説明

半導体装置の製造方法

【課題】半導体装置の製造歩留りを向上させる。
【解決手段】ウエハ(半導体ウエハ)WHの主面1a側に、周縁領域1dからデバイス領域1cを経由して前記周縁領域に至る走査軌道15に沿ってレーザ光LZを照射し、ウエハWHの主面1a側を加熱するレーザアニール処理工程を以下のように行う。ウエハWHの周縁領域1dには、第1出力PW1でレーザ光LZを照射し、ウエハWHのデバイス領域1cには、第1出力PW1よりも高い第2出力PW2でレーザ光LZを照射する。そして、半導体基板1の線膨張係数をα1、絶縁膜の残存膜2の線膨張係数をα2、レーザ光LZが照射された時の半導体基板1の温度をT1、レーザ光LZが照射された時の残存膜2の温度をT2とした時、α1×T1≧α2×T2とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造技術に関し、特に半導体基板にレーザ光を照射して、アニール処理を施す工程に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上に不純物拡散領域を形成する技術として、半導体領域に不純物イオンを注入した後、加熱処理(アニール処理)を施して不純物イオンを活性化させる技術がある(例えば、特開2007−221157号公報(特許文献1)を参照)。
【0003】
また、加熱源として走査レーザ放射線を用いてアニール処理を行うレーザアニール処理技術がある(例えば、特開2005−244191号公報(特許文献2)を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−221157号公報
【特許文献2】特開2005−244191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体装置の製造工程では、半導体ウエハ(半導体基板、以下、単にウエハと記載する)の主面に複数の不純物拡散領域(不純物イオンが拡散された半導体領域)を形成し、ダイオードやトランジスタなどの半導体素子を形成する。この不純物拡散領域を形成する工程では、例えばイオン注入工程でウエハの主面の半導体領域に不純物イオンを注入した後、アニール工程で熱処理を施す。このアニール工程で熱処理を施すと、注入された不純物イオンが活性化され、また、イオン注入時の半導体領域の結晶の損傷を回復させることができる。
【0006】
加熱源としてレーザ光を用いたアニール処理であるレーザアニール処理では、ウエハの周縁領域からデバイス領域を経由して周縁領域に至る走査軌道に沿ってレーザ光を照射し、被照射領域を加熱する。このレーザアニール処理では、不純物イオンを注入した半導体領域を短時間で高温に加熱することができるので、加熱時間を短縮することができる。半導体領域の加熱時間を短縮すると、熱処理に伴う不純物イオンの拡散を防止ないしは抑制することができる。したがって、レーザアニール処理は半導体領域の加熱時間を短縮し、半導体素子を微細化することができる点で有利である。
【0007】
ところが、レーザアニール処理では、レーザ光を照射したウエハが破断してしまうという課題が発生する。本願発明者は、このレーザアニール処理時のウエハの破断について検討し、ウエハの破断はウエハの周縁領域を起点として発生し、レーザ光の走査軌道に沿ってデバイス領域内まで進展することを見出した。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体装置の製造歩留りを向上させる技術を提供することにある。また、その他の目的としては、レーザアニール処理時のウエハの破断を防止ないしは抑制する技術を提供することにある。
【0009】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0011】
すなわち、本願発明の一態様である半導体装置の製造方法は、(a)デバイス領域、および平面視前記デバイス領域の周囲を囲むように配置される周縁領域を備えた主面、を有する半導体ウエハを準備する工程を含んでいる。また、(b)前記半導体ウエハの前記主面側に、前記周縁領域から前記デバイス領域を経由して前記周縁領域に至る走査軌道に沿ってレーザ光を照射し、前記半導体ウエハの前記主面側を加熱する工程を含んでいる。また、前記(a)工程には、(a1)前記半導体ウエハが備える半導体基板の前記主面上に絶縁膜を形成する工程と、(a2)前記デバイス領域の前記主面上の絶縁膜を除去する工程と、が含まれる。前記(a2)工程後の前記周縁領域の前記主面上には、前記絶縁膜の一部である残存膜が残っている。ここで、前記レーザ光が照射された時の前記周縁領域の前記半導体基板の温度は、800℃よりも大きい。また、前記半導体ウエハを構成する前記半導体基板の線膨張係数をα1、前記絶縁膜の残存膜の線膨張係数をα2、前記レーザ光が照射された時の前記周縁領域の前記半導体基板の温度をT1、前記レーザ光が照射された時の前記周縁領域の前記絶縁膜の残存膜の温度をT2とすると、α1×T1≧α2×T2とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0013】
すなわち、本願発明の一態様によれば、製造歩留りの向上が図れる。また、レーザアニール処理時のウエハの破断を防止ないしは抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造方法におけるレーザアニール処理工程において、レーザ光を照射するウエハの全体構造を示す平面図である。
【図2】図1のA部の拡大平面図である。
【図3】図1に示すウエハの周縁領域の断面形状の概要を示す拡大断面図である。
【図4】図3に対する変形例を示す拡大断面図である。
【図5】図1に示すウエハにレーザを照射するレーザ照射装置の概要構成を模式的に示す説明図である。
【図6】図1に示すウエハ上におけるレーザ光の走査軌道を示す平面図である。
【図7】図6に示すウエハにレーザ光を照射する工程を模式的に示す説明図である。
【図8】図7に示すウエハの周縁領域にレーザ光を照射した時のレーザ光の出力、被照射領域に発生する応力、およびウエハの温度の関係を示す説明図である。
【図9】図8に示す相関関係をグラフ化して示す説明図である。
【図10】図8に示すレーザ光の出力と半導体基板の温度の関係の詳細を示す説明図である。
【図11】図10に示すレーザ光の出力と半導体温度の関係をグラフ化して示す説明図である。
【図12】図6に示す半導体ウエハの(110)面の平面視における延在方向を模式的に示す説明図である。
【図13】図2に示す拡大平面において、図6に示すレーザ光の走査軌道および図12に示す(110)面の平面視における延在方向を模式的に示す説明図である。
【図14】図6に示すウエハにおける歪み部の位置と走査軌道の方向の関係を示す説明図である。
【図15】半導体基板準備工程で準備する半導体基板の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図16】図15に示す半導体基板の主面に素子分離領域を形成した状態を示す拡大断面図である。
【図17】図16に示す半導体基板の主面にウェル領域を形成した状態を示す拡大断面図である。
【図18】図17に示す半導体基板の主面に半導体素子を形成した状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(本願における記載形式の説明)
本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクション等に分けて記載するが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、記載の前後を問わず、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しの説明を省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。また、実施の形態の各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するため、あるいは領域の境界を明示するために、ハッチングやドットパターンを付すことがある。
