説明

半導体装置の製造方法

【課題】ポリシリコン抵抗体の上に急速熱酸化処理により形成され、シリサイド化ブロック用酸化膜の一部として用いる熱酸化膜の膜厚が多種のポリシリコン抵抗体間でばらつくことにより、ポリシリコン抵抗体が部分的にシリサイド化されることを回避する。
【解決手段】多種のポリシリコン抵抗体全てにおいて、急速熱酸化処理によりポリシリコン抵抗体上に生成される熱酸化膜の膜厚と、ポリシリコン抵抗体を含む非シリサイド化領域に形成された保護酸化膜の膜厚との和が、シリサイド化ブロック用酸化膜としてのブロック性能を確保するために必要な膜厚以上となるように、保護酸化膜の膜厚を決定する。多種のポリシリコン抵抗体間で急速熱酸化処理により生成される熱酸化膜の膜厚に差が生じる場合でも、熱酸化膜と保護酸化膜とをシリサイド化ブロック用酸化膜として用いることにより、充分なブロック性能を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタンサリサイド等のサリサイドを生成するプロセスを備えた半導体装置の製造方法に関し、特に、多種ポリシリコン抵抗体を混載した半導体装置において、安定した多種ポリシリコン抵抗体を製造することの可能な半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリサイド層を生成する際に、例えばシリコン基板に保護酸化膜を形成し、イオン注入して不純物拡散層を形成した後、このイオン注入されたイオンの活性化のための熱処理工程において急速熱酸化処理を行うことにより、保護酸化膜とシリコン基板との界面に新たに熱酸化膜を形成し、この新たに形成した熱酸化膜及び保護酸化膜からなる積層膜をシリサイド化ブロック用の酸化膜として用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このように、イオン注入されたイオンの活性化のための熱処理工程において、急速熱酸化処理を行うことで、ポリシリコン抵抗体の上に成膜したシリサイド化ブロック用の保護酸化膜とポリシリンコン抵抗体との界面に新たに熱酸化膜を生成し、成膜した保護酸化膜だけでなく急速熱酸化処理により生成した熱酸化膜も含めて、シリサイドブロック用酸化膜として用いることにより、チタンサリサイドを生成する方法も提案されている。
例えば、チタンサリサイドプロセスでは、シート抵抗値330〔Ω/□〕のN型ポリシリコン抵抗体を、PMOS及びNMOSトランジスタと共に搭載する場合、次のような工程で形成している。
【0004】
すなわち、図5(a)に示すように、シリコン基板51上にLOCOS領域52を形成し、ゲート酸化絶縁膜となる絶縁膜、ポリシリコン抵抗体及びゲート電極となるノンドープポリシリコン膜を形成し、MOSトランジスタのゲートとなる領域へのイオン注入を行った後、ポリシリコン膜をエッチングして、N型ポリシリコン抵抗体となるポリシリコン抵抗体部53a、ゲート酸化絶縁膜54a及びゲート電極53bからなるゲート電極部を生成し、さらにN型ポリシリコン抵抗体となるポリシリコン抵抗体部53a及びゲート電極部(ゲート酸化絶縁膜54a及びゲート電極53b)の側壁にナイトライドスペーサ55を形成する。
【0005】
次に、図5(b)に示すように、N型不純物のイオン注入のための膜厚150〔Å〕の保護酸化膜56を形成し、続いて、レジストパターンを用いてポリシリコン膜のNMOSトランジスタのソース/ドレイン不純物拡散層となる領域及びN型ポリシリコン抵抗体となるポリシリコン抵抗体部53aに対して、N型不純物として砒素イオン“As+”をドーズ量5×E15〔個/cm2〕の条件下でイオン注入した後、レジストパターンを用いて前記保護酸化膜56を除去する。同様の手順でP型不純物の注入を行い、すなわち、保護酸化膜を形成した後、ポリシリコン膜のPMOSトランジスタのソース/ドレイン不純物拡散層となる領域にP型不純物としてフッ化ホウ素イオン“BF2+”をドーズ量2.5×E15〔個/cm2〕の条件下でイオン注入し、保護酸化膜を除去する。これにより、N型ポリシリコン抵抗体57及びNMOSトランジスタのソース/ドレイン不純物拡散層58が同時に形成され、また、PMOSトランジスタのソース/ドレイン不純物拡散層59が形成される。
【0006】
