化学蒸気浸透法での緻密化により複合材部品を製造するための方法及び基材並びに得られる部品。
本発明は、繊維プレフォーム(20)を形成し、プレフォーム中で少なくともその片側から延びた複数の穴(22)を形成し、このプレフォームを気相中での化学蒸気浸透法(CVI)によって少なくとも部分的に形成されるマトリックスで緻密化することにより製造される複合材部品に関する。これら穴(22)は、例えば高圧噴射加工により繊維を破断させて材料を取り除くことにより形成され、穴を提供されたプレフォームにおける繊維の配置は、穴の形成の前の元の配置と比べて、実質的に変更されない。このようにして、緻密化勾配が大いに低減され、従来技術では中間の皮むきによって隔てられた複数のサイクルを必要とする密度を、ただ1つの緻密化段階で得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の背景
本発明は、繊維基材を形成し、この基材を化学蒸気浸透(CVI)式の方法により形成されるマトリックスを用いて緻密化することによって、複合材部品を製造することに関する。本発明の非排他的な特定の応用の分野は、ブレーキディスク、特には、共通の軸上でステーターディスクとローターディスクとが互い違いになっている1組のディスクを具備した飛行機ブレーキ用のブレーキディスクを、炭素/炭素(C/C)複合材から製造することである。そうではあるが、本発明は、他の部品を、C/C複合材から、又は、他の複合材から、特にはセラミックマトリックス複合材(CMC)材料から製造することに適用可能である。
【0002】
繊維基材又はプレフォームなどの多孔質基材をCVI式の方法を用いて緻密化することは、良く知られている。
【0003】
従来のCVIプロセスでは、緻密化のための基材がオーブン内に設置される。反応ガスは、このガスの1種以上の成分を分解することにより、又は、複数種の成分間の決められた温度及び圧力の条件下での反応により、マトリックスを構成する材料を基材の細孔中に堆積させることを目的として、オーブン内に入れられる。
【0004】
緻密化用の基材がリアクタ内に設置され、このリアクタ内で、それがマトリックスを構成する材料の前駆体の存在下で加熱される方法も知られている。この前駆体は液体状態でリアクタ内に存在しており、この基材は、炭素繊維などの導電性繊維からつくられていて、例えば、電流を流すことによって又はコイルとの電磁結合によって加熱される。このような方法は、特には、米国特許第4472454号、第5397595号又は第5389152号に記載されており、時には、加熱による緻密化と呼ばれている。前駆体は温度の高い基材に接触すると気化するので、この方法は、ここでは、CVI式の緻密化プロセスであると見なされる。言い換えると、用語「CVI式のプロセス」、すなわち「化学蒸気浸透式のプロセス」は、本明細書及び特許請求の範囲において、従来の化学蒸気浸透プロセスと加熱による緻密化プロセスとの両方を包含するのに使用される。
【0005】
このようなCVI式のプロセスに伴う主な困難性は、基材内部での緻密化勾配を最小にして、体積の全体に亘ってできるだけ均一な性質を有した部品を得ることにある。
【0006】
マトリックスの堆積は、反応ガスが最初に当たる部分であるので、基材の表面部分において優先的に起こる。結果として、基材のコアへとどうにか拡散するガスが使い尽くされ、基材の表面部分の細孔が早期に塞がれ、それにより、ガスのコア中へと拡散する能力を次第に低下させる。これは、基材の表面部分とコアとの間に緻密化勾配を生じさせる。
【0007】
そのために、特に厚い部品を製造する際には、実際には、所定の程度の緻密化が一旦達成されたら、プロセスを中断し且つ部分的に緻密化された基材を取り出して、表面の細孔を再び開けるのに役立つ「皮むき(ecroutage)」と呼ばれる作業においてそれらの表面を加工することが必要である。その後、反応ガスがより容易にアクセスして基材のコア中へと拡散する状態で、緻密化が継続され得る。例として、ブレーキディスクを製造する際には、間に皮むきを挟んだ、少なくとも2つのCVI緻密化サイクル(サイクルI1及びI2)を実行するのが一般的な慣例である。それにも拘らず、実際には、最終的に得られる部品において緻密化勾配が観察される。
【0008】
緻密化勾配の発生を回避するため、及び、場合によっては皮むき作業を回避するために、温度勾配を必要とするCVI緻密化方法を実行する、すなわち、基材を不均一に加熱することによってCVI緻密化方法を実行することが実際に知られている。誘導コイルと1つ以上の緻密化用環状基材との間の直接結合による不均一加熱が、文献米国特許第5846611号及び欧州特許第0946461号に記載されている。ガスへのアクセスがあまり容易でない基材領域でのマトリックスの堆積は、これらの領域を基材の他の部分よりも高い温度まで上昇させることによって促進される。それでも、この技術は、所定の形状及び種類の基材と、オーブン内での基材装入品の所定の配置とに制限される。
【0009】
米国特許第5405560号は、ブレーキディスク用のC/C複合材から製造された環状繊維プレフォームから構成された基材内部への反応ガスのアクセスを、このプレフォームにその互いに反対側に位置する面の間で貫通した複数の穴の形態の通路を提供することによって向上させることを提案している。これらの穴は、針を刺し込んで、プレフォーム中の繊維を傷つけることなく押しやることによって提供される。CVI緻密化の間、これらの穴は、ガスに、プレフォームの中心部分に到達するための短い通路を提供する。それにも拘らず、出願人によって行われた試験は、以下で説明するように、この技術は緻密化勾配の最小化についての限界があることを示した。類似の文献仏国特許第2616779号は、部分的に繊維を破壊し得る圧力下で流体を用いて穴を形成する可能性を実際に言及しているが、繊維の損傷を回避することを推奨している。
【0010】
C/C複合材から製造されたブレーキディスクブランクへの穴の形成は、文献仏国特許第2114329号にも記載されている。それでも、この文献は、液体技術によって、すなわち、プレフォームに炭素前駆体樹脂を含浸させ、この樹脂を、架橋(硬化)させ、その後、炭化又は黒鉛化させて炭素マトリックスを形成することによって、ブレーキディスク繊維プレフォームを緻密化させることに関する。複数の穴が、樹脂が硬化された後及び樹脂が炭化又は黒鉛化される前に形成され、これら穴は、揮発種を炭化又は黒鉛化の間に排気し、それにより、ガスがカーボンマトリックス内部にトラップされるのを回避するのに役立つ。これは、CVI緻密化とは完全に異なるプロセスである。
【0011】
本発明の目的
本発明の目的は、第1に、複合材部品の製作において、繊維基材のほぼ均一な緻密化を達成するために、第2に、中間の皮むき段階によって隔てられた緻密化サイクルの数を減らすために、又は、場合によっては、中間の皮むき段階によって気孔を再び開ける必要がないので、ただ1つのサイクルで緻密化を達成するために、反応ガスの拡散を、CVI式の緻密化プロセスの間中促進することにある。
【0012】
この目的は、繊維基材を準備することと、この基材の中でその少なくとも1つの表面から延びた複数の穴を形成することと、少なくとも部分的に化学蒸気浸透式のプロセスによって形成されるマトリックスを用いてこの基材を緻密化させることを含んだ複合材部品の製造方法であって、これら穴は、前記基材から繊維材料を繊維の破壊を伴って取り除くことによって基材に形成され、複数の穴が提供されたプレフォームにおける繊維の配置は、これら穴が形成される前の最初の配置と比べて、実質的に変化していない方法によって達成される。
【0013】
以下に説明するように、材料を繊維の破壊を伴って取り除くことによって穴を基材に形成することが、驚くべきことに、基材のほぼ均一な緻密化を達成することを可能するのに対し、このような結果は、従来技術のように、繊維に対する非破壊的影響を有した針を刺し込むことによって穴が形成される場合には決して得られない。従来技術においては中間の皮むきによって隔てられた複数のサイクルを必要とした程度の緻密化を、ただ1つのサイクルで達成することも可能である。
【0014】
穴は、加圧した水の噴射を用いた機械加工によって形成され得る。
【0015】
本発明の方法の他の実施では、穴は、場合により酸化性雰囲気への曝露と共に、繊維の材料に対する破壊的影響を有した局所的な熱作用によって形成され得る。これは、特には炭素繊維に用いられ得る。局所的な熱作用は、レーザー照射によって生じ得る。
【0016】
本発明の方法の更に他の実施では、穴は、ドリルビット、ボール盤若しくはカッターなどの超高速ツールを使用した機械加工により、又は、ナイフ若しくはパンチ若しくは打ち型を使用して切り抜くことにより、又は、実際には、放電加工により形成され得る。
【0017】
穴は、基材の2つの表面の間で基材を貫通していても良いし、又は、それらは、基材の1つの表面のみに開けられためくら穴であっても良い。
【0018】
更に、穴は、それらが開けられた基材の表面に対して直角に形成されても良いし、又は、それらは、直角でない方向に延びていても良い。
【0019】
ブレーキディスク用の環状プレフォームを形成する基材の場合、得られる穴は、プレフォームの主面の少なくとも1つにプレフォームの軸に対して垂直に開けられた穴であっても良いし、又は、それの外縁表面及び場合によっては内縁表面に開けられ、さらに、半径方向に又は実質的に半径方向に向いた穴であっても良いし、又は、これら穴は両方のタイプの穴の組み合わせであっても良い。
【0020】
穴の平均径は、CVI緻密化プロセスが終わる前に、それらがマトリックス材料の堆積によって塞がるのを回避するように選択される。例えば、約0.05ミリメートル(mm)乃至2mmの範囲にある平均径が選択され得る。これら穴は径が小さく、緻密化後、それらは続く使用中での機能的役割を持たない。例えば、それらはブレーキディスクに何ら冷却機能を提供しない。
【0021】
穴の密度は、反応ガスに、ほぼ均一に緻密化することが望まれる基材の全ての部分への短い通路を提供するのに十分であるように選択される。例として、この密度を基材の中央平面内又は中央面上での単位面積当たりの穴の数に換算して測定した場合に、平方センチメートル当たり約0.06個(個/cm2)乃至4個/cm2の範囲にある密度を選択することができる。言い換えると、互いに隣接する穴の軸間の距離又はピッチは、好ましくは、約0.5センチメートル(cm)乃至4cmの範囲にある。
【0022】
繊維基材における穴の密度は、反応ガス用の短い通路を緻密化用の基材の全ての場所に対して同じように提供するために一定であり得る。変形では、穴の密度がばらついていてもよく、その場合、基材のうち、穴がないときにはガス用の通路がより長く且つ基材のコアへと届けられるマトリックス材料の量がより少ない部分では、密度がより高くなるように選択し、且つ、基材のうち、穴がないときであっても届けられるマトリックスの量が十分に多い部分では、より低い又はゼロである密度を選択することができる。従って、環状プレフォームの形態にある、ブレーキディスク用、特には飛行機ブレーキディスク用の基材であって、複数の穴がこの基材の主面の少なくとも1つに開けられた基材については、これら穴の密度は、ばらついていてもよく、基材のディスクのラビングトラックに対応する中央部分と基材の外周面及び内周面に隣接した部分との間で減少し得る。製造しようとするブレーキディスクのラビングトラックに対応する基材の中央部分のみに穴を形成することが可能である。
【0023】
本発明は、複合材部品を製造するための繊維基材であって、この基材は、この基材の中へとその少なくとも1つの表面から延びた複数の穴を有し、この基材において、この基材におけるこれら穴の壁付近での単位体積当たりの繊維の密度は、この基材における他の部分での単位体積当たりの繊維の密度よりも著しくは大きくない繊維基材も提供する。