【0016】
<レーザアニール処理工程>
まず、本実施の形態の半導体装置の製造方法におけるレーザアニール処理工程の概要について説明する。図1は、本実施の形態のレーザアニール処理工程において、レーザ光を照射するウエハの全体構造を示す平面図、図2は、図1のA部の拡大平面図である。また、図3は図1に示すウエハの周縁領域の断面形状の概要を示す拡大断面図、図4は、図3に対する変形例を示す拡大断面図である。また、図5は、図1に示すウエハにレーザを照射するレーザ照射装置の概要構成を模式的に示す説明図、図6は、図1に示すウエハ上におけるレーザ光の走査軌道を示す平面図である。なお、本セクションでは、レーザアニール処理工程の一例として、半導体ウエハのデバイス領域のソース用またはドレイン用の半導体領域(不純物拡散領域)に対してレーザアニール処理を施す工程を取り上げて説明する。
【0017】
レーザアニール処理工程では、まず、図1に示すようなウエハ(半導体ウエハ)WHを準備する。図1に示すようにウエハWHは、平面視において略円形を成す主面(半導体集積回路形成面)1a、および主面1aの反対側に位置する裏面1b(図3参照)を有している。ウエハWHの基材となる半導体基板1(図3、図4参照)は、例えば、p型のシリコン(Si)単結晶からなり、図3および図4に示すように主面1aおよび裏面1bを有している。主面1aの直径は、200mm〜300mm程度であって本実施の形態では、例えば300mmである。また、ウエハWHの主面1aは、デバイス領域(チップ領域)1cおよび、平面視においてデバイス領域1cの周囲を囲むように配置される周縁領域1d(図1および図2においてハッチングを付して示す領域)を備えている。詳しくは、図2に示すように、主面1aは、平面形状が例えば四角形からなる複数のデバイス領域1c、およびデバイス領域1cの間に配置されるスクライブ領域1eを備える。この複数のデバイス領域1cのそれぞれが、半導体チップ(半導体装置)に相当し、ウエハ状態での製造工程が完了した後、個片化工程において、スクライブ領域1eに沿って各デバイス領域1cを分割することにより、複数の半導体チップ(半導体装置)が得られる。一方、周縁領域1dは、前記した個片化工程でデバイス領域1cと分離される外枠領域であり、半導体装置としては製品化されない領域である。
【0018】
ウエハWHの周縁領域1dは、図3に示すように、主面1a側および裏面1b側のそれぞれに、デバイス領域1cにおける主面1a、裏面1bに対して傾斜する傾斜面を有している。周縁領域1dの幅は、例えば2mm〜3mm程度であるが、この周縁領域1dのうち、主面1aのエッジ部(端部)側の一部が傾斜面となっている。ウエハWHは、前記したように、例えばシリコン(Si)単結晶などの半導体材料から成る半導体基板1を備えるが、シリコン(Si)は、脆性材料であるため、製造工程中にウエハWH1に衝撃が印加されると、ウエハWHのエッジ部(周縁領域1dの最外周の端部)が破壊され易い。そこで、ウエハWHの周縁領域1dのエッジ部(最外周側)に傾斜面を設けることで、ウエハWHの破壊を防止ないしは抑制することができる。言い換えれば、ウエハWHの周縁領域1dのエッジ部(最外周側)に面取り加工を施すことで、ウエハWHの破壊を防止ないしは抑制することができる。なお、図3では、面取り加工部の形状の一例として、主面1a側および裏面1b側のそれぞれにテーパ状の傾斜面を形成したテーパ型のウエハWH1を示しているが面取り加工部(傾斜面)の形状はテーパ型に限定されない。例えば、図4に変形例として示すウエハWH2のように、曲面状の傾斜面を形成したラウンド型の形状とすることができる。
【0019】
レーザアニール処理工程では、図5に示すようにレーザ照射装置10を用いて、ウエハWHの主面1a側にレーザ光LZを照射し、ウエハWHの主面1a側を加熱(アニール)する。レーザ照射装置10は、ウエハWHを支持する支持部(ステージ)11、レーザ光LZの発生源である光源12、光源12で発生したレーザ光LZに処理を施し、ウエハWHの主面1aに照射する光学系部13、およびレーザ光LZの照射位置や加熱温度を制御する制御部14を備えている。光学系部13には、ミラー13aや減衰器13bなどが含まれる。また制御部14には、例えば、ウエハWHのレーザ光LZが照射された被照射領域の温度を測定する温度計14aや、測定データに基いて光源12などを制御する制御回路部14bが含まれる。また、図示は省略したが、制御部14には、ウエハWHの位置を測定し、制御回路部14bにウエハ位置の測定データを伝送する位置センサが含まれる。また、支持部11には、ウエハWHを例えば吸着保持する保持部11a、および保持されたウエハWHを、レーザ光LZを走査する走査軌道に沿って移動させる可動部(移動ステージ)11bが含まれる。
【0020】
加熱源であるレーザ光LZとしては、種々の変形例を適用することができるが、本実施の形態では、例えば、レーザ光LZを増幅する媒質として炭酸ガス(COガス)を用いて、約10μm程度の波長の赤外光を発生させる、所謂炭酸ガスレーザを用いている。また、レーザ光LZは、例えば、断続的に発生するパルスレーザよりも高いコヒーレンスが得られるCWレーザ(Continuous wave laser)である。
【0021】
また、レーザ光LZの照射位置を走査させる方式としては、レーザ光LZの光軸を走査する方式、ウエハWHを移動させる方式、およびこれらを組み合わせた方式がある。本実施の形態では、高速、かつ正確にレーザ光LZを走査させる観点から、レーザ光LZの光軸を固定し、ウエハを固定した支持部11を移動させることにより走査させる方式を用いている。可動部11bは、例えば160mm/秒の速度で図5に矢印を付して示すように平面方向に移動する。これにより、走査時の光軸のずれを防止できるので、ウエハWHの主面1aに対するレーザ光LZの入射角度を一定に維持することができる。例えば本実施の形態では、主面の法線方向と、レーザ光LZの光軸の成す角度が76°となるように照射される。これにより、シリコンに対するレーザ光LZの吸収効率が向上するため、被照射領域を極めて短時間で設定温度(アニール温度)まで昇温させることができる。
【0022】
また、本実施の形態では、温度計14aにより被照射領域の温度を測定する。このため、この測定データを温度計14aから制御回路部14bに伝送し、制御回路部14bから制御信号を、例えば光源12などに伝送することで、ウエハWHの被照射領域の温度をフィードバック制御することができる。
【0023】
また、レーザアニール処理工程では、レーザ光LZが照射された領域周辺が局所的に加熱されるので、図1に示すデバイス領域1cの全域に亘ってアニール処理を施すには、レーザ光LZを走査させる必要がある。このため、図6に示すように、周縁領域1dからデバイス領域1cを経由して反対側の周縁領域1dに至る走査軌道(第1の走査軌道)15に沿って照射する。本実施の形態では、走査軌道15は、平面視において放物線形状(あるいは円弧形状)を成す。また、図6に示すように、周縁領域1dの一端部からウエハWHの中心を介して一端部の反対側に位置する他端部に向かう走査軌道(第2の走査軌道)16に沿って走査軌道15を移動させて、照射する。言い換えれば、周縁領域1dの一端部からウエハWHの中心を介して一端部の反対側に位置する他端部に向かう走査軌道(第2の走査軌道)16に沿って複数の走査軌道15が設けられ、この複数の走査軌道15に沿ってレーザ光LZ(図5参照)を照射する。これにより、図1に示すデバイス領域1cの全域に亘ってレーザ光LZ(図5参照)を照射することができる。このため、デバイス領域1c内は所定のアニール温度まで加熱され、アニール処理が施される。
【0024】
