説明

加工物にパターン形成するための方法及び装置、並びにその製造方法

【解決課題】傾斜マイクロミラーからの電磁放射に位相差を導入することが、例えば、完全又は実質的に完全な正の振幅に加えて、完全又は実質的に完全な負の振幅を含むことができるようにアドレス指定可能振幅領域を拡張する。
【解決手段】放射を生成する第1及び第2の部分を使用して、加工物上にパターン形成するための方法、及び前記加工物上にパターンを形成するように、且つ放射に位相差を誘発するように適合された少なくとも1つの反射デバイスを備え、前記位相差が、位相シフト・プレートとステップ高さの差との少なくとも一方によって誘発される、放射源と加工物にパターン形成するための装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の例示実施例は、リソグラフィに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリソグラフィ・システムでは、パターン生成に空間光変調器(SLM)が使用される場合がある。従来のSLMは、傾斜する平坦マイクロミラーを含む場合がある。マイクロミラーは、加工物上にパターンを生成するように傾斜させることができる。従来のリソグラフィ・システムの書込み品質は、マイクロミラーの平坦度に依存する場合がある。例えば、マイクロミラーの平坦性が低下することがあり、その結果、書込み品質が低下する場合がある。1つ又は複数のマイクロミラーの平坦性の増大が、より高品質のパターン生成を提供する場合がある。例えば、1つ又は複数のマイクロミラーが、より大きな平坦度を有する場合があり、書込み品質が改善する場合がある。しかし、より高い平坦度(例えば、非常に高い又は完全な平坦性)は、実現するのが困難であり、且つ/又は費用対効果が低い場合がある。
【0003】
また、従来の傾斜マイクロミラーは、低い負の振幅の量を有する場合がある。負の振幅は、解像度向上を可能にするので有用である場合がある。例えば、完全又は実質的に完全な負の振幅が、例えばステッパ技術において、マスクでのクロムレス位相リソグラフィで使用される場合がある。完全又は実質的に完全な負の振幅は、より強い位相シフト効果を可能にすることができ、これは解像度向上をもたらすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の例示実施例では、傾斜マイクロミラーからの電磁放射に位相差を導入することが、例えば、完全又は実質的に完全な正の振幅に加えて、完全又は実質的に完全な負の振幅を含むことができるようにアドレス指定可能振幅領域を拡張することができる。これは、完全又は実質的に完全な位相シフト解像度向上技法を可能にすることができる。
【0005】
本発明の例示実施例では、傾斜軸の周りの一様な形状が、傾斜マイクロミラーの非平坦性欠陥として働く場合がある。この一様な形状は、リソグラフィ・システム内部のコントラストの低下をもたらす場合がある。位相差を導入することができる本発明の例示実施例は、一様な形状を有する場合がある非フラットなマイクロミラーに関するコントラストを高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの例示実施例は、基板と、少なくとも2つの部分を含む場合がある少なくとも1つの反射面とを備える空間光変調器を提供することができる。少なくとも2つの部分は、少なくとも2つの部分によって反射される放射間に位相差を誘発する。位相差は、位相プレートと、少なくとも2つの部分間の位相ステップ高さの差との少なくとも一方によって誘発することができる。
【0007】
本発明の別の例示実施例は、加工物にパターン形成するためのデバイスを製造する方法を提供することができる。間に非導電領域を設けられた複数の導電領域を含む場合がある導電層が基板上に形成される場合がある。一時層が、複数の導電領域の上に形成される場合があり、この一時層は、少なくとも1つの非導電ストッパを含む場合がある。反射層が、一時層の上に形成される場合がある。材料層が、反射層の少なくとも2つの部分の上に形成される場合がある。
【0008】
本発明の別の例示実施例は、空間光変調器で使用するための反射層を製造する方法を提供することができる。一時層が、反射面の上に形成される場合がある。一時層の一部分が、放射に露出される場合があり、一時層の残りの部分が露出されない場合がある。(レジストのタイプ、すなわちネガ型かポジ型かに応じて)露出されていない一時層又は露出された一時層が除去される場合があり、一時層の残りの部分と反射面とがシフト材料で覆われる場合がある。一時層とシフト材料の関連部分とが、反射面の一部分から除去される場合がある。
【0009】
本発明の別の例示実施例は、加工物にパターン形成するための方法を提供することができる。この方法は、放射を生成するステップと、生成された放射の少なくとも第1の部分と第2の部分との間に位相差を誘発するステップと、少なくとも放射の第1の部分と第2の部分とを加工物に照射するステップと、放射の第1及び第2の部分を使用して、加工物上にパターンを形成するステップとを含むことができる。
