説明

分散型電源配電システムおよび分散型電源装置

【課題】交流電力系統における電力品質の悪化の発生を引き起こすことを防止し、直流電力を負荷に供給できる分散型電源配電システムを提供する。
【解決手段】交流電力系統4からの交流電力を力率改善して直流電力に変換して出力する力率改善整流回路6と、自ら発電して直流電力を出力する分散型電源1と、力率改善整流回路からの直流電力または分散型電源からの直流電力を選択する電力スイッチ7と、電力スイッチ7の出力側に並列接続される蓄電器3および負荷に電力を供給するための配線8と、電力スイッチを制御する電源制御部2と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型電源配電システムおよび分散型電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電、風力発電、燃料電池発電などによる分散型電源が注目されている。これらの分散型電源から発電される電力は、所謂、クリーンエネルギーないしは新エネルギーと称されるものである。国家の制度支援もあって、分散型電源による発電量は、今後数年の間に、太陽光発電では現在の約10倍の118万kW(キロ・ワット)、風力発電では現在の約23倍の134万kWに増加すると予想されている。そして、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)によれば、2010年度の新エネルギー(太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、中小水力発電、地熱発電)による発電量は、わが国の全発電量約8710億kWの約1.4%である122億kWに増大することとされている。
【0003】
このような、分散型電源からの発電電力は、同期発電機を用いた従来の交流電力系統(商用電源)と連系する方式が一般的に採用されている。すなわち、分散型電源によって発電される電力の余剰分は交流電力系統へ送られている。このようにして、分散型電源からの余剰電力を有効に利用することが可能となされている。そのために、分散型電源が、例えば、太陽光発電による場合であれば、太陽光発電で得られた直流電力を、交流電力系統の正弦波の電圧波形と、振幅および位相が揃った交流電力に変換するインバータが用いられている。このような、インバータは、交流電力系統および屋内配線に並列に接続され、分散型電源からの余剰電力を交流電力系統へ送り出すとともに、屋内配線に接続される交流で働く電気機器に電力を供給している(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
特許文献1によれば、分散型電源の一種である太陽光発電システムの基本的部分は、図10に示すように構成されている。太陽電池101からの電力は、インバータ102において、直流から交流に変換され、通常はON(導通状態)となっているスイッチ104を介して交流電力系統110に接続されている。負荷107は交流電源によって動作する一般的な家庭内または工場内の機器である。同期追従制御回路111は、計器用変圧器PTから得た交流電力系統110の交流電圧VACと計器用変流器CTから得た交流電流IACとをその入力信号とし、交流電圧VACに同期した交流電圧と力率1の交流電流とを形成するように演算された所要の指令信号SINをインバータ102に与える。このようにして、インバータ102から出力される交流電力が負荷107で消費される電力量を上回る場合には、自動的に交流電力系統110に電力が送られる。また、負荷107で消費される電力量が分散型電源である太陽電池101によって供給される電力量よりも大きい場合には、自動的に交流電力系統110から負荷107に電力が供給される。
【0005】
しかしながら、交流電力系統110と同じ電圧波形を作り出すこのようなインバータ102の設計は難しく高価なものであった。そのために、高性能のインバータが常に用いられるとは限らず、インバータ102から交流電力系統110に対して送り出される品質が悪い電力の量が大量となる場合には、交流電力系統において系統擾乱(Power Disturbance:PD)を引き起こし、交流電力系統からの電力の供給に障害が生じてしまう虞があった。また、系統擾乱には至らない場合であっても、交流電力系統110における電圧の波形歪みを生じ、交流電力系統110に接続される他の機器へ悪影響を与える場合もあり得た。
【0006】
このような問題を改善するものとして、近年、交流電力系統からの交流電力を直流電力に変換して、直流電力を発電する分散型電源からの電力の不足分を交流電力系統からの電力で刻々補充する方式が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。このような方式を採用する場合には、分散型電源からの余剰直流電力を交流電力系統に対して送り出すことがないので、上述した系統擾乱、交流電力系統における電圧の波形歪みの問題は生じない。
【0007】
また、負荷となる電気機器、例えば、一般家庭では、家庭電化製品であり、工場内であれば、電動機等をはじめとする産業機器は、近年、半導体装置による電子制御が多く取り入れられ、家庭電化製品または産業機器の内部に整流回路を備え、交流電力系統からの交流電力を一旦直流電力に変換して用いることが、主流の技術傾向となっており、家庭電化製品の多くが、すでに直流電源に対応可能となっている。
【特許文献1】特開平10―31525号公報
【特許文献2】特開2005−229729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
