説明

内燃機関の制御装置

【課題】低コスト化、小型化の要求を満たしながら、内燃機関の製造ばらつきや経時変化の影響を受けずに確実に充填効率を向上させる。
【解決手段】エンジン11の吸気管12には、吸入空気量の変化に応じて出力が応答良く変化する高応答型のエアフローメータ14を設置し、吸気脈動や逆流も検出可能となっている。各気筒の吸気行程と吸気脈動タイミングとの関係を考慮して決められた所定期間、具体的には、吸気バルブ31側からの吸気脈動の反射派(逆流)が吸気開閉弁18に到達する期間に吸気開閉弁18を閉止し、他の期間に該吸気開閉弁18を開放するように制御する“間欠閉止制御”を実行する。そして、この間欠閉止制御の実行中に、エアフローメータ14の出力から検出される吸気脈動が小さくなるように吸気開閉弁18の閉止タイミングTVID(及び/又は閉止期間)をフィードバック制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関(エンジン)の充填効率を向上させる制御を実行する内燃機関の制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンの充填効率を向上させる技術として、エンジン回転速度に応じて吸気管長を変化させることで、共鳴過給や慣性過給効果を利用して充填効率を向上させる可変吸気システムが知られている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
また、近年では、吸気のバルブタイミングやリフト量を変化させる可変吸気バルブ装置を搭載したエンジンが増加しているが、この可変吸気バルブ装置は、スロットル全開時に筒内充填空気量が最大となるように制御される。
【特許文献1】特開2008−38759号公報
【特許文献2】特開2007−297963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の可変吸気システムは、構成が複雑で、装置全体が大型化して、低コスト化、小型化の要求を満たすことができない。
【0005】
しかも、従来の可変吸気システムや可変吸気バルブ装置の制御方法は、予め標準的なエンジンを用いて適合したマップを用いて、エンジン回転速度や負荷等のパラメータに応じて見込み制御するだけであるため、エンジンの製造ばらつきや経時変化の存在を考えると、必ずしも最大の充填効率が得られるとは限らない。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、低コスト化、小型化の要求を満たしながら、内燃機関の製造ばらつきや経時変化の影響を受けずに確実に充填効率を向上させることができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、内燃機関の吸気脈動を検出可能なエアフローメータを備えた内燃機関の制御装置において、内燃機関のスロットルバルブよりも下流側の吸気通路に、該吸気通路を開閉する吸気開閉弁を設けると共に、前記エアフローメータの出力から検出される吸気脈動が小さくなるように前記吸気開閉弁の開閉動作を制御する制御手段を備えた構成としたものである。
【0008】
本発明は、吸気脈動領域において、吸気開閉弁の上流側への脈動の伝達が大きくなるほど可変吸気装置による吸気の過給効果が小さくなるという特性に着目して、スロットルバルブの下流側に設けた吸気開閉弁の開閉動作を吸気脈動が小さくなるように制御するようにしたものであり、これにより、過給効果を最大化して、充填効率を向上させることができる。しかも、エアフローメータの出力から吸気脈動を検出するため、内燃機関の製造ばらつきや経時変化があっても、その影響による吸気脈動のばらつきを吸気開閉弁の開閉動作の制御に反映させて確実に充填効率を向上させることができる。更に、吸気脈動検出可能なエアフローメータと吸気開閉弁を設けるだけの比較的簡単な構成であるため、従来の可変吸気システムと比較して、構成が簡単で、装置全体を小型化することができ、低コスト化の要求も満たすことができる。
【0009】
この場合、請求項2のように、吸気通路のうちの各気筒の吸気マニホールドよりも上流側の集合吸気管に吸気開閉弁を設け、各気筒の吸気行程と吸気脈動タイミングとの関係を考慮して決められた所定期間[具体的には吸気バルブ側からの吸気脈動の反射派(逆流)が吸気開閉弁に到達する期間]に吸気開閉弁を閉止し、他の期間に該吸気開閉弁を開放するように制御するようにすると良い。このように、吸気バルブ側からの吸気脈動の反射派(逆流)が吸気開閉弁に到達する期間に吸気開閉弁を閉止するように制御すれば、吸気脈動の反射派を吸気開閉弁によって他の吸気行程気筒の吸気マニホールド側に反射させることができて、吸気脈動の反射派を有効に利用して充填効率を更に向上させることができる。
