半導体装置の製造方法、基板処理方法および基板処理装置
【課題】 高温領域において、膜中の水素濃度が低く、膜厚均一性が良好であり、リーク電流の少ない窒化膜を形成する。
【解決手段】 加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に酸化膜が形成された基板を収容し原料ガスを供給して酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程と、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に窒素含有ガスを供給して所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、その間に処理容器内に不活性ガスを供給してパージする工程を挟んで交互に繰り返して酸化膜上に窒化膜を形成する工程を有し、所定元素含有層を形成する工程では、原料ガスを基板の側方に設けられたノズルを介して供給する際、ノズルを介して不活性ガスまたは水素含有ガスを供給し、基板と平行に流れる原料ガスの流速を、処理容器内をパージする工程において基板と平行に流れる不活性ガスの流速より大きくする。
【解決手段】 加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に酸化膜が形成された基板を収容し原料ガスを供給して酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程と、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に窒素含有ガスを供給して所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、その間に処理容器内に不活性ガスを供給してパージする工程を挟んで交互に繰り返して酸化膜上に窒化膜を形成する工程を有し、所定元素含有層を形成する工程では、原料ガスを基板の側方に設けられたノズルを介して供給する際、ノズルを介して不活性ガスまたは水素含有ガスを供給し、基板と平行に流れる原料ガスの流速を、処理容器内をパージする工程において基板と平行に流れる不活性ガスの流速より大きくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板上に薄膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法及び基板処理方法、並びにその工程で好適に用いられる基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラッシュメモリは、絶縁膜で囲まれた電子蓄積領域(浮遊ゲート)を備え、薄いトンネル酸化膜を介した電子のやり取りによって、情報の書き込みを行うと同時に、この薄い酸化膜の絶縁性を利用し長時間にわたり電子を保持し記憶を保つのが動作原理である。フラッシュメモリでは、書込み、消去時に電子やホール(正孔)がトンネル絶縁膜を通って浮遊ゲートにたまることによって情報が記憶されるが、微細化が進むに従い、トンネル絶縁膜におけるEOT(Equivalent Oxide Thickness:酸化膜換算膜厚)の薄膜化が求められている。そこで、酸化膜(SiO2膜、以下、単にSiO膜ともいう)と比較し誘電率が高い窒化膜(Si3N4膜、以下、単にSiN膜ともいう)をトンネル絶縁膜として用いることも考えられるが、SiN膜は欠陥密度が高く、その低減が求められている。欠陥として知られているダングリングボンドなどの構造欠陥は容易に水素と結合するため、膜中の水素原子が多い膜は欠陥密度の高い膜と言い換えることが出来、水素を含まない高品質なSiN膜が求められている。
【0003】
従来、SiN膜は、例えば700℃〜800℃付近の温度帯でSiH2Cl2ガスとNH3ガスとを用いたCVD(Chemical Vapor Deposition)法により成膜されているが、CVD法で形成されたSiN膜(CVD−SiN膜)は欠陥密度が高いこと、TDS(昇温脱離法)による水素の定量値で10の21乗オーダーの水素を含有することから、これらの改善が望まれる。
【0004】
また、CVD法では膜厚均一性やステップカバレッジ特性の制約により、成膜温度の高温化による水素低減は困難であり、CVD法に代わる成膜手法が望まれている。
【0005】
CVD法に代わる手法として挙げられるALD(Atomic Layer Deposition)法では、例えばSiH2Cl2ガスとNH3ガスとを用いたALD−SiN成膜の場合、原材料に水素を含んでおり、ALD法が成り立つ温度領域(〜550℃程度)では、原材料起因の水素が膜中に残留するため、SiH2Cl2ガスとNH3ガスとを用いたALD−SiN成膜に代わる膜厚均一性やステップカバレッジ特性の良い手法が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者等は、鋭意研究の結果、高温領域において、膜中の水素濃度が極めて低く、膜厚均一性が良好な窒化膜を形成する方法を考案した。
【0007】
係る方法では、大気圧未満の圧力に設定されると共に加熱された状態の処理容器内に、基板を収容した状態で、所定元素を含む原料ガスを供給し排気することで基板上に所定元素含有層を形成する工程と、大気圧未満の圧力に設定されると共に加熱された状態の処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気することで所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、その間に処理容器内に不活性ガスを供給し排気して処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返すことで、基板上に所定膜厚の窒化膜を形成する。なお、所定元素含有層を形成する工程において、原料ガスを基板の側方に設けられたノズルから基板に向けて供給し、その際、そのノズルと同じノズルから、原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水
素含有ガスを供給することで、基板の表面と平行方向に流れる原料ガスの流速を、パージの際に基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする。
【0008】
しかしながら、上述の方法で形成した窒化膜は、膜中の水素濃度が極めて低く、膜厚均一性が良好であるにもかかわらず、リーク電流が多くなることがあった。
【0009】
本発明の目的は、高温領域において、膜中の水素濃度が極めて低く、膜厚均一性が良好であり、リーク電流の少ない窒化膜を形成することができる半導体装置の製造方法、基板処理方法および基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成する工程を有し、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする半導体装置の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成する工程を有し、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする基板処理方法が提供される。
【0012】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内を加熱するヒータと、
前記処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理容器内に窒素含有ガスを供給する窒素含有ガス供給系と、
前記処理容器内に不活性ガスまたは水素含有ガスを供給する不活性ガスまたは水素含有ガス供給系と、
前記処理容器内を排気する排気系と、
前記処理容器内の圧力を調整する圧力調整部と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内に前記原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する処理と、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に前記窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる処理とを、その間に前記処理容器内に前記不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする処理を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成すると共に、前記所定元素含有層を形成する処理では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に前記不活性ガスまたは前記水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする処理において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくするように、前記ヒータ、前記原料ガス供給系、前記窒素含有ガス供給系、前記不活性ガスまたは水素含有ガス供給系、前記排気系および前記圧力調整部を制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高温領域において、膜中の水素濃度が極めて低く、膜厚均一性が良好であり、リーク電流の少ない窒化膜を形成することができる半導体装置の製造方法、基板処理方法および基板処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面で示す図である。
【図2】本実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を図1のA−A線断面図で示す図である。
【図3】本実施形態における成膜フローを示す図である。
【図4】本実施形態に係る酸化膜の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミングを示す図であり、堆積・吸着阻害ガスとして不活性ガスを用いる例を示している。
【図5】本実施形態に係る酸化膜の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミングを示す図であり、堆積・吸着阻害ガスとして水素含有ガスを用いる例を示している。
【図6】本実施形態に係る窒化膜の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミングを示す図であり、堆積・吸着阻害ガスとして不活性ガスを用いる例を示している。
【図7】本実施形態に係る窒化膜の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミングを示す図であり、堆積・吸着阻害ガスとして水素含有ガスを用いる例を示している。
【図8】SiO膜を介して形成したSiN膜(実施例)及びウエット酸化により形成したSiO膜(参考例)のリーク電流密度及びEOTをそれぞれ示すグラフ図である。
【図9】SiO膜を介さずにウエハ上に直接形成したSiN膜(比較例)及びウエット酸化により形成したSiO膜(参考例)のリーク電流密度及びEOTをそれぞれ示すグラフ図である。
【図10】シリコンの堆積またはHCDガスの吸着の様子を模式的に示す図であり、(a)はHCDガスの流速が小さい場合、(b)はHCDガスの流速が大きい場合をそれぞれ示している。
【図11】本実施形態に係る成膜シーケンスによりウエハ上にシリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが順に積層された様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明者等は、上述した窒化膜のリーク電流の増大要因について鋭意研究を行った。その結果、窒化膜の成膜温度を高温化すると、温度上昇時間および温度安定時間が長くなり、基板表面上における吸着酸素や巻き込み酸素等による基板表面と窒化膜との界面への影響
が大きくなることが、この現象の一要因となることを究明した。また、窒化膜の成膜温度を高温化することにより、サーマルエッチングによるエッチピット等のダメージが基板表面に生じ、基板の実効的な表面積が増大することがあり、これが窒化膜の電気特性に影響を与える一要因となることも究明した。また、基板表面の酸化(母材酸化)により形成される従来の熱酸化膜は、基板と熱酸化膜との界面が常に更新されるため良好な特性を持つが、基板上に窒化物を堆積させることにより形成される窒化膜は、基板と窒化膜との界面が更新されないため、エッチピット等のダメージがそのまま残留し、この界面特性が窒化膜の電気特性に影響を与える一要因となることも究明した。
【0016】
そして発明者等は、上述の課題は、窒化膜を基板上に直接形成するのではなく、所定膜厚の酸化膜を介して形成することで、解決可能との知見を得た。すなわち、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程と、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、その間に処理容器内に不活性ガスを供給し排気して処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成する場合に、所定元素含有層を形成する工程では、原料ガスを基板の側方に設けられたノズルを介して基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを基板に向けて供給することで、基板の表面と平行方向に流れる原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする。これにより、高温領域において、膜中の水素濃度が極めて低く、膜厚均一性が良好であり、リーク電流の少ない窒化膜を形成することが可能であるとの知見を得た。
【0017】
窒化膜の下地膜として酸化膜を予め形成することで、窒化膜の成膜温度を高温化したとしても、基板表面上における吸着酸素や巻き込み酸素等が基板表面と窒化膜との界面へ及ぼす影響を低減することができる。また、基板表面が酸化膜により覆われることで、窒化膜の成膜温度を高温化したとしても、サーマルエッチングによる基板表面でのエッチピット等の発生を抑制でき、基板表面の実効的な表面積の増加を防ぐことができる。これらにより、窒化膜の電気特性へ及ぼす影響を低減でき、窒化膜のリーク電流を低減できる。なお、下地膜としての酸化膜は、基板上に酸化膜を堆積させることにより形成してもよく、基板の表面を熱酸化させることにより形成してもよい。酸化膜の膜厚は、2nm以上4nm以下の範囲内であって例えば2nmとすることが好ましい。酸化膜及び窒化膜の形成は、同一の処理容器内で(in−situで)連続的に行ってもよく、異なる処理容器内で別々に行ってもよい。
【0018】
なお、酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程は、CVD反応が生じる条件下で行う。このとき酸化膜上に1原子層未満から数原子層程度の所定元素含有層としての所定元素層を形成する。所定元素含有層は所定元素を含む原料ガス(以下、単に原料ガスともいう)の吸着層であってもよい。ここで、所定元素層とは、所定元素により構成される連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできる薄膜をも含む総称である。なお、所定元素により構成される連続的な層を薄膜という場合もある。また、原料ガスの吸着層とは原料ガスのガス分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。なお、1原子層未満の層とは不連続に形成される原子層のことを意味している。原料ガスが自己分解する条件下では酸化膜上に所定元素が堆積することで所定元素層が形成される。原料ガスが自己分解しない条件下では、酸化膜上に原料ガスが吸着することで原料ガスの吸着層が形成される。なお、酸化膜上に原料ガスの吸着層を形成するよりも、所定元素層を形成する方が、成膜レートを高くすることができ好ましい。
【0019】
また、所定元素含有層を窒化層に変化させる工程では、大気圧未満の圧力雰囲気下にあ
る処理容器内で窒素含有ガスを熱で活性化させるか熱分解させて窒素を含む窒化種を生成し、この窒化種により所定元素含有層を窒化して窒化層に変化させる(改質する)。すなわち、この窒化種と所定元素含有層とを反応させて、所定元素含有層を窒化層に変化させる。所定元素含有層を窒化層に変化させる工程はノンプラズマの減圧雰囲気下で行うことができる。なお、所定元素含有層を窒化層に変化させる工程では、窒素含有ガスをプラズマで活性化させて用いることもできる。
【0020】
そして、所定元素含有層を形成する工程において、原料ガスを基板の側方に設けられたノズルから基板に向けて供給し、その際、そのノズルと同じノズルから、原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを供給することで、基板の表面と平行方向に流れる原料ガスの流速を、パージの際に基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする。このように、基板の表面と平行方向に流れる原料ガスの流速を高めることで、酸化膜上への所定元素含有層の堆積または吸着を阻害(抑制)させつつ基板上に所定元素含有層を形成することができるようになり、所定元素含有層の堆積または吸着中心を基板のエッジ側からセンタよりに移動させることが可能となる。その結果として、高温領域において、膜厚均一性が良好な窒化膜を形成することが可能となる。
【0021】
本発明は、発明者等が得たかかる知見に基づいてなされたものである。以下に、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
<本発明の一実施形態>
(1)基板処理装置の構成
図1は、本実施の形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面で示している。また、図2は本実施の形態で好適に用いられる縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を図1のA−A線断面図で示している。なお、本発明は、本実施形態にかかる基板処理装置に限らず、枚葉式、Hot Wall型、Cold Wall型の処理炉を有する基板処理装置にも好適に適用できる。
【0023】
図1に示されているように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。なお、ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化させる活性化機構としても機能する。
【0024】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の筒中空部には処理室201が形成されており、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0025】
処理室201内には、第1ガス導入部としての第1ノズル233aと、第2ガス導入部としての第2ノズル233bとが、反応管203の下部側壁を貫通するように設けられている。第1ノズル233aには、第1ガス供給管232aが接続されている。また、第2ノズル233bには、第2ガス供給管232b、第3ガス供給管232c及び第4ガス供給管232dが接続されている。このように、反応管203には2本のノズル233a、233bと、4本のガス供給管232a、232b、232c、232dが設けられており、処理室201内へ複数種類、ここでは4種類のガスを供給することができるように構成されている。
【0026】
第1ガス供給管232aには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマ
スフローコントローラ(MFC)241a、及び開閉弁であるバルブ243aが設けられている。また、第1ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、第1不活性ガス供給管232eが接続されている。この第1不活性ガス供給管232eには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241e、及び開閉弁であるバルブ243eが設けられている。また、第1ガス供給管232aの先端部には、上述の第1ノズル233aが接続されている。第1ノズル233aは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第1ノズル233aは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方に設けられている。第1ノズル233aはL字型のロングノズルとして構成されている。第1ノズル233aの側面にはガスを供給するガス供給孔248aが設けられている。ガス供給孔248aは反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。このガス供給孔248aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0027】
主に、第1ガス供給管232a、マスフローコントローラ241a、バルブ243aにより第1ガス供給系が構成される。なお、第1ノズル233aを第1ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、第1不活性ガス供給管232e、マスフローコントローラ241e、バルブ243eにより、第1不活性ガス供給系が構成される。第1不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
【0028】
第2ガス供給管232bには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241b、及び開閉弁であるバルブ243bが設けられている。また、第2ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、第2不活性ガス供給管232fが接続されている。この第2不活性ガス供給管232fには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241f、及び開閉弁であるバルブ243fが設けられている。また、第2ガス供給管232bの先端部には、上述の第2ノズル233bが接続されている。第2ノズル233bは、ガス分散空間であるバッファ室237内に設けられている。
【0029】
バッファ室237は反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。すなわち、バッファ室237は、ウエハ配列領域の側方に設けられている。バッファ室237のウエハ200と隣接する壁の端部にはガスを供給するガス供給孔248cが設けられている。ガス供給孔248cは反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。このガス供給孔248cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0030】
第2ノズル233bは、バッファ室237のガス供給孔248cが設けられた端部と反対側の端部に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第2ノズル233bは、ウエハ配列領域の側方に設けられている。第2ノズル233bはL字型のロングノズルとして構成されている。第2ノズル233bの側面にはガスを供給するガス供給孔248bが設けられている。ガス供給孔248bはバッファ室237の中心を向くように開口している。このガス供給孔248bは、バッファ室237のガス供給孔248cと同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。この複数のガス供給孔248bのそれぞれの開口面積は、バッファ室237内と処理室201内の差圧が小さい場合には、上流側(下部)から下流側(上部)まで、それぞれ同一の開口面積で同一の開口ピッチと
するとよいが、差圧が大きい場合には上流側から下流側に向かって、それぞれ開口面積を大きくするか、開口ピッチを小さくするとよい。
【0031】
本実施形態においては、第2ノズル233bのガス供給孔248bのそれぞれの開口面積や開口ピッチを、上流側から下流側にかけて上述のように調節することで、まず、ガス供給孔248bのそれぞれから、流速の差はあるものの、流量がほぼ同量であるガスを噴出させる。そしてこのガス供給孔248bのそれぞれから噴出するガスを、一旦、バッファ室237内に導入し、バッファ室237内においてガスの流速差の均一化を行うこととしている。すなわち、第2ノズル233bのガス供給孔248bのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスはバッファ室237内で各ガスの粒子速度が緩和された後、バッファ室237のガス供給孔248cより処理室201内に噴出する。これにより、第2ノズル233bのガス供給孔248bのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスは、バッファ室237のガス供給孔248cのそれぞれより処理室201内に噴出する際には、均一な流量と流速とを有するガスとなる。
【0032】
主に、第2ガス供給管232b、マスフローコントローラ241b、バルブ243bにより第2ガス供給系が構成される。なお、第2ノズル233bおよびバッファ室237を第2ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、第2不活性ガス供給管232f、マスフローコントローラ241f、バルブ243fにより第2不活性ガス供給系が構成される。第2不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
【0033】
第3ガス供給管232cには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241c、及び開閉弁であるバルブ243cが設けられている。また、第3ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、第3不活性ガス供給管232gが接続されている。この第3不活性ガス供給管232gには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241g、及び開閉弁であるバルブ243gが設けられている。また、第3ガス供給管232cの先端部は、第2ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側に接続されている。
【0034】
主に、第3ガス供給管232c、マスフローコントローラ241c、バルブ243cにより第3ガス供給系が構成される。なお、第2ガス供給管232bの第3ガス供給管232cとの接続部よりも下流側、第2ノズル233bおよびバッファ室237を第3ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、第3不活性ガス供給管232g、マスフローコントローラ241g、バルブ243gにより第3不活性ガス供給系が構成される。第3不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
【0035】
第4ガス供給管232dには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241d、及び開閉弁であるバルブ243dが設けられている。また、第4ガス供給管232dのバルブ243dよりも下流側には、第4不活性ガス供給管232hが接続されている。この第4不活性ガス供給管232hには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241h、及び開閉弁であるバルブ243hが設けられている。また、第4ガス供給管232dの先端部は、第2ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側に接続されている。
【0036】
主に、第4ガス供給管232d、マスフローコントローラ241d、バルブ243dにより第4ガス供給系が構成される。なお、第2ガス供給管232bの第4ガス供給管232dとの接続部よりも下流側、第2ノズル233bおよびバッファ室237を第4ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、第4不活性ガス供給管232h、マスフローコントローラ241h、バルブ243hにより第4不活性ガス供給系が構成される。第4不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
【0037】
第1ガス供給管232aからは、所定元素を含む原料ガス、すなわち、所定元素としてのシリコン(Si)を含む原料ガス(シリコン含有ガス)として、例えばヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称:HCD)ガスが、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル233aを介して処理室201内に供給される。すなわち、第1ガス供給系は原料ガス供給系(シリコン含有ガス供給系)として構成される。なお、HCDのように常温常圧下で液体状態である液体原料を用いる場合は、液体原料を気化器やバブラ等の気化システムにより気化して、原料ガスとして供給することとなる。このとき同時に、第1不活性ガス供給管232eから、堆積・吸着阻害ガスとしての不活性ガスが、マスフローコントローラ241e、バルブ243eを介して第1ガス供給管232a内に供給される。ここで、堆積・吸着阻害ガスとは、ウエハ200表面上へのシリコンの堆積またはHCDガスの吸着を阻害させるためのガスのことである。第1ガス供給管232a内に供給された堆積・吸着阻害ガスとしての不活性ガスは、第1ノズル233aを介してHCDガスと一緒に処理室201内に供給される。なおこのとき、堆積・吸着阻害ガスとして、不活性ガスの代わりに水素含有ガスを第1ガス供給管232a内に供給するようにしてもよい。この場合、第1不活性ガス供給系を水素含有ガス供給系に置き換えればよい。すなわちこの場合、水素含有ガス供給系は、水素含有ガス供給管232e、マスフローコントローラ241e、バルブ243eにより構成されることとなる。このように、第1不活性ガス供給系は堆積・吸着阻害ガス供給系としても構成され、水素含有ガス供給系に置き換えることも可能となっている。
【0038】
第2ガス供給管232bからは、窒素を含むガス(窒素含有ガス)として、例えばアンモニア(NH3)ガスが、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2ノズル233b、バッファ室237を介して処理室201内に供給される。すなわち、第2ガス供給系は窒素含有ガス供給系として構成される。このとき同時に、第2不活性ガス供給管232fから、不活性ガスが、マスフローコントローラ241f、バルブ243fを介して第2ガス供給管232b内に供給されるようにしてもよい。
【0039】
第3ガス供給管232cからは、酸素を含むガス(酸素含有ガス)として、例えば酸素(O2)ガスが、マスフローコントローラ241c、バルブ243c、第2ガス供給管232b、第2ノズル233b、バッファ室237を介して処理室201内に供給される。すなわち、第3ガス供給系は酸素含有ガス供給系として構成される。このとき同時に、第3不活性ガス供給管232gから、不活性ガスが、マスフローコントローラ241g、バルブ243gを介して第3ガス供給管232c内に供給されるようにしてもよい。
【0040】