分散型電源に対する期待は、良好なる地球環境の維持の点から極めて高く、クリーンエネルギーの開発、クリーンエネルギーに基づく電力供給をさらに増大することが要望されている。しかしながら、分散型電源で発電して余剰となった電力を刻々と交流電力系統に送り出す従来の方式(特許文献1を参照)では、発電電力の不足量を分散型電源で補うという目的は達せられるものの、系統擾乱の発生、電力品質の悪化(電圧波形の歪み)の発生が生じる蓋然性が極めて高くなることが予想される。
【0009】
また、近年、新たに提案された分散型電源で発電した電力を交流電力系統に送り返さない方式(特許文献2を参照)では、刻々と、自然環境に応じて電力供給量が変化するクリーンエネルギーに合わせて、需用電力の不足分を交流電力系統からの電力で刻々補充するので、交流電力系統に要求される供給電力量は、分散型電源の普及後においては、時間の経過、自然環境の変化に大きく依存し、1日の内でも大きく変化することとなることが予測される。その場合には、交流電力系統に電力を送り出す発電所の発電機の発電量制御の負担も大きく、さらに、最大需用電力に合わせて発電所および送電設備を構築しなければならず、分散型電源が広く普及したとしても、なお、電力事業者の負担は大きいものであることが予測される。そして、この負担は、交流電力系統からの電力を使用する需用者に対して最終的には、電力料金の値上げとして及び、将来は国家レベルでのエネルギー問題に発展すると危惧される。
【0010】
そこで、本発明は、上述した課題を解決し、交流電力系統における系統擾乱の発生、電力品質の悪化の発生を引き起こすことなく、交流電力系統からの需用電力量を調整可能とし、直流電力を負荷に供給できる分散型電源配電システムおよびそれに用いるに好適な分散型電源装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため、本発明の分散型電源配電システムは、交流電力系統からの交流電力を力率改善して直流電力に変換して出力する力率改善整流回路と、自ら発電して直流電力を出力する分散型電源と、前記力率改善整流回路からの直流電力または前記分散型電源からの直流電力を選択する電力スイッチと、前記電力スイッチの出力側に並列接続される蓄電器および負荷に電力を供給するための配線と、を備えることとした。
【0012】
このような構成を有する分散型電源配電システムでは、力率改善整流回路は、交流電力系統からの交流電力を力率改善して直流電力に変換して出力し、分散型電源は、自ら発電して直流電力を出力する。また、電力スイッチは、力率改善整流回路からの直流電力または分散型電源からの直流電力を選択し、電力スイッチの出力側に並列接続される蓄電器および負荷に電力を供給するための配線に直流電力を供給する。このようにして、蓄電器には交流電力系統または分散型電源からの電力のいずれかが蓄電され、配線を介して直流電力の使用が可能となる。この場合に、電力スイッチによって交流電力系統と分散型電源の系統とが完全に分離され両者の間で電力のやり取りは生じない。また、力率改善整流回路からの直流電力が電力スイッチによって選択されない場合には、交流電力系統から電力が供給されることはない。
【0013】
かかる課題を解決するため、本発明の別の分散型電源配電システムは、交流電力系統からの交流電力を力率改善して直流電力に変換して出力する力率改善整流回路と、前記力率改善整流回路からの直流電力の切断または導通を行う電力スイッチと、前記電力スイッチの出力側に並列接続される蓄電器、負荷に電力を供給するための配線および自ら発電して直流電力を出力する分散型電源と、を備えることとした。
【0014】
このような別の構成を有する分散型電源配電システムでは、力率改善整流回路は、交流電力系統からの交流電力を力率改善して直流電力に変換して出力する。また、電力スイッチは、力率改善整流回路からの直流電力の切断または導通を行い、導通の場合には、電力スイッチの出力側に並列接続される蓄電器および負荷に電力を供給するための配線に直流電力を供給する。また、分散型電源も電力スイッチの出力側に並列接続されおり、自ら発電する直流電力と力率改善整流回路からの直流電力とは、按分して蓄電器および負荷に供給される。また、力率改善整流回路からの直流電力が電力スイッチによって切断される場合には、交流電力系統から電力が供給されることはない。
【0015】
また、かかる課題を解決するため、本発明の分散型電源装置は、交流電力系統からの交流電力を力率改善して直流電力に変換して出力する力率改善整流回路と、自ら発電して直流電力を出力する分散型電源と、前記力率改善整流回路からの直流電力または前記分散型電源からの直流電力を選択する電力スイッチと、前記電力スイッチの出力側に並列接続される蓄電器および電力出力端子と、を備えることとした。
【0016】
このような構成を有する分散型電源装置では、力率改善整流回路は、交流電力系統からの交流電力を力率改善して直流電力に変換して出力し、分散型電源は、自ら発電して直流電力を出力する。また、電力スイッチは、力率改善整流回路からの直流電力または分散型電源からの直流電力を選択し、電力スイッチの出力側に並列接続される蓄電器および電力出力端子に直流電力を供給する。このようにして、蓄電器には交流電力系統または分散型電源からの電力のいずれかが蓄電され、電力出力端子を介して直流電力の使用が可能となる。この場合に、電力スイッチによって交流電力系統と分散型電源の系統とが完全に分離され両者の間で電力のやり取りは生じない。また、力率改善整流回路からの直流電力が電力スイッチによって選択されない場合には、交流電力系統から電力が供給されることはない。
【0017】
また、かかる課題を解決するため、本発明の別の分散型電源装置は、交流電力系統からの交流電力を力率改善して直流電力に変換して出力する力率改善整流回路と、前記力率改善整流回路からの直流電力の切断または導通を行う電力スイッチと、前記電力スイッチの出力側に並列接続される蓄電器、自ら発電して直流電力を出力する分散型電源および電力出力端子と、を備えることとした。