【0010】
本発明の別の例示実施例は、加工物にパターン形成するための装置を提供することができる。この装置は、放射源と、少なくとも1つの反射デバイスとを備える場合がある。放射源は、放射を生成することができ、少なくとも1つの反射デバイスは、加工物上にパターンを形成することができ、且つ放射に位相差を誘発することができる。位相差は、位相シフト・プレートとステップ高さの差との少なくとも一方によって誘発することができる。
【0011】
本発明の例示実施例では、加工物での放射の少なくとも2つの部分間の位相差が、放射の波長の半分、又は例えばλ/2±n*λである場合があり、ここでλは電磁放射の波長であり、nは自然数(例えば0、1、2、・・・)である。
【0012】
本発明の例示実施例では、位相ステップ高さの差が、放射の波長の4分の1、又はλ/4±(n*λ/2)である場合があり、ここでλは電磁放射の波長であり、nは自然数(例えば0、1、2、・・・)である。
【0013】
本発明の例示実施例では、少なくとも1つの反射面がミラーである場合がある。
【0014】
本発明の例示実施例では、少なくとも1つのミラーが平坦又は非平坦ミラーである場合がある。
【0015】
本発明の例示実施例では、複数の反射面が傾斜可能である場合がある。
【0016】
本発明の例示実施例では、放射が、電磁放射、及び/又は紫外放射及び極端紫外放射の少なくとも1つである場合がある。
【0017】
本発明の例示実施例では、少なくとも1つの位相プレートが透過性又は反射性である場合がある。
【0018】
本発明の例示実施例では、複数の反射面のうち少なくとも1つの反射面の少なくとも2つの部分が隣接している場合がある。
【0019】
本発明の例示実施例では、一時層がフォト・レジスト材料を含む場合がある。
【0020】
本発明の例示実施例では、(レジストのタイプ、例えばネガ型かポジ型かに応じる場合がある)露出されていない感受性層又は露出された感受性層の除去が、さらに、溶液を適用するステップと、(レジストのタイプ、例えばネガ型かポジ型か応じる)露出されていない一時層又は露出された一時層を溶解するステップとを含む場合がある。
【0021】
本発明の例示実施例では、一時層がさらに電磁感受性材料を含む場合がある。
【0022】
本発明の例示実施例では、放射が光波の形である場合がある。
【0023】
本発明の例示実施例では、少なくとも1つの反射デバイスが、さらに、放射を反射することができる第1の部分及び第2の部分を含む場合があり、第1の部分によって反射される放射が、第2の部分によって反射される放射と位相が異なる場合がある。
【0024】
本発明の例示実施例では、第1の部分と第2の部分とが異なる位相ステップ高さを有する場合がある。
【0025】
本発明の例示実施例では、第1の部分のステップ高さが、第2の部分のステップ高さと、例えば放射の波長の4分の1に等しい又は実質的に等しい場合がある値だけ異なる場合がある。
【0026】
本発明の例示実施例は、添付図面を参照すればより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による加工物にパターン形成するための装置の例示実施例を示す図である。
【図2a】本発明による修正された反射デバイスの例示実施例を示す図である。
【図2b】本発明による修正された反射デバイスの例示実施例を示す図である。
【図2c】本発明による修正された反射デバイスの例示実施例を示す図である。
【図2d】本発明による修正された反射デバイスの例示実施例を示す図である。
【図3】本発明による反射デバイスの別の例示実施例を示す図である。
【図4】ステップ高さの差を含む場合がある本発明による反射デバイスの別の例示実施例を示す図である。
【図5a】図3の線Aに沿って取られた断面として見られる製造方法の例示実施例を示す図である。
【図5b】図3の線Aに沿って取られた断面として見られる製造方法の例示実施例を示す図である。
【図5c】図3の線Aに沿って取られた断面として見られる製造方法の例示実施例を示す図である。
【図5d】図3の線Aに沿って取られた断面として見られる製造方法の例示実施例を示す図である。
【図5e】図3の線Aに沿って取られた断面として見られる製造方法の例示実施例を示す図である。
【図6a】図3の線Bに沿って取られた断面として見られる製造方法の例示実施例を示す図である。
【図6b】図3の線Bに沿って取られた断面として見られる製造方法の例示実施例を示す図である。
【図6c】図3の線Bに沿って取られた断面として見られる製造方法の例示実施例を示す図である。
【図6d】図3の線Bに沿って取られた断面として見られる製造方法の例示実施例を示す図である。
【図6e】図3の線Bに沿って取られた断面として見られる製造方法の例示実施例を示す図である。
【図6f】図3の線Bに沿って取られた断面として見られる製造方法の例示実施例を示す図である。
【図6g】図3の線Bに沿って取られた断面として見られる製造方法の例示実施例を示す図である。