【0010】
この場合、請求項3のように、エアフローメータの出力から検出される吸気脈動が小さくなるように吸気開閉弁の閉止タイミング及び/又は閉止期間をフィードバック制御するようにすると良い。このようにすれば、フィードバック制御により充填効率をより確実に向上させることができる。
【0011】
更に、請求項4のように、内燃機関の運転領域毎に制御手段の制御データを学習してその学習値を書き換え可能な不揮発性の記憶手段に記憶する学習手段を備え、吸気開閉弁の開閉動作の制御を開始する際に、前記学習手段により学習済みの運転領域では、前記学習値を初期値として吸気開閉弁の開閉動作の制御を開始するようにしても良い。このようにすれば、学習済みの運転領域では、吸気開閉弁の開閉動作の制御開始当初から吸気開閉弁の閉止タイミング及び/又は閉止期間を最適値付近に制御して充填効率を向上させることができる。
【0012】
また、吸気通路内で吸入空気の逆流が発生すると、筒内に向かう吸入空気の順方向の流れが妨げられて、充填効率が低下する。この点を考慮して、請求項5のように、吸気バルブの開閉特性(バルブタイミング、リフト量等)を変化させる可変吸気バルブ装置を備えた内燃機関の制御装置において、内燃機関の吸入空気の逆流を検出可能なエアフローメータと、前記エアフローメータの出力に基づいて逆流が発生しないように前記吸気バルブの開閉特性を制御する制御手段とを備えた構成としても良い。このように、逆流を検出可能なエアフローメータを用いて、当該エアフローメータで逆流が検出されないように吸気バルブの開閉特性を制御すれば、内燃機関の製造ばらつきや経時変化があっても、充填効率を低下させる要因となる吸入空気の逆流を確実に防止できて、充填効率を向上させることができる。
【0013】
この場合、請求項6のように、エアフローメータは、内燃機関の吸気脈動も検出可能であり、前記エアフローメータの出力に基づいて逆流が発生しない範囲内で吸気脈動が大きくなるように吸気バルブの開閉特性を制御するようにしても良い。このようにすれば、充填効率を低下させる要因となる吸入空気の逆流を防止しながら、吸気脈動を有効に利用して充填効率を更に向上させることができる。
【0014】
更に、請求項7のように、内燃機関の運転領域毎に前記制御手段の制御データを学習してその学習値を書き換え可能な不揮発性の記憶手段に記憶する学習手段を備え、吸気バルブの開閉特性の制御を開始する際に、前記学習手段により学習済みの運転領域では、前記学習値を初期値として吸気バルブの開閉特性の制御を開始するようにしても良い。このようにすれば、学習済みの運転領域では、吸気バルブの開閉特性の制御開始当初から吸気バルブの開閉特性を最適値付近に制御して充填効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体化した2つの実施例1,2を説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例1を図1乃至図5に基づいて説明する。
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。
内燃機関であるエンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側には、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。このエアフローメータ14は、吸入空気量の変化に応じて出力が応答良く変化する高応答型のエアフローメータであり、吸気脈動や逆流も検出可能となっている。逆流発生時には、エアフローメータ14の出力がマイナス値となる。
【0017】
エアフローメータ14の下流側には、モータ15によって開度調節されるスロットルバルブ16と、このスロットルバルブ16の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサ17とが設けられている。図1及び図2に示すように、このスロットルバルブ16の下流側の集合吸気管12a(吸気通路)には、該集合吸気管12a内の通路を開閉する吸気開閉弁18が設けられ、この吸気開閉弁18の開閉動作がモータ19等のアクチュエータによって駆動される。
