説明

半導体装置の製造方法

【課題】機械的強度が高く、かつ誘電率が低く安定した絶縁膜を有する半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】シリコンに炭化水素基を結合させたSiOC系材料からなる多孔質の第1層間絶縁膜5を基板1上に成膜する工程と、第1層間絶縁膜5に電子線EBを照射することにより第1層間絶縁膜5の機械的強度を高める工程とを行う半導体装置の製造方法において、電子線EBを照射した後に、第1層間絶縁膜5を酸素雰囲気中においてアニール処理を行い、Si−H結合をSi−O−Si結合に置き換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特には層間絶縁膜に形成した溝パターン内に金属配線が埋め込み形成された半導体装置の製造に好適な方法である。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高速化・微細化にともなう信号遅延の防止を目的とし、配線間の容量を低減することが求められている。配線間の容量を低減するためには、配線間に設けられる絶縁膜の比誘電率を下げる必要がある。このため、従来から絶縁膜として用いられてきている酸化シリコン膜(SiO2:比誘電率ε=4.0)に換えて、これよりも誘電率の低い低誘電率絶縁膜の開発が行われてきた。
【0003】
例えば、P−TMOS(フェニルトリメトキシシラン)のようなシリコン系炭化水素を材料ガスとして用いたプラズマCVD法により、比誘電率ε=3.1の低誘電率絶縁膜を得ることができる。
【0004】
また、材料ガスとして複数のアルコキシを含有するシリコン系炭化水素を用いたプラズマCVD法によれば、条件を最適化することで重合したオリゴマーがシロキサンのような線状構造を形成することにより多孔質構造が形成されるため、比誘電率がε=2.5程度にまで低減された低誘電率膜を得ることができる。
【0005】
しかしながら、線状構造のオリゴマーは、オリゴマー同士の結合力が弱く、膜の機械的強度が弱いという問題を有する。
【0006】
そこでシリコン系炭化水素を用いたプラズマCVD法によって、シリコン系の低誘電率絶縁膜を形成した後に、電子線を照射することにより、絶縁膜の比誘電率を実質的に変化させることなく、当該絶縁膜の機械的強度を増加させる方法が提案されている。この場合、好適には電子線照射前の絶縁膜は、5.0GPaまたはそれ以上の弾性率、およい2.8またはそれ以下の比誘電率を有し、その後電子線照射が実行され、実質的に比誘電率を変化させずに1〜10GPaだけ弾性率が増加するとしている(以上、下記特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2005−64516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のような電子線照射を行う方法では、電子線照射によって低誘電率絶縁膜における炭化水素基が脱離し、脱離した不対結合手同士が結合してランダムネットワークが強化される。このため、図4(1)に示すように、電子線照射の時間(EBCureTime)が長いほど、低誘電率絶縁膜の膜強度(Modulus)が高くなる。しかしながら、電子線照射によって炭化水素基が脱離したシリコン部分には、炭化水素基の分解によって発生した水素基も結合する。このため、図4(2)に示すように、電子線照射の時間(EBCureTime)が長いほど、低誘電率絶縁膜中においてのSi−O結合に対するSi−H結合の割合(Si−H/Si−O)が増加する。そして、このように低誘電率絶縁膜中におけるSi−H結合量が増加することにより、低誘電率絶縁膜の吸湿性が上昇し、時間経過とともに低誘電率絶縁膜の誘電率が上昇するといった問題が発生する。
【0009】
そこで本発明は、機械的強度が高く、かつSi−H結合量を抑えることで誘電率が低い値で径時的に安定している絶縁膜を得ることが可能な半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するための本発明は、SiOC系の絶縁膜を基板上に成膜する工程と、成膜した絶縁膜にエネルギー線を照射することにより当該絶縁膜の機械的強度を高める工程とを行う半導体装置の製造方法において、第1の製造方法では、エネルギー線を照射した後に、絶縁膜を酸素雰囲気中においてアニール処理する工程を行うことを特徴としている。また第2の製造方法では、絶縁膜にエネルギー線を照射する工程を、酸素雰囲気中で行うことを特徴としている。さらに第3の方法では、エネルギー線を照射した後に、絶縁膜を炭化水素ガス雰囲気中においてアニール処理する工程を行うことを特徴としている。
