説明

化合物半導体装置

【課題】電流コラプス現象が抑制され、且つフィールドプレート電極による電界集中を緩和する効果の低下が抑制された化合物半導体装置を提供する。
【解決手段】III族窒化物半導体層と、III族窒化物半導体層上に配置された絶縁膜7と、III族窒化物半導体層の上面から膜厚方向に第1の距離T1の位置に絶縁膜を介して配置されたドレイン電極4と、III族窒化物半導体層の上面から膜厚方向に第1の距離T1の位置に絶縁膜を介して配置されたソース電極3と、ドレイン電極とソース電極間においてIII族窒化物半導体層の上面から膜厚方向に第2の距離T3の位置に絶縁膜を介して配置されたゲート電極5と、ドレイン電極とゲート電極間においてIII族窒化物半導体層の上面から膜厚方向に第1の距離T1より短い第2の距離T2の位置に絶縁膜を介して配置されたフィールドプレート電極6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィールドプレート電極を有する化合物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高耐圧パワーデバイス等に、III族窒化物半導体を用いた化合物半導体装置が使用されている。代表的なIII族窒化物半導体は、AlxInyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表され、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)等である。例えば高電子移動度トランジスタ(HEMT)では、バンドギャップエネルギーが互いに異なるIII族窒化物半導体からなるキャリア走行層とキャリア供給層間の界面にヘテロ接合面が形成される。ヘテロ接合面近傍のキャリア走行層に、電流通路(チャネル)としての二次元キャリアガス層が形成される。
【0003】
化合物半導体装置のドレイン電極とソース電極間に電圧を印加した場合に発生するバイアス電界は、ゲート電極のドレイン電極側の端部(以下において、「ドレイン側端部」という。)に集中する。ゲート電極のドレイン側端部におけるバイアス電界の集中を緩和することにより、化合物半導体装置の耐圧を向上することができる。例えば、フィールドプレート電極を配置することによって、ゲート電極のドレイン側端部における電界集中を緩和する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−93864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
III族窒化物半導体層上に形成された絶縁膜上にドレイン電極などの各電極を形成する場合、絶縁膜に開口部が形成される。そして、各電極とIII族窒化物半導体層とを接続するために、この開口部に各電極が配置される。このとき、半導体製造工程でのプロセスマージンを取るために、開口部の面積よりも広く各電極が形成される。このため、各電極とIII族窒化物半導体層とが絶縁膜を挟んで対向する領域(以下において、「フランジ部」という。)が形成される。このフランジ部はフィールドプレート電極としての機能を有する。
【0006】
ドレイン電極と電気的に接続するフィールドプレート電極は、電流コラプス現象を悪化させることが知られている。このため、ドレイン電極におけるフランジ部のフィールドプレート電極としての機能を低下させるために、III族窒化物半導体上の絶縁膜の膜厚を厚くする必要があった。この場合、本来のフィールドプレート電極による電界集中を緩和する効果が低下するという問題があった。
【0007】
上記問題点に鑑み、本発明は、電流コラプス現象が抑制され、且つフィールドプレート電極による電界集中を緩和する効果の低下が抑制された化合物半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、(イ)キャリア供給層、及びキャリア供給層とヘテロ接合を形成するキャリア走行層を積層したIII族窒化物半導体層と、(ロ)III族窒化物半導体層上に配置された絶縁膜と、(ハ)III族窒化物半導体層の上面から膜厚方向に第1の距離の位置に絶縁膜を介して配置され、絶縁膜に設けられた開口部でIII族窒化物半導体層に接するドレイン電極と、(ニ)III族窒化物半導体層の上面から膜厚方向に第1の距離の位置に絶縁膜を介して配置され、絶縁膜に設けられた開口部でIII族窒化物半導体層に接するソース電極と、(ホ)ドレイン電極とソース電極間に配置されたゲート電極と、(ヘ)ドレイン電極とゲート電極間において、III族窒化物半導体層の上面から膜厚方向に第1の距離より短い第2の距離の位置に絶縁膜を介して配置されたフィールドプレート電極とを備える化合物半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電流コラプス現象が抑制され、且つフィールドプレート電極による電界集中を緩和する効果の低下が抑制された化合物半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る化合物半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る化合物半導体装置の他の構造を示す模式的な断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その1)。