【図7a】製造方法の例示実施例の上面図である。
【図7b】製造方法の例示実施例の上面図である。
【図7c】製造方法の例示実施例の上面図である。
【図7d】製造方法の例示実施例の上面図である。
【図7e】製造方法の例示実施例の上面図である。
【実施例】
【0028】
本発明の例示実施例を、本発明の例示実施例が図示されている添付図面を参照して、より完全に説明する。しかし、本明細書で述べる本発明の例示実施例は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく形態及び詳細の点で修正することができることを理解されたい。したがって、本明細書で述べる例示実施例は、限定ではなく例として提供され、本発明の範囲は、本明細書で述べる特定の実施例に限定されない。
【0029】
特に、層又は領域の相対厚さ及び位置決めは、明瞭性のために縮小又は誇張される場合がある。さらに、層は、基準となる層又は基板の上に直接形成されるとき、又は基準となる層に重なる他の層又はパターンの上に形成されるときに、別の層又は基板の「上」に形成されているとみなされる。
【0030】
図1を参照すると、加工物にパターンを生成するためのシステムが、本発明の1つの例示実施例によるパターン生成器を含む場合がある。パターン生成器は、個別及び/又は複数値画素アドレス指定を含むことができるSLM1と、放射源2と、イメージング・システム(例えばイメージング光学システム)3と、ハードウェア及び/又はソフトウェア・データ処理システム4とを備える場合がある。さらに、システムは、例えば制御システム6を備えるステージ5を含む場合がある。
【0031】
SLM1は、反射デバイス(すなわち、微細加工されたミラー又はマイクロミラー)を含む場合がある。反射性のSLMは、例えば微細加工SLMに依拠することがある。微細加工SLMは、圧電及び/又は電歪作動を使用することができる。
【0032】
SLM1は、放射源2によって照射される場合がある。放射源2は、KrFエキシマ・レーザであってよく、これは、248ナノメートルの波長でUV領域内での長さ10〜20ナノ秒の放射フラッシュを提供することができ、エキシマ・レーザの固有線幅に対応する帯域幅を有することができる。基板上のパターン歪を低減するために、放射源2からの放射を、SLM1面の表面にわたって分散(例えば均一に分散)させることができ、光はコヒーレント長を有することができ、これは、基板5上にレーザ・スペックルを生成しない場合がある。
【0033】
図1のシステムは、ステージ(例えば精密位置決め基板ステージ)5を有する場合があり、且つ制御システム(例えば干渉計位置制御システム)6を含む場合がある。第1の方向(例えばy方向(図示せず))で、機械システム(例えばサーボ・システム)が、ある位置にステージを維持することができ、第1の方向と垂直である場合がある第2の方向(例えばx方向)で、ステージは、例えば連続的な速度で移動(例えば機械的に移動)することができる。露光レーザ・フラッシュを誘発するためにx方向で使用されることがある制御システム6は、基板5上でSLM1の像の間に均等又は実質的に均等な位置を提供することができる。SLM像の1つの列が基板5上に露光されると、基板5は、x方向で元の位置に戻ることができ、y方向でSLM像1つ分の増分だけ移動して、基板5上にSLM像の別の列を露光することができる。この手順は、基板5上に全て又は実質的に全ての像を露光することができるまで繰り返すことができる。表面は、例えば複数回のパスで書き込まれる場合があり、誤差を平均化することができる。
【0034】
SLM1は、複数の反射デバイス(例えばマイクロミラー)を含むことができる。反射デバイスは、反射デバイスに(例えば個別に)印加される場合がある電圧に応じて、入射放射を複数の方向に反射及び/又は回折するように(例えば電気的に)操作することができる。
【0035】
本発明の例示実施例は、反射デバイス(例えばマイクロミラー)の形状を修正するための方法を提供することができ、これは、例えば位相シフト・アドレス指定を実現することができる。修正された反射デバイスは、図1に関して上で説明したSLM1の例示実施例で使用される場合ができる。例えば、本発明の例示実施例は、SLM1の例示実施例の反射デバイス内部にステップ高さの差を製造する方法を提供する。
【0036】
図2a〜2dは、修正された反射デバイス400、406、408、及び410の例示実施例を示し、これらの反射デバイスは、SLM1の例示実施例に含まれる場合があり、さらに、本発明による加工物にパターン形成するための装置の例示実施例に含まれる場合がある。図2aに関して、反射デバイス400は、平坦マイクロミラー・デバイスであってよく、この反射デバイス400は、少なくとも2つの部分400A及び400Bを含むことができる。各部分400A及び/又は400Bが、その下にある電極404を有する場合がある。部分400A及び400Bは、それぞれ反射デバイス400の半分であってよく、電極404は、アドレス電極及び/又は対向電極であってよい。
【0037】
