説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】ゲルマニウムの拡散を防止する層を設けることで、シリコン・ゲルマニウム層中のゲルマニウムが必要以上に拡散するのを防止することを可能とする。
【解決手段】ゲート電極115にシリコン・ゲルマニウム層132を有するPチャネルトランジスタとゲート電極114にシリコン・ゲルマニウム層132を有するNチャネルトランジスタとを備えた半導体装置であって、前記ゲート電極は、前記シリコン・ゲルマニウム層132と、前記各シリコン・ゲルマニウム層上に形成したシリコン層133との積層構造からなり、前記各シリコン層133中にゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層134が形成されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン・ゲルマニウム層を含む半導体装置においてシリコン・ゲルマニウム層のゲルマニウムの拡散を防止することが容易な半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
pチャネルMOSFET(Metal Oxide Silicon Field Effect Transistor)のゲートの空乏化を抑制する観点から、ゲート電極中のホウ素の不純物固溶限が大きいシリコン・ゲルマニウム(SiGe)層を用いたゲート電極構造が有望とされている(例えば、特許文献1参照。)。これは、ゲート電極中のホウ素が、より多く実効不純物として振舞うためである。
【0003】
しかしながら、ゲート電極中のゲルマニウム(Ge)はデバイス特性に色々な影響を及ぼすため、ゲルマニウムをゲート電極中に制御性良く分布させることが課題となる。
【0004】
従来のトランジスタ形成プロセスでは、不純物活性化のための熱工程がゲルマニウムを拡散させ、所望のプロファイルからずれるという問題があった。そこで、ゲルマニウムを含む層はゲート電極表面近傍からは遠ざけるように配置することが好ましい。この理由は、ゲルマニウムがゲート電極の表面近傍に存在すると、表面のシート抵抗を下げる金属膜(例えばシリサイド膜)を形成する際に、ゲルマニウムがシリサイド化反応の阻害要因として働き、高抵抗金属膜ができるためである。高シート抵抗の金属膜が形成されると、駆動電流の低下につながるという問題となる。
【0005】
また、pチャネルMOSFETのゲート空乏化を抑制する観点から、ゲート近傍のホウ素の固溶限を高めたいため、ゲート絶縁膜近傍にはホウ素の固溶限を高くできるゲルマニウムを留めておくことが好ましい。ゲート絶縁膜近傍にゲルマニウムを留めることができれば、ゲート空乏化が抑制され、反転正孔密度を高くすることができ、駆動電流も高く得られる。ゲルマニウムの拡散を防止することが以上の2点より問題となっていた。
【0006】
また、シリコン・ゲルマニウム層中のゲルマニウムをゲート絶縁膜近傍に留める手法として、ゲート電極に用いるシリコン・ゲルマニウム層を成膜した後にアモルファスシリコンおよびアモルファスシリコン・ゲルマニウムを中間層として導入する技術が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。この非特許文献1では、結晶構造の異なる積層構造をとるが、熱処理後に各結晶構造は変化するため、ゲート電極中のボロンやゲルマニウムの上方拡散が抑制できない点や、シリサイド反応が電極上部だけに留まらず、抑制できずに下部まで進行する、等の問題が懸念される。そこで、熱処理による積層構造の結晶構造が変化しても、不純物の拡散を抑制する技術が必要であった。
【0007】
【特許文献1】特開2001−320045号公報
【非特許文献1】Hwa Sung Rhee, Jung Il Lee, Sang Su Kim, Geum Jung Bae, Nae-In Lee, Do Hyung Kim, Jung In Hong, Ho-Kyu Kang and Kwang Pyuk Suh 「A New Double-Layered Structure for Mass-Production-Worthy CMOSFETs with Poly-SiGe Gate」IEEE 2002 Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、不純物活性化のための熱工程によりゲルマニウムが拡散して所望の不純物プロファイルからずれるため、ゲート電極表面に低抵抗化のために形成した金属膜(例えばシリサイド膜)を形成する際に高抵抗になる点や、ゲルマニウムがゲート絶縁膜から遠ざかることによりゲート空乏化を抑制することができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1半導体装置は、ゲート電極にシリコン・ゲルマニウム層を有するPチャネルトランジスタとゲート電極にシリコン・ゲルマニウム層を有するNチャネルトランジスタとを備えた半導体装置であって、前記ゲート電極は、前記シリコン・ゲルマニウム層と、前記各シリコン・ゲルマニウム層上に形成したシリコン層との積層構造からなり、前記各シリコン層中にゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層が形成され、前記Pチャネルトランジスタのゲート電極中におけるゲルマニウム濃度プロファイルのピーク値は、前記Nチャネルトランジスタのゲート電極中におけるゲルマニウム濃度プロファイルのピーク値よりもゲート絶縁膜側に位置することを最も主要な特徴とする。
【0010】
本発明の第2半導体装置は、ゲート電極にシリコン・ゲルマニウム層を有するPチャネルトランジスタとゲート電極にシリコン・ゲルマニウム層を有するNチャネルトランジスタとを備えた半導体装置であって、前記ゲート電極は、前記シリコン・ゲルマニウム層と、前記各シリコン・ゲルマニウム層上に形成したシリコン層との積層構造からなり、前記各シリコン層中にゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層が形成され、前記Pチャネルトランジスタのシリコン・ゲルマニウム層は前記Nチャネルトランジスタのシリコン・ゲルマニウム層よりも薄く形成されていることを最も主要な特徴とする。
【0011】
本発明の半導体装置の第1製造方法は、Pチャネルトランジスタのゲート電極およびNチャネルトランジスタのゲート電極にシリコン・ゲルマニウム層を有する半導体装置の製造方法において、前記各シリコン・ゲルマニウム層上にシリコン層を形成する工程と、前記シリコン層を成膜中にゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層を形成する工程とを備え、前記Pチャネルトランジスタのゲート電極中におけるゲルマニウム濃度プロファイルのピーク値を、前記Nチャネルトランジスタのゲート電極中におけるゲルマニウム濃度プロファイルのピーク値よりもゲート絶縁膜側に位置させることを最も主要な特徴とする。
【0012】
本発明の半導体装置の第2製造方法は、Pチャネルトランジスタのゲート電極およびNチャネルトランジスタのゲート電極にシリコン・ゲルマニウム層を有する半導体装置の製造方法において、前記各シリコン・ゲルマニウム層上にシリコン層を形成する工程と、前記シリコン層を成膜中にゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層を形成する工程とを備え、前記Pチャネルトランジスタのシリコン・ゲルマニウム層と前記拡散防止層との間に形成する前記シリコン層を、前記Nチャネルトランジスタのシリコン・ゲルマニウム層と前記拡散防止層との間に形成する前記シリコン層よりも薄く形成することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の各半導体装置は、シリコン・ゲルマニウム層に近接するシリコン層中にゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層を形成したため、拡散防止層がシリコン・ゲルマニウム層中のゲルマニウムの拡散を防止するので、シリコン・ゲルマニウム層中のゲルマニウムがシリコン層に形成された拡散防止層よりも外側に拡散されなくなるという利点がある。例えば、シリコン・ゲルマニウム層およびシリコン・ゲルマニウム層に近接するシリコン層を、シリコン・ゲルマニウム層とシリコン層との積層構造で形成し、その積層構造をゲートに用いることにより、拡散防止層がシリコン・ゲルマニウム層中のゲルマニウムの拡散を防止するので、シリコン層の表層にゲルマニウムが拡散しなくなるという利点がある。これにより、シリコン層の表層にゲート低抵抗化のための金属層、例えば金属シリサイド層を形成することが可能になる。また拡散防止層よりシリコン・ゲルマニウム層中のゲルマニウムの拡散を防ぐことにより、シリコン・ゲルマニウム層中のゲルマニウム濃度の低下が抑制され、これによりシリコン・ゲルマニウム層の下層における不純物の固溶を高めることができるので、このような積層構造をゲートに用いることで空乏化を抑制したゲートになるという利点がある。
