説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】配線を低抵抗化するとともに、配線材料と層間絶縁膜との密着性を向上させる。
【解決手段】半導体装置100は、基板(不図示)上に形成された第1の銅含有導電膜124と、第1の銅含有導電膜124上に形成され、第1の銅含有導電膜124に達する凹部が形成された絶縁膜(108、110、112、114)と、これら絶縁膜の凹部側壁を覆うように形成され、銅の拡散を防止する材料により構成された第2のバリア絶縁膜128と、凹部の底面で第1の銅含有導電膜124に接するとともに凹部の側壁で第2のバリア絶縁膜128に接して凹部内壁を覆うように形成された銅と銅とは異なる異種元素との第2の接着合金膜130と、銅を主成分として含み、第2の接着合金膜130上に第2の接着合金膜130に接して凹部を埋め込んで形成された第2の銅含有導電膜132とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、詳しくは多層配線構造を含む半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路装置において、特性の向上および機能あたりのコスト低減を目的として、素子や配線の微細化や配線の多層化が行われている。トランジスタなどの素子は、微細化および種々の対策によって、電気的特性が改善されている。一方、配線では、微細化によって配線抵抗の増加や配線間容量の増加が顕著になっている。配線での信号伝搬の遅延定数は、配線抵抗と配線間容量との積で表されるので、微細化による配線抵抗や配線間容量が増加することにより、近年の半導体集積回路においては、配線での信号伝搬の遅延が回路動作を律速するようになってきている。そのため、回路動作を高速化する目的で、層間絶縁膜には従来のシリコン酸化膜(SiO)よりも比誘電率の小さい低誘電率材料が、配線には比抵抗値の小さい銅(Cu)が用いられるようになっている。
【0003】
配線材料として銅を用いた多層配線は、以下のようなダマシン法(damascene process)で形成される。まず、層間絶縁膜に配線溝やビアホール等の凹部を形成し、当該凹部内に銅膜と層間絶縁膜との密着性改善、および銅の拡散を防止するためのバリアメタル膜を堆積する。つづいて、凹部を銅膜で埋め込んだ後、凹部外部に露出した銅膜およびバリアメタル膜をCMP(化学機械研磨法:chemical mechanical polishing)で除去することにより銅配線または銅ビアが形成される。
【0004】
このような銅配線または銅ビアにおいて、バリアメタル膜は、たとえばTiN膜やW系の膜等により構成される。バリアメタル膜の比抵抗は銅に比べて1〜2桁以上高い。そのため、配線寸法を微細化するに伴い、配線中のバリアメタル膜の寄与が大きくなり、配線抵抗が上昇してしまうという問題があった。
【0005】
銅配線において、バリアメタル膜を用いない構成も検討されている。特許文献1(特開11−40671号公報)には、パターニングされた絶縁層の一部を障壁膜に変換する段階、障壁膜の上に接着層を被覆する段階、接着層の上に導電性金属含有層を形成する段階、を含む半導体装置の製造方法が開示されている。障壁膜は、低誘電率材料により構成された酸化膜である絶縁層にプラズマ窒化ステップを行うことにより形成されたシリコンオキシナイトライドである。接着層は、シリコン、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウム等を含む。また、接着層は、マグネシウム、チタン等を含むことができる。
【0006】
非特許文献1には、TEOS−SiOにより構成された絶縁膜の凹部内にCu−Mn膜を形成し、この膜をシード膜としてめっきにより銅を形成する技術が開示されている。銅膜を形成した後、アニールを行い、Cu−Mn膜とTEOS−SiOとを反応させて、MnSiバリア層を形成している。
【特許文献1】特開11−40671号公報
【非特許文献1】T. Usui et. al; "Low Resistive and Highly Reliable Cu Dual-Damascene Interconnect Technology Using Self-Formed MnSixOy Barrier Layer"; Proceedings of the IEEE 2005 International Interconnect Technology Conference (IEEE Cat. No. 05TH8780C); IEEE , Piscataway, NJ, USA , 2005 , 242 Pages; 6-8 June 2005; Page 188-90