【0018】
吸気開閉弁18の下流側には、サージタンク12bが設けられ、該サージタンク12bには、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド20が設けられ、各気筒の吸気マニホールド20の吸気ポート近傍に、それぞれ燃料を噴射する燃料噴射弁21が取り付けられている。この場合、各気筒の吸気バルブ31から吸気開閉弁18までの吸気通路の長さが同一となるように各気筒の吸気マニホールド20の長さが同一となるように構成されている。また、エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ22が取り付けられ、各点火プラグ22の火花放電によって筒内の混合気に着火される。
【0019】
一方、エンジン11の排気管23には、排出ガスの空燃比又はリッチ/リーン等を検出する排出ガスセンサ24(空燃比センサ、酸素センサ等)が設けられ、この排出ガスセンサ24の下流側に、排出ガスを浄化する三元触媒等の触媒25が設けられている。
【0020】
また、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ26が取り付けられている。また、エンジン11のクランク軸27の外周側には、クランク軸27が所定クランク角回転する毎にパルス信号を出力するクランク角センサ28が取り付けられ、このクランク角センサ28の出力信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。
【0021】
これら各種センサの出力は、エンジン制御回路(以下「ECU」と表記する)30に入力される。このECU30は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶されたエンジン制御用の各ルーチン(図示せず)を実行することで、各気筒の燃料噴射弁21の燃料噴射量や点火プラグ22の点火時期を制御する。
【0022】
更に、ECU30は、後述する図4及び図5の吸気開閉弁間欠閉止制御ルーチンを実行することで、エアフローメータ14の出力から検出される吸気脈動が小さくなるように吸気開閉弁18の開閉動作を制御する。
【0023】
ここで、図3(4気筒エンジンの例)を用いて、各気筒(#1〜#4)の吸気行程と吸気脈動の波形と吸気開閉弁18の閉止タイミングTVID及び閉止期間との関係を説明する。各気筒の吸気行程毎に吸入空気量が増減する吸気脈動が発生し、エアフローメータ14の部分で検出する吸気脈動が大きくなるほど、吸気開閉弁18による過給効果が減少して、充填効率が低下するという特性がある。
【0024】
そこで、各気筒の吸気行程と吸気脈動タイミングとの関係を考慮して決められた所定期間、具体的には、吸気バルブ31側からの吸気脈動の反射派(逆流)が吸気開閉弁18に到達する期間(吸気脈動波形の極小点付近の期間)に吸気開閉弁18を閉止し、他の期間に該吸気開閉弁18を開放するように制御する“間欠閉止制御”を実行する。そして、この間欠閉止制御の実行中に、エアフローメータ14の出力から検出される吸気脈動が小さくなるように吸気開閉弁18の閉止タイミングTVID(及び/又は閉止期間)をフィードバック制御する。
【0025】
更に、エンジン運転領域毎に吸気開閉弁18の閉止タイミングTVIDを学習してその学習値を書き換え可能な不揮発性の記憶手段であるバックアップRAM等のメモリに記憶しておき、吸気開閉弁18の間欠閉止制御を開始する際に、学習済みのエンジン運転領域では、前記学習値を吸気開閉弁18の閉止タイミングTVIDの初期値にセットして吸気開閉弁18の間欠閉止制御を開始する。このようにすれば、学習済みのエンジン運転領域では、吸気開閉弁18の間欠閉止制御開始当初から吸気開閉弁18の閉止タイミングTVIDを最適値付近に制御して充填効率を向上させることができる。
【0026】
以上説明した本実施例1の吸気開閉弁18の間欠閉止制御は、ECU30によって図4及び図5の吸気開閉弁間欠閉止制御ルーチンに従って次のように実行される。本ルーチンは、エンジン運転中に所定周期で実行され、特許請求の範囲でいう制御手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まずステップ101で、エアフローメータ14の出力、エンジン回転速度、エンジン負荷(筒内充填空気量、スロットル開度、アクセル開度等)を入力する入力処理を実行する。
【0027】