ところが、前記したように、レーザアニール処理では、レーザ光LZを照射したウエハが破断してしまうという課題が発生する。本願発明者による検討の結果、レーザアニール処理時のウエハの破断はウエハの周縁領域を起点として発生し、レーザ光LZの走査軌道に沿ってデバイス領域内まで進展することが判った。以下、本願発明者が検討したウエハWHの破断の発生要因およびその解決手段について詳細に説明する。図7は、図6に示すウエハにレーザ光を照射する工程を模式的に示す説明図である。
【0025】
<1.熱応力による破断>
ウエハWHの破断の発生要因として、まず、レーザアニール処理時に半導体基板1に発生する応力がある。ウエハWHにレーザ光LZを照射すると、被照射領域ではウエハWHの構成材料が熱膨張する。また、レーザ光LZの照射が終わるとウエハWHは冷却され、ウエハWHの構成材料が熱収縮する。半導体装置の製造工程では、酸化膜(例えばシリコン酸化膜)や窒化膜(例えばシリコン窒化膜)などの絶縁膜を形成する工程、およびこれらの絶縁膜を除去する工程を繰り返し行う。また、ウエハWHの周縁領域1dまで完全に絶縁膜を除去することが困難であるため、例えば図3および図4に示すようにウエハWHの周縁領域1dには、除去しきれなかった絶縁膜の一部が半導体基板1上に残存膜2として残っている。特に、周縁領域1dのエッジ部では、デバイス領域1cの主面1aに対して傾斜する傾斜面となっているため、残存膜2が残り易い。この絶縁膜の残存膜2(例えばシリコン酸化膜やシリコン窒化膜)と、ウエハWHを構成する半導体材料(例えば、半導体基板1を構成するシリコン)は、レーザ光LZの吸収効率が異なるため、照射するレーザ光LZのエネルギーが等しい場合でも、温度が異なる。また、残存膜2と半導体基板1は、線膨張係数が異なるため、例え同じ温度であっても、熱膨張量、あるいは熱収縮量が異なる。このため、残存膜2が残った周縁領域1dにレーザ光LZを照射すると、被照射領域には、構成材料のレーザ光吸収効率および線膨張係数の相違に起因する応力(熱応力)が発生する。
【0026】
この応力をσ、半導体基板1の線膨張係数をα1、残存膜2の線膨張係数をα2、レーザ光LZが照射された時の周縁領域1dの半導体基板1の温度をT1、レーザ光LZが照射された時の周縁領域1dの残存膜2の温度をT2とすると、応力σは次式で定義することができる。
【0027】
σ=E(α1×T1−α2×T2) (式1)
(式1)のEはウエハWHを構成する半導体基板1のヤング率であって、例えば単結晶シリコンの場合、1.7×1011[Pa]である。また、α1は、例えば単結晶シリコンの場合は4.0×10−6[1/K]、α2は、例えば窒化シリコンの場合は3.5×10−6[1/K]である。また、T1およびT2は絶対温度[K]である。
【0028】
上記(式1)において、σが正の値となる時には半導体基板1に対して圧縮応力が生じ、σが負の値となる時には半導体基板1に対して引張応力が生じる。ここで、応力によりウエハWHが破断するのは、半導体基板1に対して引張応力が生じた時、すなわち、σが負になった時である。したがって、(式1)において、0≦E(α1×T1−α2×T2)となれば、応力によるウエハWHの破断を防止ないしは抑制することができる。ここで、仮にデバイス領域1c内で引張応力が発生したとしても、応力は周囲に分散するので、例えば5×10[Pa]以上の非常に大きな引張応力が発生しない限りはウエハWHの破断は発生し難い。一方、周縁領域1dでは、応力が開放端となるエッジ部(周縁領域1dの最外周)に集中するため、引張応力が発生すると、エッジ部において破断が発生し易い。このため、ウエハWHの破断はウエハWHの周縁領域1dを起点として発生する。そして、周縁領域1dに破断が発生すると、破断個所が応力の開放端となるので、レーザ光LZの走査方向に沿って破断が進展することとなる。したがって、(式1)より、周縁領域1dにレーザ光LZを照射する時にα1×T1≧α2×T2となっていれば、引張応力が発生し難いので、応力によるウエハWHの破断(破断の起点)の発生を防止ないしは抑制することができる。また、周縁領域1dにおいて破断の発生を防止すれば、破断進展の起点が発生しないので、結果としてデバイス領域1cに破断が進展することを防止ないしは抑制することができる。
【0029】
また、(式1)において、ヤング率Eおよび線膨張係数α1、α2は、材料に依存する係数なので、α1×T1≧α2×T2とするためには、絶対温度T1、T2を調整することとなる。絶対温度T1、T2は、ウエハWHを構成する半導体基板1および残存膜2のそれぞれが吸収するレーザ光LZのエネルギーにより変化する。デバイス領域1cでは、半導体基板1の温度を、アニール温度(アニール処理を行うために必要な温度であって、例えば、約1200°程度)とするために必要な量のエネルギー(例えば、2100W程度)を半導体基板1に吸収させる。しかし、周縁領域1dにおける吸収エネルギーがデバイス領域1cにおける吸収エネルギーと同じになると、上記したα1×T1≧α2×T2の関係を満たさなくなる。したがって、α1×T1≧α2×T2の関係を満たすため、周縁領域1dにおける吸収エネルギーがデバイス領域1cにおける吸収エネルギーよりも小さくなるように調整する必要がある。
【0030】
周縁領域1dにおける吸収エネルギーがデバイス領域1cにおける吸収エネルギーよりも小さくなるように調整する方法として、レーザ光LZの照射時間を調整する方法、レーザ光LZの出力を調整する方法、およびこれらを組み合わせる方法が考えられる。レーザアニール処理工程では、各領域に対するレーザ光LZの照射時間は、例えば1ミリ秒以下と非常に短いため、温度制御の精度向上の観点から、本実施の形態では、レーザ光LZの出力を調整する方法を用いている。具体的には、本実施の形態のレーザアニール処理工程には、ウエハWHの周縁領域1dに第1出力PW1でレーザ光LZを照射する工程と、ウエハWHのデバイス領域1cに、第1出力PW1よりも高い第2出力PW2でレーザ光LZを照射する工程と、が含まれる。言い換えれば、周縁領域1dには、デバイス領域1cをアニール温度まで昇温させるのに必要な出力(第2出力PW2)よりも小さい出力(第1出力PW1)のレーザ光LZを照射している。また、本実施の形態では、図6に示すように、周縁領域1dからデバイス領域1cを経由して周縁領域1dに至る走査軌道(第1の走査軌道)15に沿ってレーザ光LZ(図7参照)を照射する。このため、図7に示すように周縁領域1dからデバイス領域1cに被照射領域が移る際に、レーザ光LZの出力を上昇させる。また、デバイス領域1cから周縁領域1dに被照射領域が移る際に、レーザ光LZの出力を低下させる。レーザ光LZの出力を小さくすると、レーザ光LZを吸収することによる周縁領域1dの温度は、デバイス領域1cの温度(アニール温度)よりも低くなる。また、これに伴い、周縁領域1dにおける半導体基板1の温度T1と残存膜2の温度T2の温度差は小さくなる。つまり、周縁領域1dにおけるレーザ光LZの出力をデバイス領域1cにおけるレーザ光LZの出力よりも小さくすることにより、絶対温度T1、T2を調整し、α1×T1≧α2×T2とすることができる。
【0031】
以下、レーザ光LZの出力と応力σの関係について、図8および図9を用いて説明する。図8は、図7に示すウエハの周縁領域にレーザ光LZを照射した時のレーザ光LZの出力、被照射領域に発生する応力、およびウエハの温度の関係を示す説明図、図9は、図8に示す相関関係をグラフ化して示す説明図である。なお、図8および図9に示すデータは、本願発明者が以下の条件でシミュレーションを行った結果を示している。すなわち、レーザ出力は、シリコンからなるウエハWH(図7参照)のデバイス領域1c(図7参照)の温度をアニール温度まで昇温させるために必要な出力(図7に示す第2出力PW2)を100%とし、この第2出力PW2に対する比率を%表示で示している。また、アニール温度は1190[℃](1463[K])とした。シリコンからなる半導体基板1をアニール温度である1190℃まで昇温させるための出力(第2出力PW2)は、2100[W]である。また、ウエハWHの半導体基板1の放射率(吸収効率)は0.65、窒化シリコンからなる残存膜2の放射率(吸収効率)は0.85とした。また、応力σは、前記した(式1)より算出した値である。また、図8では、ウエハWHの半導体基板1の温度T1および残存膜2の温度T2は、絶対温度[K]の他、参考として[℃]を括弧書きで示したが、応力σを算出する際には、絶対温度[K]を用いて算出している。