【0011】
以上のように、SiOC系の絶縁膜にエネルギー線を照射する工程では、炭素含有基が絶縁膜から脱離することで発生した不対結合手同士の結合によって機械的強度が高められると同時に、炭素含有基が分解して生じた水素が不対結合手部分に再結合し、Si−H結合が形成される。
【0012】
したがって、上述した第1の製造方法のように、エネルギー線を照射した後に絶縁膜を酸素雰囲気中でアニール処理する工程を行うことにより、上記Si−H結合の水素が酸素に置き換えられ、絶縁膜におけるSi−H結合量が抑えられる。
【0013】
また、上述した第2の製造方法のように、エネルギー線の照射を酸素雰囲気内で行うことにより、エネルギー線の照射によって分解した酸素が絶縁膜に結合し、絶縁膜に対する水素の再結合が抑えられ、絶縁膜におけるSi−H結合量が抑えられる。
【0014】
さらに、上述した第3の方法のように、エネルギー線の照射した後に絶縁膜を炭化水素ガス雰囲気中でアニール処理する工程を行うことにより、絶縁膜に再結合した水素や絶縁膜に結合している水素が炭化水素基に置き換えられ、絶縁膜におけるSi−H結合量が抑えられる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明の第1〜第3の製造方法によれば、エネルギー線の照射によって機械的強度を高めたSiOC系材料からなる絶縁膜において、Si−H結合量を低く抑えて吸湿性を低く保つことができる。これにより、機械的強度が高く、かつ吸湿性が低いことによって誘電率が安定的に低い値に保たれる絶縁膜を得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以上、本発明の製造方法を適用した実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
<第1実施形態>
先ず、図1(1)に示すように、トランジスタ等の半導体素子やこれに接続された配線等を絶縁膜で覆ってなる基板1上に、バリア絶縁膜3を成膜する。このバリア絶縁膜3は、例えばSiCN(またはSiNやSiC)からなり、成膜ガスとしてトリメチルシラン(3MS)とNH3とを用いたCVD法によって成膜する。
【0018】
次に、バリア絶縁膜3上に、SiOC系材料からなる低誘電率の第1層間絶縁膜5を成膜する。この第1層間絶縁膜5は、例えば材料ガスとして複数のアルコキシを含有するシリコン系炭化水素を用いたプラズマCVD法によって形成され、メチル基(−CH3)のような炭化水素基がシリコン(Si)に結合した構成となる。またこのプラズマCVD法による第1層間絶縁膜5の成膜は、線状構造のオリゴマーによって多孔質構造が得られるように条件を最適化して行われることが好ましい。またこの他にも、SiOC系材料からなる第1層間絶縁膜5は、SOG法を適用することによって形成しても良い。
【0019】
次いで、図1(2)に示すように、第1層間絶縁膜5に対して、電子線EBのようなエネルギー線を照射する。これにより、第1層間絶縁膜5のシリコンに結合している炭化水素基を脱離させ、その部分に発生させた不対結合手同士を結合させてランダムネットワークを形成し、第1層間絶縁膜5の機械的強度を高める。
【0020】
ここで図2には、SiOC系の絶縁膜に対する電子線照射の時間(EBCureTime)と比誘電率(ΔDielectric Constant)との関係を示す。このグラフに示すように、電子線EBの照射時間が長い範囲では、SiOC系の絶縁膜における比誘電率が上昇することがわかる。このため、このような電子線EBの照射は、電子線EBの照射による第1層間絶縁膜5の上昇が小さく抑えられる程度の範囲で行われることが重要である。
【0021】
このような第1層間絶縁膜5に対する電子線EBの照射は、例えば以下の条件で行われる。
処理雰囲気 :ヘリウム(He)ガス、
処理雰囲気内圧力:13.3kPa以下が望ましく、例えば8.6kPa
処理温度 :350〜400℃が望ましく、例えば350℃、
処理時間 :5分以内が望ましく、例えば140秒。
【0022】
尚、第1層間絶縁膜5に照射するエネルギー線は、第1層間絶縁膜5の機械的強度を高める効果を有していれば電子線EBに限定されることはなく、例えば紫外線(UV)であっても良い。
【0023】
