説明

内燃機関

【課題】内燃機関停止の状態で、燃料噴射弁や燃料ポンプを含む燃料噴射経路におけるエマルジョン燃料の主燃料への置換を効率よく行うことを課題とする。
【解決手段】エンジン100は、切替弁8によってエマルジョン燃料と主燃料とを切り替える。エンジン100は、切替弁8の下流側に配設された燃料ポンプ9、燃料ポンプ9内への燃料の吸入量を調整する吸入調量弁9a、9b、燃料ポンプ9の下流側に配設された燃料噴射弁11、燃料噴射弁11のリターン燃料が流通するリターン経路13を通じて主燃料を燃料噴射弁11側に圧送する燃料置換ポンプ4、エンジン100の停止状態において燃料ポンプ9を駆動するアクチュエータ22、燃料回収経路20を通じて燃料ポンプ9及び燃料噴射弁11から流出した燃料を回収し貯留するエマルジョン燃料貯留部17、燃料回収経路20内の燃料の流通を遮断する三方弁21を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関、特にエマルジョン燃料を用いる内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エマルジョン燃料を使用することができる内燃機関が知られている。エマルジョン燃料は、軽油や重油といった主燃料油中に、一定割合で水やアルコールを混入させ、撹拌することによって水等を微粒化させたものである。このようなエマルジョン燃料を使用する内燃機関では、内燃機関停止時に燃料噴射弁(インジェクタ)や、この燃料噴射弁に燃料を供給する燃料配管、燃料ポンプ、コモンレール内にエマルジョン燃料が残留することが懸念される。例えば、主燃料に水を混入させた場合、燃料噴射弁等にエマルジョン燃料が残留すると内燃機関の停止中にエマルジョン燃料が水と主燃料とに分離する。その結果、分離した水によって燃料経路内に錆が生じる。さらに、内燃機関を再始動しようとしたときに、燃料噴射ノズルから水が噴射されると、ピストンリングや燃料噴射ノズルの破損を招き、内燃機関の再始動自体が円滑に行えないという問題がある。このような問題を解決すべく、特許文献1にディーゼルエンジン・システムが提案されている。このディーゼルエンジン・システムでは、エンジン始動時やエンジン停止時に水の供給を停止し、水が混入していない主燃料を燃料噴射系に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−138870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に開示されたディーゼルエンジン・システムは、水が混入されていない主燃料の噴射を所定時間実施し、燃料噴射弁や、噴射ポンプ(燃料ポンプ)内のエマルジョン燃料の入れ替えを行っている。このため、エンジン停止前にアイドリング状態を維持することになり、燃費が悪化する。特に、燃料噴射弁のニードルを駆動するアクチュエータ部分や噴射ポンプ内に貯留したエマルジョン燃料は排出され難く、これらを十分に排出しようとするとアイドリング継続時間が長くなる。
【0005】
そこで、本明細書開示の内燃機関は、内燃機関停止の状態で、燃料噴射弁や燃料ポンプを含む燃料噴射経路におけるエマルジョン燃料の主燃料への置換を効率よく行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、本明細書開示の内燃機関は、切替弁によってエマルジョン燃料と主燃料との切り替えが行われる内燃機関であって、前記切替弁の下流側に配設された燃料ポンプと、前記燃料ポンプ内への燃料の吸入量を調整する吸入調量弁と、前記燃料ポンプの下流側に配設された燃料噴射弁と、前記燃料噴射弁のリターン燃料が流通するリターン経路を通じて、主燃料を前記燃料噴射弁側に圧送する燃料置換ポンプと、内燃機関の停止状態において前記燃料ポンプを駆動するアクチュエータと、内燃機関の停止状態時に、燃料回収経路を通じて前記燃料ポンプ及び前記燃料噴射弁から流出した燃料を回収し貯留するエマルジョン燃料貯留部と、前記燃料回収経路内の燃料の流通を遮断する開閉弁と、前記内燃機関の停止状態時に、前記吸入調量弁を開きつつ前記アクチュエータによって前記燃料ポンプを駆動するとともに、前記燃料置換ポンプを駆動させ、前記開閉弁を開弁状態とする燃料置換制御を行う制御部と、を備えている。
