説明

半導体装置の製造方法

【課題】エッチング速度に基づいて所望のエッチング量が得られるエッチング終了時期の判別方法の提供。
【解決手段】SiC半導体基板10(基板)上に窒素化合物層12−26を形成する。そして、窒素化合物層16−26をエッチングする。ここで、窒素化合物層12−26は、等間隔に配置され、窒素同位体N15を含む複数のマーカー層16,20,24を有する。また、窒素化合物層16−26をエッチングする際に、エッチング雰囲気中の窒素同位体N15の含有量のピークを検出することでエッチング速度を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成原子として窒素を含む窒素化合物層をエッチングする半導体装置の製造方法に関し、特にエッチングを中断することなく所望のエッチング量を得ることができる半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料のエッチングにおいてエッチング終了時期を判別することは難しく、設計どおりの加工ができなかった。そこで、試料をエッチングする際に、途中でエッチングを中断してエッチング量を計測していた。このため、エッチング工程が複雑かつ長くなるという問題があった。
【0003】
これに対して、構成原子の同位体比率が異なるマーカー層を試料の所定の深さに設け、エッチング雰囲気中でマーカー層に対応する同位体の含有量のピークを検出したらエッチングを終了する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−182968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の方法では、エッチング途中では試料のエッチング量を検出できなかった。従って、所定の深さ以外の所望のエッチング量を得ることができなかった。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、エッチングを中断することなく所望のエッチング量を得ることができる半導体装置の製造方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板上に窒素化合物層を形成する工程と、前記窒素化合物層をエッチングする工程とを備え、前記窒素化合物層は、等間隔に配置され、窒素同位体N15を含む複数のマーカー層を有し、前記窒素化合物層をエッチングする際に、エッチング雰囲気中の窒素同位体N15の含有量のピークを検出することでエッチング速度を求め、前記エッチング速度に基づいて所望のエッチング量が得られるエッチング終了時期を判別することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、エッチングを中断することなく所望のエッチング量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図2】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図3】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図4】ドライエッチングの様子を示す図である。
【図5】実施の形態1においてエッチング雰囲気中の窒素同位体N15の含有量を測定した図である。
【図6】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図7】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図8】実施の形態2においてエッチング雰囲気中の窒素同位体N15の含有量を測定した図である。
【図9】実施の形態3に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図10】実施の形態3においてエッチング雰囲気中の窒素同位体N15の含有量を測定した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。同様の構成要素には同じ番号を付し、説明を省略する。
【0011】
実施の形態1.
まず、図1に示すように、SiC半導体基板10(基板)上に、GaNバッファ層12、GaN活性層14、GaN層16,18,20,22,24及びGaNコンタクト層26(窒素化合物層)をエピタキシャル成長により順次形成する。ここで、GaN層16,20,24は、等間隔に配置され、窒素の一部に窒素同位体N15を含むマーカー層である。その他のGaN層は窒素同位体N15を含まない。
【0012】
次に、図2に示すように、GaNコンタクト層26上に、フォトリソグラフィー等によりパターニングしたフォトレジスト28を形成する。そして、図3に示すように、フォトレジスト28をマスクとしてGaN層16,18,20,22,24及びGaNコンタクト層26をドライエッチングして溝部30を形成する。
【0013】
図4は、ドライエッチングの様子を示す図である。真空チャンバー32内に被加工用の半導体ウェハ34を置く。この半導体ウェハ34をClプラズマ36によりエッチングする。GaN層16,20,24がエッチングされる際に窒素同位体N15が放出される。そこで、真空チャンバー32に接続された質量分析器38により、エッチング雰囲気中の窒素同位体N15の含有量を検出する。
【0014】
図5は、実施の形態1においてエッチング雰囲気中の窒素同位体N15の含有量を測定した図である。横軸はエッチング時間である。窒素同位体N15の含有量のピーク40,42,44はそれぞれGaN層24,20,16に対応する。このピークを検出することでエッチング速度を求める。そして、エッチング速度に基づいて所望のエッチング量が得られるエッチング終了時期を判別する。
【0015】
次に、図6に示すように、フォトレジスト28を除去する。そして、溝部30内のGaN活性層14上にゲート金属電極46を形成し、GaNコンタクト層26上にソース金属電極48及びドレイン金属電極50を形成する。以上の工程により本実施の形態に係る半導体装置が製造される。
【0016】
以上説明したように、本実施の形態では、窒素化合物層をエッチングする際に、エッチング雰囲気中の窒素同位体N15の含有量のピークを検出する。これにより、エッチングを中断することなく、エッチング速度を正確に求めることができる。このエッチング速度に基づいて所望のエッチング量が得られるエッチング終了時期を正確に判別することができる。
【0017】
よって、本実施の形態では、エッチングを中断することなく所望のエッチング量を得ることができる。また、窒素同位体N15をマーカーとして利用しても、半導体装置の機能には影響を与えない。
【0018】
実施の形態2.