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その2)。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その3)。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その4)。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その5)。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その6)。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その7)。
【図10】本発明の第1の実施形態の変形例に係る化合物半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態の変形例に係る化合物半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図12】本発明の第1の実施形態の変形例に係る化合物半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る化合物半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部の長さの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0012】
又、以下に示す第1及び第2の実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る化合物半導体装置1は、図1に示すように、キャリア供給層22、及びキャリア供給層22とヘテロ接合を形成するキャリア走行層21を積層したIII族窒化物半導体層20と、III族窒化物半導体層20上に配置された絶縁膜7と、ソース電極3、ドレイン電極4及びゲート電極5とを備える。ドレイン電極4は、III族窒化物半導体層20の上面から膜厚方向に第1の距離T1の位置に絶縁膜7を介して配置されている。ソース電極3は、III族窒化物半導体層20の上面から膜厚方向に第1の距離T1の位置に絶縁膜7を介して配置されている。ゲート電極5は、ドレイン電極4とソース電極3間において、III族窒化物半導体層20の上面から膜厚方向に第3の距離T3の位置に絶縁膜7を介して配置されている。ソース電極3、ドレイン電極4及びゲート電極5は、絶縁膜7に設けられた開口部でIII族窒化物半導体層20にそれぞれ接する。更に、フィールドプレート電極6が、ドレイン電極4とゲート電極5間において、III族窒化物半導体層20の上面から膜厚方向に第1の距離T1より短い第2の距離T2の位置に絶縁膜7を介して配置されている。フィールドプレート電極6は、ソース電極3と電気的に接続されている。
【0014】
図1に示したように、基板10上にバッファ層11が配置され、バッファ層11上にIII族窒化物半導体層20が配置されている。
【0015】
III族窒化物半導体層20は、第1のIII族窒化物半導体層からなるキャリア供給層22、及び第1のIII族窒化物半導体層と異なるバンドギャップエネルギーを有する第2のIII族窒化物半導体層からなるキャリア走行層21を有する。
【0016】
バッファ層11上に配置されたキャリア走行層21は、例えば不純物が添加されていないアンドープGaNを、有機金属気相成長(MOCVD)法等によりエピタキシャル成長させて形成する。ここでノンドープとは、不純物が意図的に添加されていないことを意味する。
【0017】
キャリア走行層21上に配置されたキャリア供給層22は、キャリア走行層21よりもバンドギャップが大きく、且つキャリア走行層21より格子定数の小さいIII族窒化物半導体からなる。キャリア供給層22としてアンドープのAlxGa1-xNが採用可能である。
【0018】