【0007】
前記燃料置換ポンプを電動とすることによって、内燃機関のアイドリングを停止しても燃料置換を行うことができる。また、燃料噴射弁内を主燃料が逆流するので、燃料噴射弁内のエマルジョン燃料を効率よく主燃料に置換することができる。ここで、逆流とは、燃料ポンプと燃料噴射弁が接続される燃料経路にあっては、燃料噴射弁によって燃料噴射が行われるときの燃料の流れ方向とは逆向きに流れることを意味する。また、燃料噴射弁のリターン経路にあっては、燃料噴射弁からのリターン燃料が流れる方向とは逆向きに流れることを意味する。
【0008】
さらに、吸入調量弁を開きつつ燃料ポンプを駆動することによって、燃料噴射弁側から流入した主燃料と燃料ポンプ内のエマルジョン燃料とを効率よく置換することができる。ここで、燃料ポンプを駆動するアクチュエータは、専用品を準備してもよいが、スタータモータを利用することができる。また、内燃機関がハイブリッド車に搭載されるときは、ハイブリッド車の駆動用のモータを利用することもできる。その他、車両に装備されるモータ等のアクチュエータと兼用することができる。
【0009】
このような内燃機関における前記燃料回収経路は、前記燃料ポンプの上流側の燃料流路に接続され、前記開閉弁は、前記燃料回収経路と前記燃料流路との接続部に配設された三方弁とすることができる。開閉弁を三方弁とした場合、三方弁の開弁状態は、エマルジョン燃料貯留部側と燃料ポンプ側を接続した状態をいう。三方弁をこのような開弁状態とすることにより、燃料噴射弁、燃料ポンプを逆流したエマルジョン燃料をエマルジョン燃料貯留部に回収することができる。
【0010】
また、内燃機関は、前記燃料置換ポンプの下流で分岐し、前記燃料ポンプの上流側に接続された分岐流路を備え、前記燃料回収経路は、前記燃料ポンプと前記燃料噴射弁との間の燃料流路に接続された構成とすることができる。分岐経路を備えることにより、燃料置換ポンプにより圧送された主燃料を燃料ポンプと燃料噴射弁の2方向から導入することができる。燃料ポンプから排出されたエマルジョン燃料、燃料噴射弁から排出されたエマルジョン燃料は、ともに燃料回収経路を通じてエマルジョン燃料貯留部に回収される。
【0011】
本明細書開示の他の内燃機関は、切替弁によってエマルジョン燃料と主燃料との切り替えが行われる内燃機関であって、前記切替弁の下流側に配設された燃料ポンプと、前記燃料ポンプ内への燃料の吸入量を調整する吸入調量弁と、前記燃料ポンプの下流側に配設された燃料噴射弁と、前記燃料噴射弁のリターン燃料が流通するリターン経路を通じて、主燃料を前記燃料噴射弁側に圧送する燃料置換ポンプと、内燃機関の停止状態時に、前記燃料ポンプと前記噴射弁との間の燃料流路に接続された燃料回収経路を通じて前記燃料ポンプ及び前記燃料噴射弁から流出した燃料を回収し貯留するエマルジョン燃料貯留部と、前記燃料回収経路内の燃料の流通を遮断する開閉弁と、前記燃料置換ポンプの下流で分岐し、前記燃料ポンプの上流側に接続された分岐流路と、前記内燃機関の停止状態時に、前記吸入調量弁を開きつつ、前記燃料置換ポンプを駆動させ、前記開閉弁を開弁状態とする燃料置換制御を行う制御部と、を備えている。
【0012】
分岐経路を備えることにより、燃料置換ポンプにより圧送された主燃料を燃料ポンプと燃料噴射弁の2方向から導入することができる。アクチュエータによる燃料ポンプの駆動を伴わずにエマルジョン燃料と主燃料との置換を行う形態である。