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の技術では、銅膜と接着層との界面や界面近傍において、銅の結晶粒界に高濃度のシリコン等の金属が偏在するため、配線抵抗が増大してしまい、配線を低抵抗化できないという問題がある。
【0008】
また、非特許文献1に記載の技術では、バリア膜を確実に形成するために、Cu−Mn膜の膜厚を厚くする必要がある。そのため、銅配線中のMn濃度が高くなり、配線抵抗が高くなるという問題も生じる。また、Mnを銅膜表面に拡散させるためには、高温でのアニールを長時間行う必要があり、半導体装置の製造安定性が劣化するとともに、処理時間がかかるという問題もある。加えて、TEOS−SiOに代わり多孔質の低誘電率膜が用いられる場合、バリア膜の膜質は多孔質を反映して低密度となるため、バリア性や密着性が低下するという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、
基板上に形成された下層導電膜と、
前記下層導電膜上に形成され、前記下層導電膜に達する凹部が形成された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜の前記凹部側壁を覆うように形成され、銅の拡散を防止する材料により構成されたバリア絶縁膜と、
前記凹部の底面で前記下層導電膜に接するとともに前記凹部の側壁で前記バリア絶縁膜に接して前記凹部内壁を覆うように形成された銅と銅とは異なる異種元素との合金膜と、
銅を主成分として含み、前記合金膜上に当該合金膜に接して前記凹部を埋め込んで形成された上層導電膜と、を含む半導体装置が提供される。
【0010】
本発明によれば、
半導体基板上に形成された下層導電膜上に層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜に、前記下層導電膜に達する凹部を形成する工程と、
前記凹部内壁を覆うように、銅の拡散を防止する材料により構成されたバリア絶縁膜を形成する工程と、
前記凹部底面の前記下層導電膜と接する領域の前記バリア絶縁膜を除去して前記下層導電膜を露出させる工程と、
前記凹部内壁を覆うように、銅と銅とは異なる異種元素との合金膜を形成する工程と、
前記凹部内に、銅を主成分として含む上層導電膜を前記合金膜に接して形成し、前記凹部を埋め込む工程と、を含む半導体装置の製造方法が提供される。
【0011】
ここで、下層導電膜および上層導電膜は、それぞれ銅を主成分として含む配線またはビアとすることができる。本発明によれば、従来のバリアメタル膜にかえてバリア絶縁膜を設けている。そのため、導電膜側方に抵抗の高い導電材料が設けられず、導電膜の抵抗を低下することができる。
【0012】
また、通常、銅は絶縁膜に対する密着性が悪いという問題がある。これは、銅の表面エネルギーが充分に大きくないこと、および絶縁膜を構成する元素との生成エンタルピーが高いこと等が原因だと考えられる。そのため、従来、銅と絶縁膜との間にバリアメタル膜を形成し、銅とバリアメタル膜の界面に強い金属結合を形成することにより、銅の密着性を向上させていた。本発明において、バリア絶縁膜と導電膜との間に銅と異種元素との合金膜が設けられる。合金膜中の異種元素として、絶縁膜を構成する元素と強い結合を組む元素を選択することにより、導電膜の密着性を高めることができる。異種元素としては、銅よりも表面エネルギーが大きい元素、バリア絶縁膜を構成する元素、絶縁膜を構成する他の元素との生成エンタルピーが、銅と当該他の元素との生成エンタルピーよりも低い元素等が好ましく用いられる。
【0013】
図4は、Hf、Ti、Ta、Nb、ZrおよびCuの表面エネルギーの温度依存性を計算した結果を示す図である(出展:改訂4版 金属データブック)。図示したように、同温度において、Hf、Ti、Ta、Nb、Zrは、いずれもCuに比べて、高い表面張力を示している。
【0014】
また、金属と他の元素との生成エンタルピーを、金属酸化物を例として説明する。図5は、金属酸化物と金属1mol当たりの生成エンタルピー(kJ/mol)との関係を示す図である(Mの生成エンタルピーがΔHkJ/molであれば、金属1mol当りの生成エンタルピーは、ΔH/xkJ/molとなる、(出展:CRC HANDBOOK OF CHEMISTRY AND PHYSICS 86TH ED. 2005-2006))。図示したように、CuOは他の金属(Al、Co、Cr、Hf、Mg、Mn、Mo、Ti、W、Ru、Ta、Nb、Zr)の酸化物やSiOに比べて生成エンタルピーが著しく高い。ここでは、酸化物を例として示したが、たとえば窒化物でも同様の傾向を示し、銅と他の元素との生成エンタルピーは高くなる傾向にある。また、他の金属の中でも、Hf、Ti、Ta、Nb、Zr等はとくに他の元素との生成エンタルピーが低くなる傾向にある。そのため、このような金属と銅との合金膜を用いることにより、絶縁膜との密着性が向上すると考えられる。以上のように、Hf、Ti、Ta、Nb、Zrは、表面張力(表面エネルギー)および生成エンタルピー(結合エネルギー)の両方の観点から、銅よりも絶縁膜に対する密着性が高くなると考えられる。
