説明

加熱装置およびプロセスガス処理システム

【課題】排気コンダクタンスの上昇を抑えつつプロセスガスを短時間で効率的に加熱できるようにした低コストの加熱装置、および、この加熱装置を用いてプロセスガスを高温に加熱して下流の長距離にわたりプロセスガスを高温に維持するプロセスガス処理システムを提供する。
【解決手段】加熱装置1の加熱流路部200に複数枚配置されたフィン220の孔部221は、プロセスガスを螺旋状に案内しつつ流すように設けられている。孔部221を通過して螺旋状となったプロセスガスが円筒210およびフィン220から放射される熱により加熱され、反応副生成物の付着を防止する温度が下流の排気流路の終端まで維持されるプロセスガスとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスガスを加熱する加熱装置、および、この加熱装置を含むプロセスガス処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の成膜ではCVD(Chemical Vapor Deposition)による成膜が多く用いられている。このようなCVDの従来技術の具体例として、半導体の絶縁膜に用いられるシリコンナイトライドを成膜する時、ジクロールシランガスとアンモニアガスを使用して行う。反応は以下のようになる。
3SiHCl+10NH → Si+6NHCl+6H
この時、副反応生成物である塩化アンモニウム(NHCl)ガスが生成する。塩化アンモニウムガスは184℃を下回ると気体から固体となる。塩化アンモニウムガスは184℃より高温にある反応真空チャンバ(約700〜950℃)の中ではガス状であるが、配管・バルブ・エルボ等を組み付けて構成される排気流路を通流する間に冷却され固体粒子となる。固体粒子は真空ポンプに入り込み、ケーシングや回転翼に付着して堆積物となる。また、真空ポンプからさらに下流へも到達して排気流路の内側で堆積する。
【0003】
このような堆積物により排気流路の内部空間が狭められると、真空ポンプによる排気能力の低下をきたしたり、反応真空チャンバ内のガス流速が徐々に変化する。その結果、常に一定であって安定した状態でCVD反応がなされず、安定した成膜が困難となる。さらに、排気流路が堆積物により狭小になると、反応真空チャンバの排気ができなくなる。
また、堆積物を除去するためには、排気流路内を清掃する必要があり、システムの保守に多大な労力、時間、および、費用を要する。
【0004】
そこで、従来技術では排気流路途中に加熱装置を介在させ、反応副生成物ガスや残留ガスを含むプロセスガスを所定温度(先に例示した塩化アンモニウムガスが反応副生成物ガスである場合では184℃を十分に超える温度、例えば300℃)に維持して、堆積物が付着しないように配慮している。
【0005】
このような従来技術の加熱装置の一具体例として、例えば、特許文献1に記載された装置が知られている。
特許文献1(特開2006−332086号公報,発明の名称「加熱装置およびプロセスガス処理システム」)に記載された発明は、本願出願人の特許出願に係るものであり、プロセスガスが通流する加熱流路部と、カーボンなどを材料とする大球,中球,小球からなる発熱体と、発熱体に対して誘導加熱により加熱するコイルと、を備え、発熱体を通過して乱流となったプロセスガスが発熱体に接触して加熱され、反応副生成物が付着しない温度が下流の排気流路の終端まで維持されるプロセスガスとする加熱装置、およびこのような発熱効率を高めた加熱装置を用いるプロセスガス処理システムに係るものである。
【0006】
また、加熱装置ではないがプロセスガス処理システムに係る装置の従来技術として、特許文献2(特開平09−72291号公報,発明の名称「ドライ真空ポンプ前段用のトラップ」)に記載された発明は、ハウジングの底面に立てた中空のセンターシャフトに対し、それぞれスペーサを介在させて複数の凝着板を取り付け、かつこれら凝着板とスペーサとを加熱するための電熱ヒータをセンターシャフト内のほぼ全長に挿入し、また、ガス導入口からガス導出口の間において、各凝着板の間隔、および各凝着板の流路部分の開口面積を漸減させるというものであり、トラップの構造が特許文献1の加熱装置として利用可能な構造である。
【0007】
また、特許文献3(特開2002−186843号公報,発明の名称「超臨界水反応装置」)に記載された発明は、CVD成膜に関するものではなく超臨界水反応装置に関するものであるが、反応室の構造が特許文献1の加熱装置として利用可能な構造である。
【0008】
【特許文献1】特開2006−332086号公報 (段落番号0040,0041,図2)
【特許文献2】特開平09−72291号公報 (段落番号0009〜0012,図1〜図3)