この後、ステップ102に進み、エンジン回転速度、エンジン負荷(筒内充填空気量、スロットル開度、アクセル開度等)に基づいて吸気脈動発生領域であるか否かを判定する。一般に、吸気脈動は、スロットル全開付近で発生しやすい。尚、エアフローメータ14の出力から検出される吸気脈動幅[つまり吸気脈動波形の極大点(ピーク点)と極小点(ボトム点)との差分値]が所定値以上であるか否かで、吸気脈動発生領域であるか否かを判定するようにしても良い。
【0028】
上記ステップ102で、吸気脈動発生領域ではないと判定されれば、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。これに対して、上記ステップ102で、吸気脈動発生領域であると判定されれば、ステップ103に進み、エンジン回転速度等に応じて吸気開閉弁18の閉止期間をマップ等により算出する。尚、吸気脈動幅に応じて吸気開閉弁18の閉止期間をマップ等により算出するようにしても良い。
【0029】
この後、ステップ104に進み、現在のエンジン運転領域における吸気開閉弁18の閉止タイミングTVIDを学習済みであるか否かを判定し、学習済みであれば、ステップ105に進み、現在のエンジン運転領域に対応する吸気開閉弁18の閉止タイミングTVIDの学習値をメモリから読み出して、この学習値を吸気開閉弁18の閉止タイミングTVIDの初期値とする。
【0030】
これに対して、上記ステップ104で、現在のエンジン運転領域における吸気開閉弁18の閉止タイミングTVIDが学習されていないと判定されれば、ステップ106に進み、エンジン回転速度等に応じて吸気開閉弁18の閉止タイミングTVIDの初期値をマップ等により算出する。尚、吸気脈動幅に応じて吸気開閉弁18の閉止タイミングTVIDの初期値をマップ等により算出するようにしても良い。
【0031】
以上のようにして、ステップ105又は106で、吸気開閉弁18の閉止タイミングTVIDの初期値を設定した後、ステップ107に進み、閉止タイミングTVIDのフィードバック補正量vidfbを所定値KVIDINIに設定して、次のステップ108で、吸気開閉弁18の間欠閉止制御を開始し、吸気開閉弁18の閉止タイミングTVIDの初期値にて吸気開閉弁18を閉止し、上記ステップ103で算出した閉止期間経過後に吸気開閉弁18を開放する。この後、ステップ109に進み、吸気脈動波形の極大点(ピーク点)と極小点(ボトム点)との差分から吸気脈動幅Qw0を算出する。
【0032】
この後、図5のステップ110に進み、前回の閉止タイミングTVIDにフィードバック補正量vidfbを加算して、今回の閉止タイミングTVIDを求め、次のステップ111で、今回の閉止タイミングTVIDにて吸気開閉弁18を閉止し、閉止期間経過後に吸気開閉弁18を開放する。この後、ステップ112に進み、吸気脈動波形の極大点(ピーク点)と極小点(ボトム点)との差分から吸気脈動幅Qwを算出する。
【0033】
この後、ステップ113に進み、前回の吸気脈動幅Qw0から今回の吸気脈動幅Qwを差し引いて吸気脈動幅変化量QwDIFを求める。
QwDIF=Qw0−Qw
【0034】
吸気脈動幅変化量QwDIFがプラス値となる場合は、吸気脈動幅が小さくなる方向(つまり充填効率が最大となる閉止タイミングTVIDに近付く方向)に制御されていることを意味し、一方、吸気脈動幅変化量QwDIFがマイナス値となる場合は、吸気脈動幅が大きくなる方向(つまり充填効率が最大となる閉止タイミングTVIDから遠ざかる方向)に制御されていることを意味する。
【0035】
この後、ステップ114に進み、吸気脈動幅変化量QwDIFにフィードバックゲインKVIDGAINに乗算した値をフィードバック補正量vidfbに加算することで、フィードバック補正量vidfbを吸気脈動幅変化量QwDIFに応じて修正する。
vidfb=vidfb+QwDIF×KVIDGAIN
【0036】
この後、ステップ115に進み、次回の演算に備えて、今回の吸気脈動幅Qwを前回値Qw0として記憶する。
Qw0=Qw
【0037】
そして、次のステップ116で、吸気脈動が発生しない領域に移行したか否かを判定し、まだ吸気脈動発生領域が続いていれば、上記ステップ110〜115の処理を繰り返す。これにより、吸気脈動発生領域が続いている期間は、吸気脈動幅が小さくなるように吸気開閉弁18の閉止タイミングTVIDをフィードバック補正して、充填効率が最大となる閉止タイミングTVIDに制御する。
【0038】
