説明

半導体装置の製造方法

【課題】nMOSFETのソース/ドレイン領域にはSiGeを埋め込まず、pMOSFETのソース/ドレイン領域にのみSiGeを再現性よく埋め込むことが可能な製造方法を提供する。
【解決手段】第1活性領域12と交差する第1ゲート電極21、及び第2活性領域13と交差する第2ゲート電極22を形成し、第1及び第2ゲート電極を覆うように、第1キャップ膜35を形成する。第1活性領域上の第1キャップ膜35を、エッチングして除去する。半導体基板全面に、第2キャップ膜を形成37する。第2活性領域上の第2キャップ膜37を第2マスクパターンで覆い、第1活性領域上の第2キャップ膜37をエッチングして除去する。第2活性領域を第1及び第2キャップ膜で覆った状態で、第1活性領域において、ソース/ドレイン領域をエッチングすることにより、凹部を形成する。凹部内を、埋込部材で埋め込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャネル領域に歪を生じさせるための埋込部材を、ゲート電極の両側に埋め込んだ半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSFETの高速化の方法の一つとして、歪みをチャネルに導入することによってチャネル材料の物性を変え、キャリアの移動度を向上させる方法が知られている。例えば、pMOSFETのソース及びドレイン領域にSiGeを埋め込むことにより、チャネル領域に面内方向の圧縮応力を印加することができる。これにより、正孔の移動度を高めることができる。
【0003】
MOSFETのソース及びドレイン領域にSiGeを埋め込むことにより、pMOSFETの性能を高めることができるが、nMOSFETのソース及びドレイン領域にSiGeが埋め込まれると、性能が低下してしまう。pMOSFETのソース及びドレイン領域にSiGeを埋め込み、nMOSFETのソース及びドレイン領域にはSiGeを埋め込まないようにすることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−329477
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1つの活性領域内に複数のpMOSFETが配置され、ゲート電極同士の間隔が狭まると、nMOSFETのソース及びドレイン領域にはSiGeを埋め込まず、pMOSFETのソース及びドレイン領域にのみSiGeを再現性よく埋め込むことが困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する半導体装置の製造方法は、
半導体基板の表層部に、第1の活性領域及び第2の活性領域を画定する素子分離絶縁膜を形成する工程と、
前記半導体基板の上に、前記第1の活性領域と交差し、相互に間隔を隔てて配置された少なくとも2つの第1のゲート電極、及び前記第2の活性領域と交差し、相互に間隔を隔てて配置された少なくとも2つの第2のゲート電極を形成する工程と、
前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極を覆うように、前記半導体基板の上に、第1のキャップ膜を形成する工程と、
前記第2の活性領域上の前記第1のキャップ膜を、第1のマスクパターンで覆う工程と、
前記第1のマスクパターンをエッチングマスクとして、前記第1の活性領域上の前記第1のキャップ膜をエッチングして除去し、その後、前記第1のマスクパターンを除去する工程と、
前記第1のマスクパターンを除去した後、前記第2の活性領域においては、前記第1のキャップ膜の上に、前記第1の活性領域においては、前記第1のゲート電極を覆うように前記半導体基板の上に、第2のキャップ膜を形成する工程と、
前記第2の活性領域上の前記第2のキャップ膜を、第2のマスクパターンで覆う工程と、
前記第2のマスクパターンをエッチングマスクとして、前記第1の活性領域上の前記第2のキャップ膜をエッチングして除去する工程と、
前記第2の活性領域を前記第1及び第2のキャップ膜で覆った状態で、前記第1の活性領域において、前記第1のゲート電極の各々の両側の前記半導体基板の表層部をエッチングすることにより、凹部を形成する工程と、
前記凹部内を、前記半導体基板とは格子定数の異なる半導体材料からなる埋込部材で埋め込む工程と、
前記第2の活性領域において、前記第2のゲート電極の各々の両側に不純物を注入することにより、ソース及びドレインを形成する工程と
を有する。
【発明の効果】
【0007】
第1の活性領域において、第1のキャップ膜が除去された後に第2のキャップ膜が形成されるため、第1の活性領域上に第1のキャップ膜と第2のキャップ膜との両方が堆積することがない。このため、第1及び第2のキャップ膜を容易に除去することが可能になる。また、第2の活性領域は、第1及び第2のキャップ膜の少なくとも2層で被覆されるため、被覆不良の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1−1】(1A)〜(1D)は、実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置断面図(その1)である。
【図1−2】(1E)〜(1G)は、実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置断面図(その2)である。
【図1−3】(1H)〜(1J)は、実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置断面図(その3)である。
【図1−4】(1K)〜(1L)は、実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置断面図(その4)である。
【図1−5】(1M)〜(1N)は、実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置断面図(その5)である。
【図1−6】(1O)〜(1P)は、実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置断面図(その6)である。
【図1−7】(1Q)〜(1R)は、実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置断面図(その7)である。
【図1−8】(1S)〜(1T)は、実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置断面図(その8)である。
【図1−9】(1U)〜(1V)は、実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置断面図(その9)である。