さらに、図5(c)に示すように、シリサイド化する領域及びシリサイド化しない領域に膜厚150〔Å〕のシリサイド化ブロック用の保護酸化膜60をCVD法により新たに形成する。
そして、酸素雰囲気中で950〔℃〕の温度条件下で150秒の急速熱酸化処理を行うことで、前記注入されたイオンの活性化や、シリサイド化ブロック用酸化膜としてのブロック性能を強化するための、前記CVD法で新たに形成した保護酸化膜60の焼き締めを図ると同時に、このシリサイド化ブロック用の保護酸化膜60と前記N型ポリシリコン抵抗体57との界面、保護酸化膜60とゲート電極53bとの界面、保護酸化膜60と各MOSトランジスタのソース/ドレイン拡散層58、59との間に、100〔Å〕の熱酸化膜61を生成する。
【0007】
次に、図5(d)に示すように、N型ポリシリコン抵抗体57の上部を含むシリサイド化を行わない部分にホトレジストを形成した後、このホトレジストをマスクとしてシリサイド化ブロック用の酸化膜として機能する、熱酸化膜61とCVD法で形成した保護酸化膜60とをエッチングにより除去し、その後ホトレジストを除去する。そして、スパッタ法によってTi(チタン)膜62を成膜し、シリサイド化アニールを行った後、選択エッチにより未反応のチタン膜62を除去し、低抵抗化アニールを行う(図5(e))。
以上の工程により、CVD法によって形成された膜厚150〔Å〕のシリサイド化ブロック用の保護酸化膜60と急速熱酸化処理によって生成された100〔Å〕の熱酸化膜61とをシリサイド化ブロック用酸化膜として用いて、シリサイド化ブロック用酸化膜が形成されていない部分63をシリサイド化すると共に、N型ポリシリコン抵抗体57を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−145080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、高精度アナログ受動素子としてのポリシリコン抵抗体には、P型ポリシリコン抵抗体が多く用いられている。これは、P型ポリシリコン抵抗体は、N型ポリシリコン抵抗体に比べて結晶粒径が小さく、抵抗値の安定性に優れているためアナログ素子向きであるという理由からである。
高精度アナログ受動素子としてP型ポリシリコン抵抗体を用いたとき、このP型ポリシリコン抵抗体を、上述のN型ポリシリコン抵抗体57を生成した場合と同様のプロセスで作成する場合、P型ポリシリコン抵抗体(例えば、シート抵抗値250〔Ω/□〕)は、N型ポリシリコン抵抗体に比較して、急速熱酸化処理時のポリシリコン抵抗体上の酸化速度が遅いため、急速熱酸化処理によりCVD法で形成した保護酸化膜とポリシリコン抵抗体との界面に生成される熱酸化膜の膜厚が、N型ポリシリコン抵抗体の場合に比較して薄くなる。
【0010】
その結果、界面に生成される熱酸化膜と保護酸化膜とからなるシリサイド化ブロック用酸化膜のブロック性能が不十分となり、ポリシリコン抵抗体上が局所的にシリサイド化されてしまい、その結果、低抵抗化したり、また抵抗値にばらつきが生じたりしてしまい、所望の抵抗値が得られない可能性がある。
また、抵抗値がより高いP型のポリシリコン抵抗体(例えば、シート抵抗値40〔kΩ/□〕)の場合には、酸化速度はさらに遅くその傾向が顕著に現れる。このことから、シリサイドプロセスにおいて、導電タイプや抵抗値の異なる多種のポリシリコン抵抗体を混載する場合には、各ポリシリコン抵抗体における抵抗値のばらつきを回避するのに十分なブロック性能を有するシリサイド化ブロック用酸化膜を用いる必要がある。
【0011】
また、作成条件が既にFixされたトランジスタ素子などの他素子と共に、ポリシリコン抵抗体を生成する場合を想定すると、それら他素子の特性変動を起こすことなくシリサイド化ブロック用酸化膜のブロック性能を強化することが求められるため、急速熱酸化処理の処理条件については変更しないことが望ましい。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、急速酸化処理における処理条件を変更せずに、シリサイド化ブロック用酸化膜のブロック性能を強化することの可能な半導体装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1にかかる半導体装置の製造方法は、多種のポリシリコン抵抗体を含む非シリサイド化領域に保護酸化膜を生成する工程と、一定条件で急速熱酸化処理を行い、前記保護酸化膜と前記ポリシリコン抵抗体との界面に熱酸化膜を生成する工程と、前記保護酸化膜と前記熱酸化膜との積層膜をシリサイド化ブロック用酸化膜としてシリサイド化を行う工程と、を含む半導体装置の製造方法であって、前記保護酸化膜の膜厚を、前記急速熱酸化処理により前記各ポリシリコン抵抗体上に生成される熱酸化膜の膜厚の最小値と前記保護酸化膜の膜厚との和が、前記シリサイド化ブロック用酸化膜としてのブロック性能を確保するために必要な膜厚以上となる値に設定したことを特徴としている。