【0024】
この基材の特徴に従うと、複数の穴が、繊維が除去された又は破断させられた有限の領域によって規定される。
【0025】
本発明は、複合材部品であって、少なくとも部分的に化学蒸気浸透式のプロセスによって緻密化された繊維補強材を具備し、複数の穴がこの部品の中へとその少なくとも1つの表面から延びており、この繊維補強材が、上で定義された基材から製造されているか、又は、これら穴の壁付近での単位体積当たりの補強繊維の密度がこの部品の他の部分での単位体積当たりの繊維の密度よりも著しくは大きくない部品から作られている複合材部品も提供する。
【0026】
本発明は、非限定的な表示として挙げられた以下の説明を読み且つ添付の図面を参照することによって、より良く理解され得る。
【0027】
本発明の実施形態の詳細な説明
図1に示された方法の第1工程10は、得ようとする複合材部品の形状に近い形状を有する三次元(3D)繊維基材又は繊維プレフォームを製造することにある。このような繊維プレフォームを製造する技術は、よく知られている。
【0028】
フォーマ若しくはマンドレル上に巻かれるか、又は、三次元ウィービング、ニッティング、若しくはブレーディングによって3D基材を直接形成するのに使用されるヤーン又はトウなどの一次元(1D)繊維要素から始めることができる。
【0029】
織られた布、ニット、平打紐、薄いフェルト、互いに平行なヤーン若しくはトウからつくられた一方向(UD)ウェブか、又は、実際には、複数のUDウェブが、互いに異なる方向で重ねられ、例えば軽くニードリングすることによって若しくは縫合することによって互いに結合されてなる多方向(nD)ウェブなどの二次元(2D)繊維織物から始めることもできる。このような2D織物からなる複数のプライが、フォーマ若しくはマンドレル上で巻かれることによって、又は、フォーマ若しくは支持体上に置かれることによって重ねられ、それらが、例えばニードリングによって、縫合によって、又はパイルを通してヤーンを埋め込むことによって互いに結合されて、3D基材が得られる。
【0030】
3D基材は、ランダムに向いた不連続の繊維をニードリングすることによってつくられる厚いフェルトの形態でも得ることができる。
【0031】
この方法で得られた3D基材は、得ようとする部品用の繊維プレフォームとして直接使用され得る。所望の繊維プレフォームを、所望の形状を得るために3D基材から切り抜くことによって形成することも可能である。
【0032】
プレフォームを構成する繊維は、得ようとする複合材部品の用途に応じて選択される。熱構造複合材、すなわち、良好な機械的特性とそれらを高温で維持する能力とを有する材料では、材料の繊維補強材の繊維は、典型的には、炭素又はセラミックから製造される。このプレフォームは、このような繊維から製造され得るか、又は、炭素の前駆体若しくはセラミックの前駆体であり且つ3D繊維基材を製造するのに使用される様々な織り込み処理に耐えるのにより適し得る繊維から製造され得る。このような状況では、基材又はプレフォームが製造された後、前駆体は、通常は熱処理によって炭素又はセラミックに変換される。
【0033】
この方法の第2工程12は、続くCVI式の緻密化中におけるプレフォームのコアへの反応ガスのアクセスを向上させるために、プレフォームに複数の穴を形成することにある。プレフォームが前駆体材料の変換によって得られる材料の繊維からなる場合には、前駆体が変換された後又は前記変換の前に、これら穴がプレフォームに形成され得る。それらが予めつくられる場合には、所望の寸法の穴を得ることを保証するために、前駆体の変換の間に起こり得る収縮を考慮に入れるべきである。
【0034】
図2及び3は、炭素/炭素(C/C)材料からなるブレーキディスクを製作するための炭素繊維から製造された環状繊維プレフォーム20を示している。このようなプレフォームは、プレートの形態にあり、例えば、炭素の前駆体である前酸化されたポリアクリロニトリル(PAN)の布帛又は一方向若しくは多方向ウェブのプライを重ね且つニードリングすることによって製造された3D繊維基材から切り出されることによって得られ得る。このプレフォームは、例えば、前酸化されたPAN繊維の一方向又は多方向布帛又はウェブから切り出された複数の環状のプライを重ね且つニードリングすることによっても得られ得る。環状プレフォームが前酸化されたPAN繊維から製造された後、この前酸化されたPANが熱処理によって炭素に変換される。例えば、米国特許第4790052号及び第5792715号が参照され得る。
【0035】
穴22が、プレフォーム20に、その軸21と平行に形成されており、互いに反対側に位置した主面20a及び20bの間で、その厚さ全体に亘って延びてこれら面に穴22が開けられており、これら面は軸21に対して垂直である。
【0036】
変形では、図4に示すように、めくら穴22a、22bがプレフォームに形成されており、穴22aは面20aにのみに開けられている一方、穴22bは面20bにのみに開けられている。穴22a、22bがプレフォームの厚さの非常に大部分に亘って延びていることに気付かれたい。
【0037】
他の変形では、穴は斜めに形成され得る、すなわち、それらの軸は、面20a、20bの法線に対して、又は、プレフォーム20の軸に対して、ゼロでない角度を形成し得、これらは通し穴22’(図5)又はめくら穴22’a、22’b(図6)に適用され得る。
【0038】
図2では、複数の穴が、規則的な間隔で同心円に沿って配列されている。それらは、螺旋状の線に沿って配置されても良い。さらに、繊維プレフォーム20が環状であるか又は他の形状であるかに拘らず、穴22は、他のパターン、例えば、四角形の頂点の位置(図7)、四角形の頂点及び中心の位置(図8)、六角形の頂点の位置(図9)、正三角形の頂点の位置(図10)に配置されても良い。一定の密度の穴については、これら穴からプレフォーム内部の全ての部分に到達するためにガスが辿る通路の長さを最小するには、正三角形の配置が最も好ましい。
【0039】
図11及び12は、他の実施形態を示しており、ここでは、穴が、プレフォーム20の主面20a、20bのうちの一方及び/又は他方には開けられていないが、外周縁表面20c、及び任意に内周縁表面20dに開けられており、これら穴は、半径方向に又は実質的に半径方向に延びている。
【0040】
図11では、穴22cがディスクの中間部分に形成されている。これら穴は、外側の表面20cに開けられており且つ表面20cと内周面20dとの距離の殆どの部分に亘って延びているが、内周面20dには開けられていない。
【0041】
図12では、穴22d、22eがディスクの中間部分に形成されており、穴22dは表面20cと表面20dとの間で半径方向に延びた通し穴である一方、穴22eは通し穴ではなく、表面220cにのみ開けられており、表面20c、20d間の距離の一部分,約半分,に亘って延びている。
【0042】
穴22eは、穴22dと互い違いになっており、表面20cと20dとの間の穴密度の不均一性を最小化している。同じ理由で、図11の例では、有限深さの中間穴も提供され得る。
【0043】
図11及び図12は、ディスクの中間部分において1つの列を占有している複数の穴を示しているが、ディスクの厚さに応じて、複数の列の穴を提供することも当然可能であろう。
【0044】
本発明に従う方法の特徴に従うと、穴は、材料を取り除くことによりプレフォームに形成される。
【0045】
この目的のために、通し穴又はめくら穴を形成するのに使用され得る加圧した水の噴射を用いた穿孔の技術を使用することができる。使用される水は、任意に、固体粒子を含んでいても良い。穿孔は、1つ以上の水噴射パルスを使用して行われても良いし、又は、連続的に行われても良い。穴の径が噴射の径と比較して大きい場合、これら穴は、切り抜きによって、すなわち、つくろうとする穴の各々の外周の周囲を切ることによって穿孔され得る。使用される穿孔技術に依存して、これら穴は、図4及び6に示すように、わずかに円錐台形状であり得る。水の噴射は散乱するので、又は、主には、固体の機械加工デブリを含んだ水はより研削能が高いので、これら穴の径は、水噴射機械加工が行われる面から離れるにつれて大きくなる。通し穴の場合、穴によって生み出される空隙の密度がプレフォームの厚さに亘って実質的に均一であることを確実にするために、穴の約50%は一方の面から機械加工され、他の穴は他方の面から機械加工される。同じ目的のために、図4では、約同数の穴がプレフォームの面の各々から形成されている。
【0046】
穴を形成するための他に考えられる技術であって、繊維材料が熱によって除去され得る場合に適切な技術は、局所的な熱作用を、特には、レーザー照射によりつくり出すことにある。炭素繊維の場合では特に、酸化性雰囲気中、例えば空気中でのこのような熱作用が、酸化させることによって繊維の材料を除去することを可能にする。様々なタイプのレーザー源、例えば、二酸化炭素タイプ、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)タイプのレーザー源が使用され得る。レーザー照射の使用は、通り穴でない穴をつくる場合に穴の深さを制御することを可能にし、穴を切り抜きによってつくることを可能にし、且つ、穴の向きを制御することを容易にする。
【0047】
材料を取り除くことによって穴を形成するために、他の技術も使用され得る。ドリルビット、ボール盤若しくはカッターなどの高速で駆動するツールを用いた機械加工の技術、ナイフ、パンチ若しくは打ち型を用いる切取り、又は、放電加工に頼ることもできる。このような機械加工技術はよく知られている。
【0048】
上述の技術を実施して材料を取り除くことによる穴の形成は、プレフォームの繊維に対しての破壊効果を有するが、穴が形成される前の最初の配置と比較して、穴の壁付近での繊維の配置を変化させない。従って、穴の場所に最初位置していた材料は、有利には、完全に取り除かれるか又は除去され、得られた穴は繊維が除去又は破断させられた有限の領域によって規定され、プレフォームにおける穴の壁付近での単位体積当たりの繊維の密度は増加せず、これは、針を刺し込んで繊維を穴の壁を構成する領域へと押しやることで穴が形成される場合に起こることとは異なる。
【0049】
続くCVI式の緻密化プロセスの間、反応ガスの繊維プレフォームの材料へのアクセスは、穴の壁を通るときに、プレフォームの外側の表面を通るときよりも制限されるということはなく、これは、繊維が穴の形成中に穴の壁の領域に押しやられる場合には、穴の表面での単位体積当たりの繊維の密度の局所的な増加と緻密化の最中での早すぎる穴の壁の塞がりとをもたらすので、この場合に適用されるのとは異なる。このようにして、有効性を奪う穴の壁のこのような早期の塞がりは、緻密化プロセスの間中回避される。
【0050】
プレフォームにおいて、及び、CVI式のプロセスによる緻密化の後に得られる複合材部品においても、穴の壁付近での単位体積当たりの繊維の密度は、プレフォーム又は部品の他の部分での単位体積当たりの繊維の密度よりも著しくは大きくない。このようにして、複合材の特性における不均一性が回避される。
【0051】
CVI式の緻密化プロセスが終わる前に穴が塞がってしまうと機能を発揮することが妨げられるので、穴の平均径はそれを避けるのに十分な大きさとなるように選択される一方、それでもなお、緻密化の後に得られる複合材部品の挙動に影響を与えるのを避けるように制限が残る。穴の径が或る一定の値を超える場合、CVI式のプロセスの終わりであってもガスのアクセスは実際には向上しないので、これは特に該当する。