【0018】
このような別の構成を有する分散型電源配電装置では、力率改善整流回路は、交流電力系統からの交流電力を力率改善して直流電力に変換して出力する。また、電力スイッチは、力率改善整流回路からの直流電力の切断または導通を行い、導通の場合には、電力スイッチの出力側に並列接続される蓄電器および電力出力端子に直流電力を供給する。また、分散型電源も電力スイッチの出力側に並列接続されおり、自ら発電する直流電力と力率改善整流回路からの直流電力とは、按分して蓄電器および電力出力端子に供給される。また、力率改善整流回路からの直流電力が電力スイッチによって選択されない場合には、交流電力系統から電力が供給されることはない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、交流電力系統における系統擾乱の発生、電力品質の悪化の発生を引き起こすことなく、交流電力系統からの需用電力量を調整可能とし、直流電力を負荷に供給できる分散型電源配電システムおよびそれに用いるに好適な分散型電源装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1実施形態の分散型電源配電システム)
【0021】
図1に沿って第1実施形態の分散型電源配電システム51について説明する。なお、交流電力系統4からの電力は、単相100V(ボルト)、50Hz(ヘルツ)の商用電力であるとし、また、屋内配線8を始めとする直流電力部における電圧は直流200Vであるとして以下説明する。従って、図1の交流電力系統4からの配線、直流電力に変換後におけるすべての配線は2本の線で接続されるが、説明を簡単とするために図1では一本の線で記述する。
【0022】
分散型電源配電システム51は、分散型電源装置50と屋内配線8とを具備している。分散型電源装置50は、サーキットブレーカ5を介して入力される交流電力系統4からの電力を力率改善して直流電力に変換する力率改善整流回路6と、自ら発電して直流電力を出力する分散型電源1と、力率改善整流回路6からの直流電力または分散型電源1からの直流電力のいずれか一方を選択する電力スイッチ7と、電力スイッチ7の出力側に並列接続される蓄電器3と電力出力端子10と、電力スイッチ7を制御する電源制御部2とを有している。また、屋内配線8は、分散型電源装置50の電力出力端子10に接続されており、1または複数の負荷に電力を供給することができるようになされている。
【0023】
サーキットブレーカ5は、交流電力系統4からの電力を入力して、このサーキットブレーカ5を通過する電流量が規定値以上となった場合に切断する安全対策のための部材であり、一般的に、従来から用いられている部材である。力率改善整流回路6は、交流電力を直流電力に変換する整流作用を行うとともに、これに際して、力率を1とする力率改善作用を行うものである。分散型電源1は、自ら発電する発電装置であり、例えば、太陽光発電装置、風力発電装置、バイオマス発電装置、中小水力発電装置、地熱発電装置等のいずれか、または、これらのいずれかの組み合わせである。電力スイッチ7は、機械接点を有する継電器または半導体による電子的スイッチ素子である。蓄電器3は、例えば、鉛蓄電池、電気二重層コンデンサ等である。電源制御部2は、演算機能、判断機能、電力スイッチ7を制御する機能を有し、DSP(Digital Signal Processor)、ハードウエアロジック回路、FPGA(Field Programable Gate Array)等のいずれかを主なる構成要素とするものである。また、屋内配線8は、従来の同一敷地内の配線である。屋内配線8の末端部には、コンセント(図示せず)を有しており、負荷である、照明器11、冷暖房装置(エアコン)12、冷蔵庫13、洗濯機14、テレビジョン受信機(TV)15、その他(その他の電気製品)16等、の各々のプラグ(図示せず)を介して、これらの機器に電力を供給する。
【0024】
力率改善整流回路6からの電流Ib2と分散型電源1からの電流Ib1とは、電力スイッチ7によって切り替えられ蓄電器3および電力出力端子10に流入する。第1実施形態では、電力スイッチ7は、1回路2接点のON/OFFスイッチとされており、電源制御部2からの制御信号Swsによって、2つの接点、接点Sw1または接点Sw2のいずれが接点Swcを介して蓄電器3および電力出力端子10に接続されるかが切り替えられる。すなわち、分散型電源1からの分散型電源出力電圧Vgoに応じた分散型電源電圧情報Svgが、電源制御部2に入力され、分散型電源電圧情報Svgに基づいて、制御信号Swsが出力される。第1実施形態における要部について、以下にさらに詳細に説明する。
【0025】
(分散型電源)
図2に沿って、分散型電源1について説明する。分散型電源1は、発電部21と逆流防止ダイオード22とを有する。発電部21は、太陽光発電装置、風力発電装置、バイオマス発電装置、中小水力発電装置、地熱発電装置等のいずれであっても良い。これらの装置はいずれも、直流の電力を発電するものであり、その発電電力量が自然環境によって大きく左右される点に特徴がある。例えば、風力発電装置においては、その発電機構にDCモータを使用する場合には、その発電電圧Vgの大きさは、風力を受ける風車の回転数に依存する。したがって、発電部21を直接に蓄電器3に接続すると、風車の回転数が低い場合には、蓄電器3からの電力が発電部21に逆流するのでこれを阻止するために、逆流防止ダイオード22を用い、発電部21の発電電力が十分でない場合には、逆流防止ダイオード22をOFF(切断)する。そして、発電部21の発電電力が十分である場合には、逆流防止ダイオード22はON(導通)して、発電電力に応じて蓄電器3に充電電流を流し、屋内配線8に電力を供給する。ここで、蓄電器3の規定電圧が、200Vとされている場合には、逆流防止ダイオード22の順方向電圧Vd22と発電部21での発電電圧Vgから順方向電圧Vd22を引いた分散型電源出力電圧Vgoの値が200Vを超える場合に逆流防止ダイオード22は、ONとなる。また、抵抗R1および抵抗R2は後述する分散型電源電圧情報Svgを出力するための分圧器を構成する。
