説明

半導体プロセスおよびウエット処理装置

【課題】 ウエット処理時に異種材料接触部で発生する腐食を防ぎ、また、ウエハ上の微小粒子の除去も可能にする半導体プロセスおよびウエット処理装置を提供する。
【解決手段】 ウエハを静電吸着すると共にウエハを回転駆動する下部電極1と、下部電極1に向かって移動可能であると共に注入された薬液を下部電極1に通す上部電極4とを備え、下部電極1と上部電極4との間に電圧を印加しながらウエット処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体製造に用いられる半導体プロセスおよびウエット処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、半導体デバイスのウエットプロセスでは、酸・アルカリをベースとした薬液にウエハを浸漬したり、回転しているウエハ上に薬液を噴出することで、洗浄またはエッチング処理が施されてきた。
【0003】
一方、ウエハ上の粒子の除去では、これまでの基板材料を1nm程度エッチングし粒子を基板からリフトオフし、洗浄液のゼータ電位による反発を利用することで再付着を抑制し、ウエハ表面を清浄化してきた。枚葉式ウエット処理での純水リンス時の場合、静電気が発生することで、Cu配線等の溶解が生じる。この静電気は、超純水が絶縁物であり、ウエハ上にもシリコン酸化膜等の絶縁物質が存在するので、双方の摩擦によって発生する。つまり、枚葉式ウエット処理での純水リンス時の場合には、異種材料の接触にかかわらず、メタル部分が溶解する現象が発生する。こうした静電的な摩擦を抑制するために、導電性のあるリンス水として、還元水を用いることが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】 特開2002−373879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これまでのウエットプロセスには、次の課題がある。つまり、65nm以降の半導体デバイスにおいては、多種メタルが搭載されるようになり、ウエット処理時に、異種材料接触部で腐食の問題が顕在化しつつある。上記の還元水を用いたリンス法も同様である。
【0005】
一方、ウエハ上の微小粒子(粒径50nm以下)の除去も困難を極めている。つまり、65nm以降の先端デバイスにおいては、基板のエッチングロスは<0.2nm以下に抑制し、50nm以下の微小粒子も除去することが要求されているため、現状では解決策がない。なお、70nm以下の微小粒子は、ゼータ電位による反発が利かず、除去が困難である。
【0006】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、ウエット処理時に異種材料接触部で発生する腐食を防ぎ、また、ウエハ上の微小粒子の除去も可能にする半導体プロセスおよびウエット処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、半導体製造工程の洗浄で使用される半導体プロセスにおいて、ウエハに電圧を印加しながらウエット処理することを特徴とする半導体プロセスである。請求項2の発明は、半導体製造工程により配線部を形成する前の工程で、ウエット処理中に光を遮断することを特徴とする半導体プロセスである。請求項3の発明は、ウエハを静電吸着すると共にウエハを回転駆動する第1の電極部と、第1の電極部に向かって移動可能であると共に注入された薬液を第1の電極部に通す第2の電極部とを備え、第1の電極部と第2の電極部との間に電圧を印加しながらウェット処理することを特徴とするウエット処理装置である。請求項4の発明は、請求項3記載のウエット処理装置において、第2の電極部は少なくとも1つの貫通孔を持つことを特徴とする。請求項5の発明は、請求項3または4記載のウエット処理装置において、第1の電極部の側面に密着状態で装着可能な側壁部を備え、第2の電極部は、第1の電極部に装着された側壁部内に移動可能なことを特徴とする。