【0032】
図9に示すように、レーザ光LZ(図7参照)の出力PWと被照射領域に発生する応力σは、一対一の対応関係(比例関係)となることが判る。詳しくは、出力PWが約73%の時に応力σは0[Pa]となり、出力PWがこれより高い場合には応力σは負の値となり、反対に出力PWがこれより低い場合には応力σは正の値となる。したがって、出力PWを73%よりも小さくすれば、ウエハWH(図7参照)の破断の原因となる引張応力の発生を防止ないしは抑制することができる。この時、図8に示すように、ウエハWH(図7参照)の半導体基板1(図7参照)の温度T1および残存膜2(図7参照)の温度T2は、アニール温度よりも低くなる。したがって、残存膜2の温度がアニール温度よりも低くなる程度まで出力を低下させれば、引張応力の発生を防止ないしは抑制することができる。なお、図8および図9に示す結果は、前記した条件によりシミュレーションを行った一例であって、厳密には、例えば、アニール温度や残存膜2の材料等により応力σが0[Pa]となるレーザ出力が変化する。したがって、条件が変化すれば、例えば出力PWを73%としても、ウエハWHの破断が発生する場合がある。しかし、一般に、レーザアニール処理の場合、アニール温度は例えば1150℃〜1300℃程度の狭い温度範囲で設定される。また、ウエハWHを構成する半導体基板1や、残存膜2の材料を変えてもレーザ光LZの出力PWと被照射領域に発生する応力σは一対一の対応関係(比例関係)となり、出力PWが約70%〜約75%の範囲で応力σは0[pa]となる。本願発明者が検討した結果によれば、上記条件の変化による誤差を考慮しても、出力PWが70%以下、もしくは安全率を考慮して65%以下とすれば、ウエハWHの破断の発生は実効上十分に抑制することができる。つまり、出力PWを特に好ましくは65%以下とすることにより、前記したα1×T1≧α2×T2の関係を確実に満足させることができるのでウエハWHの破断の発生を防止ないしは抑制することができる。
【0033】
<2.半導体基板の歪みによる破断>
上記の通り、図7に示す周縁領域1dに照射するレーザ光LZの出力を低くすることによりウエハWHの破断の発生要因である引張応力の発生を防止ないしは抑制することができる。ところが、本願発明者がさらに検討した結果、周縁領域1dに照射するレーザ光LZの出力を低くしすぎると、ウエハWHの破断が却って発生し易くなることが判った。ウエハWHを構成する半導体基板1は、前記した通り例えばシリコン単結晶(不純物イオンが注入されている場合を含む)から成るが、このシリコン単結晶は脆性材料なので、力が加わることにより破壊されやすい。また、ウエハWHの周縁領域1dには、微細な傷等の歪みが存在する。この歪みは、例えば、ウエハWHの周縁領域1dのエッジ部(最外周側)に面取り加工を施す際(傾斜面を形成する際)に発生する。また例えば、半導体装置の製造工程において、ウエハWHは各種処理装置間を搬送され、搬送時にはロボットなどの搬送装置の保持部をウエハWHの周縁領域1dに当接させて保持する。このため、搬送装置の保持部と当接したウエハWHの周縁領域1dの一部に歪みが発生し易い。また例えば、ウエハWHの主面上に絶縁膜を形成する工程、あるいはこれを取り除く工程において、ウエハWHの周縁領域1dに歪みが発生する場合もある。ウエハWH全体を加熱する方式でアニール処理を行う場合、これらの歪みが発生した箇所もアニール温度まで加熱され、結晶中に転位などの格子欠陥が形成されることにより開放される。つまり、加熱されたウエハWHが微視的に塑性変形することで、破断することを防止できる。ところが、微視的な塑性変形を生じさせる格子欠陥が形成されるためには、750℃〜800℃以上までウエハWH(詳しくはウエハWHを構成する半導体基板1)を加熱する必要があり、800℃未満では塑性変形する前に半導体基板1がせん断される、所謂、脆性破壊が発生する。このため、ウエハWHの周縁領域1dを照射された時の半導体基板1の温度が、800℃未満である場合には、歪みを開放する格子欠陥が形成され難く、この結果、歪みに起因して半導体基板1に脆性破壊、すなわち、ウエハWHの破断が発生し易い。したがって、この歪みに起因するウエハWHの破断の発生を防止ないしは抑制する観点から、レーザ光LZが照射された時の周縁領域1dの半導体基板1の温度(図8に示す温度T1)は、800℃以上、より好ましくは、800℃よりも大きくする必要がある。
【0034】
温度T1を調整する方法として、前記したように、レーザ光LZの照射時間を調整する方法、レーザ光LZの出力を調整する方法、およびこれらを組み合わせる方法が考えられるが本実施の形態では、温度制御の精度向上の観点から、レーザ光LZの出力を調整する方法を用いている。図10は、図8に示すレーザ光の出力と半導体基板1の温度の関係の詳細を示す説明図、図11は、図10に示すレーザ光の出力と半導体温度の関係をグラフ化して示す説明図である。なお、図10および、図11に示すデータは、前記した図8および図9に示すデータと同じ条件でシミュレーションを行った結果を示している。
【0035】
図10および図11に示すように、レーザ光LZ(図7参照)の出力PWと被照射領域の半導体基板1の温度T1は、一対一の対応関係(比例関係)となることが判る。詳しくは、出力PWが50%以下の時には、温度T1は795.3℃以下、出力PWが55%以上の時には834.9℃以上となっている。したがって、図7に示す周縁領域1dに照射するレーザ光LZの出力(第1出力)を、アニール温度まで昇温させるために必要な出力(第2出力)に対して50%よりも大きくすれば、レーザ光LZが照射された時の周縁領域1dの半導体基板1の温度T1を、800℃以上とすることができる。また、第1出力を第2出力に対して55%以上にすれば、レーザ光LZが照射された時の周縁領域1dの半導体基板1の温度T1を、確実に800℃よりも大きくすることができる。言い換えれば、周縁領域1dに照射するレーザ光LZの出力(第1出力)を、アニール温度まで昇温させるために必要な出力(第2出力)に対して50%よりも大きくすれば、半導体基板1の歪みに起因するウエハWHの破断の発生を抑制することができる。また、第1出力を第2出力に対して55%以上にすれば半導体基板1の歪みに起因するウエハWHの破断の発生を、より確実に防止ないしは抑制することができる。
【0036】
なお、上記では、ウエハWHの周縁領域1dに残存膜2が残っている場合、または、歪みが生じている場合を例にとり説明したが、残存膜2が残っていない場合、または、歪みが生じていない場合についても同様に、周縁領域1dにおいて破断の発生が生じる場合がある。即ち、ウエハWHの周縁領域1dは、テーパ状の傾斜面(図3参照)、または、ラウンド型の形状(図4参照)となっている。この状況下、レーザ光LZをウエハWHに対して照射した場合、ウエハWHの主面1a側と、周縁領域1dとでレーザ光LZの入射角が異なるため、それぞれの加熱温度が異なる場合がある。よって、主面1a側と周縁領域1dの加熱温度の相違に起因する応力(熱応力)が原因である場合も原因として想定される。この場合は、面取り加工されたウエハWHの周縁領域1dにおける加熱温度を計算して、上述のように、ウエハWHの主面1a側と周縁領域1dとでレーザ光LZの出力を制御すれば良い。
【0037】
<3.半導体基板の結晶方位による破断の起こり易さ>
