説明

加熱オゾン水の製造方法

【課題】高濃度オゾン水中のオゾン濃度の減衰を抑制して、オゾン濃度の高い加熱オゾン水を効率的に製造することができる加熱オゾン水の製造方法を提供する。
【解決手段】純水又は炭酸ガス含有純水にオゾンガスを溶解させたオゾン水を加熱する加熱オゾン水の製造方法において、オゾン水を、液体を加熱媒体とする熱交換手段2により昇温速度6.0〜10.0℃/秒で60〜90℃に加熱する加熱オゾン水の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱したオゾン水の製造方法に関し、特に、オゾン濃度の加熱による減衰を抑制し、高濃度を維持した加熱オゾン水の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾン水は半導体製造における洗浄工程で利用されており、その製造は、電解法、放電法などの方法により製造したオゾンガスと被処理水(超純水)とを、エゼクタを用いて接触させて被処理水にオゾンガスを溶解させたり、直接接触させながらポンプで気泡懸濁させて被処理水中にオゾンガスを溶解させたりして行われている。
【0003】
このように製造されたオゾン水は、例えば、半導体基板や液晶基板製造時に用いるレジストを剥離洗浄するために用いられ、近年はオゾン水濃度が100ppm以上となるような高濃度のオゾン水を製造することができるようになってきており、洗浄効果を効果的に高めることが可能となってきている。
【0004】
そして、このようなオゾン水をヒーターや水蒸気を混合することにより加熱して高温で高濃度のオゾン水を用いることにより洗浄効果をさらに向上させてレジストの洗浄を効果的に行う方法も検討されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【特許文献1】特開2000−58496号公報
【特許文献2】特開2004−89971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高濃度のオゾン水を製造するには10℃以下の低温で製造することが必要であり、一旦製造したオゾン水を高温にするためには、上記文献に記載された手段でオゾン水を加熱するが、その加熱の際にオゾン水中のオゾンが分解してオゾン水濃度が低下してしまう問題があった。
【0006】
そして、ヒーターにより加熱する場合には、その加熱に比較的時間がかかるため、その間にオゾンの分解が進行してオゾン濃度がより低下してしまい、また、オゾン水と水蒸気とを混合して加熱する場合には、その加熱がエネルギー投入量に対し効果的に加熱ができる一方、水蒸気は熱を奪われて水となってオゾン水の一部となるため、加熱によるオゾンの分解に加え、オゾン水が希釈されることとなり、いずれの方法においてもオゾンが不必要に分解され、必要以上にその濃度が低下してしまっていた。
【0007】
そこで、本願発明は、高濃度のオゾン水中のオゾン濃度の減衰を抑制して、オゾン濃度を高く維持した加熱オゾン水を効率的に製造することができる加熱オゾン水の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の加熱オゾン水の製造方法は、純水又は炭酸ガス含有純水にオゾンガスを溶解させたオゾン水を加熱する加熱オゾン水の製造方法において、オゾン水を、液体を加熱媒体とする熱交換手段により60〜90℃に加熱するものである。
【0009】
このとき、熱交換手段におけるオゾン水の昇温速度を6.0〜10.0℃/秒とすることが、高濃度のオゾン水を濃度の減衰を抑制して加熱することができ、結果として加熱した高濃度オゾン水を効率的に製造できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の加熱オゾン水の製造方法によれば、オゾン水中のオゾン濃度の減衰を抑制しながらオゾン水を加熱することができ、これにより、酸化力が高く、レジスト洗浄力に優れた加熱オゾン水を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の加熱オゾン水の製造方法について、図1を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の加熱オゾン水の製造方法を実施するための加熱オゾン水の製造装置である。この加熱オゾン水の製造装置1は、供給されたオゾン水を加熱する熱交換手段2と、熱交換手段2に熱源となる加熱媒体を加熱するヒーター3と、熱交換手段2で温度が低下した加熱媒体を収容する加熱媒体収容槽4と、加熱媒体収容槽4に収容された加熱媒体を再度ヒーター3により加熱して熱交換手段2へ循環させる循環ポンプ5とから構成されるものである。