【0026】
(力率改善整流回路)
力率改善整流回路6は、交流電力系統4から分散型電源配電システム51に入力する電力負荷における力率を1に維持するとともに、屋内配線8および蓄電器3に所定の直流電圧Vbを供給するものである。力率を1にすることによって、交流電力系統4から見ると、分散型電源配電システム51は純抵抗負荷と見なせるものとなり、無効電力が発生することはなく、交流電力系統4に対する影響が最も穏やかのものとできる。力率を1とするには、交流電力系統4における交流電圧VACの波形と交流電力系統4から分散型電源配電システム51に流れ込む交流電流IACの波形を相似形とすれば良いものである。
【0027】
図3に沿って、力率改善整流回路6の一例について説明する。力率改善整流回路6は、全波整流回路25、インダクタ26、スイッチ素子27、ダイオード28、コンデンサ29、力率改善回路制御部30、計器用変流器31、分圧器33および分圧器34を備える。全波整流回路25は、整流ダイオードDi1ないし整流ダイオードDi4がブリッジ接続されている。そして、整流ダイオードDi1と整流ダイオードDi4との接続点および整流ダイオードDi2と整流ダイオードDi3との接続点が入力側として、サーキットブレーカ5に接続されている。また、整流ダイオードDi1と整流ダイオードDi3との接続点および整流ダイオードDi2と整流ダイオードDi4との接続点の各々が出力側としてインダクタ26とスイッチ素子27とに各々接続されている。インダクタ26、スイッチ素子27、ダイオード28およびコンデンサ29は、所謂、ステップアップ型スイッチングレギュレータを構成している。ここで、本実施形態においては、スイッチ素子27としてMOS−FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transisitor)を用いている。また、力率改善回路制御部30は、このMOS−FETのゲートを制御するゲート制御信号Srcを出力するための演算回路であり、本実施形態においては、DSPを用いており、計器用変流器31からの信号Siri、分圧器33からの信号Svriおよび分圧器34からの信号Svroに基づきDSPで演算してゲート制御信号Srcを得ている。
【0028】
図4に示す各部の波形を参照して、力率改善整流回路6の作用を簡単に説明する。交流電力系統4からの交流電圧VAC(図4(a)を参照)は、サーキットブレーカ5を介して全波整流回路25に加えられる。そして、全波整流回路25は、全波整流された100Hzの整流出力電圧Vriを出力する(図4(b)を参照)。スイッチ素子27は、ゲート制御信号Src(図4(d)を参照)に基づいて、ONとOFFとを交互に繰り返す。なお、図4においては、説明を分かりやすくするために、このONとOFFとの周期は10mSecの1/8倍程度に記載されているが、実際には1/1000程度である。そして、スイッチ素子27がONである場合には、インダクタ26にエネルギーを蓄えるようにインダクタンス電流Iriを流し、スイッチ素子27がOFFである場合には、インダクタ26からエネルギーを放出し、コンデンサ29に電荷を供給するようにインダクタンス電流Iriを流す(図4(c)を参照)。図4(c)の破線は、周期毎のインダクタンス電流Iriのピーク値の包絡線であり、インダクタンス電流Iriの包絡線が、整流出力電圧Vriと相似形となるように、力率改善回路制御部30によって制御されており、また、整流回路出力電圧Vro(図4(e)を参照)の値も200V近辺の若干高い所定電圧となるように制御されている。
【0029】
力率改善回路制御部30で行われる制御動作について簡単に説明する。力率改善回路制御部30は、内部にPWM(Pulse Width Modulation)変調器、誤差増幅器、目標値となる基準信号発生器(いずれも、図示せず)を具備している。なお、力率改善回路制御部30がDSPを主要部として構成される本実施形態においては、これらの諸機能は、DSPで処理されるソフトウエアとして実現されている。力率改善回路制御部30は、2系統のフィードバックサーボ系から成り立っている。第1のフィードバックサーボ系は、整流回路出力電圧Vroを所定の値とするためのものであり、第2のフィードバックサーボ系は、整流出力電圧Vriとインダクタンス電流Iriの包絡線(平均電流と比例する)とを相似形とするためのものである。
【0030】
まず、分圧器34からの信号Svroの値と基準信号発生器からの基準値との差を誤差増幅器で増幅した誤差信号を検出する。そして、分圧器33からの信号Svriの値と誤差信号との積の信号である積信号を演算する。そして、この積信号の値にインダクタンス電流Iriが達するまで、ゲート制御信号SrcをハイレベルとしてNチャンネルMOS−FETで形成されるスイッチ素子27はONとされる。このときにインダクタ26に磁気エネルギーが蓄えられる。積信号の値にインダクタンス電流Iriが達するとゲート制御信号SrcをローレベルとしてNチャンネルMOS−FETで形成されるスイッチ素子27をOFFとされる。このときインダクタ26蓄えられた磁気エネルギーが放出されコンデンサ29を充電する。インダクタンス電流Iriが零に達すると再びゲート制御信号SrcをハイレベルとしてNチャンネルMOS−FETで形成されるスイッチ素子27はONとされる。以上を繰り返して力率改善された直流電力が力率改善整流回路6から得られる。なお、スイッチ素子27が高周波のスイッチングを行うために生じるスイッチングノイズが交流電力系統4に漏れることがないようにラインフィルタ(図示せず)が交流電力系統4と力率改善整流回路6の入力側との間に挿入されている。