【0015】
また、合金膜が銅を含むため、合金膜の抵抗を低く保つことができる。本発明によれば、導電膜と合金膜との間、および合金膜とバリア絶縁膜との界面においても、銅と異種元素との合金が形成されている。そのため銅の結晶粒界に高濃度の異種元素が偏在することなく、合金膜の抵抗を低く保つことができる。さらに、下層導電膜と上層導電膜との間には、合金膜のみが設けられる。そのため、これらの間の抵抗も低減することができる。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、配線を低抵抗化するとともに、配線材料と層間絶縁膜との密着性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0019】
図1は、本実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。本実施の形態において、デュアルダマシン構造の配線が形成される。
半導体装置100は、トランジスタ等の素子が表面に形成された半導体基板(不図示)、半導体基板上に形成された第1の層間絶縁膜102、第1のエッチング阻止膜104、第2の層間絶縁膜106、第1のキャップ絶縁膜108、第3の層間絶縁膜110、第2のエッチング阻止膜112、および第4の層間絶縁膜114を含む。
【0020】
半導体装置100は、第1のエッチング阻止膜104および第2の層間絶縁膜106中に形成された第1のバリア絶縁膜120および下層配線126(下層導電膜)と、第1のキャップ絶縁膜108、第3の層間絶縁膜110、第2のエッチング阻止膜112、および第4の層間絶縁膜114中に形成された第2のバリア絶縁膜128および上層配線134とを含む。下層配線126は、第1の接着合金膜122および第1の銅含有導電膜124により構成される。上層配線134は、第2の接着合金膜130(合金膜)および第2の銅含有導電膜132により構成される。第1の銅含有導電膜124および第2の銅含有導電膜132は、たとえば微量のAlやAg等の銅以外の金属を含むことができるが、銅を主成分として含む材料により構成される。本実施の形態において、第1の銅含有導電膜124および第2の銅含有導電膜132は、銅膜とすることができる。
【0021】
第1のバリア絶縁膜120および第2のバリア絶縁膜128は、銅の拡散を防止する材料により構成される。第1のバリア絶縁膜120および第2のバリア絶縁膜128は、実質的に酸素を含まない材料により構成される。これにより、合金膜とバリア絶縁膜との間の密着性を向上させることができる。とくに、絶縁膜が酸素を含む場合、絶縁膜と銅膜との密着性が劣化するという問題がある。これは、銅膜が絶縁膜中の酸素により酸化されるためだと考えられる。しかし、本実施の形態において、バリア絶縁膜が酸素を実質的に含まないので、合金膜が界面に銅を含む場合でも、密着性を良好にすることができる。また、このような密着性の劣化を防ぐことにより、バリア絶縁膜の拡散防止機能を向上させることができる。さらに、バリア絶縁膜が酸素を実質的に含まないので、合金膜が酸化されるのを防ぐことができる。これにより、上記のように密着性を良好にすることができるとともに、配線を低抵抗化することができる。さらに、配線容量を設計通りに保つことができる。第1のバリア絶縁膜120および第2のバリア絶縁膜128は、たとえばSiN膜(シリコン窒化膜)またはSiCN膜により構成することができる。
【0022】
本実施の形態において、第1の接着合金膜122および第2の接着合金膜130は、銅と銅とは異なる異種元素との合金膜により構成される。ここで、接着合金膜中の異種元素の含有量は、たとえば、接着合金膜を構成する材料に対する異種元素の含有率が0.1質量%以上とすることができる。また、接着合金膜中の異種元素の含有量は、たとえば、接着合金膜を構成する材料に対する異種元素の含有率が30質量%以下とすることができる。第1の接着合金膜122は、第1のバリア絶縁膜120および第1の銅含有導電膜124の間にこれらに接して設けられる。第1の接着合金膜122は、銅を含むため、第1の銅含有導電膜124に対して良好な接着性を示す。同様に、第2の接着合金膜130は、第2のバリア絶縁膜128および第2の銅含有導電膜132の間にこれらに接して設けられる。第2の接着合金膜130は、銅を含むため、第2の銅含有導電膜132に対して良好な接着性を示す。また、第1のバリア絶縁膜120および第2のバリア絶縁膜128は、それぞれ、バリア絶縁膜120および第2のバリア絶縁膜128に対して良好な接着性を有する材料により構成することができる。