【0013】
ここで用いる熱交換手段2は、特に限定されるものではなく公知の熱交換手段を用いればよいが、例えば、プレート式熱交換器であることが好ましい。この熱交換手段2においては、熱源となる加熱媒体として液体が用いられ、この加熱媒体からオゾン水へ熱を移動させることによって加熱対象であるオゾン水の温度を上昇させるものである。すなわち、加熱媒体自身の温度は低下し、オゾン水の温度が高くなり加熱オゾン水が製造されるのである。
【0014】
この加熱媒体とオゾン水は、隔壁を介して間接的に接触して互いに熱を交換するものであるが、このとき、加熱媒体とオゾン水との接触時間をより短時間で加熱することがオゾン濃度の減衰率を小さくする点で好ましく、例えば、熱交換手段におけるオゾン水の昇温速度を6.0〜10.0℃/秒とすることが好ましく、8.0〜10.0℃/秒とすることがより好ましい。
【0015】
このとき、オゾン水は、熱交換手段2により室温(20〜25℃)程度から60〜90℃まで加熱されるものであり、このとき熱交換手段2における加熱線速度(加熱LV)や加熱空間速度(加熱SV)が大きい程好ましい。具体的には、加熱LVが0.50〜0.80m/hであることが好ましく、0.70〜0.80m/hであることが特に好ましい。また、加熱SVは、300〜500h−1であることが好ましく、420〜500h−1であることが特に好ましい。
【0016】
上記のように加熱LVや加熱SVを大きくするには、熱交換手段の接触面積を小さくして、瞬間的に与える熱量が大きくなるようにして達成され、このとき、例えば、接触面積を0.3〜1.2m程度とすることが好ましく、0.3〜0.5mであることが特に好ましい。そして、このように接触面積を小さくしやすい点からプレート式の熱交換手段が好ましい。
【0017】
なお、本明細書において、加熱線速度(加熱LV)とは、単位時間当たりに熱交換手段の断面積を通過するオゾン水の速度で、オゾン水の流量を熱交換手段のオゾン水通過部分の断面積で割ることで算出されるものである。
【0018】
また、加熱空間速度(加熱SV)とは、単位時間当たりにオゾン水が熱交換手段に接触する時間の逆数で表されるもので、単位時間当たりに熱源となる加熱媒体体積の何倍相当分のオゾン水を処理しているかということを意味し、オゾン水の流量を加熱媒体の流量で割ることで算出されるものである。
【0019】
また、このとき熱交換手段において、加熱対象であるオゾン水の流れと熱源となる加熱媒体の流れとは、同じ方向に流れても(並流)、向かい合う方向に流れてもよいが(向流)、熱の伝達効率が良く、オゾン水濃度の減衰を効果的に低減できることから向流であることが好ましい。
【0020】
次に、ヒーター3は、加熱媒体である液体を所定の温度まで加熱することができるものであればよく、従来公知のヒーターを用いることができ、特に限定されるものではない。このとき、ヒーター3で加熱された加熱媒体の温度は、製造する加熱オゾン水の温度に応じて適宜調節すればよいが、同じ温度のオゾン水を製造する場合でも、より高い温度の加熱媒体を用いることが、短時間でオゾン水を所定の温度まで加熱することができ、オゾン水の昇温速度を高くするのに寄与するため、加熱オゾン水のオゾン濃度の減衰率を小さくすることができる点で好ましい。例えば、80℃の加熱オゾン水を製造する場合には、加熱媒体として80℃以上の温度の液体を用いればよいが、85℃以上であることが好ましく、90〜95℃であることが特に好ましい。
【0021】