【0013】
これらの内燃機関における前記制御部は、内燃機関内を流通する冷却水温度及び/又は外気温が低温であるほど前記燃料置換制御による置換燃料量を増量する制御を行うことが望ましい。次回の内燃機関始動に備える措置である。内燃機関始動時は、燃焼の安定性を保つ上で、エマルジョン燃料を用いるよりも主燃料を用いた方が有利である。外気温や、冷却水温が低ければ低いほど内燃機関始動時に消費される燃料の量は多くなるため、これに対処すべく、低温であるほど置換燃料量を増量する。
【発明の効果】
【0014】
本明細書開示の内燃機関によれば、内燃機関停止の状態で、燃料噴射弁や燃料ポンプを含む燃料噴射経路におけるエマルジョン燃料の主燃料への置換を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施例1の内燃機関の概略構成図である。
【図2】図2は、実施例1の内燃機関が備える高圧ポンプの概略構成図である。
【図3】図3は、実施例1の内燃機関の制御の一例を示すフロー図である。
【図4】図4は、実施例2の内燃機関の概略構成図である。
【図5】図5は、実施例2の内燃機関が備える高圧ポンプの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、内燃機関の一例であるディーゼルエンジン(以下、「エンジン」という)100の概略構成図である。エンジン100は、切替弁8によってエマルジョン燃料と主燃料との切り替えが行われる。エンジン100は、主燃料タンク1と水タンク2を備える。主燃料は軽油である。エマルジョン燃料は主燃料である軽油と水とを混合することによって生成される。
【0018】
主燃料タンク1には、第1流路3が接続されている。第1流路3上には、燃料置換ポンプ4が配設されている。燃料置換ポンプ4は、電動ポンプである。燃料置換ポンプ4の吐出圧は、後述する燃料ポンプ9の吐出圧と比較して低くてよい。燃料置換ポンプ4は、後述する燃料噴射弁11のリターン燃料が流通する第4流路13(リターン経路)を通じて、主燃料を燃料噴射弁11側に圧送する。
【0019】
水タンク2には、第2流路5を介してエマルジョン燃料を生成するミキサ6が接続されている。ミキサ6には第3流路7が接続されている。第3流路7上には、切替弁8が配設されている。切替弁8は、図1に示すように配置された三つの口部8a〜8cを備えている。切替弁8の下流側には、燃料ポンプ9とコモンレール(CL)10が配設されている。切替弁8は、燃料ポンプ9側へ送られる燃料を主燃料とエマルジョン燃料との間で切り替える。燃料ポンプ9は、高圧で燃料をコモンレール10に圧送する。
【0020】
燃料ポンプ9は、エンジン本体12が備えるカムシャフトの回転力を駆動源としている。燃料ポンプ9は、図2に示すように、シャフト91によって駆動されるカム92と、このカム92によってシリンダ94内で往復動を行うプランジャ93を備えている。また、燃料ポンプ9は、上流側(切替弁8側)に第1吸入調量弁9aを備え、下流側(コモンレール10側)に第2吸入調量弁9bを備えている。第1吸入調量弁9aと第2吸入調量弁9bは、燃料ポンプ9内への燃料の吸入量を調整する。プランジャ93が燃料吸入状態となるとき、第1吸入調量弁9aは開弁状態となり、一方、第2吸入調量弁9bは閉弁状態となる。プランジャ93が燃料吐出状態となるとき、第1吸入調量弁9aは閉弁状態となり、第2吸入調量弁9bは開弁状態となる。このように、第1吸入調量弁9aと第2吸入調量弁9bの開閉状態により燃料の流通方向が決まる。
【0021】
燃料ポンプ9、コモンレール10の下流側には燃料噴射弁11が配設されている。燃料噴射弁11は、エンジン本体12に組み付けられている。燃料噴射弁11は、燃料供給口11aとリターン燃料出口11bを備えている。燃料供給口11aには、第3流路7が接続されている。リターン燃料出口11bには、第4流路13が接続されている。第4流路13は燃料噴射弁11からのリターン経路に相当する。第4流路13は、リターン燃料切替部14に接続されている。