【0014】
さらに、第2半導体装置では、Pチャネルトランジスタのシリコン・ゲルマニウム層はNチャネルトランジスタのシリコン・ゲルマニウム層よりも薄く形成されていることから、Pチャネルトランジスタの拡散防止膜はゲート絶縁膜により近づけて形成されるので、ゲート絶縁膜近傍にホウ素の固溶限を高くできるゲルマニウムを留めておくことができる。このため、ゲート空乏化が抑制でき、反転正孔密度を高くすることができ、駆動電流も高く得られる。
【0015】
本発明の半導体装置の各製造方法は、シリコン・ゲルマニウム層に近接するシリコン層を成膜中にゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層を形成する工程を備えたため、拡散防止層によってシリコン・ゲルマニウム層中のゲルマニウムの拡散を防止することができるようになるので、シリコン・ゲルマニウム層中のゲルマニウムがシリコン層に形成された拡散防止層よりも外側に拡散されなくなるという利点がある。例えば、シリコン・ゲルマニウム層およびシリコン・ゲルマニウム層に近接するシリコン層を、シリコン・ゲルマニウム層とシリコン層との積層構造に形成し、その積層構造をゲートに用いることにより、拡散防止層がシリコン・ゲルマニウム層中のゲルマニウムの拡散を防止するのでシリコン層の表層にゲルマニウムが拡散しなくなるという利点がある。これにより、シリコン層の表層にゲート低抵抗化のための金属層、例えば金属シリサイド層を形成することが可能になる。また拡散防止層がシリコン・ゲルマニウム層中のゲルマニウムの拡散を防ぐことにより、シリコン・ゲルマニウム層中のゲルマニウム濃度の低下が抑制され、これによりシリコン・ゲルマニウム層の下層における不純物の固溶を高めることができるので、このような積層構造をゲートに用いることにより、空乏化を抑制したゲートを構成することができるという利点がある。
【0016】
さらに、半導体装置の第2製造方法では、シリコン・ゲルマニウム層よりゲルマニウムが拡散されるものでPチャネルトランジスタのシリコン・ゲルマニウム層と拡散防止層との間に形成するシリコン層を、シリコン・ゲルマニウム層よりゲルマニウムが拡散されるものでNチャネルトランジスタのシリコン・ゲルマニウム層と拡散防止層との間に形成するシリコン層よりも薄く形成するので、ゲルマニウムが拡散されて実質的にシリコン・ゲルマニウム層となるシリコン層も含めたシリコン・ゲルマニウム層は、NチャネルトランジスタよりもPチャネルトランジスタのほうが薄く形成される。したがって、Pチャネルトランジスタの拡散防止膜をゲート絶縁膜により近づけて形成できるので、ゲート絶縁膜近傍にホウ素の固溶限を高くできるゲルマニウムを留めておくことができる。よって、ゲート空乏化が抑制でき、反転正孔密度を高くすることができ、駆動電流も高く得られるPチャネルトランジスタを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
シリコン・ゲルマニウム層を有する半導体装置において、シリコン・ゲルマニウム層中のゲルマニウムが必要以上に拡散するのを防止するという目的を、例えばシリコン・ゲルマニウム層とシリコン・ゲルマニウム層に近接するシリコン層が、シリコン・ゲルマニウム層上にシリコン層を積層して形成された積層構造の場合、シリコン層を成膜中にゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層を形成することで実現した。
【実施例1】
【0018】
本発明の第1半導体装置に係る一実施例を、図1の概略構成断面図によって説明する。図1では、一例として、PチャネルトランジスタとしてのPMOSトランジスタとNチャネルトランジスタとしてのNMOSトランジスタとを形成したCMOSトランジスタについて説明する。
【0019】
図1に示すように、半導体基板111にPMOSトランジスタの形成領域とNMOSトランジスタの形成領域とを分離する素子分離領域112が形成されている。上記半導体基板111上にはゲート絶縁膜113が形成されている。上記ゲート絶縁膜113上のNMOSトランジスタの形成領域にはゲート電極114が形成され、上記ゲート絶縁膜113上のPMOSトランジスタの形成領域にはゲート電極115が形成されている。上記ゲート電極114、115は、例えば下層より、シリコン・ゲルマニウム層132、シリコン層133の積層構造で形成されている。上記シリコン層133中には、その成膜中に形成したものでゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層134が形成されている。そのため、シリコン・ゲルマニウム層132中のゲルマニウムは、シリコン層133の下層部分には拡散され、実質的に拡散防止層134より下層はゲルマニウムを含むシリコン層、すなわち、シリコン・ゲルマニウム層となっている。
【0020】
上記半導体基板111のNMOSトランジスタの形成領域には、ゲート電極114側に、上層にエクステンション領域116、下層にポケット領域118を介して、ソース・ドレイン領域120が形成され、他方側には上層にエクステンション領域117、下層にポケット領域119を介して、ソース・ドレイン領域121が形成されている。同様に、上記半導体基板111のPMOSトランジスタの形成領域には、ゲート電極115側に、上層にエクステンション領域122、下層にポケット領域124を介して、ソース・ドレイン領域126が形成され、他方側には上層にエクステンション領域23、下層にポケット領域125を介して、ソース・ドレイン領域127が形成されている。
【0021】
ここで、拡散防止層134の形成位置、膜厚等について、図2のゲルマニウムの濃度プロファイルを示したゲート電極の拡大断面図によって説明する。図2(1)はPMOSトランジスタのゲート電極を示し、図2(2)はNMOSトランジスタのゲート電極を示した図面である。なお、図面中のゲルマニウム(Ge)の濃度プロファイルは矢印方向に向かって濃度が高くなっている。
【0022】
図2(1)に示すように、NMOSトランジスタ領域では、半導体基板(シリコン基板)111上にゲート絶縁膜113、ゲート電極114が形成されている。このゲート電極114は、下層よりシリコン・ゲルマニウム層132、シリコン層(キャップシリコン層ともいう)133を積層した構造からなり、シリコン層133中にはゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層134が形成されている。NMOSトランジスタの場合、リン、ヒ素のようなN型不純物にとっては固溶限界が低くなるゲルマニウムは、ゲート絶縁膜113から遠ざけることが好ましい。すなわち、ゲルマニウム濃度は図示したように、シリコン層133側に濃度分布のピークが位置するようにすることが好ましい。しかしながら、NMOSトランジスタのゲート電極114は、通常、低抵抗化のため、シリコン層133の上部に金属を含む層(例えば金属シリサイド層)(図示せず)が形成される。その際、ゲルマニウムが金属シリサイド層の形成領域に存在すると、高抵抗な膜となってしまうため、ゲルマニウムをシリコン層133の表層近くに存在させることは好ましくない。以上の観点から、上記拡散防止層134は、シリコン層133中に設けられている。
【0023】
一方、図2(2)に示すように、PMOSトランジスタ領域では、半導体基板(シリコン基板)111上にゲート絶縁膜113、ゲート電極115が形成されている。このゲート電極115は、下層よりシリコン・ゲルマニウム層132、シリコン層(キャップシリコン層ともいう)133を積層した構造からなり、シリコン層133中にはゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層134が形成されている。PMOSトランジスタの場合、ゲルマニウム濃度は図示したように、ゲート絶縁膜113側に近いシリコン・ゲルマニウム層132部分に濃度分布のピークが位置するようにすることが好ましい。つまり、PMOSトランジスタのゲート電極115は、ホウ素が固溶されるため、ホウ素の固溶源の高いゲルマニウムをゲート絶縁膜113側に近づけることが好ましい。これにより、ゲートの空乏化を抑制することができる。
【0024】
以上の観点から、拡散防止層134は、シリコン・ゲルマニウム層132上のシリコン層133中に設けることが好ましい。もし、拡散防止層134をシリコン層133の表層に設けた場合には、シリコン層133の表層に低抵抗化のための金属層(例えば金属シリサイド層)を形成することができなくなり、ゲート電極の低抵抗化が図れないという問題が発生する。また、シリコン・ゲルマニウム層132とシリコン層133との界面に設けたの場合には、NMOSトランジスタにおいて、ゲルマニウムの濃度ピークがゲート絶縁膜113に近づきすぎて、リン、ヒ素等のn型不純物の固溶が低下するという問題が発生する。
【0025】