【0031】
整流回路出力電圧Vroの値が200V近辺の蓄電器3の定格電圧よりも若干高い電圧に設定されている理由は、このようにすると屋内配線8に略一定の電圧を供給することができるとともに、蓄電器3が鉛蓄電池である場合には、この若干高めとした電圧、例えば、数V以内の電圧に応じて充電電流の大きさが定まるので、整流回路出力電圧Vroの値の選択に応じて、力率改善整流回路6から蓄電器3に供給される充電電流の大きさを定めることができるものである。
【0032】
(電力スイッチ)
電力スイッチ7は、機械式のリレーで形成することも可能であるが、この場合には、直流電流の通過経路を切り替えるために、接点でアーク放電を生じる可能性が非常に高くなる。そこで、本実施形態においては、NチャンネルMOS−FETで構成される電子方式の電力スイッチとした。
【0033】
図5に沿って電力スイッチ7の説明をする。電力スイッチ7は、NチャンネルMOS−FET41とNチャンネルMOS−FET42とインバータ43とから構成されており、NチャンネルMOS−FET41のドレインが、図1における接点Sw1に対応し、NチャンネルMOS−FET42のドレインが、図1における接点Sw2に対応し、NチャンネルMOS−FET41およびNチャンネルMOS−FET42の各々のソースの接続点が、図1における接点Swcに対応する。そして、NチャンネルMOS−FET41のゲートには直接、制御信号Swsが入力され、NチャンネルMOS−FET42のゲートにはインバータ43で反転された制御信号Swsが入力されるようになされている。このような、電子的なスイッチは、制御信号Swsがハイレベルである場合には、接点Sw1と接点Swc(NチャンネルMOS−FET41のドレインとソースの間)が導通し、制御信号Swsがローレベルである場合には、接点Sw2と接点Swc(NチャンネルMOS−FET42のドレインとソースの間)が導通する。なお、NチャンネルMOS−FET41およびNチャンネルMOS−FET42の各々のドレインとソース間のダイオードは寄生ダイオード(ボディダイオード)であり、MOS−FETの製造の過程で通常、意図せずとも形成されてしまう素子である。
【0034】
(電源制御部)
以上の各部の構成を基に、分散型電源配電システム51の全体がどのように動作するかを、電源制御部2の動作を中心に説明する。電源制御部2はCPU(Central Processing Unit)、MEM(Memory)(いずれも、図示せず)を主要部として構成されている。そして、分散型電源配電システム51の制御のためのMEMに記憶されたソフトウエアをCPUが順次処理することによって制御は行われる。所定時間毎の割り込み処理が処理のメインルーチンとされており、処理手順の主要部を以下に示す。
【0035】
割り込みタイマーからの割り込み信号をトリガーとして、分散型電源電圧情報Svgの値を読み込む(ステップST001)。
次に、分散型電源電圧情報Svgが所定値以上であるか未満であるかを判断する(ステップST002)。
ここで、所定値Ref1の大きさは、(式1)で表される。なお、D1は、分圧器の分圧比(R1/(R1+R2))の値である。また、αは、屋内配線8の電圧を200Vとする場合に、蓄電器3に充電するのに必要な積み上げの電圧の値であり、数V以内の範囲内の定数である。Vd22は、逆流防止ダイオード22の順方向電圧の値であり、電流の増加とともに、Vd22の値は増加するので、本実施形態では、充電電流が過大に流れることを防止する作用をも有する。
(式1)
Ref1=(200+α―Vd22)×D1
分散型電源電圧情報Svgが所定値以上である場合には、処理はステップST003に移り、分散型電源電圧情報Svgが所定値Ref1未満である場合には、処理はステップST005に移る。
【0036】
ステップST003では、ステップST002におけるYesの判断が連続してN回以上であるか、N回未満であるかを判断する。
N回以上である場合(Yes)には、制御信号Swsをハイレベルとして(ステップST004)、次に回数nをリセットし(ステップST007)、処理は、再びステップST001に戻る。
N回未満である場合(No)には、制御信号Swsをそのままとして、処理は、再びステップST001に戻る。
ここで、N回の回数を設定したのは、自然エネルギーによる発電電力量、負荷で消費される電力量の変動に応じて、頻繁に電力スイッチ7が切り替わるのを防止するためである。ここで、数値Nは、数秒から数10時間の範囲に対応して、設定可能とされており、数値Nを長くする程、力率改善整流回路6からの直流電力の供給モードから、分散型電源1からの直流電力の供給モードに復帰するまでの時間が長く設定できる。
【0037】
一方、ステップST005では、ステップST002におけるNoの判断が連続してM回以上であるか、M回未満であるかを判断する。
M回以上である場合(Yes)には、制御信号Swsをローレベルとして(ステップST006)、次に回数nをリセットし(ステップST008)、処理は、再びステップST001に戻る。
M回未満である場合(No)には、制御信号Swsをそのままとして、処理は、再びステップST001に戻る。ここで、M回の回数を設定したのは、自然エネルギーによる発電電力量、負荷で消費される電力量の変動によって、頻繁に電力スイッチ7が切り替わるのを防止するためである。ここで、数値Mは、数秒から数10時間の範囲に対応して、設定可能とされており、数値Mを長くする程、分散型電源1からの直流電力の供給モードから、交流電力系統4から力率改善整流回路6を介しての直流電力の供給モードに復帰するまでの時間が長く設定できる。