【特許文献3】特開2002−186843号公報 (段落番号0031〜0033,図1,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の加熱装置では、大球,中球,小球がカーボンの消費により大きさが変化したり、また、大球,中球,小球の移動などにより加熱流路が一定せず、特性が安定しないおそれがあった。
また、排気ガス内にカーボン粉が混入するおそれもあった。
さらにまた、加熱流路部の覆いは石英により形成されているが、この石英は割れやすいものであり、仮に加熱流路部が割れて欠けやひびが生じるような場合は、リークを生じるため、真空ポンプ二次側に設置するものとしては好ましくなかった。
特許文献2,3では加熱流路部の加熱構造として適用するには、流路が非連続のつづら折り状であって排気コンダクタンスが大きくなりすぎるため、真空が確保しにくいという問題もあった。
また、プロセスガスをより高温にすることで、プロセスガスを加熱する加熱流路部内はもちろんのこと、下流までプロセスガスを高温に維持し、下流の排気流路系全般にわたり反応副生成物ガスが付着する事態が起こらないようにしたいという要請があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、排気コンダクタンスの上昇を抑えつつプロセスガスを短時間で効率的に加熱できるようにした低コストの加熱装置を提供することにある。
さらに、他の目的は、この加熱装置を用いてプロセスガスを高温に加熱し、下流の排気流路の長距離にわたりプロセスガスを高温に維持するプロセスガス処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る加熱装置は、
円筒と、この円筒内に複数枚並べられて配置されるとともに孔部が設けられるフィンと、を有し、フィンの孔部により決定された加熱流路をプロセスガスが通流するようになされた加熱流路部と、
加熱流路部を誘導加熱により加熱する加熱部と、
を備える加熱装置であって、
前記孔部は、プロセスガスを螺旋状に案内しつつ流すように設けられ、孔部を通過して螺旋状となったプロセスガスが円筒およびフィンから放射される熱により加熱され、反応副生成物の付着を防止する温度が下流の排気流路の終端まで維持されるプロセスガスとすることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る加熱装置は、
請求項1記載の加熱装置において、
前記フィンは円板であり、孔部は円の一部を切り欠いた弦による孔であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項3に係る加熱装置は、
請求項2に記載の加熱装置において、
前記フィンは円筒の軸方向に等間隔で複数枚配置されるとともに、前記孔部は軸方向に進むにつれて所定角度毎に異ならせた弦による孔であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項4に係る加熱装置は、
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の加熱装置において、
前記フィンは、孔部に加えて排気コンダクタンス調整用の調整孔を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項5に係る加熱装置は、
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の加熱装置において、
前記加熱流路部は、円筒内前側で空間である前室を備え、加熱部は少なくとも前室周囲に形成されて前室を加熱することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項6に係る加熱装置は、
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の加熱装置において、
加熱流路部の外周を覆って、外界から断熱する断熱体を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項7に係るプロセスガス処理システムは、
反応真空チャンバから排気する排気系の配管内に反応副生成物が付着するのを防止するプロセスガス処理システムであって、
反応真空チャンバの下流に設けられる真空ポンプと、
真空ポンプの下流に設けられる請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の加熱装置と、
加熱装置の下流に設けられるスクラバと、
スクラバに流入するプロセスガスの温度を計測して温度信号を出力するガス温度センサと、
温度信号に基づいて加熱装置の加熱温度を制御する制御駆動装置と、
を備え、