上記拡散防止層134は、ゲルマニウムの拡散を防止する材料で形成された膜であればよく、例えば窒化膜、酸化膜、窒化酸化膜等で形成される。例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜等で形成される。
【0026】
次に、上記拡散防止層134の膜厚について図3に示すモデル図によって説明する。
【0027】
図3に示すように、ゲート絶縁膜113の容量をCox、ゲート空乏化によるゲート空乏容量(主にシードシリコン層として形成されるシリコン層131の容量。なお、このシリコン層131は、ソース・ドレイン領域、エクステンション領域、ポケット領域等の拡散層の活性化熱処理時にシリコン・ゲルマニウム層132中のゲルマニウムが拡散される。)をCdep.、拡散防止膜の容量をCint.とし、総容量Ctotalとすると、(1/Ctotal)=(1/Cox)+(1/Cdep.)+(1/Cint.)となる。ここで、C∝1/T(Tは総膜厚)であるため、ゲート絶縁膜113の膜厚をTox、ゲート空乏層の厚さをTdep.、拡散防止膜の膜厚をTint.とすると、Ttotal=Tox+Tdep.+Tint.となる。ここで、反転電子密度増大のため、上記Ttotalは小さくすることが好ましい。以上の点を踏まえて、例えば現時点における先端プロセス(例えば65nmCMOSプロセス)では、総膜厚を2.5nmとすると、ゲート絶縁膜113の膜厚は1.5nm、ゲート空乏層の厚さを0.5nmとすると、拡散防止膜134の膜厚は0.5nmとなる。したがって、例えば65nmCMOSプロセス以降の世代では、少なくとも、拡散防止膜134の膜厚は0.5nm以下とすることが好ましい。一方、ゲルマニウムの拡散を防止するという観点から、拡散防止膜134の膜厚は0.3nm以上であることが望まれる。したがって、拡散防止膜134の膜厚は、0.3nm以上0.5nm以下とする。
【0028】
本発明の半導体装置1は、シリコン・ゲルマニウム層132に近接するシリコン層133中にゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層134を形成したため、拡散防止層134がシリコン・ゲルマニウム層132中のゲルマニウムの拡散を防止するので、シリコン・ゲルマニウム層132中のゲルマニウムがシリコン層133に形成された拡散防止層134よりも外側に拡散されなくなるという利点がある。これを利用して、上記第1シリコン層131とシリコン・ゲルマニウム層132とシリコン層133との積層構造をゲートに用いることにより、拡散防止層134がシリコン・ゲルマニウム層132中のゲルマニウムの拡散を防止するので、シリコン層133の表層にゲルマニウムが拡散しなくなるという利点がある。これにより、シリコン層133の表層にゲート低抵抗化のための金属層、例えば金属シリサイド層(図示せず)を形成しても高抵抗な層とはならないで、低抵抗化が可能となる。また拡散防止層134よりシリコン・ゲルマニウム層132中のゲルマニウムの拡散を防ぐことにより、シリコン・ゲルマニウム層132中のゲルマニウム濃度の低下が抑制され、これにより初期に導入したゲルマニウムが効率的に機能し、シリコン・ゲルマニウム層132の下層における不純物の固溶を高めることができるので、積層構造をゲートに用いることで空乏化を抑制したゲートになるという利点がある。
【0029】
また、半導体装置1では、拡散防止層134に窒素を含む層を用いた場合には、ソース・ドレイン活性化等の高温熱処理を施した後も拡散防止層134は安定した構造を取る。したがって、ゲート電極114、115中のボロンの拡散抑制やシリサイド反応の抑制が熱処理後でも可能となる。前記非特許文献1に記載されているように、シリコンの結晶構造の異なる積層構造にすると、熱履歴により各層の状態が変化するために不具合が起きる。例えば、ゲート電極114、115下部からゲート電極114、115上部へボロンが拡散してしまうことを抑制できず、ゲート電極114、115中の不純物密度を低減してしまう問題点が生じるが、本発明の構造では、その拡散を抑制することができる。さらに、前記非特許文献1に開示された構造では、シリサイド反応がゲート電極上部からゲート絶縁膜界面まで進むのを抑制することができず、ゲート電極114、115の抵抗上昇やゲート絶縁膜213の信頼性劣化、等が問題となる。一方、本発明ではシリサイド反応を抑制でき、シート抵抗異常や信頼性劣化を抑制することができる。
【実施例2】
【0030】
次に、本発明の第2半導体装置に係る一実施例を、図4の概略構成断面図によって説明する。図4では、一例として、PチャネルトランジスタとしてのPMOSトランジスタとNチャネルトランジスタとしてのNMOSトランジスタとを形成したCMOSトランジスタについて説明する。
【0031】
図4に示すように、半導体基板211にPMOSトランジスタの形成領域とNMOSトランジスタの形成領域とを分離する素子分離領域212が形成されている。上記半導体基板211上にはゲート絶縁膜213が形成されている。
【0032】
上記ゲート絶縁膜213上のNMOSトランジスタの形成領域にはゲート電極214が形成され、上記ゲート絶縁膜213上のPMOSトランジスタの形成領域にはゲート電極215が形成されている。上記ゲート電極214、215は、例えば下層より、シードシリコン層231、シリコン・ゲルマニウム層232、シリコン層233の積層構造で形成されていて、上記シリコン層233には、成膜中に形成したものでゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層234が形成されている。そのため、シリコン・ゲルマニウム層232中のゲルマニウムは、シリコン層231、およびシリコン層233の下層部分に拡散され、実質的に拡散防止層234より下層はゲルマニウムを含むシリコン層、すなわち、NMOSトランジスタの形成領域ではシリコン・ゲルマニウム層235となり、PMOSトランジスタの形成領域ではシリコン・ゲルマニウム層237となっている。
【0033】
また、PMOSトランジスタの形成領域における上記シリコン・ゲルマニウム層237となっている部分の厚さは、NMOSトランジスタの形成領域における上記シリコン・ゲルマニウム層235となっている部分の厚さより薄く形成されている。これは、拡散防止層234の位置によってシリコン・ゲルマニウム層中のゲルマニウム濃度の高い位置を、PMOSトランジスタではゲート絶縁膜213側になるように、NMOSトランジスタではゲート絶縁膜213より離れた位置になるようにするためである。
【0034】
例えば、NMOSトランジスタのシリコン・ゲルマニウム層235は、1020/cm3〜1021/cm3程度のゲルマニウム濃度を必要とするため、10nm以上60nm以下の厚さに形成され、好ましくは30nm程度の厚さとする。なお、NMOSトランジスタのシリコン・ゲルマニウム層235は、膜厚が10nmよりも薄すぎると、N型不純物の固溶限界を低くするゲルマニウムの濃度ピーク値の位置がゲート絶縁膜213に近づきすぎるので好ましくなくなり、60nmを超えるとシリサイド反応の際に異常反応を引き起こすので好ましくない。
【0035】
他方、PMOSトランジスタのシリコン・ゲルマニウム層237は、シリコン・ゲルマニウム層237中のゲルマニウム濃度の高い位置をゲート絶縁膜213に近づけるように形成することが望ましいので、10nm以上30nm以下の膜厚とすることが好ましい。なお、PMOSトランジスタのシリコン・ゲルマニウム層237は、膜厚が10nmよりも薄すぎるとP型不純物の固溶源としての効力が低くなるので好ましくなくなり、30nmを超えると拡散防止層234がゲート絶縁膜213より離れ過ぎることになり、ゲートの空乏化を抑制することが困難になるので好ましくない。
【0036】
上記半導体基板211のNMOSトランジスタの形成領域には、ゲート電極214側に、上層にエクステンション領域216、下層にポケット領域218を介して、ソース・ドレイン領域220が形成され、他方側には上層にエクステンション領域217、下層にポケット領域219を介して、ソース・ドレイン領域221が形成されている。同様に、上記半導体基板211のPMOSトランジスタの形成領域には、ゲート電極215側に、上層にエクステンション領域222、下層にポケット領域224を介して、ソース・ドレイン領域226が形成され、他方側には上層にエクステンション領域223、下層にポケット領域225を介して、ソース・ドレイン領域227が形成されている。
【0037】
ここで、ゲートについて、図5のゲルマニウムの濃度プロファイルを示したゲート電極の拡大断面図によって詳細に説明する。図5(1)はPMOSトランジスタのゲート電極を示し、図5(2)はNMOSトランジスタのゲート電極を示した図面である。なお、図面中のゲルマニウム(Ge)の濃度プロファイルは矢印方向に向かって濃度が高くなっている。
【0038】