キャリア供給層22は、MOCVD法等によるエピタキシャル成長によってキャリア走行層21上に形成される。キャリア供給層22とキャリア走行層21は格子定数が異なるため、格子歪みによるピエゾ分極が生じる。このピエゾ分極とキャリア供給層22の結晶が有する自発分極により、ヘテロ接合付近のキャリア走行層21に高密度のキャリアが生じ、電流通路(チャネル)としての二次元キャリアガス層(図示略)が形成される。即ち、化合物半導体装置1はIII族窒化物半導体を用いたHEMTである。
【0019】
化合物半導体装置1においては、ゲート電極5とドレイン電極4間にフィールドプレート電極6が配置されている。フィールドプレート電極6により、ゲート電極5のドレイン側端部の空乏層の曲率が制御されて、ゲート電極5のドレイン側端部に集中するバイアス電界の集中が緩和される。
【0020】
既に述べたように、ドレイン電極4と電気的に接続するフィールドプレート電極は、電流コラプス現象を悪化させ、オン抵抗の増大などをまねく。そして、III族窒化物半導体層20と絶縁膜7を挟んで対向するドレイン電極4のフランジ部41は、ドレイン電極4と電気的に接続するフィールドプレート電極としての機能を有する。
【0021】
しかしながら、図1に示した化合物半導体装置1では、ドレイン電極4のフランジ部41とIII族窒化物半導体層20との間の絶縁膜7の膜厚が、フィールドプレート電極6とIII族窒化物半導体層20との間の絶縁膜7の膜厚に比べて厚い。このため、化合物半導体装置1においては、ドレイン電極4のフランジ部41直下の絶縁膜7を厚くすることによってフランジ部41のフィールドプレート電極としての機能を低下させる一方で、フィールドプレート電極6直下の絶縁膜7の膜厚を薄くすることによって、フィールドプレート電極6による電界集中を緩和する効果が低下することを抑制できる。
【0022】
ドレイン電極4のフランジ部41のフィールドプレート電極としての機能を低下させるために、フランジ部41直下の絶縁膜7の膜厚、即ち第1の距離T1は、例えば500nm〜1μm程度であることが好ましい。一方、フィールドプレート電極6による電界集中を緩和する効果が低下すること抑制するために、フィールドプレート電極6直下の絶縁膜7の膜厚、即ち第2の距離T2は、例えば100nm〜300nm程度であることが好ましい。
【0023】
ゲート電極5のフランジ部とIII族窒化物半導体層20との間の絶縁膜7の膜厚(T3)が、フィールドプレート電極6とIII族窒化物半導体層20との間の絶縁膜7の膜厚(T2)と同程度であってもよい。この場合、T2=T3<T1である。ただし、ゲート電極5のフランジ部直下の絶縁膜7の膜厚(T3)を、フィールドプレート電極6直下の絶縁膜7の膜厚(T2)よりも厚くすることによって、化合物半導体装置1のゲート・ドレイン間容量を低減することができる。このため、第3の距離T3は第1の距離T1と同程度にすることが好ましい。
【0024】
なお、図2に示すようにフィールドプレート電極6をゲート電極5と電気的に接続しても、フィールドプレート電極6によるゲート電極5のドレイン側端部での電界集中を緩和することができる。
【0025】
以上に説明したように、本発明の第1の実施形態に係る化合物半導体装置1においては、ドレイン電極4のフランジ部41直下の絶縁膜7の膜厚(T1)を厚くし、且つフィールドプレート電極6直下の絶縁膜7の膜厚(T2)を薄くすることにより、ドレイン電極4のフランジ部41のフィールドプレート電極としての機能を低下させると同時に、フィールドプレート電極6による電界集中を緩和する効果の低下が抑制される。その結果、電流コラプス現象が抑制され、且つフィールドプレート電極6による効果の低下が抑制された化合物半導体装置1を提供できる。即ち、図1に示した化合物半導体装置1によれば、ゲート電極5のドレイン側端部でのバイアス電界集中が緩和され、且つ動作時のオン抵抗の増大が抑制された化合物半導体装置を提供することができる。
【0026】
以下に、図3〜図9を用いて、本発明の第1の実施形態に係る化合物半導体装置1の製造方法を説明する。ここでは、図1に示した化合物半導体装置1について例示的に製造方法を述べる。なお、以下に述べる化合物半導体装置の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0027】
(イ)図3に示すように、基板10上にバッファ層11を形成する。更に、バッファ層11上に、キャリア走行層21及びキャリア供給層22をこの順にエピタキシャル成長させ、III族窒化物半導体層20を形成する。更に、キャリア供給層22上に、例えば窒化シリコン(SiN)膜などの第1の絶縁膜71を膜厚W1で形成する。ここで、膜厚W1は第2の距離T2に等しい。第1の絶縁膜71は、絶縁膜7の下側部分である。