【0052】
従って、この平均径は、繊維の上に堆積させようとするマトリックスの厚さと、製造しようとする部品の寸法と、部品の利用とに応じて変化し得る。
【0053】
一般に、特に飛行機のブレーキディスクプレフォームについては、穴の平均径は、約0.05mm乃至2mmの範囲にある値を有するように選択され得る。
【0054】
穴の密度は、径と関連して、CVI式の緻密化の間にプレフォームの何れかの部分に到達するために反応ガスが辿るべき短い通路を提供するのに十分であるように選択される一方、それでもなお、緻密化の後に得られる複合材部品の挙動に影響を与えるのを避けるように制限が残る。この密度は、製造しようとする部品の寸法とそれの利用とに適合され得る。
【0055】
一般に、そして特には飛行機ブレーキディスクプレフォームについては、穴の密度は、約0.06個/cm2乃至4個/cm2の範囲にある値と等しくなるように選択され得る。図2乃至6では、この密度は、めくら穴が形成される実施形態を包含するように、プレフォームの中央面において測定される。図3及び5にあるように、穴が通し穴である場合には、1つの面上で測定することもできる。図11及び12では、密度は一定ではないので、平均値を考慮に入れ得る。
【0056】
言い換えれば、互いに隣接する穴の軸間の距離又はピッチが0.5cm乃至4cmの範囲にある値を有するように選択されることが好ましい。図11及び12の実施形態では、これは平均ピッチである。
【0057】
或るプレフォームにおいて、これら穴は、同じ径であっても良いし、又は、互いに異なる径であっても良い。
【0058】
同様に、穴の密度は、或るプレフォームにおいて、一定でも良いし、又は、ばらついていても良い。
【0059】
穴が形成された後、プレフォームがCVI式プロセスによって緻密化される(工程14)。炭素又はセラミックのマトリックスを用いるCVI式の緻密化プロセスが良く知られている。堆積させようとするマトリックス材料の種類に合った前駆体が使用される。
【0060】
状況に応じて、そして、特には、緻密化させようとするプレフォームの厚さと達成しようとする密度とに応じて、少なくともプレフォームの露出面の表面を皮むきすることが任意に好ましい場合がある。このような皮むきを行う場合、工程14は、第1緻密化サイクルI1と、それに続くプレフォームの表面の機械加工と、それに続く第2緻密化サイクルI2とを含む。
【0061】
図13は、図2に示された種類のプレフォームのCVI式の緻密化後であって、それがその最終寸法に加工された後に得られるブレーキディスク26を示しており、ディスクの機械的な取り付けが可能となるように、くぼみ26c及びほぞ26dが形成されている。この例において、このディスクは、2つの互いに反対側に位置する摩擦面26a及び26bを有する飛行機ブレーキ用のステーターディスクである。プレフォームに形成された穴に対応する穴28が視認できることに気付かれたい。それにも拘らず、それらの小さな径のおかげで、これらの穴は、このブレーキディスクのその後の使用中に、冷却機能などの機能的役割を何ら果たさない。
【0062】
図2及び7に示された例では、複数の穴が体積の全体に亘って形成されている。変形では、穴の形成はプレフォームの或る領域に制限され得るか、又は、或る領域において、例えばブレーキディスクの場合、摩擦面に対応する領域と、場合によってはディスクに機械的接続を提供するほぞに対応する領域とにおいては、穴の密度がより高くあり得る。
【0063】
従って、図14は、穴がばらついている密度で形成された環状プレフォームを緻密化した後に得られる最終加工前の飛行機ブレーキディスク26’の図であり、穴は、ディスクの軸に平行な通し穴であり、プレフォームの主面に開けられている。緻密化後に残った穴28’の配置によって示されるように、プレフォームに形成された穴の密度は、中間部分にあるディスクのラビングトラック付近で最大であり、前記密度は前記中間部分とディスクの内周面及び外周面に隣接した部分との間で減少する。これは、ディスクの制動の間に使用される部分での均一な緻密化を与える。いくつかの条件下では、他の部分、すなわち、ディスクのラビングトラックに対応する部分以外の部分、例えば、ディスクと定置又は回転部材との間の機械的接続を提供するために内周又は外周に形成されたレリーフ又はほぞの部分に対応するプレフォームの部分にも、緻密化を促進させる穴を形成することが考えられ得る。
【0064】
上述の説明は、ブレーキディスク用の環状繊維プレフォームに関するが、本発明が、複合材部品、及び、特に、均一な緻密化の問題が生じる厚い部品の製造において使用するための全てのタイプのプレフォームに適用可能であることは明らかである。
【0065】
さらに、本発明は、プレフォームの繊維の種類及びCVI式のプロセスによって緻密化するために堆積させられるマトリックスの種類とは無関係に適用が可能である。
【0066】
本発明の穿孔された繊維プレフォームを緻密化する処理が、CVI式の緻密化の第2工程の前に、液体技術を使用する部分的な緻密化の第1工程を含み得ることにも気付かれたい。液体技術による緻密化は、良く知られているように、プレフォームにマトリックス材料の液体前駆体を含んだ液体組成物を含浸させる少なくとも1つのサイクルを実行することにある。この前駆体は、典型的には、樹脂、例えば炭素の前駆体である有機樹脂である。溶媒を取り除くために乾燥させた後、そして樹脂が重合させられた後、熱処理が行われ、前駆体を変換させる。
【0067】
例1
C/C複合材からなる飛行機ブレーキディスク用の、炭素繊維からなる環状繊維プレフォームが、以下のように製造された。
【0068】
前酸化されたPAN繊維の3つの一方向ウェブを重ね、互いに±60°の角度をなすように広げ、且つ、ニードリングによって互いに結合させて、多方向ウェブが得られた。これら多方向ウェブが重ねられ、それらが重ねられるのに伴って漸進的にニードリングされて、ニードリングされたプレートを得て、重ねられ且つ縫い合わされて、このプレートから前酸化されたPANの環状プレフォームが切り抜かれた。
【0069】
前酸化されたPANプレフォームが、約1600℃の熱処理を受け、PANを炭素に変換した。これは、26cm及び48cmの内径及び外径と、3.5cmの厚さと、約23%の繊維体積百分率,繊維体積百分率は、繊維によって占められるプレフォームの見かけ体積の百分率である,とを有する炭素繊維環状プレフォームを製造した。
【0070】
いくつかのプレフォームに、軸と平行であり、加圧した水の噴射によって形成した通し穴が、約1個/cm2の実質的に一定の密度で開けられた。穴を有したプレフォームがこのようにして得られ、穴のそれぞれの径は、プレフォームA1、A2では約0.2mm、B1、B2のプレフォームでは約0.5mm、C1、C2のプレフォームでは約1mmであった。
【0071】
比較として、2mmと等しい径の針を刺し込むことによって、穴が約1個/cm2の密度で他のプレフォームDにつくられ、これら針は、続いて、CVI緻密化のために引き抜かれた。
【0072】
プレフォーム装入品が、穴が開けられていないプレフォームEから実質的になる環状のスタックの形態で準備された。このスタックにおいて、プレフォームA1、A2、B1、B2、C1及びC2が、穴が開けられていないプレフォームE1及びE2の複数の組の間に挟まれていた。
【0073】
図15は、米国特許第5904957号に記載されているような、「方向を持った流れ」式のCVI緻密化を実行するためのCVI緻密化オーブンの反応チャンバ32内に入れられたスタック30の形態にある装入品を示している。簡単に言うと、絶縁材がコイルとサセプタとの間に挟まれており、このオーブンはコイル34と反応チャンバを規定するグラファイトサセプタ36との間の誘導結合によって加熱される。反応ガスは、サセプタ36の底部を通して入れられ、予備加熱領域37を通り抜けて、上端が閉じているスタックの内部空間31へと向かう。このガスは、スタック30の外側であって、チャンバ32の内部空間を通り抜け、スペーサ(図示しない)を用いてプレフォームの間に提供されたギャップを通り抜け、それらギャップを通って拡散する。排出ガスは、所望の圧力レベルをチャンバ内につくりだすポンプユニットを用いた吸引によって、サセプタのカバーを通して抜き出される。
【0074】
熱分解によって得られる炭素マトリックスを用いた基材のCVI緻密化が、天然ガス系の反応ガスを使用し、約5キロパスカル(kPa)の圧力及び約1000℃の温度で行われた。
【0075】
緻密化は、皮むき作業によって隔てられた2つのサイクルI1及びI2において行われ、この皮むき作業のために、装入品をオーブンから取り出した。サイクルI1は、プレフォームの相対密度を約1.6の値まで上昇させることができる所定の条件下で行われた。部分的に緻密化されたプレフォームを製造しようとするディスクの厚さに近い厚さにすべく、それらの主面を機械加工することによって皮むきした後、それらを製造しようとするディスクの厚さに近い厚さにした後、サイクルI2が、相対密度を約1.8以下にするための所定の条件下で行われた。サイクルI2のために、部分的に緻密化されたプレフォームE1、A1、A2、B1、B2、C1、C2及びE2を、この順序でオーブン内へと再び配置して、オーブンに積み入れた。
【0076】
スタック中に基材E3と隣接して基材Dを挿入した以外は、同様の手順が使用され、Eタイプの基材からなるスタック装入品を2つのサイクルI1及びI2において緻密化した。
【0077】
以下の表Iは、サイクルI1及びI2後のディスクA1、A2、B1、B2、C1、C2、E1及びE2、並びにサイクルI2後のディスクE3及びDについて測定された密度の値を挙げている。ディスクA1、A2、B1、B2、C1及びC2について得られた最終的な密度は、ディスクD、E1及びE2について得られたものよりも著しく大きいこと、及び、サイクルI2が終了した時点での、ディスクE3の密度と比べたディスクDの密度の増加は、到底同じ程度ではないことが分かり得る。
【表1】
【0078】
緻密化勾配があるか否かを検証するために、実質的に矩形形状のブロックが、サイクルI2の後に得られたディスクA1、E1、D及びE2から、これらディスクの半径に沿って切り抜かれた。各々のブロックについて、密度が、内径と外径との間にあり、一方の面の近傍、他方の面の近傍及び半径方向の中間部分に位置する様々な領域Z1乃至Z5で測定された。
【0079】
以下の表IIは、測定された密度の値を挙げている。注目すべき結果が、本発明に従って製造されたディスクA1を用いることで得られたことが分かり得る。これは、密度がほぼ均一であったためである(1.7%未満のばらつき)。
【0080】
穴を持たないプレフォームから得られたディスクE1及びE3では、密度の著しいばらつきが見受けられ、中間の皮むき作業にも拘らず、かなり急な緻密化勾配が存在することが判明した(それぞれ、8.1%及び7.7%のばらつき)。
【0081】
6%の密度のばらつきがディスクDについて測定され、このばらつきは、E1及びE3で観察されたものよりも低かったものの、依然として非常に大きいものであった。
【表2】
【0082】
このように、本発明の方法は、緻密化の程度を向上させることを可能にし(且つ、それにより、所定の目標密度に対して、緻密化の時間を短くする)、一方では緻密化勾配をほぼ除去できるという点で優れており、この結果は、従来の方法(針を刺し込むことで穴を形成する)では得られない。
【0083】
例2
手順は実質的に例1と同じであったが、中間の皮むきは行なわず、加圧した水の噴射によって穿孔されたプレフォーム(1個/cm2の実質的に一定の密度にある0.5mm径の穴)及び穿孔されていないプレフォームを用いて、ステーターディスク及びローターディスク用の24mm乃至36mmの範囲にある異なるプレフォーム厚さを有する環状炭素繊維プレフォームの、スタックの形態にある装入品を準備した。