図5(1)に示すように、NMOSトランジスタ領域では、半導体基板(シリコン基板)211上にゲート絶縁膜213、ゲート電極214が形成されている。このゲート電極214は、下層よりシリコン・ゲルマニウム層235、シリコン層(キャップシリコン層ともいう)233を積層した構造からなり、シリコン層233中(シリコン・ゲルマニウム層235からシリコン層233へのゲルマニウムの拡散があるため、実質的にはシリコン・ゲルマニウム層235とシリコン層233(236)との間)にはゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層234が形成されている。NMOSトランジスタの場合、リン、ヒ素のようなN型不純物にとっては固溶限界が低くなるゲルマニウムは、ゲート絶縁膜213から遠ざけることが好ましい。すなわち、ゲルマニウム濃度は図示したように、シリコン層236側に濃度分布のピークが位置するようにすることが好ましい。また、NMOSトランジスタのゲート電極214は、通常、低抵抗化のため、シリコン層236の上部に金属を含む層(例えば金属シリサイド層)(図示せず)が形成される。このため、ゲルマニウムが金属シリサイド層の形成領域に存在すると、高抵抗な膜となってしまうため、ゲルマニウムをシリコン層236の表層近くに存在させることは好ましくない。
【0039】
以上の観点から、上記説明したように、シリコン・ゲルマニウム層235は30nm〜50nmの厚さに形成され、上記拡散防止層234は、シリコン・ゲルマニウム層235とシリコン層236との間に設けられている。
【0040】
一方、図5(2)に示すように、PMOSトランジスタ領域では、半導体基板(シリコン基板)211上にゲート絶縁膜213、ゲート電極215が形成されている。このゲート電極215は、下層よりシリコン・ゲルマニウム層237、シリコン層(キャップシリコン層ともいう)233を積層した構造からなり、シリコン層233中(シリコン・ゲルマニウム層237からシリコン層233へのゲルマニウムの拡散があるため、実質的にはシリコン・ゲルマニウム層237とシリコン層233(238)との間)にはゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層234が形成されている。PMOSトランジスタの場合、ゲルマニウム濃度は図示したように、ゲート絶縁膜213側に近いシリコン・ゲルマニウム層237部分に濃度分布のピーク値が位置するようにすることが好ましい。つまり、PMOSトランジスタのゲート電極215は、ホウ素が固溶されるため、ホウ素の固溶源の高いゲルマニウムをゲート絶縁膜213側に近づけることが好ましい。これにより、ゲートの空乏化を抑制することができる。
【0041】
以上の観点から、シリコン・ゲルマニウム層237は薄く(例えば10nm〜20nmの厚さ)形成され、拡散防止層234はシリコン層233中(シリコン・ゲルマニウム層237からシリコン層233へのゲルマニウムの拡散があるため、実質的にはシリコン・ゲルマニウム層237とシリコン層238との間)に設けられることが好ましい。もし、拡散防止層234をシリコン層238の表層に設けた場合には、シリコン層238の表層に低抵抗化のための金属層(例えば金属シリサイド層)を形成することができなくなり、ゲート電極の低抵抗化が図れないという問題が発生する。
【0042】
上記拡散防止層234の膜厚は、前記図3によって説明したのと同様に0.3nm以上0.5nm以下とする。
【0043】
上記拡散防止層234は、ゲルマニウムの拡散を防止する材料で形成された膜であればよく、例えば窒化膜、酸化膜、窒化酸化膜等で形成される。例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜等で形成される。
【0044】
本発明の半導体装置2は、シリコン・ゲルマニウム層235、237に近接するシリコン層236、238中にゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層234を形成したため、拡散防止層234がシリコン・ゲルマニウム層235、237中のゲルマニウムの拡散を防止するので、シリコン・ゲルマニウム層235、237中のゲルマニウムがシリコン層233中に形成された拡散防止層234よりも外側(図面では上方)に拡散されなくなるという利点がある。これを利用して、シリコン・ゲルマニウム層235、237とシリコン層236、238との積層構造をゲートに用いることにより、拡散防止層234がシリコン・ゲルマニウム層235、237中のゲルマニウムの拡散を防止するので、シリコン層236、238の表層にゲルマニウムが拡散しなくなるという利点がある。これにより、シリコン層236、238の表層にゲート低抵抗化のための金属層、例えば金属シリサイド層(図示せず)を形成しても高抵抗な層とはならないで、低抵抗化が可能となる。また拡散防止層234よりシリコン・ゲルマニウム層235、237中のゲルマニウムの拡散を防ぐことにより、シリコン・ゲルマニウム層235、237中のゲルマニウム濃度の低下が抑制され、これにより初期に導入したゲルマニウムが効率的に機能させることができる。
【0045】
さらに、PMOSトランジスタの形成領域における上記シリコン・ゲルマニウム層237となっている部分の厚さは、NMOSトランジスタの形成領域における上記シリコン・ゲルマニウム層235となっている部分の厚さより薄く形成されている。これによって、シリコン・ゲルマニウム層235、237中のゲルマニウム濃度の位置を、PMOSトランジスタではゲート絶縁膜213側に、NMOSトランジスタではゲート絶縁膜213より離した位置になるようにすることができる。よって、PMOSトランジスタでは、シリコン・ゲルマニウム層237の下層における不純物(特にP型不純物)の固溶を高めることができるのでゲートの空乏化が抑制でき、他方、NMOSトランジスタではN型不純物の固溶限界を低くするゲルマニウムをゲート絶縁膜から離すことができる。
【0046】
また、半導体装置2では、拡散防止層234に窒素を含む層を用いた場合には、ソース・ドレイン活性化等の高温熱処理を施した後も拡散防止層234は安定した構造を取る。したがって、ゲート電極214、215中のボロンの拡散抑制やシリサイド反応の抑制が熱処理後でも可能となる。前記非特許文献1に記載されているように、シリコンの結晶構造の異なる積層構造にすると、熱履歴により各層の状態が変化するために不具合が起きる。例えば、ゲート電極214、215下部からゲート電極214、215上部へボロンが拡散してしまうことを抑制できず、ゲート電極214、215中の不純物密度を低減してしまう問題点が生じるが、本発明の構造では、その拡散を抑制することができる。さらに、前記非特許文献1に開示された構造では、シリサイド反応がゲート電極上部からゲート絶縁膜界面まで進むのを抑制することができず、ゲート電極214、215の抵抗上昇やゲート絶縁膜213の信頼性劣化、等が問題となる。一方、本発明ではシリサイド反応を抑制でき、シート抵抗異常や信頼性劣化を抑制することができる。
【実施例3】
【0047】
本発明の半導体装置の第1製造方法に係る一実施例を、図6〜図9の製造工程図によって説明する。図6〜図9では、一例として、前記実施例1で説明した65nmルールのCMOSFET(Complementary Metal Oxide Semiconductor)の製造工程を示した。
【0048】
図6(1)に示すように、半導体基板(例えばシリコン基板)111に、通常の素子分離プロセスによって、STI(Shallow Trench Isolation)の素子分離領域112を形成する。次いで、半導体基板111上にゲート絶縁膜113を形成する。このゲート絶縁膜113は、例えば窒化酸化シリコン(SiON)組成にて例えば1nmの厚さに形成する。
【0049】
次に、図6(2)に示すように、化学的気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法によって、上記ゲート絶縁膜113上にシードシリコン層131を形成する。このシードシリコン層131は、後に説明するシリコン・ゲルマニウム層を形成する際のシード層となるもので、例えば2nmの厚さに形成する。次いで、シリコン・ゲルマニウム層132を形成する。このシリコン・ゲルマニウム層132は、例えばゲルマニウム濃度が30%となるように成膜し、その厚さは例えば20nmとした。
【0050】
次に、図6(3)に示すように、シリコン・ゲルマニウム層132上に、シリコン層133の下層部分を形成する。上記シリコン層133の下層部分は、例えばアモルファスシリコン(α―Si)を50nmの厚さに成膜する。
【0051】
続いて、図6(4)に示すように、シリコン層133の成膜を一時中段して、ゲルマニウムの拡散を防止するための拡散防止層134を形成する。この拡散防止層134は、例えば原子層蒸着(ALD:Atomic Layer Deposition)法等を用い、窒化膜(例えば窒化シリコン膜)を0.3nmの厚さに成膜する。この拡散防止層134は、窒化シリコン膜の他に、窒化酸化膜(例えば窒化酸化シリコン膜)、酸化シリコン膜(例えば酸化シリコン膜)で形成することもできる。この膜厚は、前記図3によって説明した理由によって、0.4nm以上0.5nm以下に形成することが好ましい。
【0052】