【0028】
(ロ)第1の絶縁膜71上全面に、フィールドプレート電極6形成用の金属膜を形成した後、この金属膜をフォトリソグラフィ技術などを用いてパターニングする。これにより、図4に示すように、第1の絶縁膜71上の所定の位置、即ちドレイン電極4が配置される位置とゲート電極5が配置される位置との間に、フィールドプレート電極6が形成される。
【0029】
(ハ)図5に示すように、第1の絶縁膜71上及びフィールドプレート電極6上に、例えば酸化シリコン(SiO2)膜からなる第2の絶縁膜72を膜厚W2で形成する。第2の絶縁膜72は、SiO膜、SiN膜、酸化アルミニウム(Al23)膜なども採用可能である。第2の絶縁膜72は絶縁膜7の上側部分であり、膜厚W2は「第1の距離T1−第2の距離T2」である。ここではドレイン電極4のフランジ部41及びソース電極3のフランジ部の下方の絶縁膜7の膜厚(T1)とゲート電極5のフランジ部下方の絶縁膜7の膜厚(T3)とは、同じ厚さである。
【0030】
(ニ)フォトリソグラフィ技術などを用いて、図6に示すように、第1の絶縁膜71及び第2の絶縁膜72の所定の位置に開口部701、702を形成する。具体的には、ソース電極3とドレイン電極4がそれぞれ配置される位置の第1の絶縁膜71及び第2の絶縁膜72を、フォトレジスト膜をマスクにしてエッチング除去する。
【0031】
(ホ)開口部701、702を埋め込むように、第2の絶縁膜72上に金属膜を形成する。その後、この金属膜をフォトリソグラフィ技術などを用いてパターニングする。これにより、図7に示すように、開口部701を埋め込んで配置されたソース電極3、及び開口部702を埋め込んで配置されたドレイン電極4が形成される。
【0032】
(ヘ)図8に示すように、ゲート電極5が配置される位置の第1の絶縁膜71及び第2の絶縁膜72を除去して、開口部703を形成する。次いで、開口部703を埋め込むように第2の絶縁膜72上に金属膜を形成した後、この金属膜をパターニングして、図9に示すように、開口部703を埋め込んで配置されたゲート電極5を形成する。なお、リフトオフ法を用いてゲート電極5を形成してもよい。
【0033】
(ト)その後、公知の多層配線工程などを用いて、フィールドプレート電極6とソース電極3を電気的に接続する。以上により、図1に示した化合物半導体装置1が完成する。
【0034】
なお、図1ではゲート電極5の外縁部が絶縁膜7上に配置されて、ゲート電極5がフランジ部を有する例を示した。しかし、ゲート電極5がフランジ部を有さないように化合物半導体装置1を製造してもよい。
【0035】
基板10には、シリコン(Si)基板、シリコンカーバイト(SiC)基板、GaN基板等の半導体基板や、サファイア基板、セラミック基板等の絶縁体基板を採用可能である。例えば、基板10に大口径化が容易なシリコン基板を採用することにより、化合物半導体装置1の製造コストを低減できる。
【0036】
バッファ層11は、MOCVD法等のエピタキシャル成長法で形成できる。図1では、バッファ層11を1つの層として図示しているが、バッファ層11を複数の層で形成してもよい。例えば、バッファ層11を窒化アルミニウム(AlN)からなる第1のサブレイヤー(第1の副層)とGaNからなる第2のサブレイヤー(第2の副層)とを交互に積層した多層構造バッファとしてもよい。なお、バッファ層11はHEMTの動作に直接には関係しないため、バッファ層11を省いてもよい。また、基板10とバッファ層11とを組み合わせた構造を基板とみなすこともできる。バッファ層11の構造、配置は、基板10の材料等に応じて決定される。
【0037】
ソース電極3及びドレイン電極4は、III族窒化物半導体層20と低抵抗接触(オーミック接触)可能な金属により形成される。例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)などがソース電極3及びドレイン電極4に採用可能である。或いはTiとAlの積層体として、ソース電極3及びドレイン電極4は形成される。
【0038】
ゲート電極5には、例えばニッケル金(NiAu)などが採用可能である。フィールドプレート電極6には、例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)などが採用可能である。
【0039】
以上に説明したように、本発明の第1の実施形態に係る化合物半導体装置1の製造方法によれば、ドレイン電極4のフランジ部41直下の絶縁膜7の膜厚(T1)を、フィールドプレート電極6直下の絶縁膜7の膜厚(T2)よりも厚くすることができる。これにより、電流コラプス現象が抑制され、且つフィールドプレート電極6による電界集中を緩和する効果の低下が抑制された化合物半導体装置1を提供することができる。