【図1−10】(1W)〜(1X)は、実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置断面図(その10)である。
【図1−11】(1Y)〜(1Z)は、実施例による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置断面図(その11)である。
【図2】(2A)〜(2C)は、比較例1による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置断面図である。
【図3−1】(3A)〜(3B)は、比較例2による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置断面図(その1)である。
【図3−2】(3C)は、比較例2による半導体装置の製造方法の製造途中段階における装置断面図(その2)である。
【図4】第1のゲート電極の間隙部分の模式的な断面図である。
【図5】キャップ膜の厚さを異ならせて作製した複数の試料の欠陥の有無を評価した結果を示すグラフである。
【図6】実施例による半導体装置が適用される論理回路の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1A〜図1Zを参照して、実施例による半導体装置の製造方法について説明する。
【0010】
図1Aに示すように、シリコンからなる半導体基板10の表層部に、例えばシャロートレンチアイソレーション(STI)による素子分離絶縁膜11を形成する。素子分離絶縁膜11は、pMOSFET用の第1の活性領域12及びnMOSFET用の第2の活性領域13を画定する。
【0011】
以下、素子分離絶縁膜11の形成方法について説明する。まず、反応性イオンエッチング(RIE)により、半導体基板10の表層部に素子分離溝を形成する。プラズマ励起化学気相成長(PECVD)により、半導体基板10の上に酸化シリコン膜を堆積させると共に、素子分離溝内を酸化シリコンで埋め込む。化学機械研磨(CMP)により、半導体基板10の表面上の酸化シリコン膜を除去し、素子分離溝内には、酸化シリコンを残す。これにより、酸化シリコンからなる素子分離絶縁膜11が形成される。なお、素子分離絶縁膜11内にSiNが含まれる構造を採用してもよい。
【0012】
図1Bに示した構造に至るまでの工程について説明する。第1の活性領域12をレジストパターンで覆い、第2の活性領域13の表層部にp型不純物を注入することにより、p型ウェル15を形成する。イオン注入条件は、例えば下記の通りである。
・不純物 ボロン(B)
・加速エネルギ 100keV
・ドーズ量 1×1013〜5×1013cm−2
必要に応じて、チャネルストップ注入及びしきい値制御用のイオン注入を行う。チャネルストップ注入の条件は、例えば下記の通りである。
・不純物 ボロン(B)
・加速エネルギ 15〜25keV
・ドーズ量 5×1012cm−2
しきい値制御用のイオン注入の条件は、例えば下記の通りである。
・不純物 ボロン(B)
・加速エネルギ 10keV
・ドーズ量 0.5×1013〜2×1013cm−2
これらのイオン注入後、第1の活性領域12を覆っていたレジストパターンをアッシング処理または硫酸と過酸化水素水との混合液を用いたウェット処理により除去する。
【0013】
次に、第2の活性領域13を、レジストパターンで覆い、第1の活性領域12の表層部にn型不純物を注入することにより、n型ウェル14を形成する。イオン注入条件は、例えば下記の通りである。
・不純物 リン (P)
・加速エネルギ 250〜350keV
・ドーズ量 1×1013〜5×1013cm−2
必要に応じて、チャネルストップ注入及びしきい値制御用のイオン注入を行う。チャネルストップ注入の条件は、例えば下記の通りである。
・不純物 砒素(As)
・加速エネルギ 100〜150keV
・ドーズ量 1×1012〜5×1012cm−2
しきい値制御用のイオン注入の条件は、例えば下記の通りである。
・不純物 砒素(As)
・加速エネルギ 50〜100keV
・ドーズ量 0.5×1013〜2×1013cm−2
これらのイオン注入後、第2の活性領域13を覆っていたレジストパターンをアッシング処理または硫酸過酸化水素混合液を用いたウェット処理により除去する。
【0014】
さらに、不純物を活性化させるために、例えば1000℃で10秒間のスパイクアニールを行う。
【0015】
図1Cに示すように、半導体基板10の表面を約900℃でドライ熱酸化することにより、厚さ約1nmの下地酸化膜を形成する。この下地酸化膜に、NO雰囲気中でプラズマ窒化処理を施すことにより、酸窒化シリコンからなるゲート絶縁膜18を形成する。なお、NO雰囲気またはNH雰囲気でプラズマ窒化処理を行ってもよい。また、ゲート絶縁膜18に、酸化シリコンや窒化シリコンよりも誘電率の高い高誘電率絶縁材料、いわゆるhigh−k材料を用いてもよい。第1の活性領域12と第2の活性領域13とで、形成されるゲート絶縁膜18の厚さを異ならせてもよい。
【0016】
図1Dに示したように、第1の活性領域12上に複数の第1のゲート電極21を形成し、第2の活性領域13上に複数の第2のゲート電極22を形成する。複数の第1のゲート電極21は、間隙を隔てて相互に平行に配置され、その各々は、平面視において第1の活性領域12と交差する。同様に、複数の第2のゲート電極22は、間隙を隔てて相互に平行に配置され、その各々は、平面視において第2の活性領域13と交差する。
【0017】
以下、第1のゲート電極21及び第2のゲート電極22の形成方法について説明する。まず、ゲート絶縁膜18を形成した半導体基板10の上に、減圧化学気相成長(LPCVD)により、ポリシリコンからなる厚さ100nmのゲート電極膜を形成する。成膜温度は、例えば600℃とする。なお、ゲート電極膜をアモルファスシリコンで形成してもよい。
【0018】
第1の活性領域12上のゲート電極膜をレジストパターンで覆い、第2の活性領域13上のゲート電極膜にn型不純物を注入する。注入条件は、例えば下記の通りである。
・不純物 砒素(As)
・加速エネルギ 20〜30keV
・ドーズ量 3×1015〜5×1015cm−2
第1の活性領域12上のレジストパターンを除去した後、第2の活性領域13上のゲート電極膜を新たなレジストパターンで覆い、第1の活性領域12上のゲート電極膜にp型不純物を注入する。注入条件は、例えば下記の通りである。
・不純物 ボロン(B)
・加速エネルギ 3〜5keV
・ドーズ量 3×1015〜5×1015cm−2
イオン注入後、レジストパターンを除去する。必要に応じて、ゲート電極膜中に注入された不純物の拡散を促進させるために、温度1000℃、時間5秒の条件で、スパイクアニールを行ってもよい。
【0019】