その後、図6(5)に示すように、再びシリコン層133の成膜を行うことで、層中に拡散防止層134を備えたシリコン層33を完成させる。上記第2シリコン層133の上層部分は、例えばアモルファスシリコン(α―Si)を50nmの厚さに成膜する。これによって、シリコン層133は、100nmの厚さにアモルファスシリコン層からなり、その中間に拡散防止層134が形成されたものとなる。
【0053】
その後はこの世代のCMOSFETの標準的なプロセスによって製造される。その一例を以下に説明する。
【0054】
図7(1)に示すように、リソグラフィ技術により、PMOSトランジスタのゲート電極の形成領域上およびNMOSトランジスタのゲート電極の形成領域上に、レジストマスク151を形成した後、エッチング技術(例えばドライエッチング)により上記拡散防止層134を含むシリコン層133、シリコン・ゲルマニウム層132、シードシリコン層131をエッチング加工して、PMOSトランジスタのゲート電極114、NMOSトランジスタのゲート電極115を形成する。その後、上記レジストマスク151を除去する。
【0055】
次に、図7(2)に示すように、急速熱酸化(RTO)法等の酸化方法により、ゲート電極114、115の少なくとも側壁に側壁酸化膜141を形成する。この側壁酸化膜141は、例えば2nmの厚さに形成する。なお、ここでは酸化法の特性上、側壁酸化膜141は、ゲート電極114、114表面に形成されている。
【0056】
次に、図7(3)に示すように、リソグラフィ技術によりNMOSトランジスタの形成領域を開口したレジストマスク152を形成する。次いでイオン注入法によって、ゲート電極114、側壁酸化膜141をマスクにして、上記半導体基板111にエクステンション領域116、117を形成する。このエクステンション領域116、117は、例えばヒ素を1.5keVの注入エネルギーで1×1015atoms/cm2のドーズ量でイオン注入して形成する。次いで、イオン注入法によって、上記エクステンション領域116、117の外側にポケット領域118、119を形成する。このポケット領域118、119は、例えばインジウムを50keVの注入エネルギーで2×1013atoms/cm2のドーズ量でイオン注入して形成する。その後、上記レジストマスク152を除去する。
【0057】
次に、図8(4)に示すように、リソグラフィ技術によりPMOSトランジスタの形成領域を開口したレジストマスク153を形成する。次いでイオン注入法によって、ゲート電極115、側壁酸化膜141をマスクにして、上記半導体基板111にエクステンション領域122、123を形成する。このエクステンション領域122、123は、例えばホウ素を0.5keVの注入エネルギーで1×1015atoms/cm2のドーズ量でイオン注入して形成する。次いで、イオン注入法によって、上記エクステンション領域122、123の外側にポケット領域124、125を形成する。このポケット領域124、125は、例えばヒ素を40keVの注入エネルギーで2×1013atoms/cm2のドーズ量でイオン注入して形成する。その後、上記レジストマスク153を除去する。
【0058】
次に、図8(5)に示すように、CVD方法により、上記側壁酸化膜141を介して上記ゲート電極114、115を被覆するようにサイドウォール形成膜142を形成する。このサイドウォール形成膜142は、例えば酸化膜を50nmの厚さに成膜して形成する。その後、エッチバック技術によって、サイドウォール形成膜142を異方的にドライエッチングして、ゲート電極114の側壁にサイドウォール143を形成するとともに、ゲート電極115の側壁にサイドウォール144を形成する。
【0059】
次に、図8(6)に示すように、リソグラフィ技術によりPMOSトランジスタの形成領域を開口したレジストマスク154を形成する。次いでイオン注入法によって、ゲート電極115および側壁酸化膜141およびサイドウォール144をマスクにして、上記ゲート電極115の両側における上記半導体基板111に、上記エクステンション領域122、123およびポケット領域124、125を介してソース・ドレイン領域126、127を形成する。このソース・ドレイン領域126、126は、例えばホウ素を2keVの注入エネルギーで3×1015atoms/cm2のドーズ量でイオン注入して形成する。その後、上記レジストマスク154を除去する。
【0060】
次に、図9(7)に示すように、リソグラフィ技術によりNMOSトランジスタの形成領域を開口したレジストマスク155を形成する。次いでイオン注入法によって、ゲート電極114および側壁酸化膜141およびサイドウォール143をマスクにして、上記ゲート電極114の両側における上記半導体基板111に、上記エクステンション領域116、117およびポケット領域118、119を介してソース・ドレイン領域120、121を形成する。このソース・ドレイン領域120、121は、例えばリンを10keVの注入エネルギーで3×1015atoms/cm2のドーズ量でイオン注入して形成する。その後、上記レジストマスク155を除去する。
【0061】
その後、図9(8)に示すように、熱処理によって、上記ソース・ドレイン領域120、121、126、127の活性化処理を行う。上記熱処理は、例えば高速ランピングレートのスパイクアニーリングにより行い、例えば、活性化条件は、1030℃、0secで、昇温レートは300℃/secで降温レートは75℃/sec程度となる急峻なランピングレートのスパイクRTA(Rapid Thermal Annealing)で行う。すなわち、300℃/secの昇温レートで加熱し、1030℃になった時点で直ちに降温プロセスに入り、75℃/sec程度の降温レートで冷却するというスパイクRTAである。このとき、シリコン・ゲルマニウム層132中のゲルマニウムが拡散する。このゲルマニウムの拡散は、シリコン・ゲルマニウム層132の下層側ではシードシリコン層131中に拡散し、シリコン・ゲルマニウム層132の上層側では、拡散防止層134より下層のシリコン層133の下層側に拡散する。しかしながら、シリコン層133中にはゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層134が形成されているため、この拡散防止層134によってゲルマニウムの拡散が阻止されるので、拡散防止層134より上部のシリコン層133の上層部にゲルマニウムが拡散することはない。このようにして、半導体装置1が形成される。
【0062】
上記製造方法においては、上記拡散防止層134はALD法によって形成したが、ゲルマニウムの拡散を防止する膜を形成できる方法であれば、他の方法でも良い。例えば、シリコン層133の下層部分を形成した後、プラズマ堆積方法により窒化膜を形成してもよい。もしくは、シリコン層133を形成した後のイオン注入による導入窒素によって窒化膜を形成してもよい。もしくは、シリコン層133の成膜を一旦停止した後のプラズマ窒化処理によって窒化膜を形成してもよい。もしくは、シリコン層133の成膜をいったん中断した際にできる自然酸化膜で形成することもできる。また、上記製造方法と同様にして、窒素の代わりに酸素を用いることで、上記窒化膜の代わりに酸化膜で形成することもでき、また窒素とともに酸素を用いることで、窒化酸化膜で形成することもできる。
【0063】
また、ゲート電極114、115上部に金属シリサイド層を形成する際には、ゲート電極114、115上部に形成されている酸化膜(側壁酸化時に形成された酸化膜)を除去し、シリコン層133上部を露出させる。なお、サイドウォール143を形成した際にゲート電極114、115上部に形成されている酸化膜(側壁酸化時に形成された酸化膜)を除去してもよい。
【0064】
その後、全面に金属シリサイドを形成するための金属膜(図示せず)を被覆した後、シリサイド化の熱処理を行い、ゲート電極114、115上部のシリコン層133をシリサイド化して、金属シリサイド層を形成する。上記金属膜にはニッケル、コバルト、タングステン、チタン等を用いることができ、上記金属膜にニッケルを用いた場合にはニッケルシリサイドが形成され、コバルトを用いた場合にはコバルトシリサイドが形成され、タングステンを用いた場合にはタングステンシリサイドが形成され、チタンを用いた場合にはチタンシリサイドが形成される。また、上記シリサイド化の熱処理は、生成される金属シリサイドが低抵抗となるような温度条件にてシリサイド化反応を行うことが好ましい。例えばニッケルシリサイドを生成する場合には、低抵抗なニッケルシリサイド(NiSi)を生成するように、300℃以上600℃以下の温度で熱処理を行うことが好ましい。例えば700℃以上の温度でシリサイド化を行うとNiSi2を生成し、高抵抗なニッケルシリサイドとなるので好ましくない。他方、シリサイド化の熱処理温度が300℃よりも低い温度では、シリサイド化反応が不十分もしくは起こらないので好ましくない。
【0065】