また、請求項2にかかる半導体装置の製造方法は、前記多種のポリシリコン抵抗体は、少なくとも導電タイプ又はシート抵抗値が異なる複数のポリシリコンを含むことを特徴としている。
【0013】
さらに、請求項3にかかる半導体装置の製造方法は、膜厚が350〔Å〕となるように、前記保護酸化膜を生成することを特徴としている。
さらにまた、請求項4にかかる半導体装置の製造方法は、前記ポリシリコン抵抗体として、フッ化ホウ素イオン“BF2+”を“P+”イオンとして、ドーズ量9.0×E13〔個/cm2〕の条件下でイオン注入したP型ポリシリコン抵抗体を含み、且つ前記多種のポリシリコン抵抗体はそのシート抵抗値が60〔kΩ/□〕以下であって、前記急速熱酸化処理を950〔℃〕の温度条件下で150秒間行い、さらに、金属膜としてチタン膜を用い、670〔℃〕の温度条件下であり且つ窒素N2ガス雰囲気中で1分間のアニール処理をして前記シリサイド化を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非シリサイド化領域に生成した保護酸化膜と、この保護酸化膜とポリシリコン抵抗体との界面に急速熱酸化処理により生成した熱酸化膜との積層膜を、シリサイド化ブロック用酸化膜として用いてシリサイド化を行う際に、保護酸化膜の膜厚を、前記各ポリシリコン抵抗体上に生成される熱酸化膜の膜厚の最小値と前記保護酸化膜の膜厚との和が、前記シリサイド化ブロック用酸化膜としてのブロック性能を確保するために必要な膜厚以上となる値に設定するため、前記ポリシリコン抵抗体の導電タイプやシート抵抗値の違いなどによってポリシリコン抵抗体上に形成される熱酸化膜の膜厚が異なる場合であっても、この熱酸化膜と保護酸化膜との積層膜はシリサイド化ブロック用酸化膜として必要なブロック性能を確保することができる。そのため、多種のポリシリコン抵抗体が混載される場合であっても抵抗値にばらつきが生じることなく安定したポリシリコン抵抗体を生成することができる。
【0015】
特に、膜厚が350〔Å〕となるように保護酸化膜を生成することにより、熱酸化膜の膜厚にばらつきが生じた場合であっても、シリサイド化ブロック用酸化膜としてのブロック性能を確保することができ、例えば、前記ポリシリコン抵抗体として、フッ化ホウ素イオン“BF2+”を“P+”イオンとしてドーズ量9.0×E13〔個/cm2〕の条件下でイオン注入したP型ポリシリコン抵抗体を含み且つ前記多種のポリシリコン抵抗体のシート抵抗値が60〔kΩ/□〕以下であって、前記急速熱酸化処理を950〔℃〕の温度条件下で150秒間行い、さらに金属膜としてチタン膜を用いて、670〔℃〕の温度条件下で、窒素N2ガス雰囲気中での1分間のアニール処理をしてシリサイド化を行う場合に、膜厚が350〔Å〕となるように保護酸化膜を生成することにより、ポリシリコン抵抗体の種別に関係なく、安定したポリシリコン抵抗体を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図5】従来の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明者は、鋭意検討の結果、急速熱酸化の処理条件を変更せずにシリサイド化ブロック用の酸化膜のブロック性能を強化する方法を見出し、導電タイプや抵抗値の異なる多種のポリシリコン抵抗体が搭載される半導体装置を製造する際のチタンサリサイドプロセスにおいて、シリサイド化ブロック用の一部として急速熱酸化処理によりポリシリコン抵抗体上に生成される熱酸化膜が、必要とする膜厚よりも薄くなってしまうP型ポリシリコン抵抗体に対して、前記熱酸化膜と共にシリサイド化ブロック用の酸化膜をなす保護酸化膜の膜厚として最適な膜厚を適用することで、導電タイプに関係なく、シート抵抗値60〔kΩ/□〕以下の多種のポリシリコン抵抗体を混載させる場合でも、安定したポリシリコン抵抗体を製造することを可能にした。