電極404は、本明細書で論じるような複数の方法で反射デバイス400を操作(例えば傾斜及び/又は変形)することができる。反射デバイスは、放射源2によって反射デバイス400に照射された放射(例えば、電磁放射、光波など)を反射することができる。放射源2は、例えば、図1に例示されるようにエキシマ・レーザであってよい。位相シフト・プレート402が、例えば反射デバイス400と基板5との間に位置決めされる場合があり、基板5は、例えばパターン形成するための加工物であってよい。位相シフト・プレート402は、部分400Aによって反射された放射と部分400Bによって反射された放射に位相シフトを誘発することができる。反射された放射間の位相差は、互いに関して、放射の波長の半分(λ/2)に等しい又は実質的に等しい場合がある。位相シフト・プレート402は、例えば石英ガラスから構成することができる。
【0038】
図2bは、本発明の別の例示実施例を示し、これは図2aに関して説明したものと同様である場合があり、しかし図2bは、反射デバイス406を含むことができる。反射デバイス406は、非平坦ミラー又は同様の反射面であってよい。反射デバイス406は、例えば、図2bに例示されるように湾曲させることができる。位相シフト・プレート402は、例えば反射デバイス406と基板(図示せず)との間に位置決めすることができ、反射デバイス406の各部分によって反射された放射間に位相差を誘発することができる。位相差は、例えば、図2aに関して上で説明した位相差と同様又は実質的に同様の場合がある。位相シフト・プレート402は、任意の適切な材料から構成することができるが、例えば石英ガラスから構成することができる。
【0039】
図2cは、図2bに関して説明したものと同様の本発明の別の例示実施例を示し、しかし図2cは、反射デバイス408を含むことができ、反射デバイス408は、傾斜された非平坦ミラー又は同様の反射デバイスであってよい。反射デバイス408は、例えば上で論じたように、さらには所望の位相差を実現するのに適した任意の様式で、湾曲又は傾斜させることができる。位相シフト・プレート402は、例えば反射デバイス408と基板(図示せず)との間に位置決めすることができ、反射デバイス408の2つの部分によって反射された放射間に位相差を誘発することができる。位相差は、図4bに関して上で説明した位相差と同様又は実質的に同様の場合がある。
【0040】
ミラーのための部分的にコヒーレントな反射光は、例えば複素振幅反射率によって表すことができ、複素振幅反射率は、傾斜マイクロミラーでは、所与の傾斜に関して偏向された表面にわたる積分によって得ることができる。
【0041】
【数1】


ここで、Sはミラーの表面であり、λは波長であり、hは局所高さであり、rは局所反射である。ミラーからの強度寄与は、所与の偏向に関する複素振幅反射率の平方によって得ることができる。複素振幅空間内の複素振幅軌跡は、使用されるミラー偏向角に関する全て又は実質的に全ての複素振幅反射率をつなぐことによって得ることができる。例えば、均衡がとれた状態の、すなわちミラーの中心にある傾斜軸を有するフラットな傾斜ミラーでは、ミラーが対称性を有する場合があり、これは、正の位相方向での任意の位相変調が負の位相方向での等しい又は実質的に等しい位相変調によって打ち消される方法と同様又は実質的に同様の様式で偏向されて、平均位相の均衡を図ることができる。平均位相は、全て又は実質的に全ての傾斜角に関して保存される場合があり、これは、複素振幅空間の実数軸上にある複素振幅軌跡をもたらす場合がある。ミラーの非平坦性があるとき、対称性が破れる場合があり、複素振幅軌跡は、複素振幅空間内で実数軸から逸脱(例えば部分的に逸脱)する場合がある。非平坦ミラーに関して複素振幅空間内で点R=0+0i(すなわち原点)に達することは、位相ステップなしでは可能でない場合がある。複素振幅軌跡に対する虚数寄与は、リソグラフィ・システムの性能低下をもたらす最終的な像での残余位相情報を有することと同様又は実質的に同様である場合がある。また、例えば位相ステップを有さないミラーが非フラットであるとき(例えばミラーが湾曲されているとき)、複素振幅反射率が0+0i(すなわち原点)に達しない場合があり、任意のミラー偏向角に関して強度がゼロ(=黒)に達しない場合があるので、利用可能なコントラストに影響が及ぼされることもある。
【0042】
図2b及び2cに例示されるように位相ステップを導入することが、例えば、傾斜軸に関して数学的に一様な形状によって記述することができる形状を有する非傾斜の非平坦ミラーの状況を変えることができ、位相対称性を再確立することができ、ミラーの2つの側からの虚数寄与が互いに相殺する場合がある。すなわち、複素振幅反射率は、像内のより高いコントラストを維持しながら0+0i(すなわち原点)に達することができる。位相ステップは、例えば最小強度から最大強度への複素振幅軌跡全体にわたって最終的な像内の位相成分をさらに低減することができ、これは、結果としてリソグラフィ性能の改善をもたらすことができる。
【0043】