請求項6の発明は、ウエハを静電吸着すると共にウエハを回転駆動する第1の電極部と、第1の電極部に静電吸着されたウエハの端面に接触するブラシ部と、このブラシ部を回転すると共に電圧を印加するための回転軸部とから成る第2の電極部と、第2の電極部のブラシ部に薬液を供給する薬液供給部とを備え、第1の電極部と第2の電極部との間に電圧を印加しながらブラシ部に薬液を注入して、ウエット処理することを特徴とするウエット処理装置である。請求項7の発明は、回転するウエハの端面に接触するブラシ部と、このブラシ部を回転すると共に電圧を印加するための回転軸部とから成る第1の電極部および第2の電極部と、第1の電極部および第2の電極部の少なくとも一方のブラシ部に薬液を供給する薬液供給部とを備え、第1の電極部と第2の電極部との間に電圧を印加しながらブラシ部に薬液を供給して、ウエット処理することを特徴とするウエット処理装置である。請求項8の発明は、請求項3〜7のいずれか1項に記載のウエット処理装置において、半導体製造工程により配線部を形成する前の工程で、ウエット処理中に光を遮断する遮断手段を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明では、ウエット処理装置においてウエハを静電吸着し、正または負の電圧をウエハに印加する。この場合、処理ステップによって印加の正負を制御する。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、ウエハに電圧を印加しながらウエット処理することで、腐食を抑制することができる。また、ウエハに電圧を印加しながらウエット処理することで、微小粒子の除去性能を向上するものである。つまり、本発明の原理は、ウエハの電位を強制的に制御することで、付着粒子を電気的に反発し、再付着を抑制する。また、デバイス構成材料(特にメタル)の腐食電位を緩和し、異種金属間腐食(ガルバニック腐食)を抑制できる。さらに、メタルゲートを使用するフロントエンド工程では、光を遮断することでメタルゲートの腐食を抑制できるため、処理中に光を遮断することも重要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、この発明の各実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0011】
(実施の形態1)
この実施の形態で使用される枚葉式電界ウエット処理装置を図1に示す。図1(a)に示す枚葉式電界ウエット処理装置は、下部電極1と回転軸2とサイドカップ3と上部電極4と薬液注入管5と電圧発生装置6を備えている。円板状の下部電極1には、その一方の面の中心に回転軸2が取り付けられている。下部電極1は回転軸2により回転する。下部電極1の他方の面は、ウエハ101を載せるためのものである。つまり、下部電極1は、ウエハ101を静電吸着し、正または負の電圧をウエハに印加する。下部電極1の側面には、円筒状のサイドカップ3が密着状態で装着可能である。上部電極4は、多数の貫通孔を持つメッシュ状の電極またはパンチングにより貫通孔が空けられた電極である。なお、図1(b)ではパンチングにより貫通孔4Aが空けられた上部電極4を示している。これにより、上部電極4は、薬液注入管5から注入される薬液を、下部電極1に載せられたウエハ101に向けて流す。また、上部電極4はA方向に移動可能である。上部電極4はPtなどで作られている。電圧発生装置6は、下部電極1と上部電極4との間に電圧を印加する。なお、この実施の形態では、下部電極1に対しては回転軸2を介して電圧発生装置6の電圧が印加される。回転する回転軸2と電圧発生装置6との電気的接続には、電圧発生装置6に電気的に接続されたリード線にブラシを用いて回転軸2と接続する方法や、回転軸2を支持する軸受けにリード線を接続する方法などがある。
【0012】
この枚葉式電界ウエット処理装置によれば、処理時は、サイドカップ3でウエハ101上に薬液が盛られる状態となり、上部のメッシュ電極である上部電極4は降下して薬液に接触する。薬液処理後のリンス時には、サイドカップ3の覆いを外し、リンス液を薬液注入管5に注入して処理を行う。電圧発生装置6により印加される、下部電極1と上部電極4との間の印加電圧は、電気分解を生じないように1.8V以下にすることが望ましい。これは、電気分解による気泡の発生を抑制するためである。また、電圧発生装置6を用いて単に直流を印加するだけでなく、処理目的に応じて、直流をベースにした交流を印加してもよい。
