説明

半導体素子

【課題】特性劣化が小さい半導体素子を提供する。
【解決手段】本発明に係る半導体素子は、基板上に形成されたメサ構造を有する化合物半導体膜1と、化合物半導体膜1上に形成された短絡電極2と、外部との電気的接続を行うための取り出し電極3とを備える。短絡電極2および取り出し電極3は、化合物半導体膜1のメサ部分に接合する。取り出し電極3と化合物半導体膜1のメサ構造の長辺端部との接合面は、(111)面、(1−1−1)面、(−11−1)面、および(−1−11)面に平行な面のうち、少なくとも1つの面に対して−15°〜+15°の範囲であり、(11−1)面、(1−11)面、(−111)面、および(−1−1−1)面に平行な面に対して−15°〜+15°の範囲では、接合部が無いように形成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
以下に、半導体素子の例として、磁電変換素子について説明する。
一般に、磁電変換素子は、素子の入力端子間にバイアスをかけ、周囲の磁界の変化に応じて素子内を流れるキャリアの行路が変化することで、出力端子に起電力が生じたり、素子の抵抗値が変化したりすることで磁界強度の測定を行う素子である。このような磁電変換素子は、強磁性体からなる歯車の回転を検出する検出素子などとして用いられている。
【0003】
磁電変換素子の磁気抵抗効果は、以下の式によって記述することができる。
ΔR/R0∝(μB)2 :低印加磁界時
ΔR/R0∝(μB) :高印加磁界時
ここで、ΔR=RB−R0であり、RBは磁界中での抵抗値、R0は磁界なしでの抵抗値、μは電子移動度、Bは印加磁界である。ΔR/R0は、磁電変換素子の感度に相当し、低磁場中では電子移動度μの2乗に比例し、高磁場中では電子移動度μに比例する。よって、磁電変換素子では、より高い感度(ΔR/R0)を得るために、電子移動度μの高いInSbのバルクや、真空蒸着法により形成した薄膜などが用いられている。
【0004】
磁電変換素子では一般に、基板上に化合物半導体薄膜がミアンダ状に形成され、その上に短絡電極が複数形成されている。また、外部との電気的接続を行うための取り出し電極を備え、この取り出し電極に外部端子を接続することによって、外部との電気的接続が行われる。
【0005】
短絡電極および取り出し電極の構造は、電気抵抗率および取り出し電極のボンディング性を考慮して決定される。多層構造で形成される電極の最上層の電極層には、一般的に、Au、Al、またはCuなどが用いられる。また、最下層の電極層は、化合物半導体薄膜との密着性向上のため、Cr、Ni、Ti、またはPdの単体、もしくはこれらの組み合わせからなる合金とすることが多い。電極を構成する金属が半導体薄膜へ拡散することを防止するという観点からは、最下層の電極層は厚い方が好ましいが、最下層の電極層の厚さが大きい場合、電極の抵抗が大きくなるため、磁電変換素子としての感度が低下してしまう。
【0006】
電極を構成する金属が半導体薄膜へ拡散し、磁電変換素子の特性が変化してしまうという問題の解決方法としては、半導体薄膜と短絡電極とを保護する保護膜を形成する耐熱性樹脂の硬化温度を、280℃以下とすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2003−304009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、高分解能の検出、および、回転媒体の小型化により、磁電変換素子の微細化が要望されている。しかしながら、磁電変換素子の微細化に伴い、化合物半導体の特性変化や電極との接触抵抗変化等の小さな特性変化が、磁電変換素子の特性に大きな影響を及ぼすようになってきた。微細な磁電変換素子においては、前述した特許文献1に記載の方法を用いても特性の劣化が生じてしまい、信頼性の高い磁電変換素子を得るには不十分であった。
【0009】
本発明は、このような問題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、化合物半導体膜への金属の拡散が素子の特性へ与える影響を小さくし、その結果として特性変動を小さくした半導体素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、基板上に形成されたメサ構造を有する化合物半導体膜と、前記化合物半導体膜上に形成された短絡電極と、外部との電気的接続を行うための取り出し電極とを備えた半導体素子であって、前記短絡電極および前記取り出し電極は、前記化合物半導体膜のメサ部分に接合し、前記取り出し電極と前記化合物半導体膜の前記メサ構造の長辺端部との接合面は、(111)面、(1−1−1)面、(−11−1)面、および(−1−11)面に平行な面のうち、少なくとも1つの面に対して−15°〜+15°の範囲であり、(