【0038】
以上の処理によって、分散型電源電圧情報Svgが所定値Ref1未満である場合、すなわち、蓄電器3を充電するに十分な電力を分散型電源1が発電できない場合には、数値Mで最長時間が定められる所定時間は蓄電器3からの直流電力が屋内配線8を介して負荷に供給された後に、力率改善整流回路6から直流電力が供給され、蓄電器3を充電するとともに、屋内配線8を介して接続される種々の負荷に200V付近の適正な電圧の直流電力を供給できる。すなわち、数値M、数値Nをどのような値とするかによって、力率改善整流回路6からの直流電力の供給モードから、分散型電源1からの直流電力の供給モードに復帰するまでの時間の設定ができる。また、分散型電源1からの直流電力の供給モードから、力率改善整流回路6からの直流電力の供給モードに復帰するまでの時間設定。分散型電源1からの直流電力が長期に低下する場合において、分散型電源1からも力率改善整流回路6からも電力を供給さず、蓄電器3から屋内配線8に電力を供給している時間の設定もできるものである。
【0039】
この場合において、力率改善整流回路6から直流電力は蓄電器3および屋内配線8を介して接続される種々の負荷に供給されるが、分散型電源1に供給されることはなく、同様に、分散型電源1から直流電力は蓄電器3および屋内配線8を介して接続される種々の負荷に供給されるが、力率改善整流回路6に供給されることはない。すなわち、分散型電源1から交流電力系統4に供給される電力は存在しないので、交流電力系統4に電力を供給する発電所の同期発電機(図示せず)または、この交流電力系統4に接続される他の電力機器に系統擾乱、電圧波形歪みによる損失増加、その他の電圧波形歪みを原因とする動作機能不全の悪影響を与えることがない。また、交流電力系統からの電力によって作動する家庭電化製品または産業機器の多くは、内部に整流回路を備えるので、交流電力系統からの電力を整流するに際して整流回路のダイオードから、不要な電磁妨害となるスイッチングノイズが発生するものであったが、このように直流電力を供給する場合にはスイッチングノイズは発生しない。さらに、数値Mの値を適切に選択することによって交流電力系統4と分散型電源配電システム51との接続が適切に行われ、交流電力系統4への影響も少ないものとできる。さらに、後述する交流電力系統4との通信機能を用いて、数値Mの値に基づき、予定する交流電力系統4からの電力消費の開始時間を知らせれば、さらに交流電力系統4への影響も少ないものとできる。
【0040】
(第2実施形態の分散型電源配電システム)
上述した第1実施形態の分散型電源配電システム51においては、電力スイッチ7を1回路2接点(Sw1,Sw2、Swc)のスイッチとして、電源制御部2は、力率改善整流回路6からの直流電力と分散型電源1からの直流電力のいずれか一方のみから蓄電器3または屋内配線8に直流電力を供給するように、または、逆流防止ダイオード22の作用によって双方から電力を供給することなく、蓄電器3から屋内配線8に供給するように電力スイッチ7を制御したが、図7に示す第2実施形態の分散型電源配電システム61においては、分散型電源1は蓄電器3および屋内配線8に常時接続されており、電源制御部2は、分散型電源1の発電する電力量に応じた直流電力および分散型電源1の発電する力率改善整流回路6からの直流電力を蓄電器3または屋内配線8に供給するように電力スイッチ67を制御する。第1実施形態におけると同様の構成および作用を奏する部分には第1実施形態におけると同一の符号を付して説明を省略する。以下に第2実施形態の分散型電源配電システム61および分散型電源装置60についてより詳細に説明する。
【0041】
電力スイッチ67は、1回路1接点(Sw2、Swc)のスイッチであり、図5において、NチャンネルMOS−FET41が設けられないものと同様の形態を有するものである。制御信号Swsによって接点Sw2と接点SwcとのON/OFFが制御される。具体的な電源制御部2における制御は以下のように行われる。分散型電源電圧情報Svgが、(式1)で表す所定値Ref1以上である場合には、接点Sw2と接点Swcとは、OFFとされており、分散型電源電圧情報Svgが、(式1)で表す所定値Ref1未満である場合には、接点Sw2と接点Swcとは、ONとされる。また、第1実施形態と同様に数値Mを用いてスイッチONのタイミングを遅らし、数値Nを用いてスイッチOFFのタイミングを遅らすことも可能である。
【0042】
このようにして、分散型電源電圧情報Svgが所定値Ref1未満である場合、すなわち、蓄電器3を充電するに十分な電力を分散型電源1が発電できない場合には、力率改善整流回路6から直流電力が供給され、蓄電器3を充電するとともに、屋内配線8を介して接続される種々の負荷に200V付近の適正な電圧の直流電力を供給できる。
【0043】
この場合において、力率改善整流回路6から直流電力は蓄電器3および屋内配線8を介して接続される種々の負荷に供給されるが、分散型電源1に供給されることはない。また、同様に、分散型電源1から直流電力は蓄電器3および屋内配線8を介して接続される種々の負荷に供給されるが、力率改善整流回路6に供給されることはない。すなわち、分散型電源1から交流電力系統4に供給される電力は存在しないので、交流電力系統4に電力を供給する発電所の同期発電機または、この交流電力系統4に接続される他の電力機器に系統擾乱、電圧波形歪みによる損失増加、その他の電圧波形歪みを原因とする動作機能不全の悪影響を与えることがない。
【0044】
(第3実施形態の分散型電源配電システム)