第4ガス供給管232dからは、水素を含むガス(水素含有ガス)として、例えば水素(H2)ガスが、マスフローコントローラ241d、バルブ243d、第2ガス供給管232b、第2ノズル233b、バッファ室237を介して処理室201内に供給される。すなわち、第4ガス供給系は水素含有ガス供給系として構成される。このとき同時に、第4不活性ガス供給管232hから、不活性ガスが、マスフローコントローラ241h、バルブ243hを介して第4ガス供給管232d内に供給されるようにしてもよい。
【0041】
なお、本実施形態では、NH3ガスとO2ガスとH2ガスとを同じノズルから処理室201内(バッファ室237内)に供給するようにしているが、それぞれを別々のノズルから処理室201内に供給するようにしてもよく、H2ガスのみを別のノズルから処理室201内に供給するようにしてもよい。ただし、複数種類のガスでノズルを共用とした方が、ノズルの本数を減らすことができ、装置コストを低減することができ、メンテナンスも容易になる等のメリットがある。また、H2ガスとHCDガスとを同じノズルから処理室201内に供給するようにしてもよい。後述する成膜温度帯では、H2ガスとHCDガスとは反応しないが、NH3ガスとHCDガス、及びO2ガスとHCDガスとはそれぞれ反
応することが考えられるので、NH3ガスやO2ガスを供給するノズルと、HCDガスを供給するノズルとは別にした方がよい。
【0042】
バッファ室237内には、図2に示すように、細長い構造を有する第1の電極である第1の棒状電極269及び第2の電極である第2の棒状電極270が、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積層方向に沿って配設されている。第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれは、第2ノズル233bと平行に設けられている。第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれは、上部より下部にわたって各電極を保護する保護管である電極保護管275により覆われることで保護されている。この第1の棒状電極269又は第2の棒状電極270のいずれか一方は整合器272を介して高周波電源273に接続され、他方は基準電位であるアースに接続されている。この結果、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間のプラズマ生成領域224にプラズマが生成される。主に、第1の棒状電極269、第2の棒状電極270、電極保護管275、整合器272、高周波電源273によりプラズマ発生器(プラズマ発生部)としてのプラズマ源が構成される。なお、プラズマ源は、後述するようにガスをプラズマで活性化させる活性化機構として機能する。
【0043】
電極保護管275は、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれをバッファ室237の雰囲気と隔離した状態でバッファ室237内に挿入できる構造となっている。ここで、電極保護管275の内部は外気(大気)と同一雰囲気であると、電極保護管275にそれぞれ挿入された第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270はヒータ207による熱で酸化されてしまう。そこで、電極保護管275の内部には窒素などの不活性ガスを充填あるいはパージし、酸素濃度を充分低く抑えて第1の棒状電極269又は第2の棒状電極270の酸化を防止するための不活性ガスパージ機構が設けられている。
【0044】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。なお、APCバルブ244は弁を開閉して処理室201内の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能なように構成されている開閉弁である。真空ポンプ246を作動させつつ、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいてAPCバルブ244の弁の開度を調節することにより、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、真空ポンプ246、圧力センサ245により排気系が構成される。
【0045】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は反応管203の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、後述する基板保持具としてのボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255はシールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内に対して搬入・搬出することが可能なように構成されている。
【0046】
基板支持具としてのボート217は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなり、複数枚のウエハ200を水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に支持するように構成されている。なお、ボート217の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる断熱部材218が設けられており、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなるように構成されている。なお、断熱部材218は、石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる複数枚の断熱板と、これら断熱板を水平姿勢で多段に支持する断熱板ホルダとにより構成してもよい。
【0047】
反応管203内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、第1ノズル233a及び第2ノズル233bと同様に、L字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0048】
制御部(制御手段)であるコントローラ121は、マスフローコントローラ241a,241b,241c,241d,241e,241f,241g,241h、バルブ243a,243b,243c,243d,243e,243f,243g,243h、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115、高周波電源273、整合器272等に接続されている。コントローラ121により、マスフローコントローラ241a,241b,241c,241d,241e,241f,241g,241hによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a,243b,243c,243d,243e,243f,243g,243hの開閉動作、APCバルブ244の開閉及び圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動・停止、回転機構267の回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等の制御や、高周波電源273の電力供給制御、整合器272によるインピーダンス制御が行われる。
【0049】
(2)基板処理工程
次に、上述の基板処理装置の処理炉を用いて、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に下地膜として所定膜厚の酸化膜を形成した後、下地膜としての酸化膜上に窒化膜を成膜する方法の例について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0050】
図3に本実施形態における成膜フロー図を、図4、図5に本実施形態に係る酸化膜の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミング図を、図6、図7に本実施形態に係る窒化膜の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミング図をそれぞれ示す。
【0051】
本実施形態の成膜シーケンスでは、まず、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、基板を収容した状態で、所定元素としてのシリコンを含む原料ガスを供給し排気して、基板上に所定元素含有層としてのシリコン含有層を形成する工程と、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気して、シリコン含有層を酸化層としてのシリコン酸化層に変化させる工程とを、その間に処理容器内に不活性ガスを供給し排気して処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、基板上に所定膜厚の酸化膜としてのシリコン酸化膜を形成する。
【0052】
そして、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、表面に所定膜厚のシリコン酸化膜が形成された基板を収容した状態で、所定元素としてのシリコンを含む原料ガスを供給し排気して、シリコン酸化膜上に所定元素含有層としてのシリコン含有層を
形成する工程と、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、シリコン含有層を窒化層としてのシリコン窒化層に変化させる工程とを、その間に処理容器内に不活性ガスを供給し排気して処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、シリコン酸化膜上に所定膜厚の窒化膜としてのシリコン窒化膜を形成する。
【0053】
なお、シリコン酸化膜を形成する際及びシリコン窒化膜を形成する際に実施する各シリコン含有層を形成する工程では、それぞれ、原料ガスを基板の側方に設けられたノズルを介して基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して原料ガスと一緒に堆積・吸着阻害ガスとしての不活性ガスまたは水素含有ガスを基板に向けて供給することで、基板の表面と平行方向に流れる原料ガスの流速を、処理容器内をパージする工程において基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする。
【0054】
以下、これを具体的に説明する。なお、本実施形態では、まず、原料ガスとしてHCDガスを、酸素含有ガスとしてO2ガスを、水素含有ガスとしてH2ガスを、堆積・吸着阻害ガスとしてN2ガスまたはH2ガスを、パージガスとしてN2ガスを用い、図3の成膜フロー、図4、図5の成膜シーケンスにより、ウエハ200上にシリコン酸化膜(SiO2膜、以下、単にSiO膜ともいう)を形成する。その後、原料ガスとしてHCDガスを、窒素含有ガスとしてNH3ガスを、堆積・吸着阻害ガスとしてN2ガスまたはH2ガスを、パージガスとしてN2ガスを用い、図3の成膜フロー、図6、図7の成膜シーケンスにより、下地膜としてのシリコン酸化膜上にシリコン窒化膜(Si3N4膜、以下、単にSiN膜ともいう)を形成する。
【0055】
(ウエハチャージ及びボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0056】
(圧力調整及び温度調整)
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。続いて、回転機構267によりボート217及びウエハ200の回転を開始する。
【0057】
(シリコン酸化膜形成工程)
その後、以下のステップ1a〜4aを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施することにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン酸化膜を成膜する。
【0058】
[ステップ1a]
第1ガス供給管232aのバルブ243a、第1不活性ガス供給管232eのバルブ243eを開き、第1ガス供給管232aにHCDガス、第1不活性ガス供給管232eに堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスを流す。N2ガスは、第1不活性ガス供給管232eから流れ、マスフローコントローラ241eにより流量調整される。HCDガスは、第1ガス供給管232aから流れ、マスフローコントローラ241aにより流量調整される。流量調整されたHCDガスは、流量調整されたN2ガスと第1ガス供給管232a内で
混合されて、第1ノズル233aのガス供給孔248aから、加熱された減圧状態の処理室201内に供給され、排気管231から排気される(HCDガス+N2ガス供給)。
【0059】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、大気圧未満、例えば10〜1000Paの範囲内の圧力に維持する。マスフローコントローラ241aで制御するHCDガスの供給流量は、例えば20〜1000sccm(0.02〜1slm)の範囲内の流量とする。マスフローコントローラ241eで制御する堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量は、HCDガスの供給流量よりも大流量とし、例えば1000〜20000sccm(1〜20slm)の範囲内の流量とする。HCDガスをウエハ200に晒す時間は、例えば1〜120秒間の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、上述の圧力帯において処理室201内でCVD反応が生じるような温度となるように設定する。すなわちウエハ200の温度が、例えば350〜950℃、好ましくは、700〜800℃の範囲内の温度となるようにヒータ207の温度を設定する。なお、ウエハ200の温度が350℃未満となるとウエハ200上においてHCDが分解、吸着しにくくなる。また、ウエハ200の温度が950℃を超えるとCVD反応が強くなり過ぎ、堆積・吸着阻害ガスの作用が十分に働かず、膜厚均一性の悪化を改善するのが困難となる。一方、ウエハ200の温度が700℃未満の場合、膜厚均一性は比較的良好となり、700℃以上の高温領域において膜厚均一性の悪化が顕著となり、堆積・吸着阻害ガスを用いる本発明が特に有効となる。また、ウエハ200の温度が800℃を超えるとCVD反応が強くなり、膜厚均一性の悪化を改善するには堆積・吸着阻害ガスの流量を更に大流量とする必要が生じ、堆積・吸着阻害ガスの消費量が多くなりコストアップとなる。また、成膜速度が低下してしまうというデメリットもある。例えば、ウエハ200の温度を900℃としたときの成膜速度は、ウエハ200の温度を700〜800℃としたときの成膜速度のおよそ3分の1程度となる。以上のことから、ウエハ200の温度は350〜950℃とするのが好ましく、700〜800℃とするのがより好ましい。
【0060】
上述の条件、すなわちCVD反応が生じる条件下でHCDガスを処理室201内に供給することで、ウエハ200(表面の下地膜)上に1原子層未満から数原子層程度のシリコン含有層としてのシリコン層が形成される。シリコン含有層はHCDガスの吸着層であってもよい。ここでシリコン層とは、シリコンにより構成される連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできるシリコン薄膜をも含む総称である。なお、シリコンにより構成される連続的な層をシリコン薄膜という場合もある。また、HCDガスの吸着層とは、HCDガスのガス分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。なお、1原子層未満の層とは不連続に形成される原子層のことを意味している。HCDガスが自己分解する条件下では、ウエハ200上にシリコンが堆積することでシリコン層が形成される。HCDガスが自己分解しない条件下では、ウエハ200上にHCDガスが吸着することでHCDガスの吸着層が形成される。ウエハ200上に形成されるシリコン含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ3aでの酸化の作用がシリコン含有層の全体に届かなくなる。また、ウエハ200上に形成可能なシリコン含有層の最小値は1原子層未満である。よって、シリコン含有層の厚さは1原子層未満から数原子層程度とするのが好ましい。なお、ウエハ200上にHCDガスの吸着層を形成するよりも、ウエハ200上にシリコン層を形成する方が、成膜レートを高くすることができ好ましい。
【0061】
このとき、上述のように、HCDガスを供給する第1ノズル233aと同じノズルからHCDガスと一緒に堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスを大流量でウエハ200に向けて供給することで、HCDガスの流速、特にウエハ200表面と平行方向に流れる(ウエハ200表面を横切る)HCDガスの流速を速くする。すなわち、HCDガスのウエハ200表面と平行方向への吹き付けを強くする。これにより、ウエハ200上へのシリコンの堆積効率またはHCDガスの吸着効率を下げ、堆積または吸着を抑制させつつウエハ200上にシリコン含有層を形成することができるようになる。この堆積・吸着阻害ガスの
作用により、図10に示すようにシリコン含有層の堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりに移動させることが可能となり、また、シリコン含有層の最も厚い部分と最も薄い部分との差を小さくすることができ、例えば700℃以上の高温領域において吸着反応が崩れる領域、すなわちシリコン含有層の堆積または吸着が過剰となる領域においても、均一にシリコン含有層を形成することが可能となる。
【0062】
なお、図10(a)はウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速が小さい場合におけるシリコンの堆積またはHCDガスの吸着の様子を模式的に示す図である。また、図10(b)はウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速が大きい場合におけるシリコンの堆積またはHCDガスの吸着の様子を模式的に示す図である。なお、図10における白抜き矢印は、HCDガスとN2ガスとの流れる方向を示しており、ウエハ200上の白丸(○)は、ウエハ200上に堆積したSi原子またはウエハ200上に吸着したHCDガス分子を示している。また、図10では、便宜上、ウエハ200の左半分のみを示している。
【0063】
図10に示すように、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を大きくすることにより、シリコン含有層の厚さを全体的に薄くしつつ、シリコン含有層の堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりに移動させることが可能となる。また、シリコン含有層の最も厚い部分と最も薄い部分との差を小さくすることができ、ウエハ200面内にわたり均一にシリコン含有層を形成することが可能となる。
【0064】
なお、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量は、上述のように1〜20slmの範囲内の流量とするのが好ましく、HCDガスの供給流量よりも大流量とするのが好ましい。このようにN2ガスの供給流量を設定し、N2ガスの体積流量を、HCDガスの体積流量よりも大流量とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を、HCDガスを単独で流す場合よりも速くする。すなわち、HCDガスを単独で流す場合よりも強くHCDガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付ける。また、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量は、後述するステップ3aにおいて処理室201内に供給するO2ガスやH2ガスの供給流量よりも大流量とするのが好ましい。このようにN2ガスの供給流量を設定し、N2ガスの体積流量を、O2ガスやH2ガスの体積流量よりも大流量とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を、ウエハ200表面と平行方向に流れるO2ガスやH2ガスの流速よりも速くする。すなわち、O2ガスやH2ガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付けるよりも強く、HCDガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付ける。さらには、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量は、後述するステップ2a,4aにおいて処理室201内に供給するパージガスとしてのN2ガスの供給流量よりも大流量とするのが好ましい。このように堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量を設定し、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量を、パージガスとしてのN2ガスの体積流量よりも大流量とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を、ウエハ200表面と平行方向に流れるパージガスとしてのN2ガスの流速よりも速くする。すなわち、パージガスとしてのN2ガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付けるよりも強く、HCDガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付ける。
【0065】
具体的には、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量は、HCDガスの体積流量の10〜30倍程度であって、パージガスとしてのN2ガスの体積流量の5〜30倍程度とするのが好ましい。堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量をHCDガスの体積流量の10〜30倍程度とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速をより十分に高めることが可能となり、シリコン含有層の堆積または吸着をより十分に抑制でき、堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりにすることが容易となる。また、シリコン含有層の最も厚い部分と最も薄い部分との差を小さく
することも容易となる。結果、膜厚均一性をより十分に改善できることとなる。また、HCDガスの流速が速くなり過ぎ、シリコン含有層の堆積または吸着を抑制し過ぎて、実用的な成膜速度が得られなくなることを防止することができる。
【0066】
Siを含む原料としては、HCDの他、TCS(テトラクロロシラン、SiCl4)、DCS(ジクロロシラン、SiH2Cl2)、SiH4(モノシラン)等の無機原料だけでなく、アミノシラン系の4DMAS(テトラキスジメチルアミノシラン、Si[N(CH3)2]4)、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン、Si[N(CH3)2]3H)、2DEAS(ビスジエチルアミノシラン、Si[N(C2H5)2]2H2)、BTBAS(ビスターシャリーブチルアミノシラン、SiH2[NH(C4H9)]2)などの有機原料を用いてもよい。
【0067】
堆積・吸着阻害ガスとしての不活性ガスとしては、N2ガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。また、堆積・吸着阻害ガスとしては、水素含有ガスを用いてもよい。水素含有ガスとしては、例えば水素(H2)ガスや重水素(D2)ガス等を用いることができる。図5に、堆積・吸着阻害ガスとして水素含有ガスであるH2ガスを用いた成膜シーケンス例を示す。堆積・吸着阻害ガスとしてのH2ガスの供給流量は、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量と同様、1000〜20000sccm(1〜20slm)の範囲内の流量とする。なお、堆積・吸着阻害ガスとしては、窒素(N)を含まないガスであるArやHe等の希ガスやH2ガスやD2ガス等の水素含有ガスを使用することで、形成されるシリコン酸化膜の膜中N不純物濃度を低減できる効果もある。
【0068】
[ステップ2a]
ウエハ200上にシリコン含有層が形成された後、第1ガス供給管232aのバルブ243aを閉じ、HCDガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、残留したHCDガスを処理室201内から排除する。このとき、バルブ243eは開いたままとして、不活性ガスとしてのN2ガスの処理室201内への供給を維持する。このときバルブ243f,243g,243hを開くようにしてもよい。N2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のHCDガスを処理室201内から排除する効果を更に高めることができる(残留ガス除去)。
【0069】
このときのヒータ207の温度は、ウエハ200の温度がHCDガスの供給時と同じく350〜950℃、好ましくは700〜800℃の範囲内の温度となるように設定する。パージガスとしてのN2ガスの供給流量は、200〜1000sccm(0.2〜1slm)の範囲内の流量とする。なお、パージガスとしてのN2ガスの体積流量は、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量ほど大きくする必要はなく、それより小流量で十分なパージ効果が得られる。逆にいうと、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量は、パージガスとしてのN2ガスの体積流量よりも大きくする必要がある。すなわちシリコン含有層の堆積・吸着抑制効果を得るには、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量を、パージ効果が十分に得られるだけのN2ガスの体積流量よりも大流量とする必要がある。よって、パージにより処理室201内の残留ガスを除去する際は、マスフローコントローラ241eを制御して、第1不活性ガス供給管232eから供給するN2ガスの供給流量を1〜20slmから0.2〜1slmへと変更し、N2ガスの体積流量を減少させることとなる。なお、パージガスとしては、N2ガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0070】
[ステップ3a]
処理室201内の残留ガスを除去した後、第3ガス供給管232cのバルブ243cを開き、第3ガス供給管232cにO2ガスを流す。O2ガスは第3ガス供給管232cから流れ、マスフローコントローラ241cにより流量調整される。流量調整されたO2ガスは第2ガス供給管232bを経由して第2ノズル233bのガス供給孔248bから加熱された減圧状態のバッファ室237内に供給される。このとき同時に、第4ガス供給管232dのバルブ243dを開き、第4ガス供給管232dにH2ガスを流す。H2ガスは第4ガス供給管232dから流れ、マスフローコントローラ241dにより流量調整される。流量調整されたH2ガスは第2ガス供給管232bを経由して第2ノズル233bのガス供給孔248bから加熱された減圧状態のバッファ室237内に供給される。なお、H2ガスは第2ガス供給管232bを経由する際に第2ガス供給管232b内でO2ガスと混合される。すなわち、第2ノズル233bからは、O2ガスとH2ガスの混合ガスが供給されることとなる。バッファ室237内に供給されたO2ガスとH2ガスの混合ガスは、バッファ室237のガス供給孔248cから、加熱された減圧状態の処理室201内に供給され、排気管231から排気される(O2ガス+H2ガス供給)。
【0071】
このとき、第3不活性ガス供給管232gのバルブ243gを開き、第3不活性ガス供給管232gから不活性ガスとしてN2ガスを供給するようにしてもよい。N2ガスはマスフローコントローラ241gにより流量調整されて、第3ガス供給管232c内に供給される。また、第4不活性ガス供給管232hのバルブ243hを開き、第4不活性ガス供給管232hから不活性ガスとしてN2ガスを供給するようにしてもよい。N2ガスはマスフローコントローラ241hにより流量調整されて、第4ガス供給管232d内に供給される。この場合、第2ノズル233bからは、O2ガスとH2ガスとN2ガスの混合ガスが供給されることとなる。なお、不活性ガスとしては、N2ガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0072】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、大気圧未満、例えば1〜1000Paの範囲内の圧力に維持する。マスフローコントローラ241cで制御するO2ガスの供給流量は、例えば1000〜10000sccm(1〜10slm)の範囲内の流量とする。マスフローコントローラ241dで制御するH2ガスの供給流量は、例えば1000〜10000sccm(1〜10slm)の範囲内の流量とする。なお、O2ガス及びH2ガスをウエハ200に晒す時間は、例えば1〜120秒間の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば350〜1000℃の範囲内の温度となるように設定する。なお、この範囲内の温度であれば減圧雰囲気下でのO2ガスへのH2ガス添加による酸化力向上の効果が得られることを確認した。また、ウエハ200の温度が低すぎると酸化力向上の効果が得られないことも確認した。ただしスループットを考慮すると、ウエハ200の温度が、酸化力向上の効果が得られる温度であってステップ1aのHCDガスの供給時と同様な温度帯となるように、すなわちステップ1aとステップ3aとで処理室201内の温度を同様な温度帯に保持するようにヒータ207の温度を設定するのが好ましい。この場合、ステップ1aとステップ3aとでウエハ200の温度、すなわち処理室201内の温度が350〜950℃、好ましくは700〜800℃の範囲内の一定の温度となるようにヒータ207の温度を設定する。さらには、ステップ1a〜ステップ4a(後述)にかけて処理室201内の温度を同様な温度帯に保持するようにヒータ207の温度を設定するのがより好ましい。この場合、ステップ1a〜ステップ4a(後述)にかけて処理室201内の温度が350〜950℃、好ましくは700〜800℃の範囲内の一定の温度となるようにヒータ207の温度を設定する。なお、減圧雰囲気下でのO2ガスへのH2ガス添加による酸化力向上の効果を得るには、処理室201内の温度を350℃以上とする必要があるが、処理室201内の温度は400℃以上とするのが好ましく、さらには450℃以上とするのが好ましい。処理室201内の温度を400℃以上とすれば、400℃以上の温度で行うO3酸化処理による酸化力を超える酸化力を得ることができ、処理室201内の温度を450℃以上とすれ
ば、450℃以上の温度で行うO2プラズマ酸化処理による酸化力を超える酸化力を得ることができる。
【0073】
上述の条件にてO2ガス及びH2ガスを処理室201内に供給することで、O2ガス及びH2ガスは加熱された減圧雰囲気下においてノンプラズマで熱的に活性化されて反応し、それにより原子状酸素(O)等の酸素を含む酸化種が生成される。そして、主にこの酸化種により、ステップ1aでウエハ200上に形成されたシリコン含有層に対して酸化処理が行われる。そして、この酸化処理により、シリコン含有層はシリコン酸化層(SiO2層、以下、単にSiO層ともいう。)へと変化させられる(改質される)。この酸化処理によれば上述のように、O2ガスを単独で供給する場合に比べ、酸化力を大幅に向上させることができる。すなわち、減圧雰囲気下においてO2ガスにH2ガスを添加することで、O2ガス単独供給の場合に比べ大幅な酸化力向上効果が得られる。