これらのイオン注入後、ゲート電極膜をパターニングすることにより、第1のゲート電極21及び第2のゲート電極22を形成する。必要に応じて、レジスト塗布前に、ゲート電極膜の上に反射防止膜を形成しておいてもよい。ゲート電極膜のエッチングには、例えばRIEが適用される。
【0020】
図1Eに示すように、第1のゲート電極21及び第2のゲート電極22の側面上に、酸化シリコンからなる厚さ約10nmの第1のサイドウォールスペーサ24を形成する。以下、第1のサイドウォールスペーサ24の形成方法について説明する。
【0021】
まず、半導体基板10の表面、第1のゲート電極21の表面、及び第2のゲート電極22の表面を覆うように、厚さ約10nmの酸化シリコン膜を形成する。この酸化シリコン膜は、原料として酸素(O)とテトラエチルオルソシリケート(TEOS)とを用い、成膜温度600℃の条件で、LPCVDにより形成される。なお、酸化シリコン膜に代えて、窒化シリコン膜を形成してもよい。窒化シリコン膜の形成には、原料として、ジクロルシラン(SiHCl)とアンモニア(NH)を用い、成膜温度を650℃とする。
【0022】
この酸化シリコン膜に異方性エッチングを施すことにより、平坦面上の酸化シリコン膜を除去し、第1のゲート電極21及び第2のゲート電極22の側面上に、酸化シリコンからなる第1のサイドウォールスペーサ24を残す。
【0023】
図1Fに示す構造に至るまでの工程について説明する。第1の活性領域12をレジストパターンで覆い、第2の活性領域13に、第2のゲート電極22及び第1のサイドウォールスペーサ24をマスクとしてn型不純物を注入することにより、エクステンション領域26を形成する。注入条件は、例えば下記の通りである。
・不純物 砒素(As)
・加速エネルギ 1〜3keV
・ドーズ量 1×1015〜2×1015cm−2
さらに、ポケット領域(図示せず)を形成するためのp型不純物の注入を行う。注入条件は、例えば下記の通りである。
・ボロン (B)
・加速エネルギ 3〜6keV
・ドーズ量 0.4×1013〜1×1013cm−2
・注入方位 4方向注入
・注入角 チルト角20〜30°
ポケット領域は、エクステンション領域26よりも深くなる。エクステンション領域26の不純物としてリン(P)を用いてもよいし、ポケット領域の不純物としてインジウム(In)を用いてもよい。また、エクステンション注入及びポケット注入を、nMOSFET用の活性領域ごとに異なる条件で行ってもよい。また、窒素(N)やゲルマニウム(Ge)を用いたコ・インプラント技術を適用してもよい。
【0024】
第1の活性領域12を覆っていたレジストパターンを除去し、第2の活性領域13を新たなレジストパターンで覆う。第1の活性領域12に、第1のゲート電極21及び第1のサイドウォールスペーサ24をマスクとしてp型不純物を注入することにより、エクステンション領域25を形成する。注入条件は、例えば下記の通りである。
・不純物 ボロン(B)
・加速エネルギ 0.5keV
・ドーズ量 1×1015〜2×1015cm−2
さらに、ポケット領域(図示せず)を形成するためのn型不純物の注入を行う。注入条件は、例えば下記の通りである。
・砒素 (As)
・加速エネルギ 25〜40keV
・ドーズ量 0.4×1013〜1×1013cm−2
・注入方位 4方向注入
・注入角 チルト角20〜30°
ポケット領域は、エクステンション領域25よりも深くなる。ポケット領域の不純物としてアンチモン(Sb)を用いてもよい。また、エクステンション注入及びポケット注入を、pMOSFET用の活性領域ごとに異なる条件で行ってもよい。
【0025】
第1のサイドウォールスペーサ24は、エクステンション領域25、26及びポケット領域を、チャネル領域からオフセットさせる機能を持つ。オフセットが不要である場合には、第1のサイドウォールスペーサ24を形成しなくてもよい。
【0026】
図1Gに示すように、第1のゲート電極21及び第2のゲート電極22の側面上に、第1のサイドウォールスペーサ24を介して、酸窒化シリコン(SiON)からなる第2のサイドウォールスペーサ28を形成する。以下、第2のサイドウォールスペーサ28の形成方法について説明する。
【0027】
まず、LPCVDにより、露出している表面全域に、成膜温度600℃以下の低温で厚さ20〜40nmのSiON膜を形成する。RIEにより、このSiON膜を異方性エッチバックすることにより、平坦面上のSiON膜を除去し、第1及び第2のゲート電極21、22の側面上に第2のサイドウォールスペーサ28を残す。なお、第2のサイドウォールスペーサ28に、窒化シリコン(SiN)を用いてもよい。また、原子層堆積(ALD)により形成したSiNを用いてもよい。SiNは、SiONよりもフッ酸に対して高いエッチング耐性を持つ。このため、第2のサイドウォールスペーサ28にSiNを用いた場合には、フッ酸を用いたウェット処理時における膜厚の減少を抑制することができる。
【0028】
図1Hに示す構造に至るまでの工程について説明する。まず、第1の活性領域12をレジストパターンで覆う。第2のゲート電極22、第1のサイドウォールスペーサ24及び第2のサイドウォールスペーサ28をマスクとして、第2の活性領域13の表層部にn型不純物を注入することにより、バッファ領域31を形成する。注入条件は、例えば下記の通りである。
・不純物 砒素(As)
・加速エネルギ 10〜15keV
・ドーズ量 1×1015〜5×1015cm−2
第1の活性領域12を覆っているレジストパターンを除去し、第2の活性領域13を新たなレジストパターンで覆う。第1のゲート電極21、第1のサイドウォールスペーサ24及び第2のサイドウォールスペーサ28をマスクとして、第1の活性領域12の表層部にp型不純物を注入することにより、バッファ領域30を形成する。注入条件は、例えば下記の通りである。
・不純物 ボロン(B)
・加速エネルギ 10〜15keV
・ドーズ量 1×1015〜5×1015cm−2
第1の活性領域12に形成されたバッファ領域30は、エクステンション領域25よりも深く、第2の活性領域13に形成されたバッファ領域31は、エクステンション領域26よりも深い。その後、第2の活性領域13を覆っているレジストパターンを除去する。
【0029】
図1Iに示すように、露出している表面全域を、酸化シリコンからなる第1のキャップ膜35で覆う。第1のキャップ膜35は、例えばLPCVDにより、成膜温度550℃以下の条件で形成される。
【0030】
第1のキャップ膜35の厚さは、相互に隣り合う第1のゲート電極21の、相互に対向する側面上に形成される第1のキャップ膜35同士が直接接触しない厚さとする。例えば、第1のゲート電極21の相互に対向する側面上に形成されている第2のサイドウォールスペーサ28の最下端の間隔Wrecが35nmである場合、第1のキャップ膜35の厚さを10nmとする。