エネルギー線として紫外線(UV)を照射する場合には、例えば以下の条件で行われる。
紫外線波長 :172nm、
処理雰囲気 :窒素ガス(N2)、
処理雰囲気内圧力:133Pa、
処理温度 :350℃、
処理時間 :5分以内が望ましく、例えば2分。
【0024】
以上のような電子線EB(または紫外線などの他のエネルギー線)の照射においては、第1層間絶縁膜5から炭化水素基が脱離することにより発生した不対結合手同士の結合によってランダムネットワークが形成されるが、これと同時に、脱離した炭化水素基(例えばメチル基)が電子線EBの照射によって分解して水素基が発生する。この水素基は、炭化水素基が脱離した部分に再結合し第1層間絶縁膜5にシリコン−水素結合(Si-H)を形成する。このため、吸湿性が高くなり、誘電率の径時的な上昇が引き起こされる。
【0025】
そこで、図1(3)に示すように、第1層間絶縁膜5を酸素(O2)雰囲気中においてアニール処理する。これにより、第1層間絶縁膜5におけるシリコン−水素結合(Si-H)の結合を切り、その部分にSi-O-Siを形成する。
【0026】
このようなアニール処理は、例えば次のような条件で行われる。
処理雰囲気 :酸素(O2)ガス、
処理雰囲気内圧力:0.1kPa〜9kPa
処理温度 :400℃以下が望ましく、例えば370℃。
【0027】
尚、このアニール処理は、電子線EBの照射と同一のチャンバ内で連続して行うことができる。この際、処理雰囲気内の圧力および温度を、電子線EBの照射と同じ条件とすることで、調圧、調温の時間が短縮され、スループットの低下を抑えることが可能である。ただし、スループットを考えなければ、アニール処理を大気圧下で行うことも可能である。
【0028】
また、以上のようなアニール処理は、エネルギー線として紫外線(UV)を用いた場合であっても同様に行われる。
【0029】
以上の後には、図1(4)に示すように、SiOC系材料からなる第1層間絶縁膜5上に、例えばポリアリレン(PAr)のような芳香族含有有機材料などからなる低誘電率の第2層間絶縁膜7を、塗布法によって成膜する。
【0030】
さらに第2層間絶縁膜7上に、酸化シリコン(SiO2)からなる第3層間絶縁膜9をCVD法によって形成する。
【0031】
その後、図3(1)に示すように、第3層間絶縁膜9および第2層間絶縁膜7に溝パターン11を形成すると共に、これらの下層の第1層間絶縁膜5およびバリア絶縁膜3に接続孔13を形成し、溝パターン11の底部に接続孔13を掘下げたデュアルダマシン構造を形成する。ここでは、このようなデュアルダマシン構造の形成手順が限定されることはなく、溝パターン11を形成してその底部に接続孔13を形成する先溝法、接続孔13を形成してその上部に溝パターン11を形成する先ヴィア法、さらにはその他の手順によってデュアルダマシン構造を形成しても良い。
【0032】
次に、図3(2)に示すように、これらの溝パターン11および接続孔13の内壁を覆う状態で、バリアメタル層15を形成する。バリアメタル層16として、例えば窒化タンタルとタンタルの積層膜が用いられる。続いて、接続孔13および溝パターン11内を埋め込むように例えば銅からなる導電層17を形成する。
【0033】
次に、図3(3)に示すように、接続孔13および溝パターン11内のみにバリアメタル層15および導電層17を残すように、第3層間絶縁膜9上の導電層17およびバリアメタル層15をCMP法により除去する。これにより、溝パターン11内に、バリアメタル層15を介して導電層17を埋め込んでなる埋め込み配線Mを形成し、また接続孔13内にバリアメタル層15を介して導電層17を埋め込んでなるコンタクトCを形成する。
【0034】
以上の後には、埋め込み配線Mおよび第3層間絶縁膜9上を覆う状態で、例えばSiCN(またはSiNやSiC)からなるバリア絶縁膜23を成膜する。
【0035】
そして、さらに上層の配線を形成する場合には、上述した図1(2)を用いて説明した工程以降を繰り返し行う。
【0036】
以上のような手順を行う第1実施形態の製造方法では、電子線EBを照射することによってSiOC系材料からなる第1層間絶縁膜5の機械的強度を高めた後、酸素雰囲気中でアニール処理する工程を追加している。このアニール処理により、電子線EBを照射する工程において第1層間絶縁膜5に再結合した水素基が酸素に置き換えられ、第1層間絶縁膜5中におけるSi-H結合がSi-O-Si結合に置き換えられる。これにより、Si−H結合を含有することによる吸湿性の上昇を抑えることができる。
【0037】