【0018】
すなわち、急速熱酸化処理により生成される熱酸化膜と共にシリサイド化ブロック用の酸化膜として機能する保護酸化膜の膜厚を、P型ポリシリコン抵抗体上に生成される熱酸化膜が、必要とする膜厚よりも不足してしまう膜厚分に応じて厚膜化する。これにより、急速熱酸化処理の酸化処理条件の変更を必要とせずに、シリサイド化ブロック用の酸化膜のブロック性能の強化を実現している。
【0019】
そして、導電タイプがP型で、抵抗値の高いポリシリコン抵抗体ほど急速熱酸化処理で生成される熱酸化膜の膜厚が薄くなりブロック性能が劣ることに着目し、P型ポリシリコン抵抗体がシリサイド化されてしまう問題を、例えば、フッ化ホウ素イオン“BF2+”をドーズ量9.0×E13〔個/cm2〕でポリシリコンにイオン注入してシート抵抗値40〔kΩ/□〕のP型ポリシリコン抵抗体を作成する場合には、シリサイド化ブロック用として予め生成される保護酸化膜の膜厚を350〔Å〕に厚膜化することで解決した。
【0020】
ここで、導電タイプがN型のポリシリコン抵抗体や、シート抵抗値が40〔kΩ/□〕よりも低いポリシリコン抵抗体は、シート抵抗値40〔kΩ/□〕のP型ポリシリコン抵抗体に比べて熱酸化膜が成長しやすいので、P型及びN型のポリシリコン抵抗体において、共に充分な膜厚の熱酸化膜が形成されることになる。したがって、急速熱酸化処理により生成される熱酸化膜とCVD法により生成される保護酸化膜との積層膜からなるシリサイド化ブロック用酸化膜は、シリサイド化に対するブロック性能を充分確保することができる。
【0021】
すなわち、チタンサリサイドプロセスにおいて、シリサイド化ブロック用として生成する保護酸化膜の膜厚を350〔Å〕に厚膜化することで、導電タイプに関係なくシート抵抗値40〔kΩ/□〕以下の多種ポリシリコン抵抗体を混載させた場合であっても、安定したポリシリコン抵抗体を製造することが可能となる。
ここで、シリサイド化ブロック用として生成される保護酸化膜の膜厚350〔Å〕は、この保護酸化膜をCVD法で成膜する際の製造ばらつきを考慮したものであり、実際には320〔Å〕でも十分なブロック性能を有していることは確認されている。
【0022】
具体的には、チタンサリサイドプロセスにおいて、“P+”イオンとしてフッ化ホウ素イオン“BF2+”を注入エネルギ50〔keV〕、ドーズ量9.0×E13〔個/cm2〕の条件下でイオン注入し、シート抵抗値が40〔kΩ/□〕となるようにP型ポリシリコン抵抗体を作成した。さらに、このP型ポリシリコン抵抗体上に、CVD法により保護酸化膜を生成し、酸素雰囲気中で、950〔℃〕の温度条件下で150秒間の急速熱酸化処理を行って、保護酸化膜とP型ポリシリコン抵抗体との間に熱酸化膜を生成し、チタン膜を成膜した後、窒素N2ガス雰囲気中で670〔℃〕の温度条件下で1分間のアニール処理を行ってシリサイド化を行った。
【0023】
このとき、CVD法により生成する保護酸化膜の膜厚の目標値を、150〔Å〕、250〔Å〕、320〔Å〕、350〔Å〕とし、保護酸化膜の膜厚がこの目標値となるように保護酸化膜を生成した。そして、それぞれの場合についてシリサイド化を行って、P型ポリシリコン抵抗体の抵抗値を検証した。
その結果、保護酸化膜の膜厚の目標値が150〔Å〕及び250〔Å〕の場合には、目標とする抵抗値(シート抵抗値40〔kΩ/□〕)を得ることはできないが、320〔Å〕及び350〔Å〕の場合には目的とする抵抗値(シート抵抗値40〔kΩ/□〕)を得ることができることが確認された。
【0024】
また、保護酸化膜の膜厚の目標値が320〔Å〕及び350〔Å〕の場合には、P型ポリシリコン抵抗体のシート抵抗値が60〔kΩ/□〕以下の場合であれば、CVD法により生成される保護酸化膜と急速熱酸化処理により生成される熱酸化膜との積層膜をシリサイド化ブロック用酸化膜として適用することができることが確認された。
したがって、チタンサリサイドプロセスにおいて、シリサイド化ブロック用として生成する保護酸化膜の膜厚を350〔Å〕に厚膜化することで、導電タイプに関係なくシート抵抗値60〔kΩ/□〕以下の多種ポリシリコン抵抗体を混載させた場合であっても、安定したポリシリコン抵抗体を製造することができる。
【0025】