図2dは、図2aに関して説明したものと同様の本発明の別の例示実施例を示す。図2dは、傾斜された反射デバイス410を例示し、この反射デバイス410は、平坦ミラー又は同様の反射面であってよい。反射デバイス410は、上で論じたように、さらには所望の位相差を実現するのに適した任意の角度方向及び大きさで傾斜させることができる。位相シフト・プレート402は、例えば反射デバイス410と基板(図示せず)との間に位置決めすることができ、反射デバイス410の2つの部分によって反射された放射間に位相差を誘発することができる。位相差は、図2aに関して上で説明した位相差と同様又は実質的に同様の場合がある。位相シフト・プレート402は、例えば石英ガラスから構成することができる。
【0044】
図3は、本発明による可動超小型素子800の例示実施例を示し、この超小型素子800は、上で説明した方法の例示実施例を使用して製造することができ、図1のSLM1内に含まれる場合がある。可動超小型素子800は、例えば微細加工素子であってよい。可動超小型素子800は、例えばSLM1内の反射要素111にすることができる。反射要素111は、例えば電気入力に応じて反射要素111の偏向の度合いを変えるようにアナログ・モードで利用することができ、或いは、反射要素111のON及び/又はOFF状態を表すことができるデジタル・モードで利用することができる。ON又はOFF状態は、増加した(例えば最大)偏向及び/又はゼロ又は実質的にゼロの偏向によって定義することができる。本発明の例示実施例では、上で説明した領域100と同様又は実質的に同様の場合がある領域111は、長方形反射要素であってよく、これは、少なくとも1つの(例えば1対の)ヒンジ(例えばトーション・ヒンジ)60によって少なくとも1つの中央区域に沿って支持することができる。
【0045】
反射要素111は、例えば、多角形、円形、又は楕円形、或いはそれらの任意の組合せであってよい。ヒンジ60は、そこに沿った軸(例えばねじれ軸)を定義することができる。ヒンジ60は、反射要素111から延在する場合があり、支持体50によって支持される場合がある。支持体50は、基板20及び反射要素111上に位置していてよい。ヒンジ60、支持体50、及び/又は基板20は、同様又は実質的に同様の材料から構成することができる。材料は、例えば、シリコン、アルミニウム、別の金属、或いはそれらの任意の合金又は他の組合せであってよく、例えば、当業者によって望まれるように例えばエッチング技法を使用して基板からエッチング除去することができる。さらに、基板20は、電極(例えば導電アドレス電極)40及び/又は電極(例えば任意選択の導電対向電極)30を含む場合がある。電極40及び電極30は、その下にある回路(例えばCMOS及び/又はアドレス回路)に接続することができ、この回路は基板20(図示せず)内に含まれる場合がある。電極30及び/又は40は、コンデンサに接続することができ、コンデンサは、電極30及び/又は40に向けられる電圧(例えばアドレス電圧)を蓄えることができる。
【0046】
電極30及び/又は電極40は、基板20上に(例えば横方向で)間隔を空けて配置される場合があり、反射要素111を静電気的に引き付けることができる。ヒンジ60は、反射要素111と共に回転する、且つ/又はねじれる場合があり、例えば機械エネルギーの形で復元力を提供することができる。同様又は実質的に同様の電圧、例えば接地電圧が反射要素111に印加されるとき、電極30及び/又は電極40によって、反射要素111をフラット(例えば非偏向)位置にすることができ、これは、電気的に引き付けない状態と言うことができる。電圧は、電極40から電極30へシフトさせることができ、反射要素111は、複数の角度方向で回転させることができる。
【0047】
図4は、本発明による修正された反射デバイス904の例示実施例を示す。例えばSLM1上の反射デバイスの形状を操作することによって、位相シフト・アドレス指定を実現することができる。反射要素904は、例えば材料の層906を形成することによって修正することができ、これは、1つ又は複数の反射デバイス904の一部分によって反射される放射の、180度又はλ/2の所望の位相シフトに対応する場合がある。材料の層は、例えば、堆積プロセス又は任意の他の適切なプロセスを使用して形成することができる。本発明の別の例示実施例では、材料の層は、所望の位相シフト(図示せず)を得るために、別のプロセス(例えばリソグラフィ・プロセス、又は任意の他の適切なプロセス)で反射デバイス904の一部分から取り去ることができる。反射デバイス904は、反射デバイス904の表面の一部分900が別の部分902よりも例えばλ/4高くなるように形成することができる。
【0048】