【0084】
CVI緻密化サイクルが行われて、熱分解によって得られる炭素マトリックスを提供し、それは、部分的に緻密化されたプレフォームの相対密度を測定するために、総所要時間の4分の3の時点で中断された。表IIIは、サイクルの所要時間の4分の3後に測定された中間の平均相対密及びサイクルの終了時点で測定された最終的な平均相対密度の値を挙げている。
【表3】
【0085】
所望の目標密度(1.78)は中間の段階では達成されなかったが、より高い密度が穴を備えたプレフォームでは観察された。サイクルの終了時点で、目標は、穴を持つプレフォームの全て(太字の値)については達成されたが、穿孔されていないプレフォームについては何れも達成されなかった。
【0086】
この例は、要求された密度を有するC/C複合材ブレーキディスクが、本発明に従ってプレフォームに穴を形成することにより、中間の皮むきなしに、ただ1つのサイクルで得られ得ることを示している。
【0087】
例3
手順は例1と実質的に同じであったが、中間の皮むきは行わず(例2のサイクルのものとほぼ同じ所要時間の1つの緻密化サイクル)、ブレーキディスク用の環状炭素繊維プレフォームのスタックとして、穿孔されていないプレフォーム及び様々な密度の穴が穿孔されているプレフォームを含んだ装入品を形成した。穴は、軸と平行であり且つ0.5mmの径を持つ通し穴であり、それらは、図7に示された正方形のアレイパターンを使用して、加圧した水の噴射によって形成された。
【0088】
総所要時間の3分の2を終了した時点でサイクルが中断され、到達した平均の中間密度を測定した。以下の表IVは、穴の密度が互いに異なるプレフォームについての、中間及びサイクル終了時に測定された平均相対密度の値を挙げている。最後の数時間における堆積速度を示すサイクルの途中停止と終了との間での密度増加の速度(単位は時間当たりの密度点)も挙げられている。
【表4】
【0089】
穴の密度の増加は、緻密化サイクルの最後の部分で、堆積をより速い速度で起させることがわかり得る。
【0090】
例4
手順は例1と実質的に同じであったが、中間の皮むきは行わず、ブレーキディスク用の環状炭素繊維プレフォームのスタックとして、穿孔されていないプレフォーム及び図14に示された配置にある穴が穿孔されたプレフォームを含んだ装入物を形成した。穿孔されたプレフォームは、それぞれ46.8cm及び26.7cmの外径及び内径と、3.5cmの厚さと、径が0.5mmの576個の通り穴とを有したローターディスクプレフォームであった。加圧した水の噴射を用い、プレフォームの軸と平行な穴が形成された。
【0091】
図16の曲線Aは、測定された密度が、例2及び3と同じ程度の標準所要時間の緻密化サイクルの終了時に、ディスクの半径に応じて如何に変化したかを示している。比較として、曲線Bは、同じ寸法を有するが穿孔されていないプレフォームから得られたディスクで測定した密度のばらつきを示している。
【0092】
プレフォームの中央部分におけるより高密度の穴は、より高密度のディスク材料をこの部分にて得ることを可能にする一方、穿孔されていないプレフォームから得られたディスクは、プレフォームの中央部分で最小値を持つ強い密度勾配を示すことがわかり得る。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に従う方法の実施における、複合材部品を製造する連続工程を示す図。
【図2】ブレーキディスク用の、穴が形成された環状繊維プレフォームの概略的な斜視図。
【図3】より大きなスケールでの図2の平面III上の部分断面図。
【図4】ブレーキディスク用の環状繊維プレフォームの少なくとも1つの主面に開けられた穴の異なる形態を示す断面図。
【図5】ブレーキディスク用の環状繊維プレフォームの少なくとも1つの主面に開けられた穴の異なる形態を示す断面図。
【図6】ブレーキディスク用の環状繊維プレフォームの少なくとも1つの主面に開けられた穴の異なる形態を示す断面図。
【図7】繊維基材の表面での穴の異なる配置を示す図。
【図8】繊維基材の表面での穴の異なる配置を示す図。
【図9】繊維基材の表面での穴の異なる配置を示す図。
【図10】繊維基材の表面での穴の異なる配置を示す図。
【図11】少なくともブレーキディスク用の環状プレフォームの外縁面に開けられた穴の異なる形態を示す図。
【図12】少なくともブレーキディスク用の環状プレフォームの外縁面に開けられた穴の異なる形態を示す図。
【図13】図2に示した種類のプレフォームを使用して、緻密化、CVI及び最終機械加工後に得られるブレーキディスクを概略的に示す図。
【図14】穴が様々な密度で形成された飛行機ブレーキのローターディスク用の繊維プレフォームの平面図。
【図15】スタックの状態でCVI緻密化オーブン内に装入されたブレーキディスク用の環状繊維プレフォームを非常に概略的に示す図。
【図16】図14のプレフォームを緻密化した後に得られるディスクの密度が、内周及び外周の間で如何にばらついているかと、比較として、類似しているが、穴が形成されていないプレフォームを緻密化した後のディスクにおいて密度が如何にばらついているかとを示す曲線をプロットしたグラフ。
【発明の開示】
【0001】
発明の背景
本発明は、繊維基材を形成し、この基材を化学蒸気浸透(CVI)式の方法により形成されるマトリックスを用いて緻密化することによって、複合材部品を製造することに関する。本発明の非排他的な特定の応用の分野は、ブレーキディスク、特には、共通の軸上でステーターディスクとローターディスクとが互い違いになっている1組のディスクを具備した飛行機ブレーキ用のブレーキディスクを、炭素/炭素(C/C)複合材から製造することである。そうではあるが、本発明は、他の部品を、C/C複合材から、又は、他の複合材から、特にはセラミックマトリックス複合材(CMC)材料から製造することに適用可能である。
【0002】
繊維基材又はプレフォームなどの多孔質基材をCVI式の方法を用いて緻密化することは、良く知られている。
【0003】
従来のCVIプロセスでは、緻密化のための基材がオーブン内に設置される。反応ガスは、このガスの1種以上の成分を分解することにより、又は、複数種の成分間の決められた温度及び圧力の条件下での反応により、マトリックスを構成する材料を基材の細孔中に堆積させることを目的として、オーブン内に入れられる。
【0004】
緻密化用の基材がリアクタ内に設置され、このリアクタ内で、それがマトリックスを構成する材料の前駆体の存在下で加熱される方法も知られている。この前駆体は液体状態でリアクタ内に存在しており、この基材は、炭素繊維などの導電性繊維からつくられていて、例えば、電流を流すことによって又はコイルとの電磁結合によって加熱される。このような方法は、特には、米国特許第4472454号、第5397595号又は第5389152号に記載されており、時には、加熱による緻密化と呼ばれている。前駆体は温度の高い基材に接触すると気化するので、この方法は、ここでは、CVI式の緻密化プロセスであると見なされる。言い換えると、用語「CVI式のプロセス」、すなわち「化学蒸気浸透式のプロセス」は、本明細書及び特許請求の範囲において、従来の化学蒸気浸透プロセスと加熱による緻密化プロセスとの両方を包含するのに使用される。
【0005】
このようなCVI式のプロセスに伴う主な困難性は、基材内部での緻密化勾配を最小にして、体積の全体に亘ってできるだけ均一な性質を有した部品を得ることにある。
【0006】
マトリックスの堆積は、反応ガスが最初に当たる部分であるので、基材の表面部分において優先的に起こる。結果として、基材のコアへとどうにか拡散するガスが使い尽くされ、基材の表面部分の細孔が早期に塞がれ、それにより、ガスのコア中へと拡散する能力を次第に低下させる。これは、基材の表面部分とコアとの間に緻密化勾配を生じさせる。
【0007】
そのために、特に厚い部品を製造する際には、実際には、所定の程度の緻密化が一旦達成されたら、プロセスを中断し且つ部分的に緻密化された基材を取り出して、表面の細孔を再び開けるのに役立つ「皮むき(ecroutage)」と呼ばれる作業においてそれらの表面を加工することが必要である。その後、反応ガスがより容易にアクセスして基材のコア中へと拡散する状態で、緻密化が継続され得る。例として、ブレーキディスクを製造する際には、間に皮むきを挟んだ、少なくとも2つのCVI緻密化サイクル(サイクルI1及びI2)を実行するのが一般的な慣例である。それにも拘らず、実際には、最終的に得られる部品において緻密化勾配が観察される。
【0008】
緻密化勾配の発生を回避するため、及び、場合によっては皮むき作業を回避するために、温度勾配を必要とするCVI緻密化方法を実行する、すなわち、基材を不均一に加熱することによってCVI緻密化方法を実行することが実際に知られている。誘導コイルと1つ以上の緻密化用環状基材との間の直接結合による不均一加熱が、文献米国特許第5846611号及び欧州特許第0946461号に記載されている。ガスへのアクセスがあまり容易でない基材領域でのマトリックスの堆積は、これらの領域を基材の他の部分よりも高い温度まで上昇させることによって促進される。それでも、この技術は、所定の形状及び種類の基材と、オーブン内での基材装入品の所定の配置とに制限される。
【0009】
米国特許第5405560号は、ブレーキディスク用のC/C複合材から製造された環状繊維プレフォームから構成された基材内部への反応ガスのアクセスを、このプレフォームにその互いに反対側に位置する面の間で貫通した複数の穴の形態の通路を提供することによって向上させることを提案している。これらの穴は、針を刺し込んで、プレフォーム中の繊維を傷つけることなく押しやることによって提供される。CVI緻密化の間、これらの穴は、ガスに、プレフォームの中心部分に到達するための短い通路を提供する。それにも拘らず、出願人によって行われた試験は、以下で説明するように、この技術は緻密化勾配の最小化についての限界があることを示した。類似の文献仏国特許第2616779号は、部分的に繊維を破壊し得る圧力下で流体を用いて穴を形成する可能性を実際に言及しているが、繊維の損傷を回避することを推奨している。
【0010】
C/C複合材から製造されたブレーキディスクブランクへの穴の形成は、文献仏国特許第2114329号にも記載されている。それでも、この文献は、液体技術によって、すなわち、プレフォームに炭素前駆体樹脂を含浸させ、この樹脂を、架橋(硬化)させ、その後、炭化又は黒鉛化させて炭素マトリックスを形成することによって、ブレーキディスク繊維プレフォームを緻密化させることに関する。複数の穴が、樹脂が硬化された後及び樹脂が炭化又は黒鉛化される前に形成され、これら穴は、揮発種を炭化又は黒鉛化の間に排気し、それにより、ガスがカーボンマトリックス内部にトラップされるのを回避するのに役立つ。これは、CVI緻密化とは完全に異なるプロセスである。
【0011】
本発明の目的
本発明の目的は、第1に、複合材部品の製作において、繊維基材のほぼ均一な緻密化を達成するために、第2に、中間の皮むき段階によって隔てられた緻密化サイクルの数を減らすために、又は、場合によっては、中間の皮むき段階によって気孔を再び開ける必要がないので、ただ1つのサイクルで緻密化を達成するために、反応ガスの拡散を、CVI式の緻密化プロセスの間中促進することにある。
【0012】