なお、同じ温度の加熱オゾン水を製造する際には、加熱媒体からオゾン水へ与える熱量は等しいため、より高い温度の加熱媒体を用いた場合には、低い温度の加熱媒体を用いた場合に比べ、循環させる加熱媒体の量を少なくすることができる。
【0022】
加熱媒体収容槽4は、熱交換手段2で温度が低下した加熱媒体を収容するものであり、その材質等は加熱媒体を安定して収容することができるものであれば特に限定されるものではない。なお、加熱媒体としては、水、シリコーン油、ダウサムA等が挙げられ、水を用いて温水を供給するようにすることが特に好ましい。
【0023】
循環ポンプ5は、加熱媒体収容槽4に収容された加熱媒体を再度ヒーター3により加熱して熱交換手段2へ循環させる働きをするものである。ここで用いられる循環ポンプ5も加熱媒体が配管内を循環するようにできるものであれば従来公知のものを用いることができ、特に限定されるものではない。
【0024】
このような構成とすることにより、オゾン水を加熱する際に、オゾン水中のオゾン濃度が減衰することを効果的に抑制することができ、濃度を高く保ったまま加熱したオゾン水を供給することができる。このように濃度が高く、温度も高いオゾン水は、酸化力を高く保持しているため、特に、半導体製造等におけるレジストの洗浄を効率的に行うことができ、高い洗浄効果を示す。
【0025】
また、このとき供給されるオゾン水は、60〜90℃において、オゾン濃度が100ppm以上であることが好ましく、100〜120ppmであるような高いオゾン濃度を有するものであることが特に好ましい。このような高い濃度を有するオゾン水は、通常、オゾンの自己分解により、また加熱される場合には、その影響により分解して結果としてオゾン水濃度が大きく減衰してしまっていたが、本願発明のように熱交換手段の加熱LVや加熱SVを大きく、言い換えれば、オゾン水の昇温速度が大きいほど(逆に言えば、加熱媒体の降温速度が大きいほど)、オゾン水濃度を高く維持した加熱オゾン水を製造することができるのである。
【0026】
そして、このとき熱交換手段2に供給される加熱前のオゾン水は、従来公知のオゾン水の製造方法により製造されたものであればよく、オゾン濃度が高いものであることが減衰を効果的に抑制できることから120〜150ppm程度のオゾン濃度を有するオゾン水であることが好ましい。
【0027】
また、この加熱前のオゾン水の製造においては、特開2000−167366号公報等により公知の多段向流接触装置を用いた方法や本発明者らが既に特許出願している方法(特願2007−290958)等を用いて製造することも高濃度のオゾン水を効率よく製造できる点で好ましいものであり、本発明者らが出願したオゾン水の製造方法については以下に説明する。
【0028】
ここで説明するオゾン水の製造装置は、例えば、図2に示したように、純水配管12に純水を供給する純水供給手段13と、オゾンガス配管14にオゾンガスを供給するオゾンガス供給手段15と、純水とオゾンガスとを吸引して混合しオゾン混合水とする混合ポンプ16と、オゾン混合水を収容するオゾン水貯留槽17と、オゾン水貯留槽17の内圧を制御する圧力制御手段18と、オゾン水貯留槽17のオゾン水を一旦外部に排出し、これをオゾン水貯留槽17に循環させる循環配管19と、循環配管19において、オゾン水とオゾン混合水とを吸引して混合する循環ポンプ20と、から構成されたオゾン水の製造装置11である。
【0029】
ここで、純水配管12とオゾンガス配管14とは、混合ポンプ16の吸引側に設置され、純水とオゾンガスとが溶解膜等を介することなく直接接触して混合ポンプ16に吸引されるようになっている。
【0030】
純水配管12及びオゾンガス配管14は、通常の配管を使用できるが、純水配管12は、途中で純水とオゾンガスの接触によりオゾン水を流通させるものであるため、配管自体又は配管表面をオゾン耐性に優れた部材、例えば、四フッ化物、純チタン、石英等で製造されているものであることが好ましい。
【0031】
ここで用いる純水供給手段13は、純水製造装置等で製造した純水を純水配管12に流通させて、後述する混合ポンプ16にまで供給するものであり、純水製造装置そのものや製造した純水を貯留したタンクから純水配管12に流通させるようにしたポンプ等が挙げられる。