位相シフト・アドレス指定は、例えばリソグラフィ・システム又は任意の他の適切なシステムの他のパラメータを変えることなく、パターン解像度の増加を可能にすることができる。アドレス指定システムを使用して反射デバイス904又は410の一部(例えば縁部)を例えば−λ/4〜+λ/4の間でシフトさせる(例えば傾斜させる)とき、増加した(例えば完全な)位相シフトが生じる場合がある。アドレス指定システムは、複数の(例えば反対の)方向に反射デバイスを傾斜させることができる。ミラーの異なる部分から放射する光又は電磁放射は、λ/2±n*λだけ位相が異なる場合があり、ここでnは自然数(例えば0、1、2、・・・)である。ミラーの異なる部分の高さの差は、λ/4±(n*λ/2)にすることができ、ここでnは自然数(例えば0、1、2、・・・)であり、しかし任意の適切な数であってもよい。位相ステップを有さない傾斜ミラーは、約−0.2までの負の振幅を可能にする場合があり、これは約−0.05の負の強度に対応する場合がある。これは、ステッパにおけるハーフトーン型位相シフト(attenuated phase shifting)と同様又は実質的に同様のフィーチャ解像度向上を実現するのに十分な場合があり、しかし、レベンソン型位相シフト・マスク(alternating phase shift mask)と同様又は実質的に同様の位相シフトを実現しない場合がある。
【0049】
位相ステップ・ミラーを用いると、位相ステップは、例えば2つのミラー表面からの振幅を相殺させることができ、非偏向に関して低下した(例えばほとんどない、又はゼロの)強度(黒)を生じることができる。位相ステップ・ミラーを一方向で傾斜させることは、例えば約+0.5の強度に対応する約+0.7の振幅まで、正の実数振幅方向での振幅軌跡を提供することができる。位相ステップ・ミラーを別の方向で傾斜させることは、例えば約−0.5の強度に対応する約−0.7の負の振幅を提供することができる。したがって、例えば、位相ステップ・ミラーは、位相ステップを有さないミラーの2倍の放射線量を必要とする場合があり、しかしグレースケーリングを保存してより強い位相シフトを可能にすることができる。
【0050】
図5a〜5eは、マイクロ電気機械システム(MEMS)を製造する方法の一例を示す。図5a〜5eは、図3の線Aに沿って取ることができる断面の例である。
【0051】
図5aに関して、基板230は、半導体材料(例えばシリコン)から構成することができる。基板230は、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)回路と、金属(例えばアルミニウム、その任意の合金、又は任意の適切な金属元素)であってよい領域210、212、214と、例えば二酸化珪素であってよい領域220とを含むことができる。領域210、212、214の間に位置決めされる場合がある領域220は、領域210、212、214を分離(例えば絶縁)することができる。領域210は、例えばSLM1内の反射要素への接続(例えば電気的接続)を形成することができる。領域212及び/又は214は、電極(例えばアドレス電極)への接続(例えば電気的接続)を形成することができ、或いは、それらの領域は、それ自体、電極を構成することができる。
【0052】
図5bに関して、層240(例えば一時層)を、領域210、212、214及び/又は領域220の上に形成することができる。層240は、放射感受性材料(例えば電磁放射感受性材料)から構成することができる。層240内部にストッパ250を構成することができ、反射要素のための絶縁(例えば電気的絶縁)として働く場合がある。ストッパ250は、領域210、212、及び214から、且つ/又は電極から反射要素を分離することができ、短絡の可能性を低減することができる。ストッパは、非導電又は絶縁材料、例えば二酸化珪素から構成することができる。ストッパは、任意の適切な絶縁材料であってもよい。
【0053】
層240の間に設けられる領域245は、反射要素のための支持を形成することができる。例えば、領域245は、円形、楕円形、長方形、又は任意の他の適切な形状であってよい。層240の間の領域245は、例えばリソグラフィ・プロセス、又は任意の他の適切なプロセスによって提供することができる。
【0054】
図5cに関して、層240の上、領域245の上、且つ/又は領域210の上に、層(例えば反射層)260を形成することができる。
【0055】
層280が塗布される場合があり、SLM1内の少なくとも1つの反射要素内部のステップ高さの差を形成することができる。
【0056】
図5dに関して、例えば、フォト・レジストである場合がある層270を、層260及び/又は層280の上に形成することができる。空間285が、反射要素を互いから分離することができる。空間285は、例えば任意のリソグラフィ・プロセス又は他の適切なプロセスを使用して形成することができ、そのようなプロセスは、露光、現像、及び/又はエッチングを含む場合がある。
【0057】
図5eは、SLM1の例示実施例の一例を示す。層270及び/又は層240は、例えば溶液プロセス、ドライ・エッチ・プロセス、又は任意の他の適切なプロセスを使用することによって除去することができる。
【0058】
図6a〜6gは、図3の線Bに沿って取ることができる断面の例である。この断面は、アクチュエータに関係する場合がある。
【0059】