また、製造ばらつき等により保護酸化膜が薄めに成膜された場合を考慮し、CVD法により生成する保護酸化膜の膜厚の目標値を350〔Å〕とし、この目標値350〔Å〕となるように保護酸化膜を生成することにより、保護酸化膜の膜厚が、±25〔Å〕の範囲でばらついたとしても、膜厚は、325〔Å〕〜375〔Å〕の範囲に収まるから、保護酸化膜及び急速熱酸化処理により生成される熱酸化膜の積層膜からなるシリサイドブロック用酸化膜の、シリサイド化に対するブロック性能を確保することが可能となる。
【0026】
また、シリサイド化ブロック用として生成される保護酸化膜の膜厚を厚くしていくと、シリサイド化に対するブロック性能のマージンを大きく確保できるというメリットがある一方で、成膜時間延長によるスループットの低下や、保護酸化膜の厚膜化に伴いコンタクトエッチ時間を延長した際のマイクロローディング効果で、チップパターンの粗密によるエッチレート差が大きくなるといった問題が出てくる。
そのため、保護酸化膜を厚くしすぎることは望ましくない。つまり、厚膜化する保護酸化膜は、ポリシリコン抵抗体上のシリサイド化を防ぐのに必要最小限の膜厚を選択することが求められる。その観点から、CVD法で形成するシリサイド化ブロック用としての保護酸化膜の膜厚の目標値350〔Å〕は前述の問題が生じることを極力抑え、且つ製造ばらつきを考慮した上で十分なブロック性能を有しているため、最適な膜厚であると言える。
【0027】
次に、本発明における半導体装置の製造方法を説明する。
図1から図4は、P型及びN型のMOSトランジスタとP型及びN型のポリシリコン抵抗体とを備えた半導体装置を製造する場合の製造工程を表したものである。
まず、図1(a)に示すように、シリコン基板1上に素子分離用のLOCOS領域2を形成し、MOSトランジスタのゲート酸化絶縁膜となる絶縁膜3を、LOCOS領域2で囲まれた領域に熱酸化処理により形成し、その上にCVD法によりゲート電極及びポリシリコン抵抗体となるポリシリコン膜4を3500〔Å〕の厚みになるよう形成する。
【0028】
次に、図1(b)に示すように、MOSトランジスタのゲートとなる部分へのイオン注入に先立ち、ポリシリコン膜4の上に、100〔Å〕の保護酸化膜5を形成し、その上にホトレジストを形成し、これを露光した後、現像してレジストパターン6を形成する。そして、このレジストパターン6を用いてMOSトランジスタのゲートとなる部分にリン“P+”を選択的にイオン注入する。
【0029】
次に、図1(c)に示すように、レジストパターン6及び保護酸化膜5を除去した後、ポリシリコン膜4上に、MOSトランジスタのゲート電極及びシリコン抵抗体を形成するためのレジストパターン7を形成し、このレジストパターン7を用いてポリシリコン膜4及び絶縁膜3をエッチングして、MOSトランジスタのゲート電極4a及びゲート酸化絶縁膜3aとポリシリコン抵抗体部4bとを形成する(図1(d))。
レジストパターン7を除去した後、1600〔Å〕のナイトライド膜を形成し、セルフアラインでナイトライド膜をエッチングすることによりゲート電極4a及びゲート酸化絶縁膜3aからなるゲート電極部と、ポリシリコン抵抗体部4bの側壁にナイトライドスペーサ8を形成する(図2(a))。
【0030】
次に、図2(b)に示すように、イオン注入に先立ち、150〔Å〕の保護酸化膜9をCVD法により形成する。
その後、レジストパターンを用いて“N+”イオンと“P+”イオンを選択的にイオン注入する。すなわち、P型ポリシリコン抵抗体となる領域及びPMOSトランジスタのソース/ドレイン不純物拡散層となる領域にレジストパターン10aを形成し、“N+”イオンとして砒素イオン“As+”を注入エネルギ80〔keV〕、ドーズ量5×E15〔個/cm2〕の条件下で、NMOSトランジスタのソース/ドレイン不純物拡散層となる領域と、後にN型ポリシリコン抵抗体とするポリシリコン抵抗体部4bに対してイオン注入し、NMOSトランジスタのソース/ドレイン不純物拡散層11とN型ポリシリコン抵抗体12とを同時に形成する(図2(c)、(d))。同様に、N型ポリシリコン抵抗体となる領域及びNMOSトランジスタのソース/ドレイン不純物拡散層となる領域にレジストパターン10bを形成し、“P+”イオンとしてフッ化ホウ素イオン“BF2+”を注入エネルギ60〔keV〕、ドーズ量2.5×E15〔個/cm2〕の条件下で、PMOSトランジスタのソース/ドレイン不純物拡散層となる領域と、後にP型ポリシリコン抵抗体とするポリシリコン抵抗体部4bに対してイオン注入し、PMOSトランジスタのソース/ドレイン不純物拡散層13とP型ポリシリコン抵抗体14とを同時に形成する(図3(a))。