その後、吸気脈動が発生しなくなった時点で、吸気開閉弁18の間欠閉止制御を終了して吸気開閉弁18を開放して、ステップ117に進み、吸気開閉弁18の閉止タイミングTVIDの最終制御結果を学習値としてバックアップRAM等のメモリに記憶する。この学習値は、エンジン運転条件毎に学習してメモリに記憶する。このステップ117の処理が特許請求の範囲でいう学習手段としての役割を果たす。
【0039】
以上説明した本実施例1によれば、吸気脈動が大きくなるほど充填効率が低下するという特性に着目して、スロットルバルブ16の下流側の集合吸気管12aに吸気開閉弁18を設け、吸気脈動波形の極小点付近(ボトム圧付近)のタイミングに合わせて吸気開閉弁18を間欠的に閉止させる間欠閉止制御を実行すると共に、エアフローメータ14の出力から検出される吸気脈動が小さくなるように吸気開閉弁18の閉止タイミングTVIDをフィードバック制御するようにしたので、吸気開閉弁18の間欠閉止制御によって充填効率を向上させることができる。この間欠閉止制御の際に、エアフローメータ14の出力から検出される吸気脈動が小さくなるように吸気開閉弁18の閉止期間をフィードバック制御するようにしたり、閉止期間と閉止タイミングTVIDの両方をフィードバック制御するようにしても良い。
【0040】
しかも、本実施例1では、エアフローメータ14の出力から吸気脈動を検出するため、エンジン11の製造ばらつきや経時変化があっても、その影響による吸気脈動のばらつきを吸気開閉弁18の間欠閉止制御に反映させて確実に充填効率を向上させることができる。更に、吸気脈動検出可能なエアフローメータ14と吸気開閉弁18を設けるだけの比較的簡単な構成であるため、従来の可変吸気システムと比較して、構成が簡単で、装置全体を小型化することができ、低コスト化の要求も満たすことができる。
【0041】
更に、本実施例1では、吸気バルブ31側からの吸気脈動の反射派(逆流)が吸気開閉弁18に到達する期間に吸気開閉弁18を閉止するようにしたので、吸気脈動の反射派を吸気開閉弁18によって他の吸気行程気筒の吸気マニホールド20側に反射させることができて、吸気脈動の反射派を有効に利用して充填効率を効果的に向上させることができる。
【0042】
尚、図4及び図5の吸気開閉弁間欠閉止制御ルーチンでは、エアフローメータ14の出力から検出される吸気脈動が小さくなるように吸気開閉弁18の閉止タイミングTVIDをフィードバック制御するようにしたが、吸気開閉弁18の閉止期間をフィードバック制御したり、閉止タイミングTVIDと閉止期間の両方をフィードバック制御するようにしても良い。
【実施例2】
【0043】
図6及び図7に示す本発明の実施例2は、吸気バルブ31の開閉タイミング(以下「吸気VCT」と表記する)を変化させる可変吸気バルブタイミング装置32(可変吸気バルブ装置)を備えたシステムに適用される実施例である(前記実施例1で必要とした吸気開閉弁18は、本実施例2では不要である)。その他のシステム構成は、前記実施例1と同じである。
【0044】
吸気管12内で吸入空気の逆流が発生すると、筒内に向かう吸入空気の順方向の流れが妨げられて、充填効率が低下する。この点を考慮して、本実施例2では、吸入空気の逆流及び脈動を検出可能なエアフローメータ14を用い、エアフローメータ14の出力に基づいて逆流が発生しないように吸気VCTを制御すると共に、逆流が発生しない範囲内で吸気脈動が大きくなるように目標吸気VCTを補正する。このようにすれば、エンジン11の製造ばらつきや経時変化があっても、充填効率を低下させる要因となる吸入空気の逆流を確実に防止しながら、吸気脈動を有効に利用して充填効率を効果的に向上させることができる。
【0045】
更に、エンジン運転領域毎に目標吸気VCT補正量を学習してその学習値を書き換え可能な不揮発性の記憶手段であるバックアップRAM等のメモリに記憶しておき、吸気VCTの制御を開始する際に、学習済みのエンジン運転領域では、前記学習値を目標吸気VCT補正量の初期値にセットして吸気VCTの制御を開始する。このようにすれば、学習済みのエンジン運転領域では、吸気VCTの制御開始当初から吸気VCTを最適値付近に制御して充填効率を向上させることができる。
【0046】
以上説明した本実施例2の吸気VCTの制御は、ECU30によって図7の吸気VCT制御ルーチンに従って次のように実行される。本ルーチンは、エンジン運転中に所定周期で実行され、特許請求の範囲でいう制御手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まずステップ201で、エアフローメータ14の出力、エンジン回転速度、エンジン負荷、冷却水温等のエンジン運転条件を検出する各種センサ出力等を入力する入力処理を実行する。