制御駆動装置は、ガス温度センサからの温度信号が予め定められた温度以上を維持するように加熱装置を制御する駆動信号を出力する手段として機能することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項8に係るプロセスガス処理システムは、
反応真空チャンバから排気する排気系の配管内に反応副生成物が付着するのを防止するプロセスガス処理システムであって、
反応真空チャンバの下流に設けられ、請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の加熱装置と、
加熱装置の下流に設けられる真空ポンプと、
真空ポンプの下流に設けられるスクラバと、
真空ポンプに流入するプロセスガスの温度を計測して温度信号を出力するガス温度センサと、
温度信号に基づいて加熱装置の加熱温度を制御する制御駆動装置と、
を備え、
制御駆動装置は、ガス温度センサからの温度信号が予め定められた温度以上を維持するように加熱装置を制御する駆動信号を出力する手段として機能することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項9に係るプロセスガス処理システムは、
請求項7または請求項8記載のプロセスガス処理システムにおいて、
前記加熱装置内に配置されて、加熱流路部温度信号を出力する加熱流路部用温度センサを備え、
制御駆動装置は、加熱流路部用温度センサからの加熱流路部温度信号が予め定められた温度を超えると判断したときに加熱制御を停止するように加熱装置を制御する駆動信号を出力する手段として機能することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上のような本発明によれば、排気コンダクタンスの上昇を抑えつつプロセスガスを短時間で効率的に加熱できるようにした低コストの加熱装置を提供することができる。
さらに、この加熱装置を用いてプロセスガスを高温に加熱し、下流の排気流路の長距離にわたりプロセスガスを高温に維持するプロセスガス処理システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
続いて、本発明の加熱装置およびプロセスガス処理システムを実施するための最良の形態について図に基づいて一括して説明する。図1は本形態のプロセスガス処理システムの全体構成図である。プロセスガス処理システムは、加熱装置1、反応真空チャンバ2、真空ポンプ3、スクラバ4、加熱流路部用温度センサ5、ガス温度センサ6、制御駆動装置7を備えている。
【0022】
プロセスガス処理システムの上流側(図1の左側)から説明をする。
反応真空チャンバ2は、各種CVDプロセスを行うための反応室である。
真空ポンプ3は、反応真空チャンバ2の下流に接続される。
加熱装置1は、真空ポンプ3の下流に接続される。
スクラバ4は、加熱装置1の下流に接続される。
加熱流路部用温度センサ5は、加熱装置1の加熱流路部200(図2参照)の温度を計測し、加熱流路部温度信号を出力する。なお、加熱流路部用温度センサ5は、例えば熱電対であり加熱流路部200の円筒210に溶接により二線が接続されている。
ガス温度センサ6は、スクラバ4に流入するプロセスガスの温度を計測し、温度信号を出力する。
プロセスガス処理システムの動作については後述する。
【0023】
このうち加熱装置1の内部構造について説明する。図2は本形態の加熱装置の内部構造図であり、図2(a)は導出側側面図、図2(b)は縦断面図、図2(c)はA断面図、図2(d)はB断面図、図2(e)はC断面図、図2(f)はD断面図である。図3は加熱流路部内のフィンの配置およびプロセスガスの流れの説明図である。なお、図2(c)〜図2(f)では図をわかりやすくするため、フィン220のみ図示し、他の断熱体400など円筒210の外側の構成の図示を省略している。
加熱装置1は、図2で示すように、導入部100、加熱流路部200、加熱部の一具体例であるコイル300、断熱体400、導出部500、温度センサ導入部600を備えている。この図2(b)の加熱装置1の右側では真空ポンプ3が管を介して接続され、図2(b)の左側ではスクラバ4が管を介して接続される。
【0024】
導入部100は、詳しくは、管110、蓋部120を備える。
管110は、真空ポンプ3の二次側と連通しており、真空ポンプ3から排気されたプロセスガスが通流する。
蓋部120は、円板の中央に孔が貫通するように形成され、加熱流路部200の円筒210の開口を塞いでいる。この中央の孔には、真空ポンプ3に一端が連結された管110の他端と連結固定されている。
【0025】
加熱流路部200は、円筒210、フィン220、を備えている。
円筒210は、誘導加熱が可能な材料で形成され、両側に開口部を有する筒体である。例えばステンレス管などである。