またさらに、第1層間絶縁膜5中にSi-O-Siの結合が多く生成されることになり、機械的強度をさらに増強させることができる。
【0038】
以上よりSiOC系材料からなる多孔構造の第1層間絶縁膜5において、機械的強度を高く維持でき、かつ吸湿による誘電率の径時的な上昇を抑えることが可能になる。
【0039】
この結果、例えば図3(3)を用いて説明した埋め込み配線Mの形成におけるCMP工程において、積層された絶縁膜5〜9の破壊や膜剥がれ、さらには最終工程で行うパッケージングの際の剥離を防止することが可能である。しかも、安定的に低誘電率であるため、埋め込み配線M間の容量および埋込配線配線Mとその上層および下層の配線との間の容量を低く抑える効果を維持できる。
【0040】
<第2実施形態>
第2実施形態の製造方法は、先の第1実施形態の製造方法において図1(2)を用いて説明した電子線EBのようなエネルギー線の照射によって第1層間絶縁膜5の機械的強度を高める工程を、酸素雰囲気中で行う方法である。
【0041】
ここでは、第1層間絶縁膜5に対して、電子線EBのようなエネルギー線を照射することにより、第1層間絶縁膜5の機械的強度を高める。そして、このような電子線EBの照射を酸素雰囲気中で行うことにより、第1層間絶縁膜5の機械的強度を高めると同時に、電子線EBの照射によって炭化水素基が脱離した不対結合手に酸素を結合させる。この際、酸素ガスに電子線EBが照射されることでO2プラズマが発生し、第1層間絶縁膜5のシリコン(Si)に酸素(O)が結合し易くなる。これにより、脱離した炭化水素基が電子線EBの照射によって分解して発生した水素基が第1層間絶縁膜5に対して再結合してシリコン−水素(Si−H)結合を形成することが防止される。
【0042】
また以上の処理は、処理雰囲気内の圧力を低圧(133Pa以下)にして行うことで、電子線EBが第1層間絶縁膜5に届く確率を高くして処理速度を速めることとする。これにより、第1層間絶縁膜5におけるランダムネットワークの形成とSi-O-Si結合の生成とによって機械的強度が高められると同時に、この処理中において酸素ガスに電子線EBが照射されることで発生したO2プラズマによる第1層間絶縁膜5のダメージを最低限に抑える。
【0043】
このような第1層間絶縁膜5に対する電子線EBの照射は、例えば次のような条件で行われる。
処理雰囲気 :酸素(O2)ガス、
処理雰囲気内圧力:133Pa以下、
処理温度 :370℃、
処理時間 :5分以内。
【0044】
処理温度は例えば370℃とすることで、第1層間絶縁膜5の改質(機械的強度の向上)が進む。また、以上の処理は、処理雰囲気内に放出される電子線EBの量やエネルギーの増減によっても処理条件の最適化を図ることができ、O2プラズマの発生を制御して第1層間絶縁膜5のダメージを回避しつつ、第1層間絶縁膜5における不対結合手同士の結合によりランダムネットワークの形成と、炭化水素基が脱離した部分への酸素の結合とを行うことができる。尚、電子線EBの量やエネルギーの増減は、処理装置における管電流値、加速電圧によって調整される。
【0045】
尚、第1層間絶縁膜5に照射するエネルギー線は、第1層間絶縁膜5の機械的強度を高める効果を有していれば電子線EBに限定されることはなく、例えば紫外線(UV)であっても良い。
【0046】
エネルギー線として紫外線(UV)を照射する場合には、例えば以下の条件で行われる。
紫外線波長 :172nm
処理雰囲気 :酸素(O2)ガス、
処理雰囲気内圧力:133Pa、
処理温度 :370℃、
処理時間 :5分以内が望ましく、例えば2分。
【0047】
以上の後には、図1(4)に示すように、SiOC系材料からなる第1層間絶縁膜5上に、例えばポリアリレン(PAr)のような芳香族含有有機材料などからなる低誘電率の第2層間絶縁膜7を塗布法によって成膜し、さらに酸化シリコン(SiO2)からなる第3層間絶縁膜9をCVD法によって形成する。
【0048】
その後は、第1実施形態と同様に、図3(1)〜図3(3)を用いて説明したと同様の工程を行うことにより、溝パターン11内に、バリアメタル層15を介して導電層17を埋め込んでなる埋め込み配線Mを形成し、また接続孔13内にバリアメタル層15を介して導電層17を埋め込んでなるコンタクトCを形成し、これらを覆うバリア絶縁膜23を成膜する。
【0049】
また、さらに上層の配線を形成する場合には、上述した図1(2)に示される工程において、エネルギー線の照射による第1層間絶縁膜5の機械的強度を高める工程を酸素雰囲気中で行った後、図1(4)以降の工程を順次行う手順を繰り返す。