【0022】
エンジン100は、主燃料タンク1に接続され、主燃料を燃料ポンプ9側へ供給する第5流路15を備えている。第5流路15は、切替弁8に接続されている。第5流路15は、途中で第6流路16に分岐している。第6流路16は、ミキサ6に接続されている。
【0023】
エンジン100は、エマルジョン燃料貯留部17を備えている。エマルジョン燃料貯留部17は、第7流路18を介してリターン燃料切替部14と接続されている。第7流路18は、燃料噴射弁11によって噴射される燃料がエマルジョン燃料であるときに燃料噴射弁11からのリターン燃料が流通する。なお、リターン燃料切替部14は、主燃料タンク1と第8流路19を介して接続されている。第8流路19は、燃料噴射弁11によって噴射される燃料が主燃料であるときに燃料噴射弁11からのリターン燃料が流通する。
【0024】
エマルジョン燃料貯留部17は、第9流路20を介して第3流路7に接続されている。第9流路20は、ミキサ6と切替弁8との間に接続されている。第9流路20は、燃料回収経路に相当する。エマルジョン燃料貯留部17は、エンジンの停止状態時に、第9流路20(燃料回収経路)を通じて燃料ポンプ9及び燃料噴射弁11から流出した燃料を回収し貯留する。第9流路20は、エマルジョン燃料貯留部17内のエマルジョン燃料が燃料噴射弁11からの噴射に用いられる際の供給経路ともなる。第9流路20と第3流路7との接続部には、第9流路20内の燃料の流通を遮断する開閉弁としての三方弁21が配設されている。三方弁21は、図1に示すように配置された三つの口部21a〜21cを備えている。なお、第9流路20と第3流路7との接続位置を切替弁8と燃料ポンプ9との間として、この接続部に三方弁21を配置するようにしてもよい。
【0025】
エンジン100は、エンジン100の停止状態において燃料ポンプ9を駆動するアクチュエータ22を備えている。アクチュエータ22は、エンジン始動用のスタータモータである。このアクチュエータ22は、エンジン本体が停止した状態であっても燃料ポンプ9を駆動することができる。
【0026】
エンジン100は、制御部に相当するECU23を備える。ECU23は、第1吸入調量弁9a、第2吸入調量弁9bと電気的に接続されている。ECU23は、燃料置換ポンプ4、アクチュエータ22と電気的に接続されている。ECU23は、切替弁8、三方弁21、リターン燃料切替部14と電気的に接続されている。そして、ECU23は、エンジン100の停止状態時に、第1吸入調量弁9a及び第2吸入調量弁9bを開きつつアクチュエータ22によって燃料ポンプ9を駆動する。さらに、燃料置換ポンプ4を駆動させ、三方弁21(開閉弁)を開弁状態とする燃料置換制御を行う。ECU23には、冷却水温センサ24、外気温センサ25が接続されている。これらのセンサにより取得された情報は、燃料置換制御に利用される。
【0027】
つぎに、以上のようなエンジン100における燃料の流通について説明する。
【0028】
<主燃料使用時>
燃料噴射弁11から噴射される燃料として主燃料が選択される場合について説明する。ECU23は、主燃料が主燃料タンク1から燃料ポンプ9側に流れるように切替弁8を口部8bと口部8cとが連通した状態とする。ECU23は、第1吸入調量弁9aと第2吸入調量弁9bとをプランジャ93の動きに同期させて交互に開閉する。ECU23は、リターン燃料を主燃料タンク1に戻すように第4流路13と第8流路19とが接続されるようにリターン燃料切替部14を制御する。なお、このとき、三方弁21の連通状態はどのような状態であっても構わない。燃料置換ポンプ4、アクチュエータ22は停止している。
【0029】
<ミキサからのエマルジョン燃料使用時>