【0032】
オゾンガス供給手段15は、オゾナイザ等で製造したオゾンガスをオゾンガス配管14に流通させ、純水が供給される純水配管12にオゾンガスを直接供給するものであり、オゾナイザそのものが好適に挙げられる。ここで直接とは、エゼクタ等の純水にオゾンガスを溶解させるための特別の手段を用いないことを意味し、後述する混合ポンプ16を稼動させ、混合ポンプ16が純水等の流体を吸引する力を利用することで、オゾンガスを供給純水中に容易に引き込んで混合させることができる。
【0033】
次に、混合ポンプ16は、ダイヤフラムポンプ又はベローズポンプからなるものである。これらのポンプは、その表面がオゾン等の耐性に優れた樹脂、例えば、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレンの共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンの共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂で加工されたものを用いることが好ましい。表面を加工することで高濃度のオゾンを用いた場合でもポンプ自体がオゾンにより腐食されることがない。
【0034】
また、この混合ポンプ16は、吸引側に純水配管12及びオゾンガス配管14が配設されており、純水及びオゾンガスを吸引、混合して、純水とオゾンガスが十分に混合されたオゾン混合水を吐出するものである。ここで、オゾン混合水とは、純水とオゾンガスとを混合することによりオゾンガスが純水中に溶解して製造されるオゾン水と一部余剰のオゾンガスとで構成されるものである。
【0035】
そして、この混合ポンプ16は、液体と気体の混合量を適宜調整することができ、高濃度のオゾン水を製造しようとする場合に混合ポンプ6の吸引側におけるオゾンガスの供給量を多くして、多量のオゾンガスを純水中に混合することができるものである。この点において、回転容積型ポンプに比べ、その量比は顕著であり、高濃度のオゾン水を製造する本装置及び方法における必須の構成要素である。
【0036】
さらに、ダイヤフラムポンプ又はベローズポンプは、その構成が簡易で、汎用されているため安価に入手することができ、これらポンプを用いることによりオゾン水の製造を低コストに抑えるのに効果的でもある。
【0037】
そして、この混合ポンプ16により、オゾナイザからのオゾンガスを安定して発生させてオゾン水を効率的に製造することができるようになっている。
【0038】
すなわち、オゾナイザは、その原理として、対向した電極間に高周波高電圧を印加することで、電極の間で無声放電が発生し、供給した酸素ガスの一部をオゾンガスとしているが、当然のことながら、供給する酸素ガスは定常的に流したほうが、オゾンガスの発生が安定し、かつその濃度を高く保つことができ、オゾンガス流量に脈動があった場合、オゾンガス濃度は1割から、2割程度減少してしまう。
【0039】
渦巻き式ポンプと比較してダイヤフラムポンプ又はベローズポンプは、その構造から、供給する流量に脈動を生じる。機種にもよるが、流量が多くなると、ポンプの内容量は増える分1分間当たりのストローク数(送液回数)は減ってしまい、脈動が増えることになる。
【0040】
例えば、オゾン水濃度を高濃度にするために、本装置に用いた後述の循環ポンプ20は、混合ポンプ6からの混合水と後述するオゾン水貯留槽7から循環されるオゾン水とを送液するものであるため、流量の多い機種を選定するが、1分間当りの送液回数(ストローク数)が、30〜40回程度になってしまう。この状態で、混合ポンプ16を用いない場合を仮定し、循環配管19にオゾンガスを供給すると、脈動によりオゾンガスが円滑に供給できない時間が長くなり、その影響でオゾナイザから発生するオゾンガス濃度が下がってしまう。
【0041】