【0074】
なお、このとき、O2ガスとH2ガスのうち少なくとも何れか一方または両方をプラズマで活性化させて流すこともできる。O2ガスおよび/またはH2ガスをプラズマで活性化させて流すことで、よりエネルギーの高い酸化種を生成することができ、この酸化種により酸化処理を行うことで、デバイス特性が向上する等の効果も考えられる。例えば、O2ガスとH2ガスの両方をプラズマで活性化させる場合、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237内に供給されたO2ガスとH2ガスの混合ガスはプラズマ励起され、活性種としてガス供給孔248cから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、高周波電源273から第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に印加する高周波電力は、例えば50〜1000Wの範囲内の電力となるように設定する。その他の処理条件は、上述の処理条件と同様とする。なお、上述の温度帯では、O2ガスとH2ガスとは熱で活性化されて十分に反応し、十分な量の酸化種が生成される。よって、O2ガスとH2ガスとをノンプラズマで熱的に活性化させても十分な酸化力が得られる。なお、O2ガスとH2ガスは熱で活性化させて供給した方が、ソフトな反応を生じさせることができ、上述の酸化処理をソフトに行うことができる。
【0075】
酸素含有ガス、すなわち酸化性ガスとしては、酸素(O2)ガスの他、オゾン(O3)ガス等を用いてもよい。なお、上述の温度帯において、一酸化窒素(NO)ガスや亜酸化窒素(N2O)ガスへの水素含有ガス添加効果を試してみたところ、NOガス単独供給やN2Oガス単独供給に比べて酸化力向上の効果が得られないことを確認した。すなわち、酸素含有ガスとしては窒素非含有の酸素含有ガス(窒素を含まず酸素を含むガス)を用いるのが好ましい。水素含有ガス、すなわち還元性ガスとしては、水素(H2)ガスの他、重水素(D2)ガス等を用いてもよい。なお、アンモニア(NH3)ガスやメタン(CH4)ガス等を用いると、窒素(N)不純物や炭素(C)不純物の膜中への混入が考えられる。すなわち、水素含有ガスとしては、他元素非含有の水素含有ガス(他元素を含まず水素または重水素を含むガス)を用いるのが好ましい。すなわち、酸素含有ガスとしては、O2ガスおよびO3ガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いることができ、水素含有ガスとしては、H2ガスおよびD2ガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いることができる。
【0076】
[ステップ4a]
シリコン含有層をシリコン酸化層へと変化させた後、第3ガス供給管232cのバルブ243cを閉じ、O2ガスの供給を停止する。また、第4ガス供給管232dのバルブ243dを閉じ、H2ガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、残留したO2ガスやH2ガスを処理室201内から排除する。このとき、バルブ243e,243f,243g,243hを開き、不活性ガスとしてのN2ガスを処理室201内へ供給する
。N2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン酸化層形成に寄与した後のO2ガスやH2ガスを処理室201内から排除する効果を更に高めることができる(残留ガス除去)。
【0077】
このときのヒータ207の温度は、ウエハ200の温度がO2ガス及びH2ガスの供給時と同じく350〜950℃、好ましくは700〜800℃の範囲内の温度となるように設定する。パージガスとしてのN2ガスの供給流量は、200〜1000sccm(0.2〜1slm)の範囲内の流量とする。なお、上述のようにパージガスとしてのN2ガスの体積流量は、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量ほど大きくする必要はなく、それより小流量で十分なパージ効果が得られる。パージガスとしては、N2ガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0078】
上述したステップ1a〜4aを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン酸化膜を成膜することが出来る。シリコン酸化膜は、後述する工程で形成するシリコン窒化膜の下地膜となる。
【0079】
なお、下地膜として形成するシリコン酸化膜の膜厚を2nm未満とすると、サーマルエッチングによりウエハ200表面にエッチピットが発生してしまうことがある。また、下地膜として形成するシリコン酸化膜の膜厚を厚くしすぎるとシリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが積層されてなる絶縁膜の実効的な誘電率が低下し、シリコン窒化膜を絶縁膜として利用する利点が損なわれてしまうことがある。したがって、下地膜として形成するシリコン酸化膜の膜厚は2nm以上4nm以下とすることが望ましく、更には2nmとするのがより望ましい。
【0080】
(シリコン窒化膜形成工程)
続いて、以下のステップ1b〜4bを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施することにより、下地膜としてのシリコン酸化膜上に所定膜厚のシリコン窒化膜を成膜する。
【0081】
[ステップ1b]
シリコン酸化膜形成工程のステップ1aと同様の手順により、加熱された減圧状態の処理室201内にHCDガスとN2ガスとを供給し排気する(HCDガス+N2ガス供給)。
【0082】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、大気圧未満、例えば10〜1000Paの範囲内の圧力に維持する。マスフローコントローラ241aで制御するHCDガスの供給流量は、例えば20〜1000sccm(0.02〜1slm)の範囲内の流量とする。マスフローコントローラ241eで制御する堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量は、HCDガスの供給流量よりも大流量とし、例えば1000〜20000sccm(1〜20slm)の範囲内の流量とする。HCDガスをウエハ200に晒す時間は、例えば1〜120秒間の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、上述の圧力帯において処理室201内でCVD反応が生じるような温度となるように設定する。すなわちウエハ200の温度が、例えば350〜950℃、好ましくは700〜950℃、より好ましくは750〜950℃、さらに好ましくは800〜950℃の範囲内の温度となるようにヒータ207の温度を設定する。なお、ウエハ200の温度が350℃未満となるとウエハ200上においてHCDが分解、吸着しにくくなる。また、ウエハ200の温度が950℃を超えるとCVD反応が強くなり過ぎ、堆積・吸着阻害ガスの作用が十分に働かず、膜厚均一性の悪化を改善するのが困難となる。一方、ウエハ200の温度が700℃未満の場合、膜厚均一性は比較的良好となり、700℃以上
の高温領域において膜厚均一性の悪化が顕著となり、堆積・吸着阻害ガスを用いる本発明が特に有効となる。また、ウエハ200の温度が800℃未満、特に750℃未満の場合、膜中に取り込まれた水素が残留し易く、かつ、水素の吸着サイトの多い(欠陥の多い)低密度な膜が形成される。以上のことから、ウエハ200の温度は350〜950℃、好ましくは700〜950℃、より好ましくは750〜950℃、さらに好ましくは800〜950℃とするのがよい。なお、ウエハ200の温度を750〜950℃、さらに好ましくは800〜950℃とすれば、堆積・吸着阻害ガスの作用を十分に生じさせることができ、さらに、膜中に取り込まれた水素が残留し難く(脱離し易く)なり、かつ、水素の吸着サイトの少ない(欠陥の少ない)高密度な膜を形成することが可能となる。すなわち、この温度帯においては、膜中の水素濃度が極めて低く、膜厚均一性が極めて良好な膜を形成することが可能となる。
【0083】
上述の条件、すなわちCVD反応が生じる条件下でHCDガスを処理室201内に供給することで、シリコン酸化膜(下地膜)上に1原子層未満から数原子層程度のシリコン含有層としてのシリコン層(Si層)が形成される。シリコン含有層はHCDガスの吸着層であってもよい。ここでシリコン層とは、シリコンにより構成される連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできるシリコン薄膜をも含む総称である。なお、シリコンにより構成される連続的な層をシリコン薄膜という場合もある。また、HCDガスの吸着層とは、HCDガスのガス分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。なお、1原子層未満の層とは不連続に形成される原子層のことを意味している。HCDガスが自己分解する条件下では、シリコン酸化膜上にシリコンが堆積することでシリコン層が形成される。HCDガスが自己分解しない条件下では、シリコン酸化膜上にHCDガスが吸着することでHCDガスの吸着層が形成される。シリコン酸化膜上に形成されるシリコン含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ3bでの窒化の作用がシリコン含有層の全体に届かなくなる。また、シリコン酸化膜上に形成可能なシリコン含有層の最小値は1原子層未満である。よって、シリコン含有層の厚さは1原子層未満から数原子層程度とするのが好ましい。なお、シリコン酸化膜上にHCDガスの吸着層を形成するよりも、シリコン酸化膜上にシリコン層を形成する方が、成膜レートを高くすることができ好ましい。
【0084】
このとき、上述のように、HCDガスを供給する第1ノズル233aと同じノズルからHCDガスと一緒に堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスを大流量でウエハ200に向けて供給することで、HCDガスの流速、特にウエハ200表面と平行方向に流れる(ウエハ200表面を横切る)HCDガスの流速を速くする。すなわち、HCDガスのウエハ200表面と平行方向への吹き付けを強くする。これにより、シリコン酸化膜上へのシリコンの堆積効率またはHCDガスの吸着効率を下げ、堆積または吸着を抑制させつつシリコン酸化膜上にシリコン含有層を形成することができるようになる。この堆積・吸着阻害ガスの作用により、図10に示すようにシリコン含有層の堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりに移動させることが可能となり、また、シリコン含有層の最も厚い部分と最も薄い部分との差を小さくすることができ、例えば700℃以上の高温領域において吸着反応が崩れる領域、すなわちシリコン含有層の堆積または吸着が過剰となる領域においても、均一にシリコン含有層を形成することが可能となる。
【0085】
なお、図10(a)はウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速が小さい場合におけるシリコンの堆積またはHCDガスの吸着の様子を模式的に示す図である。また、図10(b)はウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速が大きい場合におけるシリコンの堆積またはHCDガスの吸着の様子を模式的に示す図である。図10では、便宜上、下地膜としてのシリコン酸化膜を図示していない。なお、図10における白抜き矢印は、HCDガスとN2ガスとの流れる方向を示しており、ウエハ200上の白丸(○)は、ウエハ200上(シリコン酸化膜上)に堆積したSi原子またはウエハ20
0上(シリコン酸化膜上)に吸着したHCDガス分子を示している。また、図10では、便宜上、ウエハ200の左半分のみを示している。
【0086】
図10に示すように、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を大きくすることにより、シリコン含有層の厚さを全体的に薄くしつつ、シリコン含有層の堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりに移動させることが可能となる。また、シリコン含有層の最も厚い部分と最も薄い部分との差を小さくすることができ、ウエハ200面内にわたり均一にシリコン含有層を形成することが可能となる。
【0087】
なお、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量は、上述のように1〜20slmの範囲内の流量とするのが好ましく、HCDガスの供給流量よりも大流量とするのが好ましい。このようにN2ガスの供給流量を設定し、N2ガスの体積流量を、HCDガスの体積流量よりも大流量とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を、HCDガスを単独で流す場合よりも速くする。すなわち、HCDガスを単独で流す場合よりも強くHCDガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付ける。また、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量は、後述するステップ3bにおいて処理室201内に供給するNH3ガスの供給流量よりも大流量とするのが好ましい。このようにN2ガスの供給流量を設定し、N2ガスの体積流量を、NH3ガスの体積流量よりも大流量とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を、ウエハ200表面と平行方向に流れるNH3ガスの流速よりも速くする。すなわち、NH3ガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付けるよりも強く、HCDガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付ける。さらには、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量は、後述するステップ2b,4bにおいて処理室201内に供給するパージガスとしてのN2ガスの供給流量よりも大流量とするのが好ましい。このように堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量を設定し、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量を、パージガスとしてのN2ガスの体積流量よりも大流量とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を、ウエハ200表面と平行方向に流れるパージガスとしてのN2ガスの流速よりも速くする。すなわち、パージガスとしてのN2ガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付けるよりも強く、HCDガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付ける。
【0088】
具体的には、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量は、HCDガスの体積流量の10〜30倍程度であって、パージガスとしてのN2ガスの体積流量の5〜30倍程度とするのが好ましい。堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量をHCDガスの体積流量の10〜30倍程度とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速をより十分に高めることが可能となり、シリコン含有層の堆積または吸着をより十分に抑制でき、堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりにすることが容易となる。また、シリコン含有層の最も厚い部分と最も薄い部分との差を小さくすることも容易となる。結果、膜厚均一性をより十分に改善できることとなる。また、HCDガスの流速が速くなり過ぎ、シリコン含有層の堆積または吸着を抑制し過ぎて、実用的な成膜速度が得られなくなることを防止することができる。
【0089】
Siを含む原料としては、HCDの他、TCS(テトラクロロシラン、SiCl4)、DCS(ジクロロシラン、SiH2Cl2)、SiH4(モノシラン)等の無機原料だけでなく、アミノシラン系の4DMAS(テトラキスジメチルアミノシラン、Si[N(CH3)2]4)、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン、Si[N(CH3)2]3H)、2DEAS(ビスジエチルアミノシラン、Si[N(C2H5)2]2H2)、BTBAS(ビスターシャリーブチルアミノシラン、SiH2[NH(C4H9)]2)などの有機原料を用いてもよい。
【0090】
堆積・吸着阻害ガスとしての不活性ガスとしては、N2ガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。また、堆積・吸着阻害ガスとしては、水素含有ガスを用いてもよい。水素含有ガスとしては、例えば水素(H2)ガスや重水素(D2)ガス等を用いることができる。図7に、堆積・吸着阻害ガスとして水素含有ガスであるH2ガスを用いた成膜シーケンス例を示す。堆積・吸着阻害ガスとしてのH2ガスの供給流量は、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量と同様、1000〜20000sccm(1〜20slm)の範囲内の流量とする。なお、例えば750℃以上、好ましくは800℃以上の高温下では、膜中に取り込まれた水素は残留し難く(脱離し易く)なることから、吸着阻害ガスとして水素含有ガスを用いても、膜中の水素濃度低減効果に影響を与えることはない。この場合においても水素の吸着サイトの少ない(欠陥の少ない)高密度な膜が形成される。なお、HCDガス供給時にH2ガスを供給することで、HCDガス中のClを引き抜くことが考えられ、成膜レートの向上、膜中Cl不純物の低減効果が考えられる。
【0091】
[ステップ2b]
シリコン酸化膜上にシリコン含有層が形成された後、シリコン酸化膜形成工程のステップ2aと同様の手順により、HCDガスを処理室201内から排除すると共に、処理室201内をN2ガスによりパージする(残留ガス除去)。
【0092】
このときのヒータ207の温度は、ウエハ200の温度がHCDガスの供給時と同じく350〜950℃、好ましくは700〜950℃、より好ましくは750〜950℃、さらに好ましくは800〜950℃の範囲内の温度となるように設定する。パージガスとしてのN2ガスの供給流量は、200〜1000sccm(0.2〜1slm)の範囲内の流量とする。なお、パージガスとしてのN2ガスの体積流量は、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量ほど大きくする必要はなく、それより小流量で十分なパージ効果が得られる。逆にいうと、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量は、パージガスとしてのN2ガスの体積流量よりも大きくする必要がある。すなわちシリコン含有層の堆積・吸着抑制効果を得るには、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量を、パージ効果が十分に得られるだけのN2ガスの体積流量よりも大流量とする必要がある。よって、パージにより処理室201内の残留ガスを除去する際は、マスフローコントローラ241eを制御して、第1不活性ガス供給管232eから供給するN2ガスの供給流量を1〜20slmから0.2〜1slmへと変更し、N2ガスの体積流量を減少させることとなる。なお、パージガスとしては、N2ガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0093】
[ステップ3b]
処理室201内の残留ガスを除去した後、第2ガス供給管232bのバルブ243bを開き、第2ガス供給管232bにNH3ガスを流す。NH3ガスは第2ガス供給管232bから流れ、マスフローコントローラ241bにより流量調整される。流量調整されたNH3ガスは第2ノズル233bのガス供給孔248bから加熱された減圧状態のバッファ室237内に供給される。このとき、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に高周波電力を印加しない。これにより、バッファ室237内に供給されたNH3ガスは、熱で活性化されて、バッファ室237のガス供給孔248cから、加熱された減圧状態の処理室201内に供給され排気管231から排気される(NH3ガス供給)。
【0094】
このとき、第2不活性ガス供給管232fのバルブ243fを開き、第2不活性ガス供給管232fから不活性ガスとしてN2ガスを供給するようにしてもよい。N2ガスはマスフローコントローラ241fにより流量調整されて、第2ガス供給管232b内に供給される。この場合、第2ノズル233bからは、NH3ガスとN2ガスの混合ガスが供給されることとなる。なお、不活性ガスとしては、N2ガスの他、Ar、He、Ne、Xe
等の希ガスを用いてもよい。
【0095】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、大気圧未満、例えば1〜3000Paの範囲内の圧力に維持する。マスフローコントローラ241bで制御するNH3ガスの供給流量は、例えば100〜10000sccm(0.1〜10slm)の範囲内の流量とする。NH3ガスをウエハ200に晒す時間は、例えば1〜120秒間の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば350〜1200℃の範囲内の温度となるように設定する。なお、この範囲内の温度であれば減圧雰囲気下でのNH3ガスによる窒化の効果、すなわち、シリコン含有層の窒化反応が得られることを確認した。また、ウエハ200の温度が低すぎると窒化の効果が得られないことも確認した。ただしスループットを考慮すると、ウエハ200の温度が、シリコン含有層の窒化反応が生じる程度の温度であってステップ1bのHCDガスの供給時と同様な温度帯となるように、すなわちステップ1bとステップ3bとで処理室201内の温度を同様な温度帯に保持するようにヒータ207の温度を設定するのが好ましい。この場合、ステップ1bとステップ3bとでウエハ200の温度、すなわち処理室201内の温度が350〜950℃、好ましくは700〜950℃、より好ましくは750〜950℃、さらに好ましくは800〜950℃の範囲内の一定の温度となるようにヒータ207の温度を設定する。さらには、ステップ1b〜ステップ4b(後述)にかけて処理室201内の温度を同様な温度帯に保持するようにヒータ207の温度を設定するのがより好ましい。この場合、ステップ1b〜ステップ4b(後述)にかけて処理室201内の温度が350〜950℃、好ましくは700〜950℃、より好ましくは750〜950℃、さらに好ましくは800〜950℃の範囲内の一定の温度となるようにヒータ207の温度を設定する。なお、処理室201内の温度を550℃以上とすることで、減圧雰囲気下でのNH3ガスによる窒化力向上効果を得ることができる。この窒化力向上効果をより高めようとする場合、処理室201内の温度を600℃以上とするのが好ましく、さらには700℃以上とするのがより好ましい。なお、NH3ガスはプラズマで活性化させて供給するよりも、熱で活性化させて供給した方が、ソフトな反応を生じさせることができ、後述する窒化をソフトに行うことができる。
【0096】
上述の条件にてNH3ガスを処理室201内に供給することで、NH3ガスは加熱された減圧雰囲気下においてノンプラズマで熱的に活性化されるか、もしくは熱分解して窒素を含む窒化種が生成される。このとき、処理室201内にはHCDガスは流していないので、NH3ガスは気相反応を起こすことはなく、NH3ガスが熱的に活性化されるか、もしくは熱分解することで得られた窒化種は、ステップ1bでシリコン酸化膜上に形成されたシリコン含有層の少なくとも一部と反応する。これにより、シリコン含有層に対して窒化処理が行われ、この窒化処理により、シリコン含有層はシリコン窒化層(Si3N4層、以下、単にSiN層ともいう。)へと変化させられる(改質される)。
【0097】
なお、このとき、NH3ガスをプラズマで活性化させて流すこともできる。NH3ガスをプラズマで活性化させて流すことで、よりエネルギーの高い窒化種を生成することができ、この窒化種により窒化処理を行うことで、デバイス特性が向上する等の効果も考えられる。NH3ガスをプラズマで活性化させる場合、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237内に供給されたNH3ガスはプラズマ励起され、活性種としてガス供給孔248cから処理室201内に供給され排気管231から排気される。このとき、高周波電源273から第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に印加する高周波電力は、例えば50〜1000Wの範囲内の電力となるように設定する。その他の処理条件は、上述の処理条件と同様とする。なお、上述の温度帯では、NH3ガスは熱で十分に活性化され、十分な量の窒化種が生成される。よって、NH3ガスをノンプラズマで熱的に活性化させても十分な窒化力が得られる。なお、NH3ガスは熱で活性化させて供給し
た方が、ソフトな反応を生じさせることができ、上述の窒化処理をソフトに行うことができる。
【0098】
窒素含有ガスとしては、NH3ガスの他、ジアジン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガスやアミン系のガス等を用いてもよい。
【0099】
[ステップ4b]
シリコン含有層をシリコン窒化層へと変化させた後、第2ガス供給管232bのバルブ243bを閉じ、NH3ガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、残留したNH3ガスを処理室201内から排除する。このとき、バルブ243e,243f,243g,243hを開き、不活性ガスとしてのN2ガスを処理室201内へ供給する。N2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン窒化層形成に寄与した後のNH3ガスを処理室201内から排除する効果を更に高めることができる(残留ガス除去)。
【0100】
このときのヒータ207の温度は、ウエハ200の温度がNH3ガスの供給時と同じく350〜950℃、好ましくは700〜950℃、より好ましくは750〜950℃、さらに好ましくは800〜950℃の範囲内の温度となるように設定する。パージガスとしてのN2ガスの供給流量は、200〜1000sccm(0.2〜1slm)の範囲内の流量とする。なお、上述のようにパージガスとしてのN2ガスの体積流量は、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量ほど大きくする必要はなく、それより小流量で十分なパージ効果が得られる。パージガスとしては、N2ガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0101】
上述したステップ1b〜4bを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより、下地膜としてのシリコン酸化膜上に所定膜厚のシリコン窒化膜を成膜することが出来る。図11は、上述の成膜シーケンスにより、ウエハ200上にシリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが順に積層された様子を示す断面図である。なおシリコン酸化膜形成工程とシリコン窒化膜形成工程とは、ウエハ200の温度を同様な温度帯に保持した状態で行うのが好ましい。
【0102】
(パージ及び大気圧復帰)
所定膜厚のシリコン窒化膜が成膜されると、バルブ243e,243f,243g,243hを開き、第1不活性ガス供給管232e、第2不活性ガス供給管232f、第3不活性ガス供給管232g、第4不活性ガス供給管232hのそれぞれから不活性ガスとしてのN2ガスを処理室201内へ供給し排気管231から排気する。N2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスが処理室201内から除去される(パージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0103】
(ボートアンロード及びウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、反応管203の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200がボート217に保持された状態で反応管203の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済みのウエハ200はボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0104】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0105】
本実施形態によれば、ウエハ200上にシリコン窒化膜を直接形成するのではなく、下地膜としてのシリコン酸化膜を介して形成するようにしている。このようにすることで、シリコン窒化膜の成膜温度を高温化したとしても、ウエハ200表面上における吸着酸素や巻き込み酸素等がウエハ200表面とシリコン窒化膜との界面に及ぼす影響を低減することができる。また、ウエハ200表面がシリコン酸化膜により覆われることで、シリコン窒化膜の成膜温度を高温化したとしても、サーマルエッチングによるウエハ200表面でのエッチピット等の発生を抑制でき、ウエハ200表面の実効的な表面積の増加を防ぐことができる。これらにより、シリコン窒化膜の電気特性へ及ぼす影響を低減でき、シリコン窒化膜のリーク電流を低減でき、またEOTを小さくすることができる。
【0106】
なお、本実施形態によれば、下地膜としてのシリコン酸化膜の膜厚を2nm以上としている。これにより、サーマルエッチングによりウエハ200表面にエッチピットが発生してしまうことをより確実に回避できる。また、下地膜としてのシリコン酸化膜の膜厚を4nm以下としている。これにより、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが積層されてなる絶縁膜の実効的な誘電率の低下を防ぐことができる。
【0107】
また、本実施形態のステップ1aでは、第1ノズル233aからHCDガスと一緒に堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスを上述のような大流量で処理室201内に供給することより、HCDガスの流速、特に第1ノズル233aのガス供給孔248aからウエハ200に向けて噴出されウエハ200表面と平行方向に流れる(ウエハ200表面を横切る)HCDガスの流速を速くする。これにより、ウエハ200上へのシリコンの堆積効率またはHCDガスの吸着効率を下げることができ、シリコンの堆積またはHCDガスの吸着を抑制させつつウエハ200上にシリコン含有層を形成することができるようになる。この堆積・吸着阻害ガスの作用により、シリコン含有層の堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりに移動させることが可能となり、また、シリコン含有層の最も厚い部分と最も薄い部分との差を小さくすることができ、例えば700℃以上の高温領域において吸着反応が崩れる領域、すなわちシリコン含有層の堆積または吸着が過剰となる領域においても、均一にシリコン含有層を形成することが可能となる。
