられる。
【0061】
本実施の形態の導電膜30は、上述のように帯電防止の機能のため、グランド配線32を介してグランド接続端子34に接続されている。当該グランド接続端子34は、グランドに接続するためのものである。なお、グランド接続端子34は、グランド配線32をグランドに接続する機能を有していればその構成、形状は特に限定されるものではなく、パッドや電極等であってもよい。本実施の形態のグランド接続端子34は、画素領域20Aの外部、かつ基板1の端部領域に設けられている。なお、本実施の形態では、グランド配線32及びグランド接続端子34は、導電膜30と一体的に形成される。
【0062】
また、本実施の形態の導電膜30は、シンチレータ70の発光波長の長波長成分の一部を吸収する機能を有している。光電変換基板60(導電膜30)に斜入光が入射すると、隣の画素20で受光され易い。図7に示すように、短波長成分(例えば、青色光や緑色光)は、屈折しやすいため、隣接する画素20のセンサ部103で受光されないが、図8に示すように、長波長成分(例えば、赤色光)は、屈折し難いため、隣接する画素20のセンサ部103で受光され易く、画像ボケが生じる場合がある。
【0063】
また、図9に導電膜30の具体的一例であるITOの屈折率を示すが、シンチレータ70の具体的一例である、CsIの発光域においては、ITOの屈折率はCsIの屈折率(1.77)と殆ど変わらない。CsIの発光のピーク波長は550nmであり、このときのITOの屈折率は〜1.75なので、略同一とみなせる。従って、斜入光でもピーク波長域では、材料差による屈折は生じずに進むことになる。本実施の形態の導電膜30は、このような斜入光となる長波長成分をカットする機能を有している。そのため、本実施の形態の導電膜30では、長波長成分をカットするための着色剤を混入している。具体的一例としては、図6に示したキナクリドンの吸収波長領域外の長波長成分(赤色光:波長620nm〜750nm)をカットする場合は、シアン系の着色剤を混入すればよい。無機青色顔料としては、ウルトラマリン青、及びプロシア青(フェロシアン化鉄カリ)等が挙げられる。また、有機青色顔料としては、フタロシアニン、アントラキノン、インジゴイド、及びカルボニウム等が挙げられる。なお、放射線検出器10をISS方式(表面読取方式)とする場合、無機着色剤は、有機着色剤よりも原子番号が大きく放射線を吸収しやすいため、シンチレータ70により多くの放射線を到達させるためには、有機着色剤の方が好ましい。
【0064】
なお、赤色光は、少しでも吸収することが好ましい。画素20のサイズが小さい(例えば、100μm以下)場合、より隣の画素20で斜入光が受光され易くなる危険性が高まるため、着色剤の混入量を増加させて赤色光の吸収率を向上させることが好ましい。そのため、画素20のサイズ等に応じて、着色剤の混入量を定めるようにすることが好ましい。
【0065】
また、着色剤としては、顔料、染料等が挙げられる。なお、顔料は樹脂中に粒子として存在し、一方、染料は樹脂に溶融して存在する。
なお、長波長成分をよりカットするために、平坦化層18にも上述の着色剤を混入するようにしてもよい。
【0066】
次に、本実施形態に係る放射線検出器10の製造工程の一例を説明する。
【0067】
まず、図10に示すように、基板1上に、第1信号配線層として、ゲート電極2、走査配線101を形成する。この第1信号配線層は、Al、Al合金等の低抵抗金属、もしくは高融点金属からなるバリアメタル層との積層膜からなり、膜厚が100〜300nm前後でスパッタリング法にて基板1上に堆積される。その後、フォトリソグラフィー技術にてレジスト膜のパターンニングを行う。その後、Al用のエッチャントによるウェットエッチ法か、ドライエッチ法にて金属膜をパターンニングする。その後、レジストを除去することにより第1信号配線層が完成する。次に、第1信号配線層上に、絶縁膜15、半導体活性層8、コンタクト層(図示省略)を順次堆積する。絶縁膜15はSiNxからなり膜厚は200〜600nm、半導体活性層8はアモルファスシリコンからなり膜厚20〜200nm前後、コンタクト層は不純物添加アモルファスシリコンからなり膜厚10〜100nm前後で、P−CVD(Plasma−Chemical Vapor Deposition)法にて堆積する。