この目的は、繊維基材を準備することと、この基材の中でその少なくとも1つの表面から延びた複数の穴を形成することと、少なくとも部分的に化学蒸気浸透式のプロセスによって形成されるマトリックスを用いてこの基材を緻密化させることを含んだ複合材部品の製造方法であって、これら穴は、前記基材から繊維材料を繊維の破壊を伴って取り除くことによって基材に形成され、複数の穴が提供されたプレフォームにおける繊維の配置は、これら穴が形成される前の最初の配置と比べて、実質的に変化していない方法によって達成される。
【0013】
以下に説明するように、材料を繊維の破壊を伴って取り除くことによって穴を基材に形成することが、驚くべきことに、基材のほぼ均一な緻密化を達成することを可能するのに対し、このような結果は、従来技術のように、繊維に対する非破壊的影響を有した針を刺し込むことによって穴が形成される場合には決して得られない。従来技術においては中間の皮むきによって隔てられた複数のサイクルを必要とした程度の緻密化を、ただ1つのサイクルで達成することも可能である。
【0014】
穴は、加圧した水の噴射を用いた機械加工によって形成され得る。
【0015】
本発明の方法の他の実施では、穴は、場合により酸化性雰囲気への曝露と共に、繊維の材料に対する破壊的影響を有した局所的な熱作用によって形成され得る。これは、特には炭素繊維に用いられ得る。局所的な熱作用は、レーザー照射によって生じ得る。
【0016】
本発明の方法の更に他の実施では、穴は、ドリルビット、ボール盤若しくはカッターなどの超高速ツールを使用した機械加工により、又は、ナイフ若しくはパンチ若しくは打ち型を使用して切り抜くことにより、又は、実際には、放電加工により形成され得る。
【0017】
穴は、基材の2つの表面の間で基材を貫通していても良いし、又は、それらは、基材の1つの表面のみに開けられためくら穴であっても良い。
【0018】
更に、穴は、それらが開けられた基材の表面に対して直角に形成されても良いし、又は、それらは、直角でない方向に延びていても良い。
【0019】
ブレーキディスク用の環状プレフォームを形成する基材の場合、得られる穴は、プレフォームの主面の少なくとも1つにプレフォームの軸に対して垂直に開けられた穴であっても良いし、又は、それの外縁表面及び場合によっては内縁表面に開けられ、さらに、半径方向に又は実質的に半径方向に向いた穴であっても良いし、又は、これら穴は両方のタイプの穴の組み合わせであっても良い。
【0020】
穴の平均径は、CVI緻密化プロセスが終わる前に、それらがマトリックス材料の堆積によって塞がるのを回避するように選択される。例えば、約0.05ミリメートル(mm)乃至2mmの範囲にある平均径が選択され得る。これら穴は径が小さく、緻密化後、それらは続く使用中での機能的役割を持たない。例えば、それらはブレーキディスクに何ら冷却機能を提供しない。
【0021】
穴の密度は、反応ガスに、ほぼ均一に緻密化することが望まれる基材の全ての部分への短い通路を提供するのに十分であるように選択される。例として、この密度を基材の中央平面内又は中央面上での単位面積当たりの穴の数に換算して測定した場合に、平方センチメートル当たり約0.06個(個/cm2)乃至4個/cm2の範囲にある密度を選択することができる。言い換えると、互いに隣接する穴の軸間の距離又はピッチは、好ましくは、約0.5センチメートル(cm)乃至4cmの範囲にある。
【0022】
繊維基材における穴の密度は、反応ガス用の短い通路を緻密化用の基材の全ての場所に対して同じように提供するために一定であり得る。変形では、穴の密度がばらついていてもよく、その場合、基材のうち、穴がないときにはガス用の通路がより長く且つ基材のコアへと届けられるマトリックス材料の量がより少ない部分では、密度がより高くなるように選択し、且つ、基材のうち、穴がないときであっても届けられるマトリックスの量が十分に多い部分では、より低い又はゼロである密度を選択することができる。従って、環状プレフォームの形態にある、ブレーキディスク用、特には飛行機ブレーキディスク用の基材であって、複数の穴がこの基材の主面の少なくとも1つに開けられた基材については、これら穴の密度は、ばらついていてもよく、基材のディスクのラビングトラックに対応する中央部分と基材の外周面及び内周面に隣接した部分との間で減少し得る。製造しようとするブレーキディスクのラビングトラックに対応する基材の中央部分のみに穴を形成することが可能である。
【0023】
本発明は、複合材部品を製造するための繊維基材であって、この基材は、この基材の中へとその少なくとも1つの表面から延びた複数の穴を有し、この基材において、この基材におけるこれら穴の壁付近での単位体積当たりの繊維の密度は、この基材における他の部分での単位体積当たりの繊維の密度よりも著しくは大きくない繊維基材も提供する。
【0024】
この基材の特徴に従うと、複数の穴が、繊維が除去された又は破断させられた有限の領域によって規定される。
【0025】
本発明は、複合材部品であって、少なくとも部分的に化学蒸気浸透式のプロセスによって緻密化された繊維補強材を具備し、複数の穴がこの部品の中へとその少なくとも1つの表面から延びており、この繊維補強材が、上で定義された基材から製造されているか、又は、これら穴の壁付近での単位体積当たりの補強繊維の密度がこの部品の他の部分での単位体積当たりの繊維の密度よりも著しくは大きくない部品から作られている複合材部品も提供する。
【0026】
本発明は、非限定的な表示として挙げられた以下の説明を読み且つ添付の図面を参照することによって、より良く理解され得る。
【0027】
本発明の実施形態の詳細な説明
図1に示された方法の第1工程10は、得ようとする複合材部品の形状に近い形状を有する三次元(3D)繊維基材又は繊維プレフォームを製造することにある。このような繊維プレフォームを製造する技術は、よく知られている。
【0028】
フォーマ若しくはマンドレル上に巻かれるか、又は、三次元ウィービング、ニッティング、若しくはブレーディングによって3D基材を直接形成するのに使用されるヤーン又はトウなどの一次元(1D)繊維要素から始めることができる。
【0029】
織られた布、ニット、平打紐、薄いフェルト、互いに平行なヤーン若しくはトウからつくられた一方向(UD)ウェブか、又は、実際には、複数のUDウェブが、互いに異なる方向で重ねられ、例えば軽くニードリングすることによって若しくは縫合することによって互いに結合されてなる多方向(nD)ウェブなどの二次元(2D)繊維織物から始めることもできる。このような2D織物からなる複数のプライが、フォーマ若しくはマンドレル上で巻かれることによって、又は、フォーマ若しくは支持体上に置かれることによって重ねられ、それらが、例えばニードリングによって、縫合によって、又はパイルを通してヤーンを埋め込むことによって互いに結合されて、3D基材が得られる。
【0030】
3D基材は、ランダムに向いた不連続の繊維をニードリングすることによってつくられる厚いフェルトの形態でも得ることができる。
【0031】
この方法で得られた3D基材は、得ようとする部品用の繊維プレフォームとして直接使用され得る。所望の繊維プレフォームを、所望の形状を得るために3D基材から切り抜くことによって形成することも可能である。
【0032】
プレフォームを構成する繊維は、得ようとする複合材部品の用途に応じて選択される。熱構造複合材、すなわち、良好な機械的特性とそれらを高温で維持する能力とを有する材料では、材料の繊維補強材の繊維は、典型的には、炭素又はセラミックから製造される。このプレフォームは、このような繊維から製造され得るか、又は、炭素の前駆体若しくはセラミックの前駆体であり且つ3D繊維基材を製造するのに使用される様々な織り込み処理に耐えるのにより適し得る繊維から製造され得る。このような状況では、基材又はプレフォームが製造された後、前駆体は、通常は熱処理によって炭素又はセラミックに変換される。
【0033】
この方法の第2工程12は、続くCVI式の緻密化中におけるプレフォームのコアへの反応ガスのアクセスを向上させるために、プレフォームに複数の穴を形成することにある。プレフォームが前駆体材料の変換によって得られる材料の繊維からなる場合には、前駆体が変換された後又は前記変換の前に、これら穴がプレフォームに形成され得る。それらが予めつくられる場合には、所望の寸法の穴を得ることを保証するために、前駆体の変換の間に起こり得る収縮を考慮に入れるべきである。
【0034】
図2及び3は、炭素/炭素(C/C)材料からなるブレーキディスクを製作するための炭素繊維から製造された環状繊維プレフォーム20を示している。このようなプレフォームは、プレートの形態にあり、例えば、炭素の前駆体である前酸化されたポリアクリロニトリル(PAN)の布帛又は一方向若しくは多方向ウェブのプライを重ね且つニードリングすることによって製造された3D繊維基材から切り出されることによって得られ得る。このプレフォームは、例えば、前酸化されたPAN繊維の一方向又は多方向布帛又はウェブから切り出された複数の環状のプライを重ね且つニードリングすることによっても得られ得る。環状プレフォームが前酸化されたPAN繊維から製造された後、この前酸化されたPANが熱処理によって炭素に変換される。例えば、米国特許第4790052号及び第5792715号が参照され得る。
【0035】
穴22が、プレフォーム20に、その軸21と平行に形成されており、互いに反対側に位置した主面20a及び20bの間で、その厚さ全体に亘って延びてこれら面に穴22が開けられており、これら面は軸21に対して垂直である。
【0036】
変形では、図4に示すように、めくら穴22a、22bがプレフォームに形成されており、穴22aは面20aにのみに開けられている一方、穴22bは面20bにのみに開けられている。穴22a、22bがプレフォームの厚さの非常に大部分に亘って延びていることに気付かれたい。
【0037】
他の変形では、穴は斜めに形成され得る、すなわち、それらの軸は、面20a、20bの法線に対して、又は、プレフォーム20の軸に対して、ゼロでない角度を形成し得、これらは通し穴22’(図5)又はめくら穴22’a、22’b(図6)に適用され得る。
【0038】
図2では、複数の穴が、規則的な間隔で同心円に沿って配列されている。それらは、螺旋状の線に沿って配置されても良い。さらに、繊維プレフォーム20が環状であるか又は他の形状であるかに拘らず、穴22は、他のパターン、例えば、四角形の頂点の位置(図7)、四角形の頂点及び中心の位置(図8)、六角形の頂点の位置(図9)、正三角形の頂点の位置(図10)に配置されても良い。一定の密度の穴については、これら穴からプレフォーム内部の全ての部分に到達するためにガスが辿る通路の長さを最小するには、正三角形の配置が最も好ましい。
【0039】
図11及び12は、他の実施形態を示しており、ここでは、穴が、プレフォーム20の主面20a、20bのうちの一方及び/又は他方には開けられていないが、外周縁表面20c、及び任意に内周縁表面20dに開けられており、これら穴は、半径方向に又は実質的に半径方向に延びている。
【0040】
図11では、穴22cがディスクの中間部分に形成されている。これら穴は、外側の表面20cに開けられており且つ表面20cと内周面20dとの距離の殆どの部分に亘って延びているが、内周面20dには開けられていない。
【0041】
図12では、穴22d、22eがディスクの中間部分に形成されており、穴22dは表面20cと表面20dとの間で半径方向に延びた通し穴である一方、穴22eは通し穴ではなく、表面220cにのみ開けられており、表面20c、20d間の距離の一部分,約半分,に亘って延びている。
【0042】
穴22eは、穴22dと互い違いになっており、表面20cと20dとの間の穴密度の不均一性を最小化している。同じ理由で、図11の例では、有限深さの中間穴も提供され得る。
【0043】