そこで、循環配管19に連続的にオゾンガスを供給する際に、前段の混合ポンプ16として循環ポンプ20よりも小流量タイプのポンプを用いることで、供給するオゾンガス濃度を安定させることができる。例えば、小流量の機種としては、1分間当たりのストローク数が100回以上となるようなものを用いれば、オゾナイザへの影響を与えるような脈動がほとんど生じることがなくなり、これによりオゾンガス流量が安定し、オゾンガス濃度を減衰することなく供給することができる。
【0042】
また、この混合ポンプ16により、脈動をほとんど生じさせずに循環ポンプ20へオゾン混合水を送液することができるため、本発明のオゾン水の製造装置内における流体の脈動を全体的に抑えることができ、オゾン水を安定して製造することができる。
【0043】
オゾン水貯留槽17は、オゾン混合水を収容するタンクであるが、製造されたオゾン水がユースポイントに供給される前に設けられたものである。ここで、オゾン水貯留槽17はオゾン水を貯留するものであるが、余剰のオゾンガスも併存したオゾン混合水という形で流入してくるため、オゾン水貯留槽7の内圧を一定に制御しながらオゾンガスを排気する気液分離の機能を有するものである。
【0044】
圧力制御手段18は、オゾン水貯留槽17の内圧を制御し、圧力を一定のものとしてオゾン水の製造条件を調節するものであり、さらに、オゾンガスの排気量を調節するものでもある。この圧力制御手段18により、オゾン水貯留槽17の内圧を大気圧より高く維持することが好ましく、内圧を大気圧よりも高くすることでオゾン水貯留槽17中のオゾン水からオゾンが排気オゾンガス(気相)側に出て行くのを抑制して、オゾン水濃度を高いまま維持することができる。
【0045】
圧力制御手段18から排出された、オゾンガスは、大気中に排気され系外に放出される。このとき、大気中への放出前にオゾンガスを分解することで環境を汚染することがないようにすることが好ましく、オゾンガス分解を行なうものとしては、紫外線照射手段、触媒等の公知の手段を用いることができる。
【0046】
また、オゾン水貯留槽17の内圧を利用し高濃度のオゾン水としているが、さらにこの内圧を利用してオゾン水貯留槽17に貯留されているオゾン水をユースポイントへと送水することもできる。このように、オゾン水貯留槽17の内圧を利用してオゾン水を供給するようにすれば、ダイヤフラムポンプやベローズポンプで生じる脈動の影響をほとんどうけずにオゾン水を供給することも出来る。
【0047】
循環配管19は、オゾン水貯留槽17に貯留されているオゾン水をオゾン水貯留槽17の外部に一旦排出した後、混合ポンプ16から吐出されるオゾン混合水と混合して、再度オゾン水貯留槽17へと収容するように循環させるものである。このとき循環は循環ポンプ20により行われ、循環するオゾン水も混合ポンプ16により吐出されたオゾン混合水も循環ポンプ20の吸引側から吸引され、循環ポンプ20の内部で十分に混合されるようになっている。
【0048】
このように、オゾン水を循環供給することにより、一度製造されたオゾン水を、再度オゾンガスと接触混合させて、より高濃度のオゾン水を製造することができる。そして、製造されたオゾン水を使用する場合には、オゾン水貯留槽17に接続されたオゾン水配管21を開放し、ユースポイントまでオゾン水を供給することができるようになっている。
【0049】
このオゾン水の製造装置11を用いたオゾン水の製造方法は、まず、純水配管12に純水供給手段13から純水を供給し、一方では、オゾンガス配管14にオゾンガス供給手段5からオゾンガスを供給する。
【0050】
このとき供給する純水は、例えば、抵抗率が10MΩ・cm以上であるような純度のものが挙げられ、その目的に応じて適した純度の純水を使用するようにすればよい。半導体製造のレジスト剥離に使用する場合には、例えば、抵抗率が18MΩ・cm以上の超純水であることが好ましい。
【0051】
また、ここで供給されるオゾンガスはその濃度が150〜300g/mであることが好ましく、その中でも200g/m以上であることが特に好ましい。
【0052】
このとき、純水とオゾンガスのそれぞれの供給流量は、高濃度オゾンガスの製造効率の観点から、純水:オゾンガスの体積比で1:0.5〜1:20の範囲であることが好ましく、1:0.5〜1:2であることがより好ましく、1:0.8〜1:1.2であることが特に好ましい。