【0050】
以上のような手順を行う第2実施形態の製造方法では、電子線EBを照射することによってSiOC系材料からなる第1層間絶縁膜5の機械的強度を高める工程を、酸素雰囲気中で行う構成としている。これにより、第1層間絶縁膜5の機械的強度の高めると同時に、第1層間絶縁膜5中におけるSi-H結合をSi-O-Si結合に置き換えることができる。したがって、第1実施形態と同様に機械的強度を高めた第1層間絶縁膜5において、Si−H結合を含有することによる吸湿性の上昇を抑えることができると共に、第1層間絶縁膜5中にSi-O-Siの結合が多く生成されて機械的強度をさらに増強させることもできる。
【0051】
以上より第1実施形態と同様に、SiOC系材料からなる多孔構造の第1層間絶縁膜5において、機械的強度を高く維持でき、かつ吸湿による誘電率の径時的な上昇を抑えることが可能になり、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
<第3実施形態>
第2実施形態の製造方法は、先の第1実施形態の製造方法において図1(2)を用いて説明した電子線EBのようなエネルギー線の照射によって第1層間絶縁膜5の機械的強度を高める工程を行った後、第1層間絶縁膜5に対して炭化水素ガス雰囲気中においてアニール処理を施す方法である。
【0053】
この場合、第1実施形態において図1(1)および図1(2)を用いて説明した工程を同様に行った後、図1(3)を用いて説明した工程では、酸素雰囲気中においてのアニール処理に変えて、第1層間絶縁膜5を炭化水素ガス雰囲気中においてアニール処理する工程を行う。炭化水素ガスとしては、例えばメチレンガス(C24)やメタンガス(CH4)が用いられる。これにより、第1層間絶縁膜5におけるシリコン−水素結合(Si-H)の結合を切り、その部分に炭化水素基(例えば−CH3)を結合させて終端させる。
【0054】
このようなアニール処理は、例えば次のような条件で行われる。
処理雰囲気 :C24またはCH4など、
処理雰囲気内圧力:0.1kPa〜9kPa、
処理温度 :400℃以下が望ましく、例えば370℃。
【0055】
尚、このアニール処理は、電子線EBの照射と同一のチャンバ内で連続して行うことができる。この際、処理雰囲気内の圧力および温度を、電子線EBの照射と同じ条件とすることで、調圧、調温の時間が短縮され、スループットの低下を抑えることが可能である。ただし、スループットを考えなければ、アニール処理を大気圧下で行うことも可能である。
【0056】
以上のようなアニール処理は、エネルギー線として紫外線(UV)を用いた場合であっても同様に行われる。
【0057】
以降の工程は、第1実施形態において図1(4)および図3(1)〜図3(3)を用いて説明した工程を同様の手順で行い、溝パターン11内に、バリアメタル層15を介して導電層17を埋め込んでなる埋め込み配線Mを形成し、また接続孔13内にバリアメタル層15を介して導電層17を埋め込んでなるコンタクトCを形成し、これらを覆うバリア絶縁膜23を成膜する。
【0058】
また、さらに上層の配線を形成する場合には、図1(2)の工程、図1(3)に示される工程において炭化水素ガス雰囲気中でのアニール処理を行う工程、さらに図1(4)以降の工程を順次行う手順を繰り返す。
【0059】
以上のような手順を行う第3実施形態の製造方法では、電子線EBを照射することによってSiOC系材料からなる第1層間絶縁膜5の機械的強度を高めた後、炭化水素ガス雰囲気中でアニール処理する工程を追加している。このアニール処理により、電子線EBを照射する工程において第1層間絶縁膜5に再結合した水素基が、疎水性である炭化水素基に置き換えられて終端される。これにより、Si−H結合を含有することによる吸湿性の上昇を抑えることができるだけではなく、末端に疎水基で終端させたことによる吸湿性の低下も期待でき、第1実施形態および第2実施形態と比較して、第1層間絶縁膜5の吸湿性をさらに低下させることが可能になる。
【0060】
以上よりSiOC系材料からなる多孔構造の第1層間絶縁膜5において、機械的強度を高く維持でき、かつ吸湿による誘電率の径時的な上昇を確実に抑えることが可能になり、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0061】