【0023】
以下、第2の接着合金膜130を例として説明する。第1の接着合金膜122も第2の接着合金膜130と同様の構成とすることができる。第2の接着合金膜130において、第2の銅含有導電膜132と接する界面から第2のバリア絶縁膜128と接する界面にわたって、銅と異種元素の組成が略均一となるようにすることができる。本実施の形態において、第2の接着合金膜130は、比抵抗の低い銅を含むとともに、銅と異種元素との合金により構成される。これにより、第2の接着合金膜130を低抵抗化することができる。また、第2の接着合金膜130は、銅と異種元素との化合物により構成することもできる。これにより、第2の接着合金膜130をさらに低抵抗化することができる。
【0024】
第2の接着合金膜130に含まれる異種元素は、第2のバリア絶縁膜128を構成する少なくとも一の元素とすることができる。たとえば、第2のバリア絶縁膜128がSiを含む場合、異種元素は、Siとすることができる。第2の接着合金膜130は、銅シリサイド層により構成することができる。
【0025】
また、第2の接着合金膜130に含まれる異種元素は、Hf、Ta、Ti、Nb、およびZrから選択される少なくとも一の金属元素とすることができる。このような金属元素は、銅よりも表面張力が大きく、銅を主成分とする膜に比べて絶縁膜に対する密着性が良好になる。
【0026】
第1のバリア絶縁膜120は、第1のエッチング阻止膜104および第2の層間絶縁膜106に形成された凹部側壁を覆うように形成される。第1の接着合金膜122は、第1のエッチング阻止膜104および第2の層間絶縁膜106に形成された凹部内壁を覆うように、第1のバリア絶縁膜120に接して形成される。第1の銅含有導電膜124は、第1の接着合金膜122上に第1の接着合金膜122に接して凹部を埋め込んで形成される。
【0027】
第2のバリア絶縁膜128は、第1のキャップ絶縁膜108、第3の層間絶縁膜110、および第2のエッチング阻止膜112に形成された凹部側壁を覆うように形成される。第2の接着合金膜130は、凹部の底面で第1の銅含有導電膜124に接するとともに凹部の側壁で第2のバリア絶縁膜128に接して凹部内壁を覆うように形成される。第2の銅含有導電膜132は、第2の接着合金膜130上に第2の接着合金膜130に接して凹部を埋め込んで形成される。
【0028】
なお、ここでは、凹部底部全面に第1のバリア絶縁膜120が形成された例を示すが、下層配線126がさらにその下層の配線等と接続される場合、第2のバリア絶縁膜128と同様、接続箇所には第1のバリア絶縁膜120が形成されないようにすることができる。
【0029】
次に、半導体装置100の製造手順を説明する。図2および図3は、本実施の形態における半導体装置100の製造手順を示す工程断面図である。
ここでは、下層配線126が形成された状態からの手順を説明する。下層配線126を形成後、下層配線126上に、第1のキャップ絶縁膜108、第3の層間絶縁膜110、第2のエッチング阻止膜112、および第4の層間絶縁膜114をこの順で積層する。
【0030】
第3の層間絶縁膜110および第4の層間絶縁膜114は、SiおよびOを含む材料により構成することができる。本実施の形態において、第3の層間絶縁膜110および第4の層間絶縁膜114は、低誘電率膜により構成することができる。第3の層間絶縁膜110および第4の層間絶縁膜114は、たとえば、SiOCにより構成することができる。第2の層間絶縁膜106も、第3の層間絶縁膜110等と同様の材料により構成することができる。第1の層間絶縁膜102は、たとえばSiOにより構成することができる。
【0031】
第2のエッチング阻止膜112は、たとえば、SiC、SiCN、SiOC、またはSiON等により構成することができる。第1のエッチング阻止膜104も第2のエッチング阻止膜112と同様の材料により構成することができる。第1のキャップ絶縁膜108は、たとえばSiCNにより構成することができる。
【0032】
つづいて、第4の層間絶縁膜114、第2のエッチング阻止膜112、第3の層間絶縁膜110および第1のキャップ絶縁膜108をエッチングして、第1の銅含有導電膜124に達するデュアルダマシン配線溝140を形成する。これにより、デュアルダマシン配線溝140の底部に、第1の銅含有導電膜124の表面が露出する(図2(a))。