【0108】
また、本実施形態のステップ3aでは、加熱された減圧雰囲気下においてO2ガスとH2ガスとを反応させて原子状酸素(O)等の酸素を含む酸化種を生成し、この酸化種を用いて、シリコン含有層をシリコン酸化層へと変化させる工程を行うことにより、酸化種の持つエネルギーがシリコン含有層中に含まれるSi−N、Si−Cl、Si−H、Si−C結合を切り離す。Si−O結合を形成するためのエネルギーは、Si−N、Si−Cl、Si−H、Si−Cの結合エネルギーよりも高いため、Si−O結合形成に必要なエネルギーを酸化処理対象のシリコン含有層に与えることで、シリコン含有層中のSi−N、Si−Cl、Si−H、Si−C結合は切り離される。Siとの結合を切り離されたN、H、Cl、Cは膜中から除去され、N2、H2、Cl2、HCl、CO2等として排出される。また、N、H、Cl、Cとの結合が切られることで余ったSiの結合手は、酸化種に含まれるOと結びつく。このようにしてシリコン含有層はSiO2層へと変化させられる。本実施形態の成膜シーケンスにより形成したSiO2膜の膜中窒素、水素、塩素、炭素濃度は極めて低く、Si/O比率は化学量論組成である0.5に極めて近い、良質な膜となることを確認した。
【0109】
また、本実施形態のステップ3aでは、O2ガスとH2ガスとを同じ第2ノズル233bからバッファ室237を介して処理室201内に供給しており、第2ノズル233b内およびバッファ室237内は処理室201内と同様な温度に加熱されている。そのため、O2ガスとH2ガスとは、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある第2ノズル233
b内およびバッファ室237内で反応し、第2ノズル233b内およびバッファ室237内で原子状酸素(O)等の酸素を含む酸化種が生成されることとなる。また、第2ノズル233b内およびバッファ室237内は、処理室201内よりも圧力が高くなっている。そのため、第2ノズル233b内およびバッファ室237内でのO2ガスとH2ガスとの反応は促進され、O2ガスとH2ガスとの反応により生じる酸化種をより多く生成することが可能となり、酸化力をより向上させることができることとなる。また、O2ガスとH2ガスとを処理室201内に供給する前に第2ノズル233b内およびバッファ室237内で均等に混合させることができることから、O2ガスとH2ガスとを第2ノズル233b内で均等に反応させることができ、酸化種の濃度を均一化でき、ウエハ200間における酸化力の均一化を図ることも可能となる。このように、O2ガスとH2ガスとを同じ第2ノズル233bから処理室201内に供給することにより、より高い酸化力向上効果および酸化力均一化効果が得られることとなる。なお、プラズマを用いない場合は、バッファ室237を省略することもできるが、この場合においても上述と同様な作用効果が得られる。
【0110】
ただし、O2ガスとH2ガスとを同じ第2ノズル233bからバッファ室237を介して処理室201内に供給する場合、第2ノズル233b内およびバッファ室237内で酸化種をより多く生成することが可能となるものの、生成された酸化種が第2ノズル233b内やバッファ室237内を通過する際に失活することも考えられ、ウエハ200に到達する量が減少してしまうこともある。これに対して、O2ガスとH2ガスとを別々のノズルから処理室201内に供給するようにすれば、O2ガスとH2ガスとは処理室201内で初めて混合されるので、酸化種は処理室201内で生成されることとなり、酸化種の第2ノズル233b内やバッファ室237内での失活を防止することが可能となる。
【0111】
また、本実施形態の成膜シーケンスによりシリコン酸化膜を形成すれば、ウエハ200面内における膜厚均一性は、一般的なCVD法によりシリコン酸化膜を形成する場合よりも良好なものとなることを確認した。なお、一般的なCVD法とは、無機原料であるDCSとN2Oとを同時に供給してCVD法によりシリコン酸化膜(HTO(High Temperature Oxide)膜)を形成する方法のことを指している。また、本実施形態の成膜シーケンスにより形成したシリコン酸化膜の膜中の窒素、塩素等の不純物の濃度は、一般的なCVD法により形成したシリコン酸化膜よりも極めて低くなることを確認した。また、本実施形態の成膜シーケンスにより形成したシリコン酸化膜の膜中の不純物濃度は、有機系シリコン原料を用いてCVD法により形成したシリコン酸化膜よりも極めて低くなることを確認した。また、本実施形態の成膜シーケンスによれば、有機系シリコン原料を用いた場合であっても、ウエハ面内における膜厚均一性、膜中の不純物濃度が良好なものとなることを確認した。
【0112】
また、本実施形態のステップ1bでは、第1ノズル233aからHCDガスと一緒に堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスを上述のような大流量で処理室201内に供給することより、HCDガスの流速、特に第1ノズル233aのガス供給孔248aからウエハ200に向けて噴出されウエハ200表面と平行方向に流れる(ウエハ200表面を横切る)HCDガスの流速を速くする。これにより、ウエハ200上へのシリコンの堆積効率またはHCDガスの吸着効率を下げることができ、シリコンの堆積またはHCDガスの吸着を抑制させつつウエハ200上にシリコン含有層を形成することができるようになる。この堆積・吸着阻害ガスの作用により、シリコン含有層の堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりに移動させることが可能となり、例えば700℃以上の高温領域において吸着反応が崩れる領域、すなわちシリコン含有層の堆積または吸着が過剰となる領域においても、均一にシリコン含有層を形成することが可能となる。
【0113】
また、本実施形態のステップ3bでは、加熱された減圧雰囲気下においてNH3ガスを
活性化もしくは熱分解させて得た窒化種を用いて、シリコン含有層をシリコン窒化層へと変化させることにより、窒化種の持つエネルギーが、Si−H結合だけでなく、Si−H結合よりも高い結合エネルギーを持つN−H結合をも乖離させることでH(水素)が除去され、H2等として排出される。水素との結合が切り離されたSiやNは、それぞれN、Siと結びつき、新たなSi−N結合を形成する。本実施形態の成膜シーケンスにより形成したシリコン窒化膜は、一般的なCVD法により形成したシリコン窒化膜(CVD−SiN膜)よりも膜中水素濃度が1桁少なく、極めて良質な膜となることを確認した。なお、一般的なCVD法とは、無機原料であるDCSとNH3とを同時に供給してCVD法によりシリコン窒化膜を形成する方法のことを指している。
【0114】
また、本実施形態の成膜シーケンスによりシリコン窒化膜を形成すれば、ウエハ200面内における膜厚均一性は、一般的なCVD法によりシリコン窒化膜を形成する場合よりも良好なものとなることを確認した。また、本実施形態の成膜シーケンスにより形成したシリコン窒化膜の膜中の水素等の不純物の濃度は、一般的なCVD法により形成したシリコン窒化膜よりも極めて低くなることを確認した。また、本実施形態の成膜シーケンスにより形成したシリコン窒化膜の膜中の水素濃度は、有機系シリコン原料を用いてCVD法により形成したシリコン窒化膜よりも極めて低くなることを確認した。また、本実施形態の成膜シーケンスによれば、有機系シリコン原料を用いた場合であっても、ウエハ200面内における膜厚均一性、膜中の水素濃度が良好なものとなることを確認した。
【0115】
また、上述のように本実施形態の成膜シーケンスによれば、シリコン酸化膜上に水素濃度が極めて低いシリコン窒化膜(以下、水素フリーSiN膜ともいう。)を形成することができ、シリコン酸化膜とこの水素フリーSiN膜とが積層されてなる絶縁膜をSAC(Self Align Contact)として使用すれば、NBTI(Negative Bias Temperature Instability)特性を向上させることができる。
【0116】
また、シリコン酸化膜とこの水素フリーSiN膜とが積層されてなる絶縁膜をゲート絶縁膜として使用すれば、絶縁破壊耐性を高めることが可能となる。Si−H結合はSi−N結合と比べて結合力の弱いボンドであり、正孔−電子の再結合によって脱離する確率が高い。水素が取れたSi−未結合手(ダングリングボンド)は電荷トラップとなり、電流電導に寄与し、絶縁破壊耐性を弱くする。このため、膜中水素(特にSi−H結合)がない(極めて少ない)水素フリーSiN膜を含む絶縁膜をゲート絶縁膜として用いることで高い絶縁破壊耐性が得られることとなる。
【0117】
また、本実施形態の成膜シーケンスによれば、2〜4nmの下地膜としてのシリコン酸化膜上に応力が極めて低いシリコン窒化膜(以下、応力フリーSiN膜ともいう。)を形成することができ、シリコン酸化膜とこの応力フリーSiN膜とが積層されてなる絶縁膜をSTI(Shallow Trench Isolation)工程に用いれば、次のようなメリットがある。すなわち、STIの形成にはSiN膜をマスクにSiエッチングが行なわれるが、SiN膜の応力は高く、ウエハ上に直接成膜するとウエハ(チャネル部)に欠陥が入る等ダメージを与えるため、通常は、ウエハ上に10nm程度の犠牲酸化膜を形成した上にSiN膜を形成している。これに対してシリコン酸化膜と応力フリーSiN膜との積層膜をSTI工程に用いれば、ウエハ上にこの応力フリーSiN膜を含む積層膜を直接成膜してもウエハ(チャネル部)へのダメージが生じないことから、別途犠牲酸化膜を形成する必要がなく、犠牲酸化膜を成膜する工程と犠牲酸化膜を除去する工程の2つの工程を削減できる。また、通常、マスク加工後のSiN膜はウエハ裏面のみ応力が大きくかかる状態になり、ウエハ全体としてゆがんでしまうが、応力フリーSiN膜を含む絶縁膜をマスクとして用いれば、マスク加工後におけるウエハのゆがみがなくなり、研磨のあたりが均一になり、より効率よく研磨が可能となる。
【0118】
<本発明の他の実施形態>
上述の実施形態では、ウエハ200上にシリコン含有層を形成する工程と、シリコン含有層をシリコン酸化層に変化させる工程と、を交互に繰り返すことで、ウエハ200上に下地膜としてシリコン酸化膜を堆積させて形成する例について説明したが、本発明は係る形態に限定されない。
【0119】
例えば、下地膜としてのシリコン酸化膜は、ウエハ200表面をウエット酸化等の手法により熱酸化させることで形成してもよい。また例えば、加熱された減圧雰囲気下でO2ガス等の酸素含有ガスとH2ガス等の水素含有ガスとを反応させて生成した原子状酸素(O)等の酸素を含む酸化種を用いてウエハ200表面を酸化させる減圧酸化により形成してもよい。また例えば、ウエハ200に対してHCDガス等の原料ガスとO2ガス等の酸素含有ガスとを同時に供給してウエハ200上にシリコン酸化膜を堆積させるCVD法により形成してもよい。また例えば、ウエハ200に対してHCDガス等の原料ガスとO2ガス等の酸素含有ガスとを交互に供給してウエハ200上にシリコン酸化膜を堆積させるALD法により形成してもよい。いずれの場合においても、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とは、上述の実施形態のように同一の処理容器内で(in−situで)連続して形成してもよく、異なる処理容器内で別々に形成してもよい。
【0120】
なお、下地膜としてのシリコン酸化膜は緻密である方が好ましい。シリコン酸化膜の緻密度は、一般的なALD法によるシリコン酸化膜(ALD−SiO膜)、一般的なCVD法によるシリコン酸化膜(CVD−SiO膜)、上述の実施形態の手法によるシリコン酸化膜、熱酸化膜の順に高くなる。すなわち、これらのシリコン酸化膜のうち熱酸化膜の緻密度が最も高い。そのため、その観点では、下地膜として熱酸化膜を用いることが最も好ましい。なお、下地膜として熱酸化膜を用いた実施例については後述する。
【0121】
また上述の実施形態では、堆積・吸着阻害ガスの作用により、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を上げることでウエハ200上や下地膜としてのシリコン酸化膜上へのシリコンの堆積またはHCDガスの吸着を抑制し、膜厚均一性を向上させる例について説明したが、HCDガスの流速を上げる方法はこれに限らない。
【0122】
例えば、反応管203内部の流動抵抗をウエハ200間の流動抵抗と同程度とすることにより、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を高めることができる。例えば、反応管203上部や下部の空間を、ダミーウエハや断熱板などで充填することにより、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を高め、ウエハ200上や下地膜としてのシリコン酸化膜上へのシリコンの堆積またはHCDガスの吸着を抑制し、膜厚均一性を向上させることができる。
【0123】
また例えば、HCDガスを供給するノズル233aとウエハ200との間のコンダクタンスを、ウエハ200間のコンダクタンスと同程度とすることにより、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を高めることができる。例えば、第1ノズル233aの径を大きくしたり、また、反応管203の径を小さくしたりすることにより、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を高め、ウエハ200上や下地膜としてのシリコン酸化膜上へのシリコンの堆積またはHCDガスの吸着を抑制し、膜厚均一性を向上させることができる。
【0124】
また例えば、HCDガスの供給と排気を繰り返すことにより、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を高めることができる。例えば、反応管203内のウエハ配列領域とノズル233a内(バッファ室237内)との圧力差を大きくすることにより、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を高め、ウエハ200上や下地
膜としてのシリコン酸化膜上へのシリコンの堆積またはHCDガスの吸着を抑制し、膜厚均一性を向上させることができる。
【0125】
また上述の実施形態では、ステップ1a〜4aをこの順に行い、これを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン酸化膜を成膜する例について説明したが、ステップ1aとステップ3aとを入れ替えてもよい。すなわち、ステップ3a、ステップ2a、ステップ1a、ステップ4aをこの順に行い、これを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン酸化膜を成膜することもできる。同様に、ステップ1bとステップ3bとを入れ替えてもよい。すなわち、ステップ3b、ステップ2b、ステップ1b、ステップ4bをこの順に行い、これを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより、シリコン酸化膜上に所定膜厚のシリコン窒化膜を成膜することもできる。
【0126】
また、上述の実施形態では、酸化膜上に窒化膜として半導体元素であるシリコン(Si)を含むシリコン窒化膜(SiN膜)を形成する例について説明したが、本発明は酸化膜上に窒化膜としてチタン(Ti)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)等の金属元素を含む金属窒化膜を形成する場合にも適用することができる。この場合、原料ガスおよび堆積・吸着阻害ガス供給による酸化膜上への金属元素含有層の形成(ステップ1b)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ2b)と、窒素含有ガス供給による金属元素含有層の金属窒化層への変換(ステップ3b)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ4b)と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより、酸化膜上に所定膜厚の金属窒化膜を形成する。
【0127】
例えば、酸化膜上にチタン(Ti)を含む金属窒化膜としてチタン窒化膜(TiN膜)を形成する場合、原料ガスおよび堆積・吸着阻害ガス供給による酸化膜上へのチタン含有層の形成(ステップ1b)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ2b)と、窒素含有ガス供給によるチタン含有層のチタン窒化層への変換(ステップ3b)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ4b)と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより酸化膜上に所定膜厚のチタン窒化膜を形成する。原料ガスとしては、例えばTiCl4(四塩化チタン)ガスやTDMAT(Tetrakis(dimethylamino)titanium:Ti[N(CH3)2]4)ガスを用いることができる。窒素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様、NH3ガスを用いることができる。この場合、上述の実施形態における基板処理装置の第1ガス供給系(原料ガス供給系)をチタン含有ガス供給系として構成する。また処理条件は、例えば上述の実施形態に記載の処理条件範囲内の条件とする。なお、TiN膜は導電性の金属窒化膜である。
【0128】
また例えば、酸化膜上にタンタル(Ta)を含む金属窒化膜としてタンタル窒化膜(TaN膜)を形成する場合、原料ガスおよび堆積・吸着阻害ガス供給による酸化膜上へのタンタル含有層の形成(ステップ1b)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ2b)と、窒素含有ガス供給によるタンタル含有層のタンタル窒化層への変換(ステップ3b)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ4b)と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより酸化膜上に所定膜厚のタンタル窒化膜を形成する。原料ガスとしては、例えばPET(Penta Ethoxy Tantalum:Ta(OC2H5)5)ガスを用いることができる。窒素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様、NH3ガスを用いることができる。この場合、上述の実施形態における基板処理装置の第1ガス供給系(原料ガス供給系)をタンタル含有ガス供給系として構成する。また処理条件は、例えば上述の実施形態に記載の処理条件範囲内の条件とする。なお、TaN膜は導電性の金属窒化膜である。
【0129】
また例えば、酸化膜上にアルミニウム(Al)を含む金属窒化膜としてアルミニウム窒化膜(AlN膜)を形成する場合、原料ガスおよび堆積・吸着阻害ガス供給による酸化膜上へのアルミニウム含有層の形成(ステップ1b)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ2b)と、窒素含有ガス供給によるアルミニウム含有層のアルミニウム窒化層への変換(ステップ3b)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ4b)と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより酸化膜上に所定膜厚のアルミニウム窒化膜を形成する。原料ガスとしては、例えばTMA(Trimethyl−aluminium:Al(CH3)3)ガスを用いることができる。窒素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様、NH3ガスを用いることができる。この場合、上述の実施形態における基板処理装置の第1ガス供給系(原料ガス供給系)をアルミニウム含有ガス供給系として構成する。また処理条件は、例えば上述の実施形態に記載の処理条件範囲内の条件とする。なお、AlN膜は絶縁性の金属窒化膜である。
【0130】
このように、本実施形態の成膜シーケンスは、TiN膜やTaN膜等の導電性金属窒化膜を形成する工程や、AlN膜等の絶縁性金属窒化膜を形成する工程にも適用できる。すなわち、本実施形態の成膜シーケンスは、所定元素が半導体元素である場合だけでなく金属元素である場合にも適用できる。このように、本発明を金属窒化膜の形成に適用した場合においても、本発明をシリコン窒化膜の形成に適用した場合と同様な効果が得られる。
【実施例】
【0131】
次に本発明の実施例を、比較例及び参考例と共に説明する。
【0132】
本実施例では、O2ガスとH2ガスとを燃焼させて生成したH2Oガスを用い、ウエット酸化によりウエハ表面に下地膜として熱酸化膜であるSiO膜を形成した。その後、下地膜としてのSiO膜上に、本実施形態の成膜シーケンス(シリコン窒化膜形成工程)と同様の手法によりSiN膜を形成し、形成したSiO膜とSiN膜との積層膜(以下、SiN/SiO積層膜ともいう)のリーク電流密度及びEOT(等価酸化膜厚)を測定した。なお、SiO膜を形成する際のウエハ温度は800℃とし、膜厚は4nmとした。また、SiN膜の成膜温度(ウエハ温度)は600〜900℃の範囲内の温度とし、膜厚は8.2〜11nmとした。なお、SiO膜の形成は上述の基板処理装置とは異なる酸化炉を用いて行い、SiN膜の形成は上述の基板処理装置と同様の構成の装置を用いて行った。すなわち、SiO膜とSiN膜とは異なる処理容器内で別々に形成した。
【0133】
比較例では、SiO膜を介さずにウエハ上にSiN膜を直接形成し、形成したSiN膜のリーク電流密度及びEOTを測定した。なお、SiN膜は、本実施形態の成膜シーケンス(シリコン窒化膜形成工程)と同様の手法により形成した。成膜温度(ウエハ温度)は600〜900℃の範囲内の温度とし、膜厚は9〜11nmとした。
【0134】
参考例では、O2ガスとH2ガスとを燃焼させて生成したH2Oガスを用い、ウエット酸化によりウエハ表面に熱酸化膜であるSiO膜を形成し、形成したSiO膜のリーク電流密度及びEOTを測定した。なお、SiO膜を形成する際のウエハ温度は800℃とし、膜厚は4〜10.5nmとした。
【0135】
図8は、SiO膜を介して形成したSiN膜(実施例)及びウエット酸化により形成したSiO膜(参考例)のリーク電流密度及びEOTをそれぞれ示すグラフ図である。図8の横軸はEOT(nm)を、縦軸は−10Vの電圧を印加したときのリーク電流密度(A/cm2)をそれぞれ示している。図8の3つの○印は、左から順に、SiN膜の成膜温度を900℃とし、SiN膜の膜厚を8.2nmとした実施例に係るSiN/SiO積層膜、SiN膜の成膜温度を800℃とし、SiN膜の膜厚を9.3nmとした実施例に係
るSiN/SiO積層膜、SiN膜の成膜温度を600℃とし、SiN膜の膜厚を11nmとした実施例に係るSiN/SiO積層膜の測定結果をそれぞれ示している。また、3つの×印は、左から順に、成膜温度を800℃として形成した膜厚7.2nmの参考例に係るSiO膜、成膜温度を800℃として形成した膜厚9.8nmの参考例に係るSiO膜、成膜温度を800℃として形成した膜厚10.5nmの参考例に係るSiO膜の測定結果をそれぞれ示している。
【0136】
図9は、SiO膜を介さずにウエハ上に直接形成したSiN膜(比較例)及び熱酸化膜(参考例)のリーク電流密度及びEOTをそれぞれ示すグラフ図である。図9の横軸はEOT(nm)を、縦軸は−5Vの電圧を印加したときのリーク電流密度(A/cm2)をそれぞれ示している。図9の3つの△印は、左から順に、成膜温度800℃として形成した膜厚9nmの比較例に係るSiN膜、成膜温度900℃として形成した膜厚10nmの比較例に係るSiN膜、成膜温度600℃として形成した膜厚11nmの比較例に係るSiN膜の測定結果を示している。また、×印は、成膜温度を800℃として形成した膜厚4nmの参考例に係るSiO膜の測定結果を示している。
【0137】
図8より、SiO膜を介して形成したSiN膜(実施例)は、ウエット酸化により形成したSiO膜(参考例)と比較して、同じEOT、すなわち同じ電気的膜厚で見ると、リーク電流密度が小さくなることが分かる。また図9より、SiO膜を介さずにウエハ上に直接形成したSiN膜(比較例)は、ウエット酸化により形成したSiO膜(参考例)と比較して、同様なEOTで見ると、リーク電流密度が大きくなることが分かる。すなわち、SiO膜を介して形成したSiN膜(実施例)は、SiO膜を介さずにウエハ上に直接形成したSiN膜(比較例)と比較して、リーク電流密度を小さくできることが分かる。
【0138】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様を付記する。
【0139】
本発明の一態様によれば、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成する工程を有し、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする半導体装置の製造方法が提供される。
【0140】
好ましくは、前記酸化膜の膜厚が2nm以上4nm以下である。
【0141】
また好ましくは、前記酸化膜の膜厚が2nmである。
【0142】
また好ましくは、前記酸化膜は、前記処理容器内で形成される。
【0143】
また好ましくは、前記酸化膜は、前記基板の表面を熱酸化することにより形成される。
【0144】
また好ましくは、前記酸化膜は、前記基板上に酸化膜を堆積させることにより形成される。
【0145】
本発明の他の態様によれば、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、表面に所定膜厚のシリコン酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内にシリコンを含む原料ガスを供給し排気して、前記シリコン酸化膜上にシリコン含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、前記シリコン含有層をシリコン窒化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記シリコン酸化膜上に所定膜厚のシリコン窒化膜を形成する工程を有し、
前記シリコン含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする半導体装置の製造方法が提供される。
【0146】
本発明の更に他の態様によれば、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、基板を収容した状態で、該処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気して、前記所定元素含有層を酸化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記基板上に所定膜厚の酸化膜を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に前記原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成する工程とを有し、 前記各所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする半導体装置の製造方法が提供される。
【0147】
本発明の更に他の態様によれば、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成する工程を有し、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一
緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする基板処理方法が提供される。
【0148】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内を加熱するヒータと、
前記処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理容器内に窒素含有ガスを供給する窒素含有ガス供給系と、
前記処理容器内に不活性ガスまたは水素含有ガスを供給する不活性ガスまたは水素含有ガス供給系と、
前記処理容器内を排気する排気系と、
前記処理容器内の圧力を調整する圧力調整部と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内に前記原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する処理と、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に前記窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる処理とを、その間に前記処理容器内に前記不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする処理を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成すると共に、前記所定元素含有層を形成する処理では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に前記不活性ガスまたは前記水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする処理において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくするように、前記ヒータ、前記原料ガス供給系、前記窒素含有ガス供給系、前記不活性ガスまたは水素含有ガス供給系、前記排気系および前記圧力調整部を制御する制御部と、を有する基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0149】
121 コントローラ(制御部)
200 ウエハ(基板)
201 処理室
202 処理炉
203 反応管
207 ヒータ
231 排気管
244 APCバルブ(圧力調整部)
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板上に薄膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法及び基板処理方法、並びにその工程で好適に用いられる基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラッシュメモリは、絶縁膜で囲まれた電子蓄積領域(浮遊ゲート)を備え、薄いトンネル酸化膜を介した電子のやり取りによって、情報の書き込みを行うと同時に、この薄い酸化膜の絶縁性を利用し長時間にわたり電子を保持し記憶を保つのが動作原理である。フラッシュメモリでは、書込み、消去時に電子やホール(正孔)がトンネル絶縁膜を通って浮遊ゲートにたまることによって情報が記憶されるが、微細化が進むに従い、トンネル絶縁膜におけるEOT(Equivalent Oxide Thickness:酸化膜換算膜厚)の薄膜化が求められている。そこで、酸化膜(SiO2膜、以下、単にSiO膜ともいう)と比較し誘電率が高い窒化膜(Si3N4膜、以下、単にSiN膜ともいう)をトンネル絶縁膜として用いることも考えられるが、SiN膜は欠陥密度が高く、その低減が求められている。欠陥として知られているダングリングボンドなどの構造欠陥は容易に水素と結合するため、膜中の水素原子が多い膜は欠陥密度の高い膜と言い換えることが出来、水素を含まない高品質なSiN膜が求められている。
【0003】