上述した第1実施形態の分散型電源配電システム51においては、電力スイッチ7を、上述した第2実施形態の分散型電源配電システム61においては、電力スイッチ67を設けて電力の切り替えを行ったが、必ずしも、独立の部品として、電力スイッチを構成する必要はない。すなわち、図2における逆流防止ダイオード22および図3におけるダイオード28を電力スイッチとして用いることができる。このような電力スイッチによって、力率改善整流回路6からの直流電力と分散型電源1からの直流電力との通過電力量の割合が制御される。以下、図8に沿って第3実施形態の分散型電源配電システム71および分散型電源装置70について説明するが、第1実施形態におけると同様の構成および作用を奏する部分には第1実施形態におけると同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
図8に沿ってまず図2に示す分散型電源1の発電量が大きい場合の説明をする。この場合には、分散型電源出力電圧Vgo(図2を参照)の電圧の値は高くなり、蓄電器3が鉛蓄電池である場合には、大きな充電電流が蓄電器3に流れ蓄電器3の電圧の値は若干上昇し、屋内配線8に供給される電圧の値もそれとともに上昇する。この場合に整流回路出力電圧Vro(図3を参照)の電圧の値は、分散型電源出力電圧Vgoの電圧の値に較べて低くなる。力率改善回路制御部30が構成の一部をなすフィードバックサーボ系の作用の結果として、ゲート制御信号Srcの時比率は、自動的に零となり、ダイオード28はOFFとなって、ダイオード28を通過する通過電力量は零となる。
【0046】
次に、分散型電源1の発電量が小さい場合の説明をする。この場合には、分散型電源出力電圧Vgoの電圧の値は低くなる。そして、蓄電器3の直流電圧Vb(屋内配線8に供給される電圧でもある)の電圧の値よりも分散型電源出力電圧Vgoの電圧の値が低くなり、逆流防止ダイオード22はOFFとなって、逆流防止ダイオード22を通過する通過電力量は零となる。そして、この場合には、力率改善整流回路6からのみ電力が供給されることとなる。
【0047】
第3実施形態によれば、逆流防止ダイオード22およびダイオード28が上述した電力スイッチ7または電力スイッチ67と同様の機能を有することとなって、分散型電源1からの発電電力量に応じて、分散型電源1から直流電力が供給されるか、力率改善整流回路6から直流電力が供給されるかが切り替えられる。しかしながら、このままでは、切り替えのタイミングを遅らす機能は有していない。そこで、力率改善回路制御部30にタイマー機能を持たせ、一旦分散型電源1からの電力の供給が開始すると所定時間後でなければ、力率改善整流回路6から直流電力の供給が開始しないようにすることもできる。いずれにしても、交流電力系統4に電力を供給する発電所の同期発電機または、この交流電力系統4に接続される他の電力機器に系統擾乱、電圧波形歪みによる損失増加、その他の電圧波形歪みを原因とする動作機能不全の悪影響を与えることがない。
【0048】
(分散型電源の他の実施形態)
以下に上述した第1実施形態ないし第3実施形態の様々な変形例の一部について説明する。上述した第1実施形態では、逆流防止ダイオード22を用いて分散型電源1への電流の逆流を防止したが、逆流防止ダイオード22を用いることなく、計器用変流器CTまたは電流検出用の抵抗(いずれも図示せず)を用いて、分散型電源1への入出力電流を監視し、この入出力電流に応じた入出力電流信号を分散型電源電圧情報Svgに替えて用い、入出力電流信号が蓄電器3から分散型電源1への逆流電流を検出する場合には、電力スイッチ7は、NチャンネルMOS−FET41をOFFとするように制御することもできる。
【0049】
また、電力スイッチ7は、1回路2接点(Sw1、Sw2、Swc)または1回路1接点(Sw1、Swc)のスイッチとして説明をしたが、1回路2接点のスイッチにおいては、接点Sw1または接点Sw2のいずれにも接点Swcが接触しないものとしても良い。この場合には、電力出力端子10からの直流電力はすべて蓄電器3から出力されることとなり、分散型電源1からの発電量が少ない場合でも、必ずしも力率改善整流回路6から電力を取らないこととして交流電力系統4への負荷を低減することができる。
【0050】
また、上述した第1実施形態ないし第3実施形態においては、分散型電源1からの発電電力を処理することなく、逆流防止ダイオード22を介して蓄電器3および屋内配線8に供給することとしたが、蓄電器3として電気二重層コンデンサを用いる場合には、屋内配線8に供給される電圧が定まらない場合があり得る。また、分散型電源1からの発電電圧が、屋内配線8の規定電圧である200V付近より低い場合においては、分散型電源1からの発電電力は全く利用されないこととなる。このような事態を避けるために、分散型電源1の発電部21と蓄電器3との間にDC−DCコンバータ部(図示せず)を介することが望ましい。このような構成を採用すれば、DC−DCコンバータ部の出力電圧を任意の値とできるので、分散型電源1からの出力電圧を常時、200V付近の電圧に設定することができる。このような構成を採用すれば、分散型電源1からの発電電力を有効に利用できるとともに、蓄電器3が電気二重層コンデンサである場合においても、屋内配線8から供給する電圧を所定電圧とすることができる。
【0051】
また、力率改善整流回路6として、ステップアップ型スイッチングレギュレータを用いたが、屋内配線8における規定電圧を交流電力系統4からの交流電圧VACのピーク電圧の値よりも低くする場合には、ステップダウン型スイッチングレギュレータ(図示せず)によって力率改善整流回路を構成することができる。さらに、50Hzに対して十分な力率改善効果を有するインダクタンスを交流入力側に入れて、コンデンサインプット型の整流回路が有する電圧ピーク付近での突入電流を低減して力率を改善するようにしても良い。
【0052】