フィン220は、誘導加熱が可能な材料で形成されてこの円筒内に複数枚配置されるステンレス板などによる円板であり、さらに図2(c)〜図2(f)で示すような孔部221、調整孔222を備える。孔部221は円板の一部を切り欠いて形成するものであり、弦による孔である。調整孔222はプロセスガスを通過させる孔であり、排気コンダクタンスを調整するための孔である。後述するが調整孔222は十分な排気コンダクタンスが確保できる場合にはなくても良い。なお、フィン220は、円筒210の内部に溶接により固定されるが、この際に調整孔222を把持固定しながら溶接するため、固定を容易にする。円筒210内の複数のフィン220により形成される加熱流路の詳細については後述する。
【0026】
コイル300は、本発明の加熱部の一具体例であり、高周波誘導加熱を行うためのものである。動作については後述する。
断熱体400は、加熱流路部200の外周を覆う筒体であり、例えば、グラスウールなどにより形成されている。断熱体400は、加熱流路部200が外界へ熱放射しないように断熱して、加熱流路部200を高温に維持する。
【0027】
導出部500は、蓋部510、シール520、押さえ部530、留めネジ540、管550を備える。
蓋部510は、円板の中央に孔が貫通するように形成され、加熱流路部200の円筒210の開口を塞いでいる。
シール520は、例えばOリングなどであり、蓋部510と押さえ部530との間で強固に密接するようになされ、リークの発生を防止する。
【0028】
押さえ部530は、円板の中央に孔が貫通するように形成され、この中央の孔には、スクラバ4に一端が連結された管550の他端と連結固定されている。
留めネジ540は、シール520を介して押さえ部530を蓋部510に押さえつつ固定する。
管550は、スクラバ4と連通しており、加熱装置1により加熱されたプロセスガスが通流してスクラバ4へ到達する。
【0029】
温度センサ導入部600は、加熱流路部200および断熱体400に設けられ、流路内と連通する孔と、孔に挿通された温度センサの通信線を引出しつつ内外を封止する封止部である。この温度センサ導入部600を通じて、ガス温度センサ6が流路内へ入れられる。なお、図2(b)ではガス温度センサ6が加熱装置1の直後に配置されているが、プロセスガス処理システムとしては、図1で示したように、スクラバ4までの排気流路が長尺な場合にはこのスクラバ4の直前にガス温度センサ6が配置されるようにしても良い。
【0030】
続いて本発明の特徴をなす加熱装置1の加熱流路部200の詳細について説明する。まず、構造について説明する。フィン220は、円筒210の軸方向に等間隔で複数枚配置されており、流路方向から順に見ると、図2(f)のD断面図、図2(e)のC断面図、図2(d)のB断面図、図2(c)のA断面図というように、孔部221は軸方向に進むにつれて所定角度毎に異ならせた弦による孔としており、以下図2(f)の断面図に戻って同様に所定角度毎に異ならせて配置している。このような加熱流路部200の内部では、図3で示すように、孔部221が角度を変えて配置されたものとなる。なお、図3は図2(b)の構造のうちフィン220のみを配置したものであり、見やすさに重点を置くため一部図示を省略している。
【0031】
本形態ではD断面図で0°としたときに、C断面図で90°、B断面図で180°、A断面図で270°であり、90°毎に異なる弦による孔が形成されており、フィン220がプロセスガスの通流方向に行くに従って孔部221の位置が変化するように取り付けられている。そして、5枚目で一周して360°回転したこととなりD断面図と同じ孔が0°の位置に配置されたフィン220が配置される。これで1ターンとすると本形態では3.5ターンの螺旋が形成されることとなる。ターン数が多いと、プロセスガスの滞留時間が長くなるため加熱温度を高めることができるが排気コンダクタンスが大きくなるため排気速度が遅くなる。そこで加熱温度と排気コンダクタンスを勘案してターン数が決定される。また、ターン数に応じて弦の角度も形成される。例えば、弦を形成する角度として30°毎、45°毎、または60°毎という角度を採用しても良い。これらもプロセスガスや処理システムなどに応じて適宜決定される。
【0032】
続いてプロセスガスの流れについて説明する。上記のような構造を有する加熱流路部200では、図3の曲線状の点線で示すように、主な流れとしてほぼ螺旋状に流れる。
また、調整孔222でもプロセスガスが通流する。この調整孔222の存在により排気コンダクタンスを低下させている。
これら螺旋状の流路と調整用の流路により所定の排気コンダクタンスまで低下させている。また、入口から出口までの加熱流路を螺旋状に長くしているため、加熱装置1の全長を短くすることもでき加熱装置1の小型化に寄与する。