【0033】
次いで、デュアルダマシン配線溝140内壁を覆うように、第2のバリア絶縁膜128を形成する(図2(b))。第2のバリア絶縁膜128は、CVD法(化学気相成長法)により堆積させて形成することができる。ここで、第2のバリア絶縁膜128は、SiN膜とすることができる。このように、第2のバリア絶縁膜128をCVD法等により、堆積させて形成することにより、第2のバリア絶縁膜128の構成材料が第3の層間絶縁膜110や第4の層間絶縁膜114の構成材料に依存しないようにすることができる。これにより、たとえば第3の層間絶縁膜110や第4の層間絶縁膜114が酸素を含む場合でも、第2のバリア絶縁膜128が酸素を実質的に含まない構成とすることができる。これにより、上述したように、第2の接着合金膜130との密着性を向上させたり、銅の拡散防止機能を向上させたり、第2の接着合金膜130の酸化を防ぐことができる。
【0034】
その後、デュアルダマシン配線溝140底部の第1の銅含有導電膜124と接する領域に形成された第2のバリア絶縁膜128(膜厚約1〜20nm)を選択的に除去して、第1の銅含有導電膜124を露出させる(図2(c))。図2(b)に示したように、デュアルダマシン配線溝140内にCVD法で第2のバリア絶縁膜128を形成した場合、第2のバリア絶縁膜128は、デュアルダマシン配線溝140底部の第1の銅含有導電膜124と接する領域において、他の領域よりも膜厚が薄く形成される。そのため、本実施の形態において、第2のバリア絶縁膜128を全面的にドライエッチングすることにより、デュアルダマシン配線溝140底部の第2のバリア絶縁膜128を選択的に除去することができる。
【0035】
つづいて、デュアルダマシン配線溝140内壁を覆うように、第2の接着合金膜130(膜厚約1〜20nm)を形成する(図3(a))。異種元素がSiの場合、第2の接着合金膜130は、たとえば銅を含む原料とSiを含む原料とを用いたALD(Atomic Layer Deposition)法により形成することができる。また、スパッタ法やALD法により銅膜を形成した後、Siを含む分子のクラスタイオンを用いたガスクラスタイオンビームを銅膜に照射する方法により形成することもできる。また、第2の接着合金膜130は、銅と異種元素との合金をターゲットとして用いて、スパッタリング法により形成することもできる。
【0036】
次いで、第2の接着合金膜130に接するとともに、デュアルダマシン配線溝140を埋め込む第2の銅含有導電膜132を形成する(図3(b))。第2の銅含有導電膜132の製造方法はとくに制限されず、たとえば、無電解めっき法、電解めっき法、CVD法、ALD法、または超臨界流体法等により形成することができる。第2の銅含有導電膜132を電解めっき法で形成する場合、第2の接着合金膜130をシード膜として用いることができる。これにより、シード膜を形成する工程を省略することができる。ただし、第2の接着合金膜130の膜厚が薄い等の場合、第2の接着合金膜130上に銅を含むシード膜を形成し、当該シード膜を用いてめっき法により第2の銅含有導電膜132を形成することもできる。
【0037】
その後、デュアルダマシン配線溝140外部に露出した第2の銅含有導電膜132、第2の接着合金膜130、および第2のバリア絶縁膜128をCMPで除去する。これにより、図1に示した構成の半導体装置100が形成される。
【0038】
また、図3(c)に示すように、第2のバリア絶縁膜128はCMPで除去せず、デュアルダマシン配線溝140外部に残したままで上層を形成することもできる。このようにすれば、第2のバリア絶縁膜128をCMP時に第4の層間絶縁膜114を保護する保護膜として機能させることができる。
【0039】
従来のように配線に、TiNやW系の膜等のバリアメタル膜が形成された場合、銅含有導電膜をCMPで除去する工程につづいて、配線溝外部に露出したバリアメタル膜をCMPで除去していた。この場合、銅含有導電膜とバリアメタル膜とでは、CMP用研磨液が異なるため、別工程でCMPを行う必要があった。しかし、本実施の形態においては、配線にバリアメタル膜が形成されない。第1の接着合金膜122は、第1の銅含有導電膜124と同様に銅を含む材料により構成される。そのため、第1の銅含有導電膜124および第1の接着合金膜122を同時にCMPで除去することができ、工程を簡略化することができる。
【0040】