【0031】
図1Jに示すように、第2の活性領域13上の第1のキャップ膜35を、フォトレジスト等からなる第1のマスクパターン36で覆う。
【0032】
図1Kに示すように、第1のマスクパターン36をエッチングマスクとして用い、第1の活性領域12上の第1のキャップ膜35をエッチングする。第1のキャップ膜35のエッチングには、例えばフッ酸を用いたウェットエッチングが用いられる。なお、ドライエッチングを用いてもよい。ドライエッチングを用いる場合には、ゲート電極側面上のキャップ膜を除去するために、等方性のエッチング条件を適用することが望ましい。また、適宜異方性のエッチング条件を適用してもよい。等方性のエッチングと異方性のエッチングとを組み合わせてもよいし、ドライエッチングとウェットエッチングとを組み合わせてもよい。
【0033】
第1のキャップ膜35をエッチングした後、第1のマスクパターン36を除去する。第1のゲート電極21、第1のサイドウォールスペーサ24及び第2のサイドウォールスペーサ28からなるゲート構造体の表面、及び第1の活性領域12の表面が露出した状態になっている。第2のサイドウォールスペーサ28は、SiONまたはSiNで形成されているため、酸化シリコンに比べて、フッ酸に対するエッチング耐性が高い。このため、第2のサイドウォールスペーサ28は、ほとんどエッチングされない。
【0034】
図1Lに示すように、露出している表面全域に、酸化シリコンからなる第2のキャップ膜37を形成する。第2のキャップ膜37は、第1のキャップ膜35と同じ方法で形成される。第2のキャップ膜37の厚さは、第1のキャップ膜35と同様に、相互に隣り合う第1のゲート電極21の相互に対向する側面上に形成される第2のキャップ膜37同士が直接接触しない厚さとする。
【0035】
第1の活性領域12は、第2のキャップ膜37のみで覆われた状態になり、第2の活性領域13は、第1のキャップ膜35と第2のキャップ膜37との2層で覆われた状態になる。
【0036】
図1Mに示すように、第2のキャップ膜37の上に、PECVDにより酸化シリコンからなる第3のキャップ膜38を形成する。PECVDは、LPCVDに比べて成長の異方性が強いため、側面上に形成される膜が、平坦面上に形成される膜よりも薄くなる。第3のキャップ膜38の厚さは、例えば、平坦面上において20〜40nmとする。第3のキャップ膜38は、第2の活性領域13の被覆をより確実にするためのものである。第1及び第2のキャップ膜35、37で十分な被覆がなされている場合には、第3のキャップ膜38の形成工程を省略してもよい。「十分な被覆」の程度については、後に図5を参照して説明する。
【0037】
図1Nに示すように、第2の活性領域13上の第3のキャップ膜38を、フォトレジストからなる第2マスクパターン40で覆う。
【0038】
図1Oに示すように、第2のマスクパターン40をエッチングマスクとして、第1の活性領域12上の第2のキャップ膜37及び第3のキャップ膜38をエッチングして除去する。第2のキャップ膜37及び第3のキャップ膜38の除去には、RIEを用いることができる。なお、フッ酸を用いたウェット処理により除去してもよい。
【0039】
図1Pに示すように、第2のマスクパターン40を除去する。
【0040】
図1Qに示すように、第1の活性領域12において、第1のゲート電極21、第1及び第2のサイドウォールスペーサ24、28をエッチングマスクとして、半導体基板10の表層部をエッチングし、凹部41を形成する。このとき、第1のゲート電極21も、その上面から部分的にエッチングされ、第1のゲート電極21の上面が、第1及び第2のサイドウォールスペーサ24、28の上端よりも低くなる。
【0041】
第2の活性領域13は、第1〜第3のキャップ膜35、37、38で覆われているため、第2の活性領域13内には凹部が形成されない。半導体基板10のエッチングには、異方性のRIEを適用することができる。なお、等方性のRIEを使用してもよいし、異方性のドライエッチングと等方性のドライエッチングとを組み合わせて使用してもよい。
【0042】
次に、凹部41を横方向に拡張するために、凹部41の内面に、エッチャントとして、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)のような有機アルカリを含むエッチャントを用いた異方性のウェットエッチングを施す。TMAHを用いた場合には、凹部41の側面にシリコンの(111)面が露出するようにエッチングが進行する。これにより、凹部41の側面が、第2のサイドウォールスペーサ28の縁よりも内側まで入り込む。なお、エッチャントとして、アンモニア加水や、アンモニア添加の水素水等の無機アルカリを含むエッチャントを用いた等方性のウェットエッチングを施してもよいし、異方性のウェットエッチングと等方性のウェットエッチングとを組み合わせて使用してもよい。
【0043】
図1Rに示すように、凹部41内を、SiGeからなる埋込部材43で埋め込む。以下、埋込部材43の形成方法について説明する。
【0044】
まず、凹部41内の露出しているシリコン表面をドライエッチングにより薄く削る。このドライエッチングにより、シリコン表面の自然酸化膜や付着有機物が除去される。絶縁膜上には成長せず、シリコン表面にのみ成長する条件で、SiGeをCVDにより成長させる。成長条件は、例えば下記の通りである。
・成長温度 450〜750℃
・ガス SiH、GeH、B、HCl、H
・厚さ 30〜100nm
・Ge濃度 10〜35原子%
これにより、凹部41内がSiGeからなる埋込部材43で埋め込まれると共に、第1のゲート電極21の上にもSiGeからなる埋込部材44が形成される。埋込部材43は、半導体基板10の結晶性を引き継いで、単結晶になる。第1のゲート電極21はポリシリコンで形成されているため、その上の埋込部材44は多結晶になる。SiGe及びSiの選択成長時のシリコンの原料として、SiHに代えてジクロロシラン(SiHCl)やトリクロロシラン(SiHCl)を用いてもよい。また、p型ドーパントであるボロン(B)の原料として、Bに代えて、BClを用いてもよい。
【0045】
SiGeの格子定数は、Siの格子定数よりも大きいため、埋込部材43には、圧縮応力が内在し、圧縮歪が生じる。このため、埋込部材43は、第1のゲート電極21の下のチャネル領域に、面内方向の圧縮応力を印加する。図1Qの工程で、凹部41を横方向に拡張させたのは、チャネル領域に効率的に圧縮応力を印加するためである。
【0046】
埋込部材43、44を形成した後、絶縁膜上に付着しているSiGeを取り除くためのエッチング処理を行ってもよい。また、SiGe中に、Si及びGeと同じIV族元素であるCを添加してもよい。また、Ge濃度が膜厚方向に異なるように組成分布を持たせても良い。