次に、半導体基板1の結晶方位による破断の起こり易さについて説明する。図12は、図6に示す半導体ウエハの(110)面の平面視における延在方向を模式的に示す説明図である。図13は、図2に示す拡大平面において、図6に示すレーザ光の走査軌道および図12に示す(110)面の平面視における延在方向を模式的に示す説明図である。なお、図13では、レーザ光LZ(図7参照)の走査軌道15と(110)面の延在方向22の成す角度を明確にするため、図2に示すデバイス領域1c、スクライブ領域1eの境界線は図示を省略している。
【0038】
半導体基板1は、前記したように、単結晶シリコン(不純物イオンが注入されている場合を含む)から成るが、半導体基板1の結晶方位によって脆性破壊の発生し易さ(破壊強度)が異なる。詳しくは、結晶方位が、(110)面となる面は、例えば、(100)面等、他の結晶方位の面よりも原子間の結合強度が弱いため、(110)面の延在方向に沿って脆性破壊が発生し易い。(110)面は、原子間の結合強度が弱く、(110)面に沿って半導体基板1が破壊し易いため、例えば、(110)面に沿ってへき開を形成し、シリコンからなる半導体基板1にミラー面を形成する事に利用される。ここで、本実施の形態のように、半導体基板1(ウエハWH)にレーザ光LZを照射する場合には、レーザ光LZを(110)面に沿って走査すると、脆性破壊が発生し易いので、ウエハWHが破壊される原因となる。特に、ウエハWHの破壊の起点となる周縁領域1dのエッジ部では、平面視において、レーザ光LZの走査軌道が図12に示す(110)面の延在方向22に対して平行になると、エッジ部で破壊が発生し易い。したがって、半導体基板1の結晶方位に起因する破断を抑制する観点から、周縁領域1dでは、レーザ光LZの走査軌道を、(110)面の延在方向22に対して傾斜させることが好ましい。
【0039】
詳しく説明すると、例えば、本実施の形態では、図12に示すように、結晶方位を識別するための方向識別部であるノッチ1fとウエハWHの中心を結ぶ線(仮想線)21に対して45°を成す方向、および−45°を成す方向に沿って(110)面が延在している。このため、本実施の形態では、周縁領域1dにおいて、図6に示す複数の走査軌道(第1の走査軌道)15は、それぞれ図12に示す(110)面の延在方向22に対して傾斜している。言い換えれば、周縁領域1dにおいて、図6に示す走査軌道(第1の走査軌道)15と、図12に示す(110)面の延在方向22は、交差している。これにより、他の結晶方位と比較して結合強度が低い(110)面に対して作用する応力成分を低減することができるので、半導体基板1の結晶方位に起因する破断を抑制することができる。また、図13に示すように、周縁領域1dにおいて、走査軌道15と(110)面の延在方向22の成す角度(傾斜角度)θは、出来る限り大きな角度とすることが好ましい。角度θを大きくすることで、(110)面に対して作用する応力を低減することができるので、半導体基板1の結晶方位に起因する破断を確実に防止ないしは抑制することができる。そこで、本実施の形態では、周縁領域1dにおいて、走査軌道15と(110)面の延在方向22の成す角度(傾斜角度)θは5°以上85°以下となっている。図13に示すように(110)面の延在方向22は、直交するため、角度θを5°以上85°以下とすることが好ましい。これにより、(110)面の延在方向22に対して±5°の範囲を避けて走査軌道15を配置することができる。この結果、(110)面に対して作用する応力を低減し、半導体基板1の結晶方位に起因する破断を確実に防止ないしは抑制することができる。
【0040】
また、本実施の形態では、前記したように、周縁領域1dの一端部からウエハWHの中心を介して一端部の反対側に位置する他端部に向かう走査軌道(第2の走査軌道)16に沿って走査軌道15を移動させて、複数の走査軌道15に沿って繰り返しレーザ光LZ(図7参照)を照射する。そして、走査軌道15を移動させる方向、すなわち、第2の走査軌道である走査軌道16は、図13に示すように、(110)面の延在方向22に対して傾斜している。このため、複数の走査軌道15のそれぞれを、(110)面の延在方向22に対して傾斜させることができる。
【0041】
<4.半導体基板の周縁領域の一部に局所的に生じる歪みによる破断>
次に、半導体基板の周縁領域の一部に局所的に生じる歪みによる破断について説明する。図14は、図6に示すウエハにおける歪み部の位置と走査軌道の方向の関係を示す説明図である。
【0042】
前記<2.半導体基板の歪みによる破断>で説明したように、ウエハWHの周縁領域1dには、微細な傷等の歪みが存在する。このような歪みのうち、周縁領域1dの一部に局所的に歪みが生じる場合がある。例えば前記した歪みの発生要因のうち、各種処理装置間でウエハWHを搬送する際に、ロボットなどの搬送装置の保持部をウエハWHの周縁領域1dに当接させることにより生じる歪みは、ウエハWHの周縁領域1dのうちの一部に局所的に発生する。言い換えれば、図14に示すようにウエハの周縁領域1dには、他の領域よりも歪み量が大きい歪み部(搬送装置の保持部が当接する被当接領域)1gが存在する。ウエハWHの主面1a側に歪みを生じさせない方法として、ウエハWHの裏面1b(図7参照)を保持することも考えられる。しかし、図5に示すようにウエハWHの主面1a側に処理を施す場合、支持部11の支持面と、ウエハWHの裏面1b(図7参照)が対向するように配置するには、主面1a側の一部を保持する必要がある。この結果、主面1a側の一部に図14に示すような局所的な歪み部1gが発生する。また、このように局所的な歪みは、前記した他の要因による歪みと比較して、ウエハWHの破断を引き起こし易い。このため、ウエハWHの破断を防止ないしは抑制する観点からは、この局所的な歪みが発生した歪み部1gには、レーザ光LZを照射しないことが好ましい。
【0043】
本実施の形態では、図14に示すように、周縁領域1dの一部に、搬送装置の保持部が当接する被当接領域である歪み部1gが存在する。このように歪み部1gを周縁領域に設けることで、デバイス領域1c内における歪みの発生を抑制し、かつウエハWHをしっかりと保持(固定)することができる。図14では、歪み部1gがウエハWHの主面1aの1箇所に存在するので、第2の走査軌道である走査軌道16は、ウエハWHの中心を介して歪み部1gの反対側に位置する端部から歪み部1gに向かって延在している。詳しくは、本実施の形態では、歪み部1gは、ノッチ1fとウエハWHの中心を結ぶ線(仮想線)21に対して130°を成す位置に存在する。このため、走査軌道16は線21に対して50°傾斜した方向に沿って延在している。そして、レーザアニール処理工程では、第1の走査軌道である走査軌道15を走査軌道16に沿って移動させてウエハWHの主面1aに照射するが、歪み部1gには、レーザ光LZ(図7参照)を照射しない。このように、ウエハWHの破断を引き起こし易い歪み部1gには、レーザ光LZを照射しないことにより、レーザアニール処理時のウエハの破断を防止ないしは抑制することができる。
【0044】
ここで、局所的な歪みが発生した歪み部1gにレーザ光LZ(図7参照)を照射しない場合、走査軌道15の平面形状によっては(例えば、走査軌道15が直線軌道である場合)、デバイス領域1cの一部に照射されない領域(未照射領域)が発生する懸念がある。そこで、図14に示すように走査軌道15の平面形状は、それぞれ、一つの凸部15aと、凸部15aの両隣に配置される裾野部15bを有する曲線形状となっている。例えば、本実施の形態では走査軌道15は、放物線形状(あるいは円弧形状)を成す。そして、歪み部1gが凸部15aよりも裾野部15b側に位置するように走査軌道15を配置する。これにより、局所的な歪みが発生した歪み部1gにはレーザ光LZ(図7参照)を照射しない場合であっても、デバイス領域1cには、レーザ光LZを照射することができる。
【0045】
<半導体装置の製造方法>