従来、SiN膜は、例えば700℃〜800℃付近の温度帯でSiH2Cl2ガスとNH3ガスとを用いたCVD(Chemical Vapor Deposition)法により成膜されているが、CVD法で形成されたSiN膜(CVD−SiN膜)は欠陥密度が高いこと、TDS(昇温脱離法)による水素の定量値で10の21乗オーダーの水素を含有することから、これらの改善が望まれる。
【0004】
また、CVD法では膜厚均一性やステップカバレッジ特性の制約により、成膜温度の高温化による水素低減は困難であり、CVD法に代わる成膜手法が望まれている。
【0005】
CVD法に代わる手法として挙げられるALD(Atomic Layer Deposition)法では、例えばSiH2Cl2ガスとNH3ガスとを用いたALD−SiN成膜の場合、原材料に水素を含んでおり、ALD法が成り立つ温度領域(〜550℃程度)では、原材料起因の水素が膜中に残留するため、SiH2Cl2ガスとNH3ガスとを用いたALD−SiN成膜に代わる膜厚均一性やステップカバレッジ特性の良い手法が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者等は、鋭意研究の結果、高温領域において、膜中の水素濃度が極めて低く、膜厚均一性が良好な窒化膜を形成する方法を考案した。
【0007】
係る方法では、大気圧未満の圧力に設定されると共に加熱された状態の処理容器内に、基板を収容した状態で、所定元素を含む原料ガスを供給し排気することで基板上に所定元素含有層を形成する工程と、大気圧未満の圧力に設定されると共に加熱された状態の処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気することで所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、その間に処理容器内に不活性ガスを供給し排気して処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返すことで、基板上に所定膜厚の窒化膜を形成する。なお、所定元素含有層を形成する工程において、原料ガスを基板の側方に設けられたノズルから基板に向けて供給し、その際、そのノズルと同じノズルから、原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水
素含有ガスを供給することで、基板の表面と平行方向に流れる原料ガスの流速を、パージの際に基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする。
【0008】
しかしながら、上述の方法で形成した窒化膜は、膜中の水素濃度が極めて低く、膜厚均一性が良好であるにもかかわらず、リーク電流が多くなることがあった。
【0009】
本発明の目的は、高温領域において、膜中の水素濃度が極めて低く、膜厚均一性が良好であり、リーク電流の少ない窒化膜を形成することができる半導体装置の製造方法、基板処理方法および基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成する工程を有し、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする半導体装置の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成する工程を有し、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする基板処理方法が提供される。
【0012】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内を加熱するヒータと、
前記処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理容器内に窒素含有ガスを供給する窒素含有ガス供給系と、
前記処理容器内に不活性ガスまたは水素含有ガスを供給する不活性ガスまたは水素含有ガス供給系と、
前記処理容器内を排気する排気系と、
前記処理容器内の圧力を調整する圧力調整部と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内に前記原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する処理と、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に前記窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる処理とを、その間に前記処理容器内に前記不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする処理を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成すると共に、前記所定元素含有層を形成する処理では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に前記不活性ガスまたは前記水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする処理において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくするように、前記ヒータ、前記原料ガス供給系、前記窒素含有ガス供給系、前記不活性ガスまたは水素含有ガス供給系、前記排気系および前記圧力調整部を制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高温領域において、膜中の水素濃度が極めて低く、膜厚均一性が良好であり、リーク電流の少ない窒化膜を形成することができる半導体装置の製造方法、基板処理方法および基板処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面で示す図である。
【図2】本実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を図1のA−A線断面図で示す図である。
【図3】本実施形態における成膜フローを示す図である。
【図4】本実施形態に係る酸化膜の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミングを示す図であり、堆積・吸着阻害ガスとして不活性ガスを用いる例を示している。
【図5】本実施形態に係る酸化膜の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミングを示す図であり、堆積・吸着阻害ガスとして水素含有ガスを用いる例を示している。
【図6】本実施形態に係る窒化膜の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミングを示す図であり、堆積・吸着阻害ガスとして不活性ガスを用いる例を示している。
【図7】本実施形態に係る窒化膜の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミングを示す図であり、堆積・吸着阻害ガスとして水素含有ガスを用いる例を示している。
【図8】SiO膜を介して形成したSiN膜(実施例)及びウエット酸化により形成したSiO膜(参考例)のリーク電流密度及びEOTをそれぞれ示すグラフ図である。
【図9】SiO膜を介さずにウエハ上に直接形成したSiN膜(比較例)及びウエット酸化により形成したSiO膜(参考例)のリーク電流密度及びEOTをそれぞれ示すグラフ図である。
【図10】シリコンの堆積またはHCDガスの吸着の様子を模式的に示す図であり、(a)はHCDガスの流速が小さい場合、(b)はHCDガスの流速が大きい場合をそれぞれ示している。
【図11】本実施形態に係る成膜シーケンスによりウエハ上にシリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが順に積層された様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明者等は、上述した窒化膜のリーク電流の増大要因について鋭意研究を行った。その結果、窒化膜の成膜温度を高温化すると、温度上昇時間および温度安定時間が長くなり、基板表面上における吸着酸素や巻き込み酸素等による基板表面と窒化膜との界面への影響
が大きくなることが、この現象の一要因となることを究明した。また、窒化膜の成膜温度を高温化することにより、サーマルエッチングによるエッチピット等のダメージが基板表面に生じ、基板の実効的な表面積が増大することがあり、これが窒化膜の電気特性に影響を与える一要因となることも究明した。また、基板表面の酸化(母材酸化)により形成される従来の熱酸化膜は、基板と熱酸化膜との界面が常に更新されるため良好な特性を持つが、基板上に窒化物を堆積させることにより形成される窒化膜は、基板と窒化膜との界面が更新されないため、エッチピット等のダメージがそのまま残留し、この界面特性が窒化膜の電気特性に影響を与える一要因となることも究明した。
【0016】
そして発明者等は、上述の課題は、窒化膜を基板上に直接形成するのではなく、所定膜厚の酸化膜を介して形成することで、解決可能との知見を得た。すなわち、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程と、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、その間に処理容器内に不活性ガスを供給し排気して処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成する場合に、所定元素含有層を形成する工程では、原料ガスを基板の側方に設けられたノズルを介して基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを基板に向けて供給することで、基板の表面と平行方向に流れる原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする。これにより、高温領域において、膜中の水素濃度が極めて低く、膜厚均一性が良好であり、リーク電流の少ない窒化膜を形成することが可能であるとの知見を得た。
【0017】
窒化膜の下地膜として酸化膜を予め形成することで、窒化膜の成膜温度を高温化したとしても、基板表面上における吸着酸素や巻き込み酸素等が基板表面と窒化膜との界面へ及ぼす影響を低減することができる。また、基板表面が酸化膜により覆われることで、窒化膜の成膜温度を高温化したとしても、サーマルエッチングによる基板表面でのエッチピット等の発生を抑制でき、基板表面の実効的な表面積の増加を防ぐことができる。これらにより、窒化膜の電気特性へ及ぼす影響を低減でき、窒化膜のリーク電流を低減できる。なお、下地膜としての酸化膜は、基板上に酸化膜を堆積させることにより形成してもよく、基板の表面を熱酸化させることにより形成してもよい。酸化膜の膜厚は、2nm以上4nm以下の範囲内であって例えば2nmとすることが好ましい。酸化膜及び窒化膜の形成は、同一の処理容器内で(in−situで)連続的に行ってもよく、異なる処理容器内で別々に行ってもよい。
【0018】
なお、酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程は、CVD反応が生じる条件下で行う。このとき酸化膜上に1原子層未満から数原子層程度の所定元素含有層としての所定元素層を形成する。所定元素含有層は所定元素を含む原料ガス(以下、単に原料ガスともいう)の吸着層であってもよい。ここで、所定元素層とは、所定元素により構成される連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできる薄膜をも含む総称である。なお、所定元素により構成される連続的な層を薄膜という場合もある。また、原料ガスの吸着層とは原料ガスのガス分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。なお、1原子層未満の層とは不連続に形成される原子層のことを意味している。原料ガスが自己分解する条件下では酸化膜上に所定元素が堆積することで所定元素層が形成される。原料ガスが自己分解しない条件下では、酸化膜上に原料ガスが吸着することで原料ガスの吸着層が形成される。なお、酸化膜上に原料ガスの吸着層を形成するよりも、所定元素層を形成する方が、成膜レートを高くすることができ好ましい。
【0019】
また、所定元素含有層を窒化層に変化させる工程では、大気圧未満の圧力雰囲気下にあ
る処理容器内で窒素含有ガスを熱で活性化させるか熱分解させて窒素を含む窒化種を生成し、この窒化種により所定元素含有層を窒化して窒化層に変化させる(改質する)。すなわち、この窒化種と所定元素含有層とを反応させて、所定元素含有層を窒化層に変化させる。所定元素含有層を窒化層に変化させる工程はノンプラズマの減圧雰囲気下で行うことができる。なお、所定元素含有層を窒化層に変化させる工程では、窒素含有ガスをプラズマで活性化させて用いることもできる。
【0020】
そして、所定元素含有層を形成する工程において、原料ガスを基板の側方に設けられたノズルから基板に向けて供給し、その際、そのノズルと同じノズルから、原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを供給することで、基板の表面と平行方向に流れる原料ガスの流速を、パージの際に基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする。このように、基板の表面と平行方向に流れる原料ガスの流速を高めることで、酸化膜上への所定元素含有層の堆積または吸着を阻害(抑制)させつつ基板上に所定元素含有層を形成することができるようになり、所定元素含有層の堆積または吸着中心を基板のエッジ側からセンタよりに移動させることが可能となる。その結果として、高温領域において、膜厚均一性が良好な窒化膜を形成することが可能となる。
【0021】
本発明は、発明者等が得たかかる知見に基づいてなされたものである。以下に、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
<本発明の一実施形態>
(1)基板処理装置の構成
図1は、本実施の形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面で示している。また、図2は本実施の形態で好適に用いられる縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を図1のA−A線断面図で示している。なお、本発明は、本実施形態にかかる基板処理装置に限らず、枚葉式、Hot Wall型、Cold Wall型の処理炉を有する基板処理装置にも好適に適用できる。
【0023】
図1に示されているように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。なお、ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化させる活性化機構としても機能する。
【0024】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の筒中空部には処理室201が形成されており、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0025】
処理室201内には、第1ガス導入部としての第1ノズル233aと、第2ガス導入部としての第2ノズル233bとが、反応管203の下部側壁を貫通するように設けられている。第1ノズル233aには、第1ガス供給管232aが接続されている。また、第2ノズル233bには、第2ガス供給管232b、第3ガス供給管232c及び第4ガス供給管232dが接続されている。このように、反応管203には2本のノズル233a、233bと、4本のガス供給管232a、232b、232c、232dが設けられており、処理室201内へ複数種類、ここでは4種類のガスを供給することができるように構成されている。
【0026】
第1ガス供給管232aには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマ
スフローコントローラ(MFC)241a、及び開閉弁であるバルブ243aが設けられている。また、第1ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、第1不活性ガス供給管232eが接続されている。この第1不活性ガス供給管232eには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241e、及び開閉弁であるバルブ243eが設けられている。また、第1ガス供給管232aの先端部には、上述の第1ノズル233aが接続されている。第1ノズル233aは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第1ノズル233aは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方に設けられている。第1ノズル233aはL字型のロングノズルとして構成されている。第1ノズル233aの側面にはガスを供給するガス供給孔248aが設けられている。ガス供給孔248aは反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。このガス供給孔248aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0027】
主に、第1ガス供給管232a、マスフローコントローラ241a、バルブ243aにより第1ガス供給系が構成される。なお、第1ノズル233aを第1ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、第1不活性ガス供給管232e、マスフローコントローラ241e、バルブ243eにより、第1不活性ガス供給系が構成される。第1不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
【0028】
第2ガス供給管232bには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241b、及び開閉弁であるバルブ243bが設けられている。また、第2ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、第2不活性ガス供給管232fが接続されている。この第2不活性ガス供給管232fには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241f、及び開閉弁であるバルブ243fが設けられている。また、第2ガス供給管232bの先端部には、上述の第2ノズル233bが接続されている。第2ノズル233bは、ガス分散空間であるバッファ室237内に設けられている。
【0029】
バッファ室237は反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。すなわち、バッファ室237は、ウエハ配列領域の側方に設けられている。バッファ室237のウエハ200と隣接する壁の端部にはガスを供給するガス供給孔248cが設けられている。ガス供給孔248cは反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。このガス供給孔248cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0030】
第2ノズル233bは、バッファ室237のガス供給孔248cが設けられた端部と反対側の端部に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第2ノズル233bは、ウエハ配列領域の側方に設けられている。第2ノズル233bはL字型のロングノズルとして構成されている。第2ノズル233bの側面にはガスを供給するガス供給孔248bが設けられている。ガス供給孔248bはバッファ室237の中心を向くように開口している。このガス供給孔248bは、バッファ室237のガス供給孔248cと同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。この複数のガス供給孔248bのそれぞれの開口面積は、バッファ室237内と処理室201内の差圧が小さい場合には、上流側(下部)から下流側(上部)まで、それぞれ同一の開口面積で同一の開口ピッチと
するとよいが、差圧が大きい場合には上流側から下流側に向かって、それぞれ開口面積を大きくするか、開口ピッチを小さくするとよい。
【0031】
本実施形態においては、第2ノズル233bのガス供給孔248bのそれぞれの開口面積や開口ピッチを、上流側から下流側にかけて上述のように調節することで、まず、ガス供給孔248bのそれぞれから、流速の差はあるものの、流量がほぼ同量であるガスを噴出させる。そしてこのガス供給孔248bのそれぞれから噴出するガスを、一旦、バッファ室237内に導入し、バッファ室237内においてガスの流速差の均一化を行うこととしている。すなわち、第2ノズル233bのガス供給孔248bのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスはバッファ室237内で各ガスの粒子速度が緩和された後、バッファ室237のガス供給孔248cより処理室201内に噴出する。これにより、第2ノズル233bのガス供給孔248bのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスは、バッファ室237のガス供給孔248cのそれぞれより処理室201内に噴出する際には、均一な流量と流速とを有するガスとなる。
【0032】
主に、第2ガス供給管232b、マスフローコントローラ241b、バルブ243bにより第2ガス供給系が構成される。なお、第2ノズル233bおよびバッファ室237を第2ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、第2不活性ガス供給管232f、マスフローコントローラ241f、バルブ243fにより第2不活性ガス供給系が構成される。第2不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
【0033】
第3ガス供給管232cには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241c、及び開閉弁であるバルブ243cが設けられている。また、第3ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、第3不活性ガス供給管232gが接続されている。この第3不活性ガス供給管232gには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241g、及び開閉弁であるバルブ243gが設けられている。また、第3ガス供給管232cの先端部は、第2ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側に接続されている。
【0034】
主に、第3ガス供給管232c、マスフローコントローラ241c、バルブ243cにより第3ガス供給系が構成される。なお、第2ガス供給管232bの第3ガス供給管232cとの接続部よりも下流側、第2ノズル233bおよびバッファ室237を第3ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、第3不活性ガス供給管232g、マスフローコントローラ241g、バルブ243gにより第3不活性ガス供給系が構成される。第3不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
【0035】
第4ガス供給管232dには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241d、及び開閉弁であるバルブ243dが設けられている。また、第4ガス供給管232dのバルブ243dよりも下流側には、第4不活性ガス供給管232hが接続されている。この第4不活性ガス供給管232hには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241h、及び開閉弁であるバルブ243hが設けられている。また、第4ガス供給管232dの先端部は、第2ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側に接続されている。
【0036】
主に、第4ガス供給管232d、マスフローコントローラ241d、バルブ243dにより第4ガス供給系が構成される。なお、第2ガス供給管232bの第4ガス供給管232dとの接続部よりも下流側、第2ノズル233bおよびバッファ室237を第4ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、第4不活性ガス供給管232h、マスフローコントローラ241h、バルブ243hにより第4不活性ガス供給系が構成される。第4不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
【0037】
第1ガス供給管232aからは、所定元素を含む原料ガス、すなわち、所定元素としてのシリコン(Si)を含む原料ガス(シリコン含有ガス)として、例えばヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称:HCD)ガスが、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル233aを介して処理室201内に供給される。すなわち、第1ガス供給系は原料ガス供給系(シリコン含有ガス供給系)として構成される。なお、HCDのように常温常圧下で液体状態である液体原料を用いる場合は、液体原料を気化器やバブラ等の気化システムにより気化して、原料ガスとして供給することとなる。このとき同時に、第1不活性ガス供給管232eから、堆積・吸着阻害ガスとしての不活性ガスが、マスフローコントローラ241e、バルブ243eを介して第1ガス供給管232a内に供給される。ここで、堆積・吸着阻害ガスとは、ウエハ200表面上へのシリコンの堆積またはHCDガスの吸着を阻害させるためのガスのことである。第1ガス供給管232a内に供給された堆積・吸着阻害ガスとしての不活性ガスは、第1ノズル233aを介してHCDガスと一緒に処理室201内に供給される。なおこのとき、堆積・吸着阻害ガスとして、不活性ガスの代わりに水素含有ガスを第1ガス供給管232a内に供給するようにしてもよい。この場合、第1不活性ガス供給系を水素含有ガス供給系に置き換えればよい。すなわちこの場合、水素含有ガス供給系は、水素含有ガス供給管232e、マスフローコントローラ241e、バルブ243eにより構成されることとなる。このように、第1不活性ガス供給系は堆積・吸着阻害ガス供給系としても構成され、水素含有ガス供給系に置き換えることも可能となっている。
【0038】
第2ガス供給管232bからは、窒素を含むガス(窒素含有ガス)として、例えばアンモニア(NH3)ガスが、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2ノズル233b、バッファ室237を介して処理室201内に供給される。すなわち、第2ガス供給系は窒素含有ガス供給系として構成される。このとき同時に、第2不活性ガス供給管232fから、不活性ガスが、マスフローコントローラ241f、バルブ243fを介して第2ガス供給管232b内に供給されるようにしてもよい。
【0039】
第3ガス供給管232cからは、酸素を含むガス(酸素含有ガス)として、例えば酸素(O2)ガスが、マスフローコントローラ241c、バルブ243c、第2ガス供給管232b、第2ノズル233b、バッファ室237を介して処理室201内に供給される。すなわち、第3ガス供給系は酸素含有ガス供給系として構成される。このとき同時に、第3不活性ガス供給管232gから、不活性ガスが、マスフローコントローラ241g、バルブ243gを介して第3ガス供給管232c内に供給されるようにしてもよい。
【0040】
第4ガス供給管232dからは、水素を含むガス(水素含有ガス)として、例えば水素(H2)ガスが、マスフローコントローラ241d、バルブ243d、第2ガス供給管232b、第2ノズル233b、バッファ室237を介して処理室201内に供給される。すなわち、第4ガス供給系は水素含有ガス供給系として構成される。このとき同時に、第4不活性ガス供給管232hから、不活性ガスが、マスフローコントローラ241h、バルブ243hを介して第4ガス供給管232d内に供給されるようにしてもよい。
【0041】
なお、本実施形態では、NH3ガスとO2ガスとH2ガスとを同じノズルから処理室201内(バッファ室237内)に供給するようにしているが、それぞれを別々のノズルから処理室201内に供給するようにしてもよく、H2ガスのみを別のノズルから処理室201内に供給するようにしてもよい。ただし、複数種類のガスでノズルを共用とした方が、ノズルの本数を減らすことができ、装置コストを低減することができ、メンテナンスも容易になる等のメリットがある。また、H2ガスとHCDガスとを同じノズルから処理室201内に供給するようにしてもよい。後述する成膜温度帯では、H2ガスとHCDガスとは反応しないが、NH3ガスとHCDガス、及びO2ガスとHCDガスとはそれぞれ反
応することが考えられるので、NH3ガスやO2ガスを供給するノズルと、HCDガスを供給するノズルとは別にした方がよい。
【0042】
バッファ室237内には、図2に示すように、細長い構造を有する第1の電極である第1の棒状電極269及び第2の電極である第2の棒状電極270が、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積層方向に沿って配設されている。第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれは、第2ノズル233bと平行に設けられている。第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれは、上部より下部にわたって各電極を保護する保護管である電極保護管275により覆われることで保護されている。この第1の棒状電極269又は第2の棒状電極270のいずれか一方は整合器272を介して高周波電源273に接続され、他方は基準電位であるアースに接続されている。この結果、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間のプラズマ生成領域224にプラズマが生成される。主に、第1の棒状電極269、第2の棒状電極270、電極保護管275、整合器272、高周波電源273によりプラズマ発生器(プラズマ発生部)としてのプラズマ源が構成される。なお、プラズマ源は、後述するようにガスをプラズマで活性化させる活性化機構として機能する。
【0043】
電極保護管275は、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれをバッファ室237の雰囲気と隔離した状態でバッファ室237内に挿入できる構造となっている。ここで、電極保護管275の内部は外気(大気)と同一雰囲気であると、電極保護管275にそれぞれ挿入された第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270はヒータ207による熱で酸化されてしまう。そこで、電極保護管275の内部には窒素などの不活性ガスを充填あるいはパージし、酸素濃度を充分低く抑えて第1の棒状電極269又は第2の棒状電極270の酸化を防止するための不活性ガスパージ機構が設けられている。