【0013】
こうした枚葉式電界ウエット処理装置は次のようにしてエッチングに用いられる。45nm世代以降において、ゲート材料にメタルゲートが搭載されようとしている。ここでは、その候補の例としてTiN膜を図2(a)に示す構造で用いた場合の例を示す。0.5%のDHF溶液で下地のHigh−K膜(HfSiO)の破線円C1に示す部分をエッチング除去する場合、つまり、余分なHigh−K膜を除去するためのウエット処理を行う場合、従来の方式では、poly−Si膜のTiN近傍で破線円C2に示すようなサイドエッチングを生じる。これは、異種材料が接触した状態で薬液に触れるとPoly−Siが(+)極にTiNが(−)極となり、局所電池効果(ガルバニック)腐食が生じるためである。
【0014】
しかし、この実施の形態の枚葉式電界ウエット処理装置を用いて、基板側(Si sub.)に(+)の電位を印加することによって図2(b)に示すようなサイドエッチングを生じることなく、High−K膜のエッチング除去を完了することが可能となる。基板に印加する電位とサイドエッチング量の関係を図3に示す。印加電圧を高めることによって、大幅にサイドエッチング量を抑制できることが分かる。
【0015】
また、処理中に光を遮断することによって、エッチング量を抑制することが可能である。特に、半導体製造工程においてウエハ101に配線部を形成するバックエンドプロセスでは、ガルバニック腐食を抑制するために、光を遮断してウエット処理を施している。これに対して、配線部を形成するまでのフロントエンド工程のウエット処理装置として、積極的に光を遮断した装置はない。しかし、メタルゲートを使用するフロントエンド工程においては、光遮断装置(図示を省略する)により光を遮断することでメタルゲートの腐食を抑制できるため、処理中に光を遮断することも重要である。基板にバイアスを印加していない状態で光を遮断した場合は、1Kルクスの光を照射した場合の1/10にエッチング量を抑制できた。したがって、基板にバイアスする場合は、電圧を抑制ことが可能となる。
【0016】
(実施の形態2)
実施の形態1の枚葉式電界ウエット処理装置を用いた場合に、酸化膜(SiO2)エッチング量の基板印加電圧依存性を図4に示す。DHF(100ppm)によるSiO2膜のエッチング量は、基板の印加電位(負)に対して依存性を持たないが、カチオン系界面活性剤(50ppm)を添加したDHF(100ppm)は、印加電圧とともにエッチング量を抑制できる。これは、カチオン系界面活性剤の親水基(+)が、基板の負電位によってSiO2膜に吸着して表面を保護し、HFイオンによるSiO2膜のエッチングを抑制できるためである。残渣やゴミの溶解にはHFイオンが必要となるが、基板のSiO2膜をエッチングさせたくない場合(45nm世代のゲート酸化膜形成プロセスで必要)には、このように基板バイアスで制御する。洗浄ステップを終了した後、リンスのステップで逆バイアスを印加することにより、吸着していた界面活性剤を効果的に除去することができる。
【0017】
(実施の形態3)
ウエハ上に付着した70nm以下の微小粒子は、これまでの洗浄技術では除去が困難であり、基板のエッチング量を多くするか、もしくは、強力な超音波を併用しなければ除去率を高めることができない。しかし、微細化にともない、基板のエッチング量を抑制する必要があり、また、微細パターンへのダメージ倒壊を抑制する観点から、超音波による洗浄も困難となってきた。このような状況で純水をベースに物理洗浄が試みられているが、微小粒子の除去とダメージ抑制の両立は困難である。
【0018】
そこで、この実施の形態では、実施の形態1の枚葉式電界ウエット処理装置を用い、基板にバイアスを印加している状態で洗浄処理を行う。図5に微小粒子の付着数を示す。図5は、シリカ粒子を用いて浸漬実験し、AFMで特定エリア内の粒子付着数を計測した結果を示している。実施の形態1の枚葉式電界ウエット処理装置を用いて電圧(1.5V)印加をすることによって、微小粒子の付着も抑制できることがわかる。
【0019】