また、円筒にフィンを固定するなど加熱流路部の構造も簡単であり、コストの低減に寄与する。
【0033】
続いてプロセスガスへの加熱について説明する。
上記のような加熱流路部200を誘導加熱により加熱すると、円筒210とフィン220が加熱されて高熱になる。そして、まず、円筒210からの放射熱により円筒210内が加熱される。特に円筒210の内側周囲が加熱される。そして円筒210の内壁面から遠い中心軸付近でも二枚のフィン220に挟まる空間ではフィン220からの放射熱により加熱される。これら円筒210およびフィン220により加熱流路部内の全体で加熱される。このように円筒210とフィン220とが共に加熱されているため、加熱効率が高まる。
【0034】
このような加熱流路部200では、図3で示すように、孔部221を通過しつつ円筒210の内周付近に沿って螺旋状の流路をプロセスガスが流れると、円筒210からの放射熱により十分に加熱されつつ流れていく。
また、調整孔222を通過しつつ調整用の流路をプロセスガスが流れると、フィン220に当たって乱流となりつつ流れていき、円筒210やフィン220から放射される熱により十分に加熱されつつ流れていく。
このような加熱流路部200では加熱流路を長くするとともに流量を増加させて排気コンダクタンスを低下させつつ加熱効率を向上させており、高速で所望の温度に加熱してプロセスガスを排気することが可能となる。
加熱装置1はこのようなものである。
【0035】
続いて加熱装置1およびプロセスガス処理システムの一連の動作について説明する。
反応真空チャンバ2では、CVDプロセスが行われる。例えば、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition:プラズマ励起化学気相成長)法や、LPCVD (Low Pressure Chemical Vapor Deposition::低圧化学気相成長)法というように、各種のCVDプロセスである。
【0036】
反応真空チャンバ2の反応室内に反応ガスが供給される。この反応ガスは加熱により熱化学反応を起こし堆積させる対象物に反応生成物が堆積し薄膜を形成する。この反応真空チャンバ2から、熱化学反応せずに残った反応ガス、および、熱化学反応によって生成された反応副生成物ガスを含むプロセスガスが排気される。
【0037】
反応真空チャンバ2でCVDプロセスを行った際に排気するプロセスガスの処理を行わないならば、反応真空チャンバ2の下流側の流路内において、CVDプロセスにより生成された反応副生成物ガス、または、余剰の原料ガスのうち、室温付近で固化するものが管内壁に付着堆積する。そこで、反応真空チャンバ2から排気されるプロセスガスに対し、反応真空チャンバ2の後段の装置でプロセスガス処理を行う。
【0038】
真空ポンプ3では、プロセスガスを引いて下流へ送る。このとき、プロセスガスが通過しても、プロセスガスの流量は少なく、かつポンプ上流は真空状態のため副生成物はあまり生成されず、堆積物が付着する事態は生じないため、真空ポンプ3内は清浄な状態が保たれる。なお、反応真空チャンバ2と真空ポンプ3との間の排気流路にヒーター等巻くことで副生成物を生じさせないようにすることもできる。
【0039】
真空ポンプ3の排気側では大量の窒素ガス等の希釈ガスにより希釈される。このため、プロセスガスの温度が低くなり、副生成物が生成しやすくなる。そこで、プロセスガスを加熱し、スクラバ4までプロセスガスを高温に維持する。加熱装置1は、誘導加熱を採用しているため、大流量のプロセスガスを高速加熱することが可能である。
【0040】
加熱装置1はプロセスガスに対して所定温度以上となるように加熱する。
プロセスガスは、図2の導入部100を経て、加熱流路部200へ到達する。
加熱流路部200では複数のフィン220の孔を通過してプロセスガスは螺旋状に通過していくため、換言すれば、長い距離を通過していくこととなり、十分に加熱されることとなる。このような加熱流路部200は図2の左右方向に長さを短くすることができ、また、螺旋状の流路ではあるが、純粋な螺旋状ではなく軸方向へはフィンに衝突したり、半径方向に流れると円筒に衝突しつつ乱流気味に流れていくため、導出部を出る頃にはプロセスガスは十分に加熱された上で流出することとなる。また、このような構造であるため排気コンダクタンスが大きいような場合には調整孔によりフィンを通過し易いようにして排気コンダクタンスを低減させることもでき、所望の温度に加熱することが可能となっている。
【0041】
このような加熱流路部200に対し、制御駆動装置7から供給される駆動信号によりコイル300が高周波交番磁界を印加することで、加熱流路部200が誘導加熱され、これによって加熱流路部200が高温に加熱される。このように加熱されたプロセスガスは、導出部500の管550を経てスクラバ4に到達する。