次に、前記したレーザアニール処理を適用した本実施の形態の半導体装置の製造方法について説明する。なお、本実施の形態では、半導体基板の主面に形成する半導体素子の例として、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を取り上げて説明する。図15は、半導体基板準備工程で準備する半導体基板の一部を拡大して示す拡大断面図、図16は、図15に示す半導体基板の主面に素子分離領域を形成した状態を示す拡大断面図である。また、図17は、図16に示す半導体基板の主面にウェル領域を形成した状態を示す拡大断面図である。また、図18は、図17に示す半導体基板の主面に半導体素子を形成した状態を示す拡大断面図である。
【0046】
本実施の形態の半導体装置の製造方法では、まず、図15に示すように半導体基板1を準備する(半導体基板準備工程)。半導体基板1は、例えば、p型のシリコン(Si)単結晶からなり、主面1aおよびその反対側に位置する裏面1b(図3参照)を有している。
【0047】
次に、図16に示すように、半導体基板1の主面1aに素子分離領域3を形成する(素子分離領域形成工程)。素子分離領域3は、例えば、酸化シリコン膜から成り、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法またはLOCOS(Local Oxidization of Silicon)法などにより形成される。この素子分離領域形成工程では、まず、半導体基板1の主面1a上に例えば、熱酸化処理による酸化シリコン膜、CVD(Chemical Vapor Deposition)法による窒化シリコン膜、あるいはこれらの積層膜からなる絶縁膜(図示は省略)を成膜する。次に、絶縁膜上にフォトレジスト膜(図示は省略;以下、単にレジスト膜と記載する)を塗布、露光および現像等のような一連のフォトリソグラフィ(以下、単にリソグラフィと記載する)処理、ドライエッチング処理を施すことにより、素子分離領域3の形成領域を絶縁膜から露出させる。次に、上記絶縁膜をエッチングマスクとしてエッチング処理を施し、素子分離領域3の形成領域に溝を形成する。次に、半導体基板1(ウエハWH)の主面1a上に、例えば酸化シリコンからなる絶縁膜をCVD法等によって堆積し、溝内に絶縁膜を埋め込む。その後、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)法等により主面1a上の絶縁膜を研磨することで、素子分離領域3の周囲の絶縁膜を除去し素子分離領域3を形成する。この時、半導体基板1の周縁領域1dに成膜された絶縁膜まで完全に除去することが難しいため、該絶縁膜の一部は除去されず、残存膜2として周縁領域1dに残存する。
【0048】
次に、図17に示すように、半導体基板1の主面1aにウェル領域(半導体領域)4を形成する(ウェル領域形成工程)。ウェル領域4は、p型またはn型の導電型の不純物を含む半導体領域であって、レジスト膜(図示は省略)の存在下でウェル形成領域に不純物をイオン注入した後、レジスト膜を除去し、不純物イオンを拡散させることにより形成される。例えば、nチャネル型の半導体素子が形成される領域には、例えばホウ素(B)などのp型の不純物がイオン注入されることによりp型のウェル領域(p型ウェル領域)4が形成される。また、pチャネル型の半導体素子が形成される領域には、リン(P)または砒素(As)などのn型の不純物がイオン注入されることにより、n型のウェル領域(n型ウェル領域)4が形成される。ウェル領域4内に不純物イオンを拡散させる工程では、熱処理を行うことで、不純物イオンを拡散させるとともに、活性化させることができる。この熱処理工程では、例えば、半導体基板1(ウエハWH)を加熱炉内に配置して、加熱炉の熱源(例えばヒータなど)からの熱伝達により半導体基板1全体を加熱して行う、所謂、加熱炉方式を適用することができる。この熱処理工程において、前記したレーザアニール処理を適用することもできるが、加熱時間が短すぎると、半導体基板1の所定の深さ(例えば、素子分離領域3よりも深い位置)まで不純物イオンを拡散させることが困難になるため、本実施の形態では加熱炉方式を適用している。
【0049】
次に、図18に示すように、ウェル領域4にゲート電極5およびソース、ドレイン領域(半導体領域)6を形成し、半導体素子Q1を形成する。ゲート電極5は、例えば、熱酸化処理により形成される2nm〜4nm程度の薄い酸化シリコン膜から成るゲート絶縁膜5a上に、導電膜(例えば、不純物を含む多結晶シリコン膜)5bを堆積することで形成される。また、ゲート電極5の側面には、例えば、CVD法による酸化シリコン膜、および酸化シリコン膜5c1よりも厚い窒化シリコン膜5c2からなるサイドウォール絶縁膜5cが導電膜5bを覆うように形成される。このサイドウォール絶縁膜5cは、半導体基板1の主面1aの全面に堆積させた後、例えばエッチングにより導電膜5bの側面を残すように不要な部分が取り除かれるが、周縁領域1dに成膜された酸化シリコン膜5c1および厚い窒化シリコン膜5c2まで完全に除去することが難しいため、酸化シリコン膜5c1および厚い窒化シリコン膜5c2の一部は除去されず、残存膜2として周縁領域1dに残存する。特に、窒化シリコン膜は、下層の酸化シリコン膜よりも厚く、例えば数十nm程度の厚さで形成されるため、残存膜2には、主として窒化シリコン膜が含まれることとなる。
【0050】
また、ソース、ドレイン領域6は、ゲート電極5の両隣の半導体領域に不純物を主面1a側からイオン注入した後、不純物イオンが注入された半導体領域をアニール温度まで加熱することにより活性化して形成される。例えば、nチャネル型の半導体素子Q1が形成されるp型のウェル領域4には、リン(P)または砒素(As)などのn型の不純物がイオン注入した後、アニール処理により活性化してn型半導体領域であるソース、ドレイン領域6が形成される。また、pチャネル型の半導体素子Q1が形成される領域には、ホウ素(B)などのp型の不純物がイオン注入した後、アニール処理により活性化してp型半導体領域であるソース、ドレイン領域6が形成される。このイオン注入工程は、デバイス領域1cの主面1a上にサイドウォール絶縁膜5cを堆積した後、図示しないレジスト膜をエッチングマスクとしてエッチングを行い、ソース、ドレイン領域6をサイドウォール絶縁膜5cから露出させた状態で行う。また、ゲート電極5およびソース、ドレイン領域6の表面には、金属シリサイド膜7が積層される。この金属シリサイド膜7は、ゲート電極5およびソース、ドレイン領域6の表面に、例えばコバルト(Co)膜やニッケル(Ni)膜などの金属膜を形成し、例えば800°、90秒程度の熱処理を施すことで、金属膜とシリコンを反応させてシリサイド化することにより形成される。
【0051】
ソース、ドレイン領域6はウェル領域4、および素子分離領域3よりも浅く形成されるので、不純物イオンが過剰に拡散することを抑制することが好ましい。このため、本実施の形態では、不純物イオンを活性化させるアニール処理は、前記したレーザアニール処理を適用している。レーザアニール処理は、加熱炉方式と比較して極めて短時間で半導体基板1を加熱することができるので、不純物イオンが過剰に拡散することを抑制することができる。また、本実施の形態の半導体素子Q1は、ゲート電極5の両隣に配置されるソース、ドレイン領域6の間にソース、ドレイン領域6よりも相対的に不純物濃度が低い半導体領域6aが形成された、所謂LDD(Lightly Doped Drain)構造となっている。LDD構造は、ソース、ドレイン領域6とゲート絶縁膜5aの下層に配置されるチャンネル領域の間に不純物濃度が低い半導体領域(LDD領域)6aを設けることで、電界集中を抑制することができる。この半導体領域6aにイオン注入された不純物イオンが過剰に拡散することを抑制する観点からも、アニール処理工程は、前記したレーザアニール処理により行うことが好ましい。
【0052】