【0047】
図1Sに示すように、埋込部材43、44の上に、それぞれシリコン層45、46をCVDにより選択成長させる。成長条件は、例えば下記の通りである。
・成長温度 450〜750℃
・ガス SiH、B、HCl、H
・厚さ 30nm以下
図1Tに示すように、フッ酸を用いたウェット処理により、第2の活性領域13上の第1〜第3のキャップ膜35、37、38を除去する。図1K及び図1Oに示した第1の活性領域12上のキャップ膜を除去する際には、それぞれフォトレジスト材からなる第1のマスクパターン36及び第2のマスクパターン40がエッチングマスクとして利用された。エッチャントであるフッ酸の、マスクパターンへの染み込みが懸念されるため、一部をマスクパターンで覆った状態で厚いキャップ膜を除去するのは困難である。図1Tの工程では、マスクパターンを用いることなく、基板全面にフッ酸処理を施せばよい。このため、第1〜第3のキャップ膜35、37、38の3層が積層された厚いキャップ膜を再現性よく除去することができる。なお、第1の活性領域12上の第2のサイドウォールスペーサ28は、SiONまたはSiNで形成されているため、フッ酸に対する高いエッチング耐性を有する。このため、第2のサイドウォールスペーサ28は、ほとんどエッチングされない。
【0048】
図1Uに示すように、第1のゲート電極21及び第2のゲート電極22の側面上に、第1及び第2のサイドウォールスペーサ24、28を介して、酸化シリコンからなる第3のサイドウォールスペーサ48を形成する。以下、第3のサイドウォールスペーサ48の形成方法について説明する。
【0049】
まず、露出している表面の全域に、LPCVDにより、温度550℃の条件で厚さ50nmの酸化シリコン膜を堆積させる。この酸化シリコン膜を、異方性のRIEによりエッチバックする。これにより、第1及び第2のゲート電極21、22の側面上にのみ、第3のサイドウォールスペーサ48が残る。
【0050】
図1Vに示すように、第1の活性領域12上にフォトレジスト材からなる第3のマスクパターン50を形成する。第2の活性領域13の表層部に、第2のゲート電極22、第1〜第3のサイドウォールスペーサ24、28、48をマスクとして、n型不純物を注入することにより、深いソース及びドレイン53を形成する。注入条件は、例えば下記の通りである。
・不純物 リン(P)
・加速エネルギ 5〜10keV
・ドーズ量 1×1015〜5×1015cm−2
第1の活性領域12においては、p型の埋め込み部材43が、チャネル領域に応力を印加するためのストレッサの機能を持つと共に、pMOSFETの深いソース及びドレインの役割を担う。第1のゲート電極21と埋込部材43との間隔(オフセット)は、主として第2のサイドウォールスペーサ28の厚さによって決定される。これに対し、第2のゲート電極22と深いソース及びドレイ53との間隔は、第2及び第3のサイドウォールスペーサ28、48の合計の厚さによって決定される。このため、第2のゲート電極22と深いソース及びドレイン53との間隔を、第1のゲート電極21と埋込部材43との間隔とは独立して設定することが可能になる。
【0051】
第3のマスクパターン50を除去した後、不純物を活性化させるためのスパイクRTA(ラピッドサーマルアニール)を、例えば温度1050℃の条件で行う。なお、不純物の活性化率を高めるため、及び不純物の異常拡散防止のために、温度1150℃以上、時間数ミリ秒程度の条件で、フラッシュランプアニールまたはレーザスパイクアニールを行ってもよい。
【0052】
不純物の活性化の後、第3のサイドウォールスペーサ48を、フッ酸を用いたウェット処理により除去する。
【0053】
図1Wに示すように、露出しているシリコン表面に、NiSi等の金属シリサイド膜55を形成する。第1の活性領域12においては、図1Sの工程で形成したシリコン層45、46を、金属シリサイド化することにより、金属シリサイド膜55が形成される。第2の活性領域13においては、深いソース及びドレイン53、バッファ領域31、及び第2のゲート電極22の露出した表面に、金属シリサイド膜55が形成される。
【0054】
図1Xに示すように、第2の活性領域13の上に、面内方向に引っ張り歪を持つ引張応力膜58を形成する。以下、引張応力膜58の形成方法について説明する。
【0055】
まず、露出した表面の全域に、窒化シリコン膜をPECVDにより形成する。この窒化シリコン膜の厚さは、30〜100nmとする。第2の活性領域13上の窒化シリコン膜を、レジストパターンで覆う。このレジストパターンをエッチングマスクとして、RIEにより第1の活性領域12上の窒化シリコン膜を除去する。その後、レジストパターンを除去する。これにより、第2の活性領域13上に、窒化シリコンからなる引張応力膜58が形成される。
【0056】
引張応力膜58は、nMOSFETの第2のゲート電極22の下のチャネル領域に、面内方向の引っ張り歪を生じさせる。これにより、チャネル領域の電子の移動度が向上する。
【0057】
図1Yに示すように、第1の活性領域12の上に、面内方向に圧縮歪を持つ圧縮応力膜57を形成する。以下、圧縮応力膜57の形成方法について説明する。
【0058】
まず、露出した表面の全域に、窒化シリコン膜をPECVDにより形成する。この窒化シリコン膜の厚さは、30〜100nmとする。第1の活性領域12上の窒化シリコン膜を、レジストパターンで覆う。このレジストパターンをエッチングマスクとして、RIEにより第2の活性領域13上の窒化シリコン膜を除去する。その後、レジストパターンを除去する。これにより、第1の活性領域12上に、窒化シリコンからなる圧縮応力膜57が形成される。
【0059】
圧縮応力膜57は、pMOSFETの第1のゲート電極21の下のチャネル領域に、面内方向の圧縮歪を生じさせる。埋込部材43及び圧縮応力膜57により、チャネル領域に圧縮歪が発生するため、チャネル領域の正孔の移動度を高めることができる。
【0060】
図1Zに示すように、圧縮応力膜57及び引張応力膜58の上に、酸化シリコンからなる厚さ0.5〜0.7μmの層間絶縁膜60を形成する。層間絶縁膜60は、例えば原料としてOとTEOSとを用いたCVDにより形成することができる。層間絶縁膜60の表面を、化学機械研磨(CMP)により平坦化する。この層間絶縁膜60にコンタクトホールを形成し、コンタクトホール内をタングステン(W)等の導電プラグ61で埋め込む。なお、コンタクトホールの内面は、TiNとTiとの2層構造を有する拡散防止膜で被覆される。
【0061】
次に、図2A〜図2Cを参照して、比較例1について説明する。
【0062】