スクラバ4は、到達したプロセスガスを無害ガスにして外部へ排出する。
プロセスガス処理システムの流体系はこのように形成される。
【0042】
続いてプロセスガス処理システムの加熱温度制御系について説明する。
まず、ガス温度センサ6は加熱流路部200の中でプロセスガスに直接接触するように配置され、図1で示すように、スクラバ4に流入する前のプロセスガスの温度を計測して温度信号を出力する。このガス温度センサ6は、導出部500の管550が短い場合は、図2で示すように温度センサ導入部600を通じて設置され、一方導出部500の管550が長い場合は、スクラバ4へ入力する排気流路の近傍に配置される。この温度信号は、制御駆動装置7へ出力される。
【0043】
制御駆動装置7は、ガス温度センサ6からの温度信号が予め定められた温度以上を維持するように発熱体を加熱制御する駆動信号を出力する手段として機能する。ここに制御系はPID制御系やON・OFF制御系として一定温度となるように制御している。駆動信号はコイル300への交流信号であり、温度が低いと判断したときは交流信号(POWER)を加えて発熱体を加熱する駆動信号とする。また、温度が高いと判断したときは交流信号(POWER)を殆どOFF状態として、これ以上加熱流路部200を加熱しないようにする。
【0044】
これから、ガス温度センサ6の温度信号が所定温度を上回っていれば、それまでの経路では必ず所定温度を上回っており、副反応生成物が導出部500の管550やスクラバ4内へ堆積物が付着するという事態を回避できる。そして、排気流路が長尺な場合には図1で示すようにスクラバ4の直前にガス温度センサ6を配置して、副反応生成物がスクラバ4の直前までの導出部500の管550内へ堆積物が付着するという事態を回避できる。なお、図1のようなスクラバ4の直前にガス温度センサ6が配置されたならば、加熱流路部用温度センサ5が検出した温度に対し、ガス温度センサ6が検出した温度は多少の時間遅れを生じるが、一定温度に維持する厳密な温度制御ではないため、対応が十分に可能である。
【0045】
続いて、緊急停止制御系について述べる。
加熱流路部用温度センサ5は、加熱装置1の加熱流路部200内に配置される。
図1で示す制御駆動装置7は、加熱流路部用温度センサ5からの加熱流路部温度信号が予め定められた温度を超えると判断したときに加熱制御を停止する駆動信号を加熱装置1へ出力する手段として機能する。例えば、1000℃以上になったら加熱制御を停止する。この温度の具体的な値は、発熱体の材質・個数や、スクラバ4までの距離等も勘案して決定される。
これにより、異常加熱が検知された場合に、制御駆動装置7が直ちに加熱を緊急停止することで、安全を確保する。プロセスガス処理システムはこのようなものである。
【0046】
続いて、加熱装置の他の形態について図を参照しつつ説明する。図4は他の形態の加熱装置の内部構造図であり、図4(a)は導出側側面図、図4(b)は縦断面図、図4(c)はE断面図、図4(d)はF断面図、図4(e)はG断面図、図4(f)はH断面図である。
加熱装置1’は、図4で示すように、導入部100、加熱流路部200、加熱部の一具体例であるコイル300、断熱部400、導出部500、温度センサ導入部600、前室700を備えている。先に図2を用いて説明した加熱装置1と比較すると、円筒210内であって流入側の最初のフィン220の前段の空間である前室700を設け、コイル300は少なくとも前室700の周囲を覆うように形成されて前室700の周囲の円筒210を加熱することで前室700を加熱する構成とした。加熱流路部200は前側のみ加熱されるが円筒210を通じて熱伝達していき加熱流路部200の全体が加熱される。なお、コイル300は加熱流路部200の全体を巻き回すようにしても良い。このような加熱装置1’では加熱流路部200の導入部100付近が確実に加熱されているため、温度が低くなったプロセスガスが加熱流路部200への導入直後に十分に加熱されることとなり導入部100の周囲で堆積物が付着するようなおそれはなくなる。このような加熱装置1’を図1の加熱装置1に代えて配置することでもプロセスガス処理を行うことができる。
【0047】
続いて、加熱装置の他の形態について図を参照しつつ説明する。図5は他の形態の加熱装置の内部構造図であり、図5(a)は縦断面図、図5(b)はI断面図、図5(c)はJ断面図、図5(d)はK断面図、図5(e)はL断面図、図5(f)はM断面図、図5(g)はN断面図である。