その後、第1信号配線層と同様に、フォトリソグラフィー技術によりレジストのパターンニングを行う。その後、半導体活性層8と不純物添加半導体によるコンタクト層を絶縁膜15に対し選択的にドライエッチングすることにより半導体活性領域を形成する。次に、絶縁膜15、及び半導体活性層8の上層に、第2信号配線層として、信号配線3、ソース電極9、ドレイン電極13、共通電極配線25を形成する。この第2信号配線層は、第1信号配線層と同様に、Al、Al合金等の低抵抗金属、もしくは高融点金属からなるバリアメタル層との積層膜、またはMo等の高融点金属膜単層からなり、膜厚が100〜300nm前後である。第1信号配線層と同様に、フォトリソグラフィー技術にてパターンニングを行い、Al用のエッチャントによるウェットエッチ法か、ドライエッチ法にて金属膜をパターンニングする。その際、選択的にエッチング法を採用することにより絶縁膜15は除去されない。ドライエッチ法にて、コンタクト層と半導体活性層8の一部を除去しチャネル領域を形成する。
【0068】
次に、図11に示すように、上記のように形成された層の上層に、TFT保護膜層11及び層間絶縁膜12を順次形成する。TFT保護膜層11及び層間絶縁膜12は無機材料単体の場合や、無機材料からなる保護絶縁膜と有機系材料からなる層間絶縁膜の積層により形成する場合や、有機系からなる層間絶縁膜単層により形成する場合がある。本実施の形態では、下層の共通電極配線25と下部電極14間との静電容量を抑制する一方で、TFTスイッチ4の特性を安定させるため感光性の層間絶縁膜12と無機材料からなるTFT保護膜層11の積層構造としており、例えば、CVD成膜によりTFT保護膜層11を形成し、塗布系材料である感光性の層間絶縁膜12材料を塗布、プリベーク後、露光、現像のステップを通過後、焼成を行なって各層を形成する。次に、フォトリソグラフィー技術によりTFT保護膜層11をパターンニングする。なお、TFT保護膜11を配置しない場合には、このステップは必要ない。
【0069】
次に、図12に示すように、上記の層の上層にAl系材料もしくはITO等の金属材料をスパッタリング法により堆積する。膜厚は20〜200nm前後である。フォトリソグラフィー技術にてパターンニングを行い、メタル用のエッチャント等によるウェットエッチ法か、ドライエッチ法にてパターンニングして下部電極14を形成する。次に、半導体層6を形成する。半導体層6が有機光電変換材料である場合は、例えば、CVD法により形成すればよい。膜厚は30nm以上、300nm以下が好ましく、より好ましくは、50nm以上、250nm以下、特に好ましくは80nm以上、200nm以下である。また、無機光電変換材料である場合は、CVD法で下層より順にn+、i、p+の各層を堆積して半導体層6を形成する。膜厚は、例えばそれぞれn+層50〜500nm、i層0.2〜2μm、p+層50〜500nmである。半導体層6は各層を順に積層してフォトリソグラフィー技術により、半導体層6をパターンニングし、ドライエッチ、もしくはウェットエッチによる下層の層間絶縁膜12との選択エッチすることにより完成する。なお、n+、i、p+の順で積層するのではなく、p+、i、n+の順で積層し、PINダイオードとしてもかまわない。
【0070】
次に、図13に示すように、CVD法等で、半導体層6を覆うようにSiNx膜からなる保護絶縁膜17を堆積する。膜厚は100〜300nm前後である。フォトリソグラフィー技術にてパターンニングを行い、ドライエッチ法にてパターンニングし、開口部を形成する。ここでは、一例としてCVD成膜のSiNxを記載したが、絶縁材料であれば適用でき、SiNxに限定するものではない。次に、上部電極7及び共通電極配線25との接続部位を形成する。上部電極7及び共通電極配線25との接続部位は上記のようにして形成された層の上層に、ITO等の透明電極材料をスパッタリング法により堆積する。膜厚は20〜200nm前後である。フォトリソグラフィー技術にてパターンニングを行い、ITO用のエッチャント等によるウェットエッチ法か、ドライエッチ法にて上部電極7をパターンニングする。その際、選択的にエッチングを採用することにより、下層の保護絶縁膜17はダメージを受けない。
【0071】