【0040】
<変形例>
図10に示すように、ソース電極3とフィールドプレート電極6を一体的に形成してもよい。即ち、層間絶縁膜75及び絶縁膜7に形成した開口部を埋め込むように配線層9を形成することにより、図10に示した化合物半導体装置1が得られる。この場合、多層配線工程によってソース電極3とフィールドプレート電極6とを電気的に接続する必要がない。
【0041】
なお、フィールドプレート電極6をソース電極3と電気的に接続することにより、化合物半導体装置1のミラー容量を低減することができる。これは、ソース電極3と電気的に接続するフィールドプレート電極6によって、ドレイン電極4に対してゲート電極5がシールドされているためである。つまり、フィールドプレート電極6がゲート電極5とドレイン電極4間に配置されていることにより、ゲート電極5とドレイン電極4間の容量が低減される。
【0042】
したがって、フィールドプレート電極6をソース電極3と電気的に接続することによって化合物半導体装置1の高速動作が可能になる。ゲート電極5をドレイン電極4に対してシールドすることによりミラー容量が低減する効果を、以下において「シールド効果」という。
【0043】
図10に示した例では、ゲート電極5のドレイン電極4に対向する側面が、フィールドプレート電極6及びフィールドプレート電極6とソース電極3とを接続する配線層9によってシールドされる。このため、シールド効果によって、ゲート電極5とドレイン電極4間の容量が低減され、化合物半導体装置1のミラー容量を低減できる。
【0044】
なお、フィールドプレート電極6によるシールド効果を得るために、図11に示すように、ゲート電極5のドレイン電極4側の上面部分までを覆うようにフィールドプレート電極6を形成してもよい。また、図12に示すように、ゲート電極5とフィールドプレート電極6を一体的に形成してもよい。
【0045】
図11及び図12に示した化合物半導体装置1によっても、電流コラプス現象を抑制し、且つゲート電極5のドレイン側端部における電界集中を緩和する効果の低下を抑制でき、更にシールド効果が得られる。
【0046】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る化合物半導体装置1は、図13に示すように、ゲート電極5とフィールドプレート電極6間においてIII族窒化物半導体層20上に隣接するように配置されたシールド電極8を更に備えることが、図1に示した化合物半導体装置1と異なる。図13に示すように、シールド電極8は、フィールドプレート電極6と電気的に接続される。更に、シールド電極8及びフィールドプレート電極6は、ソース電極3に電気的に接続される。その他の構成については、図1に示す第1の実施形態と同様である。
【0047】
シールド電極8は、例えばゲート電極5と同様の構造を採用可能である。なお、図13ではシールド電極8の外縁部が絶縁膜7上に配置されて、シールド電極8がフランジ部を有する例を示した。しかし、シールド電極8がフランジ部を有さなくてもよい。また、ゲート電極5がフランジ部を有さなくてもよい。
【0048】
図13に示した化合物半導体装置1によれば、シールド電極8がゲート電極5とドレイン電極4の間に配置されることにより、第1の実施形態に係る化合物半導体装置1と比べ、ゲート電極5のドレイン側端部における電界集中が更に緩和される。また、シールド電極8とドレイン電極4の間にフィールドプレート電極6が配置されることによって、シールド電極8のドレイン側端部における電界集中が緩和される。このため、シールド電極8の破壊を防止できる。
【0049】
なお、図13に示すように、シールド電極8及びフィールドプレート電極6とソース電極3とを電気的に接続する配線層9は、フィールドプレート電極6の上方を通過した後に、ドレイン電極4側に延伸してもよい。配線層9のドレイン電極4側への延伸部分90によって、シールド電極8における電界集中を更に緩和することができる。
【0050】
図13に示した化合物半導体装置1では、ドレイン電極4のフランジ部41直下の絶縁膜7の膜厚よりもフィールドプレート電極6直下の絶縁膜7の膜厚が薄い。これにより、ドレイン電極4のフランジ部41のフィールドプレート電極としての機能を低下させると同時に、フィールドプレート電極6による電界集中を緩和する効果の低下が抑制される。
【0051】
また、シールド電極8を有する図13に示した化合物半導体装置1は、第1の実施形態に係る化合物半導体装置1と比べ、ドレイン電極4に対してゲート電極5をシールドする効果が大きい。なお、III族窒化物半導体層20上面からのシールド電極8の上面までの高さは、ゲート電極5の上面までの高さ以上に設定することが好ましい。これにより、ゲート電極5のドレイン電極4に対向する側面全体が、シールド電極8によってシールドされる。シールド電極8によるシールド効果によってゲート電極5とドレイン電極4間の容量が低減され、化合物半導体装置1のミラー容量を低減することができる。