11−1)面、(1−11)面、(−111)面、および(−1−1−1)面に平行な面に対して−15°〜+15°の範囲では、接合部が無いように形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の半導体素子であって、前記化合物半導体膜の前記メサ構造の上面が(100)面に平行な面であり、前記取り出し電極と前記化合物半導体膜の前記メサ構造の前記長辺端部との前記接合面は、(111)面または(1−1−1)面に平行な面に対して−15°〜+15°の範囲であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の半導体素子であって、前記化合物半導体膜が、InaAlbGa(1-a-b)AsxSb(1-x)(0≦a≦1、0≦b<1、0≦a+b≦1、0≦x≦1)からなることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体素子であって、前記短絡電極および前記取り出し電極が、Auの単体もしくはAuの合金からなる単層または多層で構成されることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の半導体素子であって、前記短絡電極および前記取り出し電極の最下層がTiであり、前記Tiの厚さが10〜200nmであることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体素子であって、前記半導体素子が、ホール素子または磁気抵抗素子であることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の半導体素子であって、前記化合物半導体膜の短辺の長さが5μmから150μmであり、同一の前記化合物半導体膜における前記短絡電極間の距離が0.5μmから30μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、微細な磁電変換素子においても特性変動が小さい半導体素子を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、複数の図面において同一の符号は同一物を表し、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る磁電変換素子を示す。より具体的には、図1(a)は、磁電変換素子の構造を示し、図1(b)は、この磁電変換素子に関する面方位を示す。
【0020】
この磁電変換素子は、絶縁基板上でミアンダ状に形成された、抵抗値が磁界によって変化する化合物半導体膜1から成る感磁部と、化合物半導体膜上に形成された複数の短絡電極2とを備える。また、外部との電気的接続を行うための取り出し電極3を備え、この取り出し電極3に外部端子を接続することによって、外部との電気的接続が行われる。
【0021】
磁電変換素子の感磁部を構成する化合物半導体は、InSbやInAsのバルク、あるいは、InSb、InAs、またはInaAlbGa(1-a-b)AsxSb(1-x)(0≦a+b≦1、0≦x≦1)からなる薄膜であることが好ましいが、本発明においては、化合物半導体であれば良く、その構成元素を限定するものではない。化合物半導体膜の膜厚は通常、0.1〜4μmであるが、好ましくは0.2〜2μmであり、さらに好ましくは0.3〜1.5μmである。また、Siや、Sn、S、Se、Te、Ge、またはCなどの不純物をドープしたものであっても良い。
【0022】
化合物半導体が薄膜である場合、薄膜を形成する方法としては、真空蒸着法や分子線エピタキシー(MBE)法などが好ましいが、必ずしもこれらの形成方法でなくても良い。取り出し電極3や短絡電極2は、蒸着法、スパッタ法、またはめっき法などを用いて形成され、Cu、Al、Au単層、または、Ti/Au、Ni/Au、Cr/Cu、Cu/Ni/Au、Ti/Au/Ni、Cr/Au/Ni、Cr/Ni/Au/Ni、Ti/Pt/Au、NiCr/Auの積層などとしても良い。例えばTi/Auの場合、Tiが下層であり、Auが上層である。また、取り出し電極3と短絡電極2は、必ずしも同じ電極構造でなくても良い。
【0023】
なお、電極層がTi/Auの場合、Ti層を厚くすることでAuの化合物半導体への拡散を小さくすることができるが、その反面、抵抗値が大きくなり、磁電変換素子としての感度が低下してしまう。本発明においては電極層の厚さを規定するものではないが、多層で形成された電極の場合、下層の厚さ、例えばTi/Auの場合のTi層の厚さは通常、5〜400nmであるが、好ましくは10〜300nmであり、さらに好ましくは10〜200nmである。
【0024】