負に帯電したシリカ粒子をウエハから除去する実験において、従来の技術では70nm以下の粒子は除去性能が急激に劣化する。これに対し、実施の形態1の枚葉式電界ウエット処理装置によれば、電圧発生装置6で基板に−1Vのバイアスを印加しながら処理した場合、DHF(1ppm)によって基板から脱離した粒子は、電荷反発によって再付着せずに、粒子除去される。
【0020】
なお、この実施の形態では、枚葉式電界ウエット処理装置のサイドカップ3を外した状態で、基板にバイアスを印加して洗浄処理することも可能である。
【0021】
(実施の形態4)
この実施の形態で使用される枚葉式電界ウエット処理装置を図6に示す。図6の枚葉式電界ウエット処理装置は、下部電極11と回転軸12とベベルブラシ13と薬液注入管14と電圧発生装置15を備えている。この実施の形態による枚葉式電界ウエット処理装置の下部電極11、回転軸12、薬液注入管14および電圧発生装置15は、実施の形態1による枚葉式電界ウエット処理装置の下部電極1、回転軸2、薬液注入管5および電圧発生装置6とそれぞれ同じであるので、これらの説明を省略する。
【0022】
ベベルブラシ13はブラシ部13Aと上部軸電極部13Bで構成されている。上部軸電極部13Bはブラシ部13Aを回転支持する回転軸であり、導電性の材料で造られている。ベベルブラシ13としては、Ptコーティングした金属、または、高濃度にボロンをドーピングしたダイヤモンドをコーティングした金属などが望ましい。上部軸電極部13Bは電圧発生装置15により電圧をマイナスに印加される。なお、上部軸電極部13Bと電圧発生装置15との電気的接続は、実施の形態1で述べたように、回転する回転軸2と電圧発生装置6との電気的接続と同様にする。
【0023】
形状が8の字形のブラシ部13Aは、ウエハ101のベベル(端面)の余分な膜を、上部軸電極部13Bにより回転しながら除去する。ブラシ部13Aには、薬液注入管14から薬液が注入される。ブラシ部13Aの材質にはPVA(ポリビニルアルコール)の多孔質(スポンジ)材などを用い、薬液がブラシ部13Aの内部に染み込む。また、ブラシ部13Aは脱着式で、ベベル処理時のみウエハ101に接触する。なお、ブラシ部13Aの形状としては、8の字形の他にも円筒形など各種の形状がある。
【0024】
この枚葉式電界ウエット処理装置を用いたプロセスによれば、ウエハ101にベベルブラシ13のブラシ部13Aを接触させながら処理する。この場合、ウエハ101もブラシ部13Aも回転させる。電圧発生装置15によりプラスに印加した下部電極11にウエハ101を接触させ、ベベルブラシ13の回転軸(導電性物質)である上部軸電極部13Bをマイナスに印加する。薬液注入管14からの薬液がベベルブラシ13のブラシ部13A内部に染み込み、ベベルブラシ13の上部軸電極部13Bとウエハ101との間で電流が流れる。プラス極となる材料は、イオン化されやすく、溶解が促進される。また、ブラシ部13Aは脱着式であるので、ベベル処理時のみウエハに接触させる。
【0025】
このように、この実施の形態では、ウエハ101のベベル(端面)の余分な膜を、基板に電界を印加しながら除去する。特に、従来の薬液だけでは、溶解が困難な膜に対して、基板に電界を印加しながら希釈薬液で膜を溶解除去する。TaN膜は、図7に示すように50%フッ酸で5nm/min程度しかエッチング速度が得られない。しかし、5%フッ酸を用いた場合のTaN膜のエッチング速度の基板印加電圧依存性(図7)に示すように、電界を印加することで、膜の溶解を促進し、希釈溶液でもエッチングが可能となる。したがって、大幅に薬液の使用量を削減でき、短時間で処理ができる。
【0026】
この実施の形態では、除去する膜としてTaN膜をHF溶液で除去する例を挙げたが、Pt、Ru、TaOなどの金属膜に対しては、塩酸溶液、フッ酸溶液、硫酸溶液などを適用してもよい。金属膜は、上記に限らず、遷移金属、貴金属すべてを対象とする。また、絶縁膜のSiOC、SiCN、BCNなどに対しても有機溶媒を添加したHF溶液を用い、基板に電圧を印加することで、溶解を促進できる。これは、ウエハ基板自身が電極となり、活性酸素が発生するため、膜の溶解を促進できるものと考えられる。
【0027】