次に、図14に示すように、CVD法等で、上部電極7及び保護絶縁膜17を覆うようにSiNx膜からなる平坦化層18を堆積し、半導体層6等により生じている表面の凹凸を平坦化する。ここでは、一例としてCVD成膜のSiNxを記載したが、絶縁材料であれば適用でき、SiNxに限定するものではない。さらに、平坦化層18上の導電膜30と、グランド配線32及びグランド接続端子34とを、ITO等の透明導電材料を用いてスパッタリング法により形成する。★導電膜30の膜厚は、数十nm〜数百nm以下、導抵抗値は1010Ω以下が好ましい。なお、導電膜30の上に、さらに、保護膜等を設けてもよい。このようにして、光電変換基板60が形成される。
【0072】
光電変換基板60が形成されると、次の工程では、図15に示すように、グランド接続端子34をグランドに接続した状態、すなわち、導電膜30をグランド接続端子34を介してグランドに接続した状態で、光電変換基板60(導電膜30)の表面に、シンチレータ70の密着性を向上させるための前処理として、表面処理を施す。表面処理としては、例えば、真空プラズマ処理や大気圧プラズマ処理、及びコロナ放電処理等が挙げられる。このように表面処理を行う際、導電膜30をグランド接続端子34を介してグランドに接続しておくことにより、表面処理によって導電膜30の表面に生じた電荷がグランドに流れるため、導電膜30が帯電するのを防止することができる。従って、光電変換基板60のセンサ部103の静電破壊を防止することができる。なお、表面処理としては、シンチレータ70との密着性をより向上させられることから、真空プラズマ処理を行うことが好ましい。
【0073】
次に、図16に示すように、表面処理を施した光電変換基板60の導電膜30上に、シンチレータ70を形成する。本実施の形態では、光電変換基板60(導電膜30)上に、真空蒸着等を用いて気相堆積法により、直接CsI(Tl)より成るシンチレータ70を形成する。本実施の形態では、光電変換基板60上に結晶相を形成する際、まず、非柱状部71が形成され、続いて柱状部72が形成される。なお、本実施の形態では、シンチレータ70を形成する工程においても、上述の表面処理を行う工程(図15参照)と同様に、導電膜30をグランド接続端子34を介してグランドに接続した状態で行っている。当該工程においては、導電膜30をグランド接続端子34を介してグランドに接続した状態で行うことは必須ではないが、帯電による静電破壊の防止の観点からは、導電膜30をグランド接続端子34を介してグランドに接続した状態で行うことが好ましい。
【0074】
本実施の形態では、このようにして放射線検出器10が完成する。本実施の形態では、放射線検出器10の完成後に、グランド接続端子34とグランドとの接続を分離し、導電膜30をグランドと非接続の状態にする。なお、導電膜30とグランドとを非接続にするタイミングは、放射線検出器10の完成直後に限らず、放射線画像撮影装置100の完成後等であってもよい。例えば、この後、放射線検出器10に、スキャン信号制御装置104、信号検出回路105等を接続させる工程等を備えた放射線画像撮影装置100の製造・完成まで時間がある場合等、放射線検出器10を保管中や移動中等に光電変換基板60が帯電する恐れがある場合は、放射線画像撮影装置100の完成後等、所定のタイミングまで導電膜30をグランド接続端子34を介してグランドに接続した状態にしておくことが好ましい。また、放射線画像撮影装置100の完成後も、帯電防止等のために、導電膜30をグランド接続端子34を介してグランド(例えば、放射線画像撮影装置100の筐体のフレームグランド)に接続させて用いてもよい。
【0075】
以上、説明したように本実施の形態の放射線検出器10の光電変換基板60は、基板1上に形成されたTFTスイッチ4及びセンサ部103の上面が平坦化層18により平坦化されており、当該平坦化層18の略全面(本実施の形態では画素領域20Aの全面)に帯電防止機能を有する導電膜30が形成されている。導電膜30は、グランド配線32及びグランド接続端子34と一体的に形成されており、グランド接続端子34を介してグランドに接続可能に構成されている。また、光電変換基板60(導電膜30)の上には、シンチレータ70が形成されており、シンチレータ70は、光電変換基板60に近い方から非柱状部71及び柱状部72を備えている。