また、化合物半導体を保護する保護膜の材料は、一般的には絶縁性無機質材料であることが好ましい。保護膜には、例えば、窒化シリコンや酸化ケイ素等の薄膜を、プラズマCVD法等により150〜500nm程度形成したものが用いられるが、本発明においては、保護膜の有無、種類、および膜厚を規定するものではない。
【0025】
また、素子外部に形成されるモールド樹脂による化合物半導体や電極への圧力や面内応力を緩和する目的で、化合物半導体および短絡電極上を覆うように軟樹脂層が形成されることが多い。この軟樹脂層には、一般的に、1〜300μmのシリコン系樹脂や、1〜10μm厚のゴム系樹脂が用いられるが、本発明においては、軟樹脂層の有無、種類、および膜厚を規定するものではない。
【0026】
また、化合物半導体をエッチングして得られた幅(電流に直交する方向の化合物半導体感磁部の幅)をWとし、短絡電極間の距離(素子長)をLとした場合、L/Wを形状因子と呼ぶ。本発明においては、形状因子L/Wを限定するものではないが、L/W=0.1から0.3が用いられることが多い。通常、電流に直交する方向の化合物半導体感磁部の幅W(化合物半導体の短辺の長さ)は、5μmから500μmであり、より好ましくは5μmから150μmであり、さらに好ましくは15μmから130μmである。また、同一の化合物半導体感磁部における短絡電極間の距離(素子長)Lは、通常0.5μmから100μmであり、より好ましくは0.5μmから30μmであり、さらに好ましくは5μmから30μmである。
【0027】
なお、本発明に係る半導体素子は、ホール素子または磁気抵抗素子であってもよい。
【0028】
次に、本発明の一実施形態に係る磁電変換素子の作製方法について説明する。
【0029】
図2(a)〜(d)は、3端子の磁電変換素子の作製プロセスフローを示す図である。作製プロセスには、通常のフォトグラフィーの技術を用いることができる。また、図3および図4は、化合物半導体端部における、化合物半導体のメサ構造と電極との接合部の構造を示す図である。より具体的には、図3は、化合物半導体のメサ構造上面が(100)面に平行な面である構造を示し、図4は、全ての方位を記載したものである。
【0030】
図2(a)に示されるように、初めに、化合物半導体に感磁部のパターンを露光・現像し、その後、塩酸・過酸化水素系のエッチング液で所望の形状にメサエッチングして、基板6上に化合物半導体膜1を形成する。化合物半導体のメサ構造は、メサ構造上面に平行な面が(100)面である閃亜鉛鉱構造である。電極とメサ構造長辺端部との接合面は、(111)面または(1−1−1)面に平行な面に対して−15°〜+15°の範囲であり、(11−1)面、(1−11)面、(−111)面、および(−1−1−1)面に平行な面に対して、−15°〜+15°の範囲では接合部が無いようにパターン形成される。本実施形態では、(100)面である化合物半導体を例に説明しているが、(100)面に限らず、電極と化合物半導体との接合部が等価な面に感磁部のパターンが形成された磁電変換素子であれば良い。この場合、電極とメサ構造長辺端部との接合面は、(111)面、(1−1−1)面、(−11−1)面、または(−1−11)面に平行な面のうち、少なくとも1つの面に対して−15°〜+15°の範囲にある。
【0031】
電極を構成するAuなどの金属の、化合物半導体への拡散速度は、面方位によって異なり、(111)面、(1−1−1)面、(−11−1)面、および(−1−11)面では遅く、(11−1)面、(1−11)面、(−111)面、および(−1−1−1)面では速い。すなわち、(11−1)面、(1−11)面、(−111)面、および(−1−1−1)面に対して、−15°〜+15°の範囲では接合部が無いようにパターン形成することで、特性変動を小さくすることができる。感磁部のパターンの形成方法は、ドライ方式でも良く、塩酸・過酸化水素系以外のエッチング液を用いてもよい。
【0032】
図3に示されるように、化合物半導体膜の感磁部の端部と、化合物半導体膜表面との成す角θは、通常、90°から150°である。より好ましくは、90°から135°であり、さらに好ましくは110°から135°である。
【0033】
次いで、図2(b)に示されるように、窒化シリコン膜からなる保護膜4を、プラズマCVD法により感磁部上に形成する。
【0034】
次いで、図2(c)に示されるように、短絡電極2を形成する部分の保護膜4を、短絡電極2を形成する部分よりも狭い範囲で反応性イオンエッチング装置を用いて除去した後、短絡電極2および取り出し電極3を形成する。
【0035】
最後に、図2(d)に示されるように、磁電変換素子の感磁部面上に、軟樹脂層5を形成する。
【0036】
このようにして、3つの端子電極(取り出し電極)を有し、各端子電極間に複数の短絡電極を有する3端子構成の磁電変換素子を、フォトリソグラフィーを応用して作成することができる。
【0037】