本発明の半導体装置の製造方法は、シリコン・ゲルマニウム層132に近接するシリコン層133を成膜中にゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層134を形成する工程を備えたため、拡散防止層134によってシリコン・ゲルマニウム層132中のゲルマニウムの拡散を防止することができるようになるので、シリコン・ゲルマニウム層132中のゲルマニウムがシリコン層133に形成された拡散防止層134よりも外側に拡散されなくなるという利点がある。例えば、シードシリコン層131とシリコン・ゲルマニウム層132とシリコン層133との積層構造をゲートに用いることにより、拡散防止層134がシリコン・ゲルマニウム層132中のゲルマニウムの拡散を防止するので、シリコン層133の表層にゲルマニウムが拡散しなくなるという利点がある。これにより、シリコン層133の表層にゲート低抵抗化のための金属層、例えば金属シリサイド層を形成することが可能になる。また拡散防止層134がシリコン・ゲルマニウム層132中のゲルマニウムの拡散を防ぐことにより、シリコン・ゲルマニウム層132中のゲルマニウム濃度の低下が抑制され、これによりシリコン・ゲルマニウム層132の下層に形成されるシードシリコン層131中の不純物の固溶を高めることができるので、積層構造をゲートに用いることにより、空乏化を抑制したゲートを構成することができるという利点がある。
【0066】
また、上記製造方法において、拡散防止層134をALD法により形成することで、容易に0.4nm〜0.5nmという極薄膜厚の拡散防止膜134を形成することができるので、容量増加を最小限にしつつ、ゲート空乏容量を抑制することで、全体のゲート容量を小さくすることができる。
【0067】
さらに、拡散防止層134に窒素を含む層を用いた場合には、ソース・ドレイン活性化等の高温熱処理を施した後も拡散防止層134は安定した構造を取る。したがって、ゲート電極114、115中のボロンの拡散抑制やシリサイド反応の抑制が熱処理後でも可能となる。前記非特許文献1に記載されているように、シリコンの結晶構造の異なる積層構造にすると、熱履歴により各層の状態が変化するために不具合が起きる。例えば、ゲート電極114、115下部からゲート電極114、115上部へボロンが拡散してしまうことを抑制できず、ゲート電極114、115中の不純物密度を低減してしまう問題点が生じるが、本発明の構造では、その拡散を抑制することができる。さらに、前記非特許文献1に開示された構造では、シリサイド反応がゲート電極上部からゲート絶縁膜界面まで進むのを抑制することができず、ゲート電極114、115の抵抗上昇やゲート絶縁膜113の信頼性劣化、等が問題となる。一方、本発明ではシリサイド反応を抑制でき、シート抵抗異常や信頼性劣化を抑制することができる。
【実施例4】
【0068】
本発明の半導体装置の第2製造方法に係る一実施例を、図10〜図15の製造工程図によって説明する。図10〜図15では、一例として、前記実施例2で説明した65nmルールのCMOSFET(Complementary Metal Oxide Semiconductor)の製造工程を示した。
【0069】
図10(1)に示すように、半導体基板(例えばシリコン基板)211に、通常の素子分離プロセスによって、STI(Shallow Trench Isolation)の素子分離領域212を形成する。次いで、半導体基板211上にゲート絶縁膜213を形成する。このゲート絶縁膜213は、例えば窒化酸化シリコン(SiON)組成にて例えば1nmの厚さに形成する。
【0070】
次に、図10(2)に示すように、化学的気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法によって、上記ゲート絶縁膜213上にシードシリコン層231を形成する。このシードシリコン層231は、後に説明するシリコン・ゲルマニウム層を形成する際のシード層となるもので、例えば2nmの厚さに形成する。次いで、シリコン・ゲルマニウム層232を形成する。このシリコン・ゲルマニウム層232は、例えばゲルマニウム濃度が30%となるように成膜し、その厚さは例えば20nmとした。
【0071】
次に、図10(3)に示すように、シリコン・ゲルマニウム層232上に、シリコン層233の下層部分を形成する。上記シリコン層233の下層部分は、例えばアモルファスシリコン(α―Si)を50nmの厚さに成膜する。
【0072】
次に、図10(4)に示すように、リソグラフィ技術を用いて、NMOSFET形成領域を被覆し、PMOSFET形成領域を開口したレジストマスク251を形成する。そして、上記レジストマスク251をエッチングマスクに用いて上記シリコン層233のエッチングを行う。
【0073】
その結果、図11(5)に示すように、PMOSFET形成領域の上記シリコン層233が除去され、NMOSFET形成領域に上記シリコン層233が残る。その後、上記レジストマスク251〔前記図10の(4)参照〕を除去する。図面では、レジストマスク251を除去した後の状態を示した。
【0074】
次に、図11(6)に示すように、例えばCVD法によって、NMOSトランジスタ形成領域に残したシリコン層233を被覆するように上記シリコン・ゲルマニウム層232上にさらにシリコン層233を形成する。このシリコン層233は、例えば、30nmの厚さに形成される。このようにシリコン層233を成膜することによって、上記エッチングによる表面荒れの改善を行うことができる。
【0075】
次に、図11(7)に示すように、上記シリコン層233上に、ゲルマニウムの拡散を防止するための拡散防止層234を形成する。この拡散防止層234は、例えば原子層蒸着(ALD:Atomic Layer Deposition)法等を用い、窒化膜(例えば窒化シリコン膜)を0.3nmの厚さに成膜する。この拡散防止層234は、窒化シリコン膜の他に、窒化酸化膜(例えば窒化酸化シリコン膜)、酸化シリコン膜(例えば酸化シリコン膜)で形成することもできる。この膜厚は、前記図3によって説明した理由によって、0.3nm以上0.5nm以下に形成することが好ましい。
【0076】
その後、図11(8)に示すように、さらに再び、シリコン層233の成膜を行うことで、層中に拡散防止層234を備えたシリコン層233を完成させる。上記第2シリコン層233の上層部分は、例えばNMOSトランジスタの形成領域ではアモルファスシリコン(α―Si)を30nmの厚さに成膜する。これによって、シリコン層233は、100nmの厚さにアモルファスシリコン層からなり、その間に拡散防止層234が形成されたものとなる。しかも、PMOSトランジスタの形成領域上では、初めに形成したシリコン層233を除去するので、上記拡散防止膜234をNMOSトランジスタの形成領域よりもPMOSトランジスタの形成領域のほうがゲート絶縁膜213の近くに形成することができる。言い換えれば、シリコン・ゲルマニウム層232中のゲルマニウムが拡散される領域は、PMOSFET形成領域は薄く、NMOSトランジスタの形成領域はPMOSトランジスタの形成領域よりも厚く形成することができる。
【0077】
なお、上記図11(5)〜(8)の工程において、PMOSFET形成領域の上記シリコン層233を除去した後、シリコン・ゲルマニウム層232表面の荒れが拡散防止膜を形成できる程度に抑制されている場合には、上記図11(6)で説明したシリコン層233を形成しなくともよい。
【0078】
したがって、図12(5)に示すように、PMOSトランジスタの形成領域のシリコン層233が除去されて、NMOSトランジスタの形成領域にシリコン層233が残される。
【0079】
次に、図12(6)に示すように、上記図11(7)によって説明したのと同様に、シリコン層233を被覆するようにシリコン・ゲルマニウム層232上に拡散防止膜234を形成する。
【0080】
次に、図12(7)に示すように、上記図11(8)によって説明したのと同様に、拡散防止膜234上に、さらにシリコン層233を形成する。この場合も、上記拡散防止膜234をNMOSトランジスタの形成領域よりもPMOSトランジスタの形成領域のほうがゲート絶縁膜213の近くに形成することができる。言い換えれば、シリコン・ゲルマニウム層232中ゲルマニウムが拡散される領域は、PMOSトランジスタの形成領域は薄く、NMOSトランジスタの形成領域はPMOSトランジスタの形成領域よりも厚く形成することができる。
【0081】
その後はこの世代のCMOSFETの標準的なプロセスによって製造される。その一例を以下に説明する。
【0082】
図13(1)に示すように、リソグラフィ技術により、PMOSトランジスタのゲート電極の形成領域上およびNMOSトランジスタのゲート電極の形成領域上に、レジストマスク252を形成した後、エッチング技術(例えばドライエッチング)により上記拡散防止層234を含むシリコン層233、シリコン・ゲルマニウム層232、シードシリコン層231をエッチング加工して、PMOSトランジスタのゲート電極214、NMOSトランジスタのゲート電極215を形成する。その後、上記レジストマスク252を除去する。
【0083】
次に、図13(2)に示すように、急速熱酸化(RTO)法等の酸化方法により、ゲート電極214、215の少なくとも側壁に側壁酸化膜241を形成する。この側壁酸化膜241は、例えば2nmの厚さに形成する。なお、ここでは酸化法の特性上、側壁酸化膜241は、ゲート電極214、214表面に形成されている。