また、図9に示すような構成において、分散型電源装置80および分散型電源配電システム81を構成する散型電源91は、上述したDC−DCコンバータを具備するものとし、蓄電器3に流れる充電電流に応じた信号Sibを検出して、充電電流が所定の値となるように、信号Ssbによって分散型電源出力電圧Vgo(図2を参照)を制御しても良いものである。また、蓄電器3に流れる充電電流に応じた信号Sibを検出して、充電電流が所定の値となるように、信号Scdによって力率改善整流回路86の整流回路出力電圧Vro(図3を参照)を制御するようにしても良いものである。このようにすれば、鉛蓄電池等である蓄電器3に安定した充電電流が供給できるとともに蓄電池の電圧Vbも安定し、屋内配線8に安定した電圧を供給できる。
【0053】
さらに、鉛蓄電池の電解液の比重に応じた信号Spbまたは、蓄電器3の直流電圧Vbの値を検出して蓄積電力量を推定して、この推定された蓄積電力量に応じて分散型電源91の分散型電源出力電圧Vgoを信号Scbによって制御し、あるいは力率改善整流回路86の整流回路出力電圧Vroを信号Scdによって制御するようにしても良いものである。なお、信号Scb、信号Scdは、図9に示す通信機能付制御部82から出力される。
【0054】
また、交流電力系統4に電力を供給する発電所における発電電力の平均的な利用のために、比較的安価な深夜電力を用いて蓄電器3に充電するために、上述した種々の態様の電力スイッチによって、例えば、深夜の所定時刻に力率改善整流回路からの直流電力が導通するように制御されるようにしても良いものである。
【0055】
また、さらに、通信機能付制御部82は、交流電力系統4に電力を供給する発電所に、各自の分散型電源配電システムの状況を需用予測として知らせ、発電所での発電電力の管理を可能とするようにしても良いものである。発電所に知らせる需用予測は、屋内配線8に接続されている負荷における電力消費量、分散型電源91からの電力供給量、分散型電源91の性質に基づく発電予測量(例えば、明日の風力、日照時間等)、力率改善整流回路86からの供給電力、現在の蓄電器3における蓄積電力量等から計算されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1実施形態の分散型電源配電システムの構成図である。
【図2】実施形態の分散型電源の構成図である。
【図3】実施形態の力率改善整流回路の構成図である。
【図4】実施形態の力率改善整流回路の動作原理を説明する図である。
【図5】実施形態の電力スイッチの構成図である。
【図6】第1実施形態の分散型電源配電システムの動作のフローチャートである。
【図7】第2実施形態の分散型電源配電システムの構成図である。
【図8】第3実施形態の分散型電源配電システムの構成図である。
【図9】他の実施形態の分散型電源配電システムの構成図である。
【図10】背景技術を説明する図である。
【符号の説明】
【0057】
1、91 分散型電源、2 電源制御部、3 蓄電器、4 交流電力系統、5 サーキットブレーカ、6、86 力率改善整流回路、7、67 電力スイッチ、8 屋内配線、10 電力出力端子、11 照明器、13 冷蔵庫、14 洗濯機、21 発電部、22 逆流防止ダイオード、25 全波整流回路、26 インダクタ、27 スイッチ素子、28 ダイオード、29 コンデンサ、30 力率改善回路制御部、31 計器用変流器、33 分圧器、34 分圧器、43 インバータ、50、60、70、80 分散型電源装置、51、61、71、81 分散型電源配電システム、82 通信機能付制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力系統からの交流電力を力率改善して直流電力に変換して出力する力率改善整流回路と、
自ら発電して直流電力を出力する分散型電源と、
前記力率改善整流回路からの直流電力または前記分散型電源からの直流電力を選択する電力スイッチと、
前記電力スイッチの出力側に並列接続される蓄電器および負荷に電力を供給するための配線と、
を備える分散型電源配電システム。
【請求項2】
交流電力系統からの交流電力を力率改善して直流電力に変換して出力する力率改善整流回路と、
前記力率改善整流回路からの直流電力の切断または導通を行う電力スイッチと、
前記電力スイッチの出力側に並列接続される蓄電器、負荷に電力を供給するための配線および自ら発電して直流電力を出力する分散型電源と、
を備える分散型電源配電システム。
【請求項3】
前記電力スイッチは、所定時刻に前記力率改善整流回路からの直流電力が導通するように制御されることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の分散型電源配電システム。
【請求項4】
交流電力系統からの交流電力を力率改善して直流電力に変換して出力する力率改善整流回路と、
自ら発電して直流電力を出力する分散型電源と、
前記力率改善整流回路からの直流電力または前記分散型電源からの直流電力を選択する電力スイッチと、
前記電力スイッチの出力側に並列接続される蓄電器および電力出力端子と、
を備える分散型電源装置。
【請求項5】
交流電力系統からの交流電力を力率改善して直流電力に変換して出力する力率改善整流回路と、
前記力率改善整流回路からの直流電力の切断または導通を行う電力スイッチと、
前記電力スイッチの出力側に並列接続される蓄電器、自ら発電して直流電力を出力する分散型電源および電力出力端子と、
を備える分散型電源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−215257(P2007−215257A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29548(P2006−29548)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】