なお、本実施形態では、3端子の磁電変換素子を用いて説明を行ったが、本発明においては、端子数を規定するものではなく、例えば4端子であっても良い。また、化合物半導体は閃亜鉛鉱構造の化合物半導体であればよく、バルクであっても良い。また、電極を形成した後に保護膜を形成しても良く、保護膜の種類は窒化シリコンでなくても良い。保護膜を除去する方法は、反応性イオンエッチングではなく、他のドライエッチングやウエットエッチング方式であっても良い。また、端子電極と短絡電極は2度に分けて形成しても良い。
【0038】
以下に、本発明について、実施例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
まず、厚さ0.63mmの半絶縁性GaAs単結晶基板の(100)面上に、分子線エピタキシー法を用いてSnドープInSb薄膜をエピタキシャル成長させた。成膜したInSbの厚さは1μmであり、電気特性を公知のファンデルポー法で測定したところ、電子濃度は7×1016/cm3、電子移動度は、40000cm2/Vsであった。
【0040】
次に、GaAs基板上に成膜したInSbの表面にフォトレジストを均一に塗布し、露光・現像した後に、塩酸・過酸化水素系のエッチング液でメサエッチングした。このとき、感磁部に電流が流れる向き、すなわち化合物半導体感磁部の長辺方向が、(011)面に垂直となる向きに感磁部を形成した。その上に、保護膜として、窒化シリコン薄膜をプラズマCVD法で150nm形成した。その後、再度フォトレジストを塗布した後に、短絡電極および取り出し電極を形成する部分の保護膜を、反応性イオンエッチング装置を用いて除去した。続いてフォトレジストを塗布して、短絡電極および取り出し電極を形成するための露光・現像を行い、真空蒸着法で電極を蒸着し、リフトオフ法で短絡電極および取り出し電極を形成した。電極厚は、Ti/Au=50nm/450nmとした。1層目のTiを形成後、真空中で引き続き2層目のAuを形成した。次に、モールド樹脂による圧力や面内応力を緩和するために、感磁部面上にゴム系樹脂を形成した。
【0041】
このようにして、化合物半導体膜を感磁部とし、半導体感磁部の列が1素子あたり8列であり、端子電極間に複数の短絡電極を有する4端子の磁電変換素子を複数製作した。なお、図5に示される短絡電極間の距離7は4μm、化合物半導体膜のメサ構造端部の電極との接合面と、化合物半導体膜表面との成す角度θは、117°であった。(111)面あるいは(1−1−1)面からのずれは、約8°であった。電流に直交する方向、すなわち化合物半導体感磁部短辺の幅Wは56μmであり、同一の化合物半導体感磁部における短絡電極間の距離(素子長)Lは11μmであった。
【0042】
続いて裏面研削によって、GaAs基板を所定の厚さに研磨し、リードフレーム上に接着剤で接着した後に、プラスチックパッケージでモールドした。特性変化を評価するため、加速試験として121℃2atm100%のPCT試験を行った。36素子試験を行い、試験300時間で中点電位の変動量σが3.0mV(印加電圧5V)となり、変動量が小さく良い結果となった。
【0043】
(比較例1)
(01−1)面に垂直に電流が流れる向きに感磁部を形成したことを除けば、実施例1と同様にして磁電変換素子を作成した。これは、実施例1の化合物半導体感磁部を(100)面上で90°回転させたことに相当する。化合物半導体膜のメサ構造端部の電極との接合面と、化合物半導体膜表面との成す角度θは、132°であった。(1−11)面あるいは(11−1)面からのずれは、約7°であった。また、電極厚は、Ti/Au=50nm/450nmであった。電流に直交する方向、すなわち化合物半導体感磁部短辺の幅Wは56μmであり、同一の化合物半導体感磁部における短絡電極間の距離(素子長)Lは11μmであった。この素子の特性変化を評価するため、実施例1の素子に対する試験と同様の試験を行った結果、中点電位の変動量σは16.0mV(印加電圧5V)であった。電流が流れる向きを(011)面に垂直方向となるように感磁部を形成した実施例1では、中点電位の変動量σが3.0mV(印加電圧5V)であったのに対し、変動量が大きい結果となった。
【0044】
(実施例2)
電極厚をTi/Au=100nm/450nmとしたことを除けば、実施例1と同様に磁電変換素子を作成した。電流に直交する方向の化合物半導体感磁部の幅Wは54μmであり、同一の化合物半導体感磁部における短絡電極間の距離(素子長)Lは11μmであった。この素子の特性変化を評価するため、実施例1の素子に対する試験と同様の試験を行った結果、中点電位の変動量σが1.2mV(印加電圧5V)となり、変動量が小さく良い結果となった。
【0045】
(実施例3)