【0044】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。なお、APCバルブ244は弁を開閉して処理室201内の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能なように構成されている開閉弁である。真空ポンプ246を作動させつつ、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいてAPCバルブ244の弁の開度を調節することにより、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、真空ポンプ246、圧力センサ245により排気系が構成される。
【0045】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は反応管203の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、後述する基板保持具としてのボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255はシールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内に対して搬入・搬出することが可能なように構成されている。
【0046】
基板支持具としてのボート217は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなり、複数枚のウエハ200を水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に支持するように構成されている。なお、ボート217の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる断熱部材218が設けられており、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなるように構成されている。なお、断熱部材218は、石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる複数枚の断熱板と、これら断熱板を水平姿勢で多段に支持する断熱板ホルダとにより構成してもよい。
【0047】
反応管203内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、第1ノズル233a及び第2ノズル233bと同様に、L字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0048】
制御部(制御手段)であるコントローラ121は、マスフローコントローラ241a,241b,241c,241d,241e,241f,241g,241h、バルブ243a,243b,243c,243d,243e,243f,243g,243h、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115、高周波電源273、整合器272等に接続されている。コントローラ121により、マスフローコントローラ241a,241b,241c,241d,241e,241f,241g,241hによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a,243b,243c,243d,243e,243f,243g,243hの開閉動作、APCバルブ244の開閉及び圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動・停止、回転機構267の回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等の制御や、高周波電源273の電力供給制御、整合器272によるインピーダンス制御が行われる。
【0049】
(2)基板処理工程
次に、上述の基板処理装置の処理炉を用いて、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に下地膜として所定膜厚の酸化膜を形成した後、下地膜としての酸化膜上に窒化膜を成膜する方法の例について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0050】
図3に本実施形態における成膜フロー図を、図4、図5に本実施形態に係る酸化膜の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミング図を、図6、図7に本実施形態に係る窒化膜の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミング図をそれぞれ示す。
【0051】
本実施形態の成膜シーケンスでは、まず、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、基板を収容した状態で、所定元素としてのシリコンを含む原料ガスを供給し排気して、基板上に所定元素含有層としてのシリコン含有層を形成する工程と、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気して、シリコン含有層を酸化層としてのシリコン酸化層に変化させる工程とを、その間に処理容器内に不活性ガスを供給し排気して処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、基板上に所定膜厚の酸化膜としてのシリコン酸化膜を形成する。
【0052】
そして、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、表面に所定膜厚のシリコン酸化膜が形成された基板を収容した状態で、所定元素としてのシリコンを含む原料ガスを供給し排気して、シリコン酸化膜上に所定元素含有層としてのシリコン含有層を
形成する工程と、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、シリコン含有層を窒化層としてのシリコン窒化層に変化させる工程とを、その間に処理容器内に不活性ガスを供給し排気して処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、シリコン酸化膜上に所定膜厚の窒化膜としてのシリコン窒化膜を形成する。
【0053】
なお、シリコン酸化膜を形成する際及びシリコン窒化膜を形成する際に実施する各シリコン含有層を形成する工程では、それぞれ、原料ガスを基板の側方に設けられたノズルを介して基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して原料ガスと一緒に堆積・吸着阻害ガスとしての不活性ガスまたは水素含有ガスを基板に向けて供給することで、基板の表面と平行方向に流れる原料ガスの流速を、処理容器内をパージする工程において基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする。
【0054】
以下、これを具体的に説明する。なお、本実施形態では、まず、原料ガスとしてHCDガスを、酸素含有ガスとしてO2ガスを、水素含有ガスとしてH2ガスを、堆積・吸着阻害ガスとしてN2ガスまたはH2ガスを、パージガスとしてN2ガスを用い、図3の成膜フロー、図4、図5の成膜シーケンスにより、ウエハ200上にシリコン酸化膜(SiO2膜、以下、単にSiO膜ともいう)を形成する。その後、原料ガスとしてHCDガスを、窒素含有ガスとしてNH3ガスを、堆積・吸着阻害ガスとしてN2ガスまたはH2ガスを、パージガスとしてN2ガスを用い、図3の成膜フロー、図6、図7の成膜シーケンスにより、下地膜としてのシリコン酸化膜上にシリコン窒化膜(Si3N4膜、以下、単にSiN膜ともいう)を形成する。
【0055】
(ウエハチャージ及びボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0056】
(圧力調整及び温度調整)
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。続いて、回転機構267によりボート217及びウエハ200の回転を開始する。
【0057】
(シリコン酸化膜形成工程)
その後、以下のステップ1a〜4aを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施することにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン酸化膜を成膜する。
【0058】
[ステップ1a]
第1ガス供給管232aのバルブ243a、第1不活性ガス供給管232eのバルブ243eを開き、第1ガス供給管232aにHCDガス、第1不活性ガス供給管232eに堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスを流す。N2ガスは、第1不活性ガス供給管232eから流れ、マスフローコントローラ241eにより流量調整される。HCDガスは、第1ガス供給管232aから流れ、マスフローコントローラ241aにより流量調整される。流量調整されたHCDガスは、流量調整されたN2ガスと第1ガス供給管232a内で
混合されて、第1ノズル233aのガス供給孔248aから、加熱された減圧状態の処理室201内に供給され、排気管231から排気される(HCDガス+N2ガス供給)。
【0059】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、大気圧未満、例えば10〜1000Paの範囲内の圧力に維持する。マスフローコントローラ241aで制御するHCDガスの供給流量は、例えば20〜1000sccm(0.02〜1slm)の範囲内の流量とする。マスフローコントローラ241eで制御する堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量は、HCDガスの供給流量よりも大流量とし、例えば1000〜20000sccm(1〜20slm)の範囲内の流量とする。HCDガスをウエハ200に晒す時間は、例えば1〜120秒間の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、上述の圧力帯において処理室201内でCVD反応が生じるような温度となるように設定する。すなわちウエハ200の温度が、例えば350〜950℃、好ましくは、700〜800℃の範囲内の温度となるようにヒータ207の温度を設定する。なお、ウエハ200の温度が350℃未満となるとウエハ200上においてHCDが分解、吸着しにくくなる。また、ウエハ200の温度が950℃を超えるとCVD反応が強くなり過ぎ、堆積・吸着阻害ガスの作用が十分に働かず、膜厚均一性の悪化を改善するのが困難となる。一方、ウエハ200の温度が700℃未満の場合、膜厚均一性は比較的良好となり、700℃以上の高温領域において膜厚均一性の悪化が顕著となり、堆積・吸着阻害ガスを用いる本発明が特に有効となる。また、ウエハ200の温度が800℃を超えるとCVD反応が強くなり、膜厚均一性の悪化を改善するには堆積・吸着阻害ガスの流量を更に大流量とする必要が生じ、堆積・吸着阻害ガスの消費量が多くなりコストアップとなる。また、成膜速度が低下してしまうというデメリットもある。例えば、ウエハ200の温度を900℃としたときの成膜速度は、ウエハ200の温度を700〜800℃としたときの成膜速度のおよそ3分の1程度となる。以上のことから、ウエハ200の温度は350〜950℃とするのが好ましく、700〜800℃とするのがより好ましい。
【0060】
上述の条件、すなわちCVD反応が生じる条件下でHCDガスを処理室201内に供給することで、ウエハ200(表面の下地膜)上に1原子層未満から数原子層程度のシリコン含有層としてのシリコン層が形成される。シリコン含有層はHCDガスの吸着層であってもよい。ここでシリコン層とは、シリコンにより構成される連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできるシリコン薄膜をも含む総称である。なお、シリコンにより構成される連続的な層をシリコン薄膜という場合もある。また、HCDガスの吸着層とは、HCDガスのガス分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。なお、1原子層未満の層とは不連続に形成される原子層のことを意味している。HCDガスが自己分解する条件下では、ウエハ200上にシリコンが堆積することでシリコン層が形成される。HCDガスが自己分解しない条件下では、ウエハ200上にHCDガスが吸着することでHCDガスの吸着層が形成される。ウエハ200上に形成されるシリコン含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ3aでの酸化の作用がシリコン含有層の全体に届かなくなる。また、ウエハ200上に形成可能なシリコン含有層の最小値は1原子層未満である。よって、シリコン含有層の厚さは1原子層未満から数原子層程度とするのが好ましい。なお、ウエハ200上にHCDガスの吸着層を形成するよりも、ウエハ200上にシリコン層を形成する方が、成膜レートを高くすることができ好ましい。
【0061】
このとき、上述のように、HCDガスを供給する第1ノズル233aと同じノズルからHCDガスと一緒に堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスを大流量でウエハ200に向けて供給することで、HCDガスの流速、特にウエハ200表面と平行方向に流れる(ウエハ200表面を横切る)HCDガスの流速を速くする。すなわち、HCDガスのウエハ200表面と平行方向への吹き付けを強くする。これにより、ウエハ200上へのシリコンの堆積効率またはHCDガスの吸着効率を下げ、堆積または吸着を抑制させつつウエハ200上にシリコン含有層を形成することができるようになる。この堆積・吸着阻害ガスの
作用により、図10に示すようにシリコン含有層の堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりに移動させることが可能となり、また、シリコン含有層の最も厚い部分と最も薄い部分との差を小さくすることができ、例えば700℃以上の高温領域において吸着反応が崩れる領域、すなわちシリコン含有層の堆積または吸着が過剰となる領域においても、均一にシリコン含有層を形成することが可能となる。
【0062】
なお、図10(a)はウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速が小さい場合におけるシリコンの堆積またはHCDガスの吸着の様子を模式的に示す図である。また、図10(b)はウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速が大きい場合におけるシリコンの堆積またはHCDガスの吸着の様子を模式的に示す図である。なお、図10における白抜き矢印は、HCDガスとN2ガスとの流れる方向を示しており、ウエハ200上の白丸(○)は、ウエハ200上に堆積したSi原子またはウエハ200上に吸着したHCDガス分子を示している。また、図10では、便宜上、ウエハ200の左半分のみを示している。
【0063】
図10に示すように、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を大きくすることにより、シリコン含有層の厚さを全体的に薄くしつつ、シリコン含有層の堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりに移動させることが可能となる。また、シリコン含有層の最も厚い部分と最も薄い部分との差を小さくすることができ、ウエハ200面内にわたり均一にシリコン含有層を形成することが可能となる。
【0064】
なお、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量は、上述のように1〜20slmの範囲内の流量とするのが好ましく、HCDガスの供給流量よりも大流量とするのが好ましい。このようにN2ガスの供給流量を設定し、N2ガスの体積流量を、HCDガスの体積流量よりも大流量とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を、HCDガスを単独で流す場合よりも速くする。すなわち、HCDガスを単独で流す場合よりも強くHCDガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付ける。また、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量は、後述するステップ3aにおいて処理室201内に供給するO2ガスやH2ガスの供給流量よりも大流量とするのが好ましい。このようにN2ガスの供給流量を設定し、N2ガスの体積流量を、O2ガスやH2ガスの体積流量よりも大流量とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を、ウエハ200表面と平行方向に流れるO2ガスやH2ガスの流速よりも速くする。すなわち、O2ガスやH2ガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付けるよりも強く、HCDガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付ける。さらには、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量は、後述するステップ2a,4aにおいて処理室201内に供給するパージガスとしてのN2ガスの供給流量よりも大流量とするのが好ましい。このように堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量を設定し、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量を、パージガスとしてのN2ガスの体積流量よりも大流量とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を、ウエハ200表面と平行方向に流れるパージガスとしてのN2ガスの流速よりも速くする。すなわち、パージガスとしてのN2ガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付けるよりも強く、HCDガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付ける。
【0065】
具体的には、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量は、HCDガスの体積流量の10〜30倍程度であって、パージガスとしてのN2ガスの体積流量の5〜30倍程度とするのが好ましい。堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量をHCDガスの体積流量の10〜30倍程度とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速をより十分に高めることが可能となり、シリコン含有層の堆積または吸着をより十分に抑制でき、堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりにすることが容易となる。また、シリコン含有層の最も厚い部分と最も薄い部分との差を小さく
することも容易となる。結果、膜厚均一性をより十分に改善できることとなる。また、HCDガスの流速が速くなり過ぎ、シリコン含有層の堆積または吸着を抑制し過ぎて、実用的な成膜速度が得られなくなることを防止することができる。
【0066】
Siを含む原料としては、HCDの他、TCS(テトラクロロシラン、SiCl4)、DCS(ジクロロシラン、SiH2Cl2)、SiH4(モノシラン)等の無機原料だけでなく、アミノシラン系の4DMAS(テトラキスジメチルアミノシラン、Si[N(CH3)2]4)、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン、Si[N(CH3)2]3H)、2DEAS(ビスジエチルアミノシラン、Si[N(C2H5)2]2H2)、BTBAS(ビスターシャリーブチルアミノシラン、SiH2[NH(C4H9)]2)などの有機原料を用いてもよい。
【0067】
堆積・吸着阻害ガスとしての不活性ガスとしては、N2ガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。また、堆積・吸着阻害ガスとしては、水素含有ガスを用いてもよい。水素含有ガスとしては、例えば水素(H2)ガスや重水素(D2)ガス等を用いることができる。図5に、堆積・吸着阻害ガスとして水素含有ガスであるH2ガスを用いた成膜シーケンス例を示す。堆積・吸着阻害ガスとしてのH2ガスの供給流量は、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量と同様、1000〜20000sccm(1〜20slm)の範囲内の流量とする。なお、堆積・吸着阻害ガスとしては、窒素(N)を含まないガスであるArやHe等の希ガスやH2ガスやD2ガス等の水素含有ガスを使用することで、形成されるシリコン酸化膜の膜中N不純物濃度を低減できる効果もある。
【0068】
[ステップ2a]
ウエハ200上にシリコン含有層が形成された後、第1ガス供給管232aのバルブ243aを閉じ、HCDガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、残留したHCDガスを処理室201内から排除する。このとき、バルブ243eは開いたままとして、不活性ガスとしてのN2ガスの処理室201内への供給を維持する。このときバルブ243f,243g,243hを開くようにしてもよい。N2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のHCDガスを処理室201内から排除する効果を更に高めることができる(残留ガス除去)。
【0069】
このときのヒータ207の温度は、ウエハ200の温度がHCDガスの供給時と同じく350〜950℃、好ましくは700〜800℃の範囲内の温度となるように設定する。パージガスとしてのN2ガスの供給流量は、200〜1000sccm(0.2〜1slm)の範囲内の流量とする。なお、パージガスとしてのN2ガスの体積流量は、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量ほど大きくする必要はなく、それより小流量で十分なパージ効果が得られる。逆にいうと、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量は、パージガスとしてのN2ガスの体積流量よりも大きくする必要がある。すなわちシリコン含有層の堆積・吸着抑制効果を得るには、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量を、パージ効果が十分に得られるだけのN2ガスの体積流量よりも大流量とする必要がある。よって、パージにより処理室201内の残留ガスを除去する際は、マスフローコントローラ241eを制御して、第1不活性ガス供給管232eから供給するN2ガスの供給流量を1〜20slmから0.2〜1slmへと変更し、N2ガスの体積流量を減少させることとなる。なお、パージガスとしては、N2ガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0070】
[ステップ3a]
処理室201内の残留ガスを除去した後、第3ガス供給管232cのバルブ243cを開き、第3ガス供給管232cにO2ガスを流す。O2ガスは第3ガス供給管232cから流れ、マスフローコントローラ241cにより流量調整される。流量調整されたO2ガスは第2ガス供給管232bを経由して第2ノズル233bのガス供給孔248bから加熱された減圧状態のバッファ室237内に供給される。このとき同時に、第4ガス供給管232dのバルブ243dを開き、第4ガス供給管232dにH2ガスを流す。H2ガスは第4ガス供給管232dから流れ、マスフローコントローラ241dにより流量調整される。流量調整されたH2ガスは第2ガス供給管232bを経由して第2ノズル233bのガス供給孔248bから加熱された減圧状態のバッファ室237内に供給される。なお、H2ガスは第2ガス供給管232bを経由する際に第2ガス供給管232b内でO2ガスと混合される。すなわち、第2ノズル233bからは、O2ガスとH2ガスの混合ガスが供給されることとなる。バッファ室237内に供給されたO2ガスとH2ガスの混合ガスは、バッファ室237のガス供給孔248cから、加熱された減圧状態の処理室201内に供給され、排気管231から排気される(O2ガス+H2ガス供給)。
【0071】
このとき、第3不活性ガス供給管232gのバルブ243gを開き、第3不活性ガス供給管232gから不活性ガスとしてN2ガスを供給するようにしてもよい。N2ガスはマスフローコントローラ241gにより流量調整されて、第3ガス供給管232c内に供給される。また、第4不活性ガス供給管232hのバルブ243hを開き、第4不活性ガス供給管232hから不活性ガスとしてN2ガスを供給するようにしてもよい。N2ガスはマスフローコントローラ241hにより流量調整されて、第4ガス供給管232d内に供給される。この場合、第2ノズル233bからは、O2ガスとH2ガスとN2ガスの混合ガスが供給されることとなる。なお、不活性ガスとしては、N2ガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0072】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、大気圧未満、例えば1〜1000Paの範囲内の圧力に維持する。マスフローコントローラ241cで制御するO2ガスの供給流量は、例えば1000〜10000sccm(1〜10slm)の範囲内の流量とする。マスフローコントローラ241dで制御するH2ガスの供給流量は、例えば1000〜10000sccm(1〜10slm)の範囲内の流量とする。なお、O2ガス及びH2ガスをウエハ200に晒す時間は、例えば1〜120秒間の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば350〜1000℃の範囲内の温度となるように設定する。なお、この範囲内の温度であれば減圧雰囲気下でのO2ガスへのH2ガス添加による酸化力向上の効果が得られることを確認した。また、ウエハ200の温度が低すぎると酸化力向上の効果が得られないことも確認した。ただしスループットを考慮すると、ウエハ200の温度が、酸化力向上の効果が得られる温度であってステップ1aのHCDガスの供給時と同様な温度帯となるように、すなわちステップ1aとステップ3aとで処理室201内の温度を同様な温度帯に保持するようにヒータ207の温度を設定するのが好ましい。この場合、ステップ1aとステップ3aとでウエハ200の温度、すなわち処理室201内の温度が350〜950℃、好ましくは700〜800℃の範囲内の一定の温度となるようにヒータ207の温度を設定する。さらには、ステップ1a〜ステップ4a(後述)にかけて処理室201内の温度を同様な温度帯に保持するようにヒータ207の温度を設定するのがより好ましい。この場合、ステップ1a〜ステップ4a(後述)にかけて処理室201内の温度が350〜950℃、好ましくは700〜800℃の範囲内の一定の温度となるようにヒータ207の温度を設定する。なお、減圧雰囲気下でのO2ガスへのH2ガス添加による酸化力向上の効果を得るには、処理室201内の温度を350℃以上とする必要があるが、処理室201内の温度は400℃以上とするのが好ましく、さらには450℃以上とするのが好ましい。処理室201内の温度を400℃以上とすれば、400℃以上の温度で行うO3酸化処理による酸化力を超える酸化力を得ることができ、処理室201内の温度を450℃以上とすれ
ば、450℃以上の温度で行うO2プラズマ酸化処理による酸化力を超える酸化力を得ることができる。
【0073】
上述の条件にてO2ガス及びH2ガスを処理室201内に供給することで、O2ガス及びH2ガスは加熱された減圧雰囲気下においてノンプラズマで熱的に活性化されて反応し、それにより原子状酸素(O)等の酸素を含む酸化種が生成される。そして、主にこの酸化種により、ステップ1aでウエハ200上に形成されたシリコン含有層に対して酸化処理が行われる。そして、この酸化処理により、シリコン含有層はシリコン酸化層(SiO2層、以下、単にSiO層ともいう。)へと変化させられる(改質される)。この酸化処理によれば上述のように、O2ガスを単独で供給する場合に比べ、酸化力を大幅に向上させることができる。すなわち、減圧雰囲気下においてO2ガスにH2ガスを添加することで、O2ガス単独供給の場合に比べ大幅な酸化力向上効果が得られる。
【0074】
なお、このとき、O2ガスとH2ガスのうち少なくとも何れか一方または両方をプラズマで活性化させて流すこともできる。O2ガスおよび/またはH2ガスをプラズマで活性化させて流すことで、よりエネルギーの高い酸化種を生成することができ、この酸化種により酸化処理を行うことで、デバイス特性が向上する等の効果も考えられる。例えば、O2ガスとH2ガスの両方をプラズマで活性化させる場合、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237内に供給されたO2ガスとH2ガスの混合ガスはプラズマ励起され、活性種としてガス供給孔248cから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、高周波電源273から第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に印加する高周波電力は、例えば50〜1000Wの範囲内の電力となるように設定する。その他の処理条件は、上述の処理条件と同様とする。なお、上述の温度帯では、O2ガスとH2ガスとは熱で活性化されて十分に反応し、十分な量の酸化種が生成される。よって、O2ガスとH2ガスとをノンプラズマで熱的に活性化させても十分な酸化力が得られる。なお、O2ガスとH2ガスは熱で活性化させて供給した方が、ソフトな反応を生じさせることができ、上述の酸化処理をソフトに行うことができる。
【0075】
酸素含有ガス、すなわち酸化性ガスとしては、酸素(O2)ガスの他、オゾン(O3)ガス等を用いてもよい。なお、上述の温度帯において、一酸化窒素(NO)ガスや亜酸化窒素(N2O)ガスへの水素含有ガス添加効果を試してみたところ、NOガス単独供給やN2Oガス単独供給に比べて酸化力向上の効果が得られないことを確認した。すなわち、酸素含有ガスとしては窒素非含有の酸素含有ガス(窒素を含まず酸素を含むガス)を用いるのが好ましい。水素含有ガス、すなわち還元性ガスとしては、水素(H2)ガスの他、重水素(D2)ガス等を用いてもよい。なお、アンモニア(NH3)ガスやメタン(CH4)ガス等を用いると、窒素(N)不純物や炭素(C)不純物の膜中への混入が考えられる。すなわち、水素含有ガスとしては、他元素非含有の水素含有ガス(他元素を含まず水素または重水素を含むガス)を用いるのが好ましい。すなわち、酸素含有ガスとしては、O2ガスおよびO3ガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いることができ、水素含有ガスとしては、H2ガスおよびD2ガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いることができる。
【0076】
[ステップ4a]
シリコン含有層をシリコン酸化層へと変化させた後、第3ガス供給管232cのバルブ243cを閉じ、O2ガスの供給を停止する。また、第4ガス供給管232dのバルブ243dを閉じ、H2ガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、残留したO2ガスやH2ガスを処理室201内から排除する。このとき、バルブ243e,243f,243g,243hを開き、不活性ガスとしてのN2ガスを処理室201内へ供給する
。N2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン酸化層形成に寄与した後のO2ガスやH2ガスを処理室201内から排除する効果を更に高めることができる(残留ガス除去)。
【0077】