【0076】
このように本実施の形態では、導電膜30がグランド接続端子34を介してグランドに接続可能に構成されているため、シンチレータ70との密着性を向上させるための光電変換基板60(導電膜30)の表面に対する表面処理を、導電膜30をグランドに接続した状態で行うことができる。表面処理により生じ出た電荷がグランドに流れるため、光電変換基板60(導電膜30)の帯電を防止することができる。従って、帯電による、センサ部103の静電破壊を防止することができる。また、帯電を防止することができるため、表面処理として真空プラズマ処理を用いることができるため、光電変換基板60とシンチレータ70との密着性をより向上させることができる。
【0077】
なお、上記本実施の形態では、光電変換基板60にシンチレータ70を直接蒸着により形成する場合について説明したがこれに限らず、別途形成したシンチレータ70を、接着樹脂等を用いて光電変換基板60に貼りあわせるようにしてもよい。このように貼りあわせる場合においても、密着性の向上等のために光電変換基板60(導電膜30)の表面に表面処理を行う際には、上述と同様に、導電膜30をグランド接続端子34を介してグランドに接続することにより、帯電を防止することができ、センサ部103の静電破壊を防止することができる。
【0078】
また、上記本実施の形態では、光電変換基板60を用いたが、フレキシブル基板を用いてもよい。フレキシブル基板としては、近年開発されたフロート法による超薄板ガラスを基材として用いたものを適用することが、放射線の透過率を向上させるうえで好ましい。なお、この際に適用できる超薄板ガラスについては、例えば、「旭硝子株式会社、"フロート法による世界最薄0.1ミリ厚の超薄板ガラスの開発に成功"、[online]、[平成23年8月20日検索]、インターネット<URL:http://www.agc.com/news/2011/0516.pdf>」に開示されている。
【0079】
その他、上記本実施の形態で説明した光電変換基板60、放射線検出器10、及び放射線画像撮影装置100等の構成、動作等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【0080】
また、上記本実施の形態で説明した放射線は、特に限定されるものではなく、X線やγ線等を適用することができる。
【0081】
なお、本発明は、センサ部103に半導体層6を用いた場合について説明したがこれに限らず、CMOSセンサを適用することもできる。
【符号の説明】
【0082】
4 TFTスイッチ
10 放射線検出器
30 導電膜
34 グランド接続端子
60 光電変換基板
70 シンチレータ
100 放射線画像撮影装置
103 センサ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたスイッチング素子、及び前記スイッチング素子により照射された光に応じて発生した電荷が読み出される光電変換素子を含むセンサ部、を各々備えた複数の画素と、
前記スイッチング素子及び前記センサ部が設けられた前記基板の表面を平坦化する平坦化層と、
前記平坦化層上の全面に形成された帯電防止膜と、
前記帯電防止膜をグランドに接続するための接続部と、
を備えた光電変換基板。
【請求項2】
前記帯電防止膜は、照射された光の予め定められた長波長成分を吸収する、請求項1に記載の光電変換基板。
【請求項3】
前記光電変換素子は、キナクリドンより成る有機光電変換素子である、請求項1または請求項2に記載の光電変換基板。
【請求項4】
前記帯電防止膜は、光透過性を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光電変換基板。
【請求項5】
前記接続部を介して、前記帯電防止膜がグランドに接続された、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光電変換基板。
【請求項6】
前記請求項1から前記請求項5のいずれか1項に記載の前記光電変換基板と、
前記光電変換基板の前記帯電防止膜上に設けられ、かつ、照射された放射線の線量に応じて発光する発光層と、
を備えた放射線検出器。
【請求項7】