燃料噴射弁11から噴射される燃料としてミキサ6から供給されるエマルジョン燃料が選択される場合について説明する。ECU23は、エマルジョン燃料がミキサ6から燃料ポンプ9側に流れるように切替弁8を口部8aと口部8cとが連通した状態とする。また、ECU23は、三方弁21を口部21aと口部21bとが連通した状態とする。ECU23は、第1吸入調量弁9aと第2吸入調量弁9bとをプランジャ93の動きに同期させて交互に開閉する。ECU23は、リターン燃料をエマルジョン燃料貯留部17に戻すように第4流路13と第7流路18とが接続されるようにリターン燃料切替部14を制御する。燃料置換ポンプ4、アクチュエータ22は停止している。
<エマルジョン燃料貯留部からのエマルジョン燃料使用時>
燃料噴射弁11から噴射される燃料としてエマルジョン燃料貯留部17から供給されるエマルジョン燃料が選択される場合について説明する。ECU23は、エマルジョン燃料がエマルジョン燃料貯留部17から燃料ポンプ9側に流れるように切替弁8を口部8aと口部8cとが連通した状態とする。また、ECU23は、三方弁21を口部21cと口部21bとが連通した状態とする。ECU23は、第1吸入調量弁9aと第2吸入調量弁9bとをプランジャ93の動きに同期させて交互に開閉する。ECU23は、リターン燃料をエマルジョン燃料貯留部17に戻すように第4流路13と第7流路18とが接続されるようにリターン燃料切替部14を制御する。燃料置換ポンプ4、アクチュエータ22は停止している。
【0030】
<燃料置換制御時>
エンジン100が停止し、各流路内に残留したエマルジョン燃料を主燃料と置換する場合について説明する。ECU23は、燃料置換ポンプ4とアクチュエータ22を駆動する。また、ECU23は、第1吸入調量弁9a及び第2吸入調量弁9bを共に開弁状態とする。ECU23は、主燃料タンク1内の主燃料が燃料噴射弁11へ流入するように第1流路3と第4流路13とが接続されるようにリターン燃料切替部14を制御する。ECU23は、燃料噴射弁11、コモンレール10、燃料ポンプ9の順に通過した主燃料がエマルジョン燃料貯留部17側へ流れるように切替弁8を口部8aと口部8cとが連通した状態とする。また、ECU23は、三方弁21を口部21bと口部21cとが連通した状態とする。これにより、燃料ポンプ9から燃料噴射弁11を含む燃料噴射経路におけるエマルジョン燃料をエマルジョン燃料貯留部17に回収し、主燃料への置換を効率よく行うことができる。すなわち、燃料噴射弁11について、リターン燃料出口11bから主燃料を導入することで、燃料噴射弁11内のアクチュエータ部等の燃料の置換も効率よく行われる。また、第1吸入調量弁9a及び第2吸入調量弁9bを開弁状態とすることで燃料ポンプ9内へ主燃料を導入することができる。燃料置換制御時において、アクチュエータ22による駆動を停止してもよいが、アクチュエータ22を駆動し、燃料ポンプ9を動作させることにより効率よく燃料ポンプ9内の燃料の置換を行うことができる。特に、シリンダ94とプランジャ93との間に入り込んだ燃料の置換がされやすくなる。
【0031】
つぎに、エンジン100の制御の一例について、図3に示すフロー図を参照しつつ説明する。ECU23は、ステップS1において、エンジン100が停止したか否かを確認する。ステップS1において、エンジン100の停止が確認されたら、ステップS2へ進む。一方、エンジン100の停止が確認されない場合は、ステップS1の処理を繰り返す。ステップS2では、冷却水温センサ24から冷却水温値を取得する。また、外気温センサ25から外気温値を取得する。その後、ステップS3へ進む。
【0032】