このようにソース、ドレイン領域6に注入した不純物イオンを活性させるためのアニール処理として、レーザアニール処理を施す場合、周縁領域1dには、残存膜2が残存している。したがって、前記<1.熱応力による破断>で説明したように、半導体基板1(ウエハWH)の破断の発生を防止ないしは抑制する必要がある。そこで、前記したレーザアニール処理工程を適用することにより、半導体基板1(ウエハWH)の破断の発生を防止ないしは抑制することができる。すなわち、前記<1.熱応力による破断>で説明したように、α1×T1≧α2×T2を満たすように、周縁領域1dにおける半導体基板1および残存膜2が吸収するエネルギーを調整することにより、ウエハWHの破断の起点の発生を防止ないしは抑制することができる。この吸収エネルギーの調整は、レーザアニール処理工程におけるレーザ光LZの出力を調整することにより実現できる。すなわち、図8および図9に示す出力PWが70%以下、もしくは安全率を考慮して65%以下とすれば、ウエハWHの破断の発生は実効上十分に抑制することができる。
【0053】
また、前記<2.半導体基板の歪みによる破断>で説明したように、レーザ光LZが照射された時の周縁領域1dの半導体基板1の温度(図8に示す温度T1)を、800℃以上、より好ましくは、800℃よりも大きくすることで、周縁領域1dに発生した歪みに起因するウエハWHの破断の発生を防止ないしは抑制することができる。この周縁領域1dにおける半導体基板1の温度は、レーザアニール処理工程におけるレーザ光LZの出力により制御することができ、図7に示す周縁領域1dに照射するレーザ光LZの出力(第1出力)を、アニール温度まで昇温させるために必要な出力(第2出力)に対して50%よりも大きくすれば、レーザ光LZが照射された時の周縁領域1dの半導体基板1の温度T1を、800℃以上とすることができる。また、第1出力を第2出力に対して55%以上にすれば、レーザ光LZが照射された時の周縁領域1dの半導体基板1の温度T1を、確実に800℃よりも大きくすることができる。
【0054】
また、前記<3.半導体基板の結晶方位による破断の起こり易さ>で説明したように、図13に示すように周縁領域1dにおいて、複数の走査軌道(第1の走査軌道)15を、それぞれ(110)面の延在方向22に対して傾斜させることにより、(110)面に沿った脆性破壊の発生を防止ないしは抑制することができる。また、図13に示すように周縁領域1dにおいて、走査軌道15と(110)面の延在方向22の成す角度(傾斜角度)θを5°以上85°以下とすることにより、(110)面に対して作用する応力を低減し、半導体基板1の結晶方位に起因する破断を確実に防止ないしは抑制することができる。
【0055】
また、前記<4.半導体基板の周縁領域の一部に局所的に生じる歪みによる破断>で説明したように、ウエハWHの破断を引き起こし易い歪み部1g(図14参照)には、レーザ光LZを照射しないことにより、レーザアニール処理時のウエハの破断を防止ないしは抑制することができる。また、図14に示すように走査軌道15の平面形状は、それぞれ、一つの凸部15aと、凸部15aの両隣に配置される裾野部15bを有する曲線形状し、歪み部1gが凸部15aよりも裾野部15b側に位置するように走査軌道15を配置する。これにより、局所的な歪みが発生した歪み部1gにはレーザ光LZ(図7参照)を照射しない場合であっても、デバイス領域1cには、レーザ光LZを照射することができる。
【0056】
これ以降は、半導体装置の通常のメタル配線形成工程を経る。すなわち、層間絶縁膜の堆積工程、層間絶縁膜の平坦化工程、コンタクトホールまたはスルーホールの形成工程、プラグ形成工程、配線用メタルの堆積工程および配線用メタルのパターニング工程等を必要とする配線層数に応じて繰り返し行う。その後、保護膜の形成工程、パッド開口部形成工程を経る。その後、検査工程およびウエハダイシング工程を経て、ウエハWHをスクライブ領域1e(図2参照)に沿ってデバイス領域1c毎に分割し、1枚のウエハWHから複数の半導体チップ(半導体装置)を取得する。
【0057】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0058】
例えば、前記実施の形態では、半導体装置の製造工程のうち、MISFETのソース、ドレイン領域を活性化させる工程にレーザアニール処理工程を適用する例について説明したが、他の工程でレーザアニール処理を施す場合にも適用することができる。
【0059】
また、例えば、前記実施の形態では、第1の走査軌道である走査軌道15を曲線形状とする実施態様について説明したが、例えば、局所的な歪み部が形成されていない場合には、主面1a全体にレーザ光LZを照射することができるので、第1の走査軌道を例えば直線形状とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、特に半導体基板にレーザ光を照射して、アニール処理を施す半導体装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 半導体基板
1a 主面
1b 裏面
1c デバイス領域
1d 周縁領域
1e スクライブ領域
1f ノッチ
1g 歪み部
2 残存膜
3 素子分離領域
4 ウェル領域
5 ゲート電極
5a ゲート絶縁膜
5b 導電膜(多結晶シリコン膜)
5c サイドウォール絶縁膜(絶縁膜)
5c1 酸化シリコン膜(絶縁膜)
5c2 窒化シリコン膜(絶縁膜)
6 ソース、ドレイン領域(半導体領域)
6a 半導体領域
7 金属シリサイド膜
10 レーザ照射装置
11 支持部
11a 保持部
11b 可動部
12 光源
13 光学系部
13a ミラー
13b 減衰器
14 制御部
14a 温度計
14b 制御回路部
15 走査軌道(第1の走査軌道)
15a 凸部
15b 裾野部
16 走査軌道(第2の走査軌道)
21 線
22 延在方向
E ヤング率
LZ レーザ光
PW 出力
PW1 第1出力
PW2 第2出力
Q1 半導体素子
T1、T2 温度(絶対温度)
WH、WH1、WH2 ウエハ(半導体ウエハ)
α1、α2 線膨張係数
θ 角度
σ 応力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)デバイス領域、および平面視において前記デバイス領域の周囲を囲むように配置される周縁領域を備えた主面、を有する半導体ウエハを準備する工程と、
(b)前記半導体ウエハの前記主面側に、前記周縁領域から前記デバイス領域を経由して前記周縁領域に至る第1の走査軌道に沿ってレーザ光を照射し、前記半導体ウエハの前記主面側を加熱する工程と、
を含み、
前記(a)工程には、
(a1)前記半導体ウエハが備える半導体基板の前記主面上に絶縁膜を形成する工程、
(a2)前記デバイス領域の前記主面上の絶縁膜を除去する工程、
が含まれ、
前記(a2)工程後の前記周縁領域の前記主面上には、前記絶縁膜の一部である残存膜が残っており、
前記レーザ光が照射された時の前記周縁領域の前記半導体基板の温度は、800℃よりも大きく、
前記半導体ウエハを構成する前記半導体基板の線膨張係数をα1、前記絶縁膜の前記残存膜の線膨張係数をα2、前記レーザ光が照射された時の前記周縁領域の前記半導体基板の温度をT1、前記レーザ光が照射された時の前記周縁領域の前記絶縁膜の前記残存膜の温度をT2とすると、α1×T1≧α2×T2となることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記(b)工程には、
(b1)前記半導体ウエハの前記周縁領域に、第1出力で前記レーザ光を照射する工程と、
(b2)前記半導体ウエハの前記デバイス領域に、前記第1出力よりも高い第2出力で前記レーザ光を照射する工程と、
が含まれることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記半導体ウエハの前記周縁領域における前記主面は、前記デバイス領域における前記主面に対して傾斜する傾斜面を有し、
前記残存膜は、前記周縁領域の傾斜面上に存在することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記(b)工程では、
前記周縁領域の一端部から前記半導体ウエハの中心を介して前記一端部の反対側に位置する他端部に向かう第2の走査軌道に沿って複数の前記第1の走査軌道が設けられ、前記複数の第1の走査軌道に沿って前記レーザ光を照射し、