【0047】
この後、ステップ202に進み、現在のエンジン運転条件に基づいて吸気VCT制御実行条件が成立しているか否かを判定し、吸気VCT制御実行条件が成立していなければ、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
【0048】
これに対して、上記ステップ202で、吸気VCT制御実行条件が成立していると判定されれば、ステップ203に進み、現在のエンジン運転領域における目標吸気VCT補正量を学習済みであるか否かを判定し、学習済みであれば、ステップ105に進み、現在のエンジン運転領域に対応する目標吸気VCT補正量の学習値をメモリから読み出して、この学習値を初期値とする。
【0049】
一方、上記ステップ203で、現在のエンジン運転領域における目標吸気VCT補正量が学習されていないと判定されれば、ステップ205に進み、目標吸気VCT補正量を初期値(例えば0)にセットする。
【0050】
この後、ステップ206に進み、吸気VCT制御を実行して、実吸気VCTを目標吸気VCTに一致させるように可変吸気バルブタイミング装置32の駆動油圧をフィードバック制御する。この後、ステップ207に進み、エアフローメータ14の出力がマイナス値であるか否かで逆流が発生しているか否かを判定し、逆流が発生していると判定されれば、ステップ208に進み、目標吸気VCTを遅角補正する。この際、目標吸気VCTの遅角補正量は、予め設定された一定値でも良いが、エンジン運転条件毎にマップ等で設定しても良い。
【0051】
これに対して、上記ステップ207で、逆流が発生していないと判定されれば、ステップ209に進み、逆流が発生しない範囲内で吸気脈動が最大となるように目標吸気VCTを進角補正する。この際、目標吸気VCTの進角補正量は、エンジン運転条件毎にマップ等で設定しても良いし、予め決められた一定値ずつ目標吸気VCTの進角補正する処理を繰り返して、逆流が発生しない範囲内で吸気脈動が最大となる目標吸気VCTの進角補正量を探索するようにしても良い。
【0052】
この後、ステップ210に進み、吸気VCT制御実行条件が不成立であるか否かを判定し、まだ吸気VCT制御実行条件が成立した状態が続いていれば、上述したステップ206〜209の処理を繰り返して、逆流が発生しない範囲内で吸気脈動が最大となるように目標吸気VCTを補正する。
【0053】
その後、吸気VCT制御実行条件が不成立になった時点で、ステップ210で「Yes」と判定されて、ステップ211に進み、最終的な目標吸気VCT補正量を学習値としてバックアップRAM等のメモリに記憶する。この学習値は、エンジン運転条件毎に学習してメモリに記憶する。このステップ211の処理が特許請求の範囲でいう学習手段としての役割を果たす。
【0054】
以上説明した本実施例2によれば、吸気管12内で吸入空気の逆流が発生すると、筒内に向かう吸入空気の順方向の流れが妨げられて、充填効率が低下する点を考慮して、エアフローメータ14の出力に基づいて逆流が発生しないように吸気VCTを制御する構成としたので、エンジン11の製造ばらつきや経時変化があっても、充填効率を低下させる要因となる吸入空気の逆流を確実に防止できて、充填効率を向上させることができる。
【0055】
しかも、本実施例2では、エアフローメータ14の出力に基づいて逆流が発生しない範囲内で吸気脈動が大きくなるように吸気VCTを制御する構成としたので、充填効率を低下させる要因となる吸入空気の逆流を防止しながら、吸気脈動を有効に利用して充填効率を更に向上させることができる。
【0056】
尚、本実施例2では、逆流が発生しないように吸気VCTを制御する構成としたが、吸気バルブ31の他の開閉特性(リフト量、作用角等)を制御する構成としても良い。
【0057】
その他、本発明は、吸気ポート噴射エンジンに限定されず、筒内噴射エンジンや、吸気ポート噴射用の燃料噴射弁と筒内噴射用の燃料噴射弁の両方を備えたデュアル噴射エンジンにも適用して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例1におけるエンジン制御システム全体の概略構成図である。
【図2】実施例1のエンジンの吸気系の構成を概略的に示す図である。
【図3】実施例1のエンジンの各気筒(#1〜#4)の吸気行程と吸気脈動の波形と吸気開閉弁の閉止タイミングTVID及び閉止期間との関係を説明するタイムチャートである。