この実施の形態による枚葉式電界ウエット処理装置を用いたプロセスの背景は次のとおりである。Cu配線の形成工程において、ウエハのベベル部分に付着した金属膜(Cu膜)は、キャリアケースなどと接触することでクロス汚染を生じるため、ベベル(端面)の金属膜を図8に示すように除去する必要がある。このようなベベルのCu膜除去は、すでに実用化されている。Cu膜は希釈した硫酸酸化水素水溶液などの薬液で容易に溶解除去できるが、TaNなどのバリアメタルは濃厚なHF薬液でしか除去できず、またLowK膜のSiOC組成の膜は容易にエッチングできる薬液がない。ベベルに回り込んだ膜はそのまま残した状態で次工程に進むことになる。
【0028】
このようにベベル部で残膜が積み重なると、密着性不良により剥れを生じる。剥れたゴミはウエハ表面に付着するだけでなく、FOUP内では歯に接触して剥れ下のウエハに落ちて付着し、製品の歩留りを低下させ問題が多発している。これに対して、最近、純水のみを用いて効率的にベベルをケアできるダブルブラシなどが報告され、より清浄化を目指した技術開発が進められているが、難溶解性の膜には対応ができない。しかし、この実施の形態による枚葉式電界ウエット処理装置を用いたプロセスによれば、基板に電界を印加しながら希釈薬液で膜を溶解除去することができる。
【0029】
なお、この実施の形態では、一方のベベルブラシ13に薬液注入管14を設けたが、両方のベベルブラシ13に薬液注入管14を設けてもよい。さらに、ベベルブラシ13および薬液注入管14の設置数は1つ以上であればよい。
【0030】
(実施の形態5)
この実施の形態で使用される枚葉式電界ウエット処理装置を図9に示す。なお、図9では、先に説明した実施の形態4と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。図9(a)の枚葉式電界ウエット処理装置では、実施の形態4の下部電極11の代わりに、ウエハ101を保持する保持台11Aが設けられている。また、2つのベベルブラシ13の代わりに、ブラシ部16Aと軸電極部16Bとから成る陰極用ブラシ16と、ブラシ部17Aと軸電極部17Bとから成る陽極用ブラシ17が設けられている。陰極用ブラシ16は、実施の形態4のベベルブラシ13と同様であるが、この実施の形態では、軸電極部16Bが電圧発生装置15の陰極側に接続されている。また、陽極用ブラシ17はベベルブラシ13と同様であるが、この実施の形態では、軸電極部17Bが電圧発生装置15の陽極側に接続されている。
【0031】
陰極用ブラシ16と陽極用ブラシ17とのブラシ間隔は、図9(b)に示すように、30mm程度の間隔で配置されている。陰極用ブラシ16と陽極用ブラシ17とに電圧を印加することによって、ウエハ101のベベル(端面)に接触する金属をアノード酸化することで溶解させる。ブラシ間隔は5mm〜100mm程度が望ましい範囲であり、その間隔および、ウエハへの接触圧は自由に調整できるものとする。図10は、電圧を5V印加してRu膜およびTaN膜のエッチング速度を測定した結果である。HCl溶液は0.5%以下の低濃度でも十分溶解できることが分かる。
【0032】
RuおよびTaは、Clと錯イオンを形成するため、アノード酸化とともに溶解除去されたと考えられる。また、実用的な膜厚は、20nm以下であることから、Ru膜は1min以内の除去が可能であると言える。電圧発生装置15の電極の極性が一定の場合、溶解したメタル成分でスポンジ、つまり、ブラシ部16Aとブラシ部17Aとが汚染されてくるため、定期的に極性を反転することが可能である。この実験では、希釈塩酸10μLを5秒間隔で滴下し、電圧5Vを印加しているが、滴下間隔、滴下量、印加電圧は、適宜変化させてよい。定電圧ではなく、定電流方式を用いてもよい。滴下する溶液は、塩酸に限らず、硫酸、硝酸などの酸性薬液、アンモニアなどのアルカリ溶液でもよい。また、これらの溶液に過酸化水素水を混合してもよい。ただし、フッ酸は、Si基板を溶解するため避けることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】 この発明の実施の形態1で使用される枚葉式電界ウエット処理装置を示す図であり、図1(a)は枚葉式電界ウエット処理装置を示す部分断面図、図1(b)は下部電極および上部電極を示す斜視図である。
【図2】 エッチングの様子を示す図であり、図2(a)は従来の枚葉式電界ウエット処理装置を用いた場合を示す図、図2(b)はこの発明による枚葉式電界ウエット処理装置を用いた場合を示す図である。