【0031】
このとき、抵抗値の高いポリシリコン抵抗体、例えばシート抵抗値40〔kΩ/□〕のP型ポリシリコン抵抗体を作成する場合は、PMOSトランジスタのソース/ドレイン不純物拡散層13の形成とは別に、“P+”イオンとしてフッ化ホウ素イオン“BF2+”を注入エネルギ50〔keV〕、ドーズ量9.0×E13〔個/cm2〕の条件下でレジストパターンを追加してイオン注入にて作成する。すなわち、“P+”イオン注入時のレジストパターンを、N型ポリシリコン抵抗体となる領域及びNMOSトランジスタのソース/ドレイン不純物拡散層となる領域と、さらに、P型ポリシリコン抵抗体となる領域とに形成し、まず、PMOSトランジスタのソース/ドレイン不純物拡散層13となる領域にのみイオン注入を行う。次に、NMOSトランジスタ及びPMOSトランジスタのソース/ドレイン不純物拡散層となる領域とN型ポリシリコン抵抗体とする領域とにレジストパターンを形成し、P型ポリシリコン抵抗体とする領域に、“P+”イオンとしてフッ化ホウ素イオン“BF2+”を注入エネルギ50〔keV〕、ドーズ量9.0×E13〔個/cm2〕の条件下でイオン注入する。
【0032】
上記イオン注入工程によってダメージを受けた保護酸化膜9は欠陥等が多く存在して膜質が劣化しており、次工程でのスパッタ法によるTiの堆積に対するブロック性能が劣りシリサイド化ブロック膜としては不適当であるという理由から、容積比で、NH4OH:H22:H2O=0.2:1:10の過酸化水素を用いた混合液で、50〔℃〕の条件下で15分間洗浄することで、前記150〔Å〕の保護酸化膜9を一旦除去する(図3(a))。
次に、図3(b)に示すように、シリサイド化ブロック用の保護酸化膜15を、その膜厚が350〔Å〕となるようにCVD法により新たに形成する。ここでシリサイド化ブロック用の保護酸化膜15の膜厚は少なくとも320〔Å〕以上必要となる。
【0033】
なぜなら、シリサイド化ブロック用の保護酸化膜15の膜厚を、例えば、上記従来のように150〔Å〕程度とした場合には、シート抵抗値250〔Ω/□〕のP型ポリシリコン抵抗体14上に、後の急速熱酸化処理工程で生成される熱酸化膜は、前述のように、N型ポリシリコン抵抗体を形成する場合に比較して酸化速度が遅いため、その膜厚がN型ポリシリコン抵抗体に比較して薄く、この熱酸化膜と保護酸化膜15とからなるシリサイド化ブロック用酸化膜としてのブロック性能が不十分となり、局所的にシリサイド化されて、所望の抵抗値が得られなくなる。そのため、保護酸化膜15を膜厚320〔Å〕以上形成して、P型ポリシリコン抵抗体14上の保護酸化膜15のブロック性能を強化する。
【0034】
膜厚が350〔Å〕となるように保護酸化膜15を生成すれば、保護酸化膜15の膜厚が製造ばらつきによりばらついたとしても、そのばらつきが±25〔Å〕の範囲であれば保護酸化膜15の膜厚は325〔Å〕〜375〔Å〕の範囲に収まるため、320〔Å〕を満足することになる。
これにより、後の急速熱酸化処理工程で生成される熱酸化膜と保護酸化膜15とからなるシリサイド化ブロック用酸化膜としての積層膜のブロック性能は充分となる。
【0035】
次に、酸素雰囲気中で、950〔℃〕の温度条件下で150秒間の急速熱酸化処理を行い、イオン注入されたイオンの活性化や、シリサイド化ブロック用の保護酸化膜15を焼き締めることによるブロック性能の強化を図ると共に、各ポリシリコン抵抗体12、14やゲート電極4a、またMOSトランジスタのソース/ドレイン不純物拡散層と、シリサイド化ブロック用の保護酸化膜15との界面に熱酸化膜16を生成する(図3(c))。
【0036】
このとき生成される熱酸化膜16は、前述の図2(c)や図2(d)でポリシリコン抵抗体やソース/ドレイン不純物拡散層を形成するためにイオン注入された不純物の導電タイプ(N型orP型)や注入量によって膜厚が変動する。つまり、導電タイプがP型で、注入量が少ないほど、急速熱酸化処理時に生成される熱酸化膜16の膜厚が薄くなることが、既知の事実として知られている。そのため、図3(c)に示すように、P型ポリシリコン抵抗体14上に形成される熱酸化膜16は、N型ポリシリコン抵抗体12上に形成される熱酸化膜16に比較して膜厚が薄くなる。