このときのヒータ207の温度は、ウエハ200の温度がO2ガス及びH2ガスの供給時と同じく350〜950℃、好ましくは700〜800℃の範囲内の温度となるように設定する。パージガスとしてのN2ガスの供給流量は、200〜1000sccm(0.2〜1slm)の範囲内の流量とする。なお、上述のようにパージガスとしてのN2ガスの体積流量は、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量ほど大きくする必要はなく、それより小流量で十分なパージ効果が得られる。パージガスとしては、N2ガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0078】
上述したステップ1a〜4aを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン酸化膜を成膜することが出来る。シリコン酸化膜は、後述する工程で形成するシリコン窒化膜の下地膜となる。
【0079】
なお、下地膜として形成するシリコン酸化膜の膜厚を2nm未満とすると、サーマルエッチングによりウエハ200表面にエッチピットが発生してしまうことがある。また、下地膜として形成するシリコン酸化膜の膜厚を厚くしすぎるとシリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが積層されてなる絶縁膜の実効的な誘電率が低下し、シリコン窒化膜を絶縁膜として利用する利点が損なわれてしまうことがある。したがって、下地膜として形成するシリコン酸化膜の膜厚は2nm以上4nm以下とすることが望ましく、更には2nmとするのがより望ましい。
【0080】
(シリコン窒化膜形成工程)
続いて、以下のステップ1b〜4bを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数実施することにより、下地膜としてのシリコン酸化膜上に所定膜厚のシリコン窒化膜を成膜する。
【0081】
[ステップ1b]
シリコン酸化膜形成工程のステップ1aと同様の手順により、加熱された減圧状態の処理室201内にHCDガスとN2ガスとを供給し排気する(HCDガス+N2ガス供給)。
【0082】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、大気圧未満、例えば10〜1000Paの範囲内の圧力に維持する。マスフローコントローラ241aで制御するHCDガスの供給流量は、例えば20〜1000sccm(0.02〜1slm)の範囲内の流量とする。マスフローコントローラ241eで制御する堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量は、HCDガスの供給流量よりも大流量とし、例えば1000〜20000sccm(1〜20slm)の範囲内の流量とする。HCDガスをウエハ200に晒す時間は、例えば1〜120秒間の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、上述の圧力帯において処理室201内でCVD反応が生じるような温度となるように設定する。すなわちウエハ200の温度が、例えば350〜950℃、好ましくは700〜950℃、より好ましくは750〜950℃、さらに好ましくは800〜950℃の範囲内の温度となるようにヒータ207の温度を設定する。なお、ウエハ200の温度が350℃未満となるとウエハ200上においてHCDが分解、吸着しにくくなる。また、ウエハ200の温度が950℃を超えるとCVD反応が強くなり過ぎ、堆積・吸着阻害ガスの作用が十分に働かず、膜厚均一性の悪化を改善するのが困難となる。一方、ウエハ200の温度が700℃未満の場合、膜厚均一性は比較的良好となり、700℃以上
の高温領域において膜厚均一性の悪化が顕著となり、堆積・吸着阻害ガスを用いる本発明が特に有効となる。また、ウエハ200の温度が800℃未満、特に750℃未満の場合、膜中に取り込まれた水素が残留し易く、かつ、水素の吸着サイトの多い(欠陥の多い)低密度な膜が形成される。以上のことから、ウエハ200の温度は350〜950℃、好ましくは700〜950℃、より好ましくは750〜950℃、さらに好ましくは800〜950℃とするのがよい。なお、ウエハ200の温度を750〜950℃、さらに好ましくは800〜950℃とすれば、堆積・吸着阻害ガスの作用を十分に生じさせることができ、さらに、膜中に取り込まれた水素が残留し難く(脱離し易く)なり、かつ、水素の吸着サイトの少ない(欠陥の少ない)高密度な膜を形成することが可能となる。すなわち、この温度帯においては、膜中の水素濃度が極めて低く、膜厚均一性が極めて良好な膜を形成することが可能となる。
【0083】
上述の条件、すなわちCVD反応が生じる条件下でHCDガスを処理室201内に供給することで、シリコン酸化膜(下地膜)上に1原子層未満から数原子層程度のシリコン含有層としてのシリコン層(Si層)が形成される。シリコン含有層はHCDガスの吸着層であってもよい。ここでシリコン層とは、シリコンにより構成される連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできるシリコン薄膜をも含む総称である。なお、シリコンにより構成される連続的な層をシリコン薄膜という場合もある。また、HCDガスの吸着層とは、HCDガスのガス分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。なお、1原子層未満の層とは不連続に形成される原子層のことを意味している。HCDガスが自己分解する条件下では、シリコン酸化膜上にシリコンが堆積することでシリコン層が形成される。HCDガスが自己分解しない条件下では、シリコン酸化膜上にHCDガスが吸着することでHCDガスの吸着層が形成される。シリコン酸化膜上に形成されるシリコン含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ3bでの窒化の作用がシリコン含有層の全体に届かなくなる。また、シリコン酸化膜上に形成可能なシリコン含有層の最小値は1原子層未満である。よって、シリコン含有層の厚さは1原子層未満から数原子層程度とするのが好ましい。なお、シリコン酸化膜上にHCDガスの吸着層を形成するよりも、シリコン酸化膜上にシリコン層を形成する方が、成膜レートを高くすることができ好ましい。
【0084】
このとき、上述のように、HCDガスを供給する第1ノズル233aと同じノズルからHCDガスと一緒に堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスを大流量でウエハ200に向けて供給することで、HCDガスの流速、特にウエハ200表面と平行方向に流れる(ウエハ200表面を横切る)HCDガスの流速を速くする。すなわち、HCDガスのウエハ200表面と平行方向への吹き付けを強くする。これにより、シリコン酸化膜上へのシリコンの堆積効率またはHCDガスの吸着効率を下げ、堆積または吸着を抑制させつつシリコン酸化膜上にシリコン含有層を形成することができるようになる。この堆積・吸着阻害ガスの作用により、図10に示すようにシリコン含有層の堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりに移動させることが可能となり、また、シリコン含有層の最も厚い部分と最も薄い部分との差を小さくすることができ、例えば700℃以上の高温領域において吸着反応が崩れる領域、すなわちシリコン含有層の堆積または吸着が過剰となる領域においても、均一にシリコン含有層を形成することが可能となる。
【0085】
なお、図10(a)はウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速が小さい場合におけるシリコンの堆積またはHCDガスの吸着の様子を模式的に示す図である。また、図10(b)はウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速が大きい場合におけるシリコンの堆積またはHCDガスの吸着の様子を模式的に示す図である。図10では、便宜上、下地膜としてのシリコン酸化膜を図示していない。なお、図10における白抜き矢印は、HCDガスとN2ガスとの流れる方向を示しており、ウエハ200上の白丸(○)は、ウエハ200上(シリコン酸化膜上)に堆積したSi原子またはウエハ20
0上(シリコン酸化膜上)に吸着したHCDガス分子を示している。また、図10では、便宜上、ウエハ200の左半分のみを示している。
【0086】
図10に示すように、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を大きくすることにより、シリコン含有層の厚さを全体的に薄くしつつ、シリコン含有層の堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりに移動させることが可能となる。また、シリコン含有層の最も厚い部分と最も薄い部分との差を小さくすることができ、ウエハ200面内にわたり均一にシリコン含有層を形成することが可能となる。
【0087】
なお、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量は、上述のように1〜20slmの範囲内の流量とするのが好ましく、HCDガスの供給流量よりも大流量とするのが好ましい。このようにN2ガスの供給流量を設定し、N2ガスの体積流量を、HCDガスの体積流量よりも大流量とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を、HCDガスを単独で流す場合よりも速くする。すなわち、HCDガスを単独で流す場合よりも強くHCDガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付ける。また、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量は、後述するステップ3bにおいて処理室201内に供給するNH3ガスの供給流量よりも大流量とするのが好ましい。このようにN2ガスの供給流量を設定し、N2ガスの体積流量を、NH3ガスの体積流量よりも大流量とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を、ウエハ200表面と平行方向に流れるNH3ガスの流速よりも速くする。すなわち、NH3ガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付けるよりも強く、HCDガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付ける。さらには、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量は、後述するステップ2b,4bにおいて処理室201内に供給するパージガスとしてのN2ガスの供給流量よりも大流量とするのが好ましい。このように堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量を設定し、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量を、パージガスとしてのN2ガスの体積流量よりも大流量とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を、ウエハ200表面と平行方向に流れるパージガスとしてのN2ガスの流速よりも速くする。すなわち、パージガスとしてのN2ガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付けるよりも強く、HCDガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付ける。
【0088】
具体的には、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量は、HCDガスの体積流量の10〜30倍程度であって、パージガスとしてのN2ガスの体積流量の5〜30倍程度とするのが好ましい。堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量をHCDガスの体積流量の10〜30倍程度とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速をより十分に高めることが可能となり、シリコン含有層の堆積または吸着をより十分に抑制でき、堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりにすることが容易となる。また、シリコン含有層の最も厚い部分と最も薄い部分との差を小さくすることも容易となる。結果、膜厚均一性をより十分に改善できることとなる。また、HCDガスの流速が速くなり過ぎ、シリコン含有層の堆積または吸着を抑制し過ぎて、実用的な成膜速度が得られなくなることを防止することができる。
【0089】
Siを含む原料としては、HCDの他、TCS(テトラクロロシラン、SiCl4)、DCS(ジクロロシラン、SiH2Cl2)、SiH4(モノシラン)等の無機原料だけでなく、アミノシラン系の4DMAS(テトラキスジメチルアミノシラン、Si[N(CH3)2]4)、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン、Si[N(CH3)2]3H)、2DEAS(ビスジエチルアミノシラン、Si[N(C2H5)2]2H2)、BTBAS(ビスターシャリーブチルアミノシラン、SiH2[NH(C4H9)]2)などの有機原料を用いてもよい。
【0090】
堆積・吸着阻害ガスとしての不活性ガスとしては、N2ガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。また、堆積・吸着阻害ガスとしては、水素含有ガスを用いてもよい。水素含有ガスとしては、例えば水素(H2)ガスや重水素(D2)ガス等を用いることができる。図7に、堆積・吸着阻害ガスとして水素含有ガスであるH2ガスを用いた成膜シーケンス例を示す。堆積・吸着阻害ガスとしてのH2ガスの供給流量は、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの供給流量と同様、1000〜20000sccm(1〜20slm)の範囲内の流量とする。なお、例えば750℃以上、好ましくは800℃以上の高温下では、膜中に取り込まれた水素は残留し難く(脱離し易く)なることから、吸着阻害ガスとして水素含有ガスを用いても、膜中の水素濃度低減効果に影響を与えることはない。この場合においても水素の吸着サイトの少ない(欠陥の少ない)高密度な膜が形成される。なお、HCDガス供給時にH2ガスを供給することで、HCDガス中のClを引き抜くことが考えられ、成膜レートの向上、膜中Cl不純物の低減効果が考えられる。
【0091】
[ステップ2b]
シリコン酸化膜上にシリコン含有層が形成された後、シリコン酸化膜形成工程のステップ2aと同様の手順により、HCDガスを処理室201内から排除すると共に、処理室201内をN2ガスによりパージする(残留ガス除去)。
【0092】
このときのヒータ207の温度は、ウエハ200の温度がHCDガスの供給時と同じく350〜950℃、好ましくは700〜950℃、より好ましくは750〜950℃、さらに好ましくは800〜950℃の範囲内の温度となるように設定する。パージガスとしてのN2ガスの供給流量は、200〜1000sccm(0.2〜1slm)の範囲内の流量とする。なお、パージガスとしてのN2ガスの体積流量は、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量ほど大きくする必要はなく、それより小流量で十分なパージ効果が得られる。逆にいうと、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量は、パージガスとしてのN2ガスの体積流量よりも大きくする必要がある。すなわちシリコン含有層の堆積・吸着抑制効果を得るには、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量を、パージ効果が十分に得られるだけのN2ガスの体積流量よりも大流量とする必要がある。よって、パージにより処理室201内の残留ガスを除去する際は、マスフローコントローラ241eを制御して、第1不活性ガス供給管232eから供給するN2ガスの供給流量を1〜20slmから0.2〜1slmへと変更し、N2ガスの体積流量を減少させることとなる。なお、パージガスとしては、N2ガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0093】
[ステップ3b]
処理室201内の残留ガスを除去した後、第2ガス供給管232bのバルブ243bを開き、第2ガス供給管232bにNH3ガスを流す。NH3ガスは第2ガス供給管232bから流れ、マスフローコントローラ241bにより流量調整される。流量調整されたNH3ガスは第2ノズル233bのガス供給孔248bから加熱された減圧状態のバッファ室237内に供給される。このとき、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に高周波電力を印加しない。これにより、バッファ室237内に供給されたNH3ガスは、熱で活性化されて、バッファ室237のガス供給孔248cから、加熱された減圧状態の処理室201内に供給され排気管231から排気される(NH3ガス供給)。
【0094】
このとき、第2不活性ガス供給管232fのバルブ243fを開き、第2不活性ガス供給管232fから不活性ガスとしてN2ガスを供給するようにしてもよい。N2ガスはマスフローコントローラ241fにより流量調整されて、第2ガス供給管232b内に供給される。この場合、第2ノズル233bからは、NH3ガスとN2ガスの混合ガスが供給されることとなる。なお、不活性ガスとしては、N2ガスの他、Ar、He、Ne、Xe
等の希ガスを用いてもよい。
【0095】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、大気圧未満、例えば1〜3000Paの範囲内の圧力に維持する。マスフローコントローラ241bで制御するNH3ガスの供給流量は、例えば100〜10000sccm(0.1〜10slm)の範囲内の流量とする。NH3ガスをウエハ200に晒す時間は、例えば1〜120秒間の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば350〜1200℃の範囲内の温度となるように設定する。なお、この範囲内の温度であれば減圧雰囲気下でのNH3ガスによる窒化の効果、すなわち、シリコン含有層の窒化反応が得られることを確認した。また、ウエハ200の温度が低すぎると窒化の効果が得られないことも確認した。ただしスループットを考慮すると、ウエハ200の温度が、シリコン含有層の窒化反応が生じる程度の温度であってステップ1bのHCDガスの供給時と同様な温度帯となるように、すなわちステップ1bとステップ3bとで処理室201内の温度を同様な温度帯に保持するようにヒータ207の温度を設定するのが好ましい。この場合、ステップ1bとステップ3bとでウエハ200の温度、すなわち処理室201内の温度が350〜950℃、好ましくは700〜950℃、より好ましくは750〜950℃、さらに好ましくは800〜950℃の範囲内の一定の温度となるようにヒータ207の温度を設定する。さらには、ステップ1b〜ステップ4b(後述)にかけて処理室201内の温度を同様な温度帯に保持するようにヒータ207の温度を設定するのがより好ましい。この場合、ステップ1b〜ステップ4b(後述)にかけて処理室201内の温度が350〜950℃、好ましくは700〜950℃、より好ましくは750〜950℃、さらに好ましくは800〜950℃の範囲内の一定の温度となるようにヒータ207の温度を設定する。なお、処理室201内の温度を550℃以上とすることで、減圧雰囲気下でのNH3ガスによる窒化力向上効果を得ることができる。この窒化力向上効果をより高めようとする場合、処理室201内の温度を600℃以上とするのが好ましく、さらには700℃以上とするのがより好ましい。なお、NH3ガスはプラズマで活性化させて供給するよりも、熱で活性化させて供給した方が、ソフトな反応を生じさせることができ、後述する窒化をソフトに行うことができる。
【0096】
上述の条件にてNH3ガスを処理室201内に供給することで、NH3ガスは加熱された減圧雰囲気下においてノンプラズマで熱的に活性化されるか、もしくは熱分解して窒素を含む窒化種が生成される。このとき、処理室201内にはHCDガスは流していないので、NH3ガスは気相反応を起こすことはなく、NH3ガスが熱的に活性化されるか、もしくは熱分解することで得られた窒化種は、ステップ1bでシリコン酸化膜上に形成されたシリコン含有層の少なくとも一部と反応する。これにより、シリコン含有層に対して窒化処理が行われ、この窒化処理により、シリコン含有層はシリコン窒化層(Si3N4層、以下、単にSiN層ともいう。)へと変化させられる(改質される)。
【0097】
なお、このとき、NH3ガスをプラズマで活性化させて流すこともできる。NH3ガスをプラズマで活性化させて流すことで、よりエネルギーの高い窒化種を生成することができ、この窒化種により窒化処理を行うことで、デバイス特性が向上する等の効果も考えられる。NH3ガスをプラズマで活性化させる場合、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237内に供給されたNH3ガスはプラズマ励起され、活性種としてガス供給孔248cから処理室201内に供給され排気管231から排気される。このとき、高周波電源273から第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に印加する高周波電力は、例えば50〜1000Wの範囲内の電力となるように設定する。その他の処理条件は、上述の処理条件と同様とする。なお、上述の温度帯では、NH3ガスは熱で十分に活性化され、十分な量の窒化種が生成される。よって、NH3ガスをノンプラズマで熱的に活性化させても十分な窒化力が得られる。なお、NH3ガスは熱で活性化させて供給し
た方が、ソフトな反応を生じさせることができ、上述の窒化処理をソフトに行うことができる。
【0098】
窒素含有ガスとしては、NH3ガスの他、ジアジン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガスやアミン系のガス等を用いてもよい。
【0099】
[ステップ4b]
シリコン含有層をシリコン窒化層へと変化させた後、第2ガス供給管232bのバルブ243bを閉じ、NH3ガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、残留したNH3ガスを処理室201内から排除する。このとき、バルブ243e,243f,243g,243hを開き、不活性ガスとしてのN2ガスを処理室201内へ供給する。N2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン窒化層形成に寄与した後のNH3ガスを処理室201内から排除する効果を更に高めることができる(残留ガス除去)。
【0100】
このときのヒータ207の温度は、ウエハ200の温度がNH3ガスの供給時と同じく350〜950℃、好ましくは700〜950℃、より好ましくは750〜950℃、さらに好ましくは800〜950℃の範囲内の温度となるように設定する。パージガスとしてのN2ガスの供給流量は、200〜1000sccm(0.2〜1slm)の範囲内の流量とする。なお、上述のようにパージガスとしてのN2ガスの体積流量は、堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスの体積流量ほど大きくする必要はなく、それより小流量で十分なパージ効果が得られる。パージガスとしては、N2ガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0101】
上述したステップ1b〜4bを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより、下地膜としてのシリコン酸化膜上に所定膜厚のシリコン窒化膜を成膜することが出来る。図11は、上述の成膜シーケンスにより、ウエハ200上にシリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが順に積層された様子を示す断面図である。なおシリコン酸化膜形成工程とシリコン窒化膜形成工程とは、ウエハ200の温度を同様な温度帯に保持した状態で行うのが好ましい。
【0102】
(パージ及び大気圧復帰)
所定膜厚のシリコン窒化膜が成膜されると、バルブ243e,243f,243g,243hを開き、第1不活性ガス供給管232e、第2不活性ガス供給管232f、第3不活性ガス供給管232g、第4不活性ガス供給管232hのそれぞれから不活性ガスとしてのN2ガスを処理室201内へ供給し排気管231から排気する。N2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスが処理室201内から除去される(パージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0103】
(ボートアンロード及びウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、反応管203の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200がボート217に保持された状態で反応管203の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済みのウエハ200はボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0104】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0105】
本実施形態によれば、ウエハ200上にシリコン窒化膜を直接形成するのではなく、下地膜としてのシリコン酸化膜を介して形成するようにしている。このようにすることで、シリコン窒化膜の成膜温度を高温化したとしても、ウエハ200表面上における吸着酸素や巻き込み酸素等がウエハ200表面とシリコン窒化膜との界面に及ぼす影響を低減することができる。また、ウエハ200表面がシリコン酸化膜により覆われることで、シリコン窒化膜の成膜温度を高温化したとしても、サーマルエッチングによるウエハ200表面でのエッチピット等の発生を抑制でき、ウエハ200表面の実効的な表面積の増加を防ぐことができる。これらにより、シリコン窒化膜の電気特性へ及ぼす影響を低減でき、シリコン窒化膜のリーク電流を低減でき、またEOTを小さくすることができる。
【0106】
なお、本実施形態によれば、下地膜としてのシリコン酸化膜の膜厚を2nm以上としている。これにより、サーマルエッチングによりウエハ200表面にエッチピットが発生してしまうことをより確実に回避できる。また、下地膜としてのシリコン酸化膜の膜厚を4nm以下としている。これにより、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが積層されてなる絶縁膜の実効的な誘電率の低下を防ぐことができる。
【0107】
また、本実施形態のステップ1aでは、第1ノズル233aからHCDガスと一緒に堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスを上述のような大流量で処理室201内に供給することより、HCDガスの流速、特に第1ノズル233aのガス供給孔248aからウエハ200に向けて噴出されウエハ200表面と平行方向に流れる(ウエハ200表面を横切る)HCDガスの流速を速くする。これにより、ウエハ200上へのシリコンの堆積効率またはHCDガスの吸着効率を下げることができ、シリコンの堆積またはHCDガスの吸着を抑制させつつウエハ200上にシリコン含有層を形成することができるようになる。この堆積・吸着阻害ガスの作用により、シリコン含有層の堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりに移動させることが可能となり、また、シリコン含有層の最も厚い部分と最も薄い部分との差を小さくすることができ、例えば700℃以上の高温領域において吸着反応が崩れる領域、すなわちシリコン含有層の堆積または吸着が過剰となる領域においても、均一にシリコン含有層を形成することが可能となる。
【0108】
また、本実施形態のステップ3aでは、加熱された減圧雰囲気下においてO2ガスとH2ガスとを反応させて原子状酸素(O)等の酸素を含む酸化種を生成し、この酸化種を用いて、シリコン含有層をシリコン酸化層へと変化させる工程を行うことにより、酸化種の持つエネルギーがシリコン含有層中に含まれるSi−N、Si−Cl、Si−H、Si−C結合を切り離す。Si−O結合を形成するためのエネルギーは、Si−N、Si−Cl、Si−H、Si−Cの結合エネルギーよりも高いため、Si−O結合形成に必要なエネルギーを酸化処理対象のシリコン含有層に与えることで、シリコン含有層中のSi−N、Si−Cl、Si−H、Si−C結合は切り離される。Siとの結合を切り離されたN、H、Cl、Cは膜中から除去され、N2、H2、Cl2、HCl、CO2等として排出される。また、N、H、Cl、Cとの結合が切られることで余ったSiの結合手は、酸化種に含まれるOと結びつく。このようにしてシリコン含有層はSiO2層へと変化させられる。本実施形態の成膜シーケンスにより形成したSiO2膜の膜中窒素、水素、塩素、炭素濃度は極めて低く、Si/O比率は化学量論組成である0.5に極めて近い、良質な膜となることを確認した。
【0109】
また、本実施形態のステップ3aでは、O2ガスとH2ガスとを同じ第2ノズル233bからバッファ室237を介して処理室201内に供給しており、第2ノズル233b内およびバッファ室237内は処理室201内と同様な温度に加熱されている。そのため、O2ガスとH2ガスとは、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある第2ノズル233
b内およびバッファ室237内で反応し、第2ノズル233b内およびバッファ室237内で原子状酸素(O)等の酸素を含む酸化種が生成されることとなる。また、第2ノズル233b内およびバッファ室237内は、処理室201内よりも圧力が高くなっている。そのため、第2ノズル233b内およびバッファ室237内でのO2ガスとH2ガスとの反応は促進され、O2ガスとH2ガスとの反応により生じる酸化種をより多く生成することが可能となり、酸化力をより向上させることができることとなる。また、O2ガスとH2ガスとを処理室201内に供給する前に第2ノズル233b内およびバッファ室237内で均等に混合させることができることから、O2ガスとH2ガスとを第2ノズル233b内で均等に反応させることができ、酸化種の濃度を均一化でき、ウエハ200間における酸化力の均一化を図ることも可能となる。このように、O2ガスとH2ガスとを同じ第2ノズル233bから処理室201内に供給することにより、より高い酸化力向上効果および酸化力均一化効果が得られることとなる。なお、プラズマを用いない場合は、バッファ室237を省略することもできるが、この場合においても上述と同様な作用効果が得られる。
【0110】
ただし、O2ガスとH2ガスとを同じ第2ノズル233bからバッファ室237を介して処理室201内に供給する場合、第2ノズル233b内およびバッファ室237内で酸化種をより多く生成することが可能となるものの、生成された酸化種が第2ノズル233b内やバッファ室237内を通過する際に失活することも考えられ、ウエハ200に到達する量が減少してしまうこともある。これに対して、O2ガスとH2ガスとを別々のノズルから処理室201内に供給するようにすれば、O2ガスとH2ガスとは処理室201内で初めて混合されるので、酸化種は処理室201内で生成されることとなり、酸化種の第2ノズル233b内やバッファ室237内での失活を防止することが可能となる。