ステップS3では、冷却水温値に基づく置換燃料量の増量分を決定する。置換燃料量は、エンジン100が停止した時点で第3流路7内に残留する燃料に置換される主燃料の量である。この置換燃料量の増量分は、冷却水温値が低いほど多い。エンジン100の再始動時は、燃料噴射弁11から主燃料を噴射することが都合がよい。ここで、冷却水温値が低いときは、エンジン再始動時に消費される燃料量が多くなる。そこで、燃料ポンプ9により順次圧送される燃料が貯留される流路内により多くの主燃料を残留させる。
【0033】
ステップS3に引き続き行われるステップS4では、外気温値に基づいて補正量分を決定する。外気温が低い場合は、エンジン再始動時に消費される燃料量がさらに多くなる傾向がある。そこで、外気温が低い場合は、さらに置換燃料量を増量する。
【0034】
ステップS4に引き続き行われるステップ5では、ステップS3で決定した増量分にステップS4で決定した補正分を考慮した増量分に対応する燃料置換制御継続時間を決定する。そして、その時間だけ燃料置換制御を継続する。
【0035】
これにより、エンジン停止の状態で、燃料噴射弁11や燃料ポンプ9を含む燃料噴射経路におけるエマルジョン燃料の主燃料への置換を効率よく行うことができる。エンジン100は、停止しているので、燃費への影響を抑制することができる。
【実施例2】
【0036】
つぎに、実施例2のエンジン200について、図4を参照しつつ説明する。実施例1のエンジン100と異なる点は、まず、燃料置換ポンプ4の下流で第1流路3から分岐し、燃料ポンプ9の上流側で第3流路7に接続された第10流路27を備えた点である。この第10流路26は、分岐流路に相当する。また、燃料回収経路に相当する第11流路27を備えた点である。第11流路27は、エマルジョン燃料貯留部17と、燃料ポンプ9と燃料噴射弁11との間の第3流路7とを接続する。より具体的には、第11流路27は、エマルジョン燃料貯留部17と、燃料ポンプ9とコモンレール10との間に接続されている。そして、第11流路27には、開閉弁21が設けられている。開閉弁21は、実施例1のエンジン100における三方弁21に代えて設けられるものである。なお、エンジン200は、エンジン100と同様に第9流路20を備えている。ただし、エンジン200における第9流路20は、燃料回収経路としての機能は有しておらず、エマルジョン燃料貯留部17から燃料ポンプ9への燃料の供給を行う。その他の構成は、実施例1のエンジン100と同一であるので、共通する構成要素には図面中、同一の参照番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0037】
このようなエンジン200における燃料の流通について説明する。
【0038】
<主燃料使用時>
燃料噴射弁11から噴射される燃料として主燃料が選択される場合について説明する。ECU23は、主燃料が主燃料タンク1から燃料ポンプ9側に流れるように切替弁8を口部8bと口部8cとが連通した状態とする。また、ECU23は、開閉弁28閉弁状態とする。ECU23は、第1吸入調量弁9aと第2吸入調量弁9bとをプランジャ93の動きに同期させて交互に開閉する。ECU23は、リターン燃料を主燃料タンク1に戻すように第4流路13と第8流路19とが接続されるようにリターン燃料切替部14を制御する。燃料置換ポンプ4、アクチュエータ22は停止している。
【0039】
<ミキサ/エマルジョン燃料貯留部からのエマルジョン燃料使用時>
燃料噴射弁11から噴射される燃料としてミキサ6及びエマルジョン燃料貯留部17から供給されるエマルジョン燃料が選択される場合について説明する。ECU23は、エマルジョン燃料がミキサ6から燃料ポンプ9側に流れるように切替弁8を口部8aと口部8cとが連通した状態とする。また、ECU23は、開閉弁28閉弁状態とする。ECU23は、第1吸入調量弁9aと第2吸入調量弁9bとをプランジャ93の動きに同期させて交互に開閉する。ECU23は、リターン燃料をエマルジョン燃料貯留部17に戻すように第4流路13と第7流路18とが接続されるようにリターン燃料切替部14を制御する。燃料置換ポンプ4、アクチュエータ22は停止している。なお、エマルジョン燃料の供給元をミキサ6とエマルジョン燃料貯留部17との間で選択したい場合は、実施例1における三方弁21に相当する手段を用いればよい。