図11及び図12は、ディスクの中間部分において1つの列を占有している複数の穴を示しているが、ディスクの厚さに応じて、複数の列の穴を提供することも当然可能であろう。
【0044】
本発明に従う方法の特徴に従うと、穴は、材料を取り除くことによりプレフォームに形成される。
【0045】
この目的のために、通し穴又はめくら穴を形成するのに使用され得る加圧した水の噴射を用いた穿孔の技術を使用することができる。使用される水は、任意に、固体粒子を含んでいても良い。穿孔は、1つ以上の水噴射パルスを使用して行われても良いし、又は、連続的に行われても良い。穴の径が噴射の径と比較して大きい場合、これら穴は、切り抜きによって、すなわち、つくろうとする穴の各々の外周の周囲を切ることによって穿孔され得る。使用される穿孔技術に依存して、これら穴は、図4及び6に示すように、わずかに円錐台形状であり得る。水の噴射は散乱するので、又は、主には、固体の機械加工デブリを含んだ水はより研削能が高いので、これら穴の径は、水噴射機械加工が行われる面から離れるにつれて大きくなる。通し穴の場合、穴によって生み出される空隙の密度がプレフォームの厚さに亘って実質的に均一であることを確実にするために、穴の約50%は一方の面から機械加工され、他の穴は他方の面から機械加工される。同じ目的のために、図4では、約同数の穴がプレフォームの面の各々から形成されている。
【0046】
穴を形成するための他に考えられる技術であって、繊維材料が熱によって除去され得る場合に適切な技術は、局所的な熱作用を、特には、レーザー照射によりつくり出すことにある。炭素繊維の場合では特に、酸化性雰囲気中、例えば空気中でのこのような熱作用が、酸化させることによって繊維の材料を除去することを可能にする。様々なタイプのレーザー源、例えば、二酸化炭素タイプ、イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)タイプのレーザー源が使用され得る。レーザー照射の使用は、通り穴でない穴をつくる場合に穴の深さを制御することを可能にし、穴を切り抜きによってつくることを可能にし、且つ、穴の向きを制御することを容易にする。
【0047】
材料を取り除くことによって穴を形成するために、他の技術も使用され得る。ドリルビット、ボール盤若しくはカッターなどの高速で駆動するツールを用いた機械加工の技術、ナイフ、パンチ若しくは打ち型を用いる切取り、又は、放電加工に頼ることもできる。このような機械加工技術はよく知られている。
【0048】
上述の技術を実施して材料を取り除くことによる穴の形成は、プレフォームの繊維に対しての破壊効果を有するが、穴が形成される前の最初の配置と比較して、穴の壁付近での繊維の配置を変化させない。従って、穴の場所に最初位置していた材料は、有利には、完全に取り除かれるか又は除去され、得られた穴は繊維が除去又は破断させられた有限の領域によって規定され、プレフォームにおける穴の壁付近での単位体積当たりの繊維の密度は増加せず、これは、針を刺し込んで繊維を穴の壁を構成する領域へと押しやることで穴が形成される場合に起こることとは異なる。
【0049】
続くCVI式の緻密化プロセスの間、反応ガスの繊維プレフォームの材料へのアクセスは、穴の壁を通るときに、プレフォームの外側の表面を通るときよりも制限されるということはなく、これは、繊維が穴の形成中に穴の壁の領域に押しやられる場合には、穴の表面での単位体積当たりの繊維の密度の局所的な増加と緻密化の最中での早すぎる穴の壁の塞がりとをもたらすので、この場合に適用されるのとは異なる。このようにして、有効性を奪う穴の壁のこのような早期の塞がりは、緻密化プロセスの間中回避される。
【0050】
プレフォームにおいて、及び、CVI式のプロセスによる緻密化の後に得られる複合材部品においても、穴の壁付近での単位体積当たりの繊維の密度は、プレフォーム又は部品の他の部分での単位体積当たりの繊維の密度よりも著しくは大きくない。このようにして、複合材の特性における不均一性が回避される。
【0051】
CVI式の緻密化プロセスが終わる前に穴が塞がってしまうと機能を発揮することが妨げられるので、穴の平均径はそれを避けるのに十分な大きさとなるように選択される一方、それでもなお、緻密化の後に得られる複合材部品の挙動に影響を与えるのを避けるように制限が残る。穴の径が或る一定の値を超える場合、CVI式のプロセスの終わりであってもガスのアクセスは実際には向上しないので、これは特に該当する。
【0052】
従って、この平均径は、繊維の上に堆積させようとするマトリックスの厚さと、製造しようとする部品の寸法と、部品の利用とに応じて変化し得る。
【0053】
一般に、特に飛行機のブレーキディスクプレフォームについては、穴の平均径は、約0.05mm乃至2mmの範囲にある値を有するように選択され得る。
【0054】
穴の密度は、径と関連して、CVI式の緻密化の間にプレフォームの何れかの部分に到達するために反応ガスが辿るべき短い通路を提供するのに十分であるように選択される一方、それでもなお、緻密化の後に得られる複合材部品の挙動に影響を与えるのを避けるように制限が残る。この密度は、製造しようとする部品の寸法とそれの利用とに適合され得る。
【0055】
一般に、そして特には飛行機ブレーキディスクプレフォームについては、穴の密度は、約0.06個/cm2乃至4個/cm2の範囲にある値と等しくなるように選択され得る。図2乃至6では、この密度は、めくら穴が形成される実施形態を包含するように、プレフォームの中央面において測定される。図3及び5にあるように、穴が通し穴である場合には、1つの面上で測定することもできる。図11及び12では、密度は一定ではないので、平均値を考慮に入れ得る。
【0056】
言い換えれば、互いに隣接する穴の軸間の距離又はピッチが0.5cm乃至4cmの範囲にある値を有するように選択されることが好ましい。図11及び12の実施形態では、これは平均ピッチである。
【0057】
或るプレフォームにおいて、これら穴は、同じ径であっても良いし、又は、互いに異なる径であっても良い。
【0058】
同様に、穴の密度は、或るプレフォームにおいて、一定でも良いし、又は、ばらついていても良い。
【0059】
穴が形成された後、プレフォームがCVI式プロセスによって緻密化される(工程14)。炭素又はセラミックのマトリックスを用いるCVI式の緻密化プロセスが良く知られている。堆積させようとするマトリックス材料の種類に合った前駆体が使用される。
【0060】
状況に応じて、そして、特には、緻密化させようとするプレフォームの厚さと達成しようとする密度とに応じて、少なくともプレフォームの露出面の表面を皮むきすることが任意に好ましい場合がある。このような皮むきを行う場合、工程14は、第1緻密化サイクルI1と、それに続くプレフォームの表面の機械加工と、それに続く第2緻密化サイクルI2とを含む。
【0061】
図13は、図2に示された種類のプレフォームのCVI式の緻密化後であって、それがその最終寸法に加工された後に得られるブレーキディスク26を示しており、ディスクの機械的な取り付けが可能となるように、くぼみ26c及びほぞ26dが形成されている。この例において、このディスクは、2つの互いに反対側に位置する摩擦面26a及び26bを有する飛行機ブレーキ用のステーターディスクである。プレフォームに形成された穴に対応する穴28が視認できることに気付かれたい。それにも拘らず、それらの小さな径のおかげで、これらの穴は、このブレーキディスクのその後の使用中に、冷却機能などの機能的役割を何ら果たさない。
【0062】
図2及び7に示された例では、複数の穴が体積の全体に亘って形成されている。変形では、穴の形成はプレフォームの或る領域に制限され得るか、又は、或る領域において、例えばブレーキディスクの場合、摩擦面に対応する領域と、場合によってはディスクに機械的接続を提供するほぞに対応する領域とにおいては、穴の密度がより高くあり得る。
【0063】
従って、図14は、穴がばらついている密度で形成された環状プレフォームを緻密化した後に得られる最終加工前の飛行機ブレーキディスク26’の図であり、穴は、ディスクの軸に平行な通し穴であり、プレフォームの主面に開けられている。緻密化後に残った穴28’の配置によって示されるように、プレフォームに形成された穴の密度は、中間部分にあるディスクのラビングトラック付近で最大であり、前記密度は前記中間部分とディスクの内周面及び外周面に隣接した部分との間で減少する。これは、ディスクの制動の間に使用される部分での均一な緻密化を与える。いくつかの条件下では、他の部分、すなわち、ディスクのラビングトラックに対応する部分以外の部分、例えば、ディスクと定置又は回転部材との間の機械的接続を提供するために内周又は外周に形成されたレリーフ又はほぞの部分に対応するプレフォームの部分にも、緻密化を促進させる穴を形成することが考えられ得る。
【0064】
上述の説明は、ブレーキディスク用の環状繊維プレフォームに関するが、本発明が、複合材部品、及び、特に、均一な緻密化の問題が生じる厚い部品の製造において使用するための全てのタイプのプレフォームに適用可能であることは明らかである。
【0065】
さらに、本発明は、プレフォームの繊維の種類及びCVI式のプロセスによって緻密化するために堆積させられるマトリックスの種類とは無関係に適用が可能である。
【0066】
本発明の穿孔された繊維プレフォームを緻密化する処理が、CVI式の緻密化の第2工程の前に、液体技術を使用する部分的な緻密化の第1工程を含み得ることにも気付かれたい。液体技術による緻密化は、良く知られているように、プレフォームにマトリックス材料の液体前駆体を含んだ液体組成物を含浸させる少なくとも1つのサイクルを実行することにある。この前駆体は、典型的には、樹脂、例えば炭素の前駆体である有機樹脂である。溶媒を取り除くために乾燥させた後、そして樹脂が重合させられた後、熱処理が行われ、前駆体を変換させる。
【0067】
例1
C/C複合材からなる飛行機ブレーキディスク用の、炭素繊維からなる環状繊維プレフォームが、以下のように製造された。
【0068】
前酸化されたPAN繊維の3つの一方向ウェブを重ね、互いに±60°の角度をなすように広げ、且つ、ニードリングによって互いに結合させて、多方向ウェブが得られた。これら多方向ウェブが重ねられ、それらが重ねられるのに伴って漸進的にニードリングされて、ニードリングされたプレートを得て、重ねられ且つ縫い合わされて、このプレートから前酸化されたPANの環状プレフォームが切り抜かれた。
【0069】
前酸化されたPANプレフォームが、約1600℃の熱処理を受け、PANを炭素に変換した。これは、26cm及び48cmの内径及び外径と、3.5cmの厚さと、約23%の繊維体積百分率,繊維体積百分率は、繊維によって占められるプレフォームの見かけ体積の百分率である,とを有する炭素繊維環状プレフォームを製造した。
【0070】
いくつかのプレフォームに、軸と平行であり、加圧した水の噴射によって形成した通し穴が、約1個/cm2の実質的に一定の密度で開けられた。穴を有したプレフォームがこのようにして得られ、穴のそれぞれの径は、プレフォームA1、A2では約0.2mm、B1、B2のプレフォームでは約0.5mm、C1、C2のプレフォームでは約1mmであった。
【0071】
比較として、2mmと等しい径の針を刺し込むことによって、穴が約1個/cm2の密度で他のプレフォームDにつくられ、これら針は、続いて、CVI緻密化のために引き抜かれた。
【0072】
プレフォーム装入品が、穴が開けられていないプレフォームEから実質的になる環状のスタックの形態で準備された。このスタックにおいて、プレフォームA1、A2、B1、B2、C1及びC2が、穴が開けられていないプレフォームE1及びE2の複数の組の間に挟まれていた。