前記発光層は、アルカリハライド系柱状結晶より成る、請求項6に記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記請求項6または前記請求項7に記載の放射線検出器と、
放射線の照射に応じて前記放射線検出器で発生した電荷を読み出して、放射線画像を撮影する撮影手段と、
を備えた、放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記請求項1から前記請求項5のいずれか1項に記載の光電変換基板の帯電防止膜を接続部を介してグランドに接続する工程と、
前記帯電防止膜がグランドに接続された状態で、前記光電変換基板の前記帯電防止膜が設けられた表面に表面処理する工程と、
前記表面処理が成された前記光電変換基板の前記帯電防止膜上に発光層を形成する工程と、
を備えた放射線検出器の製造方法。
【請求項10】
前記発光層を形成する工程は、前記帯電防止膜がグランドに接続された状態で行われる、請求項9に記載の放射線検出器の製造方法。
【請求項11】
前記発光層は、前記光電変換基板上に発光層を蒸着することにより形成される、請求項9または請求項10に記載の放射線検出器の製造方法。
【請求項1】
基板上に形成されたスイッチング素子、及び前記スイッチング素子により照射された光に応じて発生した電荷が読み出される光電変換素子を含むセンサ部、を各々備えた複数の画素と、
前記スイッチング素子及び前記センサ部が設けられた前記基板の表面を平坦化する平坦化層と、
前記平坦化層上の全面に形成された帯電防止膜と、
前記帯電防止膜をグランドに接続するための接続部と、
を備えた光電変換基板。
【請求項2】
前記帯電防止膜は、照射された光の予め定められた長波長成分を吸収する、請求項1に記載の光電変換基板。
【請求項3】
前記光電変換素子は、キナクリドンより成る有機光電変換素子である、請求項1または請求項2に記載の光電変換基板。
【請求項4】
前記帯電防止膜は、光透過性を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光電変換基板。
【請求項5】
前記接続部を介して、前記帯電防止膜がグランドに接続された、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光電変換基板。
【請求項6】
前記請求項1から前記請求項5のいずれか1項に記載の前記光電変換基板と、
前記光電変換基板の前記帯電防止膜上に設けられ、かつ、照射された放射線の線量に応じて発光する発光層と、
を備えた放射線検出器。
【請求項7】
前記発光層は、アルカリハライド系柱状結晶より成る、請求項6に記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記請求項6または前記請求項7に記載の放射線検出器と、
放射線の照射に応じて前記放射線検出器で発生した電荷を読み出して、放射線画像を撮影する撮影手段と、
を備えた、放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記請求項1から前記請求項5のいずれか1項に記載の光電変換基板の帯電防止膜を接続部を介してグランドに接続する工程と、
前記帯電防止膜がグランドに接続された状態で、前記光電変換基板の前記帯電防止膜が設けられた表面に表面処理する工程と、
前記表面処理が成された前記光電変換基板の前記帯電防止膜上に発光層を形成する工程と、
を備えた放射線検出器の製造方法。
【請求項10】
前記発光層を形成する工程は、前記帯電防止膜がグランドに接続された状態で行われる、請求項9に記載の放射線検出器の製造方法。
【請求項11】
前記発光層は、前記光電変換基板上に発光層を蒸着することにより形成される、請求項9または請求項10に記載の放射線検出器の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−46043(P2013−46043A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185238(P2011−185238)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]