図2Aに示す第1のキャップ膜35を形成するまでの工程は、実施例の図1Aから図1Iまでの工程と共通である。上記実施例では、第2及び第3のキャップ膜37、38を形成したが、この比較例1では、第2及び第3のキャップ膜37、38を形成しない。第1のキャップ膜35は、第1〜第3のキャップ膜35、37、38の合計の厚さよりも薄い。このため、被覆不良が発生しやすい。図2Aでは、第2の活性領域13の半導体基板10の表面上に被覆不良箇所71が発生し、第2のゲート電極22の肩部に被覆不良箇所72が発生している例を示す。
【0063】
図2Bに示すように、第1の活性領域12の表層部に凹部41を形成する際に、被覆不良箇所71の半導体基板10もエッチングされ、凹部73が形成される。また、被覆不良箇所72の第2のゲート電極22もエッチングされ、空洞74が形成される。この空洞74の発生は、実際にSEMによる観察で確認された。
【0064】
図2Cに示すように、SiGeの選択成長の際に、第2の活性領域13に発生している凹部73内及び空洞74内にもSiGeが成長し、不要なSiGe部材75及び76が形成されてしまう。このSiGe部材75及び76は、nMOSFETの歩留まり低下、及び特性劣化の要因になる。
【0065】
上記実施例では、凹部41の形成時、及びSiGeの選択成長時に、第2の活性領域13が第1のキャップ膜35のみならず、第2及び第3のキャップ膜37、38でも覆われている。このため、被覆不良の発生を抑制することができる。
【0066】
次に、図3A及び図3Bを参照して、比較例2について説明する。
【0067】
図3Aに示した第1のキャップ膜35Aを形成するまでの工程は、実施例の図1A〜図1Iに示した工程と共通である。ただし、この比較例2においては、第1のキャップ膜35Aの厚さが、実施例における第1〜第3のキャップ膜35、37、38の合計の厚さとほぼ等しくなるように設定されている。第1のキャップ膜35Aが厚いため、比較例1の図2Aに示した被覆不良は発生しにくい。
【0068】
ところが、相互に隣り合う第1のゲート電極21の、相互に対向する側面上に形成される第1のキャップ膜35A同士が、直接接触してしまう場合がある。第1のキャップ膜35A同士が直接接触すると、第1のゲート電極21の間の間隙部の平坦面上に堆積した第1のキャップ膜35Aの厚さが、目標とする厚さよりも厚くなってしまう。図3Aでは、間隙部80の平坦面上に堆積している第1のキャップ膜35Aが、目標とする厚さよりも厚くなっている例を示している。
【0069】
図3Bに示すように、第2の活性領域13上の第1のキャップ膜35Aを、第1のマスクパターン36Aで覆う。第1のマスクパターン36Aをエッチングマスクとして、第1の活性領域12上の第1のキャップ膜35Aをエッチング除去する。間隙部80の平坦面上の厚さが、目標とする厚さよりも厚くなっていたため、この部分に、エッチング残渣81が残りやすい。
【0070】
図3Cに示すように、第1の活性領域12の表層部をエッチングすることにより、凹部41を形成する。エッチング残渣81が残っている部分においては、エッチング残渣81がエッチングマスクとして作用するため、凹部が形成されない。
【0071】
上述の実施例においては、図1Kの工程で第1のキャップ膜35をエッチングし、図1Oの工程で、第2及び第3のキャップ膜37、38をエッチングする。実施例で用いる第1のキャップ膜35は、比較例2で用いる第1のキャップ膜35Aよりも薄いため、エッチング残渣が残り難い。また、第2及び第3のキャップ膜37、38を成膜するときには、第1の活性領域12上の第1のキャップ膜35が既に除去されている。このため、第1のゲート電極21の間隙部の平坦面上に、目標厚さよりも厚いキャップ膜が形成されることを防止できる。
【0072】
図4を参照して、第1のキャップ膜35の厚さの好適な範囲の上限値について説明する。なお、第2のキャップ膜37の厚さの好適な範囲の上限値も、第1のキャップ膜35の厚さの好適な範囲の上限値と同一である。
【0073】
第1のゲート電極21の、チャネル長の方向(キャリアの移動方向)に関する配列周期をWpitchとする。第1のサイドウォールスペーサ24と第2のサイドウォールスペーサ28との合計の厚さをWswとする。第1のゲート電極21の各々のゲート長をWpolyとする。相互に隣り合う第1のゲート電極21の、相互に対向する側面上に形成された第2のサイドウォールスペーサ28の間の領域のうち最も狭い部分の間隔をWrecとする。間隔Wrecは、
Wrec=Wpitch−Wpoly−2Wsw
と表される。
【0074】
第1のゲート電極21の側面上に堆積している第1のキャップ膜35の厚さをTsとする。相互に隣り合う第1のゲート電極21の、相互に対向する側面上に堆積している第1のキャップ膜35の表面の最近接部の間隔Waは、
Wa=Wrec−2Ts
と表される。
【0075】
間隔Waが正である場合には、相互に隣接する第1のゲート電極21の間の平坦面上における第1のキャップ膜35が、第1のゲート電極21上における厚さTtとほぼ等しくなる。間隔Waが負になる場合、すなわち相互に隣り合う第1のゲート電極21の、相互に対向する側面上に堆積している第1のキャップ膜35同士が、図3Aに示した間隙部80上の第1のキャップ膜35Aのように直接接触してしまう場合には、間隙部の平坦面上の第1のキャップ膜35が、厚さTtよりも厚くなってしまう。この場合、図3Bに示したように、エッチング残渣81が残り易い。
【0076】
第1のキャップ膜35の異方性エッチング時に、オーバエッチングを行うことを考慮すると、相互に隣り合う第1のゲート電極21の間の半導体基板10上に形成された第1のキャップ膜35の厚さが、第1のゲート電極21上の第1のキャップ膜の厚さTt未満になる条件で、第1のキャップ膜35を形成することが好ましい。
【0077】
次に、図5を参照して、第1のキャップ膜35と第2のキャップ膜37との合計の厚さの好適な範囲の下限値について説明する。
【0078】
図1Pに示した第1のキャップ膜35と第2のキャップ膜37との合計の厚さが異なる複数の評価用試料を作製し、図1Qに示した凹部41を形成した。評価用試料においては、第3のキャップ膜38は形成しなかった。各試料について、第2の活性領域13に、図2Bに示した凹部73や空洞74に相当する欠陥が形成されているか否かを観察した。
【0079】
図5に観察結果を示す。横軸は試料のロット番号に対応し、縦軸は、第1及び第2のキャップ膜35、37の合計の厚さを、単位「nm」で表す。1つのロットにつき、3枚のウエハを抜き取り、欠陥の有無を観察した。第1及び第2のキャップ膜35、37の合計の厚さは、図1Rに示した埋込部材43を形成した後に、十分広い平坦な領域において測定した。この厚さは、第2のゲート電極22の上面における厚さとほぼ等しいと考えられる。
【0080】