【0040】
<燃料置換制御時>
エンジン100が停止し、各流路内に残留したエマルジョン燃料を主燃料と置換する場合について説明する。ECU23は、燃料置換ポンプ4とアクチュエータ22を駆動する。ミキサ6、エマルジョン燃料貯留部17からエマルジョン燃料が流入しないように切替弁8を口部8bと口部8cとが連通史多情体とする。また、ECU23は、第1吸入調量弁9a及び第2吸入調量弁9bを共に開弁状態とする。ECU23は、主燃料タンク1内の主燃料が燃料噴射弁11へ流入するように第1流路3と第4流路13とが接続されるようにリターン燃料切替部14を制御する。ECU23は、開閉弁28を開弁状態とする。これにより、燃料噴射弁11、コモンレール10の順に通過した主燃料がエマルジョン燃料貯留部17側へ流れる。また、第10流路26、燃料ポンプ9を通過した主燃料がエマルジョン燃料貯留部17側へ流れる。このように2方向から主燃料が導入される。これにより、燃料ポンプ9から燃料噴射弁11を含む燃料噴射経路におけるエマルジョン燃料をエマルジョン燃料貯留部17に回収し、主燃料への置換を効率よく行うことができる。すなわち、燃料噴射弁11について、リターン燃料出口11bから主燃料を導入することで、燃料噴射弁11内のアクチュエータ部等の燃料の置換も効率よく行われる。また、第1吸入調量弁9a及び第2吸入調量弁9bを開弁状態とすることで燃料ポンプ9内へ主燃料を導入することができる。燃料置換制御時において、アクチュエータ22による駆動を停止してもよいが、アクチュエータ22を駆動し、燃料ポンプ9を動作させることにより効率よく燃料ポンプ9内の燃料の置換を行うことができる。特に、シリンダ94とプランジャ93との間に入り込んだ燃料の置換がされやすくなる。
【0041】
以上のようなエンジン200において、ECU23は、実施例1の場合と同様に燃料置換制御を行うことができる。
【0042】
なお、第11流路27と第3流路7と接続部は、燃料ポンプ9と燃料噴射弁11との間であればよい。例えば、コモンレール10が備える調圧弁に第11流路27を接続し、調圧弁を介してエマルジョン燃料をエマルジョン燃料貯留部17に回収するようにしてもよい。
【0043】
また、燃料ポンプ9に代えて、逆止弁91を備えた図5に示すような燃料ポンプ90を採用することができる。この場合、吸入調量弁92は一つあればよい。実施例2のエンジン200は、燃料置換制御時であっても、燃料ポンプにおける燃料の流通方向は、エンジン稼動時の燃料流通方向と同一であるので、逆止弁91を備えた形式であってもよい。
【0044】
また、アクチュエータ22によって燃料ポンプ9を駆動することによって、燃料ポンプ9側から主燃料を導入することができるときは、第10流路26を廃止してもよい。このような構成としても、2方向から主燃料を導入してエマルジョン燃料との置換を行うことができる。
【実施例3】
【0045】
つぎに、実施例3について説明する。実施例3のハード構成は、図4に示した実施例2のエンジン200と同一である。実施例3が実施例2と異なる点は、燃料置換制御時に、アクチュエータ22の駆動を行わない点である。燃料置換制御時において、燃料ポンプ9内には、燃料置換ポンプ4から主燃料が圧送される。また、燃料噴射弁11側からも燃料置換ポンプ4から主燃料が圧送される。このように2方向からの主燃料の導入により燃料の置換が行われる場合は、アクチュエータ22の駆動をやめ、燃料ポンプ9の動作を停止してもよい。アクチュエータ22の駆動をやめることにより、エネルギ消費を抑制することができる。
【0046】