【0073】
図15は、米国特許第5904957号に記載されているような、「方向を持った流れ」式のCVI緻密化を実行するためのCVI緻密化オーブンの反応チャンバ32内に入れられたスタック30の形態にある装入品を示している。簡単に言うと、絶縁材がコイルとサセプタとの間に挟まれており、このオーブンはコイル34と反応チャンバを規定するグラファイトサセプタ36との間の誘導結合によって加熱される。反応ガスは、サセプタ36の底部を通して入れられ、予備加熱領域37を通り抜けて、上端が閉じているスタックの内部空間31へと向かう。このガスは、スタック30の外側であって、チャンバ32の内部空間を通り抜け、スペーサ(図示しない)を用いてプレフォームの間に提供されたギャップを通り抜け、それらギャップを通って拡散する。排出ガスは、所望の圧力レベルをチャンバ内につくりだすポンプユニットを用いた吸引によって、サセプタのカバーを通して抜き出される。
【0074】
熱分解によって得られる炭素マトリックスを用いた基材のCVI緻密化が、天然ガス系の反応ガスを使用し、約5キロパスカル(kPa)の圧力及び約1000℃の温度で行われた。
【0075】
緻密化は、皮むき作業によって隔てられた2つのサイクルI1及びI2において行われ、この皮むき作業のために、装入品をオーブンから取り出した。サイクルI1は、プレフォームの相対密度を約1.6の値まで上昇させることができる所定の条件下で行われた。部分的に緻密化されたプレフォームを製造しようとするディスクの厚さに近い厚さにすべく、それらの主面を機械加工することによって皮むきした後、それらを製造しようとするディスクの厚さに近い厚さにした後、サイクルI2が、相対密度を約1.8以下にするための所定の条件下で行われた。サイクルI2のために、部分的に緻密化されたプレフォームE1、A1、A2、B1、B2、C1、C2及びE2を、この順序でオーブン内へと再び配置して、オーブンに積み入れた。
【0076】
スタック中に基材E3と隣接して基材Dを挿入した以外は、同様の手順が使用され、Eタイプの基材からなるスタック装入品を2つのサイクルI1及びI2において緻密化した。
【0077】
以下の表Iは、サイクルI1及びI2後のディスクA1、A2、B1、B2、C1、C2、E1及びE2、並びにサイクルI2後のディスクE3及びDについて測定された密度の値を挙げている。ディスクA1、A2、B1、B2、C1及びC2について得られた最終的な密度は、ディスクD、E1及びE2について得られたものよりも著しく大きいこと、及び、サイクルI2が終了した時点での、ディスクE3の密度と比べたディスクDの密度の増加は、到底同じ程度ではないことが分かり得る。
【表1】
【0078】
緻密化勾配があるか否かを検証するために、実質的に矩形形状のブロックが、サイクルI2の後に得られたディスクA1、E1、D及びE2から、これらディスクの半径に沿って切り抜かれた。各々のブロックについて、密度が、内径と外径との間にあり、一方の面の近傍、他方の面の近傍及び半径方向の中間部分に位置する様々な領域Z1乃至Z5で測定された。
【0079】
以下の表IIは、測定された密度の値を挙げている。注目すべき結果が、本発明に従って製造されたディスクA1を用いることで得られたことが分かり得る。これは、密度がほぼ均一であったためである(1.7%未満のばらつき)。
【0080】
穴を持たないプレフォームから得られたディスクE1及びE3では、密度の著しいばらつきが見受けられ、中間の皮むき作業にも拘らず、かなり急な緻密化勾配が存在することが判明した(それぞれ、8.1%及び7.7%のばらつき)。
【0081】
6%の密度のばらつきがディスクDについて測定され、このばらつきは、E1及びE3で観察されたものよりも低かったものの、依然として非常に大きいものであった。
【表2】
【0082】
このように、本発明の方法は、緻密化の程度を向上させることを可能にし(且つ、それにより、所定の目標密度に対して、緻密化の時間を短くする)、一方では緻密化勾配をほぼ除去できるという点で優れており、この結果は、従来の方法(針を刺し込むことで穴を形成する)では得られない。
【0083】
例2
手順は実質的に例1と同じであったが、中間の皮むきは行なわず、加圧した水の噴射によって穿孔されたプレフォーム(1個/cm2の実質的に一定の密度にある0.5mm径の穴)及び穿孔されていないプレフォームを用いて、ステーターディスク及びローターディスク用の24mm乃至36mmの範囲にある異なるプレフォーム厚さを有する環状炭素繊維プレフォームの、スタックの形態にある装入品を準備した。
【0084】
CVI緻密化サイクルが行われて、熱分解によって得られる炭素マトリックスを提供し、それは、部分的に緻密化されたプレフォームの相対密度を測定するために、総所要時間の4分の3の時点で中断された。表IIIは、サイクルの所要時間の4分の3後に測定された中間の平均相対密及びサイクルの終了時点で測定された最終的な平均相対密度の値を挙げている。
【表3】
【0085】
所望の目標密度(1.78)は中間の段階では達成されなかったが、より高い密度が穴を備えたプレフォームでは観察された。サイクルの終了時点で、目標は、穴を持つプレフォームの全て(太字の値)については達成されたが、穿孔されていないプレフォームについては何れも達成されなかった。
【0086】
この例は、要求された密度を有するC/C複合材ブレーキディスクが、本発明に従ってプレフォームに穴を形成することにより、中間の皮むきなしに、ただ1つのサイクルで得られ得ることを示している。
【0087】
例3
手順は例1と実質的に同じであったが、中間の皮むきは行わず(例2のサイクルのものとほぼ同じ所要時間の1つの緻密化サイクル)、ブレーキディスク用の環状炭素繊維プレフォームのスタックとして、穿孔されていないプレフォーム及び様々な密度の穴が穿孔されているプレフォームを含んだ装入品を形成した。穴は、軸と平行であり且つ0.5mmの径を持つ通し穴であり、それらは、図7に示された正方形のアレイパターンを使用して、加圧した水の噴射によって形成された。
【0088】
総所要時間の3分の2を終了した時点でサイクルが中断され、到達した平均の中間密度を測定した。以下の表IVは、穴の密度が互いに異なるプレフォームについての、中間及びサイクル終了時に測定された平均相対密度の値を挙げている。最後の数時間における堆積速度を示すサイクルの途中停止と終了との間での密度増加の速度(単位は時間当たりの密度点)も挙げられている。
【表4】
【0089】
穴の密度の増加は、緻密化サイクルの最後の部分で、堆積をより速い速度で起させることがわかり得る。
【0090】
例4
手順は例1と実質的に同じであったが、中間の皮むきは行わず、ブレーキディスク用の環状炭素繊維プレフォームのスタックとして、穿孔されていないプレフォーム及び図14に示された配置にある穴が穿孔されたプレフォームを含んだ装入物を形成した。穿孔されたプレフォームは、それぞれ46.8cm及び26.7cmの外径及び内径と、3.5cmの厚さと、径が0.5mmの576個の通り穴とを有したローターディスクプレフォームであった。加圧した水の噴射を用い、プレフォームの軸と平行な穴が形成された。
【0091】
図16の曲線Aは、測定された密度が、例2及び3と同じ程度の標準所要時間の緻密化サイクルの終了時に、ディスクの半径に応じて如何に変化したかを示している。比較として、曲線Bは、同じ寸法を有するが穿孔されていないプレフォームから得られたディスクで測定した密度のばらつきを示している。
【0092】
プレフォームの中央部分におけるより高密度の穴は、より高密度のディスク材料をこの部分にて得ることを可能にする一方、穿孔されていないプレフォームから得られたディスクは、プレフォームの中央部分で最小値を持つ強い密度勾配を示すことがわかり得る。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に従う方法の実施における、複合材部品を製造する連続工程を示す図。
【図2】ブレーキディスク用の、穴が形成された環状繊維プレフォームの概略的な斜視図。
【図3】より大きなスケールでの図2の平面III上の部分断面図。
【図4】ブレーキディスク用の環状繊維プレフォームの少なくとも1つの主面に開けられた穴の異なる形態を示す断面図。
【図5】ブレーキディスク用の環状繊維プレフォームの少なくとも1つの主面に開けられた穴の異なる形態を示す断面図。
【図6】ブレーキディスク用の環状繊維プレフォームの少なくとも1つの主面に開けられた穴の異なる形態を示す断面図。
【図7】繊維基材の表面での穴の異なる配置を示す図。
【図8】繊維基材の表面での穴の異なる配置を示す図。
【図9】繊維基材の表面での穴の異なる配置を示す図。
【図10】繊維基材の表面での穴の異なる配置を示す図。
【図11】少なくともブレーキディスク用の環状プレフォームの外縁面に開けられた穴の異なる形態を示す図。
【図12】少なくともブレーキディスク用の環状プレフォームの外縁面に開けられた穴の異なる形態を示す図。
【図13】図2に示した種類のプレフォームを使用して、緻密化、CVI及び最終機械加工後に得られるブレーキディスクを概略的に示す図。
【図14】穴が様々な密度で形成された飛行機ブレーキのローターディスク用の繊維プレフォームの平面図。
【図15】スタックの状態でCVI緻密化オーブン内に装入されたブレーキディスク用の環状繊維プレフォームを非常に概略的に示す図。
【図16】図14のプレフォームを緻密化した後に得られるディスクの密度が、内周及び外周の間で如何にばらついているかと、比較として、類似しているが、穴が形成されていないプレフォームを緻密化した後のディスクにおいて密度が如何にばらついているかとを示す曲線をプロットしたグラフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材を準備することと、前記基材の中でその少なくとも1つの表面から延びた複数の穴を形成することと、少なくとも部分的に化学蒸気浸透式のプロセスによって形成されるマトリックスを用いて前記基材を緻密化させることとを含んだ複合材部品の製造方法であって、
前記複数の穴は、前記基材から繊維材料を繊維の破壊を伴って取り除くことによって前記基材に形成され、複数の穴が提供されたプレフォームにおける繊維の配置は、前記複数の穴が形成される前の最初の配置と比べて、実質的に変化していない方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、前記複数の穴は、加圧した水の噴射を用いた機械加工によって形成される方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法であって、前記複数の穴は、前記プレフォームの前記繊維材料に対しての局所的な熱作用によって形成される方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法であって、前記複数の穴は、レーザー照射の効果の下に形成される方法。
【請求項5】