欠陥が観察されなかったロットを白抜き記号で表し、欠陥が観察されたロットを、中黒記号で表す。第1及び第2のキャップ膜35、37の合計の厚さを20nm以上にした試料においては、欠陥が観察されないことがわかる。欠陥が観察された試料は、第1及び第2のキャップ膜35、37の合計の厚さが20nm未満のものに集中的に分布していることがわかる。この結果から、図1Qに示した凹部41を形成した後に、第2の活性領域13上における第1及び第2のキャップ膜35、37の合計の厚さが20nm以上になるように、プロセス条件を設定しておくことが好ましいと考えられる。
【0081】
これらのキャップ膜は、成膜直後から、凹部41の形成後までの種々の洗浄工程やエッチング工程で薄くなってしまう。この厚さの目減りは10nm程度であると考えられる。この厚さの目減りを考慮すると、第1及び第2のキャップ膜35、37の成膜直後における各膜の厚さの合計を30nm以上にすることが好ましい。ここでは、「厚さ」は、第2のゲート電極22の上面における厚さを意味する。
【0082】
なお、実施例では、第3のキャップ膜38を形成しているため、この第1及び第2のキャップ膜35、37の合計の厚さの好適条件の下限値は、より緩和される。この場合には、第1〜第3のキャップ膜35、37、38の成膜直後における厚さの合計が30nm以上であればよい。
【0083】
上記実施例では、図1Tに示した工程で、第2の活性領域13上の第1〜第3のキャップ膜35、37、38を完全に除去した。ただし、この段階では、必ずしも完全に除去する必要はない。図1Vに示した深いソース及びドレイン53のオフセットを、十分な精度で制御できるという条件が満たされれば、第1〜第3のキャップ膜35、37、38が部分的に残っていてもよい。部分的に残されたキャップ膜は、図1Vに示した第3のサイドウォールスペーサ48を除去する工程で、一緒に除去される。
【0084】
上記実施例では、半導体基板10にシリコンを用い、図1Rの工程で形成した埋込部材43にSiGeを用いた。この材料の組み合わせは一例であり、他の組合せとしてもよい。一般的に、埋込部材43には、半導体基板10の格子定数とは異なる格子定数を持ち、半導体基板10の表面にエピタキシャル成長する半導体材料を用いればよい。格子定数の大小関係は、チャネル領域に印加したい応力が圧縮応力であるか、引張応力であるかに依存する。
【0085】
また、上記実施例では、1つの活性領域内に複数のゲート電極が交差する場合を示した。1つの活性領域に1つのゲート電極のみが交差する場合には、図3A〜図3Cに示したようにゲート電極の間隙部80にエッチング残渣81が残ってしまうという現象自体が生じない。以下、1つの活性領域に1つのゲート電極のみが交差する場合の効果について説明する。
【0086】
図3Aに示したように、第1のキャップ膜35Aを厚くした場合には、図3Bのエッチング工程において、第1のマスクパターン36Aをエッチングマスクとして、厚いキャップ膜35Aをエッチングしなければならない。フッ酸を用いて第1のキャップ膜35Aをエッチングする際に、エッチング時間が長いと、フォトレジスト等の第1のマスクパターン36Aにフッ酸が染み込み、十分なマスク機能が得られなくなる場合がある。
【0087】
上記実施例のように、キャップ膜を第1のキャップ膜35と第2のキャップ膜37との少なくとも2層に分け、別々のマスクパターンを用いてエッチングすることにより、1回あたりのエッチング時間を短くすることができる。このため、マスクパターンの十分なマスク機能を維持しつつ、キャップ膜を再現性よく除去することが可能になる。
【0088】
図6に、上記実施例による半導体装置を用いた論理回路の一例を示す。3入力CMOS−NAND回路90が、3個のpMOSFET92と3個のnMOSFET93とを含み、3入力CMOS−NOR回路91が、3個のpMOSFET94と3個のnMOSFET95とを含む。NOR回路91の3個のpMOSFET94が、図1Zに示したpMOSFET用の第1の活性領域12内のpMOSFETに対応し、NAND回路90の3個のnMOSFET93が、図1Zに示したnMOSFET用の第2の活性領域13内のnMOSFETに対応する。
【0089】
CMOS−NAND回路90及びCMOS−NOR回路91の作製に、上記実施例による方法を適用することにより、歩留まりの低下を抑制することができる。なお、1つのpMOSFET用活性領域内に、2個のpMOSFETを配置する場合、及び4個以上のpMOSFETを配置する場合にも、上記実施例による方法が適用可能である。
【0090】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0091】
10 半導体基板
11 素子分離絶縁膜
12 pMOSFET用の第1の活性領域
13 nMOSFET用の第2の活性領域
14 n型ウェル
15 p型ウェル
18 ゲート絶縁膜
21 第1のゲート電極
22 第2のゲート電極
24 第1のサイドウォールスペーサ
25、26 エクステンション領域
28 第2のサイドウォールスペーサ
30、31 バッファ領域
35、35A 第1のキャップ膜
36、36A 第1のマスクパターン
37 第2のキャップ膜
38 第3のキャップ膜
40 第2のマスクパターン
41 凹部
43、44 SiGe埋込部材
45、46 シリコン層
48 第3のサイドウォールスペーサ
50 第3のマスクパターン
53 深いソース及びドレイン
55 金属シリサイド膜
57 圧縮応力膜
58 引張応力膜
60 層間絶縁膜
71、72 被覆不良箇所
73 凹部
74 空洞
75、76 SiGe部材
80 間隙部
81 エッチング残渣
90 CMOS−NAMD回路
91 CMOS−NOR回路
92、94 pMOSFET
93、95 nMOSFET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表層部に、第1の活性領域及び第2の活性領域を画定する素子分離絶縁膜を形成する工程と、
前記半導体基板の上に、前記第1の活性領域と交差し、相互に間隔を隔てて配置された少なくとも2つの第1のゲート電極、及び前記第2の活性領域と交差し、相互に間隔を隔てて配置された少なくとも2つの第2のゲート電極を形成する工程と、
前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極を覆うように、前記半導体基板の上に、第1のキャップ膜を形成する工程と、
前記第2の活性領域上の前記第1のキャップ膜を、第1のマスクパターンで覆う工程と、
前記第1のマスクパターンをエッチングマスクとして、前記第1の活性領域上の前記第1のキャップ膜をエッチングして除去し、その後、前記第1のマスクパターンを除去する工程と、
前記第1のマスクパターンを除去した後、前記第2の活性領域においては、前記第1のキャップ膜の上に、前記第1の活性領域においては、前記第1のゲート電極を覆うように前記半導体基板の上に、第2のキャップ膜を形成する工程と、