【0084】
次に、図13(3)に示すように、リソグラフィ技術によりNMOSトランジスタの形成領域を開口したレジストマスク253を形成する。次いでイオン注入法によって、レジストマスク253、ゲート電極214、側壁酸化膜241をマスクにして、上記半導体基板211にエクステンション領域216、217を形成する。このエクステンション領域216、217は、例えばヒ素を1.5keVの注入エネルギーで1×1015atoms/cm2のドーズ量でイオン注入して形成する。次いで、イオン注入法によって、上記エクステンション領域216、217の外側にポケット領域218、219を形成する。このポケット領域218、219は、例えばインジウムを50keVの注入エネルギーで2×1013atoms/cm2のドーズ量でイオン注入して形成する。その後、上記レジストマスク253を除去する。
【0085】
次に、図14(4)に示すように、リソグラフィ技術によりPMOSトランジスタの形成領域を開口したレジストマスク254を形成する。次いでイオン注入法によって、レジストマスク254、ゲート電極215、側壁酸化膜241をマスクにして、上記半導体基板211にエクステンション領域222、223を形成する。このエクステンション領域222、223は、例えばホウ素を0.5keVの注入エネルギーで1×1015atoms/cm2のドーズ量でイオン注入して形成する。次いで、イオン注入法によって、上記エクステンション領域222、223の外側にポケット領域224、225を形成する。このポケット領域224、225は、例えばヒ素を40keVの注入エネルギーで2×1013atoms/cm2のドーズ量でイオン注入して形成する。その後、上記レジストマスク254を除去する。
【0086】
次に、図14(5)に示すように、CVD方法により、上記側壁酸化膜241を介して上記ゲート電極214、215を被覆するようにサイドウォール形成膜242を形成する。このサイドウォール形成膜242は、例えば酸化膜を50nmの厚さに成膜して形成する。その後、エッチバック技術によって、サイドウォール形成膜242を異方的にドライエッチングして、ゲート電極214の側壁にサイドウォール143を形成するとともに、ゲート電極215の側壁にサイドウォール244を形成する。
【0087】
次に、図14(6)に示すように、リソグラフィ技術によりPMOSトランジスタの形成領域を開口したレジストマスク255を形成する。次いでイオン注入法によって、レジストマスク255、ゲート電極215および側壁酸化膜241およびサイドウォール244をマスクにして、上記ゲート電極215の両側における上記半導体基板211に、上記エクステンション領域222、223およびポケット領域224、225を介してソース・ドレイン領域226、227を形成する。このソース・ドレイン領域226、226は、例えばホウ素を2keVの注入エネルギーで3×1015atoms/cm2のドーズ量でイオン注入して形成する。その後、上記レジストマスク255を除去する。
【0088】
次に、図15(7)に示すように、リソグラフィ技術によりNMOSトランジスタの形成領域を開口したレジストマスク256を形成する。次いでイオン注入法によって、レジストマスク256、ゲート電極214および側壁酸化膜241およびサイドウォール243をマスクにして、上記ゲート電極214の両側における上記半導体基板211に、上記エクステンション領域216、217およびポケット領域218、219を介してソース・ドレイン領域220、221を形成する。このソース・ドレイン領域220、221は、例えばリンを10keVの注入エネルギーで3×1015atoms/cm2のドーズ量でイオン注入して形成する。その後、上記レジストマスク256を除去する。
【0089】
その後、図15(8)に示すように、熱処理によって、上記ソース・ドレイン領域220、221、226、227の活性化処理を行う。上記熱処理は、例えば高速ランピングレートのスパイクアニーリングにより行い、例えば、活性化条件は、1030℃、0secで、昇温レートは300℃/secで降温レートは75℃/sec程度となる急峻なランピングレートのスパイクRTA(Rapid Thermal Annealing)で行う。すなわち、300℃/secの昇温レートで加熱し、1030℃になった時点で直ちに降温プロセスに入り、75℃/sec程度の降温レートで冷却するというスパイクRTAである。このとき、シリコン・ゲルマニウム層232中のゲルマニウムが拡散する。このゲルマニウムの拡散は、シリコン・ゲルマニウム層232の下層側ではシードシリコン層231中に拡散し、シリコン・ゲルマニウム層232の上層側では、拡散防止層234より下層のシリコン層233の下層側に拡散する。しかしながら、シリコン層233中にはゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層234が形成されているため、この拡散防止層234によってゲルマニウムの拡散が阻止されるので、拡散防止層234より上部のシリコン層233の上層部にゲルマニウムが拡散することはない。
【0090】
したがって、NMOSトランジスタでは、シードシリコン層231、シリコン・ゲルマニウム層232、シリコン層233の下層部分(拡散防止層234より下層部分)にゲルマニウムが拡散し、新たにシリコン・ゲルマニウム層235となり、拡散防止膜234より上層のシリコン層233が前記図4によって説明したシリコン層236になる。また、PMOSトランジスタでは、シードシリコン層231、シリコン・ゲルマニウム層232、シリコン層233の下層部分(拡散防止層234より下層部分)にゲルマニウムが拡散し、新たにシリコン・ゲルマニウム層237となり、拡散防止膜234より上層のシリコン層233が前記図4によって説明したシリコン層238になる。このようにして、半導体装置2が形成される。
【0091】
上記製造方法においては、上記拡散防止層234はALD法によって形成したが、ゲルマニウムの拡散を防止する膜を形成できる方法であれば、他の方法でも良い。例えば、シリコン層233の下層部分を形成した後、プラズマCVD方法により窒化膜を形成してもよい。もしくは、シリコン層233を形成した後のイオン注入による導入窒素によって窒化膜を形成してもよい。もしくは、シリコン層233の成膜を一旦停止した後のプラズマ窒化処理によって窒化膜を形成してもよい。もしくは、シリコン層233の成膜をいったん中断した際にできる自然酸化膜で形成することもできる。また、上記製造方法と同様にして、窒素の代わりに酸素を用いることで、上記窒化膜の代わりに酸化膜で形成することもでき、また窒素とともに酸素を用いることで、窒化酸化膜で形成することもできる。
【0092】
また、ゲート電極214、215上部に金属シリサイド層を形成する際には、ゲート電極214、215上部に形成されている酸化膜(側壁酸化時に形成された酸化膜)を除去し、シリコン層233上部を露出させる。なお、サイドウォール143を形成した際にゲート電極214、215上部に形成されている酸化膜(側壁酸化時に形成された酸化膜)を除去してもよい。
【0093】
その後、全面に金属シリサイドを形成するための金属膜(図示せず)を被覆した後、シリサイド化の熱処理を行い、ゲート電極214、215上部のシリコン層233をシリサイド化して、金属シリサイド層を形成する。上記金属膜にはニッケル、コバルト、タングステン、チタン等を用いることができ、上記金属膜にニッケルを用いた場合にはニッケルシリサイドが形成され、コバルトを用いた場合にはコバルトシリサイドが形成され、タングステンを用いた場合にはタングステンシリサイドが形成され、チタンを用いた場合にはチタンシリサイドが形成される。また、上記シリサイド化の熱処理は、生成される金属シリサイドが低抵抗となるような温度条件にてシリサイド化反応を行うことが好ましい。例えばニッケルシリサイドを生成する場合には、低抵抗なニッケルシリサイド(NiSi)を生成するように、300℃以上600℃以下の温度で熱処理を行うことが好ましい。例えば700℃以上の温度でシリサイド化を行うとNiSi2を生成し、高抵抗なニッケルシリサイドとなるので好ましくない。他方、シリサイド化の熱処理温度が300℃よりも低い温度では、シリサイド化反応が不十分もしくは起こらないので好ましくない。
【0094】