加熱装置1”は、図5で示すように、導入部100、加熱流路部200、加熱部の一具体例であるコイル300、導出部500、温度センサ導入部600を備えている。先に図2を用いて説明した加熱装置1と比較すると、断熱部400を除去した構成とした点、円筒210内の流路が導出側で縮径しつつ先細る点、円筒210内であって流入側の最初のフィン220の孔部221を大きく採って前段の空間を設ける点、フィン220が導入側に集中している点、が相違している。加熱流路部200は導入部100側にあるフィン220およびその周囲の円筒210が加熱され、円筒210を通じて熱伝達していき加熱流路部200の全体が加熱される。なお、コイル300は加熱流路部200の全体を巻き回すようにしても良い。このような加熱装置1”では加熱流路部200の導入部100付近が確実に加熱されているため、温度が低くなったプロセスガスが加熱流路部200への導入直後に十分に加熱されることとなり導入部100の周囲で堆積物が付着するようなおそれはなくなる。また、導出側で縮径しつつ先細るため、ガスを流れやすくしている。なお、この形態でも、図2で示したように、断熱体を加熱流路部200の円筒210の周りに設けるようにしたり、フィン220に調整孔221を設けるようにしても良い。このような加熱装置1”を図1の加熱装置1に代えて配置することでもプロセスガス処理を行うことができる。
【0048】
続いてプロセスガス処理システムの他の形態について説明する。図6は他の形態のプロセスガス処理システムの全体構成図である。図1で示したプロセスガス処理システムでは、スクラバ4の前段であって真空ポンプ3の後段に加熱装置1を配置して加熱装置1内は大気圧と同程度であるが、本形態では真空ポンプ3の前段であって反応真空チャンバ2の後段に加熱装置1を配置して加熱装置1内がほぼ真空である点で相違している。このような図5で示すようなプロセスガス処理システムであっても、スクラバ4へ到達するまで堆積物を生成しないように十分に高温なプロセスガスになるまで加熱することで、処理システムの運用は可能である。また、先に説明した加熱装置1’,加熱装置1”を図6の加熱装置1に代えて配置することでもプロセスガス処理を行うことができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかしながら、本発明では各種の変形が可能である。先に図1,図6を用いて説明したプロセスガス処理システムでは、例えば、加熱装置以降の排気流路となる管550に対して断熱材を被覆するなどして、排気流路から熱が逃げなくなるようにすれば、長距離にわたりプロセスガスの温度を高いままとし、加熱装置1,1’,1”によるプロセスガスの加熱温度を低く設定したり、あるいは、スクラバ4までの排気流路を長距離化できるようになり、利便性を高めたプロセスガス処理システムとすることができる。
【0050】
また、加熱流路部用温度センサ5にガス温度センサ6としての機能を持たせ、緊急停止制御系と加熱温度制御系とを共通としても良い。
これら構成は適宜選択される。
【0051】
以上説明した本発明によれば、従来技術のようにカーボンである大球等の消費や大球等の移動により特性が変化するおそれがなくなり、加熱流路が一定しているため特性が変化するおそれを低減させている。また、従来技術のようにカーボンである大球等からカーボン粉も出るおそれをなくしており、メンテナンス等を容易にしている。
また、従来技術のように割れて欠けやひびが生じるおそれのある石英を用いないようにして強固な構図としてリークを生じるおそれを低減しており、真空ポンプの一次側や二次側として配置できるようにした。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明を実施するための最良の形態のプロセスガス処理システムの全体構成図である。
【図2】本発明を実施するための最良の形態の加熱装置の内部構造図であり、図2(a)は導出側側面図、図2(b)は縦断面図、図2(c)はA断面図、図2(d)はB断面図、図2(e)はC断面図、図2(f)はD断面図である。
【図3】加熱流路部内のフィンの配置およびプロセスガスの流れの説明図である。
【図4】他の形態の加熱装置の内部構造図であり、図4(a)は導出側側面図、図4(b)は縦断面図、図4(c)はE断面図、図4(d)はF断面図、図4(e)はG断面図、図4(f)はH断面図である。
【図5】他の形態の加熱装置の内部構造図であり、図5(a)は縦断面図、図5(b)はI断面図、図5(c)はJ断面図、図5(d)はK断面図、図5(e)はL断面図、図5(f)はM断面図、図5(g)はN断面図である。
【図6】他の形態のプロセスガス処理システムの全体構成図である。
【符号の説明】
【0053】
1,1’,1”:加熱装置
100:導入部
110:管
120:蓋部
200:加熱流路部
210:円筒
220:フィン
221:孔部
222:調整孔
300:コイル
400:断熱体
500:導出部
510:蓋部
520:シール
530:押さえ部
540:留めネジ
550:管
600:温度センサ導入部
700:前室
2:反応真空チャンバ
3:真空ポンプ