【0053】
これら純水及びオゾンガスを配管中で直接接触させた後、混合ポンプ16により両者を吸引し、純水とオゾンガスとをポンプ内で十分に混合してオゾン混合水として吐出する。なお、ここでオゾン混合水は、上記したように、純水とオゾンガスとを混合することによりオゾンガスが純水中に溶解して製造されるオゾン水と一部余剰のオゾンガスとで構成されるものである。
【0054】
このときオゾン混合水は、混合ポンプ16で加圧され循環配管19に供給され、循環するオゾン水と共に循環ポンプ20に吸引され十分に混合されて、再び加圧状態となって吐出されオゾン水貯留槽17に収容される。このとき、オゾン水貯留槽17の内圧は循環ポンプによる吐出圧力により上昇する。
【0055】
オゾン水貯留槽17において上昇した内圧は、圧力制御手段18により過剰のオゾンガスを排気することで一定の内圧に調整することができるようになっている。ここではオゾン水貯留槽17の内圧を大気圧よりも高い状態に維持し、これを利用して、オゾン水貯留槽17内のオゾン水は、その濃度を高く維持できるようになっており、また、オゾン水配管21を通じてユースポイントにオゾン水の供給ができるようにもなっている。なお、このときのオゾン水貯留槽17の内圧は、0.15〜0.5MPaの範囲とすることが好ましく、0.3〜0.5MPaであることがより好ましい。
【0056】
このオゾン水貯留槽17においては、混合ポンプ16より循環配管19を通してオゾン混合水としてオゾン水及び余剰のオゾンガスが常に供給されるため、オゾン水をユースポイントへ供給してもオゾン水貯留槽17の内圧が下がることも、貯留槽内部のオゾン水量が減ることもなく、常時オゾン水を製造し供給することができる。
【0057】
また、オゾン水貯留槽17の内圧を利用し高濃度のオゾン水とし、この内圧を利用してオゾン水貯留槽17に貯留されているオゾン水をユースポイントへと送水するが、さらに、オゾン水貯留槽17の内圧でオゾン水を供給するようにすれば、ダイヤフラムポンプやベローズポンプで生じる脈動の影響をほとんどうけずにオゾン水を供給することが出来る。
【0058】
また、オゾン水貯留槽17に貯留されているオゾン水は、オゾン水貯留槽17の外部に一旦排出された後、混合ポンプ16から吐出されるオゾン混合水と混合して、再度オゾン水貯留槽17へと収容するように循環され、このように、オゾン水を循環供給することにより、一度製造されたオゾン水を、再度オゾンガスと接触混合させて、より高濃度のオゾン水を製造することができる。この接触回数を多くするための循環させるオゾン水の流量は純水供給手段からの純水供給量の1.5〜6倍であることが好ましく、2〜4倍であることがより好ましい。
【0059】
また、この実施形態において、純水配管12に、酸又は炭酸ガス等を少量添加してオゾン水のpHを下げるpH調整手段を設けてもよく、この場合、オゾン水を高濃度で維持し易くなる。そして、本実施形態のオゾン水の製造装置は循環配管19を有するため、系内に添加した酸又は炭酸ガスは結果として循環されるので、純水配管12ではなく、オゾン水貯留槽17に酸又は炭酸ガスを直接注入するようにしてもよい。
【0060】
そして、このようなオゾン水を上記説明した方法で加熱して得られる加熱オゾン水は、その製造後の背圧が高いほどオゾン濃度を高く維持することができるため、その背圧が0.10MPa以上であることが好ましく、0.20〜0.30MPaであることが特に好ましい。
【0061】
さらに、製造された加熱オゾン水を供給する際には、そのユースポイントまでの距離が短いことが高濃度の加熱オゾン水を提供することができるため、熱交換手段で加熱された後、ユースポイントまでの距離が3.0m未満であることが好ましく、0.3〜1.0mであることが特に好ましい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例及び比較例を参照することにより、本発明をさらに詳細に説明する。