前記第2の活性領域上の前記第2のキャップ膜を、第2のマスクパターンで覆う工程と、
前記第2のマスクパターンをエッチングマスクとして、前記第1の活性領域上の前記第2のキャップ膜をエッチングして除去する工程と、
前記第2の活性領域を前記第1及び第2のキャップ膜で覆った状態で、前記第1の活性領域において、前記第1のゲート電極の各々の両側の前記半導体基板の表層部をエッチングすることにより、凹部を形成する工程と、
前記凹部内を、前記半導体基板とは格子定数の異なる半導体材料からなる埋込部材で埋め込む工程と、
前記第2の活性領域において、前記第2のゲート電極の各々の両側に不純物を注入することにより、ソース及びドレインを形成する工程と
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体基板の少なくとも表層部がシリコンで形成されており、前記第1の活性領域がpMOSFET用であり、前記第2の活性領域がnMOSFET用であり、前記埋込部材がSi及びGeを含む請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1のキャップ膜及び第2のキャップ膜を、熱化学気相成長により形成する請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2のキャップ膜を形成した後、前記第2のマスクパターンを形成する前に、さらに、前記第2のキャップ膜の上に、プラズマ励起化学気相成長により第3のキャップ膜を形成する工程を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1及び第2のゲート電極を形成した後、前記第1のキャップ膜を形成する前に、さらに、前記第1及び第2のゲート電極の各々の側面上に、前記第1のキャップ膜とはエッチング耐性の異なる絶縁材料からなるサイドウォールスペーサを形成する工程を有し、
前記凹部を形成する工程において、前記第1のゲート電極と、その側面上に形成されている前記サイドウォールスペーサとをエッチングマスクとして、前記半導体基板の表層部をエッチングする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記埋込部材を形成した後、さらに、
前記埋込部材の上に、シリコン膜を形成する工程と、
前記第2の活性領域上に残っている前記第1及び第2のキャップ膜を除去する工程と、
前記埋込部材の表面に金属シリサイド膜を形成すると共に、前記第2の活性領域のうち前記第2のゲート電極及びその側面上の前記サイドウォールスペーサを含むゲート構造体で覆われていない領域にも金属シリサイド膜を形成する工程と
を有する請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1のキャップ膜を形成する工程において、相互に隣り合う前記第1のゲート電極の間の前記半導体基板上に形成された前記第1のキャップ膜の厚さが、前記第1のゲート電極の上面の上に形成された前記第1のキャップ膜の厚さ未満であり、
前記第2のキャップ膜を形成する工程において、相互に隣り合う前記第1のゲート電極の間の前記半導体基板上に形成された前記第2のキャップ膜の厚さが、前記第1のゲート電極の上面の上に形成された前記第2のキャップ膜の厚さ未満である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1の活性領域上の前記第2のキャップ膜を除去した後に、前記第2のゲート電極の上面の上に形成されている前記キャップ膜の合計の厚さが30nm以上である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
半導体基板の表層部に、第1の活性領域及び第2の活性領域を画定する素子分離絶縁膜を形成する工程と、
前記半導体基板の上に、前記第1の活性領域と交差する第1のゲート電極、及び前記第2の活性領域と交差する第2のゲート電極を形成する工程と、
前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極を覆うように、前記半導体基板の上に、第1のキャップ膜を形成する工程と、
前記第2の活性領域上の前記第1のキャップ膜を、第1のマスクパターンで覆う工程と、
前記第1のマスクパターンをエッチングマスクとして、前記第1の活性領域上の前記第1のキャップ膜をエッチングして除去し、その後、前記第1のマスクパターンを除去する工程と、
前記第1のマスクパターンを除去した後、前記第2の活性領域においては、前記第1のキャップ膜の上に、前記第1の活性領域においては、前記第1のゲート電極を覆うように前記半導体基板の上に、第2のキャップ膜を形成する工程と、
前記第2の活性領域上の前記第2のキャップ膜を、第2のマスクパターンで覆う工程と、
前記第2のマスクパターンをエッチングマスクとして、前記第1の活性領域上の前記第2のキャップ膜をエッチングして除去する工程と、
前記第2の活性領域を前記第1及び第2のキャップ膜で覆った状態で、前記第1の活性領域において、前記第1のゲート電極の両側の前記半導体基板の表層部をエッチングすることにより、凹部を形成する工程と、
前記凹部内を、前記半導体基板とは格子定数の異なる半導体材料からなる埋込部材で埋め込む工程と、
前記第2の活性領域において、前記第2のゲート電極の両側に不純物を注入することにより、ソース及びドレインを形成する工程と
を有する半導体装置の製造方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図1−6】
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【図1−7】
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【図1−8】
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【図1−9】
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【図1−10】
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【図1−11】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−192609(P2010−192609A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34259(P2009−34259)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】