尚、以上説明した第1実施形態〜第3実施形態においては、第1層間絶縁膜5を成膜した直後にエネルギー線の照射によって機械的強度を高める処理やアニール処理を行う構成とした。しかしながら、これらの工程は、例えば図3(1)で説明したデュアルダマシン構造の形成の後に行っても良い。これより、第1層間絶縁膜5の露出分部に対して、部分的ではあるが機械的強度を高める処理やアニール処理の効果を得ることができる。
【0062】
また、上述した第1実施形態〜第3実施形態は、組み合わせて用いることが可能であり、多層配線構造における各層の埋め込み配線の形成に対して、それぞれ異なる実施形態を適用しても良い。
【0063】
さらにまた、本発明は、層間絶縁膜にデュアルダマシン形状を形成する構成への適用に限定されることはなく、SiOC系の層間絶縁膜を備えた半導体装置の製造方法に広く適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明を適用した実施形態を説明するための断面工程図(その1)である。
【図2】SiOC系膜に対する電子線の照射時間と比誘電率との関係を示す図である。
【図3】本発明を適用した実施形態を説明するための断面工程図(その2)である。
【図4】(1)はSiOC系膜に対する電子線の照射時間と膜強度との関係を示す図であり、(2)はSiOC系膜に対する電子線の照射時間とSi−H結合/Si−O結合比を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1…基板、5…第1層間絶縁膜(SiOC系)、EB…電子線、(UV)…紫外線、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiOC系の絶縁膜を基板上に成膜する工程と、前記絶縁膜にエネルギー線を照射することにより当該絶縁膜の機械的強度を高める工程とを行う半導体装置の製造方法において、
前記絶縁膜にエネルギー線を照射した後、前記絶縁膜を酸素雰囲気中においてアニール処理する工程を行う
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記エネルギー線として電子線または紫外線を照射する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記SiOC系の絶縁膜として、シリコンに炭化水素基を結合させた材料からなる多孔質膜を形成する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
SiOC系の絶縁膜を基板上に成膜する工程と、前記絶縁膜にエネルギー線を照射することにより当該絶縁膜の機械的強度を高める工程とを行う半導体装置の製造方法において、
前記絶縁膜にエネルギー線を照射する工程を酸素雰囲気中で行う
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置の製造方法において、
前記エネルギー線として電子線または紫外線を照射する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4記載の半導体装置の製造方法において、
前記SiOC系の絶縁膜として、シリコンに炭化水素基を結合させた材料からなる多孔質膜を形成する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
SiOC系の絶縁膜を基板上に成膜する工程と、前記絶縁膜にエネルギー線を照射することにより当該絶縁膜の機械的強度を高める工程とを行う半導体装置の製造方法において、
前記絶縁膜にエネルギー線を照射した後、前記絶縁膜を炭化水素ガス雰囲気中においてアニール処理する工程を行う
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置の製造方法において、
前記エネルギー線として電子線または紫外線を照射する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7記載の半導体装置の製造方法において、
前記SiOC系の絶縁膜として、シリコンに炭化水素基を結合させた材料からなる多孔質膜を形成する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−53402(P2008−53402A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227389(P2006−227389)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】