まず、本実施例及び比較例において用いた熱交換手段は、次の表1に示した仕様の4種類のものであり、ここでの使用条件における昇温速度の違いから熱交換手段A及びBを比較例、熱交換手段C及びDを実施例とした。なお、熱交換手段A及びBは株式会社山一製作所製、熱交換手段Cは株式会社日阪製作所製、熱交換手段Dは東京ブレイズ株式会社製である。
【0063】
【表1】

【0064】
そして、この表のように5LPMの流量でそれぞれの熱交換手段によりオゾン水を加熱するときの昇温速度は、上段から2.18℃/秒、1.09℃/秒、9.17℃/秒、6.55℃/秒である。
【0065】
(実施例1〜2、比較例1〜2)
図2に示したオゾン水の製造装置を用いてオゾン水を製造した。このとき、純水の水温24.5℃、pH4.5、気液分離手段内の圧力を4atmの条件下で、純水の供給量を5L/分(LPM)、オゾナイザ(住友精密工業株式会社製、商品名:GR−RG)で製造したオゾンガスの供給量を9L/分、循環流量を27L/分として装置を運転した。ここで、供給純水中には、炭酸ガスを0.05L/分の供給量で混合しpHを調整した。
【0066】
オゾン水貯留槽で製造されたオゾン水の濃度をオゾン水濃度計(堀場アドバンスドテクノ株式会社製、商品名:OZ−300i)で調べたところ、オゾン濃度が約140〜150ppmのオゾン水が得られた。
【0067】
このように製造したオゾン水を、表1に示した熱交換手段A〜Dを用いて約25℃から約80℃まで加熱したときの加熱後のオゾン濃度の変化を調べ、その結果を表2に示した。なお、ここで、熱交換手段を変更すると伝熱効率が変化するため、加熱媒体として用いた温水の入口温度を固定した条件での比較検討とし、温水の入口温度を約90℃とした。
【0068】
【表2】

【0069】
このとき、昇温速度は、上段から2.06℃/秒、1.02℃/秒、9.57℃/秒、6.06℃/秒であった。この結果から、熱交換手段によりオゾン濃度の減衰率を低減することができ、特に、プレート式の熱交換手段が、その加熱LVの高さから好ましいものとなっていることがわかった。
【0070】
(参考例1)
比較例1と同一のオゾン水の製造装置を用い、熱交換手段Aを用い、加熱LV及びSVを固定するようにして、加熱媒体である温水の温度及び流量を変化させた以外は同様の条件で加熱オゾン水を製造した。このときの加熱後のオゾン濃度の変化を調べ、その結果を表3に示した。
【0071】
【表3】

【0072】
この結果から、熱交換手段としては同じLVであったとしても、その内部においてより高温の温水を用いることで、入口付近で擬似的にLVの高い状態とすることで加熱オゾン水の濃度を高く保つことができることがわかった。
【0073】
(参考例2)
参考例1と同様の操作を、熱交換手段Bを用いて行い、その結果を表4に示した。
【0074】
【表4】

【0075】
この結果からも、実施例3と同様に、熱交換手段としては同じLVであったとしても、その内部においてより高温の温水を用いることで、入口付近で擬似的にLVの高い状態とすることで加熱オゾン水の濃度を高く保つことができることがわかる。
【0076】
(実施例3)
実施例2と同一のオゾン水の製造装置を用い、熱交換手段Dを用い、オゾン水流量を変更することにより加熱LV及びSVを変化させた以外は同様の条件で加熱オゾン水を製造した。このときの加熱後のオゾン濃度の変化を調べ、その結果を表5に示した。
【0077】
【表5】

【0078】
このとき、昇温速度は、上段から2.7℃/秒、4.2℃/秒、6.7℃/秒、7.1℃/秒であった。この結果から、加熱LVを向上させることによって、オゾン濃度の減衰率を効果的に小さくすることができることがわかった。
【0079】
(実施例4)
実施例1と同一のオゾン水の製造装置を用い、熱交換手段Cを用い、加熱後のオゾン水にかかる背圧を、加熱オゾン水の供給配管における開閉弁により変動させた以外は同様の条件で加熱オゾン水を製造した。このときの加熱後のオゾン濃度の変化を調べ、その結果を表6に示した。
【0080】
【表6】

【0081】
この結果から、製造した加熱オゾン水の背圧が高いほど、オゾン濃度を高く維持できることがわかった。
【0082】
(実施例5)