【図3】 基板に印加する電位とサイドエッチング量の関係を示す図である。
【図4】 酸化膜(SiO2)エッチング量の基板印加電圧依存性を示す図である。
【図5】 微粒子の再付着数を示す図である。
【図6】 この発明の実施の形態4で使用される枚葉式電界ウエット処理装置を示す図である。
【図7】 TaN膜のエッチング速度の基板印加電圧依存性を示す図である。
【図8】 ウエハのベベル膜除去処理の説明図である。
【図9】 この発明の実施の形態5で使用される枚葉式電界ウエット処理装置を示す図であり、図9(a)は枚葉式電界ウエット処理装置の構成を示す図、図9(b)はウエハに対するベベルブラシの位置を示す図である。
【図10】 HCl(塩酸)濃度に対するRu膜およびTaN膜の溶解速度の依存性を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1、11 下部電極(第1の電極部)
2、12 回転軸
3 サイドカップ(側壁部)
4 上部電極(第2の電極部)
4A 貫通孔
5 薬液注入管
6、15 電圧発生装置
13 ベベルブラシ(第2の電極部)
14 薬液注入管(薬液供給部)
13A ブラシ部
13B 上部軸電極部
16 陰極用ブラシ(第1の電極部)
16A ブラシ部
16B 軸電極部(回転軸部)
17 陽極用ブラシ(第2の電極部)
17A ブラシ部
17B 軸電極部(回転軸部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造工程の洗浄で使用される半導体プロセスにおいて、
ウエハに電圧を印加しながらウエット処理することを特徴とする半導体プロセス。
【請求項2】
半導体製造工程により配線部を形成する前の工程で、ウエット処理中に光を遮断することを特徴とする半導体プロセス。
【請求項3】
ウエハを静電吸着すると共にウエハを回転駆動する第1の電極部と、
第1の電極部に向かって移動可能であると共に注入された薬液を第1の電極部に通す第2の電極部とを備え、
第1の電極部と第2の電極部との間に電圧を印加しながらウエット処理することを特徴とするウエット処理装置。
【請求項4】
第2の電極部は少なくとも1つの貫通孔を持つことを特徴とする請求項3記載のウエット処理装置。
【請求項5】
第1の電極部の側面に密着状態で装着可能な側壁部を備え、
第2の電極部は、第1の電極部に装着された側壁部内に移動可能なことを特徴とする請求項3または4記載のウエット処理装置。
【請求項6】
ウエハを静電吸着すると共にウエハを回転駆動する第1の電極部と、
第1の電極部に静電吸着されたウエハの端面に接触するブラシ部と、このブラシ部を回転すると共に電圧を印加するための回転軸部とから成る第2の電極部と、
第2の電極部のブラシ部に薬液を供給する薬液供給部とを備え、
第1の電極部と第2の電極部との間に電圧を印加しながらブラシ部に薬液を注入して、ウエット処理することを特徴とするウエット処理装置。
【請求項7】
回転するウエハの端面に接触するブラシ部と、このブラシ部を回転すると共に電圧を印加するための回転軸部とから成る第1の電極部および第2の電極部と、
第1の電極部および第2の電極部の少なくとも一方のブラシ部に薬液を供給する薬液供給部とを備え、
第1の電極部と第2の電極部との間に電圧を印加しながらブラシ部に薬液を供給して、ウエット処理することを特徴とするウエット処理装置。
【請求項8】
半導体製造工程により配線部を形成する前の工程で、ウエット処理中に光を遮断する遮断手段を備えることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載のウエット処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−27133(P2009−27133A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88432(P2008−88432)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(596007142)
【Fターム(参考)】