電流に直交する方向の化合物半導体感磁部の幅Wは120μmであり、同一の化合物半導体感磁部における短絡電極間の距離(素子長)Lは24μmであり、短絡電極間の距離7が12μmであることを除けば、実施例2と同様にして磁電変換素子を作成した。また、電極厚はTi/Au=100nm/450nmであった。この素子の特性変化を評価するため、実施例1の素子に対する試験と同様の試験を行った結果、中点電位の変動量σが1.3mV(印加電圧5V)となり、変動量が小さく良い結果となった。
【0046】
(実施例4)
半導体感磁部の数が16列であることを除けば、実施例3と同様にして磁電変換素子を作成した。電流に直交する方向の化合物半導体感磁部の幅Wは120μmであり、同一の化合物半導体感磁部における短絡電極間の距離(素子長)Lは24μmであり、短絡電極間の距離7は12μmであった。また、電極厚はTi/Au=100nm/450nmであった。この素子の特性変化を評価するため、実施例1の素子に対する試験と同様の試験を結果、中点電位の変動量σが2.3mV(印加電圧5V)となり、変動量が小さく良い結果となった。
【0047】
このように、本発明によると、特性劣化が小さい半導体素子を提供することが可能となる。すなわち、取り出し電極間を接続する配線と、化合物半導体との接合部において、接合面の面方位を制御することにより、素子の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る磁電変換素子を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る磁電変換素子の作製プロセスフローを示す図である。
【図3】化合物半導体端部における、化合物半導体のメサ構造と電極との接合部の構造を示す図である。
【図4】化合物半導体端部における、化合物半導体のメサ構造と電極との接合部の構造を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る磁電変換素子の一部を拡大した図である。
【符号の説明】
【0049】
1 化合物半導体膜
2 短絡電極
3 取り出し電極
4 保護膜
5 軟樹脂層
6 基板
7 短絡電極間の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたメサ構造を有する化合物半導体膜と、前記化合物半導体膜上に形成された短絡電極と、外部との電気的接続を行うための取り出し電極とを備えた半導体素子であって、
前記短絡電極および前記取り出し電極は、前記化合物半導体膜のメサ部分に接合し、
前記取り出し電極と前記化合物半導体膜の前記メサ構造の長辺端部との接合面は、(111)面、(1−1−1)面、(−11−1)面、および(−1−11)面に平行な面のうち、少なくとも1つの面に対して−15°〜+15°の範囲であり、(11−1)面、(1−11)面、(−111)面、および(−1−1−1)面に平行な面に対して−15°〜+15°の範囲では、接合部が無いように形成されたことを特徴とする半導体素子。
【請求項2】
前記化合物半導体膜の前記メサ構造の上面が(100)面に平行な面であり、前記取り出し電極と前記化合物半導体膜の前記メサ構造の前記長辺端部との前記接合面は、(111)面または(1−1−1)面に平行な面に対して−15°〜+15°の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記化合物半導体膜が、InaAlbGa(1-a-b)AsxSb(1-x)(0≦a≦1、0≦b<1、0≦a+b≦1、0≦x≦1)からなることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記短絡電極および前記取り出し電極が、Auの単体もしくはAuの合金からなる単層または多層で構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体素子。
【請求項5】
前記短絡電極および前記取り出し電極の最下層がTiであり、前記Tiの厚さが10〜200nmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の半導体素子。
【請求項6】
前記半導体素子が、ホール素子または磁気抵抗素子であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体素子。
【請求項7】
前記化合物半導体膜の短辺の長さが5μmから150μmであり、同一の前記化合物半導体膜における前記短絡電極間の距離が0.5μmから30μmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−93213(P2010−93213A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264545(P2008−264545)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】