本発明の半導体装置の第2製造方法は、シリコン・ゲルマニウム層232に近接するシリコン層233を成膜中にゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層234を形成する工程を備えたため、拡散防止層234によってシリコン・ゲルマニウム層232中のゲルマニウムの拡散を防止することができるようになるので、シリコン・ゲルマニウム層232中のゲルマニウムがシリコン層233に形成された拡散防止層234よりも外側に拡散されなくなるという利点がある。例えば、シードシリコン層231とシリコン・ゲルマニウム層232とシリコン層233との積層構造をゲートに用いることにより、拡散防止層234がシリコン・ゲルマニウム層232中のゲルマニウムの拡散を防止するので、シリコン層233の表層にゲルマニウムが拡散しなくなるという利点がある。これにより、シリコン層233の表層にゲート低抵抗化のための金属層、例えば金属シリサイド層を形成することが可能になる。また拡散防止層234がシリコン・ゲルマニウム層232中のゲルマニウムの拡散を防ぐことにより、シリコン・ゲルマニウム層232中のゲルマニウム濃度の低下が抑制され、これによりシリコン・ゲルマニウム層232の下層に形成されるシードシリコン層231中の不純物の固溶を高めることができるので、積層構造をゲートに用いることにより、空乏化を抑制したゲートを構成することができるという利点がある。
【0095】
また、上記製造方法において、拡散防止層234をALD法により形成することで、容易に0.4nm〜0.5nmという極薄膜厚の拡散防止膜234を形成することができるので、容量増加を最小限にしつつ、ゲート空乏容量を抑制することで、全体のゲート容量を小さくすることができる。
【0096】
さらに、PMOSトランジスタの形成領域における上記シリコン・ゲルマニウム層237となっている部分の厚さは、NMOSトランジスタの形成領域における上記シリコン・ゲルマニウム層235となっている部分の厚さより薄く形成されることから、シリコン・ゲルマニウム層235、237中のゲルマニウム濃度の位置を、PMOSトランジスタではゲート絶縁膜213側に、NMOSトランジスタではゲート絶縁膜213より離した位置になるようにすることができる。よって、PMOSトランジスタではゲートの空乏化が抑制でき、NMOSトランジスタではN型不純物の固溶限界を低くするゲルマニウムをゲート絶縁膜から離すことができる。
【0097】
さらに、拡散防止層234に窒素を含む層を用いた場合には、ソース・ドレイン活性化等の高温熱処理を施した後も拡散防止層234は安定した構造を取る。したがって、ゲート電極214、215中のボロンの拡散抑制やシリサイド反応の抑制が熱処理後でも可能となる。前記非特許文献1に記載されているように、シリコンの結晶構造の異なる積層構造にすると、熱履歴により各層の状態が変化するために不具合が起きる。例えば、ゲート電極214、215下部からゲート電極214、215上部へボロンが拡散してしまうことを抑制できず、ゲート電極214、215中の不純物密度を低減してしまう問題点が生じるが、本発明の構造では、その拡散を抑制することができる。さらに、前記非特許文献1に開示された構造では、シリサイド反応がゲート電極上部からゲート絶縁膜界面まで進むのを抑制することができず、ゲート電極214、215の抵抗上昇やゲート絶縁膜213の信頼性劣化、等が問題となる。一方、本発明ではシリサイド反応を抑制でき、シート抵抗異常や信頼性劣化を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の半導体装置およびその製造方法は、シリコン・ゲルマニウム層を用いたCMOSFETに限らず、シリコン・ゲルマニウム層を用いたNMOSFET、PMOSFETにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の第1半導体装置に係る一実施例を示した概略構成断面図である。
【図2】ゲルマニウムの濃度プロファイルを示したゲート電極の拡大断面図である。
【図3】拡散防止層の膜厚決定条件を説明したモデル図である。
【図4】本発明の第2半導体装置に係る一実施例を示した概略構成断面図である。
【図5】ゲルマニウムの濃度プロファイルを示したゲート電極の拡大断面図である。
【図6】本発明の半導体装置の第1製造方法に係る一実施例を示した製造工程断面図である。
【図7】本発明の半導体装置の第1製造方法に係る一実施例を示した製造工程断面図である。
【図8】本発明の半導体装置の第1製造方法に係る一実施例を示した製造工程断面図である。
【図9】本発明の半導体装置の第1製造方法に係る一実施例を示した製造工程断面図である。
【図10】本発明の半導体装置の第2製造方法に係る一実施例を示した製造工程断面図である。
【図11】本発明の半導体装置の第2製造方法に係る一実施例を示した製造工程断面図である。
【図12】本発明の半導体装置の第2製造方法に係る一実施例を示した製造工程断面図である。
【図13】本発明の半導体装置の第2製造方法に係る一実施例を示した製造工程断面図である。
【図14】本発明の半導体装置の第2製造方法に係る一実施例を示した製造工程断面図である。
【図15】本発明の半導体装置の第2製造方法に係る一実施例を示した製造工程断面図である。
【符号の説明】
【0100】
1…半導体装置、132…シリコン・ゲルマニウム層、133…シリコン層、134…拡散防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極にシリコン・ゲルマニウム層を有するPチャネルトランジスタとゲート電極にシリコン・ゲルマニウム層を有するNチャネルトランジスタとを備えた半導体装置であって、
前記ゲート電極は、前記シリコン・ゲルマニウム層と、前記各シリコン・ゲルマニウム層上に形成したシリコン層との積層構造からなり、
前記各シリコン層中にゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層が形成されていて、
前記Pチャネルトランジスタのゲート電極中におけるゲルマニウム濃度プロファイルのピーク値は、前記Nチャネルトランジスタのゲート電極中におけるゲルマニウム濃度プロファイルのピーク値よりもゲート絶縁膜側に位置する
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記シリコン層の上層に金属シリサイド層が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
ゲート電極にシリコン・ゲルマニウム層を有するPチャネルトランジスタとゲート電極にシリコン・ゲルマニウム層を有するNチャネルトランジスタとを備えた半導体装置であって、
前記ゲート電極は、前記シリコン・ゲルマニウム層と、前記各シリコン・ゲルマニウム層上に形成したシリコン層との積層構造からなり、
前記各シリコン層中にゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層が形成されていて、
前記Pチャネルトランジスタのシリコン・ゲルマニウム層は前記Nチャネルトランジスタのシリコン・ゲルマニウム層よりも薄く形成されている
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
前記シリコン層の上層に金属シリサイド層が形成されている
ことを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
Pチャネルトランジスタのゲート電極およびNチャネルトランジスタのゲート電極にシリコン・ゲルマニウム層を有する半導体装置の製造方法において、
前記各シリコン・ゲルマニウム層上にシリコン層を形成する工程と、
前記シリコン層を成膜中にゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層を形成する工程とを備え、
前記Pチャネルトランジスタのゲート電極中におけるゲルマニウム濃度プロファイルのピーク値を、前記Nチャネルトランジスタのゲート電極中におけるゲルマニウム濃度プロファイルのピーク値よりもゲート絶縁膜側に位置させる
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記拡散防止層よりも上部の前記シリコン層に金属シリサイド層を形成する
ことを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
Pチャネルトランジスタのゲート電極およびNチャネルトランジスタのゲート電極にシリコン・ゲルマニウム層を有する半導体装置の製造方法において、
前記各シリコン・ゲルマニウム層上にシリコン層を形成する工程と、
前記シリコン層を成膜中にゲルマニウムの拡散を防止する拡散防止層を形成する工程とを備え、
前記Pチャネルトランジスタのシリコン・ゲルマニウム層と前記拡散防止層との間に形成する前記シリコン層を、前記Nチャネルトランジスタのシリコン・ゲルマニウム層と前記拡散防止層との間に形成する前記シリコン層よりも薄く形成する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記拡散防止層よりも上部の前記シリコン層に金属シリサイド層を形成する
ことを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−32901(P2006−32901A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11129(P2005−11129)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】