【0111】
また、本実施形態の成膜シーケンスによりシリコン酸化膜を形成すれば、ウエハ200面内における膜厚均一性は、一般的なCVD法によりシリコン酸化膜を形成する場合よりも良好なものとなることを確認した。なお、一般的なCVD法とは、無機原料であるDCSとN2Oとを同時に供給してCVD法によりシリコン酸化膜(HTO(High Temperature Oxide)膜)を形成する方法のことを指している。また、本実施形態の成膜シーケンスにより形成したシリコン酸化膜の膜中の窒素、塩素等の不純物の濃度は、一般的なCVD法により形成したシリコン酸化膜よりも極めて低くなることを確認した。また、本実施形態の成膜シーケンスにより形成したシリコン酸化膜の膜中の不純物濃度は、有機系シリコン原料を用いてCVD法により形成したシリコン酸化膜よりも極めて低くなることを確認した。また、本実施形態の成膜シーケンスによれば、有機系シリコン原料を用いた場合であっても、ウエハ面内における膜厚均一性、膜中の不純物濃度が良好なものとなることを確認した。
【0112】
また、本実施形態のステップ1bでは、第1ノズル233aからHCDガスと一緒に堆積・吸着阻害ガスとしてのN2ガスを上述のような大流量で処理室201内に供給することより、HCDガスの流速、特に第1ノズル233aのガス供給孔248aからウエハ200に向けて噴出されウエハ200表面と平行方向に流れる(ウエハ200表面を横切る)HCDガスの流速を速くする。これにより、ウエハ200上へのシリコンの堆積効率またはHCDガスの吸着効率を下げることができ、シリコンの堆積またはHCDガスの吸着を抑制させつつウエハ200上にシリコン含有層を形成することができるようになる。この堆積・吸着阻害ガスの作用により、シリコン含有層の堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりに移動させることが可能となり、例えば700℃以上の高温領域において吸着反応が崩れる領域、すなわちシリコン含有層の堆積または吸着が過剰となる領域においても、均一にシリコン含有層を形成することが可能となる。
【0113】
また、本実施形態のステップ3bでは、加熱された減圧雰囲気下においてNH3ガスを
活性化もしくは熱分解させて得た窒化種を用いて、シリコン含有層をシリコン窒化層へと変化させることにより、窒化種の持つエネルギーが、Si−H結合だけでなく、Si−H結合よりも高い結合エネルギーを持つN−H結合をも乖離させることでH(水素)が除去され、H2等として排出される。水素との結合が切り離されたSiやNは、それぞれN、Siと結びつき、新たなSi−N結合を形成する。本実施形態の成膜シーケンスにより形成したシリコン窒化膜は、一般的なCVD法により形成したシリコン窒化膜(CVD−SiN膜)よりも膜中水素濃度が1桁少なく、極めて良質な膜となることを確認した。なお、一般的なCVD法とは、無機原料であるDCSとNH3とを同時に供給してCVD法によりシリコン窒化膜を形成する方法のことを指している。
【0114】
また、本実施形態の成膜シーケンスによりシリコン窒化膜を形成すれば、ウエハ200面内における膜厚均一性は、一般的なCVD法によりシリコン窒化膜を形成する場合よりも良好なものとなることを確認した。また、本実施形態の成膜シーケンスにより形成したシリコン窒化膜の膜中の水素等の不純物の濃度は、一般的なCVD法により形成したシリコン窒化膜よりも極めて低くなることを確認した。また、本実施形態の成膜シーケンスにより形成したシリコン窒化膜の膜中の水素濃度は、有機系シリコン原料を用いてCVD法により形成したシリコン窒化膜よりも極めて低くなることを確認した。また、本実施形態の成膜シーケンスによれば、有機系シリコン原料を用いた場合であっても、ウエハ200面内における膜厚均一性、膜中の水素濃度が良好なものとなることを確認した。
【0115】
また、上述のように本実施形態の成膜シーケンスによれば、シリコン酸化膜上に水素濃度が極めて低いシリコン窒化膜(以下、水素フリーSiN膜ともいう。)を形成することができ、シリコン酸化膜とこの水素フリーSiN膜とが積層されてなる絶縁膜をSAC(Self Align Contact)として使用すれば、NBTI(Negative Bias Temperature Instability)特性を向上させることができる。
【0116】
また、シリコン酸化膜とこの水素フリーSiN膜とが積層されてなる絶縁膜をゲート絶縁膜として使用すれば、絶縁破壊耐性を高めることが可能となる。Si−H結合はSi−N結合と比べて結合力の弱いボンドであり、正孔−電子の再結合によって脱離する確率が高い。水素が取れたSi−未結合手(ダングリングボンド)は電荷トラップとなり、電流電導に寄与し、絶縁破壊耐性を弱くする。このため、膜中水素(特にSi−H結合)がない(極めて少ない)水素フリーSiN膜を含む絶縁膜をゲート絶縁膜として用いることで高い絶縁破壊耐性が得られることとなる。
【0117】
また、本実施形態の成膜シーケンスによれば、2〜4nmの下地膜としてのシリコン酸化膜上に応力が極めて低いシリコン窒化膜(以下、応力フリーSiN膜ともいう。)を形成することができ、シリコン酸化膜とこの応力フリーSiN膜とが積層されてなる絶縁膜をSTI(Shallow Trench Isolation)工程に用いれば、次のようなメリットがある。すなわち、STIの形成にはSiN膜をマスクにSiエッチングが行なわれるが、SiN膜の応力は高く、ウエハ上に直接成膜するとウエハ(チャネル部)に欠陥が入る等ダメージを与えるため、通常は、ウエハ上に10nm程度の犠牲酸化膜を形成した上にSiN膜を形成している。これに対してシリコン酸化膜と応力フリーSiN膜との積層膜をSTI工程に用いれば、ウエハ上にこの応力フリーSiN膜を含む積層膜を直接成膜してもウエハ(チャネル部)へのダメージが生じないことから、別途犠牲酸化膜を形成する必要がなく、犠牲酸化膜を成膜する工程と犠牲酸化膜を除去する工程の2つの工程を削減できる。また、通常、マスク加工後のSiN膜はウエハ裏面のみ応力が大きくかかる状態になり、ウエハ全体としてゆがんでしまうが、応力フリーSiN膜を含む絶縁膜をマスクとして用いれば、マスク加工後におけるウエハのゆがみがなくなり、研磨のあたりが均一になり、より効率よく研磨が可能となる。
【0118】
<本発明の他の実施形態>
上述の実施形態では、ウエハ200上にシリコン含有層を形成する工程と、シリコン含有層をシリコン酸化層に変化させる工程と、を交互に繰り返すことで、ウエハ200上に下地膜としてシリコン酸化膜を堆積させて形成する例について説明したが、本発明は係る形態に限定されない。
【0119】
例えば、下地膜としてのシリコン酸化膜は、ウエハ200表面をウエット酸化等の手法により熱酸化させることで形成してもよい。また例えば、加熱された減圧雰囲気下でO2ガス等の酸素含有ガスとH2ガス等の水素含有ガスとを反応させて生成した原子状酸素(O)等の酸素を含む酸化種を用いてウエハ200表面を酸化させる減圧酸化により形成してもよい。また例えば、ウエハ200に対してHCDガス等の原料ガスとO2ガス等の酸素含有ガスとを同時に供給してウエハ200上にシリコン酸化膜を堆積させるCVD法により形成してもよい。また例えば、ウエハ200に対してHCDガス等の原料ガスとO2ガス等の酸素含有ガスとを交互に供給してウエハ200上にシリコン酸化膜を堆積させるALD法により形成してもよい。いずれの場合においても、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とは、上述の実施形態のように同一の処理容器内で(in−situで)連続して形成してもよく、異なる処理容器内で別々に形成してもよい。
【0120】
なお、下地膜としてのシリコン酸化膜は緻密である方が好ましい。シリコン酸化膜の緻密度は、一般的なALD法によるシリコン酸化膜(ALD−SiO膜)、一般的なCVD法によるシリコン酸化膜(CVD−SiO膜)、上述の実施形態の手法によるシリコン酸化膜、熱酸化膜の順に高くなる。すなわち、これらのシリコン酸化膜のうち熱酸化膜の緻密度が最も高い。そのため、その観点では、下地膜として熱酸化膜を用いることが最も好ましい。なお、下地膜として熱酸化膜を用いた実施例については後述する。
【0121】
また上述の実施形態では、堆積・吸着阻害ガスの作用により、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を上げることでウエハ200上や下地膜としてのシリコン酸化膜上へのシリコンの堆積またはHCDガスの吸着を抑制し、膜厚均一性を向上させる例について説明したが、HCDガスの流速を上げる方法はこれに限らない。
【0122】
例えば、反応管203内部の流動抵抗をウエハ200間の流動抵抗と同程度とすることにより、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を高めることができる。例えば、反応管203上部や下部の空間を、ダミーウエハや断熱板などで充填することにより、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を高め、ウエハ200上や下地膜としてのシリコン酸化膜上へのシリコンの堆積またはHCDガスの吸着を抑制し、膜厚均一性を向上させることができる。
【0123】
また例えば、HCDガスを供給するノズル233aとウエハ200との間のコンダクタンスを、ウエハ200間のコンダクタンスと同程度とすることにより、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を高めることができる。例えば、第1ノズル233aの径を大きくしたり、また、反応管203の径を小さくしたりすることにより、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を高め、ウエハ200上や下地膜としてのシリコン酸化膜上へのシリコンの堆積またはHCDガスの吸着を抑制し、膜厚均一性を向上させることができる。
【0124】
また例えば、HCDガスの供給と排気を繰り返すことにより、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を高めることができる。例えば、反応管203内のウエハ配列領域とノズル233a内(バッファ室237内)との圧力差を大きくすることにより、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を高め、ウエハ200上や下地
膜としてのシリコン酸化膜上へのシリコンの堆積またはHCDガスの吸着を抑制し、膜厚均一性を向上させることができる。
【0125】
また上述の実施形態では、ステップ1a〜4aをこの順に行い、これを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン酸化膜を成膜する例について説明したが、ステップ1aとステップ3aとを入れ替えてもよい。すなわち、ステップ3a、ステップ2a、ステップ1a、ステップ4aをこの順に行い、これを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン酸化膜を成膜することもできる。同様に、ステップ1bとステップ3bとを入れ替えてもよい。すなわち、ステップ3b、ステップ2b、ステップ1b、ステップ4bをこの順に行い、これを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより、シリコン酸化膜上に所定膜厚のシリコン窒化膜を成膜することもできる。
【0126】
また、上述の実施形態では、酸化膜上に窒化膜として半導体元素であるシリコン(Si)を含むシリコン窒化膜(SiN膜)を形成する例について説明したが、本発明は酸化膜上に窒化膜としてチタン(Ti)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)等の金属元素を含む金属窒化膜を形成する場合にも適用することができる。この場合、原料ガスおよび堆積・吸着阻害ガス供給による酸化膜上への金属元素含有層の形成(ステップ1b)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ2b)と、窒素含有ガス供給による金属元素含有層の金属窒化層への変換(ステップ3b)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ4b)と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより、酸化膜上に所定膜厚の金属窒化膜を形成する。
【0127】
例えば、酸化膜上にチタン(Ti)を含む金属窒化膜としてチタン窒化膜(TiN膜)を形成する場合、原料ガスおよび堆積・吸着阻害ガス供給による酸化膜上へのチタン含有層の形成(ステップ1b)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ2b)と、窒素含有ガス供給によるチタン含有層のチタン窒化層への変換(ステップ3b)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ4b)と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより酸化膜上に所定膜厚のチタン窒化膜を形成する。原料ガスとしては、例えばTiCl4(四塩化チタン)ガスやTDMAT(Tetrakis(dimethylamino)titanium:Ti[N(CH3)2]4)ガスを用いることができる。窒素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様、NH3ガスを用いることができる。この場合、上述の実施形態における基板処理装置の第1ガス供給系(原料ガス供給系)をチタン含有ガス供給系として構成する。また処理条件は、例えば上述の実施形態に記載の処理条件範囲内の条件とする。なお、TiN膜は導電性の金属窒化膜である。
【0128】
また例えば、酸化膜上にタンタル(Ta)を含む金属窒化膜としてタンタル窒化膜(TaN膜)を形成する場合、原料ガスおよび堆積・吸着阻害ガス供給による酸化膜上へのタンタル含有層の形成(ステップ1b)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ2b)と、窒素含有ガス供給によるタンタル含有層のタンタル窒化層への変換(ステップ3b)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ4b)と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより酸化膜上に所定膜厚のタンタル窒化膜を形成する。原料ガスとしては、例えばPET(Penta Ethoxy Tantalum:Ta(OC2H5)5)ガスを用いることができる。窒素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様、NH3ガスを用いることができる。この場合、上述の実施形態における基板処理装置の第1ガス供給系(原料ガス供給系)をタンタル含有ガス供給系として構成する。また処理条件は、例えば上述の実施形態に記載の処理条件範囲内の条件とする。なお、TaN膜は導電性の金属窒化膜である。
【0129】
また例えば、酸化膜上にアルミニウム(Al)を含む金属窒化膜としてアルミニウム窒化膜(AlN膜)を形成する場合、原料ガスおよび堆積・吸着阻害ガス供給による酸化膜上へのアルミニウム含有層の形成(ステップ1b)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ2b)と、窒素含有ガス供給によるアルミニウム含有層のアルミニウム窒化層への変換(ステップ3b)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ4b)と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより酸化膜上に所定膜厚のアルミニウム窒化膜を形成する。原料ガスとしては、例えばTMA(Trimethyl−aluminium:Al(CH3)3)ガスを用いることができる。窒素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様、NH3ガスを用いることができる。この場合、上述の実施形態における基板処理装置の第1ガス供給系(原料ガス供給系)をアルミニウム含有ガス供給系として構成する。また処理条件は、例えば上述の実施形態に記載の処理条件範囲内の条件とする。なお、AlN膜は絶縁性の金属窒化膜である。
【0130】
このように、本実施形態の成膜シーケンスは、TiN膜やTaN膜等の導電性金属窒化膜を形成する工程や、AlN膜等の絶縁性金属窒化膜を形成する工程にも適用できる。すなわち、本実施形態の成膜シーケンスは、所定元素が半導体元素である場合だけでなく金属元素である場合にも適用できる。このように、本発明を金属窒化膜の形成に適用した場合においても、本発明をシリコン窒化膜の形成に適用した場合と同様な効果が得られる。
【実施例】
【0131】
次に本発明の実施例を、比較例及び参考例と共に説明する。
【0132】
本実施例では、O2ガスとH2ガスとを燃焼させて生成したH2Oガスを用い、ウエット酸化によりウエハ表面に下地膜として熱酸化膜であるSiO膜を形成した。その後、下地膜としてのSiO膜上に、本実施形態の成膜シーケンス(シリコン窒化膜形成工程)と同様の手法によりSiN膜を形成し、形成したSiO膜とSiN膜との積層膜(以下、SiN/SiO積層膜ともいう)のリーク電流密度及びEOT(等価酸化膜厚)を測定した。なお、SiO膜を形成する際のウエハ温度は800℃とし、膜厚は4nmとした。また、SiN膜の成膜温度(ウエハ温度)は600〜900℃の範囲内の温度とし、膜厚は8.2〜11nmとした。なお、SiO膜の形成は上述の基板処理装置とは異なる酸化炉を用いて行い、SiN膜の形成は上述の基板処理装置と同様の構成の装置を用いて行った。すなわち、SiO膜とSiN膜とは異なる処理容器内で別々に形成した。
【0133】
比較例では、SiO膜を介さずにウエハ上にSiN膜を直接形成し、形成したSiN膜のリーク電流密度及びEOTを測定した。なお、SiN膜は、本実施形態の成膜シーケンス(シリコン窒化膜形成工程)と同様の手法により形成した。成膜温度(ウエハ温度)は600〜900℃の範囲内の温度とし、膜厚は9〜11nmとした。
【0134】
参考例では、O2ガスとH2ガスとを燃焼させて生成したH2Oガスを用い、ウエット酸化によりウエハ表面に熱酸化膜であるSiO膜を形成し、形成したSiO膜のリーク電流密度及びEOTを測定した。なお、SiO膜を形成する際のウエハ温度は800℃とし、膜厚は4〜10.5nmとした。
【0135】
図8は、SiO膜を介して形成したSiN膜(実施例)及びウエット酸化により形成したSiO膜(参考例)のリーク電流密度及びEOTをそれぞれ示すグラフ図である。図8の横軸はEOT(nm)を、縦軸は−10Vの電圧を印加したときのリーク電流密度(A/cm2)をそれぞれ示している。図8の3つの○印は、左から順に、SiN膜の成膜温度を900℃とし、SiN膜の膜厚を8.2nmとした実施例に係るSiN/SiO積層膜、SiN膜の成膜温度を800℃とし、SiN膜の膜厚を9.3nmとした実施例に係
るSiN/SiO積層膜、SiN膜の成膜温度を600℃とし、SiN膜の膜厚を11nmとした実施例に係るSiN/SiO積層膜の測定結果をそれぞれ示している。また、3つの×印は、左から順に、成膜温度を800℃として形成した膜厚7.2nmの参考例に係るSiO膜、成膜温度を800℃として形成した膜厚9.8nmの参考例に係るSiO膜、成膜温度を800℃として形成した膜厚10.5nmの参考例に係るSiO膜の測定結果をそれぞれ示している。
【0136】
図9は、SiO膜を介さずにウエハ上に直接形成したSiN膜(比較例)及び熱酸化膜(参考例)のリーク電流密度及びEOTをそれぞれ示すグラフ図である。図9の横軸はEOT(nm)を、縦軸は−5Vの電圧を印加したときのリーク電流密度(A/cm2)をそれぞれ示している。図9の3つの△印は、左から順に、成膜温度800℃として形成した膜厚9nmの比較例に係るSiN膜、成膜温度900℃として形成した膜厚10nmの比較例に係るSiN膜、成膜温度600℃として形成した膜厚11nmの比較例に係るSiN膜の測定結果を示している。また、×印は、成膜温度を800℃として形成した膜厚4nmの参考例に係るSiO膜の測定結果を示している。
【0137】
図8より、SiO膜を介して形成したSiN膜(実施例)は、ウエット酸化により形成したSiO膜(参考例)と比較して、同じEOT、すなわち同じ電気的膜厚で見ると、リーク電流密度が小さくなることが分かる。また図9より、SiO膜を介さずにウエハ上に直接形成したSiN膜(比較例)は、ウエット酸化により形成したSiO膜(参考例)と比較して、同様なEOTで見ると、リーク電流密度が大きくなることが分かる。すなわち、SiO膜を介して形成したSiN膜(実施例)は、SiO膜を介さずにウエハ上に直接形成したSiN膜(比較例)と比較して、リーク電流密度を小さくできることが分かる。
【0138】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様を付記する。
【0139】
本発明の一態様によれば、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成する工程を有し、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする半導体装置の製造方法が提供される。
【0140】
好ましくは、前記酸化膜の膜厚が2nm以上4nm以下である。
【0141】
また好ましくは、前記酸化膜の膜厚が2nmである。
【0142】
また好ましくは、前記酸化膜は、前記処理容器内で形成される。
【0143】
また好ましくは、前記酸化膜は、前記基板の表面を熱酸化することにより形成される。
【0144】
また好ましくは、前記酸化膜は、前記基板上に酸化膜を堆積させることにより形成される。
【0145】
本発明の他の態様によれば、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、表面に所定膜厚のシリコン酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内にシリコンを含む原料ガスを供給し排気して、前記シリコン酸化膜上にシリコン含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、前記シリコン含有層をシリコン窒化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記シリコン酸化膜上に所定膜厚のシリコン窒化膜を形成する工程を有し、
前記シリコン含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする半導体装置の製造方法が提供される。
【0146】
本発明の更に他の態様によれば、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、基板を収容した状態で、該処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気して、前記所定元素含有層を酸化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記基板上に所定膜厚の酸化膜を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に前記原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成する工程とを有し、 前記各所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする半導体装置の製造方法が提供される。
【0147】
本発明の更に他の態様によれば、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成する工程を有し、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一
緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする基板処理方法が提供される。
【0148】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内を加熱するヒータと、
前記処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理容器内に窒素含有ガスを供給する窒素含有ガス供給系と、
前記処理容器内に不活性ガスまたは水素含有ガスを供給する不活性ガスまたは水素含有ガス供給系と、
前記処理容器内を排気する排気系と、
前記処理容器内の圧力を調整する圧力調整部と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内に前記原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する処理と、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に前記窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる処理とを、その間に前記処理容器内に前記不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする処理を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成すると共に、前記所定元素含有層を形成する処理では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に前記不活性ガスまたは前記水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする処理において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくするように、前記ヒータ、前記原料ガス供給系、前記窒素含有ガス供給系、前記不活性ガスまたは水素含有ガス供給系、前記排気系および前記圧力調整部を制御する制御部と、を有する基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0149】
121 コントローラ(制御部)
200 ウエハ(基板)
201 処理室
202 処理炉
203 反応管
207 ヒータ
231 排気管
244 APCバルブ(圧力調整部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成する工程を有し、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成する工程を有し、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくすることを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内を加熱するヒータと、
前記処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理容器内に窒素含有ガスを供給する窒素含有ガス供給系と、
前記処理容器内に不活性ガスまたは水素含有ガスを供給する不活性ガスまたは水素含有ガス供給系と、
前記処理容器内を排気する排気系と、
前記処理容器内の圧力を調整する圧力調整部と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内に前記原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する処理と、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に前記窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる処理とを、その間に前記処理容器内に前記不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする処理を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成すると共に、前記所定元素含有層を形成する処理では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に前記不活性ガスまたは前記水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする処理において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくするように、前記ヒータ、前記原料ガス供給系、前記窒素含有ガス供給系、前記不
活性ガスまたは水素含有ガス供給系、前記排気系および前記圧力調整部を制御する制御部と、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項1】
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成する工程を有し、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成する工程を有し、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくすることを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内を加熱するヒータと、
前記処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理容器内に窒素含有ガスを供給する窒素含有ガス供給系と、
前記処理容器内に不活性ガスまたは水素含有ガスを供給する不活性ガスまたは水素含有ガス供給系と、
前記処理容器内を排気する排気系と、
前記処理容器内の圧力を調整する圧力調整部と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に、表面に所定膜厚の酸化膜が形成された基板を収容した状態で、該処理容器内に前記原料ガスを供給し排気して、前記酸化膜上に所定元素含有層を形成する処理と、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に前記窒素含有ガスを供給し排気して、前記所定元素含有層を窒化層に変化させる処理とを、その間に前記処理容器内に前記不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする処理を挟んで交互に繰り返して、前記酸化膜上に所定膜厚の窒化膜を形成すると共に、前記所定元素含有層を形成する処理では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に前記不活性ガスまたは前記水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする処理において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくするように、前記ヒータ、前記原料ガス供給系、前記窒素含有ガス供給系、前記不
活性ガスまたは水素含有ガス供給系、前記排気系および前記圧力調整部を制御する制御部と、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2012−134412(P2012−134412A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287027(P2010−287027)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
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