前記複数の第1の走査軌道のそれぞれは、
前記周縁領域において、前記半導体基板の結晶方位が(110)面となる面の延在方向に対して傾斜していることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記周縁領域における前記複数の第1の走査軌道と前記半導体基板の(110)面の延在方向の成す角度(傾斜角度)は5°以上85°以下となっていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項2において、
前記第1の出力は、前記第2の出力に対して、50%よりも大きく、かつ、70%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1の出力は、前記第2の出力に対して、65%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1において、
前記半導体ウエハの前記周縁領域には、他の領域よりも歪み量が大きい歪み部が存在し、
前記(b)工程では、
前記周縁領域のうち、前記歪み部には前記レーザ光を照射しないことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記(b)工程では、
前記周縁領域の一端部から前記半導体ウエハの中心を介して前記一端部の反対側に位置する他端部に向かう第2の走査軌道に沿って複数の前記第1の走査軌道が設けられ、前記複数の第1の走査軌道に沿って前記レーザ光を照射し、
前記複数の第1の走査軌道のそれぞれは、一つの凸部と、前記凸部の両隣に配置される裾野部を有する曲線形状となっており、
前記歪み部は、前記凸部よりも前記裾野部側に位置するように前記複数の第1の走査軌道を配置することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
(a)デバイス領域、および平面視において前記デバイス領域の周囲を囲むように配置される周縁領域を備えた主面、を有する半導体ウエハを準備する工程と、
(b)前記半導体ウエハの前記主面側に、前記周縁領域から前記デバイス領域を経由して前記周縁領域に至る第1の走査軌道に沿ってレーザ光を照射し、前記半導体ウエハの前記主面側を加熱する工程と、
を含み、
前記(a)工程には、
(a1)前記半導体ウエハが備える半導体基板の前記主面上に絶縁膜を形成する工程、
(a2)前記デバイス領域の前記主面上の絶縁膜を除去する工程、
が含まれ、
前記(b)工程には、
(b1)前記半導体ウエハの前記周縁領域に、第1出力で前記レーザ光を照射する工程と、
(b2)前記半導体ウエハの前記デバイス領域に、前記第1出力よりも高い第2出力で前記レーザ光を照射する工程と、
が含まれ、
前記第1の出力は、前記第2の出力に対して、50%よりも大きく、かつ、70%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記半導体ウエハの前記周縁領域における前記主面は、前記デバイス領域における前記主面に対して傾斜する傾斜面を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記(b)工程では、
前記周縁領域の一端部から前記半導体ウエハの中心を介して前記一端部の反対側に位置する他端部に向かう第2の走査軌道に沿って複数の前記第1の走査軌道が設けられ、前記複数の第1の走査軌道に沿って前記レーザ光を照射し、
前記複数の第1の走査軌道のそれぞれは、
前記周縁領域において、前記半導体基板の結晶方位が(110)面となる面の延在方向に対して傾斜していることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記周縁領域における前記複数の第1の走査軌道と前記半導体基板の(110)面の延在方向の成す角度(傾斜角度)は5°以上85°以下となっていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項10において、
前記半導体ウエハの前記周縁領域には、他の領域よりも歪み量が大きい歪み部が存在し、
前記(b)工程では、
前記周縁領域のうち、前記歪み部には前記レーザ光を照射しないことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14において、
前記(b)工程では、
前記周縁領域の一端部から前記半導体ウエハの中心を介して前記一端部の反対側に位置する他端部に向かう第2の走査軌道に沿って複数の前記第1の走査軌道が設けられ、前記複数の第1の走査軌道に沿って前記レーザ光を照射し、
前記複数の第1の走査軌道のそれぞれは、一つの凸部と、前記凸部の両隣に配置される裾野部を有する曲線形状となっており、
前記歪み部は、前記凸部よりも前記裾野部側に位置するように前記複数の第1の走査軌道を配置することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項10において、
前記第1の出力は、前記第2の出力に対して、65%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
(a)デバイス領域、および平面視において前記デバイス領域の周囲を囲むように配置される周縁領域を備えた主面、を有する半導体基板を準備する工程
(b)前記デバイス領域の前記主面上に、ゲート電極を形成する工程、
(c)前記半導体基板の前記主面上に前記主面を覆う絶縁膜を形成する工程、
(d)前記ゲート電極の側面に前記絶縁膜が残るように、前記絶縁膜の一部を除去する工程、
(e)前記ゲート電極の隣に配置される半導体領域に、前記主面側から不純物イオンを注入する工程、
(f)前記不純物イオンが注入された前記半導体領域を加熱して、前記半導体領域を活性化させる工程、
を含み、
前記(d)工程後の前記周縁領域の前記主面上には、前記絶縁膜の一部である残存膜が残っており、
前記(f)工程では、
前記半導体基板の前記主面側に、前記周縁領域から前記デバイス領域を経由して前記周縁領域に至る第1の走査軌道に沿ってレーザ光を照射し、前記半導体領域をアニール温度まで加熱することにより、前記半導体領域が活性化され、
前記レーザ光が照射された時の前記周縁領域の前記半導体基板の温度は、800℃よりも大きく、
前記半導体ウエハを構成する前記半導体基板の線膨張係数をα1、前記絶縁膜の前記残存膜の線膨張係数をα2、前記レーザ光が照射された時の前記周縁領域の前記半導体基板の温度をT1、前記レーザ光が照射された時の前記周縁領域の前記絶縁膜の前記残存膜の温度をT2とすると、α1×T1≧α2×T2となることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項17において、
前記(f)工程には、
(f1)前記半導体基板の前記周縁領域に、第1出力で前記レーザ光を照射する工程と、
(f2)前記半導体基板の前記デバイス領域に、前記第1出力よりも高い第2出力で前記レーザ光を照射する工程と、
が含まれることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項18において、
前記第1の出力は、前記第2の出力に対して、50%よりも大きく、かつ、70%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項19において、
前記第1の出力は、前記第2の出力に対して、65%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−94698(P2012−94698A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240994(P2010−240994)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】