【0037】
続いて、ポリシリコン抵抗体12、14の形成領域にレジストパターン17を形成し(図3(d))、レジストパターン17部分を除く領域の保護酸化膜15及び熱酸化膜16をドライエッチングにて除去して、シリコン基板1表面を露出させた後(図4(a))、レジストパターン17を除去する(図4(b))。これによって、レジストパターン17に対応する部分にのみ、シリサイド化ブロック用酸化膜(保護酸化膜15+熱酸化膜16)が形成される。
【0038】
次に、金属膜の形成に先立ち、このサンプルを1:99に希釈したフッ化水素HF液により2分間洗浄した後、スパッタ法によって膜厚600〔Å〕のTi(チタン)膜18を堆積させる(図4(c))。
そして、670〔℃〕の温度条件下で、窒素N2ガス雰囲気中で1分間アニール処理を行い、シリサイド化を行う。これにより、図4(d)に示すように、MOSトランジスタのソース/ドレイン拡散層やゲート上部などのシリサイド化ブロック用酸化膜(保護酸化膜15+熱酸化膜16)が形成されていない部分19がシリサイド化される。
【0039】
次いで、容積比で、NH4OH:H22:H2O=1:1:5の過酸化水素を用いた混合液によって、室温下で35分間エッチングし、未反応のTi膜18を除去する。そして、820〔℃〕の条件下で、窒素N2雰囲気ガス中で1分間アニール処理を行い、低抵抗化を図る。
以上の工程によって、MOSトランジスタのソース/ドレイン拡散層やゲート上部などをシリサイド化させることができると共に、ポリシリコン抵抗体12、14にTiがスパッタリングされることはないため、安定した抵抗値を有するポリシリコン抵抗体12、14を得ることができる。
【0040】
このとき、CVD法で形成するシリサイド化ブロック用の保護酸化膜15の膜厚が、少なくとも320〔Å〕以上となるようにすることでブロック性能の強化を図っている。このため、ポリシリコン抵抗体12、14の導電タイプや抵抗値等によっても変化する熱酸化膜16の膜厚を気にすることなく、シート抵抗値60〔kΩ/□〕以下の多種ポリシリコン抵抗体を混載させ、それらを安定して製造することができる。
また、急速熱酸化処理条件の変更を必要としないため、既にFixされた他素子の特性変更を起こすことなく、シリサイド化ブロック用酸化膜のブロック性能の強化を図ることができる。
【0041】
このため、導電タイプの異なるポリシリコン抵抗体や、同じ導電タイプではあるが抵抗値の異なるポリシリコン抵抗体など、多種のポリシリコン抵抗体が混載され、各ポリシリコン抵抗体において、急速熱酸化処理においてポリシリコン抵抗体の酸化速度が異なるため各ポリシリコン抵抗体の上に形成される熱酸化膜の膜厚が異なる場合であっても、シリサイド化ブロック用酸化膜15及び熱酸化膜16の積層膜は、各ポリシリコン抵抗体のシリサイド化ブロック用酸化膜としての機能を充分発揮することができブロック性能を確保することができる。したがって、この後、シリサイド化を行った場合には、全てのポリシリコン抵抗体において、意図せずシリサイド化されることを確実に回避することができ、すなわち全てのポリシリコン抵抗体において、それぞれ所望の抵抗値を有するポリシリコン抵抗体を生成することができる。
【0042】
なお、上記実施の形態においては、多種のポリシリコン抵抗体を同時に作成する場合にシリサイド化ブロック用の保護酸化膜15の膜厚が350〔Å〕となるように保護酸化膜15を生成する場合について説明したが、保護酸化膜15の膜厚が350〔Å〕となるように保護酸化膜15を生成すれば、シート抵抗値60〔kΩ/□〕以下のポリシリコン抵抗体であれば、急速熱酸化処理における酸化速度に関わらず、保護酸化膜15と熱酸化膜16とによりシリサイド化ブロック用酸化膜としてのブロック性能を確保することができる。したがって、1種類のポリシリコン抵抗体のみが搭載される場合にも、この保護酸化膜15の成膜条件で生成することも可能であり、シート抵抗値60〔kΩ/□〕以下のポリシリコン抵抗体であれば、搭載するポリシリコン抵抗体が多種であるか否かに関わらず保護酸化膜15の成膜条件を共通とすることができる。
【0043】