本実施の形態では、図7に示すように、実施の形態1のGaN層16,18,20,22,24の代わりにGaN層52,54,56,58,60,62,64を順次形成する。そして、実施の形態1と同様にフォトレジスト28をマスクとしたドライエッチングにより溝部30を形成する。
【0019】
ここで、GaN層52,60,64は、等間隔に配置され、窒素の一部に窒素同位体N15を含むマーカー層である。このうち、GaN層52(第1マーカー層)は、溝部30の深さである所望のエッチング量に対応する位置に設けられている。そして、このGaN層52の1つ上の位置にGaN層60(第2マーカー層)が設けられている。また、本実施の形態では、GaN層52とGaN層60の間に、窒素の一部に窒素同位体N15を含むGaN層56(第3マーカー層)が設けられている。その他のGaN層は窒素同位体N15を含まない。
【0020】
図8は、実施の形態2においてエッチング雰囲気中の窒素同位体N15の含有量を測定した図である。横軸はエッチング時間である。窒素同位体N15の含有量のピーク66,68,70,72はそれぞれGaN層64,60,56,52に対応する。実施の形態1と同様に、このピークを検出することでエッチング速度を求める。そして、エッチング速度に基づいて所望のエッチング量が得られるエッチング終了時期を判別する。これにより実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0021】
さらに、本実施の形態では、窒素化合物層をエッチングする際に、ピーク66,68,72とは周期が異なるピーク70を検出する。そして、このピーク70の次のピーク72を検出するとエッチングを終了する。これにより、例えば一番上のマーカー層であるGaN層64が他の加工時に消失した場合でも、エッチング終了時期を正確に判別することができる。
【0022】
実施の形態3.
本実施の形態では、図9に示すように、実施の形態1のGaN層16,18,20,22,24の代わりにGaN層74,76,78,80,82を順次形成する。そして、実施の形態1と同様にフォトレジスト28をマスクとしたドライエッチングにより溝部30を形成する。
【0023】
ここで、GaN層74,78,82は、等間隔に配置され、窒素の一部に窒素同位体N15を含むマーカー層である。このうち、GaN層74(第1マーカー層)は、溝部30の深さである所望のエッチング量に対応する位置に設けられている。そして、このGaN層74の1つ上の位置にGaN層78(第2マーカー層)が設けられている。
【0024】
また、本実施の形態では、GaN層74とGaN層78の間に、窒素の一部に窒素同位体N15を含むGaN層76(第3マーカー層)が設けられている。このGaN層76の窒素同位体N15の含有量は、GaN層74,78,82の窒素同位体N15の含有量の半分である。その他のGaN層は窒素同位体N15を含まない。
【0025】
図10は、実施の形態3においてエッチング雰囲気中の窒素同位体N15の含有量を測定した図である。横軸はエッチング時間である。窒素同位体N15の含有量のピーク84,86,88,90はそれぞれGaN層82,78,76,74に対応する。実施の形態1と同様に、このピークを検出することでエッチング速度を求める。そして、エッチング速度に基づいて所望のエッチング量が得られるエッチング終了時期を判別する。これにより実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0026】
さらに、本実施の形態では、窒素化合物層をエッチングする際に、ピーク84,86,90とは周期及びピーク強度が異なるピーク88を検出する。そして、このピーク88の次のピーク90を検出するとエッチングを終了する。これにより、例えば一番上のマーカー層であるGaN層82が他の加工時に消失した場合でも、エッチング終了時期を正確に判別することができる。さらに、ピーク88は、ピーク84,86,90とはピーク強度も異なるので、実施の形態2のピーク70よりも判別が容易である。
【0027】
なお、上記の実施の形態ではSiC基板上にGaN層を形成したFETについて説明した。これに限らず、サファイア基板、GaN基板などを用いてもよい。また、GaN層の代わりにAlGaN層を用いてもよい。また、窒素化合物層としてGaNなどの半導体層の代わりにSiNなどの絶縁膜層を用いてもよい。さらに、FETに限らずGaNを用いた半導体レーザーにも本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0028】
10 SiC半導体基板(基板)
12 GaNバッファ層(窒素化合物層)
14 GaN活性層(窒素化合物層)
16,20,24,64,82 GaN層(窒素化合物層、マーカー層)
18,22,54,58,62,80 GaN層(窒素化合物層)
26 GaNコンタクト層(窒素化合物層)
52,74 GaN層(窒素化合物層、第1マーカー層)
60,78 GaN層(窒素化合物層、第2マーカー層)
56,76 GaN層(窒素化合物層、第3マーカー層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に窒素化合物層を形成する工程と、
前記窒素化合物層をエッチングする工程とを備え、
前記窒素化合物層は、等間隔に配置され、窒素同位体N15を含む複数のマーカー層を有し、
前記窒素化合物層をエッチングする際に、エッチング雰囲気中の窒素同位体N15の含有量のピークを検出することでエッチング速度を求め、前記エッチング速度に基づいて所望のエッチング量が得られるエッチング終了時期を判別することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記複数のマーカー層は、前記所望のエッチング量に対応する位置の第1マーカー層と、前記第1マーカー層の1つ上に位置する第2マーカー層とを有し、
前記窒素化合物層は、前記第1マーカー層と前記第2マーカー層の間に、窒素同位体N15を含む第3マーカー層を更に有し、
前記窒素化合物層をエッチングする際に、前記第3マーカー層に対応する窒素同位体N15の含有量のピークを検出し、その次のピークを検出するとエッチングを終了することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第3マーカー層の窒素同位体N15の含有量は、前記複数のマーカー層の窒素同位体N15の含有量とは異なることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−40469(P2011−40469A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184516(P2009−184516)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】