【0052】
シールド電極8をゲート電極5と同一材料で同一構造にすることにより、製造工程を簡略化することができる。即ち、図5〜図6を参照して説明した工程において、ゲート電極5を形成するのと同時にシールド電極8を形成すればよい。
【0053】
以上に説明したように、本発明の第2の実施形態に係る化合物半導体装置1によれば、ゲート電極5のドレイン側端部における電界集中をより効果的に緩和できると同時に、化合物半導体装置1のミラー容量をより効果的に低減することができる。他は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0054】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1及び第2の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0055】
例えば、フィールドプレート電極6をソース電極3又はゲート電極5以外の、一定値に固定された電圧を供給する固定電極に接続してもよい。つまり、フィールドプレート電極6を交流的にGNDにみえる一定電位に設定することにより、ゲート電極5のドレイン側端部におけるバイアス電界の集中を緩和する効果が得られる。フィールドプレート電極6をGNDに接続してもよい。
【0056】
また、上記に記載した化合物半導体装置1のゲート電極構造は、ゲート電極5とIII族窒化物半導体層20とがショットキー接合するMES構造であるが、ゲート電極5の電極構造が、III族窒化物半導体層20と接するゲート絶縁膜を有するMIS構造であってもよい。
【0057】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0058】
1…化合物半導体装置
3…ソース電極
4…ドレイン電極
5…ゲート電極
6…フィールドプレート電極
7…絶縁膜
8…シールド電極
10…基板
11…バッファ層
20…III族窒化物半導体層
21…キャリア走行層
22…キャリア供給層
41…フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア供給層、及び前記キャリア供給層とヘテロ接合を形成するキャリア走行層を積層したIII族窒化物半導体層と、
前記III族窒化物半導体層上に配置された絶縁膜と、
前記III族窒化物半導体層の上面から膜厚方向に第1の距離の位置に前記絶縁膜を介して配置され、前記絶縁膜に設けられた開口部で前記III族窒化物半導体層に接するドレイン電極と、
前記III族窒化物半導体層の上面から膜厚方向に前記第1の距離の位置に前記絶縁膜を介して配置され、前記絶縁膜に設けられた開口部で前記III族窒化物半導体層に接するソース電極と、
前記ドレイン電極と前記ソース電極間に配置されたゲート電極と、
前記ドレイン電極と前記ゲート電極間において、前記III族窒化物半導体層の上面から膜厚方向に前記第1の距離より短い第2の距離の位置に前記絶縁膜を介して配置されたフィールドプレート電極と
を備えることを特徴とする化合物半導体装置。
【請求項2】
前記フィールドプレート電極が、前記ソース電極、前記ゲート電極及び固定電極のいずれかと電気的に接続することを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート電極が、前記III族窒化物半導体層の上面から膜厚方向に前記第2の距離より長い第3の距離の位置に前記絶縁膜を介して配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物半導体装置。
【請求項4】
前記ゲート電極と前記フィールドプレート電極間において前記III族窒化物半導体層上に隣接して配置されたシールド電極を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【請求項5】
前記シールド電極が前記ソース電極と電気的に接続することを特徴とする請求項4に記載の化合物半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−109492(P2012−109492A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258799(P2010−258799)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】