また、従来のバリアメタル膜は、標準電極電位が銅含有導電膜よりも高く、銅含有導電膜とバリアメタル膜とが接した状態でCMP用研磨液にさらされると、両者の標準電極電位の差異により局部電池が形成される。そのため、両者に電流が流れ、バリアメタル膜のガルバニック腐食が生じるという問題もあった。しかし、本実施の形態においては、配線にバリアメタル膜が形成されない。第1の接着合金膜122に含まれる異種元素は銅よりも標準電極電位が低いため、接着合金膜122は、銅を主成分として含む第1の銅含有導電膜124よりも低い標準電極電位を取る。そのため、バリアメタル膜を用いた場合に問題となるガルバニック腐食を防ぐこともできる。
【0041】
また、第1の接着合金膜122に銅が含まれるため、第1の接着合金膜122と第1の銅含有導電膜124との標準電極電位が近くなる。そのため、第1の銅含有導電膜124をめっき法で形成する際に、第1の接着合金膜122をシード膜として用いることができ、シード膜を別途形成する必要がなく、工程をさらに簡略化することができる。
【0042】
以上のように、本実施の形態において、バリア絶縁膜と銅含有導電膜との間に接着合金膜が設けられているので、バリア絶縁膜と銅含有導電膜との密着性を良好にすることができる。また、第1の銅含有導電膜124と第2の銅含有導電膜132とは、第2の接着合金膜130を介して電気的に接続される。第2の接着合金膜130は、銅と異種元素の合金により構成されるので、従来のバリアメタル膜に比べて抵抗を低くすることができる。これにより、配線抵抗を低減することができる。
【0043】
また、第2の銅含有導電膜132の側面に、従来のバリアメタル膜のような高抵抗の導電性材料が形成されていると、配線の抵抗が高くなるとともに、配線容量が低下してしまう。とくに、半導体装置が微細化されると、バリアメタル膜が配線に占める割合が高くなり、このような問題が顕著となる。本実施の形態においては、第2の銅含有導電膜132の側面にも、従来のバリアメタル膜にかえて、第2の接着合金膜130が形成される。そのため、配線の抵抗を低くすることができるとともに、配線容量の低下を防ぐことができる。
【0044】
また、本実施の形態において、第2の銅含有導電膜132が層間絶縁膜と接する領域には、第2の接着合金膜130を介してバリア絶縁膜が形成されている。第2の銅含有導電膜132の銅が層間絶縁膜に拡散するのを防ぐ拡散防止機能は、バリア絶縁膜により実現される。そのため、第2の接着合金膜130に拡散防止機能を持たせる必要がないため、第2の接着合金膜130の膜厚を薄くすることができる。これにより、配線抵抗をより低抵抗化することができる。
【0045】
さらに、本実施の形態において、合金膜は、比抵抗の低い銅を含むとともに、銅と異種元素との合金により構成される。合金膜が銅含有導電膜と接する界面からバリア絶縁膜と接する界面にわたって、銅と異種元素の組成が略均一となるように形成される。これにより、合金膜を低抵抗化することができる。このように、合金膜がバリア絶縁膜との界面においても銅を含むような構成の場合、合金膜を低抵抗化することができる。
【0046】
さらに、バリア絶縁膜は、実質的に酸素を含まない構成とすることができる。これにより、合金膜との密着性や銅の拡散防止機能を向上させたり、合金膜および銅含有導電膜の酸化を防ぐことができる。本実施の形態における半導体装置100によれば、銅を主成分として構成された銅含有導電膜との間に合金膜が形成されていること、およびバリア絶縁膜は、実質的に酸素を含まない構成であることから、合金膜の酸化を防ぐことができ、合金膜とバリア絶縁膜との密着性を高めることができる。
【実施例】
【0047】
銅膜と絶縁膜との密着性を調べた。ここで、Si基板上にSiO膜を形成し、TaN膜およびTa膜により構成されたバリアメタル膜を形成し、Cu膜を堆積した。つづいて、Cu膜上に絶縁膜を形成した。ここで、絶縁膜は、(i)SiO膜、(ii)SiN膜とした。このようなサンプルの表面にダイヤモンドペンで10×10の升目をけがいて、テープテストを行った。表1に同様の処理を5回実施した平均の結果を示す。絶縁膜がSiN膜の場合、剥がれが生じなかった。一方、絶縁膜がSiO膜の場合、全升目が剥がれた。これは、絶縁膜中に酸素が含まれると、銅膜が絶縁膜との界面で酸化されるために、銅膜と絶縁膜との密着性が劣化するためだと考えられる。
【0048】
【表1】

【0049】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0050】