【図4】実施例1の吸気開閉弁間欠閉止制御ルーチンの前半部の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】実施例1の吸気開閉弁間欠閉止制御ルーチンの後半部の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施例2におけるエンジン制御システム全体の概略構成図である。
【図7】実施例2の吸気VCT制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
11…エンジン(内燃機関)、12…吸気管、12a…集合吸気管(吸気通路)、12b…サージタンク、14…エアフローメータ、16…スロットルバルブ、17…スロットル開度センサ、18…吸気開閉弁、19…モータ、20…吸気マニホールド、21…燃料噴射弁、22…点火プラグ、23…排気管、24…排出ガスセンサ、28…クランク角センサ、30…ECU(制御手段,学習手段)、31…吸気バルブ、32…可変吸気バルブタイミング装置(可変吸気バルブ装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気脈動を検出可能なエアフローメータと、
内燃機関のスロットルバルブよりも下流側の吸気通路に設けられ、該吸気通路を開閉する吸気開閉弁と、
前記エアフローメータの出力から検出される吸気脈動が小さくなるように前記吸気開閉弁の開閉動作を制御する制御手段と
を備えていることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記吸気開閉弁は、前記吸気通路のうちの各気筒の吸気マニホールドよりも上流側の集合吸気管に設けられ、
前記制御手段は、各気筒の吸気行程と吸気脈動タイミングとの関係を考慮して決められた所定期間に前記吸気開閉弁を閉止し、他の期間に該吸気開閉弁を開放するように制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記エアフローメータの出力から検出される吸気脈動が小さくなるように前記吸気開閉弁の閉止タイミング及び/又は閉止期間をフィードバック制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
内燃機関の運転領域毎に前記制御手段の制御データを学習してその学習値を書き換え可能な不揮発性の記憶手段に記憶する学習手段を備え、
前記制御手段は、前記吸気開閉弁の開閉動作の制御を開始する際に、前記学習手段により学習済みの運転領域では、前記学習値を初期値として前記吸気開閉弁の開閉動作の制御を開始することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
吸気バルブの開閉特性を変化させる可変吸気バルブ装置を備えた内燃機関の制御装置において、
内燃機関の吸入空気の逆流を検出可能なエアフローメータと、
前記エアフローメータの出力に基づいて逆流が発生しないように前記吸気バルブの開閉特性を制御する制御手段と
を備えていることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記エアフローメータは、内燃機関の吸気脈動も検出可能であり、
前記制御手段は、前記エアフローメータの出力に基づいて逆流が発生しない範囲内で吸気脈動が大きくなるように前記吸気バルブの開閉特性を制御することを特徴とする請求項5に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
内燃機関の運転領域毎に前記制御手段の制御データを学習してその学習値を書き換え可能な不揮発性の記憶手段に記憶する学習手段を備え、
前記制御手段は、前記吸気バルブの開閉特性の制御を開始する際に、前記学習手段により学習済みの運転領域では、前記学習値を初期値として前記吸気バルブの開閉特性の制御を開始することを特徴とする請求項5又は6に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−270483(P2009−270483A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121437(P2008−121437)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】