上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。
【符号の説明】
【0047】
1…主燃料タンク
2…水タンク
3…第1流路
4…燃料置換ポンプ
5…第2流路
6…ミキサ
7…第3流路
8…切替弁
9…燃料ポンプ
9a…第1吸入調量弁
9b…第2吸入調量弁
10…コモンレール
11…燃料噴射弁
11a…燃料供給口
11b…リターン燃料出口
12…エンジン本体
13…第4流路
14…リターン燃料切替部
15…第5流路
16…第6流路
17…エマルジョン燃料貯留部
18…第7流路
19…第8流路
20…第9流路
21…三方弁(開閉弁)
21…第9流路
22…アクチュエータ
23…ECU(制御部)
24…冷却水温センサ
25…外気温センサ
26…第10流路
27…第11流路
28…開閉弁
100,200…エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切替弁によってエマルジョン燃料と主燃料との切り替えが行われる内燃機関であって、
前記切替弁の下流側に配設された燃料ポンプと、
前記燃料ポンプ内への燃料の吸入量を調整する吸入調量弁と、
前記燃料ポンプの下流側に配設された燃料噴射弁と、
前記燃料噴射弁のリターン燃料が流通するリターン経路を通じて、主燃料を前記燃料噴射弁側に圧送する燃料置換ポンプと、
内燃機関の停止状態において前記燃料ポンプを駆動するアクチュエータと、
内燃機関の停止状態時に、燃料回収経路を通じて前記燃料ポンプ及び前記燃料噴射弁から流出した燃料を回収し貯留するエマルジョン燃料貯留部と、
前記燃料回収経路内の燃料の流通を遮断する開閉弁と、
前記内燃機関の停止状態時に、前記吸入調量弁を開きつつ前記アクチュエータによって前記燃料ポンプを駆動するとともに、前記燃料置換ポンプを駆動させ、前記開閉弁を開弁状態とする燃料置換制御を行う制御部と、
を、備えたことを特徴とした内燃機関。
【請求項2】
前記燃料置換ポンプの下流で分岐し、前記燃料ポンプの上流側に接続された分岐流路を備え、
前記燃料回収経路は、前記燃料ポンプと前記燃料噴射弁との間の燃料流路に接続されたことを特徴とする請求項1記載の内燃機関。
【請求項3】
切替弁によってエマルジョン燃料と主燃料との切り替えが行われる内燃機関であって、
前記切替弁の下流側に配設された燃料ポンプと、
前記燃料ポンプ内への燃料の吸入量を調整する吸入調量弁と、
前記燃料ポンプの下流側に配設された燃料噴射弁と、
前記燃料噴射弁のリターン燃料が流通するリターン経路を通じて、主燃料を前記燃料噴射弁側に圧送する燃料置換ポンプと、
内燃機関の停止状態時に、前記燃料ポンプと前記噴射弁との間の燃料流路に接続された燃料回収経路を通じて前記燃料ポンプ及び前記燃料噴射弁から流出した燃料を回収し貯留するエマルジョン燃料貯留部と、
前記燃料回収経路内の燃料の流通を遮断する開閉弁と、
前記燃料置換ポンプの下流で分岐し、前記燃料ポンプの上流側に接続された分岐流路と、
前記内燃機関の停止状態時に、前記吸入調量弁を開きつつ、前記燃料置換ポンプを駆動させ、前記開閉弁を開弁状態とする燃料置換制御を行う制御部と、
を、備えたことを特徴とする内燃機関。
【請求項4】
前記制御部は、内燃機関内を流通する冷却水温度及び/又は外気温が低温であるほど前記燃料置換制御による置換燃料量を増量することを特徴とした請求項1乃至3のいずれか一項記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−132911(P2011−132911A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294472(P2009−294472)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】