図6aに関して、例えばステップ高さの差を作成する前の層260の反射領域100の断面が例示されている。
【0060】
図6bに関して、層(例えば材料層)710を層260の上に形成することができる。例えばエッチ・ストップ層を、層710と層260との間に提供することができる。エッチ・ストップ層は、二酸化珪素又は任意の他の適切なエッチ・ストップ材料であってよい。層710は、例えばスパッタリング又は当業者によって望まれる任意の他の従来の方法によって層260の上に形成することができる。
【0061】
図6cに関して、放射(例えば電磁放射)に対する感受性をもつ場合がある層(例えば一時層)720を層710の上に形成することができる。層720は、例えばレジスト又はフォト・レジストであってよい。図6dに関して、上で説明したように層720の一部分(例えば半分)722が露出される場合があり、層720の一部分(例えば半分)724が露出されない場合がある。
【0062】
図6eに関して、層720の非露出部分である場合がある部分724が、層710の上に残る場合があり、層720の部分722が除去される場合があり、反射領域100の一部分が、非被覆材料層を有することができる。
【0063】
図6fに関して、領域100から、層710の非被覆部分が除去される、例えばエッチング除去される場合があり、且つ層720が除去される場合がある。エッチング・プロセスは、ドライ・ベース、ウェット・ベース、又は当業者によって望まれる任意の他のエッチング・プロセスであってよい。
【0064】
図6gに関して、領域100は、上に層710を形成された層260の部分を含むことができる。その部分の上の非露出層724は、溶液によって溶解される場合がある。
【0065】
図7aに関して、基板230は、複数の領域100(例えば反射領域又は画素)を含むことができ、これは、SLM1の例示実施例を形成することができる。例えば、基板5は、100万〜1000万の間の領域100を含むことができる。領域100の一辺は、8ミクロン〜16ミクロンであってよい。領域100内部にステップ高さの差が形成される場合があり、複数の領域100が互いから分離される場合がある。図7aに例示される領域100は、層110で覆われる場合があり、この層110は、放射(例えば電磁放射)に対する感受性をもつ場合がある。例えば、層110はレジストであってよい。層110は、例えば任意の適切な方法に従って層260の上に形成することができる。
【0066】
図7bに関して、領域100の一部分(例えば半分)120が波長に対して露出される場合があり、この波長に対して層110が感受性をもつ場合がある。領域100の別の部分(例えば半分)130は露出されない場合がある。露出は、任意の適切な方法に従って、例えば、電子ビーム(eビーム)又はレーザ・ビームが基板の表面にわたって走査される場合がある電子ビーム・パターン生成器又はレーザ・パターン生成器、或いはフォト・マスクを使用するステッパを使用して行うことができる。
【0067】
図7cに関して、層110は、露出されて、領域100の部分120の上に残る場合があり、層110は、領域100の部分130から除去される場合がある。例えば現像中に層110が領域100の部分130の上に残ることができるように、例えばポジ型レジストが使用される場合もある。
【0068】
図7dに関して、部分150及び部分160は、(六角形のモザイクで示される)材料層で覆われる場合がある。材料層は、例えばスパッタリング又は任意の適切なプロセスによって形成することができる。領域100の部分150では、材料層は、露出層110の上に形成される場合がある。反射領域の他の部分160では、材料層は、層260の上に形成される場合がある。材料層は、放射の波長の4分の1(λ/4)に等しい又は実質的に等しい場合がある厚さを有することができる。材料層厚さは、任意の適切な厚さであってもよい。例えば、SLM1の例示実施例がパターン生成器内の変調器として使用される場合、波長は例えば248nmであってよく、領域100上にスパッタされる場合がある材料層の厚さは例えば62nmであってよい。異なる波長が使用される場合には、部分間、例えば領域100の部分150と160との間で別のステップ高さの差を使用することができる。
【0069】
図7eに関して、層110の上に形成される場合がある材料層を、例えばリフトオフ・プロセス又は任意の他の適切なプロセスで除去することができる。領域100の部分170は、領域100の非被覆部分である場合があり、部分160は、材料層で覆われる場合がある。反射領域100の部分160と部分170との間のステップ高さは、ステップ高さの差を作成する材料に従って望まれるように変えることができる。
【0070】
本発明の例示実施例は、例えば、空間光変調器(SLM)を使用する場合があるマイクロリソグラフィ・システムでの書込み品質を改善することができる。また、本発明の例示実施例は、例えば、非平坦である反射デバイス(例えばミラー、マイクロミラーなど)を含む場合があるマイクロリソグラフィ・システムでの書込み品質を改善することができる。また、本発明の例示実施例は、任意の他の適切なシステムでの書込み品質を改善することができる。