また、上記実施の形態においては、急速熱酸化処理の条件を、酸素雰囲気中で、950〔℃〕の温度条件下で150秒間行うという条件で行う場合、また、シリサイド化を、670〔℃〕の温度条件下で、窒素N2ガス雰囲気中で1分間アニール処理を行う条件で行う場合、またその他処理についても所定条件で行う場合について説明したが、これ以外の条件で行うことも可能である。その場合、急速熱酸化処理の条件を変更したときにはポリシリコン抵抗体上に生成される熱酸化膜の膜厚が変化し、シリサイド化の条件を変更したときにはシリサイド化ブロック用酸化膜として必要とするブロック性能が変化する等というように、急速熱酸化処理の条件、さらに、P型ポリシリコン抵抗体とするために注入する“P+”イオンの種類やドーズ量、ポリシリコン抵抗体のシート抵抗値等によっても、急速熱酸化処理により生成される熱酸化膜の膜厚や、シリサイド化ブロック用酸化膜として必要とするブロック性能が変化するため、これらを考慮して保護酸化膜の膜厚を設定すればよい。
同様に、チタンを用いてシリサイド化を行う場合に限らず、金属としてコバルト(Co)やニッケル(Ni)等を用いてシリサイド化を図ることも可能であり、使用する金属の種類によって、シリサイド化ブロック用酸化膜として必要とするブロック性能が変化するため、これを考慮して保護酸化膜の膜厚を設定すればよい。
【符号の説明】
【0044】
1 シリコン基板
2 LOCOS領域
3 絶縁膜
3a ゲート酸化絶縁膜
4 ポリシリコン膜
4a ゲート電極
4b ポリシリコン抵抗体部
5 ゲートイオン注入用の保護酸化膜
6 ゲートイオン注入用のレジストパターン
7 ポリシリコン膜エッチング用のレジストパターン
8 ナイトライドスペーサ
9 N+、P+イオン注入用の保護酸化膜
11 NMOSトランジスタのソース/ドレイン不純物拡散層
12 N型ポリシリコン抵抗体
13 PMOSトランジスタのソース/ドレイン不純物拡散層
14 P型ポリシリコン抵抗体
15 シリサイド化ブロック用の保護酸化膜
16 熱酸化膜
17 シリサイド化ブロック用酸化膜エッチング用のレジストパターン
18 Ti膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多種のポリシリコン抵抗体を含む非シリサイド化領域に保護酸化膜を生成する工程と、
一定条件で急速熱酸化処理を行い、前記保護酸化膜と前記ポリシリコン抵抗体との界面に熱酸化膜を生成する工程と、
前記保護酸化膜と前記熱酸化膜との積層膜をシリサイド化ブロック用酸化膜としてシリサイド化を行う工程と、を含む半導体装置の製造方法であって、
前記保護酸化膜の膜厚を、前記急速熱酸化処理により前記各ポリシリコン抵抗体上に生成される熱酸化膜の最小値と前記保護酸化膜の膜厚との和が、前記シリサイド化ブロック用酸化膜としてのブロック性能を確保するために必要な膜厚以上となる値に設定したことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記多種のポリシリコン抵抗体は、少なくとも導電タイプ又はシート抵抗値が異なる複数のポリシリコンを含むことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
膜厚が350〔Å〕となるように、前記保護酸化膜を生成することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ポリシリコン抵抗体として、フッ化ホウ素イオン“BF2+”を“P+”イオンとして、ドーズ量9.0×E13〔個/cm2〕の条件下でイオン注入したP型ポリシリコン抵抗体を含み、且つ前記多種のポリシリコン抵抗体はそのシート抵抗値が60〔kΩ/□〕以下であって、
前記急速熱酸化処理を950〔℃〕の温度条件下で150秒間行い、
さらに、金属膜としてチタン膜を用い、670〔℃〕の温度条件下であり且つ窒素N2ガス雰囲気中で1分間のアニール処理をして前記シリサイド化を行うことを特徴とする請求項3記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−198841(P2011−198841A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61425(P2010−61425)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】