請求項3又は4記載の方法であって、前記複数の穴は、酸化により繊維材料を除去することによって形成される方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法であって、前記複数の穴は、高速ツールを使用した機械加工によって形成される方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法であって、前記複数の穴は、切り抜きによって形成される方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法であって、前記複数の穴は、放電加工によって形成される方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項記載の方法であって、前記基材は環状プレフォームであり、前記複数の穴は前記プレフォームの主面の少なくとも1つに形成される方法。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れか1項記載の方法であって、前記基材は環状プレフォームであり、複数の穴が前記プレフォームの少なくとも外縁表面に形成される方法。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項記載の方法であって、前記複数の穴は、平均径が0.05mm乃至2mmの範囲にある方法。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項記載の方法であって、前記基材における前記複数の穴の密度は、0.06個/cm2乃至4個/cm2の範囲にある方法。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項記載の方法であって、前記基材における前記複数の穴の密度はばらついている方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法であって、前記基材はブレーキディスク用の環状プレフォームを形成し、複数の穴が、前記プレフォームの前記主面の少なくとも1つに形成され、前記複数の穴の密度は、ばらついており、前記基材の前記ディスクの摩擦トラックに対応する部分と前記基材の内周面及び外周面に隣接した部分との間で減少している方法。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか1項記載の方法であって、互いに隣接する穴の軸間の距離が0.5cm乃至4cmの範囲にある方法。
【請求項16】
複合材部品を製造するための繊維基材(20)であって、前記基材は、前記基材へとその少なくとも1つの表面から延びた複数の穴を含み、
前記基材において、前記基材における前記複数の穴の壁付近での単位体積当たりの繊維の密度は、前記基材における他の部分での単位体積当たりの繊維の密度よりも著しくは大きくない繊維基材。
【請求項17】
請求項16記載の基材であって、前記複数の穴が、繊維が除去された又は破断させられた有限領域によって規定される基材。
【請求項18】
請求項16又は17記載の基材であって、前記複数の穴が0.05mm乃至2mmの範囲にある平均径を有した基材。
【請求項19】
請求項16乃至18の何れか1項記載の基材であって、前記基材における複数の穴の密度が、0.06個/cm2乃至4個/cm2の範囲にある基材。
【請求項20】
請求項16乃至19の何れか1項記載の基材であって、前記基材における複数の穴の密度がばらついている基材。
【請求項21】
ブレーキディスク用の環状プレフォームを形成した請求項20記載の基材であって、前記複数の穴が前記基材の前記主面の少なくとも1つに開けられた基材。
【請求項22】
請求項21記載の基材であって、複数の穴の密度は、ばらついており、前記基材の前記ディスクの摩擦トラックに対応する中央部分と前記基材の内周表面及び外周表面に隣接した部分との間で減少している基材。
【請求項23】
環状プレフォームを形成した請求項16乃至20の何れか1項記載の基材であって、複数の穴が少なくとも前記基材の外縁表面に開けられた基材。
【請求項24】
複合材部品(26)であって、少なくとも部分的に化学蒸気浸透式のプロセスによって緻密化された繊維補強材を具備し、複数の穴(28)が前記部品の中へとその少なくとも1つの表面から延びており、前記繊維補強材が請求項16乃至23の何れか1項記載の基材から形成された複合材部品。
【請求項25】
複合材部品(26)であって、少なくとも部分的に化学蒸気浸透式のプロセスによって緻密化された繊維補強材を具備し、複数の穴(28)が前記部品の中でその少なくとも1つの表面から延びており、
前記穴の壁付近での単位体積当たりの補強繊維の密度が、前記部品の他の部分での単位体積当たりの繊維の密度よりも著しくは大きくない複合材部品。
【請求項1】
繊維基材を準備することと、前記基材の中でその少なくとも1つの表面から延びた複数の穴を形成することと、少なくとも部分的に化学蒸気浸透式のプロセスによって形成されるマトリックスを用いて前記基材を緻密化させることとを含んだ複合材部品の製造方法であって、
前記複数の穴は、前記基材から繊維材料を繊維の破壊を伴って取り除くことによって前記基材に形成され、複数の穴が提供されたプレフォームにおける繊維の配置は、前記複数の穴が形成される前の最初の配置と比べて、実質的に変化していない方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、前記複数の穴は、加圧した水の噴射を用いた機械加工によって形成される方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法であって、前記複数の穴は、前記プレフォームの前記繊維材料に対しての局所的な熱作用によって形成される方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法であって、前記複数の穴は、レーザー照射の効果の下に形成される方法。
【請求項5】
請求項3又は4記載の方法であって、前記複数の穴は、酸化により繊維材料を除去することによって形成される方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法であって、前記複数の穴は、高速ツールを使用した機械加工によって形成される方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法であって、前記複数の穴は、切り抜きによって形成される方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法であって、前記複数の穴は、放電加工によって形成される方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項記載の方法であって、前記基材は環状プレフォームであり、前記複数の穴は前記プレフォームの主面の少なくとも1つに形成される方法。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れか1項記載の方法であって、前記基材は環状プレフォームであり、複数の穴が前記プレフォームの少なくとも外縁表面に形成される方法。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項記載の方法であって、前記複数の穴は、平均径が0.05mm乃至2mmの範囲にある方法。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項記載の方法であって、前記基材における前記複数の穴の密度は、0.06個/cm2乃至4個/cm2の範囲にある方法。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項記載の方法であって、前記基材における前記複数の穴の密度はばらついている方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法であって、前記基材はブレーキディスク用の環状プレフォームを形成し、複数の穴が、前記プレフォームの前記主面の少なくとも1つに形成され、前記複数の穴の密度は、ばらついており、前記基材の前記ディスクの摩擦トラックに対応する部分と前記基材の内周面及び外周面に隣接した部分との間で減少している方法。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか1項記載の方法であって、互いに隣接する穴の軸間の距離が0.5cm乃至4cmの範囲にある方法。
【請求項16】
複合材部品を製造するための繊維基材(20)であって、前記基材は、前記基材へとその少なくとも1つの表面から延びた複数の穴を含み、
前記基材において、前記基材における前記複数の穴の壁付近での単位体積当たりの繊維の密度は、前記基材における他の部分での単位体積当たりの繊維の密度よりも著しくは大きくない繊維基材。
【請求項17】
請求項16記載の基材であって、前記複数の穴が、繊維が除去された又は破断させられた有限領域によって規定される基材。
【請求項18】
請求項16又は17記載の基材であって、前記複数の穴が0.05mm乃至2mmの範囲にある平均径を有した基材。
【請求項19】
請求項16乃至18の何れか1項記載の基材であって、前記基材における複数の穴の密度が、0.06個/cm2乃至4個/cm2の範囲にある基材。
【請求項20】
請求項16乃至19の何れか1項記載の基材であって、前記基材における複数の穴の密度がばらついている基材。
【請求項21】
ブレーキディスク用の環状プレフォームを形成した請求項20記載の基材であって、前記複数の穴が前記基材の前記主面の少なくとも1つに開けられた基材。
【請求項22】
請求項21記載の基材であって、複数の穴の密度は、ばらついており、前記基材の前記ディスクの摩擦トラックに対応する中央部分と前記基材の内周表面及び外周表面に隣接した部分との間で減少している基材。
【請求項23】
環状プレフォームを形成した請求項16乃至20の何れか1項記載の基材であって、複数の穴が少なくとも前記基材の外縁表面に開けられた基材。
【請求項24】
複合材部品(26)であって、少なくとも部分的に化学蒸気浸透式のプロセスによって緻密化された繊維補強材を具備し、複数の穴(28)が前記部品の中へとその少なくとも1つの表面から延びており、前記繊維補強材が請求項16乃至23の何れか1項記載の基材から形成された複合材部品。
【請求項25】
複合材部品(26)であって、少なくとも部分的に化学蒸気浸透式のプロセスによって緻密化された繊維補強材を具備し、複数の穴(28)が前記部品の中でその少なくとも1つの表面から延びており、
前記穴の壁付近での単位体積当たりの補強繊維の密度が、前記部品の他の部分での単位体積当たりの繊維の密度よりも著しくは大きくない複合材部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2008−545894(P2008−545894A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514170(P2008−514170)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050499
【国際公開番号】WO2006/129040
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(502202281)スネクマ・プロピュルシオン・ソリド (48)
【氏名又は名称原語表記】SNECMA PROPULSION SOLIDE
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050499
【国際公開番号】WO2006/129040
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(502202281)スネクマ・プロピュルシオン・ソリド (48)
【氏名又は名称原語表記】SNECMA PROPULSION SOLIDE
【Fターム(参考)】
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