以上の実施の形態においては、デュアルダマシン構造の配線を例として説明した。デュアルダマシン構造の配線の場合、デュアルダマシン配線溝にバリア絶縁膜を形成する際に、底部のバリア絶縁膜の膜厚が薄く形成される傾向にある。そのため、マスク等を用いることなく、配線溝底部のバリア絶縁膜を選択的に除去することができるという利点がある。しかし、本発明は、シングルダマシン構造に適用することももちろん可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図4】Hf、Ti、Ta、Nb、ZrおよびCuの表面エネルギーの温度依存性を計算した結果を示す図である。
【図5】金属酸化物と金属1mol当たりの生成エンタルピー(kJ/mol)との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
100 半導体装置
102 第1の層間絶縁膜
104 第1のエッチング阻止膜
106 第2の層間絶縁膜
108 第1のキャップ絶縁膜
110 第3の層間絶縁膜
112 第2のエッチング阻止膜
114 第4の層間絶縁膜
120 第1のバリア絶縁膜
122 第1の接着合金膜
124 第1の銅含有導電膜
126 下層配線
128 第2のバリア絶縁膜
130 第2の接着合金膜
132 第2の銅含有導電膜
134 上層配線
140 デュアルダマシン配線溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された下層導電膜と、
前記下層導電膜上に形成され、前記下層導電膜に達する凹部が形成された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜の前記凹部側壁を覆うように形成され、銅の拡散を防止する材料により構成されたバリア絶縁膜と、
前記凹部の底面で前記下層導電膜に接するとともに前記凹部の側壁で前記バリア絶縁膜に接して前記凹部内壁を覆うように形成された銅と銅とは異なる異種元素との合金膜と、
銅を主成分として含み、前記合金膜上に当該合金膜に接して前記凹部を埋め込んで形成された上層導電膜と、を含む半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記バリア絶縁膜は、SiN膜またはSiCN膜である半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記合金膜は、前記異種元素として、前記バリア絶縁膜を構成する少なくとも一の元素を含む半導体装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれかに記載の半導体装置において、
前記バリア絶縁膜および前記合金膜は、ケイ素を含む半導体装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれかに記載の半導体装置において、
前記合金膜は、銅シリサイド層である半導体装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記合金膜は、Hf、Ta、Ti、Nb、およびZrから選択される少なくとも一の金属と銅との合金である半導体装置。
【請求項7】
請求項1から6いずれかに記載の半導体装置において、 前記合金膜は、前記上層導電膜と接する界面から前記バリア絶縁膜と接する界面にわたって、前記銅と前記異種元素の組成が略均一に構成された半導体装置。
【請求項8】
請求項1から7いずれかに記載の半導体装置において、
前記バリア絶縁膜は、実質的に酸素を含まない材料により構成された半導体装置。
【請求項9】
基板上に形成された下層導電膜上に層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜に、前記下層導電膜に達する凹部を形成する工程と、
前記凹部内壁を覆うように、銅の拡散を防止する材料により構成されたバリア絶縁膜を形成する工程と、
前記凹部底面の前記下層導電膜と接する領域の前記バリア絶縁膜を除去して前記下層導電膜を露出させる工程と、
前記凹部内壁を覆うように、銅と銅とは異なる異種元素との合金膜を形成する工程と、
前記凹部内に、銅を主成分として含む上層導電膜を前記合金膜に接して形成し、前記凹部を埋め込む工程と、を含む半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法において、
前記バリア絶縁膜を形成する工程において、化学気相成長法により、前記バリア絶縁膜を形成する半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−258457(P2007−258457A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81084(P2006−81084)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】