【0071】
本発明の例示実施例では、本明細書で説明した基板を、当業者によって望まれる任意の適切な材料(例えばガラス、セラミック、金属、金属合金など)から構成することができることを理解されたい。
【0072】
本発明の例示実施例を紫外(UV)光に関して説明してきたが、極端紫外(EUV)を含めた任意の適切な波長を有することがある任意の適切な光が当業者によって利用される場合もあることを理解されたい。
【0073】
本発明を、その例示実施例に関して特に図示し、説明してきたが、頭記の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく形態及び詳細に様々な変更を加えることができることを当業者は理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工物にパターン形成するための方法であって、
少なくとも第1の部分及び少なくとも第2の部分を含む放射を生成し、前記放射の少なくとも前記第1の部分及び前記第2の部分を前記加工物に向けて反射するステップと、
前記放射の少なくとも前記第1の部分と前記第2の部分との間に位相差を誘発するステップと、
前記放射の少なくとも前記第1の部分及び前記第2の部分を加工物に照射するステップと、
前記放射の前記第1及び前記第2の部分を使用して、前記加工物上にパターンを形成するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の部分の位相が、前記第2の部分の位相とλ/2±n*λだけ異なり、ここでλは前記放射の波長であり、nは自然数である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の部分の位相が、前記第2の部分の位相とλ/4±(n*λ/2)だけ異なり、ここでλは前記放射の波長であり、nは自然数である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記放射が電磁放射である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記放射が光波の形である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
加工物にパターン形成するための装置であって、
放射を生成するように適合された放射源と、
前記加工物上にパターンを形成するように、且つ前記放射に位相差を誘発するように適合された少なくとも1つの反射デバイスと
を備え、
前記位相差が、位相シフト・プレートとステップ高さの差との少なくとも一方によって誘発される装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの反射デバイスが、さらに、
前記放射を反射するように適合された第1の部分及び第2の部分を含み、前記第1の部分によって反射される放射が、前記第2の部分によって反射される放射と位相が異なる。
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の部分によって反射される放射の位相が、前記第2の部分によって反射される放射の位相とλ/2±n*λだけ異なり、ここでλは前記放射の波長であり、nは自然数である請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の部分と前記第2の部分とが異なるステップ高さを有する請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の部分のステップ高さが、前記第2の部分のステップ高さとλ/4±(n*λ/2)に等しい値だけ異なり、ここでλは前記放射の波長であり、nは自然数である請求項9に記載の装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図6f】
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【図6g】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図7e】
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【公開番号】特開2010−61174(P2010−61174A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285070(P2009−285070)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【分割の表示】特願2006−543778(P2006−543778)の分割
【原出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(504095793)マイクロニック レーザー システムズ アクチボラゲット (50)
【Fターム(参考)】