4:スクラバ
5:加熱流路部用温度センサ
6:ガス温度センサ
7:制御駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒と、この円筒内に複数枚並べられて配置されるとともに孔部が設けられるフィンと、を有し、フィンの孔部により決定された加熱流路をプロセスガスが通流するようになされた加熱流路部と、
加熱流路部を誘導加熱により加熱する加熱部と、
を備える加熱装置であって、
前記孔部は、プロセスガスを螺旋状に案内しつつ流すように設けられ、孔部を通過して螺旋状となったプロセスガスが円筒およびフィンから放射される熱により加熱され、反応副生成物の付着を防止する温度が下流の排気流路の終端まで維持されるプロセスガスとすることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
請求項1記載の加熱装置において、
前記フィンは円板であり、孔部は円の一部を切り欠いた弦による孔であることを特徴とする加熱装置。
【請求項3】
請求項2に記載の加熱装置において、
前記フィンは円筒の軸方向に等間隔で複数枚配置されるとともに、前記孔部は軸方向に進むにつれて所定角度毎に異ならせた弦による孔であることを特徴とする加熱装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の加熱装置において、
前記フィンは、孔部に加えて排気コンダクタンス調整用の調整孔を備えることを特徴とする加熱装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の加熱装置において、
前記加熱流路部は、円筒内前側で空間である前室を備え、加熱部は少なくとも前室周囲に形成されて前室を加熱することを特徴とする加熱装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の加熱装置において、
加熱流路部の外周を覆って、外界から断熱する断熱体を備えることを特徴とする加熱装置。
【請求項7】
反応真空チャンバから排気する排気系の配管内に反応副生成物が付着するのを防止するプロセスガス処理システムであって、
反応真空チャンバの下流に設けられる真空ポンプと、
真空ポンプの下流に設けられる請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の加熱装置と、
加熱装置の下流に設けられるスクラバと、
スクラバに流入するプロセスガスの温度を計測して温度信号を出力するガス温度センサと、
温度信号に基づいて加熱装置の加熱温度を制御する制御駆動装置と、
を備え、
制御駆動装置は、ガス温度センサからの温度信号が予め定められた温度以上を維持するように加熱装置を制御する駆動信号を出力する手段として機能することを特徴とするプロセスガス処理システム。
【請求項8】
反応真空チャンバから排気する排気系の配管内に反応副生成物が付着するのを防止するプロセスガス処理システムであって、
反応真空チャンバの下流に設けられ、請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の加熱装置と、
加熱装置の下流に設けられる真空ポンプと、
真空ポンプの下流に設けられるスクラバと、
真空ポンプに流入するプロセスガスの温度を計測して温度信号を出力するガス温度センサと、
温度信号に基づいて加熱装置の加熱温度を制御する制御駆動装置と、
を備え、
制御駆動装置は、ガス温度センサからの温度信号が予め定められた温度以上を維持するように加熱装置を制御する駆動信号を出力する手段として機能することを特徴とするプロセスガス処理システム。
【請求項9】
請求項7または請求項8記載のプロセスガス処理システムにおいて、
前記加熱装置内に配置されて、加熱流路部温度信号を出力する加熱流路部用温度センサを備え、
制御駆動装置は、加熱流路部用温度センサからの加熱流路部温度信号が予め定められた温度を超えると判断したときに加熱制御を停止するように加熱装置を制御する駆動信号を出力する手段として機能することを特徴とするプロセスガス処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−238039(P2008−238039A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81546(P2007−81546)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(591252781)ヒューグルエレクトロニクス株式会社 (40)
【出願人】(506424210)アイメックス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】