実施例2と同一のオゾン水の製造装置を用い、熱交換手段Dを用い、加熱後のオゾン水のオゾン水濃度計までの配管長を変更した以外は同様の条件で加熱オゾン水を製造した。このときの加熱後のオゾン濃度の変化を調べ、その結果を表7に示した。
【0083】
【表7】

【0084】
この結果から、加熱オゾン水はその後の配管長によってオゾン濃度が低減してしまうことがわかった。したがって、配管は短く、加熱オゾン水を製造後速やかに供給することが好ましい。
【0085】
(実施例6)
実施例2と同一のオゾン水の製造装置を用い、熱交換手段Dを用い、加熱後のオゾン水の加熱温度を変更した以外は同様の条件で加熱オゾン水を製造した。このときの加熱後のオゾン濃度の変化を調べ、その結果を表8に示した。
【0086】
【表8】

【0087】
このとき、昇温速度は、上段から3.0℃/秒、4.2℃/秒、5.4℃/秒、6.4℃/秒であった。この結果から、加熱オゾン水のオゾン濃度は、加熱温度が高くなるにつれてオゾン濃度が低下しているが、70℃を超えた辺りから急激に濃度が低下しており、オゾン濃度の減衰が進行している。これにより70℃を超えるとオゾンの自己分解の進行速度が高まり、オゾン濃度を高濃度に維持することが困難であることがわかる。そして、本願発明においては70℃以上となった場合でも、その減衰率は従来のものと比較して小さくすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本実施形態における加熱オゾン水の製造装置の概略構成図である。
【図2】加熱前オゾン水の製造装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0089】
1…加熱オゾン水の製造装置、2…熱交換手段、3…ヒーター、4…加熱媒体収容槽、5…循環ポンプ、11…オゾン水の製造装置、12…純水配管、13…純水供給手段、14…オゾンガス配管、15…オゾンガス供給手段、16…混合ポンプ、17…オゾン水貯留槽、18…圧力制御手段、19…循環配管、20…循環ポンプ、21…オゾン水配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水又は炭酸ガス含有純水にオゾンガスを溶解させたオゾン水を加熱する加熱オゾン水の製造方法において、
前記オゾン水を、液体を加熱媒体とする熱交換手段により昇温速度6.0〜10.0℃/秒で60〜90℃に加熱することを特徴とする加熱オゾン水の製造方法。
【請求項2】
前記熱交換手段が、プレート式の熱交換手段であることを特徴とする請求項1記載の加熱オゾン水の製造方法。
【請求項3】
前記熱交換手段における加熱線速度(加熱LV)を0.50〜0.80m/hとすることを特徴とする請求項1又は2記載の加熱オゾン水の製造方法。
【請求項4】
前記熱交換手段において、オゾン水と加熱媒体との接触面積が0.3〜0.5mであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の加熱オゾン水の製造方法。
【請求項5】
前記熱交換手段における加熱媒体の温度が、90〜95℃であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の加熱オゾン水の製造方法。
【請求項6】
前記加熱オゾン水のオゾン濃度が100ppm以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の加熱オゾン水の製造方法。
【請求項7】
製造した加熱オゾン水の背圧を0.10MPa以上とすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の加熱オゾン水の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−297588(P2009−297588A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151157(P2008−151157)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】